(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】演算装置、交換レンズ、カメラボディおよび撮像装置
(51)【国際特許分類】
G03B 5/00 20210101AFI20220809BHJP
G03B 17/14 20210101ALI20220809BHJP
G03B 13/36 20210101ALI20220809BHJP
G02B 7/34 20210101ALI20220809BHJP
G02B 7/28 20210101ALI20220809BHJP
H04N 5/232 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
G03B5/00 J
G03B17/14
G03B13/36
G02B7/34
G02B7/28 N
H04N5/232 120
(21)【出願番号】P 2018203100
(22)【出願日】2018-10-29
【審査請求日】2021-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】風早 聡志
(72)【発明者】
【氏名】木ノ内 有紀
(72)【発明者】
【氏名】小濱 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】柴田 悟
【審査官】越河 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-5224(JP,A)
【文献】特開2007-199668(JP,A)
【文献】特開2011-39437(JP,A)
【文献】特開2010-113213(JP,A)
【文献】特開平10-312006(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 5/00
G03B 17/14
G03B 13/36
G02B 7/34
G02B 7/28
H04N 5/232
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像光学系の焦点位置を調節するフォーカシングレンズの光軸方向の移動量を演算する演算装置であって、
前記撮像光学系による像を撮像する撮像面と前記焦点位置とのずれに関する第1情報が繰り返し入力される第1入力部と、
前記撮像光学系の光軸方向の振れに関する第2情報が前記第1情報より短い間隔で繰り返し入力される第2入力部と、
前記第1情報および前記第2情報の少なくとも一つに基づいて前記移動量を演算する演算部と、を備え、
前記演算部は、前記第1情報が入力されてから次の前記第1情報が入力されるまでの間は、前記第2情報に基づいて前記移動量を演算する演算装置。
【請求項2】
請求項1に記載の演算装置において、
前記第1入力部は、前記撮像面での電荷蓄積時間に応じた間隔で、前記第1情報が繰り返し入力される演算装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の演算装置において、
前記演算部は、前記第1情報の入力があれば前記第1情報に基づきかつ前記第2情報に基づかずに前記移動量を演算する演算装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の演算装置において、
前記第1入力部は、前記第1情報として位相差検出方式により算出されたデフォーカス量が入力される演算装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の演算装置において、
少なくとも前記撮像光学系の光軸方向の振れを検出して前記第2情報として出力する第2検出部を備える演算装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の演算装置において、
前記演算部は、前記第2情報に基づいて演算した前記移動量は、前記第1情報に基づいて演算した移動量に応じた範囲を超えないように制限する演算装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の演算装置と、
前記撮像光学系と、を備える交換レンズ。
【請求項8】
請求項7に記載の交換レンズにおいて、
前記演算部により演算された前記移動量に基づいて前記フォーカシングレンズを駆動するフォーカス駆動部と、
前記撮像光学系の光軸と直交する方向の振れに基づいて、前記フォーカシングレンズとは異なる振れ補正レンズを前記光軸と直交する方向の成分を有するように駆動する振れ補正駆動部と、
を備える交換レンズ。
【請求項9】
請求項8に記載の交換レンズにおいて、
前記フォーカス駆動部は、前記光軸方向であるO方向の振れを補正し、
前記振れ補正駆動部は、前記O方向と直交するX方向と、前記X方向および前記O方向と直交するY方向の振れを補正する、交換レンズ。
【請求項10】
請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の演算装置と、
前記撮像面と、を備えるカメラボディ。
【請求項11】
請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の演算装置と、
前記撮像光学系と、
前記撮像面と、を備える撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、演算装置、交換レンズ、カメラボディおよび撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光軸方向の振れを検出する加速度検出装置を用いて、光軸方向への振れ(ピント振れ)を補正する技術が知られている(特許文献1参照)。従来の技術では、光軸方向の振れ補正は、焦点検出用撮像素子の蓄積時間が予め定められた値を超える場合にのみ行われるだけであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本発明の第1の態様による演算装置は、撮像光学系の焦点位置を調節するフォーカシングレンズの光軸方向の移動量を演算する演算装置であって、前記撮像光学系による像を撮像する撮像面と前記焦点位置とのずれに関する第1情報が繰り返し入力される第1入力部と、前記撮像光学系の光軸方向の振れに関する第2情報が前記第1情報より短い間隔で繰り返し入力される第2入力部と、前記第1情報および前記第2情報の少なくとも一つに基づいて前記移動量を演算する演算部と、を備え、前記演算部は、前記第1情報が入力されてから次の前記第1情報が入力されるまでの間は、前記第2情報に基づいて前記移動量を演算する。
本発明の第2の態様による交換レンズは、第1の態様による演算装置と、前記撮像光学系と、を備える。
本発明の第3の態様によるカメラボディは、第1の態様による演算装置と、前記撮像面と、を備える。
本発明の第4の態様による撮像装置は、第1の態様による演算装置と、前記撮像光学系と、前記撮像面と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】カメラシステムの要部構成を示すブロック図である。
【
図2】フォーカシングレンズの光軸方向の位置の時間的変化を示す図である。
【
図4】カメラシステムで行われる処理の流れを説明するフローチャートである。
【
図5】カメラシステムで行われる処理の流れを説明するフローチャートである。
【
図6】変形例1におけるフォーカシングレンズの光軸方向の位置の時間的変化を示す図である。
【
図7】変形例2におけるフォーカシングレンズの光軸方向の位置の時間的変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。
図1は、発明の一実施の形態による焦点調節装置を搭載したカメラシステム1の要部構成を示すブロック図である。カメラシステム1は、カメラボディ2に交換レンズ3が着脱可能に装着されている。
図1において交換レンズ3の光軸Oと、光軸Oと交差する面内におけるX軸方向とY軸方向とを、それぞれ線で示す。
【0007】
図1にはレンズ交換式のカメラシステム1を例示するが、カメラシステム1はレンズ交換式でなくてもよい。例えば、カメラシステム1は、カメラボディとレンズとが一体型のカメラ、ビデオカメラでもよい。また、静止画に限らず、動画を撮像するビデオカメラ、モバイルカメラ等の撮像装置として構成してもよい。
【0008】
<カメラボディ>
カメラボディ2は、操作部材220、ボディ側制御部230、ボディ側記憶部235、ボディ側通信部240、電源部250、撮像素子260、信号処理部270、および表示部280を有する。
【0009】
撮像素子260は、例えばCMOSイメージセンサやCCDイメージセンサ等の固体撮像素子である。撮像素子260は、ボディ側制御部230からの制御信号により、撮像面260Sの被写体像を撮像して信号を出力する。撮像素子260は、静止画撮影の他に、表示部280で連続的に結像状態を表示させるためのいわゆるスルー画(ライブビュー画とも称される)の撮影を行うことができる。
【0010】
撮像素子260は、画像生成用の光電変換部と焦点検出用の光電変換部を有する。画像生成用の光電変換部で生成される撮像用画素信号は、信号処理部270の画像信号処理部270aによって画像の生成に用いられる。また、焦点検出用の光電変換部で生成される検出用画素信号は、信号処理部270のAF信号処理部270bによって交換レンズ3による結像状態、換言すると交換レンズ3の焦点を検出する焦点検出処理に用いられる。
撮像素子260は、信号処理部270、ボディ側制御部230と接続される。
【0011】
信号処理部270は、画像信号処理部270aおよびAF信号処理部270bを含む。画像信号処理部270aは、撮像素子260から出力された撮像用画素信号に対して所定の画像処理を行って画像を生成する。生成された画像のデータは、不図示の記憶媒体に所定のファイル形式で記録されたり、表示部280による画像表示に用いられたりする。
【0012】
また、AF信号処理部270bは、撮像素子260から出力された検出用画素信号を用いて、位相差検出方式やコントラスト方式などの焦点検出処理を行ってデフォーカス量(交換レンズ3の結像位置と撮像面260Sとのずれ量)を算出する。
信号処理部270は、ボディ側制御部230、撮像素子260、および表示部280と接続される。
【0013】
ボディ側通信部240は、レンズ側通信部340との間で所定の通信を行う。ボディ側通信部240は、ボディ側制御部230と接続される。ボディ側通信部240とレンズ側通信部340との間で行われる通信により、撮像光学系360に含まれる移動部材(フォーカシングレンズ361aなど)を移動させる指示や、交換レンズ3への情報送信指示等が、カメラボディ2から交換レンズ3へ送信される。交換レンズ3は、カメラボディ2からの情報送信指示に応じて、上記移動部材の位置情報や、レンズ側記憶部350から読み出された情報などが、交換レンズ3からカメラボディ2へ送信される。
【0014】
ボディ側制御部230は、マイクロコンピュータおよびその周辺回路等から構成される。ボディ側制御部230は、ボディ側記憶部235に記憶されている制御プログラムを実行してカメラボディ2内の各部を制御する。ボディ側制御部230は、操作部材220、ボディ側記憶部235、ボディ側通信部240、電源部250、撮像素子260、および信号処理部270と接続される。
【0015】
ボディ側制御部230は、画像処理などカメラボディ2全体の制御や、交換レンズ3のフォーカス制御などを行う。ボディ側制御部230は、信号処理部270bによって算出されたデフォーカス量と、通信によって交換レンズ3から受信したフォーカシングレンズ361aの位置情報とに基づいてフォーカシングレンズ361aの光軸方向の移動量を算出する。
ボディ側制御部230はさらに、算出したフォーカシングレンズ361aの移動量を、フォーカシングレンズ361aの移動指示としてボディ側通信部240により交換レンズ3へ送信する。ボディ側制御部230は、撮像素子260から検出用画素信号が出力され、AF信号処理部270bがデフォーカス量を算出する度に、フォーカシングレンズ361aの移動量を算出し、交換レンズ3へ移動指示を送信する。例えば、スルー画像撮影中に、ボディ側制御部230は、撮像素子260での電荷蓄積を所定周期で行わせるので、検出用画素信号の出力とデフォーカス量の算出も同周期で行わせる。また、ボディ側制御部230は、所定周期で算出されたデフォーカス量と、より短い周期で繰り返し交換レンズ3から受信したフォーカシングレンズ361aの位置情報とに基づいて、移動指示を作成する。従って、スルー画撮影中に、ボディ側制御部230は、電荷蓄積の周期(フレームレート)に基づいて、フォーカシングレンズ361aの移動指示を交換レンズ3に送信させる。
【0016】
ボディ側記憶部235は、ボディ側制御部230が実行する制御プログラム等を記憶する。ボディ側記憶部235は、ボディ側制御部230によってデータの記録と読み出しが制御される。
【0017】
電源部250は、不図示の電池の電圧をカメラシステム1の各部で使用される電圧に変換し、カメラボディ2の各部、および、交換レンズ3へ供給する。電源部250は、ボディ側制御部230の指示により、給電先ごとに給電のオンとオフとを切換え可能である。
【0018】
表示部280は、例えば液晶表示パネルによって構成される。表示部280は、ボディ側制御部230からの指示により、信号処理部270によって処理された画像データに基づく画像や、操作メニュー画面等を表示する。
表示部280が表示する画像には、記憶媒体に記録されている画像のデータに基づく再生画像(静止画、動画)や、上記スルー画も含まれる。なお、表示部280をタッチパネル操作することにより、操作部材220に代わって撮影条件の設定などを行うこととしても良い。
【0019】
レリーズボタンや操作スイッチ等を含む操作部材220は、カメラボディ2の外装面に設けられる。操作部材220は、ユーザの操作に応じた操作信号をボディ側制御部230へ送出する。ユーザは、操作部材220を操作することにより、撮影指示や撮影条件の設定指示等を行う。
【0020】
レリーズボタンは、半押し操作と全押し操作の2段階の押下操作が可能に構成されている。半押し操作は、全押し操作時の押し下げ量の半分程度までの押し下げ操作をいう。
レリーズボタンに全押し操作が行われると、ボディ側制御部230に撮影指示が与えられ、撮像素子260で撮像され画像信号処理部270aで生成された画像のデータが不図示の記憶媒体に記録される。
【0021】
撮影条件の設定とは、撮影する画像を静止画とするか動画とするかの設定や、露出をカメラボディ2が自動で決定するか、または、絞り値、シャッター速度、および感度の一部若しくは全てをユーザが決定するか、AFモードの「S」モードと「C」モードの切り替え等の設定である。
【0022】
「S」モードとは、レリーズボタンを半押し操作して一度ピントを合わせると、半押し操作している間はピントを固定しておく自動焦点調節モードをいう。また「C」モードとは、レリーズボタンを半押し操作している間、フォーカシングレンズ361aの移動指示の送信を継続し、ピント合わせを続ける自動焦点調節モードをいう。
【0023】
<交換レンズ>
交換レンズ3は、レンズ側制御部330、レンズ側通信部340、レンズ側記憶部350、撮像光学系360、レンズ駆動部370および振れセンサ380を有する。
【0024】
レンズ側制御部330は、マイクロコンピュータおよびその周辺回路等から構成される。レンズ側制御部330は、レンズ側記憶部350に記憶されている制御プログラムを実行して交換レンズ3の各部を制御する。レンズ側制御部330は、例えば、通信によってカメラボディ2から指示されたフォーカシングレンズ361aの移動量に基づき、レンズ駆動部370aによりフォーカシングレンズ361aを移動させる。
【0025】
また、レンズ側制御部330は、振れセンサ380により検出された振れ量とレンズ駆動部370bによって検出された振れ補正レンズ361bの位置とに基づいて、振れ補正レンズ361bの移動量を算出する。そして、算出した振れ補正レンズ361bの移動量に基づき、レンズ駆動部370bにより振れ補正レンズ361bを移動させる。
レンズ側制御部330は、レンズ側通信部340、レンズ側記憶部350、レンズ駆動部370、および振れセンサ380と直接または間接的に接続される。
【0026】
レンズ側記憶部350は、不揮発性の記憶媒体によって構成される。レンズ側記憶部350は、レンズ側制御部330によってデータの記録と読み出しが制御される。レンズ側記憶部350は、レンズ側制御部330が実行する制御プログラム等を記憶する他に、交換レンズ3の情報を記憶することができる。
【0027】
撮像光学系360は、結像面(撮像面260S)に被写体像を結像させる。撮像光学系360の光軸Oは、撮像面260Sの中心位置と略一致する。撮像光学系360の少なくとも一部は、移動部材として、交換レンズ3内での位置を移動可能に構成される。移動部材には、フォーカシングレンズ361a、振れ補正レンズ361bが含まれる。
レンズ駆動部370は移動部材を移動させるものであり、レンズ駆動部370a、レンズ駆動部370bを含む。レンズ駆動部370はそれぞれ、アクチュエータと駆動機構、移動部材の位置検出部を含む。
【0028】
フォーカシングレンズ361aは、レンズ駆動部370aにより、光軸O方向に進退移動が可能に構成されている。フォーカシングレンズ361aが移動することにより、撮像光学系360の焦点位置が調節される。フォーカシングレンズ361aの移動方向や移動量、移動速度などは、ボディ側制御部230からの移動指示に含まれることとしてもよく、ボディ側制御部230からの移動指示を考慮してレンズ側制御部330により決定することとしてもよい。
フォーカシングレンズ361aの位置は、レンズ駆動部370aの位置検出部(エンコーダやモータのパルス信号等)によって検出可能に構成されている。
フォーカシングレンズ361aのレンズ駆動部370aは、ステッピングモータやボイスコイルモータなど、後述する振れセンサ380の分解能より細かい停止精度のものが好ましい。
【0029】
振れ補正レンズ361bは、レンズ駆動部370bにより、光軸Oと交差する方向(X軸方向とY軸方向の成分を有する方向)に進退移動が可能に構成されている。振れ補正レンズ361bが移動することにより、撮像面260Sの被写体像の振れ(像振れ)が抑えられる。振れ補正レンズ361bの移動方向や移動量、移動速度などの決定は、レンズ側制御部330が行うこととしてもよく、カメラボディ2に振れセンサを設け、この振れセンサによる振れ検出信号に基づきボディ側制御部230が行うこととしてもよい。レンズ側制御部330は、ボディ側制御部230からの指示を考慮して振れ補正レンズ361bの移動指示を行うこともできる。
振れ補正レンズ361bの位置は、レンズ駆動部370bのホール素子等によって検出可能に構成されている。
【0030】
レンズ側通信部340は、ボディ側通信部240との間で所定の通信を行う。レンズ側通信部340は、レンズ側制御部330と接続される。通信内容は、ボディ側通信部240に関して説明した通りである。
【0031】
振れセンサ380は、手振れ等によるカメラシステム1の振れを検出する。振れセンサ380は、角速度センサ380aと加速度センサ380bとを含む。振れセンサ380は、角度振れおよび並進振れを、X軸方向成分とY軸方向成分とZ軸方向成分とに分けて検出することができる。
角速度センサ380aは、カメラボディ2の回転運動によって発生する角速度を検出する。角速度センサ380aは、例えばX軸と平行な軸、Y軸と平行な軸、Z軸と平行な軸(光軸O)の各軸回りの回転をそれぞれ検出し、検出信号をボディ側制御部230へそれぞれ出力する。なお、Z軸と平行な軸回りの回転検出は省略しても良い。
また、加速度センサ380bは、カメラボディ2の並進運動で発生する加速度を検出する。加速度センサ380bは、例えばX軸と平行な軸、Y軸と平行な軸、およびZ軸と平行な軸(光軸)Oの加速度をそれぞれ検出し、検出信号をレンズ側制御部330へそれぞれ出力する。
【0032】
<焦点検出処理の流れ>
図2を参照して、カメラシステム1による焦点検出処理について説明する。
図2は、フォーカシングレンズ361aの光軸O方向の位置の時間的変化を示す図であり、横軸は時間、縦軸はフォーカシングレンズ位置を示す。AFモードは「C」モードに設定されているものとする。
時刻t0においてメインスイッチがオン操作されると、ボディ側制御部230が起動するように構成されている。なお、ボディ側制御部230は、操作部材280が操作されたことによってスリープ動作が解除された場合にも、メインスイッチのオン操作時と同様に起動する。
【0033】
起動したボディ側制御部230は、電源部250からカメラシステム1の各部への給電を開始させて、カメラボディ2の各部を初期化する。レンズ側制御部330は、電源部250から給電されると起動し、交換レンズ3の各部を初期化する。交換レンズ3の初期化には、例えば、フォーカシングレンズ361aをあらかじめ定めた初期位置Pへ移動する動作を含めてもよい。
【0034】
カメラシステム1の各部の初期化が終了した時刻t1において、ボディ側制御部230が撮像素子260へスルー画撮影の開始を指示する。撮像素子260があらかじめ定められた撮影条件で撮像を開始すると、画像信号処理部270aが撮像素子260から出力された撮像用画素信号を基にスルー画の生成や表示、露出演算などを行い、AF信号処理部270bが撮像素子260から出力された検出用画素信号を基に焦点検出処理を行ってデフォーカス量を算出する。
【0035】
本実施の形態では、スルー画撮影を開始する時刻t1からレリーズボタンの全押し操作が行われる時刻t4まで、スルー画表示のフレームレートに同期するタイミングで撮像素子260に撮像を繰り返し行わせる。そして、撮像素子260から出力された撮像用画素信号に基づき画像信号処理部270aがスルー画の生成、表示、露出演算を繰り返し行い、撮像素子260から出力された検出用画素信号に基づきAF信号処理部270bがデフォーカス量の算出を繰り返し行う。露出演算結果は、次フレームのスルー画の撮影や、レリーズボタンが全押し操作された場合の本撮影時に使用される。また、算出されたデフォーカス量に基づいて、フォーカシングレンズ361aの移動指示が送信される。
なお、表示部280に表示されるスルー画の画質は、レリーズボタンの全押し操作時に撮像され記録される画像より低画質であってもよい。
【0036】
時刻t2において、レリーズボタンが半押し操作開始されると、ボディ側制御部230はレンズ側制御部330へ通信によりフォーカシングレンズ361aの移動を指示する。レンズ側制御部330はレンズ駆動部370aへ駆動信号を送り、フォーカシングレンズ361aを目標位置Qまで移動させる。目標位置Qは、例えば、直近に検出用画素信号が取得された時点のフォーカシングレンズ361aの位置Pと、その検出用画素信号を用いて算出されたデフォーカス量とに基づいて、ボディ側制御部230またはレンズ側制御部330によって算出される。なお、フォーカシングレンズ361aの目標位置Qまでの移動は、半押し操作以降に開始するものとしたが、スルー画撮影を開始してフォーカシングレンズ361aの移動指示が送信されると開始するものとしてもよい。また、半押し操作は全押し操作(時刻t4)まで継続するものとする。
【0037】
時刻t3において、交換レンズ3との通信によってフォーカシングレンズ361aが目標位置Qへ到達したことを認識すると、ボディ側制御部230はレンズ側制御部330へ追尾の開始を指示する。本実施の形態における追尾は、合焦した主要被写体にピント合わせを続けることをいう。従って、ボディ側制御部230はフォーカシングレンズ361aの移動指示の送信を継続し、レンズ側制御部330は移動指示に基づいてフォーカシングレンズ361aを光軸O方向に移動させる。本実施の形態では、このような追尾動作を、フォーカシングレンズ361aが目標位置Qへ到達したことを認識した時刻t3からレリーズボタンの全押し操作が行われる時刻t4まで繰り返す。フォーカシングレンズ361aが目標位置Qへ到達しても、被写体の光軸O方向への移動や、カメラシステム1が光軸O方向に振れることにより、ピント位置が撮像面260Sからずれてしまうこともあるが、本実施の形態によれば、追尾動作によりピントを合わせ続けることができる。
【0038】
時刻t3から時刻t4までの追尾では、デフォーカス量に基づくフォーカシングレンズ361aの移動に加えて、振れセンサ380の検出信号に基づくフォーカシングレンズ361aの移動(光軸O方向の振れ補正)を行う。レンズ側制御部330は、例えば、振れセンサ380によって検出された光軸O方向の加速度の検出信号に基づいてフォーカシングレンズ361aの移動方向、移動量、移動速度を決定する。レンズ側制御部330は、決定結果に基づいてレンズ駆動部370aへ駆動信号を送り、フォーカシングレンズ361aを光軸O方向に移動させる。これにより、デフォーカス量に基づくフォーカシングレンズ361aの移動に加えて、加速度の検出信号に基づきフォーカシングレンズ361aを移動させることによって、光軸O方向の振れ補正を行って主要被写体にピント合わせを続けることが可能になる。
【0039】
撮像素子260による撮像はスルー画表示のフレームレート(例えば、60フレーム/秒)に同期するタイミングで行われるので、約十ミリ秒間隔でデフォーカス量を算出することができる。すなわち、デフォーカス量に基づくフォーカシングレンズ361aの移動は、約十ミリ秒間隔で行うことが可能である。これに対して、振れセンサ380による光軸O方向の加速度の検出は上記フレームレートとは無関係に、例えば約1ミリ秒間隔で検出することができる。すなわち、加速度検出信号に基づくフォーカシングレンズ361aの移動は、デフォーカス量の検出より短い間隔(例えば、1/10の約1ミリ秒間隔)で行うことが可能である。
【0040】
上記のように構成したので、時刻t3から時刻t4までの追尾では、加速度検出信号に基づいてフォーカシングレンズ361aを約1ミリ秒間隔で移動させることに加え、約十ミリ秒間隔(スルー画用の電荷蓄積間隔)で位相差方式によるデフォーカス量が算出されると、デフォーカス量に基づいてフォーカシングレンズ361aを移動する。そのため、フォーカシングレンズ361aをデフォーカス量に基づいてのみ移動させる場合に比べて、光軸O方向の振れ補正を行ってピント合わせの追従性を良くすることができる。
【0041】
時刻t4において、レリーズボタンが全押し操作されると、ボディ側制御部230は、撮像素子260に本撮影を指示する。撮像素子260は、例えば、スルー画の表示中に算出された直近の露出演算結果に基づく撮影条件で本撮影を行う。本撮影中のボディ側制御部230は、露光時間等に応じて、レンズ側制御部330へ光軸O方向の振れ補正の開始を指示する。または、ボディ側制御部230は露出演算結果などをレンズ側制御部330へ送信し、レンズ側制御部330は必要に応じて光軸O方向の振れ補正を開始する。
【0042】
時刻t4から時刻t5までの追尾では、上記振れセンサ380の検出信号に基づくフォーカシングレンズ361aの移動のみを行う。すなわち、加速度検出信号に基づくフォーカシングレンズ361aの移動を約1ミリ秒間隔で行う。このように構成したので、デフォーカス量の算出が行われない本撮影中にも、光軸O方向の振れ補正を行って主要被写体にピント合わせを続けることができる。
【0043】
時刻t5において、ボディ側制御部230は、撮像素子260に本撮影を終了させる。これにより、画像信号処理部270aが撮像素子260から出力された撮像用画素信号を基に、記録用の画像を生成する。この際、ボディ側制御部230は、レンズ側制御部330へ本撮影の終了を指示してもよい。レンズ側制御部330は、本撮影の終了に伴い一旦ピント振れ補正を終了しても良く、加速度検出を継続してピント振れ補正を継続しても良い。
【0044】
図3は、
図2の追尾中の波形の一部を拡大した図であり、横軸は時間、縦軸はフォーカシングレンズ位置を示す。時刻t31、t32、t33、t34はそれぞれ、
図2の時刻t3とt4の間であり、ボディ側制御部230からデフォーカス量に基づくフォーカシングレンズ361aの移動指示を受けたレンズ側制御部330が、レンズ駆動部370aへ駆動信号を出力するタイミングであり、上記フレームレートに同期している。
【0045】
時刻t31、t32、t33、t34において示した二重丸は、上記フレームレートに同期させてボディ側制御部230が算出したデフォーカス量に基づくフォーカシングレンズ361aの目標位置であり、第1の目標位置と称する。一度合焦しても、被写体が光軸O方向に移動したりカメラシステム1が光軸O方向に振れると、ピント位置がずれてデフォーカス量が生じてしまう。従って、フレームレートに同期して繰り返し算出される第1の目標位置は、時刻t31、t32、t33、t34でそれぞれ異なっている。
仮に、第1の目標位置のみに基づきフォーカシングレンズ361aを移動させるとすると、フォーカシングレンズ361aは破線51で示す軌跡を辿る。具体的には、時刻t31、t32、t33、t34のそれぞれから遅れ時間DLY後に、フォーカシングレンズ361aが第1の目標位置へ到達する。遅れ時間DLYは、レンズ側制御部330がレンズ駆動部370aへ駆動信号を出力してから実際にフォーカシングレンズ361aが第1の目標位置に到達するまでの移動時間に相当し、移動距離や移動速度による。
【0046】
黒い点は、振れセンサ380によって検出された光軸O方向の加速度の検出信号に基づきレンズ側制御部330が算出したフォーカシングレンズ361aの目標位置であり、第2の目標位置と称する。上述したように、本実施の形態ではデフォーカス量に基づくフォーカシングレンズ361aの移動に加えて、加速度の検出信号に基づくフォーカシングレンズ361aの移動を行う。そのため、レンズ側制御部330は、フォーカシングレンズ361aを第1の目標位置に移動させてから、第2の目標位置に向けてさらに移動させる。レンズ側制御部330は、カメラボディ2からデフォーカス量に基づく移動指示を受信して第1の目標位置への移動が完了して次のデフォーカス量に基づく移動指示を受信するまでの間、光軸O方向の振れ補正を行う。
【0047】
フォーカシングレンズ361aを第1の目標位置および第2の目標位置に移動させる場合、フォーカシングレンズ361aは実線52で示す軌跡を辿る。第2の目標位置と実線52とのずれは、レンズ側制御部330がレンズ駆動部370aへ駆動信号を出力してから実際にフォーカシングレンズ361aが第2の目標位置に到達するまでの移動時間に相当する。
なお、レンズ側制御部330は、時刻t31、t32、t33、t34において第1の目標位置と第2の目標位置の双方が算出されている場合には、第1の目標位置を優先してフォーカシングレンズ361aを移動させる。従って、本実施の形態においては、時刻t31、t32、t33、t34で第1の目標位置と第2の目標位置とは一致するものとしたが、一致しない場合、レンズ側制御部330は第1の目標位置までフォーカシングレンズ361aを移動させる。レンズ側制御部330は、時刻t31、t32、t33、t34から遅れ時間DLYが経過するまでの間(フォーカシングレンズ361aが第1の目標位置まで移動するまでの間)は、第2の目標位置は考慮せず第1の目標位置を考慮する。また、レンズ側制御部330は、同時刻の第1の目標位置と第2の目標位置とが一致しない場合、その差分を補正値として以降の第2の目標位置の算出に用いても良い。また、レンズ側制御部330は、第1の目標位置を原点として、第2の目標位置を算出することとしてもよい。加速度の検出信号に基づくフォーカシングレンズ361aの移動量は相対量の場合、レンズ側制御部330は、第1の目標位置が算出される毎に、第2の目標位置を算出するための原点を更新することとしてもよい。
【0048】
図3によれば、フォーカシングレンズ361aを第1の目標位置へスルー画表示のタイミングのみで移動する破線51に比べて、フォーカシングレンズ361aをさらに第2の目標位置へ移動する実線52の方が、ピント合わせの追従性が良いことがわかる。
【0049】
<フローチャートの説明>
上述したカメラシステム1で行われる処理の流れについて、
図4および
図5のフローチャートを参照して説明する。
図4のステップS10において、カメラボディ2に不図示の電池が装填されると、ボディ側制御部230が操作部材220の一つであるメインスイッチの操作を検出することにより、電源オン操作が行われたか否かを判定する。ボディ側制御部230は、電源オン操作を検出した場合にステップS10を肯定判定してステップS20へ進む。ボディ側制御部230は、電源オン操作を検出しない場合にはステップS10を否定判定して当該判定処理を繰り返す。
【0050】
ステップS20において、ボディ側制御部230は、電源部250からカメラシステム1の各部へ給電を開始させてステップS30へ進む。ステップS30において、ボディ側制御部230またはレンズ側制御部330は、交換レンズ3の振れセンサ380(角速度センサ380aおよび加速度センサ380b)の起動を指示する。ステップS40において、ボディ側制御部230は、焦点検出装置を起動してステップS50へ進む。焦点検出装置の起動は、例えば、撮像素子260や信号処理部270に対する初期設定であってもよい。ステップS50において、ボディ側制御部230は、フォーカシングレンズ361aを初期化する指示を交換レンズ3に送信する。フォーカシングレンズ361aの初期化は、原点位置を検出させてからの初期位置Pへの移動や、現在位置の検出であってもよい。
【0051】
ステップS60において、ボディ側制御部230は、撮像素子260へスルー画撮影の開始を指示してステップS70へ進む。スルー画撮影が開始されると、ステップS70において、ボディ側制御部230は、撮像素子260から出力された撮像用画素信号を基に、画像信号処理部270aによってスルー画の生成や表示、露出演算などを行わせ、撮像素子260から出力された検出用画素信号を基に、AF信号処理部270bによってデフォーカス量を算出させる。
【0052】
ボディ側制御部230は、算出したデフォーカス量に基づいてフォーカシングレンズ361aの移動指示を交換レンズ3に送信しても良い。交換レンズ3は、受信した移動指示に基づいて第1の目標位置(
図2の目標位置Qに相当)を算出してフォーカシングレンズ361aを移動させても良い。
【0053】
ステップS80において、ボディ側制御部230は、レリーズボタンが半押し操作されたか否かを判定する。ボディ側制御部230は、半押し操作が行われた場合にステップS80を肯定判定して
図5のステップS90へ進む。ボディ側制御部230は、半押し操作が行われない場合にはステップS80を否定判定してステップS70へ戻る。ステップS70へ戻ったボディ側制御部230は、新たに撮像素子260から出力された撮像用画素信号を基に、画像信号処理部270aによって上記スルー画の生成や表示、露出演算などを行わせ、新たに撮像素子260から出力された検出用画素信号を基に、AF信号処理部270bによって上記デフォーカス量を算出させる。
【0054】
図5のステップS90において、ボディ側制御部230は、レンズ側制御部330へフォーカシングレンズ361aの移動を指示してステップS100へ進む。これにより、レンズ側制御部330がレンズ駆動部370aへ駆動信号を送り、フォーカシングレンズ361aを第1の目標位置まで移動させる。
【0055】
ステップS100において、ボディ側制御部230は、合焦したか否かを判定する。ボディ側制御部230は、例えば、新たに出力された検出用画素信号から算出したデフォーカス量が許容範囲内であると、ステップS100を肯定判定してステップS110へ進む。ボディ側制御部230は、デフォーカス量が許容範囲を超えている場合には、ステップS100を否定判定してステップS90へ戻り、フレームレートに基づいた間隔でデフォーカス量の算出と合焦判定を行う。
【0056】
ステップS110において、ボディ側制御部230は、AFモードが「S」モードか「C」モードかを判定する。ボディ側制御部230は、「C」モードに設定されている場合、「C」モードの追尾開始指示を交換レンズ3に送信し、ステップS120へ進む。また、ボディ側制御部230は、「S」モードに設定されている場合、「S」モードの追尾開始指示を交換レンズ3に送信し、ステップS220へ進む。
【0057】
「C」モードの追尾は、
図2を参照して説明した時刻t3から時刻t4までの追尾に相当する。ステップS110において、ボディ側制御部230はレンズ側制御部330へ光軸O方向の振れ補正を開始させる指示を送る。これにより、ステップS120において、レンズ側制御部330によって上記第2の目標位置が算出される。ステップS130において、レンズ側制御部330がレンズ駆動部370aへ駆動信号を送り、フォーカシングレンズ361aを第2の目標位置まで移動させる。
【0058】
ステップS140において、レンズ側制御部330は、カメラボディ2からデフォーカス量に基づくフォーカシングレンズ361aの移動指示を、ステップS90より後に受信したか否かを判定する。上述したように、デフォーカス量の算出は約十ミリ秒ごと(スルー画表示のタイミング)で行われる。レンズ側制御部330は、フォーカシングレンズ361aの移動指示を新たに受信するとステップS140を肯定判定してステップS150へ進む。レンズ側制御部330は、上記フォーカシングレンズ361aの移動指示を新たに受信していない場合はステップS140を否定判定してステップS120へ戻る。ステップS120へ戻ったレンズ側制御部330は、光軸O方向の加速度検出信号に基づくフォーカシングレンズ361aの移動(光軸O方向の振れ補正)を繰り返し行わせる。
【0059】
ステップS150において、レンズ側制御部330は、上記フォーカシングレンズ361aの移動指示に基づき第1の目標位置を算出してステップS160へ進む。ステップS150において算出される第1の目標位置は、
図3に示した第1の目標位置に相当する。ステップS160において、レンズ側制御部330がレンズ駆動部370aへ駆動信号を送り、フォーカシングレンズ361aを第1の目標位置まで移動させる。
【0060】
ステップS170において、レンズ側制御部330はレリーズボタンが全押し操作されて本撮影を開始する信号をカメラボディ2から受信したか否かを判定する。レンズ側制御部330は、本撮影開始信号を受信した場合にステップS170を肯定判定してステップS180へ進む。レンズ側制御部330は、本撮影開始信号を受信しない場合にはステップS170を否定判定してステップS120へ戻る。ステップS120へ戻ったレンズ側制御部330は、上述した「C」モードの追尾を継続して行わせる。
【0061】
ステップS180において、ボディ側制御部230は、撮像素子260に本撮影の開始を指示する。撮像素子260は、例えば、スルー画の表示中に算出された直近の露出演算結果に基づく撮影条件で本撮影を行う。
本撮影開始信号を受信後、レンズ側制御部330は、
図2を参照して説明した時刻t4から時刻t5までの追尾、換言すると、光軸O方向の加速度検出信号に基づくフォーカシングレンズ361aの移動を繰り返し行わせる。これにより、ステップS260において、レンズ側制御部330によって上記第2の目標位置が算出される。ステップS270において、レンズ側制御部330がレンズ駆動部370aへ駆動信号を送り、フォーカシングレンズ361aを第2の目標位置まで移動させる。
【0062】
ステップS280において、ボディ側制御部230は、本撮影が終了したか否かを判定する。ボディ側制御部230は、例えば、撮像素子260の露光時間が、本撮影の撮像条件として設定されている露光時間を満たすと、本撮影の完了を示す本撮影完了信号を交換レンズ3に送信し、ステップS280を肯定判定してステップS290へ進む。ボディ側制御部230は、撮像素子260の露光時間が、本撮影の撮像条件として設定されている露光時間に満たない場合にはステップS280を否定判定してステップS260へ戻る。本撮影完了信号を受信した交換レンズ3は、AFモードに応じた光軸O方向の振れ補正を停止させる。したがって、ステップS280で本撮影完了信号を受信するまで、レンズ側制御部330は、光軸O方向の加速度検出信号に基づくフォーカシングレンズ361aの移動を継続させる。
【0063】
ステップS290において、ボディ側制御部230は、撮像素子260から出力された撮像用画素信号に対し、画像信号処理部270aにより画像処理を行わせてステップS300へ進む。ステップS300において、ボディ側制御部230は、画像処理後の画像のデータを不図示の記憶媒体に所定のファイル形式で記録させて
図5による処理を終了する。
【0064】
「S」モードの追尾は、
図2を参照して説明した時刻t4から時刻t5までの追尾と同様である。「S」モードの場合、ステップS110において、ボディ側制御部230はレンズ側制御部330へ指示を送り、光軸O方向の加速度の検出信号に基づきフォーカシングレンズ361aを移動させる追尾を指示する。これにより、ステップS220において、レンズ側制御部330によって上記第2の目標位置が算出される。ステップS230において、レンズ側制御部330がレンズ駆動部370aへ駆動信号を送り、フォーカシングレンズ361aを第2の目標位置まで移動させる。
【0065】
ステップS240において、レンズ側制御部330は、レリーズボタンが全押し操作されて本撮影を開始する信号をカメラボディ2から受信したか否かを判定する。レンズ側制御部330は、本撮影開始信号を受信した場合にステップS240を肯定判定してステップS250へ進む。レンズ側制御部330は、本撮影開始信号を受信しない場合にはステップS240を否定判定してステップS220へ戻る。ステップS220へ戻ったレンズ側制御部330は、上述した「S」モードの追尾を継続して行わせる。
【0066】
ステップS250において、ボディ側制御部230は、撮像素子260に本撮影の開始を指示する。撮像素子260は、例えば、スルー画の表示中に算出された直近の露出演算結果に基づく撮影条件で本撮影を行う。本撮影の開始信号を受信後の処理は、上述したステップS260からステップS300の処理と同様であるので、説明を省略する。
【0067】
上述した実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)本実施の形態の焦点検出装置は、第1の目標位置と第2の目標位置とを用いて、フォーカシングレンズ361aを移動させるので、ピント振れを抑制してピント合わせの精度を良くすることができる。
また、本実施の形態の焦点検出装置は、デフォーカス量に基づくフォーカシングレンズ361aの移動指示の受信があれば第1の目標位置にフォーカシングレンズ361aを移動させ、移動指示の受信がなければ第2の目標位置にフォーカシングレンズ361aを移動させるので、光軸O方向の振れ補正を効果的に行うことができる。
【0068】
(2)第1情報の検出に要する時間(例えば約十ミリ秒)は、第2情報の検出に要する時間(例えば約1ミリ秒)よりも長いので、第1情報に基づいて第1の目標位置へフォーカシングレンズ361aを移動する焦点調節を、第2情報に基づいて第2の目標位置へフォーカシングレンズ361aを移動する焦点調節によって補うことができる。
【0069】
(3)ボディ側制御部230は、第1情報の入力があれば第1情報に基づきかつ第2情報に基づかずに移動量を演算するので、第1情報と第2情報の双方の入力がある場合には、第1情報に基づいて第1の目標位置へフォーカシングレンズ361aを移動する焦点調節を優先して行うことができる。
【0070】
(4)撮像光学系360による焦点調節状態を示す位相差を検出して第1情報として出力するAF信号処理部270bを備えるので、第1情報に基づいてフォーカシングレンズ361aを第1の目標位置へ移動する焦点調節を精度よく行うことができる。
【0071】
(5)少なくとも撮像光学系360の光軸O方向の振れを検出して第2情報として出力する振れセンサ380を備えるので、第1情報に基づいて第1の目標位置へフォーカシングレンズ361aを移動する焦点調節の合間を、光軸O方向の振れに基づいてフォーカシングレンズ361aを第2の目標位置へ移動する焦点調節によって補うことができる。
【0072】
次のような変形も本発明の範囲内であり、変形例の一つ、もしくは複数を上述の実施形態と組み合わせることも可能である。
(変形例1)
光軸O方向の振れ補正において、フォーカシングレンズ361aの移動量に制限を設けてもよい。例えば、光軸O方向の振れ補正での第2の目標位置へ移動するフォーカシングレンズ361aの移動量を制限する所定の閾値を設定しても良い。また、光軸O方向の振れ補正での第2の目標位置へ移動するフォーカシングレンズ361aの移動量は、カメラボディ2から受信した移動指示(デフォーカス量)に基づいて算出される、第1の目標位置へ移動するフォーカシングレンズ361aの移動量を超えないように制限しても良い。また、光軸O方向の振れ補正での第2の目標位置へ移動するフォーカシングレンズ361aの移動量は、それより前に受信した少なくとも一つの移動指示に基づいて算出される、第1の目標位置へ移動するフォーカシングレンズ361aの移動量を超えないように制限しても良い。
上記第2の目標位置へ移動するフォーカシングレンズ361aの移動量の制限値は、上記第1の目標位置へ移動するフォーカシングレンズ361aの移動量に係数を掛けることにより設定してもよい。
また、上記第2の目標位置へ移動するフォーカシングレンズ361aの移動量の制限値は、撮像光学系360の焦点深度に応じて設定しても良い。
図6は、変形例1におけるフォーカシングレンズ361aの光軸方向の位置の時間的変化を示す図であり、
図3と同様の時間帯の拡大図である。
【0073】
変形例1によるレンズ側制御部330は、第1の目標位置を中心とした所定範囲を超えないように、第2の目標位置へ移動するフォーカシングレンズ361aの移動量を制限する。具体的には、第2の目標位置へ移動するフォーカシングレンズ361aの移動量を、ボディ側制御部230によって算出された第1の目標位置に対し至近側および無限遠側それぞれ範囲α(幅W1=2α)に制限する。
【0074】
例えば、
図6の時刻t32からt33までの時間において、黒い点で示す第2の目標位置が第1の目標位置より至近側の範囲αを超えている。レンズ側制御部330は、第2の目標位置が範囲αを超えた場合におけるフォーカシングレンズ361aの移動量を上記αに制限する。これにより、フォーカシングレンズ361aは実線52で示す軌跡を辿り、符号Q1で示すように、フォーカシングレンズ361aの移動量が第1の目標位置より至近側の範囲αに制限される。
範囲αは、レンズ側制御部330により設定される値でもよい。
図6で、レンズ側制御部330は、一回の半押しが継続している間(時刻t3~t4)は範囲αを固定値として設定するが、第1の目標位置が算出される度に範囲αを変更することとしてもよい。つまり、レンズ側制御部330は、時刻t31で設定する範囲αと、時刻t32で設定する範囲αと、時刻t33で設定する範囲αと、時刻t34で設定する範囲αを、それぞれ異ならせることとしてもよい。また、範囲αは、第1の目標位置までの距離に応じた値としても良い。例えば、時刻t33での第1の目標位置までの移動量は時刻t31での第1の目標位置までの移動量より大きいので、時刻t33~t34の間の範囲αを時刻t31~t32の間の範囲αより大きく設定してもよい。
また、範囲αは、半押し中と全押し中とで異ならせることとしても良い。レンズ側制御部330は、全押し中の範囲αを半押し中の範囲αより小さく設定しても良い。また、レンズ側制御部330は、スルー画中も光軸O方向の振れ補正を行うこととしても良い。
また、範囲αは第1の目標位置を中心として至近側と無限側に設定したが、至近側と無限側とで範囲を異ならせることとしてもよい。
【0075】
(変形例2)
図7は、変形例2におけるフォーカシングレンズ361aの光軸方向の位置の時間的変化を示す図であり、
図3と同様の時間帯の拡大図である。
【0076】
変形例2によるレンズ側制御部330は、第2の目標位置が、ボディ側制御部230によって算出された第1の目標位置に対し至近側または無限遠側の範囲β(幅W2=2β)を所定回数続けて超えると、加速度検出信号に基づくフォーカシングレンズ361aの移動を休止し、位相差方式により算出したデフォーカス量に基づくフォーカシングレンズ361aの移動、換言すると、第1の目標位置への移動のみを行う。
【0077】
例えば、
図7の時刻t32からt33までの時間において、黒い点で示す第2の目標位置が第1の目標位置より至近側の範囲βを、2回続けて超えている。レンズ側制御部330は、第2の目標位置が範囲βを2回続けて超えた場合に、第2の目標位置へのフォーカシングレンズ361aの移動を休止させる。この休止は、例えば、休止してから次の移動指示を受信した時刻t33の後に、振れセンサ380の検出結果が範囲βを所定回数超えなくなるまで続ける。
【0078】
図7の場合、次のフレームの時刻t33からt34において黒い点で示す第2の目標位置が、範囲βに複数回収まる。そのため、レンズ側制御部330は、さらに次の移動指示を受信した時刻t34で、第2の目標位置へのフォーカシングレンズ361aの移動を再開させる。再開までの時間や条件は適宜変更可能である。
このように構成したので、フォーカシングレンズ361aは実線52で示す軌跡を辿り、符号Q2で示すように、フォーカシングレンズ361aの移動量が、直前に受信した移動指示に基づいて算出された第1の目標位置から離れすぎないように制限される。
【0079】
上述した変形例1、変形例2によるレンズ側制御部330は、第2情報に基づいて演算した第2の目標位置へフォーカシングレンズ361aを移動する際、その移動量が第1情報に基づいて演算した第1の目標位置を中心とした所定範囲(第1の目標位置に対して至近側および無限遠側の範囲α、範囲β)を超えないように制限した。このように構成したので、第1情報としてのデフォーカス量に基づいて第1の目標位置へフォーカシングレンズ361aを移動する焦点調節の合間を、第2情報としての光軸O方向の加速度検出信号に基づいて第2の目標位置へフォーカシングレンズ361aを移動する焦点調節によって、適切に補うことができる。
なお、第2の目標位置へ移動するフォーカシングレンズ361aの移動範囲およびその中心は、移動指示の履歴を考慮して算出しても良い。また、移動指示に基づいて算出された第1の目標位置の変動の履歴を考慮しても良い。
【0080】
(変形例3)
レンズ側制御部330は、カメラボディ2からの移動指示の送信周期が長い場合に、光軸O方向の振れ補正(第2の目標位置への移動)を行うこととしても良い。F値(絞り部材の開口径に応じる)が大きいときや暗い被写体を撮影する場合などは、撮像素子260が電荷を蓄積するのに時間がかかるので、光軸O方向の振れ補正が有効である。
また、レンズ側制御部330は、大きな光軸O方向の振れを検出した場合、被写体が移動した等の構図変更と判断して、第2の目標位置への移動を一度停止させて、次の第1の目標位置の算出を待つこととしても良い。
【0081】
(変形例4)
上記の実施形態では、第1の目標位置の基になる第1情報は、ボディ側制御部230によって算出され、第1入力部として機能するレンズ側制御部330に入力される。また、上記第2の目標位置の基になる第2情報は、第2入力部として機能するレンズ側制御部330に入力される。つまり、カメラボディ2でデフォーカス量の算出を行い、交換レンズ3でデフォーカス量に基づくフォーカシングレンズ361aの移動量の算出と光軸O方向の振れに基づくフォーカシングレンズ361aの移動量の算出を行ったが、適宜変更可能である。
例えばカメラボディ2でデフォーカス量に基づくフォーカシングレンズ361aの移動量の算出を行うこととしてもよく、交換レンズ3はカメラボディ2から送信された移動量を微調整することとしてもよい。
また、光軸O方向の振れに基づくフォーカシングレンズ361aの移動量の算出を交換レンズ3で行う構成としたが、光軸O方向の振れに基づくフォーカシングレンズ361aの移動量の算出をカメラボディ2側で行ってもよく、カメラボディ2側でデフォーカス量と光軸O方向の振れの両方を考慮したフォーカシングレンズ361aの移動量を算出し、交換レンズ3に送信することとしてもよい。その場合、振れセンサ380をカメラボディ2に備えることとしてもよい。また、振れセンサ380をカメラボディ2と交換レンズ3の双方に配置する構成にしてもよい。
また、加速度検出部として機能する振れセンサ380が複数の検出軸を有する例を説明したが、振れセンサ380は少なくとも光軸O方向の振れを検出するものであればよい。さらにまた、振れセンサ380が角速度を検出する機能を有する例を説明したが、振れセンサ380は少なくとも光軸O方向の加速度を検出するものであればよい。
さらに、振れセンサ380は、ジャイロセンサや加速度センサ以外の他のセンサによって構成しても構わない。
【0082】
上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0083】
1…カメラシステム、2…カメラボディ、3…交換レンズ、230…ボディ側制御部、260…撮像素子、270b…AF信号処理部、330…レンズ側制御部、360…撮像光学系、361a…フォーカシングレンズ、O…光軸