(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-09
(45)【発行日】2022-08-18
(54)【発明の名称】インプリント用光硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
B29C 59/02 20060101AFI20220810BHJP
H01L 21/027 20060101ALI20220810BHJP
G02B 1/04 20060101ALI20220810BHJP
G02B 3/00 20060101ALI20220810BHJP
C08G 75/045 20160101ALI20220810BHJP
【FI】
B29C59/02 Z
H01L21/30 502D
G02B1/04
G02B3/00 Z
C08G75/045
(21)【出願番号】P 2019565788
(86)(22)【出願日】2018-12-21
(86)【国際出願番号】 JP2018047274
(87)【国際公開番号】W WO2019142601
(87)【国際公開日】2019-07-25
【審査請求日】2020-12-01
(31)【優先権主張番号】P 2018005580
(32)【優先日】2018-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018033774
(32)【優先日】2018-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】長澤 偉大
(72)【発明者】
【氏名】首藤 圭介
(72)【発明者】
【氏名】加藤 拓
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 朋哉
(72)【発明者】
【氏名】今井 翔太
【審査官】中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-071741(JP,A)
【文献】国際公開第2013/073364(WO,A1)
【文献】特開2014-080497(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 75/045
B29C 59/02
H01L 21/027
G02B 1/04
G02B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)成分、下記(b)成分、下記(c)成分、下記(d)成分及び下記(e)成分を含み、該(a)成分、該(b)成分、該(c)成分及び該(d)成分の和100質量部に対して、該(a)成分が10質量部乃至50質量部、該(b)成分が20質量部乃至55質量部、該(c)成分が10質量部乃至35質量部、該(d)成分が1質量部乃至15質量部、及び該(e)成分が0.1質量部乃至5質量部である、インプリント用光硬化性組成物。(a):1分子中に(メタ)アクリロイルオキシ基を1つ
又は2つ有する脂環式(メタ)アクリレート化合物(ただし、(b)成分の化合物を除く。)
(b):ウレタン(メタ)アクリレート化合物又はエポキシ(メタ)アクリレート化合物(c):一次粒子径が1nm乃至100nmの
、二価の連結基を介してケイ素原子と結合した(メタ)アクリロイル基で表面修飾されたシリカ粒子
(d):下記式(1)で表される多官能チオール化合物
(e):光ラジカル開始剤
【化1】
(式中、R
1は単結合又は炭素原子数1乃至6の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基を表し、Xは単結合、エステル結合又はエーテル結合を表し、A
1はヘテロ原子を少なくとも1つ含む若しくはヘテロ原子を含まない炭素原子数2乃至12の有機基、又はヘテロ原子を表し、r
1は2乃至6の整数を表す。)
【請求項2】
前記(b)成分のウレタン(メタ)アクリレート化合物又はエポキシ(メタ)アクリレー
ト化合物は、該化合物1分子中に(メタ)アクリロイルオキシ基を2つ又は3つ有する、請求項1に記載のインプリント用光硬化性組成物。
【請求項3】
前記(
a)成分
の脂環式(メタ)アクリレート化合物は、該化合物1分子中に(メタ)アクリロイルオキシ基を2つ有する、請求項1又は請求項2に記載のインプリント用光硬化性組成物。
【請求項4】
さらに、前記(a)成分、前記(b)成分、前記(c)成分及び(d)成分の和100質量部に対し0.05質量部乃至3質量部の下記(f)成分及び/又は
前記(a)成分、前記(b)成分、前記(c)成分及び(d)成分の和100質量部に対し0.1質量部乃至3質量部の下記(g)成分を含有する、請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載のインプリント用光硬化性組成物。
(f):フェノール系酸化防止剤
(g):スルフィド系酸化防止剤
【請求項5】
さらに、前記(a)成分、前記(b)成分、前記(c)成分及び(d)成分の和100質量部に対し1質量部乃至10質量部の下記式(2)で表される繰り返し構造単位及び下記式(3)で表される繰り返し構造単位を有するポリマーを含有し、該(b)成分のウレタン(メタ)アクリレート化合物又はエポキシ(メタ)アクリレート化合物は該ポリマーを含まない、請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載のインプリント用光硬化性組成物。
【化2】
(式中、R
2及びR
3はそれぞれ独立にメチル基又は水素原子を表し、R
4は炭素原子数1乃至8のアルキル基を表し、R
5は単結合又は炭素原子数1乃至4のアルキレン基を表し、Qは(メタ)アクリロイルオキシ基を1つ又は2つ以上有する重合性基を表し、Z
1は下記式(a1)、式(a2)、式(a3)又は式(a4)で表される二価の基を表す。)
【化3】
【請求項6】
前記ポリマーは、下記式(4)で表される繰り返し構造単位をさらに有する、請求項5に記載のインプリント用光硬化性組成物。
【化4】
(式中、R
6はメチル基又は水素原子を表し、Z
2は単結合又はエチレンオキシ基を表し、A
2は炭素原子数5乃至13の脂環式炭化水素基を表す。)
【請求項7】
前記インプリント用光硬化性組成物は、その硬化物の波長589nmにおける屈折率n
Dが1.50以上
1.55以下であり、かつ該硬化物のアッベ数ν
Dが53以上
60以下である、請求項1乃至請求項6の何れか一項に記載のインプリント用光硬化性組成物。
【請求項8】
前記インプリント用光硬化性組成物は、その硬化物の周波数1Hz、温度30℃における
動的弾性率が1000MPa以上4000MPa以下である、請求項1乃至請求項7の何れか一項に記載のインプリント用光硬化性組成物。
【請求項9】
請求項7又は請求項8に記載のインプリント用光硬化性組成物の硬化物。
【請求項10】
請求項1乃至請求項8の何れか一項に記載のインプリント用光硬化性組成物をインプリント成形する工程を含む、樹脂レンズの製造方法。
【請求項11】
インプリント用光硬化性組成物の成形体の製造方法であって、請求項1乃至請求項8の何れか一項に記載のインプリント用光硬化性組成物を、接し合う支持体と鋳型との間の空間、又は分割可能な鋳型の内部の空間に充填する工程、及び該空間に充填されたインプリント用光硬化性組成物を露光して光硬化する工程を含む、成形体の製造方法。
【請求項12】
前記光硬化する工程の後、得られた光硬化物を取り出して離型する工程、並びに、該光硬化物を、該離型する工程の前、中途又は後において加熱する工程を含む、請求項11に記載の成形体の製造方法。
【請求項13】
前記成形体がカメラモジュール用レンズである、請求項11又は請求項12に記載の成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂環式(メタ)アクリレート化合物、ウレタン(メタ)アクリレート化合物又はエポキシ(メタ)アクリレート化合物、表面修飾されたシリカ粒子、多官能チオール化合物、及び光ラジカル開始剤を含むインプリント用光硬化性組成物に関する。詳細には、光学特性(透明性、高屈折率、高アッベ数)が優れ、インプリント後の支持体の反り量が従来よりもはるかに小さい硬化物及び成形体を形成できるとともに、該硬化物及び成形体の動的弾性率が高く、さらには該硬化物及び成形体の上層に反射防止層(AR層)を成膜後、熱処理を経ても該反射防止層にクラックが発生しない、光硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂レンズは、携帯電話、デジタルカメラ、車載カメラなどの電子機器に用いられており、その電子機器の目的に応じた、優れた光学特性を有するものであることが求められる。また、使用態様に合わせて、高い耐久性、例えば耐熱性及び耐候性、並びに歩留まりよく成形できる高い生産性が求められている。このような要求を満たす樹脂レンズ用の材料としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィンポリマー、メタクリル樹脂等の熱可塑性の透明樹脂が使用されてきた。
【0003】
また、高解像度カメラモジュールには複数枚のレンズが用いられるが、波長分散性が低い、すなわち高アッベ数を有するレンズが主に使用されており、それを形成する光学材料が要求されている。さらに、樹脂レンズの製造にあたり、歩留まりや生産効率の向上、さらにはレンズ積層時の光軸ずれの抑制のために、熱可塑性樹脂の射出成型から、室温で液状の硬化性樹脂を使った押し付け成形によるウェハレベル成形への移行が盛んに検討されている。ウェハレベル成形では、生産性の観点から、ガラス基板等の支持体上にレンズを形成するハイブリッドレンズ方式が一般的である。
【0004】
ウェハレベル成形が可能な光硬化性樹脂としては、従来、高透明性、耐熱黄変色性及び金型からの離型性の観点から、ラジカル硬化性樹脂組成物が用いられている(特許文献1)。また、シラン化合物で表面修飾されたシリカ粒子、分散剤で表面修飾された酸化ジルコニウム粒子等の、表面修飾された酸化物粒子を含有することで、高いアッベ数の硬化物が得られる硬化性組成物が知られている(例えば、特許文献2及び特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5281710号(国際公開第2011/105473号)
【文献】特開2014-234458号公報
【文献】国際公開第2016/104039号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、カメラモジュールの薄化への市場要求に伴い、ハイブリッドレンズ方式に用いられる支持体の厚さが薄化している。そのため、特許文献1に記載されているラジカル硬化性樹脂組成物を用いると、熱処理を伴う実装プロセス後に、レンズ等の成形体が形成された支持体が反り易いという課題が顕在化している。前記課題を解決するため、使用する光硬化性樹脂の弾性率を下げる対策が取られている。しかしながら、成形体の弾性率が低い場合、支持体上の成形体を小片化するダイシング工程や小片化したチップの搬送工程にて、該成形体の表面に傷が入り歩留りが低下する課題を有している。さらには、成形体がレンズである場合、その上層に酸化ケイ素、酸化チタン等の無機物からなる反射防止層が形成される。そのため、反り量が小さい支持体上に形成され、反射防止層で被覆されたレンズを熱処理することによって、その反射防止層にクラックが発生するという課題を有している。また、特許文献2及び特許文献3に記載の硬化性組成物を用いて形成された硬化物は、その弾性率を高めると基板の反り量が増大し、高弾性率と低反り量を両立することが困難である。
【0007】
高アッベ数(例えば53以上)及び高い透明性を有し、ハイブリッドレンズ方式にてガラス基板等の支持体の反り量が小さく、高弾性率を示し、高解像度カメラモジュール用レンズとして使用し得る成形体が得られ、さらにはその後の熱処理によって該成形体の上層に成膜された反射防止層にクラックが発生しない、硬化性樹脂材料は未だなく、その開発が望まれていた。本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、高アッベ数、高屈折率、高透明性及び耐熱黄変性を示す成形体を形成でき、且つ支持体の反り量が従来よりも小さく、該成形体の弾性率が高いため、ハイブリッドレンズ方式にて該成形体を作製するのに好適であり、且つ熱処理によって該成形体の上層の反射防止層にクラックが発生しない、光硬化性組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記の課題を解決するべく鋭意検討を行った結果、表面修飾されたシリカ粒子、及び1分子中にチオール基を2つ以上有する多官能チオール化合物をそれぞれ、光硬化組成物に所定の比率で配合することにより、該光硬化性組成物から得られる成形体は、高い屈折率nD(1.50以上)及び高いアッベ数νD(53以上)を有し、波長410nmにおいて90%以上の高い透過率を示すとともに、支持体の反り量が小さく(0μm以上3.0μm未満)、さらに該成形体の30℃における動的弾性率が高く(1000MPa以上4000MPa以下)、175℃での熱処理によって該成形体の上層の反射防止層にクラック、シワがいずれも発生しないことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明の第一態様は、下記(a)成分、下記(b)成分、下記(c)成分、下記(d)成分及び下記(e)成分を含み、該(a)成分、該(b)成分、該(c)成分及び該(d)成分の和100質量部に対して、該(a)成分が10質量部乃至50質量部、該(b)成分が20質量部乃至55質量部、該(c)成分が10質量部乃至35質量部、該(d)成分が1質量部乃至15質量部、及び該(e)成分が0.1質量部乃至5質量部である、インプリント用光硬化性組成物である。
(a):1分子中に(メタ)アクリロイルオキシ基を少なくとも1つ有する脂環式(メタ)アクリレート化合物(ただし、(b)成分の化合物を除く。)
(b):ウレタン(メタ)アクリレート化合物又はエポキシ(メタ)アクリレート化合物
(c):一次粒子径が1nm乃至100nmの表面修飾されたシリカ粒子
(d):下記式(1)で表される多官能チオール化合物
(e):光ラジカル開始剤
【化1】
(式中、R
1は単結合又は炭素原子数1乃至6の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキレン基を表し、Xは単結合、エステル結合“-C(=O)O-”又はエーテル結合“-O-”を表し、A
1はヘテロ原子を少なくとも1つ含む若しくはヘテロ原子を含まない炭素原子数2乃至12の有機基、又はヘテロ原子を表し、r
1は2乃至6の整数を表す。)
ここで、ヘテロ原子とは、炭素原子及び水素原子以外の原子を表し、例えば窒素原子、酸素原子及び硫黄原子が挙げられる。
【0010】
前記(a)成分の脂環式(メタ)アクリレート化合物が、該化合物1分子中に(メタ)アクリロイルオキシ基を例えば1つ又は2つ有する。
【0011】
前記(b)成分のウレタン(メタ)アクリレート化合物又はエポキシ(メタ)アクリレート化合物は、該化合物1分子中に(メタ)アクリロイルオキシ基を例えば2つ又は3つ有する。
【0012】
前記(c)成分の一次粒子径が1nm乃至100nmの表面修飾されたシリカ粒子が、例えば二価の連結基を介してケイ素原子と結合した(メタ)アクリロイルオキシ基で表面修飾されたシリカ粒子である。該二価の連結基は、例えば、炭素原子数1乃至5のアルキレン基、好ましくは炭素原子数2又は3のアルキレン基である。
【0013】
本発明のインプリント用光硬化性組成物はさらに、前記(a)成分、前記(b)成分、前記(c)成分及び(d)成分の和100質量部に対し0.05質量部乃至3質量部の下記(f)成分及び/又は前記(a)成分、前記(b)成分、前記(c)成分及び(d)成分の和100質量部に対し0.1質量部乃至3質量部の下記(g)成分を含有してもよい。
(f):フェノール系酸化防止剤
(g):スルフィド系酸化防止剤
【0014】
本発明のインプリント用光硬化性組成物はさらに、前記(a)成分、前記(b)成分、前記(c)成分及び(d)成分の和100質量部に対し1質量部乃至10質量部の下記式(2)で表される繰り返し構造単位及び下記式(3)で表される繰り返し構造単位を有するポリマーを含有してもよく、前記(b)成分のウレタン(メタ)アクリレート化合物又はエポキシ(メタ)アクリレート化合物は該ポリマーを含まない。
【化2】
(式中、R
2及びR
3はそれぞれ独立にメチル基又は水素原子を表し、R
4は炭素原子数1乃至8のアルキル基を表し、R
5は単結合又は炭素原子数1乃至4のアルキレン基を表し、Qは(メタ)アクリロイルオキシ基を1つ又は2つ以上有する重合性基を表し、Z
1は下記式(a1)、式(a2)、式(a3)又は式(a4)で表される二価の基を表す。)
【化3】
【0015】
前記(メタ)アクリロイルオキシ基を1つ又は2つ以上有する重合性基は、例えば、下記式(Q0)、式(Q1)、式(Q2)、式(Q3)、式(Q4)、式(Q5)若しくは式(Q6)で表される基、又はこれらの基が有するアクリロイルオキシ基の一部又は全部をメタクリロイルオキシ基に置換した基である。
【化4】
【0016】
前記ポリマーは、下記式(4)で表される繰り返し構造単位をさらに有してもよい。
【化5】
(式中、R
6はメチル基又は水素原子を表し、Z
2は単結合又はエチレンオキシ基を表し、A
2は炭素原子数5乃至13の脂環式炭化水素基を表す。)
前記Z
2がエチレンオキシ基(-CH
2CH
2O-基)を表す場合、該エチレンオキシ基のO原子は前記脂環式炭化水素基を表すA
2と結合する。
【0017】
前記炭素原子数5乃至13の脂環式炭化水素基は、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基、又は炭素原子数1乃至3のアルキル基を置換基として有してもよいアダマンチル基である。
【0018】
本発明のインプリント用光硬化性組成物は、その硬化物の波長589nmにおける屈折率nDが1.50以上であり、かつ該硬化物のアッベ数νDが53以上である。前記屈折率nD、前記アッベ数νDはいずれも高い値ほど好ましいが、例えば、屈折率nDは1.50以上1.55以下、アッベ数νDは53以上60以下の範囲であればよい。
【0019】
本発明の第二態様は、前記インプリント用光硬化性組成物の硬化物である。
【0020】
本発明に第三態様は、前記インプリント用光硬化性組成物をインプリント成形する工程を含む、樹脂レンズの製造方法である。
【0021】
本発明の第四態様は、インプリント用光硬化性組成物の成形体の製造方法であって、前記インプリント用光硬化性組成物を、接し合う支持体と鋳型との間の空間、又は分割可能な鋳型の内部の空間に充填する工程、及び該空間に充填されたインプリント用光硬化性組成物を露光して光硬化する工程を含む、成形体の製造方法である。前記鋳型はモールドとも称する。
【0022】
本発明の成形体の製造方法において、前記光硬化する工程の後、得られた光硬化物を取り出して離型する工程、並びに、該光硬化物を、該離型する工程の前、中途又は後において加熱する工程、をさらに含んでもよい。
【0023】
本発明の成形体の製造方法において、該成形体は、例えばカメラモジュール用レンズである。
【発明の効果】
【0024】
本発明のインプリント用光硬化性組成物は、前記(a)成分乃至前記(e)成分を含み、さらに任意で、前記(f)成分及び/又は前記(g)成分、及び前記ポリマーを含むため、該光硬化性組成物から得られる硬化物及び成形体が、光学デバイス、例えば、高解像度カメラモジュール用のレンズとして望ましい光学特性、すなわち高アッベ数、高屈折率、高透明性及び耐熱黄変性を示す。また、前記硬化物及び成形体が形成された支持体の反り量が小さく(0μm以上3.0μm未満)、さらに該硬化物及び成形体の30℃における動的弾性率が高く(1000MPa以上4000MPa以下)、且つ該硬化物及び成形体の上層の反射防止層が175℃での熱処理によってクラック、シワがいずれも発生しない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1はガラス基板の反り量の評価方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[(a)成分:脂環式(メタ)アクリレート化合物]
本発明のインプリント用光硬化性組成物の(a)成分として使用可能な脂環式(メタ)アクリレート化合物は、該化合物1分子中に(メタ)アクリロイルオキシ基を少なくとも1つ及び脂環式炭化水素を1つ有し、且つ後述する(b)成分の化合物を除くものである。該脂環式(メタ)アクリレート化合物として、例えば、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、4-tert-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、メンチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、1-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-メチルアダマンタン-2-イル(メタ)アクリレート、2-エチルアダマンタン-2-イル(メタ)アクリレート、トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカニル(メタ)アクリレート、トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカニルオキシエチル(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、及び1,3-アダマンタンジオールジ(メタ)アクリレートからなる群から選択される脂環式(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。
【0027】
前記脂環式(メタ)アクリレート化合物として市販品を用いてもよく、例えば、ビスコート#155、IBXA、ADMA(以上、大阪有機化学工業(株)製)、NKエステル A-IB、同IB、同A-DCP、同DCP(以上、新中村化学工業(株)製)、及びファンクリル(登録商標)FA-511AS、同FA-512AS、同FA-513AS、同FA-512M、同FA-512MT、同FA-513M(以上、日立化成(株)製)が挙げられる。
【0028】
本発明のインプリント用光硬化性組成物の(a)成分の含有量は、該(a)成分、後述する(b)成分、後述する(c)成分及び後述する(d)成分の和100質量部に対して、10質量部乃至50質量部、好ましくは20質量部乃至40質量部である。該(a)成分の含有量が10質量部より少ないと、前記インプリント用光硬化性組成物から得られた硬化物の屈折率が1.50未満まで低下する虞がある。該(a)成分の含有量が50質量部より多いと、前記インプリント用光硬化性組成物から得られた硬化物及び成形体が形成された支持体の反り量が増加する虞がある。
【0029】
上記(a)成分の脂環式(メタ)アクリレート化合物は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0030】
[(b)成分:ウレタン(メタ)アクリレート化合物又はエポキシ(メタ)アクリレート化合物]
本発明のインプリント用光硬化性組成物の(b)成分として使用可能なウレタン(メタ)アクリレート化合物は、1分子中に(メタ)アクリロイルオキシ基を少なくとも2つ及び“-NH-C(=O)O-”で表されるウレタン構造を少なくとも2つ有する化合物である。該ウレタン(メタ)アクリレート化合物として、例えば、EBECRYL(登録商標)230、同270、同280/15IB、同284、同4491、同4683、同4858、同8307、同8402、同8411、同8804、同8807、同9270、同8800、同294/25HD、同4100、同4220、同4513、同4738、同4740、同4820、同8311、同8465、同9260、同8701、KRM7735、同8667、同8296(以上、ダイセル・オルネクス(株)製)、UV-2000B、UV-2750B、UV-3000B、UV-3200B、UV-3210EA、UV-3300B、UV-3310B、UV-3500B、UV-3520EA、UV-3700B、UV-6640B、UV-6630B、UV-7000B、UV-7510B、UV-7461TE(以上、日本合成化学(株)製)、UA-306H、UA-306T、UA-306I、UA-510H、UF-8001G(以上、共栄社化学(株)製)、M-1100、M-1200(以上、東亞合成(株)製)、及びNKオリゴU-2PPA、同U-6LPA、同U-200PA、U-200PA、同U-160TM、同U-290TM、同UA-4200、同UA-4400、同UA-122P、同UA-7100、同UA-W2A(以上、新中村化学工業(株)製)が挙げられる。
【0031】
本発明のインプリント用光硬化性組成物の(b)成分として使用可能なエポキシ(メタ)アクリレート化合物は、1分子中にエポキシ環を少なくとも2つ有する化合物と(メタ)アクリル酸とを反応させたエステルである。該エポキシ(メタ)アクリレート化合物として、例えば、EBECRYL(登録商標)645、同648、同860、同3500、同3608、同3702、同3708(以上、ダイセル・オルネクス(株)製)、DA-911M、DA-920、DA-931、DA-314、DA-212(以上、ナガセケムテックス(株)製)、HPEA-100(ケーエスエム(株)製)、及びユニディック(登録商標)V-5500、同V-5502、同V-5508(DIC(株)製)が挙げられる。
【0032】
上記(b)成分のウレタン(メタ)アクリレート化合物又はエポキシ(メタ)アクリレート化合物として、該化合物1分子中に(メタ)アクリロイルオキシ基を2つ又は3つ有する化合物が好ましく用いられる。1分子中に(メタ)アクリロイルオキシ基を6つ以上有するウレタン(メタ)アクリレート化合物又はエポキシ(メタ)アクリレート化合物を含むインプリント用光硬化性組成物から得られた硬化物及び成形体が形成された支持体は、反り量が大き過ぎることがある。
【0033】
本発明のインプリント用光硬化性組成物の(b)成分の含有量は、前記(a)成分、該(b)成分、後述する(c)成分及び後述する(d)成分の和100質量部に対して、20質量部乃至55質量部、又は30質量部乃至50質量部である。該(b)成分の含有量が20質量部より少ないと、前記インプリント用光硬化性組成物から得られた硬化物及び成形体が形成された支持体の反り量が増加する虞がある。該(b)成分の含有量が55質量部より多いと、前記インプリント用光硬化性組成物から得られた硬化物及び成形体の弾性率が低下する虞がある。
【0034】
上記(b)成分のウレタン(メタ)アクリレート化合物又はエポキシ(メタ)アクリレート化合物は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0035】
[(c)成分:表面修飾されたシリカ粒子]
本発明のインプリント用光硬化性組成物の(c)成分として使用可能な表面修飾されたシリカ粒子は、一次粒子径が1nm乃至100nmである。ここで、一次粒子とは、紛体を構成する粒子であり、この一次粒子が凝集した粒子を二次粒子という。前記一次粒子径は、ガス吸着法(BET法)により測定される前記表面修飾されたシリカ粒子の比表面積(単位質量あたりの表面積)S、該表面修飾されたシリカ粒子の密度ρ、及び一次粒子径Dとの間に成り立つ関係式:D=6/(ρS)から算出することができる。該関係式から算出される一次粒子径は、平均粒子径であり、一次粒子の直径である。また、前記表面修飾されたシリカ粒子は、例えば、二価の連結基を介してケイ素原子と結合した(メタ)アクリロイルオキシ基で表面修飾されている。上記表面修飾されたシリカ粒子を用いる際には、該表面修飾されたシリカ粒子をそのまま用いてもよく、該表面修飾されたシリカ粒子を分散媒である有機溶剤に予め分散させたコロイド状態のもの(コロイド粒子が分散媒に分散したゾル)を用いてもよい。該表面修飾されたシリカ粒子を含むゾルを用いる場合、固形分の濃度が10質量%乃至60質量%の範囲のゾルを用いることができる。
【0036】
前記表面修飾されたシリカ粒子を含むゾルとして、例えば、MEK-AC-2140Z、MEK-AC-4130Y、MEK-AC-5140Z、PGM-AC-2140Y、PGM-AC-4130Y、MIBK-AC-2140Z、MIBK-SD-L(以上、日産化学(株)製)、及びELCOM(登録商標)V-8802、同V-8804(以上、日揮触媒化成(株)製)を採用することができる。
【0037】
本発明のインプリント用光硬化性組成物の(c)成分の含有量は、前記(a)成分、前記(b)成分、該(c)成分及び後述する(d)成分の和100質量部に対して、10質量部乃至35質量部、好ましくは15質量部乃至35質量部である。該(c)成分の含有量が10質量部より少ないと、前記インプリント用光硬化性組成物から得られた硬化物及び成形体の上層に製膜される反射防止層のクラックを抑制できない虞がある。該(c)成分の含有量が35質量部より多いと、前記インプリント用光硬化性組成物から得られた硬化物及び成形体にヘイズが生じ、透過率が低下する虞がある。
【0038】
上記(c)成分の表面修飾されたシリカ粒子は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0039】
[(d)成分:多官能チオール化合物]
本発明のインプリント用光硬化性組成物の(d)成分として使用可能な多官能チオール化合物は、前記式(1)で表される多官能チオール化合物である。該式(1)で表される多官能チオール化合物として、例えば、1,2-エタンジチオール、1,3-プロパンジチオール、ビス(2-メルカプトエチル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチリルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、及びトリメチロールエタントリス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールトリス(3-メルカプトプロピル)エーテルが挙げられる。前記式(1)で表される多官能チオール化合物として、市販品、例えば、カレンズMT(登録商標)PE1、同NR1、同BD1、TPMB、TEMB(以上、昭和電工(株)製)、及びTMMP、TEMPIC、PEMP、EGMP-4、DPMP、TMMP II-20P、PEMP II-20P、PEPT(以上、SC有機化学(株)製)を採用することができる。
【0040】
本発明のインプリント用光硬化性組成物の(d)成分の含有量は、前記(a)成分、前記(b)成分、前記(c)成分及び該(d)成分の和100質量部に対し、1質量部乃至15質量部、好ましくは3質量部乃至10質量部である。該(d)成分の含有量が1質量部より少ないと、前記インプリント用光硬化性組成物から得られた硬化物及び成形体が形成された支持体の反り量が大きくなる虞がある。該(d)成分の含有量が15質量部より多いと、該インプリント用光硬化性組成物から得られた硬化物及び成形体は機械特性が悪化するため、熱処理を伴う実装プロセスにて該硬化物及び成形体が変形する虞がある。
【0041】
上記(d)成分の多官能チオール化合物は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0042】
[(e)成分:光ラジカル開始剤]
本発明のインプリント用光硬化性組成物の(e)成分として使用可能な光ラジカル開始剤として、例えば、アルキルフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラー(Michler)のケトン類、アシルホスフィンオキシド類、ベンゾイルベンゾエート類、オキシムエステル類、テトラメチルチウラムモノスルフィド類及びチオキサントン類が挙げられ、特に、光開裂型の光ラジカル重合開始剤が好ましい。前記光ラジカル開始剤として市販品、例えば、IRGACURE(登録商標)184、同369、同651、同500、同819、同907、同784、同2959、同CGI1700、同CGI1750、同CGI1850、同CG24-61、同TPO、同1116、同1173(以上、BASFジャパン(株)製)、及びESACURE KIP150、同KIP65LT、同KIP100F、同KT37、同KT55、同KTO46、同KIP75(以上、Lamberti社製)を採用することができる。
【0043】
本発明のインプリント用光硬化性組成物の(e)成分の含有量は、前記(a)成分、前記(b)成分、前記(c)成分及び前記(d)成分の和100質量部に対し0.1質量部乃至5質量部、好ましくは0.5質量部乃至3質量部である。該(e)成分の含有量が0.1質量部より少ないと、前記インプリント用光硬化性組成物から得られる硬化物及び成形体の強度が低下する虞がある。該(e)成分の含有量が5質量部より多いと、該インプリント用光硬化性組成物から得られる硬化物及び成形体の耐熱黄変性が悪化する虞がある。
【0044】
上記(e)成分の光ラジカル開始剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0045】
[(f)成分:フェノール系酸化防止剤]
本発明のインプリント用光硬化性組成物の(f)成分として使用可能なフェノール系酸化防止剤として、例えば、IRGANOX(登録商標)245、同1010、同1035、同1076、同1135(以上、BASFジャパン(株)製)、SUMILIZER(登録商標)GA-80、同GP、同MDP-S、同BBM-S、同WX-R(以上、住友化学(株)製)、及びアデカスタブ(登録商標)AO-20、同AO-30、同AO-40、同AO-50、同AO-60、同AO-80、同AO-330(以上、(株)ADEKA製)が挙げられる。
【0046】
本発明のインプリント用光硬化性組成物が(f)成分を含有する場合、その含有量は、前記(a)成分、前記(b)成分、前記(c)成分及び前記(d)成分の和100質量部に対し、0.05質量部乃至3質量部、好ましくは0.1質量部乃至1質量部である。
【0047】
上記(f)成分のフェノール系酸化防止剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0048】
[(g)成分:スルフィド系酸化防止剤]
本発明のインプリント用光硬化性組成物の(g)成分として使用可能なスルフィド系酸化防止剤として、例えば、アデカスタブ(登録商標)AO-412S、同AO-503(以上、(株)ADEKA製)、IRGANOX(登録商標)PS802、同PS800(以上、BASFジャパン(株)製)、及びSUMILIZER(登録商標)TP-D(住友化学(株)製)が挙げられる。
【0049】
本発明のインプリント用光硬化性組成物が(g)成分を含有する場合、その含有量は、前記(a)成分、前記(b)成分、前記(c)成分及び前記(d)成分の和100質量部に対し、0.1質量部乃至3質量部、好ましくは0.1質量部乃至1質量部である。
【0050】
上記(g)成分のスルフィド系酸化防止剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0051】
[その他の成分]
本発明のインプリント用光硬化性組成物は、前記(a)成分乃至前記(g)以外の成分をその他の成分として含有してもよい。該その他の成分として、重合性基を含む多官能(メタ)アクリレート化合物、重合性基を含む共重合体、及び重合性基を含むポリロタキサンが挙げられる。該重合性基を含む多官能(メタ)アクリレート化合物として、例えば、NKエステル AD-TMP、同D-TMP、同A-TMPT、同TMPT、同A-TMMT、同A-GLY-3E、同A-GLY-9E、同A-DPH、同A-9300(新中村化学工業(株)製)、KAYARAD PET-30、同GPO-303(日本化薬(株)製)が挙げられる。前記重合性基を含む共重合体として、例えば、前記式(2)で表される繰り返し構造単位及び前記式(3)で表される繰り返し構造単位を有し、任意で前記式(4)で表される繰り返し構造単位をさらに有するポリマーが挙げられる。
【0052】
前記式(2)で表される繰り返し構造単位として、例えば、下記式(2-1)乃至式(2-6)で表される繰り返し構造単位が挙げられる。
【化6】
【0053】
前記式(3)で表される繰り返し構造単位として、例えば、下記式(3-1)乃至式(3-44)で表される繰り返し構造単位が挙げられる。
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【0054】
前記式(4)で表される繰り返し構造単位として、例えば、下記式(4-1)乃至式(4-22)で表される繰り返し構造単位が挙げられる。
【化11】
【0055】
前記重合性基を含む共重合体として、例えば、ヒタロイド(登録商標)7975、同7975D、同7988(以上、日立化成(株)製)、RP-274S、RP-310(以上、ケーエスエム(株)製)、アートキュア(登録商標)RA-3602MI、同OPA-5000、同OPA-2511、同RA-341(以上、根上工業(株))が挙げられる。
【0056】
前記重合性基を含むポリロタキサンは、シクロデキストリン等の環状分子の開口部がポリエチレングリコール等の直鎖状分子によって串刺し状に包接された擬ポリロタキサンの両端に、前記環状分子が脱離しないようにアダマンチル基等の封鎖基が配置されている。そして、前記重合性基は、該環状分子とスペーサーを介して又は直接結合している。前記重合性基を含むポリロタキサンとして、例えば、セルム(登録商標)スーパーポリマーSA1303P、同SA2403P、同SA3403P、同SM1303P、同SM2403P、同3403P(以上、アドバンスト・ソフトマテリアルズ(株)製)が挙げられる。
【0057】
本発明のインプリント用光硬化性組成物が前記その他の成分を含有する場合、その含有量は、前記(a)成分、前記(b)成分、前記(c)成分及び前記(d)成分の和100質量部に対し、1質量部乃至10質量部である。前記その他の成分が重合性基を含む共重合体の場合、その含有量が10質量部より多いと、前記インプリント用光硬化性組成物の粘度が大幅に上昇する為、作業性が著しく低下する。
【0058】
上記その他の成分は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0059】
<インプリント用光硬化性組成物の調製方法>
本発明のインプリント用光硬化性組成物の調製方法は、特に限定されない。調製法としては、例えば、前記(a)成分、前記(b)成分、前記(c)成分、前記(d)成分及び前記(e)成分、並びに所望により前記(f)成分及び/又は前記(g)成分及び前記その他の成分を所定の割合で混合し均一な溶液とする方法が挙げられる。
【0060】
また、溶液に調製した本発明のインプリント用光硬化性組成物は、孔径が0.1μm乃至5μmのフィルターなどを用いてろ過した後、使用することが好ましい。
【0061】
<硬化物>
本発明のインプリント用光硬化性組成物を、露光(光硬化)して、硬化物を得ることができ、本発明は該硬化物も対象とする。露光する光線としては、例えば、紫外線、電子線及びX線が挙げられる。紫外線照射に用いる光源としては、例えば、太陽光線、ケミカルランプ、低圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、及びUV-LEDが使用できる。また、露光後、硬化物の物性を安定化させるためにポストベークを施してもよい。ポストベークの方法としては、特に限定されないが、通常、ホットプレート、オーブン等を使用して、50℃乃至260℃、1分乃至24時間の範囲で行われる。
【0062】
本発明のインプリント用光硬化性組成物を光硬化することにより得られる硬化物は、アッベ数νDが53以上と高いものであり、波長589nm(D線)における屈折率nDが1.50以上であり、また、加熱による黄変も見られない。そのため、本発明のインプリント用光硬化性組成物は、樹脂レンズ形成用として好適に使用することができる。
【0063】
<成形体>
本発明のインプリント用光硬化性組成物は、例えばインプリント成形法を使用することによって、硬化物の形成と並行して各種成形体を容易に製造することができる。成形体を製造する方法としては、例えば接し合う支持体と鋳型との間の空間、又は分割可能な鋳型の内部の空間に本発明のインプリント用光硬化性組成物を充填する工程、該空間に充填されたインプリント用光硬化性組成物を露光して光硬化する工程、該光硬化する工程により得られた光硬化物を取り出して離型する工程、並びに、該光硬化物を、該離型する工程の前、中途又は後において加熱する工程を含む方法が挙げられる。
【0064】
上記露光して光硬化する工程は、前述の硬化物を得るための条件を適用して実施することができる。さらに、上記光硬化物を加熱する工程の条件としては、特に限定されないが、通常、50℃乃至260℃、1分乃至24時間の範囲から適宜選択される。また、加熱手段としては、特に限定されないが、例えば、ホットプレート及びオーブンが挙げられる。このような方法によって製造された成形体は、カメラモジュール用レンズとして好適に使用することができる。
【実施例】
【0065】
以下、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお、下記実施例及び比較例において、試料の調製及び物性の分析に用いた装置及び条件は、以下の通りである。
【0066】
(1)撹拌脱泡機
装置:(株)シンキー製 自転・公転ミキサー あわとり練太郎(登録商標)ARE-310
(2)UV露光
装置:アイグラフィックス(株)製 バッチ式UV照射装置(高圧水銀灯2kW×1灯)
(3)透過率
装置:日本分光(株)製 紫外可視近赤外分光光度計V-670
リファレンス:空気
(4)屈折率nD、アッベ数νD
装置:アントンパール社製 多波長屈折計Abbemat MW
測定温度:23℃
(5)反り量測定、レンズ高さ測定
装置:三鷹光器(株)製 非接触表面性状測定装置PF-60
(6)動的弾性率測定
装置:TAインスツルメンツ社製 動的粘弾性測定装置Q800
モード:引張モード
周波数:1Hz
歪み:0.1%
条件:30℃で5分間測定後の動的弾性率を算出
(7)反射防止層の成膜
装置:サンユー電子(株)製 RFスパッタ装置SRS-700T/LL
方式:RFスパッタ・マグネトロン方式
条件:ターゲット材=シリコン、RFパワー=250W、
ターゲット・基板間の垂直距離=100mm、オフセット距離=100mm、
Ar流量=45sccm、O2流量=2sccm、
温度=室温、スパッタ時間=15分
(8)光学顕微鏡
装置:(株)キーエンス製 VHX-1000、VH-Z1000R
条件:反射(明視野)、対物500倍
(9)レンズ成型
装置:明昌機工(株)製 6インチ対応ナノインプリンター
光源:高圧水銀灯、i線バンドパスフィルターHB0365(朝日分光(株)製)を介 して露光
成型条件:押し付け圧100N、20mW/cm2×300秒
(10)ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)
装置:(株)島津製作所製 GPCシステム
カラム:昭和電工(株)製 Shodex(登録商標)GPC KF-804L、GPC KF-803L
カラム温度:40℃
溶媒:テトラヒドロフラン
標準試料:ポリスチレン
【0067】
各製造例、実施例及び比較例において使用した化合物の供給元は以下の通りである。
A-DCP:新中村化学工業(株)製 商品名:NKエステル A-DCP
MEK-AC-2140Z:日産化学(株)製 商品名:オルガノシリカゾル MEK-AC-2140Z
FA513AS:日立化成(株)製 商品名:ファンクリル(登録商標)FA-513AS
AD-TMP:新中村化学工業(株)製 商品名:NKエステル AD-TMP
UA-4200:新中村化学工業(株)製 商品名:NKオリゴ UA-4200
DA-212:ナガセケムテックス(株)製 商品名:デナコールアクレートDA-212
NR1:昭和電工(株)製 商品名:カレンズ(登録商標)MT NR1
PEPT:SC有機化学(株)製 商品名:PEPT
I184:BASFジャパン(株)製 商品名:Irgacure(登録商標)184
I245:BASFジャパン(株)製 商品名:Irganox(登録商標)245
AO-503:(株)ADEKA製 商品名:アデカスタブ(登録商標)AO-503
EBECRYL4513:ダイセル・オルネクス(株)製 商品名:EBECRYL(登録商標)4513
SA1303P:アドバンスト・ソフトマテリアルズ(株)製 商品名:セルム(登録商標)スーパーポリマーSA1303P
【0068】
[製造例1]
500mLナスフラスコに、(a)前記脂環式(メタ)アクリレート化合物としてA-DCP 120gを秤量し、メチルエチルケトン(以下、本明細書ではMEKと略称する。)120gにて溶解させた。その後、(c)前記表面修飾されたシリカ粒子として、MEK-AC-2140Z((メタ)アクリロイルオキシ基で表面修飾された一次粒子径10nm~15nmのシリカ粒子、固形分46質量%のMEK分散液)260.3gを加え、撹拌して均一化した。その後、エバポレーターを用いて、50℃、減圧度133.3Pa以下の条件でMEKを留去し、前記表面修飾されたシリカ粒子のA-DCP分散液(該表面修飾されたシリカ粒子含有量50質量%)を得た。
【0069】
[製造例2]
500mLナスフラスコに、(b)ウレタン(メタ)アクリレート化合物としてUA-4200 12.0gを秤量し、MEK 12.0gにて溶解させた。その後、(c)前記表面修飾されたシリカ粒子として、MEK-AC-2140Z((メタ)アクリロイルオキシ基で表面修飾された一次粒子径10nm~15nmのシリカ粒子、固形分46質量%のMEK分散液)17.4gを加え、撹拌して均一化した。その後、エバポレーターを用いて、50℃、減圧度133.3Pa以下の条件でMEKを留去し、前記表面修飾されたシリカ粒子のUA-4200分散液(該表面修飾されたシリカ粒子含有量40質量%)を得た。
【0070】
[製造例3]
滴下ロート付き4つ口フラスコ中にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、本明細書ではPGMEAと略称する。)を45.2g仕込み、さらに該滴下ロート中にメチルメタクリレート50.0g、イソボルニルアクリレート29.7g、2-ヒドロキシエチルメタクリレート9.28g、及び2,2’-アゾビスイソブチロニトリル5.86gをPGMEA176.2gに溶解させた溶液を加えた。前記4つ口フラスコ内の雰囲気を窒素置換後、該4つ口フラスコ内を80℃に昇温し、前記滴下ロート中の溶液を3時間かけて該4つ口フラスコ中に滴下した。滴下終了後、12時間反応させ、さらに110℃で1時間撹拌した後、前記4つ口フラスコ内の温度を60℃まで低下させた。得られた反応溶液にp-メトキシフェノール0.266g、ジラウリン酸ジブチル錫0.451g、及びAOI 15.1gを加え、60℃で3時間撹拌させた。反応溶液を室温に戻し、10℃に冷却したメタノールを用いて再沈殿・乾燥させることで、下記式(5)で表される構造単位を有するポリマー1を53.0g得た。得られたポリマー1の、GPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは、12,900であった。
【化12】
【0071】
[製造例4]
100mLナスフラスコに、(a)前記脂環式(メタ)アクリレート化合物としてA-DCP 20.0gを秤量した。その後、重合性基を含むポリロタキサンとして、SA1303P(シクロデキストリンからなる環状分子の側鎖にアクリロイルオキシ基を有するポリロタキサン、固形分50質量%のMEK分散液)40.0gを加え、撹拌して均一化した。その後、エバポレーターを用いて、50℃、減圧度133.3Pa以下の条件でMEKを留去し、前記エチレン性不飽和基を有するポリロタキサンのA-DCP溶液(該エチレン性不飽和基を有するポリロタキサン含有量50質量%)を得た。
【0072】
[実施例1]
(a)前記脂環式(メタ)アクリレート化合物としてA-DCP、(b)ウレタン(メタ)アクリレート化合物としてUA-4200、(c)前記表面修飾されたシリカ粒子として製造例1で得た前記A-DCP分散液の固形分、(e)光ラジカル開始剤としてI184、(f)フェノール系酸化防止剤としてI245、及び(g)スルフィド系酸化防止剤としてAO-503を、それぞれ下記表1に記載の割合で配合した。なお、下記表1に示すA-DCPの割合は、前記A-DCP分散液に含まれるA-DCP成分を含む。その後、配合物を50℃で3時間振とうさせ、混合した後、(d)前記多官能チオール化合物としてNR1を添加し、前記撹拌脱泡機を用いて30分間、撹拌混合した。さらに同装置を用いて10分間撹拌脱泡することでインプリント用光硬化性組成物1を調製した。なお、下記表1中、「部」は「質量部」を表す。
【0073】
[実施例2乃至実施例11、比較例1及び比較例2]
前記実施例1と同様の手順にて、(a)成分乃至(g)成分、並びに実施例3、実施例9及び実施例11のみその他の成分を下記表1に示す割合で混合することで、インプリント用光硬化性組成物2乃至13を調製した。ただし、比較例1は(d)成分及び(g)成分を使用せず、比較例2は(c)成分を使用しない。
【0074】
[比較例3]
(b)ウレタン(メタ)アクリレート化合物としてUA-4200、(c)前記表面修飾されたシリカ粒子として製造例2で得た前記UA-4200分散液の固形分、(e)光ラジカル開始剤としてI184、及び(f)フェノール系酸化防止剤としてI245、(g)スルフィド系酸化防止剤としてAO-503を、それぞれ下記表1に記載の割合で配合した。なお、下記表1に示すUA-4200の割合は、前記UA-4200分散液に含まれるUA-4200成分を含む。その後、配合物を50℃で3時間振とうさせ、混合した後、(d)前記多官能チオール化合物としてNR1を添加し、前記撹拌脱泡機を用いて30分間、撹拌混合した。さらに同装置を用いて10分間撹拌脱泡することでインプリント用光硬化性組成物14を調製した。
【0075】
【0076】
[硬化膜の作製]
実施例1乃至実施例11及び比較例1乃至比較例3で調製した各インプリント用光硬化性組成物を、500μm厚のシリコーンゴム製スペーサーとともに、NOVEC(登録商標)1720(スリーエムジャパン(株)製)を塗布し乾燥することで離型処理したガラス基板2枚で挟み込んだ。この挟み込んだインプリント用光硬化性組成物を、前記UV照射装置を用いてi線バンドパスフィルター(朝日分光(株)製)を介して20mW/cm2で300秒間UV露光した。露光後得られた硬化物を、前記離型処理したガラス基板から剥離した後、100℃のホットプレートで10分間加熱することで、直径3cm、厚さ0.5mmの硬化膜を作製した。
【0077】
[透過率及び耐熱黄変性評価]
前記の方法で作製した硬化膜の波長410nmの透過率を、前記紫外可視近赤外分光光度計を用いて測定した。結果を下記表2に示す。さらに前記硬化膜をシリコンウェハ上に置き、該シリコンウェハを介して、175℃に加熱したホットプレート上で2分30秒間加熱し、耐熱性試験を行った。耐熱性試験後の硬化膜の波長410nmの透過率を、前記紫外可視近赤外分光光度計を用いて測定し、加熱前後の透過率変化から耐熱黄変性を評価した。結果を下記表2に合わせて示す。
【0078】
[硬化膜の作製及び該硬化膜の動的弾性率測定]
200μm厚のシリコーンゴム製スペーサーを切り抜いて作成した、長さ3cm、幅4mmの型を、NOVEC(登録商標)1720(スリーエムジャパン(株)製)を塗布し乾燥することで離型処理した第1のガラス基板へ貼り合わせた。その後、前記型の中に、実施例1乃至実施例11及び比較例1乃至比較例3で調製した各インプリント用光硬化性組成物を注ぎ入れ、該型の上部を、前記第1のガラス基板と同様に離型処理した第2のガラス基板で挟み込んだ。この挟み込んだインプリント用光硬化性組成物を、前記UV照射装置を用いてi線バンドパスフィルター(朝日分光(株)製)を介して20mW/cm2で300秒間UV露光した。露光後得られた硬化物を、前記離型処理した第1のガラス基板及び第2のガラス基板から剥離した後、100℃のホットプレートで10分間加熱することで、長さ3cm、幅4mm、厚さ200μmの硬化膜を作製した。得られた該硬化膜の動的弾性率を、前記動的粘弾性測定装置にて測定した。結果を下記表2に合わせて示す。
【0079】
[屈折率nD・アッベ数νD評価]
前記の方法で作製した硬化膜の波長589nmにおける屈折率nD、及びアッベ数νDを、前記多波長屈折計を用いて測定した。結果を下記表2に合わせて示す。
【0080】
[反り量の評価]
実施例1乃至実施例11及び比較例1乃至比較例3で調製した各インプリント用光硬化性組成物0.010gを、NOVEC(登録商標)1720(スリーエムジャパン(株)製)を塗布し乾燥することで離型処理した第1のガラス基板上に秤量した。その後、500μm厚のシリコーンゴム製スペーサーを介して、信越化学工業(株)製接着補助剤(製品名:KBM-5103)をPGMEAで1質量%に希釈した溶液を塗布し乾燥することで密着処理した第2のガラス基板(1.0cm角、0.5mm厚)で挟み込んだ。この挟み込んだ光硬化性組成物を、前記UV照射装置を用いてi線バンドパスフィルター(朝日分光(株)製)を介して20mW/cm2で300秒間UV露光した。露光後得られた硬化物を、前記離型処理したガラス基板から剥離した後、100℃のホットプレートで10分間加熱することで、前記密着処理した第2のガラス基板上に、直径0.5cm、厚さ0.5mm及び質量0.01gの硬化膜を作製した。その後、前記硬化膜が作製された第2のガラス基板を、175℃のホットプレートで2分30秒間加熱することで耐熱性試験を行った。
【0081】
前記硬化膜が作製された第2のガラス基板を、前記非接触表面性状測定装置のステージに該第2のガラス基板が上面になるよう配置した。前記第2のガラス基板の中心を測定開始点とし、該第2のガラス基板の4つの頂点に向け前記ステージに対して垂直方向(Z軸)の変位を測定した。測定データから、前記第2のガラス基板の中心と該第2のガラス基板の各頂点との間の垂直方向(Z軸)の変位量を算出し、それらの平均値を反り量と定義した。
図1にガラス基板の反り量評価方法を模式図で示す。結果を下記表2に合わせて示す。
【0082】
[反射防止層の成膜と耐クラック性評価]
実施例1乃至実施例9及び比較例1乃至比較例3で調製した各インプリント用光硬化性組成物0.040gを、NOVEC(登録商標)1720(スリーエムジャパン(株)製)を塗布し乾燥することで離型処理した第1のガラス基板上に秤量した。その後、500μm厚のシリコーンゴム製スペーサーを介して、信越化学工業(株)製接着補助剤(製品名:KBM-5103)をPGMEAで1質量%に希釈した溶液を塗布し乾燥することで密着処理した第2のガラス基板(6cm角、0.7mm厚)で、前記第1のガラス基板上のインプリント用光硬化性組成物を挟み込んだ。この挟み込んだ光硬化性組成物を、前記UV照射装置を用いてi線バンドパスフィルター(朝日分光(株)製)を介して20mW/cm2で300秒間UV露光した。露光後得られた硬化物を、前記第1のガラス基板から剥離した後、100℃のホットプレートで10分間加熱することで、前記第2のガラス基板上に、直径1cm、厚さ0.5mm及び質量0.040gの硬化膜を作製した。
【0083】
前記第2のガラス基板上に作製された硬化膜上に、前記RFスパッタ装置を用いて前記成膜条件にて、膜厚200nmの酸化ケイ素層を反射防止層として成膜した。前記光学顕微鏡を用いて、前記硬化膜上の反射防止層を観察しクラックの有無を確認した後、前記第2のガラス基板を175℃のホットプレートで2分30秒間加熱することで耐熱性試験を行った。耐熱性試験後の前記第2のガラス基板についても、前記光学顕微鏡を用いて前記硬化膜上の反射防止層のクラックの有無を観察し、該反射防止層の耐クラック性を判定した。前記硬化膜上の反射防止層にクラックが視認できる場合を×、該硬化膜上の反射防止膜にクラックは視認できないがシワが視認できる場合を△、該硬化膜上の反射防止層にクラック、シワがいずれも視認できない場合を○と判定した。それぞれの結果を下記表2に合わせて示す。
【0084】
【0085】
(d)成分を含まない比較例1のインプリント用光硬化性組成物から作製した硬化膜は、ガラス基板の反り量が大きい結果となった。また、(c)成分を含まない比較例2のインプリント用光硬化性組成物から作製した硬化膜上に成膜した反射防止層は、耐熱性試験後にクラックが発生する結果となった。さらに、(a)成分を含まない比較例3のインプリント用光硬化性組成物から作製した硬化膜は、屈折率nDが1.50未満に低下し、さらに該硬化膜上に成膜した反射防止層は、耐熱性試験後にシワが発生する結果となった。上記の結果より、本発明のインプリント用光硬化性組成物から得られた硬化膜は、高アッベ数、高屈折率、高透明性及び耐熱黄変性を示すとともに、該硬化膜が形成された支持体の低い反り量、さらに30℃における1000MPa以上の高い動的弾性率、及び該硬化膜の上層の反射防止層は175℃での熱処理によってクラック、シワがいずれも発生しない、高解像度カメラモジュール用のレンズとして望ましい特性を有することが示された。
【0086】
[レンズの作製]
実施例1で調製したインプリント用光硬化性組成物1、実施例2で調製したインプリント用光硬化性組成物2及び実施例3で調製したインプリント用光硬化性組成物3を、それぞれ、ニッケル製の鋳型(2mm径×300μm深さのレンズ型を、縦3列×横5列の計15個配置)及びナノインプリンターを用い、前述の成形体の製造方法に従って、支持体であるガラス基板上でレンズ形状に成形した。なお、使用した鋳型は、予めNOVEC(登録商標)1720(スリーエムジャパン(株)製)で離型処理した。また、使用したガラス基板は、予め信越化学工業(株)製接着補助剤(製品名:KBM-503)で密着処理した。前記鋳型から硬化物を外した後、該硬化物を100℃のホットプレートで10分間加熱することで、前記密着処理したガラス基板上に凸レンズを作製した。
【0087】
前記ガラス基板上に得られた凸レンズについて、加熱試験前後のレンズ高さ(厚み)を前記非接触表面性状測定装置で測定し、その変化率を次式“[(加熱前のレンズ高さ-加熱後のレンズ高さ)/加熱前のレンズ高さ]×100”から算出し、加熱による寸法安定性を評価した。また、加熱試験後の凸レンズにおけるクラックの発生の有無を、前記非接触表面性状測定装置に付属のマイクロスコープで観察した。なお、加熱試験とは、ガラス基板上に得られた凸レンズを175℃のホットプレートで2分30秒間加熱した後、室温(およそ23℃)まで放冷する試験である。結果を下記表3に示す。
【0088】
【0089】
表3に示すように、本発明のインプリント用光硬化性組成物から得られた凸レンズは、175℃、2分30秒間の熱履歴を経てもレンズ高さの変化が小さく(変化率0.20%以下)、寸法安定性が高いという結果が得られた。