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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/282 20060101AFI20220809BHJP
   H02G 15/04 20060101ALI20220809BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20220809BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20220809BHJP
   H02G 1/14 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
H01B7/282
H02G15/04 060
H01B7/00 301
H01B7/00 305
B60R16/02 623T
H02G1/14 050
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018222301
(22)【出願日】2018-11-28
(65)【公開番号】P2020087786
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-05-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】特許業務法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】二ツ森 敬浩
【審査官】神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-010303(JP,A)
【文献】特開2018-125122(JP,A)
【文献】実開昭49-135792(JP,U)
【文献】特開2016-171623(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/282
H02G 15/04
H01B 7/00
B60R 16/02
H02G 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体線が絶縁体で被覆された複数の絶縁電線と、
前記複数の絶縁電線の長手方向の一部を覆うシースと、
前記複数の絶縁電線を導出させる前記シースの端部の表面に密着するとともに、当該端部から導出された前記複数の絶縁電線の一部を覆うようにモールド成形された成形部材と、
前記成形部材の一部及び前記成形部材の複数の絶縁電線が導出された側を覆うカバー部材と、
を備え、
前記カバー部材は、前記複数の絶縁電線のうち一部の絶縁電線を第1の方向にガイドする第1のガイド筒部と、前記複数の絶縁電線のうち他の一部の絶縁電線を前記第1の方向とは異なる第2の方向にガイドする第2のガイド筒部とを有し、前記第1のガイド筒部に形成され前記一部の絶縁電線を挿通させる挿通孔の内周面が前記一部の絶縁電線の外周面に接触し、前記第2のガイド筒部に形成され前記他の一部の絶縁電線を挿通させる挿通孔の内周面が前記他の一部の絶縁電線の外周面に接触し、
前記第1のガイド筒部の外周面が第1の締付部材により締め付けられ、前記第2のガイド筒部の外周面が第2の締付部材により締め付けられており、
前記成形部材の外周面が巻き締め部により巻き締められている
ワイヤハーネス。
【請求項2】
前記カバー部材は、前記成形部材の端面に対向する対向壁部を有し、前記成形部材に外嵌される筒状の周壁部を前記対向壁部と一体に有するゴム状弾性体からなり、
前記周壁部の内周面が前記成形部材の外周面に弾接している、
請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項3】
前記対向壁部は、前記第1のガイド筒部を有し、
前記周壁部は、前記第2のガイド筒部を有している、
請求項2に記載のワイヤハーネス。
【請求項4】
前記対向壁部は、前記第1のガイド筒部及び前記第2のガイド筒部を有している、
請求項2に記載のワイヤハーネス。
【請求項5】
前記成形部材を取付対象に取り付けるための固定金具をさらに備え、
前記シースの外周側にあたる前記成形部材の外周面の少なくとも一部が前記固定金具に設けられた前記巻き締め部により締め付けられている、
請求項1乃至の何れか1項に記載のワイヤハーネス。
【請求項6】
前記成形部材及び前記カバー部材を取付対象に取り付けるための固定金具をさらに備え、
前記固定金具に設けられた前記巻き締め部が前記周壁部の少なくとも一部を前記成形部材に締め付けている、
請求項2乃至の何れか1項に記載のワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自動車のABS(アンチロックブレーキシステム)センサの検出信号を伝達するセンサ用電線と、電動式のパーキングブレーキを動作させるパーキングブレーキ用電線とを共通のシースで被覆して一体化したワイヤハーネスには、シースの端部を保持すると共に同端部から導出されたセンサ用電線及びパーキングブレーキ用電線を保持し、両電線を異なる方向にガイドする成形部を備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のワイヤハーネスは、ウレタン成形された成形部においてシースを保持する筒状の部分がブラケット取付部として形成され、複数の電線を導出して分岐する部分が止水部として形成されている。ブラケット取付部の外周には、ブラケットが加締め固定されている。ブラケットには、貫通孔が形成されており、この貫通孔に挿通されるボルトによって成形部が車両側に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6213447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のワイヤハーネスでは、電線に車両の振動が加わったり、電線が強く屈曲されたり、あるいは配索の際に電線が引っ張られたりすると、成形部と電線との間に隙間ができやすくなる。この場合、成形部と電線との間の止水性が低下するおそれがある。そして、止水性の低下によってシースの内部に水分が浸入すると、毛細管現象により当該水分がシース内を通って車載装置側に浸透してしまうおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、止水性の低下を防ぐことが可能なワイヤハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、導体線が絶縁体で被覆された複数の絶縁電線と、前記複数の絶縁電線の長手方向の一部を覆うシースと、前記複数の絶縁電線を導出させる前記シースの端部及び当該端部から導出された前記複数の絶縁電線の一部を覆う成形部材と、前記成形部材の端面に対向する対向壁部を有するカバー部材と、を備え、前記カバー部材は、前記対向壁部に前記複数の絶縁電線のうち少なくとも一部の絶縁電線を挿通させる挿通孔が形成されており、前記挿通孔の内周面が前記少なくとも一部の絶縁電線の外周面に接触している、ワイヤハーネスを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るワイヤハーネスによれば、止水性の低下を防ぐことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1の実施の形態に係るワイヤハーネスを示す斜視図である。
図2】(a)は、図1の絶縁電線を通る縦断面図、(b)は、(a)のA-A線における断面図、(c)は、(a)のB-B線における断面図、(d)は、(a)のC-C線における断面図である。
図3】第1の締付部材の構成例を示し、(a)は正面図、(b)は側面図である。
図4】本発明の第2の実施の形態に係るワイヤハーネスを示す縦断面である。
図5】本発明の第3の実施の形態に係るワイヤハーネスを示す縦断面である。
図6】本発明の第4の実施の形態に係るワイヤハーネスを示す縦断面である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るワイヤハーネスを示す斜視図である。図2(a)は、図1の絶縁電線を通る縦断面図、(b)は、(a)のA-A線における断面図、(c)は、(a)のB-B線における断面図、(d)は、(a)のC-C線における断面図である。
【0011】
ワイヤハーネス1は、一対の第1の絶縁電線2及び一対の第2の絶縁電線3と、第1及び第2の絶縁電線2,3の長手方向の一部を覆うシース4と、シース4の端部4a及び当該端部4aから導出された第1及び第2の絶縁電線2,3の一部を覆う成形部材5と、成形部材5の第1及び第2の絶縁電線2,3が導出された側を覆うカバー部材6と、固定金具としてのブラケット7とを有している。
【0012】
このワイヤハーネス1は、車両に搭載され、ブラケット7の貫通孔720に挿通される図略のボルトやリベット等の締結部材によってブラケット7が車体側に締結される。第1の絶縁電線2は、例えば電動式のパーキングブレーキに動作電源を供給するためのパーキングブレーキ用電線である。第2の絶縁電線3は、例えばABSセンサの検出信号を伝達するセンサ用電線である。また、第1の絶縁電線2又は第2の絶縁電線3を、電子制御式のダンパを制御するためのダンパ用電線としてもよい。あるいは、ダンパ用電線を第3の絶縁電線として追加し、シース4に収容してもよい。
【0013】
第1の絶縁電線2は、例えば銅からなる複数の素線を撚り合わせた導体線21、及び導体線21を被覆する絶縁体22からなる。同様に、第2の絶縁電線3は、例えば銅からなる複数の素線を撚り合わせた導体線31、及び導体線31を被覆する絶縁体32からなる。なお、第1の絶縁電線2は、第1の絶縁電線3よりも太く形成されている。
【0014】
シース4は、筒状であり、一対の第1の絶縁電線2及び一対の第2の絶縁電線3を一括して被覆している。シース4の内部において、シース4の内面と第1及び第2の絶縁電線2,3との間には、繊維状の介在41が配置されている。シース4は、一方の端部が成形部材5に保持され、他方の端部は図略の制御装置のケースに保持されている。
【0015】
成形部材5は、第1及び第2の絶縁電線2,3が導出されるシース4の端部4aの外周を覆ってシース4を保持するシース保持部51、及びシース4から導出された第1及び第2の絶縁電線2,3を保持する電線保持部52を一体に有している。
【0016】
シース4は、成形部材5の内部において直線状に、シース保持部51に保持されている。第1の絶縁電線2は、シース保持部51に保持されたシース4と平行かつ直線部を有するように、電線保持部52に保持されている。第2の絶縁電線3は、電線保持部52の内部で屈曲されて、第1の絶縁電線2とは異なる方向に向かって成形部材5から導出されている。以下、シース保持部51に保持されたシース4の中心軸の方向を軸方向といい、この軸方向に対して垂直な方向を径方向という。
【0017】
成形部材5は、径方向から見た場合に、シース4の外周側にあたる部分がシース保持部51として、またシース4の開口端面4bから先の部分が電線保持部52として、それぞれ形成されている。シース保持部51は、円筒状の本体部510と、本体部510から径方向に突出して軸方向に所定の距離を隔てて設けられた環状の一対のフランジ部511,511とを有している。
【0018】
一対のフランジ部511,511は、ブラケット7の巻き締め部71が巻き締められた部分における成形部材5の外周面5aから径方向外方に突出して設けられている。一対のフランジ部511,511を設けることにより、車体に固定されたブラケット7に対する成形部材5の軸方向の移動を規制することができる。なお、フランジ部511は、ワイヤハーネス1の移動を規制する方向に応じて1つでもよい。
【0019】
成形部材5及びシース4は、同種の樹脂材料からなり、成形部材5のモールド成形時の熱によりシース4の表面が成形部材5と溶け合うことにより、保持強度及び防水性が高められている。この樹脂材料としては、例えばウレタンを好適に用いることができる。成形部材5の樹脂材料として、ウレタンを用いる場合、シース4の材料として、ウレタンを用いることが好ましい。
【0020】
カバー部材6は、成形部材5の一部を覆っている。また、カバー部材6には、第1の絶縁電線2及び第2の絶縁電線3を挿通させる挿通孔61a及び62aが形成されている。挿通孔61a及び挿通孔62aにおけるカバー部材6の内周面は、第1の絶縁電線2及び第2の絶縁電線3の外周面と接触している。より詳しくは、カバー部材6は、第1の絶縁電線2が導出される成形部材5の端面5bに対向する対向壁部61と、成形部材5の電線保持部52に外嵌される筒状の周壁部62とを一体に有し、周壁部62の内周面が成形部材5の電線保持部52の外周面5aに弾性的に接触(弾接)している。すなわち、周壁部62の内径は、電線保持部52に外嵌されることにより押し広げられており、その復元力により周壁部62の内周面が成形部材5の外周面5aに弾性的に接触している。
【0021】
対向壁部61は、第1の絶縁電線2を第1の方向(例えば、軸方向)にガイドする第1のガイド筒部611を有し、第1のガイド筒部611に形成された挿通孔61aの内周面が第1の絶縁電線2の外周面に弾接している。すなわち、挿通孔61aの内径は、第1の絶縁電線2が挿通されることにより押し広げられており、その復元力により挿通孔61aの内周面が第1の絶縁電線2の外周面に弾性的に接触している。第1のガイド筒部611は、対向壁部61から第1の絶縁電線2を導出する方向に突出して設けられている。第1のガイド筒部611は、周壁部62よりも小径の円筒状であり、第1の絶縁電線2を先端面から導出している。
【0022】
周壁部62は、第2の絶縁電線3を第1の方向とは異なる第2の方向(例えば、径方向)にガイドする第2のガイド筒部621を有し、第2のガイド筒部621に形成された挿通孔62aの内周面が第2の絶縁電線3の外周面に弾接している。すなわち、挿通孔62aの内径は、第2の絶縁電線3が挿通されることにより押し広げられており、その復元力により挿通孔62aの内周面が第2の絶縁電線3の外周面に弾性的に接触している。第2のガイド筒部621は、周壁部62から径方向に突出して設けられている。第2のガイド筒部621は、第1のガイド筒部611よりも小径の円筒状であり、第2の絶縁電線3を先端面から導出している。
【0023】
カバー部材6は、ゴム状弾性体からなる。ゴム状弾性体としては、例えば、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)、シリコーンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム等を用いることができる。また、カバー部材6としては、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PA(ポリアミド)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、エポキシ等を用いることもできる。
【0024】
なお、カバー部材6は、第1のガイド筒部611を設けずに対向壁部61に第1の絶縁電線2を挿通させる挿通孔61aを形成し、挿通孔61aの内周面が第1の絶縁電線2の外周面に弾接してもよい。また、カバー部材6は、第2のガイド筒部621を設けずに周壁部62に第2の絶縁電線3を挿通させる挿通孔62aを形成し、挿通孔62aの内周面が第2の絶縁電線3の外周面に弾接してもよい。
【0025】
第1のガイド筒部611の外周面611aは、第1の締付部材8Aによって締め付けられて押圧されている。第2のガイド筒部621の外周面621aは、第2の締付部材8Bによって締め付けられて押圧されている。周壁部62のシース4側の端部の外周面62bは、第3の締付部材8Cによって締め付けられて押圧されている。第1乃至第3の締付部材8A~8Cは、例えば合成樹脂やSUS等の金属からなる。また、第3の締付部材8Cによる締付効果を発揮させるため、図2(a)に示すように、成形部材5の電線保持部52の第1の絶縁電線2から外周面5aまでの厚さTがカバー部材6の周壁部62の厚さtよりも厚い(例えば3倍以上)ことが望ましい。
【0026】
図3は、第1の締付部材8Aの構成例を示し、(a)は正面図、(b)は側面図である。なお、図示は省略しているが、第2の締付部材8B及び第3の締付部材8Cも、第1の締付部材8Aと同様に構成することができる。
【0027】
第1の締付部材8Aは、帯状の本体部81の一方の端部にノッチ821を有する係止ヘッド82を有しており、この係止ヘッド82に本体部81の他端部が挿通される。ノッチ821は、本体部81を係止し、本体部81によって第1の導出部53を締めつけた状態を維持する。
【0028】
ブラケット7は、例えばアルミニウム等の板状の金属からなり、成形部材5の一対のフランジ部511,511間の外周面5aに巻き締められた巻き締め部71、及び車体側の固定対象に固定される固定部72を一体に有している。固定部72には、貫通孔720が板厚方向に貫通して形成されている。巻き締め部71は、軸方向視において、成形部材5の外周面5aを半周以上にわたって囲っている。なお、巻き締め部71が成形部材5の本体部510の外周面5aの全体に巻き締められていてもよい。
【0029】
(ワイヤハーネスの製造工程)
次に、ワイヤハーネス1の製造工程の一例について説明する。まず、シース4から第1の絶縁電線2を軸方向に導出し、第2の絶縁電線3を径方向に導出した状態で、シース4の端部4a、及び当該端部4aから導出された第1及び第2の絶縁電線2,3の一部を覆うように成形部材5をモールド成形する。
【0030】
次に、カバー部材6の第1のガイド筒部611の挿通孔61aに第1の絶縁電線2を挿通させ、カバー部材6の第2のガイド筒部621の挿通孔62aに第2の絶縁電線3を挿通させる。
【0031】
次に、カバー部材6の周壁部62を成形部材5の電線保持部52に被着させた後、第1の締付部材8Aにより第1のガイド筒部611の外周面611aを締め付け、第2の締付部材8Bにより第2のガイド筒部621の外周面621aを締め付け、第3の締付部材8Cにより周壁部62のシース4側の端部の外周面62bを締め付ける。
【0032】
次に、成形部材5の一対のフランジ部511,511間の外周面5aにブラケット7の巻き締め部71を巻き付けることによりワイヤハーネス1が製造される。その後は、ブラケット7の固定部72に形成されている貫通孔720にボルト、リベット等の締結部材を挿通して車体側に固定される。
【0033】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明した実施の形態によれば、以下のような作用及び効果が得られる。
【0034】
カバー部材6は、挿通孔61a,62aの内周面が第1及び第2の絶縁電線2,3の外周面に接触している。これにより、第1及び第2の絶縁電線2,3に車両の振動が加わったり、第1及び第2の絶縁電線2,3が強く屈曲されたり、あるいは配索の際に第1及び第2の絶縁電線2,3が引っ張られたりしたとしても、これら振動や屈曲あるいは引っ張られによる第1及び第2の絶縁電線2,3の変形の起点が成形部材5の端面5bからカバー部材6の先端面(第1のガイド筒部611の先端面及び第2のガイド筒部621の先端面)へ移動する。これにより、第1及び第2の絶縁電線2,3に車両の振動が加わったり、第1及び第2の絶縁電線2,3が強く屈曲されたり、あるいは配索の際に第1及び第2の絶縁電線2,3が引っ張られたりしたとしても、成形部材5と第1及び第2の絶縁電線2,3との間に印加される負荷が軽減され、成形部材5と第1及び第2の絶縁電線2,3との間に隙間ができる虞を抑制することが可能となる。したがって、成形部材5と第1及び第2の絶縁電線2,3との間の止水性の低下を防ぐことが可能となる。
【0035】
シース4と成形部材5とは、成形部材5のモールド成形時の熱によりシース4の表面が成形部材5と溶け合うことにより密着するため、成形部材5とシース4との間の止水性が高まる。これにより、成形部材5とシース4との間を介したシース4内への水の浸入を抑制することが可能となる。さらにブラケット7の巻き締め部71の巻き締め力によってシース4が径方向に加圧されるため、成形部材5とシース4との間の止水性がより一層高まる。
【0036】
カバー部材6は、挿通孔61a,62aの内周面が第1及び第2の絶縁電線2,3の外周面に弾接しているので、カバー部材6と第1及び第2の絶縁電線2,3との間の止水性が高まる。これにより、たとえ絶縁体22,32と成形部材5とがモールド成形時の熱により溶け合っていない場合であっても、第1及び第2の絶縁電線2,3と成形部材5との間を介したシース4内への水の浸入を抑制することが可能となる。さらに、カバー部材6の第1のガイド筒部611の外周面611aを第1の締付部材8Aによって締め付け、第2のガイド筒部621の外周面621aを第2の締付部材8Bによって締め付けているため、カバー部材6と第1及び第2の絶縁電線2,3との間の止水性がより一層高まる。また、周壁部62のシース4側の端部の外周面62bを第3の締付部材8Cによって締め付けているため、カバー部材6と成形部材5との間から浸入する水をより止水することができる。
【0037】
カバー部材6をゴム弾性体で構成しているため、第1及び第2の絶縁電線2,3をガイドする(第1及び第2の絶縁電線2,3の導出方向を固定する)ことが可能でありながら、第1及び第2の絶縁電線2,3が車両の振動等で屈曲したとしても、第1及び第2の絶縁電線2,3の屈曲に追従してカバー部材6も屈曲するので、第1及び第2の絶縁電線2,3の損傷を抑制することができる。
【0038】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について、図4を参照して説明する。
【0039】
図4は、本発明の第2の実施の形態に係るワイヤハーネス1Aを示す縦断面である。第1の実施の形態では、第2の絶縁電線3をガイドする第2のガイド筒部621をカバー部材6の周壁部62に設けたが、本実施の形態は、カバー部材6の対向壁部61の第1の絶縁電線2を導出する側に第2のガイド筒部622を設けたものである。図4において、第1の実施の形態において説明したものと共通する構成要素については、第1の実施の形態で用いた符号と同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0040】
本実施の形態では、第2のガイド筒部622に形成された挿通孔61bに第2の絶縁電線3を挿通させて径方向に導出している。また、第2のガイド筒部622に形成された挿通孔61bの内周面が第2の絶縁電線3の外周面に弾接している。第2のガイド筒部622は、第1の実施の形態と同様に、第2の締付部材8Bによって締め付けられている。
【0041】
なお、第1のガイド筒部611は、第1の締付部材8Aによる締付領域を確保するため、第1の実施の形態と比べて第1の絶縁電線2を導出する方向に長くしている。
【0042】
この第2の実施の形態によっても、第1の実施の形態と同様の作用及び効果が得られる。また、第1の実施の形態では、成形部材5及びカバー部材6によって第2の絶縁電線3を径方向に導出したが、本実施の形態によれば、カバー部材6のみよって第2の絶縁電線3を径方向に導出することができる。またさらに、電線保持部52内において第1及び第2の絶縁電線2,3を直線状に(直線部を有するように)配置できるので、電線保持部52内でこれらの絶縁電線2,3を湾曲させる場合に生じ得る課題、例えば湾曲の外径側で絶縁体22,32が引き延ばされて薄くなり、この絶縁体22,32の薄くなった箇所が成形部材5をモールド成形する際の熱により損傷してしまう課題を発生させることなく、成形部材5によって第1及び第2の絶縁電線2,3を保持することができる。
【0043】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について、図5を参照して説明する。
【0044】
図5は、本発明の第3の実施の形態に係るワイヤハーネス1Bを示す縦断面である。第2の実施の形態では、第2の絶縁電線3をガイドする第2のガイド筒部622が第2の絶縁電線3を径方向に導出するが、本実施の形態の第2のガイド筒部623は、第2の絶縁電線3を軸方向に対して斜め方向(例えば、45°方向)に導出するものである。図5において、第1及び第2の実施の形態において説明したものと共通する構成要素については、第1及び第2の実施の形態で用いた符号と同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0045】
本実施の形態では、第2のガイド筒部623に形成された挿通孔61cに第2の絶縁電線3を挿通させて斜め方向に導出している。また、第2のガイド筒部623に形成された挿通孔61cの内周面が第2の絶縁電線3の外周面に弾接している。第2のガイド筒部623は、第1の実施の形態と同様に、第2の締付部材8Bによって締め付けられている。
【0046】
この第3の実施の形態によっても、第1の実施の形態と同様の作用及び効果が得られる。また、第1の実施の形態では、成形部材5及びカバー部材6によって第2の絶縁電線3を径方向に導出したが、本実施の形態によれば、カバー部材6のみよって第2の絶縁電線3を任意の方向に導出することができる。またさらに、第2の実施の形態と同様に、電線保持部52内において第1及び第2の絶縁電線2,3を直線状(直線部を有するように)に配置できるので、電線保持部52内でこれらの絶縁電線2,3を湾曲させる場合に生じ得る課題を発生させることなく、成形部材5によって第1及び第2の絶縁電線2,3を保持することができる。
【0047】
[第4の実施の形態]
図6は、本発明の第4の実施の形態に係るワイヤハーネス1Cを示す縦断面である。第1乃至第3の実施の形態では、カバー部材6の周壁部62のシース4側の端部の外周面62bを第3の締付部材8Cによって締め付けた場合について説明したが、本実施の形態は、ブラケット7が第3の締付部材8Cを兼ねている。以下、第3の実施の形態と異なる点を中心に説明する。
【0048】
本実施の形態のカバー部材6は、周壁部62を成形部材5の第1及び第2の絶縁電線2,3の導出方向と反対側の端面52cまで延在させている。ブラケット7の巻き締め部71は、カバー部材6の周壁部62の外周面62bを巻き締めている。
【0049】
この第4の実施の形態によっても、第3の実施の形態と同様の効果が得られる。また、ブラケット7の巻き締め部71を周壁部62に巻き締めることによりカバー部材6の周壁部62が凹むため、ワイヤハーネス1の移動を規制する効果が得られる。また、第3の締付部材8Cを省くことができる。すなわち、ブラケット7の巻き締め部71は、カバー部材6と成形部材5との間の止水性を高める機能も有する。
【0050】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0051】
[1]導体線(21,31)が絶縁体(22,32)で被覆された複数の絶縁電線(2,3)と、前記複数の絶縁電線(2,3)の長手方向の一部を覆うシース(4)と、前記複数の絶縁電線(2,3)を導出させる前記シース(4)の端部(4a)及び当該端部(4a)から導出された前記複数の絶縁電線(2,3)の一部を覆う成形部材(5)と、前記成形部材(5)の端面(5b)に対向する対向壁部(61)を有するカバー部材(6)と、を備え、前記カバー部材(6)は、前記対向壁部(61)に前記複数の絶縁電線(2,3)のうち少なくとも一部の絶縁電線(2)を挿通させる挿通孔(61a)が形成されており、前記挿通孔(61a)の内周面が前記少なくとも一部の絶縁電線(2)の外周面に接触している、ワイヤハーネス(1/1A/1B/1C)。
【0052】
[2]前記カバー部材(6)は、前記成形部材(5)に外嵌される筒状の周壁部(62)を前記対向壁部(61)と一体に有するゴム状弾性体からなり、前記周壁部(62)の内周面が前記成形部材(5)の外周面(5a)に弾接している、上記[1]に記載のワイヤハーネス(1/1A/1B/1C)。
【0053】
[3]前記対向壁部(61)は、前記複数の絶縁電線(2,3)のうち一部の絶縁電線(2)を第1の方向にガイドする第1のガイド筒部(611)を有し、前記周壁部(62)は、前記複数の絶縁電線(2,3)のうち他の一部の絶縁電線(3)を前記第1の方向とは異なる第2の方向にガイドする第2のガイド筒部(621)を有し、前記第1のガイド筒部(611)に形成された前記挿通孔(61a)の内周面が前記一部の絶縁電線(2)の外周面に弾接し、前記第2のガイド筒部(621)に形成された前記挿通孔(62a)の内周面が前記他の一部の絶縁電線(3)の外周面に弾接している、上記[2]に記載のワイヤハーネス(1)。
【0054】
[4]前記対向壁部(61)は、前記複数の絶縁電線(2,3)のうち一部の絶縁電線(2)を第1の方向にガイドする第1のガイド筒部(611)、及び前記複数の絶縁電線(2,3)のうち他の一部の絶縁電線(3)を前記第1の方向とは異なる第2の方向にガイドする第2のガイド筒部(622/623)を有し、前記第1のガイド筒部(611)に形成された前記挿通孔(61a)の内周面が前記一部の絶縁電線(2)の外周面に弾接し、前記第2のガイド筒部(622/623)に形成された前記挿通孔(61b/61c)の内周面が前記他の一部の絶縁電線(3)の外周面に弾接している、上記[2]に記載のワイヤハーネス(1A/1B/1C)。
【0055】
[5]前記第1のガイド筒部(611)の外周面(611a)が第1の締付部材(8A)により締め付けられ、前記第2のガイド筒部(621/622/623)の外周面(621a/622a/623a)が第2の締付部材により締め付けられている、上記[3]又は[4]に記載のワイヤハーネス(1A/1B/1C)。
【0056】
[6]前記成形部材(5)を取付対象に取り付けるための固定金具(7)をさらに備え、前記シース(4)の外周側にあたる前記成形部材(5)の外周面(5a)の少なくとも一部が前記固定金具(7)により締め付けられている、上記[1]乃至[5]の何れか1つに記載のワイヤハーネス(1/1A/1B)。
【0057】
[7]前記成形部材(5)及び前記カバー部材(6)を取付対象に取り付けるための固定金具(7)をさらに備え、前記固定金具(7)は、前記周壁部(62)の少なくとも一部を前記成形部材(5)に締め付けている、上記[2]乃至[5]の何れか1つに記載のワイヤハーネス(1C)。
【0058】
(付記)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0059】
また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。例えば、上記実施の形態では、第1及び第2の絶縁電線2,3が互いに異なる方向に導出された場合について説明したが、第1及び第2の絶縁電線2,3が同じ方向に導出されてもよい。また、ワイヤハーネス1,1A,1B,1Cの用途についても特に限定はない。
【符号の説明】
【0060】
1,1A,1B,1C…ワイヤハーネス
2…第1の絶縁電線
3…第2の絶縁電線
4…シース
4a…端部
5…成形部材
5a…外周面
5b…端面
6…カバー部材
7…ブラケット(固定金具)
21,31…導体線
22,32…絶縁体
61…対向壁部
61a,61b,61c…挿通孔
62…周壁部
62a…挿通孔
611…第1のガイド筒部
621,622,623…第2のガイド筒部
図1
図2
図3
図4
図5
図6