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特許7121191構造物分離装置、方法およびプログラム、学習装置、方法およびプログラム、並びに学習済みモデル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】構造物分離装置、方法およびプログラム、学習装置、方法およびプログラム、並びに学習済みモデル
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20220809BHJP
【FI】
A61B6/03 360J
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021513729
(86)(22)【出願日】2020-04-10
(86)【国際出願番号】 JP2020016196
(87)【国際公開番号】W WO2020209383
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2021-10-11
(31)【優先権主張番号】P 2019075460
(32)【優先日】2019-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】升澤 尚人
【審査官】蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-168166(JP,A)
【文献】特開平04-304580(JP,A)
【文献】特表2009-531129(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0064291(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055、6/00-6/14
G01T 1/161
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の構造物を含む画像から、前記複数の構造物が分離された分離済み画像を生成する分離部を備えた構造物分離装置であって、
前記分離部は、
前記複数の構造物の少なくとも一部に関する対象画像と、前記構造物を含まない未分離画像とを含む画像ペアの入力により、前記対象画像から1つの前記構造物が抽出されてなる分離画像を出力し、
前記対象画像と前記分離画像とを含む新たな画像ペアの入力により、前記対象画像からさらに1つの前記構造物が抽出されてなる新たな分離画像を出力し、
前記対象画像と前記新たな分離画像とを前記新たな画像ペアとする入力、および前記対象画像からさらに1つの前記構造物が抽出されてなる新たな分離画像の出力を繰り返すことにより、前記対象画像に含まれる前記複数の構造物が分離された前記分離済み画像を生成する構造物分離装置。
【請求項2】
前記分離部は、前記複数の構造物の少なくとも一部を含む対象画像と、前記構造物を含まない未分離画像とを含む画像ペアの入力により、前記対象画像から1つの前記構造物が抽出されてなる分離画像を出力し、
前記対象画像と前記分離画像とを含む新たな画像ペアの入力により、前記対象画像からさらに1つの前記構造物が抽出されてなる新たな分離画像を出力し、
前記対象画像と前記新たな分離画像とを前記新たな画像ペアとする入力、および前記対象画像からさらに1つの前記構造物が抽出されてなる新たな分離画像の出力を繰り返すことにより、前記対象画像に含まれる前記複数の構造物が分離された前記分離済み画像を生成する学習がなされてなる学習済みモデルを有する請求項1に記載の構造物分離装置。
【請求項3】
前記分離された複数の構造物に対して、分離された順にラベリングを行うラベリング部をさらに備えた請求項1または2に記載の構造物分離装置。
【請求項4】
前記ラベリングされた構造物を含む前記画像または前記対象画像を表示部に表示する表示制御部をさらに備えた請求項3に記載の構造物分離装置。
【請求項5】
前記構造物は椎骨である請求項1から4のいずれか1項に記載の構造物分離装置。
【請求項6】
複数の前記椎骨を、頸椎、胸椎および腰椎のそれぞれに分類して、頸椎、胸椎および腰椎のうちの少なくとも1つに関する前記対象画像を生成する対象画像生成部をさらに備えた請求項5に記載の構造物分離装置。
【請求項7】
複数の構造物の少なくとも一部を含む対象画像と、前記構造物を含まない未分離画像とを含む画像ペアの入力により、前記対象画像から1つの前記構造物が抽出されてなる分離画像を出力し、記対象画像と前記分離画像とを含む新たな画像ペアの入力により、前記対象画像からさらに1つの前記構造物が抽出されてなる新たな分離画像を出力し、記対象画像と前記新たな分離画像とを前記新たな画像ペアとする入力、および前記対象画像からさらに1つの前記構造物が抽出されてなる新たな分離画像の出力を繰り返すことにより、前記対象画像に含まれる前記複数の構造物が分離された分離済み画像を生成する学習済みモデルを生成する学習装置であって、
複数の構造物を含む第1の画像、前記第1の画像から0以上の前記構造物が抽出された第2の画像、および前記第2の画像よりも1つ多い前記構造物が抽出された第3の画像を含む多数の教師データを用いてニューラルネットワークを学習することにより前記学習済みモデルを生成する学習部を備えた学習装置。
【請求項8】
複数の構造物を含む第1の画像、前記第1の画像から0以上の前記構造物が抽出された第2の画像、および前記第2の画像よりも1つ多い前記構造物が抽出された第3の画像を含む多数の教師データを用いてニューラルネットワークを学習することにより生成された学習済みモデルであって、
複数の構造物の少なくとも一部を含む対象画像と、前記構造物を含まない未分離画像とを含む画像ペアの入力により、前記対象画像から1つの前記構造物が抽出されてなる分離画像を出力する手順と
前記対象画像と前記分離画像とを含む新たな画像ペアの入力により、前記対象画像からさらに1つの前記構造物が抽出されてなる新たな分離画像を出力する手順と
前記対象画像と前記新たな分離画像とを前記新たな画像ペアとする入力、および前記対象画像からさらに1つの前記構造物が抽出されてなる新たな分離画像の出力を繰り返すことにより、前記対象画像に含まれる前記複数の構造物が分離された分離済み画像を生成する手順とをコンピュータに実行させる学習済みモデル。
【請求項9】
複数の構造物を含む画像から、前記複数の構造物が分離された分離済み画像を生成する構造物分離方法であって、
前記複数の構造物の少なくとも一部に関する対象画像と、前記構造物を含まない未分離画像とを含む画像ペアの入力により、前記対象画像から1つの前記構造物が抽出されてなる分離画像を出力し、
前記対象画像と前記分離画像とを含む新たな画像ペアの入力により、前記対象画像からさらに1つの前記構造物が抽出されてなる新たな分離画像を出力し、
前記対象画像と前記新たな分離画像とを前記新たな画像ペアとする入力、および前記対象画像からさらに1つの前記構造物が抽出されてなる新たな分離画像の出力を繰り返すことにより、前記対象画像に含まれる前記複数の構造物が分離された前記分離済み画像を生成する構造物分離方法。
【請求項10】
複数の構造物の少なくとも一部を含む対象画像と、前記構造物を含まない未分離画像とを含む画像ペアの入力により、前記対象画像から1つの前記構造物が抽出されてなる分離画像を出力し、記対象画像と前記分離画像とを含む新たな画像ペアの入力により、前記対象画像からさらに1つの前記構造物が抽出されてなる新たな分離画像を出力し、記対象画像と前記新たな分離画像とを前記新たな画像ペアとする入力、および前記対象画像からさらに1つの前記構造物が抽出されてなる新たな分離画像の出力を繰り返すことにより、前記対象画像に含まれる前記複数の構造物が分離された分離済み画像を生成する学習済みモデルを生成する学習方法であって、
複数の構造物を含む第1の画像、前記第1の画像から0以上の前記構造物が抽出された第2の画像、および前記第2の画像よりも1つ多い前記構造物が抽出された第3の画像を含む多数の教師データを用いてニューラルネットワークを学習することにより前記学習済みモデルを生成する学習方法。
【請求項11】
複数の構造物を含む画像から、前記複数の構造物が分離された分離済み画像を生成する処理をコンピュータに実行させる構造物分離プログラムであって、
前記複数の構造物の少なくとも一部に関する対象画像と、前記構造物を含まない未分離画像とを含む画像ペアの入力により、前記対象画像から1つの前記構造物が抽出されてなる分離画像を出力する手順と、
前記対象画像と前記分離画像とを含む新たな画像ペアの入力により、前記対象画像からさらに1つの前記構造物が抽出されてなる新たな分離画像を出力する手順と、
前記対象画像と前記新たな分離画像とを前記新たな画像ペアとする入力、および前記対象画像からさらに1つの前記構造物が抽出されてなる新たな分離画像の出力を繰り返すことにより、前記対象画像に含まれる前記複数の構造物が分離された前記分離済み画像を生成する手順とをコンピュータに実行させる構造物分離プログラム。
【請求項12】
複数の構造物の少なくとも一部を含む対象画像と、前記構造物を含まない未分離画像とを含む画像ペアの入力により、前記対象画像から1つの前記構造物が抽出されてなる分離画像を出力し、前記対象画像と前記分離画像とを含む新たな画像ペアの入力により、前記対象画像からさらに1つの前記構造物が抽出されてなる新たな分離画像を出力し、前記対象画像と前記新たな分離画像とを前記新たな画像ペアとする入力、および前記対象画像からさらに1つの前記構造物が抽出されてなる新たな分離画像の出力を繰り返すことにより、前記対象画像に含まれる前記複数の構造物が分離された分離済み画像を生成する学習済みモデルを生成する手順コンピュータに実行させる学習プログラムであって、
複数の構造物を含む第1の画像、前記第1の画像から0以上の前記構造物が抽出された第2の画像、および前記第2の画像よりも1つ多い前記構造物が抽出された第3の画像を含む多数の教師データを用いてニューラルネットワークを学習することにより前記学習済みモデルを生成する手順をコンピュータに実行させる学習プログラム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像に含まれる複数の構造物を個々の構造物に分離する構造物分離装置、方法およびプログラム、学習装置、方法およびプログラム、並びに学習済みモデルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
脊髄は、脳と身体の各部を行き来するメッセージを伝えるための役割を果たしており、非常に重要な部位である。このため、脊髄は複数の椎骨からなる脊椎により保護されている。一方、このような脊椎を構成する椎骨における、損傷および癌転移等の病変の有無を、被写体をスキャンして得られた断層画像を読影して確認することが行われている。読影の際は、損傷および病変のある椎骨を特定するために、各椎骨を識別する必要がある。このため、被写体の断層画像を取得し、取得した断層画像に基づいて複数の椎骨をそれぞれ分離かつ認識し、各椎骨にラベルを付与する画像処理のアルゴリズムが種々提案されている。
【0003】
例えば特開2016-16816号公報には、CT(Computed Tomography)画像あるいはMRI(magnetic resonance imaging)画像等の断層画像から得られた医用画像を対象として、椎骨および椎間板を抽出するように学習がなされた判別器を用いて、医用画像から椎骨および椎間板を抽出し、抽出した椎骨の特徴量および椎間板の特徴量を用いて、椎骨を特定する手法が提案されている。
【0004】
また、Lessmannらの文献「Iterative fully convolutional neural networks for automatic vertebra segmentation and identification、Nikolas Lessmann et.al.、Medical Image Analysis 53, pp. 142-155, 2019」においては、椎骨を含む医用画像に対して、椎骨を抽出するように学習がなされたパッチを適用し、1つの椎骨を抽出すると、医用画像上においてパッチを移動させて、順次椎骨を抽出する手法が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特開2016-16816号公報に記載された手法では、個々の椎骨をラベリングすることは困難である。また、Lessmannらの文献に記載された手法は、予め定められたサイズのパッチを用いている。このため、抽出の対象となる医用画像に含まれる椎骨のサイズが異なると、すべての椎骨を順序よく抽出してラベリングすることができない。
【0006】
本開示は上記事情に鑑みなされたものであり、画像に含まれる椎骨等の複数の構造物を精度よく分離できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示による構造物分離装置は、複数の構造物を含む画像から、複数の構造物が分離された分離済み画像を生成する分離部を備えた構造物分離装置であって、
分離部は、
複数の構造物の少なくとも一部に関する対象画像と、構造物を含まない未分離画像とを含む画像ペアの入力により、対象画像から1つの構造物が抽出されてなる分離画像を出力し、
対象画像と分離画像とを含む新たな画像ペアの入力により、対象画像からさらに1つの構造物が抽出されてなる新たな分離画像を出力し、
対象画像と新たな分離画像とを新たな画像ペアとする入力、および対象画像からさらに1つの構造物が抽出されてなる新たな分離画像の出力を繰り返すことにより、対象画像に含まれる複数の構造物が分離された分離済み画像を生成する。
【0008】
なお、本開示による構造物分離装置においては、分離部は、複数の構造物の少なくとも一部を含む対象画像と、構造物を含まない未分離画像とを含む画像ペアの入力により、対象画像から1つの構造物が抽出されてなる分離画像を出力し、
対象画像と分離画像とを含む新たな画像ペアの入力により、対象画像からさらに1つの構造物が抽出されてなる新たな分離画像を出力し、
対象画像と新たな分離画像とを新たな画像ペアとする入力、および対象画像からさらに1つの構造物が抽出されてなる新たな分離画像の出力を繰り返すことにより、対象画像に含まれる複数の構造物が分離された分離済み画像を生成する学習がなされてなる学習済みモデルを有するものであってもよい。
【0009】
また、本開示による構造物分離装置においては、分離された複数の構造物に対して、分離された順にラベリングを行うラベリング部をさらに備えるものであってもよい。
【0010】
また、本開示による構造物分離装置においては、ラベリングされた構造物を含む画像または対象画像を表示部に表示する表示制御部をさらに備えるものであってもよい。
【0011】
また、本開示による構造物分離装置においては、構造物は椎骨であってもよい。
【0012】
また、本開示による構造物分離装置においては、複数の椎骨を、頸椎、胸椎および腰椎のそれぞれに分類して、頸椎、胸椎および腰椎のうちの少なくとも1つに関する対象画像を生成する対象画像生成部をさらに備えるものであってもよい。
【0013】
本開示による学習装置は、複数の構造物の少なくとも一部を含む対象画像と、構造物を含まない未分離画像とを含む画像ペアの入力により、対象画像から1つの構造物が抽出されてなる分離画像を出力し、
対象画像と分離画像とを含む新たな画像ペアの入力により、対象画像からさらに1つの構造物が抽出されてなる新たな分離画像を出力し、
対象画像と新たな分離画像とを新たな画像ペアとする入力、および対象画像からさらに1つの構造物が抽出されてなる新たな分離画像の出力を繰り返すことにより、対象画像に含まれる複数の構造物が分離された分離済み画像を生成する学習済みモデルを生成する。
【0014】
本開示による学習済みモデルは、複数の構造物の少なくとも一部を含む対象画像と、構造物を含まない未分離画像とを含む画像ペアの入力により、対象画像から1つの構造物が抽出されてなる分離画像を出力し、
対象画像と分離画像とを含む新たな画像ペアの入力により、対象画像からさらに1つの構造物が抽出されてなる新たな分離画像を出力し、
対象画像と新たな分離画像とを新たな画像ペアとする入力、および対象画像からさらに1つの構造物が抽出されてなる新たな分離画像の出力を繰り返すことにより、対象画像に含まれる複数の構造物が分離された分離済み画像を生成する。
【0015】
本開示による構造物分離方法は、複数の構造物を含む画像から、複数の構造物が分離された分離済み画像を生成する構造物分離方法であって、
複数の構造物の少なくとも一部に関する対象画像と、構造物を含まない未分離画像とを含む画像ペアの入力により、対象画像から1つの構造物が抽出されてなる分離画像を出力し、
対象画像と分離画像とを含む新たな画像ペアの入力により、対象画像からさらに1つの構造物が抽出されてなる新たな分離画像を出力し、
対象画像と新たな分離画像とを新たな画像ペアとする入力、および対象画像からさらに1つの構造物が抽出されてなる新たな分離画像の出力を繰り返すことにより、対象画像に含まれる複数の構造物が分離された分離済み画像を生成する。
【0016】
本開示による学習方法は、複数の構造物の少なくとも一部を含む対象画像と、構造物を含まない未分離画像とを含む画像ペアの入力により、対象画像から1つの構造物が抽出されてなる分離画像を出力し、
対象画像と分離画像とを含む新たな画像ペアの入力により、対象画像からさらに1つの構造物が抽出されてなる新たな分離画像を出力し、
対象画像と新たな分離画像とを新たな画像ペアとする入力、および対象画像からさらに1つの構造物が抽出されてなる新たな分離画像の出力を繰り返すことにより、対象画像に含まれる複数の構造物が分離された分離済み画像を生成する学習済みモデルを生成する。
【0017】
なお、本開示による構造物分離方法および学習方法をコンピュータに実行させるためのプログラムとして提供してもよい。
【0018】
本開示による他の構造物分離装置は、コンピュータに実行させるための命令を記憶するメモリと、
記憶された命令を実行するよう構成されたプロセッサとを備え、プロセッサは、
複数の構造物を含む画像から、複数の構造物が分離された分離済み画像を生成する処理であって、
複数の構造物の少なくとも一部に関する対象画像と、構造物を含まない未分離画像とを含む画像ペアの入力により、対象画像から1つの構造物が抽出されてなる分離画像を出力し、
対象画像と分離画像とを含む新たな画像ペアの入力により、対象画像からさらに1つの構造物が抽出されてなる新たな分離画像を出力し、
対象画像と新たな分離画像とを新たな画像ペアとする入力、および対象画像からさらに1つの構造物が抽出されてなる新たな分離画像の出力を繰り返すことにより、対象画像に含まれる複数の構造物が分離された分離済み画像を生成する処理を実行する。
【0019】
本開示による他の学習装置は、コンピュータに実行させるための命令を記憶するメモリと、
記憶された命令を実行するよう構成されたプロセッサとを備え、プロセッサは、
複数の構造物の少なくとも一部を含む対象画像と、構造物を含まない未分離画像とを含む画像ペアの入力により、対象画像から1つの構造物が抽出されてなる分離画像を出力し、
対象画像と分離画像とを含む新たな画像ペアの入力により、対象画像からさらに1つの構造物が抽出されてなる新たな分離画像を出力し、
対象画像と新たな分離画像とを新たな画像ペアとする入力、および対象画像からさらに1つの構造物が抽出されてなる新たな分離画像の出力を繰り返すことにより、対象画像に含まれる複数の構造物が分離された分離済み画像を生成する学習済みモデルを生成する処理を実行する。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、画像に含まれる椎骨等の複数の構造物を精度よく分離できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本開示の実施形態による構造物分離装置を適用した、診断支援システムの概要を示すハードウェア構成図
図2】コンピュータに構造物分離プログラムをインストールすることにより実現される構造物分離装置の概略構成を示す図
図3】椎骨の標準的な配列を模式的に表す図
図4】学習済みモデルの構成を模式的に示す図
図5】本実施形態において行われる分離済み画像の生成のための処理を模式的に示す図
図6】ラベリングされた対象画像を示す図
図7】教師データの例を示す図
図8】本実施形態における構造物分離処理のフローチャート
図9】本実施形態における分離処理を示すフローチャート
図10】本実施形態における学習処理のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本開示の実施形態について説明する。図1は、本開示の実施形態による構造物分離装置および学習装置を適用した、診断支援システムの概要を示すハードウェア構成図である。図1に示すように、このシステムでは、本実施形態による構造物分離装置1、3次元画像撮影装置2、および画像保管サーバ3が、ネットワーク4を経由して通信可能な状態で接続されている。
【0023】
3次元画像撮影装置2は、被写体の診断の対象となる部位を撮影することにより、その部位を表す3次元画像を生成する装置であり、具体的には、CT装置、MRI装置、およびPET(Positron Emission Tomography )装置等である。この3次元画像撮影装置2により生成された3次元画像は画像保管サーバ3に送信され、保管される。なお、本実施形態においては、被写体の診断対象部位は脊椎であり、3次元画像撮影装置2はMRI装置であり、3次元画像は被写体の脊椎のMRI画像であるものとする。なお、脊椎を構成する複数の椎骨が複数の構造物に対応する。
【0024】
画像保管サーバ3は、各種データを保存して管理するコンピュータであり、大容量外部記憶装置およびデータベース管理用ソフトウェアを備えている。画像保管サーバ3は、有線あるいは無線のネットワーク4を介して他の装置と通信を行い、画像データ等を送受信する。具体的には3次元画像撮影装置2で生成された3次元画像等の画像データをネットワーク経由で取得し、大容量外部記憶装置等の記録媒体に保存して管理する。なお、画像データの格納形式やネットワーク4経由での各装置間の通信は、DICOM(Digital Imaging and Communication in Medicine)等のプロトコルに基づいている。また、3次元画像にはDICOM規格に基づくタグが付与される。タグには、患者名、撮影装置を表す情報、撮影日時、および撮影部位等の情報が含まれる。
【0025】
構造物分離装置1は、本実施形態による学習装置を内包するものであり、1台のコンピュータに、本開示の構造物分離プログラムおよび学習プログラムをインストールしたものである。コンピュータは、診断を行う医師が直接操作するワークステーションあるいはパーソナルコンピュータでもよいし、それらとネットワークを介して接続されたサーバコンピュータでもよい。構造物分離プログラムは、ネットワークに接続されたサーバコンピュータの記憶装置、あるいはネットワークストレージに、外部からアクセス可能な状態で記憶され、要求に応じて医師が使用するコンピュータにダウンロードされ、インストールされる。または、DVD(Digital Versatile Disc)あるいはCD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)等の記録媒体に記録されて配布され、その記録媒体からコンピュータにインストールされる。
【0026】
図2は、コンピュータに構造物分離プログラムおよび学習プログラムをインストールすることにより実現された構造物分離装置の概略構成を示す図である。図2に示すように、構造物分離装置1は、標準的なワークステーションの構成として、CPU11、メモリ12およびストレージ13を備えている。また、構造物分離装置1には、液晶ディスプレイ等の表示部14と、マウス等の入力部15とが接続されている。なお、表示部14と入力部15とを兼ねた、タッチパネルを用いてもよい。
【0027】
ストレージ13には、ネットワーク4を経由して画像保管サーバ3から取得した3次元画像および構造物分離装置1での処理によって生成された画像を含む各種情報が記憶されている。
【0028】
また、メモリ12には、構造物分離プログラムおよび学習プログラムが記憶されている。構造物分離プログラムは、CPU11に実行させる処理として、処理対象となる3次元画像を取得する画像取得処理、3次元画像に含まれる複数の椎骨を、頸椎、胸椎および腰椎のそれぞれに分類して、頸椎、胸椎および腰椎のうちの少なくとも1つに関する対象画像を生成する対象画像生成処理、対象画像に含まれる複数の椎骨が分離された分離済み画像を生成する分離処理、分離された複数の椎骨に対して、分離された順にラベリングを行うラベリング処理、およびラベリングされた椎骨を含む医用画像または対象画像を表示部14に表示する表示制御処理を規定する。学習プログラムは、CPU11に実行させる処理として、後述する学習済みモデルを生成するための学習処理を規定する。
【0029】
そして、CPU11がプログラムに従いこれらの処理を実行することで、コンピュータは、画像取得部21、対象画像生成部22、分離部23、ラベリング部24、表示制御部25および学習部26として機能する。
【0030】
画像取得部21は、ネットワークに接続されたインターフェースからなり、画像保管サーバ3から、脊椎を含む処理対象となる3次元画像V0を取得する。画像取得部21は、3次元画像V0が既にストレージ13に記憶されている場合には、ストレージ13から3次元画像V0を取得するようにしてもよい。なお、本実施形態においては、3次元画像V0には被写体の脊椎の全体が含まれているものとする。
【0031】
対象画像生成部22は、後述する分離部23による椎骨の分離の対象となる対象画像を生成する。本実施形態においては、3次元画像V0には被写体の脊椎の全体が含まれている。このため、対象画像生成部22は、脊椎を構成する複数の椎骨を頸椎、胸椎および腰椎に分類し、頸椎、胸椎および腰椎の少なくとも1つに関する対象画像を生成する。対象画像は脊椎の一部を含むものとなる。なお、対象画像は3次元の画像であってもよいが、脊椎に沿ったサジタル断面またはコロナル断面の2次元の断層画像であってもよい。本実施形態においては、対象画像は2次元の断層画像とする。
【0032】
図3は脊椎を構成する複数の椎骨の標準的な配列を模式的に表す図である。図3に示すように、各椎骨には解剖学的にラベルが付与されている。ここで、脊椎は、頸椎、胸椎、腰椎および仙骨の4つの部分からなる。頸椎は7個の椎骨からなり、解剖学的にC1~C7のラベルが付与されている。胸椎は12個の椎骨からなり、解剖学的にTh1~Th12のラベルが付与されている。腰椎は5個の椎骨からなり、解剖学的にL1~L5のラベルが付与されている。仙骨は1つの骨のみからなり、解剖学的にS1のラベルが付与されている。なお、人によっては、頸椎、胸椎および腰椎の数、さらには全椎骨の数が、上述した標準的な脊椎とは異なる場合がある。本実施形態は、3次元画像V0に含まれる椎骨に対して、図3に示すようなラベリングを行うために、椎骨を分離する。
【0033】
本実施形態においては、対象画像生成部22は、3次元画像V0において、例えば上から順に7つの椎骨を頸椎、12個の椎骨を胸椎、5個の椎骨を腰椎に分類し、椎骨の分類の対象となる対象画像を生成する。本実施形態においては、腰椎の椎骨の分類の対象となる対象画像G1を生成するものとするが、これに限定されるものではない。頸椎、胸椎、腰椎または頸椎、胸椎および腰椎のうちの2つの組み合わせを含む対象画像を生成してもよい。
【0034】
ここで、本実施形態において、対象画像生成部22は、複数の椎骨を含む3次元画像V0が入力されると、複数の椎骨を頸椎、胸椎および腰椎に分類するように学習がなされた学習済みモデルを有する。学習済みモデルとしては、例えば、CNN(Convolutional Neural Network、畳み込みニューラルネットワーク)を用いることができるが、これに限定されるものではない。CNNの他、サポートベクタマシン(SVM(Support Vector Machine)、ディープニューラルネットワーク(DNN(Deep Neural Network))およびリカレントニューラルネットワーク(RNN(Recurrent Neural Network))等を用いることができる。
【0035】
なお、対象画像生成部22は、学習済みモデルを備えるものには限定されない。脊椎を構成する複数の椎骨のうち、仙骨は特徴的な形状を有するため、仙骨を用いたテンプレートマッチングにより仙骨を特定し、仙骨を基準として複数の椎骨を頸椎、胸椎および腰椎に分類するものであってもよい。また、対象画像生成部22は、操作者が3次元画像V0を観察することによりマニュアル操作により複数の椎骨を頸椎、胸椎および腰椎に分類した結果を用いて対象画像を生成するものであってもよい。
【0036】
分離部23は、対象画像G1において、複数の椎骨が分離された分離済み画像を生成する。このために、分離部23は、画像に含まれる複数の椎骨を分離するように学習がなされた学習済みモデルを有する。図4は学習済みモデルの構成を模式的に示す図である。図4に示すように、本実施形態において分離部23が有する学習済みモデルM1は、ニューラルネットワークの一種であるU-Netにより構成されている。図4に示すU-Net30は、第1の畳み込み層群31A,31Bおよび第2~第9の畳み込み層群32~39を有する。図4に示すように、第1の畳み込み層群31A,31Bおよび第2~第9の畳み込み層群32~39の結合の形状がU字状となっているため、このニューラルネットワークはU-Netと呼ばれる。
【0037】
本実施形態において、第1の畳み込み層群31A,31Bには、それぞれ対象画像G1および椎骨を含まない未分離画像R0を含む第1の画像ペアP1が入力される。未分離画像R0は、対象画像G1と同一サイズを有し、何も描画されていない画像である。第1の畳み込み層群31A,31Bは、それぞれ2つの畳み込み層を有し、畳み込み後の2つの特徴量マップが統合された特徴量マップF1を出力する。統合された特徴量マップF1は、図4の破線で示すように、第9の畳み込み層群39に入力される。また、統合された特徴量マップF1はプーリングされてサイズが1/2に縮小され、第2の畳み込み層群32に入力される。図4においてプーリングを下向きの矢印で示している。畳み込みに際しては、本実施形態においては、例えば3×3のカーネルを用いるものとするが、これに限定されるものではない。また、プーリングに際しては、4画素のうちの最大値が採用されるものとするが、これに限定されるものではない。
【0038】
第2の畳み込み層群32は2つの畳み込み層を有し、第2の畳み込み層群32から出力された特徴量マップF2は、図4の破線で示すように、第8の畳み込み層群38に入力される。また、特徴量マップF2はプーリングされてサイズが1/2に縮小され、第3の畳み込み層群33に入力される。
【0039】
第3の畳み込み層群33も2つの畳み込み層を有し、第3の畳み込み層群33から出力された特徴量マップF3は、図4の破線で示すように、第7の畳み込み層群37に入力される。また、特徴量マップF3はプーリングされてサイズが1/2に縮小され、第4の畳み込み層群34に入力される。
【0040】
第4の畳み込み層群34も2つの畳み込み層を有し、第4の畳み込み層群34から出力された特徴量マップF4は、図4の破線で示すように、第6の畳み込み層群36に入力される。また、特徴量マップF4はプーリングされてサイズが1/2に縮小され、第5の畳み込み層群35に入力される。
【0041】
第5の畳み込み層群35は1つの畳み込み層を有し、第5の畳み込み層群35から出力された特徴量マップF5は、アップサンプリングされてサイズが2倍に拡大され、第6の畳み込み層群36に入力される。図4においては、アップサンプリングを上向きの矢印により示している。
【0042】
第6の畳み込み層群36は、2つの畳み込み層を有し、第4の畳み込み層群34からの特徴量マップF4および第5の畳み込み層群35からのアップサンプリングされた特徴量マップF5を統合して畳み込み演算を行う。第6の畳み込み層群36から出力された特徴量マップF6はアップサンプリングされてサイズが2倍に拡大され、第7の畳み込み層群37に入力される。
【0043】
第7の畳み込み層群37は、2つの畳み込み層を有し、第3の畳み込み層群33からの特徴量マップF3および第6の畳み込み層群36からのアップサンプリングされた特徴量マップF6を統合して畳み込み演算を行う。第7の畳み込み層群37から出力された特徴量マップF7はアップサンプリングされて、第8の畳み込み層群38に入力される。
【0044】
第8の畳み込み層群38は、2つの畳み込み層を有し、第2の畳み込み層群32からの特徴量マップF2および第7の畳み込み層群37からのアップサンプリングされた特徴量マップF7を統合して畳み込み演算を行う。第8の畳み込み層群38から出力された特徴量マップF8はアップサンプリングされて、第9の畳み込み層群39に入力される。
【0045】
第9の畳み込み層群39は、3つの畳み込み層を有し、第1の畳み込み層群31A,31Bからの特徴量マップF1および第8の畳み込み層群38からのアップサンプリングされた特徴量マップF8を統合して畳み込み演算を行う。第9の畳み込み層群39から出力された特徴量マップF9は、対象画像G1において1つめの椎骨61が抽出された分離画像R1となる。
【0046】
本実施形態においては、分離画像R1は、次の椎骨を分離するために、対象画像G1と併せて、第2の画像ペアP2として第1の畳み込み層群31A,31Bに再帰的に入力される。これにより、対象画像G1において椎骨61に隣接する2つめの椎骨62が抽出された分離画像R2が出力される。分離画像R2は、次の椎骨を分離するために、対象画像G1と併せて、第3の画像ペアP3として、第1の畳み込み層群31A,31Bに再帰的に入力される。そして、分離部23は、すべての椎骨が分離されるまで上記の処理を繰り返す。
【0047】
図5は、本実施形態において行われる分離済み画像の生成のための処理を模式的に示す図である。上述したように、まず最初の処理においては、対象画像G1および未分離画像R0を含む第1の画像ペアP1が学習済みモデルM1に入力されると、1つめの椎骨61が抽出された分離画像R1が学習済みモデルM1から出力される。次に、対象画像G1および分離画像R1を含む第2の画像ペアP2が学習済みモデルM1に入力されると、2つめの椎骨62が抽出された分離画像R2が学習済みモデルM1から出力される。次に、対象画像G1および分離画像R2を含む第3の画像ペアP3が学習済みモデルM1に入力されると、3つめの椎骨63が抽出された分離画像R3が学習済みモデルM1から出力される。次に、図5では省略しているが、対象画像G1および分離画像R3を含む第4の画像ペアP4が学習済みモデルM1に入力されると、4つめの椎骨64が抽出された分離画像R4が学習済みモデルM1から出力される。そして、対象画像G1および分離画像R4を含む第5の画像ペアP5が学習済みモデルM1に入力されると、対象画像G1に含まれるすべての椎骨61~65が抽出された分離画像R5が分離済み画像RFとして出力される。
【0048】
このように、本実施形態においては、分離部23を構成する学習済みモデルM1には、対象画像G1にn個の椎骨が含まれる場合、対象画像G1と分離画像Ri(i=1~n-1)とを含む第iの画像ペアが再帰的に入力されて、対象画像G1においてn個の椎骨が分離された分離済み画像RFが生成されることとなる。
【0049】
ラベリング部24は、分離済み画像RFに基づいて、分離された椎骨に対して分離された順にラベリングを行う。本実施形態においては、対象画像G1は腰椎の画像であるため、ラベリング部24は、分離された椎骨に対して分離された順に上からL1~L5のラベルを付与する。
【0050】
表示制御部25は、ラベリングされた椎骨を含む対象画像G1を表示部14に表示する。図6は、表示部14に表示された、ラベリングされた椎骨を含む対象画像G1を示す図である。対象画像G1は腰椎の画像であるため、図6に示すように、表示された対象画像G1において、分離した順に上からL1~L5のラベルが付与されている。
【0051】
学習部26は、分離部23に含まれる学習済みモデルを生成する。学習部26は、多数の教師データを用いて、U-Net30の学習を行い、学習済みモデルM1を生成する。教師データは入力部15から入力される。本実施形態においては、椎骨を含む第1の画像、椎骨を含む画像に含まれる椎骨のうちの0以上の椎骨が抽出された第2の画像、および第2の画像よりも抽出された椎骨の数が1つ多い第3の画像を含む3つの画像の組が教師データとして用いられる。
【0052】
図7は教師データの例を示す図である。図7に示すように、教師データ50は、被写体についての椎骨を含む第1の画像50A、第1の画像50Aと同一サイズで何も抽出されていない未分離画像である第2の画像50Bおよび第1の画像50Aにおいて1つの椎骨が抽出された第3の画像50Cを含む。学習部26は、教師データ50を用いることにより、複数の椎骨を含む画像(すなわち対象画像)および何も抽出されていない未分離画像を含む画像ペアが入力されると、1番目の椎骨が分離された分離画像を出力するように学習がなされる。
【0053】
一方、図7に示す教師データ51は、被写体についての椎骨を含む第1の画像51A、第1の画像51Aと同一サイズで1つの椎骨が抽出された第2の画像51Bおよび第1の画像51Aにおいて2つの椎骨が抽出された第3の画像5Cを含む。学習部26は、教師データ51を用いることにより、複数の椎骨を含む対象画像および1つの椎骨が抽出されている分離画像を含む画像ペアが入力されると、1番目の椎骨に隣接する2番目の椎骨が分離された分離画像を出力するように学習がなされる。
【0054】
このように、本実施形態による学習済みモデルM1は、複数の椎骨を含む対象画像と、椎骨を含まない未分離画像とを含む画像ペアの入力により、対象画像から1つの椎骨が抽出されてなる分離画像を出力し、対象画像と分離画像とを含む新たな画像ペアの入力により、対象画像からさらに1つの椎骨が抽出されてなる新たな分離画像を出力し、対象画像と新たな分離画像とを新たな画像ペアとする入力、および対象画像からさらに1つの椎骨が抽出されてなる新たな分離画像の出力を繰り返すことにより、対象画像G1に含まれる複数の椎骨が分離された分離済み画像RFを生成するように学習がなされてなる。
【0055】
次いで、本実施形態において行われる処理について説明する。図8は本実施形態における構造物分離処理のフローチャートである。まず、画像取得部21が、画像保管サーバ3から診断対象である3次元画像V0を取得し(ステップST1)、対象画像生成部22が、3次元画像V0から、椎骨の分離の対象となる対象画像G1を生成する(ステップST2)。続いて、分離部23が対象画像G1において複数の椎骨が分離された分離済み画像RFを生成する分離処理を行う(ステップST3)。
【0056】
図9は、本実施形態における分離処理を示すフローチャートである。分離処理においては、まずカウンタ用の変数に1が代入され(ステップST11)、分離部23を構成する学習済みモデルM1に第iの画像ペアが入力される(ステップST12)。i=1の場合、第1の画像ペアとなり、第1の画像ペアは、対象画像G1および未分離画像R0を含む。第iの画像ペアの入力により、学習済みモデルM1は、対象画像G1からi個の椎骨が抽出された分離画像Riを出力する(分離画像Ri出力;ステップST13)。そして、対象画像G1においてすべての椎骨が抽出されたか否かが判定され(ステップST14)、ステップST14が否定されると変数に1を加算し(ステップST15)、ステップST12に戻り、ステップST12以降の処理を繰り返す。ステップST14が肯定されると、分離処理を終了する。この時点での分離画像が分離済み画像RFとなる。
【0057】
図8に戻り、ラベリング部24が、分離された椎骨に対して、分離された順にラベリングを行い(ステップST4)、表示制御部25がラベリングされた椎骨を含む対象画像G1を表示部14に表示し(画像表示;ステップST5)、処理を終了する。
【0058】
図10は学習処理を示すフローチャートである。まず、学習部26が入力部15からの教師データの入力を受け付け(ステップST21)、教師データを用いて、学習モデルであるU-Netの学習を行う(ステップST22)。これにより学習済みモデルM1が構築される。
【0059】
このように、本実施形態においては、複数の椎骨を含む対象画像G1と、椎骨を含まない未分離画像R0とを含む第1の画像ペアP1の入力により、対象画像G1から1つの椎骨が抽出されてなる分離画像R1が出力される。また、対象画像G1と分離画像R1とを含む新たな第2の画像ペアP2の入力により、対象画像G1からさらに1つの椎骨が抽出されてなる新たな分離画像R2が出力される。さらに、対象画像G1と新たな分離画像とを新たな画像ペアとする入力、および対象画像G1からさらに1つの椎骨が抽出されてなる新たな分離画像の出力を繰り返すことにより、対象画像G1に含まれる複数の椎骨が分離される。このため、3次元画像V0に含まれる椎骨が予め定められたサイズを有するものでなくても、すべての椎骨を精度よく抽出することができる。また、本実施形態においては、椎骨が順次抽出されるため、頸椎、椎および腰椎の数、さらには全椎骨の数が、標準的な脊椎とは異なる場合であっても、個々の椎骨を精度よく抽出することができる。したがって、3次元画像V0に含まれる椎骨等の複数の構造物を精度よく分離できる。
【0060】
なお、上記実施形態においては、分離部23が備える学習済みモデルM1をU-Netにより構成しているが、これに限定されるものではない。ポートベクタマシン(SVM(Support Vector Machine)、ディープニューラルネットワーク(DNN(Deep Neural Network))およびリカレントニューラルネットワーク(RNN(Recurrent Neural Network))等を用いることができる。
【0061】
また、上記実施形態においては、対象画像生成部22を、U-Netからなる学習済みモデルを備えるものとしてもよい。この場合、脊椎を含む画像の入力により、頸椎、胸椎、腰椎が分離された分離画像を出力するように、学習済みモデルの学習がなされる。
【0062】
また、上記実施形態においては、対象画像生成部22を備えるものとしているが、これに限定されるものではない。対象画像生成部22を備えることなく、取得した脊椎を含む3次元画像V0を頸椎、胸椎および腰椎に分類することなく、そのまますべての椎骨を含む対象画像として用いてもよい。この場合、3次元画像V0に含まれるすべての椎骨が順に抽出されて分離済み画像RFが生成されることとなる。
【0063】
また、上記実施形態においては、対象画像G1において、上から順に椎骨を抽出しているが、これに限定されるものではない。対象画像G1において、下から順に椎骨を抽出してもよい。
【0064】
また、上記実施形態においては、ラベリングされた椎骨を含む対象画像を表示部14に表示しているが、ラベリングされた椎骨を含む3次元画像V0を表示部14に表示してもよい。3次元画像V0の表示の態様としては、例えばボリュームレンダリング等、任意の手法を用いることができる。
【0065】
また、上記実施形態においては、分離の対象を脊椎としているが、これに限定されるものではない。例えば、培養された細胞を撮影することにより取得された細胞画像を対象画像として使用し、細胞を順次分離する処理にも、本実施形態を適用することができる。
【0066】
また、上記各実施形態において、例えば、画像取得部21、対象画像生成部22、分離部23、ラベリング部24、表示制御部25および学習部26といった各種の処理を実行する処理部(Processing Unit)のハードウェア的な構造としては、次に示す各種のプロセッサ(Processor)を用いることができる。上記各種のプロセッサには、上述したように、ソフトウェア(プログラム)を実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPUに加えて、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device :PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が含まれる。
【0067】
1つの処理部は、これらの各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種または異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGAの組み合わせまたはCPUとFPGAとの組み合わせ)で構成されてもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。
【0068】
複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアントおよびサーバ等のコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアとの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)等に代表されるように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサの1つ以上を用いて構成される。
【0069】
さらに、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造としては、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路(Circuitry)を用いることができる。
【符号の説明】
【0070】
1 構造物分離装置
2 3次元画像撮影装置
3 画像保管サーバ
4 ネットワーク
11 CPU
12 メモリ
13 ストレージ
14 表示部
15 入力部
21 画像取得部
22 対象画像生成部
23 分離部
24 ラベリング部
25 表示制御部
26 学習部
31A,31B 第1の畳み込み層群
32 第2の畳み込み層群
33 第3の畳み込み層群
34 第4の畳み込み層群
35 第5の畳み込み層群
36 第6の畳み込み層群
37 第7の畳み込み層群
38 第8の畳み込み層群
39 第9の畳み込み層群
50,51 教師データ
50A,51A 第1の画像
50B,51B 第2の画像
50C,51C 第3の画像
F1~F9 特徴量マップ
G1 対象画像
M1 学習済みモデル
P1~P4 画像ペア
R0 未分離画像
R1~R5 分離画像
RF 分離済み画像
V0 3次元画像
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10