(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-10
(45)【発行日】2022-08-19
(54)【発明の名称】携帯型画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B41J 3/28 20060101AFI20220812BHJP
B41J 29/06 20060101ALI20220812BHJP
B41J 29/13 20060101ALI20220812BHJP
【FI】
B41J3/28
B41J29/06
B41J29/13
(21)【出願番号】P 2018169113
(22)【出願日】2018-09-10
【審査請求日】2021-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】西岡 国彦
(72)【発明者】
【氏名】藤井 智也
(72)【発明者】
【氏名】安藤 貴之
(72)【発明者】
【氏名】奈良井 聡
(72)【発明者】
【氏名】石田 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】平田 宗和
(72)【発明者】
【氏名】小山内 洋平
(72)【発明者】
【氏名】大田 真志
【審査官】井出 元晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-047647(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1822882(KR,B1)
【文献】特開2003-103873(JP,A)
【文献】特開2016-087880(JP,A)
【文献】国際公開第2018/051768(WO,A1)
【文献】特開2001-225512(JP,A)
【文献】特開平10-100442(JP,A)
【文献】特開平05-116380(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0067634(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0170900(US,A1)
【文献】特開2009-087975(JP,A)
【文献】特開平11-254716(JP,A)
【文献】特開2002-254714(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 3/28
B41J 29/06
B41J 29/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯型画像形成装置であって、
装置本体に対して着脱可能であって、前記装置本体に対する着脱によって当該携帯型画像形成装置の使用形態を異ならせる着脱部材と、
前記着脱部材を磁力によって前記装置本体に保持させる磁力保持手段とを有
し、
前記磁力保持手段は、前記着脱部材に設けられる磁石と、前記装置本体に設けられる磁性体である締結部材とで構成されることを特徴とする携帯型画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の携帯型画像形成装置において、
前記使用形態は、記録材が載置された台の表面又は記録材の表面にローラを接触させて転動させながら走査するローラ接触形態と、該表面にローラを接触させないローラ非接触形態とを含むことを特徴とする携帯型画像形成装置。
【請求項3】
請求項1に記載の携帯型画像形成装置において、
前記着脱部材は、記録材への画像形成時の前記装置本体における該記録材との対向面に対して着脱されることを特徴とする携帯型画像形成装置。
【請求項4】
請求項3に記載の携帯型画像形成装置において、
前記締結部材の一部は前記対向面に露出しており、
前記着脱部材の前記装置本体への装着時に、前記締結部材の露出している部分と対向する位置に前記磁石が設けられていることを特徴とする携帯型画像形成装置。
【請求項5】
請求項
1乃至4のいずれか1項に記載の携帯型画像形成装置において、
前記着脱部材が装着された前記装置本体に対して該着脱部材を挟んで装着可能な装着部材を有し、
前記装着部材は、前記装置本体への装着時に前記着脱部材に設けられた前記磁石と対向する位置に磁性体を有することを特徴とする携帯型画像形成装置。
【請求項6】
請求項5に記載の携帯型画像形成装置において、
前記装着部材は、前記装置本体に装着された前記着脱部材を収容した状態で前記装置本体に装着されるものであることを特徴とする携帯型画像形成装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の携帯型画像形成装置において、
前記装着部材は、記録材への画像形成時の前記装置本体における該記録材との対向面の少なくとも一部を覆うものであることを特徴とする携帯型画像形成装置。
【請求項8】
請求項5乃至7のいずれか1項に記載の携帯型画像形成装置において、
前記装着部材が前記装置本体に装着されているときの該装着部材の前記磁性体と前記磁石との磁力は、前記着脱部材が前記装置本体に装着されているときの該装置本体の前記磁性体と前記磁石との磁力よりも小さいことを特徴とする携帯型画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯型画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯型画像形成装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、装置本体を走査方向へ手動走査する際にガイドする第一ガイドローラと、装置本体を走査方向に対して直交する方向へ手動走査する際にガイドする第二ガイドローラとが設けられたハンディタイプの記録装置(携帯型画像形成装置)が開示されている。この記録装置は、画像形成の際、第一ガイドローラを転動させながら走査方向へ手動走査することで、装置本体の直進走行性が確保される。また、一行目の記録を行った後に続けて二行目の記録を行う場合、切替手段により、第二ガイドローラを第一ガイドローラよりも下方へ突出させる。これにより、走査方向に対して直交する方向へ装置本体を移動させる改行操作時の直進走行性が確保され、改行操作が正確に行われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、前記特許文献1に記載の記録装置のように、第一ガイドローラを用いる使用形態と第二ガイドローラを用いる使用形態とを切り替える構成においては、改行操作を必要としない場合(一行だけ画像形成を行う場合等)、第二ガイドローラを必要としない。そのため、このような場合には、不必要な第二ガイドローラが設けられている分だけ、記録装置の操作性や取り扱い性が損なわれるといった課題が生じる。
【0005】
なお、この課題は、前記の使用形態を切り替える態様に限らず、使用態様を切り替えて使用可能な携帯型画像形成装置であって、いずれかの使用態様時には必要とされない部材が装置本体に設けられた携帯型画像形成装置であれば、同様に生じ得る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、携帯型画像形成装置であって、装置本体に対して着脱可能であって、前記装置本体に対する着脱によって当該携帯型画像形成装置の使用形態を異ならせる着脱部材と、前記着脱部材を磁力によって前記装置本体に保持させる磁力保持手段とを有し、前記磁力保持手段は、前記着脱部材に設けられる磁石と、前記装置本体に設けられる磁性体である締結部材とで構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、着脱部材を用いない使用態様時における携帯型画像形成装置の操作性や取り扱い性が着脱部材によって損なわれるのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係るHMPを斜め上方から見た外観斜視図。
【
図2】HMP本体から、カバー部材を取り外した状態を示す外観斜視図。
【
図3】スペーサー部材を離脱させた状態のHMP本体を斜め下方から見た外観斜視図。
【
図4】HMP本体で記録材上に画像形成する様子を示す説明図。
【
図5】HMP本体の電気回路の一部を示すブロック図。
【
図6】ローラユニットを取り外した状態のHMP本体を示す底面図。
【
図7】左側ローラユニットを取り付けた状態のHMP本体の下部ユニットを示す部分断面図。
【
図8】スペーサー部材を装着せず、記録材を載置された台の表面又は記録材の表面にローラを接触させて転動させながら走査するローラ接触形態のHMP本体の右側面図。
【
図9】スペーサー部材を装着して、記録材を載置された台の表面又は記録材の表面にローラを接触させないローラ非接触形態のHMP本体の右側面図。
【
図10】スペーサー部材を装着した状態のHMP本体を斜め下方から見た外観斜視図。
【
図11】ローラ非接触形態のHMP本体が湾曲軌道に沿って移動操作されている様子を示す説明図。
【
図12】右壁面部を除去してカバー部材の内部が見える状態にした斜視図。
【
図13】右壁面部を除去してカバー部材の内部が見える状態にし、更に底面部の上面に装着されている底板を取り外して、スライドロック部材を露出させた状態の斜視図。
【
図15】(a)は、保持状態において、カバー部材の底面部上にHMP本体を装着せずにスペーサー部材だけを載せた状態を示す上面図。(b)は、同図(a)中のA-A断面を示す断面図。
【
図16】(a)は、非保持状態において、カバー部材の底面部上にHMP本体を装着せずにスペーサー部材だけを載せた状態を示す上面図。(b)は、同図(a)中のA’-A’断面を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を、携帯型画像形成装置であるハンディモバイル型インクジェットプリンタ(以下、HMPという)に適用した一実施形態について説明する。
まず、実施形態に係るHMPの装置本体の基本的な構成について説明する。
【0010】
図1は、実施形態に係るHMP10を斜め上方から見た外観斜視図である。
図2は、HMP10の装置本体であるHMP本体1から、カバー部材8を取り外した状態を示す外観斜視図である。
【0011】
本実施形態に係るHMP10は、HMP本体1と、HMP本体1に対して着脱可能な着脱部材であるスペーサー部材4と、スペーサー部材4が装着されたHMP本体1に対してスペーサー部材4を挟んで装着可能な装着部材であるカバー部材8とから構成されている。カバー部材8は、ABS樹脂などの樹脂製であり、その内壁面上に凹部81が形成されている。HMP本体1にカバー部材8が取り付けられると、HMP本体1に設けられる2つの突起部16(1つは不図示)が、カバー部材8に設けられる2つの凹部81(1つは不図示)に、それぞれスナップフィットによって引っ掛かる。これにより、HMP本体1にカバー部材8が取り付けられた状態が保持される。HMP本体1からカバー部材8を取り外す場合、ユーザーはHMP本体1をカバー部材8から引き抜くことで、スナップフィットにより引っ掛かっていた突起部16が凹部81から外れ、HMP本体1からカバー部材8を取り外すことができる。
【0012】
図3は、スペーサー部材4をHMP本体1から離脱させた状態のHMP本体1とスペーサー部材4を斜め下方から見た外観斜視図である。
同図に示されるHMP本体1は、上部ユニット2と下部ユニット3とから主に構成されている。HMP本体1は、全体的におおよそ直方体形状をなしており、その走査方向(=印字方向:図中矢印X方向)の長さは、ユーザーが掌で掴める程度である。
【0013】
HMP本体1の筐体は、後述するインクジェットヘッドの記録部(画像形成部)を用紙などの記録材に対面させる対向面である記録面30、これの反対面である上面31、記録面30における走査方向(図中矢印X方向)に対して直交する方向(図中矢印Y方向、以下「走査直交方向」という。)に延在する左側面32などを有している。また、走査直交方向に延在する右側面33、走査方向(X方向)に延在する背面34、走査方向に延在する正面35なども有している。HMP本体1は、通常、記録面30を鉛直方向下方に向けつつ、上面31を鉛直方向上方に向ける姿勢で使用される。
【0014】
上面31には、プリントボタン14と、電源ボタン15とが設けられている。また、上部ユニット2の左側面32側には、USB接続口6が設けられている。USB接続口6はUSBケーブルを接続するためのものである。HMP本体1の中に装着された充電式のバッテリーに対し、USB接続口6に接続したUSBケーブルを介して外部の電源から電力を供給することで、バッテリーを充電することができる。
【0015】
下部ユニット3の正面35側には、下部ユニット3の幅狭部37よりも幅の広い上部ユニット2の幅広部21が位置している。下部ユニット3の幅狭部37の左右側面32,33には、ユーザーがHMP本体1を把持して使用する際に手の指を当てる位置(通常は、親指と、中指又は薬指とをそれぞれ当てる位置)に、把持形状部38が形成されている。ユーザーは、使用時、すなわち、画像形成のためにHMP本体1を記録材の表面上で走査方向(図中矢印X方向)に移動させる時には、幅広部21が手首側にくるようにして、左右側面32,33の各把持形状部38にそれぞれ当てた指で下部ユニット3を挟み込むようにHMP本体1を把持する。
【0016】
走査直交方向において幅広部21が幅狭部37に比べて幅広になっているのは、カバー部材8をHMP本体1に取り付けたときに幅広部21の外壁面とカバー部材8の外壁面とが、
図1に示すように略平面となるようにするためである。
【0017】
ユーザーは電源ボタン15を長押しすることによってHMP本体1の電源の入切(ON/OFF)を切り替えることができる。電源を入れた状態では、スマートフォンなどとの無線通信により、HMP本体1の上部ユニット2内に設けられた制御基板に対して画像情報を取得させることができる。その後、記録面30を記録材の表面に対面させる姿勢でHMP本体1を記録材の表面上に置いた後、プリントボタン14を一度押してから、
図4に示すようにHMP本体1を走査方向(X方向)に沿って移動させることで、記録材Pの表面に画像を形成することができる。なお、HMP本体1は、ユーザーの移動操作(手動走査)によって走査方向に沿って往復移動させる場合、往路と復路のそれぞれで、記録材の表面に画像を形成することができる。
【0018】
記録材Pは、用紙などの紙類に限定されるものではなく、OHP、布、段ボール、包装容器、ガラス、基板などのあらゆる画像形成対象が含まれる。
【0019】
上部ユニット2は下部ユニット3に対して開閉するように下部ユニット3に支持されている。下部ユニット3の内部には、記録部とインクタンクとを一体で備えるインクタンク一体型のインクジェットヘッド40(インクカートリッジ)が装着されている。このとき、インクの液滴を吐出する記録部が鉛直方向下方に向けられる。このインクジェットヘッド40は、記録部からインクの液滴を吐出して画像を記録することで画像形成を行うものである。
【0020】
図3に示すように、HMP本体1の記録面30には、下部ユニット3内に装着されたインクジェットヘッド40の記録部を外部に露出させるための開口30aが設けられている。インクジェットヘッド40の記録部は、複数の吐出孔41を有しており、圧電素子の駆動によってそれぞれの吐出孔41からインクの液滴を個別に吐出することが可能である。
【0021】
インクジェットヘッド40においては、インクを吐出するための駆動源として、積層型圧電素子や薄膜型圧電素子等を用いた電気機械変換素子(圧電アクチュエータ等)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子、振動板と対向電極とからなる静電アクチュエータなどを用いることができる。
【0022】
記録部の吐出孔41から吐出されるインク(液体)は、吐出孔41から吐出可能な粘度や表面張力を有する液体であればよく、特に限定されないが、常温常圧下において、又は加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下になるものであることが好ましい。具体的には、インク(液体)は、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、等を含む溶液、懸濁液、乳濁液等である。これらは、例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0023】
記録面30には、記録材上におけるHMP本体1の位置を検知する検知手段としての位置検知センサー59、回転可能な左側第一ローラ17a、左側第二ローラ17b、右側第一ローラ18a、右側第二ローラ18bなどが設けられている。
【0024】
HMP本体1はユーザーによって走査方向に移動操作されるときに、記録材の表面上に接触している前述した4つのローラを転動させる。このようなローラが設けられていることで、ユーザーはHMP本体1を走査方向に沿って直進させることができ、走査方向に往復移動させることができる。このとき、記録材の表面や記録材を載せた台の表面に接触するのは、HMP本体1に設けられる4つのローラだけであり、記録面30と記録材の表面との間を所定の距離だけ離間させている。このため、インクジェットヘッド40の記録部と記録材の表面との距離が一定に保たれ、所望の高画質の画像を形成することができる。
【0025】
位置検知センサー59は、記録材の表面までの距離や表面状態(例えば凹凸)を検知したり、HMP本体1の移動距離を検知したりするセンサーであり、例えばパソコンの光学式マウス(ポインティングデバイス)などで使用されているものと同様のものを利用できる。位置検知センサー59は、HMP本体1が置かれている場所(記録材)に光を照射し、その部分の状態を「模様」として読み取る。そして、位置検知センサー59の動きに対してその「模様」がどのように移動するのかを連続して捉えることで、移動量を算出する。
【0026】
図5は、HMP本体1の電気回路の一部を示すブロック図である。
制御基板57は、各種の演算処理やプログラム実行を行うCPU55、近距離無線通信用のBt(Bluetooth(登録商標))基板52、データを一時記憶するRAM53、ROM54、記録制御部56などを有している。この制御基板57は、上部ユニット2の中空内において、USB接続口6の裏側の位置に固定されている。
【0027】
Bt基板52は、スマートフォンやタブレット端末などの外部機器との近距離無線通信(Bluetooth通信)によってデータ通信を行うものである。また、ROM54は、HMP本体1のハードウェア制御を行うファームウェアや、インクジェットヘッド40の駆動波形データ等を格納するものである。また、記録制御部56は、インクジェットヘッド40を駆動させるためのデータ処理を実行したり、駆動波形を生成したりするものである。
【0028】
制御基板57には、ジャイロセンサー58、位置検知センサー59、LEDランプ14a、インクジェットヘッド40、プリントボタン14、電源ボタン15、バッテリー51などが電気的に接続されている。
【0029】
ジャイロセンサー58は、周知の技術により、HMP本体1の傾きや回転角度を検知して、その結果を制御基板57に送信するものである。LEDランプ14aは、プリントボタン14における光透過性の材料からなる外装カバーの内部に設けられ、プリントボタン14を発光させるものである。
【0030】
電源ボタン15を押してHMP本体1の電源を入れると、各モジュールに電力が供給され、CPU55はROM54に格納されているプログラムに基づいて起動動作を開始し、プログラムや各データをRAM53に展開する。画像データを外部機器から近距離無線通信によって受信すると、記録制御部56は、受信した画像データに応じた駆動波形を生成する。そして、位置検知センサー59によって検知された記録材の表面上の位置に応じた画像を形成するようにインクジェットヘッド40からのインクの吐出を制御する。
【0031】
また、制御基板57は、外部機器との近距離無線通信によって画像データの取得中であるときは、LEDランプ14aを点滅させることで、光透過性のあるプリントボタン14を発光点滅させる。その後、制御基板57は、画像データの取得が完了したら、LEDランプ14aを連続点灯させることで、プリントボタン14を連続発光させる。これを見たユーザーは、HMP本体1が画像データの取得を終えたことを知り、HMP本体1を記録材上に置いてプリントボタン14を押す。
【0032】
一方、制御基板57は、LEDランプ14aの連続点灯制御を開始すると、プリントボタン14が押されるのを待機する。そして、プリントボタン14が押されると、LEDランプ14aを点滅させることで、プリントボタン14を発光点滅させる。これを見たユーザーは、HMP本体1の走査方向への移動操作(手動走査)を開始する。
【0033】
HMP本体1の移動操作(手動走査)を終えたユーザーは、プリントボタン14をもう一度押す。これにより、制御基板57は、LEDランプ14aを消灯させて、プリントボタン14の発光を停止させる。また、プリントボタン14を押さずにHMP本体1を記録材から取り上げて、卓上などにそのまま置いたり、カバー部材8に取り付けて置いたりする場合もある。この場合、位置検知センサー59は、HMP本体1が記録材上から取り上げられたときに、位置の検知ができなくなるので、制御基板57は、位置検知センサー59が位置を検知しなくなったタイミングで、LEDランプ14aを消灯させて、プリントボタン14の発光を停止させる。
【0034】
なお、移動操作(手動走査)中にプリントボタン14を押し続ける必要はない。移動操作に先立ってプリントボタン14を押して離せば、位置検知センサー59による検知結果に基づく画像形成処理が、画像形成の終了まで、プリントボタン14がもう一度押されるまで、あるいは、位置検知センサー59による位置検知不能まで、継続される。
【0035】
図6は、ローラユニットをHMP本体1から取り外した状態のHMP本体1を示す底面図である。
HMP本体1は、左側ローラユニット17と、右側ローラユニット18とを有している。左側ローラユニット17は、HMP本体1の走査方向(X方向)における左側面32側の端部に取り付けられる。また、右側ローラユニット18は、HMP本体1の走査方向における右側面33側の端部に取り付けられる。
【0036】
左側ローラユニット17は、金属製の軸部材17cと、これの長手方向における一端側に固定された左側第一ローラ17aと、他端側に固定された左側第二ローラ17bとを具備している。左側第一ローラ17a及び左側第二ローラ17bは、それぞれ、ゴムなどの摩擦抵抗の大きな材料からなる。
【0037】
右側ローラユニット18は、金属製の軸部材18cと、これの長手方向における一端側に固定された右側第一ローラ18aと、他端側に固定された右側第二ローラ18bとを具備している。右側第一ローラ18a及び右側第二ローラ18bも、それぞれ、ゴムなどの摩擦抵抗の大きな材料からなる。
【0038】
左側ローラユニット17は、軸部材17cの長手方向における両端付近のそれぞれがHMP本体1に固定された滑り軸受け73に係合することで、滑り軸受け73に回転可能に保持される。滑り軸受け73は、周方向において切り欠き部を具備しており、この切り欠き部を通じて軸部材17cが軸受け内部に挿入される。このとき、軸部材17cを押し込められる力によって一時的に歪むことで、通常時には軸部材17cの直径よりも小さい幅の切り欠き部を、軸部材17cの直径とほぼ同じ値まで拡げる。軸部材17cが滑り軸受け73内に完全に押し込まれると、滑り軸受け73の歪みが解消されて、切り欠き部の幅が軸部材17cの直径よりも小さくなる。これにより、左側ローラユニット17が滑り軸受け73に回転可能に保持される。
【0039】
左側ローラユニット17について説明したが、右側ローラユニット18も左側ローラユニット17と同様にして、HMP本体1に固定された滑り軸受け72に回転可能に保持される。
【0040】
左側ローラユニット17や右側ローラユニット18は、HMP本体1の走査方向(X方向)への直進走行性を高めるためのものである。互いに軸部材17cに固定された左側第一ローラ17aと左側第二ローラ17bとが一体的に回転しつつ、互いに軸部材18cに固定された右側第一ローラ18aと右側第二ローラ18bとが一体的に回転することで、直進走行性を高める。
【0041】
より詳しくは、左側ローラユニット17の左側第一ローラ17aと左側第二ローラ17bとは同一軸心で一体となって回転することから、それぞれのローラに線速差が生じたり、それぞれのローラが互いに逆方向に回転したりすることがない。この左側ローラユニット17が搭載されたHMP本体1をユーザーが走査方向に沿って移動操作している時に、HMP本体1に対して走査方向に沿った力に加えて、走査方向から外れる方向への力をかけたとする。後者の力(走査方向から外れる方向への力)は、2つのローラ17a,17b間で線速差をもつように回転させようとするが、一体となって回転する2つのローラ17a,17bがそのような回転をさせない。同じ方向且つ同じ線速で回転することから、HMP本体1は走査方向に沿った力に追従して走査方向へ直進する。よって、ユーザーは、HMP本体1を容易に走査方向に沿って真っ直ぐに移動操作することができる。
【0042】
なお、左側ローラユニット17がHMP本体1の直進走行性を高めることについて説明したが、右側ローラユニット18も同様にして、HMP本体1の直進走行性を高めることができる。また、ローラユニット17の2つのローラ17a,17bを互いに独立させて回転させたとしても、ローラによって直進走行性をある程度向上させることが可能である。よって、2つのローラ17a,17bを一体的に回転させることは必須ではなく、互いに独立させて回転させてもよい。ローラユニット18についても同様である。但し、一体的に回転させる方が、直進走行性をより高めることができる。
【0043】
本実施形態のHMP本体1は、走査直交方向(Y方向)において、記録部の位置から外れた位置を、ローラユニット17,18における各ローラ17a,17b,18a,18bの配設位置にしている。このような配設位置では、HMP本体1を移動操作しているときに、形成直後画像部分に対してローラ17a,17b,18a,18bが接触することがない。よって、ローラ17a,17b,18a,18bの接触によって画像が乱れるのを回避することができる。
【0044】
ローラユニット17は、2つのローラ17a,17b間における回転軸の軸線方向の距離が大きくなるほど、HMP本体1の直進走行性を高めることができる。ローラユニット18においても同様である。そこで、本実施形態のHMP本体1では、走査直交方向において、記録部の位置よりも一端側(正面35側)にずれた位置を第一ローラ17a,18aの配設位置としている。加えて、記録部の位置よりも他端側(背面34側)にずれた位置を第二ローラ17b,18bの配設位置としている。かかる構成では、一端側又は他端側の何れかに2つのローラをまとめて配設する構成に比べて、2つのローラにおける走査直交方向の距離を大きくしてHMP本体1の直進走行性を高めることができる。
【0045】
ローラユニット17,18の回転軸としての軸部材17c,18cとしては、上述したように金属製のものを用いている。非金属製のものを用いる構成に比べて、HMP本体1の移動操作中における軸部材の撓みを抑えることで、軸部材の撓みでHMP本体1の走行を不安定化させることによる画像の乱れを抑えることができる。更には、軸部材として小径のものを用いてHMP本体1の小型化を図ることもできる。
【0046】
本実施形態のHMP本体1では、左側ローラユニット17だけでなく、右側ローラユニット18を左側ローラユニット17に対して走査方向に並べて配設している。かかる構成では、上述した、走査方向から外れる力に対して、2つのローラユニット17,18が互いに走査方向の異なる位置で抵抗することで、HMP本体1の直進走行性をより高めることができる。
【0047】
図7は、左側ローラユニット17を取り付けた状態のHMP本体1の下部ユニット3を示す部分断面図である。
下部ユニット3の壁には、加圧板バネ74が固定されている。この加圧板バネ74は、左側ローラユニット17の軸部材17cの長手方向における一端を他端側に向けて軸線方向に加圧することで、軸部材の長手方向における他端を下部ユニット3のケーシング内壁に押し当てている。
【0048】
このように加圧板バネ74によって左側ローラユニット17の軸部材17cを軸線方向に加圧して、左側第一ローラ17a及び左側第二ローラ17bの軸線方向へのガタツキを抑える(ガタツキを許容する空間を無くす)。これにより、ガタツキに起因する画像の乱れを抑えることができる。
【0049】
なお、左側ローラユニット17の軸部材17cを加圧板バネ74によって軸線方向に加圧する例について説明したが、右側ローラユニット18の軸部材18cも同様にして、加圧板バネによって軸線方向に加圧している。
また、加圧板バネをケーシングに固定する代わりに、ローラユニット17,18の軸部材17c,18cの端部に固定してもよい。加圧板バネをケーシングに組み付ける工程をなくして、組み立て費用を低減することができる。
【0050】
ここで、本実施形態のHMP本体1のようにローラ17a,17b,18a,18bを備えた構成においては、上述したとおり、ユーザーがHMP本体1を走査方向へ移動操作(手動走査)するときの直進走行性を確保できる。しかしながら、HMP本体1を湾曲軌道に沿って移動操作するときには、ローラ17a,17b,18a,18bが湾曲軌道に沿った移動操作を妨げ、良好な手動操作の邪魔になる。
【0051】
また、一行目の記録を行った後に続けて二行目の記録を行う場合、位置検知センサー59による位置検知が不能にならないように、記録面30を記録材の表面に対向させた姿勢のまま、走査直交方向へHMP本体1を移動させる改行操作が必要となる。この改行操作においても、HMP本体1のローラ17a,17b,18a,18bが走査直交方向への移動を妨げ、良好な改行操作の邪魔になる。
【0052】
そこで、本実施形態のHMP10は、HMP本体1の記録面30に対して着脱可能なスペーサー部材4を設け、スペーサー部材4の着脱によってHMP10の使用形態を切り替えられるようになっている。具体的には、記録材Pを載置された台の表面又は記録材Pの表面にローラ17a,17b,18a,18bを接触させて転動させながら走査するローラ接触形態(
図8参照)と、当該表面にローラ17a,17b,18a,18bを接触させないローラ非接触形態(
図9参照)とにすることができる構成になっている。
【0053】
図10は、スペーサー部材4をHMP本体1に装着した状態のHMP本体1を斜め下方から見た外観斜視図である。
HMP本体1からスペーサー部材4を離脱させた場合、HMP10は、
図9に示すように、記録材P等の表面にHMP本体1のローラ17a,17b,18a,18bを接触させて転動させながら走査するローラ接触形態で使用できる。これにより、ローラ17a,17b,18a,18bによる直進走行性によって、ユーザーはHMP本体1を容易に走査方向に沿って真っ直ぐに移動操作することができ、適切な画像を形成することができる。一方、HMP本体1の記録面30にスペーサー部材4を装着すると、HMP10は、
図9に示すように、記録材P等の表面にHMP本体1のローラ17a,17b,18a,18bを接触させないで走査するローラ非接触形態で使用できる。
【0054】
スペーサー部材4は、下部ユニット3の記録面30に対して磁石で着脱されるようになっている。具体的には、スペーサー部材4には、HMP本体1の記録面30にスペーサー部材4を装着したとき、記録面30に露出している2つの磁性体である締結部材としての金属ネジのネジ頭39aに対向する位置に、それぞれ磁石42が位置するように設けられている。なお、本実施形態では、スペーサー部材4に設けられる磁性体が金属ネジ等の締結部材である例で説明するが、スペーサー部材4の金属フレーム等のフレーム部材であってもよい。このようなフレーム部材は、通常、剛性を確保するために金属製であり、磁性体として利用できる。
【0055】
また、
図3に示すように、下部ユニット3の記録面30とスペーサー部材4との位置合わせのため、記録面30上には、位置合わせ突起39bと位置合わせ孔39cとが形成されている。そして、スペーサー部材4には、これらに対応する位置に、位置合わせ突起39bが入り込む位置合わせ孔43と、位置合わせ孔39cに入り込む位置合わせ突起が形成されている。これらの位置合わせ突起及び位置合わせ孔が相手側の位置合わせ孔及び位置合わせ突起と嵌り合うように、記録面30に対してスペーサー部材4が適切に位置合わせされると、スペーサー部材4上の磁石42が記録面30のネジ頭39aに対向し、
図10に示すように磁石42の磁力によってスペーサー部材4が記録面30に装着、保持される。
【0056】
スペーサー部材4は、その本体がABS樹脂などの樹脂製であり、その記録材対向面(装着時に記録面30と対面する側とは反対側の面)には、HMP本体1を三点支持するための3つの突起44が設けられている。HMP本体1の記録面30に装着されたスペーサー部材4の突起44の先端は、
図9に示すように、ローラ17a,17b,18a,18bよりも記録面30に対して記録材Pと対向する方向に遠い位置にある。このため、スペーサー部材4を装着した状態のHMP本体1が記録材P上に置かれると、突起44の先端が記録面30の表面に接触し、ローラ17a,17b,18a,18bを記録材Pの表面から浮かせる。これにより、HMP10はローラ非接触形態となる。
【0057】
ローラ非接触形態でHMP10を使用する場合、ユーザーは、HMP本体1を把持して、スペーサー部材4が装着された状態の記録面30が記録材Pの表面に対面するように置く。このとき、HMP本体1は、スペーサー部材4の3つの突起44によって、ローラ17a,17b,18a,18bが記録材Pの表面から浮いた状態で、記録材P上に三点支持される。そして、ユーザーは、記録材Pの表面に3つの突起44を摺動させるようにしてHMP本体1を移動操作(手動走査)し、記録材P上に画像を形成することができる。
【0058】
図11は、湾曲軌道に沿って移動操作されているローラ非接触形態のHMP本体1を示す斜視図である。
ローラ非接触形態では、ローラ17a,17b,18a,18bが記録材Pの表面から浮いた状態であるため、HMP本体1を走査方向(X方向)とは異なる方向への移動操作(手動操作)が、ローラ17a,17b,18a,18bによって邪魔されることがない。そのため、ローラ接触形態に比べて、HMP本体1の湾曲走行性が向上する。よって、湾曲軌道に沿ったHMP本体1の移動操作を容易に行うことができる。
【0059】
また、走査方向に沿って一行目の記録を行った後、走査直交方向の異なる位置に走査方向に沿って二行目の記録を行う場合、記録面30を記録材の表面に対向させた姿勢のまま、走査直交方向へHMP本体1を移動させる改行操作を行う場合にも、ローラ17a,17b,18a,18bによって邪魔されることがない。よって、ローラ接触形態に比べて、改行操作時の操作性が向上する。なお、ローラ非接触形態では、ローラ17a,17b,18a,18bによる直進走行性が得られないため、ユーザーは、ローラ17a,17b,18a,18bの補助がない状態で、走査方向へ直進させる必要がある。
【0060】
本実施形態のスペーサー部材4に設けられる3つの突起44は、いずれも、走査直交方向(Y方向)において、インクジェットヘッド40の記録部(複数の吐出孔41)の位置から外れた位置に配設されている。これにより、ローラ非接触形態での画像形成時に、形成直後画像部分を突起44で擦って画像を乱してしまうことを防止することができる。
【0061】
次に、本実施形態に係るHMP10が備えるカバー部材8について説明する。
本実施形態のカバー部材8は、HMP本体1に装着されたスペーサー部材4を挟んだ状態あるいは収容した状態でHMP本体1に装着可能となっている。本実施形態のカバー部材8は、
図2に示すように、HMP本体1を載せる底面部80と、底面部80の図中上面から図中Z方向へ延びる3つの壁面部82,83,84とを備えている。3つの壁面部82,83,84は、それぞれ、底面部80上にHMP本体1が載った状態において、HMP本体1の下部ユニット3における幅狭部37の左側面32、右側面33及び背面34に対面する。
【0062】
本実施形態において、HMP本体1にカバー部材8を取り付ける場合の一例としては、
図2に示すように卓上に置かれたカバー部材8に対し、3つの壁面部82,83,84に囲まれた空間内にHMP本体1の下部ユニット3の幅狭部37がはまり込むように、図中上方(Z方向)からHMP本体1を挿入する。これにより、HMP本体1に設けられる2つの突起部16がカバー部材8の左右壁面部82,83の内壁に形成された2つの凹部81にそれぞれスナップフィットによって引っ掛かる。その結果、HMP本体1にカバー部材8が取り付けられた状態が保持される。
【0063】
図12は、右壁面部83を除去してカバー部材8の内部が見える状態にした斜視図である。
本実施形態のカバー部材8は、HMP本体1への装着時においてスペーサー部材4に設けられた2つの磁石42と対向する底面部80上の位置に、それぞれ磁性体である締結部材としての金属ネジ87が配置されている。スペーサー部材4の磁石42は、HMP本体1の記録面30と対面する側にも、カバー部材8の底面部80と対面する側にも、露出するように配置されている。そのため、磁石42の磁力によってスペーサー部材4が装着されたHMP本体1にカバー部材8が装着されると、スペーサー部材4上の磁石42がカバー部材8の金属ネジ87のネジ頭に対向し、磁石42の磁力によってスペーサー部材4とカバー部材8の底面部80との間に引力が発生する。
【0064】
このような引力は、スペーサー部材4が装着されたHMP本体1とカバー部材8との装着状態の維持に寄与するものである。したがって、例えば、HMP本体1に設けられる突起部16がカバー部材8の凹部81とのスナップフィットが緩くなってしまった場合でも、HMP本体1からカバー部材8が容易に離脱することを防ぐことができる。
【0065】
また、本実施形態において、カバー部材8がHMP本体1に装着されているときのカバー部材8の金属ネジ87と磁石42との磁力は、スペーサー部材4がHMP本体1に装着されているときのHMP本体1の金属ネジのネジ頭39aと磁石42との磁力よりも小さくなるように、設定されている。このような設定は、例えば、カバー部材8の金属ネジ87とHMP本体1の金属ネジの材質を異ならせることで設定できる。また、例えば、スペーサー部材4が装着されたHMP本体1とカバー部材8との装着時において、カバー部材8の金属ネジ87と磁石42との距離を、HMP本体1の金属ネジと磁石42との距離よりも広げるようにすることで設定できる。
【0066】
このような設定により、HMP本体1の金属ネジのネジ頭39aと磁石42との磁力がカバー部材8の金属ネジ87と磁石42との磁力に勝り、スペーサー部材4が装着された状態のHMP本体1をカバー部材8から引き抜くことが可能となる。
【0067】
なお、本実施形態では、カバー部材8に設けられる磁性体が金属ネジ等の締結部材である例で説明するが、カバー部材8の金属フレーム等のフレーム部材であってもよい。このようなフレーム部材は、通常、剛性を確保するために金属製であり、磁性体として利用できる。
【0068】
また、本実施形態のカバー部材8は、インクジェットヘッド40の記録部(複数の吐出孔41)を保護する画像形成部保護部としてのキャップ部85を有する。このキャップ部85は、HMP本体1にカバー部材8が取り付けられた状態において、HMP本体1の記録面30に露出しているインクジェットヘッド40の記録部に密着し、記録部上の複数の吐出孔41を覆う。これにより、HMP本体1にカバー部材8が取り付けられた状態では、HMP本体1の吐出孔41がキャップ部85内に密閉され、保護、保湿がなされる。
【0069】
ここで、本実施形態においては、HMP本体1からカバー部材8を取り外すときに、スペーサー部材4をHMP本体1に装着可能な装着状態と、スペーサー部材4をHMP本体1から離脱可能な離脱状態とにするように、スペーサー部材4の保持状態を切り替える着脱切替手段を有する。本実施形態の着脱切替手段は、カバー部材8に設けられ、カバー部材8にスペーサー部材4を保持させるカバー部材側保持状態と、HMP本体1にスペーサー部材4が保持可能となるHMP本体側保持状態(カバー部材8にスペーサー部材4を保持させない非保持状態)とを切り替えるものである。
【0070】
図13は、右壁面部83を除去してカバー部材8の内部が見える状態にし、更に底面部80の上面に装着されている底板80aを取り外して、スライドロック部材86を露出させた状態の斜視図である。
本実施形態において、スライドロック部材86は、底面部80に対して走査直交方向(Y方向)に沿ってスライド移動可能に構成されている。具体的には、カバー部材8の底面部80の下面には、
図14に示すように、スライドロック部材86に固定されたスライド操作部86cが露出しており、このスライド操作部86cをユーザーが図中Y方向に沿ってスライド操作することにより、これに連動してスライドロック部材86がスライド移動する。
【0071】
図15(a)は、カバー部材8の底面部80上に、HMP本体1を取り付けずに、スペーサー部材4だけを載せた状態の上面図であり、
図15(b)は、
図15(a)中のA-A断面を示す断面図である。
図15(a)及び(b)は、カバー部材8にスペーサー部材4を保持させるカバー部材側保持状態のものである。
ユーザーがスライド操作部86cを図中Y1方向へスライド操作すると、これに連動してスライドロック部材86が図中Y1方向へスライド移動する。スライドロック部材86には、スペーサー部材4に設けられる被係合部としての被ロック部45a,45bと係合する係合部としてのロック部86a,86bが設けられている。
【0072】
スライドロック部材86が図中Y1方向へスライド移動すると、
図15(b)に示すように、スライドロック部材86上のロック部86aの端部がスペーサー部材4の被ロック部45aの上方に位置決めされる。もう1つのロック部86bも同様に、その端部が被ロック部45bの上方に位置決めされる。これにより、ユーザーがHMP本体1からカバー部材8を取り外すために、カバー部材8からZ方向へHMP本体1を引き抜く際、HMP本体1に磁力で装着されているスペーサー部材4は、その被ロック部45a,45bがカバー部材8のスライドロック部材86のロック部86a,86bの端部に引っ掛かり、引き抜かれるHMP本体1への追従が阻止されるロック状態(係合状態)となる。
【0073】
その結果、カバー部材8からHMP本体1が引き抜かれたとき、スペーサー部材4はカバー部材8側に保持される。したがって、ユーザーは、ローラを用いる使用形態(ローラ接触形態)のときは、
図15(a)及び(b)に示すように、Y1方向へスライド操作することで、引き抜いた時にはスペーサー部材がHMP本体1から離脱した状態のHMP本体1を手にすることができ、そのまま画像形成作業を行うことができる。
【0074】
図16(a)は、カバー部材8の底面部80上に、HMP本体1を取り付けずに、スペーサー部材4だけを載せた状態の上面図であり、
図16(b)は、
図16(a)中のA’-A’断面を示す断面図である。
図16(a)及び(b)は、HMP本体1にスペーサー部材4が保持可能となるHMP本体側保持状態(カバー部材8にスペーサー部材4を保持させない非保持状態)のものである。
ユーザーがスライド操作部86cを図中Y2方向へスライド操作すると、これに連動してスライドロック部材86が図中Y2方向へスライド移動する。スライドロック部材86が図中Y2方向へスライド移動すると、
図16(b)に示すように、スライドロック部材86上のロック部86aの端部がスペーサー部材4の被ロック部45aの上方から外れた位置に退避する。もう1つのロック部86bも同様に退避する。
【0075】
これにより、スペーサー部材4は、その被ロック部45a,45bがカバー部材8のスライドロック部材86のロック部86a,86bの端部に引っ掛からない非ロック状態(非係合状態)になるので、ユーザーがHMP本体1からカバー部材8を取り外すために、カバー部材8からZ方向へHMP本体1を引き抜くと、スペーサー部材4は、HMP本体1に磁力で保持された状態で、HMP本体1とともにカバー部材8から取り外される。その結果、カバー部材8からHMP本体1が引き抜かれたとき、スペーサー部材4が磁力によってHMP本体1の記録面30に装着された状態となっている。このとき、カバー部材8の金属ネジ87と磁石42との磁力は、HMP本体1の金属ネジのネジ頭39aと磁石42との磁力よりも小さく設定されているので、カバー部材8の金属ネジ87と磁石42との磁力に妨げられることなく、スペーサー部材4が装着された状態のHMP本体1をカバー部材8から引き抜くことができる。
【0076】
したがって、ユーザーは、ローラを用いない使用形態(ローラ非接触形態)のときは、
図16(a)及び(b)に示すように、Y2方向へスライド操作することで、引き抜いた時にはスペーサー部材がHMP本体1に装着された状態のHMP本体1を手にすることができ、そのまま画像形成作業を行うことができる。
【0077】
カバー部材8は、スペーサー部材4がカバー部材8に磁力によって保持されるように、スペーサー部材4の磁石と対向する位置に磁性体を有している。そのため、HMP本体1をカバー部材8に装着しない状態で、ユーザーがスライド操作部86cを図中Y2方向へスライド操作させて、スペーサー部材4を
図15のロック状態から
図16の非ロック状態にしたとしても、カバー部材8からスペーサー部材4を外れにくくなっている。そうすることで、カバー部材8のHMP本体1を挿入する側を下にしたときに、カバー部材8からスペーサー部材4が落ちてしまうのを防止できる。また、
図16の非ロック状態でHMP本体1にスペーサー部材4とカバー部材8が装着された状態において、HMP本体1とスペーサー部材4との間の磁力がカバー部材8とスペーサー部材4との間の磁力より強くなっているので、
図16の状態でHMP本体1をカバー部材8を取り外したときには、スペーサー部材4は、HMP本体1に装着された状態となって、カバー部材8から取り外される。
【0078】
以上、本実施形態に係るHMP10では、スペーサー部材4の着脱によって、HMP10の使用形態を、ローラ17a,17b,18a,18bを使用して画像形成を行うローラ接触形態と、当該ローラを使用しないで画像形成を行うローラ非接触形態とに切り替えられる。ただし、スペーサー部材4の着脱によって切り替えられるHMP10の使用形態は、これに限られるものではなく、HMP本体1に対する着脱部材の着脱によってHMP10の使用形態が切り替わるものであれば、特に制限はない。
【0079】
また、本実施形態では、ローラ17a,17b,18a,18bがHMP本体1側に設けられた例であるが、スペーサー部材4側に設けてもよい。この場合、スペーサー部材4をHMP本体1に装着することでローラ接触形態となり、スペーサー部材4をHMP本体1から離脱させることでローラ非接触形態となる。
【0080】
また、本実施形態では、HMP本体1からカバー部材8を取り外すときに、スペーサー部材4をHMP本体1に装着可能な装着状態と、スペーサー部材4をHMP本体1から離脱可能な離脱状態とを切り替える着脱切替手段が、カバー部材8側に設けられているが、HMP本体1側(あるいはスペーサー部材4側)に設けられていてもよい。例えば、HMP本体1に対してスペーサー部材4が磁力をON/OFF制御される電磁石によって着脱する構成とし、電磁石をONにすることで前記装着状態とし、電磁石をOFFにすることで前記離脱状態としてもよい。この場合、電磁石がON(装着状態)であれば、スペーサー部材4が磁力によって装着されたHMP本体1をカバー部材から引き抜くことができ、電磁石がOFF(離脱状態)であれば、スペーサー部材4が自重によってカバー部材側に残された状態で、HMP本体1だけをカバー部材から引き抜くことができる。
【0081】
また、本実施形態では、HMP本体1とスペーサー部材4とを装着、保持するための磁石42がスペーサー部材4側に設けられた例であるが、HMP本体1側に設けてもよいし、両方に設けてもよい。また、本実施形態では、カバー部材8とスペーサー部材4との引力を発生させるための磁石42がスペーサー部材4側に設けられた例であるが、カバー部材8側に設けてもよいし、両方に設けてもよい。ただし、本実施形態のように、磁石42をスペーサー部材4に設けることで、HMP本体1とスペーサー部材4との間の磁力、カバー部材8とスペーサー部材4との間の磁力を、単一の磁石によって実現することができる。
【0082】
また、本実施形態では、インクジェット方式のHMP10に本発明を適用した例について説明したが、本発明の構成は他の画像形成方法による装置にも適用できる。例えば、感熱方式、又は熱転写方式など適宜な方式の記録装置に適用できる。熱転写方式のHMP本体は、液体を収納する収納容器としてのインクリボンを備えるため、インクリボンの底部に凹所を形成し、凹所により形成されたスペースに記録材を検知する検知手段としての位置検知センサーを収容すればよい。
【0083】
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
[第1態様]
第1態様は、携帯型画像形成装置(例えばHMP10)であって、装置本体(例えばHMP本体1)に対して着脱可能であって、前記装置本体に対する着脱によって当該携帯型画像形成装置の使用形態を異ならせる着脱部材(例えばスペーサー部材4)と、前記着脱部材を磁力によって前記装置本体に保持させる磁力保持手段(例えば磁石42)とを有することを特徴とするものである。
本態様によれば、着脱部材を用いない使用形態時には、着脱部材が離脱した状態(取り外された状態)の装置本体が使用されることから、不必要な着脱部材によって携帯型画像形成装置の操作性や取り扱い性が損なわれることはない。
一方で、このような携帯型画像形成装置においては、装置本体に対して着脱される着脱部材の取り扱い性も考慮する必要がある。
そこで、本態様では、磁力保持手段により、着脱部材を磁力によって装置本体に保持させるようにした。これにより、機械的な着脱切替手段や、制御的な着脱切替手段などよりも、簡易な構成、省スペースで、装置本体に対する着脱部材の着脱を実現することができる。
【0084】
[第2態様]
第2態様は、第1態様において、前記着脱部材は、記録材への画像形成時の前記装置本体における該記録材との対向面に対して着脱されることを特徴とするものである。
これによれば、記録材との対向面に対して着脱される着脱部材について適用することができる。
【0085】
[第3態様]
第3態様は、第1又は第2態様において、前記磁力保持手段は、前記着脱部材に設けられる磁石と、前記装置本体に設けられる磁性体とから構成されることを特徴とすることを特徴とするものである。
これによれば、装置本体に磁石を設ける場合よりも、装置本体の小型化、軽量化を実現しやすい。
【0086】
[第4態様]
第4態様は、第3態様において、前記磁性体は、締結部材又はフレーム部材であることを特徴とするものである。
これによれば、装置本体に備わっている締結部材又はフレーム部材を利用することで、専用の磁性体を装置本体に設ける場合よりも、装置本体の小型化、軽量化を実現することができる。
【0087】
[第5態様]
第5態様は、第3又は第4態様において、前記着脱部材が装着された前記装置本体に対して該着脱部材を挟んで装着可能な装着部材を有し、前記装着部材は、前記装置本体への装着時に前記着脱部材に設けられた前記磁石と対向する位置に磁性体を有するものである。
これによれば、装置本体に装着された着脱部材の磁石と装着部材の磁性体との間の磁力が、装置本体と装着部材との装着状態の維持に寄与し、装置本体から装着部材が容易に離脱してしまうのを抑制できる。しかも、この磁力に用いる着脱部材の磁石は、装置本体に対して着脱部材を装着させるための磁力のために用いられる磁石を利用するため、個別に磁石を設ける場合よりも、小型化、軽量化を実現しやすい。
【0088】
[第6態様]
第6態様は、第5態様において、前記装着部材は、前記装置本体に装着された前記着脱部材を収容した状態で前記装置本体に装着されるものであることを特徴とするものである。
これによれば、装着部材が、装置本体に装着された着脱部材を収容した状態で装置本体に装着されるため、着脱部材を用いる使用形態時には、装置本体からカバー部材を取り外すだけで、着脱部材が装着された状態の装置本体を手にしてすぐに画像形成を開始することが可能となる。
【0089】
[第7態様]
第7態様は、第5又は第6態様において、前記装着部材は、記録材への画像形成時の前記装置本体における該記録材との対向面の少なくとも一部を覆うものであることを特徴とするものである。
これによれば、装置本体の対向面上に配置される部材や機器を装着部材によって保護することができる。
【0090】
[第8態様]
第8態様は、第5乃至第7態様のいずれかにおいて、前記装着部材が前記装置本体に装着されているときの該装着部材の前記磁性体と前記磁石との磁力は、前記着脱部材が前記装置本体に装着されているときの該装置本体の前記磁性体と前記磁石との磁力よりも小さいことを特徴とするものである。
これによれば、装置本体の磁性体と着脱部材の磁石との磁力が装着部材の磁性体と着脱部材の磁石との磁力に勝り、着脱部材が装着された状態の装置本体を、その状態のまま装着部材から取り外すことが可能となる。
【符号の説明】
【0091】
1 :HMP本体
2 :上部ユニット
3 :下部ユニット
4 :スペーサー部材
8 :カバー部材
10 :HMP
14 :プリントボタン
15 :電源ボタン
17,18:ローラユニット
17a,17b,18a,18b:ローラ
21 :幅広部
30 :記録面
31 :上面
32 :左側面
33 :右側面
34 :背面
35 :正面
37 :幅狭部
38 :把持形状部
40 :インクジェットヘッド
41 :吐出孔
42 :磁石
45a,45b:被ロック部
53 :RAM
54 :ROM
55 :CPU
56 :記録制御部
57 :制御基板
58 :ジャイロセンサー
59 :位置検知センサー
80 :底面部
80a :底板
82,83,84:壁面部
85 :キャップ部
86 :スライドロック部材
86a,86b:ロック部
86c :スライド操作部
P :記録材
【先行技術文献】
【特許文献】
【0092】