(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】液晶デバイス用材料および液晶デバイス
(51)【国際特許分類】
C09K 19/54 20060101AFI20220809BHJP
C09K 19/38 20060101ALI20220809BHJP
C09K 19/20 20060101ALI20220809BHJP
C09K 19/30 20060101ALI20220809BHJP
C09K 19/12 20060101ALI20220809BHJP
C09K 19/34 20060101ALI20220809BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20220809BHJP
G02F 1/1334 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
C09K19/54 B
C09K19/38
C09K19/54 Z
C09K19/20
C09K19/30
C09K19/12
C09K19/34
G02F1/13 505
G02F1/13 500
G02F1/1334
(21)【出願番号】P 2018532006
(86)(22)【出願日】2017-08-04
(86)【国際出願番号】 JP2017028413
(87)【国際公開番号】W WO2018025996
(87)【国際公開日】2018-02-08
【審査請求日】2020-03-19
(31)【優先権主張番号】P 2016153864
(32)【優先日】2016-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2016217309
(32)【優先日】2016-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】311002067
【氏名又は名称】JNC株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596032100
【氏名又は名称】JNC石油化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】田辺 真裕美
(72)【発明者】
【氏名】山本 真一
(72)【発明者】
【氏名】藤田 浩章
【審査官】仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/097952(WO,A1)
【文献】特開2006-089622(JP,A)
【文献】特開2015-214649(JP,A)
【文献】特開2010-195921(JP,A)
【文献】特開2014-058671(JP,A)
【文献】特開昭62-081354(JP,A)
【文献】特開2004-250397(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 19/54
C09K 19/38
C09K 19/20
C09K 19/30
C09K 19/12
C09K 19/34
G02F 1/13
G02F 1/1334
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極層を有する少なくとも一方が透明な2枚の基板と、この基板間に支持された調光層を有し、
上記調光層が重合性化合物の重合物からなる透明物質と、
一般式(K1)および(K2)で表される化合物から選ばれる少なくとも1つのキラル化合物および式(1-A)または(1-B)で表される化合物を含む、キラルネマチック相を示す液晶材料とを含
み、
電圧無印加時に透明であり、電圧印加時に不透明となるリバースモードもしくは電圧無印加時に不透明であり、電圧印加時に透明となるノーマルモードで駆動することを特徴とする液晶デバイス。
【化1】
(式(K1)および(K2)中、
R
k1はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、シアノ、-SF
5、または炭素数1~5のアルキルであり、このアルキル中の少なくとも1つの-CH
2-は、-O-、-COO-または-OCO-、で置き換えられてもよく、少なくともひとつの-CH
2-CH
2-は、-CH=CH-または-C≡C-で置き換えられてもよいが、2つの連続する-CH
2-が-O-で置き換えられることはなく、このアルキル中の少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
R
k2はそれぞれ独立して水素、ハロゲン、シアノ、-SF
5、または炭素数1~20のアルキルであり、このアルキル中の少なくとも1つの-CH
2-は、-O-、-COO-または-OCO-、で置き換えられてもよく、少なくともひとつの-CH
2-CH
2-は、-CH=CH-または-C≡C-で置き換えられてもよいが、2つの連続する-CH
2-が-O-で置き換えられることはなく、このアルキル中の少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
環Aはそれぞれ独立して、フェニレン環と連結して多環構造を構成する環であり、1,2-フェニレンあるいは1,2-シクロヘキシレンを示し;
環A
k1はそれぞれ独立して2個の結合部位を有する環構造であり、1,4-フェニレン、1,4-シクロヘキシレン、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル、テトラヒドロピラン-3,5-ジイル、ピリミジン-2,5-ジイル、ピリジン-2,5-ジイル、または1,4-ビシクロ-(2,2,2)-オクチレンであり、これらの環中の少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
X
k1はそれぞれ独立して、単結合、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-OCH
2-、-CH
2O-、-CF
2O-、-OCF
2-、-CH=CH-、-CF
2CF
2-、-CF=CF-、または-C≡C-であり;Y
k1はそれぞれ独立して、単結合、または-(CH
2)
n-であり、nは
0~20の整数であり;
Z
k1はそれぞれ独立して、単結合、または炭素数1~10のアルキレンであり、このアルキレン中の少なくとも1つの-CH
2-は、-O-、-COO-または-OCO-、で置き換えられてもよく、少なくともひとつの-CH
2-CH
2-は、-CH=CH-、-CF=CF-または-C≡C-で置き換えられてもよく、このアルキレン中の少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく(ただし、Z
k1中に-O-O-があるものを
除く);
mk1はそれぞれ独立して、2~4の整数であり;
nk1、およびnk2はそれぞれ
独立して、0~2の整数である。)
【化2】
(式(1-A)または(1-B)において、
R
11は水素、炭素数1~20のアルキルであり、このアルキル中の少なくとも1つの-CH
2-は、-O-、-S-、-COO-、-OCO-または-CH=CH-で置き換えられてもよく、このアルキル中の少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく、
環A
11、環A
12および環A
13は独立して、1,4-フェニレンまたは1,4-シクロヘキシレンであり、これらの環中の少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく、
Z
11およびZ
12は独立して、単結合、炭素数1~4のアルキレンであり、このアルキレン中の少なくとも1つの-CH
2-は、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-CH=CH-、-CF=CF-または-C≡C-で置き換えられてもよく、このアルキレン中の少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく、
L
11およびL
12はそれぞれ独立して水素またはハロゲンであり、
X
11はハロゲン、-C≡N、-N=C=S、-CF
3または-OCF
3であり、lは、0、1または2である。)
【請求項2】
一般式(K1)および(K2)で表される化合物が式(K101)~(K106)または(K201)~(K206)である請求項1に記載の液晶デバイス。
【化3】
【化4】
(式(K101)~(K106)および式(K201)~(K206)において、
R
k2はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、シアノ、-SF
5、または炭素数1~20のアルキルであり、
nはそれぞれ独立して、
0~20の整数であり、
ただし、部分構造式(X1)および式(X2)
【化5】
は、独立して、任意の水素が1つまたは2つのフッ素で置換されていてもよい1,4-フェニレンである。)
【請求項3】
式(K101)~(K106)で表される化合物のnが0である請求項2に記載の液晶デバイス。
【請求項4】
式(K201)~(K206)で表される化合物のnが1である請求項2に記載の液晶デバイス。
【請求項5】
液晶材料が、さらに式(1-C)で表される化合物を含む請求項1から4のいずれか一項に記載に記載の液晶デバイス。
【化6】
(式(1-C)において、
R
11は水素、炭素数1~20のアルキルであり、このアルキル中の少なくとも1つの-CH
2-は、-O-、-S-、-COO-、-OCO-または-CH=CH-で置き換えられてもよく、このアルキル中の少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく、
環A
11は独立して、1,4-フェニレンまたは1,4-シクロヘキシレンであり、これらの環中の少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく、
lは、1、2または3である。)
【請求項6】
液晶材料が、さらに一般式(1-E)で表される化合物を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の液晶デバイス。
【化7】
(一般式(1-E)において、R
11は水素、炭素数1~20のアルキルであり、このアルキル中の少なくとも1つの-CH
2-は、-O-、-S-、-COO-、-OCO-または-CH=CH-で置き換えられてもよく、このアルキル中の少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく、
環A
11および環A
12は独立して、1,4-フェニレン、または1,4-シクロヘキシレンであり、これらの環の任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、
Z
11およびZ
12は独立して、単結合、炭素数1~4のアルキレン(アルキレンの任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよい)であり、このアルキレン中の少なくとも1つの-CH
2-は、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-CF
2O-、-OCF
2-、-CH=CH-、-CF=CF-または-C≡C-で置き換えられてもよく、
L
11およびL
12は独立して水素またはハロゲンであり、
X
11はハロゲン、-C≡N、-N=C=S、-SF
5、-CF
3または-OCF
3であり、
lおよびmは独立して、0または1である。)
【請求項7】
調光層中の透明物質の含有量が、0.1~50重量%の範囲である請求項1に記載の液晶デバイス。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載される液晶デバイスの調光層に、電圧を印加することで、調光層を駆動することを特徴とする、調光方法。
【請求項9】
電極層を有する少なくとも一方が透明な2枚の基板間に、重合性化合物と、一般式(K1)および(K2)で表される化合物から選ばれる少なくとも1つのキラル化合物および式(1-A)または(1-B)で表される化合物を含む、キラルネマチック相を示す液晶材料とを介在させ、紫外線照射または加熱により、上記重合性化合物を重合させて、透明物質と液晶材料からな調光層を形成することを特徴とする請求項1に記載の液晶デバイスの製造方法。
【請求項10】
調光窓であることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の液晶デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板を使用しない液晶組成物を含有する調光窓材を構成する液晶デバイスに関する。
【0002】
更に詳しくは、外光や視界の遮断、透過を電気的に操作し得る液晶デバイスであり、特に建物の窓やショーウインドウ、室内のパーテーション、車のサンルーフ、リアウインドウなどで外光や視界を遮断・透過するための調光窓に利用される液晶デバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
光散乱型液晶表示用デバイスの実用化に要求される重要な特性である低電圧駆動を可能にする技術として、特許文献1~3には光重合性組成物とキラル材からなるキラルネマチィック液晶組成物を用いた調光層が開示されている。キラルネマチィックに含有される光重合性モノマーを重合開始剤の存在下で光重合させることで調光層を製造し、低電圧駆動の液晶デバイスに用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3401680号公報
【文献】特許第3383921号公報
【文献】特許第3401681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の液晶デバイスは、調光窓としての駆動は達成されるが、表示用液晶デバイスの実用化において重視される高いコントラストを備えていなかった。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、調光窓としての低駆動電圧、高コントラスト特性を持つ液晶デバイス用材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために、液晶材料との溶解性が高く、ヘリカル・ツイスト・パワー(HTP)の大きいキラル剤を用い、調光層中の液晶材料について検討した。その結果、所定の構成を採用することで調光窓としての駆動電圧が低く、高コントラスト液晶デバイスを作製できるとことを見出し、本発明を完成するに到った。
【0008】
本発明は上記課題を解決するために、下記[1]を含む事項を提供する。
[1]少なくとも一つの重合性化合物ならびに一般式(K1)および(K2)で表される化合物から選ばれる少なくとも1つの化合物を含有する液晶材料からなることを特徴とする液晶デバイス用材料。
【0009】
【化1】
(式(K1)および(K2)中、
R
k1はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、シアノ、-SF
5、または炭素数1~5のアルキルであり、このアルキル中の少なくとも1つの-CH
2-は、-O-、-COO-または-OCO-、で置き換えられてもよく、少なくともひとつの-CH
2-CH
2-は、-CH=CH-または-C≡C-で置き換えられてもよいが、2つの連続する-CH
2-が-O-で置き換えられることはなく、このアルキル中の少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
R
k2はそれぞれ独立して水素、ハロゲン、シアノ、-SF
5、または炭素数1~20のアルキルであり、このアルキル中の少なくとも1つの-CH
2-は、-O-、-COO-または-OCO-、で置き換えられてもよく、少なくともひとつの-CH
2-CH
2-は、-CH=CH-または-C≡C-で置き換えられてもよいが、2つの連続する-CH
2-が-O-で置き換えられることはなく、このアルキル中の少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
環Aはそれぞれ独立して、フェニレン環と連結して多環構造を構成する環であり、1,2-フェニレンあるいは1,2-シクロヘキシレンを示し;
環A
k1はそれぞれ独立して2個の結合部位を有する環構造であり、1,4-フェニレン、1,4-シクロヘキシレン、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル、テトラヒドロピラン-3,5-ジイル、ピリミジン-2,5-ジイル、ピリジン-2,5-ジイル、または1,4-ビシクロ-(2,2,2)-オクチレンであり、これらの環中の少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
X
k1はそれぞれ独立して、単結合、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-OCH
2-、-CH
2O-、-CF
2O-、-OCF
2-、-CH=CH-、-CF
2CF
2-、-CF=CF-、または-C≡C-であり;
Y
k1はそれぞれ独立して、単結合、または-(CH
2)
n-であり、nは1~20の整数であり;
Z
k1はそれぞれ独立して、単結合、または炭素数1~10のアルキレンであり、このアルキレン中の少なくとも1つの-CH
2-は、-O-、-COO-または-OCO-、で置き換えられてもよく、少なくともひとつの-CH
2-CH
2-は、-CH=CH-、-CF=CF-または-C≡C-で置き換えられてもよく、このアルキレン中の少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく(ただし、Z
k1中に-O-O-があるものを除く);
mk1はそれぞれ独立して、2~4の整数であり; nk1、およびnk2はそれぞれ独立して、0~2の整数である。)
さらに、本発明は、以下の[2]から[11]も含む。
[2]一般式(K1)および(K2)で表される化合物が式(K101)~(K106)または(K201)~(K206)である[1]に記載の液晶デバイス用材料。
【0010】
【0011】
【化3】
(式(K101)~(K106)および式(K201)~(K206)において、
R
k2はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、シアノ、-SF
5、または炭素数1~20のアルキルであり、
nはそれぞれ独立して、1~20の整数であり、
ただし、部分構造式(X1)および式(X2)
【0012】
【化4】
は、独立して、任意の水素が1つまたは2つのフッ素で置換されていてもよい1,4-フェニレンである。)
[3]式(K101)~(K106)で表される化合物のnが0である[2]に記載の液晶デバイス用材料。
[4]式(K201)~(K206)で表される化合物のnが1である[2]に記載の液晶デバイス用材料。
[5]液晶材料が、さらに式(1-A)または(1-B)で表される化合物を含む[1]から[4]のいずれか一項に記載の液晶デバイス用材料。
【0013】
【化5】
(式(1-A)または(1-B)において、
R
11は水素、炭素数1~20のアルキルであり、このアルキル中の少なくとも1つの-CH
2-は、-O-、-S-、-COO-、-OCO-または-CH=CH-で置き換えられてもよく、このアルキル中の少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく、
環A
11、環A
12および環A
13は独立して、1,4-フェニレンまたは1,4-シクロヘキシレンであり、これらの環中の少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく、
Z
11およびZ
12は独立して、単結合、炭素数1~4のアルキレンであり、このアルキレン中の少なくとも1つの-CH
2-は、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-CH=CH-、-CF=CF-または-C≡C-で置き換えられてもよく、このアルキレン中の少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく、
L
11およびL
12はそれぞれ独立して水素またはハロゲンであり、
X
11はハロゲン、-C≡N、-N=C=S、-CF
3または-OCF
3であり、 lは、0、1または2である。)
[6]液晶材料が、さらに式(1-C)で表される化合物を含む[1]に記載の液晶デバイス用材料。
【0014】
【化6】
(式(1-C)において、
R
11は水素、炭素数1~20のアルキルであり、このアルキル中の少なくとも1つの-CH
2-は、-O-、-S-、-COO-、-OCO-または-CH=CH-で置き換えられてもよく、このアルキル中の少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく、
環A
11は独立して、1,4-フェニレンまたは1,4-シクロヘキシレンであり、これらの環中の少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく、
lは、1、2または3である。)
[7]液晶材料が、さらに一般式(1-E)で表される化合物を含む、[1]から[6]のいずれか一項に記載の液晶デバイス用材料。
【0015】
【化7】
(一般式(1-E)において、R
11は水素、炭素数1~20のアルキルであり、このアルキル中の少なくとも1つの-CH
2-は、-O-、-S-、-COO-、-OCO-または-CH=CH-で置き換えられてもよく、このアルキル中の少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく、
環A
11、環A
12は独立して、1,4-フェニレン、または1,4-シクロヘキシレンであり、これらの環の任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、
Z
11およびZ
12は独立して、単結合、炭素数1~4のアルキレン(アルキレンの任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよい)であり、このアルキレン中の少なくとも1つの-CH
2-は、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-CF
2O-、-OCF
2-、-CH=CH-、-CF=CF-または-C≡C-で置き換えられてもよく、
L
11およびL
12は独立して水素またはハロゲンであり、
X
11はハロゲン、-C≡N、-N=C=S、-SF
5、-CF
3または-OCF
3であり、
lおよびmは独立して、0または1である。)
[8]電極層を有する少なくとも一方が透明な2枚の基板と、この基板間に支持された調光層を有し、上記調光層が請求項1から7のいずれかに記載される、上記重合性化合物の重合物からなる透明物質と、キラルネマチック相を示す液晶材料とを含むことを特徴とする液晶デバイス。
[9]調光層中の透明物質の含有量が、0.1~60重量%の範囲である[8]の液晶デバイス。
[10]請求項1から7のいずれかに記載される、上記重合性化合物の重合物からなる透明物質と、キラルネマチック相を示す液晶材料とを含む調光層に、
電圧を印加することで、調光層を駆動することを特徴とする、調光方法。
[11]電極層を有する少なくとも一方が透明な2枚の基板と、この基板間に支持された調光層を有し、上記調光層が、請求項1から7のいずれかに記載される、上記重合性化合物の重合物からなる透明物質と、キラルネマチック相を示す液晶材料とを含み、
電極間に電圧を印加することで、調光層を駆動することを特徴とする、調光方法。
[12]電極層を有する少なくとも一方が透明な2枚の基板間に、請求項1から7のいずれかに記載の液晶デバイス用材料を介在させ、紫外線照射または加熱により、上記重合性組成物を重合させて、透明物質と液晶材料からな調光層を形成することを特徴とする液晶デバイスの製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明の液晶デバイスは、一般式(K1)および(K2)で表される化合物から選ばれる少なくとも1つの化合物を液晶材料として含有する。このような液晶デバイスを採用した調光窓は、低電圧駆動性を有し、コントラストが高い。本発明の液晶デバイスは、電圧の印加時と無印加時に、光散乱の変化が大きい。
【0017】
また、本発明の液晶デバイスからなる調光窓は、広い温度範囲でコントラスト特性が変動しないという特性も有する。本発明の調光窓は、駆動電圧が低くても高いコントラスト特性が得られ、高い駆動電圧源も必要としない。
【0018】
このような液晶デバイスは、外光や視界の遮断、透過を電気的に操作し得るものであり、建物の窓やショーウインドウ、室内のパーテーション、車のサンルーフ、リアウインドウなどで外光や視界を遮断・透過するための調光ガラス、コンピュータ端末の表示装置、プロジェクションの表示装置等種々の用途に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の液晶デバイスの構造の一例を示す断面図である。
【
図2】本発明の液晶デバイスの構造の一例を示す断面図である。
【
図3】本発明の液晶デバイスの構造の一例を示す断面図である。
【
図4】本発明の液晶デバイスの構造の一例を示す断面図である。
【
図5】実施例で評価した、高分子/液晶複合材料PDLC-Aの電極間の印加電圧-透過率曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施態様について以下に説明するが、本発明はこれらの記載に限定的に解釈されない。
【0021】
本発明の液晶デバイス用材料は、少なくとも一つの重合性化合物ならびに上記一般式(K1)および(K2)で表される化合物から選ばれる少なくとも1つの化合物を含有する液晶材料からなることを特徴とする。
【0022】
本発明中で、化合物について、化学構造式中の環の構造を示す価標と化学構造式中の官能基を有する価標とを交差させて構造を示したときは、当該官能基が当該環に有する水素と置換していない化合物及び当該官能基がそれぞれ独立して当該環に有する水素と置換してできた化合物の両方を示す。
【0023】
本発明中で、化合物について、化学構造式中の2個の結合部を有する環構造を示したときは、一方の結合部と他方の結合部を入れ替えてできる化合物も含めるものとする。
【0024】
一般式(K1)および(K2)で表わされる化合物は、キラル化合物であることが好ましい。この化合物は、HTPが大きく相溶性が高いので0.5μm以下のピッチの調整が可能である。さらに効果的な光散乱性が得られるので、コントラストの高い液晶デバイスを提供することができる。
【0025】
一般式(K1)および(K2)で表される化合物として、式(K101)~(K106)または(K201)~(K206)が、他の液晶材料との溶解性が高いので添加量を多くでき、広範囲のピッチの調整が可能となる。さらに調整後の組成物が結晶を析出することなく室温で長時間保存できる。組成物中の結晶が析出すると製品の品質低下につながる。このため製品の品質を維持するために組成物の室温での保存安定性が求められる。
【0026】
【0027】
【化9】
(式(K101)~(K106)および式(K201)~(K206)において、
R
k2はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、シアノ、-SF
5、または炭素数1~20のアルキルであり、
nはそれぞれ独立して、1~20の整数であり、
ただし、部分構造式(X1)および式(X2)
【0028】
【化10】
は、独立して、任意の水素が1つまたは2つのフッ素で置換されていてもよい1,4-フェニレンである。)
式(K101)~(K106)で表される化合物のnが0であることが、大きなHTPを発現する点で好ましい。
【0029】
また、式(K201)~(K206)で表される化合物のnが1であることが、大きなHTPを発現し、さらに生産性が高い点で好ましい。
【0030】
本発明で使用する液晶材料として典型的には、本発明の液晶デバイス用材料に含まれる重合性化合物が重合した後にキラルネマチック相を示す材料が用いられる。その液晶材料として上記一般式(K1)および(K2)で表される化合物から選ばれる少なくとも1つの化合物が使用されるがこれらの化合物に加え、通常この技術分野で液晶材料と認識される材料をさらに他の液晶材料として添加して用いてもよい。かかる他の液晶材料としては、通常この技術分野で液晶材料として認識されるものであればよく、正の誘電率異方性や負の誘電率異方性を有する化合物を用いることができる。本発明で使用する液晶材料の性能を最適化するためには、キラルネマチック液晶又はコレステリック液晶を併用することが好ましい。また、一般式(K1)および(K2)の化合物以外のキラル化合物等が液晶材料に適宜含有されていてもよい。
【0031】
液晶材料中の量比は特に制限されないが、式(1-A)または(1-B)で表される化合物が液晶材料中に、5重量%以上の量で含むことが好ましく、さらに10~50重量%の範囲で含むことが好ましい。
【0032】
たとえば、液晶材料として式(1-A)または(1-B)で表される化合物をさらに含むことが好ましい。
【0033】
式(1-A)または(1-B)で表される化合物を前記式(K1)および(K2)の化合物と組み合わせると、散乱状態から透過状態にするための印加電圧が小さくなり、低電圧での散乱特性が高くなり、高いコントラスト特性を発揮できる。
【0034】
【化12】
(式(1-A)または(1-B)において、
R
11は水素、炭素数1~20のアルキルであり、このアルキル中の少なくとも1つの-CH
2-は、-O-、-S-、-COO-、-OCO-または-CH=CH-で置き換えられてもよく、このアルキル中の少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく、
環A
11、環A
12および環A
13は独立して、1,4-フェニレンまたは1,4-シクロヘキシレンであり、これらの環中の少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく、
Z
11およびZ
12は独立して、単結合、炭素数1~4のアルキレンであり、このアルキレン中の少なくとも1つの-CH
2-は、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-CH=CH-、-CF=CF-または-C≡C-で置き換えられてもよく、このアルキレン中の少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく、
L
11およびL
12はそれぞれ独立して水素またはハロゲンであり、
X
11はハロゲン、-C≡N、-N=C=S、-CF
3または-OCF
3であり、 lは、0、1または2である。)
また、式(1-C)で表される化合物をさらに含むことも好ましい態様である。式(1-C)で表される化合物は、式(1-A)または(1-B)で表される化合物とともに含まれていてもよく、また式(1-A)または(1-B)で表される化合物の代わりに含まれていてもよい。式(1-C)で表される化合物を前記式(K1)および(K2)の化合物と組み合わせると、液晶組成物の粘度を小さくできる。
【0035】
【化13】
(式(1-C)において、
R
11とR
12は水素、炭素数1~20のアルキルであり、このアルキル中の少なくとも1つの-CH
2-は、-O-、-S-、-COO-、-OCO-または-CH=CH-で置き換えられてもよく、このアルキル中の少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく、
環A
11は独立して、1,4-フェニレンまたは1,4-シクロヘキシレンであり、これらの環中の少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく、
lは、1、2または3である。)
たとえば、液晶材料として一般式(1-E)で表される化合物をさらに含むことも好ましい。
【0036】
式(1-E)で表される化合物を前記式(K1)および(K2)の化合物と組み合わせると、電圧をかけたときの透過率が高く、コントラスト比の大きい液晶材料となる。
【0037】
【化14】
(一般式(1-E)において、R
11は水素、炭素数1~20のアルキルであり、このアルキル中の少なくとも1つの-CH
2-は、-O-、-S-、-COO-、-OCO-または-CH=CH-で置き換えられてもよく、このアルキル中の少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく、
環A
11、環A
12は独立して、1,4-フェニレン、または1,4-シクロヘキシレンであり、これらの環の任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、
Z
11およびZ
12は独立して、単結合、炭素数1~4のアルキレン(アルキレンの任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよい)であり、このアルキレン中の少なくとも1つの-CH
2-は、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-CF
2O-、-OCF
2-、-CH=CH-、-CF=CF-または-C≡C-で置き換えられてもよく、
L
11およびL
12は独立して水素またはハロゲンであり、
X
11はハロゲン、-C≡N、-N=C=S、-SF
5、-CF
3または-OCF
3であり、
lおよびmは独立して、0または1である。)
本発明で使用する液晶材料の螺旋ピッチは、0.5μmより短いことが好ましい一態様である。
【0038】
本発明で使用する液晶材料の螺旋ピッチは、0.5μmより長いことが好ましい一態様である。
【0039】
本発明で使用する液晶材料の螺旋ピッチは、光散乱による不透明性と透明性との間の十分なコントラストを得るために、0.3~0.5μm、0.6~5μmの範囲が特に好ましい。
【0040】
螺旋ピッチが短い場合は、光散乱による透明性が比較的高く、ピッチが長い場合は光散乱による不透明性が比較的高くなる。
【0041】
本発明の液晶デバイス用材料に含まれる重合性化合物は、使用目的に応じてその含有量を調整することができる。例えば、後述する液晶デバイスの調光層を形成するための材料として用いる場合には、光散乱による不透明性と透明性との間の十分なコントラストを得るために、液晶デバイス用材料中、重合性化合物は0.1~50重量%の範囲で含有されることが好ましく、0.1~40量%の範囲で含有されることがより好ましく、0.1~20重量%の範囲で含有されることがさらに好ましく、0.1~10重量%の範囲で含有されることがよりさらに好ましい。このような液晶デバイス用材料を用いることにより、重合性化合物から得られる透明物質が、好ましくは0.1~50重量%、より好ましくは0.1~40重量%、さらに好ましくは0.1~20重量%、よりさらに好ましくは0.1~10重量%含有される調光層を有する液晶デバイスが得られる。
【0042】
後述する液晶デバイスの調光層の一部となる透明物質の構造を目的に応じて制御するためには、上記重合性化合物は、高分子形成性モノマーおよび高分子形成性オリゴマーから選ばれる少なくとも1種を含有する重合性化合物が好ましい。
【0043】
高分子形成性モノマーまたはオリゴマーとしては、例えば、n-ドデシルアクリレートなどのアクリロイル基などの重合性基を1つ有する高分子形成性モノマーまたはオリゴマー:
トリメチロールプロパントリアクリラート、テトラエチレングリコール=ジアクリレート、1,10-デカンジオール=ジアクリレート、後述する式(δ)および(M-1)で表される重合性液晶化合物などのアクリロイル基などの重合性基を2以上有する高分子形成性モノマーまたはオリゴマーなどが挙げられる。
【0044】
液晶デバイスの調光層は、使用温度で高いコントラストの維持が望まれる。高いコントラストの維持のため、液晶デバイス材料中のキラルネマチック相から等方性液体への相転移温度が液晶デバイスの使用温度よりも高いほうが良い。調光層の原料は、液晶性を持つ少なくとも1種類以上の重合性化合物、液晶性を持たない1種類以上の重合性化合物、またはそれらの混合物を、含むことが望ましい態様である。
【0045】
使用温度で高いコントラストを維持するため、調光層の原料の、液晶性を持つ重合性化合物(重合性液晶化合物)の含有量は、0.1~30重量%が好ましく、1~20重量%がより好ましく、3~20重量%がさらに好ましく、5~15重量%が最も好ましい。使用温度で高いコントラストを維持するため、調光層の原料の、液晶性を持たない重合性化合物の含有量は、0.1~60重量%が好ましく、10~60重量%がより好ましく、20~60重量%がさらに好ましく、30~60重量%が最も好ましい。
【0046】
重合性化合物に含まれる高分子形成性モノマーまたはオリゴマーとして、重合性基を2以上有する高分子形成性モノマーまたはオリゴマーが含まれていることが好ましく、アクリロイル基を2以上有する高分子形成性モノマーまたはオリゴマーが含まれていることがより好ましい。これらモノマーまたはオリゴマーが重合性化合物に含まれていることにより、例えば調光窓などの調光層を有する液晶デバイスとして用いた場合に、より低電圧で駆動でき、より高コントラスト特性を持つ液晶デバイス用材料が作製できる。
【0047】
調光層の一部となる透明物質は、重合性化合物の重合体であるため、前記重合性化合物には、熱重合開始剤、光重合開始剤等の重合開始剤が含まれていてもよい。かかる熱重合開始剤、光重合開始剤等の重合開始剤は市販されているものを用いることができる。また、前記重合性化合物には、連鎖移動剤、光増感剤、染料架橋剤等のその他の添加剤が含まれていてもよい。
【0048】
以上の重合性化合物の重合物からなる透明物質と、キラルネマチック相を示す液晶材料とを含む調光層に、電圧を印加することで、調光層を駆動することで調光することができる。
【0049】
本発明の液晶デバイスは、電極層を有する少なくとも一方が透明な2枚の基板と、この基板間に支持された調光層を有する。この調光層は、液晶デバイス用材料の重合物、すなわち、該液晶デバイス用材料に含まれる重合性化合物の重合体からなる透明物質と、上記一般式(K1)および(K2)で表される化合物から選ばれる少なくとも1つの化合物を含有する液晶材料からなる。
【0050】
ブルーフェイス(blue phase)を固定化した液晶表示素子は、二重ねじれ構造(double twist structure)を含む。本発明の調光窓の調光層中には、使用温度領域内で、2重ねじれ構造を含まない。本発明の調光窓の調光層は、液晶相領域(liquid crystal phase domain)と、それ以外の領域(以下、非液晶相領域(non-liquid crystal phase domain)という)を含む。
【0051】
液晶相領域のサイズは、典型的には100nm以上である。調光層中の液晶相領域の大きさおよび/または液晶相領域の並び方に応じて、調光窓は、光を遮断したり透過したりする。液晶相領域と非液晶相領域の屈折率の差が大きくなると散乱が高くなり、屈折率の差が小さくなると透明に近づく。調光層中の、液晶相領域と非液晶相領域からなる構造は、SEMで確認できる。
【0052】
可視光を散乱させるため、光を遮断するときの調光窓の調光層中の液晶相領域のサイズは、200nmから20μmが好ましく、300nm~10μmがより好ましく、380nm~2μmがさらに好ましい。
【0053】
上記液晶デバイスで使用する基板は、堅固な材料、例えば、ガラス、金属等であっても良く、柔軟性を有する材料、例えば、プラスチックフィルムであってもよい。そして、液晶デバイスでは、基板は、2枚が対向して適当な間隔を隔て得るものである。
【0054】
また、その少なくとも一方は透明性を有するものであるが、完全な透明性を必須とするものではない。もし、この液晶デバイスが、デバイスの一方の側から他方の側へ通過する光に対して作用させるために使用される場合は、2枚の基板は、共に適宜な透明性が与えられる。
【0055】
この基板には、目的に応じて透明、不透明の適宜な電極が、その全面又は部分的に配置されてもよい。
【0056】
本発明の液晶デバイスがコンピュータ端末の表示装置やプロジェクションの表示装置等に利用される場合には、電極層上に能動素子を設けることが好ましい。
【0057】
またポリイミド等の配向膜が、必要に応じて少なくとも一方の基板の全面又は部分的に配置されていてもよい。尚、2枚の基板間には、通常、周知の液晶デバイスと同様、間隔保持用のスペーサーを介在させることもできる。
【0058】
スペーサーとしては、例えば、マイラー、アルミナ、ロッドタイプのガラスファイバー、ガラスビーズ、ポリマービーズ等種々の液晶セル用のものを用いることができる。
【0059】
上記調光層中の透明物質は、液晶デバイス用材料に含まれる重合性化合物の重合体からなるものであるが、繊維状あるいは粒子状に分散されたもの、前述した液晶材料を小滴状に分散させたフィルム状のもの、あるいは三次元網目状の構造を有しゲル状のものであってもよい。
【0060】
また、液晶材料は連続層を形成することが好ましく、液晶分子の無秩序な状態を形成することにより、光学的境界面を形成し、光の散乱を発現させる上で必須である。
【0061】
本発明で使用する透明物質は、上記重合性化合物の重合物であり、使用目的に応じてその含有量を調整することができるが、光散乱による不透明性と透明性との間の十分なコントラストを得るために、調光層中に0.1~60重量%の範囲で含有するが、0.1~50重量%の範囲が好ましく、1~20重量%の範囲がより好ましく、さらに3~15重量%の範囲が好ましい。
【0062】
本発明のリバースモード駆動の液晶デバイスは、例えば、次のようにして製造することができる。
【0063】
即ち、電極層を有する少なくとも一方が透明性を有する2枚の基板間に、重合性化合物及び一般式(K1)および(K2)で表される化合物から選ばれる少なくとも1つの化合物を含有する液晶材料からなる液晶デバイス用材料を介在させて、該透明性基板を通して紫外線の照射や透明性基板を加熱することで上記重合性化合物を重合させることにより、透明物質と液晶材料から成る調光層を有する液晶デバイスを製造することができる。
【0064】
本発明のリバースモード駆動の液晶デバイスの例として、模式図を
図1及び
図2に示した。
図1は電圧無印加の状態であり、液晶材料の配向はプレーナーとなり、光は透過するのでパネルは透明となる。
【0065】
図2は電圧印加の状態であり、液晶材料の配向はフォーカルコニックとなり、光は散乱するのでパネルは白濁する。
【0066】
本発明のノーマルモード駆動の液晶デバイスは、例えば、次のようにして製造することができる。
【0067】
即ち、電極層を有する少なくとも一方が透明性を有する2枚の基板間に、重合性化合物ならびに一般式(K1)および(K2)で表される化合物から選ばれる少なくとも1つの化合物を含有する液晶材料からなる液晶デバイス用材料を介在させて、液晶材料の飽和電圧を印加しながら、該透明性基板を通して紫外線の照射や透明性基板を加熱することで上記重合性化合物を重合させることにより、透明物質と液晶材料から成る調光層を有する液晶デバイスを製造することができる。
【0068】
本発明のノーマルモード駆動の液晶デバイスの例として、模式図を
図3及び
図4に示した。
図3は電圧無印加の状態であり、液晶材料の配向はフォーカルコニックであり、光は散乱するのでパネルは白濁する。
【0069】
図4は電圧印加の状態であり、液晶材料の配向はホメオトロピックであり、光は透過するのでパネルは透明となる。
【0070】
なお、調光層を形成する材料である液晶デバイス用材料を2枚の基板間に介在させる方法は特に制限はなく、この液晶デバイス用材料を公知の注入技術により基板間に注入すればよい。例えば、一方の基板上に適当な溶液塗布機やスピンコーター等を用いて均一に塗布し、次いで他方の基板を重ね合わせ圧着させればよい。
【0071】
本発明の液晶デバイスにおける光散乱性を有する調光層の層厚は、使用目的に応じてその層厚を調整することができるが、光散乱による不透明性と透明性との間の十分なコントラストを得るために、基板間隔は、2~40μmの範囲が好ましく、6~25μmの範囲が特に好ましい。
【0072】
なお、調光層を形成する材料である液晶デバイス用材料を2枚の基板間に介在させる方法は特に制限はなく、この液晶デバイス用材料を公知の注入技術により基板間に注入すればよい。例えば、一方の基板上に適当な溶液塗布機やスピンコーター等を用いて均一に塗布し、次いで他方の基板を重ね合わせ圧着させればよい。
【0073】
本発明の液晶デバイスにおける光散乱性を有する調光層の厚さは、使用目的に応じて適宜調整することができるが、光散乱による不透明性と透明性との間の十分なコントラストを得るために、基板間隔(調光層の厚さ)は、2~40μmの範囲が好ましく、6~25μmの範囲が特に好ましい。
【0074】
本発明で得られる調光層を有する液晶デバイスは、調光窓、光変調素子(light modulation device)などとして、室内インテリアなどの建築用途、自動車用リーフなどの自動車用途などの種々の用途に使用できる。
【実施例】
【0075】
以下、本発明の実施例を示し、本発明を更に具体的に説明する。しかしながら、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0076】
実施例において、キラル剤として使用される(8H)BN-H5とは、下記の化学式であらわされる。
【0077】
【化15】
実施例で用いるトリメチロールプロパントリアクリラートは、東亜合成社製の物を用いた。また実施例で用いる2‐ヒドロキシ‐2‐メチル‐1‐フェニル‐プロパン‐1‐オンは、IRGACURE1173を用いた。IRGACUREはBASF社の登録商標である。
【0078】
本実施例において、室温とは、15~30℃をいう。特に断りのない限り、実施例は、室温で行った。
(転移温度の計測方法)
偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレートに試料を置き、特定の速度で加熱した。試料の一部がネマチック相から等方性液体に変化したときの温度を計測して、当該試料の「キラルネマチック相から等方性液体への転移温度」とした。
【0079】
偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレートに試料を置き、特定の速度で冷却した。試料の一部が等方性液体からネマチック相に変化したときの温度を計測して、当該試料の「等方性液体からネマチック相への転移温度」とした。
【0080】
融点測定装置のホットプレートは、LINKAN社の、10083L大型試料 冷却加熱ステージを使用した。
<平均屈折率の測定方法>
平均屈折率は、以下の手順で、求めた。
(1)アッベ屈折計を用いて、ランプによる白色光源に対する、試料の常光屈折率を測定した。
(2)アッベ屈折計を用いて、ランプによる白色光源に対する、試料の異常光屈折率を測定した。
(3)((常光屈折率2+異常光屈折率2)/2)1/2 で平均屈折率を算出した。
<選択反射のピーク波長の計測方法>
試料をアンチパラレルセルに挟持し、選択反射のピーク波長を測定した。選択反射のピーク波長の計測は、日本分光社製の紫外可視分光光度計V650DSで行った。その際の入射光のバンド幅は、5nmであった。アンチパラレルセルは、セルギャップが7μmであるイー.エッチ.シー株式会社製のKSRP‐07/A107P1NSS05を用いた。
【0081】
<ヘリカル・ツイスト・パワー(HTP)の算出方法>
ヘリカル・ツイスト・パワー(HTP)は、平均屈折率/(選択反射のピーク波長*キラル濃度)で算出した。
<コントランス比の算出>
コントラスト比とは、特定の状況下の透過光強度と、異なる状況下の状況透過光強度の比である。
【0082】
<回転粘度の測定>
回転粘度の測定を、以下の手順で行った。
(1)ツイスト角が0°であり、かつ、2枚のガラス基板の間隔が5μmであるTN素子に試料を入れ、
(2)該TN素子に16Vから19.5Vまで、0.5V毎に段階的に印加し、
(3)つづけて、該TN素子に0.2秒間、無印加にし、
(4)つづけて、該TN素子に0.2秒間の矩形波と2秒間の無印加を繰り返し、該矩形波の印加によって発生した過渡電流のピーク電流とピーク時間を測定し、
(5)M. Imai et al., Molecular Crystals and Liquid Crystals, Vol. 259, 37 (1995) の40頁の計算式(8)を用いて、回転粘度を求めた。
回転粘度の測定において、本明細書の実施例に記載のない事項は、M. Imai et al., Molecular Crystals and Liquid Crystals, Vol. 259, 37 (1995) の内容に従った。
【0083】
<ε∥、Δεの測定>
ε∥、ε⊥およびΔεを以下の手順で求めた。
(1)2枚のガラス基板の間隔が10μmであり、そしてツイスト角が80度であるTN素子に試料を入れ、
(2)該素子に10V、1kHzのサイン波を印加し、2秒後に液晶分子の長軸方向における誘電率を測定し、ε∥とし、
(3)該素子に0.5V、1kHzのサイン波を印加し、2秒後に液晶分子の短軸方向における誘電率を測定し、ε⊥とし、
(4)ε∥-ε⊥の値をΔεとした。
【0084】
<セルの透過光強度の測定およびセルの透過率の算出>
日本分光株式会社製紫外可視分光光度計V650DSに、光源光がセル面に対して垂直となるようにセルを設置し、波長450nmの透過光強度を計測した。その際の入射光のバンド幅は、5nmであった。セルの透過率%は、計測対象のセルの透過光強度/(計測対象のセルを該分光計に入れてない状態で測った光強度)*100で算出した。電界印加ユニットとバイポーラー電源を用い、セルに電圧を印加した状態のセルの透過光強度および電圧を印加しない状態のセルの透過光強度を測定した。該電界印加ユニットはAgilent社製33210Aである。バイポーラー電源はNF ELECTRONIC INSTRUMENTS社製 4010である。
(実施例1)
表1に示した化合物は、すべて液晶化合物である。表1中の化合物の右に示した割合で混合し、液晶組成物NLC-Aと名づけた。NLC-Aの25℃における平均屈折率は1.6、Δnは0.160、Δεは113であった。
【0085】
【表1】
液晶組成物NLC-Aと(8H)BN-H5をw/w=99/1で混合し、液晶組成物CLC-Aと名づけた。NLC-Aと(8H)BN-H5をw/w=98/2で混合し、CLC-Bと名づけた。
【0086】
液晶組成物NLC-Aのネマチック相から等方性液体への転移温度は、89.4℃であった。この転移温度は、2.0℃/分の速度で加熱しながら計測した。
【0087】
液晶組成物CLC-Aのキラルネマチック相から等方性液体への相転移温度は、87℃であった。この転移温度は、2.0℃/分の速度で加熱しながら計測した。
【0088】
液晶組成物CLC-Aの等方性液体からキラルネマチック相への相転移温度は、85℃であった。この転移温度は、2.0℃/分の速度で冷却しながら計測した。
【0089】
液晶組成物CLC-Aの螺旋ピッチは、0.68μmであった。
【0090】
CLC-Bの選択反射のピーク波長は、539nmであった。故に、ヘリカル・ツイスト・パワー(HTP)は、148であった。
(実施例2)
<液晶材料>
液晶組成物CLC-A、n-ドデシルアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリラート、2‐ヒドロキシ‐2‐メチル‐1‐フェニル‐プロパン‐1‐オンをw/w/w/w=80.0/17.0/2.7/0.3で、混合し、液晶組成物MLC-Aと名づけた。
【0091】
n-ドデシルアクリレートおよびトリメチロールプロパントリアクリラートは、高分子形成性モノマーである。2‐ヒドロキシ‐2‐メチル‐1‐フェニル‐プロパン‐1‐オンは、光重合開始剤である。
【0092】
液晶組成物MLC-Aのキラルネマチック相から等方性液体への相転移温度は、8℃であった。この転移温度は、2.0℃/分の速度で加温しながら計測した。
【0093】
液晶組成物MLC-Aの等方性液体からキラルネマチック相への相転移温度は、6℃であった。この転移温度は、2.0℃/分の速度で加温しながら計測した。
(実施例3)
<高分子/液晶複合材料のPDLC-A調製>
高分子/液晶複合材料PDLC-Aは、以下の手順で作成した。
(1)配向処理を施していない2枚の透明導電膜の電極がついているガラス基板を、ガラス基板の間の幅が10μmであり、かつ、電極が内側になるように配置し、該ガラス基板間に液晶組成物MLC-Aを挿入し、セルを作成した。
(2)該セルを液晶組成物MLC-Aが等方相になるまで加熱した。液晶組成物MLC-Aが等方相へ到る温度は82℃であった。
(3)波長365nmの光を1分間、23mWcm-2で照射し、セル内の液晶組成物を重合反応させた。
(4)室温まで冷却してもガラス基板の間の物質がキラルネマチック液晶相を維持することを確認した。
【0094】
該ガラス基板は、イー.エッチ.シー株式会社製、KSSZ‐10/A107P1NSS05を使用した。該ガラス基板の電極間に印加することで、該ガラス基板間の液晶組成物MLC-Aに電場をかけることができた。
【0095】
なお、該透明導電膜は、ITOである。該透明導電膜の寸法は、10mm×10mmである。2枚の基板間に電位差が生じ、挿入した液晶組成物に電場を印加できる。
<高分子/液晶複合材料のPDLC-Aの電気光学特性>
光源光がセル面に対して垂直となるように高分子/液晶複合材料PDLC-Aを配置し、高分子/液晶複合材料PDLC-Aの電気光学特性を電界印加ユニットとバイポーラー電源で測定した。
【0096】
偏光顕微鏡は、ニコン製、エクリプス、LV100POLを使用した。光源として偏光顕微鏡の白色光源を用いた。輝度計は、YOKOGAWA 3298Fを使用した。
【0097】
電界印加ユニットは、キーサイト社製 波形発生装置 3320Aを使用した。バイポーラー電源は、NF社製 ELECTRONIC INSTRUMENTS 4010を使用した。
【0098】
クロスニコルの状態で印加電圧と透過光強度の関係を以下の手順で、室温で、調べた。
【0099】
(1)2枚の透明導電膜の電極の電圧を、0Vから40Vになるまで上昇させた。その際の印加電圧ごとの、透過光強度を計測した。
【0100】
(2)その後、2枚の透明導電膜の電極の電圧に、40Vから0Vになるまで下降させた。その際印加電圧ごとの、透過光強度を計測した。
【0101】
高分子/液晶複合材料PDLC-Aの電極間の印加電圧-透過率曲線を
図5に示す。電極間の電圧を0Vから40Vまで上昇させたときの、該電圧に対する透過率を、黒丸で示した。電極間の電圧を0Vから40Vまで下降させたときの該電圧に対する透過率を、白丸で示した。
【0102】
20Vの矩形波を印加し、高分子/液晶複合材料PDLC-Aがノーマルモードで駆動することを確認した。
【0103】
高分子/液晶複合材料PDLC-Aの電極間が無印加であったときと高分子/液晶複合材料PDLC-Aの電極間に30Vの電圧をかけたときとの、コントラスト比は40と高い。
【0104】
高分子/液晶複合材料PDLC-Aの電極間に10Vの電圧をかけると、無印加のときに比べて、透過光強度が90%になった。高分子/液晶複合材料PDLC-Aの電極間に20Vの電圧をかけると、無印加のときに比べて、透過光強度が10%になった。このように、低駆動電圧で駆動した。
(実施例4)
<液晶組成物(4-1)の調製>
液晶組成物(4-1)を、表2に記載の化合物を混ぜて作成した。当業者はWO96/11897、WO2005/007775、特表2003-518154記載の方法を参考とすることで、表2に記載の化合物を、合成できる。
【0105】
【表2】
<液晶組成物(4-2)の調製>
液晶組成物(4-1)とイルガキュアー(商標)651を、重量比100/0.3で混ぜて、液晶組成物(4-2)と名づけた。イルガキュアー(商標)651は、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オンである。
<液晶組成物(4-3)の調製>
液晶組成物(4-2)と(8H)BN-H5を、重量比99.1/0.9で混ぜて、液晶組成物(4-3)と名づけた。
【0106】
液晶組成物(4-1)と液晶組成物(4-3)の物性データを表3に記載した。
【0107】
【表3】
液晶組成物(4-1)は、25℃で、ネマチック相であった。液晶組成物(4-3)は25℃で、キラルネマチック相であった。液晶組成物(4-3)の螺旋ピッチは、1.03μmであった。
<液晶組成物(B)の調製>
液晶組成物(4-3)とテトラエチレングリコール=ジアクリレートとを重量比96.3:3.7で、混合し、液晶組成物(B)と名づけた。テトラエチレングリコール ジアクリレートは、高分子形成性モノマーである。
<液晶組成物(C)の調製>
液晶組成物(4-3)と1,10-デカンジオール=ジアクリレートとを重量比96.2:3.8で、混合し、液晶組成物(C)と名づけた。1,10-デカンジオール=ジアクリレートは、高分子形成性モノマーである。
<液晶組成物(D)の調製>
液晶組成物(4-3)と下記化学式(δ)で示される重合性液晶化合物(以下、化合物δとも称する。)とを重量比93.8:6.2で、混合し、液晶組成物(D)と名づけた。
【0108】
【化16】
当業者は、日本特許4063873号などを参照して、上記化合物δを合成できる。
【0109】
なお、化合物δの結晶相からネマチック相への転移温度は、60.3℃であった。化合物δのネマチック相から等方性液体への転移温度は、124.4℃であった。化合物δの異常光屈折率は、1.6370であった。化合物δの常光屈折率は1.4924であった。
【0110】
化合物δは、2つのアクリレート基を有する高分子形成性モノマーである。純物質の化合物δは、液晶相を有する。
<高分子/液晶複合材料のPDLC-B調製>
高分子/液晶複合材料PDLC-Aの作成において、液晶組成物MLC-Aを、液晶組成物(B)に置き換えて、かつ、重合反応させる際に、透明電導膜間に30V印加した状態で波長365nmの光を1分間、15mWcm-2で照射し、セル内の液晶組成物を重合反応させ、高分子/液晶複合材料PDLC-Bを作成した。
<高分子/液晶複合材料のPDLC-C調製>
高分子/液晶複合材料PDLC-Aの作成において、液晶組成物MLC-Aを、液晶組成物(C)に置き換えて、かつ、重合反応させる際に、透明電導膜間に30V印加した状態で波長365nmの光を1分間、15mWcm-2で照射し、セル内の液晶組成物を重合反応させ、高分子/液晶複合材料PDLC-Cを作成した。
<高分子/液晶複合材料のPDLC-D調製>
高分子/液晶複合材料PDLC-Aの作成において、液晶組成物MLC-Aを、液晶組成物(D)に置き換えて、かつ、重合反応させる際に、透明電導膜間に30V印加した状態で波長365nmの光を7分間、2.1mWcm-2で照射し、セル内の液晶組成物を重合反応させ、高分子/液晶複合材料PDLC-Dを作成した。
<高分子/液晶複合材料のPDLC-E調製>
高分子/液晶複合材料PDLC-Aの作成において、液晶組成物MLC-Aを、液晶組成物(D)に置き換えて、かつ、重合反応させる際に、透明電導膜間に50V印加した状態で波長365nmの光を7分間、2.1mWcm-2で照射し、セル内の液晶組成物を重合反応させ、高分子/液晶複合材料PDLC-Eを作成した。
<セルの透過率の測定>
印加電圧を、計測セルにかけなかったときの、計測セルの透過率を計測し、表4のAに記載した。
【0111】
30Vの印加電圧を、計測セルかけたときの、計測セルの透過率を計測し、表4のBに記載した。
(該Aの透過率)/(該Bに記載の透過率)の値を、表4に記載した。A/Bは、コントラスト比である。
【0112】
【表4】
本発明によれば、コントラストの高い液晶デバイスが得られる。
<セルのヘーズの測定およびセルの平行光線透過率の測定>
NIPPON DENSHOKU INDUSTRIES Co.,LTD 製 HAZE METER NDH5000に、光源光がセル面に対して垂直となるようにセルを設置し、室温でヘーズおよび平行光線透過率を計測した。
(実施例7)
<液晶組成物(7-1)の調製>
液晶組成物(4-1)とイルガキュアー(商標)651を、重量比100/1.2で混ぜて、液晶組成物(7-1)と名づけた。イルガキュアー(商標)651は、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オンである。
<液晶組成物(7-2)の調製>
液晶組成物(7-1)と(8H)BN-H5を、重量比100/0.9で混ぜて、液晶組成物(7-2)と名づけた。
【0113】
液晶組成物(4-1)は、25℃で、ネマチック相であった。液晶組成物(7-2)は25℃で、キラルネマチック相であった。液晶組成物(7-2)の螺旋ピッチは、1.03μmであった。
<液晶組成物(7-3)の調製>
液晶組成物(7-1)と(8H)BN-H5を、重量比100/1.9で混ぜて、液晶組成物(7-3)と名づけた。
【0114】
液晶組成物(7-3)は25℃で、キラルネマチック相であった。液晶組成物(7-3)の螺旋ピッチは、0.47μmであった。
<液晶組成物(7-4)の調製>
液晶組成物(7-1)と(8H)BN-H5を、重量比100/4.2で混ぜて、液晶組成物(7-4)と名づけた。
【0115】
液晶組成物(7-4)は25℃で、キラルネマチック相であった。液晶組成物(7-4)の螺旋ピッチは、0.22μmであった。
<液晶組成物(7-5)の調製>
液晶組成物(7-1)とCM33を、重量比100/30で混ぜて、液晶組成物(7-5)と名づけた。
【0116】
【化17】
液晶組成物(7-5)は25℃で、キラルネマチック相であった。液晶組成物(7-5)の螺旋ピッチは、0.47μmであった。
<液晶組成物(F)の調製>
液晶組成物(7-2)とトリプロピレングルコール ジアクリレートとを重量比88:12で、混合し、液晶組成物(F)と名づけた。トリプロピレングルコールジアクリレートは、高分子形成性モノマーである。
<液晶組成物(G)の調製>
液晶組成物(7-3)と化合物δを重量比95:5で、混合し、液晶組成物(G)と名づけた。化合物δは、高分子形成性モノマーである。
【0117】
【化18】
<液晶組成物(H)の調製>
液晶組成物(7-4)と下記化学式(M-1)で示される重合性液晶化合物(以下、化合物M-1とも称する。)とを重量比90:10で、混合し、液晶組成物(H)と名づけた。
【0118】
【化19】
当業者は、Macromolecules 1990, 23, 2474-2477などを参照して、上記化合M-1を合成できる。
【0119】
なお、化合物M-1の結晶相からネマチック相への転移温度は、83.6℃であった。化合物M-1のネマチック相から等方性液体への転移温度は、116.9℃であった。化合物M-1の異常光屈折率は、1.6627であった。化合物M-1の常光屈折率は1.5048であった。
【0120】
化合物M-1は、2つのアクリレート基を有する高分子形成性モノマーである。純物質の化合物M-1は、液晶相を有する。
<液晶組成物(I)の調製>
液晶組成物(7-5)と化合物δを重量比95:5で、混合し、液晶組成物(I)と名づけた。化合物δは、高分子形成性モノマーである。
【0121】
<高分子/液晶複合材料のPDLC-F調製>
高分子/液晶複合材料PDLC-Fは、以下の手順で作成した。
(1)配向処理を施していない2枚の透明導電膜の電極がついているガラス基板を、ガラス基板の間の幅が5μmであり、かつ、電極が内側になるように配置し、該ガラス基板間に液晶組成物(F)を室温で挿入し、セルを作製した。
た。
(2)波長365nmの光を72秒間、14mWcm-2で照射し、セル内の液晶組成物を重合反応させた。
(3)重合反応後ガラス基板の間の物質がキラルネマチック液晶相を維持することを確認した。
【0122】
該ガラス基板は、イー.エッチ.シー株式会社製、KSSZ‐5/A107P1NSS05を使用した。該ガラス基板の電極間に印加することで、該ガラス基板間の液晶組成物Gに電場をかけることができた。
【0123】
なお、該透明導電膜は、ITOである。該透明導電膜の寸法は、10mm×10mmである。2枚の基板間に電位差が生じ、挿入した液晶組成物に電場を印加できる。
高分子/液晶複合材料PDLC-Gは、以下の手順で作成した。
(1)水平配向処理が施された2枚の透明導電膜の電極がついているガラス基板を、ガラス基板の間の幅が7μmであり、かつ、電極が内側になるように配置し、該ガラス基板間を80℃に加熱した状態で液晶組成物(G)を挿入し、セルを作製した後、室温まで冷却した。
(2)波長365nmの光を500秒間、2mWcm-2で照射し、セル内の液晶組成物を重合反応させた。
(3)重合反応後ガラス基板の間の物質がキラルネマチック液晶相を維持することを確認した。
【0124】
該ガラス基板は、イー.エッチ.シー株式会社製、KSRP‐07/A107P1NSS05を使用した。該ガラス基板の電極間に印加することで、該ガラス基板間の液晶組成物Gに電場をかけることができた。
【0125】
なお、該透明導電膜は、ITOである。該透明導電膜の寸法は、10mm×10mmである。2枚の基板間に電位差が生じ、挿入した液晶組成物に電場を印加できる。
<高分子/液晶複合材料のPDLC-H調製>
高分子/液晶複合材料PDLC-Hの作成において、液晶組成物(G)を、液晶組成物(H)に置き換えて、高分子/液晶複合材料PDLC-Hを作成した。
<高分子/液晶複合材料のPDLC-I調製>
高分子/液晶複合材料PDLC-Iの作成において、液晶組成物(G)を、液晶組成物(I)に置き換えて、高分子/液晶複合材料PDLC-Iを作成した。
<高分子/液晶複合材料PDLC-Fのヘーズおよび平行光線透過率の測定>
光源光がセル面に対して垂直となるように高分子/液晶複合材料PDLC-Fをヘーズメーター内に配置した。セルに0~50Vの電圧を印加しヘーズおよび平行光線透過率を測定した。
【0126】
印加電圧を、計測セルにかけなかったときの、BがヘーズでDが平行光線透過率を示す。電圧を、計測セルかけたときのAがへーズでCが平行光線透過率を示す。印加電圧を、計測セルにかけなかったときの、計測セルのへーズと平行光線透過率を計測し、表5のBとDに記載した。印加電圧50Vを、計測セルにかけたときの、計測セルのへーズと平行光線透過率を計測し、表5のAとCに記載した。
<高分子/液晶複合材料PDLC-Gのヘーズおよび平行光線透過率の測定>
光源光がセル面に対して垂直となるように高分子/液晶複合材料PDLC-Gをヘーズメーター内に配置した。セルに0~60Vの電圧を印加しヘーズおよび平行光線透過率を測定した。
【0127】
計測セルにかけなかったときの、計測セルのへーズと平行光線透過率を計測し、表5のBとDに記載した。印加電圧30Vを、計測セルにかけたときの、計測セルのへーズと平行光線透過率を計測し、表5のAとCに記載した。
<高分子/液晶複合材料PDLC-Hのヘーズおよび平行光線透過率の測定>
光源光がセル面に対して垂直となるように高分子/液晶複合材料PDLC-Hをヘーズメーター内に配置した。セルに0~60Vの電圧を印加しヘーズおよび平行光線透過率を測定した。
計測セルにかけなかったときの、計測セルのへーズと平行光線透過率を計測し、表のBとDに記載した。印加電圧40Vを、計測セルにかけたときの、計測セルのへーズと平行光線透過率を計測し、表5のAとCに記載した。
<比較例>
<高分子/液晶複合材料PDLC-Iのヘーズおよび平行光線透過率の測定>
光源光がセル面に対して垂直となるように高分子/液晶複合材料PDLC-Iをヘーズメーター内に配置した。セルに0~60Vの電圧を印加しヘーズおよび平行光線透過率を測定した。
【0128】
計測セルにかけなかったときの、計測セルのへーズと平行光線透過率を計測し、表5のBとDに記載した。印加電圧30Vを、計測セルにかけたときの、計測セルのへーズと平行光線透過率を計測し、表5のAとCに記載した。電圧を60Vに印加する間もへーズに変化が見られなかった。
【0129】
【表5】
PDLC-F、PDLC-G、PDLC-Hの材料は、40℃付近においても電圧無印加時と印加時の散乱と透過の状態を維持した。
【0130】
本発明によれば、電圧印加したときと印加していない時のヘーズや平行光線透過率の変化が大きい液晶デバイスが得られる。また得られた調光窓は、低い駆動電圧でも、光を遮断したり透過したりできるので、コントラスト特性が高い。
【符号の説明】
【0131】
1 電極層を有する基板
2 液晶材料
3 透明物質