IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立化成株式会社の特許一覧

特許7120220プリプレグ及びその製造方法、積層板、プリント配線板並びに半導体パッケージ
<>
  • 特許-プリプレグ及びその製造方法、積層板、プリント配線板並びに半導体パッケージ 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】プリプレグ及びその製造方法、積層板、プリント配線板並びに半導体パッケージ
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/24 20060101AFI20220809BHJP
   B29B 11/16 20060101ALI20220809BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20220809BHJP
   B32B 27/04 20060101ALI20220809BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20220809BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
C08J5/24 CER
C08J5/24 CEZ
B29B11/16
B32B15/08 U
B32B27/04 Z
H05K1/03 610G
H05K3/46 T
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019509872
(86)(22)【出願日】2018-03-27
(86)【国際出願番号】 JP2018012389
(87)【国際公開番号】W WO2018181287
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-02-04
(31)【優先権主張番号】P 2017068070
(32)【優先日】2017-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】特許業務法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】串田 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】垣谷 稔
(72)【発明者】
【氏名】清水 浩
(72)【発明者】
【氏名】白男川 芳克
(72)【発明者】
【氏名】金子 辰徳
【審査官】千葉 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-008232(JP,A)
【文献】特開平09-174546(JP,A)
【文献】特開2013-082883(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J5/00-5/02;5/12-5/22,106
B32B1/00-43/00
H05K3/46-3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程1~3を有するプリプレグの製造方法。
工程1:プリプレグ前駆体を得る工程であり、前記プリプレグ前駆体は、熱硬化性樹脂組成物をB-ステージ化してなり、前記B-ステージ化は、熱硬化性樹脂組成物を基材に含浸した後、加熱処理を施してなり、前記熱硬化性樹脂組成物が、(D)無機充填材を、前記熱硬化性樹脂組成物中の樹脂成分100質量部に対して、50~300質量部含有する
工程2:工程1で得られたプリプレグ前駆体を冷却する工程。
工程3:プリプレグを得る工程であり、前記プリプレグは、工程2で冷却したプリプレグ前駆体に対して、表面加熱処理(但し、熱間加圧処理を除く。)を施して得られ、前記表面加熱処理は、プリプレグ前駆体の表面温度を上昇させる処理であり、前記工程3における表面加熱処理の加熱時間が、1.0~6.0秒である
【請求項2】
工程3における表面加熱処理が、前記プリプレグ前駆体の表面温度を、5~110℃上昇させる処理である、請求項1に記載のプリプレグの製造方法。
【請求項3】
工程3における表面加熱処理が、前記プリプレグ前駆体の表面温度を、20~130℃に加熱する処理である、請求項1又は2に記載のプリプレグの製造方法。
【請求項4】
工程3における表面加熱処理が、前記プリプレグ前駆体を、200~700℃の環境下で加熱する処理である、請求項1~3のいずれか1項に記載のプリプレグの製造方法。
【請求項5】
工程3における表面加熱処理が、前記プリプレグ前駆体を、350~700℃の環境下で加熱する処理である、請求項4に記載のプリプレグの製造方法。
【請求項6】
工程3における表面加熱処理の加熱時間が、1.0~4.0秒である、請求項1~5のいずれか1項に記載のプリプレグの製造方法。
【請求項7】
前記基材が、ガラスクロスである、請求項1~6のいずれか1項に記載のプリプレグの製造方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のプリプレグの製造方法によって製造したプリプレグと金属箔とを積層成形する積層板の製造方法。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載のプリプレグの製造方法によって製造したプリプレグ又は請求項8に記載の積層板の製造方法によって製造した積層板を用いるプリント配線板の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載のプリント配線板の製造方法によって製造したプリント配線板を用いる半導体パッケージの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリプレグ及びその製造方法、積層板、プリント配線板並びに半導体パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化、軽量化及び多機能化が一段と進み、これに伴い、LSI(Large Scale Integration)、チップ部品等の高集積化が進み、その形態も多ピン化及び小型化へと急速に変化している。このため、電子部品の実装密度を向上させるために、多層プリント配線板の微細配線化の開発が進められている。これらの要求に合致する多層プリント配線板の製造手法として、例えば、プリプレグ等を絶縁層として用い、必要な部分のみ、例えばレーザー照射によって形成したビアホール(以下、「レーザービア」ともいう)で接続しながら配線層を形成するビルドアップ方式の多層プリント配線板が、軽量化、小型化及び微細配線化に適した手法として主流になりつつある。
【0003】
多層プリント配線板では微細な配線ピッチで形成された複数層の配線パターン間の高い電気的接続信頼性及び優れた高周波特性を備えていることが重要であり、また、半導体チップとの高い接続信頼性が要求される。特に、近年、多機能型携帯電話端末等のマザーボードにおいて、薄型化及び配線の高密度化が著しく、その層間接続に供されるレーザービアには、小径化が求められている。
小径なレーザービアで層間接続する場合、基板の寸法安定性が重要な特性の1つとして挙げられる。多層配線化する際、各基板には、複数回の熱量及び積層時の応力が加えられることになる。したがって、基板自体の寸法バラつき、特に、熱履歴等による各基板の寸法変化量のバラつきが大きい場合、積層する毎にレーザービアの位置ずれが発生し、接続信頼性の低下等の不良の原因となり得る。このことから、寸法変化量のバラつきが小さい基板が求められている。
【0004】
例えば、特許文献1には、多層プリント配線板における層間の合致性を高めることを目的として、予め硬化させた熱硬化性樹脂を含み、第1面と第2面を有する基材からなるコアと、該コアの第1面と第2面のそれぞれに形成した第1の接着剤層と第2の接着剤層とからなることを特徴とするプリプレグが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-103494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のプリプレグは、コアとして予め硬化させた熱硬化性樹脂を含むため、配線埋め込み性等に劣るという問題があった。また、特許文献1のプリプレグは、硬化度の異なる複数の層を必要とすることから煩雑な生産工程が必要であり、より簡便な方法で得られる寸法変化量のバラつきが小さいプリプレグが望まれている。
【0007】
そこで、本発明は、成形性に優れ、寸法変化量のバラつきが小さいプリプレグ及びその製造方法、積層板、プリント配線板並びに半導体パッケージを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、特定の加熱処理を施す工程を経て製造されるプリプレグが、成形性に優れ、寸法変化量のバラつきが小さいことを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は、下記[1]~[10]に関する。
[1]下記工程1~3を経て得られるプリプレグ。
工程1:プリプレグ前駆体を得る工程であり、前記プリプレグ前駆体は、熱硬化性樹脂組成物をB-ステージ化してなり、前記B-ステージ化は、熱硬化性樹脂組成物を基材に含浸した後、加熱処理を施してなる。
工程2:工程1で得られたプリプレグ前駆体を冷却する工程。
工程3:プリプレグを得る工程であり、前記プリプレグは、工程2で冷却したプリプレグ前駆体に対して、表面加熱処理を施して得られ、前記表面加熱処理は、プリプレグ前駆体の表面温度を上昇させる処理である。
[2]工程3における表面加熱処理が、前記プリプレグ前駆体の表面温度を、5~110℃上昇させる処理である、上記[1]に記載のプリプレグ。
[3]工程3における表面加熱処理が、前記プリプレグ前駆体の表面温度を、20~130℃に加熱する処理である、上記[1]又は[2]に記載のプリプレグ。
[4]工程3における表面加熱処理が、前記プリプレグ前駆体を、200~700℃の環境下で加熱する処理である、上記[1]~[3]のいずれかに記載のプリプレグ。
[5]工程3における表面加熱処理の加熱時間が、1.0~10.0秒である、上記[1]~[4]のいずれかに記載のプリプレグ。
[6]前記基材が、ガラスクロスである、上記[1]~[5]のいずれか1項に記載のプリプレグ。
[7]上記[1]~[6]のいずれかに記載のプリプレグと金属箔とを積層成形してなる積層板。
[8]上記[1]~[6]のいずれかに記載のプリプレグ又は上記[7]に記載の積層板を含有してなるプリント配線板。
[9]上記[8]に記載のプリント配線板を用いてなる、半導体パッケージ。
[10]上記[1]~[6]のいずれかに記載のプリプレグを製造する方法であって、下記工程1~3を有するプリプレグの製造方法。
工程1:プリプレグ前駆体を得る工程であり、前記プリプレグ前駆体は、熱硬化性樹脂組成物をB-ステージ化してなり、前記B-ステージ化は、熱硬化性樹脂組成物を基材に含浸した後、加熱処理を施してなる。
工程2:工程1で得られたプリプレグ前駆体を冷却する工程。
工程3:プリプレグを得る工程であり、前記プリプレグは、工程2で冷却したプリプレグ前駆体に対して、表面加熱処理を施して得られ、前記表面加熱処理は、プリプレグ前駆体の表面温度を上昇させる処理である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、成形性に優れ、寸法変化量のバラつきが小さいプリプレグ及びその製造方法、積層板、プリント配線板並びに半導体パッケージを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例における寸法変化量のバラつきの測定に用いる評価基板の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書中、数値範囲の下限値および上限値は、それぞれ他の数値範囲の下限値および上限値と任意に組み合わせられる。本明細書における記載事項を任意に組み合わせた態様も本発明に含まれる。
【0012】
[プリプレグ]
本発明のプリプレグは、下記工程1~3を経て得られるプリプレグである。
工程1:プリプレグ前駆体を得る工程であり、前記プリプレグ前駆体は、熱硬化性樹脂組成物をB-ステージ化してなり、前記B-ステージ化は、熱硬化性樹脂組成物を基材に含浸した後、加熱処理を施してなる。
工程2:工程1で得られたプリプレグ前駆体を冷却する工程。
工程3:プリプレグを得る工程であり、前記プリプレグは、工程2で冷却したプリプレグ前駆体に対して、表面加熱処理を施して得られ、前記表面加熱処理は、プリプレグ前駆体の表面温度を上昇させる処理である。
まず、本発明のプリプレグに用いられる基材及び熱硬化性樹脂組成物について説明し、その後、本発明のプリプレグの製造方法について説明する。
なお、本発明において、B-ステージとは、熱硬化性樹脂組成物を半硬化させた状態をいう。
【0013】
<基材>
本発明のプリプレグが含有してなる基材は、例えば、各種の電気絶縁材料用積層板に用いられている周知の基材が使用でき、特に限定されない。
基材としては、紙、コットンリンター等の天然繊維;ガラス繊維、アスベスト等の無機繊維;アラミド、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリエステル、テトラフルオロエチレン、アクリル等の有機繊維;これらの混合物などが挙げられる。これらの中でも、ガラス繊維が好ましい。ガラス繊維基材としては、ガラス織布(ガラスクロス)が好ましく、例えば、Eガラス、Cガラス、Dガラス、Sガラス等を用いた織布又は短繊維を有機バインダーで接着したガラス織布;ガラス繊維とセルロース繊維とを混沙したものなどが挙げられる。より好ましくは、Eガラスを使用したガラス織布である。
これらの基材は、織布、不織布、ロービンク、チョップドストランドマット、サーフェシングマット等の形状を有する。なお、材質及び形状は、目的とする成形物の用途及び性能により選択され、1種を単独で使用してもよいし、必要に応じて、2種以上の材質及び形状を組み合わせることもできる。
基材の厚さは、例えば、0.01~0.5mmであり、成形性及び高密度配線を可能にする観点から、0.015~0.2mmが好ましく、0.02~0.1mmがより好ましい。これらの基材は、耐熱性、耐湿性、加工性等の観点から、シランカップリング剤等で表面処理したもの、機械的に開繊処理を施したものであることが好ましい。
【0014】
<熱硬化性樹脂組成物>
本発明のプリプレグが含有してなる熱硬化性樹脂組成物は、例えば、プリント配線板用のプリプレグに用いられる公知の熱硬化性樹脂を含有する熱硬化性樹脂組成物を用いることができ、特に限定されない。
熱硬化性樹脂組成物は、(A)熱硬化性樹脂を含有するものであり、さらに、(B)硬化剤、(C)硬化促進剤及び(D)無機充填材からなる群から選ばれる1種以上を含有することが好ましく、(B)硬化剤、(C)硬化促進剤及び(D)無機充填材を含有することがより好ましい。
以下、熱硬化性樹脂組成物が含有し得る各成分について説明する。
【0015】
((A)熱硬化性樹脂)
(A)熱硬化性樹脂としては特に制限はなく、従来、熱硬化性樹脂として使用されているものの中から、任意のものを適宜選択して用いることができる。
(A)熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、マレイミド化合物、シアネート樹脂、イソシアネート樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、オキセタン樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アリル樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、シリコーン樹脂、トリアジン樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、成形性及び電気絶縁性の観点から、エポキシ樹脂、マレイミド化合物が好ましい。
(A)熱硬化性樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0016】
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、100~500g/eqが好ましく、150~400g/eqがより好ましく、200~350g/eqがさらに好ましい。ここで、エポキシ当量は、エポキシ基あたりの樹脂の質量(g/eq)であり、JIS K 7236に規定された方法に従って測定することができる。
【0017】
エポキシ樹脂としては、グリシジルエーテルタイプのエポキシ樹脂、グリシジルアミンタイプのエポキシ樹脂、グリシジルエステルタイプのエポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中でも、グリシジルエーテルタイプのエポキシ樹脂が好ましい。
エポキシ樹脂は、主骨格の違いによっても種々のエポキシ樹脂に分類され、上記それぞれのタイプのエポキシ樹脂において、さらに、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;ビフェニルアラルキルノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアルキルフェノール共重合ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキルクレゾール共重合ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;スチルベン型エポキシ樹脂;トリアジン骨格含有エポキシ樹脂;フルオレン骨格含有エポキシ樹脂;ナフタレン型エポキシ樹脂;アントラセン型エポキシ樹脂;トリフェニルメタン型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;キシリレン型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂等の脂環式エポキシ樹脂などに分類される。
これらの中でも、成形性及び絶縁信頼性の観点から、ノボラック型エポキシ樹脂が好ましく、ビフェニルアラルキルノボラック型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0018】
マレイミド化合物としては、N-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(a1)(以下、「マレイミド化合物(a1)」ともいう)が好ましい。
マレイミド化合物(a1)としては、具体的には、例えば、N,N’-エチレンビスマレイミド、N,N’-ヘキサメチレンビスマレイミド、ビス(4-マレイミドシクロヘキシル)メタン、1,4-ビス(マレイミドメチル)シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素基含有マレイミド;N,N’-(1,3-フェニレン)ビスマレイミド、N,N’-[1,3-(2-メチルフェニレン)]ビスマレイミド、N,N’-[1,3-(4-メチルフェニレン)]ビスマレイミド、N,N’-(1,4-フェニレン)ビスマレイミド、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、ビス(4-マレイミドフェニル)エーテル、ビス(4-マレイミドフェニル)スルホン、ビス(4-マレイミドフェニル)スルフィド、ビス(4-マレイミドフェニル)ケトン、1,4-ビス(4-マレイミドフェニル)シクロヘキサン、1,4-ビス(マレイミドメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(4-マレイミドフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-マレイミドフェノキシ)ベンゼン、ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]メタン、1,1-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、1,1-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、1,2-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、1,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、2,2-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、4,4-ビス(3-マレイミドフェノキシ)ビフェニル、4,4-ビス(4-マレイミドフェノキシ)ビフェニル、ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]ケトン、2,2’-ビス(4-マレイミドフェニル)ジスルフィド、ビス(4-マレイミドフェニル)ジスルフィド、ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]エーテル、1,4-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)-3,5-ジメチル-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)-3,5-ジメチル-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)-3,5-ジメチル-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)-3,5-ジメチル-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、ポリフェニルメタンマレイミド等の芳香族炭化水素基含有マレイミドが挙げられる。
これらの中でも、反応率が高く、より高耐熱性化できるという観点からは、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(4-マレイミドフェニル)スルホン、ビス(4-マレイミドフェニル)スルフィド、ビス(4-マレイミドフェニル)ジスルフィド、N,N’-(1,3-フェニレン)ビスマレイミド、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパンが好ましく、安価であるという観点からは、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、N,N’-(1,3-フェニレン)ビスマレイミドが好ましく、溶剤への溶解性の観点からは、ビス(4-マレイミドフェニル)メタンが特に好ましい。
【0019】
マレイミド化合物は、マレイミド化合物(a1)と、酸性置換基を有するモノアミン化合物(a2)と、ジアミン化合物(a3)と、を反応させて得られる、N-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物であることが好ましい。
酸性置換基を有するモノアミン化合物(a2)としては、例えば、o-アミノフェノール、m-アミノフェノール、p-アミノフェノール、o-アミノ安息香酸、m-アミノ安息香酸、p-アミノ安息香酸、o-アミノベンゼンスルホン酸、m-アミノベンゼンスルホン酸、p-アミノベンゼンスルホン酸、3,5-ジヒドロキシアニリン、3,5-ジカルボキシアニリン等が挙げられる。
ジアミン化合物(a3)としては、例えば、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエタン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、2,2’-ビス[4,4’-ジアミノジフェニル]プロパン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルエタン、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルエタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルチオエーテル、3,3’-ジヒドロキシ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2’,6,6’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジブロモ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2’,6,6’-テトラメチルクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2’,6,6’-テトラブロモ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン等が挙げられる。これらの中でも、安価であるという観点から、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタンが好ましく、溶剤への溶解性の観点から、4,4’-ジアミノジフェニルメタンがより好ましい。
【0020】
マレイミド化合物(a1)、酸性置換基を有するモノアミン化合物(a2)及びジアミン化合物(a3)の反応において、三者の使用量は、酸性置換基を有するモノアミン化合物(a2)及びジアミン化合物(a3)が有する第1級アミノ基当量[-NH基当量と記す]の総和と、マレイミド化合物(a1)のマレイミド基当量との関係が、下記式を満たすことが好ましい。
0.1≦〔マレイミド基当量〕/〔-NH基当量の総和〕≦10
〔マレイミド基当量〕/〔-NH基当量の総和〕を0.1以上とすることにより、ゲル化及び耐熱性が低下することがなく、また、10以下とすることにより、有機溶媒への溶解性、金属箔接着性及び耐熱性が低下することがないため、好ましい。
同様の観点から、より好ましくは、
1≦〔マレイミド基当量〕/〔-NH基当量の総和〕≦9 を満たし、より好ましくは、
2≦〔マレイミド基当量〕/〔-NH基当量の総和〕≦8 を満たす。
【0021】
熱硬化性樹脂組成物中の(A)熱硬化性樹脂の含有量は、熱硬化性樹脂組成物中の樹脂成分100質量部に対して、15~80質量部が好ましく、25~70質量部がより好ましく、35~60質量部がさらに好ましい。 熱硬化性樹脂組成物中の樹脂成分とは、例えば、(A)熱硬化性樹脂、(B)硬化剤、(C)硬化促進剤等である。
【0022】
((B)硬化剤)
熱硬化性樹脂組成物は、(A)熱硬化性樹脂を硬化させるために、(B)硬化剤を含有していてもよい。(B)硬化剤としては特に制限はなく、従来、熱硬化性樹脂の硬化剤として使用されているものの中から、任意のものを適宜選択して用いることができる。
(B)硬化剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
(B)硬化剤としては、(A)熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を用いる場合、フェノール樹脂系硬化剤、酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤、ジシアンジアミド、シアネート樹脂系硬化剤等が挙げられる。これらの中でも、成形性及び絶縁信頼性の観点から、フェノール樹脂系硬化剤が好ましい。
【0023】
フェノール樹脂系硬化剤としては、1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有するフェノール樹脂であれば特に制限はなく、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビフェノール等の1分子中に2個のフェノール性水酸基を有する化合物;アラルキル型フェノール樹脂;ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂;トリフェニルメタン型フェノール樹脂;フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、アミノトリアジン変性ノボラック型フェノール樹脂等のノボラック型フェノール樹脂;レゾール型フェノール樹脂;ベンズアルデヒド型フェノールとアラルキル型フェノールとの共重合型フェノール樹脂;p-キシリレン及び/又はm-キシリレン変性フェノール樹脂;メラミン変性フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂;ジシクロペンタジエン型ナフトール樹脂;シクロペンタジエン変性フェノール樹脂;多環芳香環変性フェノール樹脂;ビフェニル型フェノール樹脂などが挙げられる。これらの中でも、ノボラック型フェノール樹脂が好ましく、クレゾールノボラック樹脂がより好ましい。
【0024】
酸無水物系硬化剤としては、無水フタル酸、3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸、4-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸、3-メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、4-メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチル-3,6-エンドメチレン-1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、メチルハイミック酸等が挙げられる。
アミン系硬化剤としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、ジエチルアミノプロピルアミン等の鎖状脂肪族ポリアミン;N-アミノエチルピペラジン、イソホロンジアミン等の環状脂肪族ポリアミン;m-キシリレンジアミン等の芳香環を有する脂肪族ジアミン;m-フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン等の芳香族アミン;グアニル尿素などが挙げられる。
シアネート樹脂系硬化剤としては、2,2-ビス(4-シアナトフェニル)プロパン、ビス(4-シアナトフェニル)エタン、ビス(3,5-ジメチル-4-シアナトフェニル)メタン、2,2-ビス(4-シアナトフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、α,α’-ビス(4-シアナトフェニル)-m-ジイソプロピルベンゼン、フェノール付加ジシクロペンタジエン重合体のシアネートエステル化合物、フェノールノボラック型シアネートエステル化合物、クレゾールノボラック型シアネートエステル化合物等が挙げられる。
【0025】
熱硬化性樹脂組成物が(B)硬化剤を含有する場合、その含有量は、熱硬化性樹脂組成物中の樹脂成分100質量部に対して、15~80質量部が好ましく、25~70質量部がより好ましく、35~60質量部がさらに好ましい。
【0026】
(A)熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を用いる場合、エポキシ樹脂に由来するエポキシ基と、(B)硬化剤に由来するエポキシ基に対する活性水素との当量比(活性水素/エポキシ基)は、0.5~3が好ましく、0.7~2.5がより好ましく、0.8~2.2がさらに好ましい。
【0027】
((C)硬化促進剤)
(C)硬化促進剤としては特に制限はなく、従来、熱硬化性樹脂の硬化促進剤として使用されているものの中から、任意のものを適宜選択して用いることができる。
(C)硬化促進剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
(C)硬化促進剤としては、リン系化合物;イミダゾール化合物及びその誘導体;第3級アミン化合物;第4級アンモニウム化合物等が挙げられる。これらの中でも、硬化反応促進の観点から、イミダゾール化合物及びその誘導体が好ましい。
【0028】
イミダゾール化合物及びその誘導体としては、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-1-メチルイミダゾール、1,2-ジエチルイミダゾール、1-エチル-2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、4-エチル-2-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]エチル-s-トリアジン等のイミダゾール化合物;前記イミダゾール化合物とトリメリト酸との付加反応物;前記イミダゾール化合物とイソシアヌル酸との付加反応物;前記イミダゾール化合物と臭化水素酸との付加反応物;前記イミダゾール化合物とエポキシ樹脂との付加反応物などが挙げられる。
【0029】
熱硬化性樹脂組成物が(C)硬化促進剤を含有する場合、その含有量は、熱硬化性樹脂組成物中の樹脂成分100質量部に対して、0.01~2質量部が好ましく、0.02~1.5質量部がより好ましく、0.04~1質量部がさらに好ましい。
【0030】
((D)無機充填材)
熱硬化性樹脂組成物は、低熱膨張性等の観点から、さらに(D)無機充填材を含有することが好ましい。
(D)無機充填材としては特に制限はなく、従来、熱硬化性樹脂組成物の無機充填材として使用されているものの中から、任意のものを適宜選択して用いることができる。
(D)無機充填材は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
(D)無機充填材としては、シリカ、アルミナ、硫酸バリウム、タルク、マイカ、カオリン、ベーマイト、ベリリア、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、炭酸アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ホウ酸アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化チタン、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、焼成クレー等のクレー、ガラス短繊維、ガラス粉、中空ガラスビーズなどが挙げられる。ガラスとしては、Eガラス、Tガラス、Dガラス等が挙げられる。これらの中でも、低熱膨張性の観点から、シリカが好ましい。
シリカとしては、湿式法で製造され含水率の高い沈降シリカと、乾式法で製造され結合水等をほとんど含まない乾式法シリカが挙げられる。乾式法シリカとしては、さらに、製造法の違いにより破砕シリカ、フュームドシリカ、溶融シリカ(溶融球状シリカ)等が挙げられる。これらの中でも、低熱膨張性及び樹脂に充填した際の高流動性の観点から、溶融シリカが好ましい。
【0031】
シリカは、シランカップリング剤によって表面処理されたシリカが好ましい。
シランカップリング剤としては、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、フェニルシラン系カップリング剤、アルキルシラン系カップリング剤、アルケニルシラン系カップリング剤、アルキニルシラン系カップリング剤、ハロアルキルシラン系カップリング剤、シロキサン系カップリング剤、ヒドロシラン系カップリング剤、シラザン系カップリング剤、アルコキシシラン系カップリング剤、クロロシラン系カップリング剤、(メタ)アクリルシラン系カップリング剤、アミノシラン系カップリング剤、イソシアヌレートシラン系カップリング剤、ウレイドシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、スルフィドシラン系カップリング剤、イソシアネートシラン系カップリング剤等が挙げられる。
【0032】
(D)無機充填材の平均粒子径は、0.01~6μmが好ましく、0.1~5μmがより好ましく、0.5~4μmがさらに好ましく、1~3μmが特に好ましい。
なお、本明細書中、平均粒子径とは、粒子の全体積を100%として粒子径による累積度数分布曲線を求めたとき、体積50%に相当する点の粒子径のことであり、レーザー回折散乱法を用いた粒度分布測定装置等で測定することができる。
【0033】
熱硬化性樹脂組成物が(D)無機充填材を含有する場合、その含有量は、低熱膨張性及び成形性の観点から、熱硬化性樹脂組成物中の樹脂成分100質量部に対して、10~300質量部が好ましく、50~250質量部がより好ましく、100~220質量部がさらに好ましく、130~200質量部が特に好ましい。
【0034】
(その他の成分)
熱硬化性樹脂組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲内で、有機充填材、難燃剤、熱可塑性樹脂、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光重合開始剤、蛍光増白剤、接着性向上剤等のその他の成分を含有していてもよい。
【0035】
(有機溶媒)
熱硬化性樹脂組成物は、プリプレグの製造を容易にする観点から、有機溶媒を含有するワニスの状態(以下、「樹脂ワニス」ともいう)としてもよい。
有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶媒;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等の窒素原子含有溶媒;ジメチルスルホキシド等の硫黄原子含有溶媒などが挙げられる。これらの中でも、溶解性及び塗布後の外観の観点から、ケトン系溶媒が好ましく、メチルエチルケトンがより好ましい。
有機溶媒は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
樹脂ワニス中の固形分濃度は、取り扱い性の観点から、10~80質量%が好ましく、20~75質量%がより好ましく、40~75質量%がさらに好ましい。
本明細書において、「固形分」とは、熱硬化性樹脂組成物に含まれる水、溶媒等の揮発する物質を除いた不揮発分のことであり、熱硬化性樹脂組成物を乾燥させた際に、揮発せずに残る成分を示し、また、25℃付近の室温で液状、水飴状及びワックス状のものも含む。
【0036】
[プリプレグの製造方法]
次に、上記工程1~3を含む本発明のプリプレグの製造方法について説明する。
【0037】
<工程1>
工程1は、プリプレグ前駆体を得る工程であり、前記プリプレグ前駆体は、熱硬化性樹脂組成物をB-ステージ化してなり、前記B-ステージ化は、熱硬化性樹脂組成物を基材に含浸した後、加熱処理を施してなる。
【0038】
熱硬化性樹脂組成物を基材に含浸させる方法としては、特に限定されないが、ホットメルト法、ソルベント法等が挙げられる。
ホットメルト法は、加熱により低粘度化した熱硬化性樹脂組成物を直接基材に含浸させる方法であり、例えば、熱硬化性樹脂組成物を剥離性に優れる塗工紙等に一旦塗工して樹脂フィルムを形成した後、それを基材にラミネートする方法、ダイコーター等により熱硬化性樹脂組成物を基材に直接塗工する方法等が挙げられる。
ソルベント法は、熱硬化性樹脂組成物を、樹脂ワニスとした状態で基材に含浸させる方法であり、例えば、基材を樹脂ワニスに浸漬させた後、乾燥する方法等が挙げられる。
【0039】
ここで、前記ホットメルト法を適用する場合、B-ステージ化は、前記樹脂フィルムを基材にラミネートする際における加熱と同時に行ってもよい。すなわち、前記樹脂フィルムを、加熱しながら基材にラミネートしつつ、そのまま加熱を継続して、熱硬化性樹脂組成物をB-ステージ化してプリプレグ前駆体を得てもよい。その場合、前記ラミネート時における加熱温度とB-ステージ化する際の加熱温度は、同一であっても異なっていてもよい。
また、前記ソルベント法を適用する場合、B-ステージ化は、前記樹脂ワニスを乾燥させる際の加熱と同時に行ってもよい。すなわち、基材を樹脂ワニスに浸漬させた後、加熱により有機溶媒を乾燥させつつ、そのまま加熱を継続して、熱硬化性樹脂組成物をB-ステージ化してプリプレグ前駆体を得てもよい。その場合、前記乾燥時における加熱温度とB-ステージ化する際の加熱温度は、同一であっても異なっていてもよい。
本工程における加熱処理の条件は、熱硬化性樹脂組成物をB-ステージ化できる条件であれば特に限定されず、熱硬化性樹脂の種類等に応じて適宜決定すればよい。加熱処理の温度としては、例えば、70~200℃であり、80~150℃であってもよく、90~130℃であってもよい。加熱処理の時間としては、例えば、1~30分間であり、2~25分間であってもよく、3~20分間であってもよい。当該条件は、前記ホットメルト法を適用する場合は、ラミネート条件と言うこともでき、前記ソルベント法を適用する場合は、乾燥条件とも言うことができる。
【0040】
<工程2>
工程2は、工程1で得られたプリプレグ前駆体を冷却する工程である。すなわち、工程2は、工程1において、加熱処理を施して熱硬化性樹脂組成物をB-ステージ化させて得たプリプレグ前駆体を、少なくとも該加熱処理を行った温度よりも低い温度に冷却する工程である。
本工程を実施することにより、熱硬化性樹脂組成物のB-ステージ化及び冷却という、一般的にプリプレグを製造する際に付与する熱履歴を受けることとなり、得られたプリプレグ前駆体は、従来のプリプレグに発生する、寸法変化の要因となるひずみ等を内在するものとなる。
このように、後述する工程3の前に、加熱(工程1)及び冷却(工程2)という熱履歴に起因するひずみ等を内在させておくことにより、工程3による上記ひずみ等の解消及び寸法変化量の均一化を効果的に実現することが可能になる。さらに、一度工程3によって解消された、加熱(工程1)及び冷却(工程2)という熱履歴に起因するひずみは、工程3以降に、同じ熱履歴を付与しても発生することがないか、発生しても非常に小さいものとなるため、本発明によって得られるプリプレグは、寸法変化量のバラつきが極めて小さいものとなる。
【0041】
プリプレグ前駆体の冷却は、自然放冷によって行ってもよく、送風装置、冷却ロール等の冷却装置を用いて行ってもよい。本工程における冷却後のプリプレグ前駆体の表面温度は、通常、5~80℃であり、8~50℃が好ましく、10~30℃がより好ましく、室温がさらに好ましい。
なお、本明細書において、室温とは、加熱、冷却等の温度制御なしの雰囲気温度をいうものとし、一般に、15~25℃程度であるが、天候、季節等によって変わり得るため、上記範囲に限定されるものではない。
【0042】
<工程3>
工程3は、プリプレグを得る工程であり、前記プリプレグは、工程2で冷却したプリプレグ前駆体に対して、表面加熱処理を施して得られ、前記表面加熱処理は、プリプレグ前駆体の表面温度を上昇させる処理である。
【0043】
本発明のプリプレグは、工程3を施すことにより、特に、寸法変化量のバラつきが小さいプリプレグとなる。その理由は明らかではないが、本工程により、工程1、工程2等で生じたプリプレグ前駆体中における基材のひずみを解消し、該ひずみに由来する硬化時の寸法変化を低減することにより、寸法変化量が均一になると考えられる。
工程3における表面加熱処理の加熱方法としては、特に制限はなく、パネルヒーターによる加熱方法、熱風による加熱方法、高周波による加熱方法、磁力線による加熱方法、レーザーによる加熱方法、これらを組み合せた加熱方法等が挙げられる。
表面加熱処理の加熱条件は、プリプレグ前駆体の表面温度が、表面加熱処理を実施する前の表面温度より上昇する条件であり、かつ得られるプリプレグの諸特性(例えば、流動性)に著しく影響を与えない範囲であれば特に限定されず、熱硬化性樹脂の種類等に応じて適宜決定すればよい。
表面加熱処理による、プリプレグ前駆体の表面温度の上昇値(すなわち、表面加熱処理前の表面温度と表面加熱処理中に到達する最高表面温度との差の絶対値)は、プリプレグの成形性を良好に保ちつつ、寸法変化量のバラつきを低減する観点から、5~110℃が好ましく、20~90℃がより好ましく、40~70℃がさらに好ましい。
表面加熱処理の加熱温度としては、プリプレグの成形性を良好に保ちつつ、寸法変化量のバラつきを低減する観点から、プリプレグ前駆体の表面温度が、例えば、20~130℃、好ましくは40~110℃、より好ましくは60~90℃となる範囲である。
また、表面加熱処理は、プリプレグの生産性を良好に保つ観点、及びプリプレグをB-ステージ状態に保ち、成形性を良好に保ちつつ寸法変化量のバラつきを低減させる観点から、工程1におけるB-ステージ化させる際の加熱よりも高温かつ短時間で行うことが好ましい。当該観点から、表面加熱処理は、200~700℃の環境下で行うことが好ましく、250~600℃の環境下で行うことがより好ましく、350~550℃の環境下で行うことがさらに好ましい。具体例を挙げると、パネルヒーターによる加熱方法を実施する場合、パネルヒーターの加熱設定温度は、200~700℃であることが好ましく、250~600℃であることがより好ましく、350~550℃であることがさらに好ましい。
表面加熱処理の加熱時間は、プリプレグの生産性を良好に保つ観点、及びプリプレグをB-ステージ状態に保ち、成形性を良好に保ちつつ寸法変化量のバラつきを低減させる観点から、1.0~10.0秒が好ましく、1.5~6.0秒がより好ましく、2.0~4.0秒がさらに好ましい。
【0044】
工程3で得られたプリプレグは、プリプレグの取扱い性及びタック性の観点から、これを冷却する冷却工程に供することが好ましい。プリプレグの冷却は、自然放冷によって行ってもよく、送風装置、冷却ロール等の冷却装置を用いて行ってもよい。冷却後のプリプレグの温度は、通常、5~80℃であり、8~50℃が好ましく、10~30℃がより好ましく、室温がさらに好ましい。
【0045】
なお、工程3は、後述する本発明の金属張積層板の製造工程の中で実施してもよい。具体的には、工程2で得られたプリプレグ前駆体の両面に金属箔を配置した状態で、工程3を実施して、その後、プリプレグと金属箔とを積層成形してもよい。積層成形の条件等は、後述する本発明の積層板の項に記載する通りである。
【0046】
本発明のプリプレグ中の熱硬化性樹脂組成物の固形分換算の含有量は、20~90質量%が好ましく、30~80質量%がより好ましく、40~75質量%がさらに好ましい。
本発明のプリプレグの厚さは、例えば、0.01~0.5mmであり、成形性及び高密度配線を可能にする観点から、0.02~0.2mmが好ましく、0.03~0.1mmがより好ましい。
【0047】
上記のようにして得られる本発明のプリプレグは、下記方法に従って求める標準偏差σが、好ましくは0.012%以下、より」好ましくは0.011%以下、さらに好ましくは0.010%以下、よりさらに好ましくは0.009%以下、特に0.008%以下である。標準偏差σの下限値に特に制限はないが、通常、0.003%以上であり、0.005%以上であってもよいし、0.006%以上であってもよいし、0.007%以上であってもよい。
標準偏差σの算出方法:
プリプレグ1枚の両面に厚さ18μmの銅箔を重ね、190℃、2.45MPaにて90分間加熱加圧成形し、厚さ0.1mmの両面銅張積層板を作製する。こうして得られた両面銅張積層板について、面内に直径1.0mmの穴開けを図1に記載の1~8の場所に実施する。図1に記載のたて糸方向(1-7、2-6、3-5)及びよこ糸方向(1-3、8-4、7-5)の各3点ずつの距離を画像測定機を使用して測定し、各測定距離を初期値とする。その後、外層銅箔を除去し、乾燥機にて185℃で60分間加熱する。冷却後、初期値の測定方法と同様にして、たて糸方向(1-7、2-6、3-5)及びよこ糸方向(1-3、8-4、7-5)の各3点ずつの距離を測定する。各測定距離の初期値に対する変化率[(加熱処理後の測定値-初期値)×100/初期値]からそれらの変化率の平均値を求め、該平均値に対する標準偏差σを算出する。
前記画像測定機に特に制限は無いが、例えば、「QV-A808P1L-D」(Mitutoyo社製)を使用することができる。
【0048】
[積層板]
本発明の積層板は、本発明のプリプレグと金属箔とを積層成形してなるものである。
本発明の積層板は、例えば、本発明のプリプレグを1枚用いるか又は必要に応じて2~20枚重ね、その片面又は両面に金属箔を配置した構成で積層成形することにより製造することができる。なお、以下、金属箔を配置した積層板を、金属張積層板と称することがある。
【0049】
金属箔の金属としては、電気絶縁材料用途で用いられるものであれば特に制限はない。
金属箔の金属としては、導電性の観点から、銅、金、銀、ニッケル、白金、モリブデン、ルテニウム、アルミニウム、タングステン、鉄、チタン、クロム、これらの金属元素のうちの少なくとも1種を含む合金が好ましく、銅、アミルニウムがより好ましく、銅がさらに好ましい。すなわち、本発明の積層板は、銅張積層板であることが好ましい。
金属箔の厚さは、プリント配線板の用途等により適宜選択すればよいが、0.5~150μmが好ましく、1~100μmがより好ましく、5~50μmがさらに好ましく、5~30μmが特に好ましい。
また、金属箔にめっきをすることによりめっき層を形成してもよい。めっき層の金属は、めっきに使用し得る金属であれば特に制限されないが、銅、金、銀、ニッケル、白金、モリブデン、ルテニウム、アルミニウム、タングステン、鉄、チタン、クロム、これらの金属元素のうちの少なくとも1種を含む合金が好ましい。
めっき方法としては特に制限はなく、電解めっき法、無電解めっき法等を利用できる。
【0050】
積層板の成形条件としては、電気絶縁材料用積層板及び多層板の公知の成形手法を適用することができ、例えば、多段プレス、多段真空プレス、連続成形、オートクレーブ成形機等を使用し、温度100~250℃、圧力0.2~10MPa、加熱時間0.1~5時間の条件で成形することができる。
また、本発明のプリプレグと内層用プリント配線板とを組合せ、積層成形して、多層板を製造することもできる。
【0051】
[プリント配線板]
本発明のプリント配線板は、本発明のプリプレグ又は本発明の積層板を含有してなるものである。
本発明のプリント配線板は、例えば、本発明の積層板の金属箔に対して回路加工を施すことにより製造することができる。回路加工は、例えば、金属箔表面にレジストパターンを形成後、エッチングにより不要部分の金属箔を除去し、レジストパターンを剥離後、ドリル又はレーザーにより必要なスルーホールを形成し、再度レジストパターンを形成後、スルーホールに導通させるためのメッキを施し、最後にレジストパターンを剥離することにより行うことができる。
このようにして得られたプリント配線板の表面にさらに上記の金属張積層板を前記したのと同様の条件で積層し、さらに、上記と同様にして回路加工して多層プリント配線板とすることができる。この場合、必ずしもスルーホールを形成する必要はなく、バイアホールを形成してもよく、両方を形成してもよい。このような多層化は必要枚数行えばよい。
【0052】
[半導体パッケージ]
本発明の半導体パッケージは、本発明のプリント配線板を用いてなるものである。
本発明の半導体パッケージは、本発明のプリント配線板の所定の位置に半導体チップ、メモリ等を搭載して製造することができる。
【実施例
【0053】
次に、下記の実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、これらの実施例は本発明をいかなる意味においても制限するものではない。各例で得られたプリプレグ等は、以下の評価方法に基づいて性能を評価した。なお、本実施例における室温は25℃である。
【0054】
[評価方法]
<1.成形性>
各例で作製した4層銅張積層板をエッチング液に浸漬して外層銅を除去して得た評価基板について、340mm×500mmの面内中における、ボイド及びかすれの有無を目視によって確認した。ボイド及びかすれが確認されなかったものを「異常なし」、ボイド又はかすれが確認されたものを「異常あり」として、成形性の指標とした。
【0055】
<2.寸法変化量のバラつき>
各例で作製した両面銅張積層板の面内に、図1に示すように、直径1.0mmの穴開けを行い、図1の模式図で表される評価基板を得た。
次に、図1における「たて糸方向」の穴間距離(1-7間、2-6間、3-5間)3点と、「よこ糸方向」の穴間距離(1-3間、8-4間、7-5間)3点を、「QV-A808P1L-D」(ミツトヨ株式会社製)を使用して測定し、各測定距離を初期値とした。次に、評価基板をエッチング液に浸漬して外層銅箔を除去した後、乾燥機にて185℃で60分間加熱した。冷却後、初期値と同様の方法により、各穴間距離を測定して、加熱処理後の測定値とした。
各穴間距離について、初期値に対する加熱処理後の測定値の変化率((初期値-加熱処理後の測定値)×100/(初期値))を求め、それらの平均値に対する標準偏差σを算出し、該標準偏差σを寸法変化量のバラつきとした。
【0056】
実施例1
(プリプレグ前駆体の作製:工程1~2)
(A)熱硬化性樹脂として、ビフェニルアラルキルノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量:280~300g/eq)19質量部、
(B)硬化剤として、クレゾールノボラック樹脂(水酸基当量:119g/eq)16質量部、
(C)硬化促進剤として、2-エチル-4-メチルイミダゾール(四国化成工業株式会社製)0.02質量部、
(D)無機充填材として、球状シリカ(平均粒径:2μm)65質量部を混合し、溶媒(メチルエチルケトン)で希釈することによって、ワニス状の熱硬化性樹脂組成物(固形分濃度:70質量%)を調製した。
この熱硬化性樹脂組成物を、基材であるガラスクロス(日東紡績株式会社製、商品名:1037クロス、厚さ:0.025mm)に含浸させてから、熱硬化性樹脂組成物がB-ステージ化するまで、100~200℃で5~15分間、乾燥炉内において加熱した。その後、自然放冷により室温に冷却して、プリプレグ前駆体を得た。
【0057】
(プリプレグの作製:工程3)
上記で得られたプリプレグ前駆体に対して、パネルヒーターを用いて、加熱設定温度500℃で、プリプレグ前駆体の表面温度が70℃になるよう、加熱時間3秒の条件で表面加熱処理を実施し、室温に冷却してプリプレグを得た。
なお、得られたプリプレグ中における熱硬化性樹脂組成物の固形分換算の含有量は70質量%であった。
【0058】
(銅張積層板の作製)
上記で得られたプリプレグ1枚を使用し、両面に18μmの銅箔「YGP-18」(日本電解株式会社製)を重ね、温度190℃、圧力25kgf/cm(2.45MPa)にて90分間加熱加圧成形し、プリプレグ1枚分の両面銅張積層板を作製した。
得られた両面銅張積層板の両銅箔面に内層密着処理(「BF処理液」(日立化成株式会社製)を使用。)を施し、プリプレグを1枚ずつ重ね両面に18μmの銅箔「YGP-18」(日本電解株式会社製)を重ね、温度190℃、圧力25kgf/cm(2.45MPa)にて90分間加熱加圧成形して4層銅張積層板を作製した。
一方で、プリプレグ1枚の両面に18μmの銅箔「3EC-VLP-18」(三井金属株式会社製)を重ね、温度190℃、圧力25kgf/cm(2.45MPa)にて90分間加熱加圧成形し、プリプレグ1枚分の両面銅張積層板を作製した。
【0059】
実施例2
(プリプレグ前駆体の作製:工程1~2)
(A)成分:下記製造例1で製造したマレイミド化合物(A)の溶液を用いた。
[製造例1]
温度計、攪拌装置及び還流冷却管付き水分定量器を備えた容積1Lの反応容器に、4,4’-ジアミノジフェニルメタン19.2g、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン174.0g、p-アミノフェノール6.6g及びジメチルアセトアミド330.0gを入れ、100℃で2時間反応させて、酸性置換基とN-置換マレイミド基とを有するマレイミド化合物(A)(Mw=1,370)のジメチルアセトアミド溶液を得、(A)成分として用いた。
なお、上記重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、標準ポリスチレンを用いた検量線から換算した。検量線は、標準ポリスチレン:TSKstandard POLYSTYRENE(Type;A-2500、A-5000、F-1、F-2、F-4、F-10、F-20、F-40)[東ソー株式会社製]を用いて3次式で近似した。GPCの条件は、以下に示す。
装置:(ポンプ:L-6200型[株式会社日立ハイテクノロジーズ製])、
(検出器:L-3300型RI[株式会社日立ハイテクノロジーズ製])、
(カラムオーブン:L-655A-52[株式会社日立ハイテクノロジーズ製])
カラム;TSKgel SuperHZ2000+TSKgel SuperHZ2300(すべて東ソー株式会社製)
カラムサイズ:6.0mm×40mm(ガードカラム)、7.8mm×300mm(カラム)
溶離液:テトラヒドロフラン
試料濃度:20mg/5mL
注入量:10μL
流量:0.5mL/分
測定温度:40℃
【0060】
(A)熱硬化性樹脂として、上記で得られたマレイミド化合物(A)45質量部、及びクレゾールノボラック型エポキシ樹脂30質量部、
(B)成分として、ジシアンジアミド(日本カーバイド工業株式会社製)2質量部、
(D)成分として、アミノシラン系カップリング剤により処理された溶融シリカ(平均粒子径:1.9μm、比表面積5.8m/g)50質量部、
熱可塑性樹脂として、スチレンと無水マレイン酸との共重合樹脂(スチレン/無水マレイン酸=4、Mw=11,000)25質量部、
難燃剤として、芳香族リン酸エステルをリン原子換算量で2.0質量部、
となるように配合(但し、溶液の場合は固形分換算量を示す。)し、さらに溶液の固形分濃度が65~75質量%になるようにメチルエチルケトンを追加し、樹脂ワニスを調製した。
得られた各樹脂ワニスをIPC規格#3313のガラスクロス(0.1mm)に含浸させ、温度160℃に設定したパネルヒーターで4分間乾燥した(工程1)後、室温へ放冷し(工程2)、プリプレグ前駆体を得た。
【0061】
(プリプレグの作製:工程3)
上記で得られたプリプレグ前駆体に対して、パネルヒーターを用いて、加熱設定温度500℃で、プリプレグ前駆体の表面温度が70℃になるよう、加熱時間3秒の条件で表面加熱処理を実施し、室温に冷却してプリプレグを得た。
なお、得られたプリプレグ中における熱硬化性樹脂組成物の固形分換算の含有量は70質量%であった。
【0062】
(銅張積層板の作製)
上記で得られたプリプレグ1枚を使用し、実施例1と同様にして4層銅張積層板及び両面銅張積層板を作製した。
【0063】
[比較例1]
実施例1において、工程3を実施しなかった点以外は、実施例1と同様にして、プリプレグ、4層銅張積層板及び両面銅張積層板を作製した。
【0064】
[比較例2]
実施例2において、工程3を実施しなかった点以外は、実施例1と同様にして、プリプレグ、4層銅張積層板及び両面銅張積層板を作製した。
【0065】
上記各例で得られた4層銅張積層板及び両面銅張積層板の評価結果を表1に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
実施例1及び2のプリプレグは、成形性において、樹脂の埋め込み性が良好であり、このプリプレグから得られた積層板には、かすれ、ボイド等の異常は確認されなかった。また、実施例1及び2のプリプレグは、表面加熱処理を行っていない比較例1及び2のプリプレグと比べると、寸法変化量のバラつき(標準偏差(σ))が小さくなる傾向を示した。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明のプリプレグは、成形性に優れ、寸法変化量のバラつきが小さいため、高集積化された半導体パッケージ、電子機器用プリント配線板等として有用である。
図1