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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-12
(45)【発行日】2022-08-22
(54)【発明の名称】ろ過ユニットの洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 29/66 20060101AFI20220815BHJP
   B01D 29/11 20060101ALI20220815BHJP
【FI】
B01D29/38 540
B01D29/38 510C
B01D29/10 510C
B01D29/10 520B
B01D29/10 530A
B01D29/38 520A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018171596
(22)【出願日】2018-09-13
(65)【公開番号】P2020040052
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100187908
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 康平
(72)【発明者】
【氏名】曽根 勲
(72)【発明者】
【氏名】嶋村 重孝
(72)【発明者】
【氏名】白木 国広
(72)【発明者】
【氏名】山田 晃司
(72)【発明者】
【氏名】塩出 賢治
【審査官】瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0200006(US,A1)
【文献】特開昭54-024370(JP,A)
【文献】特開2000-070684(JP,A)
【文献】特開2003-170012(JP,A)
【文献】特開平06-205907(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 24/00-35/04;35/08-37/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水をろ過するためのフィルタと、前記フィルタを収容するハウジングであって原水が充たされる原水空間が形成された前記ハウジングと、を備えたろ過ユニットにおいて、前記フィルタの前記原水空間側を向く表面を洗浄する方法であって、
処理水空間に繋がる経路に位置する気体入口弁を開いて処理水空間に気体を供給して、処理水空間側から原水空間側に圧力をかけて前記フィルタから不純物を剥がす工程と、
前記気体入口弁の開状態を維持しつつ前記原水空間に繋がる流路を所定時間だけ開放することにより、大気圧よりも高圧状態に気体が圧縮された気体層を、前記原水空間内の原水と接触するように前記原水空間内の一部に形成する工程と、
前記原水空間内の圧縮された気体及び原水が前記原水空間から排出されない密閉状態から、前記気体入口弁の開状態を維持しつつ前記原水空間を大気圧に開放することにより、前記気体層を前記原水空間内において膨張させつつ前記原水空間内の不純物を含む原水を排出する工程と、を備えた、ろ過ユニットの洗浄方法。
【請求項2】
前記気体層を膨張させる工程では、膨張した前記気体層により前記原水空間内の原水が前記フィルタの前記表面に沿った方向に押される、請求項1に記載のろ過ユニットの洗浄方法。
【請求項3】
前記フィルタ及び前記ハウジングは、それぞれ上下方向に沿った姿勢で配置され、
前記気体層を形成する工程では、前記原水空間内における原水の液面位置が前記フィルタの長さ方向の中央よりも上側に位置するように前記気体層を形成する、請求項1または2に記載のろ過ユニットの洗浄方法。
【請求項4】
前記気体層を形成する工程の後であって前記気体層を膨張させる工程の前に、前記気体層を加圧する工程をさらに備えた、請求項1~3のいずれか1項に記載のろ過ユニットの洗浄方法。
【請求項5】
前記フィルタは、中空状のものであって、前記原水空間側を向く前記表面である外面と、前記フィルタの中空部側を向く内面と、を含み、
前記気体層を形成する工程では、前記中空部内の水を気体により前記原水空間に押し出した後、前記内面から前記外面に向かって前記フィルタを透過した気体を前記原水空間内で溜めることにより前記気体層を形成する、請求項1~4のいずれか1項に記載のろ過ユニットの洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ろ過ユニットの洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されているように、種々の不純物を含む原水をフィルタに通過させて清浄な処理水を得るろ過ユニットが知られており、当該ろ過ユニットは、様々な水処理技術の分野で利用されている。このろ過ユニットでは、ろ過時間の経過に伴ってフィルタへの不純物の付着量が増加してフィルタの目詰まりが起こるため、定期的に洗浄を行うことによりフィルタを長寿命化させる必要がある。
【0003】
特許文献1には、船舶のバラスト水製造装置に用いられるろ過ユニットにおいて、デプスフィルタを逆洗する方法が記載されている。具体的に、同文献には、ろ過ユニットに原水を供給しながらデプスフィルタの中空部に圧縮空気を供給し、当該圧縮空気を原水と共に排出する逆洗工程を行うことについて記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2010/093025号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたろ過ユニットの洗浄方法では、ろ過中にフィルタの表面に付着した不純物を逆洗によりある程度取り除くことはできるが、その洗浄効果についてはさらなる改善の余地がある。フィルタに付着する不純物の種類は、ろ過ユニットの用途により異なるが、その用途によっては不純物がフィルタに強固に付着して剥がれにくい場合もあるため、洗浄効果がより高いフィルタの洗浄方法が求められる。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ろ過ユニットのフィルタをより効果的に洗浄することが可能なろ過ユニットの洗浄方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面に係るろ過ユニットの洗浄方法は、原水をろ過するためのフィルタと、前記フィルタを収容するハウジングであって原水が充たされる原水空間が形成された前記ハウジングと、を備えたろ過ユニットにおいて、前記フィルタの前記原水空間側を向く表面を洗浄する方法である。このろ過ユニットの洗浄方法は、処理水空間に繋がる経路に位置する気体入口弁を開いて処理水空間に気体を供給して、処理水空間側から原水空間側に圧力をかけて前記フィルタから不純物を剥がす工程と、前記気体入口弁の開状態を維持しつつ前記原水空間に繋がる流路を所定時間だけ開放することにより、大気圧よりも高圧状態に気体が圧縮された気体層を、前記原水空間内の原水と接触するように前記原水空間内の一部に形成する工程と、前記原水空間内の圧縮された気体及び原水が前記原水空間から排出されない密閉状態から、前記気体入口弁の開状態を維持しつつ前記原水空間を大気圧に開放することにより、前記気体層を前記原水空間内において膨張させつつ前記原水空間内の不純物を含む原水を排出する工程と、を備えている。
【0008】
このろ過ユニットの洗浄方法によれば、大気圧よりも高圧状態に気体が圧縮された気体層を原水空間内に形成した後、気体入口弁の開状態を維持しつつ当該原水空間を密閉状態から大気圧に開放することにより、膨張する気体によって原水空間内の原水を押すことができる。これにより、フィルタの表面に沿って流れる原水の勢いが向上し、その結果、ろ過中にフィルタの表面に付着した不純物を、原水の流れにより効果的に取り除くことができる。したがって、本発明のろ過ユニットの洗浄方法によれば、ろ過ユニットのフィルタを効果的に洗浄することが可能となり、フィルタを長寿命化することができる。
【0009】
上記ろ過ユニットの洗浄方法において、前記気体層を膨張させる工程では、膨張した前記気体層により前記原水空間内の原水が前記フィルタの前記表面に沿った方向に押されてもよい。
【0010】
この方法によれば、フィルタの表面に沿って流れる原水の勢いをさらに向上させることができるため、フィルタの表面に付着した不純物をさらに効果的に取り除くことができる。
【0011】
上記ろ過ユニットの洗浄方法において、前記フィルタ及び前記ハウジングは、それぞれ上下方向に沿った姿勢で配置されていてもよい。前記気体層を形成する工程では、前記原水空間内における原水の液面位置が前記フィルタの長さ方向の中央よりも上側に位置するように前記気体層を形成してもよい。
【0012】
この方法によれば、原水空間内で気体層を膨張させる際に、フィルタ表面の広い範囲に亘って原水を流すことができるため、フィルタ表面における洗浄範囲を広く確保することが可能になる。
【0013】
上記ろ過ユニットの洗浄方法は、前記気体層を形成する工程の後であって前記気体層を膨張させる工程の前に、前記気体層を加圧する工程をさらに備えていてもよい。
【0014】
この方法によれば、気体層をより高圧状態に圧縮することができるため、膨張時に気体層が原水を押す力をより高めることができる。その結果、フィルタの表面に沿って流れる原水の勢いを一層高めることができる。
【0015】
上記ろ過ユニットの洗浄方法において、前記フィルタは、中空状のものであって、前記原水空間側を向く前記表面である外面と、前記フィルタの中空部側を向く内面と、を含んでいてもよい。前記気体層を形成する工程では、前記中空部内の水を気体により前記原水空間に押し出した後、前記内面から前記外面に向かって前記フィルタを透過した気体を前記原水空間内で溜めることにより前記気体層を形成してもよい。
【0016】
この方法によれば、フィルタの内面から外面に向かって水及び気体を順次透過させることにより、当該外面から不純物を剥がすことができる。そして、気体層の膨張により付勢された原水の流れにより、フィルタ外面の不純物を洗い流すことができる。
【発明の効果】
【0019】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、ろ過ユニットのフィルタをより効果的に洗浄することが可能なろ過ユニットの洗浄方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】ろ過装置の全体構成を模式的に示す図である。
図2】本発明の実施形態1に係るろ過ユニットの洗浄方法における工程フローを示す図である。
図3】本発明の実施形態1に係るろ過ユニットの洗浄方法における充水工程を説明するための模式図である。
図4】本発明の実施形態1に係るろ過ユニットの洗浄方法におけるろ過工程を説明するための模式図である。
図5】本発明の実施形態1に係るろ過ユニットの洗浄方法における空気層形成工程を説明するための模式図である。
図6】本発明の実施形態1に係るろ過ユニットの洗浄方法における空気層膨張工程を説明するための模式図である。
図7】実施例におけるろ過ユニットの一次側と二次側との差圧の変化を示すグラフである。
図8】比較例におけるろ過ユニットの一次側と二次側との差圧の変化を示すグラフである。
図9】本発明のその他実施形態に係るろ過ユニットの洗浄方法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態に係るろ過ユニットの洗浄方法について詳細に説明する。
【0022】
(実施形態1)
<ろ過装置>
まず、洗浄対象であるろ過ユニット10を備えたろ過装置1の全体構成について、図1を参照して説明する。ろ過装置1は、図略のプールから送られたプール水(原水)をろ過ユニット10によりろ過し、ろ過後の清浄な処理水をプールに送るように構成されている。
【0023】
図1に示すように、ろ過装置1は、ろ過ユニット10と、ろ過ユニット10に圧縮空気A1を供給するためのエアーコンプレッサ20と、ろ過ユニット10に原水W1(プールから送られたプール水)を供給するためのろ過ポンプ30と、これらの機器を互いに接続する配管と、当該配管に設けられた各種開閉弁と、を主に備えている。なお、図1は、ろ過装置1における主要な構成要素のみを示しており、ろ過装置1は、図1に現れていない他の構成要素もさらに備え得る。以下、ろ過装置1の各構成要素についてそれぞれ説明する。
【0024】
ろ過ユニット10は、原水W1をろ過して清浄な処理水W2を得るためのものであり、原水W1をろ過するためのフィルタ11と、当該フィルタ11を収容するハウジング12と、を主に有している。
【0025】
フィルタ11は、例えばデプスフィルタであり、中空円筒形状を有し且つ円筒軸が上下方向(鉛直方向)に沿った姿勢で配置されている。より具体的には、図1に示すように、フィルタ11は、外面11Aと、当該フィルタ11の中空部11C側を向く内面11Bと、を含み、外面11Aから内面11Bに向かって原水W1を透過させて中空部11Cから処理水W2を取り出す外圧全量ろ過式の構成となっている。なお、フィルタは、本実施形態において用いられるデプスフィルタに限定されるものではなく、例えば中空糸膜などの他のろ過材であってもよい。
【0026】
ハウジング12は、フィルタ11を収容する円筒形状の容器であり、フィルタ11と同様に円筒軸が上下方向に沿った姿勢で配置されている。図1に示すように、ハウジング12の軸方向の長さは、フィルタ11の軸方向の長さよりも大きくなっている。ハウジング12内には、複数本(例えば4本)のフィルタ11が収容されていてもよいが、これに限定されず、一本のフィルタ11のみが収容されていてもよい。
【0027】
ハウジング12内には、原水W1が充たされる原水空間12Aと、フィルタ11の中空部11Cから処理水W2が流入する処理水空間12B,12Cと、がそれぞれ形成されている。原水空間12Aは、フィルタ11の外面11Aを取り囲むように、ハウジング12内に形成されている。つまり、フィルタ11の外面11Aは、ハウジング12の原水空間12A側を向く面(原水空間12Aに臨む面)である。
【0028】
図1に示すように、処理水空間12B,12Cは、ハウジング12の上部及び下部にそれぞれ形成されている(上側処理水空間12B、下側処理水空間12C)。処理水空間12B,12Cは、それぞれフィルタ11の中空部11Cと連通しており、且つ仕切り部12Dにより原水空間12Aに対して液密に仕切られている。これにより、ハウジング12内における原水W1と処理水W2との混水が防止される。
【0029】
ハウジング12には、当該ハウジング12内に原水W1を導入するための原水入口13と、ハウジング12から処理水W2を取り出すための処理水出口16,17(上側処理水出口16、下側処理水出口17)と、ハウジング12内に圧縮空気A1を導入するための空気入口14,15(上側空気入口14、下側空気入口15)と、が設けられている。原水入口13は、原水空間12Aと連通するように、ハウジング12の側面における上下方向の中央よりも下側の部位(フィルタ11の長さ方向の中央よりも下側)に設けられている。処理水出口16,17は、処理水空間12B,12Cと連通するように、ハウジング12の上部及び下部にそれぞれ設けられている。空気入口14,15は、処理水空間12B,12Cと連通するように、ハウジング12の側面における上下方向の中央よりも上側及び下側の部位にそれぞれ設けられている。
【0030】
上記構成を備えたろ過ユニット10によれば、原水入口13を通じて原水空間12A内に導入された原水W1を、フィルタ11の外面11Aから内面11Bに向かって透過させることにより、原水W1をろ過することができる。そして、ろ過後の処理水W2を、フィルタ11の中空部11Cから処理水空間12B,12Cに取り出し、処理水出口16,17を通じてハウジング12の外に取り出すことができる。すなわち、本実施形態におけるろ過ユニット10では、ハウジング12の上部及び下部のそれぞれから処理水W2が取り出される。
【0031】
エアーコンプレッサ20は、例えば0.8MPaに圧縮された圧縮空気A1を発生させるものであり、第1空気導入経路22を介してハウジング12の上側空気入口14に接続されている。第1空気導入経路22には、当該第1空気導入経路22内における圧縮空気A1の流通及び遮断を切り替える空気入口弁21が設けられている。この空気入口弁21は、例えばエア駆動式のボール弁(開閉弁)である。
【0032】
また図1に示すように、第1空気導入経路22における空気入口弁21よりも下流側の部位P1から第2空気導入経路23が分岐しており、当該第2空気導入経路23はハウジング12の下側空気入口15に接続されている。この構成によれば、空気入口弁21を開くことにより、エアーコンプレッサ20で発生させた圧縮空気A1を、第1空気導入経路22及び第2空気導入経路23を通じて、ハウジング12の処理水空間12B,12Cのそれぞれに導入することができる。
【0033】
ろ過ポンプ30は、図略のプールから返送された原水W1をろ過ユニット10に向けて送り出すためのものである。図1に示すように、ろ過ポンプ30は、原水導入経路32を介してハウジング12の原水入口13に接続されている。
【0034】
原水導入経路32には、当該原水導入経路32内における原水W1の流通及び遮断を切り替える原水入口弁31が設けられている。原水入口弁31は、例えばエア駆動式のバタフライ弁(開閉弁)である。ろ過ポンプ30を作動させると共に原水入口弁31を開くことにより、ハウジング12の原水空間12A内に原水W1を導入することができる。
【0035】
図1に示すように、ハウジング12の上側処理水出口16には、当該上側処理水出口16から導出された処理水W2を図略のプールに導くための上側処理水経路41が接続されている。上側処理水経路41には、当該上側処理水経路41内における処理水W2の流通及び遮断を切り替える処理水出口弁42が設けられている。処理水出口弁42は、原水入口弁31と同様に、例えばエア駆動式のバタフライ弁(開閉弁)である。
【0036】
ハウジング12の下側処理水出口17には、当該下側処理水出口17から導出された処理水W2が流れる下側処理水経路43が接続されている。下側処理水経路43は、上側処理水経路41における処理水出口弁42よりも上流側の部位P2に接続されている。処理水出口弁42を開くことにより、ハウジング12の上部及び下部のそれぞれから導出された清浄な処理水W2を、プールに導くことができる。
【0037】
図1に示すように、原水導入経路32における原水入口弁31よりも下流側の部位P3には、排水経路62の上流端が接続されている。排水経路62には、当該排水経路62内における水の流通及び遮断を切り替える排水弁61が設けられている。この排水弁61は、原水入口弁31などと同様に、例えばエア駆動式のバタフライ弁(開閉弁)である。原水入口弁31を閉じ且つ排水弁61を開くことにより、ハウジング12の原水空間12A内の水を、排水経路62を通じて排出することができる。また排水経路62の下流端は、大気開放されている。
【0038】
また図1に示すように、ろ過装置1には、上側処理水経路41における処理水出口弁42よりも上流側で且つ下側処理水経路43の合流点(部位P2)よりも下流側の部位P4と、排水経路62における排水弁61よりも下流側の部位P5と、を接続する空気抜き経路52がさらに設けられている。空気抜き経路52には、例えばエア駆動式のボール弁(開閉弁)である空気抜き弁51が設けられている。
【0039】
ろ過装置1は、当該ろ過装置1の運転を制御するコンピュータである制御部70をさらに備えている。制御部70は、空気入口弁21、原水入口弁31、処理水出口弁42、排水弁61及び空気抜き弁51の開閉を制御し、且つろ過ポンプ30の作動のオン/オフを制御する。
【0040】
なお、図1に示すろ過装置1では、一つのろ過ユニット10のみが設けられているが、これに限定されず、複数のろ過ユニット10が並列に設けられていてもよい。
【0041】
<ろ過ユニットの洗浄方法>
次に、本実施形態に係るろ過ユニットの洗浄方法について、図1図6を参照して説明する。本実施形態に係るろ過ユニットの洗浄方法は、上記ろ過ユニット10において、フィルタ11の外面11Aを洗浄する方法である。
【0042】
図2は、本実施形態に係るろ過ユニットの洗浄方法において順次実施される工程を示すと共に、各工程におけるろ過ポンプ30の作動状態及び各弁の開閉状態を示している。図2中に付された丸印は、ろ過ポンプ30のオン状態及び各弁の開状態を示しており、一方で図2中の空欄は、ろ過ポンプ30のオフ状態及び各弁の閉状態を示している。
【0043】
図2に示す各工程におけるろ過ポンプ30の作動状態及び各弁21、31、42、51、61の開閉状態の情報は、運転プログラムとして制御部70(図1)に記憶されている。したがって、本実施形態に係るろ過ユニットの洗浄方法では、当該運転プログラムを実行することにより、ろ過ポンプ30のオン/オフ及び各弁21、31、42、51、61の開閉が図2に示す通りに順次自動で切り替えられ、充水工程、ろ過工程及び逆洗工程が順に実行される。以下、図2に示す工程フローに従って、本実施形態に係るろ過ユニットの洗浄方法について詳細に説明する。
【0044】
まず、充水工程では、空気抜き弁51を所定時間(例えば0.5秒間)開くことによりハウジング12内の空気を抜き、その後、原水入口弁31をさらに開いて所定時間(例えば2秒間)待機する。そして、ろ過ポンプ30を所定時間(例えば10秒間)作動させる。
【0045】
これにより、図3に示すように、原水入口13からハウジング12の原水空間12A内に原水W1が導入され、当該原水空間12Aが原水W1により充たされる。そして、原水W1が外面11Aから内面11Bに向かってフィルタ11を透過することにより、原水W1に含まれる種々の不純物(例えば土壌、繊維屑や藻類など)がフィルタ11の外面11A又はフィルタ11の肉厚部に付着し、原水W1がろ過処理される。
【0046】
なお、原水W1に含まれる土壌は、例えばプール利用者の身体に付着してプール水中に混入したものであり、また学校に設置されたプールであれば、例えば運動場から風で飛ばされてプール水中に混入したものである。また原水W1に含まれる繊維屑は、例えばプール利用者が使用するタオルや、プール利用者の着衣などに由来するものである。また原水W1に含まれる藻類は、原水W1の遊離残留塩素濃度が所定の範囲内に管理されていない場合や、当該所定の範囲内に管理されていても塩素に対する藻類の耐性が勝る場合に、藻類が繁殖することなどに由来するものである。なお、例えば、遊泳用プールの水質基準としては、主に塩素系滅菌剤により、水中の遊離残留塩素濃度を0.4mg/L以上1.0mg/L以下に管理することが定められている。
【0047】
処理水W2は、フィルタ11の中空部11Cから上側処理水空間12B及び下側処理水空間12Cのそれぞれに流入し、その後、上側処理水出口16及び下側処理水出口17を通じてハウジング12の外に取り出される。この時、ハウジング12内の空気も抜かれる。
【0048】
次に、ろ過工程では、処理水出口弁42をさらに開いて所定時間(例えば2秒間)待機し、続いて空気抜き弁51を閉じる。そして、原水入口弁31及び処理水出口弁42がそれぞれ開いた状態で、ろ過ポンプ30を所定時間(例えば120分間)作動させる。
【0049】
これにより、図4に示すように、処理水W2が上側処理水出口16及び下側処理水出口17のそれぞれを通じてハウジング12の外に取り出される。そして、図1に示すように、上側処理水経路41及び下側処理水経路43のそれぞれを通じて、処理水W2が図略のプールに導かれる。
【0050】
ここで、ろ過時間の経過に伴ってフィルタ11への不純物の付着量が次第に増加し、フィルタ11の目詰まりが起こることがある。そこで、当該目詰まりを解消させてフィルタ11の寿命を延ばすために、以下に説明するフィルタ11の逆洗工程が行われる。
【0051】
図5に示すように、逆洗工程の開始時点では、ハウジング12の原水空間12A全体が原水W1で充たされると共に、フィルタ11の中空部11Cが処理水W2で充たされている。逆洗工程では、まず、ろ過ポンプ30の作動を停止した状態で所定時間(例えば2秒間)待機し、続いて処理水出口弁42を閉状態に切り替えた状態でさらに所定時間(例えば2秒間)待機し、その後、原水入口弁31を閉状態に切り替えた状態でさらに所定時間(例えば2秒間)待機する。
【0052】
次に、フィルタ11の中空部11C内の処理水W2を圧縮空気A1により加圧する。具体的には、空気入口弁21を所定時間(例えば5秒間)開く。これにより、エアーコンプレッサ20で発生した圧縮空気A1が第1空気導入経路22及び第2空気導入経路23を通じてハウジング12の上側処理水空間12B及び下側処理水空間12C内にそれぞれ導入される。そして、図5に示すように、フィルタ11の中空部11C内に残った処理水W2が、圧縮空気A1により内面11Bから外面11Aに向かって加圧される。これにより、フィルタ11の中空部11C内の処理水W2及びフィルタ11の肉厚部に含まれる水が動き、フィルタ11の外面11Aに付着した不純物を剥がす力が働く。
【0053】
次に、図6に示すように、原水空間12A内の原水W1と接触するように当該原水空間12A内の一部に空気層100(気体層)を形成する(空気層形成工程)。具体的には、図2に示すように、空気入口弁21の開状態を維持しつつ、排水弁61を所定時間だけ開く。
【0054】
これにより、原水空間12Aに充たされた原水W1の一部が、原水入口13を通じて当該原水空間12Aから抜かれると共に、フィルタ11の中空部11C内の処理水W2が圧縮空気A1(気体)により全て原水空間12Aに押し出される。その後、内面11Bから外面11Aに向かってフィルタ11を透過した圧縮空気A1が、原水空間12Aの上部に溜まる。これにより、図6に示すように、原水空間12Aにおける上側の仕切り部12Dの真下に空気層100が形成されると共に、当該空気層100の下側に原水W1が残った状態となる。このように、空気層100を形成する際に、フィルタ11の内面11Bから外面11Aに向かって処理水W2及び圧縮空気A1が順に透過することにより、当該外面11Aから不純物(濁質成分)が剥がされる。
【0055】
空気層100では、空気が大気圧よりも高圧状態に圧縮されている。具体的には、空気層100における空気の圧力は、大気圧を超え且つ0.5MPa以下となっている。空気層100における空気の圧力に上限値を設定する理由は、ハウジング12の耐圧性(ハウジング12の設計耐圧)を考慮したためである。なお、圧縮空気A1がフィルタ11を透過する際に圧力損失が生じるため、空気層100における空気の圧力は、エアーコンプレッサ20で発生させた時点での圧縮空気A1の圧力(例えば0.8MPa)よりも低くなっている。
【0056】
また図6に示すように、空気層100は、当該空気層100の形成後における原水空間12A内の原水W1の液面位置がフィルタ11の長さ方向(上下方向)の中央よりも上側に位置するように形成される。これにより、後の工程で原水W1を排水する際に、フィルタ11の外面11Aを広い範囲に亘って洗浄することが可能になる。
【0057】
また空気層形成工程では、空気入口弁21及び排水弁61の両弁を開状態とする時間、すなわち原水空間12Aから原水W1を抜く時間は、特に限定されないが、本実施形態においては2秒以上に設定される。
【0058】
次に、空気層100をさらに加圧する工程が行われる(空気層加圧工程)。具体的には、図2に示すように、排水弁61を閉じると共に、空気入口弁21が開いた状態を所定時間(例えば30秒間)維持する。これにより、圧縮空気A1がフィルタ11の内面11Bから外面11Aに向かって透過し、密閉状態の原水空間12A内に圧縮空気A1がさらに送り込まれる。この時、排水弁61が閉じており、原水空間12Aから原水W1が抜かれないため、空気層100における空気の圧力がさらに高められる。
【0059】
次に、原水空間12Aを密閉状態から大気圧に開放することにより、空気層100を原水空間12A内において膨張させる(空気層膨張工程)。具体的には、図2に示すように、空気入口弁21の開状態を維持しつつ、排水弁61を所定時間(例えば7秒間)開く。
【0060】
空気層100が膨張すると、図6中の矢印F1で示すように、空気層100の下側に溜まった原水W1の液面が、下向き(フィルタ11の外面11Aに沿った方向)に強く押される。これにより、フィルタ11の外面11Aに沿って原水入口13に向かう下向きの原水の流れF2が瞬発的に付勢(加速)される。その結果、フィルタ11の外面11A上の不純物を、当該原水の流れF2によって効果的に取り除くことができる。そして、不純物を含む原水W1は、原水入口13を通じてハウジング12の外に排出される。つまり、原水入口13は、原水W1の排水口も兼ねている。
【0061】
その後、図2に示すように、空気入口弁21を閉じて排水弁61のみが開いた状態を所定時間(例えば2秒間)維持し、さらに空気抜き弁51を開いて所定時間(例えば30秒間)待機することによりハウジング12内を常圧(大気圧)に戻す。以上のような手順により、フィルタ11の外面11Aに付着した土壌や繊維屑などの不純物が取り除かれ、フィルタ11を再生することができる。その後、上述した充水工程及びろ過工程が再開される。
【0062】
以上の通り、本実施形態に係るろ過ユニットの洗浄方法によれば、大気圧よりも高圧状態に空気が圧縮された空気層100を原水空間12A内の上部に形成した後、当該原水空間12Aを密閉状態から大気圧下に開放することにより、膨張する空気の力によって原水空間12A内の原水W1の液面を原水入口13に向かって下向きに押すことができる。これにより、フィルタ11の外面11Aに沿って下向きに流れる原水W1の勢いが大幅に向上し、その結果、ろ過中にフィルタ11の外面11Aに付着した不純物(土壌、繊維屑や藻類)を、原水W1の流れF2により効果的に取り除くことができる。またこの洗浄方法では、原水W1の排水量を増やすことなく洗浄効果を高めることができ、エアーコンプレッサ20のタンク容量を小さくすることもできる。
【0063】
特にプール水のろ過においては、土壌や繊維屑などの不純物が突発的に多く混入し、フィルタ11の外面11Aに付着する不純物が剥がれにくく、フィルタ11が短期間で目詰まりしてしまうという問題がある。これに対し、本実施形態に係るろ過ユニットの洗浄方法によれば、このような問題を解消し、フィルタ11を長寿命化させることができる。
【0064】
本実施形態に係るろ過ユニットの洗浄方法による効果は、図7及び図8にそれぞれ示す実験結果の比較により示される。図7は、本実施形態に係るろ過ユニットの洗浄方法を用いてフィルタ11を定期的に洗浄しつつろ過装置1の運転を所定期間継続した時の、(A)ろ過ユニット10の一次側(入口側)の圧力の経時変化、(B)ろ過ユニット10の二次側(出口側)の圧力の経時変化、(C)ろ過ユニット10の一次側と二次側との差圧の経時変化、をそれぞれ示している。フィルタ11としては孔径3μmのデプスフィルタを使用し、60分間のろ過時間の経過毎にフィルタ11の洗浄を行った。
【0065】
図8は、比較例の洗浄方法を用いてフィルタを定期的に洗浄しつつろ過装置の運転を所定期間継続した時の、(A)ろ過ユニットの一次側(入口側)の圧力の経時変化、(B)ろ過ユニットの二次側(出口側)の圧力の経時変化、(C)ろ過ユニットの一次側と二次側との差圧の経時変化をそれぞれ示している。比較例において採用した洗浄方法は、原水空間内に空気層を形成した後当該空気層を膨張させる方法ではなく、フィルタの中空部内の処理水を一定時間加圧した後に排水弁を開き、フィルタの中空部内の処理水及び原水空間内の原水をハウジング内から一段階で排出する方法である。フィルタとしては孔径3μmのデプスフィルタを使用し、60分間のろ過時間の経過毎にフィルタの洗浄を行った。図7及び図8のそれぞれのグラフにおいて、横軸は時間(日数)を示しており、縦軸は圧力を示している。
【0066】
図8の比較例の実験結果では、ろ過運転開始から3カ月の時点でろ過ユニットの前後の差圧(C)が急激に上昇し、フィルタの詰まりが確認された。これに対し、図7の実験結果では、ろ過運転開始から7カ月以上経過した時点でもろ過ユニット10の前後の差圧上昇が見られなかった。このように、本実施形態に係るろ過ユニットの洗浄方法によれば、フィルタ11の外面11Aに付着した不純物を効果的に除去して洗浄効果を高めることができるため、フィルタ11の寿命をより延ばすことができる。これにより、フィルタ11の交換頻度を少なくすることができる。
【0067】
なお、図7の実験結果は、空気層100を形成する際に、排水弁61を2秒間だけ開いた時の結果であるが、当該時間が1秒間である場合には洗浄効果の低下が確認された。このため、上述の実施形態で説明した通り、空気層100を形成する際に排水弁61を開く時間(原水空間12Aから原水W1を抜く時間)は、2秒以上であることが好ましい。
【0068】
一方、空気層100を形成する際の排水弁61の開時間が長すぎると、原水空間12Aにおける原水W1の液面が過度に下がり、空気層100を膨張させた時の原水W1の流れF2によって洗浄されるフィルタ11の範囲が狭くなる。したがって、上述した通り、空気層100の形成後において原水空間12A内における原水W1の液面位置がフィルタ11の長さ方向における中央よりも上側に位置するように、空気層100の体積を調整することが好ましい。
【0069】
(その他実施形態)
ここで、本発明のその他実施形態について説明する。
【0070】
実施形態1では、フィルタ11の内面11Bから外面11Aに向かって透過させた圧縮空気A1を原水空間12A内で溜めることにより空気層100を形成する場合について説明したが、本発明のろ過ユニットの洗浄方法はこれに限定されない。例えば、図9に示すように、ハウジング12の側面における上下方向の中央よりも上側の部位に原水空間12Aと連通する気体導入口19を設け、当該気体導入口19から圧縮空気A1を導入することにより空気層100が形成されてもよい。
【0071】
実施形態1では、プール水(原水W1)をろ過するためのろ過ユニット10を洗浄する場合について説明したが、本発明のろ過ユニットの洗浄方法の用途はこれに限定されない。例えば、井戸水を浄化処理するためのろ過ユニットのフィルタ洗浄において、本発明のろ過ユニットの洗浄方法が用いられてもよい。
【0072】
実施形態1では、気体層が空気層100である場合について説明したが、本発明のろ過ユニットの洗浄方法はこれに限定されない。例えば、窒素などの空気以外の気体により気体層が形成されてもよい。
【0073】
実施形態1では、空気層100を形成した後、さらに当該空気層100を加圧する工程を行う場合について説明したが、当該加圧工程が省略されてもよい。
【0074】
実施形態1では、ろ過ポンプ30のオン/オフ及び各弁21,31,42,51,61の開閉が制御部70により自動で切り替えられる場合について説明したが、本発明のろ過ユニットの洗浄方法はこれに限定されない。すなわち、ろ過ポンプ30のオン/オフ及び各弁21,31,42,51,61の開閉が、手動で切り替えられてもよい。
【0075】
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと解されるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0076】
10 ろ過ユニット
11 フィルタ
11A 外面(表面)
11B 内面
11C 中空部
12 ハウジング
12A 原水空間
100 空気層(気体層)
W1 原水
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9