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特許7121134コア-シェル共重合体、その製造方法、およびそれを含む熱可塑性樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】コア-シェル共重合体、その製造方法、およびそれを含む熱可塑性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 265/06 20060101AFI20220809BHJP
   C08L 51/00 20060101ALI20220809BHJP
   C08L 69/00 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
C08F265/06
C08L51/00
C08L69/00
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020545766
(86)(22)【出願日】2019-11-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-24
(86)【国際出願番号】 KR2019015422
(87)【国際公開番号】W WO2020101342
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2020-09-02
(31)【優先権主張番号】10-2018-0142092
(32)【優先日】2018-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0141838
(32)【優先日】2019-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】イ、へ-リム
(72)【発明者】
【氏名】キム、ユン-ホ
(72)【発明者】
【氏名】ユ、キ-ヒョン
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-049961(JP,A)
【文献】特開2000-086862(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0194426(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0129819(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 265/06
C08L 51/06
C08L 69/00
C08F 290/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアと、前記コアを包むシェルと、を含むコア-シェル共重合体であって、
前記コアは、炭素数1~8の第1アルキル(メタ)アクリレート単量体由来の繰り返し単位および末端変性ポリジメチルシロキサン架橋剤由来の架橋部を含み、
前記末端変性ポリジメチルシロキサン架橋剤が、ポリジメチルシロキサンの両末端に第2アルキル(メタ)アクリレート単量体由来の変性部を含み、
前記コアの平均粒径が150nm~500nmであり、
前記コアがシードを含む、コア-シェル共重合体。
【請求項2】
前記コアの平均粒径が185nm~260nmである、請求項1に記載のコア-シェル共重合体。
【請求項3】
前記末端変性ポリジメチルシロキサン架橋剤が、下記化学式1で表される化合物を含むものである、請求項1または2に記載のコア-シェル共重合体。
【化3】

(前記化学式1中、R1およびR2は、それぞれ独立して、炭素数1~30のアルキレン基であり、R3およびR4は、それぞれ独立して、水素またはメチル基であり、nは5~400である。)
【請求項4】
1およびR2は、それぞれ独立して炭素数1~8のアルキレン基であり、nは10~330である、請求項3に記載のコア-シェル共重合体。
【請求項5】
前記コアは、前記コア-シェル共重合体の総100重量部に対して、前記炭素数1~8の第1アルキル(メタ)アクリレート単量体由来の繰り返し単位70重量部~95重量部と、前記末端変性ポリジメチルシロキサン架橋剤由来の架橋部0.01重量部~5重量部と、を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のコア-シェル共重合体。
【請求項6】
前記コアは、前記コア-シェル共重合体の総100重量部に対して、前記炭素数1~8の第1アルキル(メタ)アクリレート単量体由来の繰り返し単位83重量部~88重量部と、前記末端変性ポリジメチルシロキサン架橋剤由来の架橋部0.1重量部~2重量部と、を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のコア-シェル共重合体。
【請求項7】
前記シードは、前記コア-シェル共重合体の総100重量部に対して、0.5重量部~20重量部で含まれる、請求項1~6のいずれか一項に記載のコア-シェル共重合体。
【請求項8】
前記シェルは、第3アルキル(メタ)アクリレート単量体由来の繰り返し単位および芳香族ビニル単量体由来の繰り返し単位からなる群から選択される1種以上の単量体由来の繰り返し単位を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のコア-シェル共重合体。
【請求項9】
前記コア-シェル共重合体の総100重量部に対して、前記コア80重量部~95重量部と、前記シェル5重量部~20重量部を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のコア-シェル共重合体。
【請求項10】
炭素数1~8の第1アルキル(メタ)アクリレート単量体および末端変性ポリジメチルシロキサンを含むコア形成混合物を重合させ、コアを製造するステップと、
前記ステップで製造されたコアの存在下で、シェル形成混合物を重合させてコア-シェル共重合体を製造するステップと、を含み、
前記末端変性ポリジメチルシロキサンが、ポリジメチルシロキサンの両末端に第2アルキル(メタ)アクリレート単量体由来の変性部を含み、
前記製造されたコアの平均粒径が150nm~500nmであり、
前記コアがシードを含む、
コア-シェル共重合体の製造方法。
【請求項11】
請求項1~9の何れか一項に記載のコア-シェル共重合体と、ポリカーボネート樹脂と、を含む、熱可塑性樹脂組成物。
【請求項12】
ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、前記コア-シェル共重合体を1重量部~20重量部で含む、請求項11に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年11月16日付けの韓国特許出願第10-2018-0142092号および2019年11月7日付けの韓国特許出願第10-2019-0141838号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、コア-シェル共重合体に関し、より詳細には、熱可塑性樹脂組成物の衝撃補強剤として用いられるコア-シェル共重合体、その製造方法、およびそれを含む熱可塑性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
自動車の外装材や携帯電話のハウジングなどは、使用時に低温環境に曝される頻度が高く、紫外線のような光源に露出しやすい。また、かかる素材には、熱い日光に耐えられる高い耐熱温度および高い引張強度が求められる。
【0004】
上記のような特性を有する熱可塑性樹脂組成物を開発するために、高い耐熱性、寸法安定性、および引張強度を有するポリカーボネート樹脂を主要樹脂とする製品が開発されてきた。
【0005】
しかしながら、ポリカーボネート樹脂は、低温衝撃強度および常温衝撃強度が低いため、折れやすいという問題がある。かかる問題を補完するために、衝撃補強剤を用いてポリカーボネート樹脂の衝撃強度を高めようとする試みが行われてきた。
【0006】
ポリカーボネート樹脂の衝撃強度を向上させるために用いられる衝撃補強剤としては、アクリル系ゴム樹脂、ブタジエン系ゴム樹脂、シリコン系ゴム樹脂などが挙げられ、熱可塑性樹脂が要求する特性に応じて衝撃補強剤が適用されている。
【0007】
しかし、ポリカーボネート樹脂の衝撃強度を向上させるために衝撃補強剤としてアクリル系ゴム樹脂を適用する場合、ポリカーボネート樹脂の耐候性および着色性には優れるが、低いガラス転移温度によって低温衝撃強度が低下するという問題がある。
【0008】
また、ブタジエン系樹脂を適用する場合やシリコン系樹脂を適用する場合、ポリカーボネート樹脂の低温衝撃強度は向上するが、ブタジエン系樹脂は、ブタジエンゴム中の不飽和結合により、日光や熱、酸素のような外部因子によりポリカーボネート樹脂が変色されやすく、シリコン系樹脂は、シリコン系樹脂自体の低い屈折率により、屈折率の高いポリカーボネート樹脂に適用した際に着色が低下するという問題がある。
【0009】
したがって、ポリカーボネート樹脂に適用した際に、低温衝撃強度および常温衝撃強度に優れるとともに、着色性に優れた衝撃補強剤を開発するための研究が持続的に求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明で解決しようとする課題は、上記の発明の背景となる技術で述べた問題を解決するために、衝撃補強剤を含む熱可塑性樹脂組成物から成形された成形品の着色性を低下させることなく、且つ衝撃強度を改善させることにある。
【0011】
つまり、本発明は、末端が二重結合含有単量体で変性されたシリコン系重合体がコアの架橋剤として用いられたコア-シェル共重合体を衝撃補強剤として用いることで、それを含む熱可塑性樹脂組成物を用いて成形された成形品の着色性を低下させることなく、且つ衝撃強度を改善させるコア-シェル共重合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するための本発明の一実施形態によると、本発明は、コアと、前記コアを包むシェルと、を含むコア-シェル共重合体であって、前記コアは、炭素数1~8の第1アルキル(メタ)アクリレート単量体由来の繰り返し単位および末端変性ポリジメチルシロキサン架橋剤由来の架橋部を含み、前記末端変性ポリジメチルシロキサン架橋剤が、ポリジメチルシロキサンの両末端に第2アルキル(メタ)アクリレート単量体由来の変性部を含む、コア-シェル共重合体を提供する。
【0013】
また、本発明は、炭素数1~8の第1アルキル(メタ)アクリレート単量体および末端変性ポリジメチルシロキサンを含むコア形成混合物を重合させ、コアを製造するステップと、前記ステップで製造されたコアの存在下で、シェル形成混合物を重合させてコア-シェル共重合体を製造するステップと、を含むコア-シェル共重合体の製造方法であって、前記末端変性ポリジメチルシロキサンが、ポリジメチルシロキサンの両末端に第2アルキル(メタ)アクリレート単量体由来の変性部を含む、コア-シェル共重合体の製造方法を提供する。
【0014】
また、本発明は、前記コア-シェル共重合体と、ポリカーボネート樹脂と、を含む熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、コア-シェル共重合体を衝撃補強剤として用いる場合、それを含む熱可塑性樹脂組成物から成形された成形品の着色性を低下させることなく、且つ衝撃強度、特に低温での衝撃強度に優れる効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の説明および特許請求の範囲で用いられた用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために、用語の概念を適切に定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念で解釈すべきである。
【0017】
本発明において、用語「単量体由来の繰り返し単位」は、単量体に起因した成分、構造、またはその物質自体を指し得て、具体的な例として、重合体の重合時に、投入される単量体が重合反応に関与して重合体中で成す繰り返し単位を意味し得る。
【0018】
本発明において、用語「架橋剤由来の架橋部」は、架橋剤として用いられる化合物に起因した成分、構造、またはその物質自体を指し得て、架橋剤が作用および反応して形成された重合体中、または重合体間の架橋(cross linking)の役割を果たす架橋部(cross linking part)を意味し得る。
【0019】
本発明において、用語「シード(seed)」は、コア-シェル共重合体の機械的物性を補完し、コアの重合を容易にし、コアの平均粒径を調節するように、製造工程において、コアの重合の前に先に重合された重合体(polymer)成分、または共重合体(copolymer)成分を意味し得る。
【0020】
本発明において、用語「コア(core)」は、コアを形成する単量体が重合され、コア-シェル共重合体のコアまたはコア層を成す重合体(polymer)成分、または共重合体(copolymer)成分を意味し得て、前記コアを形成する単量体がシード上に形成され、コアがシードを包む形態を示す、コアまたはコア層を成す重合体(polymer)成分、または共重合体(copolymer)成分を意味し得る。
【0021】
本発明において、用語「シェル(shell)」は、シェルを形成する単量体がコア-シェル共重合体のコアにグラフト重合され、シェルがコアを包む形態を示す、コア-シェル共重合体のシェルまたはシェル層を成す重合体(polymer)成分、または共重合体(copolymer)成分を意味し得る。
【0022】
以下、本発明が容易に理解されるように、本発明をより詳細に説明する。
【0023】
<コア-シェル共重合体>
本発明に係るコア-シェル共重合体は、コアと、前記コアを包むシェルと、を含んでもよい。
【0024】
前記コアは、炭素数1~8の第1アルキル(メタ)アクリレート単量体由来の繰り返し単位と、末端変性ポリジメチルシロキサン架橋剤由来の架橋部と、を含んでもよい。
【0025】
前記第1アルキル(メタ)アクリレート単量体は、ポリカーボネート樹脂の常温衝撃強度を向上させる成分であって、炭素数1~8のアルキル基を含有するアルキル(メタ)アクリレート単量体であってもよい。この際、前記炭素数1~8のアルキル基は、炭素数1~8の直鎖状アルキル基および炭素数3~8の分岐状アルキル基を両方とも含む意味であり得る。具体的な例として、前記アルキル(メタ)アクリレート単量体は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、または2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートであってもよい。ここで、第1アルキル(メタ)アクリレート単量体は、アルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレートを意味し得る。
【0026】
前記第1アルキル(メタ)アクリレート単量体由来の繰り返し単位の含量は、前記コア-シェル共重合体の総100重量部に対して、70重量部~95重量部、80重量部~92重量部、または83重量部~88重量部であってもよく、この範囲内である場合、本発明に係るコア-シェル共重合体を衝撃補強剤として含む熱可塑性樹脂組成物を用いて成形された成形品の着色性および衝撃強度に優れる効果がある。
【0027】
前記末端変性ポリジメチルシロキサン架橋剤は、前記第1アルキル(メタ)アクリレート単量体由来の繰り返し単位を架橋させるための成分であって、前記ポリジメチルシロキサンの両末端に第2アルキル(メタ)アクリレート単量体由来の変性部を含んでもよい。
【0028】
具体的に、前記末端変性ポリジメチルシロキサン架橋剤は、下記化学式1で表される化合物を含むものであってもよい。
【0029】
【化1】
【0030】
(前記化学式1中、R1およびR2は、それぞれ独立して、炭素数1~30のアルキレン基、炭素数1~20のアルキレン基、または炭素数1~8のアルキレン基であり、R3およびR4は、それぞれ独立して、水素またはメチル基であり、nは5~400、5~360、または10~330である。
【0031】
一方、両末端に二重結合を含有するアクリル系樹脂(例えば、エチレングリコールジメタクリレート)を架橋剤として用いて製造されたコア-シェル共重合体は、アクリル系樹脂自体のガラス転移温度が約-40℃~-50℃であるため、低温での衝撃強度に劣る。しかし、本発明のコア-シェル共重合体は、ポリジメチルシロキサンの両末端にアルキル(メタ)アクリレート由来の変性部を含む末端変性ポリジメチルシロキサンを架橋剤として用い、前記ポリジメチルシロキサン自体のガラス転移温度が-100℃~-120℃であるため、本発明に係るコア-シェル共重合体を衝撃補強剤として含む熱可塑性樹脂組成物を用いて成形された成形品の着色性および衝撃強度に優れる効果がある。
【0032】
前記末端変性ポリジメチルシロキサン架橋剤由来の架橋部の含量は、前記コア-シェル共重合体の総100重量部に対して、0.01重量部~5重量部、0.01重量部~2重量部、または0.1重量部~2重量部であってもよく、この範囲内である場合、本発明に係るコア-シェル共重合体を衝撃補強剤として含む熱可塑性樹脂組成物を用いて成形された成形品の着色性および衝撃強度に優れる効果がある。
【0033】
前記コアは、コア上にシェルを容易にグラフトさせるための成分として、炭素数1~8の第1アルキル(メタ)アクリレート単量体由来の繰り返し単位および末端変性ポリジメチルシロキサン架橋剤由来の架橋部とともに、第1架橋性単量体由来の繰り返し単位をさらに含んでもよい。
【0034】
前記第1架橋性単量体は、具体的な例として、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、およびペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどのような(メタ)アクリル系架橋性単量体;ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジアリルフタレートなどのようなビニル系架橋性単量体から選択される1種以上であってもよい。
【0035】
前記コアが第1架橋性単量体由来の繰り返し単位を含む場合、前記第1架橋性単量体由来の繰り返し単位の含量は、前記コア-シェル共重合体の総100重量部に対して、0.01重量部~5重量部、0.01重量部~2重量部、または0.1重量部~2重量部であってもよく、この範囲内である場合、コア上にシェルを容易にグラフトさせることができ、本発明に係るコア-シェル共重合体を衝撃補強剤として含む熱可塑性樹脂組成物を用いて成形された成形品の着色性および衝撃強度に優れる効果がある。
【0036】
一方、前記コアは、コアの平均粒径を調節するために、炭素数1~8の第4アルキル(メタ)アクリレート単量体由来の繰り返し単位を含むシードを含んでもよく、具体的な例として、前記コアはシードを包むコアであってもよい。
【0037】
前記シードは、シード上にコアが容易に形成されるように、炭素数1~8の第4アルキル(メタ)アクリレート単量体由来の繰り返し単位とともに、第2架橋性単量体由来の繰り返し単位をさらに含んでもよい。前記シードに含まれる前記第4アルキル(メタ)アクリレート単量体由来の繰り返し単位および前記第2架橋性単量体由来の繰り返し単位は、上述のコアに含まれる単量体由来の繰り返し単位を形成するための各単量体の種類、具体的な例として、第1アルキル(メタ)アクリレートおよび第1架橋性単量体と同一であってもよい。
【0038】
前記コアがシードを含む場合、前記シードの含量は、前記コア-シェル共重合体の総100重量部に対して、0.5重量部~20重量部、5重量部~18重量部、または5.8重量部~15.5重量部であってもよく、この範囲内である場合、コアの平均粒径を容易に調節することができる。
【0039】
また、前記コアがシードを含む場合、前記コアに含まれる第1アルキル(メタ)アクリレート単量体由来の繰り返し単位の含量は、シードに含まれる第4アルキル(メタ)アクリレート単量体由来の繰り返し単位の含量を含むものであり、前記コアに含まれる第1架橋性単量体由来の繰り返し単位の含量は、シードに含まれる第2架橋性単量体由来の繰り返し単位の含量を含むものであってもよい。
【0040】
具体的な例として、前記第4アルキル(メタ)アクリレート単量体由来の繰り返し単位の含量は、シードの総100重量部に対して、90重量部~99.5重量部、92重量部~98重量部、または93重量部~96重量部であってもよい。この範囲内である場合、衝撃強度に優れるとともに、コアとの相溶性に優れる効果がある。
【0041】
また、前記第2架橋性単量体由来の繰り返し単位の含量は、シードの総重量に対して、0.5重量部~10重量部、2重量部~8重量部、または4重量部~7重量部であってもよい。この範囲内である場合、コアの大口径粒子を容易に製造することができる効果がある。
【0042】
本発明に係るコアの平均粒径は、150nm~500nm、150nm~300nm、または185nm~260nmであってもよく、この範囲内である場合、本発明に係るコア-シェル共重合体を衝撃補強剤として含む熱可塑性樹脂組成物を用いて成形された成形品の着色性、衝撃強度だけでなく、光沢度に優れる効果がある。
【0043】
前記シェルは、第3アルキル(メタ)アクリレート単量体由来の繰り返し単位および芳香族ビニル単量体由来の繰り返し単位からなる群から選択される1種以上の単量体由来の繰り返し単位が前記コアにグラフト重合されて形成されたものであってもよい。具体的な例として、本発明のシェルは、第3アルキル(メタ)アクリレート単量体由来の繰り返し単位、または芳香族ビニル単量体由来の繰り返し単位、または第3アルキル(メタ)アクリレート単量体由来の繰り返し単位および芳香族ビニル単量体由来の繰り返し単位を含んでもよい。
【0044】
前記第3アルキル(メタ)アクリレート単量体は、ポリカーボネート樹脂と前記コアとの相溶性を付与する成分であって、炭素数1~8のアルキル基を含有するアルキル(メタ)アクリレート単量体であってもよい。この際、前記炭素数1~8のアルキル基は、炭素数1~8の直鎖状アルキル基および炭素数3~8の分岐状アルキル基を両方とも含む意味であり得る。具体的な例として、前記アルキル(メタ)アクリレート単量体は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、または2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートであってもよい。ここで、第3アルキル(メタ)アクリレート単量体は、アルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレートを意味し得て、前記第1アルキル(メタ)アクリレート単量体または第2アルキル(メタ)アクリレート単量体と同一でも異なってもよい。
【0045】
前記芳香族ビニル単量体は、熱可塑性樹脂と前記コアとの相溶性を付与し、屈折率が高いため、それを含むコア-シェル共重合体を衝撃補強剤として用いる場合、熱可塑性樹脂の着色性を改善させる成分であって、スチレン、アルファメチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、4-プロピルスチレン、イソプロペニルナフタレン、1-ビニルナフタレン、炭素数1~3のアルキル基が置換されたスチレン、4-シクロヘキシルスチレン、4-(p-メチルフェニル)スチレン、ハロゲンが置換されたスチレン、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0046】
前記第3アルキル(メタ)アクリレート単量体由来の繰り返し単位および芳香族ビニル単量体由来の繰り返し単位からなる群から選択される1種以上の単量体由来の繰り返し単位の含量は、前記コア-シェル共重合体の総100重量部に対して、5重量部~30重量部、10重量部~25重量部、または10重量部~20重量部であってもよく、この範囲内である場合、本発明に係るコア-シェル共重合体を衝撃補強剤として含む熱可塑性樹脂組成物を用いて成形された成形品の着色性および衝撃強度に優れる効果がある。
【0047】
すなわち、本発明のコア-シェル共重合体は、コア-シェル共重合体の総100重量部に対して、コア70重量部~95重量部、80重量部~90重量部、または85重量部~90重量部、およびシェル5重量部~30重量部、10重量部~25重量部、または10重量部~20重量部を含んでもよく、この範囲内である場合、本発明に係るコア-シェル共重合体を衝撃補強剤として含む熱可塑性樹脂組成物を用いて成形された成形品の着色性および衝撃強度に優れる効果がある。
【0048】
<コア-シェル共重合体の製造方法>
本発明に係るコア-シェル共重合体の製造方法は、炭素数1~8の第1アルキル(メタ)アクリレート単量体および末端変性ポリジメチルシロキサンを含むコア形成混合物を重合させ、コアを製造するステップと、前記ステップで製造されたコアの存在下で、シェル形成混合物を重合させてコア-シェル共重合体を製造するステップと、を含み、前記末端変性ポリジメチルシロキサンが、ポリジメチルシロキサンの両末端に第2アルキル(メタ)アクリレート単量体由来の変性部を含み、前記製造されたコアの平均粒径が150nm~500nmであってもよい。
【0049】
前記コア-シェル共重合体の製造方法は、前記コアを製造するステップと、コア-シェル共重合体を製造するステップと、により段階的にコアおよびシェルをそれぞれ製造した後、それらを重合させるステップを含み、前記コアを製造するステップを経てコア-シェル共重合体のコアを重合し、次いで、コア-シェル共重合体を製造するステップを経て前記コア上にシェルを重合することができる。
【0050】
前記コアを製造するステップは、コア-シェル共重合体のコアを製造するためのステップであり、前記コアを製造するステップで投入されるコア形成混合物中の各単量体の種類および含量は、上述のコアに含まれる単量体由来の繰り返し単位を形成するための各単量体の種類および含量と同一であってもよい。
【0051】
一方、前記コアを製造するステップは、シードを製造するステップと、前記製造されたシードの存在下で、炭素数1~8の第1アルキル(メタ)アクリレート単量体および末端変性ポリジメチルシロキサンを含むコア形成混合物を重合させ、コアを製造するステップと、を含んでもよい。
【0052】
前記シードを製造するステップは、コア-シェル共重合体の重合時に、コアの重合を容易にし、コアの平均粒径を調節するためのステップであって、炭素数1~8の第4アルキル(メタ)アクリレート単量体および第2架橋性単量体の存在下で、ラジカル重合により行われることができ、乳化重合方法により行われてもよい。この際、開始剤、乳化剤、分子量調節剤、活性化剤、酸化還元触媒、イオン交換水などの添加剤をさらに用いて重合が行われてもよい。
【0053】
また、前記シードを製造するステップは、45℃~65℃、48℃~62℃、または50℃~60℃で行われてもよい。
【0054】
前記シードに含まれる前記第4アルキル(メタ)アクリレート単量体および前記第2架橋性単量体は、上述のコアに含まれる単量体由来の繰り返し単位を形成するための各単量体の種類、具体的な例として、第1アルキル(メタ)アクリレートおよび第1架橋性単量体と同一であってもよい。
【0055】
また、前記コア-シェル共重合体を製造するステップは、コア-シェル共重合体のシェルを製造するためのステップであり、前記コア-シェル共重合体を製造するステップで投入されるシェル形成混合物中の各単量体の種類および含量は、上述のシェル中に含まれる各単量体由来の繰り返し単位を形成するための各単量体の種類および含量と同一であってもよい。
【0056】
前記シードを製造するステップ、コアを製造するステップ、および前記コア-シェル共重合体を製造するステップにおける重合は、乳化重合、塊状重合、懸濁重合、溶液重合などの方法を用いて重合可能であり、開始剤、乳化剤、分子量調節剤、活性化剤、酸化還元触媒、イオン交換水などの添加剤をさらに用いて重合してもよい。
【0057】
前記開始剤は、一例として、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過リン酸カリウム、過酸化水素などの無機過酸化物;t-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、p-メンタンヒドロペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド、アセチルペルオキシド、イソブチルペルオキシド、オクタノイルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、3,5,5-トリメチルヘキサノールペルオキシド、t-ブチルペルオキシイソブチレートなどの有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸(ブチル酸)メチルなどの窒素化合物などであってもよいが、これらの開始剤に限定されるものではない。かかる開始剤は、シードの総100重量に対して、またはコア-シェル共重合体の総100重量部に対して、0.03重量部~0.2重量部で用いられてもよい。
【0058】
前記乳化剤は、アニオン系乳化剤、カチオン系乳化剤、およびノニオン系乳化剤からなる群から選択される1種以上であってもよく、一例として、スルホネート系、カルボン酸塩系、サクシネート系、スルホサクシネート、およびこれらの金属塩類、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸、ソジウムアルキルベンゼンスルホネート、アルキルスルホン酸、ソジウムアルキルスルホネート、ソジウムポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルスルホネート、ソジウムステアレート、ソジウムドデシルサルフェート、ソジウムドデシルベンゼンスルホネート、ソジウムラウリルサルフェート、ソジウムドデシルスルホサクシネート、ポタシウムオレート、アビエチン酸塩などの、一般に乳化重合に広く用いられるアニオン性乳化剤;高級脂肪族炭化水素の官能基として、アミンハロゲン化物、アルキル四級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩などが結合されているカチオン性乳化剤;ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレンノニルフェニルなどのノニオン性乳化剤からなる群から選択される1種以上であってもよいが、これらの乳化剤に限定されるものではない。かかる乳化剤は、シードの総100重量部に対して、またはコア-シェル共重合体の総100重量部に対して、0.1重量部~5重量部で用いられてもよい。
【0059】
前記分子量調節剤は、一例として、a-メチルスチレンダイマー、t-ドデシルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタンなどのメルカプタン類;四塩化炭素、塩化メチレン、臭化メチレンなどのハロゲン化炭化水素;テトラエチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムジスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィドなどの硫黄含有化合物などであってもよいが、これらの分子量調節剤に限定されるものではない。かかる分子量調節剤は、シードの総100重量部に対して、またはコア-シェル共重合体の総100重量部に対して、0.1重量部~3重量部で用いられてもよい。
【0060】
前記活性化剤は、一例として、ヒドロ亜硫酸ナトリウム、ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート、ジソジウムエチレンジアミンテトラアセテート、硫酸第一鉄、ラクトース、デキストロース、リノレン酸ナトリウム、および硫酸ナトリウムから選択される1種以上を選択してもよいが、これらの活性化剤に限定されるものではない。かかる活性化剤は、シードの総100重量部に対して、またはコア-シェル共重合体の総100重量部に対して、0.01重量部~0.15重量部で用いられてもよい。
【0061】
前記酸化還元触媒は、一例として、ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート、硫酸第一鉄、ジソジウムエチレンジアミンテトラアセテート、第二硫酸銅などであってもよいが、これらの酸化還元触媒に限定されるものではない。かかる酸化還元触媒は、シードの総100重量部に対して、またはコア-シェル共重合体の総100重量部に対して、0.01重量部~0.1重量部で用いられてもよい。
【0062】
また、前記コアを製造するステップおよび前記コア-シェル共重合体を製造するステップで製造されたコアおよびコア-シェル共重合体は、それぞれコアおよびコア-シェル共重合体が溶媒に分散されたコアラテックスおよびコア-シェル共重合体ラテックスの形態で得られ、前記コア-シェル共重合体からコア-シェル共重合体を粉体の形態で得るために、凝集、熟成、脱水、および乾燥などの工程を行ってもよい。
【0063】
<熱可塑性樹脂組成物>
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、衝撃補強剤として前記コア-シェル共重合体を含み、ポリカーボネート樹脂を含んでもよい。すなわち、前記熱可塑性樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂組成物であってもよい。
【0064】
前記熱可塑性樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、前記コア-シェル共重合体を1重量部~20重量部、1重量部~15重量部、または1重量部~10重量部で含んでもよく、この範囲内である場合、熱可塑性樹脂組成物から成形された成形品の着色性および衝撃強度に優れる効果がある。
【0065】
本発明に係る前記熱可塑性樹脂組成物は、前記コア-シェル共重合体およびポリカーボネート樹脂の他にも、必要に応じて、物性を低下させない範囲内で、難燃剤、潤滑剤、酸化防止剤、光安定剤、反応触媒、離型剤、顔料、帯電防止剤、伝導性付与剤、EMI遮蔽剤、磁性付与剤、架橋剤、抗菌剤、加工助剤、金属不活性化剤、煙抑制剤、フッ素系滴下防止剤、無機充填剤、ガラス繊維、耐摩擦耐摩耗剤、カップリング剤などの添加剤をさらに含んでもよい。
【0066】
前記熱可塑性樹脂組成物を溶融混練および加工する方法は特に制限されないが、一例として、スーパーミキサーで一次混合した後、二軸押出機、一軸押出機、ロールミル、ニーダ、またはバンバリーミキサーなどのような通常の配合加工機器の1つを用いて溶融混練し、ペレタイザーでペレットを得た後、これを除湿乾燥器または熱風乾燥器で十分に乾燥してから射出加工することで、最終成形品を得ることができる。
【0067】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。しかし、下記実施例は、本発明を例示するためのものにすぎず、本発明の範疇および技術思想の範囲内で多様な変更および修正が可能であることは、通常の技術者にとって明白なことであり、これらにのみ本発明の範囲が限定されるものではない。
【0068】
実施例
[実施例1]
<シードの製造>
窒素置換された重合反応器に、シードの総100重量部を基準として、蒸留水50重量部、ソジウムラウリルサルフェート(Sodium lauryl sulfate、SLS)0.9重量部、ブチルアクリレート(n-butyl acrylate、BA)11重量部、アリルメタクリレート(allyl methacrylate、AMA)0.05重量部を一括投入し、反応器の内部温度を50℃に昇温させた。反応器の内部温度が50℃に達すると、硫酸第一鉄(Ferrous sulfate、FeS)0.005重量部、ジソジウムエチレンジアミンテトラアセテート(Disodium ethylenediamine tetraacetate、EDTA)0.03重量部、ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート(Sodium formaldehyde sulfoxylate、SFS)0.25重量部、およびt-ブチルヒドロペルオキシド(t-Butyl hydroperoxide、TBHP)0.04重量部を一括投入し、1時間反応させた。
【0069】
別の反応器に、蒸留水50重量部、ソジウムラウリルサルフェート0.45重量部、ブチルアクリレート88.5重量部、アリルメタクリレート0.45重量部を投入し、単量体プレエマルションを製造した。前記製造されたプレエマルションとともに硫酸第一鉄(Ferrous sulfate、FeS)0.01重量部、ジソジウムエチレンジアミンテトラアセテート0.05重量部、ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.5重量部、t-ブチルヒドロペルオキシド0.1重量部を、前記窒素置換された重合反応器に、内部温度50℃の条件下で5時間かけて投入しながら重合することで、シードを含むラテックスを得た。前記反応が完了した後、ラテックス上に分布されたシード粒子の平均粒径は100nmであった。
【0070】
<コアの製造>
窒素で置換された重合反応器に、コア-シェル共重合体の総100重量部に対して、蒸留水30重量部、前記製造されたシード(固形分基準)15.5重量部を投入し、反応器の内部温度を55℃に昇温させた。反応器の内部温度が55℃に達すると、コア-シェル共重合体の総100重量部を基準として、ブチルアクリレート73重量部、下記化学式2で表される末端変性ポリジメチルシロキサン架橋剤(n=10)1.0重量部、アリールメタクリレート0.5重量部、蒸留水30重量部、ソジウムラウリルサルフェート0.3重量部、硫酸第一鉄0.01重量部、ジソジウムエチレンジアミンテトラアセテート0.05重量部、ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.5重量部、およびt-ブチルヒドロペルオキシド0.1重量部を混合したコア形成混合物を5時間かけて投入し、コアを含むラテックスを得た。ラテックス中のコアの平均粒径は186nmであった。
【0071】
【化2】
【0072】
<コア-シェル共重合体の製造>
窒素で置換された重合反応器に、コア-シェル共重合体の総100重量部を基準として、上記で得たコアを含むラテックス90重量部(固形分基準)にメチルメタクリレート10重量部、蒸留水10重量部、ソジウムラウリルサルフェート0.01重量部、硫酸第一鉄0.01重量部、ジソジウムエチレンジアミンテトラアセテート0.05重量部、ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.5重量部、およびt-ブチルヒドロペルオキシド0.1重量部を混合したシェル形成混合物を一括投入し、60℃で2時間グラフト重合反応させることで、コア-シェル共重合体を含むラテックスを得た。
【0073】
<コア-シェル共重合体粉体の製造>
上記で得たコア-シェル共重合体を含むラテックスを固形分基準15重量%となるように蒸留水に希釈した後、凝集槽に入れ、凝集槽の内部温度を70℃に上昇させた。その後、前記コア-シェル共重合体を含むラテックス(固形分基準)100重量部に対して、塩化カルシウム溶液4重量部を添加し、撹拌しながら凝集させた後、共重合体と水を分離させてから脱水および乾燥することで、コア-シェル共重合体粉体を得た。
【0074】
[実施例2]
前記実施例1において、コアの製造時に、コア形成単量体混合物中の前記化学式2で表される末端変性ポリジメチルシロキサン架橋剤(n=10)1.0重量部の代わりに、化学式2で表される末端変性ポリジメチルシロキサン架橋剤(n=69)1.0重量部を投入したことを除き、前記実施例1と同様の方法により行った。
【0075】
[実施例3]
前記実施例1において、コアの製造時に、シード15.5重量部の代わりに5.8重量部、コア形成単量体混合物中のブチルアクリレート73重量部の代わりに82.2重量部、前記化学式2で表される末端変性ポリジメチルシロキサン架橋剤(n=10)1.0重量部の代わりに、化学式2で表される末端変性ポリジメチルシロキサン架橋剤(n=69)1.5重量部を投入したことを除き、前記実施例1と同様の方法により行った。
【0076】
[実施例4]
前記実施例1において、コアの製造時に、シード15.5重量部の代わりに5.8重量部、コア形成単量体混合物中のブチルアクリレート73重量部の代わりに82.2重量部、前記化学式2で表される末端変性ポリジメチルシロキサン架橋剤(n=10)1.0重量部の代わりに、化学式2で表される末端変性ポリジメチルシロキサン架橋剤(n=120)1.5重量部を投入したことを除き、前記実施例1と同様の方法により行った。
【0077】
[実施例5]
前記実施例1において、コアの製造時に、シード15.5重量部の代わりに5.8重量部、コア形成単量体混合物中のブチルアクリレート73重量部の代わりに82.2重量部、前記化学式2で表される末端変性ポリジメチルシロキサン架橋剤(n=10)1.0重量部の代わりに、化学式2で表される末端変性ポリジメチルシロキサン架橋剤(n=330)1.5重量部を投入したことを除き、前記実施例1と同様の方法により行った。
【0078】
[実施例6]
前記実施例1において、コアの製造時に、シード15.5重量部の代わりに5.8重量部、コア形成単量体混合物中のブチルアクリレート73重量部の代わりに82.2重量部、前記化学式2で表される末端変性ポリジメチルシロキサン架橋剤(n=10)1.0重量部の代わりに(n=2)1.5重量部を投入したことを除き、前記実施例1と同様の方法により行った。
【0079】
[実施例7]
前記実施例1において、コアの製造時に、シード15.5重量部の代わりに5.8重量部、コア形成単量体混合物中のブチルアクリレート73重量部の代わりに82.2重量部、前記化学式2で表される末端変性ポリジメチルシロキサン架橋剤(n=10)1.0重量部の代わりに、化学式2で表される末端変性ポリジメチルシロキサン架橋剤(n=400)1.5重量部を投入したことを除き、前記実施例1と同様の方法により行った。
【0080】
[比較例1]
前記実施例1において、コアの製造時に、コア形成単量体混合物中の前記化学式2で表される末端変性ポリジメチルシロキサン架橋剤(n=10)1.0重量部の代わりに、エチレングリコールジメタクリレート1.0重量部を投入したことを除き、前記実施例1と同様の方法により行った。
【0081】
[比較例2]
前記実施例1において、コアの製造時に、シード15.5重量部の代わりに5.8重量部、コア形成単量体混合物中のブチルアクリレート73重量部の代わりに82.2重量部、前記化学式2で表される末端変性ポリジメチルシロキサン架橋剤(n=10)1.0重量部の代わりに、エチレングリコールジメタクリレート1.5重量部を投入したことを除き、前記実施例1と同様の方法により行った。
【0082】
[比較例3]
前記実施例1において、コアの製造時に、シード15.5重量部の代わりに5.8重量部、コア形成単量体混合物中のブチルアクリレート73重量部の代わりに82.2重量部、前記化学式2で表される末端変性ポリジメチルシロキサン架橋剤(n=10)1.0重量部の代わりに、エチレングリコールジメタクリレート1.5重量部を投入し、コア-シェル共重合体の製造時に、シェル形成単量体混合物中のメチルメタクリレート10重量部の代わりに9重量部、前記化学式2で表される末端変性ポリジメチルシロキサン架橋剤1重量部をさらに投入したことを除き、前記実施例1と同様の方法により行った。
【0083】
[比較例4]
前記実施例1において、コアの製造時に、シード15.5重量部の代わりに0.4重量部、コア形成単量体混合物中のブチルアクリレート73重量部の代わりに87.6重量部、前記化学式2で表される末端変性ポリジメチルシロキサン架橋剤(n=10)1.0重量部の代わりに、化学式2で表される末端変性ポリジメチルシロキサン架橋剤(n=69)1.5重量部を投入したことを除き、前記実施例1と同様の方法により行った。
【0084】
実験例
[実験例1]
前記実施例1~7および比較例1~4で製造されたコアおよびコア-シェル共重合体の平均粒径を下記のような方法により測定し、その結果とともに、コア-シェル共重合体組成物の組成を下記表1および表2に記載した。
【0085】
*平均粒径(D50、nm):製造されたコアを含むラテックスを200ppm以下に希釈したサンプルを準備した後、常温(23℃)でNicomp 380を用い、ダイナミックレーザーライトスキャッタリング(dynamic laser light scattering)法によりインテンシティガウス分布(intensity Gaussian distribution)に従って、コアを含むラテックス中に分散されたコア粒子の平均粒径(D50)を測定した。
【0086】
【表1】
【0087】
【表2】
【0088】
[実験例2]
前記実施例1~7および比較例1~4で製造されたコア-シェル共重合体を衝撃補強剤として含む熱可塑性樹脂組成物から成形された成形品の衝撃強度、引張強度、表面光沢、および着色性を評価するために、下記の方法により熱可塑性樹脂組成物の試験片を製造および評価し、表3から表6に示した。
【0089】
*アイゾット衝撃強度:ASTM D256試験方法により、1/8″インチのノッチ試験片に対して評価した。この際、測定は、常温(23℃)および低温(-30℃)を維持するチャンバーで全て測定し、各チャンバーにて1/8″インチのノッチ試験片を6時間エージング(aging)した後、試験片を取り出してASTM D256試験方法により評価した。
【0090】
*引張強度(50mm/min、kg/cm2):ASTM D638法に準じて、ダンベル状の1/8インチの試験片をインストロン引張強度測定機のつかみ具(jaw)に締め付け、50mm/minの速度で引っ張って切断時点の荷重を測定し、測定された切断時の荷重(kg)を、試験片の厚さ(cm)と幅(cm)の積で除して算定した。
【0091】
*表面光沢:製造された熱可塑性樹脂組成物の試験片に対して、株式会社東洋精機製作所の光沢計(gloss meter)UD機器を用いて、45°の角度での表面光沢度を測定した。45°の光沢度が高いほど、表面光沢に優れることを意味する。
【0092】
*着色性:ASTM D1925法に準じて、色差計(Color Quest II、Hunter Lab Co.)を用いて試験片のL*値を測定した。試験片のL*値が低いほど、着色性に優れることを意味する。
【0093】
<ポリカーボネート樹脂組成物>
表3および4に示したような、ポリカーボネート樹脂(PC1300-15、LG化学製)と、前記実施例および比較例で製造したコア-シェル共重合体粉体との総和100重量部に対して、滑剤0.1重量部、酸化防止剤0.05重量部を添加して混合した。これを、300℃のシリンダー温度で40パイの押出混練機を用いてペレットの形態に製造し、このペレットで射出して物性試験片を製造し、下記物性を測定して表3および4に示した。この際、ポリカーボネート樹脂およびコア-シェル共重合体粉体の含量は、表3および4に示したとおりである。
【0094】
【表3】
【0095】
【表4】
【0096】
一方、ポリカーボネート樹脂組成物の着色性を確認するために、下記表5および6に示したように、ポリカーボネート樹脂(PC1300-22、LG化学製)、着色剤としてブラックカラント、リン系難燃剤(PX-200)と、前記実施例および比較例で製造したコア-シェル共重合体粉体の総和102重量部に対して、滑剤0.1重量部、酸化防止剤0.1重量部を添加して混合した。これを、260℃のシリンダー温度で40パイの押出混練機を用いてペレットの形態に製造し、このペレットで射出して物性試験片を製造し、下記物性を測定して表5および6に示した。この際、ポリカーボネート樹脂、ブラックカラント、リン系難燃剤、およびコア-シェル共重合体粉体の含量は、表5および6に示したとおりである。
【0097】
【表5】
【0098】
【表6】
【0099】
前記表3~6に示したように、本発明に係る、コアに末端変性ポリジメチルシロキサン架橋剤由来の架橋部を含むコア-シェル共重合体を衝撃補強剤として含むポリカーボネート樹脂組成物から成形された成形品は、常温および低温衝撃強度はいうまでもなく、引張強度、表面光沢、および着色性に優れていることを確認することができた。
【0100】
これに対し、本発明に係る末端変性ポリジメチルシロキサン架橋剤由来の架橋部の代わりに、エチレングリコールジメタクリレートを使用した比較例1および2は、低温での衝撃強度が低下することを確認することができた。
【0101】
また、比較例3は、本発明に係る末端変性ポリジメチルシロキサン架橋剤由来の架橋部を、コアではなくシェルに含むコア-シェル共重合体を衝撃補強剤として含むポリカーボネート樹脂組成物から成形された成形品であって、低温での衝撃強度が低下することを確認することができた。
【0102】
また、比較例4は、平均粒径が500nmを超えるコアを含むコア-シェル共重合体を衝撃補強剤として用いる場合であって、ポリカーボネート樹脂組成物から成形された成形品の45°光沢度が低下することを確認することができた。
【0103】
本発明者らは、前記のような結果から、コアに末端変性ポリジメチルシロキサン架橋剤由来の架橋部を含むコア-シェル共重合体を衝撃補強剤として用いる場合、着色性を低下させることなく、特に低温での衝撃強度を向上させることができることを確認した。