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特許7120516ZIF系粉末を含む白色顔料、高分子樹脂フィルムおよび白色顔料を使用して媒質の色を変更する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】ZIF系粉末を含む白色顔料、高分子樹脂フィルムおよび白色顔料を使用して媒質の色を変更する方法
(51)【国際特許分類】
   C09C 1/04 20060101AFI20220809BHJP
   C09C 3/08 20060101ALI20220809BHJP
   C08K 9/04 20060101ALI20220809BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20220809BHJP
   C09B 57/10 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
C09C1/04
C09C3/08
C08K9/04
C08L101/00
C09B57/10
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020508560
(86)(22)【出願日】2018-08-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-05
(86)【国際出願番号】 KR2018009403
(87)【国際公開番号】W WO2019035664
(87)【国際公開日】2019-02-21
【審査請求日】2020-02-17
(31)【優先権主張番号】10-2017-0103628
(32)【優先日】2017-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0095280
(32)【優先日】2018-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パク、キョスン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジュンクン
(72)【発明者】
【氏名】ウー、ヒョンス
【審査官】仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-512891(JP,A)
【文献】国際公開第2017/050218(WO,A1)
【文献】特開2000-344903(JP,A)
【文献】E.M.Mahdi,Mxed-matrix membranes of zeolitic imidazolate framework (ZIF-8)/Matrimid nanocomposite: Thermo-mechanical stability and viscoelasticity undeperpinning membrane separation performance,Journal of Membrane Science,498,UK,2015年09月30日,276-290
【文献】Yichang Pan,Rapid synthesis of zeolitic imidazolate framework-8 (ZIF-8) nanocrystals in an aqueous system,Chemical Communications,47,2011年02月21日,2071-2073
【文献】Ming He,Synthesis of zeolitic imidazolate framework-7 in a water/Ethanol mixture and its Ethanol-induced reversible phase transition,CHEMPLUSCHEM,78,2013年07月11日,1222-1225
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09C 1/04
C08K 9/04
C08L 101/00
C09B 57/10
C09C 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜鉛(Zn)とイミダゾール系の有機物が結合を成す構造のZIF系(Zeolitic Imidazolate framework)粉末を含む、呼吸器を介した吸入用白色顔料の製造方法であって、
前記ZIF系粉末は、前記吸入用白色顔料の全体重量を基準として80~100重量%含まれ、
前記ZIF系粉末は、硝酸亜鉛7水和物をエタノールおよびアンモニア水に溶解し、前記イミダゾール系の有機物をエタノールに溶解し、調整された溶液を混合することにより製造され、
前記吸入用白色顔料が吸入によって肺に入ると、前記吸入用白色顔料は酸性条件下で分解される、
呼吸器を介した吸入用白色顔料の製造方法
【請求項2】
前記ZIF系(Zeolitic Imidazolate framework)粉末は、
亜鉛(Zn)とイミダゾールが結合した化合物、
亜鉛(Zn)と2-メチルイミダゾールが結合した化合物、および
亜鉛(Zn)とベンズイミダゾールが結合した化合物
よりなる群から選ばれる1種以上である、
請求項1に記載の、呼吸器を介した吸入用白色顔料の製造方法
【請求項3】
前記ZIF系(Zeolitic Imidazolate framework)粉末は、亜鉛(Zn)とイミダゾール系有機物の窒素原子が配位結合を形成した有機-無機複合体を含む、
請求項1または2に記載の、呼吸器を介した吸入用白色顔料の製造方法
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の、呼吸器を介した吸入用白色顔料の製造方法を含む高分子樹脂フィルムの製造方法であって、
前記高分子樹脂フィルムは、高分子樹脂
を含む、
高分子樹脂フィルムの製造方法
【請求項5】
前記高分子樹脂は、ポリアクリロニトリル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリイミド、ポリアミド、ポリビニルクロリド、ポリエチレンオキシドおよびポリプロピレンオキシドよりなる群から選ばれる1種以上の高分子樹脂を含む、
請求項4に記載の高分子樹脂フィルムの製造方法
【請求項6】
前記高分子樹脂フィルムは、前記呼吸器を介した吸入用白色顔料1重量%~30重量%を含む、
請求項4または5に記載の高分子樹脂フィルムの製造方法
【請求項7】
請求項1から3のいずれか1項に記載の、呼吸器を介した吸入用白色顔料の製造方法を含む方法であって、前記方法は、前記吸入用白色顔料を含む顔料組成物を使用して媒質の色を変更する
方法。
【請求項8】
前記顔料組成物において、呼吸器を介した吸入用白色顔料の含量は、重量比で0.5%以上99.5%以下の範囲で含まれる、
請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
本出願は、2017年8月16日付けの韓国特許出願第10-2017-0103628号および2018年8月16日付けの韓国特許出願第10-2018-0095280号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、ZIF系粉末を含む白色顔料、高分子樹脂フィルムおよびこれを使用して媒質の色を変更する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
無機顔料、特に二酸化チタン顔料は、各種マトリックス内に漂白剤(whitener)、着色剤(tinting agent)または不透明剤(opacifier)として混入されることがある。二酸化チタンは、その高い屈折率に起因して、光を特に効率的に散乱させ、したがって、これは、塗料およびコーティング、プラスチック、紙および繊維への適用のための最も重要な白色顔料として世界で最も広く用いられている。
【0004】
また、二酸化チタンを摂取する場合にも、毒性がないので、歯磨き粉、ペイント、プラスチック用顔料として年間数兆ウォン台の売上高を上げる材料の一つである。
【0005】
しかしながら、最近、ヨーロッパ環境保護庁(EU EPA)からこのような二酸化チタンが呼吸を通じて肺に入る場合、発癌の可能性があるという問題が提起されるに伴い、潜在的な発癌物質と指定される可能性がある。
【0006】
これは、二酸化チタンは、安定性が高い物質であって、一般的な条件で分解されないので、呼吸器に沈着される場合、分解されずに、肺の内部にそのまま付着しているようになることによって、肺に微細な炎症を起こし、このような炎症が癌細胞に転移する可能性が高いということである。
【0007】
現在までは、吸入に起因して癌を起こす物質として最も広く知られている物質は、石綿であり、石綿もやはり経口に摂取する場合には大きな問題を起こさないが、石綿が前記説明したように、呼吸器を通じて肺に入る場合、内部で分解されずに、肺に付着して、炎症反応を起こし、これが癌に転移すると報告されているので、前記主張に信憑性を加えている。
【0008】
したがって、吸入時にも毒性がない安全な白色顔料の必要性が切実であるのが現況である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記のような従来技術の問題点と過去から要請されてきた技術的課題を解決することを目的とする。
【0010】
具体的に、本発明の目的は、呼吸器内部の条件で分解される物質を白色顔料として使用して、吸入時にも毒性がない安全な白色顔料を提供することにある。
【0011】
また、本発明の他の目的は、吸入時にも毒性がない安全な白色顔料を含む高分子樹脂フィルムを提供することにある。
【0012】
また、本発明のさらに他の目的は、吸入時にも毒性がない安全な白色顔料を使用して、媒質の色を変更する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
このような目的を達成するための白色顔料は、亜鉛(Zn)とイミダゾール系の有機物が結合を成す構造のZIF系(Zeolitic Imidazolate framework)粉末を含むことを特徴とする。
【0014】
前記ZIF系粉末は、金属有機構造体(Metal organic frameworks:MOFs)の一種であって、前記金属有機構造体は、金属原子または金属クラスターとこれらを配位結合で連結する有機連結体から構成される微細多孔性(microporous)結晶材料であって、比較的新しいハイブリッド有機-無機物質である。
【0015】
この物質の気孔サイズおよび物理/化学的性質は、適切な金属原子および有機連結体の選択により容易に調節が可能である。このような特別な性質があるため、ガス貯蔵および/または吸収、触媒作用、および分離膜等としての潜在的応用可能性を示してきた。
【0016】
一方、ゼオライト-イミダゾレート構造体(Zeolitic-imidazolate frameworks:ZIFs)は、イミダゾレート(またはイミダゾレート誘導体)リガンドに連結された金属イオン(一般的に亜鉛またはコバルト)から構成される。ZIF系物質の金属-連結体-金属の結合角(ca.145°)は、数多くのゼオライトで発見されるSi-O-Siの結合角に近いが、その構成元素において明確な差異を有する。したがって、このようなZIF系物質は、超微細多孔性と共に、優れた熱および化学的安定性を有しているので、注目を受けており、産業分野において広く適用されてきた。
【0017】
しかしながら、前記で説明したように、ZIF系物質は、ガス分離、貯蔵吸収、触媒、化学センサー等に使用されて来ただけである。
【0018】
ただし、最近、一部の研究において薬物伝達材料としてZIF系物質が用いられるという内容が発表され、この過程で動物において毒性を示さないという事実も発表された。特に癌細胞は、弱い酸性を呈しているが、癌細胞の周囲でZIF系物質が溶解しつつ、ZIF系物質内にある抗癌剤を癌細胞に正確に伝達する機能を有しているという研究も発表された。
【0019】
これより、本発明では、ZIF系物質が有している酸性で容易に溶解する特性を用いて、肺に蓄積されない白色顔料を開発した。
【0020】
すなわち、従来の二酸化チタンや、ゼオライト等は、酸性条件で分解されないところ、吸入を通じて肺に入る場合、分解されずに、肺に沈着される問題があるが、前記ZIF系物質を使用する場合、血中の二酸化炭素に起因して、弱酸性を呈している肺細胞で前記ZIF系粉末が容易に分解して、粒子が肺に付着していないところ、炎症を起こさない可能性が高いため、発癌可能性を顕著に低減することができることを確認して、本発明を完成するに至った。
【0021】
一般的に、ZIF系物質は、Cd、Zn、Co、B、Mg、Cu、Mnのうち一つ以上の金属イオンとイミダゾール環の1、3番の窒素が金属イオンと結合し得るように、水素以外に他の官能基で置換されないイミダゾール誘導体と結合して形成される。
【0022】
このうち白色を呈しており、知られた毒性がない金属からなるZIF系物質の一部の群が白色顔料として適用可能である。また、弱酸性の条件、特に肺の静脈血で容易に分解される特性を有し、吸入毒性がないものと予想されるZIF系物質を分類すると、次の通りである:(1)Znイオンから構成されること。(2)スルホネート、アミン、ハロゲンのように肺炎症を起こす官能基を有しないイミダゾールから構成されること。(3)二酸化チタンに比べて価格の差が大きくないこと。
【0023】
これらの条件をすべて満たすZIF系物質は、Znとイミダゾール、2-アルキルイミダゾール、ベンズイミダゾールのような物質が挙げられる。
【0024】
しかしながら、今までZIF系物質は、主にジメチルホルムアミドやジメチルアセトアミド、ジエチルホルムアミド、N-メチルピロリジンのようなアミド系溶媒を用いて加熱反応を通じて合成された。しかしながら、この場合、ZIF系物質自体は、白色を呈するが、溶媒の加熱過程で作られるアミンのような不純物が分解されることによって呈する色に起因して淡い黄色あるいは茶色を有していた。
【0025】
これより、本出願の発明者らは、鋭意研究を重ねたところ、(1)室温あるいは低温で反応し、(2)アミド系溶媒を使用しない方法でZn-ZIFを製造する場合、不純物の発生なしに純粋な白色を呈する収得物を得ることができるという事実を確認し、したがって、このような方法で製造されたZIF系粉末を白色顔料に代替することができることを明らかにした。
【0026】
このようなZIF系粉末の製造方法は、例えば、エタノールに硝酸亜鉛7水和物を完全に溶解し、アンモニア水をこの溶液に追加する。他の容器にエタノールとベンズイミダゾールを完全に溶かした後、前記で準備した溶液と混合する。混合直ちに、白色のエマルジョンが生じ、発生したエマルジョンを撹拌した後、遠心分離機を用いて白色固体状態のZIF系粉末を収得することができる。
【0027】
従来、このようなZIF系粉末は、必要な水準の結晶性と多孔性ネットワークを形成するために長時間が必要とされる小規模(small scale)の熱水法または溶媒熱合成法で製造されたが、最近には、ZIF系粉末を大量で生産するために、マイクロ波または超音波を用いたり、電気的/機械的方法を結合する試みが続いている。また、ZIF系粉末を大量で生産するための反応器を再設計する方式の接近も行われている。一例として、Room-Temperature Synthesis of ZIF-8:The Coexistence of ZnO Nanoneedles(Chem.Mater.2011,23,3590-3592)では、ボールミルを使用して容易にZIF-8を大量生産することができると発表したことがあり、Faustini et al.は、多様な種類のMOFsを短時間内に連続的に合成し得る微細流体的方法を提案した(M.Faustini et al.Microfluidic approach toward continuous and ultrafast synthesis of metal-organic framework crystals and hetero structures in confined microdroplets,J.Am.Chem.Soc.135(2013)14619-14626)。
【0028】
ここで、本発明に使用されるZIF系粉末は、限定されるものではなく、前記純粋な白色を呈する収得物を収得し得る条件を満たすように修正して、前記に開示された多様な製造方法により製造される得ることはもちろんである。
【0029】
一方、本発明による白色顔料には、これらのZIF系粉末のうち、前記で説明したように、亜鉛(Zn)とイミダゾールが結合した化合物、亜鉛(Zn)と2-メチルイミダゾールが結合した化合物、および亜鉛(Zn)とベンズイミダゾールが結合した化合物よりなる群から選ばれる1種以上が好ましく使用することができ、詳細には、亜鉛(Zn)と、下記化学式で表されるイミダゾール系有機物のうち一つ以上が結合した化合物が好ましく使用することができる。
【0030】
【化1】
【0031】
このようなZIF系粉末において、前記亜鉛(Zn)は、上述したイミダゾール系有機物の窒素原子に配位結合した構造を有し得る。
【0032】
前記ZIF系粉末の形状は、前記製造方法によって多様に得られ、限定されるものではないが、例えば、球形、菱形、六面体形、または棒形であってもよい。この際、前記白色顔料として使用されるZIF系粉末の形状は、詳細には、球形または六面体形であってもよい。
【0033】
このようなZIF系粉末は、白色顔料として使用されるとき、人体への被害程度を考慮して、白色顔料の全体重量を基準として80~100重量%で含まれ得、詳細には、ZIF系粉末が100重量%であって、ZIF系粉末だけから構成されてもよい。
【0034】
一方、前記ZIF系粉末が100重量%未満で含まれる場合、その他の構成は、従来白色顔料として使用できる物質に限定されず、例えば、二酸化チタン(TiO)のような物質が共に使用できる。
【0035】
一方、本発明は、また、前記白色顔料および高分子樹脂を含む高分子樹脂フィルムを提供することができる。
【0036】
上述したように、前記亜鉛(Zn)とイミダゾール系の有機物が結合を成す構造のZIF系(Zeolitic Imidazolate framework)粉末を含む白色顔料を高分子樹脂と混合または分散することによって、最終的に製造される高分子樹脂フィルムの色をより容易に調節することができるが、前記白色顔料は、弱酸性の条件、特に肺の静脈血で容易に分解される特性を有し、実質的に吸入毒性がない特性を有するようになって、二酸化チタン等の従来の白色顔料を含む高分子材料等を代替することができる。
【0037】
前記高分子樹脂フィルムに含まれる高分子樹脂の種類が大きく限定されるものではないが、例えばポリアクリロニトリル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリイミド、ナイロン等のポリアミド、ポリビニルクロリド、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、これらの2種以上の混合物、これらの2種以上の共重合体、またはこれらの2種以上の複合体(composite)であってもよい。
【0038】
また、前記高分子樹脂フィルムのうち前記白色顔料の含量が大きく限定されるものではなく、前記高分子樹脂フィルムが使用される具体的な用途等によってその含量が変わることができ、例えば前記高分子樹脂フィルムは、前記白色顔料1重量%~30重量%を含むことができる。
【0039】
また、本発明は、前記白色顔料を含む顔料組成物を使用して媒質の色を変更する方法を提供する。
【0040】
この際、前記媒質は、プラスチック、水溶性ゲル、ペースト、塗料、コーティング液等が挙げられる。
【0041】
また、前記顔料組成物には、ZIF系粉末の他に、白色以外の色、例えば、赤色、青色、緑色等を呈するその他の顔料がさらに含まれ得る。
【0042】
一方、前記顔料組成物において白色顔料の含量は、重量比で0.5%以上99.5%以下の範囲で含まれ得、このようなZIF系粉末の含量と、その他に含まれる物質、例えば、その他の顔料によって媒質の色が決定され得る。
【0043】
また、ZIF系粉末が白色顔料として使用されるとき、媒質の基材の特性によって、媒質には、様々な添加剤、例えば、分散剤、光安定剤等が共に追加され得るが、これは、必須の要素ではない。
【発明の効果】
【0044】
以上で説明したように、本発明による白色顔料は、ZIF系粉末を含むことによって、水分と熱に安定し、弱酸性の条件で分解されて、水に溶解可能な状態になるので、白色顔料の使用によって人体の呼吸器の内部に入る場合、血中の二酸化炭素のため、弱酸性を呈している肺細胞で容易に分解されて、肺に付着した状態で炎症を起こさない可能性が高いので、吸入毒性がない安全な白色顔料として機能することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】ZIF-8の粉末写真である。
図2】ZIF-8の粉末写真である。
図3】ZIF-8粉末を弱酸性溶液に投入した直後の写真である。
図4】ZIF-8粉末を弱酸性溶液に投入した後、5秒間20kHzの音波を使用して音波処理(sonication)を行った後の写真である。
図5】ZIF-8粉末を弱酸性溶液に投入した後、5秒間20kHzの音波を使用して音波処理を行った後の写真である。
図6】Alを弱酸性溶液に投入した後、10分間20kHzの音波を使用して音波処理を行った後の写真である。
図7】TiOを弱酸性溶液に投入した後、10分間20kHzの音波を使用して音波処理を行った後の写真である。
図8】実施例3および比較例3のそれぞれで得られた高分子樹脂分散液および高分子樹脂フィルムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下では、本発明による実施例を参照して説明するが、これは、本発明の更なる容易な理解のためのものであり、本発明の範疇がそれによって限定されるわけではない。
【0047】
[実施例1および2並びに比較例1および2:白色顔料の製造]
<実施例1>
エタノール30mlに硝酸亜鉛7水和物0.5gを完全に溶解し、アンモニア水5mlをこの溶液に追加した。他の容器にエタノール10mlとベンズイミダゾール0.3gを完全に溶かした後、前記で準備した溶液と混合した。混合直ちに、白色のエマルジョンが生じ、発生したエマルジョンを10分間撹拌した後、遠心分離機を用いて白色固体状態のZIF-8粉末を収得した。
【0048】
このようなZIF-8粉末の写真を図1に示した。
図1を参照すると、ZIF-8は、固体粉末状態で白色を呈することを確認することができた。
【0049】
<実施例2>
ZIF-8粉末もやはり、前記実施例1と類似した方法で合成した。
【0050】
このようなZIF-8粉末の写真を図2に示した。
図2を参照すると、ZIF-8もやはり、粉末状態で白色を呈することを確認することができる。
【0051】
<比較例1>
Al粉末を準備した。
【0052】
<比較例2>
TiO粉末を準備した。
【0053】
[実験例1および2]
<実験例1:弱酸性水溶液で分解可否の確認>
前記実施例1のZIF-8粉末、実施例2のZIF-8粉末、比較例1のAl粉末、および比較例2のTiO粉末をそれぞれ0.5gずつ人体の肺と類似した条件である弱酸性水溶液(pH:6)に入れ、分解可否を確認し、これを図3図7に示した。
【0054】
図3図7を参照すると、比較例1のAl粉末、および比較例2のTiO粉末は、変化がないのに対し、前記ZIF系粉末は、完全に分解されて、溶解することが分かる。
【0055】
<実験例2:吸入毒性の評価>
実施例1で製造されるZIF-8に対して、OECDガイドライン436(Acute Inhalation Toxicity-Acute Toxic Class Method)に従って吸入毒性実験を行った。吸入チャンバー(inhalation chamber)内に実験用げっ歯類を雌雄それぞれ3匹ずつ入れ、前記実験体の鼻に試料投入マスクを連結した後、水を媒介として利用したZIF-8エアロゾルを発生させて、実験体に投入した。投入濃度は、5mg/Lに設定し、4時間投入し、14日間実験体の状態を観察し、これらのうち一匹が死亡したことを確認した。
【0056】
その結果、実施例1のZIF-8は、LC50(吸入時に50%が死亡する濃度)が5.2mg/Lと非危険物群に属することを確認された。
【0057】
[実施例3および比較例3:高分子樹脂フィルムの製造]
<実施例3>
実施例1のZIF-8粉末とポリアクリロニトリル樹脂がそれぞれ2重量%および18重量%になるように、ジメチルホルムアミドに分散し、これから高分子樹脂フィルムを製造した。
【0058】
<比較例3>
ポリアクリロニトリル樹脂が20重量%になるように、ジメチルホルムアミドに分散し、これから高分子樹脂フィルムを製造した。
【0059】
図8に示されたように、比較例3の高分子樹脂フィルムは、淡い黄色を呈するのに対し、実施例3の高分子樹脂分散液は、不透明な白色を呈しており、最終的に提供される高分子樹脂フィルムも不透明な白色を示すことが確認された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8