(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】支持装置及び線材送り出し装置
(51)【国際特許分類】
B65H 49/26 20060101AFI20220809BHJP
B65H 67/02 20060101ALI20220809BHJP
B65H 16/06 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
B65H49/26
B65H67/02
B65H16/06 A
(21)【出願番号】P 2019028399
(22)【出願日】2019-02-20
【審査請求日】2021-06-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】特許業務法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小又 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】折本 誠一
【審査官】松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】実公昭50-043742(JP,Y1)
【文献】実開昭58-007750(JP,U)
【文献】実公昭43-017121(JP,Y1)
【文献】特開昭49-085328(JP,A)
【文献】特開平11-071045(JP,A)
【文献】登録実用新案第3013458(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 49/00-49/38
B65H 67/00-67/08
B65H 16/00-16/10
B65H 18/00-18/28
B65H 54/00-54/553
B65H 75/00-75/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
線材が巻き回された巻軸の両端に円盤部が設けられた巻芯部材を、前記巻芯部材が載置される架台から浮かせて支持する支持装置であって、
少なくとも一部がテーパ状に形成された外周面を有する嵌入部材と、
前記嵌入部材を前記巻芯部材に設けられた軸孔に嵌入させる移動機構と
、を備え、
前記移動機構は、前記嵌入部材を支持する支持軸を有し、
前記嵌入部材の中心部には、前記嵌入部材が受ける径方向の荷重を支持するラジアル軸受と、前記嵌入部材が受ける軸方向の荷重を支持する前記スラスト軸受と、が収容されており、
前記ラジアル軸受およびスラスト軸受により、前記嵌入部材が前記支持軸に対して回転可能に軸受支持されており、
前記嵌入部材が前記軸孔に嵌入することにより、前記テーパ状に形成された外周面によって前記巻芯部材を前記架台から浮かせる、
支持装置。
【請求項2】
前記移動機構は、前記支持軸が前記巻芯部材の中心軸線と平行に進退移動可能であり、
前記嵌入部材の回転軸線が、前記架台に載置された前記巻芯部材の中心軸線よりも上方
に位置する、
請求項
1に記載の支持装置。
【請求項3】
手動操作を受け付ける操作部材をさらに備え、
前記支持軸は、前記操作部材が手動操作されることにより進退移動する、
請求項
2に記載の支持装置。
【請求項4】
一対の前記嵌入部材を備え、
前記移動機構は、前記一対の嵌入部材をそれぞれ支持する一対の支持軸を有し、
前記一対の支持軸は、前記操作部材が手動操作されることにより互いに逆方向に進退移動する、
請求項
3に記載の支持装置。
【請求項5】
前記移動機構は、前記架台に対して揺動可能に連結されたレバーを有し、
前記レバーの揺動によって前記支持軸が移動する、
請求項
1に記載の支持装置。
【請求項6】
請求項1乃至
5の何れか1項に記載の支持装置を複数備え、
前記支持装置に支持された複数の前記巻芯部材からそれぞれ前記線材を送り出す、
線材送り出し装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線材が巻き回された巻軸の両端に円盤部が設けられた巻芯部材を支持する支持装置、及びその支持装置を備えた線材送り出し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の線材が束ねられたケーブルを製造する際には、それぞれに線材が巻き回された複数のボビンを回転可能に支持し、これら複数のボビンから撚線機等の対象装置に線材を送り出す。ボビンは、その中心孔にシャフトが挿通され、線材が引き出されることにより回転する。ボビンの中心孔をシャフトに挿通させる作業は、作業者の手作業によって行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-35555号公報
【文献】特開昭54-11340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
線材が巻かれたボビンは、例えば25kg程度になることもあり、この重量を支えながらボビンの中心軸線をシャフトの回転軸線に合わせ、中心孔をシャフトに挿通させてボビンを回転可能に支持する作業の作業負担が大きかった。
【0005】
そこで、本発明は、線材が巻き回された巻芯部材を回転可能に支持する作業の作業負担を軽減することが可能な支持装置、及びその支持装置を備えた線材送り出し装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、線材が巻き回された巻軸の両端に円盤部が設けられた巻芯部材を、前記巻芯部材が載置される架台から浮かせて支持する支持装置であって、少なくとも一部がテーパ状に形成された外周面を有する嵌入部材と、前記嵌入部材を前記巻芯部材に設けられた軸孔に嵌入させる移動機構とを備え、前記嵌入部材が前記軸孔に嵌入することにより、前記テーパ状に形成された外周面によって前記巻芯部材を前記架台から浮かせる、支持装置を提供する。
【0007】
また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、上記の支持装置を複数備え、前記支持装置に支持された複数の前記巻芯部材からそれぞれ前記線材を送り出す、線材送り出し装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る支持装置及び線材送り出し装置によれば、線材が巻き回された巻芯部材を回転可能に支持する作業の作業負担を軽減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る線材送り出し装置を示す正面図である。
【
図2】ボビンから線材が引き出された状態を示す線材送り出し装置の正面図である。
【
図4】複数の線材が撚り合わされた撚線を製造する工程を線材送り出し装置の上面図と共に示す概略図である。
【
図5】支持装置を示し(a)は外観図、(b)は内部構造を示す部分断面図、(c)は(b)のB部拡大図である。
【
図6】支持装置の動作を示す説明図であり、(a)はボビンが架台に載置された状態を、(b)はボビンが支持装置に支持された状態を、それぞれ示している。
【
図7】(a)及び(b)は、本発明の第2の実施の形態に係るローラヘッドを示し、(a)は断面図、(b)は外観図である。(c)は、ボビンが架台に載置された状態を示し、(b)は、ボビンが支持装置に支持された状態を示している。
【
図8】本発明の第3の形態に係る支持装置の構成及び動作を説明する説明図であり、(a)はボビンが架台に載置された状態を、(b)はボビンが支持装置に支持された状態を、それぞれ示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1の実施の形態]
図1及び
図2は、本発明の実施の形態に係る線材送り出し装置を示す正面図である。
図3は、線材送り出し装置の側面図である。
図4は、複数の線材が撚り合わされた撚線を製造する工程を線材送り出し装置の上面図と共に示す概略図である。
図1乃至
図3では、図面上下方向が鉛直方向の上下方向に対応する。
【0011】
この線材送り出し装置1は、架台10と、複数の支持装置2と、架台10の上方に配置された複数の張力調整装置3及びプーリ4とを備えている。
図1では、架台10に9つの巻芯部材としてのボビン8が載置された状態を示している。それぞれのボビン8には、線材9が巻き回されている。
図2及び
図3では、ボビン8から引き出された線材9が張力調整装置3を経由してプーリ4に掛け回された状態を示している。
【0012】
本実施の形態では、
図4に示すように、9つのボビン8からそれぞれ引き出された9本の線材9が素線として撚線機5に供給され、これらが撚り合わされて撚線90となる。張力調整装置3は、プーリ4側に移動する線材9の動きに抵抗力を付与し、プーリ4と撚線機5との間の線材9の張力を調整する。撚線機5から排出された撚線90は、巻取ドラム6に巻き取られる。なお、9本の線材9を撚り合わせることなく束ねて絶縁体により被覆し、絶縁ケーブルとしてもよい。
【0013】
架台10は、上下方向に並ぶ3つの棚板11と、これらの棚板11が取り付けられた4本の支柱12と、背枠13と、4本の支柱12の上端部及び下端部と背枠13とをそれぞれ連結する上板14及び下板15とを備えている。4本の支柱12は、上端部側ほど背枠13に近づくように、鉛直方向に傾斜している。
【0014】
3つの棚板11には、それぞれ3つのボビン8が作業者によって載置される。棚板11は、平板状の本体111と、本体111の上面に取り付けられた複数のVブロック112とを有している。Vブロック112には、ボビン8を位置決めするためのV字溝が形成されている。架台10を
図1及び
図2に示す正面側から見た場合、3つの棚板11のうち上方に位置する棚板11に載置されるボビン8ほど、奥側(背枠13側)に位置決めされる。この構成により、ボビン8と張力調整装置3との間の線材9が絡み合うことが抑制されている。
【0015】
複数の支持装置2は、ボビン8を軸方向に挟むように配置され、支柱12に取り付けられている。支持装置2は、作業者によって回転操作されるハンドル21を有しており、ハンドル21が回転操作されることによってローラヘッド22が筐体20に対して水平方向に移動する。筐体20は、例えばボルトあるいは溶接により支柱12に固定されている。
【0016】
複数の支持装置2のうち、2つのボビン8の間に配置された支持装置2は、一対のローラヘッド22を有している。また、棚板11の両端部においてボビン8に挟まれない位置に配置された支持装置2は、1つのローラヘッド22を有している。次に、
図5及び
図6を参照し、支持装置2の構成と動作について説明する。
【0017】
図5は、2つのボビン8の間に配置された支持装置2を示し(a)は外観図、(b)は内部構造を示す部分断面図、(c)は(b)のB部拡大図である。この支持装置2は、ハンドル21と、ハンドル21の回転に伴って回転するように筐体20に支持されたプライマリギヤ23と、筐体20に支持されてプライマリギヤ23に噛み合って回転するセカンダリギヤ24と、第1及び第2のシャフト25,26と、第1及び第2のシャフト25,26にそれぞれ支持された一対のローラヘッド22と、第1及び第2のシャフト25,26と一対のローラヘッド22との間にそれぞれ配置されたラジアル軸受27及びスラスト軸受28とを有している。プライマリギヤ23、セカンダリギヤ24、ならびに第1及び第2のシャフト25,26は、ローラヘッド22を後述するボビン8の軸孔80に嵌入させる移動機構29を構成する。
【0018】
筐体20は、ボビン8に向かい合う両側壁201,202に、第1及び第2のシャフト25,26をそれぞれ挿通させる挿通孔203,204が形成されている。一対のローラヘッド22は、筐体20の外部において、第1及び第2のシャフト25,26にそれぞれ支持されている。
【0019】
ハンドル21は、本発明における操作部材の一態様であり、作業者の手動操作を受け付ける。また、ハンドル21は、円盤状の本体部211と、作業者が把持するための取っ手212とを有しており、取っ手212が作業者により回転操作される。
【0020】
ローラヘッド22は、本発明における嵌入部材の一態様であり、テーパ状の外周面221aを有するテーパ部221と、テーパ部221の大径側の端部から軸方向に延びて第1のシャフト25あるいは第2のシャフト26の端部を覆う円筒状のカバー部222とを一体に有している。テーパ部221は、ボビン8側の先端側ほど外径が小さくなる部分円錐形状であり、カバー部222は、テーパ部221の筐体20側の大径側の端部から連続して形成されている。ローラヘッド22の中心部には、ラジアル軸受27及びスラスト軸受28を収容する収容空間220が形成されている。
【0021】
プライマリギヤ23は、大径ギヤ部231と小径ギヤ部232とを有している。大径ギヤ部231及び小径ギヤ部232は、同軸配置されてハンドル21と一体に回転する。セカンダリギヤ24は、プライマリギヤ23の大径ギヤ部231に噛み合う大径ギヤ部241と、大径ギヤ部241と同軸配置されて大径ギヤ部241と一体に回転する小径ギヤ部242とを有している。
【0022】
第1及び第2のシャフト25,26は、本発明における一対の支持軸の一態様である。第1のシャフト25は、プライマリギヤ23の小径ギヤ部232に噛み合うラック歯251を有しており、プライマリギヤ23の回転により軸方向に移動する。第2のシャフト26は、セカンダリギヤ24の小径ギヤ部242に噛み合うラック歯261を有しており、セカンダリギヤ24の回転により軸方向に移動する。
【0023】
プライマリギヤ23とセカンダリギヤ24は逆方向に回転するので、第1及び第2のシャフト25,26は、ハンドル21が手動操作されることにより互いに逆方向に進退移動する。より詳細には、ハンドル21が
図5(a)に示す矢印A
1方向に回転操作された場合に、第1のシャフト25及び第2のシャフト26が互いに離間するように移動する。また、ハンドル21が
図5(a)に示す矢印A
2方向に回転操作された場合には、第1のシャフト25及び第2のシャフト26が互いに接近するように移動する。
【0024】
ラジアル軸受27は、ローラヘッド22が受ける径方向の荷重を支持する。スラスト軸受28は、ローラヘッド22が受ける軸方向の荷重を支持する。本実施の形態では、ラジアル軸受27がボールベアリングであり、スラスト軸受28がニードルベアリングであるが、ラジアル軸受27及びスラスト軸受28の構造はこれに限らず、様々な形式のものを適宜用いることができる。一対のローラヘッド22は、ラジアル軸受27及びスラスト軸受28により、第1及び第2のシャフト25,26に対して回転可能に軸受支持されている。
【0025】
なお、棚板11の両端部付近のボビン8に挟まれない位置に配置された支持装置2は、
図5(a)及び(b)に示す構成のうちプライマリギヤ23側の半分に相当する構成を具備しており、セカンダリギヤ24及び第2のシャフト26を有していない。この支持装置2では、上記と同様に、ハンドル21の回転操作に伴うプライマリギヤ23の回転によって第1のシャフト25が軸方向に進退移動する。ただし、棚板11の一方の端部付近に配置された支持装置2と、棚板11の他方の端部付近に配置された支持装置2とでは、筐体20からの第1のシャフト25の突出方向が逆向きである。
【0026】
図6は、支持装置2の動作を示す説明図であり、(a)はボビン8が架台10に載置された状態を、(b)はボビン8が支持装置2に支持された状態を、それぞれ示している。ボビン8は、線材9が巻き回された円筒状の巻軸81と、巻軸81の両端に設けられた一対の円盤部82とを有している。また、ボビン8は、例えば合成樹脂からなり、巻軸81と一対の円盤部82とを一体に有している。ボビン8の中心部には、巻軸81を軸方向に貫通する軸孔80が形成されている。
【0027】
支持装置2は、ローラヘッド22がボビン8の軸孔80に嵌入することにより、ボビン8を架台10から浮かせて回転可能に支持する。より具体的には、ローラヘッド22が軸孔80に嵌入することにより、テーパ部221の外周面221aが軸孔80の端部に当接してボビン8が架台10の棚板11に設けられたVブロック112から浮き上がる。
【0028】
第1及び第2のシャフト25,26は、架台10に載置されたボビン8の中心軸線Cと平行に進退移動可能である。
図6(a)に示すように、ローラヘッド22の回転軸線Oは、架台10に載置されたボビン8の中心軸線Cよりも上方に位置する。ローラヘッド22のテーパ部221は、最小径φmin(
図5(c)参照)が軸孔80の内径Dよりも小さく、最大径φmaxが軸孔80の内径Dよりも大きい。テーパ部221の最小径φminと軸孔80の内径Dとの差は、架台10に載置されたボビン8の中心軸線Cとローラヘッド22の回転軸線Oとの間の距離Δよりも大きい。
【0029】
そして、ローラヘッド22のテーパ部221が軸孔80に嵌入することにより、
図6(b)に示すように、ローラヘッド22の回転軸線Oにボビン8の中心軸線Cが一致するようにボビン8が上方に移動する。なお、支持装置2のハンドル21は、テーパ部221の外周面221aが全周にわたって軸孔80の端部に当接した状態で固定される。
【0030】
このように、ボビン8が架台10から浮いた状態で支持されることによってボビン8が回転自在となり、線材9が張力調整装置3及びプーリ4側に向かって上方に引き出されると、ボビン8の一対の円盤部82と棚板11との間で摩擦抵抗が発生することなく、ボビン8が回転軸線Oを中心として円滑に回転する。
【0031】
(第1の実施の形態の作用及び効果)
以上説明した支持装置2及び線材送り出し装置1によれば、ボビン8を架台10に載置し、その後にハンドル21を回転操作すればボビン8が架台10の棚板11から浮き上がって回転可能となるので、ボビン8を支持する作業の作業負担を軽減することが可能となる。
【0032】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について、
図7を参照して説明する。第2の実施の形態は、ローラヘッド22の形状が第1の実施の形態と異なり、その他の構成は第1の実施の形態と共通である。
図7において、第1の実施の形態と共通する部材等については、第1の実施の形態の説明で用いた符号と同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0033】
図7(a)及び(b)は、本実施の形態に係るローラヘッド22を示し、(a)は断面図、(b)は外観図である。
図7(c)は、ボビン8が架台10に載置された状態を示し、
図7(b)は、ボビン8が支持装置2に支持された状態を示している。
【0034】
本実施の形態に係るローラヘッド22は、テーパ部221とカバー部222との間に、円筒状の支持部223が設けられている。支持部223の外径φ1は、軸孔80の内径Dと同等もしくは軸孔80の内径Dよりも僅かに小さく形成されている。また、テーパ部221の最大径φmaxは、支持部223の外径φ1と同じであり、テーパ部221の外周面221aと支持部223の外周面223aとが段差なく連続している。カバー部222の外径φ2は、支持部223の外径φ1よりも大きく、カバー部222と支持部223との間に環状の段差面222aが形成されている。
【0035】
ボビン8は、テーパ部221が軸孔80に嵌入することにより棚板11から浮き上がり、さらに支持部223が軸孔80に嵌入することによって支持部223に支持される。ローラヘッド22は、段差面222aがボビン8の円盤部82に当接するまで、ハンドル21の回転操作によって軸方向に移動する。
【0036】
この第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態の作用及び効果に加え、ボビン8の傾きが抑制されてより確実に支持装置2によって回転可能に支持される。
【0037】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について
図8を参照して説明する。
図8は、本実施の形態に係る支持装置7の構成及び動作を説明する説明図であり、(a)はボビン8が架台10に載置された状態を、(b)はボビン8が支持装置7に支持された状態を、それぞれ示している。支持装置7は、ローラヘッド22と、ローラヘッド22をボビン8の軸孔80に嵌入させる移動機構70とを有している。
【0038】
第1の実施の形態では、ハンドル21の回転操作によって作動する移動機構29により、ローラヘッド22が進退移動する場合について説明したが、第3の実施の形態では、ローラヘッド22を進退移動させる移動機構70が、架台10に対して揺動可能に連結されたレバー71、ローラヘッド22を支持する支持軸72、及び支持軸72を軸方向移動可能に保持する筒状の保持部材73を有して構成されている。
【0039】
図8は、本実施の形態に係る支持装置7の構成及び動作を説明する説明図であり、(a)はボビン8が架台10に載置された状態を、(b)はボビン8が支持装置7に支持された状態を、それぞれ示している。レバー71は、本発明における操作部材の一態様であり、作業者の手動による揺動操作を受け付ける。レバー71は、円柱状の棒体部711と、棒体部711の先端に取り付けられた取っ手712とを有している。本実施の形態では、棚板11の本体111の上面にブラケット113が取り付けられており、このブラケット113にレバー71における棒体部711の基端部が回動可能に支持されている。
【0040】
支持軸72は、円柱状の軸部721と、軸部721の外周面に固定された回り止めキー722とを有している。軸部721は、ボビン8の中心軸線Cと平行に保持部材73に保持されている。保持部材73は、支柱12(
図1,2参照)に固定されている。保持部材73には、支持軸72の軸部721を挿通させる保持孔731と、回り止めキー722が嵌合する凹部732とが形成されている。支持軸72は、回り止めキー722が凹部732に嵌合することで、保持部材73に対して回り止めされている。
【0041】
ローラヘッド22は、第1の実施の形態と同様に、支持軸72の先端部に軸受支持されている。支持軸72における軸部721の後端部には、レバー71の棒体部711が当接する湾曲面721aが形成されている。レバー71が作業者によって揺動操作されると、棒体部711が湾曲面721aに当接して軸部721を押圧し、支持軸72を軸方向に移動させる。そして、この支持軸72の移動によって、ローラヘッド22がボビン8の軸孔80に嵌入する。レバー71は、テーパ部221の外周面221aが全周にわたって軸孔80の端部に当接した状態で固定される。
【0042】
この第3の実施の形態によれば、第1の実施の形態の作用及び効果に加え、移動機構70をより簡素に構成することが可能となる。
【0043】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0044】
[1]線材(9)が巻き回された巻軸(81)の両端に円盤部(82)が設けられた巻芯部材(ボビン8)を、前記巻芯部材(8)が載置される架台(10)から浮かせて支持する支持装置(2,7)であって、少なくとも一部がテーパ状に形成された外周面(221a)を有する嵌入部材(ローラヘッド22)と、前記嵌入部材(22)を前記巻芯部材(8)に設けられた軸孔(80)に嵌入させる移動機構(29,70)とを備え、前記嵌入部材(22)が前記軸孔(80)に嵌入することにより、前記テーパ状に形成された外周面(221a)によって前記巻芯部材(8)を前記架台(10)から浮かせる、支持装置(2,7)。
【0045】
[2]前記移動機構(29,70)は、前記嵌入部材(22)を支持する支持軸(第1及び第2のシャフト25,26/72)を有し、前記嵌入部材(22)が前記支持軸(25,26/72)に対して回転可能に軸受支持されている、上記[1]に記載の支持装置(2,7)。
【0046】
[3]前記移動機構(29,70)は、前記支持軸(25,26/72)が前記巻芯部材(8)の中心軸線(C)と平行に進退移動可能であり、前記嵌入部材(22)の回転軸線(O)が、前記架台(10)に載置された前記巻芯部材(8)の中心軸線(C)よりも上方に位置する、上記[2]に記載の支持装置(2,7)。
【0047】
[4]手動操作を受け付ける操作部材(ハンドル21,レバー71)をさらに備え、前記支持軸(25,26/72)は、前記操作部材(21,71)が手動操作されることにより進退移動する、上記[3]に記載の支持装置。
【0048】
[5]一対の前記嵌入部材(22)を備え、前記移動機構(29)は、前記一対の嵌入部材(22)をそれぞれ支持する一対の支持軸(25,26)を有し、前記一対の支持軸(25,26)は、前記操作部材(21)が手動操作されることにより互いに逆方向に進退移動する、上記[4]に記載の支持装置(2)。
【0049】
[6]前記移動機構(7)は、前記架台(10)に対して揺動可能に連結されたレバー(71)を有し、前記レバー(71)の揺動によって前記支持軸(72)が移動する、上記[2]に記載の支持装置。
【0050】
[7]上記の何れかに記載の支持装置(2,7)を複数備え、前記支持装置(2,7)に支持された複数の前記巻芯部材(8)からそれぞれ前記線材(9)を送り出す、線材送り出し装置(1)。
【0051】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0052】
また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。例えば、上記の実施の形態では、素線としての線材9が巻き回されたボビン8を支持装置2,7によって回転可能に支持する場合について説明したが、これに限らず巻取ドラム6を回転可能に支持する支持装置に本発明を適用することも可能である。また、一つの線材送り出し装置1に、第1の実施の形態に係る支持装置2と第3の実施の形態に係る支持装置7とを混在して配置してもよい。
【符号の説明】
【0053】
1…線材送り出し装置
10…架台
2…支持装置
21…ハンドル(操作部材)
22…ローラヘッド(嵌入部材)
25…第1のシャフト(支持軸)
26…第2のシャフト(支持軸)
29…移動機構
7…支持装置
70…移動機構
71…レバー(操作部材)
72…支持軸
8…ボビン(巻芯部材)
80…軸孔
81…巻軸
82…円盤部
9…線材