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特許7120317組成物、硬化物、積層体および耐光性塗料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】組成物、硬化物、積層体および耐光性塗料
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/07 20060101AFI20220809BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20220809BHJP
   C08K 3/014 20180101ALI20220809BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20220809BHJP
   C08F 290/14 20060101ALI20220809BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20220809BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220809BHJP
   C09D 183/04 20060101ALI20220809BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20220809BHJP
   C09D 7/48 20180101ALI20220809BHJP
【FI】
C08L83/07
C08K3/013
C08K3/014
C08L63/00 Z
C08F290/14
B05D7/24 302Y
B32B27/00 101
C09D183/04
C09D7/61
C09D7/48
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020549204
(86)(22)【出願日】2019-09-24
(86)【国際出願番号】 JP2019037229
(87)【国際公開番号】W WO2020066993
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-03-18
(31)【優先権主張番号】P 2018178788
(32)【優先日】2018-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100124143
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 嘉久
(72)【発明者】
【氏名】岡 賢一郎
(72)【発明者】
【氏名】鳥井 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】高田 泰廣
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-265437(JP,A)
【文献】国際公開第2014/069634(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00-101/14
C08K3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応性基を有するポリシロキサンと、塩基発生剤と、無機フィラーとを含有する組成物であって、
前記ポリシロキサンは、トリアルコキシシランを反応原料とし、分子中にアルコキシシリル基又はシラノール基を有し、
前記反応性基が、重合性二重結合を有する基およびエポキシ基の少なくともいずれかであり、
前記塩基発生剤は活性エネルギー線の照射により塩基性物質を発生する化合物であり、
前記無機フィラーの配合量が、組成物不揮発分中において1~ 15wt%であることを特徴とする組成物。
【請求項2】
さらに、紫外線吸収剤を含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
塩基発生剤の含有量が、組成物不揮発分中において0 .01~10wt%である、請求項1~のいずれかに記載の組成物。
【請求項4】
請求項1~に記載の組成物を硬化してなる硬化物。
【請求項5】
基材と、請求項に記載の硬化物層とを積層してなる積層体。
【請求項6】
請求項1~に記載の組成物を含有する耐光性塗料。
【請求項7】
請求項1~に記載の組成物を含有する耐候性塗料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリシロキサンと、塩基発生剤と、無機フィラーとを含有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート等に代表される透明樹脂材料は、比重が小さく軽量である特徴から、様々な用途で幅広く利用されている。特に、透明性を生かした樹脂ガラスや、軽量性を生かした建材用途等、屋外や強い照明下での使用の需要も非常に大きい。
一方、樹脂材料は、表面が傷つきやすく光沢や透明性が失われやすいこと、耐溶剤性や耐候性、耐熱性に弱いこと等の課題がある。そのため、樹脂材料はその表面特性を改善することを目的として、各種保護膜により被覆されて用いられることが多い。
【0003】
例えば、テトラアルコキシシランを使用してゾルーゲル法により、二酸化ケイ素薄膜を設ける方法がある。この方法では脆く、割れやすいという欠点をもつ。これを改良する方法としてポリエチレングリコールを添加し、脆弱性をなくす提案がなされている(特許文献1)。特許文献1で提案されている方法では、ある程度の表面硬度と柔軟性を達成するものの、その加工法において加熱を長時間行うことが基材に対して悪影響を及ぼすことがあるため、生産性を向上すべく、活性紫外線硬化型に変更した高い表面硬度を達成し、かつ透明性、密着性に優れた活性エネルギー線硬化性ハードコート剤の提案もされている(特許文献2)。
しかし、これらの方法では、屋外や強い照明下での使用に耐えうる耐光性および耐候性といった点にはいまだ課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-79980
【文献】特開2011-6620
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、ハードコート性を有し、かつ、耐光性および耐候性に優れた硬化物を得られる樹脂組成物を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討した結果、反応性基を有するポリシロキサンと、塩基発生剤と、無機フィラーとを含有する組成物を提供することで、上記課題が解決可能なことを見出した。
【0007】
すなわち本発明は、反応性基を有するポリシロキサンと、塩基発生剤と、無機フィラーとを含有する組成物であって、無機フィラーの配合量が、組成物不揮発分中において1~15wt%以下であることを特徴とする組成物を提供するものである。
【0008】
また、本発明は、前記組成物を硬化してなる硬化物、および該硬化物層を有する積層体を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、本発明の組成物を含有する耐光性塗料および耐候性塗料を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の組成物は、ハードコート性を有し、かつ、耐光性および耐候性に優れた硬化物を得られることから、強い照明下や屋外でもプラスチック層を保護することができる塗料となる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、反応性基を有するポリシロキサンと、塩基発生剤と、無機フィラーとを含有する組成物であって、無機フィラーの配合量が、組成物不揮発分中において1~15wt%以下であることを特徴とする組成物を提供するものである。
【0012】
<反応性基を有するポリシロキサン>
本発明の反応性基を有するポリシロキサンにおいて、反応性基とは、反応性を有する黄であればよく、例えば、重合性二重結合を有する基、エポキシ基、アミノ基、ウレイド基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、メルカプト基、酸無水物等が挙げられる。中でも、好ましくは、重合性二重結合を有する基、エポキシ基である。
重合性二重結合を有する基としては、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、スチリル基、アリル基、マレイミド基等が挙げられ、特に好ましくは(メタ)アクリロイル基である。
【0013】
反応性基を有するポリシロキサンは、シラノール基および/または加水分解性シリル基とを有するシラン化合物を縮合することで得ることができる。この時、シラノール基および/または加水分解性シリル基以外に、反応性基を有するシラン化合物を用いることで、ポリシロキサンに反応性基を導入することができる。
【0014】
例えば、重合性二重結合を有する基を導入する場合、使用する重合性二重結合を有する基とシラノール基および/または加水分解性シリル基とを併有するシラン化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリ(2-メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、2-トリメトキシシリルエチルビニルエーテル、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリクロロシラン、8-(メタ)アクリロイルオキシオクチルトリメトキシシラン、8-(メタ)アクリロイルオキシオクチルトリエトキシシラン等を併用する。中でも、加水分解反応を容易に進行でき、また反応後の副生成物を容易に除去することができることからビニルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0015】
また、反応性基にエポキシ基を導入するには、エポキシ基含有シラン化合物を使用すればよい。エポキシ基含有シラン化合物としては、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリアセトキシシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシエトキシシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリアセトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルジメトキシメチルシラン、γ-グリシドキシプロピルジエトキシメチルシラン、γ-グリシドキシプロピルジメトキシエトキシメチルシラン、γ-グリシドキシプロピルジアセトキシメチルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルジメトキシメチルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルジエトキシメチルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルジメトキシエトキシメチルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルジアセトキシメチルシラン、γ-グリシドキシプロピルジメトキシエチルシラン、γ-グリシドキシプロピルジエトキシエチルシラン、γ-グリシドキシプロピルジメトキシエトキシエチルシラン、γ-グリシドキシプロピルジアセトキシエチルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルジメトキシエチルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルジエトキシエチルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルジメトキシエトキシエチルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルジアセトキシエチルシラン、γ-グリシドキシプロピルジメトキシイソプロピルシラン、γ-グリシドキシプロピルジエトキシイソプロピルシラン、γ-グリシドキシプロピルジメトキシエトキシイソプロピルシラン、γ-グリシドキシプロピルジアセトキシイソプロピルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルジエトキシイソプロピルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルジエトキシイソプロピルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルジメトキシエトキシイソプロピルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルジアセトキシイソプロピルシラン、γ-グリシドキシプロピルメトキシジメチルシラン、γ-グリシドキシプロピルエトキシジメチルシラン、γ-グリシドキシプロピルメトキシエトキシジメチルシラン、γ-グリシドキシプロピルアセトキシジメチルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルメトキシジメチルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルエトキシジメチルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルメトキシエトキシジメチルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルアセトキシジメチルシラン、γ-グリシドキシプロピルメトキシジエチルシラン、γ-グリシドキシプロピルエトキシジエチルシラン、γ-グリシドキシプロピルメトキシエトキシジエチルシラン、γ-グリシドキシプロピルアセトキシジエチルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルメトキシジエチルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルエトキシジエチルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルメトキシエトキシジエチルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルアセトキシジエチルシラン、γ-グリシドキシプロピルメトキシジイソプロピルシラン、γ-グリシドキシプロピルエトキシジイソプロピルシラン、γ-グリシドキシプロピルメトキシエトキシジイソプロピルシラン、γ-グリシドキシプロピルアセトキシジイソプロピルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルメトキシジイソプロピルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルエトキシジイソプロピルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルメトキシエトキシジイソプロピルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルアセトキシジイソプロピルシラン、γ-グリシドキシプロピルメトキシエトキシメチルシラン、γ-グリシドキシプロピルアセトキシメトキシメチルシラン、γ-グリシドキシプロピルアセトキシエトキシメチルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルメトキシエトキシメチルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルメトキシアセトキシメチルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルエトキシアセトキシメチルシラン、γ-グリシドキシプロピルメトキシエトキシエチルシラン、γ-グリシドキシプロピルアセトキシメトキシエチルシラン、γ-グリシドキシプロピルアセトキシエトキシエチルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルメトキシエトキシエチルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルメトキシアセトキシエチルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルエトキシアセトキシエチルシラン、γ-グリシドキシプロピルメトキシエトキシイソプロピルシラン、γ-グリシドキシプロピルアセトキシメトキシイソプロピルシラン、γ-グリシドキシプロピルアセトキシエトキシイソプロピルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルメトキシエトキシイソプロピルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルメトキシアセトキシイソプロピルシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルエトキシアセトキシイソプロピルシラン、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、α-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、α-グリシドキシメチルトリメトキシシラン、β-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、β-グリシドキシメチルトリメトキシシラン、α-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、α-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリフェノキシシラン、α-グリシドキシブチルトリメトキシシラン、α-グリシドキシブチルトリエトキシシラン、β-グリシドキシブチルトリメトキシシラン、β-グリシドキシブチルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシブチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシブチルトリエトキシシラン、(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチルトリエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリプロポキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリプトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリフェノキシシラン、γ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、γ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピルトリエトキシシラン、δ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ブチルトリメトキシシラン、δ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ブチルトリエトキシシラン、グリシドキシメチルメチルジメトキシシラン、グリシドキシメチルメチルジエトキシシラン、α-グリシドキシエチルメチルジメトキシシラン、α-グリシドキシエチルメチルジエトキシシラン、β-グリシドキシエチルメチルジメトキシシラン、β-グリシドキシエチルメチルジエトキシシラン、α-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、α-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジブトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジフェノキシシラン、γ-グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルエチルジプロポキシシラン、γ-グリシドキシプロピルビニルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルビニルジエトキシシラン、8-グリシドキシオクチルトリメトキシシラン、8-グリシドキシオクチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0016】
その他、反応性基を有さないシラン化合物を用いてもよい。例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ-n-ブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、iso-ブチルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等の各種のオルガノトリアルコキシシラン類;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジ-n-ブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン等の、各種のジオルガノジアルコキシシラン類;メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジエチルジクロロシランもしくは等のクロロシラン類が挙げられる。
【0017】
また、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランもしくはテトラn-プロポキシシランなどの4官能アルコキシシラン化合物や該4官能アルコキシシラン化合物の部分加水分解縮合物を、本発明の効果を損なわない範囲で併用することもできる。前記4官能アルコキシシラン化合物又はその部分加水分解縮合物を併用する場合には、前記ポリシロキサンを構成する全珪素原子に対して、該4官能アルコキシシラン化合物の有する珪素原子が、20モル%を超えない範囲となるように併用することが好ましい。
【0018】
また、反応性基を有するポリシロキサンとしては、市販品を用いることもできる。例えば、X―12-1048(信越化学工業社製)、X―12-1050(信越化学工業社製)、KR―513(信越化学工業社製)、X―40-9308(信越化学工業社製)、KR-517(信越化学工業社製)、X―40-2670(信越化学工業社製)、X―24―9590(信越化学工業社製)、KR-516(信越化学工業社製)、X40-9296(信越化学工業社製)、TM-100(東亜合成社製)、TA-100(東亜合成社製)、M-100(SiliXan社)、M-140(SiliXan社)等が挙げられる。
【0019】
<塩基発生剤>
本発明の組成物は、塩基発生剤を含有することを特徴とする。塩基発生剤は、ポリシロキサンの縮合反応を促進することから、得られる組成物の硬度が向上する。また、露光時の耐クラック性が向上する。
【0020】
本発明においては、塩基発生剤として公知のものを用いることができる。例えば、M
.Shirai, and M.Tsunooka, Prog.Polym.Sci.
,21,1(1996);角岡正弘,高分子加工,46,2(1997);C.Kuta
l,Coord.Chem.Rev.,211,353(2001);Y.Kaneko
,A.Sarker, and D.Neckers,Chem.Mater.,11,
170(1999);H.Tachi,M.Shirai, and M.Tsunoo
ka,J.Photopolym.Sci.Technol.,13,153(2000
);M.Winkle, and K.Graziano,J.Photopolym.
Sci.Technol.,3,419(1990);M.Tsunooka,H.Ta
chi, and S.Yoshitaka,J.Photopolym.Sci.Te
chnol.,9,13(1996);K.Suyama,H.Araki,M.Shi
rai,J.Photopolym.Sci.Technol.,19,81(2006
)に記載されているように、遷移金属化合物錯体や、アンモニウム塩などの構造を有する
ものや、アミジン部分がカルボン酸と塩形成することで潜在化されたもののように、塩基
成分が塩を形成することにより中和されたイオン性の化合物や、カルバメート誘導体、オ
キシム誘導体、オキシムエステル誘導体、アシル化合物などのウレタン結合やオキシム結
合などにより塩基成分が潜在化された非イオン性の化合物、アミド誘導体、イミド誘導体
、αコバルト錯体類、イミダゾール誘導体、桂皮酸アミド誘導体等が挙げられる。
【0021】
塩基発生剤から発生する塩基性物質としては、特に限定されないが、アミノ基を有す
る化合物、特にモノアミンや、ジアミンなどのポリアミン、またはアミジンなどが挙げら
れる。発生する塩基性物質は、より塩基性度の高いアミノ基を有する化合物が好ましい。ポリイミド前駆体のイミド化における脱水縮合反応等に対する触媒作用が強く、より少量の添加で、より低い温度での脱水縮合反応等における触媒効果の発現が可能となるからである。つまりは、発生した塩基性物質の触媒効果が大きいため、ネガ型感光性樹脂組成物としての見た目の感度は向上する。上記触媒効果の観点からアミジン、脂肪族アミンであることが好ましい。
【0022】
また、上記のような理由から塩基発生剤としては、上述のように発生する塩基が共有結合を用いて潜在化されていることが好ましく、発生する塩基がアミド結合、カルバメート結合、オキシム結合を用いて潜在化されていることが好ましい。本発明に係る塩基発生剤としては、例えば、特開2009-80452号公報および国際公開WO2009/123122号公報で開示されたような桂皮酸アミド構造を有する塩基発生剤、特開2006-189591号公報および特開2008-247747号公報で開示されたようなカルバメート構造を有する塩基発生剤、特開2007-249013号公報および特開2008-003581号公報で開示されたようなオキシム構造、カルバモイルオキシム構造を有する塩基発生剤等が挙げられるが、これらに限定されず、その他にも公知の塩基発生剤の構造を用いることができる。
【0023】
その他、塩基発生剤としては、特開2012-93746号公報の段落番号0185
~0188、0199~0200および0202に記載の化合物、特開2013-194
205号公報の段落番号0022~0069に記載の化合物、特開2013-20401
9号公報の段落番号0026~0074に記載の化合物、ならびに国際公開WO2010
/064631号公報の段落番号0052に記載の化合物が例として挙げられる。
【0024】
塩基発生剤の市販品としては、WPBG-266、WPBG-300、WPGB-3
45、WPGB-140、WPBG-165、WPBG-027、PBG-018、WP
GB-015、WPBG-041、WPGB-172、WPGB-174、WPBG-1
66、WPGB-158、WPGB-025、WPGB-168、WPGB-167およ
びWPBG-082(富士フィルム和光純薬(株)製)を用いることもできる
【0025】
1,2-ジイソプロピル-3-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]グアニジウム2-(3-ベンゾイルフェニル)プロピオナート(富士フィルム和光純薬工業(株)製、WPBG-266)、1,2―ジシクロヘキシルー4、4、5,5―テトラメチルビグアニジウムーn―ブチルトリフェニルボレイト(富士フィルム和光純薬工業(株)製、WPBG-300)が工業的な観点から好ましい。
【0026】
本発明の組成物中における塩基発生剤の含有量としては、組成物不揮発分中において0.01~10wt%が好ましい。0.01wt%以上であれば、耐候性が向上する。10wt%以下であれば、過剰硬化が起こりにくいため硬化物の強度が保たれやすい。好ましくは、0.1wt%以上であれば、耐候性が向上し、5wt%以下であれば、過剰硬化が起こりにくいため硬化物の強度が保たれやすい。
【0027】
<無機フィラー>
本発明の組成物は、無機フィラーを含有する。無機フィラーを含有することで、塗料のに各種の特性を付与することができる。例えばハードコート性の向上を目的とする場合には、シリカを配合することが好ましい。
【0028】
シリカとしては、限定は無く、粉末状のシリカやコロイダルシリカなど公知のシリカ微粒子を使用することができる。市販の粉末状のシリカ微粒子としては、例えば、日本アエロジル(株)製アエロジル50、200、旭硝子(株)製シルデックスH31、H32、H51、H52、H121、H122、日本シリカ工業(株)製E220A、E220、富士シリシア(株)製SYLYSIA470、日本板硝子(株)製SGフレ-ク等を挙げることができる。
また、市販のコロイダルシリカとしては、例えば、日産化学工業(株)製メタノ-ルシリカゾル、IPA-ST、MEK-ST、PGM-ST、NBA-ST、XBA-ST、DMAC-ST、ST-UP、ST-OUP、ST-20、ST-40、ST-C、ST-N、ST-O、ST-50、ST-OL等を挙げることができる。
【0029】
シリカとしては、反応性シリカを用いてもよい。反応性シリカとしては、例えば反応性化合物修飾シリカが挙げられる。反応性化合物としては、例えば疎水性基を有する反応性シランカップリング剤、(メタ)アクリロイル基を有する化合物、マレイミド基を有する化合物、グリシジル基を有する化合物が挙げられる。
(メタ)アクリロイル基を有する化合物で修飾した市販の粉末状のシリカとしては、日本アエロジル(株)製アエロジルRM50、R711等、(メタ)アクリロイル基を有する化合物で修飾した市販のコロイダルシリカとしては、日産化学工業(株)製MIBK-SD、MIBK-SD―L、MIBK-AC-2140Z、MEK-AC-2140Z等が挙げられる。また、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のグリシジル基で修飾した後に、アクリル酸を付加反応させたシリカや、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランと水酸基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物をウレタン化反応させたもので修飾したシリカも反応性シリカとして挙げられる。
【0030】
前記シリカ微粒子の形状は特に限定はなく、球状、中空状、多孔質状、棒状、板状、繊維状、または不定形状のものを用いることができる。例えば、市販の中空状シリカ微粒子としては、日鉄鉱業(株)製シリナックス等を用いることができる。
また一次粒子径は、5~200nmの範囲が好ましい。5nm以上であると、組成物中の無機微粒子の分散が十分となり、200nmを以下では、硬化物の十分な強度が保持できる。
【0031】
また、シリカ以外の無機フィラーを用いることもできる。無機フィラー形状に限定はなく、粒子状や板状、繊維状のフィラーが挙げられる。
【0032】
例えば、耐熱性に優れるものとしては、アルミナ、マグネシア、チタニア、ジルコニア、等;熱伝導に優れるものとしては、窒化ホウ素、窒化アルミ、酸化アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化ケイ素等;導電性に優れるものとしては、金属単体又は合金(例えば、鉄、銅、マグネシウム、アルミニウム、金、銀、白金、亜鉛、マンガン、ステンレスなど)を用いた金属フィラー及び/又は金属被覆フィラー、;バリア性に優れるものとしては、マイカ、クレイ、カオリン、タルク、ゼオライト、ウォラストナイト、スメクタイト等の鉱物等やチタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、セピオライト、ゾノライト、ホウ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、水酸化マグネシウム;屈折率が高いものとしては、チタン酸バリウム、酸化ジルコニア、酸化チタン等;光触媒性を示すものとしては、チタン、セリウム、亜鉛、銅、アルミニウム、錫、インジウム、リン、炭素、イオウ、テリウム、ニッケル、鉄、コバルト、銀、モリブデン、ストロンチウム、クロム、バリウム、鉛等の光触媒金属、前記金属の複合物、それらの酸化物等;耐摩耗性に優れるものとしては、アルミナ、ジルコニア、酸化マグネシウム等の金属、及びそれらの複合物及び酸化物等;導電性に優れるものとしては、銀、銅などの金属、酸化錫、酸化インジウム等;紫外線遮蔽に優れるものとしては、酸化チタン、酸化亜鉛等である。
これらの無機微粒子は、用途によって適時選択すればよく、単独で使用しても、複数種組み合わせて使用してもかまわない。また、上記無機微粒子は、例に挙げた特性以外にも様々な特性を有することから、適時用途に合わせて選択すればよい。
【0033】
本発明の組成物における無機フィラーの配合量は、組成物不揮発分中において、1~15wt%であることを特徴とする。1wt%未満の場合、塗膜の強度が不足となり塗膜割れが生じたり、ハードコート性が発現しない恐れがある。また、15wt%より多い場合については、硬化物が脆くなり割れやすくなるという恐れがある。
無機フィラーの好ましい配合量としては、組成物不揮発分中において3~12wt%であって、特に好ましくは5~10wt%である。
【0034】
<紫外線吸収剤>
本発明の組成物は、上記反応性基を有するポリシロキサンと、塩基発生剤と、無機フィラー以外の配合物を有していてもよい。
たとえば、紫外線吸収剤を有していてもよい。紫外線吸収剤を配合することで、塗膜の耐光性が向上する。
【0035】
紫外線吸収剤としては、例えばトリアジン系紫外線吸収剤、トリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤が挙げられる。好ましくはトリアジン系紫外線吸収剤である。
【0036】
トリアジン系紫外線吸収剤とは、トリアジン骨格を有する紫外線吸収剤であり、例えば、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-ドデシロキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシ-フェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-トリデシロキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシ-フェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-(2-エチル-ヘキシロキシ)プロピル)オキシ]-2-ヒドロキシ-フェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-ブチロキシフェニル)-6-(2,4-ビス-ブチロキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチロキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン等が挙げられ、好ましくは、2-(4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヒドロキシ-フェニル, とオキシラン[(C10-C16 主としてC12-C13アルキルオキシ)メチル]オキシランとの反応生成物、2-(2,4-ジヒドロキシ-フェニル)-4,6-ビス-(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジンと(2-エチル-ヘキシル)-グリシド酸エステルの反応生成物、2,4-ビス「2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル]-6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3-5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジンである。市販品としては、TINUVIN400(BASF社製)、TINUVIN405(BASF社製)、TINUVIN460(BASF社製)、TINUVIN477(BASF社製)、TINUVIN479(BASF社製)、アデカスタブLA-46(ADEKA社)、アデカスタブLA-F70が利用可能である。
【0037】
トリアゾール系紫外線吸収剤とは、トリアゾール骨格を有する紫外線吸収材であり、例えば、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-
1-フェニルエチル)フェノール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニ
ル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-5-(2-(メタ)アクリロ
イルオキシエチル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール等が挙げられる。市販品としては、TINUVIN PS(BASF社製)、TINUVIN99-2(BASF社製)、TINUVIN326(BASF社製)、TINUVIN328(BASF社製)、TINUVIN384-2(BASF社製)、RUVA-93(大塚化学社製)、UVA-1935LH(BASF社製)、LA-29(ADEKA社製)、LA-31G(ADEKA社製)、LA-31RG(ADEKA社製)、LA-32(ADEKA社製)、LA―36(ADEKA社製)が利用可能である。
【0038】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤とは、ベンゾフェノン骨格を有する紫外線吸収材であり、例えば2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベン
ゾフェノン等が挙げられる。市販品としては、1413(ADEKA社製)、ホスタビンARO8(CLARIANT社製)、ホスタビン3041(CLARIANT社製)が利用可能である。
【0039】
紫外線吸収剤としては、組成物中の固形分量を100重量部とするとき1~15重量部配合されていることが好ましい。1重量部以上であれば紫外線吸収能が十分発揮され、15重量部以下であればブリードアウトが起こりにくいからである。好ましくは2~13重量部であり、さらに好ましくは3~9重量部である。
【0040】
<その他の配合物>
本発明の組成物は、発明の効果を損ねない範囲であれば、その他の配合物を有していてもよい。例えば、各種樹脂、反応性化合物、触媒、重合開始剤、有機フィラー、有機溶剤、無機顔料、有機顔料、体質顔料、粘土鉱物、ワックス、界面活性剤、安定剤、流動調整剤、カップリング剤、染料、レベリング剤、レオロジーコントロール剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、可塑剤等を配合してもかまわない。
【0041】
有機溶剤としては、例えばエステル系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、脂肪族系溶媒、芳香族系溶媒、アルコール系溶媒が挙げられる。
具体的には、エステル系溶媒としては、酢酸エチル-、酢酸プロピル、酢酸ブチル、ケトン系溶媒としては、アセトン、2-ブタノン、メチルエチル-ケトン、メチルイソブチルケトン等、エーテル系溶媒としてはテトラヒドロフラン、ジオキソラン等、脂肪族系溶媒としては、ヘキサン、シクロヘキサン等、芳香族系溶媒としてはトルエン、キシレン等、アルコール系溶媒としてはエタノール、メタノール、プロパノール、ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等を例示することができる。
【0042】
また、粘度調整のために液状有機ポリマーを使用してもよい。液状有機ポリマーとは、硬化反応に直接寄与しない液状有機ポリマーであり、例えば、カルボキシル基含有ポリマー変性物(フローレンG-900、NC-500:共栄社)、アクリルポリマー(フローレンWK-20:共栄社)、特殊変性燐酸エステルのアミン塩(HIPLAAD ED-251:楠本化成)、変性アクリル系ブロック共重合物(DISPERBYK2000;ビックケミー)などが挙げられる。
【0043】
各種樹脂としては、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0044】
熱硬化性樹脂とは、加熱または放射線や触媒などの手段によって硬化される際に実質的に不溶かつ不融性に変化し得る特性を持った樹脂である。その具体例としては、熱硬化性樹脂とは、加熱または放射線や触媒などの手段によって硬化される際に実質的に不溶かつ不融性に変化し得る特性を持った樹脂である。その具体例としては、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ジアリルテレフタレート樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、フラン樹脂、ケトン樹脂、キシレン樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、活性エステル樹脂、アニリン樹脂、シアネートエステル樹脂、スチレン・無水マレイン酸(SMA)樹脂、などが挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は1種または2種以上を併用して用いることができる。
【0045】
熱硬化性樹脂としては、反応前のモノマーやオリゴマーの状態で組成物に配合してもよいし、反応後の樹脂として組成物に配合してもよい。好ましくは、反応前のモノマーやオリゴマーで配合する場合である。
モノマーとしては、例えば重合性二重結合を有する化合物を配合しても構わない。重合性二重結合を有する化合物としては、(メタ)アクリロイル系化合物やビニル系化合物等が挙げられる。中でも、(メタ)アクリロイル系化合物としては、単官能(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0046】
単官能(メタ)アクリレートとしては、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシ(メタ)アクリレート(例えばダイセル化学工業(株)製商品名「プラクセル」)、フタル酸とプロピレングリコールとから得られるポリエステルジオールのモノ(メタ)アクリレート、コハク酸とプロピレングリコールとから得られるポリエステルジオールのモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、各種エポキシエステルの(メタ)アクリル酸付加物等を挙げることができる。
【0047】
多官能(メタ)アクリレートとしては、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシドにより変性されたグリセロールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシドにより変性されたグリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシドにより変性されたトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシドにより変性されたトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシドにより変性されたリン酸トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、エチレンオキシドにより変性されたジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシドにより変性されたジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、イソシアネート化合物とアルコール系化合物を反応させたウレタン(メタ)アクリレート化合物、多価アルコールと(メタ)アクリル酸及び多官能性カルボン酸との縮合反応により合成されるポリエステル(メタ)アクリレート化合物、ビスフェノール型エポキシ樹脂あるいはノボラック型エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との付加反応により合成されるエポキシ(メタ)アクリレート化合物などが挙げられる。
【0048】
例えば、エポキシ基を有する化合物を配合してもよい。エポキシ基を有する化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ポリヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂、ポリヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂等の液状エポキシ樹脂、ブロム化フェノールノボラック型エポキシ樹脂等の臭素化エポキシ樹脂、固形ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン-フェノール付加反応型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、フェニレンエーテル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール-フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール-クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型エポキシ樹脂、ビフェニル変性ノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0049】
熱可塑性樹脂とは、加熱により溶融成形可能な樹脂を言う。その具体例としてはポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ゴム変性ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリル-スチレン(AS)樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、酢酸セルロース樹脂、アイオノマー樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリアリレート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリケトン樹脂、液晶ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、シンジオタクチックポリスチレン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂などが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は1種または2種以上を併用して用いることができる。
【0050】
本発明の組成物において、重合性二重結合が含まれる場合、活性エネルギー線で硬化させることもできる。この時、重合開始剤、特に光重合開始剤を使用することが好ましい。光重合開始剤としては公知のものを使用すればよく、例えば、アセトフェノン類、ベンジルケタール類、ベンゾフェノン類からなる群から選ばれる一種以上を好ましく用いることができる。前記アセトフェノン類としては、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシ-エトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン等が挙げられる。前記ベンジルケタール類としては、例えば、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニルケトン、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。前記ベンゾフェノン類としては、例えば、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル等が挙げられる。前記ベンゾイン類等としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等が挙げられる。光重合開始剤は単独で使用しても良いし、2種以上を併用してもよい。前記光重合開始剤の使用量は、前記組成物の不揮発分100重量%に対して、1~15重量%が好ましく、2~10重量%がより好ましい。
【0051】
本発明の組成物において、エポキシ基が含まれる場合、エポキシ化合物と反応可能な硬化剤を用いてもよい。硬化剤としては、エポキシ化合物と反応可能なものであれば特に限定は無いが、例えばアミン系化合物、酸無水物系化合物、アミド系化合物、フェノ-ル系化合物、カルボン酸系化合物などが挙げられる。
【0052】
例えばアミン系化合物としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ポリプロピレングリコールジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ペンタエチレンヘキサミンなどの脂肪族ポリアミン類や、メタキシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、フェニレンジアミンなどの芳香族ポリアミン類や、1、3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミンなどの脂環族ポリアミン類等や、ジシアンジアミドが挙げられる。
【0053】
酸無水物系化合物としては、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、無水マレイン酸ポリプロピレングリコール、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸などが挙げられる。
【0054】
フェノール系化合物としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール-フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール-クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂、アミノトリアジン変性フェノール樹脂やこれらの変性物等が挙げられる。また潜在性触媒として、イミダゾ-ル、BF3-アミン錯体、グアニジン誘導体なども挙げられる。
【0055】
アミド系化合物としては、例えばポリカルボン酸とポリアミンより合成される脂肪族ポリアミド、またはこれに芳香族環を導入した芳香族ポリアミド、ポリアミドにエポキシ化合物を付加してなる脂肪族ポリアミドアダクト、芳香族ポリアミドアダクト等が挙げられる。
【0056】
カルボン酸系化合物としては、カルボン酸末端ポリエステル、ポリアクリル酸、マレイン酸変性ポリプロピレングリコール等のカルボン酸ポリマ等が挙げられる。
【0057】
これらの硬化剤を用いる場合、硬化剤は1種類のみで用いてもよく、2種以上を混合してもよい。
【0058】
<表面改質剤>
本発明の組成物には、塗布時のレベリング性を高める目的や、硬化膜の滑り性を高めて
耐擦傷性を高める目的等のため、各種表面改質剤を添加してもよい。表面改質剤としては
、表面調整剤、レベリング剤、スベリ性付与剤、防汚性付与剤等の名称で市販されている
、表面物性を改質する各種添加剤を使用することができる。それらのうち、シリコーン系
表面改質剤およびフッ素系表面改質剤が好適である。
具体例としては、シリコーン鎖とポリアルキレンオキサイド鎖を有するシリコーン系ポ
リマーおよびオリゴマー、シリコーン鎖とポリエステル鎖を有するシリコーン系ポリマー
およびオリゴマー、パーフルオロアルキル基とポリアルキレンオキサイド鎖を有するフッ
素系ポリマーおよびオリゴマー、パーフルオロアルキルエーテル鎖とポリアルキレンオキ
サイド鎖を有するフッ素系ポリマーおよびオリゴマー、等が挙げられる。これらのうちの
一種以上を使用すればよい。滑り性の持続力を高めるなどの目的で、分子中に(メタ)ア
クリロイル基を含有するものを使用してもよい。具体的な表面改質剤としては、EBECRYL350(ダイセル・オルネクス株式会社)、BYK-333(ビックケミー・ジャパン株式会社)、BYK-377(ビックケミー・ジャパン株式会社)、BYK-378(ビックケミー・ジャパン株式会社)、BYK―UV3500(ビックケミー・ジャパン株式会社)、BYK―UV3505(ビックケミー・ジャパン株式会社)、BYK―UV3576(ビックケミー・ジャパン株式会社)、メガファックRS-75(DIC株式会社)、メガファックRS-76-E(DIC株式会社)、メガファックRS-72-K(DIC株式会社)、メガファックRS-76-NS(DIC株式会社)、メガファックRS-90(DIC株式会社)、メガファックRS-91(DIC株式会社)、メガファックRS-55(DIC株式会社)、オプツールDAC-HP(ダイキン工業株式会社)、ZX-058-A(株式会社T&K TOKA)、ZX-201(株式会社T&K TOKA)、ZX-202(株式会社T&K TOKA)、ZX-212(株式会社T&K TOKA)、ZX-214-A(株式会社T&K TOKA)、X-22-164AS(信越化学工業株式会社)、X-22-164A(信越化学工業株式会社)、X-22-164B(信越化学工業株式会社)、X-22-164C(信越化学工業株式会社)、X-22-164E(信越化学工業株式会社)、X-22-174DX(信越化学工業株式会社)、等を挙げることができる。
【0059】
<積層体>
本発明の積層体は、基材と本発明の樹脂組成物の成形体を積層することで得ることができる。基材の材質は特に限定はなく、用途に応じて適宜選択すればよく、例えば木材、金属、金属酸化物、プラスチック、紙、シリコン又は変性シリコン等が挙げられ、異なる素材を接合して得られた基材であってもよい。基材の形状は特に制限はなく、平板、シート状、又は3次元形状全面に、若しくは一部に、曲率を有するもの等目的に応じた任意の形状であってよい。また、基材の硬度、厚み等にも制限はない。
【0060】
本発明の組成物は、特にプラスチック基材に対して密着性が高い。樹脂であれば特に限定なく、例えば前述した熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を用いればよい。基材としては、樹脂が単独でも複数種を配合した基材であってもよく、単層又は2層以上の積層構造を有するものであってもよい。また、これらのプラスチック基材は繊維強化(FRP)されていてもよい。
【0061】
本発明の積層体を透明積層体とする場合、ポリカーボネート樹脂(例えば脂肪族ポリカーボネート、芳香族ポリカーボネート、脂環族ポリカーボネート等)、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂等をプラスチック層とすることが好ましい。
【0062】
また、本発明の効果を阻害しない範囲で、基材には必要に応じて、公知の帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、顔料、有機フィラー、無機フィラー、光安定剤、結晶核剤、滑剤等の公知の添加剤が含まれていても良い。
【0063】
積層体は、基材上に上述した成形体を積層することで得ることができる。基材上に積層する成形体は、基材に対し直接塗工又は直接成形により形成してもよく、組成物の成形体を積層してもよい。直接塗工する場合、塗工方法としては特に限定はなく、スプレー法、スピンコート法、ディップ法、ロールコート法、ブレードコート法、ドクターロール法、ドクターブレード法、カーテンコート法、スリットコート法、スクリーン印刷法、インクジェット法等が挙げられる。直接成形する場合は、インモールド成形、インサート成形、真空成形、押出ラミネート成形、プレス成形等が挙げられる。組成物の成形体を積層する場合、未硬化又は半硬化の組成物層を基材上に積層してから硬化させてもよく、組成物を完全硬化した硬化物層を基材上に積層してもよい。
【0064】
本発明の積層体は、基材、本発明の硬化物層の上に、さらに第二基材を有していても良い。第二基材としては材質に特に限定は無く、木材、金属、金属酸化物、プラスチック、紙、シリコン又は変性シリコン等が挙げられ、異なる素材を接合して得られた基材であってもよい。基材の形状は特に制限はなく、平板、シート状、又は3次元形状全面に、若しくは一部に、曲率を有するもの等目的に応じた任意の形状であってよい。また、基材の硬度、厚み等にも制限はない。
【0065】
本発明の積層体は、プラスチックに対しても無機物に対しても密着性が高いため、異種材料の層間材としても好ましく利用可能である。特に好ましくは、基材がプラスチックであり、第二基材が無機層の場合である。無機層としては、例えば、石英、サファイア、ガラス、光学フィルム、セラミック材料、無機酸化物、蒸着膜(CVD、PVD、スパッタ)、磁性膜、反射膜、Ni,Cu,Cr,Fe,ステンレス等の金属、紙、SOG(Spin On Glass)、SOC(Spin On Carbon)、ポリエステル・ポリカーボネート・ポリイミド等のプラスチック層、TFTアレイ基板、PDPの電極板、ITOや金属等の導電性基材、絶縁性基材、シリコン、窒化シリコン、ポリシリコン、酸化シリコン、アモルファスシリコンなどのシリコン系基板等が挙げられる。
【0066】
(硬化)
本発明の組成物に含まれる塩基発生剤は、活性エネルギー線照射または熱によって塩基発生剤を活性化することができるため、組成物は活性エネルギー線照射または熱のどちらでも硬化することができる。
【0067】
(活性エネルギー線硬化の場合)
活性エネルギー線を塗工物に照射することで硬化させることを言う。活性エネルギー線とは、紫外線、電子線、α線、β線、γ線等の電離放射線が挙げられる。これらのなかでも特に、硬化性および利便性の点から紫外線(UV)が好ましい。
紫外線硬化させる際に使用する光は、例えば、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、アルゴンレーザー、ヘリウム・カドミウムレーザー等を使用することができる。これらを用いて、約180~400nmの波長の紫外線を、塗工物の塗布面に照射することによって、塗膜を硬化させ硬化物層を作成し積層体を得ることが可能である。紫外線の照射量としては、使用される塩基発生材の種類及び量、使用されるラジカル重合開始剤の種類及び量によって適宜選択される。
【0068】
(熱硬化の場合)
塗工物に加熱することで硬化させることを言う。加熱手法としては、熱風乾燥機またはIR乾燥機による加熱が挙げられる。
これらを用いて、塗工物を加熱することで、塗膜を硬化させ硬化物層を作成し積層体を得ることが可能である。加熱温度、加熱時間は、使用される塩基発生材の種類及び量、ラジカル重合開始剤の種類、量と使用するポリシロキサン、樹脂によって適宜選択される。
【0069】
また、活性エネルギー線硬化後に熱硬化、熱硬化後に活性エネルギー硬化を実施する等、活性エネルギー線硬化と熱硬化を併用しても構わない。
【0070】
(用途)
本願の積層体は、耐光性、耐候性に優れるため、各種保護材として特に好適に使用可能である。例えば、建築材料用、住宅設備用、自動車・船舶・航空機・鉄道等の輸送機用、電子材料用、記録材料用、光学材料用、照明用、包装材料用、屋外設置物の保護用、光ファイバー被覆用、樹脂ガラス保護用等に可能である。
【実施例
【0071】
次に本発明を実施例、比較例により具体的に説明するが、以下において「部」及び「%」は特に断わりのない限り重量基準である。
【0072】
合成例:PSi-1
攪拌装置および空気の吹き込み管を備えた0.5Lセパラブルフラスコに、3-メタクリロイルトリメトキシシラン(KBM-503、信越化学社製)138.5重量部、プロピレングリコールモノメチルエーテル100重量部、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)を0.2重量部、ヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)0.02重量部とブチルアシッド ホスフェイト(A-4、SC有機化学社製)0.31重量部を仕込み、液温を75℃で攪拌しながら、水を30.2重量部滴下した。
滴下終了後、75℃で4時間攪拌し、50℃まで降温した。その後、80hPaに減圧し、液温が70℃に到達するまで、メタノールおよび水を留去した。反応物を固形分50wt%となるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈し、反応性基を有するポリシロキサン含有液であるPSi―1を230.7重量部得た。
【0073】
合成例:PSi-2
攪拌装置および空気の吹き込み管を備えた0.5Lセパラブルフラスコに、KBM-503(信越化学社製)55.4重量部、メチルトリメトキシシラン(KBM-13、信越化学社製)85.7重量部、プロピレングリコールモノメチルエーテル100重量部、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)を0.2重量部、ヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)0.02重量部とA-4(SC有機化学社製)0.43重量部を仕込み、液温を75℃で攪拌しながら、水を42.7重量部滴下した。
滴下終了後、75℃で4時間攪拌し、50℃まで降温した。その後、80hPaに減圧し、液温が70℃に到達するまで、メタノールおよび水を留去した。反応物を固形分50wt%となるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈し、反応性基を有するポリシロキサン含有液であるPSi―2を243.3g得た。
【0074】
合成例:PSi-3
攪拌装置および空気の吹き込み管を備えた0.5Lセパラブルフラスコに、KBM-403(信越化学社製)53.1重量部、KBM-13(信越化学社製)85.7重量部、プロピレングリコールモノメチルエーテル100重量部、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)を0.2重量部、ヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)0.02重量部とA-4(SC有機化学社製)0.43重量部を仕込み、液温を75℃で攪拌しながら、水を42.7重量部滴下した。
滴下終了後、75℃で4時間攪拌し、50℃まで降温した。その後、80hPaに減圧し、液温が70℃に到達するまで、メタノールおよび水を留去した。反応物を固形分50wt%となるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈し、反応性基を有するポリシロキサン含有液であるPSi―3を233.1重量部得た。
【0075】
合成例:PSi-4
攪拌装置および空気の吹き込み管を備えた3Lセパラブルフラスコに、フェニルトリメトキシシラン(KBM-103、信越化学社製)45.9重量部、KBM-13(信越化学社製)85.7重量部、プロピレングリコールモノメチルエーテル100重量部、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)を0.2重量部、ヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)0.02重量部とA-4(SC有機化学社製)0.43重量部を仕込み、液温を75℃で攪拌しながら、水を42.7重量部滴下した。滴下終了後、75℃で4時間攪拌し、50℃まで降温した。その後、80hPaに減圧し、液温が70℃に到達するまで、メタノールおよび水を留去した。反応物を固形分50wt%となるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈し、反応性基を有さないポリシロキサン含有液であるPSi―4を198.1重量部得た。
【0076】
<実施例1>
(組成物の調製)
合成したPSi-1を160重量部、無機フィラーとしてPGM-ST(日産化学社製、未修飾シリカ、固形分:30wt%)を33.3重量部、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(M-450、東亜合成社製)10重量部とを配合・攪拌した。得られた配合物に対し、塩基発生剤として1,2-ジイソプロピル-3-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]グアニジウム2-(3-ベンゾイルフェニル)プロピオナート(WPBG-266、富士フィルム和光純薬工業株式会社製)を樹脂固形分と無機フィラーの固形分の総量に対して、2.0重量部、ラジカル開始剤として、Omnirad819(IGM株式会社、光開始剤)を樹脂固形分と無機フィラーの固形分の総量に対して、2重量部を配合・攪拌し、その後プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)を樹脂固形分と無機フィラーの固形分の総量に対して14.6重量部、メチルエチル-ケトン(MEK)を樹脂固形分と無機フィラーの固形分の総量に対して20重量部にて希釈し、不揮発分43重量部の組成物1を得た。
【0077】
<実施例2~8>組成物2~8の調製
実施例1において、配合を表1に記載の配合率に変更した以外は同様にして、組成物2~8を得た。なお、光安定化剤(HALS)、紫外線吸収剤(UVA)も塩基発生剤と同様に樹脂固形分と無機フィラーの固形分の総量に対して、配合量を決定した。
【0078】
(積層体の製造)
得られた組成物は、以下の条件で、積層体の製造を行った。得られた積層体については、各種試験を行った。
【0079】
<塗工>
・バーコーター塗装
白エナメル塗装クロメート処理金属板(白板)またはポリカーボネート板(帝人製L-1225LZ、厚み3mm)に対し、表1で調製した組成物1を乾燥後の塗膜厚さが約10~20μmとなるように塗布し、80℃の乾燥機で6分乾燥した。
【0080】
<硬化>
紫外線照射は、GS-YUASA(株)製の高圧水銀ランプを使用し、EIT社製のUV POWER PUCK IIのUV-A領域で、ピーク照度200mW/cmにて、1パス当りの照射エネルギーが1000mJ/cmとなるようランプ出力、ランプ高さ、及びコンベア速度を調整し、1パス(合計1000mJ/cm)または2パス(合計2000mJ/cm)で照射し硬化反応をさせ、積層体を得た。
【0081】
<評価>
[Taber磨耗性試験]
積層体表面を、テーバー磨耗試験にて、ASTM D1044に準拠した方法(磨耗輪:CS-10F、荷重:500g、回転数:100)にて擦り、初期状態とのくもり価の差、すなわち、ヘイズ値変化ΔH(%)を測定する。差が小さいほど、耐磨耗性が高いことを示し、ΔHaze≦10.0を合格値とした。なお、Taber摩耗試験は、全てポリカーボネート板(帝人製L-1225LZ、厚み3mm)に塗装した積層体で実施した。
得られた磨耗性試験後の積層体について、ヘイズメーターを使用して試験片の光線透過率を測定し、次式によって算出した(単位は%)。
【0082】
【数1】
【0083】
[耐光性]:キセノン促進耐候性試験
岩崎電機製の促進耐候性試験機アイスーパーキセノンテスターを使用して、照度:180W/m2(波長:300~400nm)、フィルタ:(石英 / #275)、試験サイクル:照射のみ、ブラックパネル温度(BPT):63±2℃、湿度:50±5%の条件で得られた積層体を500時間試験し取り出した後、上記の各試料を室温に戻し、積層体表層の変化を目視で確認した。
○:クラックなし。
×:クラックあり
【0084】
[耐候性]:SUV促進耐候性試験
岩崎電気製の促進耐候試験機スーパーUVテスター(SUV)を使用して、4時間照射(照射強度90mW、ブラックパネル温度63℃湿度70%)と4時間暗黒(ブラックパネル温度63℃湿度90%)と4時間結露(ブラックパネル温度30℃湿度95%)の12時間を1サイクルとし、360時間試験を実施した。
【0085】
(白化)
カラーメーター(X-rite社製 SpectroEye)を使用して、JIS Z8781に基づき試験片のL*値を測定し、L*値の変化、すなわちΔL*を測定した。
○:ΔL* < 3.0
×:ΔL* ≧ 3.0
【0086】
(クラック)
○:クラックなし
×:クラックあり
【0087】
(密着)
積層体において、試験時に端部より自然に剥離が発生した時間を確認することで、下記の基準によりポリカーボネート板への密着性を評価した。
○:剥離なし
×:剥離あり
【0088】
【表1】
【0089】
PGM-ST(日産化学工業株式会社製)未修飾シリカ 固形分30wt%
MEK-AC日産化学工業株式会社製)メタクリロイル修飾シリカ 固形分40wt%
BTA-705(ローム&ハース):弾性ゴム粒子 固形分30wt%
M-315(東亜合成株式会社製):イソシアヌル酸2-ヒドロキシエチルトリアクリレート
M-450(東亜合成株式会社製):ペンタエリスリトールテトラアクリレート
Tinuvin123(BASF社製):ヒンダートアミン系HALS
Tinuvin479(BASF社製):トリアジン系UVA
【0090】
<比較例1~4>比較組成物1~4の調製
実施例1において、配合を表2に記載の配合率に変更した以外は同様にして、比較組成物1~4及び、積層体1~4を得て、評価を行った。
【0091】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明の組成物は、ハードコート性を有し、かつ、耐光性や耐候性に優れた硬化物を得られることから、プラスチック用のコーティング剤として好適に使用できる。特に屋外用途や強い照明下での使用に好適である。