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特許7121122基板ホルダ、基板支持部、基板をクランプシステムにクランプする方法、およびリソグラフィ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】基板ホルダ、基板支持部、基板をクランプシステムにクランプする方法、およびリソグラフィ装置
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20220809BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
G03F7/20 521
G03F7/20 501
H01L21/68 P
H01L21/68 R
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020527115
(86)(22)【出願日】2018-10-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-04
(86)【国際出願番号】 EP2018079185
(87)【国際公開番号】W WO2019096554
(87)【国際公開日】2019-05-23
【審査請求日】2020-05-15
(31)【優先権主張番号】17202627.0
(32)【優先日】2017-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100134256
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 武司
(72)【発明者】
【氏名】スートウド、アブラハム、アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ポワエス、トーマス
【審査官】菅原 拓路
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-183253(JP,A)
【文献】特開2013-135218(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0349670(US,A1)
【文献】特開2006-128677(JP,A)
【文献】特開2009-170874(JP,A)
【文献】特開2013-042128(JP,A)
【文献】特表2015-507367(JP,A)
【文献】特表2017-515146(JP,A)
【文献】特開平03-102850(JP,A)
【文献】特開平08-181054(JP,A)
【文献】特開昭63-028035(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20
9/00
H01L 21/027
21/683
H02N 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リソグラフィ装置に使用され、基板を基板支持部に支持するように構成される基板ホルダであって、
第1本体表面と第2本体表面を有する本体であって、前記第1本体表面と前記第2本体表面が当該本体の両側にある本体と、
前記第1本体表面から突出する複数の第1バールであって、各第1バールが前記基板を支持するように構成される先端面を有する複数の第1バールと、
前記第2本体表面から突出する複数の第2バールであって、前記基板ホルダを前記基板支持部に支持するための先端面を各第2バールが有する複数の第2バールと、を備え、
前記複数の第1バールのうち第1サブセットの先端面は、前記第1本体表面から第1距離にあり、前記複数の第1バールのうち第2サブセットの先端面は、前記第1本体表面から第2距離にあり、前記第1距離は、前記基板ホルダの弛緩状態において前記第2距離より小さい、基板ホルダ。
【請求項2】
第1本体表面と第2本体表面を有する本体であって、前記第1本体表面と前記第2本体表面が当該本体の両側にある本体と、
前記第1本体表面から突出する複数の第1バールであって、各第1バールが基板を支持するように構成される先端面を有する複数の第1バールと、を備える基板ホルダと、
支持表面から突出する複数の第2バールの先端面との接触により前記基板ホルダを支持するための支持表面と、を備え、
前記複数の第1バールのうち第1サブセットの先端面は、前記第1本体表面から第1距離にあり、前記複数の第1バールのうち第2サブセットの先端面は、前記第1本体表面から第2距離にあり、前記第1距離は、前記基板ホルダの弛緩状態において前記第2距離より小さい、基板支持部。
【請求項3】
前記本体は、使用時において前記第1本体表面から前記第2本体表面への前記本体を通じたガスの通過およびその逆のガスの通過を妨げるように構成される、請求項1に記載の基板ホルダまたは請求項2に記載の基板支持部。
【請求項4】
前記第1バールのうち前記第2サブセットは、各々の軸が、前記複数の第1バールの前記第1サブセットの軸よりも、前記複数の第2バールのうちの1つの軸に近く、及び/または、第1バールの数が第2バールよりも多く、及び/または、前記複数の第1バールのうち前記第2サブセットの数が前記複数の第2バールの数と実質的に等しい、請求項1または3に記載の基板ホルダまたは請求項2または3に記載の基板支持部。
【請求項5】
前記複数の第1バールのうち前記第2サブセットの各々の位置に相当する位置での前記基板ホルダの剛性は、前記複数の第1バールのうち前記第1サブセットの各々の位置に相当する位置での前記基板ホルダの剛性よりも大きい、請求項1、3または4に記載の基板ホルダまたは請求項2、3または4に記載の基板支持部。
【請求項6】
リソグラフィ装置に使用され、基板を基板支持部に支持するように構成される基板ホルダであって、
第1本体表面と第2本体表面を有する本体であって、前記第1本体表面と前記第2本体表面が当該本体の両側にある本体と、
前記第1本体表面から突出する複数の第1バールであって、各第1バールが前記基板を支持するように構成される先端面を有する複数の第1バールと、
電圧が前記基板ホルダを前記基板支持部に固定するために印加されうる複数の電極と、を備え、前記複数の電極は、印加される電圧に依存して、前記複数の第1バールのうち第1サブセットの下方にある前記基板ホルダの前記本体の部分と前記基板支持部との間の第1の力が、前記複数の第1バールのうち第2サブセットの下方にある前記基板ホルダの前記本体の部分と前記基板支持部との間の第2の力とは独立に制御可能であるように構成され
前記第1の力は、前記複数の第1バールのうち第1サブセットを前記基板から離れるように引き込むことを可能にし、前記第2の力は、前記複数の第1バールのうち第2サブセットを前記基板から離れるように引き込むことを可能にする、基板ホルダ。
【請求項7】
前記第2本体表面から突出する複数の第2バールであって、前記基板ホルダを前記基板支持部に支持するための先端面を各第2バールが有する複数の第2バールをさらに備え、
前記複数の第1バールと前記複数の第2バールが、平面視で各第1バールが対応する第2バール間のギャップに位置するようにして交互に配置される、請求項6に記載の基板ホルダ。
【請求項8】
請求項1、3からのいずれかに記載の基板ホルダ、または請求項2から5のいずれかに記載の基板支持部を備えるリソグラフィ装置。
【請求項9】
基板をクランプシステムにクランプする方法であって、
第1本体表面と第2本体表面を有する本体であって、前記第1本体表面と前記第2本体表面が当該本体の両側にある本体と、
前記第1本体表面から突出する複数の第1バールであって、各第1バールが前記基板を支持するように構成される先端面を有する複数の第1バールと、を備える基板ホルダを設けることと、
前記基板ホルダを支持するための支持表面を設けることと、
前記基板ホルダを複数の第2バールの先端面との接触により前記支持表面に支持するための複数の第2バールを設けることと、
前記基板ホルダを前記支持表面に引きつける第1の力を発生させることと、
前記基板を前記複数の第1バールと接触するように前記基板ホルダに配置することと、
前記基板を前記基板ホルダに引きつける第2の力を発生させることと、
前記複数の第1バールのうち第1サブセットの先端面と前記基板との間に隙間を生成するように、かつ前記基板が前記複数の第1バールのうち第2サブセットの先端面に支持されるようにして前記第2バール間で前記本体を変形させる解放ステップにおいて、前記第1の力と前記第2の力の少なくとも一方を制御することと、を備える方法。
【請求項10】
前記制御することは、前記複数の第1バールのうち前記第1サブセットの先端面が前記基板と接触するように前記本体を変形させる再係合ステップにおいて、前記第1の力と前記第2の力の少なくとも一方を制御することをさらに備える、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記制御することは、前記複数の第1バールのうち前記第2サブセットの先端面と前記基板との間に隙間を生成するように前記本体を変形させる係合解除ステップにおいて、前記第1の力と前記第2の力の少なくとも一方を制御することをさらに備える、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記制御することは、前記複数の第1バールのうち前記第2サブセットの先端面が前記基板と接触するように前記本体を変形させる更なる再係合ステップにおいて、前記第1の力と前記第2の力の少なくとも一方を制御することをさらに備える、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記解放ステップ、前記再係合ステップ、前記係合解除ステップ、および前記更なる再係合ステップがこの順に多数回行われる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記解放ステップは、前記第1の力の大きさを初期値から増加させること、及び/または、前記第2の力の大きさを初期値から減少させることを備え、及び/または、前記第1の力は、前記支持表面と前記基板ホルダとの間に負圧を印加することによって少なくとも部分的に発生させられ、及び/または、前記第2の力は、前記基板と前記基板ホルダとの間に負圧を印加することによって少なくとも部分的に発生させられ、及び/または、前記第1の力及び/または前記第2の力は、電極を介して静電力を印加することによって少なくとも部分的に発生させられる、請求項から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記本体は、使用時において前記第1本体表面から前記第2本体表面への前記本体を通じたガスの通過およびその逆のガスの通過を妨げるように構成される、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年11月20日に出願された欧州出願第17202627.0号の優先権を主張し、その全体が本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、基板をクランプシステムにクランプする方法、リソグラフィ装置に使用され、基板を基板支持部に支持するように構成される基板ホルダ、および基板支持部に関する。
【背景技術】
【0003】
リソグラフィ装置は、所望のパターンを基板に与えるように構築された機械である。リソグラフィ装置は、例えば集積回路(IC)の製造に使用可能である。リソグラフィ装置は、例えば、パターニングデバイス(例えばマスク)のパターン(「設計レイアウト」または「デザイン」ともしばしば称される)を、基板(例えばウェーハ)に設けられた放射感応性材料(レジスト)層に投影しうる。
【0004】
半導体製造プロセスが進化し続けるなか、「ムーアの法則」と通例称される傾向に従って数十年にわたり、デバイスあたりのトランジスタなど機能素子の量は着実に増加している。機能素子の寸法は継続的に低減されるとともに、ムーアの法則についていくために半導体業界は、ますます小さいフィーチャを生成することを可能にする技術を追い求めている。パターンを基板に投影するために、リソグラフィ装置は電磁放射を使用しうる。この放射の波長が基板上にパターン形成されるフィーチャの最小サイズを決定する。現在使用される典型的な波長は、365nm(i線)、248nm、193nm、および13.5nmである。極紫外(EUV)放射(4nmから20nmの範囲内、例えば6.7nmまたは13.5nmの波長を有する)を使用するリソグラフィ装置は、例えば193nmの波長の放射を使用するリソグラフィ装置よりも基板上に小さいフィーチャを形成するために使用されうる。
【0005】
リソグラフィ装置においては基板が基板ホルダに保持される。基板は、完全な平坦からの何らかの逸脱によって起こりうる結像誤差を最小にするように、可能な限り平坦であることが望ましい。一つの困難は、基板が最初に基板ホルダに置かれるとき基板が平坦でない場合があることにある。基板ホルダに一度置かれると、基板はその内部に面内応力を有し、基板を支持する基板ホルダのバールが弾性的に変形させられる。このような基板内の面内せん断応力は、基板に面内変形をもたらし、これはオーバレイ誤差をもたらす。
【発明の概要】
【0006】
本発明の一つの目的は、基板ホルダに置かれた基板を弛緩させることを促すように対策がとられた方法、基板ホルダ、および基板ホルダを組み込んだ基板支持部を提供することにある。
【0007】
本発明のある実施形態においては、基板をクランプシステムにクランプする方法であって、第1本体表面と第2本体表面を有する本体であって、前記第1本体表面と前記第2本体表面が当該本体の両側にある本体と、前記第1本体表面から突出する複数の第1バールであって、各第1バールが前記基板を支持するように構成される先端面を有する複数の第1バールと、を備える基板ホルダを設けることと、前記基板ホルダを支持するための支持表面を設けることと、前記基板ホルダを複数の第2バールの先端面との接触により前記支持表面に支持するための複数の第2バールを設けることと、前記基板ホルダを前記支持表面に引きつける第1の力を発生させることと、前記基板を前記複数の第1バールと接触するように前記基板ホルダに配置することと、前記基板を前記基板ホルダに引きつける第2の力を発生させることと、前記複数の第1バールのうち第1サブセットの先端面と前記基板との間に隙間を生成するように、かつ前記基板が前記複数の第1バールのうち第2サブセットの先端面に支持されるようにして前記第2バール間で前記本体を変形させる解放ステップにおいて、前記第1の力と前記第2の力の少なくとも一方を制御することと、を備える方法が提供される。
【0008】
本発明のある実施形態においては、リソグラフィ装置に使用され、基板を基板支持部に支持するように構成される基板ホルダであって、第1本体表面と第2本体表面を有する本体であって、前記第1本体表面と前記第2本体表面が当該本体の両側にある本体と、前記第1本体表面から突出する複数の第1バールであって、各第1バールが前記基板を支持するように構成される先端面を有する複数の第1バールと、前記第2本体表面から突出する複数の第2バールであって、前記基板ホルダを前記基板支持部に支持するための先端面を各第2バールが有する複数の第2バールと、を備え、前記複数の第1バールのうち第1サブセットの先端面は、前記第1本体表面から第1距離にあり、前記複数の第1バールのうち第2サブセットの先端面は、前記第1本体表面から第2距離にあり、前記第1距離は、前記第2距離より大きい、基板ホルダが提供される。
【0009】
本発明のある実施形態においては、第1本体表面と第2本体表面を有する本体であって、前記第1本体表面と前記第2本体表面が当該本体の両側にある本体と、前記第1本体表面から突出する複数の第1バールであって、各第1バールが基板を支持するように構成される先端面を有する複数の第1バールと、を備える基板ホルダと、支持表面から突出する複数の第2バールの先端面との接触により前記基板ホルダを支持するための支持表面と、を備え、前記複数の第1バールのうち第1サブセットの先端面は、前記第1本体表面から第1距離にあり、前記複数の第1バールのうち第2サブセットの先端面は、前記第1本体表面から第2距離にあり、前記第1距離は、前記第2距離より大きい、基板支持部が提供される。
【0010】
本発明のある実施形態においては、リソグラフィ装置に使用され、基板を基板支持部に支持するように構成される基板ホルダであって、第1本体表面と第2本体表面を有する本体であって、前記第1本体表面と前記第2本体表面が当該本体の両側にある本体と、前記第1本体表面から突出する複数の第1バールであって、各第1バールが前記基板を支持するように構成される先端面を有する複数の第1バールと、電圧が前記基板ホルダを前記基板支持部に固定するために印加されうる複数の電極と、を備え、前記複数の電極は、印加される電圧に依存して、前記複数の第1バールのうち第1サブセットの下方にある前記基板ホルダの前記本体の部分と前記基板支持部との間の力が、前記複数の第1バールのうち第2サブセットの下方にある前記基板ホルダの前記本体の部分と前記基板支持部との間の力とは独立に制御可能であるように構成される、基板ホルダが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】リソグラフィ装置を概略図を示す。
図2図2aおよび図2bは、2つの異なる型の流体ハンドリング構造について、全周に延在しうる別々の特徴を左側と右側に断面により示す。
図3】ある実施形態について基板ホルダ、基板、基板支持部を断面により示す。
図4】代替的な実施形態について、弛緩状態における基板ホルダと基板支持部を示す。
図5図3または図4の基板支持部によって基板ホルダに支持される基板を置くステップを示す。
図6図3または図4の基板支持部によって基板ホルダに支持される基板を置くステップを示す。
図7図3または図4の基板支持部によって基板ホルダに支持される基板を置くステップを示す。
図8図3の基板ホルダ、基板、基板支持部の代替的な実施形態を断面により示す。
図9図3の基板ホルダ、基板、基板支持部の代替的な実施形態を断面により示す。
図10図3の基板ホルダ、基板、基板支持部の代替的な実施形態を断面により示す。
図11】本発明の範囲には無い第1バールと第2バールのパターンを模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本文書においては、「放射」および「ビーム」という用語は、紫外放射(例えば約365nm、248nm、193nm、157nm、または126nmの波長を有する)及びEUV(極紫外放射、例えば5~100nmの範囲の波長を有する)を含むあらゆる種類の電磁放射を包含するよう用いられる。
【0013】
本書に使用される「レチクル」、「マスク」または「パターニングデバイス」という用語は、基板の目標部分に生成されるべきパターンに相当するパターン形成された断面を入射放射ビームに与えるために使用可能な一般的なパターニングデバイスを指すものとして広く解釈されうる。この文脈で「ライトバルブ」という用語も使用されうる。古典的なマスク(透過性または反射性、バイナリ、位相シフト、ハイブリッド等)のほかに、こうしたパターニングデバイスの他の例にはプログラマブルミラーアレイとプログラマブルLCDアレイが含まれる。
【0014】
図1は、リソグラフィ装置を概略図を示す。リソグラフィ装置は、放射ビームB(例えば、UV放射、またはDUV放射)を調整するように構成される照明システム(イルミネータとも称される)ILと、パターニングデバイス(例えばマスク)MAを特定のパラメータに従って正確に位置決めするように構成される第1位置決め部PMに接続され、パターニングデバイスMAを支持するように構築されるマスク支持部(例えばマスクテーブル)MTと、基板支持部(例えば基板テーブル)WTを特定のパラメータに従って正確に位置決めするように構成される第2位置決め部PWに接続され、基板(例えば、レジストで被覆されたウェーハ)Wを保持するように構築される基板支持部WTと、パターニングデバイスMAにより放射ビームBに付与されたパターンを基板Wの(例えば1つ以上のダイを含む)目標部分Cに投影するように構成される投影システム(例えば、屈折投影レンズ系)PSと、を含む。
【0015】
作動時に、照明システムILは、放射ビームBを放射ソースSOから、例えばビーム搬送システムBDを介して、受光する。照明システムILは、放射の方向を調整し、放射を成形し、及び/または放射を制御するために、例えば屈折光学部品、反射光学部品、磁気的光学部品、電磁気的光学部品、静電的光学部品、及び/またはその他の形式の光学部品など各種の光学部品、またはそれらの任意の組み合わせを含みうる。イルミネータILは、パターニングデバイスMAの平面で所望の空間的および角度的強度分布を断面に有するように放射ビームBを調整するために使用されうる。
【0016】
本書で使用される「投影システム」PSという用語は、使用される露光放射に関して及び/または液浸液または真空の利用など他の要因に関して適切とされる、屈折光学系、反射光学系、反射屈折光学系、アナモルフィック光学系、磁気的光学系、電磁気的光学系、及び/または静電的光学系、またはそれらの任意の組み合わせを含む各種の投影システムを包含するよう広く解釈されるべきである。本書における「投影レンズ」との用語の使用はいかなる場合も、より一般的な用語である「投影システム」PSと同義とみなされうる。
【0017】
リソグラフィ装置は、基板の少なくとも一部分が比較的高い屈折率を有する液浸液たとえば水で投影システムPSと基板Wとの間の空間11を満たすように覆われうる形式のものであってもよい。これは、液浸リソグラフィとも称される。液浸技術についてより多くの情報は、参照により本書に援用されるUS6,952,253に与えられる。
【0018】
リソグラフィ装置は、2以上の基板支持部WTを有する形式のものであってもよい(「デュアルステージ」とも呼ばれる)。このような「多重ステージ」の装置においては、基板支持部WTは並行して使用されてもよく、及び/または、基板Wの次の露光の準備のための工程が一方の基板支持部WTに配置された基板Wに行われている間に、他方の基板支持部WT上の別の基板Wにパターンを露光するためにこの別の基板Wが使用されてもよい。
【0019】
基板支持部WTに加えて、リソグラフィ装置は、測定ステージを備えてもよい。測定ステージは、センサ及び/またはクリーニング装置を保持するように設けられる。センサは、投影システムPSの特性または放射ビームBの特性を測定するように設けられうる。測定ステージは、複数のセンサを保持しうる。クリーニング装置は、リソグラフィ装置の一部、例えば投影システムPSの一部または液浸液を提供するシステムの一部を洗浄するように設けられうる。測定ステージは、基板支持部WTが投影システムPSから離れているとき投影システムPSの下に移動してもよい。
【0020】
作動時に、放射ビームBは、マスク支持部MTに保持されるパターニングデバイス(例えばマスク)MAに入射し、パターニングデバイスMAに存在するパターン(設計レイアウト)によってパターン形成される。マスクMAを横切った放射ビームBは投影システムPSを通過し、投影システムPSはビームを基板Wの目標部分Cに合焦させる。第2位置決め部PWおよび位置測定システムIFにより、基板支持部WTは、例えば放射ビームBの経路において合焦されアライメントされた位置に様々な目標部分Cを位置決めするように、正確に移動されることができる。同様に、第1位置決め部PMとありうる別の位置センサ(図1には明示されない)は、放射ビームBの経路に対してパターニングデバイスMAを正確に位置決めするために使用されうる。パターニングデバイスMAと基板Wは、マスクアライメントマークM1、M2と基板アライメントマークP1、P2を使用してアライメントされうる。図示される基板アライメントマークP1、P2は、専用の目標部分を占有しているが、目標部分間のスペースに配置されてもよい。基板アライメントマークP1、P2は、目標部分C間に配置される場合、スクライブラインアライメントマークとして知られている。
【0021】
発明を明確にするために、直交座標系が使用される。直交座標系には、x軸、y軸、z軸の3つの軸がある。3つの軸のそれぞれは、他の2つの軸に直交している。x軸まわりの回転は、Rx回転と呼ばれる。y軸まわりのは、Ry回転と呼ばれる。z軸まわりの回転は、Rz回転と呼ばれる。x軸とy軸は水平面を定義し、z軸は鉛直方向に定義する。直交座標系は発明を限定するものではなく、明確化のためにのみ使用される。円筒座標系など別の座標系を代わりに使用して発明を明確にしてもよい。直交座標系の方向は、たとえばz軸が水平面に沿って成分を持つなど、異なってもよい。
【0022】
液浸技術は、より小さなフィーチャの解像度を向上させるために、リソグラフィシステムに導入されている。液浸リソグラフィ装置において、比較的高い屈折率を有する液浸液の液層が、装置の投影システムPSと基板Wとの間の空間11に介在する(パターン形成されたビームはここを通って基板Wへと投影される)。液浸液は、投影システムPSの最終素子の下で基板Wの少なくとも一部を覆う。よって、露光を受ける基板Wの少なくとも一部が液浸液に浸される。液浸液の効果は、露光放射の波長が気体よりも液体中で短くなることから、より小さなフィーチャの結像を可能にすることである。(液浸液の効果は、システムの実効的な開口数(NA)を増加させ、また焦点深度を増加させるものとみなすこともできる。)
【0023】
商用の液浸リソグラフィーでは、液浸液は水である。典型的に、この水は、半導体製造プラントで一般的に使用されている超純水(UPW)などの高純度の蒸留水である。液浸システムでは多くの場合、UPWは精製される。これに追加の処理ステップが、液浸液として液浸空間11に供給される前になされてもよい。水のほかに、例えばフッ素炭化水素のような炭化水素及び/または水溶液など、屈折率の高い他の液体が液浸液として使用されてもよい。また、液体以外の流体が液浸リソグラフィに使用することが想定されている。
【0024】
本明細書では、使用時に最終素子100と最終素子100に面する表面との間の空間11に液浸液が閉じ込められる局所液浸について言及される。この対向表面は、基板Wの表面、または基板Wの表面と同一面にある支持ステージ(または基板支持部WT)の表面である(本書での基板Wの表面への言及は、そうではないと明記しない限り、これに加えてまたはこれに代えて基板支持部WTの表面を指すものであり、逆も同様である)。投影システムPSと基板支持部WTとの間に存在する流体ハンドリング構造12は、液浸液を液浸空間11に閉じ込めるために使用される。液浸液で満たされる空間11は、平面視にて基板Wの上面よりも小さく、空間11は、基板Wおよび基板支持部WTが下方に移動する間、投影システムPSに対して実質的に静止したままである。
【0025】
他の液浸システム、例えば非閉じ込め型の液浸システム(いわゆる「オールウェット」液浸システム)や浴槽型の液浸システムも考えられている。非閉じ込め型の液浸システムでは、液浸液は、最終素子100の下の表面よりも広く覆う。液浸空間11よりも外側の液体は、液体の薄層として存在する。液体は、基板Wの表面全体、さらには基板Wおよび基板Wと同一面である基板支持部WTの表面全体を覆う場合もある。浴槽型のシステムでは、基板Wは、液浸液の槽に完全に浸される。
【0026】
流体ハンドリング構造12は、液浸液を液浸空間11に供給し、空間11から液浸液を除去し、それにより液浸液を液浸空間11に閉じ込める構造である。それは流体供給システムの一部である特徴を含む。国際公開WO99/49504に開示される構成は、初期の流体ハンドリング構造であり、空間11から液浸液を供給または回収のいずれかをする複数のパイプを備え、投影システムPSの下のステージの相対運動に応じて作動する。より最近の設計では、流体ハンドリング構造は、投影システムPSの最終素子100と基板支持部Wまたは基板Wとの間の空間11の境界の少なくとも一部に沿って延在し、それによりこの空間11を部分的に定める。
【0027】
流体ハンドリング構造12は、様々な機能について選択を有しうる。各機能は、流体ハンドリング構造12がその機能を実現可能にする対応する特徴から導かれうる。流体ハンドリング構造12は、多くの異なる用語で呼ばれうるものであり、それぞれ、バリア部材、シール部材、流体除去システム、液体閉じ込め構造など一つの機能を指す。
【0028】
バリア部材としての流体ハンドリング構造12は、空間11からの液浸液の流れに対する障壁である。液体閉じ込め構造としての本構造は、液浸液を空間11に閉じ込める。シール部材として、流体ハンドリング構造のシール機能は、液浸液を空間11に閉じ込めるシールを形成する。シール機能は、例えばガスナイフのような、シール部材の表面にある開口部からの追加のガス流れを含みうる。
【0029】
ある実施形態では、流体ハンドリング構造12は、液浸流体を供給しうるものであり、したがって流体供給システムでありうる。
【0030】
ある実施形態では、流体ハンドリング構造12は、液浸流体を少なくとも部分的に閉じ込めうるものであり、よって、流体閉じ込めシステムでありうる。
【0031】
ある実施態様では、流体ハンドリング構造12は、液浸流体に対するバリアを提供しうるものであり、よって、流体閉じ込め構造などのバリア部材でありうる。
【0032】
ある実施形態では、流体ハンドリング構造12は、例えば液浸流体の流れ及び/または位置を制御することを助けるために、ガスの流れを生成または使用しうる。
【0033】
ガスの流れは、液浸流体を閉じ込めるためにシールを形成しうるものであり、よって流体ハンドリング構造12はシール部材と呼ばれてもよく、そうしたシール部材は、流体閉じ込め構造でありうる。
【0034】
ある実施形態では、液浸液が液浸流体として用いられる。その場合、流体ハンドリング構造12は、液体ハンドリングシステムであってもよい。前述の説明への参照において、流体に関して定義される特徴へのこの段落での言及は、液体に関して定義される特徴を含むものと理解されうる。
【0035】
リソグラフィ装置は、投影システムPSを有する。基板Wの露光時に、投影システムPSは、パターン形成された放射ビームを基板W上に投影する。基板Wに到達するために、放射ビームBの経路は、投影システムPSから、投影システムPSと基板Wとの間の流体ハンドリング構造12によって閉じ込められた液浸液を通過する。投影システムPSは、ビーム経路の最後にあるレンズ素子を有し、これは液浸液と接触している。液浸液と接触しているこのレンズ素子は、「最後のレンズ素子」または「最終素子」と称されうる。最終素子100は、流体ハンドリング構造12によって少なくとも部分的に囲まれている。流体ハンドリング構造12は、液浸液を最終素子100の下方かつ対向表面の上方に閉じ込めうる。
【0036】
図2aおよび図2bは、流体ハンドリング構造12の変形例に存在しうる様々な特徴を示す。異なる記述がない限り、本設計は、図2aおよび図2bと同じ特徴のいくつかを共有しうる。本書に記載される特徴は、図示されるように、または必要に応じて、個別に、または組み合わせて、選択されうる。
【0037】
図2aは、最終素子100の底面を中心に流体ハンドリング構造12を示す。最終素子100は、逆円錐台状の形状を有する。この円錐台状の形状は、平面の底部表面と円錐表面を有する。円錐台形状は、平坦面から突出して底部平坦表面を有する。底部平坦表面は、最終素子100の底面の光学的に活性な部分であり、これを放射ビームBが通過しうる。最終素子100は、コーティング30を有してもよい。流体ハンドリング構造12は、円錐台形状の少なくとも一部を囲む。流体ハンドリング構造12は、円錐台形状の円錐表面に向かって面する内表面を有する。内表面と円錐表面は相補的な形状を有する。流体ハンドリング構造12の上面は、実質的に平面である。流体ハンドリング構造12は、最終素子100の円錐台形状の周囲に適合しうる。流体ハンドリング構造12の底面は、実質的に平面であり、使用時に基板支持部WT及び/または基板Wの対向表面と平行であってもよい。底面と対向表面との間の距離は、30~500マイクロメートルの範囲、望ましくは80~200マイクロメートルの範囲であってもよい。
【0038】
流体ハンドリング構造12は、最終素子100よりも、基板Wおよび基板支持部WTの対向表面の近くまで延在している。したがって、空間11は、流体ハンドリング構造12の内表面と、上記逆円錐台状の形状がもつ平坦表面と、対向表面との間に定められる。使用中、空間11は液浸液で満たされる。液浸液は、最終素子100と流体ハンドリング構造12との間で相補的な表面間にあるバッファ空間の少なくとも一部、ある実施形態では、相補的な内表面と円錐表面との間の空間の少なくとも一部を満たす。
【0039】
液浸液は、流体ハンドリング構造12の表面に形成されている開口部を通じて空間11に供給される。液浸液は、流体ハンドリング構造12の内表面にある供給開口部20を通じて供給されうる。それに代えてまたはそれとともに、液浸液は、流体ハンドリング構造12の下面に形成されている下側供給開口部23から供給される。下側供給開口部23は、放射ビームBの経路を囲んでもよく、アレイをなす一連の開口部で形成されてもよい。液浸液は、投影システムPS下方の空間11を通る流れが層流となるように空間11を満たすように供給される。また、流体ハンドリング構造12下方の開口部23からの液浸液の供給は、空間11への気泡の侵入を防止する。この液浸液の供給は液体シールとして機能する。
【0040】
液浸液は、内表面に形成されている回収開口部21から回収されうる。回収開口部21を通じた液浸液の回収は、負圧の適用によるもの、または空間11を通る液浸液流れの速度の結果としての回収開口部21を通じた回収であってもよく、または、回収はその両方の結果であってもよい。回収開口部21は、平面視で見るとき、供給開口部20の反対側に配置されてもよい。それとともにまたはそれに代えて、液浸液は、流体ハンドリング構造12の上面に配置されるオーバーフロー開口部24を通じて回収されてもよい。ある実施形態では、供給開口部20および回収開口部21は、その機能を入れ替えることができる(すなわち、液体の流れ方向が逆となる)。これにより流体ハンドリング構造12と基板Wの相対運動に応じて流れの方向を変化させられる。
【0041】
それとともにまたはそれに代えて、液浸液は、流体ハンドリング構造12の下から、その底部表面に形成されている回収開口部25を通じて回収されてもよい。回収開口部25は、流体ハンドリング構造12に液浸液のメニスカス33を保持(または「ピン留め」)する役割を果たしうる。メニスカス33は、流体ハンドリング構造12と対向表面との間に形成され、液体空間と気体の外部環境との境界として機能する。回収開口部25は、単相流で液浸液を回収しうる多孔質プレートであってもよい。底部表面の回収開口部は、それらを通じて液浸液が回収される一連のピン留め開口部32であってもよい。ピン留め開口部32は、二相流で液浸液を回収してもよい。
【0042】
ガスナイフ開口部26が、流体ハンドリング構造12の内表面に対して、任意選択的に、径方向外側にある。空間11内の液浸液の液体閉じ込めを補助するように高められた速度でガスナイフ開口部26を通じてガスが供給されうる。供給されたガスは加湿されていてもよく、実質的に二酸化炭素を含んでいてもよい。ガスナイフ開口部26の径方向外側には、ガスナイフ開口部26を通じて供給されたガスを回収するためのガス回収開口部28がある。例えば大気またはガス源に開放される更なる開口部が、流体ハンドリング構造12の底部表面に存在していてもよい。例えば、更なる開口部は、ガスナイフ開口部26とガス回収開口部28との間、及び/またはピン留め開口部32とガスナイフ開口部26との間に存在しうる。
【0043】
図2aに共通する図2bに示される特徴は、同じ参照番号を共有している。流体ハンドリング構造12は、上記円錐台形状がもつ円錐表面と相補する内表面を有する。流体ハンドリング構造12の下面は、円錐台形状の底部平坦表面よりも対向表面に近い。
【0044】
液浸液は、流体ハンドリング構造12の内表面に形成されている供給開口部34を通じて空間11に供給される。供給開口部34は、内表面の底部側に位置し、おそらく円錐台形状の底部表面より下方にある。供給開口部34は、放射ビームBの経路の周りでビームから間隔をあけて、内表面に沿って囲むように配置されている。
【0045】
液浸液は、流体ハンドリング構造12の下面にある回収開口部25を通じて空間11から回収される。対向表面が流体ハンドリング構造12の下で移動するにつれて、メニスカス33は、対向表面の動きと同じ方向に回収開口部25の表面上に移動しうる。回収開口部25は、多孔質部材で形成されてもよい。液浸液は単相で回収されてもよい。ある実施形態では、液浸液は、二相流で回収される。この二相流は、流体ハンドリング構造12内のチャンバー35に受け入れられ、そこで液体と気体に分離される。液体と気体は、チャンバー35から別々のチャネル36、38を通じて回収される。
【0046】
流体ハンドリング構造12の下面の内側周縁部39は、内表面から離れるように空間11内へと延在し、プレート40を形成している。内側周縁部39は、放射ビームBの形状および大きさに合わせてサイズが定められうる小さいアパチャーを形成する。プレート40は、その両側の液浸液を隔離するように働く。供給された液浸液は、アパチャーに向かって内向きに流れ、この内側のアパチャーを通り、次いでプレート40の下方で周囲の回収開口部25に向かって径方向外向きに流れる。
【0047】
ある実施形態では、流体ハンドリング構造12は、図2bの右側に示すように、2つの部分、すなわち内側部分12aと外側部分12bとを有する。内側部分12aと外側部分12bは、対向表面に平行な面内で互いに対して移動してもよい。内側部分12aは、供給開口部34を有してもよく、オーバーフロー回収部24を有してもよい。外側部分12bは、プレート40及び回収開口部25を有してもよい。内側部分12aは、内側部分12aと外側部分12bの間を流れる液浸液を回収するための中間回収部42を有してもよい。
【0048】
本発明は、液浸リソグラフィ装置を参照して以下に説明される。このような装置では基板Wへの結像は、気体雰囲気に囲まれた本装置の大半の部分で行われる。基板支持部WTは、後述するように、このような装置において、定位置に保持すべく基板Wに力を印加するために1つ又は複数の負圧を利用することができる。しかしながら、本発明は、他の形式のリソグラフィ装置に適用可能である。例えば、本発明は、基板Wへの結像が気体雰囲気中で行われる任意の装置での使用に適している。さらに、本発明は、基板Wへの結像が真空中で行われるEUVリソグラフィ装置に適用することができる。その場合、負圧を使用して基板Wに保持力を発生させる代わりに、静電力を使用して基板Wが定位置に保持される。これは図9図10および図11を参照して説明される。
【0049】
基板支持部WTは、基板Wを支持するように構成される基板ホルダ200を備える。図3は、ある実施形態に係る基板ホルダ200とそれに関連する基板Wおよび基板支持部WTを断面により示す。図3は、基板Wがクランプされ直ちに結像を行える状態を示す。基板ホルダ200は、第1本体表面212を有する本体210を備える。使用時に第1本体表面212は、基板Wの下面に対面する。
【0050】
第1本体表面212の中央の領域では、複数の第1バール220が第1本体表面212から突出している。各第1バール220は、基板Wを支持するように構成される先端面を有する。第1バール220は、平面視にて、他の第1バールに対して第1の規則的なパターンで配置される。第1の規則的なパターンは、基板Wを支持するとともに、本体表面212に向かいまたは本体表面212から離れる基板Wのたわみを許容可能な大きさに低減するためのものである。
【0051】
各第1バール220の平面視での面積は、平面視での基板Wの面積に比べて相対的に小さい。したがって、第1バール220は、基板Wの下面の小領域にのみ接触する。これにより、基板ホルダ200から基板Wに汚染が移る可能性が低減される。
【0052】
本体210は、第2本体表面214を有する。第2本体表面214は、第1本体表面212に対して本体210の反対側にある。使用時に第2本体表面214は、基板支持部WTの支持表面300に対面する。
【0053】
第2本体表面214の中央の領域では、複数の第2バール240が第2本体表面214から突出している。各第2バール240は、支持表面300との接触により基板ホルダ200を基板支持部WTの支持表面300に支持するように構成される先端面を有する。第2バール240は、平面視にて、他の第2バールに対して第2の規則的なパターンで配置される。第2の規則的なパターンは、基板ホルダ200を支持するためのものである。
【0054】
基板ホルダ200と基板支持部WTは共にクランプシステム1000を構成する。クランプシステム1000は、第1本体表面212と基板Wとの間から、また第2本体表面214と支持表面300との間から、クランプシステムコントローラ110の制御のもとでガスを抽出することができるように適合されている。クランプシステムコントローラ110は、第1本体表面212と基板Wとの間のガスの圧力を第2本体表面214と支持表面300との間のガスの圧力とは独立に制御するように構成される。
【0055】
同様にして、基板ホルダ200全体にわたる圧力差が確立されてもよい。例えば、基板ホルダ200の本体210と基板支持部WTの支持表面300との間の空間が、基板Wの上方のより高い圧力よりも低い負圧に排気される。圧力差は、基板ホルダ200を基板支持部WTに保持する第1の力を生じさせる。
【0056】
基板W全体にわたる圧力差が確立される。例えば、基板ホルダ200の本体210と基板Wとの間の空間が、基板Wの上方のより高い圧力よりも低い負圧に排気される。圧力差は、基板Wを基板ホルダ200に保持する第2の力を生じさせる。
【0057】
第1バール220及び第2バール240の正確な配置について後述するが、図3からは、ある実施形態では第2バール240の数が第1バール220の数より少ないことがわかる。第1バール220は、2以上のサブセットに分割される。簡便さのために本発明は、複数の第1バール220のうち第1サブセット220aと複数の第1バール220のうち第2サブセット220bに関して説明される。しかし、本発明は、複数の第1バール220の更なるサブセットを有するように拡張することができる。
【0058】
基板ホルダ200は、複数の第1バール220のうち第1サブセット220aが、複数の第1バール220のうち第2サブセット220bに対してz方向に基板Wに近づきまたは離れるように移動可能になるように配置される。これを達成する2つの一般的な方法について説明する。第1の方法は、図3及び図4に示すものであり、負圧を用いて基板ホルダ200と基板支持部WTとの間および基板ホルダ200と基板Wとの間に力を発生させる。第2の方法は、図8図9、および図10を参照して示されるものであり、基板ホルダ200と基板支持部WTとの間および基板ホルダ200と基板Wとの間に静電力を発生させるために電極が使用される。負圧と静電力の一方または両方を使用するハイブリッドシステムも可能である。
【0059】
図3の実施形態では、複数の第1バール220のうち第2サブセット220bは、それぞれ、複数の第2バール240のうち1つの第2バールの軸235から距離237にある軸230を有し、この距離237は、複数の第1バール220の第1サブセット220aのうち1つの第1バールの軸とこれに最も近い複数の第2バール240のうち1つの第2バールの軸235との間の距離239よりも小さい。言い換えれば、複数の第1バール220のうち第2サブセット220bの各バールは、対応する第2バール240を有する。例えば図3に示すような実施形態では、各第2バール240の中心軸235は、対応する1つの第1バール220の中心軸230と同軸である。複数の第1バール220の第2サブセット220bと第2バール240との整列とは、基板ホルダ200上の基板Wからの力が、第2サブセット220bと第2バール240の両方を通じて基板支持部WTに伝達されることを意味する。言い換えれば、複数の第1バール220のうち第2サブセット220bの各バールの位置に対応する位置での基板ホルダ200の剛性は、複数の第1バール220のうち第1サブセット220aの各バールの位置に対応する位置での基板ホルダ200の剛性よりも大きい。軸235と230が同一平面にあることは可能であろう。この剛性の違いを達成する他の方法は、例えば本体210の厚さを変化させること、及び/または第2バール240の寸法を変化させること(より小さい第2バール240は、より低い剛性を提供する)によって可能である。
【0060】
ある実施形態では、第2サブセット220bのバールの数は、複数の第2バール240の数と実質的に等しい。
【0061】
図4の実施形態は、後述の点を除き、図3の実施形態と同様である。図4の実施形態では、第2バール240は、基板支持部WTの一部であり、支持表面300から突出している。図4の実施形態の基板ホルダ200と基板支持部WTは、図3の実施形態と同様に動作する。また、図3の実施形態は、第2本体表面214からではなく、支持表面300から突出する第2バール240を有することも可能でありうる。
【0062】
図4に示すように、基板ホルダ200は、それに力が印加されていない弛緩状態にある。図3の実施形態の基板ホルダ200も同様に、弛緩状態にある。この構成では、第1サブセット220aのバールの先端が第1本体表面212から突出する距離が、第2サブセット220bのバールが第1本体表面212から突出する対応する距離よりも小さい。この距離の差は図4に示す隙間222によって示される。この理由は、基板ホルダ200の剛性が、第1サブセット220aのバールに相当する位置で、第2サブセット220bのバールに相当する位置よりも低いという上述の特性である。したがって、基板Wを基板ホルダ200に引きつけるのに全領域にわたって同じ力が印加される場合、本体210は、第1サブセットのバール220aに相当する位置で基板Wに向かってたわむことになる。仮に、第1サブセット220aと第2サブセット220bのバールが第1本体表面212から同じ距離にあったとすると、第1サブセット220aのバールが第2サブセット220bのバールよりも突き出すことになろう。直ちに結像を行える位置に基板Wがクランプされているときすべての第1バール220の先端面が同じ平面にあることを確実にするために、第1サブセット220aのバールの先端面が第1本体表面212から突出する距離は、第2サブセット220bのバールの先端面が第1本体表面212から突出する距離よりも隙間222により示される大きさだけ小さい。その結果、クランプされた状態では、図3に示すように、基板Wは、すべての第1バール220と接触して、平坦に保持されることができる。図7に示される状況では後述のように、第1サブセット220aのバールに相当する位置での本体210のたわみが模式的に示されるが、図3ではこのたわみは図示されていない。
【0063】
本体210と基板支持部WTとの間に、本体210と基板Wとの間よりも低い圧力が印加されると、基板支持部WTに向かう本体210の変形が、第2バール240間で起こりうる。その結果、第1サブセット220aのバールは、基板支持部WTに向かってわずかに下方に移動し、基板Wから離れる。これにより、基板Wは、この条件で、仮に本体210の上方と下方で(図3に示すように)圧力が等しかった場合、または、仮に第1バール220の各々が対応する第2バール240を有した場合のいずれかに比べて、より少ない第1バール220すなわち第2サブセット220bのバールによって支持されることができる。この原理は、図5図7を参照して以下に論じるように、基板をクランプする方法に関して本発明に使用される。まず基板Wは、図3に示すようにして、基板支持部200にロードされる。基板Wは当初、(上向き(傘状)または下向き(椀状)に)たわみうる。この構成では、第1バール220の先端面と基板Wとの間の摩擦が大きいため、第1バール220の弾性変形がxy平面内に存在する。この弾性変形により、基板Wの面内変形が生じる。基板Wを保持し続ける一方で複数の第1バール220の2つのサブセット220a、220bのうち一方のサブセットを解放することによって、解放されたサブセット220a、220bのバールの弾性変形を緩めることができる。解放されたサブセットのバールは、その後、基板Wと再び係合することができる。そして、図3図7に示す特定の構成では、他方のサブセット220a、220bのバールを基板Wとの接触から解放することができ、それにより、それらも弛緩させることができる。このプロセスは、望ましい回数だけ多く繰り返されうるが、反復するたびに基板Wにおける面内応力は低下する。最終的に基板Wは、図7に示すように、第1バール220の全ての先端面を基板Wに係合させることによって、直ちに結像を行えるように完全にクランプされうる。
【0064】
図3図5図7は、基板ホルダ200への基板Wのローディングにおいて、本体210が第2バール240間でたわまなかった場合に比べて基板Wをより完全に弛緩させることを可能にすべく、クランプシステム1000がどのようにして使用されることができるかを示す。同じ原理は図4のクランプシステムにも適用されうる。
【0065】
基板ホルダ200を支持表面300に引きつける第1の力を発生させるために、負圧が本体210と支持表面300との間に生成される。第2の力は、基板Wと基板ホルダ200との間に負圧を発生させることによって、基板Wを基板ホルダ200に引きつけるために生成される。そして、図3に示すように、基板Wは、基板ホルダ200にロードされる。
【0066】
第1の力及び第2の力の大きさは、本体210が第1サブセット220aのバール(図5に示される中央の第1バール220a)の下方の領域で支持表面300に向かって動き、第1サブセット220aのバールの先端面と基板Wとの間に隙間225を生成する解放ステップをもたらすように制御される。第1サブセット220aのバールの下方で第2バール240が欠落しているということは、基板ホルダ200が基板支持部WTに引きつけられる力が増大するときに、比較的薄い本体210が、第2サブセット220bと第2バール240で合致するバールの組の間で変形することを意味する。本体210の変形は、基板Wから離れるようにして基板支持部WTに向かって下向きである。その結果、基板支持部WTに向かって変形する本体210の低剛性部分の上方に位置する第1サブセット220aのバールの先端面は、基板Wの下面との接触が外れて動く。これは、すべてではない第1バール220が基板Wの下面に接触している状態で、基板ホルダ200に基板Wを支持することができることを意味する。
【0067】
第1サブセット220aのバールが基板Wと接触しなくなる結果として、第1サブセット220aのバールにおける面内応力が緩和される。同様に、第1サブセット220aのバールと基板Wとの接触に起因する基板W内の面内応力が、基板W内で緩和される。これにより、基板Wの面内変形が低減され、より良いオーバレイ性能がもたらされる。
【0068】
基板Wが解放された後、図5に示すように、対応する第2バール240を有しない第1サブセット220aのバールは、依然として基板Wの下面から遠位にある。すなわち、第1サブセット220aのバールの先端面と基板Wの下面との間に隙間225が存在する。
【0069】
この段階で、コントローラ110は、第1本体表面212と基板Wとの間の負圧を増加させる(すなわち絶対圧を低減する)ことによって再係合ステップを開始する。これは、基板Wの下方の圧力が基板Wの上方の圧力よりも低いので、基板Wを基板ホルダ200に引きつける第2の力を増加させることに有効である。これに代えてまたはこれとともに、第2本体表面214と支持表面300との間の負圧が減少(すなわち絶対圧が増加)されてもよく、それにより第1の力が減少されてもよい。第1の力と第2の力の両方が変化されてもよい。こうして、状態は、第1バール220のすべてが基板Wの下面に接触する状態へと移行する。
【0070】
係合解除ステップでは、第1本体表面212と基板Wとの間の負圧が増加され、及び/または、第2本体表面214と支持表面300との間の負圧が減少される。すなわち、係合解除ステップでは、第1の力が減少され、及び/または、第2の力が増加される。これにより、第2サブセット220bのバールの先端面と基板Wとの間に隙間226が現れる。これは、第1の力及び/または第2の力の変化の結果として第1サブセット220aのバールに相当する位置で本体210が支持表面300から離れるようにしてたわむことによるものである。すなわち、基板Wは、図6に示すように、第1サブセット220aのバールのみによって支持される。この位置では、第2サブセット220bのバールの面内弾性変形は緩和され、第2サブセット220bのバールの位置での基板Wの関連する面内応力も緩和される。
【0071】
最終段階、つまり、更なる再係合ステップを図7に示す。ここでは、第1サブセット220aと第2サブセット220bのバールが基板Wに接触してこれを平坦に保持し直ちに結像を行えるように第1の力及び/または第2の力を制御するステップが実行される。例えば、本体210と支持表面300との間の圧力は、本体210と基板Wとの間の圧力と同じである。更なる再係合ステップの最中に、第1の力が増加され、及び/または、第2の力が減少される。その結果、第1サブセット220aのバールの位置で本体210の剛性が低いため、本体210は、第2バール240間で基板Wに向かって変形する。高さの差、すなわち、基板ホルダ200の弛緩状態における第1サブセット220aのバールと第2サブセット220bのバールとの間の隙間222があるので、たわみによって、第1サブセット220aと第2サブセット220bの両方のバールの先端面が実質的に同一平面となり、基板Wは第1バール220のすべてが接触した状態で平坦に保持される。このようにして、基板W内の面内応力が緩和される。したがって、図7に示す位置では、基板Wの下面の全体が、第1バール220の各々の位置で支持され、基板Wに結像することができる。
【0072】
図5に示す解放ステップ、図5図6の間で起こる再係合ステップ、図6に示す係合解除ステップ、図7に示す更なる再係合ステップは、望ましい回数だけ多く繰り返されうるが、反復するたびに基板Wにおける面内応力は低下する。
【0073】
上記では負圧の増加と減少に言及しているが、第1の力及び/または第2の力は、他の方法、例えば静電的に、例えばクーロンクランプまたはジョンソンラーベッククランプを使用して、例えば1つ又は複数の電極に電圧を印加することによって、発生させることができる。更なる実施形態では、第1の力及び/または第2の力は、負圧の印加と静電的な印加の組み合わせによって発生され、または少なくとも制御することができる。
【0074】
クランプシステム1000が第2本体表面214と支持表面300との間の空間、また第1本体表面212と基板Wとの間の空間に圧力を独立に発生させることができるようにするためには、基板ホルダ200の第1側から基板ホルダ200の第2側への本体210を通じたガスの通過が妨げられることが望ましい。従って、本体210を貫通する何らかの貫通穴が設けられる場合には、こうした貫通穴を塞ぐことが可能でなければならない。例えば、ピンが設けられ、基板支持部WTにおいて作動可能であってもよい(図示せず)。ピンは、基板支持部WTから第1バール220を越えて突出するように作動されてもよい。基板Wのローディングおよびアンローディングの最中に、ピンが伸長され、基板Wがピンによって支持される。ピンはその後格納され、それにより、基板Wは、対応する第2バール240を有する第1バール220の先端面に配置される。本体210の両側に異なる真空圧を発生させることができることを確実にするために、シールが設けられなければならない。
【0075】
負圧を発生させるために通路が設けられている。支持表面300に開口部を有する基板支持部WT内の通路が、基板ホルダ200と基板支持部WTとの間に負圧を発生させるために設けられている。第1本体表面212に開口部を有する本体210内の1つ又は複数の通路が、基板ホルダ200と基板Wとの間に負圧を発生させるために設けられている。これらの通路の反対側の端は、例えばホースで負圧源に接続されている。
【0076】
従来技術の基板ホルダは、すべての第1バールの先端面が実質的に同じ平面にあることを必要としている。これまでは、第1バール220の各々が対応する第2バール240を有する場合にのみ、仕様に収まる平坦性を達成することが可能であった。これは、所望の水準の平坦性を達成するように第1バール220の先端面が研磨されるからである。研磨中に除去される材料の量は、研磨石と第1バール220との間の力に依存する。第2バール240に対応しない第1バール220の場合、研磨石は第1バール220を凹ませて本体210をわずかに曲げるので、対応する第2バール240によって直下で支持される場合に比べて、第1バール220から除去される材料が少なくなる。しかし、イオンビームミリング/研磨、リソエッチングなどの新たな平坦化技術の導入以降、第1バール220下の本体210の剛性のばらつきは、このような欠陥をもはや導入しない。なぜなら、イオンビームミリングで除去される材料の量が、ミリング加工される本体210の剛性とは関係しないからである。これらの新しい平坦化技術の導入により、図4に示すような基板ホルダ200を導入し、第1バールの異なるサブセットのバールを異なる高さで製造することが可能になっている。
【0077】
ある実施形態では、隙間222は、3nm以上、好ましくは10nm以上、より好ましくは30nm以上、望ましくは50nm以上、あるいは100nm以上である。隙間222は、本体210の剛性と、使用時、結像中における第1及び第2の力の大きさとに応じて選択される。例えば、隙間は、第1サブセット220aのバールと第2サブセット220bのバールとの間での本体210の剛性の差に、基板への結像中における第1の力と第2の力によって本体210に印加される全体の力を掛けたものに等しい。
【0078】
上記の説明は、負圧を用いて生成される基板W、基板ホルダ200および基板支持部WTの間の力に基づいて説明される。しかし、これは必須ではなく、力は、静電力を使用することを含む他の方法で生成されてもよい。これは、図8を参照して説明される。
【0079】
図8では、電極500、510、600、610が、基板W、基板ホルダ200および基板支持部WTの間に第1および第2の力を発生させるために設けられている。力の大きさは電極に印加される電圧に依存する。
【0080】
図8の実施形態では、1つ又は複数の基板電極500が、基板Wの下側に成膜されている。基板ホルダ200の本体210内に埋め込まれた1つ又は複数の第1基板ホルダ電極510も設けられている。基板電極500と第1基板ホルダ電極510との間に電位差を与えることにより、基板Wを基板ホルダ200に向けて引きつける力を発生することができる。同様に、1つ又は複数の基板支持部電極600が、基板支持部WTに設けられている。1つ又は複数の第2基板ホルダ電極610は、基板ホルダ200の本体210に設けられている。基板支持部電極600と第2基板ホルダ電極610との電位差は、基板ホルダ200と基板支持部WTとの間に力をもたらす。力が生成される方法以外については、図8のクランプシステム1000は、図3図7を参照して上述したものと同じである。
【0081】
ある実施形態では、1つ又は複数の第1基板ホルダ電極が基板ホルダ200に設けられ、これらは同じ電位にあり、基板Wと基板ホルダ200との間および基板ホルダ200と基板支持部WTとの間に力を発生させるために使用される。
【0082】
図9および図10は、さらなる実施形態を示す。図9および図10の実施形態では、基板ホルダ200と基板Wとの間の第2の力は、図9および図10に示すように静電的に生成されるか、または例えば図3に示すように負圧を用いて生成されるか、または異なる手段によって生成されるか、またはこれら2つの手段の組み合わせによって生成されてもよい。
【0083】
図9および図10の実施形態では、第1サブセット220aのバールに相当する位置と第2サブセット220bのバールに相当する位置での本体210の剛性は、同じであるが、これは必須ではない。しかし、少なくとも2セットの基板ホルダ電極620、630は、第1サブセット220a下方の基板ホルダ200の本体210の部分における第1の力が、複数の第1バール220のうち第2サブセット220b下方の基板ホルダ200の本体210の部分における第1の力とは独立に制御可能となるように設けられている。図9および10の実施形態では、これは、第1バール220と第2バール240の相対位置が、各第1バール220が平面視で対応する第2バール240間のギャップに位置するようにして交互となることを保証することによって提供される。よって、第1バール220の各々は、本体210のかなり大きな変形が可能な位置にある(すなわち本体210は剛ではない)。第1サブセット220aのバールの下方の位置に第1基板ホルダ電極630を設け、第2サブセット220bのバールの下方の位置に第2基板ホルダ電極620を設けることによって、支持表面300に対して第1サブセット220aのバールの先端面の高さを、支持表面300に対して第2サブセット220bのバールの先端面の高さと比較して、独立して制御することができる。
【0084】
例えば、図9に示すように、第2サブセット220bのバールに対応する第2基板ホルダ電極620と基板支持部WTの電極310との間に静電力が発生させられる。この引力の結果として、第2サブセット220bのバールは基板Wから離れるように引き込まれるが、基板Wは第1サブセット220aのバールによって支持されたままである。この位置では、第2サブセット220bのバールにおける面内応力を緩和できる。
【0085】
逆に、図10では、第1基板ホルダ電極630と基板支持部WTの一部である電極310との間に発生する静電力は、基板Wから第1サブセット220aのバールを引き込むのに有効である。そして、基板Wは、第2サブセット220bのバールによって支持される。第1サブセット220aのバールにおける面内応力は、緩和することができる。このプロセスは、何回も繰り返されうる。次に、基板Wを結像のためにクランプするために、すべての第1バール220の先端面を基板Wの下面に接触させることができる。この実施形態では、すべての第1バール220の先端面は、基板ホルダ200に力が存在しない場合であっても、実質的に同一平面上にある。
【0086】
図11は、本発明に係る第1バール220および第2バール240の配置についての実施形態を示す。この概略図では、黒丸は、対応する第2バール240を有しない(第1サブセット220aの)第1バール220を表す(例えば、図5図8の中央のバール)。一方、白丸は、その下方に対応する第2バール240を有する(第2サブセット220bの)第1バール220を表す(すなわち図5図7に示す実施形態の右側および左側のバール)。
【0087】
図11では、4つの第1バール220のうち1つだけが対応する第2バール240を有している。第1バール220当たりの支持される面積(すなわち第2バール240の支持する面積)は近似している。第1および第2パターンの回転対称(4回)は、第1および第2パターンについて同じである。これにより、第2バール240の各々を中心に本体210の実質的に対称的な変形が、望ましくはもたらされる。
【0088】
本書ではICの製造におけるリソグラフィ装置の使用に具体的に言及している場合があるが、本書に説明されたリソグラフィ装置は、他の用途に使用されてもよいものと理解すべきである。ありうる他の用途には、集積光学システム、磁区メモリ用案内パターンおよび検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッド等の製造が含まれる。
【0089】
文脈が許す場合、本発明の実施形態は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、またはそれらの任意の組み合わせにより実装されうる。本発明の実施形態はまた、1つ又は複数のプロセッサにより読み込まれて実行されうる機械可読媒体に記憶された命令として実装されてもよい。機械可読媒体は、機械(例えば、コンピュータデバイス)により読み取り可能な形式で情報を記憶または伝送する何らかのメカニズムを含みうる。例えば、機械可読媒体は、リードオンリーメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、磁気記憶媒体、光記憶媒体、フラッシュメモリ装置、電気的、光学的、音響的またはその他の形式の伝搬信号(例えば、搬送波、赤外線信号、デジタル信号など)を含みうる。また、ファームウェア、ソフトウェア、ルーチン、命令は、特定の動作を実行するものとして本書に説明される場合がある。しかし、こうした説明は便宜的なものにすぎず、このような動作は、実際は、ファームウェア、ソフトウェア、ルーチン、命令などを実行するコンピュータデバイス、プロセッサ、コントローラ、またはその他のデバイスによりもたらされ、アクチュエータまたは物質世界と相互作用するその他のデバイスにそうした動作を引き起こしうるものであると理解すべきである。
【0090】
本書ではリソグラフィ装置の文脈における本発明の実施形態について具体的な言及がなされている場合があるが、本発明の実施形態は、他の装置にも使用されうる。本発明の実施形態は、マスク検査装置、メトロロジ装置、または、ウェーハ(またはその他の基板)またはマスク(またはその他のパターニングデバイス)などの物体を測定または処理する何らかの装置の一部を形成してもよい。こうした装置は一般に、リソグラフィツールとも称されうる。こうしたリソグラフィツールは、真空条件または周囲(非真空)条件を使用しうる。
【0091】
上記では光リソグラフィの文脈における本発明の実施形態の使用について具体的な言及がなされている場合があるが、本発明は例えばインプリントリソグラフィなどの他の用途においても使用されうるものであり、文脈が許す場合、光リソグラフィに限られるものではないことは理解されよう。
【0092】
上記では本発明の特定の実施形態を説明したが、本発明は、説明したものとは異なる方式で実施されうることが理解される。上述の説明は例示であり、限定を意図しない。よって、後述の特許請求の範囲から逸脱することなく既述の本発明に変更を加えることができるということは、関連技術の当業者には明らかなことである。
図1
図2a
図2b
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11