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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-10
(45)【発行日】2022-08-19
(54)【発明の名称】基板評価用チップ及び基板評価装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 25/18 20060101AFI20220812BHJP
【FI】
G01N25/18 E
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020501017
(86)(22)【出願日】2019-02-21
(86)【国際出願番号】 JP2019006438
(87)【国際公開番号】W WO2019163862
(87)【国際公開日】2019-08-29
【審査請求日】2021-01-29
(31)【優先権主張番号】P 2018029795
(32)【優先日】2018-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000114891
【氏名又は名称】ヤマト科学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 克昭
(72)【発明者】
【氏名】長尾 至成
(72)【発明者】
【氏名】下山 章夫
(72)【発明者】
【氏名】金 東辰
(72)【発明者】
【氏名】竹下 一毅
(72)【発明者】
【氏名】若杉 直樹
【審査官】北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第1544954(CN,A)
【文献】特開2005-005528(JP,A)
【文献】特開平09-055460(JP,A)
【文献】特開2012-184990(JP,A)
【文献】特開2001-141680(JP,A)
【文献】国際公開第2010/064487(WO,A1)
【文献】特開2008-304447(JP,A)
【文献】特開平05-152303(JP,A)
【文献】特開2017-173030(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 25/00-25/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワー半導体を実装可能な実装基板の熱特性を評価するための試験に用いられる基板評価用チップであって、
前記実装基板に接合される絶縁基板と、
前記絶縁基板の表面の中央部分に金属膜によりU字状に形成され、前記絶縁基板の温度を測定するための測温用パターンと、
凹み部分を有し、前記凹み部分が前記測温用パターンの周囲を取り囲むようにして、前記絶縁基板の表面に金属膜によって凹状に形成されるとともに、前記絶縁基板をより均一に加熱させるために、前記測温用パターンの先端U字部分に対向する前記凹み部分が前記測温用パターンの先端U字部分から離れるように湾曲された形状を有して配置された加熱用パターンと
を備え、
前記絶縁基板は、250[W/mK]以上の熱伝導率を有する単結晶基板の表面に絶縁膜を形成した基板であることを特徴とする基板評価用チップ。
【請求項2】
前記絶縁基板は、SiC系単結晶基板の表面に絶縁膜を形成した基板であることを特徴とする請求項1に記載の基板評価用チップ。
【請求項3】
前記実装基板は、セラミック配線基板であることを特徴とする請求項1に記載の基板評価用チップ。
【請求項4】
パワー半導体を実装可能な実装基板の熱特性を、前記実装基板の表面に基板評価用チップを実装させた状態で評価するための試験を行うための基板評価装置であって、
前記実装基板に接合される絶縁基板と、前記絶縁基板の表面の中央部分に金属膜によりU字状に形成され、前記絶縁基板の温度を測定するための測温用パターンと、凹み部分を有し、前記凹み部分が前記測温用パターンの周囲を取り囲むようにして、前記絶縁基板の表面に金属膜によって凹状に形成されるとともに、前記絶縁基板をより均一に加熱させるために、前記測温用パターンの先端U字部分に対向する前記凹み部分が前記測温用パターンの先端U字部分から離れるように湾曲された形状を有して配置された加熱用パターンと、を備えた前記基板評価用チップと、
前記基板評価用チップが接合されるチップボンディングパターンと、前記加熱用パターン及び前記測温用パターンの各電極パッドが接続される複数のパッドボンディングパターンとを備えた前記実装基板と、
前記実装基板を冷却するための冷却部と、
前記複数のパッドボンディングパターンを介して、前記実装基板を前記冷却部に押し付けるための、複数の端子電極を備えた荷重印加部と、
前記複数の端子電極のいくつかを介して、前記基板評価用チップの前記加熱用パターンを加熱させることにより、前記基板評価用チップの前記絶縁基板の温度を上昇させるための加熱部と、
前記基板評価用チップの前記測温用パターンにより、前記複数の端子電極のいくつかを介して、前記絶縁基板の温度を測定するための測定部と
を備え、
前記測定部の測定結果に基づいて、前記実装基板の熱特性を評価することを特徴とする基板評価装置。
【請求項5】
各々の前記複数の端子電極は、前記実装基板の前記複数のパッドボンディングパターンと当接する当接部が半球状を有することを特徴とする請求項4に記載の基板評価装置。
【請求項6】
前記複数の端子電極は、絶縁性の支持部材により共通に支持され、
前記支持部材は、前記荷重印加部によって荷重が加えられることにより、前記実装基板を前記冷却部に押し付ける際の荷重を検出するための荷重検出部を備えることを特徴とする請求項4または5に記載の基板評価装置。
【請求項7】
前記絶縁基板は、250[W/mK]以上の熱伝導率を有する単結晶基板の表面に絶縁膜を形成した基板であることを特徴とする請求項4に記載の基板評価装置。
【請求項8】
前記絶縁基板は、SiC系単結晶基板の表面に絶縁膜を形成した基板であることを特徴とする請求項4に記載の基板評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば次世代ワイドバンドギャップ(WBG)パワー半導体を実装可能なセラミック配線基板の、熱抵抗特性などの評価に用いるための基板評価用チップ及び基板評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パワー半導体を実装可能な絶縁性のセラミック配線基板の熱抵抗特性などを評価するための方法として、定常熱抵抗測定法(JPCA(Japan Electronics Packaging and Circuits Association)法ともいう)が知られている(非特許文献1参照)。定常熱抵抗測定法とは、高輝度LED(Light Emitting Diode)用電子回路基板の熱抵抗を測定する試験方法について規格化したものである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】高輝度LED用電子回路基板試験方法 Test Methods for Electronic Circuit Board for High-Brightness LEDs;JPCA-TMC-LED02T-2010;2010年5月、第1版第1刷発行
【発明の概要】
【0004】
ところで、高輝度LEDなどのパワー半導体においては、耐熱性に優れたSiCやGaN、Gaなどの絶縁基板の採用が検討されており、これらのパワー半導体を実装したパワーモジュールの形成には、耐熱性や放熱性に優れた実装基板が必須となる。
【0005】
パワー半導体を実装するための代表的な実装基板としては、DBC(Direct Bonded Copper)基板やDBA(Direct Bonded Aluminum)基板、AMB(Active Metal Bonding)基板などの、絶縁性のセラミック配線基板が知られている。
【0006】
セラミック配線基板は、これまでセラミックスにアルミナ(Al)を用いたものが主流であったが、より熱伝導性が高い窒化アルミ(AlN)や、靭性の高い窒化ケイ素(Si)が注目されている。
【0007】
このようなセラミック配線基板は、接合界面に熱抵抗を有し、また、温度変化による熱膨張や応力の影響を受けるため、基板全体での熱特性の評価が重要となる。特に、パワー半導体を実装したパワーモジュールに近い状態での、熱特性を精度よく評価する標準的な方法の確立が急務となっていた。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたもので、基板評価用チップを可能な限り均一に発熱させると同時に、実装基板の上昇温度をより正確に測定することが可能となり、実装基板の熱特性を精度良く評価でき、標準化が容易に可能な基板評価用チップ及び基板評価装置を提供することを目的とする。
【0009】
上記課題を達成するため、本発明の第1の態様は、パワー半導体を実装可能な実装基板の熱特性を評価するための試験に用いられる基板評価用チップであって、実装基板に接合される絶縁基板と、絶縁基板の表面に金属膜によって形成され、絶縁基板をより均一に加熱させるために最適化された、所定の形状を有して配置された加熱用パターンとを備える。基板評価用チップは、絶縁基板の表面に金属膜により形成され、加熱用パターンによって加熱された絶縁基板の温度を測定する測温用パターンを更に備えることが好ましい。
【0010】
本発明の第1の態様によれば、次世代パワー半導体を模しながらも、発熱制御と温度測定とに特化した基板評価用チップを実現することができる。即ち、加熱用パターンによって基板評価用チップをほぼ均一に発熱させることが可能となるため、絶縁基板の上昇温度をより正確に測定できるようになる。従って、実際のパワーモジュールによらず、実装基板の熱特性を高精度に評価でき、評価の標準的な方法を容易に確立可能となる。
【0011】
絶縁基板は、250[W/mK]以上の熱伝導率を有することが好ましい。
【0012】
これにより、発熱によるほぼ全ての熱量を、基板評価用チップが実装される実装基板へと効率的に伝導させることが可能となる。
【0013】
絶縁基板は、SiC系単結晶基板の表面に絶縁膜を形成した基板であることが好ましい。
【0014】
これにより、絶縁基板を仮に非真性の半導体(SiC系単結晶基板)とした場合にも、表面に絶縁膜を形成することによって、絶縁基板の耐圧を容易に確保できる。
【0015】
実装基板は、セラミック配線基板であることが好ましい。
【0016】
これにより、絶縁基板全体の熱抵抗を精度良く評価できるようになる。
【0017】
また、本発明の第2の態様は、パワー半導体を実装可能な実装基板の熱特性を実装基板の表面に基板評価用チップを実装させた状態で評価するための試験を行うための基板評価装置であって、実装基板に接合される絶縁基板と、絶縁基板の表面に金属膜によって形成され、絶縁基板をより均一に加熱させるために最適化された、所定の形状を有して形成された加熱用パターンと、絶縁基板の表面に金属膜により形成され、加熱用パターンによって加熱された絶縁基板の温度を測定する測温用パターンとを備えた基板評価用チップと、基板評価用チップが接合されるチップボンディングパターンと、加熱用パターン及び測温用パターンの各電極パッドが接続される複数のパッドボンディングパターンとを備えた実装基板と、実装基板を冷却するための冷却部と、複数のパッドボンディングパターンを介して、実装基板を冷却部に押し付けるための、複数の端子電極を備えた荷重印加部と、複数の端子電極のいくつかを介して、基板評価用チップの加熱用パターンを加熱させることにより、基板評価用チップの絶縁基板の温度を上昇させるための加熱部と、基板評価用チップの測温用パターンにより、複数の端子電極のいくつかを介して、絶縁基板の温度を測定するための測定部とを備え、測定部の測定結果に基づいて実装基板の熱特性を評価する。
【0018】
本発明の第2の態様によれば、パワー半導体を実装可能な実装基板の表面に基板評価用チップを実装させた状態で、実装基板を荷重印加部によって恒温制御される冷却部に押し付けて冷却させると同時に、加熱部によって加熱用パターンを高精度に発熱させることにより、実装基板を間接的に発熱させることが可能となる。このため、加熱用パターンを発熱させるための定常電力と基板評価用チップの上昇温度とから定常熱抵抗値を求めることによって、実装基板の熱特性を高精度に評価できる。
【0019】
各々の端子電極は、実装基板の複数のパッドボンディングパターンと当接する当接部が半球状を有することが好ましい。
【0020】
これにより、実装基板上の各パッドボンディングパターンへの各端子電極の電気的及び熱的な接触が点接触となるため、熱特性の評価の精度を改善することが可能となる。
【0021】
複数の端子電極は、絶縁性の支持部材により共通に支持されることが好ましく、支持部材は、荷重印加部によって荷重が加えられることにより、実装基板を冷却部に押し付ける際の荷重を検出する荷重検出部を備えることが好ましい。
【0022】
これにより、実装基板を押し付けるための荷重を正確に検出できるため、冷却部と実装基板との界面の熱抵抗を容易に制御可能である。
【0023】
本発明の第1の態様と第2の態様によれば、基板評価用チップを可能な限り均一に発熱させると同時に、実装基板の上昇温度をより正確に測定することが可能となり、実装基板の熱特性を精度良く評価でき、標準化が容易に可能な基板評価用チップ及び基板評価装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1(a)は実施形態に係る基板評価装置の構成例を示す概略平面図であり、図1(b)は図1(a)のa1-a1線に沿う概略断面図である。
図2図2は、図1(b)に示す基板評価装置の測定系の要部の拡大図である。
図3図3は、実施形態に係る基板評価装置で用いられる評価用試料の斜視図である。
図4図4(a)―4(d)は、評価用試料における実装基板の一例を示す斜視図である。
図5図5は、実施形態に係る基板評価用チップである疑似発熱チップの概略を示す斜視図である。
図6図6(a)は図5に示す疑似発熱チップの概略平面図であり、図6(b)は図6(a)のb1-b1線に沿う概略断面図であり、図6(c)は図6(a)のb2-b2線に沿う概略断面図である。
図7図7(a)、7(b)は、図5に示す疑似発熱チップの一例を示すパターン図である。
図8図8は、対比例の疑似発熱チップの構成を概略的に示す斜視図である。
図9図9(a)は、実施形態に係る疑似発熱チップにおける熱抵抗とプローブ温度との関係のシミュレーション結果を示すグラフであり、図9(b)は、対比例の疑似発熱チップ40Aにおける熱抵抗とプローブ温度との関係のシミュレーション結果を示すグラフである
図10図10は、実施形態に係る疑似発熱チップと対比例の疑似発熱チップの特性について、熱抵抗と計算により求めた熱抵抗(計算値)との関係を示す図である。
図11図11は、フィン付き加熱用パターンの構成例を示す概略図である。
図12図12(a)は実施形態の加熱用パターンが配置された疑似発熱チップの上面側と下面側の温度分布図であり、図12(b)は図11のフィン付き加熱用パターンが配置された疑似発熱チップの上面側と下面側の温度分布図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を用いて、実施形態を説明する。
【0026】
(基板評価装置1の構成)
図1(a)は実施形態に係る基板評価装置1の構成例を示す概略平面図であり、図1(b)は図1(a)のa1-a1線に沿う概略断面図である。
【0027】
実施形態に係る基板評価装置1は、例えば、高輝度LED用電子回路基板などの、次世代WBGパワー半導体を実装可能な実装基板の熱特性を、実装基板30の表面に基板評価用チップ40を実装させた評価用試料20を用いて疑似的に評価するための試験を行うためのものである。基板評価装置1は、荷重印加部としての荷重制御部(サンプルホルダ)10と、冷却装置12と、加熱部としての加熱電源14と、測定部としての測温センサ16とを備える。評価用試料20の詳細については、後述する。
【0028】
荷重制御部10は、評価用試料20を冷却するための、例えば水冷式のヒートシンク(冷却部)100を備える。ヒートシンク100は、冷却装置12によって所定の温度に恒温制御された冷媒(冷却水)が循環する循環路102を有したコールドプレートである。冷却装置12としては、後述する評価用試料20の発熱量に対して十分な冷却能力(例えば、250[W]、5.4[L/min])を備えたものが用いられる。
【0029】
ヒートシンク100には、評価用試料20の周囲を取り囲むようにして、複数本(実施形態では、8本)の支柱104がほぼ等間隔で設けられている。この8本の支柱104によって、評価用試料20の上方において、絶縁性(例えば、アクリル製)の支持板110が支持される。支持板110は、ナット106によって各支柱104に固定されている。
【0030】
支持板110の上には、金属板(剛体)120を設けるようにしても良い。金属板120は、電極棒(端子電極)130及び荷重制御用のネジ付きシャフト150を避けるための開口部122を有し、ナット106によって各支柱104に固定される。金属板120は、ネジ付きシャフト150によって支持剛体140に荷重を加える際の応力などにより、支持板110が変形(湾曲)するのを抑えるためのもので、支持板110が充分な剛性を有する場合には、金属板120は省略可能である。
【0031】
支持板110は、その中心部付近にナット114が埋め込まれ、このナット114を介して、ネジ付きシャフト150を支持するようになっている。即ち、ネジ付きシャフト150は、支持板110に対して、回転しながら上下動するように支持されている。
【0032】
ネジ付きシャフト150の先端側下端部には、荷重検出部としての荷重センサ素子18aが取り付けられている。また、荷重センサ素子18aを介して、支持部材としての絶縁性(例えば、アクリル製)の支持剛体140が取り付けられている。そして、支持剛体140によって、複数(実施形態では、4本)の電極棒130が共通に支持固定されている。
【0033】
荷重センサ素子18aは、例えば超小型の圧縮型ロードセルである。荷重センサ素子18aは、ロードセル指示計である荷重センサ指示計18(例えば、高速ピークホールド対応デジタルインジケータ)に接続されている。
【0034】
ネジ付きシャフト150の後端側上端部には、取付部152を介して、操作者が操作する操作ハンドル154が取り付けられている。即ち、操作者が操作ハンドル154を操作して、ネジ付きシャフト150を図示矢印Md方向に回動させることにより、操作ハンドル154の操作に応じた荷重が支持剛体140に加えられる。支持剛体140に加えられた荷重は、荷重センサ素子18aによって検出され、荷重センサ指示計18によって操作者が目視可能なようにデジタル表示される。
【0035】
各電極棒130は、例えば、支持剛体140を貫通した状態で、ナット136によって、それぞれ支持剛体140に固定されている。また、各電極棒130の後端側は、支持板110の貫通孔112内に挿通されている。そして、各電極棒130は、支持板110の上方において、それぞれの後端側上端部の近傍にダブルナット134が取り付けられていて、下方向への移動(荷重)が制限されている。
【0036】
各電極棒130の先端側下端部には、評価用試料20との接触部分である当接面としての半球状の当接部132が設けられている。
【0037】
ネジ付きシャフト150により支持剛体140に荷重が加えられることに伴って、各電極棒130に設けられた当接部132により、評価用試料20の裏面側がヒートシンク100の上面に押し付けられる。その際、当接部132は、半球状の曲面とされているため、評価用試料20の平面との接触が最小限の面積とされる。
【0038】
実施形態においては、例えば、4本の電極棒130が評価用試料20を冷却するためにヒートシンク100に押し付ける端子電極であると共に、その内の2本が加熱電源14に接続され、残りの2本が測温センサ16に接続されている。
【0039】
即ち、4本の電極棒130により評価用試料20をヒートシンク100に押し付けながら、加熱電源14に接続された2本の電極棒130によって評価用試料20への加熱用の定常電力Qの供給(通電)が行われ、測温センサ16に接続された2本の電極棒130(測温プローブともいう)によって評価用試料20の上昇温度の測定が行われる。
【0040】
図2は、図1(b)に示した基板評価装置1の測定系の要部を拡大して示すものである。
【0041】
図2に示すように、評価用試料20の裏面側(セラミック配線基板30の裏面側電極パターン36)が、例えば放熱グリース24を介して、ヒートシンク100の上面に配置されている。放熱グリース24は、ヒートシンク100との界面熱抵抗(Rth)をより小さくするために、TIM(Thermal Interface Material)として用いられる、例えば、ナノダイヤモンドグリスである。
【0042】
評価用試料20は、図2、3に示すように、実装基板としてのセラミック配線基板30と、例えば接合用Agペースト22を介してセラミック配線基板30の表面に実装された疑似発熱チップ(基板評価用チップ)40と、ボンディング用のワイヤBW(Auワイヤなど)とを備える。
【0043】
そして、評価(試験)時には、評価用試料20のセラミック配線基板30が電極棒130の当接部132によって所定の荷重によりヒートシンク100に押し付けられた状態において、疑似発熱チップ40がTEG(Test Engineering Group)チップとして実際に駆動制御される。その際、疑似発熱チップ40は、加熱電源14から供給される所定の定常電力Q(Q=I×V)によって、例えば、200[W]/25[mm]程度の発熱密度Hd(負荷発熱量とも称し、単位面積[mm]当たりの定常電力Q[W])となるように駆動される。
【0044】
なお、ヒートシンク100は、評価時に、冷却装置12によって所定の温度(例えば、25[℃])に恒温制御される。
【0045】
(評価用試料20の詳細)
実施形態に係る評価用試料20は、図2、3に示したように、セラミック配線基板30と、セラミック配線基板30の表面に実装された疑似発熱チップ40とを備える。
【0046】
評価用試料20において、セラミック配線基板30は、例えば、次世代WBGパワー半導体を実装可能なDBC(Direct Bonded Copper)基板であって、セラミックス製の薄板32(以下、セラミック板ともいう)と、セラミック板32の一方面(表面)側に形成された表面側電極パターン34と、セラミック板32の他方面(裏面)に形成された裏面側電極パターン36とを備える。
【0047】
セラミック板32には、例えば、Si、AlN、Alなどが材料として用いられる。
【0048】
表面側電極パターン34は、Cu薄膜からなり、疑似発熱チップ40が接合されるチップボンディングパターン34dp(ダイパッドともいう)と、各電極棒130の当接部132が当接されると共に、AuワイヤBWがボンディング接続されるパッドボンディングパターン34epとを備える。
【0049】
表面側電極パターン34としては、例えば図4(a)に示すように、1つのチップボンディングパターン34dpが、ほぼチップサイズにより、セラミック板32の中央部分に配置され、4つのパッドボンディングパターン34epが、セラミック板32の中央部分を除く、周辺部分の各角部に配置されるようにしても良い。
【0050】
即ち、評価用試料20は、例えば図3に示すように、チップボンディングパターン34dpの上に接合用Agペースト22を介して疑似発熱チップ40が接合される。また、各パッドボンディングパターン34epには、疑似発熱チップ40の各電極部(電極パッド)50a、50b、52a、52bがAuワイヤBWを介して接続されると共に、電極棒130のいずれかの当接部132が当接されるようになっている。
【0051】
実施形態の評価用試料20においては、セラミック配線基板30のサイズが約30[mm]角とされると共に、疑似発熱チップ40のサイズが約5[mm]角とされている。なお、疑似発熱チップ40の厚さは約0.33[mm]である。
【0052】
また、便宜上、各AuワイヤBWを1本のワイヤとして図示しているが、発熱時の大電流にも耐えられるようにするために、複数本(例えば、10本)のワイヤを接続し、電流が分散されるようにしても良い。
【0053】
また、実施形態の評価用試料20においては、図4(a)―4(d)に示すように、表面側電極パターン34のパターン形状(デザイン)が異なる複数のセラミック配線基板30のうち、表面側電極パターン34のパターン形状によって変化する、セラミック配線基板30内の熱流路の影響を考慮して、最適なものが採用される。
【0054】
即ち、表面側電極パターン34のパターン形状によって変化すると思われる、セラミック配線基板30内の熱流路の影響を考慮して、例えば図4(b)に示すような、セラミック板32とほぼ同等サイズの1つのチップボンディングパターン34dpが、セラミック板32の中央部分に+字状に配置され、4つのパッドボンディングパターン34epが、その中央部分を除く、周辺部分の各角部に配置されてなる、表面側電極パターン34を採用するようにしても良い。
【0055】
また、図4(c)、4(d)に示すような、1つのチップボンディングパターン34dpが、セラミック板32の中央部分に配置され、4つのパッドボンディングパターン34epを含む複数のパターンが、その中央部分を囲む、周辺部分に配置されてなる、表面側電極パターン34を採用するようにしても良い。
【0056】
なお、図4(a)―4(d)においては、裏面側電極パターン36の図示を省略している。また、電極棒130の本数を「4」とし、4つのパッドボンディングパターン34epを配置するようにした場合について、それぞれ例示している。
【0057】
また、セラミック配線基板30としては、DBC基板に限定されず、例えば、DBA(Direct Bonded Aluminum)基板やAMB(Active Metal Bonding)基板なども適用可能である。
【0058】
一方、評価用試料20において、疑似発熱チップ40は、例えば図5に示すように、絶縁基板42の表面に、Pt薄膜などの金属膜によって平坦に形成された、加熱用パターン(ヒータパターン)46と測温用パターン(プローブパターン)48とを備える。また、絶縁基板42の表面には、加熱用パターン46の各電極部50a、50bと、測温用パターン48の各電極部52a、52bと、が設けられている。
【0059】
絶縁基板42は、250[W/mK]以上、好ましくは400[W/mK]程度の熱伝導率を有することによって、発熱によるほぼ全ての熱量をセラミック配線基板30へと効率的に伝導させることが可能である。
【0060】
絶縁基板42としてはSiC系の真性半導体(高品質ウェハ)が望ましいが、nドープ型のSiC系単結晶基板(例えば、n-doped 4H SiCウェハ)であっても良い。SiC系単結晶基板の表面部に絶縁膜(例えば、Al膜)44を形成することによって、絶縁基板42における耐圧の確保が可能である。
【0061】
即ち、実施形態の疑似発熱チップ40は、図6(a)―6(c)に示すように、nドープ型のSiC系単結晶基板からなる絶縁基板42と、絶縁基板42の表面に成膜された5[μm]厚程度のAl膜44と、Al膜44の表面に30[nm]厚程度のTi膜54を介して成膜された200[nm]厚程度のPt薄膜からなる加熱用パターン46及び測温用パターン48と、加熱用パターン46の両端部に形成された電極部50a、50bと、測温用パターン48の両端部に形成された電極部52a、52bとを備える。加熱用パターン46のTi/Pt薄膜抵抗体の抵抗値は40[Ω]未満(<40[Ω])とされ、測温用パターン48のTi/Pt薄膜抵抗体の抵抗値は50~80[Ω]程度とされている。
【0062】
加熱用パターン46の各電極部50a、50b及び測温用パターン48の各電極部52a、52bは、各々、30[nm]厚程度のCr膜55を介して成膜された1[μm]厚以上のCu膜56と、Cu膜56の上に30[nm]厚程度のCr膜57を介して成膜された200[nm]厚程度のAu膜58とを備える。これにより、低抵抗化と共に、高温下での酸化を抑制できる。
【0063】
疑似発熱チップ40の裏面側には、絶縁基板42の下に30[μm]厚程度のTi膜59を介して成膜された、2[μm]厚程度のAg膜60を備える。
【0064】
加熱用パターン46は、図7(a)、7(b)に示すように、絶縁基板42をできるだけ均一に加熱させることが可能なように、熱抵抗測定の観点から最適化された、所定の形状と寸法とを有して形成されている。
【0065】
即ち、実施形態に係る疑似発熱チップ40は、加熱用パターン46に与えられる定常電力Qが高精度に制御されることによって、可能な限り均一な高精度の発熱を実現するために、加熱用パターン46のサイズや屈曲部の曲率などがデザインされている。
【0066】
特に、評価用試料20の量産化においては、疑似発熱チップ40の成膜の条件を揃えることが、熱特性の再現性にとって重要である。
【0067】
一方、測温用パターン48は、図7(a)、7(b)に示すような寸法と形状とを有して、疑似発熱チップ40の中央付近に配置されて、加熱用パターン46の発熱に伴う、疑似発熱チップ40の代表的な表面温度をより正確に測定できるようになっている。疑似発熱チップ40の代表的な表面温度を正確に測定できることによって、間接的ではあるが、絶縁基板42の上昇温度ΔT(温度差)を高精度に測定することが可能となる。
【0068】
また、絶縁基板42の温度はセラミック配線基板30へと伝導され、セラミック配線基板30の温度を上昇させる。従って、絶縁基板42の上昇温度ΔTを高精度に測定できるようにすることで、疑似発熱チップ40からセラミック配線基板30へと発熱により定量的に伝導される熱量と上昇温度ΔTとから、疑似的ではあるものの、セラミック配線基板30の熱抵抗特性(定常熱抵抗値Rth=ΔT/Q)を高精度に評価することが可能となる。
【0069】
なお、図7(a)、7(b)における各寸法の単位は[mm]である。
【0070】
ここで、加熱用パターン46に関して、有限要素法(FEM)による温度分布及び熱測定のシミュレーションを行った際の結果について説明する。例えば、セラミック配線基板30の熱抵抗を0.615[K/W]と仮定し、疑似発熱チップ40に100[W]を通電したところ、加熱用パターン46での最大温度は110[℃]であり、測温用パターン48での平均温度は大よそ87[℃]であった。この測温用パターン48での平均温度から、セラミック配線基板30の熱抵抗は0.67[K/W]となり、仮定した抵抗値に近い値が得られた。
【0071】
実施形態においては、疑似発熱チップ40の裏面側のAg膜60が、接合用Agペースト22を介して、セラミック配線基板30の表面側電極パターン34のチップボンディングパターン34dpと接合される。また、各電極部50a、50b、52a、52bのAu膜58が、AuワイヤBWを介して、セラミック配線基板30の表面側電極パターン34のいずれかのパッドボンディングパターン34epと接続される。こうして、疑似発熱チップ40がセラミック配線基板30の表面に実装されてなる評価用試料20が構成される。
【0072】
加熱用パターン46の各電極部50a、50bが接続されるパッドボンディングパターン34ep、34epに対しては、加熱電源14に接続された2本の電極棒130が個々に当接される。また、測温用パターン48の各電極部52a、52bが接続されるパッドボンディングパターン34ep、34epに対しては、測温センサ16に接続された2本の電極棒130が個々に当接される。
【0073】
試験時、評価用試料20は、放熱グリース24を介して、ヒートシンク100の上面に配置されるが、熱抵抗特性は、評価用試料20とヒートシンク100との間の界面熱抵抗(Rth)に依存するため、放熱グリース24の塗布状態によっては熱抵抗特性をばらつかせる要因となる。
【0074】
そこで、評価用試料20に対しては、例えば4本の電極棒130により適度な荷重(最大で、70[N]程度)をかけることによって、ヒートシンク100との界面熱抵抗(Rth)をより安定させるようにしている。
【0075】
即ち、界面熱抵抗(Rth)は、評価用試料20をヒートシンク100に押し付ける際の荷重の大きさに影響される。
【0076】
そこで、実施形態の評価用試料20においては、実験(プレ試験)を行って、例えば、定常電力Qを127[W]に固定し、荷重を5[N]から30[N]までサイクリックに変化させたところ、荷重を25~30[N]とした場合に、ヒートシンク100との界面熱抵抗(Rth)が最も安定すること(0.61~0.63[K/W]程度)が分かっている。
【0077】
また、この実験を繰り返し行うことによって、荷重と熱抵抗との間にはサイクル依存性があることや、熱抵抗は、荷重を増加させる場合よりも低下させる場合の方が、より安定することも分かった。
【0078】
一方、実験により、一定荷重(例えば、30[N])とし、定常電力Qを変化させるようにした場合、評価用試料20とヒートシンク100との界面熱抵抗(Rth)は、定常電力Qの増加に伴って収束する傾向を示した。
【0079】
また、この実験を繰り返し行うことによって、定常電力と熱抵抗との間にはサイクル依存性があることも分かった。
【0080】
さらに、荷重(例えば、30[N])及び定常電力Qの電圧値(例えば、80[V])を一定とした定常状態の評価用試料20においては、実験の繰り返しにより、ヒートシンク100との界面熱抵抗(Rth)に、測温センサ16の測定温度(例えば、T_Pt[℃])がクリティカルに影響していることも推察された。
【0081】
これらのことから、荷重が大きい程、放熱グリース24による界面熱抵抗の影響が小さくなり、試験の精度は高くなると推測される。
【0082】
なお、実施形態においては、疑似発熱チップ40の測温用パターン48の温度特性を、例えば評価時の温度に応じて校正可能とすることによって、より高精度な評価を実現できる。
【0083】
(疑似発熱チップの特性)
ここで、実施形態に係る評価用試料20における疑似発熱チップ40の特性について説明する。
【0084】
図8は、実施形態の評価用試料20との対比のために、対比例の疑似発熱チップ40Aの構成例を示す概略斜視図である。
【0085】
図8に示す対比例の疑似発熱チップ40Aは、加熱用パターン46Aの形状が、例えば図5に示した実施形態の疑似発熱チップ40の加熱用パターン46の形状と相違しており、それ以外は同様なので詳細な説明は省略する。
【0086】
即ち、実施形態の疑似発熱チップ40は、絶縁基板42をできるだけ均一に加熱させることが可能な所定の形状を有して加熱用パターン46が形成されているのに対して、対比例の疑似発熱チップ40Aは、若干、その点で劣っている。
【0087】
図9(a)は、実施形態の疑似発熱チップ40における熱抵抗Rth[K/W]とプローブ温度[℃]との関係のシミュレーション結果を示すグラフであり、図9(b)は、対比例の疑似発熱チップ40Aにおける熱抵抗Rth[K/W]とプローブ温度[℃]との関係のシミュレーション結果を示すグラフである。
【0088】
図9(a)、9(b)からも明らかなように、実施形態の疑似発熱チップ40によれば、対比例の疑似発熱チップ40Aに比べて、温度分布の改善が可能である。
【0089】
図10は、実施形態の疑似発熱チップ40と対比例の疑似発熱チップ40Aの特性について、シミュレーションを行った際の結果として、熱抵抗Rth[K/W]と計算により求めた熱抵抗(計算値)Rcalc[K/W]との関係を対比して示すグラフである。
【0090】
図10からも明らかなように、実施形態の疑似発熱チップ40によれば、対比例の疑似発熱チップ40Aに比して、予め設定したサンプル熱抵抗(図中に破線で示す)を、より忠実に再現できる。
【0091】
即ち、加熱用パターン46、46Aに関して、上述した有限要素法(FEM)による温度分布及び熱測定のシミュレーションを行って、例えば、疑似発熱チップ40、40Aの加熱用パターン46、46Aに100[W]を通電し、セラミック配線基板30の熱抵抗を0.6[K/W]から2.0[K/W]まで変化させたところ、疑似発熱チップ40の方がセラミック配線基板30の本来の熱抵抗により近似することが分かった。
【0092】
なお、疑似発熱チップの加熱用パターンとしては様々な形状のデザインが考えられる。図11は、例えば対比例の疑似発熱チップ40Aの加熱用パターン46Aに対して、さらに複数のフィン47を取り付けたフィン付き加熱用パターン46Bを例示している。複数のフィン47によって、疑似発熱チップでの熱のより均一な拡散が期待できる。
【0093】
図12(a)、12(b)は、実施形態の疑似発熱チップ40の加熱用パターン46(図7(b)等参照)と図11のフィン付き加熱用パターン46Bを均一に加熱させた場合(例えば、定常電力Q=200[W])を対比して示すものである。図12(a)は、実施形態の加熱用パターン46が配置された疑似発熱チップ40の上面側と下面側の温度分布を示しめしている。図12(b)は、図11のフィン付き加熱用パターン46Bが配置された疑似発熱チップの上面側と下面側の温度分布を示している。
【0094】
図12(b)からも明らかなように、フィンのない実施形態の加熱用パターン46よりも、複数のフィン47が取り付けられたフィン付き加熱用パターン46Bの方が、疑似発熱チップを全体的に加熱でき、特に、上面側をより均一に加熱させることが可能である。
【0095】
ここで、実施形態の加熱用パターン46において、さらに複数のフィン47を取り付けたフィン付き加熱用パターンとすることもできる。
【0096】
(評価のための試験)
以上のことから、実施形態の疑似発熱チップ40を実装した評価用試料20を用いて基板評価装置1によりセラミック配線基板30の熱特性を評価するための試験を実施することによって、セラミック配線基板30の定常熱抵抗特性を精度良く評価することが可能となる。
【0097】
即ち、実施形態の基板評価装置1においては、まず、ヒートシンク100の表面に評価用試料20が配置された後、操作者によって、操作ハンドル154が操作される。操作時、荷重センサ素子18aによって検出される荷重が、荷重センサ指示計18をモニタしながら調整されることにより、支持剛体140に対して、所定の荷重(例えば、30[N])がかけられる。この荷重に応じて、電極棒130によって評価用試料20が所定の温度(例えば、25[℃])に恒温制御されたヒートシンク100に押し付けられる。
【0098】
この状態において、加熱電源14によって、これに接続された2本の電極棒130を介して、評価用試料20に加熱用の定常電力Q(例えば、200[W]程度)での通電が行われる。この定常電力Qの通電に応じて、例えば、評価用試料20の疑似発熱チップ40がジュール熱により加熱されることによって、加熱用パターン46の発熱に伴って絶縁基板42が加熱される。
【0099】
そして、通電の開始から所定時間が経過し、定常状態になったところで、評価用試料20における疑似発熱チップ40の表面温度が、測温用パターン48及び測温センサ16に接続された2本の電極棒130を介して、測温センサ16によって測定される。これにより、絶縁基板42の上昇温度ΔTの測定が間接的に可能となる。
【0100】
ここで、定常状態でのセラミック配線基板30の厚さ方向の温度勾配(上昇温度)がΔT[℃]になったとすると、セラミック配線基板30の熱抵抗Rth[K/W]は、下記式(1)より求められる。
【0101】
Rth = ΔT/Q … (1)
ここで、Qは、疑似発熱チップ40の発熱量、つまりは通電時の定常電力[W]である。
【0102】
以上により、絶縁基板42の上昇温度ΔTが測定されることによって、この上昇温度ΔTと定常電力Qとから、セラミック配線基板30の定常熱抵抗値Rthが求められる。
【0103】
定常熱抵抗値Rthは、例えば、基板評価装置1を制御するコンピュータ(図示省略)などによって自動的に算出されるようにすることで、実際のパワーモジュールを実際に駆動させた場合とほぼ同様な状態での、セラミック配線基板30の熱特性の評価が疑似的に可能となる。その結果、セラミック配線基板30の熱特性の高精度な評価と、その標準的な方法の確立とを容易に実現できる。
【0104】
実施形態に係る評価用試料20及び基板評価装置1によれば、評価用試料20を可能な限り均一に発熱させると同時に、疑似発熱チップ40の表面の代表的な温度を測定することによって、セラミック配線基板30の上昇温度をより正確に測定することが可能となる。従って、セラミック配線基板30の定常熱抵抗特性を精度良く評価でき、評価の標準化が容易に可能となる。
【0105】
特に、実施形態においては、電力供給と抵抗測定のための電極棒130を介して評価用試料20に荷重を加えるようにしたので、簡素な構成でありながら、評価のための試験を高精度に行うことができる。
【0106】
しかも、各電極棒130の当接部132の、各パッドボンディングパターン34epとの電気的・熱的な接触が最小限の面積となるようにしている。これにより、温度測定の精度が低下されるのを抑制でき、評価の精度の改善が可能となる。
【0107】
また、実施形態によれば、評価用試料20を押し付ける際の荷重を正確に検出できるため、ヒートシンク100とセラミック配線基板30との界面熱抵抗Rthを高精度に制御可能である。
【0108】
実施形態に係る評価用試料20及び基板評価装置1によれば、定常熱抵抗特性に限らず、例えば、セラミック配線基板30の放熱特性や熱衝撃特性などの試験にも適用することが可能である。
【0109】
なお、測温用パターン48による疑似発熱チップ40の表面温度の測定を必要としない場合には、疑似発熱チップ40の構成から、測温用パターン48と、測温用パターン48の両端部に形成された電極部52a、52bとを省略しても良い。
【0110】
また、対流の影響を受けないようにするために、周囲をカバー部材(図示省略)で囲うようにしても良い。
【0111】
以上、実施形態を挙げて本発明を説明したが、実施形態は一例であり、特許請求の範囲に記載される発明の範囲は、発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更できるものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12