(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】紫外線吸収性ガラス物品
(51)【国際特許分類】
C03C 4/08 20060101AFI20220809BHJP
C03C 3/087 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
C03C4/08
C03C3/087
(21)【出願番号】P 2021003395
(22)【出願日】2021-01-13
(62)【分割の表示】P 2017538542の分割
【原出願日】2016-09-09
【審査請求日】2021-01-25
(31)【優先権主張番号】P 2015179719
(32)【優先日】2015-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(72)【発明者】
【氏名】赤田 修一
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 創史
【審査官】大塚 晴彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-064035(JP,A)
【文献】特表2003-508338(JP,A)
【文献】特開2003-183048(JP,A)
【文献】国際公開第2016/088374(WO,A1)
【文献】特開2000-247679(JP,A)
【文献】国際公開第97/017303(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/088026(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00 -14/00
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物基準の質量%表示で、ガラス母組成として、
SiO
2 66~75%、
Na
2O 10~20%、
CaO 5~15%、
MgO 0~6%、
Al
2O
3 0~5%、
K
2O 0~5%、
Fe
2O
3 1~3%、
FeO 0.2~0.5%、
TiO
2 0.1~3%、
CoO 0.0170~0.04%、
Se 0.004%以下、
Cr
2O
3 0.06%以下、
NiO
0.0185%以下、
を含有し、レドックス([Fe
2O
3に換算した二価鉄(Fe
2+)]/[Fe
2O
3に換算した二価鉄(Fe
2+)とFe
2O
3に換算した三価鉄(Fe
3+)の合計])が15~35%であり、Fe
2O
3+TiO
2が1.2%以上であり、
NiOが0%の場合、CoOが0.0170%以上0.032%以下であり、NiOが0%超
0.0185%以下の場合、CoOが0.0170~0.04%であり、
Fe
2O
3、FeO、TiO
2、CoO、Se、Cr
2O
3、および、NiOが下記式(a)を満たし、
板厚3.5mmでの、ISO9050:2003で規定された紫外線透過率(TUV)が2%以下であり、
板厚3.5mmでの、標準A光源に基づく可視光透過率(TVA)が8%以上28%以下であり、
JIS Z8701:1999で規定された、標準C光源の2度視野に基づくXYZ表色系における色度座標x、yで表記したガラスの色調が、下記式(1),(2)を満たす紫外線吸収性ガラス物品。
-0.0398-0.002×(Fe
2O
3)+0.097×(FeO)+0.0019×(TiO
2)+0.95×(CoO)-21.16×(Se)+0.66×(Cr
2O
3)-0.030×(NiO)≧0 (a)
y ≧ -0.735×x + 0.544 (1)
y ≧ 1.389×x - 0.089 (2)
【請求項2】
前記Fe
2O
3+TiO
2が1.5%以上である、請求項
1に記載の紫外線吸収性ガラス物品。
【請求項3】
NiOが0%超
0.0185%以下の場合、CoOが0.0170~0.022%である、請求項
1または2に記載の紫外線吸収性ガラス物品。
【請求項4】
酸化物基準の質量%表示で、ガラス母組成として、
SiO
2 66~75%、
Na
2O 10~20%、
CaO 5~15%、
MgO 0~6%、
Al
2O
3 0~5%、
K
2O 0~5%、
Fe
2O
3 1~3%、
FeO 0.2~0.5%、
TiO
2 0.1~3%、
CoO 0.0170~0.04%、
Se 0.004%以下、
Cr
2O
3 0.06%以下、
NiO 0.045%以下、
を含有し、レドックス([Fe
2O
3に換算した二価鉄(Fe
2+)]/[Fe
2O
3に換算した二価鉄(Fe
2+)とFe
2O
3に換算した三価鉄(Fe
3+)の合計])が15~35%であり、Fe
2O
3+TiO
2が
2.62%以上であり、
NiOが0%の場合、CoOが0.0170%以上0.032%以下であり、NiOが0%超0.045%以下の場合、CoOが0.0170~0.04%であり、
Fe
2O
3、FeO、TiO
2、CoO、Se、Cr
2O
3、および、NiOが下記式(a)を満たし、
板厚3.5mmでの、ISO9050:2003で規定された紫外線透過率(TUV)が2%以下であり、
板厚3.5mmでの、標準A光源に基づく可視光透過率(TVA)が8%以上28%以下であり、
JIS Z8701:1999で規定された、標準C光源の2度視野に基づくXYZ表色系における色度座標x、yで表記したガラスの色調が、下記式(1),(2)を満たす紫外線吸収性ガラス物品。
-0.0398-0.002×(Fe
2O
3)+0.097×(FeO)+0.0019×(TiO
2)+0.95×(CoO)-21.16×(Se)+0.66×(Cr
2O
3)-0.030×(NiO)≧0 (a)
y ≧ -0.735×x + 0.544 (1)
y ≧ 1.389×x - 0.089 (2)
【請求項5】
NiOが0%超0.045%以下の場合、CoOが0.0170~0.022%である、請求項
4に記載の紫外線吸収性ガラス物品。
【請求項6】
板厚3.5mmでの、JIS-R3106:1998で規定されたエネルギー透過率(TE)が22%以下である、請求項1
~5のいずれか1項に記載の紫外線吸収性ガラス物品。
【請求項7】
板厚3.5mmでの、ISO9050:2003で規定された前記紫外線透過率(TUV)が1%以下である、請求項1
~6のいずれか1項に記載の紫外線吸収性ガラス物品。
【請求項8】
板厚3.5mmでの、ISO13837:2008 convention Aで規定された紫外線透過率(TUV400)が5%以下である、請求項1~
7のいずれか1項に記載の紫外線吸収性ガラス物品。
【請求項9】
板厚3.5mmでの、標準A光源に基づく前記可視光透過率(TVA)が10~22%である、請求項1~
8のいずれか1項に記載の紫外線吸収性ガラス物品。
【請求項10】
前記Cr
2O
3が0.04%以下である、請求項1~
9のいずれか1項に記載の紫外線吸収性ガラス物品。
【請求項11】
前記Fe
2O
3が1.06%以上である、請求項1~
10のいずれか1項に記載の紫外線吸収性ガラス物品。
【請求項12】
前記Fe
2O
3が1.85%以下である、請求項1~
11のいずれか1項に記載の紫外線吸収性ガラス物品。
【請求項13】
前記FeOが0.30~0.5%である、請求項1~
12のいずれか1項に記載の紫外線吸収性ガラス物品。
【請求項14】
前記TiO
2が0.4%以上である、請求項1~
13のいずれか1項に記載の紫外線吸収性ガラス物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用(特に、自動車用)濃グリーン色ガラスとして好適な紫外線吸収性ガラス物品に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用ガラスのリアサイドガラスおよびリアガラスとして、可視光線透過率を大幅に低減させた濃いグリーン色のガラス(いわゆる、濃グリーン色ガラス若しくはプライバシーガラスという)が実用化されている。このプライバシーガラスは、紫外領域から赤外領域までの広い波長域の太陽光線遮蔽性能が高いことによる室内の快適性や空調負荷低減、高級感を与える色調の選択が可能、デザイン的に優れた意匠性、車内のプライバシー保護、等の面で優れている。
【0003】
特許文献1は、ソーダ石灰シリカ系ガラス成分を基礎組成とし、wt%でFe2O3(全鉄)が0.6~1.0、FeOが0.10~0.23、Fe2+/(Fe2++Fe3+)イオン比が0.18~0.32、CoOが0.010~0.030、Cr2O3が0.030~0.065、Seが0.0005~0.0030であり、D光源によるところの主波長が485~520nmであることを特徴とする濃グリーン色ガラスを開示している。この濃グリーン色ガラスは、板厚5mmにおける紫外線透過率が15%以下、可視光透過率が10~35%、日射透過率が15~35%、D光源によるところの刺激純度が4.0~15.0%である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、紫外線対策についての関心が高まっている。これに対応するため、さらに紫外線透過率(TUV)が低いプライバシーガラス、具体的には、板厚3.5mmにおける紫外線透過率(TUV)が2%以下のプライバシーガラスが求められている。
【0006】
本発明は、上記した問題点を解決するため、車両用プライバシーガラスとして好適な、紫外線透過率がきわめて低い紫外線吸収性ガラス物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するため、本発明は、酸化物基準の質量%表示で、ガラス母組成として、SiO2 66~75%、Na2O 10~20%、CaO 5~15%、MgO 0~6%、Al2O3 0~5%、K2O 0~5%、Fe2O3
1~3%、FeO 0.2~0.5%、TiO2
0.1~3%、CoO 0.0170~0.04%、Se 0.004%以下、Cr2O3 0.06%以下、NiO 0.045%以下、を含有し、レドックス([Fe2O3に換算した二価鉄(Fe2+)]/[Fe2O3に換算した二価鉄(Fe2+)とFe2O3に換算した三価鉄(Fe3+)の合計])が15~35%であり、Fe2O3+TiO2が1.2%以上であり、NiOが0%の場合、CoOが0.0170%以上0.032%以下であり、NiOが0%超0.045%以下の場合、CoOが0.0170~0.04%であり、Fe2O3、FeO、TiO2、CoO、Se、Cr2O3、および、NiOが下記式(a)を満たし、
板厚3.5mmでの、ISO9050:2003で規定された紫外線透過率(TUV)が2%以下、
板厚3.5mmでの標準A光源に基づく可視光透過率(TVA)が8%以上28%以下であり、
JIS Z8701:1999で規定された、標準C光源の2度視野に基づくXYZ表色系における色度座標x、yで表記したガラスの色調が、下記式(1),(2)を満たす紫外線吸収性ガラス物品を提供する。
-0.0398-0.002×(Fe2O3)+0.097×(FeO)+0.0019×(TiO2)+0.95×(CoO)-21.16×(Se)+0.66×(Cr2O3)-0.030×(NiO)≧0 (a)
y ≧ -0.735×x + 0.544 (1)
y ≧ 1.389×x - 0.089 (2)
【発明の効果】
【0008】
本発明の紫外線吸収性ガラス物品は、板厚3.5mmでの紫外線透過率(TUV)が2%以下ときわめて低いため、車両用プライバシーガラスとして好適である。本発明の紫外線吸収性ガラス物品は、板厚3.5mmでの標準A光源に基づく可視光透過率(TVA)が8%以上28%以下であり、視界確保の要求を満足する。本発明の紫外線吸収性ガラス物品は、特に自動車用のリアサイドガラス、リアガラス、並びにルーフガラスとして好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、XYZ表色系の色度座標(x,y)における実施例、比較例の分布を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の紫外線吸収性ガラス物品は、酸化物基準の質量%表示で、ガラス母組成として、SiO2 66~75%、Na2O 10~20%、CaO 5~15%、MgO 0~6%、Al2O3 0~5%、K2O 0~5%、Fe2O3 0.5~3%、FeO 0.2~0.5%、TiO2 3%以下、CoO 0.01~0.04%、Se 0.004%以下、Cr2O3 0.06%以下、NiO 0.1%以下を含有し、レドックス([Fe2O3に換算した二価鉄(Fe2+)]/[Fe2O3に換算した二価鉄(Fe2+)とFe2O3に換算した三価鉄(Fe3+)の合計(Fe2++Fe3+)])が15~35%であり、Fe2O3+TiO2が1.2%以上であり、NiOが0%の場合、CoOが0.01%以上0.032%以下であり、NiOが0.06%超0.1%以下の場合、CoOが0.032%超0.04%以下であり、NiOが0%超0.06%以下の場合、CoOが0.01~0.04%であり、Fe2O3、FeO、TiO2、CoO、Se、Cr2O3、および、NiOが下記式(a)を満たし、板厚3.5mmでの、ISO9050:2003で規定された紫外線透過率(TUV)が2%以下、板厚3.5mmでの、標準A光源に基づく可視光透過率(TVA)が8%以上28%以下であり、JIS Z8701:1999で規定された、標準C光源の2度視野に基づくXYZ表色系における色度座標x、yで表記したガラスの色調が、下記式(1),(2)を満たす。
-0.0398-0.002×(Fe2O3)+0.097×(FeO)+0.0019×(TiO2)+0.95×(CoO)-21.16×(Se)+0.66×(Cr2O3)-0.030×(NiO)≧0 (a)
y ≧ -0.735×x + 0.544 (1)
y ≧ 1.389×x - 0.089 (2)
【0011】
本発明において、上記成分とする理由を以下に述べる。なお、特に明記がない限り、%は質量%を意味するものとする。
【0012】
SiO2は、ネットワークを構築する成分であり、必須成分である。SiO2は、含有量が66%以上であれば耐候性が良くなり、75%以下であれば粘度が高くなりすぎず、溶融に都合が良い。67%以上が好ましく、68%以上がより好ましい。また72%以下が好ましく、70%以下がより好ましい。
【0013】
Na2Oは、原料の溶融を促進する成分であり、必須成分である。Na2Oは、含有量が10%以上であれば原料の溶融を促進させ、20%以下であれば耐候性が悪くならない。11%以上であれば好ましく、12%以上であればより好ましい。また、18%以下であれば好ましく、16%以下であればより好ましい。
【0014】
CaOは、原料の溶融を促進し耐候性を改善する成分であり、必須成分である。CaOは、含有量が5%以上であれば原料の溶融を促進し耐候性を改善させ、15%以下であれば失透を抑制する。6%以上であれば好ましく、7%以上であればより好ましい。13%以下であれば好ましく、11%以下であればより好ましい。
【0015】
MgOは、原料の溶融を促進し耐候性を改善する成分であり、選択成分である。MgOは、含有量が6%以下であれば失透を抑制する。5%以下であれば好ましく、4%以下であればより好ましい。
【0016】
Al2O3は、耐候性を改善する成分であり、選択成分である。Al2O3は、含有量が5%以下であれば粘度が高くなりすぎず、溶融に都合が良い。4%以下であれば好ましく、3%以下であればより好ましい。
【0017】
K2Oは、原料の溶融を促進する成分であり、選択成分である。K2Oは、含有量が5%以下であれば揮発による溶融窯の耐火物へのダメージを抑制する。4%以下であれば好ましく、3%以下であればより好ましい。
【0018】
三価鉄の酸化物であるFe2O3は紫外線を吸収する成分であり、必須成分である。Fe2O3は、含有量が0.5%より低いと紫外線透過率が大きくなりすぎるため、0.5%以上とする。含有量が多すぎると可視光透過率が小さくなりすぎるため、3%以下とする。より好ましいFe2O3含有量は、1%以上であり、1.3%以上であればさらに好ましい。また、より好ましいFe2O3含有量は、2%以下であり、1.6%以下であればさらに好ましい。
【0019】
二価鉄の酸化物であるFeOは、熱エネルギーを吸収する成分であり、必須成分である。FeOは、含有量が0.2%以上であれば充分に低い日射透過率が得られる。一方、含有量が0.5%以下であれば溶融時の熱効率が悪化せず、加熱源から遠い溶融炉の底部において素地が滞留することを抑制する。0.25%以上であれば好ましく、0.30%以上であればより好ましい。また、0.48%以下であれば好ましく、0.44%以下であればより好ましい。
【0020】
本発明の紫外線吸収性ガラス物品では、可視光透過率と日射透過率のバランスの指標として、レドックス([Fe2O3に換算した二価鉄(Fe2+)]/[Fe2O3に換算した二価鉄(Fe2+)とFe2O3に換算した三価鉄(Fe3+)の合計(Fe2++Fe3+)])を用いる。本発明の紫外線吸収性ガラス物品は、レドックスが15~35%である。レドックスが15%以上であれば、日射透過率が大きくなりすぎず、35%以下であれば可視光透過率が小さくなりすぎない。本発明の紫外線吸収性ガラス物品は、レドックスが18%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましい。また30%以下であることが好ましく、28%以下であることがより好ましい。
【0021】
TiO2は、必須ではないが、紫外線透過率(TUV)を小さくする成分であるため、含有できる。含有する場合は、0.1%以上が好ましく、0.4%以上がより好ましく、0.8%以上がさらに好ましい。但し、TiO2含有量が多すぎると、可視光透過率が小さくなりすぎるため、3%以下とする。また、TiO2は溶融時の素地の粘性を下げる効果があり、素地の滞留を起こり難くする働きがある。TiO2含有量は2.7%以下であることが好ましく、2.2%以下であることがより好ましい。
【0022】
本発明の紫外線吸収性ガラス物品は、Fe2O3含有量とTiO2含有量の合量(Fe2O3+TiO2)が1.2%以上である。Fe2O3+TiO2が1.2%以上であれば、紫外線透過率が大きくなりすぎず、かつガラスに黄色みをつけることができる。本発明の紫外線吸収性ガラス物品は、Fe2O3+TiO2が1.5%以上であることが好ましく、1.8%以上であることがより好ましく、2.8%以上であることがさらに好ましい。
【0023】
CoOは、ガラスに青みを帯びさせる成分であり、必須成分である。CoOは、含有量が0.01%以上であればガラスの色調が黄色みを帯びるのを抑制し、0.04%以下であればガラスの色調が青みを帯びるのを抑制する。より好ましいCoOの含有量は、0.012%以上であり、さらに好ましいCoOの含有量は、0.014%以上である。また、より好ましいCoOの含有量は、0.038%以下であり、さらに好ましいCoOの含有量は、0.036%以下である。
【0024】
Seは、必須ではないが、ガラスに赤みを帯びさせる成分であるため、含有できる。Seは、0.004%以下であれば黄色みを帯びるのを抑制する。0.003%以下であればより好ましく、0.002%以下であればさらに好ましい。また、Seは、ガラスの色調が青みを帯びるのを抑制するには、0.0001%以上が好ましい。0.0005%以上であればより好ましく、0.001%以上であればさらに好ましく、0.0015%以上であれば特に好ましく、0.0017%以上であれば最も好ましい。
【0025】
Cr2O3は、本発明の紫外線吸収性ガラス物品において、さほど刺激純度を高めないで、可視光透過率を低減させる成分であり、任意成分である。Cr2O3は、含有量が0.06%以下であれば可視光透過率が小さくなりすぎることを抑制する。好ましいCr2O3の含有量は、0.04%以下であり、より好ましいCr2O3の含有量は、0.032%以下である。
【0026】
本発明の紫外線吸収性ガラス物品は、上記以外にNiの酸化物を含有することが好ましい。この場合、酸化物換算(NiO)の含有量は0~1%である。但し、NiO含有量が0%の場合は、CoO含有量が0.01%以上0.032%以下である。NiO含有量が0.06%超0.1%以下の場合、CoO含有量が0.032%超0.04%以下であり、NiO含有量が0%超0.06%以下の場合、CoO含有量が0.01~0.04%である。NiO含有量およびCoO含有量が上述した関係を満たすことにより、ガラスの青みおよび茶色みを抑制して、緑みを帯びさせることができる。NiO含有量は、0.07%以下が好ましく、0.045%以下がより好ましい。また、NiO含有量が0%の場合、CoO含有量が0.014%以上であれば好ましく、0.020%以上であればより好ましい。NiO含有量が0%超0.06%以下の場合、CoO含有量が0.022%以下であれば好ましく、0.018%以下がより好ましい。
【0027】
本発明の紫外線吸収性ガラス物品は、Fe2O3、FeO、TiO2、CoO、Se、Cr2O3、および、NiOが下記式(a)を満たすことにより、ガラスに調和のとれた緑みを帯びさせることができる。
-0.0398-0.002×(Fe2O3)+0.097×(FeO)+0.0019×(TiO2)+0.95×(CoO)-21.16×(Se)+0.66×(Cr2O3)-0.030×(NiO)≧0 (a)
【0028】
なお、実生産においては、芒硝などの清澄剤が用いられるため、その痕跡として、0.05~1.0%のSO3がガラス中に残存するのが通常である。
【0029】
本発明の紫外線吸収性ガラス物品は、上記以外にB、Ba、Sr、Li、Zn、Pb、P、Zr、Bi、Snの各酸化物を含有してもよい。これらの酸化物換算(B2O3、BaO、SrO、Li2O、ZnO、PbO、P2O5、ZrO2、Bi2O3、SnO2)の含有量は各々、0~1質量%であってよい。これらの成分は、合量で好ましくは0.7%以下、より好ましくは0.4%以下、さらに好ましくは0.2%以下、特に好ましくは0.1%以下含んでもよい。
【0030】
また、Sb、As、Cl、Fを含有してもよい。これらの元素は溶融補助剤、清澄剤から意図的に混入し得る。あるいは原料やカレット中の不純物として含有し得る。これらの含有量は0~0.1質量%であってよく、0~0.05質量%であってよく、0~0.01質量%であってよい。
【0031】
また、Mn、Cu、Mo、Nd、Erの各酸化物を含有してもよい。これらの酸化物換算(MnO2、CuO、MoO3、Nd2O3、Er2O3)の含有量は0~0.1質量%であってよく、0~0.05質量%であってよく、0~0.01質量%であってよい。
【0032】
また、CeO2を含有してもよい。CeO2を含有する場合、CeO2の含有量は0~1質量%であってよい。CeO2は、好ましくは0.7質量%以下、より好ましくは0.4質量%以下、さらに好ましくは0.2質量%以下、特に好ましくは0.1質量%以下含んでもよい。
なお、V、Wの各酸化物は実質的に含まないことが好ましい。ここで実質的に含まないとは意図的に含有させないことを意味し、具体的にはこれらの元素の含有率がガラス中にそれぞれ100ppm以下であることを意味する。
【0033】
本発明の紫外線吸収性ガラス物品を車両用プライバシーガラスとして用いる場合、上記組成のガラスであって、以下のような光学特性を有する。
3.5mm厚さで、紫外線透過率(TUV)が2%以下であり、1%以下が好ましい。
3.5mm厚さで、可視光透過率(TVA)が8~28%である。10%以上が好ましい。また、22%以下が好ましい。
また、上記光学特性に加えて、エネルギー透過率(TE)は22%以下であることが好ましく、16%以下がより好ましい。
また、上記光学特性に加えて、3.5mm厚さで、紫外線透過率(TUV400)が5%以下が好ましく、3%以下がより好ましく、2%以下がさらに好ましい。
本明細書を通じて、エネルギー透過率(TE)はJIS-R3106:1998により、紫外線透過率(TUV)はISO 9050:2003により、紫外線透過率(TUV400)はISO13837:2008 convention Aにより、それぞれ求めたものである。また、可視光透過率(TVA)は標準A光源に基づき算出したものである。
【0034】
また、本発明の紫外線吸収性ガラス物品は、濃グリーン色ガラスとするため、上記光学特性に加えて、JIS Z8701:1999で規定された、標準C光源の2度視野に基づくXYZ表色系における色度座標x、yが、下記式(1)、(2)を満たす。
y ≧ -0.735×x + 0.544 (1)
y ≧ 1.389×x - 0.089 (2)
【0035】
また、本発明の紫外線吸収性ガラス物品は、粘度が100ポアズとなる温度が1440℃以下であればガラスの製造がしやすいという効果がある。粘度が100ポアズとなる温度は1435℃以下が好ましく、1410℃以下がより好ましく、1400℃以下であれば特に好ましい。
【0036】
本発明の紫外線吸収性ガラス物品の製造法は、特に限定されないが、たとえば、次のようにして製造できる。調合した原料を連続的に溶融炉に供給し、重油等により約1500℃に加熱してガラス化する。次いで、この溶融ガラスを清澄した後、フロート法等により所定の厚さのガラス板に成形する。次いで、このガラス板を所定の形状に切断することにより、本発明の紫外線吸収性ガラス物品が製造される。その後、必要に応じて、切断したガラスを強化処理し、合わせガラスに加工し、または複層ガラスに加工することができる。
【実施例】
【0037】
以下において例
3、6、7、8、14、15は実施例、例11~13は比較例
、例1、2、4、5、9、10は参考例である。原料としてケイ砂、長石、苦灰石、ソーダ灰、芒硝、高炉スラグ、酸化第二鉄、酸化チタン、酸化コバルト、亜セレン酸ソーダ、酸化クロム、酸化ニッケルを用いて原料バッチを調合した。母成分として、SiO
2:65~70、Al
2O
3:1.8、CaO:8.4、MgO:4.6、Na
2O:13.3、K
2O:0.7およびSO
3:0.2(単位:質量%)からなるソーダライムシリケートガラスを使用した。母成分と、吸収成分として加えるFe
2O
3、TiO
2、CoO、Se、Cr
2O
3およびNiOの合計が100質量%になるようにSiO
2含有量を調整して目標組成とした。バッチを白金-ロジウム製のルツボに入れて、電気炉中で溶融(O
2濃度0.5%程度の雰囲気)し、カーボン板状に流し出した後、別の電気炉内で徐冷した。得られたガラスブロックを切断し、一部を研磨して蛍光X線分析装置により組成を分析した。別の一部の表面を研磨して鏡面状に、かつ厚み3.5mmになるように仕上げて、分光光度計により分光透過率を測定した。FeOについては波長1000nmの赤外線透過率から計算により求めた。Fe
2O
3については蛍光X線分析による全酸化鉄含有量と上記FeO含有量を基に算出した。
また、分光透過率を基に可視光透過率(TVA)、エネルギー透過率(TE)、紫外線透過率(TUVおよびTUV400)、色度座標(x、y)を算出した。実施例、比較例の色度座標の分布と式(1)および式(2)との関係を
図1に示す。なお、
図1中、(1)は上記した式(1)に対応する直線を示し、(2)は上記した式(2)に対応する直線を示している。
以下、表に得られたガラス中の吸収成分の含有量と光学特性を示す。
【0038】
【0039】
ガラス組成に関する要件を全て満たす実施例のガラスは、いずれも板厚3.5mmでの光学特性に関する要件を満たしていた。NiOおよびCoOの含有量に関する要件(NiOが0%の場合、CoOが0.01%以上0.032%以下)を満たさず、式(a)を満たさない例11のガラスは、板厚3.5mmでの光学特性が式(1)の要件を満たさなかった。NiOおよびCoOの含有量に関する要件(NiOが0.06%超の場合、CoOが0.032%超0.04%以下)を満たさず、式(a)を満たさない例12のガラスは、板厚3.5mmでの光学特性が式(2)の要件を満たさなかった。CoOが0.04%を超え、式(a)を満たさない例13のガラスは、板厚3.5mmでの光学特性が式(1)の要件を満たさなかった。
【0040】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は2015年9月11日出願の日本特許出願(特願2015-179719)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。