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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】画像処理装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/525 20060101AFI20220809BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20220809BHJP
   G03G 15/01 20060101ALI20220809BHJP
   H04N 1/401 20060101ALI20220809BHJP
   H04N 1/405 20060101ALI20220809BHJP
   H04N 1/407 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
B41J2/525
G03G15/00 303
G03G15/01 J
G03G15/01 S
H04N1/401
H04N1/405
H04N1/405 510A
H04N1/407 780
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018182956
(22)【出願日】2018-09-27
(65)【公開番号】P2020049855
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】杉山 孝之
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-094484(JP,A)
【文献】特開2014-136413(JP,A)
【文献】特開2013-154593(JP,A)
【文献】特開2006-173977(JP,A)
【文献】特開2017-217891(JP,A)
【文献】特開2017-138518(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/525
G03G 15/00
G03G 15/01
H04N 1/401
H04N 1/405
H04N 1/407
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体上に特色の色材を用いて形成された画像に関する分光反射率情報を取得し、取得した前記分光反射率情報に基づいて、複数の測色情報を算出する算出部と、
前記算出部が算出した前記複数の測色情報から、1つの測色情報を決定する決定部と、
前記決定部により決定された前記測色情報に基づいて、特色の色材の階調特性の補正を行う際に使用する階調パラメータを生成するパラメータ生成部と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記算出が算出する複数の前記測色情報は、それぞれ複数の値を有しており、
前記決定部は、前記算出部が算出した前記複数の測色情報のそれぞれについて、前記測色情報の最小値と最大値に基づいた評価値を算出し、算出した前記評価値に基づいて1つの測色情報を決定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記決定部は、前記算出部が算出した前記複数の測色情報のそれぞれに設定された係数を用いて評価値の算出を行う、
ことを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記算出部が算出した前記複数の測色情報が、少なくとも、L*a*b*色空間、XYZ色空間、分光反射率のいずれかを含む、
ことを特徴とする請求項1ないし3の何れか一項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
記算出部が算出することが可能な前記複数の測色情報の一覧を表示する表示部をさらに有し、当該表示部に表示させた前記複数の測色情報の一覧からユーザに前記算出部が算出する測色情報を選択させる
ことを特徴とする請求項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記算出部が算出することが可能な前記複数の測色情報の一覧からユーザにより選択された前記測色情報には、濃度が含まれない、
ことを特徴とする請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
画像処理装置を制御するコンピュータに、
記録媒体上に特色の色材により形成された画像に関する分光反射率情報を取得し、取得した前記分光反射率情報に基づいて、複数の測色情報を算出する算出機能と、
前記算出機能が算出した前記複数の測色情報から、1つの測色情報を決定する決定機能と、
前記決定機能により決定された前記測色情報に基づいて、特色の色材の階調補正を行う際に使用する階調パラメータを生成する生成機能と、
を実現させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在では、画像形成装置においてC(シアン)色、M(マゼンタ)色、Y(イエロー)色、K(ブラック)色であるプロセスカラーに相当する色材に加え、クリアや蛍光ピンク、メタリックなどの特色の色材を搭載し、記録媒体上に画像を形成する画像形成装置が知られている。
【0003】
一方、階調特性の経時変化による記録媒体上に形成した画像の品質の変化を抑制するために、階調特性を変化させる要因と階調特性の変化との関係を予め関連付けておき、画像形成時に画像データの濃度を補正する濃度キャリブレーション技術が存在する(特許文献1)。
【0004】
従来では、記録媒体上に形成されたチャートを分光測色計で読み取り、読み取り結果として取得される分光反射率情報から濃度値に変換することで階調特性の測定を行っていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の濃度キャリブレーション技術では、予め階調特性を測定している特色の色材について濃度キャリブレーションを行うことはできるが、予め階調特性を測定していない特色の色材については、適切な濃度キャリブレーションを行うことができない。
【0006】
また、蛍光色やメタリック色など、CMYK色と異なり、蛍光成分や光の乱反射の影響で濃度と階調特性の変化に因果関係が薄い色材があるため、従来のように、分光反射率情報から濃度値のみを求め、濃度キャリブレーションを行う方法では、適切な濃度キャリブレーションを行うことが難しい。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、多種多様な記録媒体や色材に対する濃度キャリブレーションを可能にする画像処理装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、記録媒体上に特色の色材を用いて形成された画像に関する分光反射率情報を取得し、取得した前記分光反射率情報に基づいて、複数の測色情報を算出する算出部と、前記算出部が算出した前記複数の測色情報から、1つの測色情報を決定する決定部と、前記決定部により決定された前記測色情報に基づいて、特色の色材の階調特性の補正を行う際に使用する階調パラメータを生成するパラメータ生成部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、多種多様な記録媒体や色材に対する濃度キャリブレーションを行うことができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施の形態にかかる画像処理システムの一例を示す図である。
図2図2は、DFEのハードウェア構成の一例を示す図である。
図3図3は、DFEのCPUの機能を示すブロック図である。
図4図4は、特色色材階調パラメータ生成部の機能ブロックを示す図である。
図5図5は、分光測色計で測定する専用のチャートの一例を示す図である。
図6図6は、測色情報算出部で行う処理の詳細を説明する図である。
図7図7は、分光反射率情報の一例を示す図である。
図8図8は、測色情報算出部が算出した測色情報の一例を示す図である。
図9図9は、利用測色情報決定部の機能ブロックを示す図である。
図10図10は、測定情報それぞれの評価係数のテーブルの一例を示す図である。
図11図11は、利用情報決定部が算出した測色情報ごとの評価値の一例を示す図である。
図12図12は、補正ターゲット生成部が備える機能ブロックを示す図である。
図13図13は、基準ターゲット形状情報の一例を示す図である。
図14図14は、基準ターゲット形状情報が示す具体的な形状の一例を示す図である。
図15図15は、非正規化処理後の基準ターゲット形状情報の一例を示す図である。
図16図16は、非正規化処理後の基準ターゲット形状情報が示す具体的な形状の一例を示す図である。
図17図17は、補正パラメータ生成部が備える機能ブロックを示す図である。
図18図18は、補正パラメータ生成部で生成した階調補正パラメータ情報の一例を示す図である。
図19図19は、階調補正パラメータ情報の生成処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照して、画像処理装置及びプログラムの実施の形態を詳細に説明する。以下では、画像形成装置について、電子写真方式の画像形成装置を例に挙げて説明するが、これに限られず、インクジェット方式の画像形成装置でもよい。
【0012】
(実施の形態)
[画像処理システムの構成の説明]
図1は、実施の形態にかかる画像処理システム100の一例を示す図である。図1に示すように、画像処理システム100は、コンピュータ200、DFE(Digital Front End)300と、画像形成装置400と、分光測色計500とを備えている。
【0013】
コンピュータ200は、ユーザが画像形成装置400で実行する画像データを含む印刷ジョブを作成する装置であり、作成された印刷ジョブをDFE300へ送信する。
【0014】
DFE300は、本発明における画像処理装置の一例であり、コンピュータ200から受信した印刷ジョブに基づいて、画像形成装置400が画像形成を行う際に使用する描画データ(ラスターデータ)を生成するRIP(Raster Image Processer)エンジンを備えている。DFE300は、生成した描画データを画像形成装置400へ送信する。
【0015】
画像形成装置400は、DFE300から受信した描画データに基づいて、記録媒体上に画像形成を行う。画像形成装置400は、C(シアン)色、M(マゼンタ)色、Y(イエロー)色、K(ブラック)色であるCMYKのプロセスカラーに相当する色材に加え、クリア、ホワイト、蛍光ピンク、メタリックなどの特色の色材を搭載し、記録媒体上に画像形成を行う。
【0016】
分光測色計500は、画像形成装置400が記録媒体上に形成した画像を読み取り、分光反射率を示す分光反射率情報を取得し、DFE300へ送信する。なお、本実施の形態では、分光測色計500がDFE300に接続されているが、これに限られず、コンピュータ200に接続されていてもよいし、画像形成装置400に接続されていてもよい。
【0017】
概略的には、画像形成装置400が特色の色材を用いて専用のチャート600(図5参照)を印刷し、DFE300が印刷された専用のチャート600を測定して得られた分光反射率情報を分光測色計500から受け取る。
【0018】
なお、本実施の形態では、DFE300と画像形成装置400が異なる装置として示されているが、これに限られず、画像形成装置400がDFE300の機能を備えていてもよいし、画像形成装置400がDFE300の機能を備えていてもよい。例えばコンピュータ200がDFE300の機能を備えている場合、DFE300の機能に相当する構成を画像処理装置として解することができる。また、コンピュータ200と画像形成装置400でDFE300の機能を分担して備えていてもよい。
【0019】
次に、DFE300のハードウェア構成について説明する。
【0020】
図2は、DFE300のハードウェア構成の一例を示す図である。図2に示すように、DFE300は、制御主体となるCPU(Central Processing Unit)301を備えている。DFE300は、ROM(Read Only Memory)302、RAM(Random Access Memory)303、HDD(Hard Disk Drive)304、SSD(Solid State Drive)305、I/F306、液晶ディスプレイ(LCD)307、操作部308を備えており、各部がCPU301にバス309を介して接続されている。
【0021】
CPU301は、RAM303を作業領域として使用し、ROM302、HDD304、SSD305等に格納されているプログラムを実行することで、画像形成装置400の制御や画像処理を実現する。
【0022】
HDD304、SSD305は、コンピュータ200から送られてくる印刷ジョブや、分光測色計500から受け取った分光反射率の情報を格納する記憶部として機能する。また、CPU301が実行するプログラムを記憶していてもよい。
【0023】
I/F306は、CPU301やHDD304、SSD305などと、LCD307や操作部308を通信可能に接続している。
【0024】
LCD307は、ユーザに対して情報を出力する表示部の一例である。
【0025】
操作部308は、ユーザが、LCD307に表示された情報を選択する、または、DFE300の操作を行う際に使用するタッチパネルやキーボードまたはマウスなどの装置である。
【0026】
[DFEの機能構成の説明]
次に、DFE300のCPU301が、ROM302、HDD304、SSD305等に格納されているプログラムを実行することにより実現する機能について説明する。
【0027】
図3は、DFE300のCPU301の機能を示すブロック図である。DFE300は、印刷画像生成部401、階調補正部402、中間調処理部403、階調補正パラメータ生成部404、特色色材階調補正パラメータ生成部405、記憶手段406を備えている。
【0028】
印刷画像生成部401は、コンピュータ200から送られてくる印刷ジョブに含まれる画像データに基づいて、画像形成装置400が画像形成を行う際に使用する描画データを生成する。印刷画像生成部401は、生成した描画データを階調補正部402へ送信する。
【0029】
階調補正部402は、階調補正の際の狙いの階調特性(補正ターゲット情報)を生成し、印刷画像生成部401から受け取った描画データにおける階調値の補正を行う。階調値の補正を行うことで、画像形成装置が設置された環境の変化や特色の色材を使用することにより生じる階調特性の変化を補正することができる。階調補正部402は、階調補正の処理を行う際には、CMYKの色材については既知手法を用いて階調補正パラメータ生成部404により生成した階調補正パラメータを使用する。階調補正部402は、特色の色材については、後述する特色色材階調補正パラメータ生成部405が生成したデータを使用する。階調補正部402は、補正後の描画データを中間調処理部403へ送信する。
【0030】
中間調処理部403は、階調補正部402から受け取った補正後の描画データに基づいて、画像形成装置400に適した形式にスクリーン処理を行う。中間調処理部403は、スクリーン処理が行われた描画データを画像形成装置400へ送信する。
【0031】
次に、図4を用いて、特色色材階調補正パラメータ生成部405が備える機能について説明する。
【0032】
図4は、特色色材階調補正パラメータ生成部405の機能ブロックを示す図である。特色色材階調補正パラメータ生成部405は、測色情報算出部501と、利用測色情報決定部502と、補正ターゲット生成部503と、補正パラメータ生成部504と、を備えている。
【0033】
測色情報算出部501は、算出部の一例であり、画像形成装置400における特色の色材の階調特性を取得する。測色情報算出部501は、分光測色計500から受け取った分光反射率情報から、測色情報ごとの測定値を計算し、利用測色情報決定部502と補正パラメータ生成部504へ送信する。測色情報算出部501の詳細については後述する。
【0034】
また、測色情報算出部501が、専用のチャート600を印刷した際の記録媒体と特色の色材の組み合わせについて、以前にキャリブレーションを行っているかどうかを判断してもよいし、ユーザによってコンピュータ200又は画像形成装置400の図示しない操作部から以前にキャリブレーションを行っている組み合わせかどうかを入力させてもよい。
【0035】
例えば、記憶手段406は、階調補正部402において以前に生成した補正ターゲット情報(階調補正の際の狙いの階調特性)をHDD304やSSD305に記憶しておく。測色情報算出部501が、専用のチャート600を印刷した際の記録媒体と特色の色材の組み合わせについて、以前にキャリブレーションを行っている(測色情報を算出したことがある)と判断した場合、後述の補正ターゲット生成部503は、以前に生成した補正ターゲット情報を、記憶手段406にHDD304やSSD305から読み出させて取得することができる。
【0036】
図5は、分光測色計500で測定する専用のチャート600の一例を示す図である。図5に示すチャート600は、特色の色材の階調補正に使用される専用のチャートである。この専用のチャート600には、特色の色材単色について、記録媒体上における色材の積載量が単位面積当たり0%~100%までの複数のパッチが存在している。なお、この専用のチャート600は、特色の色材の中間階調の特性が把握できるのであればパッチ数や配置に指定はないが、記録媒体と特色の色材の情報を取得するために、色材が全く載っていない0%と、色材をベタで載せた100%のパッチを含んでいることが好ましい。例えば、色材の積載量が0%のパッチは階調値「0」に対応しており、積載量が100%のパッチは階調値「255」に対応している。専用のチャート600から読み取った分光反射率の情報は、チャート600上のパッチの階調値の最小値と最小値の差が大きいほど、本実施の形態のDFE300における階調補正の精度が良くなる。
【0037】
なお、本実施の形態では、階調値を0から255までの値としているがこれに限られず、濃度を表す値であればよく、0から1024までの値でもよい。その場合、濃度を表す値のうち、最も小さい値に積載量「0%」のパッチが対応し、最も大きい値に積載量「100%」のパッチが対応する。最小値と最大値の間の値は、それぞれ0から100%の間のパッチに適宜対応していればよい。
【0038】
次に、測色情報算出部501が備える機能について説明する。
【0039】
図6は、測色情報算出部501が備える機能ブロックを示す図である。測色情報算出部501は、測色情報受信部601と、測色情報演算部602と、を備えている。
【0040】
測色情報受信部601は、分光測色計500で測定した専用のチャート600の測定結果である分光反射率情報を受信する。または、分光測色計500で測定した分光反射率情報に相当する測定データを、ユーザがコンピュータ200を使用してDFE300に入力してもよい。
【0041】
図7は、分光反射率情報の一例を示す図である。図7に示すように、各階調値に対する分光反射率は、チャート600を測定する際の光の波長によって異なるものとなっている。
【0042】
測色情報演算部602は、測色情報受信部601が受信した分光反射率情報又は測定データに基づいて複数の測色情報を算出し、利用測色情報決定部502へ送信する。
【0043】
図8は、測色情報演算部602が算出した測色情報の一例を示す図である。ここで、測色情報とは、図8中のL*a*b*色空間、XYZ色空間や分光反射率などの分光反射率情報から算出する項目である。測色情報は、チャート600を読み取った際の濃度情報や、L*a*b*色空間、XYZ色空間といった色空間情報に加え、記録媒体そのものが有する色(記録媒体色)とチャート600との色差ΔEや彩度差ΔCといった相対色情報を含む。
【0044】
なお、測色情報演算部602が算出することが可能な複数の測色情報の一覧をLCD307に表示させ、ユーザに算出する測色情報を選択させてもよい。また、測色情報演算部602が算出することが可能な複数の測色情報の一覧をLCD307に表示させ、ユーザによって算出する項目を削除させてもよい。例えば、蛍光色やメタリック色の濃度キャリブレーションを行う場合は、濃度キャリブレーションに濃度の測色情報を用いることは好ましくないため、あらかじめ濃度の項目を削除する、または、濃度以外の項目を選択させるようにしてもよい。
【0045】
次に、利用測色情報決定部502について説明する。
【0046】
利用測色情報決定部502は、決定部の一例であり、専用のチャート600を印刷した種類の記録媒体と専用のチャート600の印刷に使用した特色の色材の組み合わせから、その組み合わせにおいて階調補正の際に使用する測色情報を決定する。利用測色情報決定部502は、記録媒体の種類、特色の色材、決定した測色情報を補正ターゲット生成部503へ送る。
【0047】
次に、利用測色情報決定部502が備える機能について説明する。
【0048】
図9は、利用測色情報決定部502の機能ブロックを示す図である。利用測色情報決定部502は、ダイナミックレンジ算出部901と、利用測色情報選択部902と、を備えている。
【0049】
ダイナミックレンジ算出部901は、測色情報算出部501から受け取った測色情報について、色材の積載量が0%のチャートの測定値と、100%のチャートの測定値の差の絶対値であるダイナミックレンジを算出する。ダイナミックレンジ算出部901は、算出したダイナミックレンジを利用測色情報選択部902へ送信する。
【0050】
利用測色情報選択部902は、ダイナミックレンジ算出部901から受け取った複数の測色情報のそれぞれについて評価値の算出を行う。
【0051】
なお、本実施の形態では、説明のため測色情報算出部501が分光反射率情報から算出した値も測色情報としている。しかし、上述した評価値の算出方法では、測色情報ごとに数値の尺度が異なるため、適切な評価値の比較を行うことができない。
【0052】
そこで、測色情報ごとに算出した評価値を適切に比較するために、本実施の形態では、測色情報ごとに評価係数Nを設定し、下記の式により評価値Dを算出する。
【0053】
D=|V100-V0|/N ・・・(1)
V100:色材の積載量が100%のパッチに対応する測定値
V0:色材の積載量が0%のパッチに対応する測定値
N:評価係数
【0054】
上記の式(1)を用いて評価値Dを算出することで、数値の尺度が異なる測色情報について、適切に評価値を比較することができる。
【0055】
図10は、測定情報それぞれの評価係数Nのテーブルの一例を示す図である。本実施の形態では、測色情報ごとにとりうる最大のダイナミックレンジを想定して設定されている。例えば、L*であれば、理論上の数値の幅は0~100であるため、評価係数Nが100に設定されている。
【0056】
この評価係数Nは、テーブルとしてHDD304やSSD305に記憶されていてもよい。その場合、評価値を算出する際に、利用測色情報選択部902は記憶手段406へ図10のテーブルを送信するように要求し、記憶手段406がHDD304やSSD305からテーブルを読み出し利用測色情報選択部902へ送信する。これに限られず、ユーザがコンピュータから評価係数Nを入力してもよいし、画像形成装置400の図示しない操作部から入力してもよい。
【0057】
図11は、利用測色情報選択部902が算出した測色情報ごとの評価値の一例を示す図である。利用測色情報選択部902は、図11に示す算出した評価値に基づいて、評価値の高い測色情報を選択し、選択した測色情報を補正ターゲット生成部503へ送信する。図11において評価値が高い測色情報ほど、測定値の変化が大きいことを示しており、測定値の変化が大きいほど濃度キャリブレーションを行うための階調パラメータを適切に算出することができる。そのため、本実施の形態では、利用測色情報選択部902は、もっとも評価値の高い測色情報を選択している。本実施の形態の場合、a*の値がもっとも大きいため、利用測色情報選択部902は、a*を選択する。
【0058】
なお、これに限られず、利用測色情報選択部902は、評価値の一覧をLCD307に表示させユーザに測色情報を選択させてもよい。
【0059】
次に、補正ターゲット生成部503について説明する。
【0060】
補正ターゲット生成部503は、ターゲット生成部の一例であり、利用測色情報決定部502から受け取った測色情報(本実施の形態の例ではa*である。以降、a*とする。)に基づいて、階調補正部402が階調補正の際の狙いの階調特性となる補正ターゲット情報を生成する。補正ターゲット情報を生成する際には、記憶手段406がHDD304又はSSD305に記憶されている階調特性の基準となる基準ターゲットの形状の情報である基準ターゲット形状情報を読み出し、補正ターゲット生成部503へ送信する。補正ターゲット生成部503は、記憶手段406から受け取った基準ターゲット情報を用いて補正ターゲット情報を生成する。補正ターゲット生成部503は、生成した補正ターゲット情報と記録媒体の種類、特色の色材の種類を記憶手段406と補正パラメータ生成部504へ送信する。
【0061】
次に、補正ターゲット生成部503が備える機能について説明する。
【0062】
図12は、補正ターゲット生成部503が備える機能ブロックを示す図である。補正ターゲット生成部503は、基準ターゲット形状取得部1201と、ターゲット補正部1202と、を備える。
【0063】
基準ターゲット形状取得部1201は、記憶手段406へ、a*に対応する基準ターゲット形状情報を要求する。記憶手段406は、HDD304またはSSD305から、測色情報に対応する基準ターゲット形状情報を読み出し、基準ターゲット形状取得部1201へ送信する。
【0064】
ここで、図13は基準ターゲット形状情報の一例を示す図、図14は基準ターゲット形状情報が示す具体的な形状の一例を示す図である。基準ターゲットは、図13に示すように、色材の積載量が0%のパッチに対応する値として0.000、色材の積載量が100%のパッチに対応する値として1.000の数値を持ち、その他の積載量に対して0.000~1.000の値の範囲で中間調の形状を現すテーブルである。また、基準ターゲット形状情報は、例えば色材の積載量が0%と100%のパッチを直線で結んだ様な“リニア形状(形状1)”や、リニア形状に比べ中間の階調値における数値がそれぞれ大きい“上に凸形状(形状2)”、リニア形状に比べ中間の階調値における数値がそれぞれ小さい“下に凸形状”といったパターンがHDD304やSSD305に記憶されており、テーブルには測色情報と基準ターゲット形状が対応付けられている。
【0065】
本実施の形態においては、測色情報に応じた基準ターゲットの形状を使用することで、後述する階調パラメータの生成を適切に行うことができる。これは、測色情報に応じて中間調の色再現性が異なるためである。
【0066】
なお、本実施の形態では、基準ターゲット形状取得部1201が、利用測色情報決定部502が決定した測色情報に対応する基準ターゲット形状情報を記憶手段406に要求し、記憶手段406から受け取っているが、測色情報に対応する基準ターゲット形状情報をユーザがコンピュータ200から入力してもよいし、画像形成装置400の図示しない操作部から入力してもよい。
【0067】
ターゲット補正部1202は、正規化されている基準ターゲット形状情報に対して、a*について、色材の積載量が単位面積当たり0%のパッチの測定値と色材の積載量が単位面積当たり100%の測定値を使用して、a*に対応する非正規化後の基準ターゲット形状情報(補正ターゲット情報)を生成する。この非正規化処理は、基準ターゲット形状情報の各数値に対して下記の式(2)で各階調の狙いとなる値を算出する。
【0068】
Tn=TSn(V100-V0)+V0 ・・・(2)
Tn:n階調目標の補正ターゲット情報の数値
V100:測色情報の色材の積載量が100%の測色値
V0:測色情報の色材の積載量が0%の測色値
TSn:基準ターゲット形状情報のうち、色材の積載量n%に対応する数値
【0069】
ターゲット補正部1202は、式(2)により算出した(補正ターゲット情報)の数値Tnを補正パラメータ生成部504と記憶手段406へ送信し、a*を、記憶手段406へ送信する。
【0070】
ここで、図15は非正規化処理後の基準ターゲット形状情報(補正ターゲット情報)の一例を示す図、図16は非正規化処理後の基準ターゲット形状情報(補正ターゲット情報)が示す具体的な形状の一例を示す図である。図15及び図16に示すように、図13に示した0.000~1.000の正規化されていた基準ターゲットが、図14でプロットした形状を保ちつつ、測色情報と同じダイナミックレンジをもつ補正ターゲットへと非正規化されている事が分かる。また、専用のチャート600に形成される各パッチの最小値と最大値の差が大きいほど、算出できる補正ターゲットの値が多くなり、後述の算出される補正パラメータの数が多くなるため、キャリブレーションの精度が向上する。
【0071】
次に、補正パラメータ生成部504について説明する。
【0072】
補正パラメータ生成部504は、パラメータ生成部の一例であり、測色情報算出部501から受け取った測色情報(a*)と、補正ターゲット生成部503から受け取った補正ターゲット情報と、に基づいて、画像形成装置400の特色の色材における階調特性が、補正ターゲット情報の形状と実質的に一致させる階調補正パラメータ情報(階調パラメータ)を生成する。補正パラメータ生成部504は、生成した階調補正パラメータ情報を記録媒体の種類、特色の色材の種類を記憶手段406へ送信する。
【0073】
次に、補正パラメータ生成部504について説明する。
【0074】
図17は、補正パラメータ生成部504が備える機能ブロックを示す図である。
【0075】
補正パラメータ生成部504は、測色情報(a*)と、補正ターゲット生成部503から受け取った補正ターゲット情報Tnから階調補正パラメータ情報を生成する。具体的には、図18を用いて説明する。
【0076】
図18は、階調補正パラメータ情報について説明する図である。
【0077】
図18(a)に示すグラフは、利用測色情報決定部502で決定されたa*と補正ターゲット情報Tnであり、右のグラフは最終的に生成される階調補正パラメータ情報である。図18(a)に示すグラフ中の矢印は階調補正パラメータ情報の生成過程を表しており、階調値「20」の補正ターゲット情報の値と同等の値を持つ測色上の階調値を関連付けている。図18(a)中では補正ターゲットの階調値「20」と同等の値を持つ測色情報の階調値は「37」となっている。つまり、補正ターゲット情報の階調値「20」の数値を実現するには、実際には「37」の入力値を画像形成装置400で印刷すればよいことがわかる。この対応情報を全階調値で計算すると、図18(b)に示すグラフのような階調補正パラメータ情報となる。
【0078】
なお、補正パラメータ生成部504は、測色情報、記録媒体の種類、特色の色材の種類の組み合わせが、以前に階調補正を行っている組み合わせであれば、記憶手段406にHDD304又はSSD305に記憶されている補正ターゲット情報を読み出させ補正パラメータ生成部504へ送信させることで、階調補正パラメータ情報を生成することができる。言い換えると、特色色材階調補正パラメータ生成部405は、記録媒体と特色の色材の組み合わせが新規の場合は、測色情報算出部501、利用測色情報決定部502、補正ターゲット生成部503、補正パラメータ生成部504の機能を利用して階調補正パラメータ情報を生成する。
【0079】
記憶手段406は、上述したように、HDD304やSSD305に記憶されている基準ターゲット形状情報を読み出し、補正ターゲット生成部503へ送信する他に、補正ターゲット生成部503から受け取った補正ターゲット情報、記録媒体の種類、特色の色材の種類、補正パラメータ生成部から受け取った階調補正パラメータ情報を対応付けてHDD304やSSD305に記憶させる。
【0080】
次に、本実施の形態にかかる画像処理装置であるDFE300が行う処理のうち特徴的な処理の流れについて説明する。図19は、階調補正パラメータ情報の生成処理の流れを示すフローチャートである。
【0081】
図19に示すように、S1901では、ユーザによって特色色材キャリブレーションが実行されると、DFE300の測色情報算出部501は、図5で示した測定用の専用のチャート600の画像データを画像形成装置400へと送信し、専用のチャート600を印刷させる。
【0082】
S1902では、DFE300の測色情報算出部501は、ユーザが分光測色計500の測色結果である分光反射率情報を受信する。
【0083】
S1903では、DFE300の測色情報算出部501は、受信した分光反射率情報を基に、L*a*b*、XYZなどの複数の測定情報を算出する。
【0084】
S1904では、DFE300の測色情報算出部501は、専用のチャート600を印刷した際の記録媒体の種類と特色の色材の種類の組み合わせに対して、以前にキャリブレーションを実行していたかどうかを判断する。DFE300の測色情報算出部501は、記録媒体の種類と特色の色材の種類の組み合わせに対して、以前にキャリブレーションを実行していたと判断した場合、すなわち、以前に補正ターゲットを作成済みと判断した場合(S1904のNo)、S1909へ進む。これに対して、DFE300の測色情報算出部501は、以前にキャリブレーションを実行していないと判断した場合、すなわち、補正ターゲットを新規に作成と判断した場合(S1904のYes)、S1905へ進む。
【0085】
S1905では、DFE300の利用測色情報決定部502が、測色情報算出部501が算出した各種測色情報から、評価値のもっとも大きい測色情報を決定する。
【0086】
S1906では、DFE300の補正ターゲット生成部503が、S1905で決定された測色情報に基づいて、キャリブレーションの際に使用する補正ターゲット情報を生成する。生成された補正パラメータ情報は、DFE300の記憶手段406により、HDD304またはSSD305に記憶される。
【0087】
S1907では、DFE300の補正パラメータ生成部504が、補正ターゲット情報に基づいて、階調補正パラメータ情報を生成する。
【0088】
S1908では、生成された階調補正パラメータ情報が、DFE300の記憶手段406により、HDD304またはSSD305に記憶される。
【0089】
一方、S1909では、DFE300の記憶手段406が、専用のチャート600を印刷した記録媒体の種類と特色の色材の種類に基づいて、HDD304またはSSD305から以前に生成した補正ターゲット情報を読み出し、補正パラメータ生成部504へ送信して、S1907に進む。
【0090】
このように本実施の形態によれば、予め階調特性を測定していなかった特色の色材や記録媒体に対して、分光反射率情報から濃度キャリブレーションに使用する適切な測色情報を決定することができるため、適切な濃度キャリブレーションを行うことができる。
【0091】
なお、本発明の各実施の形態の機能は、アセンブラ、C、C++、C#、Java(登録商標)等のレガシープログラミング言語やオブジェクト指向プログラミング言語等で記述されたコンピュータ実行可能なプログラムにより実現でき、各実施の形態の機能を実行するためのプログラムは、電気通信回線を通じて頒布することができる。
【0092】
また、本発明の各実施の形態の機能を実行するためのプログラムは、ROM、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable Read-Only Memory)、フラッシュメモリ、フレキシブルディスク、CD(Compact Disc)-ROM、CD-RW(Re-Writable)、DVD-ROM、DVD-RAM、DVD-RW、ブルーレイディスク、SDカード、MO(Magneto-Optical disc)等の装置可読な記録媒体に格納して頒布することもできる。
【0093】
さらに、本発明の各実施の形態の機能の一部または全部は、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブル・デバイス(PD)上に実装することができ、またはASICとして実装することができ、各実施の形態の機能をPD上に実現するためにPDにダウンロードする回路構成データ(ビットストリームデータ)、回路構成データを生成するためのHDL(Hardware Description Language)、VHDL(Very High Speed Integrated Circuits Hardware Description Language)、Verilog-HDL等により記述されたデータとして記録媒体により配布することができる。
【0094】
以上、本発明にかかる実施の形態について説明したが、本発明は、上述の実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上述の実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。たとえば、実施の形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0095】
300 画像処理装置
307 表示部
501 算出部
502 決定部
504 パラメータ生成部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0096】
【文献】特開2017-138518号公報
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