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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】定着装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20220809BHJP
【FI】
G03G15/20 515
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018202736
(22)【出願日】2018-10-29
(65)【公開番号】P2020071247
(43)【公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【弁理士】
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】吉浦 有信
【審査官】小池 俊次
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-111332(JP,A)
【文献】特開2009-288399(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端ベルト状に形成された回転可能な定着ベルトと、
前記定着ベルトの外周面に当接し、未定着トナー像が転写された記録媒体が挟持搬送されるニップ部を形成する加圧部材と、
前記定着ベルトの内側に配置され、該定着ベルトを加熱する熱源と、
前記加圧部材の長手方向に沿って前記定着ベルトの内側に配置され、該定着ベルトを介して前記加圧部材と当接して前記ニップ部を形成するニップ形成部材と、
潤滑剤を含有し、前記ニップ形成部材と前記定着ベルトとの間に配設される摺動部材と、
前記ニップ形成部材を支持する支持部材と、
前記熱源の輻射熱を反射する反射部材と、
前記熱源の輻射熱を少なくとも長手方向の両端部において遮光する遮光部材と、
前記定着ベルトを保持するベルト保持部材と、を備え、
前記定着ベルトの回転軸と平行な断面において、前記摺動部材の長手方向端部が、前記ベルト保持部材との間に所定の間隙を有するとともに、該端部の位置が前記遮光部材により遮光される位置に配置され
前記加圧部材の長手方向一方端部に駆動ギヤを備え、
前記定着ベルトの回転軸と平行な断面において、
前記摺動部材の長手方向の中央から端部までの長さが前記駆動ギヤを有する側と有しない側とで異なり、
前記駆動ギヤを有する側の前記摺動部材の長手方向の端部は、前記駆動ギヤを有しない側の前記摺動部材の長手方向の端部よりも中央からの距離が長いことを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記定着ベルトの回転軸と平行な断面において、
前記摺動部材の長さは前記ニップ形成部材よりも長く、
前記摺動部材の長手方向の端部は、前記ニップ形成部材の長手方向の端部よりも外側に位置することを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記定着ベルトの回転軸と平行な断面において、
前記摺動部材の長さは前記反射部材よりも短く、
前記摺動部材の長手方向の端部は、前記反射部材の長手方向の端部よりも内側に位置することを特徴とする請求項1または2に記載の定着装置。
【請求項4】
請求項1からのいずれかに記載の定着装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置では、電子写真記録・静電記録・磁気記録等の画像形成プロセスにより画像が形成され、画像転写方式または直接方式により未定着トナー画像が記録媒体(記録材シート、印刷紙、感光紙、静電記録紙等。以下、単に「用紙」ともいう)に形成される。未定着トナー画像を定着させるための定着装置としては、熱ローラ方式、フィルム加熱方式、電磁誘導加熱方式等の接触加熱方式の定着装置が広く採用されている。
このような定着装置の一例として、ベルト方式の定着装置(例えば、特許文献1参照)やセラミックヒータを用いたサーフ定着(フィルム定着)の定着装置(例えば、特許文献2参照)が知られている。
【0003】
ベルト方式の定着装置では、近年、さらなるウォームアップ時間(電源投入時など、常温状態から印刷可能な所定の温度(リロード温度)までに要する時間)や、ファーストプリント時間(印刷要求を受けた後、印刷準備を経て印字動作を行い排紙が完了するまでの時間)の短縮化が望まれている。
また、画像形成装置の高速化に伴い、単位時間あたりの通紙枚数が増え、必要熱量が増大しているため、特に連続印刷のはじめに熱量が不足する(所謂、温度落ち込み)が問題となっている。
【0004】
前者の問題を解決する方法として、セラミックヒータを用いたサーフ定着が提案されており、この方式により、ベルト方式の定着装置に比べ、低熱容量化、小型化が可能となったが、ニップ部のみを局所加熱しているため、その他の部分では加熱されておらず、ニップの用紙などの入口においてベルトは最も冷えた状態にあり、定着不良が発生しやすくなるという問題がある。特に、高速機においては(ベルトの回転が速く、ニップ部以外でのベルトの放熱が多くなるため)、より定着不良が発生しやすくなるという問題がある。
【0005】
上述の課題を解決するために、無端ベルトを用いる構成において、そのベルト全体を温めることを可能にし、加熱待機時からのファーストプリントタイムを短縮することができ、かつ高速回転時の熱量不足を解消して、高生産の画像形成装置に搭載されても、良好な定着性を得ることができるようにした定着装置が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
図1は特許文献3の定着装置の概略図である。
無端ベルト1の内部にパイプ状の金属熱伝導体2を、無端ベルト1の移動をガイドすることが可能に固定し、金属熱伝導体2内の熱源3により金属熱伝導体25を介して無端ベルト1を加熱する。さらに無端ベルト1を介して金属熱伝導体2に接してニップ部Nを形成する加圧ローラ4を備え、該加圧ローラ4の回転に連れ回りするようにして無端ベルト1を周方向に移動させる。この構成により、定着装置を構成する無端ベルト全体を温めることを可能にし、加熱待機時からのファーストプリントタイムを短縮することができ、かつ高速回転時の熱量不足を解消することが可能となっている。
【0006】
また、更なる省エネ性およびファーストプリントタイム向上のため、無端ベルトを金属熱伝導体を介して間接的に加熱する構成から、無端ベルトを(金属熱伝導体を介さずに)直接加熱する構成が考案されている。この構成では伝熱効率が大幅に向上させることにより消費電力を低減すると共に、加熱待機時からのファーストプリントタイムを更に短縮することが実現できる。また、金属熱伝導体レスによるコストダウンが可能となる。
【0007】
無端ベルトを直接加熱する構成では、無端ベルト内でニップ形成部材が内周面に接するように配置され、加圧部材(加圧ローラ)が無端ベルトをニップ形成部材に押し付け、無端ベルトとの間にニップ部を形成する。無端ベルトの内面が加圧部材からの加圧力によってニップ形成部材に対して圧接されながら摺動する構成では、駆動負荷が大きくなる傾向があり、経時で特に顕著となる。
【0008】
そこで、摺動性に優れた部材(摺動部材)をニップ形成部材に設け、さらに潤滑材によって摺動負荷を低減する構成が提案されている。
一般的に摺動部材としては、無端ベルトの耐久性を向上させるため、低摩擦特性の材料で構成される。また潤滑剤としては、摺動抵抗を低減させるため、低粘度の材料が使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、潤滑剤は流動性が高く、加圧部材で押圧されるニップ形成部において潤滑剤を保持することは困難である。潤滑剤が不足し始めると、部品磨耗が徐々に進行し、装置寿命の短縮につながる。特に、摺動部材の熱収縮によって、露出したニップ形成部材の端部がベルトとの当接部を傷つけ、破損を招くおそれがある。
【0010】
この課題に対し、摺動部材の端部の体積、密度、潤滑剤塗布量などを変え、長手中央より端部の潤滑剤保持量を多くし、経時の潤滑剤の漏れによる摺動負荷の増大を抑制する技術が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【0011】
しかしながら、摺動部材の織り目方向や長手方向の圧偏差などの誤差がばらつくと、無端ベルト端部からの潤滑剤の漏れは加速し、摺動負荷(トルク)の増大やベルトの線速変動(スリップ)による搬送不良を招くという課題がある。
【0012】
そこで本発明は、上記課題に鑑み、摺動負荷の増大とベルトの線速変動による搬送不良を防止するとともに、摺動部材の熱収縮に起因したニップ形成部材のエッジ露出によるベルトの破損を防止することができる定着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
かかる目的を達成するため、本発明に係る定着装置は、無端ベルト状に形成された回転可能な定着ベルトと、前記定着ベルトの外周面に当接し、未定着トナー像が転写された記録媒体が挟持搬送されるニップ部を形成する加圧部材と、前記定着ベルトの内側に配置され、該定着ベルトを加熱する熱源と、前記加圧部材の長手方向に沿って前記定着ベルトの内側に配置され、該定着ベルトを介して前記加圧部材と当接して前記ニップ部を形成するニップ形成部材と、潤滑剤を含有し、前記ニップ形成部材と前記定着ベルトとの間に配設される摺動部材と、前記ニップ形成部材を支持する支持部材と、前記熱源の輻射熱を反射する反射部材と、前記熱源の輻射熱を少なくとも長手方向の両端部において遮光する遮光部材と、前記定着ベルトを保持するベルト保持部材と、を備え、前記定着ベルトの回転軸と平行な断面において、前記摺動部材の長手方向端部が、前記ベルト保持部材との間に所定の間隙を有するとともに、該端部の位置が前記遮光部材により遮光される位置に配置され、前記加圧部材の長手方向一方端部に駆動ギヤを備え、前記定着ベルトの回転軸と平行な断面において、前記摺動部材の長手方向の中央から端部までの長さが前記駆動ギヤを有する側と有しない側とで異なり、前記駆動ギヤを有する側の前記摺動部材の長手方向の端部は、前記駆動ギヤを有しない側の前記摺動部材の長手方向の端部よりも中央からの距離が長いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、摺動負荷の増大とベルトの線速変動による搬送不良を防止するとともに、摺動部材の熱収縮に起因したニップ形成部材のエッジ露出によるベルトの破損を防止することができる定着装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】従来の定着装置の構成の一例を示す説明図である。
図2】本発明が適用される定着装置の一例を示す概略構成図である。
図3】本発明が適用される定着装置の一例を示す概略構成図である。
図4】本発明が適用される定着装置の一例を示す概略構成図である。
図5】遮光部材の動作の一実施形態を示す説明図である。
図6】遮光部材の一例を示す説明図である。
図7】ニップ形成部材の一例を示す分解斜視図である。
図8】本発明に係る画像形成装置の構成の一例を示す概略構成図である。
図9】従来の定着装置の構成の一例を示す断面図である。
図10】本発明に係る定着装置の構成の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る定着装置及び画像形成装置について、図面を参照して説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0017】
〔定着装置〕
本発明を適用可能な定着装置の例を図2図3及び図4に示す。
図2に示す定着装置は、無端ベルト状に形成された回転可能な定着ベルト1と、定着ベルト1の外周面に当接し、未定着トナー像が転写された記録媒体が挟持搬送されるニップ部Nを形成する加圧部材(以下、「加圧ローラ」ともいう)3と、定着ベルト1の内側に配置され、該定着ベルト1を加熱する熱源2とを備え、定着ベルト1が内周側から輻射熱で直接加熱される構成である。
【0018】
また加圧部材3の長手方向に沿って定着ベルト1の内側に配置され、該定着ベルト1を介して加圧部材3と当接してニップ部Nを形成するニップ形成部材6と、潤滑剤を含有し、ニップ形成部材6と定着ベルト1との間に配設される摺動部材(以下、「摺動シート」ともいう)13とを備える。
さらに、ニップ形成部材6を支持する支持部材7と、熱源2の輻射熱を反射する反射部材9と、定着ベルト1を保持するベルト保持部材8と、図示しない遮光部材11とを備える。
【0019】
図2の例ではニップ部Nの形状が平坦状であるが、凹形状やその他の形状であっても良い。ニップ部Nの形状を凹形状とすることにより、記録媒体(用紙)先端の排出方向が加圧ローラ寄りになるため、分離性が向上し、ジャムの発生が抑制される。
【0020】
定着ベルト1はニッケルやSUSなどの金属ベルトやポリイミドなどの樹脂材料を用いた無端ベルト(もしくはフィルム)とする。ベルトの表層はPFAまたはPTFE層などの離型層を有し、トナーが付着しないように離型性を持たせている。ベルトの基材とPFAまたはPTFE層の間にはシリコーンゴムの層などで形成する弾性層があっても良い。シリコーンゴム層がない場合は熱容量が小さくなり、定着性が向上するが、未定着画像を押し潰して定着させるときにベルト表面の微小な凹凸が画像に転写されて画像のベタ部にユズ肌状の光沢ムラ(ユズ肌画像)が残るという不具合が生じる。これを改善するにはシリコーンゴム層を100μm以上設ける必要がある。シリコーンゴム層の変形により、微小な凹凸が吸収されユズ肌画像が改善する。
【0021】
定着ベルト1の内部にはニップ部を支持するための支持部材7(ステー)を設け、加圧ローラにより圧力を受けるニップ形成部材6の撓みを防止し、軸方向で均一なニップ幅を得られるようにしている。この支持部材7は両端部でベルト保持部材8(フランジ)に保持固定され位置決めされている。また、熱源2と支持部材7の間に反射部材9を備え、熱源2からの輻射熱などにより支持部材7が加熱されてしまうことによる無駄なエネルギー消費を抑制している。ここで反射部材9を備える代わりに支持部材7表面に断熱もしくは鏡面処理を行っても同様の効果を得ることか可能となる。
【0022】
熱源2としては、図示した例のようにハロゲンヒータでも良いが、IHであっても良いし、抵抗発熱体、カーボンヒータ等であっても良い。また、後述の他の例で示すように、熱源2を構成するハロゲンヒータの数は限定されない。
【0023】
加圧ローラ3は芯金5及び弾性層4を備え、離型性を得るために表面に離型層(PFAまたはPTFE層)が設けてある。
加圧ローラ3は例えば、長手方向一方端部に駆動ギヤを備え、画像形成装置に設けられたモータなどの駆動源からギヤを介して駆動力が伝達され回転する。
【0024】
また、加圧ローラ3はスプリングなどにより定着ベルト1側に押し付けられており、弾性層4が押し潰されて変形することにより、所定のニップ幅を有している。
加圧ローラ3は中空のローラであっても良く、加圧ローラ3にハロゲンヒータなどの加熱源を有していても良い。弾性層4の材料としてはソリッドゴムでも良いが、加圧ローラ3内部にヒータが無い場合は、スポンジゴムを用いても良い。スポンジゴムの方が、断熱性が高まり定着ベルト1の熱が奪われにくくなるので、より望ましい。
【0025】
定着ベルト1は加圧ローラ3により連れ回り回転する。
図2に示す例では、加圧ローラ3が図示しない駆動源により回転し、ニップ部Nでベルトに駆動力が伝達されることにより定着ベルト1が回転する。定着ベルト1はニップ部Nで挟み込まれて回転し、ニップ部N以外では両端部でベルト保持部材8(フランジ)にガイドされ、走行する。
未定着のトナー画像Tが担持された用紙Pが、不図示のガイド板に案内されながら図2の矢印D方向に搬送されて、圧接状態にある定着ベルト1及び加圧ローラ3のニップ部Nに送入される。そして、熱源2によって加熱された定着ベルト1による熱と、定着ベルト1と加圧ローラ3との間の加圧力とによって、用紙Pの表面にトナー画像Tが定着される。
このような構成により安価で、ウォームアップが速い定着装置を実現することが可能となる。
【0026】
図3及び図4は、本発明を適用可能な定着装置の他の例を示す構成図である。
図2に示した例では、熱源2がハロゲンヒータ1本で構成されているのに対し、図3に示す例では熱源2が記録媒体(用紙)幅対応のため、ハロゲンヒータ3本で構成されている点が異なる。用紙幅に対応したヒータを設けることで過度の熱量供給を抑制でき、省エネ性の向上に繋がる。
図4に示す例では、熱源2がハロゲンヒータ2本で構成されている。また、図4には遮光部材11が図示されている。
【0027】
遮光部材11について図5及び図6に基づき説明する。
遮光部材11は、図6に示すように、記録媒体の幅(紙幅)に合わせた遮光面積が設けられた段付き形状となっている。また図5に示すように、定着ベルト1の内側に沿って非接触で回動するように配置され、各紙幅に対応した位置に回動して加熱に不必要な領域を遮光する。これにより紙幅の狭い転写紙を連続通紙した場合でも、非通紙領域が過昇温状態になることがなく、過昇温領域をキャンセルするために生産性を落とす等の制御を行う必要がない。
【0028】
図7はニップ形成部材6を説明する分解斜視図である。
図7に示す構成は、非通紙領域の過昇温低減を目的としたものであり、熱源2としてのハロゲンヒータの本数を低減しつつ、遮光部材11の代用機能をも有している。これにより、遮光部材11およびそれを駆動させる駆動部材一式を削除でき、大幅なコスト低減が可能となる。
なお、図中Lはヒータの発光長を示し、矢印Dは通紙方向(用紙搬送方向)を示している。
【0029】
図7に示すように、ニップ形成部材6は、第1の熱移動手段としての均熱部材66と、均熱部材66に備わる摺動シート13を有している。定着ベルト1が回転する際は低摩擦特性の材料からなる摺動シート13により摩擦負荷が軽減され、駆動トルクが低減される。
均熱部材66は熱伝導率の高い材料、例えば銅から成り、定着ベルト1の長手方向に亘って形成され、定着ベルト1の非通紙部に過剰に蓄積する熱を吸熱し、長手方向へ移動させる。
【0030】
均熱部材66は曲げ部66bと66cを有しており、定着ニップの上流側の曲げ部66bの先端は鋭利な形状を有している。定着ベルト1が回転すると摺動シート13は摺動方向に引っ張られるが、曲げ部66bの先端が摺動シート13に引っ掛り、強固に保持される。定着ベルト1が逆回転する場合は曲げ部66cの先端に鋭利な形状を設けると有効である。
【0031】
第1の断熱部材83a(幅方向両端部)および83b(幅方向中央部)は均熱部材66より熱伝導率の低い、例えば樹脂からなり、第1の吸熱部材81が定着ベルト1から過剰に吸熱することを防止している。その結果、通紙部の温度落ち込みを防止し、定着不良、ウォームアップ時間、消費電力の悪化を抑制している。
第2の断熱部材83cも同様、例えば樹脂からなり、均熱部材66から第2の吸熱部材82を介して第1の吸熱部材81に移動する熱量を調整する役割を担う。第2の断熱部材83cの厚みや長さは発生する非通紙部温度上昇の大きさに応じて最適化される。
第1の吸熱部材81および第2の吸熱部材82は熱伝導率の高い材料からなり、第2の吸熱部材82は非通紙温度上昇の発生位置に配置され、第2の断熱部材83c同様、その大きさに応じて厚みや長さが最適化される。
【0032】
次に、図9及び図10に基づき、本発明にかかる定着装置を説明する。
図9及び図10は定着ベルト1の回転軸と平行な断面を示す図であり、図9は従来の定着装置、図10は本発明に係る定着装置の構成の一例をそれぞれ示す。
【0033】
図9の定着ベルト1の回転軸と平行な断面において、摺動シート13の長手方向端部の位置を線A、ベルト保持部材8の内側端面の位置を線Bで示している。摺動シート13の端部は、ベルト保持部材8の端部よりも図中L1で示す長さで外側に位置している。
これにより、摺動シート13が含有する潤滑剤が矢印13aで示す方向に移動し、定着ベルト1に転移する。定着ベルト1が図中8aで示す方向に回転したとき、潤滑剤はベルト保持部材8に転移して潤滑剤の流路が形成されてしまう。一旦潤滑剤の流路が形成されると、潤滑剤は摺動シート13から漏れ続けることとなる。
【0034】
そこで、本実施形態では、摺動シート13の端部をベルト保持部材8の端面より内側に配置する。具体的には、図10に示すように、摺動シート13の長手方向端部の位置を示す線Aとベルト保持部材8の内側端面の位置を示す線BとがL2で示す所定の間隙を有するように配置する。
これにより、摺動シート13から定着ベルト1に転移した潤滑剤は定着ベルト1が回転すると再度摺動シート13に戻るため、潤滑剤が端部から漏れる流路の形成を防止できる。
【0035】
定着装置において、遮光部材11が配置されていない領域は熱源の輻射熱を吸熱するため高温となる。摺動シート13は熱収縮するため、高温域に配置すると熱収縮量が増大し、ニップ形成部材6のエッジが露出して定着ベルト1を破損させるおそれがある。そこで、本実施形態では、図10のL3(摺動シート13の長手方向端部の位置を示す線Aと遮光部材11の内側端面の位置を示す線Cとの間の重複長さ)のように摺動シート13の端部を遮光部材11とオーバーラップさせるよう配置し、摺動シート13の熱収縮を抑制する。
摺動シート13の端部をベルト保持部材8より内側に、かつ遮光部材11とオーバーラップさせるよう配置することで、定着ベルト1端部からの潤滑剤の漏れを防止して摺動負荷(トルク)の低減と線速変動(定着スリーブスリップ)による搬送不良を防止しつつ、摺動シート13の熱収縮を抑制してニップ形成部材6のエッジ露出による定着ベルト1の破損を防止することができる。
【0036】
本発明にかかる定着装置は、無端ベルト状に形成された回転可能な定着ベルト1と、定着ベルト1の外周面に当接し、未定着トナー像が転写された記録媒体(用紙)Pが挟持搬送されるニップ部Nを形成する加圧部材(加圧ローラ)3と、定着ベルト1の内側に配置され、該定着ベルト1を加熱する熱源2と、加圧部材3の長手方向に沿って定着ベルト1の内側に配置され、該定着ベルト1を介して加圧部材3と当接してニップ部Nを形成するニップ形成部材6と、潤滑剤を含有し、ニップ形成部材6と定着ベルト1との間に配設される摺動部材(摺動シート)13と、ニップ形成部材6を支持する支持部材7と、熱源2の輻射熱を反射する反射部材9と、熱源2の輻射熱を少なくとも長手方向の両端部において遮光する遮光部材11と、定着ベルト1を保持するベルト保持部材8と、を備え、定着ベルト1の回転軸と平行な断面において、摺動部材(摺動シート)13の長手方向端部が、ベルト保持部材8との間に所定の間隙を有するとともに、該端部の位置が遮光部材11により遮光される位置に配置されている。
【0037】
また、ニップ形成部材6のエッジ露出による定着ベルト1の破損を防止するために、本実施形態の定着装置は、定着ベルト1の回転軸と平行な断面において、摺動部材(摺動シート)13の長さはニップ形成部材6よりも長く、摺動部材13の長手方向の端部は、ニップ形成部材6の長手方向の端部よりも外側に位置することが好ましい。
【0038】
すなわち、図10に示すように摺動シート13の長手方向端部の位置を示す線Aとニップ形成部材6の端部の位置を示す線Eとの間の重複長さであるL4を設ける。なお、摺動シート13の熱収縮量、部品寸法のばらつきを加味し、L4は1mm以上とするのが好ましい。
【0039】
また、ニップ形成部材6の支持部材7で反射部材9が配置されていない領域は熱源の輻射熱を反射せずに高温になり、高温域に摺動シート13を配置すると熱収縮が増大し、ニップ形成部材6のエッジ露出が顕著となり、定着ベルト1の破損を招くおそれがある。
これを防止するために、本実施形態の定着装置は、定着ベルト1の回転軸と平行な断面において、摺動部材(摺動シート)13の長さは反射部材9よりも短く、摺動部材(摺動シート)13の長手方向の端部は、反射部材9の長手方向の端部よりも内側に位置することが好ましい。
【0040】
すなわち、図10に示すように、摺動シート13の長手方向端部の位置を示す線Aと反射部材9の端部の位置を示す線Fとの間で示す間隙L5を設ける。
【0041】
また、駆動ギヤ12のみで駆動させる片側駆動の場合、駆動ギヤ12を回転させる際に駆動ギヤ12側の加圧部材3をニップ方向に押し込む力が作用するため、長手方向で荷重偏差が生じ、潤滑剤が荷重の大きい方から小さい方に流れ、潤滑剤の枯渇で摺動負荷(トルク)の増大や線速変動(定着スリーブスリップ)による搬送不良が発生するおそれがある。
これを防止するため、本実施形態の定着装置は、定着ベルト1の回転軸と平行な断面において、摺動部材(摺動シート)13の長手方向の中央から端部までの長さが駆動ギヤ12を有する側と有しない側とで異なり、駆動ギヤ12を有する側の摺動部材(摺動シート)13の長手方向の端部は、駆動ギヤ12を有しない側の摺動部材(摺動シート)の長手方向の端部よりも中央からの距離が長いことが好ましい。
【0042】
図10に示すように、駆動ギヤ12を有する側の摺動部材(摺動シート)13の長手方向の端部は、図示しない駆動ギヤ12を有しない側の摺動部材(摺動シート)の長手方向の端部よりも中央からの距離を長くすることで、潤滑剤が流れやすく、かつ枯渇しやすい駆動ギヤ12を有する側の摺動シート13における潤滑剤の保持量を増大させることができる。これにより、摺動負荷(トルク)の低減と線速変動(定着スリーブスリップ)による搬送不良を防止できる。
【0043】
〔画像形成装置〕
本発明に係る定着装置を備えた画像形成装置としての電子写真方式のプリンタの概略構成図を図8に示す。
図8に示した画像形成装置は、複数の色画像を形成する作像部がベルトの展張方向に沿って並置されたタンデム方式を用いるカラープリンタあるが、本発明はこの方式に限ることはなく、またプリンタだけではなく複写機やファクシミリ装置などを対象とすることも可能である。
【0044】
図8において画像形成装置100は、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色に色分解された色にそれぞれ対応する像としての画像を形成可能な像担持体としての感光体ドラム41Y、41C、41M、41Bkを並設したタンデム構造が採用されている。
図8に示す構成の画像形成装置100は、各感光体ドラム41Y、41C、41M、41Bkに形成された可視像が、各感光体ドラム41Y、41C、41M、41Bkに対峙しながら矢印A1方向に移動可能な無端ベルトが用いられる中間転写体(以下、転写ベルトという)21に対して1次転写行程を実行してそれぞれの画像が重畳転写され、その後、記録シートなどが用いられる記録紙Sに対して2次転写行程を実行することで一括転写されるようになっている。
【0045】
各感光体ドラムの周囲には、感光体ドラムの回転に従い画像形成処理するための装置が配置されており、いま、ブラック画像形成を行う感光体ドラム41Bkを対象として説明すると、感光体ドラム41Bkの回転方向に沿って画像形成処理を行う帯電装置42Bk、現像装置40Bk、1次転写ローラ32Bkおよびクリーニング装置50Bkが配置されている。帯電後に行われる書き込みは、光書込装置68が用いられる。
【0046】
転写ベルト21に対する重畳転写は、転写ベルト21がA1方向に移動する過程において、各感光体ドラム41Y、41C、41M、41Bkに形成された可視像が、転写ベルト21の同じ位置に重ねて転写されるよう、転写ベルト21を挟んで各感光体ドラム41Y、41C、41M、41Bkに対向して配設された1次転写ローラ32Y、32C、32M、32Bkによる電圧印加によって、A1方向上流側から下流側に向けてタイミングをずらして行われる。
【0047】
各感光体ドラム感光体ドラム41Y、41C、41M、41Bkは、A1方向の上流側からこの順で並んでいる。各感光体ドラム感光体ドラム41Y、41C、41M、41Bkは、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの画像をそれぞれ形成するための画像ステーションに備えられている。
【0048】
画像形成装置100は、色毎の画像形成処理を行う4つの画像ステーションと、各感光体ドラム41Y、41C、41M、41Bkの上方に対向して配設され、転写ベルト21及び1次転写ローラ32Y、32C、32M、32Bkを備えた転写ベルトユニット20と、転写ベルト21に対向して配設され転写ベルト21に従動し、連れ回りする転写部材としての転写ローラである2次転写ローラ65と、転写ベルト21に対向して配設され転写ベルト21上をクリーニングする中間転写ベルトクリーニング装置23と、これら4つの画像ステーションの下方に対向して配設された光書き込み装置としての光書込装置68とを有している。
【0049】
光書込装置68は、光源としての半導体レーザ、カップリングレンズ、fθレンズ、トロイダルレンズ、折り返しミラーおよび偏向手段としての回転多面鏡などを装備しており、各感光体ドラム41Y、41C、41M、41Bkに対して色毎に対応した書き込み光Lb(便宜上、ブラック画像の画像ステーションのみを対象として符号が付けてあるが、その他の画像ステーションも同様である)を出射して感光体ドラム41Y、41C、41M、41Bkに静電潜像を形成する構成とされている。
【0050】
画像形成装置100には、感光体ドラム41Y、41C、41M、41Bkと転写ベルト21との間に向けて搬送される用紙Pを積載した給紙カセットとしてのシート給送装置61と、シート給送装置61から搬送されてきた記録紙Sを、画像ステーションによるトナー像の形成タイミングに合わせた所定のタイミングで、各感光体ドラム41Y、41C、41M、41Bkと転写ベルト21との間の転写部に向けて繰り出すレジストローラ対64と、記録紙Sの先端がレジストローラ対64に到達したことを検知する図示しないセンサとが設けられている。
【0051】
画像形成装置100には、トナー像が転写された用紙Pにトナー像を定着させるためのローラ定着方式の定着ユニットとしての定着装置10と、定着済みの用紙Pを画像形成装置100の本体外部に排出する排紙ローラ67と、画像形成装置100の本体上部に配設されて排出ローラ67により画像形成装置100の本体外部に排出された用紙Pを積載する排紙トレイ69と、排紙トレイ69の下側に位置し、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色のトナーを充填されたトナーボトル90Y、90C、90M、90Bkとが備えられている。
【0052】
転写ベルトユニット20は、転写ベルト21、1次転写ローラ32Y、32C、32M、32Bkの他に、転写ベルト21が掛け回されている駆動ローラ72及び従動ローラ73を有している。
従動ローラ73は、転写ベルト21に対する張力付勢手段としての機能も備えており、このため、従動ローラ73には、バネなどを用いた付勢手段が設けられている。このような転写ベルトユニット20と、1次転写ローラ32Y、32C、32M、32Bkと、2次転写ローラ65と、クリーニング装置23とで転写装置71が構成されている。
【0053】
シート給送装置61は、画像形成装置100の本体下部に配設されており、最上位の用紙Pの上面に当接する給紙ローラとしての給送ローラ63を有しており、給送ローラ63が反時計回り方向に回転駆動されることにより、最上位の用紙Pをレジストローラ対64に向けて給送するようになっている。
【0054】
転写装置71に装備されているクリーニング装置23は、詳細な図示を省略するが、転写ベルト21に対向、当接するように配設されたクリーニングブラシとクリーニングブレードとを有しており、転写ベルト21上の残留トナー等の異物をクリーニングブラシとクリーニングブレードとにより掻き取り、除去して、転写ベルト21をクリーニングするようになっている。
【0055】
クリーニング装置23はまた転写ベルト21から除去した残留トナーを搬出し廃棄するための図示しない排出手段を有している。
【符号の説明】
【0056】
1 定着ベルト
2 熱源
3 加圧部材(加圧ローラ)
4 弾性体
5 芯金
6 ニップ形成部材
7 支持部材
8 ベルト保持部材
9 反射部材
10 定着装置
11 遮光部材
12 駆動ギヤ
13 摺動部材(摺動シート)
66 均熱部材
81 第1の吸熱部材
82 第2の吸熱部材
83 断熱部材
100 画像形成装置
D 通紙方向(用紙搬送方向)
L ヒータ発光長
N ニップ部
P 記録媒体(用紙)
T トナー画像
【先行技術文献】
【特許文献】
【0057】
【文献】特開2004-286922号公報
【文献】特許第2861280号公報
【文献】特開2007-334205号公報
【文献】特開2014-178523号公報
図1
図2
図3
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図5
図6
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図8
図9
図10