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特許7120279波長変換部材、バックライトユニット、画像表示装置、波長変換用樹脂組成物及び波長変換用樹脂硬化物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】波長変換部材、バックライトユニット、画像表示装置、波長変換用樹脂組成物及び波長変換用樹脂硬化物
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/20 20060101AFI20220809BHJP
   B82Y 20/00 20110101ALI20220809BHJP
   C09K 11/08 20060101ALI20220809BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20220809BHJP
【FI】
G02B5/20
B82Y20/00
C09K11/08 Z ZNM
H01L33/50
【請求項の数】 34
(21)【出願番号】P 2020148468
(22)【出願日】2020-09-03
(62)【分割の表示】P 2019545193の分割
【原出願日】2018-09-28
(65)【公開番号】P2021002056
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2020-10-06
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2017/035725
(32)【優先日】2017-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】向垣内 康平
(72)【発明者】
【氏名】舟生 重昭
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏明
(72)【発明者】
【氏名】中村 智之
(72)【発明者】
【氏名】梶本 貴紀
(72)【発明者】
【氏名】勝田 良孝
(72)【発明者】
【氏名】矢羽田 達也
【審査官】横川 美穂
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-522591(JP,A)
【文献】特許第6760509(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
B82Y 20/00
C09K 11/08
H01L 33/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子ドット蛍光体と、前記量子ドット蛍光体を包含し脂環式構造とスルフィド構造とを含む樹脂硬化物と、を含有し、前記樹脂硬化物が、白色顔料を包含し、平均厚みが50μm~200μmのフィルム状であり、
前記樹脂硬化物が、単官能(メタ)アクリレート化合物、脂環式構造を有する多官能(メタ)アクリレート化合物及び多官能チオール化合物を硬化した物であり、
前記多官能(メタ)アクリレート化合物と前記多官能チオール化合物との質量基準の含有比率(多官能(メタ)アクリレート化合物/多官能チオール化合物)が、0.5~4.0であり、
前記単官能(メタ)アクリレート化合物と前記多官能(メタ)アクリレート化合物との質量基準の含有比率(単官能(メタ)アクリレート化合物/多官能(メタ)アクリレート化合物)が、0.01~0.07である波長変換部材。
【請求項2】
フーリエ変換赤外分光光度計で測定した前記樹脂硬化物における、S-H伸縮振動に帰属されるピーク面積(V1)と、C-H伸縮振動に帰属されるピーク面積(V2)との比率(V1/V2)が、0.005以下である請求項1に記載の波長変換部材。
【請求項3】
動的粘弾性測定により測定された前記樹脂硬化物のガラス転移温度が、85℃以上である請求項1又は請求項2に記載の波長変換部材。
【請求項4】
前記脂環式構造として、少なくとも2種類の脂環式構造が含まれる請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の波長変換部材。
【請求項5】
前記脂環式構造が、多環式構造を含む請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の波長変換部材。
【請求項6】
前記多環式構造が、トリシクロデカン骨格を含む請求項5に記載の波長変換部材。
【請求項7】
前記多環式構造が、イソボルニル骨格を含む請求項6に記載の波長変換部材。
【請求項8】
前記トリシクロデカン骨格と前記イソボルニル骨格とのモル基準の含有比率(トリシクロデカン骨格/イソボルニル骨格)が、5~20である請求項7に記載の波長変換部材。
【請求項9】
前記脂環式構造における、最もSP値が高い脂環式構造のSP値と最もSP値が低い脂環式構造のSP値との差が、0~1.5である請求項4に記載の波長変換部材。
【請求項10】
前記樹脂硬化物が、エステル構造を含む請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の波長変換部材。
【請求項11】
前記白色顔料の平均粒子径が、0.1μm~1μmである請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の波長変換部材。
【請求項12】
前記白色顔料が、酸化チタンを含む請求項1~請求項11のいずれか1項に記載の波長変換部材。
【請求項13】
画像表示用である請求項1~請求項12のいずれか1項に記載の波長変換部材。
【請求項14】
前記量子ドット蛍光体が、Cd及びInの少なくとも一方を含む化合物を含有する請求項1~請求項13のいずれか1項に記載の波長変換部材。
【請求項15】
前記樹脂硬化物の少なくとも一部を被覆する被覆材を有する請求項1~請求項14のいずれか1項に記載の波長変換部材。
【請求項16】
前記被覆材が、酸素及び水の少なくとも一方に対するバリア性を有する請求項15に記載の波長変換部材。
【請求項17】
請求項1~請求項16のいずれか1項に記載の波長変換部材と、光源と、を備えるバックライトユニット。
【請求項18】
請求項17に記載のバックライトユニットを備える画像表示装置。
【請求項19】
脂環式構造を有する多官能(メタ)アクリレート化合物、単官能(メタ)アクリレート化合物、多官能チオール化合物、光重合開始剤、白色顔料及び量子ドット蛍光体を含み、
前記多官能(メタ)アクリレート化合物と前記多官能チオール化合物との質量基準の含有比率(多官能(メタ)アクリレート化合物/多官能チオール化合物)が、0.5~4.0であり、
前記単官能(メタ)アクリレート化合物と前記多官能(メタ)アクリレート化合物との質量基準の含有比率(単官能(メタ)アクリレート化合物/多官能(メタ)アクリレート化合物)が、0.01~0.07である波長変換用樹脂組成物。
【請求項20】
前記脂環式構造が、多環式構造を含む請求項19に記載の波長変換用樹脂組成物。
【請求項21】
前記多環式構造が、トリシクロデカン骨格を含む請求項20に記載の波長変換用樹脂組成物。
【請求項22】
前記単官能(メタ)アクリレート化合物が、脂環式構造を有する請求項19~請求項21のいずれか1項に記載の波長変換用樹脂組成物。
【請求項23】
前記脂環式構造が、多環式構造を含む請求項22に記載の波長変換用樹脂組成物。
【請求項24】
前記多官能(メタ)アクリレート化合物及び前記単官能(メタ)アクリレート化合物のうちの、最もSP値が高い化合物のSP値と最もSP値が低い化合物のSP値との差が、0~1.5である請求項19~請求項23のいずれか1項に記載の波長変換用樹脂組成物。
【請求項25】
前記多官能(メタ)アクリレート化合物がトリシクロデカン骨格を有する化合物を含み、前記単官能(メタ)アクリレート化合物がイソボルニル骨格を有する化合物を含む請求項19~請求項24のいずれか1項に記載の波長変換用樹脂組成物。
【請求項26】
前記トリシクロデカン骨格を有する化合物と前記イソボルニル骨格を有する化合物とのモル基準の含有比率(トリシクロデカン骨格を有する化合物/イソボルニル骨格を有する化合物)が、5~20である請求項25に記載の波長変換用樹脂組成物。
【請求項27】
液状媒体を含有しないか又は液状媒体の含有率が0.5質量%以下である請求項19~請求項26のいずれか1項に記載の波長変換用樹脂組成物。
【請求項28】
前記白色顔料の平均粒子径が、0.1μm~1μmである請求項19~請求項27のいずれか1項に記載の波長変換用樹脂組成物。
【請求項29】
前記白色顔料が、酸化チタンを含む請求項19~請求項28のいずれか1項に記載の波長変換用樹脂組成物。
【請求項30】
前記量子ドット蛍光体が、Cd及びInの少なくとも一方を含む化合物を含有する請求項19~請求項29のいずれか1項に記載の波長変換用樹脂組成物。
【請求項31】
フィルム形成に用いられる請求項19~請求項30のいずれか1項に記載の波長変換用樹脂組成物。
【請求項32】
波長変換部材の形成に用いられる請求項19~請求項31のいずれか1項に記載の波長変換用樹脂組成物。
【請求項33】
請求項19~請求項32のいずれか1項に記載の波長変換用樹脂組成物の硬化物である波長変換用樹脂硬化物。
【請求項34】
動的粘弾性測定により測定されたガラス転移温度が、85℃以上である請求項33に記載の波長変換用樹脂硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長変換部材、バックライトユニット、画像表示装置、波長変換用樹脂組成物及び波長変換用樹脂硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置等の画像表示装置の分野においては、ディスプレイの色再現性を向上させることが求められている。色再現性を向上させる手段として、特許文献1及び特許文献2に記載のように、量子ドット蛍光体を含む波長変換部材が注目を集めている。
【0003】
量子ドット蛍光体を含む波長変換部材は、例えば、画像表示装置のバックライトユニットに配置される。赤色光を発光する量子ドット蛍光体及び緑色光を発光する量子ドット蛍光体を含む波長変換部材を用いる場合、波長変換部材に対して励起光としての青色光を照射すると、量子ドット蛍光体から発光された赤色光及び緑色光と、波長変換部材を透過した青色光とにより、白色光を得ることができる。量子ドット蛍光体を含む波長変換部材の開発により、ディスプレイの色再現性は、従来のNTSC(National Television System Committee)比72%からNTSC比100%へと拡大している。
【0004】
量子ドット蛍光体を含む波長変換部材は、通常、量子ドット蛍光体を含有する硬化性組成物を硬化させた硬化物を有する。硬化性組成物としては熱硬化型及び光硬化型があり、生産性の観点からは光硬化型の硬化性組成物が好ましく用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2013-544018号公報
【文献】国際公開第2016/052625号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
量子ドット蛍光体は、水蒸気又は酸素の影響で劣化が起こりやすい。そのため、量子ドット蛍光体を含む波長変換部材を高温高湿環境下に放置した場合に、量子ドット蛍光体が劣化し発光強度が低下するおそれがある。
【0007】
特に、量子ドット蛍光体を含有する光硬化型の硬化性組成物の硬化物は、高温高湿環境下における耐湿熱性が不十分であり、量子ドット蛍光体が劣化し発光強度が低下しやすい傾向にある。
【0008】
量子ドット蛍光体の発光強度の低下を抑制するため、量子ドット蛍光体を含む波長変換部材においては、量子ドット蛍光体を含む硬化物の少なくとも一部が被覆材によって被覆される場合がある。例えば、フィルム状の波長変換部材の場合、量子ドット蛍光体を含む硬化物層の片面又は両面に、酸素及び水の少なくとも一方に対するバリア性を有するバリアフィルムが設けられることがある。しかし、バリアフィルム等の被覆材を設けたとしても十分に発光強度の低下を抑制できない場合がある。
【0009】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、量子ドット蛍光体を含有し、耐湿熱性に優れる波長変換部材並びにそれを用いたバックライトユニット及び画像表示装置を提供することを課題とする。さらに、本開示は、量子ドット蛍光体を含有し、耐湿熱性に優れる硬化物を形成可能な波長変換用樹脂組成物及びそれを用いた波長変換用樹脂硬化物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 量子ドット蛍光体と、前記量子ドット蛍光体を包含し脂環式構造とスルフィド構造とを含む樹脂硬化物と、を含有する波長変換部材。
<2> フーリエ変換赤外分光光度計で測定した前記樹脂硬化物における、S-H伸縮振動に帰属されるピーク面積(V1)と、C-H伸縮振動に帰属されるピーク面積(V2)との比率(V1/V2)が、0.005以下である<1>に記載の波長変換部材。
<3> 動的粘弾性測定により測定された前記樹脂硬化物のガラス転移温度が、85℃以上である<1>又は<2>に記載の波長変換部材。
<4> 前記脂環式構造として、少なくとも2種類の脂環式構造が含まれる<1>~<3>のいずれか1項に記載の波長変換部材。
<5> 前記脂環式構造が、多環式構造を含む<1>~<4>のいずれか1項に記載の波長変換部材。
<6> 前記多環式構造が、トリシクロデカン骨格を含む<5>に記載の波長変換部材。
<7> 前記多環式構造が、イソボルニル骨格を含む<6>に記載の波長変換部材。
<8> 前記トリシクロデカン骨格と前記イソボルニル骨格とのモル基準の含有比率(トリシクロデカン骨格/イソボルニル骨格)が、5~20である<7>に記載の波長変換部材。
<9> 前記脂環式構造における、最もSP値が高い脂環式構造のSP値と最もSP値が低い脂環式構造のSP値との差が、0~1.5である<4>に記載の波長変換部材。
<10> 前記樹脂硬化物が、エステル構造を含む<1>~<9>のいずれか1項に記載の波長変換部材。
<11> 前記樹脂硬化物が、白色顔料を包含する<1>~<10>のいずれか1項に記載の波長変換部材。
<12> 前記白色顔料の平均粒子径が、0.1μm~1μmである<11>に記載の波長変換部材。
<13> 前記白色顔料が、酸化チタンを含む<11>又は<12>に記載の波長変換部材。
<14> フィルム状である<1>~<13>のいずれか1項に記載の波長変換部材。
<15> 画像表示用である<1>~<14>のいずれか1項に記載の波長変換部材。
<16> 前記量子ドット蛍光体が、Cd及びInの少なくとも一方を含む化合物を含有する<1>~<15>のいずれか1項に記載の波長変換部材。
<17> 前記樹脂硬化物の少なくとも一部を被覆する被覆材を有する<1>~<16>のいずれか1項に記載の波長変換部材。
<18> 前記被覆材が、酸素及び水の少なくとも一方に対するバリア性を有する<17>に記載の波長変換部材。
<19> <1>~<18>のいずれか1項に記載の波長変換部材と、光源と、を備えるバックライトユニット。
<20> <19>に記載のバックライトユニットを備える画像表示装置。
<21> 脂環式構造を有する多官能(メタ)アクリレート化合物、多官能チオール化合物、光重合開始剤及び量子ドット蛍光体を含む波長変換用樹脂組成物。
<22> 前記多官能(メタ)アクリレート化合物と前記多官能チオール化合物との質量基準の含有比率(多官能(メタ)アクリレート化合物/多官能チオール化合物)が、0.5~10である<21>に記載の波長変換用樹脂組成物。
<23> 前記脂環式構造が、多環式構造を含む<21>又は<22>に記載の波長変換用樹脂組成物。
<24> 前記多環式構造が、トリシクロデカン骨格を含む<23>に記載の波長変換用樹脂組成物。
<25> 単官能(メタ)アクリレート化合物を含む<21>~<24>のいずれか1項に記載の波長変換用樹脂組成物。
<26> 前記単官能(メタ)アクリレート化合物が、脂環式構造を有する<25>に記載の波長変換用樹脂組成物。
<27> 前記脂環式構造が、多環式構造を含む<26>に記載の波長変換用樹脂組成物。
<28> 前記多官能(メタ)アクリレート化合物及び前記単官能(メタ)アクリレート化合物のうちの、最もSP値が高い化合物のSP値と最もSP値が低い化合物のSP値との差が、0~1.5である<25>~<27>のいずれか1項に記載の波長変換用樹脂組成物。
<29> 前記単官能(メタ)アクリレート化合物と前記多官能(メタ)アクリレート化合物との質量基準の含有比率(単官能(メタ)アクリレート化合物/多官能(メタ)アクリレート化合物)が、0.01~0.30である<25>~<28>のいずれか1項に記載の波長変換用樹脂組成物。
<30> 前記多官能(メタ)アクリレート化合物がトリシクロデカン骨格を有する化合物を含み、前記単官能(メタ)アクリレート化合物がイソボルニル骨格を有する化合物を含む<25>~<29>のいずれか1項に記載の波長変換用樹脂組成物。
<31> 前記トリシクロデカン骨格を有する化合物と前記イソボルニル骨格を有する化合物とのモル基準の含有比率(トリシクロデカン骨格を有する化合物/イソボルニル骨格を有する化合物)が、5~20である<30>に記載の波長変換用樹脂組成物。
<32> 液状媒体を含有しないか又は液状媒体の含有率が0.5質量%以下である<21>~<31>のいずれか1項に記載の波長変換用樹脂組成物。
<33> 白色顔料を含む<21>~<32>のいずれか1項に記載の波長変換用樹脂組成物。
<34> 前記白色顔料の平均粒子径が、0.1μm~1μmである<33>に記載の波長変換用樹脂組成物。
<35> 前記白色顔料が、酸化チタンを含む<33>又は<34>に記載の波長変換用樹脂組成物。
<36> 前記量子ドット蛍光体が、Cd及びInの少なくとも一方を含む化合物を含有する<21>~<35>のいずれか1項に記載の波長変換用樹脂組成物。
<37> フィルム形成に用いられる<21>~<36>のいずれか1項に記載の波長変換用樹脂組成物。
<38> 波長変換部材の形成に用いられる<21>~<37>のいずれか1項に記載の波長変換用樹脂組成物。
<39> <21>~<38>のいずれか1項に記載の波長変換用樹脂組成物の硬化物である波長変換用樹脂硬化物。
<40> 動的粘弾性測定により測定されたガラス転移温度が、85℃以上である<39>に記載の波長変換用樹脂硬化物。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、量子ドット蛍光体を含有し、耐湿熱性に優れる波長変換部材並びにそれを用いたバックライトユニット及び画像表示装置を提供することができる。さらに、本開示によれば、量子ドット蛍光体を含有し、耐湿熱性に優れる硬化物を形成可能な波長変換用樹脂組成物及びそれを用いた波長変換用樹脂硬化物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】波長変換部材の概略構成の一例を示す模式断面図である。
図2】バックライトユニットの概略構成の一例を示す図である。
図3】液晶表示装置の概略構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本発明を制限するものではない。
本開示において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率又は含有量は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本開示において各成分に該当する粒子は複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、各成分の粒子径は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
本開示において「層」又は「膜」との語には、当該層又は膜が存在する領域を観察したときに、当該領域の全体に形成されている場合に加え、当該領域の一部にのみ形成されている場合も含まれる。
本開示において「積層」との語は、層を積み重ねることを示し、二以上の層が結合されていてもよく、二以上の層が着脱可能であってもよい。
本開示において「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基及びメタクリロイル基の少なくとも一方を意味し、「(メタ)アクリル」はアクリル及びメタクリルの少なくとも一方を意味し、「(メタ)アクリレート」はアクリレート及びメタクリレートの少なくとも一方を意味し、「(メタ)アリル」はアリル及びメタリルの少なくとも一方を意味する。
【0014】
<波長変換部材>
本開示の波長変換部材は、量子ドット蛍光体と、前記量子ドット蛍光体を包含し脂環式構造とスルフィド構造とを含む樹脂硬化物と、を含有する。本開示の波長変換部材は、必要に応じて、後述する被覆材等のその他の構成要素を含んでいてもよい。
本開示に係る樹脂硬化物は、後述する本開示の波長変換用樹脂組成物の硬化物(波長変換用樹脂硬化物)であってもよい。
本開示の波長変換部材は、樹脂硬化物中に脂環式構造とスルフィド構造とを含むことから、耐湿熱性に優れると推察される。
本開示の波長変換部材は、画像表示用として好適に用いられる。
【0015】
脂環式構造とスルフィド構造とを含む樹脂硬化物は、例えば、チオール基を含む化合物におけるチオール基と炭素炭素二重結合を含む化合物における炭素炭素二重結合との重合反応により形成されたものであってもよい。また、樹脂硬化物に含まれる脂環式構造は、炭素炭素二重結合を含む化合物に含まれる構造由来であってもよい。
【0016】
樹脂硬化物に含まれる脂環式構造は特に限定されるものではなく、単環式構造であっても、二環式構造、三環式構造等の多環式構造であってもよい。脂環式構造の具体例としては、シクロブタン骨格、シクロペンタン骨格、シクロヘキサン骨格等の単環式構造、トリシクロデカン骨格、シクロヘキサン骨格、1,3-アダマンタン骨格、水添ビスフェノールA骨格、水添ビスフェノールF骨格、水添ビスフェノールS骨格、イソボルニル骨格等の多環式構造などが挙げられる。これらの中でも、多環式構造であることが好ましく、トリシクロデカン骨格又はイソボルニル骨格であることがより好ましく、トリシクロデカン骨格であることがさらに好ましい。
【0017】
樹脂硬化物に含まれる脂環式構造は、1種類単独であっても、少なくとも2種類であってもよく、少なくとも2種類であることが好ましい。
少なくとも2種類の脂環式構造が樹脂硬化物に含まれる場合、脂環式構造の組み合わせとしては、トリシクロデカン骨格及びイソボルニル骨格の組み合わせ、水添ビスフェノールA骨格及びイソボルニル骨格の組み合わせ等が挙げられる。これらの中でも、発光効率、輝度及び耐湿熱性の観点から、トリシクロデカン骨格及びイソボルニル骨格の組み合わせが好ましい。
【0018】
脂環式構造に占める多環式構造の割合は特に限定されるものではなく、多環式構造のモル基準の割合は、70モル%~100モル%であることが好ましく、80モル%~100モル%であることがより好ましく、90モル%~100モル%であることがさらに好ましい。
脂環式構造としてトリシクロデカン骨格及びイソボルニル骨格の組み合わせが用いられる場合、トリシクロデカン骨格とイソボルニル骨格とのモル基準の含有比率(トリシクロデカン骨格/イソボルニル骨格)は、耐湿熱性の観点から、5~20であることが好ましく、5~18であることがより好ましく、5~15であることがさらに好ましい。
脂環式構造に占める多環式構造の割合及びトリシクロデカン骨格とイソボルニル骨格とのモル基準の含有比率は、樹脂硬化物の製造に用いられる波長変換用樹脂組成物に含まれる成分の含有量から算出してもよい。例えば、トリシクロデカン骨格を有する化合物とイソボルニル骨格を有する化合物とのモル基準の含有比率は、トリシクロデカン骨格とイソボルニル骨格とのモル基準の含有比率と一致する。
【0019】
少なくとも2種類の脂環式構造が樹脂硬化物に含まれる場合、脂環式構造における、最もSP値が高い脂環式構造のSP値と最もSP値が低い脂環式構造のSP値との差は、発光効率及び輝度の観点から、0~1.5であることが好ましく、0~1.2であることがより好ましく、0~1.0であることがさらに好ましい。
【0020】
本開示におけるSP値の算出手法を以下に記載する。
SP値は、Fedors法に基づいてδ=ΣE/ΣVの式より計算することができる。ここで、δはSP値を、Eは蒸発エネルギーを、Vはモル体積を意味している(参考文献:R.T.Fedors, Polymer Engineering and Science,14,147(1974)、日本接着協会誌Vol.22 No.10(1986))。
また、本開示における脂環式構造のSP値とは、脂環式構造を構成する原子又は原子団から算出されるSP値をいう。
また、後述の多官能(メタ)アクリレート化合物及び単官能(メタ)アクリレート化合物のSP値とは、これら化合物を構成する原子又は原子団から算出されるSP値をいう。
【0021】
フーリエ変換赤外分光光度計で測定した樹脂硬化物における、S-H伸縮振動に帰属されるピーク面積(V1)と、C-H伸縮振動に帰属されるピーク面積(V2)との比率(V1/V2)は、0.005以下であることが好ましく、0.004以下であることがより好ましく、0.002以下であることがさらに好ましい。
樹脂硬化物が、チオール基を含む化合物におけるチオール基と炭素炭素二重結合を含む化合物における炭素炭素二重結合との重合反応により形成されたものである場合、比率(V1/V2)が小さいことは即ち、重合反応に寄与していないチオール基が少ないことを示唆する。重合反応に寄与していないチオール基が少ないと、樹脂硬化物のガラス転移温度が高くなる傾向にある。
樹脂硬化物における、S-H伸縮振動に帰属されるピーク面積(V1)及びC-H伸縮振動に帰属されるピーク面積(V2)は、フーリエ変換赤外分光光度計を用いて下記方法により測定された値をいう。
FT-IR Spectrometer(Perkin Elmer社)を用いて、測定対象の波長変換部材の表面をATR(Attenuated Total Reflection(全反射測定法))分析する。バックグラウンド測定は、空気で測定し、積算回数16回の条件でFT-IR測定を実施する。波長変換部材が被覆材を有する場合、被覆材を剥離した状態の波長変換部材の硬化物層をFT-IR測定に供する。
【0022】
樹脂硬化物は、エステル構造を含んでいてもよい。樹脂硬化物の元となる炭素炭素二重結合を含む化合物としては、例えば、(メタ)アリル基を含む(メタ)アリル化合物及び(メタ)アクリロイル基を含む(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。(メタ)アリル化合物に比較して(メタ)アクリレート化合物のほうが重合反応の活性が高い傾向にある。樹脂硬化物がエステル構造を含むことは即ち炭素炭素二重結合を含む化合物として(メタ)アクリレート化合物が用いられたことを示唆する。(メタ)アクリレート化合物用いて形成された樹脂硬化物は、(メタ)アリル化合物を用いて形成された樹脂硬化物に比較してガラス転移温度が高くなる傾向にある。
【0023】
樹脂硬化物は、白色顔料を包含してもよい。樹脂硬化物に包含される白色顔料についての詳細は、後述の波長変換用樹脂組成物の項に記載のとおりである。
また、樹脂硬化物に包含される量子ドット蛍光体についての詳細も、後述の波長変換用樹脂組成物の項に記載のとおりである。
【0024】
波長変換部材の形状は特に制限されず、フィルム状、レンズ状等が挙げられる。波長変換部材を後述するバックライトユニットに適用する場合には、波長変換部材はフィルム状であることが好ましい。
【0025】
波長変換部材がフィルム状である場合、波長変換部材の平均厚みは、例えば、50μm~200μmであることが好ましく、50μm~150μmであることがより好ましく、80μm~120μmであることがさらに好ましい。波長変換部材の平均厚みが50μm以上であると、波長変換効率がより向上する傾向にあり、平均厚みが200μm以下であると、波長変換部材を後述するバックライトユニットに適用した場合に、バックライトユニットをより薄型化できる傾向にある。
フィルム状の波長変換部材の平均厚みは、例えば、マイクロメータを用いて測定した任意の3箇所の厚みの算術平均値として求められる。
【0026】
波長変換部材は、1種類の波長変換用樹脂組成物を硬化したものであってもよく、2種類以上の波長変換用樹脂組成物を硬化したものであってもよい。例えば、波長変換部材がフィルム状である場合、波長変換部材は、第1の量子ドット蛍光体を含有する波長変換用樹脂組成物を硬化した第1の硬化物層と、第1の量子ドット蛍光体とは発光特性が異なる第2の量子ドット蛍光体を含有する波長変換用樹脂組成物を硬化した第2の硬化物層とが積層されたものであってもよい。
【0027】
波長変換部材は、波長変換用樹脂組成物の塗膜、成形体等を形成し、必要に応じて乾燥処理を行った後、紫外線等の活性エネルギー線を照射することにより得ることができる。活性エネルギー線の波長及び照射量は、波長変換用樹脂組成物の組成に応じて適宜設定することができる。一態様では、280nm~400nmの波長の紫外線を100mJ/cm~5000mJ/cmの照射量で照射する。紫外線源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯等が挙げられる。
【0028】
波長変換部材に含有される樹脂硬化物は、密着性をより向上させる観点から、動的粘弾性測定により周波数10Hzかつ温度25℃の条件で測定した損失正接(tanδ)が0.4~1.5であることが好ましく、0.4~1.2であることがより好ましく、0.4~0.6であることがさらに好ましい。樹脂硬化物の損失正接(tanδ)は、動的粘弾性測定装置(例えば、Rheometric Scientific社、Solid Analyzer RSA-III)を用いて測定することができる。
【0029】
また、樹脂硬化物は、密着性、耐熱性、及び耐湿熱性をより向上させる観点から、ガラス転移温度(Tg)が85℃以上であることが好ましく、85℃~160℃であることがより好ましく、90℃~120℃であることがさらに好ましい。樹脂硬化物のガラス転移温度(Tg)は、動的粘弾性測定装置(例えば、Rheometric Scientific社、Solid Analyzer RSA-III)を用いて、周波数10Hzの条件で測定することができる。
【0030】
また、樹脂硬化物は、密着性、耐熱性、及び耐湿熱性をより向上させる観点から、周波数10Hzかつ温度25℃の条件で測定した貯蔵弾性率が1×10Pa~1×1010Paであることが好ましく、5×10Pa~1×1010Paであることがより好ましく、5×10Pa~5×10Paであることがさらに好ましい。樹脂硬化物の貯蔵弾性率は、動的粘弾性測定装置(例えば、Rheometric Scientific社、Solid Analyzer RSA-III)を用いて測定することができる。
【0031】
本開示の波長変換部材は、樹脂硬化物の少なくとも一部を被覆する被覆材を有していてもよい。例えば、樹脂硬化物がフィルム状である場合、フィルム状の樹脂硬化物の片面又は両面がフィルム状の被覆材によって被覆されていてもよい。
【0032】
被覆材は、量子ドット蛍光体の発光効率の低下を抑える観点から、酸素及び水の少なくとも一方に対するバリア性を有することが好ましく、酸素及び水の両方に対するバリア性を有することがより好ましい。酸素及び水の少なくとも一方に対するバリア性を有する被覆材としては特に制限されず、無機層を有するバリアフィルム等の公知の被覆材を用いることができる。
【0033】
被覆材がフィルム状である場合、被覆材の平均厚みは、例えば、100μm~150μmであることが好ましく、100μm~140μmであることがより好ましく、100μm~135μmであることがさらに好ましい。平均厚みが100μm以上であると、バリア性等の機能が充分なものとなる傾向にあり、平均厚みが150μm以下であると、光透過率の低下が抑えられる傾向にある。
フィルム状の被覆材の平均厚みは、フィルム状の波長変換部材と同様にして求められる。
【0034】
被覆材の酸素透過率は、例えば、0.5mL/(m・24h・atm)以下であることが好ましく、0.3mL/(m・24h・atm)以下であることがより好ましく、0.1mL/(m・24h・atm)以下であることがさらに好ましい。被覆材の酸素透過率は、酸素透過率測定装置(例えば、MOCON社、OX-TRAN)を用いて、温度23℃かつ相対湿度65%の条件で測定することができる。
また、被覆材の水蒸気透過率は、例えば、5×10-2g/(m・24h・Pa)以下であることが好ましく、1×10-2g/(m・24h・Pa)以下であることがより好ましく、5×10-3g/(m・24h・Pa)以下であることがさらに好ましい。被覆材の水蒸気透過率は、水蒸気透過率測定装置(例えば、MOCON社、AQUATRAN)を用いて、温度40℃かつ相対湿度90%の条件で測定することができる。
【0035】
本開示の波長変換部材は、光の利用効率をより向上させる観点から、全光線透過率が55%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、65%以上であることがさらに好ましい。波長変換部材の全光線透過率は、JIS K 7136:2000の測定法に準拠して測定することができる。
【0036】
また、本開示の波長変換部材は、光の利用効率をより向上させる観点から、ヘーズが95%以上であることが好ましく、97%以上であることがより好ましく、99%以上であることがさらに好ましい。波長変換部材のヘーズは、JIS K 7136:2000の測定法に準拠して測定することができる。
【0037】
波長変換部材の概略構成の一例を図1に示す。但し、本開示の波長変換部材は図1の構成に限定されるものではない。また、図1における硬化物層及び被覆材の大きさは概念的なものであり、大きさの相対的な関係はこれに限定されない。なお、各図面において、同一の部材には同一の符号を付し、重複した説明は省略することがある。
【0038】
図1に示す波長変換部材10は、フィルム状の樹脂硬化物である硬化物層11と、硬化物層11の両面に設けられたフィルム状の被覆材12A及び12Bとを有する。被覆材12A及び被覆材12Bの種類及び平均厚みは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0039】
図1に示す構成の波長変換部材は、例えば、以下のような公知の製造方法により製造することができる。
【0040】
まず、連続搬送されるフィルム状の被覆材(以下、「第1の被覆材」ともいう。)の表面に後述の波長変換用樹脂組成物を付与し、塗膜を形成する。波長変換用樹脂組成物の付与方法は特に制限されず、ダイコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、ロッドコーティング法、ロールコーティング法等が挙げられる。
【0041】
次いで、波長変換用樹脂組成物の塗膜の上に、連続搬送されるフィルム状の被覆材(以下、「第2の被覆材」ともいう。)を貼り合わせる。
【0042】
次いで、第1の被覆材及び第2の被覆材のうち活性エネルギー線を透過可能な被覆材側から活性エネルギー線を照射することにより、塗膜を硬化し、硬化物層を形成する。その後、規定のサイズに切り出すことにより、図1に示す構成の波長変換部材を得ることができる。
【0043】
なお、第1の被覆材及び第2の被覆材のいずれも活性エネルギー線を透過可能でない場合には、第2の被覆材を貼り合わせる前に塗膜に活性エネルギー線を照射し、硬化物層を形成してもよい。
【0044】
<バックライトユニット>
本開示のバックライトユニットは、上述した本開示の波長変換部材と、光源とを備える。
【0045】
バックライトユニットとしては、色再現性を向上させる観点から、多波長光源化されたものが好ましい。好ましい一態様としては、430nm~480nmの波長域に発光中心波長を有し、半値幅が100nm以下である発光強度ピークを有する青色光と、520nm~560nmの波長域に発光中心波長を有し、半値幅が100nm以下である発光強度ピークを有する緑色光と、600nm~680nmの波長域に発光中心波長を有し、半値幅が100nm以下である発光強度ピークを有する赤色光と、を発光するバックライトユニットを挙げることができる。なお、発光強度ピークの半値幅とは、ピーク高さの1/2の高さにおけるピーク幅を意味する。
【0046】
色再現性をより向上させる観点から、バックライトユニットが発光する青色光の発光中心波長は、440nm~475nmの範囲であることが好ましい。同様の観点から、バックライトユニットが発光する緑色光の発光中心波長は、520nm~545nmの範囲であることが好ましい。 また、同様の観点から、バックライトユニットが発光する赤色光の発光中心波長は、610nm~640nmの範囲であることが好ましい。
【0047】
また、色再現性をより向上させる観点から、バックライトユニットが発光する青色光、緑色光、及び赤色光の各発光強度ピークの半値幅は、いずれも80nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましく、40nm以下であることがさらに好ましく、30nm以下であることが特に好ましく、25nm以下であることが極めて好ましい。
【0048】
バックライトユニットの光源としては、例えば、430nm~480nmの波長域に発光中心波長を有する青色光を発光する光源を用いることができる。光源としては、例えば、LED(Light Emitting Diode)及びレーザーが挙げられる。青色光を発光する光源を用いる場合、波長変換部材は、少なくとも、赤色光を発光する量子ドット蛍光体R及び緑色光を発光する量子ドット蛍光体Gを含むことが好ましい。これにより、波長変換部材から発光される赤色光及び緑色光と、波長変換部材を透過した青色光とにより、白色光を得ることができる。
【0049】
また、バックライトユニットの光源としては、例えば、300nm~430nmの波長域に発光中心波長を有する紫外光を発光する光源を用いることもできる。光源としては、例えば、LED及びレーザーが挙げられる。紫外光を発光する光源を用いる場合、波長変換部材は、量子ドット蛍光体R及び量子ドット蛍光体Gとともに、励起光により励起され青色光を発光する量子ドット蛍光体Bを含むことが好ましい。これにより、波長変換部材から発光される赤色光、緑色光、及び青色光により、白色光を得ることができる。
【0050】
本開示のバックライトユニットは、エッジライト方式であっても直下型方式であってもよい。
【0051】
エッジライト方式のバックライトユニットの概略構成の一例を図2に示す。但し、本開示のバックライトユニットは、図2の構成に限定されるものではない。また、図2における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。
【0052】
図2に示すバックライトユニット20は、青色光Lを出射する光源21と、光源21から出射された青色光Lを導光して出射させる導光板22と、導光板22と対向配置される波長変換部材10と、波長変換部材10を介して導光板22と対向配置される再帰反射性部材23と、導光板22を介して波長変換部材10と対向配置される反射板24とを備える。波長変換部材10は、青色光Lの一部を励起光として赤色光L及び緑色光Lを発光し、赤色光L及び緑色光Lと、励起光とならなかった青色光Lとを出射する。この赤色光L、緑色光L、及び青色光Lにより、再帰反射性部材23から白色光Lが出射される。
【0053】
<画像表示装置>
本開示の画像表示装置は、上述した本開示のバックライトユニットを備える。画像表示装置としては特に制限されず、例えば、液晶表示装置が挙げられる。
【0054】
液晶表示装置の概略構成の一例を図3に示す。但し、本開示の液晶表示装置は、図3の構成に限定されるものではない。また、図3における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。
【0055】
図3に示す液晶表示装置30は、バックライトユニット20と、バックライトユニット20と対向配置される液晶セルユニット31とを備える。液晶セルユニット31は、液晶セル32が偏光板33Aと偏光板33Bとの間に配置された構成とされる。
【0056】
液晶セル32の駆動方式は特に制限されず、TN(Twisted Nematic)方式、STN(Super Twisted Nematic)方式、VA(Virtical Alignment)方式、IPS(In-Plane-Switching)方式、OCB(Optically Compensated Birefringence)方式等が挙げられる。
【0057】
<波長変換用樹脂組成物>
本開示の波長変換用樹脂組成物は、脂環式構造を有する多官能(メタ)アクリレート化合物、多官能チオール化合物、光重合開始剤及び量子ドット蛍光体を含む。本開示の波長変換用樹脂組成物は、必要に応じて、他の成分をさらに含有していてもよい。本開示の波長変換用樹脂組成物は、上記構成を有することにより、硬化物の耐湿熱性に優れる。
【0058】
以下、本開示の波長変換用樹脂組成物に含有される成分について詳細に説明する。
【0059】
(多官能(メタ)アクリレート化合物)
本開示の波長変換用樹脂組成物は、脂環式構造を有する多官能(メタ)アクリレート化合物を含有する。脂環式構造を有する多官能(メタ)アクリレート化合物は、骨格に脂環式構造を有し、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート化合物である。
脂環式構造を有する多官能(メタ)アクリレート化合物に含まれる脂環式構造は、特に限定されるものではなく、単環式構造であっても、二環式構造、三環式構造等の多環式構造であってもよい。
脂環式構造を有する多官能(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,3-アダマンタンジメタノールジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールA(ポリ)エトキシジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールA(ポリ)プロポキシジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールF(ポリ)エトキシジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールF(ポリ)プロポキシジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールS(ポリ)エトキシジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールS(ポリ)プロポキシジ(メタ)アクリレート等の脂環式(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
波長変換用樹脂組成物の耐湿熱性の観点から、脂環式構造を有する多官能(メタ)アクリレート化合物に含まれる脂環式構造が、多環式構造を含むことが好ましく、トリシクロデカン骨格を含むことがより好ましい。脂環式構造がトリシクロデカン骨格を含む多官能(メタ)アクリレート化合物としては、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートであることが好ましい。
【0060】
波長変換用樹脂組成物中の脂環式構造を有する多官能(メタ)アクリレート化合物の含有率は、波長変換用樹脂組成物の全量に対して、例えば、40質量%~90質量%であることが好ましく、60質量%~90質量%であることがより好ましく、75質量%~85質量%であることがさらに好ましい。脂環式構造を有する多官能(メタ)アクリレート化合物の含有率が上記範囲にある場合、硬化物の耐湿熱性がより向上する傾向にある。
【0061】
波長変換用樹脂組成物は、1種類の脂環式構造を有する多官能(メタ)アクリレート化合物を単独で含有していてもよく、2種類以上の脂環式構造を有する多官能(メタ)アクリレート化合物を組み合わせて含有していてもよい。
【0062】
(チオール化合物)
波長変換用樹脂組成物は、多官能チオール化合物を含有する。波長変換用樹脂組成物が多官能チオール化合物を含有することで、波長変換用樹脂組成物が硬化する際に多官能(メタ)アクリレート化合物と多官能チオール化合物との間でエンチオール反応が進行し、硬化物の耐湿熱性がより向上する傾向にある。また、波長変換用樹脂組成物が多官能チオール化合物を含有することで、硬化物の光学特性がより向上する傾向にある。
【0063】
なお、(メタ)アリル化合物とチオール化合物とを含有する組成物は保存安定性に劣ることが多いが、本開示の波長変換用樹脂組成物は多官能チオール化合物を含有するにもかかわらず保存安定性に優れる。これは、波長変換用樹脂組成物が多官能(メタ)アクリレート化合物を含有するためと推測される。
【0064】
多官能チオール化合物の具体例としては、エチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、ジエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、1,2-プロピレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、ジエチレングリコールビス(3-メルカプトブチレート)、1,4-ブタンジオールビス(3-メルカプトプロピオネート)、1,4-ブタンジオールビス(3-メルカプトブチレート)、1,8-オクタンジオールビス(3-メルカプトプロピオネート)、1,8-オクタンジオールビス(3-メルカプトブチレート)、ヘキサンジオールビスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトイソブチレート)、トリメチロールプロパントリス(2-メルカプトイソブチレート)、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトイソブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトイソブチレート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(2-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトブチレート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトイソブチレート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(2-メルカプトイソブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、ジペンタエリスリトールヘキサキスチオグリコレート等が挙げられる。
【0065】
また、多官能チオール化合物は、あらかじめ多官能(メタ)アクリレート化合物と反応したチオエーテルオリゴマーの状態であってもよい。
【0066】
チオエーテルオリゴマーは、多官能チオール化合物と多官能(メタ)アクリレート化合物とを重合開始剤の存在下で付加重合させることにより得ることができる。チオエーテルオリゴマーを付加重合により得る場合、原料となる多官能(メタ)アクリレート化合物の(メタ)アクリロイル基の当量数に対する多官能チオール化合物のチオール基の当量数の割合(チオール基の当量数/(メタ)アクリロイル基の当量数)は、例えば、3.0~3.3であることが好ましく、3.0~3.2であることがより好ましく、3.05~3.15であることがさらに好ましい。
【0067】
チオエーテルオリゴマーの重量平均分子量は、例えば、3000~10000であることが好ましく、3000~8000であることがより好ましく、4000~6000であることがさらに好ましい。
なお、チオエーテルオリゴマーの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定される分子量分布から標準ポリスチレンの検量線を使用して換算して求められる。
【0068】
また、チオエーテルオリゴマーのチオール当量は、例えば、200g/eq~400g/eqであることが好ましく、250g/eq~350g/eqであることがより好ましく、250g/eq~270g/eqであることがさらに好ましい。
【0069】
なお、チオエーテルオリゴマーのチオール当量は、以下のようなヨウ素滴定法により測定することができる。
測定試料0.2gを精秤し、これにクロロホルム20mLを加えて試料溶液とする。デンプン指示薬として可溶性デンプン0.275gを30gの純水に溶解させたものを用いて、純水20mL、イソプロピルアルコール10mL、及びデンプン指示薬1mLを加え、スターラーで撹拌する。ヨウ素溶液を滴下し、クロロホルム層が緑色を呈した点を終点とする。このとき下記式にて与えられる値を、測定試料のチオール当量とする。
チオール当量(g/eq)=測定試料の質量(g)×10000/ヨウ素溶液の滴定量(mL)×ヨウ素溶液のファクター
【0070】
波長変換用樹脂組成物は、1分子中に1個のチオール基を有する単官能チオール化合物を含有してもよい。
【0071】
単官能チオール化合物の具体例としては、ヘキサンチオール、1-ヘプタンチオール、1-オクタンチオール、1-ノナンチオール、1-デカンチオール、3-メルカプトプロピオン酸、メルカプトプロピオン酸メチル、メルカプトプロピオン酸メトキシブチル、メルカプトプロピオン酸オクチル、メルカプトプロピオン酸トリデシル、2-エチルヘキシル-3-メルカプトプロピオネート、n-オクチル-3-メルカプトプロピオネート等が挙げられる。
【0072】
波長変換用樹脂組成物中のチオール化合物(多官能チオール化合物及び必要に応じて用いられる単官能チオール化合物の合計)の含有率は、波長変換用樹脂組成物の全量に対して、例えば、5質量%~50質量%であることが好ましく、5質量%~40質量%であることがより好ましく、10質量%~30質量%であることがさらに好ましく、15質量%~25質量%であることが特に好ましい。この場合、多官能(メタ)アクリレート化合物とのエンチオール反応により、硬化物がさらに緻密な架橋構造を形成し、耐湿熱性がより向上する傾向にある。
多官能チオール化合物及び必要に応じて用いられる単官能チオール化合物の合計に占める多官能チオール化合物の質量基準の割合は、60質量%~100質量%であることが好ましく、70質量%~100質量%であることがより好ましく、80質量%~100質量%であることがさらに好ましい。
【0073】
多官能(メタ)アクリレート化合物と多官能チオール化合物との質量基準の含有比率(多官能(メタ)アクリレート化合物/多官能チオール化合物)は、0.5~10であることが好ましく、0.5~8.0であることがより好ましく、0.5~6.0であることがさらに好ましい。
【0074】
(光重合開始剤)
波長変換用樹脂組成物は、光重合開始剤を含有する。光重合開始剤としては特に制限されず、具体例として、紫外線等の活性エネルギー線の照射によりラジカルを発生する化合物が挙げられる。
【0075】
光重合開始剤の具体例としては、ベンゾフェノン、N,N’-テトラアルキル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノ-プロパノン-1、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(「ミヒラーケトン」とも称される)、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4-メトキシ-4’-ジメチルアミノベンゾフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン等の芳香族ケトン化合物;アルキルアントラキノン、フェナントレンキノン等のキノン化合物;ベンゾイン、アルキルベンゾイン等のベンゾイン化合物;ベンゾインアルキルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル化合物;ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体;2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(m-メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2,4-ジ(p-メトキシフェニル)-5-フェニルイミダゾール二量体、2-(2,4-ジメトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体;9-フェニルアクリジン、1,7-(9,9’-アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体;1,2-オクタンジオン1-[4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)等のオキシムエステル化合物;7-ジエチルアミノ-4-メチルクマリン等のクマリン化合物;2,4-ジエチルチオキサントン等のチオキサントン化合物;2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-フェニル-エトキシ-ホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド化合物;などが挙げられる。波長変換用樹脂組成物は、1種類の光重合開始剤を単独で含有していてもよく、2種類以上の光重合開始剤を組み合わせて含有していてもよい。
【0076】
光重合開始剤としては、硬化性の観点から、アシルホスフィンオキサイド化合物、芳香族ケトン化合物、及びオキシムエステル化合物からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、アシルホスフィンオキサイド化合物及び芳香族ケトン化合物からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、アシルホスフィンオキサイド化合物がさらに好ましい。
【0077】
波長変換用樹脂組成物中の光重合開始剤の含有率は、波長変換用樹脂組成物の全量に対して、例えば、0.1質量%~5質量%であることが好ましく、0.1質量%~3質量%であることがより好ましく、0.5質量%~1.5質量%であることがさらに好ましい。光重合開始剤の含有率が0.1質量%以上であると、波長変換用樹脂組成物の感度が充分なものとなる傾向にあり、光重合開始剤の含有率が5質量%以下であると、波長変換用樹脂組成物の色相への影響及び保存安定性の低下が抑えられる傾向にある。
【0078】
(量子ドット蛍光体)
波長変換用樹脂組成物は、量子ドット蛍光体を含有する。量子ドット蛍光体としては特に制限されず、II-VI族化合物、III-V族化合物、IV-VI族化合物、及びIV族化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む粒子が挙げられる。発光効率の観点からは、量子ドット蛍光体は、Cd及びInの少なくとも一方を含む化合物を含むことが好ましい。
【0079】
II-VI族化合物の具体例としては、CdSe、CdTe、CdS、ZnS、ZnSe、ZnTe、ZnO、HgS、HgSe、HgTe、CdSeS、CdSeTe、CdSTe、ZnSeS、ZnSeTe、ZnSTe、HgSeS、HgSeTe、HgSTe、CdZnS、CdZnSe、CdZnTe、CdHgS、CdHgSe、CdHgTe、HgZnS、HgZnSe、HgZnTe、CdZnSeS、CdZnSeTe、CdZnSTe、CdHgSeS、CdHgSeTe、CdHgSTe、HgZnSeS、HgZnSeTe、HgZnSTe等が挙げられる。
III-V族化合物の具体例としては、GaN、GaP、GaAs、GaSb、AlN、AlP、AlAs、AlSb、InN、InP、InAs、InSb、GaNP、GaNAs、GaNSb、GaPAs、GaPSb、AlNP、AlNAs、AlNSb、AlPAs、AlPSb、InNP、InNAs、InNSb、InPAs、InPSb、GaAlNP、GaAlNAs、GaAlNSb、GaAlPAs、GaAlPSb、GaInNP、GaInNAs、GaInNSb、GaInPAs、GaInPSb、InAlNP、InAlNAs、InAlNSb、InAlPAs、InAlPSb等が挙げられる。
IV-VI族化合物の具体例としては、SnS、SnSe、SnTe、PbS、PbSe、PbTe、SnSeS、SnSeTe、SnSTe、PbSeS、PbSeTe、PbSTe、SnPbS、SnPbSe、SnPbTe、SnPbSSe、SnPbSeTe、SnPbSTe等が挙げられる。
IV族化合物の具体例としては、Si、Ge、SiC、SiGe等が挙げられる。
【0080】
量子ドット蛍光体としては、コアシェル構造を有するものが好ましい。コアを構成する化合物のバンドギャップよりもシェルを構成する化合物のバンドギャップを広くすることで、量子ドット蛍光体の量子効率をより向上させることが可能となる。コア及びシェルの組み合わせ(コア/シェル)としては、CdSe/ZnS、InP/ZnS、PbSe/PbS、CdSe/CdS、CdTe/CdS、CdTe/ZnS等が挙げられる。
【0081】
また、量子ドット蛍光体としては、シェルが多層構造である、いわゆるコアマルチシェル構造を有するものであってもよい。バンドギャップの広いコアにバンドギャップの狭いシェルを1層又は2層以上積層し、さらにこのシェルの上にバンドギャップの広いシェルを積層することで、量子ドット蛍光体の量子効率をさらに向上させることが可能となる。
【0082】
波長変換用樹脂組成物は、1種類の量子ドット蛍光体を単独で含有していてもよく、2種類以上の量子ドット蛍光体を組み合わせて含有していてもよい。2種類以上の量子ドット蛍光体を組み合わせて含有する態様としては、例えば、成分は異なるものの平均粒子径を同じくする量子ドット蛍光体を2種類以上含有する態様、平均粒子径は異なるものの成分を同じくする量子ドット蛍光体を2種類以上含有する態様、並びに成分及び平均粒子径の異なる量子ドット蛍光体を2種類以上含有する態様が挙げられる。量子ドット蛍光体の成分及び平均粒子径の少なくとも一方を変更することで、量子ドット蛍光体の発光中心波長を変更することができる。
【0083】
例えば、波長変換用樹脂組成物は、520nm~560nmの緑色の波長域に発光中心波長を有する量子ドット蛍光体Gと、600nm~680nmの赤色の波長域に発光中心波長を有する量子ドット蛍光体Rとを含有していてもよい。量子ドット蛍光体Gと量子ドット蛍光体Rとを含有する波長変換用樹脂組成物の硬化物に対して430nm~480nmの青色の波長域の励起光を照射すると、量子ドット蛍光体G及び量子ドット蛍光体Rからそれぞれ緑色光及び赤色光が発光される。その結果、量子ドット蛍光体G及び量子ドット蛍光体Rから発光される緑色光及び赤色光と、硬化物を透過する青色光とにより、白色光を得ることができる。
【0084】
量子ドット蛍光体は、分散媒体に分散された量子ドット蛍光体分散液の状態で用いてもよい。量子ドット蛍光体を分散する分散媒体としては、各種有機溶剤及び単官能(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。
分散媒体として使用可能な有機溶剤としては、水、アセトン、酢酸エチル、トルエン、n-ヘキサン等が挙げられる。
分散媒体として使用可能な単官能(メタ)アクリレート化合物としては、室温(25℃)において液体であれば特に限定されるものではなく、脂環式構造を有する単官能(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。単官能(メタ)アクリレート化合物に含まれる脂環式構造は、特に限定されるものではなく、単環式構造であっても、二環式構造、三環式構造等の多環式構造であってもよい。単官能(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、分散媒体としては、波長変換用樹脂組成物を硬化する際に分散媒体を揮発させる工程が不要になる観点から、単官能(メタ)アクリレート化合物であることが好ましく、脂環式構造を有する単官能(メタ)アクリレート化合物であることがより好ましく、多環式構造を有する単官能(メタ)アクリレート化合物であることがさらに好ましく、イソボルニル(メタ)アクリレート及びジシクロペンタニル(メタ)アクリレートであることが特に好ましく、イソボルニル(メタ)アクリレートであることが極めて好ましい。
【0085】
分散媒体として単官能(メタ)アクリレート化合物を用いる場合、多官能(メタ)アクリレート化合物及び単官能(メタ)アクリレート化合物のうちの、最もSP値が高い化合物のSP値と最もSP値が低い化合物のSP値との差は、発光効率及び輝度の観点から、0~1.5であることが好ましく、0~1.3であることがより好ましく、0~1.1であることがさらに好ましい。
多官能(メタ)アクリレート化合物及び単官能(メタ)アクリレート化合物のSP値の算出方法は、上述の通りである。
【0086】
分散媒体として単官能(メタ)アクリレート化合物を用いる場合、単官能(メタ)アクリレート化合物と多官能(メタ)アクリレート化合物との質量基準の含有比率(単官能(メタ)アクリレート化合物/多官能(メタ)アクリレート化合物)は、0.01~0.30であることが好ましく、0.02~0.20であることがより好ましく、0.05~0.20であることがさらに好ましい。
【0087】
分散媒体として単官能(メタ)アクリレート化合物を用いる場合、単官能(メタ)アクリレート化合物と多官能(メタ)アクリレート化合物との組み合わせとして、耐湿熱性の観点から、多官能(メタ)アクリレート化合物がトリシクロデカン骨格を有する化合物を含み、単官能(メタ)アクリレート化合物がイソボルニル骨格を有する化合物を含むことが好ましい。
トリシクロデカン骨格を有する化合物とイソボルニル骨格を有する化合物とのモル基準の含有比率(トリシクロデカン骨格を有する化合物/イソボルニル骨格を有する化合物)は、耐湿熱性の観点から、5~20であることが好ましく、5~18であることがより好ましく、5~15であることがさらに好ましい。
【0088】
量子ドット蛍光体分散液に占める量子ドット蛍光体の質量基準の割合は、1質量%~30質量%であることが好ましく、1質量%~20質量%であることがより好ましく、1質量%~10質量%であることがさらに好ましい。
【0089】
波長変換用樹脂組成物中の量子ドット蛍光体分散液の含有率は、量子ドット蛍光体分散液に占める量子ドット蛍光体の質量基準の割合が1質量%~20質量%である場合、波長変換用樹脂組成物の全量に対して、例えば、1質量%~10質量%であることが好ましく、4質量%~10質量%であることがより好ましく、4質量%~7質量%であることがさらに好ましい。
また、波長変換用樹脂組成物中の量子ドット蛍光体の含有率は、波長変換用樹脂組成物の全量に対して、例えば、0.01質量%~1.0質量%であることが好ましく、0.05質量%~0.5質量%であることがより好ましく、0.1質量%~0.5質量%であることがさらに好ましい。量子ドット蛍光体の含有率が0.01質量%以上であると、硬化物に励起光を照射する際に充分な発光強度が得られる傾向にあり、量子ドット蛍光体の含有率が1.0質量%以下であると、量子ドット蛍光体の凝集が抑えられる傾向にある。
【0090】
(液状媒体)
波長変換用樹脂組成物は、液状媒体を含有しないか又は液状媒体の含有率が0.5質量%以下であることが好ましい。液状媒体とは、室温(25℃)において液体の状態の媒体をいう。
【0091】
液状媒体の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチル-n-ブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル-n-ペンチルケトン、メチル-n-ヘキシルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルシクロヘキサノン、2,4-ペンタンジオン、アセトニルアセトン等のケトン溶剤;ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、メチル-n-プロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジ-n-プロピルエーテル、エチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールメチル-n-プロピルエーテル、ジエチレングリコールメチル-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ-n-プロピルエーテル、ジエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールメチル-n-ヘキシルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールメチル-n-ブチルエーテル、トリエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、トリエチレングリコールメチル-n-ヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラエチレングリコールメチル-n-ブチルエーテル、テトラエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、テトラエチレングリコールメチル-n-ヘキシルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジ-n-プロピルエーテル、プロピレングリコールジ-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエチルエーテル、ジプロピレングリコールメチル-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールジ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールジ-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチル-n-ヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエチルエーテル、トリプロピレングリコールメチル-n-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールジ-n-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールメチル-n-ヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラプロピレングリコールジエチルエーテル、テトラプロピレングリコールメチルエチルエーテル、テトラプロピレングリコールメチル-n-ブチルエーテル、テトラプロピレングリコールジ-n-ブチルエーテル、テトラプロピレングリコールメチル-n-ヘキシルエーテル等のエーテル溶剤;プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート等のカーボネート溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸n-ペンチル、酢酸sec-ペンチル、酢酸3-メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2-エチルブチル、酢酸2-エチルヘキシル、酢酸2-(2-ブトキシエトキシ)エチル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸ジエチレングリコールメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリエチレングリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n-ブチル、プロピオン酸イソアミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ-n-ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n-ブチル、乳酸n-アミル、エチレングリコールメチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールエチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン等のエステル溶剤;アセトニトリル、N-メチルピロリジノン、N-エチルピロリジノン、N-プロピルピロリジノン、N-ブチルピロリジノン、N-ヘキシルピロリジノン、N-シクロヘキシルピロリジノン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶剤;メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、t-ブタノール、n-ペンタノール、イソペンタノール、2-メチルブタノール、sec-ペンタノール、t-ペンタノール、3-メトキシブタノール、n-ヘキサノール、2-メチルペンタノール、sec-ヘキサノール、2-エチルブタノール、sec-ヘプタノール、n-オクタノール、2-エチルヘキサノール、sec-オクタノール、n-ノニルアルコール、n-デカノール、sec-ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec-テトラデシルアルコール、sec-ヘプタデシルアルコール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等のアルコール溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールモノエーテル溶剤;テルピネン、テルピネオール、ミルセン、アロオシメン、リモネン、ジペンテン、ピネン、カルボン、オシメン、フェランドレン等のテルペン溶剤;ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル等のストレートシリコーンオイル;アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシ変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、異種官能基変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、メチルスチリル変性シリコーンオイル、親水性特殊変性シリコーンオイル、高級アルコキシ変性シリコーンオイル、高級脂肪酸変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル等の変性シリコーンオイル;ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、イコサン酸、エイコセン酸等の炭素数4以上の飽和脂肪族モノカルボン酸;オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、パルミトレイン酸等の炭素数8以上の不飽和脂肪族モノカルボン酸;などが挙げられる。波長変換用樹脂組成物が液状媒体を含有する場合、1種類の液状媒体を単独で含有していてもよく、2種類以上の液状媒体を組み合わせて含有していてもよい。
【0092】
(白色顔料)
波長変換用樹脂組成物は、白色顔料をさらに含有していてもよい。
白色顔料の具体例としては、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム等が挙げられる。これらの中でも、光散乱効率の観点から酸化チタンであることが好ましい。
波長変換用樹脂組成物が白色顔料として酸化チタンを含有する場合、酸化チタンとしては、ルチル型酸化チタンであってもアナターゼ型酸化チタンであってもよく、ルチル型酸化チタンであることが好ましい。
【0093】
白色顔料の平均粒子径は、0.1μm~1μmであることが好ましく、0.2μm~0.8μmであることがより好ましく、0.2μm~0.5μmであることがさらに好ましい。
本開示において白色顔料の平均粒子径は、以下のようにして測定することができる。
波長変換用樹脂組成物から抽出した白色顔料を、界面活性剤を含んだ精製水に分散させ、分散液を得る。この分散液を用いてレーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、株式会社島津製作所、SALD-3000J)で測定される体積基準の粒度分布において、小径側からの積算が50%となるときの値(メジアン径(D50))を白色顔料の平均粒子径とする。波長変換用樹脂組成物から白色顔料を抽出する方法としては、例えば、波長変換用樹脂組成物を液状媒体で希釈し、遠心分離処理等により白色顔料を沈澱させて分収することで得ることができる。
なお、樹脂硬化物中に含まれる白色顔料の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡を用いた粒子の観察により、50個の粒子について円相当径(長径と短径の幾何平均)を算出し、その算術平均値として求めることができる。
【0094】
波長変換用樹脂組成物が白色顔料を含有する場合、波長変換用樹脂組成物中で顔料白色顔料が凝集するのを抑制する観点から、白色粒子は、表面の少なくとも一部に有機物を含む有機物層を有することが好ましい。有機物層に含まれる有機物としては、有機シラン、オルガノシロキサン、フルオロシラン、有機ホスホネート、有機リン酸化合物、有機ホスフィネート、有機スルホン酸化合物、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸の誘導体、アミド、炭化水素ワックス、ポリオレフィン、ポリオレフィンのコポリマー、ポリオール、ポリオールの誘導体、アルカノールアミン、アルカノールアミンの誘導体、有機分散剤等が挙げられる。
有機物層に含まれる有機物は、ポリオール、有機シラン等を含むことが好ましく、ポリオール又は有機シランの少なくとも一方を含むことがより好ましい。
有機シランの具体例としては、オクチルトリエトキシシラン、ノニルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、トリデシルトリエトキシシラン、テトラデシルトリエトキシシラン、ペンタデシルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン、ヘプタデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン等が挙げられる。
オルガノシロキサンの具体例としては、トリメチルシリル官能基で終端されたポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリメチルヒドロシロキサン(PMHS)、PMHSのオレフィンによる官能化(ヒドロシリル化による)により誘導されるポリシロキサン等が挙げられる。
有機ホスホネートの具体例としては、例えば、n-オクチルホスホン酸及びそのエステル、n-デシルホスホン酸及びそのエステル、2-エチルヘキシルホスホン酸及びそのエステル並びにカンフィル(camphyl)ホスホン酸及びそのエステルが挙げられる。
有機リン酸化合物の具体例としては、有機酸性ホスフェート、有機ピロホスフェート、有機ポリホスフェート、有機メタホスフェート、これらの塩等が挙げられる。
有機ホスフィネートの具体例としては、例えば、n-ヘキシルホスフィン酸及びそのエステル、n-オクチルホスフィン酸及びそのエステル、ジ-n-ヘキシルホスフィン酸及びそのエステル並びにジ-n-オクチルホスフィン酸及びそのエステルが挙げられる。
有機スルホン酸化合物の具体例としては、ヘキシルスルホン酸、オクチルスルホン酸、2-エチルヘキシルスルホン酸等のアルキルスルホン酸、これらアルキルスルホン酸と、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、チタン等の金属イオン、アンモニウムイオン、トリエタノールアミン等の有機アンモニウムイオンなどとの塩が挙げられる。
カルボン酸の具体例としては、マレイン酸、マロン酸、フマル酸、安息香酸、フタル酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸等が挙げられる。
カルボン酸エステルの具体例としては、上記カルボン酸と、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、グリセロール、ヘキサントリオール、エリトリトール、マンニトール、ソルビトール、ペンタエリトリトール、ビスフェノールA、ヒドロキノン、フロログルシノール等のヒドロキシ化合物との反応により生成するエステル及び部分エステルが挙げられる。
アミドの具体例としては、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド等が挙げられる。
ポリオレフィン及びそのコポリマーの具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンと、プロピレン、ブチレン、酢酸ビニル、アクリレート、アクリルアミド等から選択される1種又は2種以上の化合物との共重合体などが挙げられる。
ポリオールの具体例としては、グリセロール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
アルカノールアミンの具体例としては、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
有機分散剤の具体例としては、クエン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、陰イオン性、陽イオン性、双性、非イオン性等の官能基をもつ高分子有機分散剤などが挙げられる。
波長変換用樹脂組成物中における顔料白色顔料の凝集が抑制されると、樹脂硬化物中における白色顔料の分散性が向上する傾向にある。
【0095】
白色顔料は、表面の少なくとも一部に金属酸化物を含む金属酸化物層を有していてもよい。金属酸化物層に含まれる金属酸化物としては、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、ジルコニア、ホスホリア(phosphoria)、ボリア(boria)等が挙げられる。金属酸化物層は一層であっても二層以上であってもよい。白色顔料が二層の金属酸化物層を有する場合、二酸化ケイ素を含む第一金属酸化物層及び酸化アルミニウムを含む第二金属酸化物層を含むものであることが好ましい。
白色顔料が金属酸化物層を有することで、脂環式構造とスルフィド構造とを含む樹脂硬化物中における白色顔料の分散性が向上する傾向にある。
【0096】
白色顔料は、有機物層と金属酸化物層とを有するものであってもよい。この場合、白色顔料の表面に、金属酸化物層及び有機物層が、金属酸化物層及び有機物層の順に設けられることが好ましい。白色顔料が有機物層と二層の金属酸化物層とを有するものである場合、白色顔料の表面に、二酸化ケイ素を含む第一金属酸化物層、酸化アルミニウムを含む第二金属酸化物層及び有機物層が、第一金属酸化物層、第二金属酸化物層及び有機物層の順に設けられることが好ましい。
【0097】
波長変換用樹脂組成物が白色顔料を含有する場合、波長変換用樹脂組成物中の白色顔料の含有率は、波長変換用樹脂組成物の全量に対して、例えば、0.1質量%~1.0質量%であることが好ましく、0.2質量%~1.0質量%であることがより好ましく、0.3質量%~1.0質量%であることがさらに好ましい。
【0098】
(その他の成分)
波長変換用樹脂組成物は、重合禁止剤、シランカップリング剤、界面活性剤、密着付与剤、酸化防止剤等のその他の成分をさらに含有していてもよい。波長変換用樹脂組成物は、その他の成分のそれぞれについて、1種類を単独で含有していてもよく、2種類以上を組み合わせて含有していてもよい。
また、波長変換用樹脂組成物は、必要に応じて(メタ)アリル化合物を含有してもよい。
【0099】
(波長変換用樹脂組成物の調製方法)
波長変換用樹脂組成物は、脂環式構造を有する多官能(メタ)アクリレート化合物、多官能チオール化合物、光重合開始剤及び量子ドット蛍光体並びに必要に応じてその他の成分を常法により混合することで調製することができる。量子ドット蛍光体は、液状媒体に分散させた状態で混合することが好ましい。
【0100】
(波長変換用樹脂組成物の用途)
波長変換用樹脂組成物は、フィルム形成に好適に使用可能である。また、波長変換用樹脂組成物は、波長変換部材の形成に好適に使用可能である。
【0101】
<波長変換用樹脂硬化物>
本開示の波長変換用樹脂硬化物は、本開示の波長変換用樹脂組成物の硬化物である。波長変換用樹脂組成物の硬化条件は、特に限定されるものではなく、一態様では、280nm~400nmの波長の紫外線を100mJ/cm~5000mJ/cmの照射量で照射する。紫外線源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯等が挙げられる。
波長変換用樹脂硬化物についての動的粘弾性測定により測定されたガラス転移温度は、85℃以上であることが好ましく、85℃~160℃であることがより好ましく、90℃~120℃であることがさらに好ましい。
本開示の波長変換用樹脂硬化物は、波長変換部材の構成要素として適用可能である。
【実施例
【0102】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0103】
<実施例1~5並びに比較例1及び2>
(硬化性組成物の調製)
表1に示す各成分を同表に示す配合量(単位:質量部)で混合することにより、実施例1~5並びに比較例1及び2の波長変換用樹脂組成物をそれぞれ調製した。表1中の「-」は未配合であるか又は算出不能であることを意味する。
なお、多官能(メタ)アクリレート化合物としては、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(新中村化学工業株式会社、A-DCP、SP値:10.17)、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート(新中村化学工業株式会社、DCP、SP値:10.04)及びエトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(新中村化学工業株式会社、BPE-80N、SP値:9.68)を用いた。
また、多官能チオール化合物としては、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)(SC有機化学株式会社、PEMP)を用いた。
また、光重合開始剤としては、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド(BASF社、IRGACURE TPO)を用いた。
また、量子ドット蛍光体IBOA(イソボルニルアクリレート、SP値:9.13)分散液としては、CdSe/ZnS(コア/シェル)分散液(Nanosys社、Gen3.5 QD Concentrate)を用いた。このCdSe/ZnS(コア/シェル)分散液の分散媒体としては、イソボルニルアクリレートを使用した。CdSe/ZnS(コア/シェル)分散液中に、イソボルニルアクリレートが90質量%以上含有されている。
また白色顔料としては、酸化チタン(Chemours社、タイピュア R-706、粒子径0.36μm)を用いた。酸化チタンの表面には、酸化ケイ素を含む第一金属酸化物層、酸化アルミニウムを含む第二金属酸化物層及びポリオール化合物を含む有機物層が、第一金属酸化物層、第二金属酸化物層及び有機物層の順に設けられている。
【0104】
【表1】
【0105】
表1において、「SP値差」は、多官能(メタ)アクリレート化合物及び単官能(メタ)アクリレート化合物のうちの、最もSP値が高い化合物のSP値と最もSP値が低い化合物のSP値との差を意味する。
表1において、「含有率比」は、トリシクロデカン骨格を有する化合物とイソボルニル骨格を有する化合物とのモル基準の含有比率を意味する。
【0106】
(波長変換部材の製造)
上記で得られた各波長変換用樹脂組成物を平均厚み125μmのバリアフィルム(大日本印刷株式会社)(被覆材)上に塗布して塗膜を形成した。この塗膜上に厚み125μmのバリアフィルム(大日本印刷株式会社)(被覆材)を貼り合わせ、紫外線照射装置(アイグラフィックス株式会社)を用いて紫外線を照射(照射量:1000mJ/cm)することにより、波長変換用樹脂硬化物を含む硬化物層の両面に被覆材が配置された波長変換部材をそれぞれ得た。硬化物層の平均厚みは100μmであった。
【0107】
<評価>
実施例1~5並びに比較例1及び2で得られた波長変換用樹脂組成物及び波長変換部材を用いて、以下の各評価項目を測定及び評価した。結果を表2に示す。
【0108】
(輝度)
上記で得られた各波長変換部材を、幅100mm、長さ100mmの寸法に裁断した評価用波長変換部材について輝度計PR-655(フォトリサーチ社)を用いて輝度を測定した。輝度計は、上部に光学特性を認識するカメラユニットが設置され、レンズ下の箇所に、ブラックマスク、BEF(輝度上昇フィルム)板、拡散板、LED光源を有し、BEF板と拡散板との間に測定サンプルをセットして、輝度を測定した。
【0109】
(耐湿熱性)
上記で得られた各波長変換部材を、幅100mm、長さ100mmの寸法に裁断した後、85℃、85%RHの恒温恒湿槽に投入して500時間静置し、下記式に従って波長変換部材の相対発光強度保持率を算出した。
相対発光強度保持率:(RLb/RLa)×100
RLa:初期相対発光強度
RLb:85℃、85%RH×500時間後の相対発光強度
そして、以下の評価基準に従い、各波長変換部材の耐湿熱性を評価した。
-評価基準-
A:相対発光強度保持率:90%以上
B:相対発光強度保持率:80%以上90%未満
C:相対発光強度保持率:80%未満
【0110】
(ガラス転移温度)
上記で得られた各波長変換部材のバリアフィルムを剥離し、幅5mm、長さ40mmの寸法に裁断して評価用硬化物を得た。そして、広域動的粘弾性測定装置(Rheometric Scientific社、Solid Analyzer RSA-III)を用いて、「引張モード、チャック間距離:25mm、周波数:10Hz、測定温度範囲:-20℃~180℃、昇温速度:10℃/分」の条件で、評価用硬化物の貯蔵弾性率(E’)及び損失弾性率(E’’)を測定し、その比から損失正接(tanδ)を求め、損失正接(tanδ)のピークトップ部分の温度からガラス転移温度(Tg)を求めた。
【0111】
(FT-IRピーク面積比率(V1/V2))
上記で得られた各波長変換部材のバリアフィルムを剥離しFT-IR Spectrometer(Perkin Elmer社)を用いて、硬化物層の表面をATR分析した。バックグラウンド測定は、空気で測定し、積算回数16回の条件でFT-IR測定を実施し、下記式に従ってFT-IRピーク面積比率を算出した。
FT-IRピーク面積比率:V1/V2
V1:S-H伸縮振動に帰属されるピーク(ピーク波長:2570cm-1)のピーク面積
V2:C-H伸縮振動に帰属されるピーク(ピーク波長:2950cm-1)のピーク面積
【0112】
【表2】
【0113】
表2において、「SP値差」は、脂環式構造における、最もSP値が高い脂環式構造のSP値と最もSP値が低い脂環式構造のSP値との差を意味する。
表2において、「含有率比」は、トリシクロデカン骨格とイソボルニル骨格とのモル基準の含有比率を意味する。
【0114】
表2から分かるように、脂環式構造を有する多官能(メタ)アクリレート化合物、多官能チオール化合物、光重合開始剤及び量子ドット蛍光体を含有する波長変換用樹脂組成物から製造された波長変換部材は、比較例1及び2の波長変換用樹脂組成物から製造された波長変換部材と比較して、輝度及び耐湿熱性に優れていた。
【0115】
2017年9月29日に出願された国際出願PCT/JP2017/035725号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
図1
図2
図3