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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】ヒートシール剤、積層体、包装材
(51)【国際特許分類】
   C09J 175/04 20060101AFI20220809BHJP
   C09J 147/00 20060101ALI20220809BHJP
   C09J 7/35 20180101ALI20220809BHJP
   B32B 25/04 20060101ALI20220809BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220809BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
C09J175/04
C09J147/00
C09J7/35
B32B25/04
B32B27/00 104
B65D65/40 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022517436
(86)(22)【出願日】2021-10-28
(86)【国際出願番号】 JP2021039735
【審査請求日】2022-03-17
(31)【優先権主張番号】P 2020187125
(32)【優先日】2020-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】延藤 真理
(72)【発明者】
【氏名】田原 裕介
(72)【発明者】
【氏名】白石 香織
(72)【発明者】
【氏名】宮宅 潤一
【審査官】高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-503461(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101768416(CN,A)
【文献】特開2009-143969(JP,A)
【文献】特開2000-033673(JP,A)
【文献】特開平08-112880(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0369750(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102492383(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106008845(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第1440988(CN,A)
【文献】国際公開第2017/200014(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
B32B
B65D65/00-65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合樹脂(A)と、
水性溶剤(B)と、を含み、
前記複合樹脂(A)がビニル重合体(A1)とウレタン樹脂(A2)とを含み、前記ビニル重合体(A1)の少なくとも一部を前記ウレタン樹脂(A2)が被覆し、ビニル重合体(A1)とウレタン樹脂(A2)とは化学的に結合しており、
前記ビニル重合体(A1)及び前記ウレタン樹脂(A2)の合計の含有率は、前記複合樹脂(A)中の70質量%以上であり、
前記ビニル重合体(A1)はビニル単量体(a)の重合体であり、前記ビニル単量体(a)がジエン化合物(a1)を少なくとも含有し、
前記ジエン化合物(a1)の含有率は、ビニル単量体(a)全量中の10質量%以上であることを特徴とするヒートシール剤。
【請求項2】
前記ウレタン樹脂(A2)のガラス転移温度が-100℃以上120℃以下である請求項1に記載のヒートシール剤。
【請求項3】
前記ビニル樹脂(A1)1質量部に対する前記ウレタン樹脂(A2)の含有量が0.1質量部以上100質量部以下である請求項1または2のいずれか一項に記載のヒートシール剤。
【請求項4】
前記ビニル重合体(A1)は、更にその他のビニル化合物(a2)を含む請求項1~3のいずれか一項に記載のヒートシール剤。
【請求項5】
基材と、ヒートシール層とを含み、前記ヒートシール層が請求項1~4のいずれか一項に記載のヒートシール剤の乾燥塗膜である積層体。
【請求項6】
請求項5に記載の積層体からなる包装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヒートシール剤、当該ヒートシール剤を用いて製造した積層体、包装材に関する。
【背景技術】
【0002】
各種包装材を製造する際に、プラスチックフィルム、蒸着フィルム、アルミ箔、紙、不織布等の基材を熱圧で貼り合わせて接着(ヒートシール)することが広く行われており、各種のヒートシール剤が使用されている。包装材の用途に応じて用いられる基材が異なるため、包装材の用途毎(ヒートシール剤を塗工する基材毎)に適したヒートシール剤が選択される。
【0003】
例えば、特許文献1には食品包装バッグまたは医薬品のブリスター包装に用いられるヒートシールコーティングとして、特定のガラス転移温度および軟化点を有するポリエステルと、粘着防止添加剤と、有機溶媒を含むものが、PETフィルム、BOPPフィルムに適していることが示されている。特許文献2には、ポリエステル樹脂と、塩素化ポリプロピレン樹脂と、有機溶剤とを含むヒートシール剤が、アルミ箔とポリプロピレンシート間のヒートシール性に優れることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2017-512724号公報
【文献】特開昭55-92778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、用途に応じて種々のヒートシール剤が提供されてはいるものの、作業性の観点からは1種のヒートシール剤が種々の基材に適用できることが好ましい。近年は、包装材としてPETフィルム、BOPPフィルム、PVCフィルム、A-PET(非晶性ポリエチレンテレフタレート)等の種々の材料が用いられていることから、種々のフィルムに対して適用可能なヒートシール剤が求められており、中でも、A-PETに対しても十分なヒートシール性を有するヒートシール剤というものは知られていない。
また、環境負荷軽減の観点から、ヒートシール剤は溶剤系よりも水系であることが好ましい。
【0006】
本発明はこのような課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであって、種々の基材間のヒートシール性に優れた水性のヒートシール剤、当該ヒートシール剤を用いてなる積層体、包装材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、複合樹脂(A)と水性溶剤(B)とを含み、複合樹脂(A)がビニル重合体(A1)とウレタン樹脂(A2)とを含むヒートシール剤に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、種々の基材に適用可能であり、環境負荷が少ない水性のヒートシール剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<ヒートシール剤>
本発明のヒートシール剤は、複合樹脂(A)と水性溶剤(B)とを含む。以下、本発明の接着剤について詳細に説明する。
【0010】
(複合樹脂(A))
本発明のヒートシール剤に用いられる複合樹脂(A)は、ビニル重合体(A1)とウレタン樹脂(A2)とを含む。
【0011】
ビニル重合体(A1)は、ビニル単量体(a)に由来する単位を有する重合体を表す。ビニル単量体(a)は、1分子中に、少なくとも1つの重合性ビニル結合を有する化合物を表す。ビニル単量体(a)としては、1種又は2種以上を用いることができ、ジエン化合物(a1)、その他のビニル化合物(a2)などが挙げられる。
【0012】
ジエン化合物(a1)としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、1,3-ヘプタジエン、2,3-ジメチルブタジエン、2-フェニル-1,3-ブタジエン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、2-クロル-1,3-ブタジエン等が挙げられる。
【0013】
ジエン化合物(a1)の含有率は、ビニル単量体(a)全量中、好ましくは1質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上であり、上限は100質量%である。
【0014】
その他のビニル化合物(a2)としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、3-メチルブチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、等の炭素原子数4~22のアルキル(メタ)アクリレート;
【0015】
シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の炭素原子数6~20のシクロアルキル(メタ)アクリレート;
フェニル(メタ)アクリレート等のアリル(メタ)アクリレート;
ベンジル(メタ)アクリレート、フェネチル(メタ)アクリレート等の炭素原子数10~20のアラルキル(メタ)アクリレート;
フェノキシエチル(メタ)アクリレート等のアリルオキシアルキル(メタ)アクリレート;
クロトン酸メチル、クロトン酸エチル等のクロトン酸アルキルエステル;
ジメチルマレート、ジブチルマレート、ジメチルフマレート、ジブチルフマレート、ジメチルイタコネート、ジブチルイタコネート等の不飽和ジカルボン酸アルキルエステル;
スチレン、p-tert-ブチルスチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルピリジン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン等の芳香族ビニルモノマー;
【0016】
(メタ)アクリロニトリル、クロトノニトリル、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N-(メタ)アクリロイルモルホリン、N-(メタ)アクリロイルピロリジン、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルピロリドン、N-ビニルイミダゾール、N-ビニルカルバゾール、N-ビニルキノリン、N-ビニルピペリジン等の窒素原子含有モノマー(好ましくは1置換又は2置換の(メタ)アクリルアミド(置換基が結合して環を形成しているものも含む))及び該窒素原子含有モノマーの塩化メチル塩;
【0017】
フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチエレン、ヘキサフルオロプロピレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化オレフィン;エチレン、プロピレン、イソブチレン、1-ブテン等のα-オレフィン;
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニル、安息香酸ビニル、ネオデカン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル;
メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル;シクロヘキシルビニルエーテル等のシクロアルキルビニルエーテル;
【0018】
アクロレイン、メチルビニルケトン等のカルボニル基含有モノマー;
ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコール共重合(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコール共重合(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールポリテトラメチレングリコール共重合(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールポリテトラメチレングリコール共重合(メタ)アクリレート等のポリオキシエチレン基含有(メタ)アクリルモノマー;
パーフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジ-パーフルオロシクロヘキシルフマレート、N-イソプロピルフルオロオクタンスルホン酸アミドエチル(メタ)アクリレート等のフルオロアルキル基含有モノマー;
【0019】
無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水メサコン酸、無水イタコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸等の不飽和ジカルボン酸類無水物;
グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等の環状エーテル含有モノマー;
ビニリトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシリル基含有モノマー;
【0020】
2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、2-ヒドロキシエチルアリルエーテル等のヒドロキシ基含有モノマー;
ビニルスルホン酸、3-アクリロキシプロパン-1-スルホン酸、3-アクリロキシオクチルオキシベンゼンスルホン酸、3-アクリロキシベンゼンジアゾスルホン酸、3-アクリロキシアゾベンゼン-4’-スルホン酸、2-アクリロイルアミノ-2-メチルプロパン-1-スルホン酸、2-アクリロイルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、アクリロニトリル-tert-ブチルスルホン酸等のビニル基含有スルホン酸化合物並びにそれらの塩などが挙げられる。
【0021】
その他のビニル化合物(a2)の含有率は、ビニル単量体(a)全量中、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であり、好ましくは80質量%以下、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下である。その他のビニル化合物(a2)の含有率が0質量%であってもよい。これにより、種々の基材に適用可能であり、低温ヒートシール性にも優れたヒートシール剤とすることができる。一方、用いる基材に合わせてビニル化合物(a2)の含有率を調整してもよく、例えば塩化ビニルを貼り合わせる場合にはその他のビニル化合物(a2)の配合量が多い方が好ましく、一例として40質量%以上80質量%以下であることが好ましい。アルミニウム箔や非晶性ポリエステルを貼り合わせる場合には一例として50質量%以下であることが好ましい。
【0022】
ジエン化合物(a1)及び前記その他のビニル化合物(a2)の合計の含有率は、ビニル単量体(a)全量中、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上であり、好ましくは100質量%以下である。
【0023】
ビニル重合体(A1)のガラス転移温度は、好ましくは-100℃以上であり、より好ましくは-80℃以上であり、好ましくは120℃以下、より好ましくは100℃である。
【0024】
なお本明細書においてビニル重合体(A1)のガラス転移温度Tg(A1)は、下記式(FOX式)により求められる絶対温度でのガラス転移温度Tgaを摂氏温度に換算して求められる値を表す。
1/Tga=Σ(Wi/Tgi)・・・
【0025】
上記式中、Tgaはビニル重合体(A1)の合成に用いる各ビニル単量体(a)のみからなる重合体のガラス転移温度(単位は絶対温度)を表す。Wiは、各ビニル単量体(a)の、ビニル重合体(A1)の原料中における質量割合を表す。Tgiは、各ビニル単量体(a)のみから形成される単独重合体のガラス転移温度(単位は絶対温度)を表す。
【0026】
FOX式の詳細は、ブレティン・オブ・ジ・アメリカン・フィジカル・ソサエティ・シリーズ2(Bulletin of the American Physical Society, Series 2)、第1巻、第3号、第123頁(1956年)に記載されている。また、FOX式で計算するための様々な単量体の単独重合体のガラス転移温度(Tgi)は、例えば、塗装と塗料(塗料出版社、10(No.358)、1982)に記載されている数値等を採用することができる。
【0027】
ビニル重合体(A1)の含有率は、貼り合わせる基材により適宜調整され得るが、一例として複合樹脂(A)中、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上、いっそう好ましくは20質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下である。
【0028】
ウレタン樹脂(A2)は、分子中にウレタン結合を有する樹脂であり、ポリオール(b1)、ポリイソシアネート(b2)及び必要に応じて用いる鎖伸長剤(b3)の反応物であることが好ましい。鎖伸長剤(b3)を用いる場合、ウレタン樹脂(A2)は、ポリオール(b1)及びポリイソシアネート(b2)の反応物と鎖伸長剤(b3)との反応物として得ることができる。
【0029】
ポリオール(b1)としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール等が挙げられ、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール等のポリマーポリオール(数平均分子量500以上であり、好ましくは3,000以下)を含むことが好ましく、必要に応じて親水性基を有するポリオール、低分子量ポリオール(数平均分子量500未満であり、好ましくは50以上)を含んでいてもよい。
【0030】
ポリエーテルポリオールとしては、活性水素原子を2個以上有する化合物の1種又は2種以上を開始剤として、アルキレンオキシドを付加重合(開環重合)させたもの等が挙げられる。
【0031】
開始剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、トリメチレングリコール、1,2-プロパンジオ-ル、1,3-プロパンジオ-ル、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等の直鎖状ジオール;ネオペンチルグリコール等の分岐鎖状ジオール;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ピロガロール等のトリオール;ソルビトール、蔗糖、アコニット糖等のポリオール;アコニット酸、トリメリット酸、ヘミメリット酸等のトリカルボン酸;リン酸;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン等のポリアミン;トリイソプロパノールアミン;ジヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシフタル酸等のフェノール酸;1,2,3-プロパントリチオールなどが挙げられる。
【0032】
アルキレンオキシドとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド、エピクロルヒドリン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0033】
ポリエーテルポリオールとしては、開始剤にテトラヒドロフランを付加重合(開環重合)させたポリオキシテトラメチレングリコールを使用することが好ましい。
【0034】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、低分子量ポリオール(例えば、分子量50以上300以下のポリオール)とポリカルボン酸とをエステル化反応して得られるポリエステルポリオール;ε-カプロラクトン等の環状エステル化合物を開環重合反応して得られるポリエステルポリオール;これらの共重合ポリエステルポリオールなどが挙げられる。
【0035】
低分子量ポリオールとしては、分子量が50以上300以下のポリオールを用いることができ、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3-ブタンジオール等の炭素原子数2以上6以下の脂肪族ポリオール;1,4-シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環式構造含有ポリオール;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール化合物及びそれらのアルキレンオキシド付加物等の芳香族構造含有ポリオールなどが挙げられる。
【0036】
ポリカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等の脂肪族ポリカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ポリカルボン酸;並びに前記脂肪族ポリカルボン酸及び芳香族ポリカルボン酸の無水物又はエステル形成性誘導体などが挙げられる。
【0037】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、炭酸エステルとポリオールとの反応物;ホスゲンとビスフェノールA等との反応物などが挙げられる。
【0038】
炭酸エステルとしては、例えば、メチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルカーボネート、ジエチルカーボネート、シクロカーボネート、ジフェニルカーボネート等が挙げられる。
【0039】
炭酸エステルと反応しうるポリオールとしては、例えば、上記低分子量ポリオールとして例示したポリオール;ポリエーテルポリオール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)、ポリエステルポリオール(ポリヘキサメチレンアジペート等)等の高分子量ポリオール(例えば、重量平均分子量500以上5,000以下)などが挙げられる。
【0040】
ポリオレフィンポリオールとしては、例えば、ポリイソブテンポリオール、水素添加(水添)ポリブタジエンポリオール、水素添加(水添)ポリイソプレンポリオール等が挙げられる。
【0041】
ポリオール(b2)に含まれるポリマーポリオール(好ましくはポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール及びポリオレフィンポリオール)の合計の含有率は、前記ポリオール(b2)中、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上であり、好ましくは100質量%以下である。
【0042】
親水性基を有するポリオールにおける親水性基としては、アニオン性基、カチオン性基、ノニオン性基等が挙げられ、親水性基を有するポリオールを用いることで、前記複合樹脂(A)の水分散性を向上することができる。前記親水性基を有するポリオールとしては、例えば、上記ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール及びポリオレフィンポリオール以外のポリオールを用いることができ、具体的には、アニオン性基を有するポリオール、カチオン性基を有するポリオール、及び、ノニオン性基を有するポリオールを使用することができる。これらの中でも、アニオン性基を有するポリオール又はカチオン性基を有するポリオールを使用することが好ましい。
【0043】
アニオン性基を有するポリオールとしては、例えば、カルボキシ基を有するポリオール及びスルホン酸基を有するポリオール等が挙げられる。
【0044】
カルボキシ基を有するポリオールとしては、例えば、2,2-ジメチロールプロピオン酸、2,2-ジメチロールブタン酸、2,2-ジメチロール酪酸、2,2-ジメチロール吉草酸等のヒドロキシ酸;及び前記カルボキシ基を有するポリオールと前記ポリカルボン酸との反応物などが挙げられる。前記ヒドロキシ酸としては、2,2-ジメチロールプロピオン酸が好ましい。
【0045】
スルホン酸基を有するポリオールとしては、例えば、5-スルホイソフタル酸、スルホテレフタル酸、4-スルホフタル酸、5-(4-スルホフェノキシ)イソフタル酸等のスルホン酸基を有するジカルボン酸;前記ジカルボン酸の塩と、前記芳香族構造含有ポリオールとを反応させて得られるポリエステルポリオールなどが挙げられる。
【0046】
カチオン性基を有するポリオールとしては、N-メチル-ジエタノールアミン;1分子中にエポキシを2個有する化合物と2級アミンとを反応させて得られるポリオール等の3級アミノ基を有するポリオールなどが挙げられる。
【0047】
ノニオン性基を有するポリオールとしては、ポリオキシエチレン構造を有するポリオール等が挙げられる。
【0048】
ポリオール(b2)に親水性基を有するポリオールが含まれる場合、その含有量は、ポリオール(b2)の合計100質量部中、好ましくは0.3質量部以上、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは2質量%以上、特に好ましくは5質量%以上であり、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。
【0049】
低分子量ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール等のアルカンジオール;シクロヘキサンジメタノール等のシクロアルカンジアルカノールなど;重合性不飽和基を有するポリオールなどが挙げられる。
重合性不飽和基を有するポリオールとしては、以下の式(1)で表される化合物及び式(2)で表される化合物が挙げられる。
【0050】
【化1】
[式(1)中、Rは、重合性不飽和基を含む原子団を有する側鎖を有する直鎖アルキレン基を表す。]
【0051】
【化2】
[式(2)中、R及びRは、それぞれ独立に、重合性不飽和基を含む原子団を有する側鎖を有していてもよいを表し、R1及びR3に含まれる重合性不飽和基を含む原子団の合計数は1つ以上である。Rは、炭素原子数1~20のアルキレン基を表す。]
【0052】
重合性不飽和基を含む原子団としては、ビニル基、ビニルオキシ基、(メタ)アクリロイル基等が挙げられる。R、Rは、重合性不飽和基を含む原子団を有する側鎖のほか、水酸基を有する側鎖を有していてもよい。
【0053】
、Rで表される直鎖アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブタンジイル基、ペンタンジイル基、ヘキサンジイル基、ヘプタンジイル基、オクタンジイル基、ノナンジイル基等が挙げられる。前記直鎖アルキレン基の炭素原子数は、1以上であり、好ましくは2以上であり、例えば50以下、好ましくは20以下、より好ましくは6以下、より好ましくは5以下、特に好ましくは2である。
【0054】
式(1)で表される化合物、式(2)で表される化合物において、重合性不飽和基を含む原子団を有する側鎖の個数は、1分子当たり、1個以上、好ましくは2個以上であり、例えば10個以下、好ましくは5個以下である。
【0055】
式(1)で表される化合物としては、例えば、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート〔ジメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート〕、トリメチロールメタン(メタ)アクリレート、ジメチロールメタンジ(メタ)アクリレート、トリエチロールメタン(メタ)アクリレート、ジエチロールメタンジ(メタ)アクリレート、トリエチロールプロパン(メタ)アクリレート、ジエチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリプロパノールメタン(メタ)アクリレート、ジプロパノールメタンジ(メタ)アクリレート、トリプロパノールプロパン(メタ)アクリレート、ジプロパノールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリブタノールメタン(メタ)アクリレート、ジブタノールメタンジ(メタ)アクリレート、トリブタノールプロパン(メタ)アクリレート、ジブタノールプロパンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0056】
式(2)で表される化合物としては、ビス(3-アクリロイロキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)メタン、1,2-ビス(3-アクリロイロキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)エタ、1,3-ビス(3-アクリロイロキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)プロパン、1,4-ビス(3-アクリロイロキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)ブタン、1,5-ビス(3-アクリロイロキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)ペンタン等が挙げられる。
【0057】
ポリイソシアネート(b2)としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート、クルードジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリエンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;シクロヘキサンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂環式構造含有ポリイソシアネートなどが挙げられる。
【0058】
ポリイソシアネート(b2)に含まれる-NCOと、ポリオール(b1)に含まれる-OHのモル比(NCO/OH)は、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.5以上、さらに好ましくは0.8以上であり、好ましくは5.0以下、より好ましくは3.0以下、さらに好ましくは2.0以下である。
【0059】
鎖伸長剤(b3)としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、エチレンジアミン、1,2-プロパンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン等のジアミン;N-ヒドロキシメチルアミノエチルアミン、N-ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、N-ヒドロキシプロピルアミノプロピルアミン、N-エチルアミノエチルアミン、N-メチルアミノプロピルアミン;ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のポリアミン;ヒドラジン、N,N’-ジメチルヒドラジン、1,6-ヘキサメチレンビスヒドラジン;コハク酸ジヒドラジッド、アジピン酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド;β-セミカルバジドプロピオン酸ヒドラジド等のヒドラジン化合物;ピペラジン、2,5-ジメチルピペラジン等の環状ポリアミン;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、サッカロース、メチレングリコール、グリセリン、ソルビトール等のグリコール;ビスフェノールA、4,4’-ジヒドロキシジフェニル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、水素添加ビスフェノールA、ハイドロキノン等のフェノール、及び水等が挙げられる。
【0060】
ウレタン樹脂(A2)は、ポリオール(b1)、ポリイソシアネート(b2)、必要に応じて用いる鎖伸長剤(b3)と、さらに重合性不飽和基を有するアルコール化合物(b4)との反応物であってもよい。
【0061】
重合性不飽和基を有するアルコール化合物(b4)に含まれる重合性不飽和基の個数は、1個以上であり、例えば20個以下、好ましくは15個以下、さらに好ましくは10個以下である。
【0062】
重合性不飽和基を有するアルコール化合物(b4)としては、モノアルコール化合物が挙げられ、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(ヒドロキシアルキル基の炭素原子数は、例えば、2~10、好ましくは2~5);トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート等のトリオールのジ(メタ)アクリレート化合物;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等のテトラオールのトリ(メタ)アクリレート化合物;トリオールのジ(メタ)アクリレート化合物及び前記テトラオールのトリ(メタ)アクリレート化合物等のポリアルコキシ(好ましくは、ポリエトキシ、ポリプロポキシ等)化物;トリオールのジ(メタ)アクリレート化合物及び前記テトラオールのトリ(メタ)アクリレート化合物等のブロックコポリマー均等物などが挙げられる。
【0063】
ウレタン樹脂(A2)がアニオン性基を有するものである場合、本発明のヒートシール剤は、塩基性化合物を含んでいてもよい。基性化合物としては、例えば、アンモニア、トリエチルアミン、モルホリン、モノエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン等の有機アミン;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等を含む金属水酸化物などが挙げられる。水性樹脂組成物の水分散安定性を向上させる観点から、塩基性化合物とアニオン性基とのモル比(塩基性基/アニオン性基)は、好ましくは0.5以上3.0以下、より好ましくは0.8以上2.0以下である。
【0064】
ウレタン樹脂(A2)がアニオン性基を有するものである場合、ウレタン樹脂(A2)の酸価は、好ましくは0.1mgKOH/g以上、より好ましくは5mgKOH/g以上、さらに好ましくは10mgKOH/g以上であり、好ましくは100mgKOH/g以下、より好ましくは70mgKOH/g以下、さらに好ましくは50mgKOH/g以下である。
本明細書にいう酸価は、原料組成に基づいてウレタン樹脂(A2)に含まれるアニオン性基の量を算出し、これに基づいて前記ウレタン樹脂(A2)1gを中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数として算出した理論値である。
【0065】
ウレタン樹脂(A2)がカチオン性基を有するものである場合、ヒートシール剤は、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸等のカルボン酸;酒石酸等のヒドロキシ酸;リン酸などの酸性化合物を含んでいてもよく、カチオン性基としての3級アミノ基は、その一部又は全部がジメチル硫酸、ジエチル硫酸、メチルクロリド、エチルクロリド等4級化剤により4級化されていてもよい。
【0066】
ウレタン樹脂(A2)がカチオン性基を有するものである場合、ウレタン樹脂(A2)のアミン価は、好ましくは2mgKOH/g以上50mgKOH/g以下、より好ましくは5mgKOH/g以上30mgKOH/g以下である。
本明細書にいうアミン価は、原料組成に基づいてウレタン樹脂(A2)に含まれるカチオン性基の量を算出し、これに基づいてウレタン樹脂(A2)1gを中和するのに必要な塩化水素のモル数(mmol)及び水酸化カリウムの式量(56.1g/mol)の積として算出した理論値である。
【0067】
ウレタン樹脂(A2)中、ウレア結合基量は、例えば1.0mol/g以下、好ましくは0.1mol/g以下、さらに好ましくは0.01mol/g以下であり、下限は0mol/gである。前記ウレア結合基量は、ウレタン樹脂(A2)の合成に用いた原料に基づき、理論値として算出することができる。
【0068】
ウレタン樹脂(A2)の重量平均分子量は、好ましくは3,000以上、より好ましくは5,000以上、さらに好ましくは10,000以上、いっそう好ましくは30,000以上であり、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは500,000以下、さらに好ましくは300,000以下である。
【0069】
本明細書において、重量平均分子量及び数平均分子量は、特記ない限り、下記条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される値である。
【0070】
測定装置 ;東ソー株式会社製 HLC-8320GPC
カラム ;東ソー株式会社製 TSKgel 4000HXL、TSKgel 3000HXL、TSKgel 2000HXL、TSKgel 1000HXL
検出器 ;RI(示差屈折計)
データ処理;東ソー株式会社製 マルチステーションGPC-8020modelII
測定条件 ;カラム温度 40℃
溶媒 テトラヒドロフラン
流速 0.35ml/分
標準 ;単分散ポリスチレン
試料 ;樹脂固形分換算で0.2質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(100μl)
【0071】
ウレタン樹脂(A2)のガラス転移温度は特に制限されないが、一例として-100℃以上120℃以下である。低温でのヒートシール性が良好となることから、60℃以下であることが好ましく、30℃以下であることがより好ましい。
【0072】
ウレタン樹脂(A2)のガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)により以下のようにして測定することができる。
示差走査熱量測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製DSC-7000、以下DSCとする)を用い、試料5mgを30mL/minの窒素気流下で室温から10℃/minで200℃まで昇温した後、10℃/minで-80℃まで冷却する。再び10℃/minで150℃まで昇温させてDSC曲線を測定し、二度目の昇温工程で観測される測定結果における低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状部分の曲線の勾配が最大になるような点で引いた接線との交点をガラス転移点とし、このときの温度をガラス転移温度とする。また、一度目の昇温で200℃まで昇温させているが、これはウレタン樹脂(A2)が十分に溶融する温度であればよく、200℃では不十分である場合は適宜調整する。同様に、冷却温度も-80℃では不十分な場合(ガラス転移温度がより低い場合など)には適宜調整する。
【0073】
ウレタン樹脂(A2)の含有量は、ビニル重合体(A1)1質量部に対して、好ましくは、0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1質量部以上であり、好ましくは100質量部以下、より好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは3質量部以下である。
【0074】
ビニル重合体(A1)及び前記ウレタン樹脂(A2)の合計の含有率は、複合樹脂(A)中、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上であり、上限は100質量%である。
【0075】
複合樹脂(A)において、ビニル重合体(A1)の表面の少なくとも一部をウレタン樹脂(A2)が被覆していることが好ましく、ビニル重合体(A1)の表面にウレタン樹脂(A2)の層が形成されていることが好ましい。ビニル重合体(A1)は、一般に疎水性が高く、そのままでは水性溶剤(B)に分散することが困難であるが、ウレタン樹脂(A2)がビニル重合体(A1)の表面の少なくとも一部を被覆していることで、後述する水性溶剤(B)への分散性が良好となる。ビニル重合体(A1)とウレタン樹脂(A2)とは、化学的に結合していてもよく、していなくともよい。
【0076】
ビニル重合体(A1)とウレタン樹脂(A2)とを複合樹脂(A)とすることで、種々の基材に対する接着強度に優れたヒートシール剤とすることができる。本発明のヒートシール剤が種々の基材に対するヒートシール性に優れる理由については定かではないが、以下のように推測される。本発明に用いられる複合樹脂(A)は、相対的に非極性基材への密着性が優れるビニル樹脂(A1)と、相対的に極性基材への密着性が優れるウレタン樹脂(A2)という異なる性質を持つ樹脂が複合化されているため、極性基材、非極性基材双方への密着性に優れる。また、複合化していない場合に比べてビニル重合体(A1)とウレタン樹脂(A2)間での相互作用が強い。ビニル重合体(A1)とウレタン樹脂(A2)が複合化されていない場合、ビニル樹脂(A1)とウレタン樹脂(A2)の混合は撹拌機などによる物理的分散に限られることから相互作用のムラが生じやすく、どちらかの基材との層間で容易に破断したり、塗膜の凝集力が低下するおそれがあるが、本発明ではこのような事態が抑制されていると考えられる。
【0077】
複合樹脂(A)は、ウレタン樹脂(A2)の存在下、水性媒体中でビニル単量体(a)を重合することにより製造することができる。ビニル単量体(a)は疎水性であるため、水性媒体中でウレタン樹脂(A2)と共存させることで、該ビニル単量体(a)の少なくとも一部がウレタン樹脂(B2)の内部に取り込まれ、この状態で重合反応を行うことで、本発明の複合樹脂(A)を製造することができる。複合樹脂(A)の合成に用いる水性媒体としては、後述する水性媒体(B)と同様のものを用いることができる。
【0078】
より具体的には、ウレタン樹脂(A2)は、水性媒体中に分散された状態(予備分散液)で、ビニル単量体(a)の重合に供されることが好ましい。ウレタン樹脂(A2)が水性媒体中に分散された予備分散液は、例えば、無溶剤下又は有機溶剤の存在下で、ポリオール(b1)及び前記ポリイソシアネート(b2)を反応させ、必要に応じて、さらに鎖伸長剤(b3)を反応させることにより製造することができる。有機溶剤は、安全性や環境に対する負荷低減の観点から、ウレタン樹脂(A2)の製造途中または製造後に、減圧留去等によってその一部または全部を除去してもよい。
【0079】
重合反応の際は、必要に応じて、後述する添加剤(C)を共存させてもよい。重合反応後に該添加剤(C)を添加してもよい。
【0080】
ビニル単量体(a)を重合する際、ラジカル重合開始剤を共存させることが好ましい。重合開始剤としては、光重合開始剤、熱重合開始剤を用いることができる。光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンジル、ミヒラーケトン、チオキサントン、アントラキノン、ベンゾイン、ジアルコキシアセトフェノン、アシルオキシムエステル、ベンジルケタール、ヒドロキシアルキルフェノン、ハロゲノケトン等が挙げられる。光重合開始剤は、必要に応じてメチルアミン、ジエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、トリブチルアミン等の第三アミンと組み合わせて使用してもよい。
【0081】
熱重合開始剤としては、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、4,4’-アゾビス(4-シアノ)吉草酸、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロライド等のアゾ化合物;ベンゾイルパーオキサイド、tert-ブチルハイドロパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシピバレート、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、ジ-tert-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、tert-ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシラウレート、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、クメンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、等の有機過酸化物;過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の無機過酸化物などの熱重合開始剤などを使用することができる。
【0082】
ラジカル重合開始剤の量は、ビニル単量体(a)の合計100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、さらに好ましくは0.5質量部以上であり、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。
【0083】
複合樹脂(A)は、水性媒体(B)中に分散されていることが好ましい。複合樹脂(A)の分散状態は、例えば、水性樹脂組成物における沈殿物の有無により確認することができる。
【0084】
複合樹脂(A)の配合量は、目的とする膜厚や塗工適性、併用する添加剤(C)等により適宜調整されうるが、一例として複合樹脂(A)と水性溶剤(B)の総量の1質量%以上80質量%以下である。
【0085】
(水性溶剤(B))
本発明のヒートシール剤に用いられる水性溶剤(B)としては、水、水に溶解する水溶性有機溶剤等が使用できる。水としては、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、または超純水を用いることができる。カビまたはバクテリアの発生を防止することができるため、長期保存の観点からは紫外線照射または過酸化水素添加等によって滅菌された水を用いることが好ましい。
【0086】
水溶性有機溶剤としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのグリコール類;ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオールなどのジオール類;ラウリン酸プロピレングリコールなどのグリコールエステル;ジエチレングリコールモノエチル、ジエチレングリコールモノブチル、ジエチレングリコールモノヘキシル、カルビトールなどのジエチレングリコールエーテル類;プロピレングリコールエーテル、ジプロピレングリコールエーテル、およびトリエチレングリコールエーテルを含むセロソルブなどのグリコールエーテル類;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、ブチルアルコール、ペンチルアルコールなどのアルコール類;スルホラン、エステル、ケトン、γ-ブチロラクトンなどのラクトン類、N-(2-ヒドロキシエチル)ピロリドンなどのラクタム類、グリセリンおよびそのポリアルキレンオキサイド付加物など、水性有機溶剤として知られる他の各種の溶剤などを挙げることができる。これらの水性有機溶剤は、単独または2種以上組み合わせて使用することができる。水を用いることが好ましいが、水のみでは基材への濡れ性が不十分な場合には、水とアルコールを併用することが好ましい。アルコールとしては、エタノール、イソプロパノールが好ましい。
【0087】
(添加剤(C))
本発明のヒートシール剤は、複合樹脂(A)、水性溶剤(B)に加え、添加剤(C)を含んでいてもよい。添加剤(C)としては、ワックス、フィラー、消泡剤、粘度調整剤、レベリング剤、乳化剤、分散安定剤、界面活性剤、粘着性付与剤、防腐剤、抗菌剤、防錆剤、酸化防止剤、架橋剤、硬化剤、硬化触媒、光安定剤、紫外線吸収剤、光触媒性化合物、染料、無機顔料、有機顔料、体質顔料、可塑剤、帯電防止剤等が挙げられる。
【0088】
(ワックス)
ワックスとしては、脂肪酸アミドワックス、カルバナワックス、ポリエチレンワックスやポリプロピレンワックス等のポリオレフィンワックス、パラフィンワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、みつろう、マイクロクリスタリンワックス、酸化ポリエチレンワックス、アマイドワックスなどのワックス、ヤシ油脂肪酸や大豆油脂肪酸などが挙げられる。これらは単独で使用してもよいし併用してもよい。これにより、耐ブロッキング性を向上させることができる。ヒートシール性を低下させずに耐ブロッキング性を向上させることができることから、ポリエチレンワックスを用いることが好ましい。
【0089】
ワックスの配合量は、用いる基材や目的とする特性により適宜調整され得るが、水性ヒートシール剤固形分100質量%全量に対し0.1~20質量%であることが好ましい。
ヒートシール性と耐ブロッキング性のバランスの観点から、3質量%以上15質量%以下であることがより好ましい。
【0090】
(フィラー)
本発明のヒートシール剤は、フィラーを含んでいてもよい。これにより、耐ブロッキング性を向上させることができる。また、本発明のヒートシール剤を塗工した積層体を高温下で保管した場合にヒートシール剤が流れ出し、ヒートシール層の膜厚が薄くなるのを抑制することもできる。フィラーとしては、シリカ、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、タルク、ウレタンビーズ、アクリルビーズ、メラミンビーズ等が挙げられ、単独または複数を組合わせて用いることができる。シリカ、アクリルビーズのいずれかまたは両方を用いることが好ましい。
【0091】
フィラーの形状は特に限定されないが、熱による変形の影響が少なく、塗膜中での分散の仕方によらず安定的な耐ブロッキング効果を得られることから球状であることが好ましい。フィラーの平均粒子径は、用いるフィラーにより適宜調整されるが、一例として0.5~10μmである。
【0092】
(消泡剤)
消泡剤としては、脂肪酸塩類、高級アルコール硫酸塩類、液体脂肪油硫酸エステル類、脂肪族アミン及び脂肪族アミドの硫酸塩類、脂肪族アルコールリン酸エステル類、二塩基性脂肪酸エステルのスルホン酸塩類、脂肪酸アミドスルホン酸塩類、アルキルアリルスルホン酸塩類、ホルマリン縮合のナフタリンスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類、ソルビタンアルキルエステル類、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル類、アクリル系ポリマー、シルコーン混合アクリル系ポリマー、ビニル系ポリマー、ポリシロキサン化合物などが挙げられる。消泡剤の添加量としては、水性ヒートシール剤全量の0.005重量%~0.1重量%が好ましい。
【0093】
<積層体>
本発明の積層体は、基材に本発明のヒートシール剤を塗布、乾燥させて得られる。本発明のヒートシール剤を適用可能な基材としては特に限定されず、通常包装材で使用されるような公知のフィルム、紙、金属箔などに好適に用いることができる。これら基材上に直接ヒートシール層(本発明のヒートシール剤の乾燥塗膜)を設けてもよいし、基材上に一層以上のプライマー層が設けられていてもよい。プライマー層を設ける場合、プライマー層の形成に用いられるプライマーは特に制限されず、公知のものを用いることができる。
【0094】
フィルムとしては、PET(ポリエチレンテレフタレート)、A-PET(非晶性ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、BOPP(2軸延伸ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PVC(ポリ塩化ビニル)、PS(ポリスチレン)、Ny(ナイロン)、EVOH(エチレン-ビニルアルコール共重合体)等を原料とするものが挙げられる。これらのフィルムはアルミなどの金属蒸着層、シリカやアルミナ、これらの二元蒸着等の金属酸化物の蒸着層を有するものであってもよい。本発明は、基材の種類を問わず、種々のフィルムに対して適用可能であり、A-PET(非晶性ポリエチレンテレフタレート)に対しても優れたヒートシール性を有する。
【0095】
紙としては、木材パルプ等の製紙用天然繊維を用いて公知の抄紙機にて製造されるものが挙げられる。抄紙条件は特に規定されない。製紙用天然繊維としては、針葉樹パルプ、広葉樹パルプ等の木材パルプ、マニラ麻パルプ、サイザル麻パルプ、亜麻パルプ等の非木材パルプ、およびそれらのパルプに化学変性を施したパルプ等が挙げられる。パルプの種類としては、硫酸塩蒸解法、酸性・中性・アルカリ性亜硫酸塩蒸解法、ソーダ塩蒸解法等による化学パルプ、グランドパルプ、ケミグランドパルプ、サーモメカニカルパルプ等を使用することができる。
【0096】
より具体的には各種印刷用紙、グラビア用紙、クラフト紙、ケント紙、コピー紙、更紙、新聞紙などの非塗工紙;微塗工紙;アート紙、片アート紙、コート紙、片コート紙、軽量コート紙などの塗工紙;上質紙;重量用、一般用、特殊用の両更クラフト紙;筋入りクラフト紙、片艶クラフト紙などの未ざらし包装紙;純白ロール紙;両更さらしクラフト紙、片艶さらしクラフト紙などのさらしクラフト紙;その他さらし包装紙;パラフィン紙などの樹脂含侵紙、ボール紙や板紙、これら紙にアルミニウム等の金属を蒸着した蒸着紙、これら紙とアルミニウム箔等の金属箔を貼り合わせた貼合紙などが挙げられるがこれに限定されない。
【0097】
金属箔としては、アルミニウム箔等が挙げられる。
【0098】
これら基材には印刷層が設けられていてもよい。印刷層はグラビアインキ、フレキソインキ、オフセットインキ、孔版インキ、インクジェットインク等各種印刷インキにより、従来ポリマーフィルムへの印刷に用いられてきた一般的な印刷方法で形成される。印刷層は、基材のヒートシール層側の面に設けられていてもよいし、他の面に設けられていてもよい。
【0099】
ヒートシール剤の塗工方法としては公知の方法が使用できる。例えばロールコーター、グラビアコーター、フレキソコーター、エアドクターコーター、ブレードコーター、エアナイフコーター、スクイズコーター、含浸コーター、トランスファロールコーター、キスコーター、カーテンコーター、キャストコーター、スプレイコーター、ダイコーター、オフセット印刷機、スクリーン印刷機等を使用できる。また塗工後オーブン等で乾燥工程を設けてもよい。
【0100】
乾燥方法としては、熱風、電熱、赤外線、電子線等の従来公知の手段を用いる事ができる。この時の加熱温度は50~250℃、加熱時間は0.1~30秒が好ましい。
【0101】
ヒートシール剤の塗布量は目的とするシール強度や基材により適宜調整されるが、一例として2.0g/m~5.0g/mである。
【0102】
<包装材>
本発明の包装材としては、本発明の積層体を袋状に成形し、本発明のヒートシール剤により設けられたヒートシール層同士をヒートシールした包装材、本発明の積層体を他の基材または積層体とヒートシールした包装材などが挙げられる。
【0103】
包装材のより具体的な態様としては、三方シール袋、四方シール袋、ガセット包装袋、ピロー包装袋、ゲーベルトップ型の有底容器、テトラクラッシク、ブリュックタイプ、チューブ容器、紙カップ、蓋材、ブリスターパック、プレススルーパッケージなどが挙げられる。また、本発明の包装材に易開封処理や再封性手段を適宜設けてあってもよい。
【0104】
本発明の包装材は、例えば食品、洗剤、薬剤を充填する包装材、日用品、医薬品を収納する包装材として工業的に使用することができる。具体的な用途としては、洗剤、薬剤として、洗濯用液体洗剤、台所用液体洗剤、浴用液体洗剤、浴用液体石鹸、液体シャンプー、液体コンディショナー、食品包装の蓋材、医薬用タブレット等が挙げられる。ブリスターパックやプレススルーパッケージとしては、薬、タブレット、歯ブラシ、乾電池、おもちゃ等が挙げられる。また、上記の容器を包装する2次包装材にも使用できる。
【実施例
【0105】
以下、本発明を具体的な合成例、実施例を挙げてより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の例において、「部」及び「%」は、特に断りがない限り、「質量部」及び「質量%」をそれぞれ表す。
【0106】
<樹脂の合成>
(合成例1:ポリエステルポリオール(1)の合成)
温度計、窒素ガス導入管、攪拌機を備えた反応容器中で窒素ガスを導入しながら、イソフタル酸35.4質量部、セバシン酸17.8質量部、アジピン酸7.8質量部、エチレングリコール6.2質量部、ネオペンチルグリコール22.9質量部、1,6-ヘキサンジオール11.7質量部及びジブチル錫オキサイド0.03質量部を仕込み180~230℃で酸価が1以下になるまで230℃で24時間重縮合反応を行い、ポリエステルポリオール(1)〔酸価0.6mgKOH/g、水酸基価42.5mgKOH/g〕を得た。
【0107】
(合成例2:ポリエステルポリオール(2)の合成)
温度計、窒素ガス導入管、攪拌機を備えた反応容器中で窒素ガスを導入しながら、イソフタル酸27.6質量部、テレフタル酸27.6質量部、エチレングリコール11.7質量部、ジエチレングリコール19.9質量部及びジブチル錫オキサイド0.03質量部を仕込み180~230℃で酸価が1以下になるまで230℃で24時間重縮合反応を行い、ポリエステルポリオール(2)〔酸価0.6mgKOH/g、水酸基価48.0mgKOH/g〕を得た。
【0108】
(合成例3:ポリエステルポリオール(3)の合成)
温度計、窒素ガス導入管、攪拌機を備えた反応容器中で窒素ガスを導入しながら、イソフタル酸30.9質量部、テレフタル酸30.9質量部、エチレングリコール14.2質量部、ネオペンチルグリコール23.9部及びジブチル錫オキサイド0.03質量部を仕込み180~230℃で酸価が1以下になるまで230℃で24時間重縮合反応を行い、ポリエステルポリオール(2)〔酸価0.6mgKOH/g、水酸基価85.5mgKOH/g〕を得た。
【0109】
(製造例1:ウレタン樹脂(1)の合成)
反応容器に合成例1のポリエステルポリオール(1)86.4質量部を減圧下100℃で脱水し、その後80℃まで冷却後、メチルエチルケトン75.8質量部を加え、攪拌し均一に混合した。次に、1,4-ブタンジオール3.0質量部2,2’-ジメチロールプロピオン酸6.1質量部を加え、次いでトリレンジイソシアネート19.4質量部を加えて、80℃で12時間反応させ、ウレタン化工程を実施した。イソシアネート値が0.1%以下になったのを確認し、n-ブタノール0.3質量部を加え、さらに2時間反応させた後、50℃まで冷却し、不揮発分=51.0質量%の親水基含有ポリウレタン樹脂(I)を得た。次いで、親水基含有ポリウレタン樹脂(I)に、トリエチルアミン4.8質量部を加え、イオン交換水395質量部をゆっくりと添加し水溶化を実施した。次いで減圧下、30~50℃にてメチルエチルケトンを除去し、不揮発分=23.0質量%のウレタン樹脂(1)を調製した。
【0110】
(製造例2:ウレタン樹脂(2)の合成)
反応容器に合成例2のポリエステルポリオール(2)56.3質量部を減圧下100℃で脱水し、その後80℃まで冷却後、メチルエチルケトン40.6質量部を加え、攪拌し均一に混合した。次に、2,2-ジメチロールプロピオン酸4.5質量部を加え、次いで、イソホロンジイソシアネート14.8質量部を加えて、80℃で12時間反応させ、ウレタン化工程を実施した。イソシアネート値が0.1%以下になったのを確認し、メタノール0.2質量部を加え、さらに2時間反応させた後、50℃まで冷却し、不揮発分=65.0質量%の親水基含有ポリウレタン樹脂(II)を得た。次いで、親水基含有ポリウレタン樹脂(I)に、アンモニア水2.4質量部を加え、イオン交換水297質量部をゆっくりと添加し水溶化を実施した。次いで減圧下、30~50℃にてメチルエチルケトンを除去し、不揮発分=22.5質量%のウレタン樹脂(2)を調製した。
【0111】
(製造例3:ウレタン樹脂(3)の合成)
反応容器に合成例2のポリエステルポリオール(2)56.3質量部を減圧下100℃で脱水し、その後80℃まで冷却後、メチルエチルケトン73.7質量部を加え、攪拌し均一に混合した。次に、2,2-ジメチロールプロピオン酸4.6質量部を加え、次いで、トリレンジイソシアネート16.0質量部を加えて、80℃で12時間反応させ、ウレタン化工程を実施した。イソシアネート値が0.1%以下になったのを確認し、メタノール0.2質量部を加え、さらに2時間反応させた後、50℃まで冷却し、不揮発分=51.0質量%の親水基含有ポリウレタン樹脂(II)を得た。次いで、親水基含有ポリウレタン樹脂(I)に、アンモニア水2.3質量部を加え、イオン交換水275質量部をゆっくりと添加し水溶化を実施した。次いで減圧下、30~50℃にてメチルエチルケトンを除去し、不揮発分=20.0質量%のウレタン樹脂(3)を調製した。
【0112】
(製造例4:ラテックス樹脂(1)の合成)
乳化剤としてニューコール261A[日本乳化剤(株)製]1質量部とイオン交換水200質量部を用いてブタジエン60質量部、スチレン37質量部、アクリル酸3質量部を過硫酸アンモニア(APS)0.5質量部でモノマー一括乳化重合(反応温度60℃)の条件下反応させて次に未反応モノマー除去の濃縮を行い、固形分45質量%のラテックス樹脂(1)を得た。
【0113】
(製造例5:ラテックス樹脂(2)の合成)
乳化剤としてニューコール261A[日本乳化剤(株)製]1質量部とイオン交換水200質量部を用いてイソプレン39質量部、スチレン58質量部、アクリル酸3質量部を過硫酸アンモニア(APS)0.5質量部でモノマー一括乳化重合(反応温度60℃)の条件下反応させて次に未反応モノマー除去の濃縮を行い、固形分45質量%のラテックス樹脂(2)を得た。
【0114】
<ヒートシール剤の調製>
(実施例1)
(実施例1:ラテックス複合ウレタン樹脂(1)の合成)
製造例1で得られたウレタン樹脂(1)229質量部にイオン交換水196質量部を加え、イソプレン36.9質量部、スチレン15.8質量部を過硫酸アンモニア(APS)0.3質量部でモノマー一括乳化重合(反応温度70℃)の条件下反応させて、次に未反応モノマー除去の濃縮を行い、水分量を調整後、固形分22質量%のラテックス複合ウレタン樹脂(1)を得た。これを実施例1-1のヒートシール剤とし、水とイソプロパノールの混合溶剤で希釈したものを実施例1-2のヒートシール剤とした。
【0115】
(実施例2)
(実施例2:ラテックス複合ウレタン樹脂(2)の合成)
製造例1で得られたウレタン樹脂(1)321質量部にイオン交換水126質量部を加え、イソプレン31.7質量部を過硫酸アンモニア(APS)0.2質量部でモノマー一括乳化重合(反応温度70℃)の条件下反応させて、次に未反応モノマー除去の濃縮を行い、水分量を調整後、固形分31質量%のラテックス複合ウレタン樹脂(2)を得た。これを実施例2-1のヒートシール剤とし、水とイソプロパノールの混合溶剤で希釈したものを実施例2-2のヒートシール剤とした。
【0116】
(実施例3)
(実施例3:ラテックス複合ウレタン樹脂(3)の合成)
製造例1で得られたウレタン樹脂(1)321質量部にイオン交換水126質量部を加え、イソプレン12.7質量部、スチレン19.0質量部を過硫酸アンモニア(APS)0.2質量部でモノマー一括乳化重合(反応温度70℃)の条件下反応させて、次に未反応モノマー除去の濃縮を行い、水分量を調整後、固形分32質量%のラテックス複合ウレタン樹脂(3)を得た。これを実施例3-1のヒートシール剤とし、水とイソプロパノールの混合溶剤で希釈したものを実施例3-2のヒートシール剤とした。
【0117】
(実施例4)
(実施例4:ラテックス複合ウレタン樹脂(4)の合成)
製造例1で得られたウレタン樹脂(2)223.8質量部にイオン交換水204.4質量部を加え、イソプレン50.4質量部を過硫酸アンモニア(APS)0.3質量部でモノマー一括乳化重合(反応温度70℃)の条件下反応させて、次に未反応モノマー除去の濃縮を行い、水分量を調整後、固形分40質量%のラテックス複合ウレタン樹脂(4)を得た。これを実施例4-1のヒートシール剤とし、水とイソプロパノールの混合溶剤で希釈したものを実施例4-2のヒートシール剤とした。
【0118】
(実施例5)
(実施例5:ラテックス複合ウレタン樹脂(5)の合成)
製造例1で得られたウレタン樹脂(3)302.1質量部にイオン交換水151.2質量部を加え、イソプレン15.5質量部、スチレン10.4質量部を過硫酸アンモニア(APS)0.2質量部でモノマー一括乳化重合(反応温度70℃)の条件下反応させて、次に未反応モノマー除去の濃縮を行い、水分量を調整後、固形分32質量%のラテックス複合ウレタン樹脂(5)を得た。これを実施例5-1のヒートシール剤とし、水とイソプロパノールの混合溶剤で希釈したものを実施例5-2のヒートシール剤とした。
【0119】
(比較例1)
製造例1で得られたウレタン樹脂(1)を比較例1-1のヒートシール剤とし、これを水とイソプロパノールの混合溶剤で希釈したものを比較例1-2のヒートシール剤として使用した。
【0120】
(比較例2)
製造例2で得られたウレタン樹脂(2)を比較例2-1のヒートシール剤とし、これを水とイソプロパノールの混合溶剤で希釈したものを比較例2-2のヒートシール剤として使用した。
【0121】
(比較例3)
製造例4で得られたラテックス樹脂(1)を比較例3-1のヒートシール剤とし、これを水とイソプロパノールの混合溶剤で希釈したものを比較例3-2のヒートシール剤として使用した。
【0122】
(比較例4)
製造例5で得られたラテックス樹脂(2)を比較例4-1のヒートシール剤とし、これを水とイソプロパノールの混合溶剤で希釈したものを比較例4-2のヒートシール剤として使用した。
【0123】
<評価>
(構成1:紙/紙)
サテン金藤N片面アート紙(王子製紙社製)の非コート面に、実施例1-1のヒートシール剤を5.0g/m(固形分)となるようバーコーターを用いて塗布した後、100℃で30秒乾燥させてヒートシール層を形成した。続いて、同様にしてヒートシール層を形成した片アート紙と、ヒートシール層同士を対向させて重ね合わせ、100℃、2Kgf/cm、1秒でヒートシールしてテストピースを作成した。ヒートシールテスターの温度を140℃、180℃に変更した以外は同様にしてテストピースを作成した。さらに用いるヒートシール剤を実施例2-1~5-1、比較例1-1~4-1に換えて同様にテストピースを作成した。
【0124】
作成したテストピースの接着強度を、EZ test(島津製作所製小型卓上試験機)を用い、剥離速度:200mm/分、剥離形態:T型、剥離幅15mmの条件で測定し、以下のようにして3段階で評価し、表1、2にまとめた。
○:4(N/15mm)以上
△:3(N/15mm)以上(4N/15mm)未満
×:3(N/15mm)未満
【0125】
(構成2:紙/PVC)
コート紙(大和製紙社製、ユトリログロスマット76.5Kg)に、実施例1-2のヒートシール剤を3.0g/m(固形分)となるようにバーコーターを用いて塗布した後、100℃で20秒乾燥させてヒートシール層を形成した。続いて膜厚250μmのPVCシート(住友ベークライト株式会社製、VSS-F120トウメイ011)とコート紙とを、ヒートシール層を介して重ね合わせ、100℃、1kgf/cm、1秒間でヒートシールしてテストピースを作成した。ヒートシールテスターの温度を120℃、140℃に変更した以外は同様にしてテストピースを作成した。さらに用いるヒートシール剤を実施例2-2~5-2、比較例1-2~4-2に換えて同様にテストピースを作成した。
【0126】
作成したテストピースのコート紙とPVCシートの間を剥離し、剥離界面の状態を観察して以下の3段階で評価し、結果を表1、2にまとめた。
○:コート紙内部で破断し、ヒートシール層にコート紙が接着している面積が剥離面積の半分以上
△:コート紙内部で破断しているが、ヒートシール層にコート紙が接着している面積が剥離面積の半分未満
×:ヒートシール層とPVCシートの界面で剥離
【0127】
(構成3:紙/A-PET)
コート紙(大和製紙社製、ユトリログロスマット76.5Kg)に、実施例1-2のヒートシール剤を3.0g/m(固形分)となるようにバーコーターを用いて塗布した後、100℃で20秒乾燥させてヒートシール層を形成した。続いて膜厚250μmのA-PETシート((株)中谷商会製、NP-20A)とコート紙とを、ヒートシール層を介して重ね合わせ、110℃、1kgf/cm、1秒間でヒートシールしてテストピースを作成した。ヒートシールテスターの温度を130℃、150℃に変更した以外は同様にしてテストピースを作成した。さらに用いるヒートシール剤を実施例2-2~5-2、比較例1-2~4-2に換えて同様にテストピースを作成した。
【0128】
作成したテストピースのコート紙とA-PETシートの間を剥離し、剥離界面の状態を観察して以下の3段階で評価し、結果を表1、2にまとめた。
○:コート紙内部で破断し、ヒートシール層にコート紙が接着している面積が剥離面積の半分以上
△:コート紙内部で破断しているが、ヒートシール層にコート紙が接着している面積が剥離面積の半分未満
×:ヒートシール層とA-PETシートの界面で剥離
【0129】
(構成4:硬質アルミ箔/PVC)
膜厚25μmの硬質アルミ箔(東洋アルミニウム(株)社製)に、実施例1-2のヒートシール剤を4.0g/m(固形分)となるようバーコーターを用いて塗布した後、180℃で10秒乾燥させてヒートシール層を形成した。続いて膜厚250μmのPVCシート(住友ベークライト株式会社製、VSS-1202)と硬質アルミ箔とを、ヒートシール層を介して重ね合わせた。エンボス加工用のヒートシール部を有するヒートシールテスターを用い、100℃、0.3MPa、1秒間でヒートシールしてテストピースを作成した。ヒートシールテスターの温度を140℃、180℃に変更した以外は同様にしてテストピースを作成した。さらに用いるヒートシール剤を実施例2-2~5-2、比較例1-2~4-2に換えて同様にテストピースを作成した。
【0130】
作成したテストピースの接着強度を、EZ test(島津製作所製小型卓上試験機)を用い、剥離速度:100mm/分、剥離形態:180°、剥離幅15mmの条件で測定し、以下のようにして3段階で評価し、表1、2にまとめた。
○:8(N/15mm)以上
△:4(N/15mm)以上8(N/15mm)未満
×:4(N/15mm)未満
【0131】
【表1】
【0132】
【表2】
【0133】
表中の(a1)/(a2)はビニル樹脂(A)の合成に用いたジエン化合物(a1)とビニル化合物(a2)の配合比である。実施例、比較例から明らかなように、本発明のヒートシール剤は種々の基材に対して良好なヒートシール性を示した。一方、ビニル重合体(A1)やウレタン樹脂(A2)単独で用いた場合は、基材によってヒートシール性が不十分であった。
【要約】
本発明は、複合樹脂(A)と、水性溶剤(B)と、を含み、複合樹脂(A)がビニル重合体(A1)とウレタン樹脂(A2)とを含むことを特徴とするヒートシール剤、基材上に当該ヒートシール剤の乾燥塗膜を有する積層体、当該積層体を用いてなる包装材を提供する。本発明により、紙、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、金属箔といった種々の基材間のヒートシール性に優れた水性のヒートシール剤、当該ヒートシール剤を用いてなる積層体、包装材を提供できる。