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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】シート矯正装置、印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 29/70 20060101AFI20220809BHJP
   B65H 29/14 20060101ALI20220809BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
B65H29/70
B65H29/14
B41J2/01 305
B41J2/01 125
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2018157550
(22)【出願日】2018-08-24
(65)【公開番号】P2019119606
(43)【公開日】2019-07-22
【審査請求日】2021-06-16
(31)【優先権主張番号】P 2017254687
(32)【優先日】2017-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】230100631
【弁護士】
【氏名又は名称】稲元 富保
(72)【発明者】
【氏名】浅田 幸輝
(72)【発明者】
【氏名】川道 源一郎
(72)【発明者】
【氏名】石原 広規
(72)【発明者】
【氏名】会沢 智
【審査官】沖 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-107519(JP,A)
【文献】実開平01-085857(JP,U)
【文献】特開2006-058583(JP,A)
【文献】実開昭62-044855(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2016/0101635(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0040093(US,A1)
【文献】特開2008-265987(JP,A)
【文献】特開2005-041614(JP,A)
【文献】特開2009-294268(JP,A)
【文献】特開2006-242988(JP,A)
【文献】特開2012-062177(JP,A)
【文献】特開2009-280348(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 29/54-29/70
B41J 2/01
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートのコックリングを矯正するシート矯正装置であって、
前記シートを挟んで搬送するベルト対と、
前記ベルト対が前記シートを挟み持つ領域で前記ベルト対に接触し、前記シートの搬送方向に沿って配置されている複数の曲面部材と、
前記曲面部材の曲面に対向し、前記ベルト対を前記曲面に押し付ける押し付け手段と、
前記ベルト対の少なくとも一方を介して前記シートを加熱する加熱手段と、を備え、
前記押し付け手段は、相対的に、前記シートの搬送方向上流側に配置されている第1押し付け部材と、前記シートの搬送方向下流側に配置されている第2押し付け部材と、を含み、
前記シートの搬送方向で隣り合う前記曲面部材の内の、上流側の前記曲面部材に対向する前記第2押し付け部材と下流側の前記曲面部材に対向する前記第1押し付け部材との間は離れており、
前記シートの搬送方向で隣り合う前記曲面部材の内、一方の曲面部材は前記ベルト対の一方のベルトに接触し、他方の曲面部材は前記ベルト対の他方のベルトに接触し、
前記一方の曲面部材に対向する前記第1押し付け部材及び前記第2押し付け部材は前記他方のベルトに接触し、前記他方の曲面部材に対向する前記第1押し付け部材及び前記第2押し付け部材は前記一方のベルトに接触する
ことを特徴とするシート矯正装置。
【請求項2】
前記ベルト対の前記シートを挟み持つベルト面が前記シートの搬送方向上流側と搬送方向下流側とに引っ張られる方向に作用する張力を、前記ベルト対の各ベルトに付与するテンション付与手段を備えている
ことを特徴とする請求項1に記載のシート矯正装置。
【請求項3】
前記曲面部材は、ローラである
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のシート矯正装置。
【請求項4】
前記曲面部材は、前記シートの搬送方向に並べて配置された複数本の接触部材に分割されており、
前記シートの搬送方向における中央部に位置する前記接触部材の先端部が、両側に位置する前記接触部材の先端部よりも突出している
ことを特徴とする請求項1に記載のシート矯正装置。
【請求項5】
前記第1押し付け部材及び前記第2押し付け部材の少なくともいずれかは、ローラである
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のシート矯正装置。
【請求項6】
前記第1押し付け部材及び前記第2押し付け部材の少なくともいずれかは、前記曲面部材の曲面に対して進退可能に配置されている
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のシート矯正装置。
【請求項7】
前記複数の曲面部材は、前記ベルト対を上方に凸形状に湾曲させるように前記ベルト対に接触する前記曲面部材と、前記ベルト対を下方に凸形状に湾曲させるように前記ベルト対に接触する前記曲面部材とが、前記シートの搬送方向に複数配置されてなる
ことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のシート矯正装置。
【請求項8】
前記シートの搬送方向で隣り合う前記曲面部材は、上流側の前記曲面部材に対向する前記第2押し付け部材と下流側の前記曲面部材に対向する前記第1押し付け部材との間で、前記ベルト対が湾曲しない状態になる間隔で配置されている
ことを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載のシート矯正装置。
【請求項9】
前記加熱手段は、前記曲面部材の内部に設けられている
ことを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載のシート矯正装置。
【請求項10】
前記曲面部材が加熱ローラである
ことを特徴とする請求項9に記載のシート矯正装置。
【請求項11】
前記加熱手段は、前記ベルト対で前記シートが挟まれる箇所よりも搬送方向上流側で前記ベルト対を加熱する
ことを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載のシート矯正装置。
【請求項12】
前記ベルト対の各ベルトは、メッシュベルトである
ことを特徴とする請求項1ないし11のいずれかに記載のシート矯正装置。
【請求項13】
前記ベルト対の各ベルトは、前記シートの搬送方向と直交する方向において複数に分割されている
ことを特徴とする請求項1ないし11のいずれかに記載のシート矯正装置。
【請求項14】
前記シートに対して液体を付与する手段と、
請求項1ないし13のいずれかに記載のシート矯正装置と、を備え、
前記シート矯正装置は、前記液体を付与する手段の下流側に配置されている
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項15】
前記液体を付与する手段と前記シート矯正装置との間に、前記シートを乾燥する乾燥装置が配置されている
ことを特徴とする請求項14に記載の印刷装置。
【請求項16】
前記液体を付与する手段は、前記シートにインクを吐出して画像を形成する
ことを特徴とする請求項14又は15に記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシート矯正装置、印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
用紙などのシートに液体を付与した場合、液体が付与された部分が膨潤し、液体が付与されていない部分では膨潤が生じないことなどによってコックリング(波打ち)などと称される変形が生じる。
【0003】
従来、例えば、連続紙を、所定の曲率の接触面を有する接触部材の接触面に接触させて搬送することによって、コックリングを抑制しながら液体の乾燥を促進する乾燥装置が知られている(特許文献1)。
【0004】
また、2つの無端ベルトの間で用紙を挟み持って複数のローラに巻き付けることでカールを矯正するものも知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-107519号公報
【文献】特開2008-265987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、乾燥装置によって液体が付与されたシートを乾燥する場合、大きな加熱量で長い時間加熱することによってコックリングなどの変形を矯正することは可能であるが、乾燥時間が長くなるため生産効率が低下するという課題がある。
【0007】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、効率的にシートのコックリングを矯正することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明に係るシート矯正装置は、
シートのコックリングを矯正するシート矯正装置であって、
前記シートを挟んで搬送するベルト対と、
前記ベルト対が前記シートを挟み持つ領域で前記ベルト対に接触し、前記シートの搬送方向に沿って配置されている複数の曲面部材と、
前記曲面部材の曲面に対向し、前記ベルト対を前記曲面に押し付ける押し付け手段と、
前記ベルト対の少なくとも一方を介して前記シートを加熱する加熱手段と、を備え、
前記押し付け手段は、相対的に、前記シートの搬送方向上流側に配置されている第1押し付け部材と、前記シートの搬送方向下流側に配置されている第2押し付け部材と、を含み、
前記シートの搬送方向で隣り合う前記曲面部材の内の、上流側の前記曲面部材に対向する前記第2押し付け部材と下流側の前記曲面部材に対向する前記第1押し付け部材との間は離れており、
前記シートの搬送方向で隣り合う前記曲面部材の内、一方の曲面部材は前記ベルト対の一方のベルトに接触し、他方の曲面部材は前記ベルト対の他方のベルトに接触し、
前記一方の曲面部材に対向する前記第1押し付け部材及び前記第2押し付け部材は前記他方のベルトに接触し、前記他方の曲面部材に対向する前記第1押し付け部材及び前記第2押し付け部材は前記一方のベルトに接触する
構成とした。

【0009】
本発明によれば、効率的にシートのコックリングを矯正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態に係る印刷装置の概略説明図である。
図2】本発明の第1実施形態に係るシート矯正装置の側面説明図である。
図3】同じくローラ部分の説明図である。
図4】同実施形態の作用説明に供するローラ部分の斜視説明図である。
図5】本発明の第2実施形態に係るシート矯正装置の側面説明図である。
図6】同じく曲面部材部分の説明図である。
図7】本発明の第3実施形態に係るシート矯正装置の曲面部材部分の説明図である。
図8】本発明の第4実施形態に係るシート矯正装置の側面説明図である。
図9】各実施形態におけるベルト対の異なる例の説明に供するベルト対の曲面部材部分における斜視説明図である。
図10】ベルト対のステアリングコントロールの説明に供する斜視説明図である
図11】押し付け部材のユニット化の説明に供する曲面部材近傍の説明図である。
図12】押し付け部材の他の例の説明に供する曲面部材近傍の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、本発明の第1実施形態に係る印刷装置の概要について図1を参照して説明する。図1は同装置の概略説明図である。
【0012】
印刷装置1は、搬入部100と、印刷部200と、乾燥部300と、本発明に係るシート矯正装置で構成したシート矯正部600と、搬出部400とを備えている。印刷装置1は、搬入部100から搬入されるシートPに対し、印刷部200で液体を付与して所要の印刷を行い、乾燥部300でシートPに付着した液体を乾燥させた後、シート矯正部600でシートPに生じたコックリングなどの波打ち変形を矯正して、シートPを搬出部400に排出する。
【0013】
搬入部100は、複数枚のシートPが積載される搬入トレイ110と、搬入トレイ110からシートPを1枚ずつ分離して送り出す給送装置120と、シートPを印刷部200へ送り込むレジストローラ対130とを備えている。
【0014】
給送装置120には、ローラやコロを用いた装置や、エア吸引を利用した装置など、あらゆる給送装置を用いることが可能である。給送装置120により搬入トレイ110から送り出されたシートPは、その先端がレジストローラ対130に到達した後、レジストローラ対130が所定のタイミングで駆動することにより、印刷部200へ送り出される。
【0015】
印刷部200は、シートPを外周面に担持して搬送する担持ドラム210と、担持ドラム210に担持されたシートPに向けて液体を吐出する液体を付与する手段である液体吐出部220とを備えている。また、印刷部200は、送り込まれたシートPを受け取って担持ドラム210へ渡す渡し胴201と、担持ドラム210によって搬送されたシートPを乾燥部300へ受け渡す受け渡し胴202を備えている。
【0016】
搬入部100から印刷部200へ搬送されてきたシートPは、渡し胴201の表面に設けられたシートグリッパによって先端が把持され、渡し胴201の回転に伴って搬送される。渡し胴201により搬送されたシートPは、担持ドラム210との対向位置で担持ドラム210へ受け渡される。
【0017】
担持ドラム210の表面にもシートグリッパが設けられており、シートPの先端がシートグリッパによって把持される。担持ドラム210の表面には、複数の吸引孔が分散して形成されており、各吸引孔には吸引装置211によって担持ドラム210の内側へ向かう吸い込み気流が発生する。
【0018】
そして、渡し胴201から担持ドラム210へ受け渡されたシートPは、シートグリッパによって先端が把持されるとともに、吸い込み気流によって担持ドラム210の表面に吸着され、担持ドラム210の回転に伴って搬送される。
【0019】
液体吐出部220は、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の4色の液体(インク)を吐出して画像を印刷するものであり、液体の色ごとに個別の液体を付与する手段である液体吐出ヘッド220C,220M,220Y,220Kを備えている。なお、必要に応じて、白色、金色、銀色などの特殊な液体を吐出する液体吐出ヘッド、表面コート液などの処理液を吐出する液体吐出ヘッドを設けることもできる。
【0020】
液体吐出部220の液体吐出ヘッド220C,220M,220Y,220Kは、印刷情報に応じた駆動信号によりそれぞれ吐出動作が制御される。担持ドラム210に担持されたシートPが液体吐出部220との対向領域を通過するときに、液体吐出ヘッド220C,220M,220Y,220Kから各色の液体が吐出され、当該印刷情報に応じた画像が印刷される。
【0021】
乾燥部300は、乾燥装置であり、印刷部200から搬送されてくるシートPを吸着して搬送する吸引搬送ベルト301と、吸引搬送ベルト301で搬送されるシートPに対して液体を乾燥させるための温風を吹き付ける温風吹付け手段302などとを備えている。吸引搬送ベルト301は、例えば駆動ローラ303と従動ローラ304との間に掛け回され、駆動ローラ303を駆動することで周回移動する。
【0022】
印刷部200から搬送されてきたシートPは、吸引搬送ベルト301に受け取られた後、温風吹付け手段302を通過するように搬送され、シート矯正部600に受け渡され、シート矯正部600から搬出部400へ受け渡される。
【0023】
温風吹付け手段302を通過するとき、シートP上の液体には乾燥処理が施される。これにより液体中の水分等の液分が蒸発し、シートP上に液体中に含まれる着色剤が定着する。
【0024】
シート矯正部600を乾燥後のシートPが通過することで、シートPのコックリングなどの変形が矯正される。
【0025】
搬出部400は、複数のシートPが積載される排出トレイ410を備えている。シート矯正部600から搬送されてくるシートPは、排出トレイ410上に順次積み重ねられて保持される。
【0026】
なお、印刷装置1には、例えば、シートPに対して前処理を行う前処理部を印刷部200の上流側に配置したり、液体が付着したシートPに対して後処理を行う後処理部をシート矯正部600と搬出部400との間に配置したりすることもできる。
【0027】
前処理部としては、例えば、液体と反応して滲みを抑制するための処理液をシートPに塗布する先塗り処理を行うものが挙げられる。また、後処理部としては、例えば、印刷部200で印刷されたシートを反転させて再び印刷部200へ送ってシートPの両面に印刷するためのシート反転搬送処理や、複数枚のシートを綴じる処理などを行うものが挙げられる。
【0028】
また、本願における「印刷装置」は、インクジェット記録装置に限らず、シートに向けて液体を吐出する液体吐出ヘッドを備え、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではなく、例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するものも含まれる。
【0029】
また、「液体」は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液等の用途で用いることができる。
【0030】
また、「印刷装置」には、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0031】
また、「液体吐出ヘッド」とは、吐出孔(ノズル)から液体を吐出・噴射する機能部品である。液体を吐出するエネルギー発生源として、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子又は薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどの吐出エネルギー発生手段を使用することができるが、使用する吐出エネルギー発生手段が限定されるものではない。
【0032】
次に、本発明の第1実施形態におけるシート矯正部を構成している本発明に係るシート矯正装置について図2及び図3を参照して説明する。図2は同シート矯正装置の側面説明図、図3はローラ部分の説明図である。
【0033】
シート矯正装置601は、シートPを挟んで搬送する無端状の上ベルト611と下ベルト612で構成されるベルト対602を備えている。
【0034】
上ベルト611は、搬送ローラ621A、ステアリングコントロールローラ622A、従動ローラ624A、625Aに掛け回され、テンションローラ623Aによってテンションが与えられている。
【0035】
下ベルト612は、搬送ローラ621B、ステアリングコントロールローラ622B、従動ローラ624B、625Bに掛け回され、テンションローラ623Bによってテンションが与えられている。
【0036】
これらの上ベルト611と下ベルト612は、搬送ローラ621A、621Bが回転駆動されることによって矢印方向に周回移動し、シートPを挟み持ってシートPを搬送方向(矢印Y方向、以下「搬送方向Y」という。)に搬送する。
【0037】
ここで、テンションローラ623A、623Bは、ベルト対602のシートPを挟み持つベルト面が搬送方向Yの上流側と下流側とに引っ張られる方向に作用する張力を、ベルト対602の各ベルト611、612にそれぞれ付与するテンション付与手段となる。
【0038】
そして、ベルト対602の上ベルト611と下ベルト612の各ベルト面が対向(対面)してシートPを挟み持つ領域で、ベルト対602の上ベルト611又は下ベルト612に接触し、搬送方向Yに沿って配置されている複数(ここでは、3個)の曲面部材であるローラ603(603A、603B)を備えている。ローラ603は、ベルト対602の一部を湾曲形状に変形(湾曲変形)させている。
【0039】
ローラ603は、発熱手段としてのヒータ604を内蔵しており、ベルト対602を介してローラ603に押し付けられて湾曲変形しているシートPの領域を加熱する加熱手段を兼ねている加熱ローラである。
【0040】
ここでは、上ベルト611と下ベルト612の各ベルト面が対向(対面)する領域内において、ローラ603Aとローラ603Bとを交互に配置している。
【0041】
そして、ベルト対602の下ベルト612側をローラ603Aの周面603a(図3参照)に押し付けることで、ベルト対602は上方に凸形状となるように湾曲変形される。また、ベルト対602の上ベルト611側をローラ603Bの周面603aに押し付けることで、ベルト対602は方に凸形状となるように湾曲変形される。
【0042】
つまり、シートPの搬送方向において、シートPの一面側が凸形状になる方向に湾曲変形させるローラ603Aと、シートPの他面側が凸形状になる方向に湾曲変形させるローラ603Bとが交互に配置されている。なお、ローラ603Bを最上流側にしてローラ603Aとローラ603Bとを交互に配置することもできる。
【0043】
そして、ローラ603の周面(曲面)に対向し、ベルト対602をローラ603の周面に押し付ける押し付け手段を構成するローラ状の第1押し付け部材606と、同じくローラ状の第2押し付け部材607とが搬送方向Pに沿って配置されている。ここで、相対的に、第1押し付け部材606は搬送方向Pの上流側に配置され、第2押し付け部材607は搬送方向Pの下流側に配置されている。
【0044】
第1押し付け部材606は、ベルト対602がローラ603の周面603aに接触を開始する押し付け開始位置(巻き付け開始位置)を決めている。第2押し付け部材607は、ベルト対602がローラ603の周面603aから離間する押し付け終了位置(巻き付け終了位置)を決めている。
【0045】
ここで、搬送方向Yで隣り合う曲面部材(ローラ603)の内の、上流側のローラ603に対向する第2押し付け部材607と下流側のローラ603に対向する第1押し付け部材606部材との間は離れている。また、上流側のローラ603と下流側のローラ603は、上流側の第2押し付け部材607と下流側の第1押し付け部材606との間でベルト対602が湾曲しない状態になる間隔で配置されている。
【0046】
これにより、ローラ603の周面に倣って一旦湾曲したベルト対602の応力を解放することができ、次段のローラ603に対する密着性を向上することができる。
【0047】
なお、第1押し付け部材606及び第2押し付け部材607は、ローラ603の周面に対して進退可能(移動可能)に配置されている。これにより、シートPの厚み(種類)、液体付与量などに応じて、ベルト対602のローラ603の周面への巻き付け角θを変化させることができる。
【0048】
次に、本実施形態の作用について図4も参照して説明する。図4はローラ部分の斜視説明図であり、ベルト対は透過状態で示している。
【0049】
図4に示すように、シートPにコックリング(波打ち)Cが残った状態であるとき、シートPを押し付けローラ603の周面603aなどの湾曲面に張力をかけながら巻き付けると、巻き付いている間は、波打ちが消える。これは、液体が付与されて膨潤している部分と液体が付与されていない部分のシートPの長さを強制的に同じ長さにできるためである。
【0050】
しかしながら、湾曲面に張力をかけながら巻き付けただけでは、張力がなくなると波打ちが元に戻り矯正されない。
【0051】
そこで、シートPを加熱手段で加熱してシートP内の水分を飛ばしながらしごくことで、液体が付与された部分と液体が付与されていない部分の長さを同じにでき、シートPのコックリングなどの波打ち変形を矯正することができる。
【0052】
つまり、図3に示すように、シートPを2つの上ベルト611と下ベルト612との間に挟み持ち、この状態で、ベルト対602を加熱ローラであるローラ603の周面603aに押し付けることで、ベルト対602はシートPを挟持したまま湾曲状に変形される。
【0053】
このとき、上ベルト611及び下ベルト612には、テンションローラ623A、623Bによって、加熱ローラである押し付けローラ603の周面603aに押し付けられる方向(図3で矢印B方向)に力が加わるように張力が付与されている。
【0054】
そして、上ベルト611と下ベルト612に挟まれたシートPには、上ベルト611及び下ベルト612とシートPとの間の摩擦力によって矢印B方向に張力がかかっている状態で、加熱ローラであるローラ603の周面603a(湾曲面)に押し付けられる。
【0055】
これにより、シートPはローラ603によって加熱され、ローラ603の周面603aに倣うことによって、液体が付与された部分と液体が付与されていない部分の長さが同じになってシートPのコックリングなどの波打ち変形が矯正される。
【0056】
このように、シートPを加熱した状態で、シートPに張力を付与しながら曲面部材(本実施形態ではローラ)に押し付けて湾曲変形させることで、効率的にシートの変形を矯正することができる。
【0057】
そして、本実施形態では、図2に示すように、上ベルト611と下ベルト612が対向する領域(シートPを挟み持つ領域)に接触し、搬送方向Pに沿って、複数の曲面部材としての加熱ローラであるローラ603(603A、603B)を配置している。
【0058】
つまり、前述したように、シートPを加熱手段で加熱してシートP内の水分を飛ばしながらしごくことで、液体が付与された部分と液体が付与されていない部分の長さを同じにでき、シートPのコックリングなどの波打ち変形を矯正することができる。
【0059】
この場合、1つの曲面部材(ローラ)の周面に大きな巻き付け角度で巻き付けるよりも、複数の曲面部材(ローラ)に小さな巻き付け角で複数回巻き付ける方が、矯正効果が大きくなる。
【0060】
例えば、φ80のローラにシートPを1回で90度の巻き付け角θで巻きつけた場合よりも、30度の巻き付け角θによる巻きつけを3回行った場合の方が、シートPの変形に対する矯正効果が大きくなる。
【0061】
そして、本実施形態では、ベルト対602を上方に凸形状となるように湾曲させるローラ603Aと、ベルト対602を下方に凸形状となるように湾曲させるローラ603Bとを交互に配置している。
【0062】
これによって、シートPは上下方向に交互に凸形状になるように両面がローラ603に押し付けられるので、カールの発生を抑制しながら、より確実にシートの変形(コックリング)を矯正することができる。
【0063】
次に、本発明の第2実施形態に係るシート矯正装置について図5及び図6を参照して説明する。図5は同シート矯正装置の側面説明図、図6は同じく曲面部材部分の説明図である。
【0064】
本実施形態では、ベルト対602がシートPを挟み持つ領域でベルト対602のベルト611又は612に接触する湾曲面633aを有する、断面が略半円形状の複数の湾曲面部材633(633A、633B)を配置している。湾曲面部材633は、発熱手段としてのヒータ部634を有しており、シートPを加熱する加熱手段を兼ねている。
【0065】
本実施形態においても、ベルト対602の上ベルト611と下ベルト612の各ベルト面が対向(対面)してシートPを挟み持つ領域で、上ベルト611又は下ベルト612に接触する湾曲面部材633Aと湾曲面部材633Bとを交互に配置している。
【0066】
そして、ベルト対602の下ベルト612側を湾曲面部材633Aの湾曲面633aに押し付けることで、ベルト対602は上方に凸形状になる方向に湾曲変形される。また、ベルト対602の上ベルト611側を湾曲面部材633Bの湾曲面633aに押し付けることで、ベルト対602は下方に凸形状となる方向に湾曲変形される。
【0067】
つまり、シートPの搬送方向において、シートPの一面側が凸形状になるように湾曲変形させる湾曲面部材633Aと、シートPの他面側が凸形状になる方向に湾曲変形させる湾曲面部材633Bとが交互に配置されている。なお、湾曲面部材633Bを最上流側にして湾曲面部材633Aと湾曲面部材633Bとを交互に配置することもできる。
【0068】
そして、本実施形態でも、押し付け手段を構成する第1押し付け部材606と、第2押し付け部材607とが搬送方向Pに沿って配置されている。
【0069】
第1押し付け部材606は、ベルト対602が湾曲面部材633の湾曲面633aに接触を開始する押し付け開始位置(巻き付け開始位置)を決めている。第2押し付け部材607は、ベルト対602が湾曲面部材633の湾曲面633aから離間する押し付け終了位置(巻き付け終了位置)を決めている。
【0070】
ここで、搬送方向Yで隣り合う湾曲面部材633、633の内の、上流側の湾曲面部材633に対向する第2押し付け部材607と下流側の湾曲面部材633に対向する第1押し付け部材606部材との間は離れている。また、上流側の湾曲面部材633と下流側の湾曲面部材633は、上流側の第2押し付け部材607と下流側の第1押し付け部材606との間でベルト対602が湾曲しない状態になる間隔で配置されている。
【0071】
これにより、湾曲面部材633の湾曲面633aに倣うことで一旦湾曲したベルト対602の応力を解放することができ、次段の湾曲面部材633に対する密着性を向上することができ。
【0072】
また、前記第1実施形態と同様の押し付けローラ606、607を湾曲面部材633に対向して移動可能に配置している。
【0073】
本実施形態の構成においても、図6に示すように、上ベルト611と下ベルト612に挟まれたシートPには、上ベルト611及び下ベルト612とシートPとの間の摩擦力によって矢印B方向に張力がかかっている状態で、加熱手段を兼ねる湾曲面部材633の湾曲面633aに押し付けられる。
【0074】
これにより、シートPは湾曲面部材633によって加熱され、湾曲面部材633の湾曲面633aに倣うことによって、液体が付与された部分と液体が付与されていない部分の長さが同じになってシートPのコックリングなどの波打ち変形が矯正される。
【0075】
次に、本発明の第3実施形態に係るシート矯正装置について図7を参照して説明する。図7は同シート矯正装置の曲面部材部分の説明図である。
【0076】
本実施形態では、曲面部材643は、シートPの搬送方向に並べて配置された複数本の接触部材646に分割され、各接触部材646の頂点を仮想的に結ぶことで曲面が形成されている。
【0077】
そして、複数本の接触部材646は、基台645上に保持されている。複数本の接触部材646の基台645からの高さは、搬送方向Yにおいて、中央部側の接触部材646の先端部646aが両側の接触部材646の先端部646aよりも突出している。
【0078】
ここでは、5本の接触部材646を配置しているので、搬送方向Yの中央位置の接触部材646を起点として、上流側に行くに従って接触部材646の高さが低くなり、下流側に行くに従って接触部材646の高さが低くなるようにしている。
【0079】
また、曲面部材643は、例えば基台645側に発熱手段644としてのヒータを備え、あるいは、接触部材646内にヒータを内蔵し、シートPを加熱する加熱手段を兼ねている。
【0080】
本実施形態においても、図7に示すように、上ベルト611と下ベルト612に挟まれたシートPには、上ベルト611及び下ベルト612とシートPとの間の摩擦力によって矢印B方向に張力がかかっている状態で、加熱手段を兼ねる曲面部材643の全体として湾曲形状を形成している複数本の接触部材646に押し付けられる。
【0081】
これによって、シートPは曲面部材643によって加熱され、複数本の接触部材646で構成される湾曲形状に倣うことによって、液体が付与された部分と液体が付与されていない部分の長さが同じになってシートPのコックリングなどの波打ち変形が矯正される。
【0082】
そして、この曲面部材643を、前記第1、第2実施形態と同様に、搬送方向Yに沿って、複数並べて配置することで、より矯正効果を高めることができる。
【0083】
なお、接触部材646に先端部646aには例えば回転部材を回転可能に設けることでき、これにより、各接触部材646のベルト対602との間の摩擦抵抗を減らし、ベルト対602を湾曲させた状態で滑らかに移動することができる。
【0084】
次に、本発明の第4実施形態に係るシート矯正装置について図8を参照して説明する。図8は同シート矯正装置の側面説明図である。
【0085】
本実施形態では、前記第1実施形態の従動ローラ624A、624Bに代えて、加熱ローラ654A、654Bを配置し、上ベルト611と下ベルト612とでシートPを挟む箇所よりも搬送方向上流側でシートPを加熱する。
【0086】
そして、曲面部材としては、加熱手段を備えていないローラ653(653A、653B)を配置している。
【0087】
このように構成することで、加熱ローラ654A、654Bによって上ベルト611と下ベルト612がそれぞれ加熱され、上ベルト611と下ベルト612とは加熱された状態でシートPを挟み持つ。これにより、シートPは上ベルト611と下ベルト612によって加熱された状態になってベルト対602を介してローラ603に押し付けられる。
【0088】
つまり、シートPをローラ653に押し付けて矯正を行うとき、シートPの高温状態が維持されていれば、ローラ653でベルト対602を湾曲変形させている部分を直接加熱する必要はない。そこで、本実施形態では、上ベルト611と下ベルト612とでシートPを挟む箇所よりも搬送方向上流側でベルト対602を加熱して、加熱したベルト対602でシートPを加熱する構成としている。
【0089】
これによって、曲面部材(矯正部)を増やしても、加熱手段は増やさずに矯正機能を高めることができる。また、厚紙対応時に加熱手段(例えばヒータ)のケーブルを一緒に動かす必要がなくなる。
【0090】
次に、各実施形態におけるベルト対の異なる例について図9を参照して説明する。図9は同ベルト対の曲面部材部分における斜視説明図である。
【0091】
図9(a)に示すベルト対602を構成する上ベルト611、下ベルト612は、シートPの全面を被覆することができる全面ベルトである。図9(b)に示すベルト対602を構成する上ベルト611、下ベルト612は、メッシュベルトである。図9(c)に示すベルト対602を構成する上ベルト611、下ベルト612は、搬送方向と直交する方向において複数に分割された分割ベルトである。
【0092】
ベルト対602を構成する上ベルト611、下ベルト612としては、図9(a)~(c)のいずれのベルトでもよい。
【0093】
ベルト対602を構成する上ベルト611、下ベルト612を、図9(b)のメッシュベルト、或いは、図9(c)の分割ベルトで構成した場合には、シートPに付着した液体を加熱することでシートP中の水分が蒸発するとき、蒸気がメッシュベルトのメッシュの隙間、分割ベルトのベルト間の隙間から逃げるため、図9(a)の全面ベルトに比べて、シートPの加熱効果が高くなる。
【0094】
次に、ベルト対602のステアリングコントロールについて図10を参照して説明する。図10は同説明に供する斜視説明図である。
【0095】
ステアリングコントロールローラ622はブラケット628に回転可能に保持されている。ブラケット628はステアリングコントロールローラ622の軸方向の中央部(端部でもよい。)を回転軸629にて回転可能に保持されている。
【0096】
そして、ベルト対602の位置を検出してステアリングコントロールローラ622の角度を変えることによって、ベルト対602の搬送方向を変更する。
【0097】
次に、各実施形態における押し付け部材のユニット化について図11を参照して説明する。図11は同説明に供する曲面部材近傍の説明図である。
【0098】
曲面部材であるローラ603(或いは湾曲面部材633)に対向する第1押し付け部材606と第2押し付け部材607は、例えば、ホルダ部材608に回転可能に保持して押し付け部材ユニット609としている。
【0099】
このように、第1押し付け部材と第2押し付け部材とをユニット化することで、第1押し付け部材606及び第2押し付け部材607をローラ603(或いは湾曲面部材633)に対して進退可能とするとき、進退機構の構成が簡単になる。
【0100】
次に、押し付け部材の他の例について図12を参照して説明する。図12は同説明に供する曲面部材近傍の説明図である。
【0101】
ここでは、断面が半円形状の第1押し付け部材606、第2押し付け部材607を使用している。
【0102】
このように、第1押し付け部材及び第2押し付け部材は、ローラ状に限るものではなく、また、第1押し付け部材及び第2押し付け部材のいずれか一方をローラ状とし、他方を半円形状の部材とすることもできる。
【0103】
なお、上記各実施形態においては、シート矯正装置は、シートを水平方向(横方向)に搬送する例で説明しているが、縦方向に搬送する構成としたり、斜めに搬送する構成としたりすることもできる。
【符号の説明】
【0104】
1 印刷装置
100 搬入部
200 印刷部
300 乾燥部
301 乾燥機構部
302 吸引搬送機構部
400 排出部
600 シート矯正部
P シート
601 シート矯正装置
602 ベルト対
603、603A、603B ローラ(曲面部材)
604 ヒータ
606 第1押し付け部材
607 第2押し付け部材
611 上ベルト
612 下ベルト
621A、621B 搬送ローラ
623A、623B テンションローラ
633、633A、633B 湾曲面部材
634 ヒータ部
643 曲面部材
644 ヒータ部
646 接触部材
654A、654B 加熱ローラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12