(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】具材入り調味料およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 27/00 20160101AFI20220809BHJP
【FI】
A23L27/00 Z
A23L27/00 D
(21)【出願番号】P 2019563950
(86)(22)【出願日】2018-12-14
(86)【国際出願番号】 JP2018046197
(87)【国際公開番号】W WO2019135340
(87)【国際公開日】2019-07-11
【審査請求日】2020-12-21
(31)【優先権主張番号】P 2018000039
(32)【優先日】2018-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】514057743
【氏名又は名称】株式会社Mizkan Holdings
(73)【特許権者】
【識別番号】317006214
【氏名又は名称】株式会社Mizkan
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大池 正樹
【審査官】山村 周平
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-051249(JP,A)
【文献】特開2011-177153(JP,A)
【文献】特開平09-308457(JP,A)
【文献】特開2000-106851(JP,A)
【文献】特開2001-149037(JP,A)
【文献】米国特許第04129663(US,A)
【文献】特開平07-196707(JP,A)
【文献】米国特許第05169671(US,A)
【文献】特表昭63-500071(JP,A)
【文献】特表2002-501386(JP,A)
【文献】米国特許第06673384(US,B1)
【文献】特開平01-086861(JP,A)
【文献】特開平03-183455(JP,A)
【文献】特開昭56-085256(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00-35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
卵黄と酢酸と具材と
キサンタンガムとリン酸架橋α化でん粉とを含有し、
20℃の粘度が700mPa・s以上、5000mPa・s以下であり、
前記卵黄の含有割合が、
2~18質量%であ
り、
前記卵黄と膨潤前の前記リン酸架橋α化でん粉との質量比が、前者:後者=100:1~6:1の範囲であって、かつ
油脂原料を含まないことを特徴とする、具材入り調味料。
【請求項2】
前記具材が、たまねぎ、にんじん、パプリカ、キュウリ及び加熱変性卵白よりなる群から選ばれる一種以上のものである、請求項1に記載の具材入り調味料。
【請求項3】
前記
リン酸架橋α化でん粉が、
リン酸架橋α化加工でん粉の細粒であり、かつ、その含有割合が、0.01~1.8質量%である、請求項
1又は2に記載の具材入り調味料。
【請求項4】
卵黄と酢酸と具材と
キサンタンガムとリン酸架橋α化でん粉とを含有する調味液を、20~40℃で10~60分間混合した後、85~90℃で1~10分間加熱混合することを特徴とする、卵黄と酢酸と具材と
キサンタンガムとリン酸架橋α化でん粉とを含有し、20℃の粘度が700mPa・s以上、5000mPa・s以下であり、前記卵黄の含有割合が、
2~18質量%であ
り、前記卵黄と膨潤前の前記リン酸架橋α化でん粉との質量比が、前者:後者=100:1~6:1の範囲であって、かつ
油脂原料を含まない、具材入り調味料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、卵の風味を有し、かつ、乳化しないにもかかわらずクリーミーな食感を有する、具材入り調味料と、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、揚げ物に好んで使用されているタルタルソースは、野菜や酢のさっぱりした風味と卵の風味がバランスよく感じられて美味しい調味料として知られている。
【0003】
しかしながら、タルタルソースは、油脂を30~60質量%と多く含むため、揚げ物のカロリー過剰摂取に拍車がかかること、また乳化を要するため乳化剤などの添加物を必要とすること、さらに乳化物ゆえに保存中や調理時に油水分離による品質劣化の問題や、加熱殺菌が容易でないなどの課題も抱えている。
また、卵の風味は、様々な料理に合うものの、タルタルソースは高粘度や脂っこさや強い酸味のため、その用途が限られ、各種の料理への活用の道も広がらなかった(例えば、特許文献1の従来の技術欄参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したように、従来の卵風味調味料のような乳化調味料では、油脂を含有させることで当該油脂の酸化劣化による風味劣化、油脂との乳化状態が経時的にまたは調理時の加熱等の負荷により油水分離するなどの劣化、これらによる卵の風味とクリーミーな食感が劣化することが課題となっていた。
【0006】
本開示は、上記従来の課題を解消し、油脂含量が10質量%以下であって、卵の風味が良好で、クリーミーな食感(舌ざわりが良く、クリーム状でトロっと口に広がり、柔らかでなめらかな食感)を有し、かつさっぱりとした後味を有しており、食品素材にトッピングした際の食品素材とのからみが良好な具材入り調味料を提供することを目的とするものである。ここで、油脂含量とは、具材入り調味料に対する油脂原料(食用油脂)の含有量(質量%)である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本開示は以下の(1)から(18)に関する。
(1)卵黄と酢酸と具材とキサンタンガムとリン酸架橋α化でん粉とを含有し、
20℃の粘度が700mPa・s以上、5000mPa・s以下であり、
前記卵黄の含有割合が、2~18質量%であり、
前記卵黄と膨潤前の前記リン酸架橋α化でん粉との質量比が、前者:後者=100:1~6:1の範囲であって、かつ
油脂原料を含まないことを特徴とする、具材入り調味料。
(2)前記具材が、たまねぎ、にんじん、パプリカ、キュウリ及び加熱変性卵白よりなる群から選ばれる一種以上のものである、前記(1)に記載の具材入り調味料。
(3)前記リン酸架橋α化でん粉が、リン酸架橋α化加工でん粉の細粒であり、かつ、その含有割合が、0.01~1.8質量%である、前記(1)又は(2)に記載の具材入り調味料。
(4)卵黄と酢酸と具材とキサンタンガムとリン酸架橋α化でん粉とを含有する調味液を、20~40℃で10~60分間混合した後、85~90℃で1~10分間加熱混合することを特徴とする、卵黄と酢酸と具材とキサンタンガムとリン酸架橋α化でん粉とを含有し、20℃の粘度が700mPa・s以上、5000mPa・s以下であり、前記卵黄の含有割合が、2~18質量%であり、前記卵黄と膨潤前の前記リン酸架橋α化でん粉との質量比が、前者:後者=100:1~6:1の範囲であって、かつ油脂原料を含まない、具材入り調味料の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、従来の卵風味調味料のような乳化調味料特有の油脂との乳化による品質劣化が生じず、卵の良好なコクと、クリーミーな食感(舌ざわりが良く、クリーム状でトロっと口に広がり、柔らかでなめらかな食感)、かつさっぱりとした後味を有しており、食品素材にトッピングした際の食品素材とのからみが良好な具材入り調味料が提供される。
また、本開示の方法によれば、従来の卵風味調味料のような乳化調味料特有の油脂との乳化による品質劣化が生じず、卵の風味とクリーミーな食感を有する具材入り調味料を製造する方法が提供される。
【0009】
即ち、本開示により得られる具材入り調味料は、油脂含量が10質量%以下であって、脂質含量が15質量%未満であり、当該油脂の酸化劣化による風味劣化や、油脂との乳化状態が経時的にまたは調理時の加熱等の負荷により油水分離するなどの劣化が生ずるおそれがなく、これらによる卵の良好なコクとクリーミーな食感が劣化するなどのおそれがない。
しかも本開示により得られる具材入り調味料は、タルタルソースと似た原材料を用いているものの、油脂含量が10質量%以下であって、脂質含量が15質量%未満であり、カロリーが過剰となることもない。
従って、本開示は、タルタルソースと似た原材料を用いていながら、ヘルシー、かつ卵の風味とクリーミーな食感を有する、具材入り調味料を製造する技術として、有効に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示について、以下詳細に説明する。
本開示は、具材入り調味料に関し、卵黄と酢酸と具材とを含有し、20℃での粘度が700mPa・s以上、5000mPa・s以下であり、かつ油脂含量が全体の10質量%以下であることを特徴とするものである。
以下、これを「本開示の具材入り調味料」と称することがある。
【0011】
本開示の具材入り調味料における卵黄としては、生卵黄の他、加塩卵黄、粉末卵黄、加糖卵黄など、卵黄の風味を有する形態であれば、いかなるものでもよい。但し、加熱変性卵黄は除かれる。卵黄の由来は、特に限定されないが、風味や入手しやすさなどの点から、鶏卵が好ましく用いられる。
【0012】
卵黄の含有割合は、1質量%を超え18質量%以下であって、卵黄風味が好ましく感じられる量として、1.5~18質量%であることが好ましく、2~18質量%がより好ましく、4~18質量%が特に好ましい。
ここで卵黄の含有割合が少な過ぎると十分な風味を感じることができず、一方、卵黄の含有割合が多過ぎると過剰な風味となりさっぱりとした風味が阻害されるため、いずれも好ましくない。
【0013】
なお、本開示の具材入り調味料を製造中に加熱を行う場合は、90℃以下で行うことが望ましい。90℃を超えた加熱を行うと、卵の風味および卵黄のクリーミー感が急激に失われるため、本開示の十分な効果を発揮できなくなる。
【0014】
次に、本開示の具材入り調味料における酢酸としては、穀物酢、果実酢、米酢、粕酢、醸造酢など、酢酸を含有する原材料を用いて配合すればよい。
酢酸の含有割合は、さっぱりとした味わいを適度に付与できる量として、0.4質量%以上1.5質量%以下がよく、0.4質量%以上1.2質量%以下がより好ましく、0.4質量%以上1.0質量%以下が特に顕著に好ましい。前述の含有割合より少ないと十分な味わいを感じることができず、前述の含有割合より多いと酸味の刺激が過剰になり好ましくない。
【0015】
また、本開示の具材入り調味料における具材としては、加熱変性(茹で)卵白、加熱変性卵黄、加熱変性全卵や;たまねぎ、にんじん、パプリカ、キュウリ、キャベツ、たけのこなどの野菜や;しいたけ、マッシュルームなどのきのこ類や;牛肉、豚肉、鶏肉、魚肉などの肉類や;胡椒、ごま、唐辛子などの香辛料や;これらの加工品など;卵の風味を阻害せず食感を有するものであれば特に制限されない。たまねぎ、にんじん、キャベツ、たけのこなどの野菜については、乾燥品を用いてもよい。
これらの中でも、たまねぎ、にんじん、パプリカ、キュウリ、及び加熱変性(茹で)卵白が好ましい。
【0016】
具材のサイズは、およそ1mm角から20mm角程度のサイズが好ましく、素材の種類や特性に応じて、裁断、破砕、磨砕、スライス、ミンチ等の加工を施すのがよい。
【0017】
具材の調味液に湿潤後の含有量(調味液中の含有割合)は、料理にかけた時に具材の風味と食感を適度に感じられる量として、5%以上40%以下がよく、7%以上35%以下がより好ましく、10%以上30%以下が特に顕著に好ましい。前述の含有量より少ないと十分に風味と食感を感じることができず、多いと液状調味料としての流動性を失うとともに料理自体の風味と食感が感じにくくなるため、いずれも好ましくない。
【0018】
本開示の具材入り調味料は、上記した卵黄と酢酸と具材とを少なくとも含有するものであり、好ましくは、さらにガム類、セルロース、及び寒天よりなる群から選ばれる1種以上のものと;を含有するものである。
ここでガム類としては、増粘多糖類として食品に利用されているガム類であれば特に限定はされないが、例えば、キサンタンガム、ジェランガム、タマリンドガム、グアーガム、ローカストビーンガム、アラビアガム、ガティガム、カラヤガム、トランスガントガムなどが挙げられ、キサンタンガム、ジェランガム、タマリンドガム、グアーガム、ローカストビーンガムが好ましく、キサンタンガム、ジェランガム、タマリンドガム、グアーガムが更に好ましい。
【0019】
本開示の具材入り調味料は、更に好ましくは、α化でん粉を含有するものである。
ここでα化でん粉の主原料となるでん粉としては、タピオカ澱粉、小麦でん粉、馬鈴薯でん粉、コーンスターチなど、特に制限されない。
α化でん粉としては、未加工でん粉をα化したものよりも、加工でん粉をα化したもの(α化加工でん粉)が好ましい。
α化加工でん粉としては、リン酸架橋α化でん粉やヒドロキシプロピル化リン酸架橋α化でん粉などが挙げられ、より具体的には例えば、タピオカリン酸架橋α化でん粉(細粒)、タピオカリン酸架橋α化でん粉(粗粒)、タピオカヒドロキシプロピル化リン酸架橋α化でん粉、馬鈴薯リン酸架橋α化でん粉が挙げられ、これらの中でもタピオカリン酸架橋α化でん粉(細粒)が特に好ましい。
【0020】
ここでα化でん粉、特にα化加工でん粉としては、細粒が好ましいが、官能的に、細粒のサイズが小さすぎると液部と同化して調味液自体が高粘性でボテッとした食感と感じ、大きすぎるとネバついた固形異物と感じるため、平均しておよそ0.5mm径から4mm径程度のサイズに調整するのがよい。
なお、α化でん粉の細粒を得る際の糊化工程、膨潤化工程は、真水中よりも調味液中などの味付けした液中で行う方が、細粒内部まで味が付き、料理への味ののりがよいため、好ましい。
【0021】
α化でん粉(細粒)、特にα化加工でん粉(細粒)の膨潤前の配合割合(含有割合)は、0.01~1.8質量%であることが好ましく、0.01~1.7質量%がより好ましく、0.1~1.7質量%が特に好ましい。
ここでα化でん粉(細粒)、特にα化加工でん粉(細粒)の膨潤前の配合割合(含有割合)が少な過ぎると十分な効果が得られず、多過ぎると調味料の流動性が著しく損なわれるため、いずれも好ましくない。
【0022】
本開示の具材入り調味料において用いるα化でん粉(細粒)、特にα化加工でん粉(細粒)は、水(冷水)で膨潤溶解し、加熱なしで冷水を加えるだけで均一な糊状となるものもある。このα化でん粉(細粒)は、調味料の舌触りを滑らかにし、料理にかけた時の液部のタレ落ち、浸み込みを抑制して料理への味ののり(食品素材の表面に味を付ける効果)をよくする。また、具材とともに調味液中に分散させることで具材の分散性を高め、容器から調味料を注ぎだす際に具材同士が絡まずに略均一に吐出させることができる。
【0023】
次に、本開示の具材入り調味料においては、ガム類、セルロース、及び寒天よりなる群から選ばれる1種以上のものを用いており、上記のものの1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、適度な粘度と分散性の点から、少なくともキサンタンガムを用いることが好ましい。
これらのものは、本開示の具材入り調味料において、粘度を調整する作用を有し、具材同士がくっついたり、容器壁にへばりついたりすることを阻止する働きを有し、増粘剤、安定剤、或いは分散剤などとして作用する。
【0024】
なお、上記ガム類、セルロース、及び寒天よりなる群から選ばれる1種以上のものの配合割合は、用いるものによって好適割合が異なり一義的に規定することは困難であるが、例えばキサンタンガムの場合には、0.02~2.2質量%程度である。
【0025】
本開示の具材入り調味料は、20℃での粘度の下限値が700mPa・s以上であり、好ましくは1000mPa・s以上であり、より好ましくは1400mPa・s以上であり、上限値が5000mPa・s以下であり、好ましくは4700mPa・s以下であり、より好ましくは4500mPa・s以下であり、最も好ましくは4400mPa・s以下である。
ここで粘度が低過ぎると、クリーミー感が感じられず、一方、高過ぎるとボテッとした重たい食感になるため、いずれも好ましくない。卵黄の風味にあうクリーミー感を実現するためには、20℃での粘度が1000mPa・s以上、4700mPa・s以下であることが必要である。
20℃での粘度は、B型粘度計(ローターNo.3、回転数:30rpmの条件)によって測定することができる。
【0026】
本開示の具材入り調味料の油脂含量とは油脂原料の含有量であり、油脂含量が全体の10質量%以下、好ましくは油脂含量が全体の5質量%以下のものであり、油脂原料を使用せず、油脂含量が1質量%未満であることが特に好ましい。油脂含量が高いと、保存後の油脂の酸化劣化や乳化状態の変化、あるいは加熱食品に用いた際の熱による油水分離等の影響により、クリーミー感が減退し、さっぱりした後味が得られない。また、フライなどの油ちょう食品に使用する場合には、油っぽくしつこさが加わってしまう。このように本開示の具材入り調味料では、油脂含量が10質量%以下であって、脂質含量が15質量%未満であり、保存中や調理中に油水分離による品質劣化のおそれがない。
また、本開示の具材入り調味料は、脂質含量が全体の15質量%以下が好ましく、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下がさらにより好ましい。脂質含量はクロロホルム・メタノール混液抽出法(日本食品標準成分表分析マニュアル)によって測定することができる。
【0027】
さらに、本開示の具材入り調味料としては、酵母エキスを含むものが好ましい。
本開示の具材入り調味料において酵母エキスは、パン酵母エキス、ビール酵母エキス、トルラ酵母エキスなどコク味を付与できるものであればどのようなものでもよい。
酵母エキスを配合(含有)することで、卵の風味とクリーミー感の増強効果や油脂のコク味や酢カド抑制の代替効果を得ることができる。
【0028】
酵母エキスを配合する(含有する)場合、その配合割合(含有割合)は、0.1%以上10%以下がよく、0.5%以上7%以下がより好ましく1.0%以上5%以下が特に顕著に好ましい。前述の配合割合(含有割合)より少な過ぎると十分な増強効果や代替効果を得られず、多過ぎると酵母エキスの異味が卵黄の風味を阻害するため、いずれも好ましくない。
【0029】
なお、本開示の具材入り調味料において、卵黄と膨潤前α化でん粉との質量比は、前者:後者=1000:1~6:1の範囲、好ましくは100:1~6:1の範囲である。
ここで卵黄と膨潤前α化でん粉(細粒)との質量比において、卵黄の割合が多過ぎると、具材とのからみやなめらかさが低下し、さっぱり感が著しく低下し、一方、卵黄の割合が少な過ぎると、なめらかさやクリーミーな食感が低下し、コクをあまり感じなくなるため、いずれも好ましくない。
【0030】
さらに、本開示の具材入り調味料としては、この他に、本開示の効果を損なわない限りにおいて、上記原料に加えて、糖類(高甘味度甘味料を含む)、食塩、アミノ酸系調味料、核酸系調味料、有機酸系調味料、風味原料、旨味調味料、酒類、フレーバー、香辛料抽出物などの呈味・風味成分、安定剤、着色料、カルシウム塩、粘度調整剤などの添加剤などを用いることができる。これらの成分の含有量は、特に限定はされず、用途に応じて適宜決定することができる。
上記糖類としては、例えば、砂糖、麦芽糖、果糖、異性化液糖、ブドウ糖、水あめ、デキストリンやソルビトール、マルチトール、キシリトールなどの糖アルコール類等が挙げられる。これらの糖類は、一種のみを単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
上記高甘味度甘味料としては、例えば、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、ネオテーム、甘草抽出物、ステビアやその酵素処理物等が挙げられる。これらの高甘味度甘味料は、一種のみを単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
上記食塩はそのものでもよいが、食塩を含有する食品でも良い。食塩を含有する食品は特に限定はないが、例として、醤油、出汁等が挙げられる。上記醤油としては特に限定されるものではないが、例えば濃口醤油、淡口醤油、白醤油、溜り醤油、再仕込み醤油等が挙げられる。これらの醤油は、一種のみを単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
上記アミノ酸系調味料としては、例えば、L-グルタミン酸ナトリウム、DL-アラニン、グリシン、L-又はDL-トリプトファン、L-フェニルアラニン、L-又はDL-メチオニン、L-リシン、L-アスパラギン酸、L-アスパラギン酸ナトリウム、L-アルギニン等が挙げられる。これらのアミノ酸系調味料は、一種のみを単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
上記核酸系調味料としては、例えば、5’-イノシン酸二ナトリウム、5’-グアニル酸二ナトリウム、5’-ウリジル酸二ナトリウム、5’-シチジル酸二ナトリウム、5’-リボヌクレオチドカルシウム、5’-リボヌクレオチド二ナトリウム等が挙げられる。これらの核酸系調味料は、一種のみを単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
上記有機酸系調味料としては、例えば、クエン酸カルシウム、クエン酸三ナトリウム、グルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、DL-酒石酸水素カリウム、L-酒石酸水素カリウム、DL-酒石酸ナトリウム、L-酒石酸ナトリウム、乳酸カリウム、乳酸カルシウム、乳酸ナトリウム、フマル酸一ナトリウム、DL-リンゴ酸ナトリウム等が挙げられる。これらの有機酸系調味料は、一種のみを単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。二種以上の有機酸系調味料を併用することで、双方の呈味が相乗的に高まるため好ましい。
上記風味原料としては、前記酵母エキス以外に例えば、鰹だし、昆布だし、野菜エキス、鰹エキス、昆布エキス、魚介エキス、畜肉エキス、果汁等が挙げられる。これらの風味原料は、一種のみを単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
上記旨味調味料としては、例えば、たん白加水分解物が挙げられる。これらの旨味調味料は、一種のみを単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
上記酒類としては、清酒、合成清酒、みりん、焼酎、ワイン、リキュール、紹興酒等が挙げられる。これらの酒類は、一種のみを単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
上記フレーバーとしては、例えば、ジンジャーフレーバー、ガーリックフレーバー、マスタードフレーバー、オニオンフレーバー、ゴマフレーバー、ねぎフレーバー、ニラフレーバー、しそフレーバー、わさびフレーバー、レモンフレーバー等が挙げられる。これらのフレーバーは、一種のみを単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
上記香辛料抽出物としては、一般的に「香辛料」又は「スパイス」と表示される食品の抽出物であれば何でもよく、例えば、唐辛子抽出物、マスタード抽出物(カラシ抽出物)、ショウガ抽出物(ジンジャー抽出物)、ワサビ抽出物、ペパー抽出物、ニンニク抽出物(ガーリック抽出物)、オニオン抽出物、サンショウ抽出物等が挙げられる。これらの香辛料抽出物は、一種のみを単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
上記粘度調整剤としては、例えば、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、カラギナン、プルラン、ペクチン、キチン、キトサン等が挙げられる。これらの粘度調整剤は、一種のみを単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0031】
本開示の具材入り調味料は、上記のとおりのものである。
次に、本開示は、上記した卵黄と酢酸と具材とを含有し、20℃での粘度が700mPa・s以上、5000mPa・s以下であり、前記卵黄の含有割合が、1質量%を超え18質量%以下であって、かつ油脂含量が全体の10質量%以下である、具材入り調味料の製造方法に関し、卵黄と酢酸と具材とを含有する調味液を、20~40℃で10~60分間混合した後、85~90℃で1~10分間加熱混合することが好適である。
以下、この方法を、「本開示の方法」と称することがある。
【0032】
本開示の方法における卵黄と酢酸と具材としては、前記した本開示の具材入り調味料において説明したとおりのものであり、それらと同様のものが用いられる。
また、卵黄と酢酸と具材の含有割合なども、前記した本開示の具材入り調味料において説明したとおりのものであり、それらと同様の割合で用いられる。
【0033】
本開示の方法においては、まず卵黄と酢酸と具材とを含有する調味液を、20~40℃で10~60分間混合する。
【0034】
次に、本開示の方法においては、上記混合処理した後の調味液を、85~90℃で1~10分間加熱混合する。ここでの加熱混合は、殺菌の意味を有する。
【0035】
本開示の方法においては、前記した本開示の具材入り調味料において説明したと同様に、調味液として、ガム類、セルロース、及び寒天よりなる群から選ばれる1種以上のものと;を含有するものを用いる。
【0036】
ここでガム類、セルロース、及び寒天よりなる群から選ばれる1種以上のもの;としては、前記した本開示の具材入り調味料において説明したとおりのものであり、それらと同様のものが用いられる。
【0037】
本開示の方法においては、調味液として、さらに、α化でん粉を含有するものが用いられる。このα化でん粉についても、前記した本開示の具材入り調味料において説明したとおりのものであり、それらと同様のものが用いられる。
また、膨潤前α化でん粉の配合割合(含有割合)なども、前記した本開示の具材入り調味料において説明したとおりのものであり、それらと同様の割合で用いられる。
【0038】
さらに、本開示の方法においては、前記した本開示の具材入り調味料において説明したと同様に、調味液として、さらに、酵母エキスを含むものが好ましい。
ここで酵母エキスは、前記した本開示の具材入り調味料において説明したとおりのものであり、それらと同様のものが用いられる。
【0039】
なお、本開示の方法において、卵黄と膨潤前α化でん粉との質量比についても、前記した本開示の具材入り調味料において説明したとおりである。
【実施例】
【0040】
以下、実施例により本開示をさらに具体的に説明する。但し、本開示はこれらに限定されるものではない。
(粘度の測定)
下記試験例で調製した試験品の液状調味料の粘度の測定は、測定用容器に調味料を約150cc充填し、20℃に調整した後、測定用容器をB型粘度計(東機産業社製、型名:BMII)にセットし、ローターを用いて(ローターNo.3、回転数:30rpmの条件)20秒間測定することによって行った。
【0041】
<試験例1:ガム類、でん粉等の検討>
表1に示す原料を表1に示す配合組成で用い、以下に示すとおりにして具材入り調味料を製造し、得られた具材入り調味料について、B型粘度計を用いて20℃での粘度の測定を行うと共に、素材(料理)とのからみ、見た目のなめらかさ、卵のコク、クリーミーな食感、さっぱり感についての官能評価を行った(実施例1~実施例5、並びに、比較例1~比較例2)。これらの条件及び結果を表1に示す。
なお、具材入り調味料の製造や、素材(料理)とのからみ、見た目のなめらかさ、卵のコク、クリーミーな食感、さっぱり感についての評価は、下記のとおりにして行った。
【0042】
(具材入り調味料の製造)
実施例1~5は、表1に示す原料を20℃で30分均一に混合し、次いで85℃で5分間加熱混合して、具材入り調味料を製造した。なお、水は、原料全体が100質量%となる残量を用いた。一方、比較例1、2は、表1に示す原料を加工澱粉の糊化のため90℃で5分加熱混合して、具材入り調味料を製造した。
なお、α化リン酸架橋でん粉(細粒)としては、粒径が0.5~4mmのものを用いた。
【0043】
(素材とのからみの評価)
得られた具材入り調味料を、素材(エビフライ)に一定量トッピングし、載置性を目視観察し、次の5段階で評価した。
なお、表中には、パネリスト4名の平均点を示した。少なくとも3点以上が求められている。他の評価も同様である。
5:素材(エビフライ)からたれ落ちず、非常に良くからむ。
4:素材(エビフライ)からほぼたれ落ちず、良くからむ。
3:素材(エビフライ)から多少たれ落ちるが、からむ。
2:素材(エビフライ)からたれ落ちが多く、からみにくい
1:素材(エビフライ)からたれ落ち、殆どからまない。
【0044】
(見た目のなめらかさの評価)
容器から取り出し、スプーンですくい取った状態
5:すっとのびて、表面がつややかである
4:のびがあり、多少表面につやがある
3:のびがある
2:のびがあまりなく、若干べとつき、又は若干ダマになる
1:のびがなく、べとつき、又はダマになる
【0045】
(卵のコクの評価)
得られた具材入り調味料につき、卵のコクを感じるかについて、次の5段階で評価した。
5:卵のコクを強く感じる。
4:卵のコクをやや強く感じる。
3:卵のコクを少し感じる。
2:卵のコクをあまり感じない。
1:卵のコクをほとんど感じない。
【0046】
(クリーミーな食感の評価)
得られた具材入り調味料につき、クリーミーな食感(舌ざわりが良く、クリーム状でトロっと口に広がり、柔らかでなめらかな食感)を感じるかについて、次の5段階で評価した。
5:クリーミーな食感をよく感じる。
4:クリーミーな食感を感じる。
3:クリーミーな食感を多少感じる。
2:クリーミーな食感を感じない。
1:舌ざわりが悪く、水っぽいまたはダマになって口に広がらない。
【0047】
(さっぱり感の評価)
得られた具材入り調味料につき、さっぱり感を感じるかについて、換言すればすっきりとした後味を感じるかについて、次の5段階で評価した。
5:さっぱり感を良く感じ、すっきりとした後味であるとした後味を良く感じる。
4:さっぱり感を感じ、ややすっきりとした後味であるとした後味を感じる。
3:さっぱり感を多少感じる。
2:さっぱり感をあまり感じず、ややしつこい後味である。
1:さっぱり感がなく、しつこい後味である。
【0048】
【0049】
表1の結果によれば、比較例1、2に示すように、α化されていない加工でん粉を用いて、α化されたでん粉もガム類等も用いない場合には、素材とのからみや見た目のなめらかさが悪くなるばかりか、クリーミーな食感も十分に得られず、好ましくないことが分かる。
一方、実施例1~5によれば、種々のガム類を用いた場合には、素材とのからみ、見た目のなめらかさ、卵のコク、クリーミーな食感、さっぱり感のいずれにおいても優れたことが分かる。特に実施例2のように、ガム類(キサンタンガム)とα化でん粉を用いた場合には、極めて良好な結果が得られた。
【0050】
<試験例2:粘度の適正範囲の検討>
表2に示す原料を表2に示す配合組成で用い、試験例1と同様にして、具材入り調味料を製造し、得られた具材入り調味料について、試験例1と同様にして、B型粘度計を用いて20℃の粘度の測定を行うと共に、素材とのからみ、見た目のなめらかさ、卵のコク、クリーミーな食感、さっぱり感についての官能評価を行った(実施例6~実施例8、並びに、比較例3~5)。これらの条件及び結果を表2に示す。
【0051】
【0052】
表2の結果によれば、比較例3、4に示すように、20℃の粘度が700mPa・s未満であると、素材とのからみや見た目のなめらかさが悪くなるばかりか、卵のコクやクリーミーな食感も十分に得られず、好ましくないことが分かる。
一方、比較例5に示すように、20℃の粘度が5000mPa・sを超えたものであると、素材とのからみや見た目のなめらかさが悪くなるばかりか、さっぱり感に劣るものとなるため、好ましくないことが分かる。
これに対して、実施例6~8のように、20℃の粘度が700mPa・s以上、5000mPa・s以下の場合には、素材とのからみ、見た目のなめらかさ、卵のコク、クリーミーな食感、さっぱり感のいずれにおいても優れたことが分かる。
【0053】
<試験例3:卵黄の適正範囲の検討>
表3に示す原料を表3に示す配合組成で用い、試験例1と同様にして、具材入り調味料を製造し、得られた具材入り調味料について、試験例1と同様にして、B型粘度計を用いて粘度(20℃)の測定を行うと共に、素材とのからみ、見た目のなめらかさ、卵のコク、クリーミーな食感、さっぱり感についての官能評価を行った(実施例9~実施例12、並びに、比較例6~7)。これらの条件及び結果を表3に示す。
【0054】
【0055】
表3の結果によれば、比較例6に示すように、卵黄が少な過ぎ、卵黄と膨潤前α化でん粉(細粒)との質量比において卵黄の比率が少な過ぎると、卵のコクが少なくなり、クリーミーな食感が十分でなくなるばかりか、見た目のなめらかさも失われがちとなり、好ましくないことが分かる。
一方、比較例7に示すように、卵黄が多過ぎると、さっぱり感が失われるばかりか、粘度が上昇し、保存時の変性を受けやすく、好ましくない。
【0056】
<試験例4:膨潤前α化でん粉の配合割合、並びに、卵黄と膨潤前α化でん粉の比率の検討>
表4(表4-1及び表4-2。以下同じ。)に示す原料を表4に示す配合組成で用い、試験例1と同様にして、具材入り調味料を製造し、得られた具材入り調味料について、試験例1と同様にして、B型粘度計を用いて20℃の粘度の測定を行うと共に、素材とのからみ、見た目のなめらかさ、卵のコク、クリーミーな食感、さっぱり感についての官能評価を行った(実施例13~実施例18、並びに、比較例8~9)。これらの条件及び結果を表4に示す。
【0057】
【0058】
【0059】
表4(表4-1及び表4-2)の結果によれば、比較例8、9に示すように、膨潤前α化でん粉の配合割合が多過ぎ、卵黄と膨潤前α化でん粉(細粒)の比率が6:1を下回ると、見た目のなめらかさが失われたり、さっぱり感が失われたりするため、好ましくないことが分かる。
【0060】
<試験例5;具材、油脂の検討>
表5に示す原料を表5に示す配合組成で用い、試験例1と同様にして、具材入り調味料を製造し、得られた具材入り調味料について、試験例1と同様にして、B型粘度計を用いて20℃の粘度の測定を行うと共に、素材とのからみ、見た目のなめらかさ、卵のコク、クリーミーな食感、さっぱり感についての官能評価を行った(実施例19~20、並びに、比較例10)。これらの条件及び結果を表5に示す。
【0061】
【0062】
表5の結果によれば、油脂含量が多くなると、さっぱり感が低下することが分かる。
また、実施例20に示すように、具材として、乾燥たまねぎの他に、加熱変性(茹で)卵白や赤パプリカやきゅうりを用いた場合にも、乾燥たまねぎを用いた場合と同様に、素材とのからみ、見た目のなめらかさ、卵のコク、クリーミーな食感、さっぱり感のいずれにおいても良好な結果が得られた。
【関連出願の相互参照】
【0063】
本出願は、2018年1月4日に日本国特許庁に出願された特願2018-000039に基づいて優先権を主張し、その全ての開示は完全に本明細書で参照により組み込まれる。