(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-09
(45)【発行日】2022-08-18
(54)【発明の名称】硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物、それを用いた感圧接着剤組成物、およびその使用
(51)【国際特許分類】
C09J 183/07 20060101AFI20220810BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20220810BHJP
C09J 183/05 20060101ALI20220810BHJP
C09J 7/29 20180101ALI20220810BHJP
C08L 83/05 20060101ALI20220810BHJP
C08L 83/07 20060101ALI20220810BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20220810BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20220810BHJP
C09J 183/04 20060101ALI20220810BHJP
【FI】
C09J183/07
C09J7/38
C09J183/05
C09J7/29
C08L83/05
C08L83/07
C08L83/04
C09J11/06
C09J183/04
(21)【出願番号】P 2019511130
(86)(22)【出願日】2018-03-19
(86)【国際出願番号】 JP2018010769
(87)【国際公開番号】W WO2018186161
(87)【国際公開日】2018-10-11
【審査請求日】2021-02-19
(31)【優先権主張番号】P 2017073475
(32)【優先日】2017-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】719000328
【氏名又は名称】ダウ・東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 真樹
(72)【発明者】
【氏名】田中 英文
(72)【発明者】
【氏名】中村 昭宏
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 正浩
(72)【発明者】
【氏名】須藤 通孝
【審査官】松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-181357(JP,A)
【文献】特開2010-108038(JP,A)
【文献】特開2000-044921(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロシリル化反応を含む硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物であって、
(A)分子内に平均して1を超える数のアルケニル基を有する直鎖状または分岐鎖状のオルガノポリシロキサンであり、少なくともその一部が、(A1)25℃において100,000mPa・s以上の粘度を有するか、JIS K6249に規定される方法に準じて測定された可塑度が50~200の範囲にある生ゴム状であり、(A1)成分中のアルケニル基中のビニル(CH
2
=CH)部分の含有量が0.005~0.400重量%の範囲である、アルケニル基含有オルガノポリシロキサン、
(B)オルガノポリシロキサンレジンで、少なくともその一部が、(B1)R
3
SiO
1/2
単位(M単位)及びSiO
4/2
単位(Q単位)からなり、式中、Rは一価有機基であり、Rの90モル%以上が炭素数1~6のアルキル基またはフェニル基であり、水酸基または加水分解性基を有してもよいレジン、及び
(C)分子内に少なくとも2個のSi-H結合を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン
を含有し、固形分中の白金系金属の含有量が
2.0~
30ppmの範囲であり、
当該組成物中における(A)成分と(C)成分の和 100質量部に対して、(B)成分が1~500質量部の範囲であり、
当該組成物中のアルケニル基に対する(C)成分中のケイ素原子結合水素原子(SiH)基のモル比が0.1~100の範囲であり、
当該組成物を硬化させてなる厚み50μmの硬化層を備えた厚み2mmのポリメチルメタクリレートシート
について、JIS Z 0237に従う180°引き剥がし試験方法を用いて引張速度300mm/minにより測定された粘着力が0.02N/25mm以上であることを特徴とするもの。
【請求項2】
請求項1に記載の硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物であって、当該組成物を硬化させてなる厚み100μmの硬化層のJIS Z 8729に規定されるL*a*b*表色系で測定したb*値が0.15以下であるもの。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物であって、当該組成物を硬化させてなる厚み100μmの硬化層を105℃-300時間エージングした場合、または365nmでの強度が12mW/cm
2、254nmでの強度が3.5mW/cm
2である水銀灯を用いた紫外光を75時間照射した場合に、JIS Z 8729に規定されるL*a*b*表色系で測定したb*値の変化(Δb*)が0.20以下であるもの。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物であっ
て、当該組成物を硬化させてなる厚み100μmの硬化層が実質的に透明であり、そのJIS Z 8729に規定されるL*a*b*表色系で測定したb*値が0.10以下であり、かつ、当該硬化層を105℃-300時間エージングした場合、または、365nmでの強度が12mW/cm
2、254nmでの強度が3.5mW/cm
2である水銀灯を用いた紫外光を75時間照射した場合のb*値の変化(Δb*)が0.15以下であるもの。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1項に記載の硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物であって、さらに、少なくとも1種類の(D)硬化遅延剤を含有するもの。
【請求項6】
請求項
5に記載の硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物であって、組成物の調製直後から室温で8時間後における組成物の粘度が組成物の調製直後の粘度に対して1.5倍以内であり、かつ、80~200℃で硬化可能であるもの。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか1項記載の硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物からなる、感圧接着剤組成物。
【請求項8】
請求項1~
6のいずれか1項記載の硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物を硬化してなる硬化物。
【請求項9】
請求項1~
6のいずれか1項記載の硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物を硬化してなる感圧接着剤層。
【請求項10】
フィルム状であり、かつ、実質的に透明である、請求項
9に記載の感圧接着剤層。
【請求項11】
フィルム状基材上に、請求項1~
6のいずれか1項記載の硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物を硬化してなる硬化層を備えた積層体。
【請求項12】
前記の硬化層が感圧接着剤層であり、フィルム状基材に当該感圧接着剤層に対する剥離層が設けられている、請求項
11に記載の積層体。
【請求項13】
請求項1~
6のいずれか1項記載の硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物を硬化してなる、電子材料または表示装置用部材。
【請求項14】
請求項
13に記載の電子材料または表示装置用部材を含む電子部品または表示装置。
【請求項15】
請求項
10に記載のフィルム状かつ実質的に透明な感圧接着剤層を含む表示パネルまたはディスプレイ。
【請求項16】
一面に導電層が形成されている基材、及び、前記基材の導電層またはその反対側の面に付着されている請求項1~
6のいずれか1項記載の硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物を硬化してなる硬化層を含むタッチパネル。
【請求項17】
前記導電層が形成されている基材は、一面にITO層が形成されている樹脂フィルムまたはガラス板である請求項
16に記載のタッチパネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変色を生じにくく、透明な感圧接着層を形成する硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物に関する。詳細には、本発明は、高温下で長時間エージングした場合でも、紫外線等の高エネルギー線に長時間暴露した場合でも、変色や着色の問題を生じることなく、長期間にわたって高い透明性を維持できる感圧接着層を形成する、硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物に関する。また、本発明は、当該硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物を用いる感圧接着剤組成物、当該組成物を用いた電子部品または表示装置(タッチパネル含む)等の用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリシロキサン系感圧接着剤組成物は、アクリル系やゴム系の感圧接着剤組成物と比較して、電気絶縁性、耐熱性、耐寒性、各種被着体に対する粘着性に優れるので、耐熱性粘着テープ、電気絶縁性粘着テープ、ヒートシールテープ、メッキマスキングテープ等に使用されている。これらのポリシロキサン系感圧接着剤組成物は、その硬化機構により、付加反応硬化型、縮合反応硬化型、パーオキサイド硬化型などに分類される。室温放置もしくは加熱によって速やかに硬化し、副生物を発生しないので、付加反応硬化型の感圧接着剤組成物が汎用されている。
【0003】
ポリシロキサン系感圧接着剤の上記特性および高い透明性を生かし、近年、スマートデバイス等の先端エレクトロニクス表示素子分野への応用が検討されている。このようなデバイスは、電極層、表示層を含む複数層からなるフィルムを透明基材の間に挟みこんだ構造をとっており、電極層、表示層の保護および層間の接着性改良を目的に、耐熱・耐寒性、透明性の高いポリシロキサン系感圧接着剤が有効に作用することが期待される。たとえば、光学的に透明なシリコーン系感圧接着剤フィルムおよびそれを用いたタッチパネル等の表示デバイスの製造は、特表2014-522436号(特許文献1)または特表2013-512326(特許文献2)等で開示されている。
【0004】
しかしながら、公知のシリコーン系感圧接着剤をタッチパネル等の表示デバイスに用いる場合、デバイス本体からの発熱や露光、車載ディスプレイ等の環境由来の熱や露光に伴い、シリコーン系感圧接着剤からなる接着層が着色(黄変や透明性の低下を含む)を起こし、表示機能の劣化や外観不良といった問題を生じる場合がある。
【0005】
一方、感圧接着剤以外の硬化性シリコーン組成物の分野では、白金含有量を低減した付加硬化性シリコーン樹脂組成物(特許文献3)やポリシロキサンゲル組成物(特許文献4)が知られており、基材である銀メッキの硫化による変色の防止や、シリコーンの熱劣化による変色や硬さ変化に対する安定性が改善されることが開示されている。しかしながら、これらの組成物は半導体等の封止材や保護材であって、粘着層または感圧接着層として機能しうる組成は何ら開示されていない。さらに、硬化により粘着層または感圧接着層を形成しうるオルガノポリシロキサン組成物は、感圧接着性を実現するために低反応性のシリコーンレジンと高重合度のオルガノポリシロキサンを主たる成分として含むことが一般的であり、組成物中のアルケニル基(ビニル基等の炭素-炭素二重結合部分)の含有量およびアルケニル基の密度が相対的に少ない組成であるため、白金含有量を特許文献3等に記載のレベル(5ppm以下)に低減しようとすると、シリコーン系感圧接着剤においては硬化不良の問題を生じる場合がある。このため、このような低い白金量を選択しないことが一般的である。すなわち、これらの文献に開示された発明は、シリコーン系感圧接着剤からなる透明な接着層それ自体の変色防止とは発明の課題および技術分野が異なるものであり、その技術要素をシリコーン感圧接着剤に適用することは容易ではない。
【0006】
これに対し、シリコーン系感圧接着剤の分野においては、特許文献5において、アルケニル基含有ポリオリガノシロキサンといわゆるMQレジンの反応混合物を配合することにより、特に高温暴露した場合のステンレス等の基材への糊残りや変色が防止できることが提案されている。しかしながら、特許文献5では白金使用量については5~2000ppm等、極めて広範な範囲しか開示されておらず、さらに、特許文献5でいう「変色」とは感圧接着層の着色ではなく、ステンレス鋼表面の着色であって、シリコーン系感圧接着剤からなる透明な接着層それ自体の変色防止とは技術的課題および解決手段の異なる発明であり、当該課題を解決することは困難である。
【0007】
特許文献6には、(メタ)アクリロキシアルキル変性オルガノポリシロキサンとジルコニウム化合物を併用することにより、高温暴露時の変色度合いの小さい付加型シリコーン接着剤組成物が提案されている。しかしながら、当該付加型シリコーン接着剤組成物は乳白色等に着色してしまうことから透明な接着層を形成することができないため、透明性が求められる表示装置等に適用することができず、さらに、白金使用量については0.5~200ppm等、極めて広範な範囲しか開示されていない。また、(メタ)アクリロキシアルキル変性オルガノポリシロキサンを含むことから、高エネルギー線に対して硬さ変化の問題を生じやすい。従って、シリコーン系感圧接着剤からなる透明な接着層それ自体の変色防止とは技術的課題および解決手段の異なる発明であり、当該課題を解決することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特表2014-522436号公報
【文献】特表2013-512326号公報
【文献】特開昭62-181357号公報
【文献】特開2010-248413号公報
【文献】特開2006-213810号公報
【文献】特開2007-9189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記課題を解決すべくなされたものであり、ヒドロシリル化反応による硬化性、粘着性および取扱作業性に優れ、かつ、高温下で長時間エージングした場合でも、紫外線等の高エネルギー線に長時間暴露した場合でも、変色や着色の問題を生じることなく、長期間にわたって高い透明性を維持できる感圧接着層を形成する、硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物を提供することを目的とする。さらに、当該硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物またはその硬化物の、感圧接着層としての使用、電子材料または表示装置用部材としての使用およびそれらを備えた電子部品または表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題について鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明の目的の一つは、ヒドロシリル化反応を含む硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物であって、固形分中の白金系金属の含有量が0.1~50ppmの範囲であり、当該組成物を硬化させてなる厚み50μmの硬化層を備えた厚み2mmのポリメチルメタクリレートシートついて、JIS Z 0237に従う180°引き剥がし試験方法を用いて引張速度300mm/minにより測定された粘着力が0.02N/25mm以上であることを特徴とするものにより達成される。また、上記課題は、当該硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物またはその硬化物の、感圧接着層としての使用、電子材料または表示装置用部材としての使用およびそれらを備えた電子部品または表示装置により達成されうる。なお、固形分とは、硬化反応により硬化層を形成する成分であり、溶媒等の揮発性成分を含まない。
【0011】
すなわち、本発明は、
「[1]ヒドロシリル化反応を含む硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物であって、固形分中の白金系金属の含有量が0.1~50ppmの範囲であり、当該組成物を硬化させてなる厚み50μmの硬化層を備えた厚み2mmのポリメチルメタクリレートシートついて、JIS Z 0237に従う180°引き剥がし試験方法を用いて引張速度300mm/minにより測定された粘着力が0.02N/25mm以上であることを特徴とするもの。
[2][1]に記載の硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物であって、当該組成物を硬化させてなる厚み100μmの硬化層のJIS Z 8729に規定されるL*a*b*表色系で測定したb*値が0.15以下であるもの。
[3][1]または[2]に記載の硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物であって、当該組成物を硬化させてなる厚み100μmの硬化層を105℃-300時間エージングした場合、または365nmでの強度が12mW/cm2、254nmでの強度が3.5mW/cm2である水銀灯を用いた紫外光を75時間照射した場合に、JIS Z 8729に規定されるL*a*b*表色系で測定したb*値の変化(Δb*)が0.20以下であるもの。
[4][1]~[3]のいずれか1項に記載の硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物であって、固形分中の白金系金属の含有量が0.1~30ppmの範囲であり、当該組成物を硬化させてなる厚み100μmの硬化層が実質的に透明であり、そのJIS Z 8729に規定されるL*a*b*表色系で測定したb*値が0.10以下であり、かつ、当該硬化層を105℃-300時間エージングした場合、または、365nmでの強度が12mW/cm2、254nmでの強度が3.5mW/cm2である水銀灯を用いた紫外光を75時間照射した場合のb*値の変化(Δb*)が0.15以下であるもの。
[5][1]~[4]のいずれか1項に記載の硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物であって、以下の成分(A)~成分(C)を含有するもの。
(A)分子内に平均して1を超える数のアルケニル基を有する直鎖状または分岐鎖状のオルガノポリシロキサン、
(B)オルガノポリシロキサンレジン、及び
(C)分子内に少なくとも2個のSi-H結合を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン
[6][5]に記載の硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物であって、組成物中のアルケニル基に対する(C)成分中のケイ素原子結合水素原子(SiH)基のモル比が0.1~100の範囲であるもの。
[7][5]または[6]に記載の硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物であって、(A)成分の少なくとも一部が、(A1)25℃において100,000mPa・s以上の粘度を有するか、JIS K6249に規定される方法に準じて測定された可塑度が50~200の範囲にある生ゴム状のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンであり、
(B)成分の少なくとも一部が、(B1)R3SiO1/2単位(M単位)及びSiO4/2単位(Q単位)からなり、水酸基または加水分解性基を有してもよいレジンであり、式中、Rは一価有機基であり、Rの90モル%以上が炭素数1~6のアルキル基またはフェニル基であり、
(A1)成分中のアルケニル基中のビニル(CH2=CH)部分の含有量が0.005~0.400重量%の範囲であり、組成物中における(A)成分と(C)成分の和 100質量部に対して、(B)成分が1~500質量部の範囲にあることを特徴とするもの。
[8][1]~[7]のいずれか1項に記載の硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物であって、さらに、少なくとも1種類の(D)硬化遅延剤を含有するもの。
[9][8]に記載の硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物であって、組成物の調製直後から室温で8時間後における組成物の粘度が組成物の調製直後の粘度に対して1.5倍以内であり、かつ、80~200℃で硬化可能であるもの。
[10][1]~[9]のいずれか1項記載の硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物からなる、感圧接着剤組成物。
[11][1]~[9]のいずれか1項記載の硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物を硬化してなる硬化物。
[12][1]~[9]のいずれか1項記載の硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物を硬化してなる感圧接着剤層。
[13]フィルム状であり、かつ、実質的に透明である、[12]に記載の感圧接着剤層。
[14]フィルム状基材上に、[1]~[9]のいずれか1項記載の硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物を硬化してなる硬化層を備えた積層体。
[15]前記の硬化層が感圧接着剤層であり、フィルム状基材に当該感圧接着剤層に対する剥離層が設けられている、[14]に記載の積層体。
[16][1]~[9]のいずれか1項記載の硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物を硬化してなる、電子材料または表示装置用部材。
[17][16]に記載の電子材料または表示装置用部材を含む電子部品または表示装置。
[18][13]に記載のフィルム状かつ実質的に透明な感圧接着剤層を含む表示パネルまたはディスプレイ。
[19]一面に導電層が形成されている基材、及び、前記基材の導電層またはその反対側の面に付着されている[1]~[9]のいずれか1項記載の硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物を硬化してなる硬化層を含むタッチパネル。
[20]前記導電層が形成されている基材は、一面にITO層が形成されている樹脂フィルムまたはガラス板である[19]に記載のタッチパネル。」
である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物は、ヒドロシリル化反応による硬化性、粘着性および取扱作業性に優れ、かつ、高温下で長時間エージングした場合でも、紫外線等の高エネルギー線に長時間暴露した場合でも、変色や着色の問題を生じることなく、長期間にわたって高い透明性を維持できる感圧接着層を形成することができる。さらに、当該硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物またはその硬化物は、感圧接着層、電子材料または表示装置用部材として好適に使用することができ、それらを備えた電子部品または表示装置は、感圧接着層を効率よく形成することができるため、工業的生産が容易であり、かつ、透明な感圧接着層が加熱や高エネルギー線に曝された場合でも変色や着色の問題を生じにくいことから、表示機能の劣化や外観不良といった問題を生じにくいという利点を有する。特に、本発明にかかるルガノポリシロキサン組成物を硬化させてなる感圧接着層を備えてなる表示パネル、ディスプレイおよびタッチパネル等の表示デバイスを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[オルガノポリシロキサン組成物]
まず、本発明にかかる硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物について説明する。当該組成物は、ヒドロシリル化反応を含む硬化反応により感圧接着性の硬化層を形成し、かつ、高温下で長時間エージングした場合でも、紫外線等の高エネルギー線に長時間暴露した場合でも、変色や着色の問題を生じないものである。
【0014】
[白金系金属の含有量]
このようなオルガノポリシロキサン組成物は、ヒドロシリル化反応硬化性であって、固形分中の白金系金属の含有量が0.1~50ppmの範囲であることを第一の特徴とする。白金系金属はヒドロシリル化反応触媒の主成分であり、本発明の組成物の硬化を促進する成分であるが、同時に、当該白金系金属は、加熱や紫外線等の高エネルギー線に暴露した場合、硬化後の感圧接着層の変色や着色の原因となる。従って、白金系金属の含有量は、硬化性に悪影響を及ぼさない範囲で、可能な限り低減されていることが好ましい。ここで、白金系金属は、白金、ロジウム、パラジウム、ルテニウム、イリジウムからなるVIII族の金属元素であるが、実用上、ヒドロシリル化反応触媒の配位子を除いた白金金属の含有量が上記範囲であることが好ましい。なお、固形分とは、本発明にかかるオルガノポリシロキサン組成物を硬化反応させた場合に、硬化層を形成する成分(主として主剤、接着付与成分、架橋剤、触媒およびその他の不揮発性成分)であり、加熱硬化時に揮発する溶媒等の揮発性成分を含まない。
【0015】
一方で、本発明にかかるオルガノポリシロキサン組成物は、感圧接着性の硬化層を形成する必要があるため、オルガノポリシロキサンレジンおよびアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンであって高い重合度を有するものを主成分とすることが一般的である。これらの成分は、シリコーン系封止剤等に用いられるシロキサン重合度の低いビニルポリシロキサン等に比べて、分子内のアルケニル基の含有量が少なく、組成物中のアルケニル基の密度が低くなりやすいので、組成物中の白金系金属の含有量が少ないと、高温で長時間かけて硬化させる場合であっても、硬化不良が発生する場合がある。また、特に感圧接着剤層は、工業的には1分~10分以内に硬化させることが一般的であり、長時間の硬化プロセスを採用することが困難である場合が多い。
【0016】
好適には、本発明にかかるオルガノポリシロキサン組成物中の白金系金属の含有量は、45ppm以下,35ppm以下,30ppm以下,25ppm以下または20ppm以下であってよい。白金系金属の含有量が50ppmをこえると、硬化後、あるいは加熱や紫外線等の高エネルギー線に暴露した場合、特に、透明な感圧接着層の変色や着色の原因となる。一方、オルガノポリシロキサン組成物の硬化性の見地から、白金系金属の含有量は、0.1ppm以上であり、当該下限を下回ると硬化不良の原因となる場合がある。一方、工業的には透明な感圧接着層を短時間の硬化反応で形成させることが求められるため、ヒドロシリル化反応触媒や硬化遅延剤の種類を最適化する場合であっても、組成物中の白金系金属の含有量が0.5ppm以上,1.0ppm以上,2.0ppm以上,3.0ppm以上であってよい。
【0017】
工業的生産上の見地から、組成物中の白金系金属の含有量は、0.1~30ppm、1.0~30ppm、2.0~30、3.0~25ppmの範囲で設計することが、特に好ましい。前記下限未満では、工業上一般的な硬化温度(80~200℃)の範囲でも短時間では硬化できない場合があり、前期上限を超えると、長期的に透明な感圧接着層の変色や着色が起こる場合があり、表示装置等の透明感圧接着層にあっては、表示機能の劣化または低下の直接の原因となりうる。
【0018】
[感圧接着性および粘着力の範囲]
本発明のオルガノポリシロキサン組成物は、ヒドロシリル化反応により当該組成物を硬化させてなる硬化層が感圧接着性であることを特徴とする。具体的には、本発明のオルガノポリシロキサン組成物を硬化させてなる厚み50μmの硬化層を備えた厚み2mmのポリメチルメタクリレートシートついて、JIS Z 0237に従う180°引き剥がし試験方法を用いて引張速度300mm/minにより測定された粘着力が0.02N/25mm以上であることを特徴とする。なお、上記の厚み(50μm)は、本発明にかかる硬化層の粘着力を客観的に定義するための基準となる硬化層自体の厚みであり、本発明のオルガノポリシロキサン組成物は厚み50μmに限らず、任意の厚みの硬化層または感圧接着層として利用することができることは言うまでもない。
【0019】
厚み50μmの硬化層について、粘着力が前記下限未満では感圧接着層としての機能が不十分である。なお、後述する成分を用いることにより、上記の粘着力が0.02~35N/25mmの範囲にある感圧接着層が一般的に設計可能である。
【0020】
厚み50μmの硬化層について、特に、表示装置用の感圧接着層としての使用の見地から、上記条件での粘着力は1.0N/25mm以上であることが好ましく、2.0N/25mm以上であることがより好ましい。
【0021】
[硬化層の透明性、色調または着色・変色に関する特性]
上記の特徴、特に硬化層中の白金系金属の含有量が低減されていることから、本発明のオルガノポリシロキサン組成物を用いた硬化層は、硬化直後から実質的に透明かつ着色しておらず、かつ、高温や紫外線等の高エネルギー線に長時間暴露した場合であっても、その色調が大きく変化せず、透明性が損なわれないことを特徴とする。具体的には、本発明のオルガノポリシロキサン組成物を硬化させてなる厚み100μmの硬化層を、その硬化直後にJIS Z 8729に規定されるL*a*b*表色系で測定したb*値は、0.15以下であり、さらに0.10以下であることが好ましい。かかるb*値を有することは、硬化層が実質的に透明であり、かつ、黄色に着色していないことを意味するものであり、厚み100μmの硬化層のb*値が前記上限を超える場合、透明性または黄色等の着色の問題により、特に表示装置用の感圧接着層として適合しない場合がある。また、表示装置用の感圧接着層として、実用上、本発明のオルガノポリシロキサン組成物を硬化させてなる厚さ10~1000μmのフィルム状の硬化物は、目視で透明であることが必要であり、より客観的には、厚み100μmの硬化層からなる表示装置用の感圧接着層の波長450nmの光の透過率が空気の値を100%とした場合に80%以上であり、好適には90%以上であり、95%以上に設計することも容易である。
【0022】
本発明の硬化層は、高温や紫外線等の高エネルギー線に長時間暴露した場合であっても、その色調が大きく変化せず、特に、黄変の問題を生じないものである。具体的には、以下のいずれの評価を行った場合であっても、本発明のオルガノポリシロキサン組成物を硬化させてなる厚み100μmの硬化層について、評価の前後におけるJIS Z 8729に規定されるL*a*b*表色系で測定したb*値の変化(Δb*)が0.20以下であり、0.15以下であることが好ましい。なお、Δb*は数値変化の絶対値である。
(1)加熱エージング評価:硬化層を105℃-300時間エージングする
(2)高エネルギー線照射:硬化層に対し、365nmでの強度が12mW/cm2、254nmでの強度が3.5mW/cm2である水銀灯(例えば、ウシオ電機製Optical ModuleXなど)を用いた紫外光を、室温において試料上に75時間照射する
【0023】
[好適な組成]
本発明のオルガノポリシロキサン組成物は、上記のとおり、ヒドロシリル化反応により硬化して一定の粘着力を有する感圧接着層を形成することから、少なくとも、以下の(A)~(C)成分を含有することが好ましい。
(A)分子内に平均して1を超える数のアルケニル基を有する直鎖状または分岐鎖状のオルガノポリシロキサン、
(B)オルガノポリシロキサンレジン、及び
(C)分子内に少なくとも2個のSi-H結合を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン
また、当該組成物は、ヒドロシリル化反応触媒を含むので、取扱作業性の見地から、さらに、(D)硬化遅延剤を含有することが好ましく、本発明の目的に反しない範囲で、その他の添加剤を含むものであってよい。以下、各成分について説明する。
【0024】
(A)成分のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、この組成物の主剤(ベースポリマー)であり、1分子中に平均して1を超える数のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有し、好適なアルケニル基の個数は、1分子中に1.5個以上である。(A)成分のオルガノポリシロキサンのアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基などの炭素数2~10のアルケニル基が挙げられ、特にビニル基またはヘキセニル基であることが好ましい。(A)成分のアルケニル基の結合位置としては、例えば、分子鎖末端及び/又は分子鎖側鎖が挙げられる。なお、(A)成分は、単一の成分のみを含んでいてもよく、2種以上の異なった成分の混合物であってもよい。
【0025】
(A)成分のオルガノポリシロキサンにおいて、アルケニル基以外のケイ素原子に結合した有機基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;クロロメチル基、3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基などが挙げられ、特に、メチル基、フェニル基であることが好ましい。
【0026】
(A)成分の分子構造としては、例えば、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状(分岐鎖状)であることが好ましく、一部に環状、三次元網状を含んでいても良い。好適には、主鎖がジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖された、直鎖状または分岐鎖状のジオルガノポリシロキサンであることが好ましい。なお、分岐鎖状のオルガノポリシロキサンを与えるシロキサン単位は後述するT単位またはQ単位である。
【0027】
(A)成分の室温における性状はオイル状または生ゴム状であってもよく、(A)成分の粘度は25℃において50mPa・s以上、特に100mPa・s以上であることが好ましい。特に、硬化性シリコーン組成物が溶剤型である場合には、(A)成分の少なくとも一部は、(A1)25℃において100,000mPa・s以上の粘度を有するか、JIS K6249に規定される方法に準じて測定された可塑度(25℃、4.2gの球状試料に1kgfの荷重を3分間かけたときの値)が50~200の範囲にある、さらに好ましくは80~180の範囲にある生ゴム状のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンであることが好ましい。より低粘度の(A)成分であっても、利用可能であるが、本発明の技術的効果の見地から、(A)成分の50質量%以上が、(A1)成分である高重合度のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンであることが好ましく、75~100質量%が(A1)成分であることが特に好ましい。
【0028】
前記の(A1)成分中のアルケニル基の含有量は特に限定されるものではないが、本発明の技術的効果の見地から、(A1)成分中のアルケニル基中のビニル(CH2=CH)部分の含有量(以下、「ビニル含有量」という)が、0.005~0.400重量%の範囲が好ましく、0.005~0.300重量%の範囲が特に好ましい。
【0029】
(B)オルガノポリシロキサンレジンは、基材への粘着力を付与する粘着付与成分であり、三次元構造を有するオルガノポリシロキサンであれば特に限定されない。例えば、R2SiO2/2単位(D単位)及びRSiO3/2単位(T単位)(式中、Rは互いに独立した一価有機基を表す)からなり、水酸基または加水分解性基を有するもしくは有さないレジン、T単位単独からなり、水酸基または加水分解性基を有するもしくは有さないレジン、並びにR3SiO1/2単位(M単位)及びSiO4/2単位(Q単位)からなり、水酸基または加水分解性基を有するもしくは有さないレジンなどを挙げることができる。特に、(B1)R3SiO1/2単位(M単位)及びSiO4/2単位(Q単位)からなり、水酸基または加水分解性基を有するレジン(MQレジンとも呼ばれる)を使用することが好ましい。なお、水酸基または加水分解性基は、レジン中のT単位またはQ単位などのケイ素に直接結合しており、原料となるシラン由来またはシランが加水分解した結果、生じた基である。
【0030】
Rの一価有機基は、好ましくは炭素数1~10の一価炭化水素基であり、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数6~10のシクロアルキル基、ベンジル基、フェニルエチル基、及びフェニルプロピル基が例示される。特に、Rの90モル%以上が炭素数1~6のアルキル基またはフェニル基であることが好ましく、Rの95~100モル%がメチル基またはフェニル基であることが特に好ましい。
【0031】
(B)オルガノポリシロキサンレジンがR3SiO1/2単位(M単位)及びSiO4/2単位(Q単位)からなるレジンである場合、M単位対Q単位のモル比は、0.5~2.0であることが好ましい。このモル比が0.5未満である場合には基材への粘着力が低下することがあり、2.0より大きい場合には粘着層を構成する物質の凝集力が低下するからである。また、本発明の特性を損なわない範囲で、D単位及びQ、T単位を(B)成分中に含有させることも可能であり、(B)成分は、2種以上のオルガノポリシロキサンを併用することもできる。当該(B)オルガノポリシロキサンレジンは、水酸基または加水分解性基を有してもよく、水酸基または加水分解性基を有するレジン、水酸基または加水分解性基を有さないレジン、またはそれらの混合物であっても制限なく用いることができる。本オルガノポリシロキサンレジンが、水酸基または加水分解性基を有する場合は、通常0.1~5.0質量%の水酸基または加水分解性基を含む。
【0032】
(C)成分は、Si-H結合を分子中に2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンであり、本発明にかかるオルガノポリシロキサン組成物の架橋剤である。成分(C)の分子構造は限定されず、例えば、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状、分岐鎖状、環状、あるいはオルガノポリシロキサンレジンであることが挙げられ、好ましくは、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状、あるいはオルガノポリシロキサンレジンである。ケイ素原子結合水素原子の結合位置は特に限定されず、分子鎖末端,側鎖,これら両方が例示される。
ケイ素原子結合水素原子の含有量は0.1~2.0重量%であることが好ましく、0.5~1.7重量%であることがより好ましい。
【0033】
ケイ素原子に結合する有機基として、メチル基,エチル基,プロピル基,ブチル基,オクチル基等の炭素原子数1~8のアルキル基;フェニル基,トリル基などのアリール基;ベンジル基、フェネチル基などのアラルキル基;3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基が例示されるが、それらの合計数の50モル%以上が炭素原子数1~8のアルキル基またはフェニル基であることが好ましい。製造容易性および前記した好ましい成分(A)、成分(B)との相溶性の点で他の有機基はメチル基またはフェニル基が好ましい。
【0034】
本発明にかかる(C)成分がオルガノポリシロキサンレジンであるオルガノハイドロジェンポリシロキサンである場合は、一般式:R'3SiO1/2で表されるシロキサン単位と一般式:R'2HSiO1/2で表されるシロキサン単位と式:SiO4/2で表されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサン共重合体、一般式:R'2HSiO1/2で表されるシロキサン単位と式:SiO4/2で表されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサン共重合体、一般式:R'2HSiO1/2で表されるシロキサン単位と式:R”SiO3/2で表されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサン共重合体、一般式:R'HSiO2/2で表されるシロキサン単位と一般式:R'SiO3/2で表されるシロキサン単位または式:HSiO3/2で表されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサン共重合体、およびこれらのオルガノポリシロキサンの二種以上の混合物が例示される。なお、式中のR'は炭素数1~8のアルキル基、アリール基、アラルキル基、またはハロゲン化アルキル基であり、上記同様の基が例示される。
【0035】
(C)成分として、具体的には、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)メチルシラン,テトラ(ジメチルハイドロジェンシロキシ)シラン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン,両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体,両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体,環状メチルハイドロジェンオリゴシロキサン,環状メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体,分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、トリメトキシシランの加水分解縮合物、(CH3)2HSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH3)2HSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C6H5)SiO3/2単位とからなる共重合体、(CH3)2HSiO1/2単位とCH3SiO3/2単位とからなる共重合体、およびこれらの2種以上の混合物が例示される。
【0036】
直鎖状の場合は特に、分子構造式:RTMe2SiO (Me 2SiO)q (H Me SiO)r Si Me2RT (7)
(式中、Meはメチル基であり、RTはメチル基または水素原子であり、q,rは0.3≦r/(q+r)≦1、10≦ (q+r)≦200の関係を満たす数である。)で示されるメチルハイドロジェンポリシロキサンが好ましい。なお、上記(C)成分は異なるもの2種以上を併用してもよい。
【0037】
同様に、次のようなオルガノシロキサンも例示される。なお、式中、Me、Phは、それぞれ、メチル基、フェニル基を示し、mは1~100の整数であり、nは1~50の整数であり、b、c、d、eはそれぞれ正の数であり、ただし、一分子中のb、c、d、eの合計は1である。
HMe2SiO(Ph2SiO)mSiMe2H
HMePhSiO(Ph2SiO)mSiMePhH
HMePhSiO(Ph2SiO)m(MePhSiO)nSiMePhH
HMePhSiO(Ph2SiO)m(Me2SiO)nSiMePhH
(HMe2SiO1/2)b(PhSiO3/2)c
(HMePhSiO1/2)b(PhSiO3/2)c
(HMePhSiO1/2)b(HMe2SiO1/2)c(PhSiO3/2)d
(HMe2SiO1/2)b(Ph2SiO2/2)c(PhSiO3/2)d
(HMePhSiO1/2)b(Ph2SiO2/2)c(PhSiO3/2)d
(HMePhSiO1/2)b(HMe2SiO1/2)c(Ph2SiO2/2)d(PhSiO3/2)e
【0038】
(C)成分の使用量は、組成物中のアルケニル基に対する(C)成分中のケイ素原子結合水素原子(SiH)基のモル比が0.1~100の範囲であり、0.1~50の範囲、0.1~20の範囲であっても良い。SiH基の量が前記下限を下回ると、組成物の硬化不良の原因となる場合があり、SiH基の量が前記上限を超えると、反応せずに残存する硬化剤の量が多くなってしまい、硬化物が脆くなる等の硬化物性における悪影響やガスの発生等の問題が生じる場合がある。
【0039】
質量比については、本発明の技術的効果、特に感圧接着層としての利用の見地から、組成物中における(A)成分と(C)成分の和100質量部に対して、(B)成分1~500質量部であることが好ましく、30~400質量部であることがより好ましい。(B)成分の含有量が、前記下限未満である場合または前記上限を超える場合には、粘着力が不十分となる場合があるためである。
【0040】
[ヒドロシリル化反応触媒]
本発明にかかるオルガノポリシロキサン組成物は、ヒドロシリル化反応触媒を含む。ヒドロシリル化反応触媒としては、白金系触媒、ロジウム系触媒、パラジウム系触媒が例示され、本組成物の硬化を著しく促進できることから白金系触媒が好ましい。この白金系触媒としては、白金微粉末、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、白金-アルケニルシロキサン錯体、白金-オレフィン錯体、白金-カルボニル錯体が例示され、特に、白金-アルケニルシロキサン錯体が好ましい。このアルケニルシロキサンとしては、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン、これらのアルケニルシロキサンのメチル基の一部をニトリル類、アミド類、ジオキソラン類、及びスルホラン類からなる群から選択される基、エチル基、フェニル基等で置換したアルケニルシロキサン、これらのアルケニルシロキサンのビニル基をアリル基、ヘキセニル基等で置換したアルケニルシロキサンが例示される。特に、この白金-アルケニルシロキサン錯体の安定性が良好であることから、1,3-ジビニル-1,1,3,3-トテラメチルジシロキサンであることが好ましい。なお、ヒドロシリル化反応を促進する触媒としては、鉄、ルテニウム、鉄/コバルトなどの非白金系金属触媒を用いてもよい。
【0041】
本発明において、ヒドロシリル化反応触媒の含有量は、組成物中の固形分の合計量に対し、白金系金属量が0.1~50ppmの範囲となる範囲であり、その好適な範囲は上記の[白金系金属の含有量]において説明したとおりである。一般にシリコーン系感圧接着剤にあっては、上記のとおり、感圧接着剤層としての機能を確保するために、高重合度のアルケニル基含有オルガノポリシロキサン、反応性の低いMQレジンの使用が組成上好ましいため、白金金属量を上記の上限以下に設計することは硬化性の見地から行われないことが多いが、(D)硬化遅延剤の利用・最適化等の組成設計により、白金量を低減しても感圧接着剤層としての機能を十分に備えた硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物が提供可能である。
【0042】
(D)成分は硬化遅延剤であり、組成物中のアルケニル基と(C)成分中のSiH基の架橋反応を抑制して、常温での可使時間を延長し、保存安定性を向上するために配合するものである。したがって、実用上は、本発明の硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物にとって、必須に近い成分である。
【0043】
具体的には、(D)成分はアセチレン系化合物、エンイン化合物、有機窒素化合物、有機燐化合物、オキシム化合物が例示される。具体的には、3-メチル-1-ブチン-3-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、3-メチル-1-ペンチン-3-オール、1-エチニル-1-シクロヘキサノール、フェニルブチノール等のアルキンアルコール;3-メチル-3-ペンテン-1-イン、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-イン等のエンイン化合物;1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラヘキセニルシクロテトラシロキサン等のメチルアルケニルシクロシロキサン;ベンゾトリアゾールが例示される。
【0044】
組成物の硬化挙動の見地から、本発明の硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物は、組成物の調製後室温で8時間後に粘度の増大が1.5倍以内であり、80~200℃で硬化可能であることが好ましい。増粘が抑制されていることは、取扱作業性、ポットライフ、硬化後の特性の見地から重要であり、白金系金属量の含有量が低くとも、一定以上の高温(80~200℃)で硬化させることで硬化性を確保することができるためである。なお、このような組成物は上記の各成分およびヒドロシリル化触媒と(D)成分の好適な組み合わせおよび配合量を選択することで、実現可能である。
【0045】
本発明にかかるオルガノポリシロキサン組成物は、上記の好適な(A)成分および(B)成分に加えて、溶媒として有機溶剤を含んでもよい。有機溶剤は、塗工作業性などを考慮してその種類及び配合量を調整する。有機溶剤としては、例えばトルエン、キシレン、ベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶剤、ヘプタン、ヘキサン、オクタン、イソパラフィンなどの脂肪族炭化水素系溶剤、酢酸エチル、酢酸イソブチルなどのエステル系溶剤、ジイソプロプルエーテル、1,4-ジオキサンなどのエーテル系溶剤、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、塩化メチレンなどの塩素化脂肪族炭化水素系溶剤、溶剤揮発油などが挙げられ、シート状基材への濡れ性などに応じて2種以上を組み合わせても良い。有機溶剤配合量は、(A)成分~(C)成分の混合物をシート状基材表面に均一に塗工できるような量がよく、例えば、(A)成分と(B)成分と(C)成分の合計100質量部当たり、5~3000質量部である。
【0046】
本発明にかかるオルガノポリシロキサン組成物は、本発明の技術的効果を損なわない範囲で、任意で、上記成分以外の成分を含むことができる。例えば、接着促進剤;ポリジメチルシロキサンまたはポリジメチルジフェニルシロキサンなどの非反応性のオルガノポリシロキサン;フェノール系、キノン系、アミン系、リン系、ホスファイト系、イオウ系、またはチオエーテル系などの酸化防止剤;トリアゾール系またはベンゾフェノン系などの光安定剤;リン酸エステル系、ハロゲン系、リン系、またはアンチモン系などの難燃剤;カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、または非イオン系界面活性剤などからなる1種類以上の帯電防止剤などを含むことができる。なお、これらの成分のほか、顔料、染料、無機微粒子などを任意で配合することもできるが、透明性等の光学的特性を損なったり、感圧接着層の着色の原因となる任意成分は配合しないことが望ましい。
【0047】
本発明にかかるオルガノポリシロキサン組成物の調製方法は特に限定されず、それぞれの成分を均質に混合することによって行われる。必要に応じて溶剤を加えてもよく、公知の攪拌機または混練機を用いて、0~200℃の温度で混合して調製してもよい。
【0048】
本発明のオルガノポリシロキサン組成物は、基材上に塗工することによって塗膜を形成し、80~200℃の温度条件下、好適には、90~190℃の温度条件下で加熱することによって硬化物とする。塗工方法としては、グラビアコート、オフセットコート、オフセットグラビア、ロールコート、リバースロールコート、エアナイフコート、カーテンコート、及びコンマコートが例示される。
【0049】
[感圧接着剤層としての使用]
本発明の硬化物は、特に、実質的に透明な感圧接着剤層として使用することができる。ここで、実質的に透明とは、厚さ10~1000μmのフィルム状の硬化物を形成させた場合、目視で透明であることを意味するものであり、概ね、厚さ100μmのフィルム状の硬化物について、波長450nmの光の透過率が空気の値を100%とした場合に80%以上であり、好適には90%以上であり、95%以上に設計することも容易である。また、被着体との密着性を向上させるために、感圧接着剤層または基材の表面に対してプライマー処理、コロナ処理、エッチング処理、プラズマ処理等の表面処理を行ってもよい。
【0050】
本発明に係る硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、剥離ライナーに塗工した後、上記の温度条件下で加熱することにより硬化させ、剥離ライナーを剥がしてフィルム状基材、テープ状基材、またはシート状基材(以下、「フィルム状基材」という)と貼り合せたり、フィルム状基材に塗工した後、上記の温度条件下で加熱することにより硬化させ、前記基材の表面に感圧接着剤層を形成することができる。これらのフィルム状基材上に本発明に係るオルガノポリシロキサン組成物を硬化してなる硬化層、特にフィルム状の感圧接着剤層を備えた積層体は、粘着テープ、絆創膏、低温支持体、転写フィルム、ラベル、エンブレム及び装飾又は説明用の標示に使用してもよい。更に、本発明に係るオルガノポリシロキサン組成物を硬化してなる硬化層は、自動車部品、玩具、電子回路、又はキーボードの組み立てに使用してもよい。あるいは、本発明に係るオルガノポリシロキサン組成物を硬化してなる硬化層、特にフィルム状の感圧接着剤層は、積層タッチスクリーン又はフラットパネルディスプレイの構築及び利用に使用してもよい。
【0051】
基材の種類として、板紙,ダンボール紙,クレーコート紙,ポリオレフィンラミネート紙,特にはポリエチレンラミネート紙,合成樹脂フィルム・シート,天然繊維布,合成繊維布,人工皮革布,金属箔が例示される。特に、合成樹脂フィルム・シートが好ましく、合成樹脂として、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、シクロポリオレフィン、ナイロンが例示される。特に耐熱性が要求される場合には、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンナフタレート(PEN)、液晶ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルスルフォン等の耐熱性合成樹脂のフィルムが好適である。一方、表示デバイス等視認性が求められる用途においては、透明基材、具体的にはポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、PEN等の透明材料が好適である。
【0052】
上記基材はフィルム状またはシート状であることが好ましい。その厚さは特に制限されず、用途に応じて所望の厚さで設計することができる。さらに、支持フィルムと感圧接着層の密着性を向上させるために、プライマー処理、コロナ処理、エッチング処理、プラズマ処理された支持フィルムを用いてもよい。また、フィルム状基材の感圧接着層面と反対面には、傷つき防止、汚れ防止、指紋付着防止、防眩、反射防止、帯電防止などの処理などの表面処理されたものであってもよい。
【0053】
基材への塗工方法としては、グラビアコート、オフセットコート、オフセットグラビア、オフセット転写ロールコーター等を用いたロールコート、リバースロールコート、エアナイフコート、カーテンフローコーター等を用いたカーテンコート、コンマコート、マイヤーバー、その他公知の硬化層を形成する目的で使用される方法が制限なく使用できる。
【0054】
塗工量は表示装置等の用途に応じて所望の厚さで設計することができ、特に透明な感圧接着層として用いられる場合には、硬化したあとの感圧接着層の厚みとして1~1,000μmであり、5~900μmであってよく、10~800μmであってよいが、これらに限定されるものではない。
【0055】
本発明のオルガノポリシロキサン組成物を硬化してなる硬化層が感圧接着剤層、特に、実質的に透明な感圧接着剤フィルムである場合、当該硬化層は、剥離コーティング能を有する剥離層を備えたフィルム基材上に、剥離可能な状態で粘着した積層体フィルムとして取り扱うことが好ましい。
【0056】
本発明のオルガノポリシロキサン組成物を硬化してなる硬化物は、電子材料、表示装置用部材またはトランスデューサー用部材(センサ、スピーカー、アクチュエーター、およびジェネレーター用を含む)として有用であり、当該硬化物の好適な用途は、電子部品または表示装置の部材である。特に、フィルム形状の硬化物、特に実質的に透明な感圧接着剤フィルムは、表示パネルまたはディスプレイ用の部材として好適であり、特に、画面を指先等で接触することにより機器、特に電子機器を操作可能な所謂タッチパネル用途に特に有用である。
【0057】
特に、本発明のオルガノポリシロキサン組成物を硬化してなる感圧接着層は、透明性に優れ、かつ、高温または高エネルギー線に長時間曝されても変色ないし着色の問題を生じないため、高温耐久性や耐候性にすぐれた表示装置または表示デバイスを設計可能であり、長期間にわたって画面表示機能の低下を抑制し、視認性にすぐれた表示装置または表示デバイスを実現可能である。
【0058】
[表示パネルまたはディスプレイ用の部材]
本発明のオルガノポリシロキサン組成物を硬化してなる硬化物は、積層タッチスクリーン又はフラットパネルディスプレイの構築及び利用に使用することができ、その具体的な使用方法は、感圧接着剤層(特に、シリコーンPSA)の公知の使用方法を特に制限なく用いることができる。
【0059】
例えば、本発明のオルガノポリシロキサン組成物を硬化してなる硬化物は、前記の特表2014-522436号(特許文献1)または特表2013-512326(特許文献2)等で開示された光学的に透明なシリコーン系感圧接着剤フィルムあるいは粘着剤層として、タッチパネル等の表示デバイスの製造に用いることができる。具体的には、本発明のオルガノポリシロキサン組成物を硬化してなる硬化物は、特許文献2に記載の粘着層または粘着フィルムとして、特に制限なく用いることができる。
【0060】
一例として、本発明にかかるタッチパネルは、一面に導電層が形成されている伝導性プラスチックフィルム等の基材、及び当該導電層が形成された側またはその反対側の面に付着されている本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物を硬化してなる硬化層を含むタッチパネルであってよい。当該基材は、シート状またはフィルム状基材であることが好ましく樹脂フィルムまたはガラス板が例示される。また、前記伝導性プラスチックフィルムは、一面にITO層が形成されている樹脂フィルムまたはガラス板、特に、ポリエチレンテレフタレートフィルムであってよい。これらは、前記の特表2013-512326(特許文献2)等に開示されている。
【0061】
その他、本発明のオルガノポリシロキサン組成物を硬化してなる硬化物は、タッチパネル等の表示デバイスの製造に用いる偏光板用接着フィルムとして用いてもよく、特開2013-065009号公報に記載のタッチパネルとディスプレイモジュール間の貼合に用いる感圧接着層として用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物、それを硬化してなる硬化物の用途としては、上記に開示した他に何ら制約はなく、当該組成物を硬化してなる硬化物を備えてなる感圧接着フィルムはテレビ受像機、コンピューター用モニター、携帯情報端末用モニター、監視用モニター、ビデオカメラ、デジタルカメラ、携帯電話、携帯情報端末、自動車などの計器盤用ディスプレイ、種々の設備・装置・機器の計器盤用ディスプレイ、自動券売機、現金自動預け払い機、車載用表示装置、車載用透過型スクリーンなど、文字や記号、画像を表示するための種々の表示装置に利用可能である。このような表示装置の表面形状は、平面ではなく曲面状ないし湾曲した形状であってもよく、各種フラットパネルディスプレイ(FPD)のほか、自動車(電気自動車含む)や航空機等に利用される曲面ディスプレイまたは曲面透過型スクリーンが例示される。さらに、これらの表示装置は、スクリーンやディスプレイ上に機能またはプログラムを実行するためのアイコンや、電子メール・プログラム等の通知表示、カーナビゲーション装置、オーディオ装置、空調装置などの各種装置の操作ボタンを表示することができ、これらのアイコンや通知表示、操作ボタンに指を触れることで、入力操作が可能となるタッチパネル機能が付加されていてもよい。装置としては、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、表面電解ディスプレイ(SED)、電界放出型ディスプレイ(FED)などの表示装置や、これらを利用したタッチパネルに応用が可能である。
【0063】
本発明の硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物を硬化してなる感圧接着層は、粘着性および取扱作業性に優れ、かつ、高温下で長時間エージングした場合でも、紫外線等の高エネルギー線に長時間暴露した場合でも、変色や着色の問題を生じることなく、長期間にわたって高い透明性を維持できることから、長期間にわたって表示内容の視認性および操作性が良好な車両用表示装置、特に、曲面スクリーンまたは曲面ディスプレイを備え、任意でタッチパネル機能を有する車両用表示装置に好適に利用できる。例えば、特開2017-047767号公報、特開2014-182335号公報、特開2014-063064号公報、特開2013-233852号公報等には曲面状の表示面を備えた車両用表示装置が開示されているが、本発明にかかる感圧接着層は、これらの文献中の透明性が求められる接着層または粘着層の一部又は全部として好適に適用乃至置き換えが可能である。さらに、他の公知の曲面状の表示装置についても、現在使用されている透明性が求められる接着層または粘着層を置き換えて利用できることは言うまでもなく、本発明の感圧接着剤の利点をさらに活用するために表示装置の設計や部材の厚みを公知の手法により調整することが好ましい。
【0064】
なお、本発明の感圧接着層を備えた透明なフィルム状基材を、これらの、ディスプレイ表面の傷つき防止、汚れ防止、指紋付着防止、帯電防止、反射防止、のぞき見防止などの目的で使用してもよい。
【実施例】
【0065】
以下に、本発明の実施例及び比較例を記す。なお、各実施例・比較例において「硬化させた」とは、各々の硬化条件により、各組成物が完全に硬化したことを意味するものである。
【0066】
(硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物の調製)
表1に示す各成分を用いて、各実施例及び比較例1、比較例2に示す硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物を調製した。
【0067】
(粘着力測定)
各組成物を、PETフィルム(株式会社東レ製、製品名ルミラー(登録商標)#50-T60、厚さ50μm)に硬化後の厚みが50μmとなるように塗工し、各実施例等に示す温度(120、150、160または180℃)で2分間硬化させた。幅20mmに切断し、粘着層面をPMMA板(パルテック製、アクリライトL001,50x120x2mm)にローラーを用いて貼り合せて試験片とした。オリエンテック社製RTC-1210引っ張り試験機を用いてJIS Z0237に準じて180°引き剥がし試験方法を用いて引張速度300mm/minにて粘着力(20mm幅での測定を表示単位N/25mmに換算)を測定した。各組成物につき3回、同様の粘着力測定試験を行い、その平均値を表3中に示した。
(ポットライフ)
各組成物を、室温(25℃)で8時間静置し、8時間後の組成物の粘度が、初期値の1.5倍を超えない場合は「○」と評価した。
【0068】
(加熱エージング)
各組成物を、剥離ライナー(ダウコーニング社製、Q2-7785剥離コーティングを厚さ50μmのPETフィルムに塗装したもの)に硬化後の厚みが100μmとなるように塗工し、室温で3分間放置した後、各実施例等に示す温度(120、150、160または180℃)で3分間硬化させた。その後、ガラス板(松浪硝子製、76x52x1mm、以下同じ)に貼り合せ、ガラス板からはみ出た部分を切り落とし、加熱エージング用のサンプルを作成した。
同サンプルは、85℃/相対湿度85%または105℃のオーブン中で300時間の加熱エージングを行った。
【0069】
(紫外線照射)
上記の加熱エージングと同様の方法でガラス板に貼り合わせたサンプルを作製した。その後、剥離ライナーを剥がし、ウシオ電機製Optical ModuleXを用いて、ガラス板上の粘着層に直接紫外線を75時間照射した。
なお、紫外線強度は、254nmにおいて3.5mW/cm2、365nmにおいて12mW/cm2、405nmにおいて147mW/cm2であり、室温で上記の紫外線照射を行ったサンプルの温度は35℃であった。
【0070】
(光学測定:各サンプルのb*値の測定)
上記の加熱エージング用に作成したのと同様の方法で各サンプルをガラス板に貼り合せ、剥離ライナーを剥がして、分光測色計(コニカミノルタ製、型番CM-5)を用い、JIS Z8729に準じて、CIE 1976 L*a*b* D65、視野角2°の試験法により、同様のガラス板をリファレンスとして各サンプルのb*値を測定した。
なお、加熱エージング後のサンプルは、加熱エージングを行った後、上記と同様に剥離ライナーを剥がしてb*値を測定した。
また、紫外線照射した後のサンプルは、既に剥離ライナーを剥がしてあるため、そのままb*値を測定した。
上記の方法により測定された各サンプル(硬化直後、加熱エージング後、および紫外線照射後)のb*値を表2中に示す。
【0071】
表1に硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物の材料を示す。なお、各成分の粘度または可塑度は以下の方法により、室温において測定した。
[粘度]
粘度(mPa・s)は、JIS K7117-1に準拠した回転粘度計を使用して測定した値であり、動粘度(mm2/s)は、JIS Z8803に準拠したウベローデ型粘度計によって測定した値である。
[可塑度]
可塑度は、JIS K 6249に規定される方法に準じて測定された値(25℃、4.2gの球状試料に1kgfの荷重を3分間かけたときの厚さを1/100mmまで読み、この数値を100倍したもの)で示した。
【0072】
表1 硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物の成分
【表1】
注)表1中の各%は、重量%を表す。
【0073】
(実施例1)
成分A-bのビニル官能性ポリジメチルシロキサン36.7重量部、成分BのMQシリコーン樹脂100重量部、成分C-aの両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン0.287重量部、成分D-aの硬化遅延剤0.0033重量部、成分Eの環状シロキサン0.102重量部、トルエン62.0重量部を室温でよく混合し、混合物に成分F-bの白金系ヒドロシリル化反応触媒0.0106重量部を加えて硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物とした。白金金属の固形分に対する含量は4.24ppmであった。
当該組成物は、上記の(粘着力測定)および(加熱エージング)に示す方法により、硬化温度160℃で硬化させ、その評価結果等を表2および表3に示した。
【0074】
(実施例2)
成分A-bのビニル官能性ポリジメチルシロキサン36.7重量部、成分BのMQシリコーン樹脂100重量部、成分C―bの両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン0.466重量部、成分D-aの硬化遅延剤0.0033重量部、成分Eの環状シロキサン0.102重量部、トルエン62.0重量部を室温でよく混合し、混合物に成分F-bの白金系ヒドロシリル化反応触媒0.0106重量部を加えて硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物とした。白金金属の固形分に対する含量は4.23ppmであった。
当該組成物は、上記の(粘着力測定)および(加熱エージング)に示す方法により、硬化温度120℃で硬化させ、その評価結果等を表2および表3に示した。
【0075】
(実施例3)
成分A-bのビニル官能性ポリジメチルシロキサン20.3重量部、成分BのMQシリコーン樹脂60.3重量部、成分C-aの両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン0.20重量部、成分D-bの硬化遅延剤0.050重量部、トルエン19.2重量部を室温でよく混合し、混合物に成分F-aの白金系ヒドロシリル化反応触媒0.20重量部を加えて硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物とした。白金金属の固形分に対する含量は22ppmであった。
当該組成物は、上記の(粘着力測定)および(加熱エージング)に示す方法により、硬化温度120℃で硬化させ、その評価結果等を表2および表3に示した。
【0076】
(実施例4)
実施例1の組成物を、上記の(粘着力測定)および(加熱エージング)に示す方法により、硬化温度150℃で硬化させ、その評価結果等を表2および表3に示した。
【0077】
(比較例1)
成分A-aのビニル官能性ポリジメチルシロキサン21.6重量部、成分BのMQシリコーン樹脂63.2重量部、成分C-aの両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン0.20重量部、成分D-cの硬化遅延剤0.20重量部、トルエン14.9重量部を室温でよく混合し、混合物に成分F-aの白金系ヒドロシリル化反応触媒0.90重量部を加えて硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物とした。白金金属の固形分に対する含量は100ppmであった。
当該組成物は、上記の(粘着力測定)および(加熱エージング)に示す方法により、硬化温度120℃で硬化させ、その評価結果等を表2および表3に示した。
【0078】
(比較例2)
成分A-aのビニル官能性ポリジメチルシロキサン21.6重量部、成分BのMQシリコーン樹脂63.2重量部、成分C-aの両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン0.20重量部、成分D-cの硬化遅延剤0.20重量部、トルエン14.9重量部を室温でよく混合し、混合物に成分F-aの白金系ヒドロシリル化反応触媒0.90重量部を加えて硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物とした。白金金属の固形分に対する含量は100ppmであった。
当該組成物は、上記の(加熱エージング)に示す方法により、硬化温度180℃で硬化させ、その評価結果等を表2および表3に示した。
【0079】
(比較例3)
厚さ100μmの硬化された粘着剤フィルムとして販売されているスリーエム社製8146-4 Optically Clear Adhesiveを比較例3として用いた。光学測定は、軽剥離側の剥離ライナーを剥がし、上記のガラス板に貼り合せ、重剥離側の剥離ライナーを剥がして、同じ分光測色計にてb*値を評価した。
【0080】
表2 初期および加熱エージング/紫外線照射後のb*値(膜厚100μmの硬化層について)
【表2】
【0081】
表3 ポットライフと硬化性(膜厚50μmの硬化層について粘着力測定)
【表3】
【0082】
実施例にかかる各組成物およびそれを用いた硬化層は、表3に示す通り、比較例1に示すシリコーン粘着剤と同等の十分な粘着力を有し、かつ、室温で長時間保管しても増粘等の問題が生じず、十分なポットライフを有するものである。さらに、これらの実施例にかかる組成物を用いた硬化層は、表2に示すとおり、硬化直後、加熱エージング後、紫外線照射後のいずれにおいても、b*値が低く、透明性に優れ、かつ、硬化層のb*値が大きく変化しないため、実質的に着色乃至変色を生じないという特長を有する。一方、比較例1~3に明示した各粘着剤は、硬化直後のb*値が大きい、あるいは加熱エージング後または紫外線照射後において硬化層のb*値が大きく変化し、変色乃至着色の問題を生じるものである。