(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-09
(45)【発行日】2022-08-18
(54)【発明の名称】レジスト下層膜形成組成物
(51)【国際特許分類】
G03F 7/11 20060101AFI20220810BHJP
C08F 220/36 20060101ALI20220810BHJP
H01L 21/027 20060101ALI20220810BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20220810BHJP
【FI】
G03F7/11 503
G03F7/11 502
C08F220/36
H01L21/30 563
G03F7/20 521
(21)【出願番号】P 2018539191
(86)(22)【出願日】2017-09-15
(86)【国際出願番号】 JP2017033521
(87)【国際公開番号】W WO2018052127
(87)【国際公開日】2018-03-22
【審査請求日】2020-09-11
(31)【優先権主張番号】P 2016180835
(32)【優先日】2016-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】西田 登喜雄
(72)【発明者】
【氏名】坂本 力丸
【審査官】川口 真隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/178235(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/11
C08F 220/36
H01L 21/027
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)乃至式(3)で表される構造単位を有する共重合体、架橋剤、有機酸触媒及び溶剤を含むリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物
であって、
前記架橋剤の含有量は前記共重合体に対し、1質量%乃至50質量%である、レジスト下層膜形成組成物
。
【化1】
(式中、R
1はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、R
2は炭素原子数1乃至3のアルキレン基を表し、Aは
ブロックイソシアネート基を表し、R
3は4員環乃至7員環のラクトン骨格、アダマンタン骨格、トリシクロデカン骨格又はノルボルナン骨格を有する有機基を表し、R
4は少なくとも1つの水素原子がフルオロ基で置換され、更に置換基として少なくとも1つのヒドロキシ基を有してもよい炭素原子数1乃至12の直鎖状、分岐鎖状又は環状の有機基を表す。)
【請求項2】
下記式(1)で表される構造単位、下記式(4)で表される構造単位及び下記式(3)で表される構造単位を有する共重合体、架橋剤、有機酸触媒並びに溶剤を含むリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物
であって、
前記架橋剤の含有量は前記共重合体に対し、1質量%乃至50質量%である、レジスト下層膜形成組成物
。
【化2】
(式中、R
1はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、R
2は炭素原子数1乃至3のアルキレン基を表し、Aは
ブロックイソシアネート基を表し、Yは-O-基又は-NH-基を表し、R
10は少なくとも1つの水素原子がフルオロ基又はクロロ基で置換されてもよく、置換基としてフェノキシ基を有してもよい炭素原子数1乃至12の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を表し、R
4は少なくとも1つの水素原子がフルオロ基で置換され、更に置換基として少なくとも1つのヒドロキシ基を有してもよい炭素原子数1乃至12の直鎖状、分岐鎖状又は環状の有機基を表す。)
【請求項3】
前記式(1)で表される構造単位は下記式(1a)で表される構造単位、下記式(1b)で表される構造単位、下記式(1c)で表される構造単位又は下記式(1d)で表される構造単位である、請求項1又は請求項2に記載のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物。
【化3】
(式中、R
1及びR
2は前記式(1)のR
1及びR
2と同義であり、2つのR
5はそれぞれ独立に水素原子、メチル基又はエチル基を表し、R
6はメチル基又はエチル基を表し、bは0乃至3の整数を表し、R
7は炭素原子数1乃至6の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素原子数1乃至6の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルコキシアルキル基を表し、R
8は炭素原子数1乃至6の直鎖状又は分岐鎖状のアルコキシ基を表し、R
9は水素原子、又は炭素原子数2乃至6の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルコキシカルボニル基を表す。)
【請求項4】
前記共重合体の重量平均分子量は1500乃至20000である、請求項1乃至請求項
3のうちいずれか一項に記載のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物。
【請求項5】
前記架橋剤はヘキサメトキシメチルメラミン、テトラメトキシメチルベンゾグアナミン、1,3,4,6-テトラキス(メトキシメチル)グリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(ブトキシメチル)グリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(ヒドロキシメチル)グリコールウリル、1,3-ビス(ヒドロキシメチル)尿素、1,1,3,3-テトラキス(ブトキシメチル)尿素又は1,1,3,3-テトラキス(メトキシメチル)尿素である、請求項1乃至請求項4のうちいずれか一項に記載のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物。
【請求項6】
請求項1乃至請求項
5のいずれか一項に記載のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物を基板上に塗布しベークして厚さ1nm乃至25nmのレジスト下層膜を形成する工程、前記レジスト下層膜上にレジスト溶液を塗布し加熱してレジスト膜を形成する工程、フォトマスクを介して前記レジスト膜をKrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー及び極端紫外線からなる群から選択される放射線により露光する工程、及び前記露光後に現像液によって現像する工程を含む、レジストパターンの形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物に関し、特にレジストパターンとの密着性を向上させたレジスト下層膜を形成するための組成物に関し、更に、薄い膜厚(例えば25nm以下)のレジスト下層膜を形成する場合であっても基板への塗布性に優れたレジスト下層膜形成組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ArF液浸リソグラフィーや極端紫外線(EUV)リソグラフィーにおいては、レジストパターン線幅の加工寸法の微細化が求められている。このような微細なレジストパターンの形成においては、レジストパターンと下地基板との接触面積が小さくなることによって、レジストパターンのアスペクト比(レジストパターンの高さ/レジストパターンの線幅)が大きくなり、レジストパターンの倒壊が生じやすくなることが懸念される。そのため、レジストパターンと接触するレジスト下層膜又は反射防止膜においては、前記倒壊が生じないように、レジストパターンとの高い密着性が要求されている。
【0003】
レジスト下層膜においては、レジストパターンとの高い密着性を発現するために、ラクトン構造を含むレジスト下層膜形成組成物を用いることにより、得られるレジストパターンに対して密着性が向上することが報告されている(特許文献1)。すなわち、ラクトン構造のような極性部位を含むレジスト下層膜形成組成物を用いることにより、レジストパターンへの密着性が向上し、微細なレジストパターンにおいてもレジストパターンの倒壊を防止することが期待される。
【0004】
しかしながら、ArF液浸リソグラフィー、極端紫外線(EUV)リソグラフィーのような、より微細なレジストパターンの作製が要求されるリソグラフィープロセスにおいては、レジスト下層膜形成組成物としてラクトン構造を含むだけでは、レジストパターンの倒壊を防止するためには十分と言えない。
【0005】
レジスト下層膜とレジストパターンとの高い密着性を実現するために、特許文献2には、レジスト下層膜の表面状態を塩基性状態に改質させ、レジストパターンの裾形状がアンダーカット形状となることを抑制できる、レジスト下層膜形成組成物用添加剤が記載されている。一方、特許文献3には、レジスト下層膜の表面近傍に添加剤成分を偏析させることにより、レジストパターンの裾形状がフッティング形状となることを抑制できる、レジスト下層膜形成組成物用添加剤が記載されている。
【0006】
特許文献4には、レジスト下層膜の表面状態を疎水性に改質させ、レジストパターンを現像及び純水でリンスする際のラプラス力を低減させ、当該レジストパターンの前記レジスト下層膜との密着性が改善できる、レジスト下層膜形成組成物用添加剤が記載されている。一方、特許文献5には、レジスト膜を溶解し得る溶剤を用いて当該レジスト膜の未露光部を除去し、当該レジスト膜の露光部をレジストパターンとして残すレジストパターン形成方法において、レジスト下層膜の表面近傍の酸性度を調整することにより、レジストパターンの断面形状をストレート形状にすると同時に当該レジストパターンの前記レジスト下層膜との密着性が改善できる、レジスト下層膜形成組成物用添加剤が記載されている。
【0007】
特許文献6には、スルホ基を末端に導入した構造単位を有する共重合体、架橋剤、並びに溶剤を含む、リソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物が記載されている。そして、特許文献6に記載の発明は、レジスト下層膜を形成する際に架橋触媒成分に由来する昇華物の発生が抑制される効果を奏し、下部に裾引き形状をほとんど有さない良好な形状のレジストパターンを形成することができるレジスト下層膜を提供することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第03/017002号
【文献】国際公開第2013/058189号
【文献】国際公開第2010/074075号
【文献】国際公開第2015/012172号
【文献】国際公開第2015/146443号
【文献】特開2010-237491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
近年、レジストパターンの微細化がますます加速している。レジストパターンの微細化に伴うパターン倒れを抑制するため、レジスト下層膜とレジストパターンとの相互作用に着目し、種々検討が行われている。その一つとして、レジスト材料の成分とレジスト下層膜の表面とを化学結合させることによって、レジスト下層膜とレジストパターンとの密着性の向上が期待される。
そこで本発明は、レジストパターンとの密着性を改善するため、レジスト材料の成分と架橋するレジスト下層膜形成組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様は、下記式(1)乃至式(3)で表される構造単位を有する共重合体、架橋剤、有機酸触媒及び溶剤を含むリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物である。
【化4】
(式中、R
1はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、R
2は炭素原子数1乃至3のアルキレン基を表し、Aは
ブロックイソシアネート基を表し、R
3は4員環乃至7員環のラクトン骨格、アダマンタン骨格、トリシクロデカン骨格又はノルボルナン骨格を有する有機基を表し、R
4は少なくとも1つの水素原子がフルオロ基で置換され、更に置換基として少なくとも1つのヒドロキシ基を有してもよい炭素原子数1乃至12の直鎖状、分岐鎖状又は環状の有機基を表す。)
【0011】
前記共重合体は下記式(1)で表される構造単位、下記式(4)で表される構造単位及び下記式(3)で表される構造単位を有する共重合体であってもよい。
【化2】
(式中、R
1は前記式(1)、式(2)及び式(3)のR
1と同義であり、R
2及びAは前記式(1)のR
2及びAと同義であり、Yは-O-基又は-NH-基を表し、R
10は少なくとも1つの水素原子がフルオロ基又はクロロ基で置換されてもよく、置換基としてフェノキシ基を有してもよい炭素原子数1乃至12の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を表し、R
4は前記式(3)のR
4と同義である。)
【0012】
前記式(1)で表される構造単位は、例えば下記式(1a)で表される構造単位、下記式(1b)で表される構造単位、下記式(1c)で表される構造単位又は下記式(1d)で表される構造単位である。
【化3】
(式中、R
1及びR
2は前記式(1)のR
1及びR
2と同義であり、2つのR
5はそれぞれ独立に水素原子、メチル基又はエチル基を表し、R
6はメチル基又はエチル基を表し、bは0乃至3の整数を表し、R
7は炭素原子数1乃至6の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素原子数1乃至6の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルコキシアルキル基を表し、R
8は炭素原子数1乃至6の直鎖状又は分岐鎖状のアルコキシ基を表し、R
9は水素原子、又は炭素原子数2乃至6の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルコキシカルボニル基を表す。)
【0013】
前記共重合体の重量平均分子量は、例えば1500乃至20000、好ましくは3000乃至15000である。重量平均分子量が1500より小さいと、前記共重合体を含むレジスト下層膜形成組成物から形成されるレジスト下層膜の溶剤耐性が得られず、一方、重量平均分子量が20000よりも大きいと、レジスト下層膜形成組成物を調製する際に、前記共重合体の溶剤への溶解性が悪化することが懸念される。
【0014】
本発明の第2の態様は、本発明の第1態様のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物を基板上に塗布しベークして厚さ1nm乃至25nmのレジスト下層膜を形成する工程、前記レジスト下層膜上にレジスト溶液を塗布し加熱してレジスト膜を形成する工程、フォトマスクを介して前記レジスト膜をKrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー及び極端紫外線からなる群から選択される放射線により露光する工程、及び前記露光後に現像液によって現像する工程を含む、レジストパターンの形成方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るレジスト下層膜形成組成物をリソグラフィープロセスに適用することによって、形成されるレジスト下層膜の表面には、当該組成物に含まれる共重合体の式(1)で表される構造単位に由来する、保護基によりブロックされたイソシアネート基が存在する。その後、前記レジスト下層膜上にレジスト膜を形成する際の加熱時に、前記保護基が脱保護されることにより生成したイソシアネート基(-N=C=O)が、レジスト材料の成分と化学結合する。それゆえ、前記レジスト下層膜とレジストパターンとの密着性が改善し、その結果レジストパターンの倒れを防止することができる。また、本発明に係るレジスト下層膜形成組成物を薄膜に塗布することで、EUVリソグラフィープロセスのような、超薄膜でのレジスト下層膜の使用が要求されるプロセスでも使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[共重合体]
本発明のレジスト下層膜形成組成物に使用される共重合体は、前記式(1)乃至式(3)で表される構造単位を有する共重合体、又は前記式(1)で表される構造単位、前記式(4)で表される構造単位及び前記式(3)で表される構造単位を有する共重合体である。
【0017】
前記式(1)で表される構造単位は、保護基によりブロックされたイソシアネート基を有し、当該保護基は加熱により脱保護され、イソシアネート基が生成する。このような構造単位としては、例えば、下記式(1-1)乃至式(1-20)で表される構造単位が挙げられる。
【化4】
【化5】
【0018】
前記式(2)で表される構造単位としては、例えば、下記式(2-1)乃至式(2-16)で表される構造単位が挙げられる。前記式(2)で表される構造単位のR
3として、レジスト溶液中のポリマーに導入されている骨格(環状構造)を有する有機基が選択される。
【化6】
【0019】
前記式(3)で表される構造単位としては、例えば、下記式(3-1)乃至式(3-6)で表される構造単位が挙げられる。前記式(3)で表される構造単位は、当該構造単位を有する共重合体を含む組成物から作製した膜を疎水性にする役割、及び当該組成物の塗布性を改善する役割がある。
【化7】
【0020】
前記式(4)で表される構造単位を形成するモノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-クロロプロピル(メタ)アクリレート、N-(2-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド及び3-(パーフルオロブチル)-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが挙げられる。そして、前記式(4)で表される構造単位としては、例えば、下記式(4-1)乃至式(4-12)で表される構造単位が挙げられる。
【化8】
【0021】
[架橋剤]
本発明のレジスト下層膜形成組成物は、架橋剤をさらに含むものである。前記架橋剤としては、例えば、ヘキサメトキシメチルメラミン、テトラメトキシメチルベンゾグアナミン、1,3,4,6-テトラキス(メトキシメチル)グリコールウリル(POWDERLINK1174)、1,3,4,6-テトラキス(ブトキシメチル)グリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(ヒドロキシメチル)グリコールウリル、1,3-ビス(ヒドロキシメチル)尿素、1,1,3,3-テトラキス(ブトキシメチル)尿素及び1,1,3,3-テトラキス(メトキシメチル)尿素が挙げられる。前記架橋剤の含有割合は、前記共重合体に対し、例えば1質量%乃至50質量%である。
【0022】
[有機酸触媒]
本発明のレジスト下層膜形成組成物は、さらに有機酸触媒を含むものである。前記有機酸触媒は、架橋反応を促進する触媒成分であり、例えば、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ピリジニウム-p-トルエンスルホネート、ピリジニウム-p-ヒドロキシベンゼンスルホネート、サリチル酸、カンファースルホン酸、5-スルホサリチル酸、4-クロロベンゼンスルホン酸、4-フェノールスルホン酸、4-フェノールスルホン酸メチル、ベンゼンジスルホン酸、1-ナフタレンスルホン酸、クエン酸、安息香酸及びヒドロキシ安息香酸等の、スルホン酸化合物及びカルボン酸化合物が挙げられる。これらの有機酸触媒は1種単独で含有してもよいし、2種以上の組み合わせで含有することもできる。前記有機酸触媒の含有割合は、前記架橋剤に対し、例えば0.1質量%乃至20質量%である。
【0023】
[溶剤]
本発明のレジスト下層膜形成組成物は、さらに溶剤を含むものである。前記溶剤としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、メチルエチルケトン、乳酸エチル、シクロヘキサノン、γ-ブチロラクトン、N-メチルピロリドン、及びこれらの溶剤から選択された2種以上の混合物が挙げられる。前記溶剤の含有割合は、前記レジスト下層膜形成組成物に対し、例えば50質量%乃至99.5質量%である。
【0024】
[その他の添加物]
本発明のレジスト下層膜形成組成物は、必要に応じて界面活性剤をさらに含有してもよい。界面活性剤は、基板に対する前記レジスト下層膜形成組成物の塗布性を向上させるための添加物であり、ノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤のような公知の界面活性剤を用いることができる。前記界面活性剤の具体例としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等のノニオン系界面活性剤、エフトップ〔登録商標〕EF301、同EF303、同EF352(三菱マテリアル電子化成(株)製)、メガファック〔登録商標〕F171、同F173、同R-30、同R-40、同R-40-LM(DIC(株)製)、フロラードFC430、同FC431(住友スリーエム(株)製)、アサヒガード〔登録商標〕AG710、サーフロン〔登録商標〕S-382、同SC101、同SC102、同SC103、同SC104、同SC105、同SC106(旭硝子(株)製)等のフッ素系界面活性剤、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製)を挙げることができる。これらの界面活性剤は1種単独で含有してもよいし、2種以上の組合せで含有することもできる。前記レジスト下層膜形成組成物が界面活性剤を含有する場合、前記界面活性剤の含有割合は、前記共重合体に対し、例えば0.1質量%乃至5質量%であり、好ましくは0.2質量%乃至3質量%である。
【実施例】
【0025】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0026】
本明細書の下記合成例1乃至合成例3に示す重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、本明細書ではGPCと略称する。)による測定結果である。測定には東ソー(株)製GPC装置を用い、溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を用いた。また、本明細書の下記合成例に示す分散度は、測定された重量平均分子量、及び数平均分子量から算出される。
【0027】
<合成例1>
メタクリル酸2-(O-[1’-メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル18.33g(昭和電工(株)製、商品名:カレンズ〔登録商標〕MOI-BM)、アダマンチルメタクリレート10.00g(大阪有機工業(株)製)、メタクリル酸1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル7.14g(東京化成工業(株)製)及び1-ドデカンチオール1.53g(東京化成工業(株)製)にプロピレングリコールモノメチルエーテル92.11gを加えた後、フラスコ内を窒素にて置換し70℃まで昇温した。重合開始剤として、プロピレングリコールモノメチルエーテル60.87gに溶解したアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)1.24gを前記フラスコ内に窒素加圧下添加し、24時間反応させ、下記式(1-2)で表される構造単位、下記式(2-9)で表される構造単位及び下記式(3-4)で表される構造単位を有する共重合体を含む溶液が得られた。得られた共重合体を含む溶液に対しGPC分析を行ったところ、当該溶液中の共重合体は、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量6070、分散度は1.98であった。
【化9】
【0028】
<合成例2>
メタクリル酸2-(O-[1’-メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル7.00g(昭和電工(株)製、商品名:カレンズ〔登録商標〕MOI-BM)、N-イソプロピルアクリルアミド1.96g(東京化成工業(株)製)、メタクリル酸1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル2.73g(東京化成工業(株)製)及び1-ドデカンチオール1.53g(東京化成工業(株)製)にプロピレングリコールモノメチルエーテル38.23gを加えた後、フラスコ内を窒素にて置換し70℃まで昇温した。重合開始剤として、プロピレングリコールモノメチルエーテル23.25gに溶解したアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.47gを前記フラスコ内に窒素加圧下添加し、24時間反応させ、下記式(1-2)で表される構造単位、下記式(4-12)で表される構造単位及び下記式(3-4)で表される構造単位を有する共重合体を含む溶液が得られた。得られた共重合体を含む溶液に対しGPC分析を行ったところ、当該溶液中の共重合体は、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量5996、分散度は1.85であった。
【化10】
【0029】
<合成例3>
テレフタル酸ジグリシジルエステル(ナガセケムテックス(株)製、商品名:デナコール〔登録商標〕EX711)20.00g、5-ヒドロキシイソフタル酸(東京化成工業(株)製)12.54g及びエチルトリフェニルホスホニウムブロミド(シグマアルドリッチ社製)1.28gを、プロピレングリコールモノメチルエーテル135.27gに加え溶解させた。反応容器を窒素置換後、135℃で4時間反応させ、ポリマー溶液を得た。当該ポリマー溶液は、室温に冷却しても白濁等を生じることはなく、プロピレングリコールモノメチルエーテルに対する溶解性は良好であった。GPC分析を行ったところ、得られた溶液中のポリマーは、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量6758、分散度は1.64であった。本合成例で得られたポリマーは、下記式(5)で表される構造単位及び式(6)で表される構造単位を有する。
【化11】
【0030】
<実施例1>
前記合成例1で得られた共重合体0.04gを含む溶液0.24gに、テトラメトキシメチルグリコールウリル(日本サイテックインダストリーズ(株)製、商品名:POWDERLINK1174)0.018g、及びピリジニウムp-トルエンスルホナート(東京化成工業(株)製)0.0025gを混合し、プロピレングリコールモノメチルエーテル20.76g及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート8.98gを加え溶解させた。その後孔径0.05μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、リソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物とした。
【0031】
<実施例2>
前記合成例2で得られた共重合体0.13gを含む溶液0.82gに、テトラメトキシメチルグリコールウリル(日本サイテックインダストリーズ(株)製、商品名:POWDERLINK〔登録商標〕1174)0.058g、及びピリジニウムp-トルエンスルホナート(東京化成工業(株)製)0.0083gを混合し、プロピレングリコールモノメチルエーテル55.64g及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート23.94gを加え溶解させた。その後孔径0.05μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、リソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物とした。
【0032】
<比較例1>
前記合成例3で得られたポリマー0.16gを含むポリマー溶液0.98gに、テトラメトキシメチルグリコールウリル(日本サイテックインダストリーズ(株)製、商品名:POWDERLINK〔登録商標〕1174)0.039g、5-スルホサリチル酸(東京化成工業(株)製)0.0039g及びR-30(DIC(株)製)0.00078gを混合し、プロピレングリコールモノメチルエーテル13.03g及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート5.94gを加え溶解させた。その後孔径0.05μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、リソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物とした。
【0033】
(フォトレジスト溶剤への溶出試験)
実施例1、実施例2及び比較例1で調製されたリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物を、それぞれ、スピナーにより、半導体基板であるシリコンウェハー上に塗布した。そのシリコンウェハーをホットプレート上に配置し、205℃で1分間ベークし、膜厚25nmのレジスト下層膜を形成した。これらのレジスト下層膜を、プロピレングリコールモノメチルエーテル70質量%及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート30質量%から成る溶剤に浸漬し、その溶剤に不溶であるか否かの確認試験を行った。その結果、浸漬前と浸漬後とで膜厚は変化しなかった。
【0034】
(フォトレジストパターンの形成及びレジストパターンの密着性試験)
実施例1及び実施例2で調製されたリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物を、それぞれ、スピナーにより、SiON膜が蒸着されたシリコンウェハーに塗布した。そのウェハーをホットプレート上に配置し、205℃で1分間ベークし、膜厚5nmのレジスト下層膜を形成した。さらに、比較例1で調製されたリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物を、スピナーにより、SiON膜が蒸着されたシリコンウェハーに塗布した。そのウェハーをホットプレート上に配置し、205℃で1分間ベークし、膜厚20nmのレジスト下層膜を形成した。これらのレジスト下層膜の上に、市販のフォトレジスト溶液(住友化学(株)製、商品名:PAR855)をスピナーにより塗布し、ホットプレート上で105℃にて60秒間加熱してフォトレジスト膜(膜厚0.10μm)を形成した。
【0035】
次いで、(株)ニコン製、NSR-S307E(波長193nm、NA:0.85,σ:0.65/0.93(Dipole))のスキャナーを用い、フォトマスクを通して最適露光量で露光を行った。フォトマスクは形成すべきレジストパターンに応じて選ばれる。露光後、ホットプレート上、105℃で60秒間、露光後ベーク(PEB)を行い、冷却後、工業規格の60秒シングルパドル式工程にて、現像液として0.26規定のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いて現像した。以上の過程を経て、レジストパターンを形成した。ラインアンドスペースパターン(以下、L/Sと略称する。)の形成可否の結果を表1に示す。目的のL/Sが形成された場合を「良好」と表した。
【0036】
また、露光量を上記最適露光量から段階的に増加させることにより、L/Sのスペース部に照射される露光量が増す結果として形成されるL/Sの線幅を徐々に細らせた。その際、ラインパターンの倒れが発生する一つ前段階のラインパターンの線幅を最少倒壊前寸法とし、レジストパターンの密着性の指標とした。表1にその結果を示す。この最少倒壊前寸法の値が小さいほど、レジスト下層膜とレジストパターンとの密着性が高いことを示唆している。特にレジストパターンの線幅が微細な場合、1nmの差は重大である。そのため、当該最少倒壊前寸法は1nmでも小さい方が極めて好ましい。
【0037】