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特許7120870ポリイミドフィルムの製造方法及び金属張積層板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】ポリイミドフィルムの製造方法及び金属張積層板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/34 20060101AFI20220809BHJP
   B32B 37/15 20060101ALI20220809BHJP
   B29C 65/00 20060101ALI20220809BHJP
   B29C 65/70 20060101ALI20220809BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
B32B27/34
B32B37/15
B29C65/00
B29C65/70
H05K1/03 630H
H05K1/03 610N
H05K1/03 610P
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018185874
(22)【出願日】2018-09-28
(65)【公開番号】P2020055147
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-08-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115118
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 和浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095588
【弁理士】
【氏名又は名称】田治米 登
(74)【代理人】
【識別番号】100094422
【弁理士】
【氏名又は名称】田治米 惠子
(74)【代理人】
【識別番号】110000224
【氏名又は名称】特許業務法人田治米国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安達 康弘
(72)【発明者】
【氏名】山田 裕明
【審査官】大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-188954(JP,A)
【文献】特開2006-306972(JP,A)
【文献】特開2006-306973(JP,A)
【文献】特開2013-028146(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00、
H05K1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のポリイミド層(A)と、前記第1のポリイミド層(A)の少なくとも片側の面に積層された第2のポリイミド層(B)と、を備えたポリイミドフィルムの製造方法であって、
下記の工程I~III;
I)ケトン基を有するポリイミドを含む第1のポリイミド層(A)を準備する工程、
II)前記第1のポリイミド層(A)の上に、前記ケトン基と相互作用する性質を有する官能基を持つポリアミド酸(b)を含む樹脂層を積層する工程、
III)前記ポリアミド酸(b)を含む樹脂層を前記第1のポリイミド層(A)ごと熱処理し、前記ポリアミド酸(b)をイミド化して第2のポリイミド層(B)を形成する工程、
を含み、
前記ポリアミド酸(b)を含む樹脂層が、テトラカルボン酸残基(1b)及びジアミン残基(2b)を含むものであって、前記ジアミン残基(2b)1モルに対し、前記テトラカルボン酸残基(1b)が0.998モル以下であることを特徴とするポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項2】
前記第1のポリイミド層(A)を構成するポリイミドが、テトラカルボン酸残基(1a)及びジアミン残基(2a)を含むものであって、前記テトラカルボン酸残基(1a)及び前記ジアミン残基(2a)の合計100モル部に対して、前記ケトン基が5モル部以上であることを特徴とする請求項1に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項3】
前記第1のポリイミド層(A)が、ケトン基を有するポリアミド酸(a)を含む樹脂層を基材上に積層して、前記基材ごと前記ポリアミド酸(a)をイミド化して形成されたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項4】
金属層と、第1のポリイミド層(A)と、前記第1のポリイミド層(A)の片側の面に積層された第2のポリイミド層(B)と、を備えた金属張積層板の製造方法であって、
下記の工程i~iv;
i)金属層の上に、ケトン基を有するポリアミド酸(a)を含む樹脂層を表層部に有する、少なくとも1層以上のポリアミド酸の樹脂層を形成する工程、
ii)前記ポリアミド酸の樹脂層を前記金属層ごと熱処理し、前記ポリアミド酸をイミド化することにより、前記金属層の上に、ケトン基を有するポリイミドを含む第1のポリイミド層(A)を表層部として有するポリイミド層が積層された中間体を形成する工程、
iii)前記第1のポリイミド層(A)の上に、前記ケトン基と相互作用する性質を有する官能基を持つポリアミド酸(b)を含む樹脂層を積層する工程、
iv)前記ポリアミド酸(b)の樹脂層を前記中間体ごと熱処理し、前記ポリアミド酸(b)をイミド化して第2のポリイミド層(B)を形成する工程、
を含み、
前記ポリアミド酸(b)を含む樹脂層が、テトラカルボン酸残基(1b)及びジアミン残基(2b)を含むものであって、前記ジアミン残基(2b)1モルに対し、前記テトラカルボン酸残基(1b)が0.998モル以下であることを特徴とする金属張積層板の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載された方法で製造された前記金属張積層板の前記金属層を配線回路加工する工程を含む回路基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板などの材料として利用可能なポリイミドフィルム及び金属張積層板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化、軽量化、省スペース化の進展に伴い、薄く軽量で、可撓性を有し、屈曲を繰り返しても優れた耐久性を持つフレキシブル回路基板(FPC;Flexible Printed Circuits)の需要が増大している。FPCは、限られたスペースでも立体的かつ高密度の実装が可能であるため、例えば、HDD、DVD、携帯電話、スマートフォン等の電子機器の配線や、ケーブル、コネクター等の部品にその用途が拡大しつつある。FPCに用いる絶縁樹脂として、耐熱性や接着性に優れたポリイミドが注目されている。
【0003】
FPC材料としてのポリイミドフィルムや、ポリイミド絶縁層を有する金属張積層板の製造方法として、ポリアミド酸の樹脂液を塗布することによってポリイミド前駆体層を形成した後、イミド化してポリイミド層を形成するキャスト法が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2)。
【0004】
キャスト法によって、複数のポリイミド層を有するポリイミドフィルムや金属張積層板を製造する場合、一般的には、銅箔等の基材上に、複数層のポリイミド前駆体層を順次形成した後、これらを一括してイミド化することが行われている。しかし、複数のポリイミド前駆体層を一括してイミド化すると、ポリイミド前駆体層中の溶剤やイミド化水が抜け切らず、残留溶剤やイミド化水によってポリイミド層間での発泡や剥離が生じ、歩留まりの低下を招くという問題があった。
【0005】
上記発泡や剥離の問題は、ポリイミド前駆体層を一層毎にイミド化し、その上にポリアミド酸の樹脂液を塗布することを繰り返すことによって解決できる。しかし、一旦イミド化したポリイミド層上に、さらに、ポリアミド酸の樹脂液を塗布してイミド化させると、層間の密着性が十分に得られ難くなる。従来技術では、ポリアミド酸の樹脂液を塗布する前に、下地のポリイミドフィルムやポリイミド層の表面に、コロナ処理、プラズマ処理などの表面処理を施すことによって、層間の密着性を改善する提案がなされている(例えば、特許文献3、4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開WO2016/159104号
【文献】特開2004-322441号公報
【文献】特開2010-116443号公報
【文献】特開2012-134478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献3、4のように、層間の密着性を得るためにイミド化されたポリイミドに対して表面処理を行う方法では、そのための設備が必要であるとともに、工程数が増加して製造のスループットが低下してしまう、という問題がある。
【0008】
従って、本発明の目的は、複数のポリイミド層を有するポリイミドフィルム又は金属張積層板の製造において、表面処理などの特別な工程を必要としなくても、ポリイミド層間の密着性を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、キャスト法によって形成されるポリイミド前駆体層の樹脂成分と、その下地となるポリイミド層の樹脂成分との相互作用を利用することによって、表面処理などの特別な工程を必要としなくても、ポリイミド層間の密着性を改善できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明のポリイミドフィルムの製造方法は、第1のポリイミド層(A)と、前記第1のポリイミド層(A)の少なくとも片側の面に積層された第2のポリイミド層(B)と、を備えたポリイミドフィルムの製造方法である。
本発明のポリイミドフィルムの製造方法は、下記の工程I~III;
I)ケトン基を有するポリイミドを含む第1のポリイミド層(A)を準備する工程、
II)前記第1のポリイミド層(A)の上に、前記ケトン基と相互作用する性質を有する官能基を持つポリアミド酸(b)を含む樹脂層を積層する工程、
III)前記ポリアミド酸(b)を含む樹脂層を前記第1のポリイミド層(A)ごと熱処理し、前記ポリアミド酸(b)をイミド化して第2のポリイミド層(B)を形成する工程、
を含むものである。
【0011】
本発明のポリイミドフィルムの製造方法は、前記第1のポリイミド層(A)を構成するポリイミドが、テトラカルボン酸残基(1a)及びジアミン残基(2a)を含むものであって、前記テトラカルボン酸残基(1a)及び前記ジアミン残基(2a)の合計100モル部に対して、前記ケトン基が5モル部以上であってもよい。
【0012】
本発明のポリイミドフィルムの製造方法は、前記ポリアミド酸(b)を含む樹脂層が、テトラカルボン酸残基(1b)及びジアミン残基(2b)を含むものであって、前記ジアミン残基(2b)1モルに対し、前記テトラカルボン酸残基(1b)が1モル未満であってもよい。
【0013】
本発明のポリイミドフィルムの製造方法は、前記第1のポリイミド層(A)が、ケトン基を有するポリアミド酸(a)を含む樹脂層を基材上に積層して、前記基材ごと前記ポリアミド酸(a)をイミド化して形成されたものであってもよい。
【0014】
本発明の金属張積層板の製造方法は、金属層と、第1のポリイミド層(A)と、前記第1のポリイミド層(A)の片側の面に積層された第2のポリイミド層(B)と、を備えた金属張積層板の製造方法である。
本発明の金属張積層板の製造方法は、下記の工程i~iv;
i)金属層の上に、ケトン基を有するポリアミド酸(a)を含む樹脂層を表層部に有する、少なくとも1層以上のポリアミド酸の樹脂層を形成する工程、
ii)前記ポリアミド酸の樹脂層を前記金属層ごと熱処理し、前記ポリアミド酸をイミド化することにより、前記金属層の上に、ケトン基を有するポリイミドを含む第1のポリイミド層(A)を表層部として有するポリイミド層が積層された中間体を形成する工程、
iii)前記第1のポリイミド層(A)の上に、前記ケトン基と相互作用する性質を有する官能基を持つポリアミド酸(b)を含む樹脂層を積層する工程、
iv)前記ポリアミド酸(b)の樹脂層を前記中間体ごと熱処理し、前記ポリアミド酸(b)をイミド化して第2のポリイミド層(B)を形成する工程、
を含むものである。
【0015】
本発明の回路基板の製造方法は、上記方法で製造された前記金属張積層板の前記金属層を配線回路加工する工程を含むものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明方法によれば、スループットを損なうことなく、ポリイミド層間の密着性に優れたポリイミドフィルム又は金属張積層板を製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0018】
[第1の実施の形態:ポリイミドフィルムの製造方法]
本実施の形態のポリイミドフィルムの製造方法は、第1のポリイミド層(A)と、第1のポリイミド層(A)の少なくとも片側の面に積層された第2のポリイミド層(B)と、を備えたポリイミドフィルムを製造する方法である。本実施の形態により得られるポリイミドフィルムは、第1のポリイミド層(A)及び第2のポリイミド層(B)以外のポリイミド層を有していてもよく、また、任意の基材に積層されていてもよい。
【0019】
本実施の形態のポリイミドフィルムの製造方法は、下記の工程I~IIIを含む。
【0020】
(工程I):
工程Iでは、ケトン基を有するポリイミドを含む第1のポリイミド層(A)を準備する。ケトン基を有するポリイミドは、その分子内にケトン基(-CO-)を有する。ケトン基は、ポリイミドの原料である酸二無水物及び/又はジアミン化合物に由来するものである。すなわち、第1のポリイミド層(A)を構成するポリイミドは、テトラカルボン酸残基(1a)及びジアミン残基(2a)を含むものであって、テトラカルボン酸残基(1a)又はジアミン残基(2a)のいずれか片方又は両方に、ケトン基を有する残基が含まれている。
なお、本発明において、「テトラカルボン酸残基」とは、テトラカルボン酸二無水物から誘導された4価の基のことを表し、「ジアミン残基」とは、ジアミン化合物から誘導された2価の基のことを表す。また、「ジアミン化合物」は、末端の二つのアミノ基における水素原子が置換されていてもよい。
【0021】
テトラカルボン酸残基(1a)中に含まれるケトン基を有する残基としては、例えば、
3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3’,3,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-(パラフェニレンジカルボニル)ジフタル酸無水物、4,4’-(メタフェニレンジカルボニル)ジフタル酸無水物等の「分子内にケトン基を有するテトラカルボン酸二無水物」から誘導される残基を挙げることができる。
【0022】
テトラカルボン酸残基(1a)において、ケトン基を有する残基以外としては、例えば後記実施例に示すもののほか、一般的にポリイミドの合成に使用されているテトラカルボン酸二無水物から誘導される残基を挙げることができる。
【0023】
ジアミン残基(2a)中に含まれるケトン基を有する残基としては、例えば、
3,3’-ジアミノベンゾフェノン、3,4’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ビス[4-(4-アミノ‐α,α‐ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゾフェノン4,4’―ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゾフェノン(BABP)、1,3-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン(BABB)、1,4-ビス(4-アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノベンゾイル)ベンゼン等の「分子内にケトン基を有するジアミン化合物」から誘導される残基を挙げることができる。
【0024】
ジアミン残基(2a)において、ケトン基を有する残基以外としては、例えば後記実施例に示すもののほか、一般的にポリイミドの合成に使用されているジアミン化合物から誘導される残基を挙げることができる。
【0025】
第1のポリイミド層(A)は、ケトン基を有するポリイミド以外の他のポリイミドを含んでいてもよい。ただし、第2のポリイミド層(B)との十分な密着性を確保するため、第1のポリイミド層(A)を構成するポリイミドの全量に対して、10モル%以上がケトン基を有するポリイミドであることが好ましく、30モル%以上のポリイミドが、ケトン基を有するポリイミドであることがより好ましい。
また、第1のポリイミド層(A)を構成するポリイミド中に存在するケトン基の量(-CO-として)は、テトラカルボン酸残基(1a)及びジアミン残基(2a)の合計100モル部に対して、5~200モル部の範囲内であることが好ましく、15~100モル部の範囲内であることがより好ましい。第1のポリイミド層(A)を構成するポリイミド中に存在するケトン基が5モル部未満であると、工程IIで積層されるポリアミド酸(b)を含む樹脂層中に存在する官能基(例えば末端アミノ基)と相互作用を起こす確率が低くなって、層間の密着性が十分に得られないことがある。
【0026】
第1のポリイミド層(A)を形成する方法としては、任意の基材の上に、ケトン基を有するポリアミド酸(a)を含む樹脂溶液を塗布する方法(キャスト法)、任意の基材の上にケトン基を有するポリアミド酸(a)を含むゲルフィルムを積層する方法などによって形成することが可能である。
【0027】
キャスト法において、ポリアミド酸(a)を含む樹脂溶液を塗布する方法は特に制限されず、例えばコンマ、ダイ、ナイフ、リップ等のコーターにて塗布することが可能である。
【0028】
なお、第1のポリイミド層(A)は、他の樹脂層と積層された状態でもよいし、任意の基材に積層された状態であってもよい。
【0029】
また、第1のポリイミド層(A)は、ケトン基を有するポリアミド酸(a)を含む樹脂層を基材上に積層して、基材ごとポリアミド酸(a)をイミド化して形成されたものであることが好ましい。このように、第1のポリイミド層(A)が基材上にキャスト法で形成された場合でも、第2のポリイミド層(B)を形成する前にイミド化を完了させるため、溶剤やイミド化水が除去されており、発泡や層間剥離などの問題が生じることがない。
【0030】
また、第1のポリイミド層(A)は、カットシート状、ロール状のもの、又はエンドレスベルト状などの形状とすることができるが、生産性を得るためには、ロール状又はエンドレスベルト状の形態とし、連続生産可能な形式とすることが効率的である。さらに、回路基板における配線パターン精度の改善効果をより大きく発現させる観点から、第1のポリイミド層(A)は長尺に形成されたロール状のものが好ましい。
【0031】
(工程II)
工程IIでは、工程Iで得た第1のポリイミド層(A)の上に、前記ケトン基と相互作用する性質を有する官能基を持つポリアミド酸(b)を含む樹脂層を積層する。
工程IIにおいて、「ケトン基と相互作用する性質を有する官能基」としては、ケトン基との間で、例えば分子間力による物理的相互作用や、共有結合による化学的相互作用などを生じ得る官能基であれば特に制限はないが、その代表例としてアミノ基(-NH)を挙げることができる。
前記官能基がアミノ基である場合、ポリアミド酸(b)として、末端にアミノ基を有するポリアミド酸を用いることが可能であり、好ましくは末端の大部分がアミノ基であるポリアミド酸、さらに好ましくは末端の全てがアミノ基であるポリアミド酸を使用することができる。このように、アミノ末端を豊富に有するポリアミド酸(b)は、原料中のテトラカルボン酸二無水物に対してジアミン化合物が過剰となるように、両成分のモル比を調節することによって形成できる。例えば、ジアミン化合物1モルに対し、テトラカルボン酸二無水物が1モル未満となるように原料の仕込み比率を調節することで、確率的に、合成されるポリアミド酸の大部分を、アミノ末端(-NH)を有するポリアミド酸(b)にすることができる。ジアミン化合物1モルに対し、テトラカルボン酸二無水物の仕込み比率が1モルを超えると、アミノ末端(-NH)がほとんど残らなくなるため好ましくない。一方、ジアミン化合物に対するテトラカルボン酸二無水物の仕込み比率が小さすぎると、ポリアミド酸の高分子量化が十分に進行しない。そのため、ジアミン化合物1モルに対するテトラカルボン酸二無水物の仕込み比率は、例えば0.970~0.998モルの範囲内とすることが好ましく、0.980~0.995モルの範囲内がより好ましい。
【0032】
ポリアミド酸(b)は、一般的にポリイミドの合成に使用されているテトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物を原料として合成することができる。なお、分子内にケトン基を有するテトラカルボン酸二無水物や、分子内にケトン基を有するジアミン化合物を原料としてもよい。
【0033】
また、原料のジアミン化合物の一部分もしくは全部に替えて、分子内にアミノ基を豊富に含む化合物(例えばトリアミン化合物など)を使用することによって、アミノ末端を豊富に有するポリアミド酸(b)を合成することも可能である。
さらに、原料中のテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物の仕込み比率は等モルとし、アミノ基を含む化合物(例えば、トリアミン化合物など)を少量添加することによって、アミノ末端を豊富に有するポリアミド酸(b)を含む樹脂層を形成することも可能である。
【0034】
ポリアミド酸(b)を含む樹脂層の形成には、ポリアミド酸(b)とともに、それ以外の他のポリアミド酸を混合して使用してもよい。当該他のポリミド酸としては、一般的にポリイミドの合成に使用されているテトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物を原料として、それらのモル比が等モルで合成されたポリアミド酸を使用できる。ただし、第1のポリイミド層(A)との十分な密着性を確保する観点から、ポリアミド酸(b)を含む樹脂層は、構成するポリアミド酸の全量に対して、10モル%以上がポリアミド酸(b)であることが好ましく、30モル%以上のポリアミド酸がポリアミド酸(b)であることがより好ましい。
【0035】
ポリアミド酸(b)を含む樹脂層は、第1のポリイミド層(A)の上にポリアミド酸(b)を含む樹脂溶液を塗布する方法(キャスト法)、第1のポリイミド層(A)の上にポリアミド酸(b)を含むゲルフィルムを積層する方法などによって形成することが可能であるが、第1のポリイミド層(A)と第2のポリイミド層(B)との密着性を高めるために、キャスト法によることが好ましい。また、ポリアミド酸(b)を含む樹脂層の形成に際して、事前に第1のポリイミド層(A)の表面に、プラズマ処理、コロナ処理などの表面処理を行う必要はないが、これらの表面処理を行うことも可能である。
【0036】
キャスト法において、ポリアミド酸(b)を含む樹脂溶液を塗布する方法は特に制限されず、例えばコンマ、ダイ、ナイフ、リップ等のコーターにて塗布することが可能である。
【0037】
このようにして得られるポリアミド酸(b)を含む樹脂層は、テトラカルボン酸残基(1b)及びジアミン残基(2b)を含むものであって、ジアミン残基(2b)1モルに対し、テトラカルボン酸残基(1b)を1モル未満、好ましくは0.970~0.998モルの範囲内、より好ましくは0.980~0.995モルの範囲内で含有し、アミノ末端(-NH)を豊富に含有する樹脂層となる。
【0038】
(工程III)
工程IIIでは、ポリアミド酸(b)を含む樹脂層を、第1のポリイミド層(A)ごと熱処理し、ポリアミド酸(b)をイミド化して第2のポリイミド層(B)を形成する。
イミド化の方法は、特に制限されず、例えば、80~400℃の範囲内の温度条件で1~60分間の範囲内の時間加熱するといった熱処理が好適に採用される。金属層を含む場合は、酸化を抑制するため、低酸素雰囲気下での熱処理が好ましく、具体的には、窒素又は希ガスなどの不活性ガス雰囲気下、水素などの還元ガス雰囲気下、あるいは真空中で行うことが好ましい。
【0039】
また、イミド化と並行して、第1のポリイミド層(A)のポリイミド鎖中に存在するケトン基と、ポリアミド酸(b)を含む樹脂層中に存在する前記官能基(例えば、豊富な末端アミノ基)との間で相互作用が生じ、第1のポリイミド層(A)と第2のポリイミド層(B)との密着性が、両層を構成するポリイミドの特性(例えば、熱可塑性であるか、非熱可塑性であるか、など)を超えて大きく向上するものと考えられる。かかる相互作用については、そのすべての機構を解明できていないが、前記官能基がアミノ基である場合には、一つの可能性として、ポリアミド酸(b)をイミド化する際の熱処理によって、上記ケトン基と末端のアミノ基との間でイミン結合が生じていることが推測される。つまり、第1のポリイミド層(A)のポリイミド鎖中のケトン基と、ポリアミド酸(b)の末端のアミノ基との間で、加熱によって脱水縮合反応が生じてイミン結合が形成され、第1のポリイミド層(A)中のポリイミド鎖と、イミド化後の第2のポリイミド層(B)とが化学的に接着することによって、第1のポリイミド層(A)と第2のポリイミド層(B)の接着力を強めている、と推定される。
【0040】
なお、第1のポリイミド層(A)と第2のポリイミド層(B)が上記と逆の関係になる場合には、層間の密着性の向上効果が得られない。すなわち、まず、ケトン基と相互作用する性質を有する官能基を持つポリアミド酸(b)を含む樹脂層をイミド化して1層目のポリイミド層を形成し、その上に、ケトン基を有するポリアミド酸(a)を含む樹脂層を形成してから熱処理によってイミド化し、2層目のポリイミド層を形成する場合は、1層目と2層目の密着性が両層を構成するポリイミドの特性(例えば、熱可塑性であるか、非熱可塑性であるか、など)を超えて改善することはない。その理由として、硬化したポリイミド中では、前記官能基としての末端のアミノ基の移動が制限されて反応性が低下することから、上記相互作用が生じにくくなるためと考えられる。
【0041】
第1のポリイミド層(A)及び第2のポリイミド層(B)は、必要に応じて、無機フィラーを含有してもよい。具体的には、例えば二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0042】
以上の工程I~IIIによって、工程数の増加によるスループット低下を生じさせることなく、第1のポリイミド層(A)と第2のポリイミド層(B)との密着性に優れたポリイミドフィルムを製造することができる。
【0043】
[第2の実施の形態:金属張積層板の製造方法]
金属層と、第1のポリイミド層(A)と、前記第1のポリイミド層(A)の片側の面に積層された第2のポリイミド層(B)と、を備えた金属張積層板の製造方法であって、下記の工程i~ivを含むものである。
【0044】
(工程i)
工程iでは、金属層の上に、ケトン基を有するポリアミド酸(a)の樹脂層を表層部に有する、少なくとも1層以上のポリアミド酸の樹脂層を形成する。
【0045】
金属層としては、金属箔を好ましく使用することができる。金属箔の材質としては、特に制限はないが、例えば、銅、ステンレス、鉄、ニッケル、ベリリウム、アルミニウム、亜鉛、インジウム、銀、金、スズ、ジルコニウム、タンタル、チタン、鉛、マグネシウム、マンガン及びこれらの合金等が挙げられる。この中でも、特に銅又は銅合金が好ましい。銅箔としては、圧延銅箔でも電解銅箔でもよく、市販されている銅箔を好ましく用いることができる。
【0046】
本実施の形態において、例えばFPCの製造に用いる場合の金属層の好ましい厚みは3~50μmの範囲内であり、より好ましくは5~30μmの範囲内である。
【0047】
金属層として使用する金属箔は、表面に、例えば防錆処理、サイディング、アルミニウムアルコラート、アルミニウムキレート、シランカップリング剤等の表面処理が施されていてもよい。また、金属箔は、カットシート状、ロール状のもの、又はエンドレスベルト状などの形状とすることができるが、生産性を得るためには、ロール状又はエンドレスベルト状の形態とし、連続生産可能な形式とすることが効率的である。さらに、回路基板における配線パターン精度の改善効果をより大きく発現させる観点から、金属箔は長尺に形成されたロール状のものが好ましい。
【0048】
第1のポリイミド層(A)の形成にあたっては、ケトン基を有するポリアミド酸(a)を含む樹脂層が表層部となるように、金属層の上に、少なくとも1層以上のポリアミド酸の樹脂層を形成する。この場合、金属層の上にポリアミド酸の樹脂溶液を塗布する方法(キャスト法)、金属層の上にポリアミド酸(a)を含むゲルフィルムを積層する方法などによって形成することが可能である。
なお、金属層と、ケトン基を有するポリアミド酸(a)を含む樹脂層との間には、任意の樹脂層(他のポリアミド酸の樹脂層を含む)を有していてもよく、その場合は、該任意の樹脂層上に、上記方法によってケトン基を有するポリアミド酸(a)を含む樹脂層を形成できる。また、金属層の上に、直接、ケトン基を有するポリアミド酸(a)の樹脂層を形成する場合は、金属層と第1のポリイミド層(A)との接着性を高めるために、キャスト法によることが好ましい。
【0049】
キャスト法において、ポリアミド酸(a)を含む樹脂溶液を塗布する方法は特に制限されず、例えばコンマ、ダイ、ナイフ、リップ等のコーターにて塗布することが可能である。
【0050】
(工程ii)
工程iiでは、ケトン基を有するポリアミド酸(a)を含む樹脂層を表層部に有するポリアミド酸の樹脂層を前記金属層ごと熱処理し、前記ポリアミド酸をイミド化する。これによって、金属層の上に、ケトン基を有するポリイミドを含む第1のポリイミド層(A)を表層部として有するポリイミド層が積層された中間体を形成する。
【0051】
ポリアミド酸のイミド化については、上記第1の実施の形態の工程(III)に記載した方法で行うことができる。本実施の形態では、ケトン基を有するポリアミド酸(a)を含む樹脂層を表層部に有するポリアミド酸の樹脂層を、金属箔上にキャスト法によって形成する場合であっても、第2のポリイミド層(B)を形成する前にイミド化を完了させているため、溶剤やイミド化水が除去されており、発泡や層間剥離などの問題が生じることがない。
【0052】
(工程iii)
工程iiiでは、前記第1のポリイミド層(A)の上に、前記ケトン基と相互作用する性質を有する官能基を持つポリアミド酸(b)を含む樹脂層を積層する。
本工程iiiは、上記第1の実施の形態の工程IIと同様に実施できる。
【0053】
(工程iv)
工程iiiで中間体上に積層したポリアミド酸(b)を含む樹脂層を、中間体ごと熱処理し、ポリアミド酸(b)をイミド化して第2のポリイミド層(B)を形成する。
本工程ivは、上記第1の実施の形態の工程IIIと同様に実施できる。
【0054】
以上の工程i~ivによって、工程数の増加によるスループット低下を生じさせることなく、第1のポリイミド層(A)と第2のポリイミド層(B)との密着性に優れた金属張積層板を製造することができる。
【0055】
本実施の形態における他の構成及び効果は、第1の実施の形態と同様である。
【0056】
<ポリイミド>
次に、第1のポリイミド層(A)及び第2のポリイミド層(B)を形成するための好ましいポリイミドについて説明する。第1のポリイミド層(A)の形成には、上記「分子内にケトン基を有するテトラカルボン酸二無水物」及び/又は「分子内にケトン基を有するジアミン化合物」と、一般的にポリイミドの合成原料として用いられる酸無水物成分及びジアミン成分とを組み合わせて使用することが好ましい。第2のポリイミド層(B)の形成には、一般的にポリイミドの合成原料として用いられる酸無水物成分及びジアミン成分を特に制限なく使用可能である。
【0057】
ポリイミドフィルム又は金属張積層板において、第1のポリイミド層(A)を構成するポリイミドは、熱可塑性ポリイミド、非熱可塑性ポリイミドのいずれでもよいが、下地となる基材や金属箔、樹脂層との接着性の確保が容易であるという理由から、熱可塑性ポリイミドが好ましい。
【0058】
また、第2のポリイミド層(B)を構成するポリイミドは、熱可塑性ポリイミド、非熱可塑性ポリイミドのどちらでもよいが、非熱可塑性ポリイミドとする場合に発明の効果が顕著に発揮される。
すなわち、イミド化が完了している第1のポリイミド層(A)上に、非熱可塑性ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸の樹脂層をキャスト法等の方法で積層してイミド化しても、通常は、ポリイミド層間の密着性がほとんど得られない。しかし、本実施の形態では、上述のケトン基と前記官能基(例えば末端アミノ基)との相互作用によって、第2のポリイミド層(B)を構成するポリイミドが熱可塑性であるか非熱可塑性であるかにかかわらず、第1のポリイミド層(A)との層間で優れた密着性が得られる。また、第2のポリイミド層(B)を非熱可塑性ポリイミドとすることによって、ポリイミドフィルム又は金属張積層板におけるポリイミド層の機械的強度を担保する主たる層(ベース層)としての機能を奏することができる。
【0059】
以上から、ポリイミドフィルム又は金属張積層板において、第1のポリイミド層(A)として熱可塑性ポリイミド層、第2のポリイミド層(B)として非熱可塑性ポリイミド層が積層された構造を形成することは、最も好ましい態様である。
【0060】
なお、「熱可塑性ポリイミド」とは、一般にガラス転移温度(Tg)が明確に確認できるポリイミドのことであるが、本発明では、動的粘弾性測定装置(DMA)を用いて測定した、30℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上であり、300℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa未満であるポリイミドをいう。また、「非熱可塑性ポリイミド」とは、一般に加熱しても軟化、接着性を示さないポリイミドのことであるが、本発明では、動的粘弾性測定装置(DMA)を用いて測定した、30℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上であり、300℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上であるポリイミドをいう。
【0061】
(熱可塑性ポリイミド)
熱可塑性ポリイミドは、酸無水物成分とジアミン成分とを反応させて得られる。熱可塑性ポリイミドの原料となる酸無水物成分としては、ポリイミドの合成に使用される一般的な酸無水物を特に制限なく利用できるが、特に、金属層との接着性と低誘電特性とを両立させる観点から、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とピロメリット酸二無水物(PMDA)とを組み合わせて使用することが好ましい。ビフェニルテトラカルボン酸二無水物は、ポリイミドの半田耐熱性低下に影響を与えない程度にガラス転移温度を下げる効果があり、金属層等との十分な接着力を確保することができる。また、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物は、ポリイミドのイミド基濃度を低下させるとともに、ポリマーの秩序構造を形成しやすくして、分子の運動抑制により誘電特性を改善する。さらに、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物は、ポリイミドの極性基の減少に寄与するので吸湿特性を改善する。このようなことから、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物は、FPCの伝送損失を低くすることができる。なお、「イミド基濃度」は、ポリイミド中のイミド基部(-(CO)-N-)の分子量を、ポリイミドの構造全体の分子量で除した値を意味する。
【0062】
ビフェニルテトラカルボン酸二無水物としては、例えば3,3',4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、2,3’,3,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物などを挙げることができる。ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を上記範囲内で使用することによって、剛直構造による秩序構造が形成されるので、低誘電正接化が可能になるとともに、熱可塑性でありながら、ガス透過性が低く、長期耐熱接着性に優れた熱可塑性ポリイミドが得られる。ピロメリット酸二無水物は、ガラス転移温度の制御の役割を担うモノマーであり、ポリイミドの半田耐熱性の向上に寄与する。
【0063】
なお、熱可塑性ポリイミドは、酸無水物成分として、上記以外の酸無水物を使用可能である。そのような酸無水物としては、例えば、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物、2,2',3,3'-、2,3,3',4'-又は3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3',3,4'-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、3,3'',4,4''-、2,3,3'',4''-又は2,2'',3,3''-p-テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)-プロパン二無水物、ビス(2,3-又は3.4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1-ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,2,7,8-、1,2,6,7-又は1,2,9,10-フェナンスレン-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)テトラフルオロプロパン二無水物、2,3,5,6-シクロヘキサン二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,8-ジメチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロナフタレン-1,2,5,6-テトラカルボン酸二無水物、2,6-又は2,7-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-(又は1,4,5,8-)テトラクロロナフタレン-1,4,5,8-(又は2,3,6,7-)テトラカルボン酸二無水物、2,3,8,9-、3,4,9,10-、4,5,10,11-又は5,6,11,12-ペリレン-テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、ピラジン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、チオフェン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、4,4’-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルメタン二無水物、2,2-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物等が挙げられる。
【0064】
熱可塑性ポリイミドの原料となるジアミン成分としては、ポリイミドの合成に使用される一般的なジアミンを特に制限なく利用できるが、下記の一般式(1)~(8)で表されるジアミン化合物から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0065】
【化1】
【0066】
上記式(1)~(7)において、Rは独立に炭素数1~6の1価の炭化水素基又はアルコキシ基を示し、連結基Aは独立に-O-、-S-、-CO-、-SO-、-SO-、-COO-、-CH-、-C(CH-、-NH-又は-CONH-から選ばれる2価の基を示し、nは独立に0~4の整数を示す。ただし、式(3)中から式(2)と重複するものは除き、式(5)中から式(4)と重複するものは除くものとする。ここで、「独立に」とは、上記式(1)~(7)の内の一つにおいて、または二つ以上において、複数の連結基A、複数のR若しくは複数のnが、同一でもよいし、異なっていてもよいことを意味する。
【0067】
【化2】
【0068】
上記式(8)において、連結基Xは単結合、又は-CONH-を示し、Yは独立にハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~3の1価の炭化水素基又はアルコキシ基を示し、nは0~2の整数を示し、p及びqは独立して0~4の整数を示す。
【0069】
なお、上記式(1)~(8)において、末端の二つのアミノ基における水素原子は置換されていてもよく、例えば-NR(ここで、R,Rは、独立してアルキル基などの任意の置換基を意味する)であってもよい。
【0070】
式(1)で表されるジアミン(以下、「ジアミン(1)」と記すことがある)は、2つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。このジアミン(1)は、少なくとも1つのベンゼン環に直結したアミノ基と2価の連結基Aとがメタ位にあることで、ポリイミド分子鎖が有する自由度が増加して高い屈曲性を有しており、ポリイミド分子鎖の柔軟性の向上に寄与すると考えられる。従って、ジアミン(1)を用いることで、ポリイミドの熱可塑性が高まる。ここで、連結基Aとしては、-O-、-CH-、-C(CH-、-CO-、-SO-、-S-が好ましい。
【0071】
ジアミン(1)としては、例えば、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルプロパン、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルプロパン、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、(3,3’-ビスアミノ)ジフェニルアミン等を挙げることができる。
【0072】
式(2)で表されるジアミン(以下、「ジアミン(2)」と記すことがある)は、3つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。このジアミン(2)は、少なくとも1つのベンゼン環に直結したアミノ基と2価の連結基Aとがメタ位にあることで、ポリイミド分子鎖が有する自由度が増加して高い屈曲性を有しており、ポリイミド分子鎖の柔軟性の向上に寄与すると考えられる。従って、ジアミン(2)を用いることで、ポリイミドの熱可塑性が高まる。ここで、連結基Aとしては、-O-が好ましい。
【0073】
ジアミン(2)としては、例えば1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、3-[4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ]ベンゼンアミン、3-[3-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ]ベンゼンアミン等を挙げることができる。
【0074】
式(3)で表されるジアミン(以下、「ジアミン(3)」と記すことがある)は、3つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。このジアミン(3)は、1つのベンゼン環に直結した、2つの2価の連結基Aが互いにメタ位にあることで、ポリイミド分子鎖が有する自由度が増加して高い屈曲性を有しており、ポリイミド分子鎖の柔軟性の向上に寄与すると考えられる。従って、ジアミン(3)を用いることで、ポリイミドの熱可塑性が高まる。ここで、連結基Aとしては、-O-が好ましい。
【0075】
ジアミン(3)としては、例えば1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE-R)、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(APB)、4,4’-[2-メチル-(1,3-フェニレン)ビスオキシ]ビスアニリン、4,4’-[4-メチル-(1,3-フェニレン)ビスオキシ]ビスアニリン、4,4’-[5-メチル-(1,3-フェニレン)ビスオキシ]ビスアニリン等を挙げることができる。これらの中でも、熱可塑性ポリイミドの高CTE化に寄与するとともに、イミド基濃度を減少させ、誘電特性を改善するモノマーとして、特に1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE-R)が好ましい。
【0076】
式(4)で表されるジアミン(以下、「ジアミン(4)」と記すことがある)は、4つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。このジアミン(4)は、少なくとも1つのベンゼン環に直結したアミノ基と2価の連結基Aとがメタ位にあることで高い屈曲性を有しており、ポリイミド分子鎖の柔軟性の向上に寄与すると考えられる。従って、ジアミン(4)を用いることで、ポリイミドの熱可塑性が高まる。ここで、連結基Aとしては、-O-、-CH-、-C(CH-、-SO-、-CO-、-CONH-が好ましい。
【0077】
ジアミン(4)としては、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)]ベンゾフェノン、ビス[4,4’-(3-アミノフェノキシ)]ベンズアニリド等を挙げることができる。
【0078】
式(5)で表されるジアミン(以下、「ジアミン(5)」と記すことがある)は、4つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。このジアミン(5)は、少なくとも1つのベンゼン環に直結した、2つの2価の連結基Aが互いにメタ位にあることで、ポリイミド分子鎖が有する自由度が増加して高い屈曲性を有しており、ポリイミド分子鎖の柔軟性の向上に寄与すると考えられる。従って、ジアミン(5)を用いることで、ポリイミドの熱可塑性が高まる。ここで、連結基Aとしては、-O-が好ましい。
【0079】
ジアミン(5)としては、4-[3-[4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ]フェノキシ]アニリン、4,4’-[オキシビス(3,1-フェニレンオキシ)]ビスアニリン等を挙げることができる。
【0080】
式(6)で表されるジアミン(以下、「ジアミン(6)」と記すことがある)は、4つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。このジアミン(6)は、少なくとも2つのエーテル結合を有することで高い屈曲性を有しており、ポリイミド分子鎖の柔軟性の向上に寄与すると考えられる。従って、ジアミン(6)を用いることで、ポリイミドの熱可塑性が高まる。ここで、連結基Aとしては、-C(CH-、-O-、-SO-、-CO-が好ましい。
【0081】
ジアミン(6)としては、例えば、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル(BAPE)、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPS)、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン(BAPK)等を挙げることができる。これらの中でも、金属層との接着性向上に大きく寄与するモノマーとして、2,2‐ビス[4‐(4‐アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)が特に好ましい。
【0082】
式(7)で表されるジアミン(以下、「ジアミン(7)」と記すことがある)は、4つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。このジアミン(7)は、ジフェニル骨格の両側に、それぞれ屈曲性の高い2価の連結基Aを有するため、ポリイミド分子鎖の柔軟性の向上に寄与すると考えられる。従って、ジアミン(7)を用いることで、ポリイミドの熱可塑性が高まる。ここで、連結基Aとしては、-O-が好ましい。
【0083】
ジアミン(7)としては、例えば、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)]ビフェニル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)]ビフェニル等を挙げることができる。
【0084】
一般式(8)で表されるジアミン(以下、「ジアミン(8)」と記すことがある)は、1ないし3つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。ジアミン(8)は、剛直構造を有しているため、ポリマー全体に秩序構造を付与する作用を有している。そのため、ジアミン(1)~ジアミン(7)の1種以上と、ジアミン(8)の1種以上とを所定の比率で組み合わせて用いることによって、低誘電正接化が可能になるとともに、熱可塑性でありながら、ガス透過性が低く、長期耐熱接着性に優れたポリイミドが得られる。ここで、連結基Xとしては、単結合、-CONH-が好ましい。
【0085】
ジアミン(8)としては、例えば、パラフェニレンジアミン(PDA)、4,4’-ジアミノ-2,2’-ジメチルビフェニル(m-TB)、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルジフェニル、4,4’-ジアミノ-2,2’-n-プロピルビフェニル(m-NPB)、2’-メトキシ-4,4’-ジアミノベンズアニリド(MABA)、4,4‘-ジアミノベンズアニリド(DABA)、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル等を挙げることができる。これらの中でも、熱可塑性ポリイミドの誘電特性の改善、更に低吸湿化や高耐熱化に大きく寄与するモノマーとして、特に4,4’-ジアミノ-2,2’-ジメチルビフェニル(m-TB)が好ましい。
【0086】
ジアミン(1)~(7)を使用することによって、ポリイミド分子鎖の柔軟性を向上させ、熱可塑性を付与することができる。
【0087】
また、ジアミン(8)を使用することによって、モノマー由来の剛直構造により、ポリマー全体に秩序構造が形成されるので、低誘電正接化が可能になるとともに、熱可塑性でありながら、ガス透過性が低く、長期耐熱接着性に優れたポリイミドが得られる。
【0088】
なお、熱可塑性ポリイミドは、ジアミン成分として、上記以外のジアミンを使用可能である。
【0089】
(非熱可塑性ポリイミド)
非熱可塑性ポリイミドは、酸無水物成分とジアミン成分とを反応させて得られる。非熱可塑性ポリイミドの原料となる酸無水物成分としては、ポリイミドの合成に使用される一般的な酸無水物を特に制限なく利用できるが、低誘電特性を付与するため、原料の酸無水物成分として、少なくとも、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物から選ばれる1種以上を使用することが好ましい。ここで、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物としては、3,3',4,4' -ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)が特に好ましく、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物としては、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(NTCDA)が特に好ましい。
【0090】
PMDAは、ポリイミドの熱膨張係数(CTE)を低下させることができる。BPDAは、ポリイミドの半田耐熱性低下に影響を与えない程度にガラス転移温度を下げる効果がある。また、BPDAは、ポリイミドのイミド基濃度を低下させるとともに、ポリマーの秩序構造を形成しやすくして、分子の運動抑制により誘電特性を改善する。さらに、BPDAは、ポリイミドの極性基の減少に寄与するので吸湿特性を改善する。従って、BPDAを使用することによって、FPCの伝送損失を低くすることができる。
【0091】
なお、非熱可塑性ポリイミドは、酸無水物成分として、上記以外の酸無水物を使用可能である。
【0092】
非熱可塑性ポリイミドの原料となるジアミン成分としては、ポリイミドの合成に使用される一般的なジアミンを特に制限なく利用できるが、熱可塑性ポリイミドの説明で例示した上記ジアミン(1)~(8)の中から選ばれるジアミンが好ましく、ジアミン(8)がより好ましい。
【0093】
ジアミン(8)は、芳香族ジアミンであり、低CTE化や誘電特性の改善、更に低吸湿化や高耐熱化に寄与する。ジアミン(8)の中でも、上記一般式(8)において、Yが炭素数1~3のアルキル基であるものが好ましく、4,4’-ジアミノ-2,2’-ジメチルジフェニル(m-TB)、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルジフェニルがより好ましい。これらの中でも、4,4’-ジアミノ-2,2’-ジメチルジフェニル(m-TB)が最も好ましい。
【0094】
なお、非熱可塑性ポリイミドは、ジアミン成分として、発明の効果を妨げない範囲で上記以外のジアミンを使用可能である。
【0095】
(ポリイミドの合成)
ポリイミド層を構成するポリイミドは、酸無水物及びジアミンを溶媒中で反応させ、前駆体樹脂を生成したのち加熱閉環させることにより製造できる。例えば、酸無水物成分とジアミン成分をほぼ等モル[ただし、第2のポリイミド層(B)を形成する場合は、ジアミン成分の比率を多くする]で有機溶媒中に溶解させて、0~100℃の範囲内の温度で30分~24時間撹拌し重合反応させることでポリイミドの前駆体であるポリアミド酸が得られる。反応にあたっては、生成する前駆体が有機溶媒中に5~30重量%の範囲内、好ましくは10~20重量%の範囲内となるように反応成分を溶解する。重合反応に用いる有機溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)、N-メチル-2-ピロリドン、2-ブタノン、ジメチルスホキシド、硫酸ジメチル、シクロヘキサノン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジグライム、トリグライム等が挙げられる。これらの溶媒を2種以上併用して使用することもでき、更にはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素の併用も可能である。また、このような有機溶剤の使用量としては特に制限されるものではないが、重合反応によって得られるポリアミド酸溶液(ポリイミド前駆体溶液)の濃度が5~30重量%程度になるような使用量に調整して用いることが好ましい。
【0096】
ポリイミドの合成において、上記酸無水物及びジアミンはそれぞれ、その1種のみを使用してもよく2種以上を併用して使用することもできる。酸無水物及びジアミンの種類や、2種以上の酸無水物又はジアミンを使用する場合のそれぞれのモル比を選定することにより、熱膨張性、接着性、ガラス転移温度等を制御することができる。
【0097】
合成された前駆体は、通常、反応溶媒溶液として使用することが有利であるが、必要により濃縮、希釈又は他の有機溶媒に置換することができる。また、前駆体は一般に溶媒可溶性に優れるので、有利に使用される。前駆体をイミド化させる方法は、特に制限されず、例えば前記溶媒中で、80~400℃の範囲内の温度条件で1~24時間かけて加熱するといった熱処理が好適に採用される。
【0098】
以上、第1の実施の形態で得られるポリイミドフィルム、及び、第2の実施の形態で得られる金属張積層板は、第1のポリイミド層(A)と第2のポリイミド層(B)との密着性に優れており、FPCに代表される回路基板材料として使用することによって、電子機器の信頼性を向上させることができる。
【0099】
<回路基板>
回路基板は、第2の実施の形態の金属張積層板の製造方法によって得られた金属張積層板の金属層を常法によってパターン状に加工して配線層を形成することによって製造することができる。金属層のパターニングは、例えばフォトリソグラフィー技術とエッチングなどを利用する任意の方法で行うことができる。
【0100】
なお、回路基板を製造する際に、通常行われる工程として、例えば前工程でのスルーホール加工や、後工程の端子メッキ、外形加工などの工程は、常法に従い行うことができる。
【実施例
【0101】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。なお、以下の実施例において、特にことわりのない限り各種測定、評価は下記によるものである。
【0102】
[粘度測定]
樹脂の粘度はE型粘度計(ブルックフィールド社製、商品名;DV-II+Pro)を用いて、25℃における粘度を測定した。トルクが10%~90%になるよう回転数を設定し、測定を開始してから2分経過後、粘度が安定した時の値を読み取った。
【0103】
[ピール強度の測定]
ピール強度は、テンシロンテスター(東洋精機製作所製、商品名;ストログラフVE-1D)を用いて、幅10mmのサンプルの第2のポリイミド層側を両面テープによりアルミ板に固定し、第1のポリイミド層側の金属張積層板を180°方向に50mm/分の速度で引っ張り、第1のポリイミド層と第2のポリイミド層の層間で剥離する時の力を求めた。
【0104】
[発泡の評価]
第1のポリイミド層及び第2のポリイミド層の層間で剥離が確認されるか、又はポリイミド層に亀裂が発生している場合を「発泡あり」とし、剥離や亀裂がない場合を「発泡なし」とした。
【0105】
実施例及び比較例に用いた略号は、以下の化合物を示す。
m-TB:2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル
TPE-R:1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン
APB:1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン
TPE-Q:1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン
BAPP:2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン
4,4’-DAPE:4,4’-ジアミノジフェニルエーテル
3,4’-DAPE:3,4’-ジアミノジフェニルエーテル
PDA:p-フェニレンジアミン
TFMB:2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル
PMDA:ピロメリット酸二無水物
BPDA:3,3’、4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
BTDA:3,3’、4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物
ODPA:4,4’-オキシジフタル酸二無水物
DMAc:N,N-ジメチルアセトアミド
【0106】
(合成例1)
1000mlのセパラブルフラスコに、45.989gのm-TB(216.63mmol)、15.832gのTPE-R(54.16mmol)、680gのDMAcを投入し、室温、窒素気流下で撹拌した。完全に溶解した後、58.179gのPMDA(266.73mmol)を添加し、室温で4時間撹拌してポリアミド酸溶液Aを得た。得られたポリアミド酸溶液Aの粘度は22,000cPであった。
【0107】
(合成例2)
300mlのセパラブルフラスコに、9.244gの4,4’-DAPE(46.16mmol)、176gのDMAcを投入し、室温、窒素気流下で撹拌した。完全に溶解した後、14.756gのBTDA(45.79mmol)を添加し、室温で4時間撹拌してポリアミド酸溶液Bを得た。得られたポリアミド酸溶液Bの粘度は1,200cPであった。
【0108】
(合成例3)
300mlのセパラブルフラスコに、11.464gのTPE-Q(39.22mmol)、176gのDMAcを投入し、室温、窒素気流下で撹拌した。完全に溶解した後、12.536gのBTDA(38.90mmol)を添加し、室温で4時間撹拌してポリアミド酸溶液Cを得た。得られたポリアミド酸溶液Cの粘度は2,200cPであった。
【0109】
(合成例4)
300mlのセパラブルフラスコに、11.464gのTPE-R(39.22mmol)、176gのDMAcを投入し、室温、窒素気流下で撹拌した。完全に溶解した後、12.536gのBTDA(38.90mmol)を添加し、室温で4時間撹拌してポリアミド酸溶液Dを得た。得られたポリアミド酸溶液Dの粘度は1,100cPであった。
【0110】
(合成例5)
300mlのセパラブルフラスコに、11.386gのAPB(38.95mmol)、176gのDMAcを投入し、室温、窒素気流下で撹拌した。完全に溶解した後、12.614gのBTDA(39.14mmol)を添加し、室温で4時間撹拌してポリアミド酸溶液Eを得た。得られたポリアミド酸溶液Eの粘度は200cPであった。
【0111】
(合成例6)
300mlのセパラブルフラスコに、13.493gのBAPP(32.87mmol)、176gのDMAcを投入し、室温、窒素気流下で撹拌した。完全に溶解した後、10.507gのBTDA(32.61mmol)を添加し、室温で4時間撹拌してポリアミド酸溶液Fを得た。得られたポリアミド酸溶液Fの粘度は1,400cPであった。
【0112】
(合成例7)
300mlのセパラブルフラスコに、9.227gの3,4’-DAPE(46.08mmol)、176gのDMAcを投入し、室温、窒素気流下で撹拌した。完全に溶解した後、14.773gのBTDA(45.85mmol)を添加し、室温で4時間撹拌してポリアミド酸溶液Gを得た。得られたポリアミド酸溶液Gの粘度は500cPであった。
【0113】
(合成例8)
300mlのセパラブルフラスコに、4.660gのPDA(43.09mmol)、2.157gの4,4’-DAPE(10.77mmol)、176gのDMAcを投入し、室温、窒素気流下で撹拌した。完全に溶解した後、17.183gのBTDA(53.33mmol)を添加し、室温で4時間撹拌してポリアミド酸溶液Hを得た。得られたポリアミド酸溶液Hの粘度は1,500cPであった。
【0114】
(合成例9)
300mlのセパラブルフラスコに、12.053gのTFMB(37.64mmol)、176gのDMAcを投入し、室温、窒素気流下で撹拌した。完全に溶解した後、11.947gのBTDA(37.07mmol)を添加し、室温で4時間撹拌してポリアミド酸溶液Iを得た。得られたポリアミド酸溶液Iの粘度は1,200cPであった。
【0115】
(合成例10)
300mlのセパラブルフラスコに、9.498gの4,4’-DAPE(47.43mmol)、176gのDMAcを投入し、室温、窒素気流下で撹拌した。完全に溶解した後、7.581gのBTDA(23.53mmol)及び6.922gのBPDA(23.53mmol)を添加し、室温で4時間撹拌してポリアミド酸溶液Jを得た。得られたポリアミド酸溶液Jの粘度は2,500cPであった。
【0116】
(合成例11)
300mlのセパラブルフラスコに、9.727gの4,4’-DAPE(48.58mmol)、176gのDMAcを投入し、室温、窒素気流下で撹拌した。完全に溶解した後、11.646gのBTDA(36.14mmol)及び2.628gのPMDA(12.05mmol)を添加し、室温で4時間撹拌してポリアミド酸溶液Kを得た。得られたポリアミド酸溶液Kの粘度は1,100cPであった。
【0117】
(合成例12)
300mlのセパラブルフラスコに、4.575gの4,4’-DAPE(22.85mmol)、4.850gのm-TB(22.85mmol)、176gのDMAcを投入し、室温、窒素気流下で撹拌した。完全に溶解した後、14.576gのBTDA(45.23mmol)を添加し、室温で4時間撹拌してポリアミド酸溶液Lを得た。得られたポリアミド酸溶液Lの粘度は1,100cPであった。
【0118】
(合成例13)
300mlのセパラブルフラスコに、9.807gの4,4’-DAPE(48.97mmol)、176gのDMAcを投入し、室温、窒素気流下で撹拌した。完全に溶解した後、14.193gのBPDA(48.24mmol)を添加し、室温で4時間撹拌してポリアミド酸溶液Mを得た。得られたポリアミド酸溶液Mの粘度は1,000cPであった。
【0119】
(合成例14)
1000mlのセパラブルフラスコに、62.734gのBAPP(152.82mmol)、704gのDMAcを投入し、室温、窒素気流下で撹拌した。完全に溶解した後、33.266gのPMDA(152.51mmol)を添加し、室温で4時間撹拌してポリアミド酸溶液Nを得た。得られたポリアミド酸溶液Nの粘度は4,800cPであった。
【0120】
(合成例15)
1000mlのセパラブルフラスコに、38.27gのm-TB(180.27mmol)、704gのDMAcを投入し、室温、窒素気流下で撹拌した。完全に溶解した後、57.102gのBTDA(177.21mmol)及び0.629gのPMDA(2.88mmol)を添加し、室温で4時間撹拌してポリアミド酸溶液Oを得た。得られたポリアミド酸溶液Oの粘度は43,000cPであった。
【0121】
(合成例16)
1000mlのセパラブルフラスコに、19.536gのPDA(180.66mmol)、13.087gのBAPP(31.88mmol)、704gのDMAcを投入し、室温、窒素気流下で撹拌した。完全に溶解した後、56.73gのBPDA(192.82mmol)及び6.646gのODPA(21.42mmol)を添加し、室温で4時間撹拌してポリアミド酸溶液Pを得た。得られたポリアミド酸溶液Pの粘度は51,000cPであった。
【0122】
(合成例17)
1000mlのセパラブルフラスコに、76.91gのBAPP(187.35mmol)、680gのDMAcを投入し、室温、窒素気流下で撹拌した。完全に溶解した後、34.805gのPMDA(159.57mmol)及び8.285gのBPDA(28.16mmol)を添加し、室温で4時間撹拌してポリアミド酸溶液Qを得た。得られたポリアミド酸溶液Qの粘度は9,500cPであった。
【0123】
(合成例18)
1000mlのセパラブルフラスコに、77.298gのBAPP(188.30mmol)、680gのDMAcを投入し、室温、窒素気流下で撹拌した。完全に溶解した後、34.492gのPMDA(158.13mmol)及び8.210gのBPDA(27.91mmol)を添加し、室温で4時間撹拌してポリアミド酸溶液Rを得た。得られたポリアミド酸溶液Rの粘度は2,200cPであった。
【0124】
(合成例19)
1000mlのセパラブルフラスコに、50.803gのm-TB(239.31mmol)、7.773gのTPE-R(26.59mmol)、680gのDMAcを投入し、室温、窒素気流下で撹拌した。完全に溶解した後、45.934gのPMDA(210.59mmol)及び15.490gのBPDA(52.65mmol)を添加し、室温で4時間撹拌してポリアミド酸溶液Sを得た。得られたポリアミド酸溶液Sの粘度は23,000cPであった。
【0125】
(合成例20)
1000mlのセパラブルフラスコに、44.203gのm-TB(208.22mmol)、6.763gのTPE-R(23.14mmol)、680gのDMAcを投入し、室温、窒素気流下で撹拌した。完全に溶解した後、59.043gのBTDA(183.23mmol)及び9.992gのPMDA(45.81mmol)を添加し、室温で4時間撹拌してポリアミド酸溶液Tを得た。得られたポリアミド酸溶液Tの粘度は12,000cPであった。
【0126】
(合成例21)
1000mlのセパラブルフラスコに、33.475gのTPE-R(114.51mmol)、14.346gのTPE-Q(49.08mmol)、704gのDMAcを投入し、室温、窒素気流下で撹拌した。完全に溶解した後、48.179gのBPDA(163.75mmol)を添加し、室温で4時間撹拌してポリアミド酸溶液Uを得た。得られたポリアミド酸溶液Uの粘度は15,000cPであった。
【0127】
(合成例22)
1000mlのセパラブルフラスコに、33.542gのTPE-R(114.74mmol)、14.375gのTPE-Q(49.17mmol)、704gのDMAcを投入し、室温、窒素気流下で撹拌した。完全に溶解した後、48.083gのBPDA(163.42mmol)を添加し、室温で4時間撹拌してポリアミド酸溶液Vを得た。得られたポリアミド酸溶液Vの粘度は10,000cPであった。
【0128】
[実施例1]
厚み12μmの電解銅箔上に、第1のポリイミド層となるポリアミド酸溶液Bを硬化後の厚みが2μmとなるように均一に塗布した後、120℃から360℃まで段階的に昇温させて溶媒の除去及びイミド化を行った。次に、その上に、第2のポリイミド層となるポリアミド酸溶液Aを硬化後の厚みが25μmとなるように均一に塗布した後、120℃で3分間加熱乾燥して溶媒を除去した。その後、130℃から360℃まで段階的に昇温させてイミド化を行い、金属張積層板1を調製した。調製した金属張積層板1の樹脂面に粘着テープを貼り、垂直方向に瞬間的に引き剥がしによる剥離試験を行ったが、第1のポリイミド層及び第2のポリイミド層の層間の剥離は見られなかった。
【0129】
[実施例2]
ポリアミド酸溶液Aの代わりに、ポリアミド酸溶液Nを使用したこと以外、実施例1と同様にして、金属張積層板2を調製した。実施例1と同様に、調製した金属張積層板2の剥離試験を行ったが、第1のポリイミド層及び第2のポリイミド層の層間の剥離は見られなかった。
【0130】
[実施例3]
ポリアミド酸溶液Bの代わりに、ポリアミド酸溶液Cを使用したこと以外、実施例1と同様にして、金属張積層板3を調製した。実施例1と同様に、調製した金属張積層板3の剥離試験を行ったが、第1のポリイミド層及び第2のポリイミド層の層間の剥離は見られなかった。
【0131】
[実施例4]
ポリアミド酸溶液Bの代わりに、ポリアミド酸溶液Cを使用し、ポリアミド酸溶液Aの代わりに、ポリアミド酸溶液Nを使用したこと以外、実施例1と同様にして、金属張積層板4を調製した。実施例1と同様に、調製した金属張積層板4の剥離試験を行ったが、第1のポリイミド層及び第2のポリイミド層の層間の剥離は見られなかった。
【0132】
[実施例5]
ポリアミド酸溶液Bの代わりに、ポリアミド酸溶液Dを使用したこと以外、実施例1と同様にして、金属張積層板5を調製した。実施例1と同様に、調製した金属張積層板5の剥離試験を行ったが、第1のポリイミド層及び第2のポリイミド層の層間の剥離は見られなかった。
【0133】
[実施例6]
ポリアミド酸溶液Bの代わりに、ポリアミド酸溶液Dを使用し、ポリアミド酸溶液Aの代わりに、ポリアミド酸溶液Nを使用したこと以外、実施例1と同様にして、金属張積層板6を調製した。実施例1と同様に、調製した金属張積層板6の剥離試験を行ったが、第1のポリイミド層及び第2のポリイミド層の層間の剥離は見られなかった。
【0134】
[実施例7]
ポリアミド酸溶液Bの代わりに、ポリアミド酸溶液Eを使用したこと以外、実施例1と同様にして、金属張積層板7を調製した。実施例1と同様に、調製した金属張積層板7の剥離試験を行ったが、第1のポリイミド層及び第2のポリイミド層の層間の剥離は見られなかった。
【0135】
[実施例8]
ポリアミド酸溶液Bの代わりに、ポリアミド酸溶液Eを使用し、ポリアミド酸溶液Aの代わりに、ポリアミド酸溶液Nを使用したこと以外、実施例1と同様にして、金属張積層板8を調製した。実施例1と同様に、調製した金属張積層板8の剥離試験を行ったが、第1のポリイミド層及び第2のポリイミド層の層間の剥離は見られなかった。
【0136】
[実施例9]
ポリアミド酸溶液Bの代わりに、ポリアミド酸溶液Fを使用したこと以外、実施例1と同様にして、金属張積層板9を調製した。実施例1と同様に、調製した金属張積層板9の剥離試験を行ったが、第1のポリイミド層及び第2のポリイミド層の層間の剥離は見られなかった。
【0137】
[実施例10]
ポリアミド酸溶液Bの代わりに、ポリアミド酸溶液Fを使用し、ポリアミド酸溶液Aの代わりに、ポリアミド酸溶液Nを使用したこと以外、実施例1と同様にして、金属張積層板10を調製した。実施例1と同様に、調製した金属張積層板10の剥離試験を行ったが、第1のポリイミド層及び第2のポリイミド層の層間の剥離は見られなかった。
【0138】
[実施例11]
ポリアミド酸溶液Bの代わりに、ポリアミド酸溶液Gを使用したこと以外、実施例1と同様にして、金属張積層板11を調製した。実施例1と同様に、調製した金属張積層板11の剥離試験を行ったが、第1のポリイミド層及び第2のポリイミド層の層間の剥離は見られなかった。
【0139】
[実施例12]
ポリアミド酸溶液Bの代わりに、ポリアミド酸溶液Gを使用し、ポリアミド酸溶液Aの代わりに、ポリアミド酸溶液Nを使用したこと以外、実施例1と同様にして、金属張積層板12を調製した。実施例1と同様に、調製した金属張積層板12の剥離試験を行ったが、第1のポリイミド層及び第2のポリイミド層の層間の剥離は見られなかった。
【0140】
[実施例13]
ポリアミド酸溶液Bの代わりに、ポリアミド酸溶液Hを使用したこと以外、実施例1と同様にして、金属張積層板13を調製した。実施例1と同様に、調製した金属張積層板13の剥離試験を行ったが、第1のポリイミド層及び第2のポリイミド層の層間の剥離は見られなかった。
【0141】
[実施例14]
ポリアミド酸溶液Bの代わりに、ポリアミド酸溶液Hを使用し、ポリアミド酸溶液Aの代わりに、ポリアミド酸溶液Nを使用したこと以外、実施例1と同様にして、金属張積層板14を調製した。実施例1と同様に、調製した金属張積層板14の剥離試験を行ったが、第1のポリイミド層及び第2のポリイミド層の層間の剥離は見られなかった。
【0142】
[実施例15]
ポリアミド酸溶液Bの代わりに、ポリアミド酸溶液Iを使用したこと以外、実施例1と同様にして、金属張積層板15を調製した。実施例1と同様に、調製した金属張積層板15の剥離試験を行ったが、第1のポリイミド層及び第2のポリイミド層の層間の剥離は見られなかった。
【0143】
[実施例16]
ポリアミド酸溶液Bの代わりに、ポリアミド酸溶液Iを使用し、ポリアミド酸溶液Aの代わりに、ポリアミド酸溶液Nを使用したこと以外、実施例1と同様にして、金属張積層板16を調製した。実施例1と同様に、調製した金属張積層板16の剥離試験を行ったが、第1のポリイミド層及び第2のポリイミド層の層間の剥離は見られなかった。
【0144】
[実施例17]
ポリアミド酸溶液Bの代わりに、ポリアミド酸溶液Jを使用したこと以外、実施例1と同様にして、金属張積層板17を調製した。実施例1と同様に、調製した金属張積層板17の剥離試験を行ったが、第1のポリイミド層及び第2のポリイミド層の層間の剥離は見られなかった。
【0145】
[実施例18]
ポリアミド酸溶液Bの代わりに、ポリアミド酸溶液Jを使用し、ポリアミド酸溶液Aの代わりに、ポリアミド酸溶液Nを使用したこと以外、実施例1と同様にして、金属張積層板18を調製した。実施例1と同様に、調製した金属張積層板18の剥離試験を行ったが、第1のポリイミド層及び第2のポリイミド層の層間の剥離は見られなかった。
【0146】
[実施例19]
ポリアミド酸溶液Bの代わりに、ポリアミド酸溶液Kを使用したこと以外、実施例1と同様にして、金属張積層板19を調製した。実施例1と同様に、調製した金属張積層板19の剥離試験を行ったが、第1のポリイミド層及び第2のポリイミド層の層間の剥離は見られなかった。
【0147】
[実施例20]
ポリアミド酸溶液Bの代わりに、ポリアミド酸溶液Kを使用し、ポリアミド酸溶液Aの代わりに、ポリアミド酸溶液Nを使用したこと以外、実施例1と同様にして、金属張積層板20を調製した。実施例1と同様に、調製した金属張積層板20の剥離試験を行ったが、第1のポリイミド層及び第2のポリイミド層の層間の剥離は見られなかった。
【0148】
[実施例21]
ポリアミド酸溶液Bの代わりに、ポリアミド酸溶液Lを使用したこと以外、実施例1と同様にして、金属張積層板21を調製した。実施例1と同様に、調製した金属張積層板21の剥離試験を行ったが、第1のポリイミド層及び第2のポリイミド層の層間の剥離は見られなかった。
【0149】
[実施例22]
ポリアミド酸溶液Bの代わりに、ポリアミド酸溶液Lを使用し、ポリアミド酸溶液Aの代わりに、ポリアミド酸溶液Nを使用したこと以外、実施例1と同様にして、金属張積層板22を調製した。実施例1と同様に、調製した金属張積層板22の剥離試験を行ったが、第1のポリイミド層及び第2のポリイミド層の層間の剥離は見られなかった。
【0150】
[実施例23]
ポリアミド酸溶液Bの代わりに、ポリアミド酸溶液Oを使用したこと以外、実施例1と同様にして、金属張積層板23を調製した。実施例1と同様に、調製した金属張積層板23の剥離試験を行ったが、第1のポリイミド層及び第2のポリイミド層の層間の剥離は見られなかった。
【0151】
[実施例24]
ポリアミド酸溶液Bの代わりに、ポリアミド酸溶液Oを使用し、ポリアミド酸溶液Aの代わりに、ポリアミド酸溶液Nを使用したこと以外、実施例1と同様にして、金属張積層板24を調製した。実施例1と同様に、調製した金属張積層板24の剥離試験を行ったが、第1のポリイミド層及び第2のポリイミド層の層間の剥離は見られなかった。
【0152】
[実施例25]
ポリアミド酸溶液Bの代わりに、ポリアミド酸溶液Tを使用したこと以外、実施例1と同様にして、金属張積層板25を調製した。実施例1と同様に、調製した金属張積層板25の剥離試験を行ったが、第1のポリイミド層及び第2のポリイミド層の層間の剥離は見られなかった。
【0153】
[実施例26]
ポリアミド酸溶液Bの代わりに、ポリアミド酸溶液Tを使用し、ポリアミド酸溶液Aの代わりに、ポリアミド酸溶液Nを使用したこと以外、実施例1と同様にして、金属張積層板26を調製した。実施例1と同様に、調製した金属張積層板26の剥離試験を行ったが、第1のポリイミド層及び第2のポリイミド層の層間の剥離は見られなかった。
【0154】
比較例1
ポリアミド酸溶液Bの代わりに、ポリアミド酸溶液Mを使用したこと以外、実施例1と同様にして、金属張積層板27を調製した。実施例1と同様に、調製した金属張積層板27の剥離試験を行ったところ、第1のポリイミド層及び第2のポリイミド層の層間剥離が生じた。
【0155】
比較例2
ポリアミド酸溶液Bの代わりに、ポリアミド酸溶液Mを使用し、ポリアミド酸溶液Aの代わりに、ポリアミド酸溶液Nを使用したこと以外、実施例1と同様にして、金属張積層板28を調製した。実施例1と同様に、調製した金属張積層板28の剥離試験を行ったところ、第1のポリイミド層及び第2のポリイミド層の層間剥離が生じた。
【0156】
比較例3
ポリアミド酸溶液Bの代わりに、ポリアミド酸溶液Nを使用したこと以外、実施例1と同様にして、金属張積層板29を調製した。実施例1と同様に、調製した金属張積層板29の剥離試験を行ったところ、第1のポリイミド層及び第2のポリイミド層の層間剥離が生じた。
【0157】
比較例4
ポリアミド酸溶液Aの代わりに、ポリアミド酸溶液Pを使用したこと以外、実施例1と同様にして、金属張積層板30を調製した。実施例1と同様に、調製した金属張積層板30の剥離試験を行ったところ、第1のポリイミド層及び第2のポリイミド層の層間剥離が生じた。
【0158】
比較例5
ポリアミド酸溶液Bの代わりに、ポリアミド酸溶液Aを使用し、ポリアミド酸溶液Aの代わりに、ポリアミド酸溶液Bを使用したこと以外、実施例1と同様にして、金属張積層板31を調製した。実施例1と同様に、調製した金属張積層板31の剥離試験を行ったところ、第1のポリイミド層及び第2のポリイミド層の層間剥離が生じた。
【0159】
[実施例27]
ポリアミド酸溶液Aの塗布後の130℃から360℃までの昇温時間を1/3に短縮したこと以外、実施例1と同様にして、金属張積層板32を調製したが、発泡は確認されなかった。
【0160】
[実施例28]
ポリアミド酸溶液Bの代わりに、ポリアミド酸溶液Aを使用し、ポリアミド酸溶液Aの塗布後の130℃から360℃までの昇温時間を1/3に短縮したこと以外、実施例1と同様にして、金属張積層板33を調製したが、発泡は確認されなかった。
【0161】
比較例6
ポリアミド酸溶液Bの代わりに、ポリアミド酸溶液Mを使用し、ポリアミド酸溶液Aの塗布後の130℃から360℃までの昇温時間を1/3に短縮したこと以外、実施例1と同様にして、金属張積層板34を調製したところ、発泡が生じた。
【0162】
比較例7
ポリアミド酸溶液Bの代わりに、ポリアミド酸溶液Nを使用し、ポリアミド酸溶液Aの塗布後の130℃から360℃までの昇温時間を1/3に短縮したこと以外、実施例1と同様にして、金属張積層板35を調製したところ、発泡が生じた。
【0163】
[実施例29]
ステンレス基材上に、第1のポリイミド層となるポリアミド酸溶液Oを塗布した後、120℃で乾燥して、ポリアミド酸のゲルフィルムを調製した。調製したゲルフィルムをステンレス基材から剥離後、テンタークリップに固定し、130℃から360℃まで段階的に昇温させてイミド化を行い、厚み12.5μmのポリイミドフィルム36を調製した。調製したポリイミドフィルム36に、第2のポリイミド層となるポリアミド酸溶液Rを硬化後の厚みが3μmとなるように塗布し、120℃で乾燥を行った。その後、130℃から360℃まで段階的に昇温させてイミド化を行い、積層ポリイミドフィルム36を調製した。調製した積層ポリイミドフィルム36をカッターで裁断し、SEM観察による第1のポリイミド層及び第2のポリイミド層間の層間剥離は確認されなかった。
【0164】
[実施例30]
ポリアミド酸溶液Oの代わりに、ポリアミド酸溶液Tを使用したこと以外、実施例29と同様にして、積層ポリイミドフィルム37を調製した。調製した積層ポリイミドフィルム37のSEM観察による層間剥離は確認されなかった。
【0165】
[実施例31]
第1のポリイミド層の厚みを17μmにしたこと、及びポリアミド酸溶液Rの代わりに、ポリアミド酸溶液Vを使用し、硬化後の厚みを4μmとしたこと以外、実施例29と同様にして、積層ポリイミドフィルム38を調製した。調製した積層ポリイミドフィルム38のSEM観察による層間剥離は確認されなかった。
【0166】
[実施例32]
ポリアミド酸溶液Oの代わりに、ポリアミド酸溶液Tを使用し、第1のポリイミド層の厚みを17μmにしたこと、及びポリアミド酸溶液Rの代わりに、ポリアミド酸溶液Vを使用し、硬化後の厚みを4μmとしたこと以外、実施例29と同様にして、積層ポリイミドフィルム39を調製した。調製した積層ポリイミドフィルム39のSEM観察による層間剥離は確認されなかった。
【0167】
比較例8
ポリアミド酸溶液Rの代わりに、ポリアミド酸溶液Qを使用したこと以外、実施例29と同様にして、積層ポリイミドフィルム40を調製した。調製した積層ポリイミドフィルム40のSEM観察によって、層間剥離が確認された。
【0168】
比較例9
ポリアミド酸溶液Oの代わりに、ポリアミド酸溶液Pを使用したこと以外、実施例29と同様にして、積層ポリイミドフィルム41を調製した。調製した積層ポリイミドフィルム41のSEM観察によって、層間剥離が確認された。
【0169】
比較例10
第1のポリイミド層の厚みを17μmにしたこと、及びポリアミド酸溶液Rの代わりに、ポリアミド酸溶液Uを使用し、硬化後の厚みを4μmとしたこと以外、実施例29と同様にして、積層ポリイミドフィルム42を調製した。調製した積層ポリイミドフィルム42のSEM観察によって、層間剥離が確認された。
【0170】
[実施例33]
厚み12μmの電解銅箔上に、第1のポリイミド層となるポリアミド酸溶液Tを硬化後の厚みが25μmとなるように均一に塗布した後、120℃から360℃まで段階的に昇温させて溶媒の除去及びイミド化を行った。次に、その上に、第2のポリイミド層となるポリアミド酸溶液Sを硬化後の厚みが25μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥して溶媒を除去した。その後、130℃から360℃まで段階的に昇温させてイミド化を行い、金属張積層板43を調製した。調製した金属張積層板43における第1のポリイミド層と第2のポリイミド層のピール強度は1.5kN/m以上であった。
【0171】
[実施例34]
厚み12μmの電解銅箔上に、ポリアミド酸溶液Sを硬化後の厚みが23μmとなるように均一に塗布し、120℃で加熱乾燥して溶媒を除去した。その上に、ポリアミド酸溶液Bを硬化後の厚みが2μmとなるように均一に塗布し、120℃で加熱乾燥して溶媒を除去した。その後、130℃から360℃まで段階的に昇温させてイミド化を行い、第1のポリイミド層を形成した。次に、その上に、第2のポリイミド層となるポリアミド酸溶液Sを硬化後の厚みが25μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥して溶媒を除去した。その後、130℃から360℃まで段階的に昇温させてイミド化を行い、金属張積層板44を調製した。調製した金属張積層板44における第1のポリイミド層と第2のポリイミド層のピール強度は1.5kN/m以上であった。
【0172】
比較例11
ポリアミド酸溶液Tの代わりに、ポリアミド酸溶液Sを使用したこと以外、実施例33と同様にして、金属張積層板45を調製した。調製した金属張積層板45における第1のポリイミド層と第2のポリイミド層のピール強度は0.1kN/m以下であった。
【0173】
比較例12
ポリアミド酸溶液Bの代わりに、ポリアミド酸溶液Mを使用したこと以外、実施例34と同様にして、金属張積層板46を調製した。調製した金属張積層板46における第1のポリイミド層と第2のポリイミド層のピール強度は0.1kN/m以下であった。
【0174】
参考例
100gのポリアミド酸溶液Aに0.45gの無水フタル酸(3.02mmol)を加え4時間撹拌を行い、ポリアミド酸溶液A2を調製した。ポリアミド酸溶液Aの代わりにポリアミド酸溶液A2を用いた以外、実施例1と同様にして、金属張積層板47を調製したところ、発泡が生じた。また、実施例1と同様に、調製した金属張積層板47の剥離試験を行ったところ、第1のポリイミド層及び第2のポリイミド層の層間剥離が生じた。
これは第2のポリイミド層のアミノ基が無水フタル酸と反応することで、第1のポリイミド層と反応できる官能基が無くなり、樹脂層間の化学的接着が生じなかった為と考えられる。
【0175】
以上、本発明の実施の形態を例示の目的で詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に制約されることはない。