(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】成膜装置、成膜方法及びこれを用いる有機EL表示装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20220809BHJP
C23C 14/50 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
H01L21/68 R
C23C14/50 A
(21)【出願番号】P 2018160255
(22)【出願日】2018-08-29
【審査請求日】2020-04-23
(31)【優先権主張番号】10-2017-0180325
(32)【優先日】2017-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】593075418
【氏名又は名称】株式会社アオイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100131392
【氏名又は名称】丹羽 武司
(74)【代理人】
【識別番号】100125357
【氏名又は名称】中村 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100131532
【氏名又は名称】坂井 浩一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155871
【氏名又は名称】森廣 亮太
(74)【代理人】
【識別番号】100100549
【氏名又は名称】川口 嘉之
(72)【発明者】
【氏名】柏倉 一史
(72)【発明者】
【氏名】石井 博
(72)【発明者】
【氏名】細谷 映之
【審査官】三浦 みちる
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-176124(JP,A)
【文献】国際公開第2010/106958(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/199759(WO,A1)
【文献】国際公開第2005/091683(WO,A1)
【文献】特開2016-085460(JP,A)
【文献】特開2014-120740(JP,A)
【文献】特開平05-343507(JP,A)
【文献】特開2019-102801(JP,A)
【文献】特開2019-102802(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
C23C 14/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスクを介して基板に成膜を行うための成膜装置であって、
前記基板の第1辺の周縁部を支持する第1支持部材と、前記基板の前記第1辺に対向する第2辺の周縁部を支持する第2支持部材と、を含む基板保持ユニットと、
前記基板の上方に設けられ、前記基板を吸着するための静電チャックと、
前記基板保持ユニット及び前記静電チャックを駆動するための駆動部と、を備え、
前記第1支持部材及び前記第2支持部材のそれぞれは、基板支持面部と、弾性体部を介して前記基板支持面部に接続され、前記駆動部によって駆動される軸部と、を有し、
前記第1支持部材及び前記第2支持部材のそれぞれの
前記基板支持面
部が
、前記弾性体部を構成する板スプリングの弾性変形によって、前記軸部に対して前記静電チャックの吸着面に交差する方向に弾性的に変位する
成膜装置。
【請求項2】
前記第1支持部材及び前記第2支持部材のそれぞれの前記基板支持面
部の高さが変化する請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記弾性体部は前記静電チャックからの加圧力によって前記方向に弾性変位する請求項
1又は2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記第1支持部材の前記弾性体部の長さは前記第2支持部材の前記弾性体部の長さより長い請求項
1乃至
3のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記第1支持部材の前記弾性体部の弾性係数は前記第2支持部材の前記弾性体部の弾性係数より大きい請求項
1乃至
4のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項6】
前記第1支持部材は前記第1辺に沿って並ぶ複数の支持部材を含み、前記第2支持部材は前記第2辺に沿って並ぶ複数の支持部材を含む
請求項
1乃至
5のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項7】
前記基板保持ユニットは、前記基板の前記第1辺及び前記第2辺と交差する第3辺の周縁部を支持する第3支持部材と、前記基板の前記第3辺と対向する第4辺の周縁部を支持する第4支持部材とをさらに含み、
前記第3支持部材及び前記第4支持部材のそれぞれの基板支持面が前記方向に変位可能である
請求項
1乃至
6のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項8】
前記第3支持部材は前記第3辺に沿って並ぶ複数の支持部材を含み、前記第4支持部材は前記第4辺に沿って並ぶ複数の支持部材を含む
請求項
7に記載の成膜装置。
【請求項9】
前記第3支持部材及び前記第4支持部材の弾性体部の弾性係数は、前記第2支持部材の前記弾性体部より弾性係数が大きく、前記第1支持部材の前記弾性体部より弾性係数が小さい請求項
8に記載の成膜装置。
【請求項10】
前記第3支持部材及び前記第4支持部材の弾性体部の長さは、前記第2支持部材の前記弾性体部の長さより長く、前記第1支持部材の前記弾性体部の長さより短い請求項
8又は
9に記載の成膜装置。
【請求項11】
前記マスクが金属製であり、
前記マスクを保持するために前記基板保持ユニットの下方に設置されているマスク台と、
上記静電チャックの上方に設置され、前記マスクに磁力を印加して前記基板と前記マスクを密着させるためのマグネットと
をさらに含む請求項1乃至
10のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項12】
マスクを介して基板に成膜を行うための成膜方法であって、
請求項1乃至
11のいずれか一項に記載の成膜装置内に基板を搬入して基板保持ユニットの支持部に基板を置く工程と、
静電チャックにて、前記基板保持ユニットの前記支持部上に置かれた基板の上面を吸着する工程と、
マスクを介して前記基板に蒸着材料を堆積させる成膜工程と
を含む成膜方法。
【請求項13】
請求項
12に記載の成膜方法を用いて有機EL表示装置を製造する有機EL表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は成膜装置に関するもので、特に、静電チャックに基板を損傷なく平らに付着させるための基板支持部に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、フラットパネル表示装置として有機EL表示装置が脚光を浴びている。有機EL表示装置は自発光ディスプレイであり、応答速度、視野角、薄型化などの特性が液晶パネルディスプレイより優れており、モニタ、テレビ、スマートフォンに代表される各種携帯端末などで既存の液晶パネルディスプレイに対する代替が加速している。また、自動車用ディスプレイ等にも、その応用分野を広げている。
【0003】
有機EL表示装置の素子は2つの向かい合う電極(カソード電極、アノード電極)の間に発光を起こす有機物層が形成された基本構造を持つ。有機EL表示装置素子の有機物層及び電極層は、成膜装置の真空チャンバーの下部に設けられた蒸着源を加熱することで蒸発された蒸着材料を画素パターンが形成されたマスクを介して真空チャンバー上部に置かれた基板(の下面)に蒸着させることで形成される。
【0004】
このような上向蒸着方式の成膜装置の真空チャンバー内において、基板は基板ホルダによって保持されるが、基板(の下面)に形成された有機物層/電極層に損傷を与えないように基板の下面の周縁を基板ホルダの支持部によって支持する。この場合、基板のサイズが大きくなるにつれて基板ホルダの支持部によって支持されない基板の中央部が、基板の自重によって撓み、蒸着精度を落とす要因となっている。
【0005】
基板の自重による撓みを低減するための方法として静電チャックを使う技術が検討されている。すなわち、基板の上部に静電チャックを設けて、基板ホルダの支持部によって支持された基板の上面を静電チャックにて吸着させることで、基板の中央部が静電チャックの静電引力によって引っ張られるようになり、基板の撓みを低減することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、基板ホルダの支持部を構成する支持部材が剛性が高い場合、基板を静電チャックに吸着させるため、支持部材によって支持された基板と静電チャックを接触させるときに、静電チャックからの加圧力によって基板が損傷する可能性がある。
【0007】
また、支持部材を複数設置する場合、各支持部材の製造誤差によって高さが一定でないことがあり、この場合、支持部材によって基板が安定的に支持されない問題が生じることがあり、静電チャックに基板が平らに吸着されない恐れがある。
【0008】
本発明は、基板の損傷なく基板を静電チャックにより平らな形状で吸着できる成膜装置、成膜方法及びこのような成膜方法を用いて電子デバイスを製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1態様による成膜装置は、基板の周縁部を支持するための支持部を含む基板保持ユニットと、前記支持部の上方に設けられ、基板を吸着するための静電チャックとを含み、前記支持部は、第1方向に設置される第1支持部材及び前記第1支持部材と対向するように前記第1方向に設置される第2支持部材とを含み、前記第1支持部材及び前記第
2支持部材は、それぞれその基板支持面が基板を支持する方向に変位が可能である。
【0010】
本発明の第2態様による成膜方法は、本発明の第1態様による成膜装置内に基板を搬入して基板保持ユニットの支持部に基板を置く工程と、静電チャックにて、前記基板保持ユニットの前記支持部上に置かれた基板の上面を吸着する工程と、マスクを介して基板に蒸着材料を堆積させる成膜工程とを含む。
【0011】
本発明の第3態様による有機EL表示装置の製造方法は、本発明の第2態様による成膜方法を用いて有機EL表示装置を製造する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、基板の下面の周縁部を支持するための基板保持ユニットの支持部材が弾性体部を含むように構成されるので、基板を静電チャックに吸着するために、基板保持ユニットの支持部材によって支持された基板を静電チャックに当接させる際に、基板が静電チャックからの加圧力を受けても、支持部材の弾性体部が弾性変形され、その加圧力を吸収できるようになる。これにより、基板が静電チャックからの加圧力によって損傷されることを防止することができる。また、複数の支持部材の基板支持面の高さが一定でない場合でも、支持部材の弾性体部が基板支持面の高さのばらつきを吸収することができ、基板を安定的で平らに支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、有機EL表示装置の製造ラインの一部の模式図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態による成膜装置に使われる基板保持ユニットの支持部を示す模式図である。
【
図4】
図4は、本発明の他の実施形態による成膜装置に使われる基板保持ユニットの支持部を示す模式図である。
【
図5】
図5は、本発明の他の実施形態による基板保持ユニットの支持部の構成を示す模式図である。
【
図6】
図6は、有機EL表示装置の構造を現わす模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態及び実施例を説明する。ただし、以下の実施形態及び実施例は本発明の好ましい構成を例示的に示すものにすぎず、本発明の範囲はそれらの構成に限定されない。また、以下の説明における、装置のハードウェア構成及びソフトウェア構成、処理フロー、製造条件、寸法、材質、形状などは、特に特定的な記載がないかぎりは、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0015】
本発明は、基板の表面に真空蒸着によってパターンの薄膜(材料層)を形成する装置に好適に適用することができる。基板の材料としては、硝子、高分子材料のフィルム、金属などの任意の材料を選択することができ、また、蒸着材料としても、有機材料、金属性材料(金属、金属酸化物など)などの任意の材料を選択することができる。本発明の技術は、具体的には、有機電子デバイス(例えば、有機EL表示装置、薄膜太陽電池)、光学部材などの製造装置に適用可能である。その中でも、有機EL表示装置の製造装置においては、蒸着材料を蒸発させて有機EL表示素子を形成しているので、本発明の好適な適用例の一つである。
【0016】
<電子デバイス製造ライン>
【0017】
図1は、電子デバイスの製造ラインの構成の一部を模式的に示す上面図である。
図1の
製造ラインは、例えば、スマートフォン用の有機EL表示装置の表示パネルの製造に用いられる。スマートフォン用の表示パネルの場合、例えば約1800mm×約1500mmのサイズの基板に有機ELの成膜を行った後、該基板をダイシングして複数の小サイズのパネルに作製される。
【0018】
電子デバイスの製造ラインは、一般に、
図1に示すように、複数の成膜室11、12と、搬送室13とを有する。搬送室13内には、基板10を保持し搬送する搬送ロボット14が設けられている。搬送ロボット14は、例えば、多関節アームに、基板を保持するロボットハンドが取り付けられた構造を有するロボットであり、各成膜室への基板10の搬入/搬出を行う。
【0019】
各成膜室11、12にはそれぞれ成膜装置(蒸着装置とも称する)が設けられている。搬送ロボット14との基板10の受け渡し、基板10とマスクの相対位置の調整(アライメント)、マスク上への基板10の固定、成膜(蒸着)などの一連の成膜プロセスは、成膜装置によって自動で行われる。
【0020】
以下、成膜室の成膜装置の構成について説明する。
【0021】
<成膜装置>
【0022】
図2は成膜装置2の構成を概略的に示す断面図である。以下の説明においては、鉛直方向をZ方向とするXYZ直交座標系を用いる。成膜時に基板10が水平面(XY平面)と平行に固定されると想定したときに、基板10の短辺に平行な方向をX方向、長辺に平行な方向をY方向とする。またZ軸周りの回転角をθで示す。
【0023】
成膜装置2は、成膜工程が行われる空間を定義する真空チャンバー20を具備する。真空チャンバー20の内部は真空雰囲気、或いは、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気で維持される。
【0024】
成膜装置2の真空チャンバー20内の上部には、基板を保持して搬送する基板保持ユニット21、マスクが置かれるマスク台22、基板を静電引力によって吸着させる静電チャック23、金属製のマスクに磁力を印加するためのマグネット24などが設けられ、成膜装置の真空チャンバー20内の下部には、蒸着材料が収納される蒸着源25などが設けられる。
【0025】
基板保持ユニット21は、搬送室13の搬送ロボット14から基板10を受け取り、保持及び搬送する。基板保持ユニット21は基板ホルダとも称する。基板保持ユニット21は基板の下面の周縁部を支持する支持部211,212を含む。支持部上には基板の損傷を防止するためにフッ素コーティングされたパッド(不図示)が設けられる。本発明の支持部は、後述するところのように、基板が損傷なく静電チャックに全体的に平らに吸着されることができるように弾性体部を有する支持部材を含む。
【0026】
基板保持ユニット21の下にはフレーム状のマスク台22が設置され、マスク台22には基板10上に形成される薄膜パターンに対応する開口パターンを有するマスク221が置かれる。特に、スマホ用の有機EL素子を製造するのに使われるマスクは、微細な開口パターンが形成された金属製のマスクであり、FMM(Fine Metal Mask)とも称する。
【0027】
基板保持ユニット21の支持部211,212の上方には基板を静電引力によって吸着して固定させるための静電チャック23が設けられる。静電チャックは、セラミックス材
質のマトリックス内に金属電極などの電気回路が埋め込まれた構造を持ち、金属電極にプラス(+)及びマイナス(-)電圧が印加されると、セラミックスマトリックスを通じて基板に分極電荷が誘導され、これら間の静電気的な引力によって基板が静電チャック23に吸着固定される。静電チャックは埋め込まれた電気回路の構造によって複数のモジュールに区画されることができる。
【0028】
静電チャック23の上部には、金属製のマスク221に磁力を印加してマスクの撓みを防止し、マスク221と基板10を密着させるためのマグネット24が設けられる。マグネット24は永久磁石または電磁石からなることができ、複数のモジュールに区画されることができる。
【0029】
図2には図示されていないが、静電チャック23とマグネット24の間には基板を冷却するための冷却板が設けられる。冷却板はマグネット24と一体に形成されてもよい。
【0030】
蒸着源25は、基板に成膜される蒸着材料が収納されるるつぼ(不図示)、るつぼを加熱するためのヒータ(不図示)、蒸着源からの蒸発レートが一定になるまで蒸着材料が基板に飛散することを阻むシャッタ(不図示)などを含む。蒸着源25は、点(point)蒸着源、線形(linear)蒸着源、リボルバ蒸着源など用途によって多様な構成を持つことができる。
【0031】
図2には図示されていないが、成膜装置2は基板に蒸着された膜の厚さを測定するための膜厚モニタ(不図示)及び膜厚算出ユニット(不図示)を含む。
【0032】
成膜装置2の真空チャンバー20の外部上面には基板保持ユニット21、静電チャック23、マグネット24などを鉛直方向(Z方向)に移動させるための駆動機構、及び基板とマスクのアラインメントのために水平面に平行に(X方向、Y方向、θ方向で)静電チャック23や基板保持ユニット21などを移動させるための駆動機構などが設けられる。また、マスクと基板のアラインメントのために真空チャンバー20の天井に設けられた窓を通じて基板及びマスクに形成されたアラインメントマークを撮影するアラインメント用カメラ(不図示)も設けられる。
【0033】
本発明の成膜装置による成膜プロセスを説明する。搬送室13の搬送ロボット14によって基板が真空チャンバー20内に搬入されて基板保持ユニット21に置かれる。続いて、基板保持ユニット21に置かれた基板10とマスク台22に置かれているマスク221との相対的位置の測定及び調整を行うアラインメント工程が行われる。アラインメント工程が完了すると、基板保持ユニット21が駆動機構によって降りて基板10をマスク221上に置き、その後マグネット24が降りて基板10とマスク221を密着させる。このようなアラインメント工程、基板をマスク上に置くための下降工程、マグネットによる基板とマスクの密着工程などにおいて、基板は基板保持ユニット21の支持部211,212と静電チャック23によって固定される。
【0034】
この状態で、蒸着源25のシャッタが開かれて、蒸着源25のるつぼから蒸発された蒸着材料がマスクの微細パターン開口を通して基板に蒸着される。
【0035】
基板に蒸着された蒸着材料の膜厚が所定の厚さに到逹すると、蒸着源25のシャッタが閉じ、その後、搬送ロボット14が基板を真空チャンバー20から搬送室13に搬出される。
【0036】
<基板保持ユニットの支持部>
【0037】
以下、
図3を参照して基板保持ユニット21の構成、特に、静電チャックとともに基板を保持する支持部211、212の構成を説明する。
【0038】
基板保持ユニット21は、支持部211、212によって基板10の周縁部を保持して搬送する。
図3に図示した本発明の実施形態において、支持部211、212は基板の対向する二つの辺(例えば、二つの長辺)側の周縁部を支持するように設けられる。
【0039】
すなわち、基板保持ユニット21の支持部211、212は、基板の対向する二つの辺中いずれかの一つの辺(第1辺)に沿って設けられる複数の第1支持部材211ともう一つの辺(第2辺)に沿って設けられる複数の第2支持部材212を含む。例えば、複数の第1支持部材211は基板の長辺方向(Y方向、第1方向)に沿って設けられ、複数の第2支持部材212は複数の第1支持部材211と対向するように基板の長辺方向(Y方向、第1方向)に設置される。
図3には第1支持部材211及び第2支持部材212がそれぞれ複数の支持部材からなる構成を図示したが、本発明はこれに限定されず、第1支持部材211及び/または第2支持部材212はそれぞれ第1方向に長く延びる一つの支持部材で構成されてもよい。また、
図3には、第1支持部材211及び第2支持部材212が基板の長辺に沿って設けられることと示されたが、本発明はこれに限定されず、第1支持部材211及び第2支持部材212が基板の対向する短辺に沿って設けられてもよい。
【0040】
基板の下面の周縁部を支持する支持部211、212は、その基板支持面が基板保持ユニット21に対して鉛直方向(Z方向)に(すなわち、基板を支持する方向に)移動可能に設置される。すなわち、支持部211、212はその高さが変わり得る。
【0041】
このため、本発明の基板保持ユニット21の支持部は弾性体を含んで構成される。例えば、
図3(a)に図示したように、支持部の複数の支持部材211、212それぞれは基板支持面部30と弾性体部31を含む。基板支持面部30は基板の下面の周縁部を支持し、弾性体部31は基板支持面部30を弾性的に変位可能に支持する。
【0042】
弾性体部31に使われる弾性体としてはコイルスプリング、板スプリング、シリコーンゴムなどを用いることができるが、本発明はこれに限定されず、支持部材の基板支持面部を弾性的に変位可能に支持することができる限り、他の構成を含むことができる。
【0043】
本実施形態においては、支持部材が弾性体部31を含むように構成することで、基板支持面部30によって支持された基板が静電チャック23から加圧力を受けるとき、弾性体部31が弾性変位(例えば、圧縮変位または引張変位)するため、静電チャック23からの加圧力を吸収して基板が破損することを防止することができる。また、各支持部材が製造誤差によって基板支持面部30の高さが一定でなくても、全体的な支持部の機能に及ぼす影響を弾性体部31の弾性変位によって低減することができる。
【0044】
本発明において、複数の支持部材211、212中、基板のある一辺(第1辺)に沿った周縁部に対応する位置に設置される第1支持部材211は、他の支持部材に比べて基板支持面部30の高さが高い。例えば、
図4(a)に図示したように、第1支持部材211の弾性体部31の長さは第2支持部材212の弾性体部31の長さより長い。
【0045】
このような構成によって、基板保持ユニット21の支持部に基板が置かれた状態で、基板保持ユニット21の上昇または静電チャック23の下降によって基板10が静電チャック23と接触する際、基板支持面部30の高さが高い第1支持部材211によって支持される基板の第1辺側の周縁部が静電チャック23の下面と先に接触して吸着される。
【0046】
そして、静電チャック23と基板10との間の距離がさらに縮むと、例えば、第1支持
部材211の弾性体部31は静電チャック23からの加圧力によって弾性的に圧縮され、これによって第1支持部材211の基板支持面部30は変位、すなわち、下方に下がるようになる。第1支持部材211の弾性体部31が弾性的に圧縮されるにつれて、第1支持部材211の基板支持面部30の高さと第2支持部材212の基板支持面部30の高さとの差が小さくなりながら、基板の第1辺側周縁部から基板の中央部に向かって基板の静電チャック23への吸着が進む。静電チャック23と基板10の間の距離がさらに縮むと、基板の中央部から基板の第2辺側の周縁部に向かって基板の吸着が進む。
【0047】
静電チャック23が第2支持部材212の基板支持面部30の高さまで近接すると、第2支持部材212によって支持される基板の第2辺側の周縁部が静電チャック23に吸着されて、このとき、第1支持部材211の基板支持面部30の高さが第2支持部材212の基板支持面部30の高さと同じくなり、全体的に基板は静電チャック23に平らな状態で吸着されるようになる。
【0048】
図4(a)には支持部材の基板支持面部30の変位軸と弾性体部31の変位軸が一致するように図示したが、本発明はこれに限定されず、基板支持面部30の変位軸と弾性体部31の変位軸とが互いに異なるように形成されることもできる。すなわち、
図4(d)に図示したように、基板支持面部30の変位軸と弾性体部31の変位軸とが基板面に平行な方向において互いに離隔されるように(すなわち、ずれるように)構成されることもできる(すなわち、両変位軸が互いに平行になるように形成されることができる)。このような構成において、基板保持ユニット21の支持部材は基板支持面部30の変位をガイドするガイド部32をさらに含むことができる。弾性体部31は
図4(d)に図示したように、基板が静電チャック23と接触するによって圧縮変位する構成だけではなく引張変位するように構成されることもできる。
【0049】
本発明の基板保持ユニット21の支持部は、複数の支持部材211、212が基板を支持する支持力が支持部材によって変わるように設定されてもよい。すなわち、基板保持ユニット21の支持部は、基板の対向する二つの辺の中でどの一つの辺である第1辺側を支持する第1支持部材211が基板を支持する支持力と他の一つの辺である第2辺側を支持する第2支持部材212が基板を支持する支持力が互いに異なるように設置される。例えば、第1支持部材211が基板を支持する支持力は、第2支持部材212が基板を支持する支持力より大きくなるように設定される。
【0050】
このため、
図4に図示したように、第1支持部材211の弾性体部31の弾性係数を第2支持部材212の弾性体部31の弾性係数より大きくするか、第1支持部材211の弾性体部31の長さを第2支持部材212の弾性体部31の長さより長くする。第1支持部材211の弾性体部31の長さが長くなると第1支持部材211の弾性体部31が静電チャック23からの加圧力によって弾性変位(引張変位または圧縮変位)される距離が第2支持部材212の弾性体部31が弾性変位される距離より長くなるので、結果的に第1支持部材211が基板を支持する支持力を第2支持部材212が基板を支持する支持力より大きくすることができる。
【0051】
このように第1支持部材211の支持力を第2支持部材212の支持力より大きくすることで、基板中央部の撓みを支持力が小さな第2支持部材212側の方に伸ばすことができるので、基板が全体的に静電チャック23に平らに吸着されることが可能になる。
【0052】
本発明では第1支持部材211の支持力が第2支持部材212の支持力より大きくなる限り、弾性体部の弾性係数と長さは様々に組み合わせるができる。
【0053】
例えば、
図4(a)に図示したように、第1支持部材211の弾性体部31の弾性係数
及び長さを、第2支持部材212の弾性体部31の弾性係数及び長さより、大きく及び長くすることができ、
図4(b)に図示したように、第1支持部材211の弾性体部31の弾性係数と第2支持部材212の弾性体部31の弾性係数は同じであるが、第1支持部材211の弾性体部31の長さを、第2支持部材212の弾性体部31の長さより長くすることもできる。また、
図4(c)に図示したように、第1支持部材211と第2支持部材212の弾性体部の長さが同じでも、弾性係数を互いに異なるようにすることで支持力の差を付与することもできる。
【0054】
本発明の基板保持ユニット21の支持部は、
図5に図示したように、基板の第1辺側の周縁部を支持するように配置される複数の第1支持部材211、第1辺と対向する第2辺側の基板周縁部を支持するように配置される複数の第2支持部材212以外に、第1辺と第2辺とを繋ぐ第3辺側及び第4辺側の基板周縁部を支持するように配置される複数の第3支持部材213及び複数の第4支持部材214を含むことができる。第3支持部材213及び第4支持部材214も基板支持面部30と弾性体部31を含む。この際、第3支持部材213及び第4支持部材214の弾性体部31の弾性係数及び長さは、第3支持部材213及び第4支持部材214が基板の第3辺側の周縁部及び第4辺側の周縁部を支持する支持力が第1支持部材211の支持力より小さくなるように設定するのが望ましい。より望ましくは、第3支持部材213及び第4支持部材214による支持力が第2支持部材212による支持力より大きくなるように弾性係数及び/または長さを設定する。このように、支持部材の支持力を調節することで、基板10が静電チャック23に吸着されるときに、第1辺(例えば、対向する二つの長辺の中である一長辺)側の基板周縁部から基板の中央部を経て第2辺(例えば、対向する二つの長辺の中で他の一つの長辺)側に向かって吸着を順次に進めることができ、基板が平らに静電チャックに吸着されることが可能になる。
【0055】
<電子デバイスの製造方法>
【0056】
次に、本実施形態の成膜装置を用いた電子デバイスの製造方法の一例を説明する。以下、電子デバイスの例として有機EL表示装置の構成及び製造方法を例示する。
【0057】
まず、製造する有機EL表示装置について説明する。
図6(a)は有機EL表示装置60の全体図、
図6(b)は1画素の断面構造を示す。
【0058】
図6(a)に示すように、有機EL表示装置60の表示領域61には、発光素子を複数備える画素62がマトリクス状に複数配置されている。詳細は後で説明するが、発光素子のそれぞれは、一対の電極に挟まれた有機層を備える構造を有している。なお、ここでいう画素とは、表示領域61において所望の色の表示を可能とする最小単位を指す。本実施例にかかる有機EL表示装置の場合、互いに異なる発光を示す第1発光素子62R、第2発光素子62G、第3発光素子62Bの組み合わせにより画素62が構成されている。画素62は、赤色発光素子と緑色発光素子と青色発光素子の組み合わせで構成されることが多いが、黄色発光素子とシアン発光素子と白色発光素子の組み合わせでもよく、少なくとも1色以上であれば特に制限されるものではない。
【0059】
図6(b)は、
図6(a)のA-B線における部分断面模式図である。画素62は、基板63上に、第1電極(陽極)64と、正孔輸送層65と、発光層66R、66G、66Bのいずれかと、電子輸送層67と、第2電極(陰極)68と、を備える有機EL素子を有している。これらのうち、正孔輸送層65、発光層66R、66G、66B、電子輸送層67が有機層に当たる。また、本実施形態では、発光層66Rは赤色を発する有機EL層、発光層66Gは緑色を発する有機EL層、発光層66Bは青色を発する有機EL層である。発光層66R、66G、66Bは、それぞれ赤色、緑色、青色を発する発光素子(
有機EL素子と記述する場合もある)に対応するパターンに形成されている。また、第1電極64は、発光素子ごとに分離して形成されている。正孔輸送層65と電子輸送層67と第2電極68は、複数の発光素子62R、62G、62Bと共通で形成されていてもよいし、発光素子毎に形成されていてもよい。なお、第1電極64と第2電極68とが異物によってショートするのを防ぐために、第1電極64間に絶縁層69が設けられている。さらに、有機EL層は水分や酸素によって劣化するため、水分や酸素から有機EL素子を保護するための保護層70が設けられている。
【0060】
図6(b)では正孔輸送層65や電子輸送層67が一つの層で示されているが、有機EL表示素子の構造によって、正孔ブロック層や電子ブロック層を含む複数の層で形成されてもよい。また、第1電極64と正孔輸送層65との間には第1電極64から正孔輸送層65への正孔の注入が円滑に行われるようにすることのできるエネルギーバンド構造を有する正孔注入層を形成することもできる。同様に、第2電極68と電子輸送層67の間にも電子注入層が形成されてもよい。
【0061】
次に、有機EL表示装置の製造方法の例について具体的に説明する。
【0062】
まず、有機EL表示装置を駆動するための回路(不図示)および第1電極64が形成された基板63を準備する。
【0063】
第1電極64が形成された基板63の上にアクリル樹脂をスピンコートで形成し、アクリル樹脂をリソグラフィ法により、第1電極64が形成された部分に開口が形成されるようにパターニングし絶縁層69を形成する。この開口部が、発光素子が実際に発光する発光領域に相当する。
【0064】
絶縁層69がパターニングされた基板63を第1の有機材料成膜装置に搬入し、基板保持ユニット及び静電チャックにて基板を保持し、正孔輸送層65を、表示領域の第1電極64の上に共通する層として成膜する。正孔輸送層65は真空蒸着により成膜される。実際には正孔輸送層65は表示領域61よりも大きなサイズに形成されるため、高精細なマスクは不要である。
【0065】
次に、正孔輸送層65までが形成された基板63を第2の有機材料成膜装置に搬入し、基板保持ユニット及び静電チャックにて保持する。基板とマスクとのアライメントを行い、基板をマスクの上に載置し、基板63の赤色を発する素子を配置する部分に、赤色を発する発光層66Rを成膜する。
【0066】
発光層66Rの成膜と同様に、第3の有機材料成膜装置により緑色を発する発光層66Gを成膜し、さらに第4の有機材料成膜装置により青色を発する発光層66Bを成膜する。発光層66R、66G、66Bの成膜が完了した後、第5の成膜装置により表示領域61の全体に電子輸送層67を成膜する。電子輸送層67は、3色の発光層66R、66G、66Bに共通の層として形成される。
【0067】
電子輸送層67まで形成された基板を金属性蒸着材料成膜装置で移動させて第2電極68を成膜する。
【0068】
本発明によれば、有機EL表示素子の製造のために、多様な有機材料及び金属性材料を基板上に蒸着する際に、基板を支持する基板保持ユニットの支持部211、212、213、214の支持部材が弾性体部31を有するので、基板保持ユニットの支持部によって支持された基板が静電チャックに吸着されるときに、基板への損傷なく平らに吸着され、蒸着工程全般的にその精度を向上させることができる。
【0069】
その後プラズマCVD装置に移動して保護層70を成膜して、有機EL表示装置60が完成する。
【0070】
絶縁層69がパターニングされた基板63を成膜装置に搬入してから保護層70の成膜が完了するまでは、水分や酸素を含む雰囲気にさらしてしまうと、有機EL材料からなる発光層が水分や酸素によって劣化してしまうおそれがある。したがって、本例において、成膜装置間の基板の搬入搬出は、真空雰囲気または不活性ガス雰囲気の下で行われる。
【0071】
上記実施例は本発明の一例を示し、本発明は上記実施例の構成に限定されず、また、その技術思想の範囲内で適切に変形されてよい。
【符号の説明】
【0072】
21:基板保持ユニット
22:マスク台
23:静電チャック
24:マグネット
30:基板支持面部
31:弾性体部
32:ガイド部
211:第1支持部材
212:第2支持部材
213:第3支持部材
214:第4支持部材