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特許7122921液体アルカリ性洗浄剤組成物および洗浄方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-12
(45)【発行日】2022-08-22
(54)【発明の名称】液体アルカリ性洗浄剤組成物および洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   C11D 3/48 20060101AFI20220815BHJP
   C11D 17/08 20060101ALI20220815BHJP
   C11D 1/04 20060101ALI20220815BHJP
   C11D 1/75 20060101ALI20220815BHJP
   C11D 3/04 20060101ALI20220815BHJP
   C11D 3/08 20060101ALI20220815BHJP
   C11D 3/06 20060101ALI20220815BHJP
   B08B 3/08 20060101ALI20220815BHJP
【FI】
C11D3/48
C11D17/08
C11D1/04
C11D1/75
C11D3/04
C11D3/08
C11D3/06
B08B3/08 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018178467
(22)【出願日】2018-09-25
(65)【公開番号】P2020050694
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(73)【特許権者】
【識別番号】593085808
【氏名又は名称】ADEKAクリーンエイド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077573
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100123009
【弁理士】
【氏名又は名称】栗田 由貴子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 綾
【審査官】柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-108552(JP,A)
【文献】特開2015-151462(JP,A)
【文献】特開平06-256798(JP,A)
【文献】特開2012-149226(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D
B08B 3/08
C23G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分として塩素系酸化剤0.1質量%以上、10質量%以下、
(B)成分として炭素数10~14の脂肪酸及び/又はその塩0.01質量%以上、0.45質量%以下、
(C)成分としてデシルジメチルアミンオキサイド1質量%以上、12質量%以下、
(D)成分としてドデシルジメチルアミンオキサイド0.01質量%以上、3質量%以下、
(E)成分としてアルカリ金属水酸化物0.1質量%以上、10質量%以下、
(F)成分として水、
を含有し、前記(C)成分と前記(D)成分の質量比が、(C)成分/(D)成分の値で以上、30以下であることを特徴とする液体アルカリ性洗浄剤組成物。
【請求項2】
前記(B)成分が、ラウリン酸又はその塩と、ミリスチン酸又はその塩とを含有し、
質量比で、(ラウリン酸又はその塩)/(ミリスチン酸又はその塩)の値が0.05以上、40以下である請求項1に記載の液体アルカリ性洗浄剤組成物。
【請求項3】
さらに(G)成分として、珪酸塩を含有する請求項1又は2に記載の液体アルカリ性洗浄剤組成物。
【請求項4】
さらに(H)成分として、ホスホン酸、ホスフィン酸、ホスフィノカルボン酸、縮合リン酸又はそれらの塩より選ばれた少なくとも一種以上を含有する請求項1から3のいずれか一項に記載の液体アルカリ性洗浄剤組成物。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の液体アルカリ性洗浄剤組成物を被洗浄物に泡状に噴射し洗浄することを特徴とする洗浄方法。
【請求項6】
前記液体アルカリ性洗浄剤組成物を、1倍を超えて100倍以下の希釈倍率に、予め希釈し、及び/又は、希釈しながら前記被洗浄物に泡状に噴射し洗浄する請求項5に記載の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に調理設備及び食品加工設備で使用することができる洗浄剤組成物であって、起泡性を有し、洗浄性に優れ、かつ、すすぎ時の泡切れ性に優れた液体洗浄剤組成物及びその洗浄剤組成物を用いた洗浄方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、学校、病院、社員食堂、食品加工工場等における厨房、作業場の壁、床など、特にタイルや金属の壁等の垂直な硬表面の洗浄においては、衛生面などの点から泡洗浄機を用いた発泡洗浄方法が採られている。発泡洗浄では、洗浄剤組成物の原液ないしは、水で1倍超~100倍に希釈した希釈液を泡洗浄機に投入し、水圧や空圧によって起泡させた泡を被洗浄物表面に噴射させて、一定時間保持させた後、ブラシやスポンジを用いてこするか、又はこすらずに水ですすぐことにより洗浄・除菌を行っている。このような発泡洗浄では、洗浄剤を泡状に塗布することで、被洗浄物表面における洗浄剤の滞留時間が長くなり、洗浄・除菌効果が向上する。
【0003】
発泡洗浄に用いる洗浄剤組成物は、従来、起泡性や泡の安定性を重視して開発がなされていたが、従来の洗浄剤組成物は、すすぎ時に泡がなかなか切れずに多量のすすぎ水を用いてすすがなければならないという問題を有し、掃除の利便性や節水の点から、洗浄時には十分な泡が立ちながらも、水ですすぐ際のすすぎ性が良好で泡切れが良いことが求められている。
【0004】
従来の発泡洗浄に用いる洗浄剤組成物として、下記特許文献1には、アルカリ剤とアニオン界面活性剤、炭素原子数が8~18のアルキル基を有するアルキルジメチルアミンオキサイド、炭素原子数6~14の脂肪酸又はその塩を含有する発泡洗浄剤組成物が開示されている。特許文献1には、上記構成を備える発泡洗浄剤組成物は、泡の滞留性に優れると説明されている。
下記特許文献2には、酸化性ハロゲン酸、炭化水素基の炭素数8~14のアミンオキサイド型界面活性剤、炭素数12~14の脂肪酸を含有する洗浄剤組成物が開示されている。特許文献2には、上記構成を備える洗浄剤組成物は起泡性、泡安定性、泡切れ性に優れると説明されている。
また、本出願人は、下記引用文献3において、酸化剤、炭素数14~22の脂肪酸及び/又はその塩、炭素数8~18のアルキルジメチルアミンオキサイド及び/又はアルケニルジメチルアミンオキサイド、有機ホスホン酸又はその塩及び/又は縮合リン酸又はその塩を含有する液体洗浄剤組成物を提案している。引用文献3に記載の液体洗浄剤組成物は、洗浄性が高く、かつすすぎ時の泡切れ性が改善されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-249383号公報
【文献】特開2012-149226号公報
【文献】特開2016-108552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の起泡性の液体洗浄剤組成物は、以下の問題を有していた。即ち、特許文献1に記載の洗浄剤組成物は、泡の滞留性および洗浄性には優れるものの、すすぎ時の泡切れ性については難があった。一方、引用文献2および3に記載の洗浄剤組成物は、すすぎ時の泡切れ性は改善されているが、油汚れに対する洗浄性が十分ではなかった。また節水等の観点から、引用文献2および3に記載の洗浄剤組成物は、すすぎ時の泡切れ性について、更に満足のいくものが求められていた。
【0007】
本発明は上記問題に鑑みなされたものである。即ち、本発明は、起泡性を有し、洗浄性、特には油汚れに対する洗浄性に優れ、かつすすぎ時の泡切れ性がさらに改善された液体アルカリ性洗浄剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の液体アルカリ性洗浄剤組成物は、(A)成分として塩素系酸化剤0.1質量%以上、10質量%以下、(B)成分として炭素数10~14の脂肪酸及び/又はその塩0.01質量%以上、0.45質量%以下、(C)成分としてデシルジメチルアミンオキサイド1質量%以上、12質量%以下、(D)成分としてドデシルジメチルアミンオキサイド0.01質量%以上、3質量%以下、(E)成分としてアルカリ金属水酸化物0.1質量%以上、10質量%以下、(F)成分として水、を含有し、前記(C)成分と前記(D)成分の質量比が、(C)成分/(D)成分の値で以上、30以下であることを特徴とする。
【0009】
また本発明の洗浄方法は、本発明の液体アルカリ性洗浄剤組成物を被洗浄物に泡状に噴射し洗浄することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の液体アルカリ性洗浄剤組成物は、起泡性を有し、洗浄性、特には油汚れに対する洗浄性に優れ、かつすすぎ時の泡切れ性にも優れる。本発明の洗浄方法は、本発明の液体アルカリ性洗浄剤組成物の効果を享受し、高い洗浄性を示す上、すすぎ時の泡切れ性も良く、節水性や作業性が良好である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(液体アルカリ性洗浄剤組成物)
本発明の液体アルカリ性洗浄剤組成物は、(A)成分として塩素系酸化剤0.1質量%以上、10質量%以下、(B)成分として炭素数10~14の脂肪酸及び/又はその塩0.01質量%以上、0.45質量%以下、(C)成分としてデシルジメチルアミンオキサイド1質量%以上、12質量%以下、(D)成分としてドデシルジメチルアミンオキサイド0.01質量%以上、3質量%以下、(E)成分としてアルカリ金属水酸化物0.1質量%以上、10質量%以下、(F)成分として水、を含有する。上記(C)成分と上記(D)成分の質量比は、(C)成分/(D)成分の値で4以上、200以下に調整される。
かかる構成を備える本発明の液体アルカリ性洗浄剤組成物(以下、単に本発明の洗浄剤組成物ともいう)は、起泡性を有し発泡洗浄剤として使用することができる。かかる本発明の洗浄剤組成物は、洗浄性、特には油汚れに対する洗浄性に優れ、また除菌性の効果も高い上、すすぎ時の泡切れ性にも優れる。したがって本発明の洗浄剤組成物は、掃除の利便性や節水性に優れ、かつ被洗浄対象物の衛生を良好に維持することができる。
【0012】
本発明の洗浄剤組成物は、以下のさらなる効果を発揮し得る。即ち、本発明の洗浄剤組成物は、金属腐食防止性に優れ、金属製の被洗浄対象物、並びに調理設備及び食品加工設備などの金属の配管等の腐食を防止することができる。そのため、調理設備及び食品加工設備に安心して使用することができる。また本発明の洗浄剤組成物は、学校、病院、社員食堂、食品加工工場等における厨房、作業場の壁、床といった金属製の硬表面の洗浄にも好適に用いることができる。
以下に本発明の洗浄剤組成物をより詳細に説明する。尚、以下の説明において、適宜、本発明の好ましい数値範囲を示す場合がある。この場合に、数値範囲の上限および下限に関する好ましい範囲、より好ましい範囲、特に好ましい範囲は、上限および下限のすべての組み合わせから決定することができる。
【0013】
本発明の洗浄剤組成物は、液状であってアルカリ性である。液状とは、常温において固体ではなく、流動性を示す状態を意味し、水様の流動性のみならず、とろみのある状態も含む。また本発明の洗浄剤組成物に関し、アルカリ性とは、市販のpHメーターを用いて25℃に調整した洗浄剤組成物のpHを測定した場合にpH9以上、14以下であることを意味する。
【0014】
(A)成分
本発明の洗浄剤組成物は、(A)成分として塩素系酸化剤を含む。上記塩素系酸化剤としては、起泡性の洗浄剤組成物に適したものから適宜選択することができるが、特に次亜塩素酸、亜塩素酸、ジクロロイソシアヌル酸または、これらの塩が好ましい。上記塩素系酸化剤は、1種又は2種以上混合して用いることができる。上記塩素系酸化剤のうち、洗浄性及び除菌性に優れるという観点からは、次亜塩素酸または亜塩素酸のアルカリ金属塩が好ましく、それらのうちナトリウム塩またはカリウム塩がより好ましく、中でも次亜塩素酸ナトリウムが特に好ましい。本発明の洗浄剤組成物中の上記(A)成分の割合は、有効塩素濃度として換算した量より求めた割合である。
【0015】
(A)成分の含有範囲は、0.1質量%以上、10質量%以下に調整される。(A)成分を0.1質量%以上に調整することで、良好な洗浄性および除菌性を示すことができ、また10質量%以下に調整することで高い洗浄性および除菌性を示しつつも、被洗浄対象物や洗浄施設の配管等の金属腐食を良好防止することができる。洗浄性および除菌性の観点からは、(A)成分は、0.4質量%以上であることが好ましく、1.5質量%以上であることがより好ましい。また、金属腐食防止性の観点からは、(A)成分は、8.0質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
たとえば、本発明の洗浄剤組成物は、(A)成分として食塩濃度が4質量%以下の低食塩次亜塩素酸ナトリウムが、優れた洗浄性および除菌性を示しつつ、高い金属腐食防止性を実現することができ、好ましい。
【0016】
(B)成分
本発明の洗浄剤組成物は、(B)成分として炭素数10~14の脂肪酸及び/又はその塩を1種または2種以上含む。具体的には、(B)成分として、カプリン酸(炭素数10)、ウンデシル酸(炭素数11)、ラウリン酸(炭素数12)、トリデシル酸(炭素数13)、ミリスチン酸(炭素数14)またはこれらの塩が挙げられる。
起泡後の泡もちが良く、かつすすぎ性にも優れるという観点からは、(B)成分として、ラウリン酸若しくはミリスチン酸またはこれらの塩を1種または2種以上選択されることが好ましく、ラウリン酸またはラウリン酸塩、及びミリスチン酸またはミリスチン酸塩を含むことがより好ましい。上記ラウリン酸塩としては、ラウリン酸ナトリウムまたはラウリン酸カリウムが好ましく、または上記ミリスチン酸塩としては、ミリスチン酸ナトリウム、またはミリスチン酸カリウムが好ましい。ラウリン酸またはラウリン酸塩、及びミリスチン酸またはミリスチン酸塩から選択された1種と、それとは異なる脂肪酸及び/又はその塩を組合せて用いることは好ましい。具体的な組合せの例としては、ラウリン酸またはその塩、及びミリスチン酸またはその塩から選択された1種と、カプリン酸またはその塩との組み合わせが挙げられる。
【0017】
本発明者は、(B)成分としてラウリン酸またはその塩と、ミリスチン酸またはその塩とを組合せて用いることが好ましいという知見からさらに検討をすすめた結果、これらの配合比率が、本発明の洗浄剤組成物のすすぎ時の泡切れ性および希釈液の起泡性に大きく寄与することを見出した。
具体的には、本発明の洗浄剤組成物を希釈して用いた場合であっても、良好な起泡性を示し、かつすすぎ性にも優れるという観点からは、(B)成分として、ラウリン酸又はその塩と、ミリスチン酸又はその塩とを含有し、質量比で、(ラウリン酸又はその塩)/(ミリスチン酸又はその塩)の値が0.05以上、40以下であることが好ましい。
より良い起泡性または滞留性を実現するという観点からは、上記質量比率は、0.1以上であることがより好ましく、1.0以上であることがさらに好ましく、3.5以上であることが特に好ましい。また、より優れたすすぎ性を実現するという観点からは、上記質量比は、30以下であることがより好ましく、20以下であることがさらに好ましい。
尚、ここでいう希釈液の起泡性とは、適度な水分を含むきめ細かい泡を形成可能であることを意味する。またここでいう希釈とは、特に希釈倍率が限定されるものではないが、たとえば原液に対し1倍を超え、100倍以下の希釈倍率である。
【0018】
本発明の洗浄剤組成物は、アルカリ性であるため、(B)成分は脂肪酸アルカリ金属塩が用いられることが好ましいが、後述する(D)成分であるアルカリ金属水酸化物により充分にアルカリ性が示される場合には、(B)成分は脂肪酸の形態でも用いてもよい。
【0019】
(B)成分の含有範囲は、0.01質量%以上、0.45質量%以下に調整される。(B)成分を0.01質量%以上含むことで、すすぎ時の泡切れ性を示すことができ、また0.45質量%以下に調整することで、本発明の洗浄剤組成物の希釈液の安定性を維持することができる。すすぎ時の泡切れの観点からは、(B)成分は、0.05質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましい。また、良好な泡切れ性を示しつつ、希釈液の安定性を維持するという観点からは、(B)成分は、0.4質量%以下であることが好ましく、0.3質量%以下であることがより好ましい。なお、本発明の洗浄剤組成物中の上記(B)成分の割合は、(B)成分中に脂肪酸塩が含まれる場合は、脂肪酸塩を脂肪酸として換算した量より求めた割合である。
【0020】
(C)成分、(D)成分
本発明の洗浄剤組成物は、(C)成分としてデシルジメチルアミンオキサイドを含有し、(D)成分としてドデシルジメチルアミンオキサイドを含有する。これら2種のアミンオキサイドを含むことで、本願発明の洗浄剤組成物は、良好な起泡性および洗浄性を示し得る。より具体的には、上記(C)成分は、特に本発明の洗浄剤組成物を希釈した際の良好な起泡性の実現に寄与する。また上記(D)成分は、特に本発明の洗浄剤組成物の良好な洗浄性の発揮に寄与する。
特に、上記(C)成分および上記(D)成分に加え、上述する(B)成分として少なくともラウリン酸が配合されることによって、本願発明の洗浄剤組成物は、泡の滞留性およびすすぎ時の破泡性に特に優れ、起泡性の洗浄剤組成物として優れた効果を発揮する。
【0021】
(C)成分の含有範囲は、1質量%以上、12質量%以下に調整される。(C)成分を
1質量%以上に調整することで、良好な洗浄性および希釈された洗浄剤組成物において良好な起泡性が実現され、また12質量%以下に調整することで有効塩素安定性およびすすぎ時の泡切れ性が良好である。洗浄性および起泡性の観点からは、(C)成分は、1.5質量%以上であることが好ましく、4.0質量%以上であることがより好ましい。また、すすぎ時の泡切れ性の観点からは、(C)成分は、10.0質量%以下であることが好ましく、7.0質量%以下であることがより好ましい。
【0022】
(D)成分の含有範囲は、0.01質量%以上、3.0質量%以下に調整される。(D)成分を0.01質量%以上に調整することで、良好な洗浄性が示され、また3.0質量%以下に調整することですすぎ時の泡切れ性が良好である。洗浄性の観点からは、(D)成分は、0.1質量%以上であることが好ましく、0.6質量%以上であることがより好ましい。また、すすぎ時の泡切れ性の観点からは、(D)成分は、2.0質量%以下であることが好ましく、1.7質量%以下であることがより好ましい。
以上に述べるとおり、(C)成分および(D)成分は、本願発明の洗浄剤組成物の起泡性や洗浄性に貢献するが、多量に含有することですすぎ性が不良になる虞があるので、これらの成分の含有量の上限を上述する範囲に調整することが肝要である。
【0023】
(E)成分
本発明の洗浄剤組成物は、(E)成分としてアルカリ金属水酸化物を含む。上記アルカリ金属水酸化物としては、起泡性の洗浄剤組成物に適したものから適宜選択することができるが、たとえば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等が挙げられ、これらは単独または混合して用いることができる。洗浄剤組成物中の有効塩素が安定であり洗浄性に優れる上、良好な貯蔵安定性を維持することが可能であるという観点からは、上記(E)成分として、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムを含むことが好ましい。
【0024】
(E)成分の含有範囲は、0.1質量%以上、10質量%以下に調整される。(E)成分を0.1質量%以上に調整することで、洗浄性が良好であり、また10.0質量%以下に調整することで良好な貯蔵安定性を示し得る。洗浄性の観点からは、(E)成分は、0.5質量%以上であることが好ましく、1.0質量%以上であることがより好ましい。また、貯蔵安定性の観点からは、(E)成分は、8.0質量%以下であることが好ましく、5.0質量%以下であることがより好ましい。
【0025】
(F)成分
本発明の洗浄剤組成物は、(F)成分として水を含む。ここでいう水とは、精製水、蒸留水、イオン交換水、軟水、純水、超純水、または水道水等が挙げられ、これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。水道水としては、例えば、東京都荒川区の水道水(pH=7.6、総アルカリ度(炭酸カルシウム換算として)40.5mg/L、ドイツ硬度2.3°DH(そのうち、カルシウム硬度1.7°DH、マグネシウム硬度0.6°DH)、塩化物イオン21.9mg/L、ナトリウム及びその化合物15mg/L、硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素1.2mg/L、フッ素及びその化合物0.1mg/L、ホウ素及びその化合物0.04mg/L、総トリハロメタン0.016mg/L、残留塩素0.4mg/L、有機物(全有機炭素量)0.7mg/L)が挙げられる。洗浄剤組成物において、(F)成分である水は、上述する(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分及び任意に添加されるその他成分を除く残部である。
【0026】
(C)成分/(D)成分
次に(C)成分と(D)成分との質量比について説明する。
本発明の洗浄剤組成物において、(C)成分と(D)成分との質量比は(C)成分/(D)成分の値で4以上、200以下である。上記(C)成分/(D)成分の値が4未満であると、すすぎ時の泡切れ性が低下し、また希釈液の起泡性が不充分になる虞があり、当該値が200を超えると、洗浄性が不充分になる虞がある。より望ましい態様としては、上記値の下限は5以上であることが好ましく、また上記値の上限は30以下であることが好ましく、20以下であることがより好ましい。
【0027】
本発明の洗浄剤組成物は、さらに(G)成分として、珪酸塩を含有してもよい。上記(G)成分を含有することにより、アルミ等の金属腐食防止性が示される。充分な金属腐食防止性を獲得するという観点からは、上記珪酸塩の含有量は、0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。また貯蔵安定性および経済的な不利益なく適度なアルミ腐食防止性を獲得するという観点からは、上記珪酸塩の含有量は、20.0質量%以下であることが好ましく、10.0質量%以下であることがより好ましく、6.0質量%以下であることがさらに好ましい。
【0028】
上記珪酸塩は、具体的には、オルソ珪酸ナトリウム、オルソ珪酸カリウム、セスキ珪酸ナトリウム、セスキ珪酸カリウム、メタ珪酸ナトリウム、メタ珪酸カリウム、JIS K1408に規定されている1号珪酸ナトリウム、1号珪酸カリウム、2号珪酸ナトリウム、2号珪酸カリウム、3号珪酸ナトリウム、または3号珪酸カリウム等が挙げられ、これらは単独または混合して用いることができる。
【0029】
本発明の洗浄剤組成物は、さらに(H)成分として、ホスホン酸、ホスフィン酸、ホスフィノカルボン酸、縮合リン酸又はそれらの塩より選ばれた少なくとも一種以上を含有してもよい。上記(H)成分を含有することにより、本発明の洗浄剤組成物の貯蔵安定性や希釈液の安定性を向上させ得る。
貯蔵安定性や希釈液の安定性の観点からは、(H)成分の含有量は、0.01質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることがさらに好ましい。また、有効塩素安定性の観点からは、(H)成分の含有量は、10.0質量%以下であることが好ましく、7.0質量%以下であることがより好ましく、3.5質量%以下であることがさらに好ましい。なお、本発明の洗浄剤組成物中の上記(H)成分の割合は、(H)成分中にホスホン酸塩、ホスフィン酸塩、ホスフィノカルボン酸、縮合リン酸塩が含まれる場合は、ホスホン酸塩、ホスフィン酸塩、ホスフィノカルボン酸、縮合リン酸塩をそれぞれホスホン酸、ホスフィン酸、ホスフィノカルボン酸、縮合リン酸として換算した量より求めた割合である。
【0030】
上記(H)成分であるホスホン酸、ホスフィン酸、ホスフィノカルボン酸又はそれらの塩としては、貯蔵安定性、希釈液の安定性の観点からは、アミノ基を有しないホスホン酸又はその塩が好ましく、さらにヒドロキシル基を有しないホスホン酸又はその塩がより好ましい。
具体的には、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸又はその塩、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸又はその塩、ビス(ポリ-2-カルボキシエチル)ホスフィン酸又はその塩、ホスフィノカルボン酸共重合物又はその塩等が挙げられ、特に2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸又はその塩、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸又はその塩が好ましい。
尚、ホスフィノカルボン酸共重合物は、分子中に1個以上のホスフィノ基と2個以上のカルボキシル基を有する化合物であり、具体的にはビス-ポリ(2-カルボキシエチル)ホスフィン酸、ビス-ポリ(1,2-ジカルボキシエチル)ホスフィン酸、ポリ(2-カルボキシエチル)(1,2-ジカルボキシエチル)ホスフィン酸、ビス-ポリ[2-カルボキシ-(2-カルボキシメチル)エチル]ホスフィン酸、アクリル酸と2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸と次亜リン酸の反応物などが挙げられ、好ましくはポリ(2-カルボキシエチル)(1,2-ジカルボキシエチル)ホスフィン酸、及びビス-ポリ[2-カルボキシ-(2-カルボキシメチル)エチル]ホスフィン酸である。ホスフィノカルボン酸共重合体の調製は、通常、水性溶媒中で次亜リン酸とモノエチレン性不飽和カルボン酸とを遊離ラジカル開始剤の存在下で加熱することにより行なわれ、例えば特公昭54-29316号公報、特公平5-57992号公報、特公平6-47113号公報などに開示されている。また、ホスフィノポリカルボン酸は、BWA社よりBelsperse164(登録商標)、Belclene400(登録商標)などの商品名で市販されている。
【0031】
一方、上記(H)成分である縮合リン酸又はその塩としては、トリポリリン酸又はその塩、ピロリン酸又はその塩が挙げられ、中でも、トリポリリン酸ナトリウム、またはトリポリリン酸カリウムが好ましい。
(H)成分は、ホスホン酸、ホスフィン酸、ホスフィノカルボン酸、縮合リン酸又はそれらの塩から選択される1種又は2種以上の組み合わせを用いても良く、たとえばホスホン酸又はその塩の1種以上と、縮合リン酸又はその塩の1種以上とを組み合わせて用いてもよい。
【0032】
本発明の液体アルカリ性洗浄剤組成物は、本発明の効果が損なわない範囲で、必要に応じて当該技術分野で通常使用される他の成分を含有していてもよい。このような成分としては、例えば、水溶性溶剤、キレート剤、殺菌剤、pH調整剤、粘稠剤、香料、色素等が挙げられる。
【0033】
水溶性溶剤としては、エタノール、プロパノール、ブタノール等の低級アルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等のグリコール類、グリセリン、ポリグリセリン、ソルビトール等のポリオール類が挙げられる
【0034】
キレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸又はその塩、ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸又はその塩、ジエチレントリアミノ五酢酸又はその塩、トリエチレンテトラアミン六酢酸又はその塩、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸又はその塩、メチルグリシン二酢酸又はその塩、グルタミン酸二酢酸又はその塩、イミノジコハク酸又はその塩、ニトリロ三酢酸又はその塩等が挙げられ、これらの塩としてはナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。
【0035】
殺菌剤としては、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、イソチアゾリン-3-オン、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、N-n-ブチル-ベンズイソチアゾリン-3-オン等のチアゾリン類、1,3-ジメチロール-5,5-ジメチルヒダントイン、1又は3-モノメチロール-5,5-ジメチルヒダントイン、ジメチルヒダントイン、1、3-ジクロロ-5,5-ジメチルヒダントイン、1、3-ジクロロエチルメチルヒダントイン等のヒダントイン類、アルキルジメチルアンモニウムクロライド、アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、アルキルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロライド、ベンゼトニウムクロライド等の四級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0036】
pH調整剤として用いる塩基としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等が挙げられ、好ましくはモノエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミンが挙げられる。また、pH調整剤として用いる酸としては、塩酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、安息香酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、グルコン酸、エチレンジアミン四酢酸、ホスホノブタントリカルボン酸、リン酸などが挙げられるが、好ましくは、酢酸、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸、p-トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、クメンスルホン酸が挙げられる。
【0037】
粘稠剤としては、例えば、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロース、
ポリアクリル酸等の高分子ポリカルボン酸のアルカリ中和塩等が挙げられる。
【0038】
香料としては、例えば、天然香料、合成香料、これらの調合香料等が挙げられる。また、色素としては、例えば、天然色素、合成色素、又はこれらの混合物が挙げられる。
【0039】
上述する本発明の洗浄剤組成物は、起泡性洗浄剤(発泡洗浄剤)として、原液または希釈液として用いることができる。
希釈率は、特に限定されず、たとえば1倍を超えて100倍以下の範囲で水などによって希釈して使用することができる。本発明の洗浄剤組成物は、原液の貯蔵安定性がよく、また上記範囲で希釈された希釈液の安定性もよい。そのため本発明の洗浄剤組成物は、取り扱い性が良く、また使用態様も広い。
【0040】
(洗浄方法)
次に、本発明の洗浄方法について説明する。
本発明の洗浄方法は、上述する本発明の液体アルカリ性洗浄剤組成物を用い、被洗浄物に泡状に噴射し、当該被洗浄物を洗浄することを特徴とする。
本発明の洗浄方法は、本発明の洗浄剤組成物の優れた効果を享受する。したがって本発明の洗浄方法は、被洗浄物の衛生を良好に保つことができる上、掃除の利便性や節水の点からも優れる。
【0041】
本発明の洗浄方法は、上述洗浄剤組成物を、1倍を超えて100倍以下の希釈倍率で予め希釈し、及び/又は、希釈しながら被洗浄物に泡状に噴射し洗浄することができる。
上記洗浄剤組成物は、原液の貯蔵安定性が良好であるとともに、希釈液の安定性にも優れるため、使用前に予め希釈するか、使用時に希釈するかを問わず、良好な洗浄性を発揮することができる。
【0042】
上記希釈は、通常は、水で行う。たとえば希釈に使用される水としては、一般的には水道水のような硬度成分を含有する水であることが想定され、希釈液の安定性の点から、1~20°DHが好ましく、1~10°DHが更に好ましい。
より良好な起泡性を得るという観点からは、希釈率の下限は、2倍以上であることがより好ましい。また希釈倍率の上限が、100倍を超えると、希釈洗浄液を泡状に噴射して洗浄する際に良好な洗浄性や起泡性が得られない虞がある。さらに、希釈洗浄液中の(C)成分の濃度が0.003質量%以上、1質量%以下となるように調製することで、良好な洗浄性、起泡性、すすぎ性が得られる。洗浄性および起泡性の観点からは希釈洗浄液中の(C)成分の濃度は0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましい。また、すすぎ性の観点からは希釈洗浄液中の(C)成分の濃度は0.5質量%以下であることが好ましく、0.3質量%以下であることがより好ましい。
【0043】
本発明の洗浄方法において、起泡させる手段は特に限定されない。たとえば、洗浄剤組成物を任意の倍率にて希釈した希釈洗浄液を泡洗浄機に投入し、水圧や空圧によって起泡させてもよいし、洗浄剤組成物を泡洗浄機に投入し、泡洗浄機をホース等により水道等の水供給手段と連結し、水を供給して希釈しながら混合して起泡させてもよい。具体的な泡洗浄機としてはエア駆動式ダイアフラムポンプにて送液し、圧縮空気と発泡洗浄剤組成物の希釈液を混合して発泡並びに噴霧する装置が挙げられ、例えば、DEMA社製910N PORTABLE FOAMERが使用できる。供給エア圧としては30~80PSIが好ましく、40~60PSIがより好ましい。
【0044】
起泡した洗浄剤組成物は、被洗浄物に対し噴射される。
本発明の洗浄方法において、起泡した泡は被洗浄物表面における滞留性が良好である。より充分な洗浄性、除菌性を発揮させるために、被洗浄物に噴射された泡をすぐに洗い流さずに、一定時間、被洗浄物表面に滞留させた状態を維持するとよい。泡を滞留させる時間(噴射後、洗い流すまでの時間)は、作業性の点から1分以上60分以下であることが好ましく、1分以上30分以下であることがより好ましい。尚、泡を被洗浄物表面に滞留させている間、適宜、当該被洗浄物表面に対しわずかの水等を加えてもよい。
泡を被洗浄物表面に一定時間滞留させた後、被洗浄物表面を水ですすぎ、泡(洗浄剤)を除去する。すすぎ水の温度は、好ましくは10℃以上70℃以下であり、より好ましくは20℃以上60℃以下である。すすぎ水としては水道水を用いることができ、上記好ましい水温に調整すべく加熱して用いてもよい。一般的には、ホース等で人の手によるすすぎ作業が行なわれる。
【実施例
【0045】
以下、本発明を実施例と比較例により具体的に説明する。実施例、比較例において配合に用いた各成分を下記に示す。
尚、表中に示す(A)成分は有効塩素濃度として換算した値を示し、(B)成分、(B’-1)成分、(H)成分に関しては、いずれもアルカリ金属塩をなす前の化合物の量に換算した値を示す。
【0046】
(A)成分
A-1:次亜塩素酸ナトリウム
A-2:次亜塩素酸カリウム
【0047】
(B)成分
B-1:カプリン酸カリウム(花王株式会社製 ルナック10-98を中和したもの)
B-2:ラウリン酸カリウム(花王株式会社製 ルナックL-98を中和したもの)
B-3:ラウリン酸ナトリウム(花王株式会社製 ルナックL-98を中和したもの)
B-3:ミリスチン酸カリウム(花王株式会社製 ルナックMY-98を中和したもの)
B-5:ミリスチン酸ナトリウム(花王株式会社製 ルナックMY-98を中和したもの)
尚、(B)成分、(B’-1)は、組成を調製する際に用いた脂肪酸が組成物中にてアルカリ金属塩になった場合には、アルカリ金属塩として示している。
【0048】
(B)成分の比較成分
B’-1:パルミチン酸カリウム(花王株式会社製 ルナックP-95を中和したもの)
【0049】
(C)成分
C-1:デシルジメチルアミンオキサイド
【0050】
(D)成分
D-1:ドデシルジメチルアミンオキサイド
【0051】
(E)成分
E-1:水酸化カリウム
E-2:水酸化ナトリウム
【0052】
(F)成分
F-1:イオン交換水
【0053】
(G)成分
G-1:オルソ珪酸カリウム
G-2:3号珪酸ナトリウム
【0054】
(H)成分
H-1:2-ホスホノブタン1,2,4-トリカルボン酸カリウム(BWA社製 Belclene 650を中和したもの)
H-2:2-ホスホノブタン1,2,4-トリカルボン酸ナトリウム(BWA社製 Belclene 650を中和したもの)
H-3:ホスフィノカルボン酸共重合体カリウム(BWA社製 Belclene 400を中和したもの)
H-4:ホスフィノカルボン酸共重合体ナトリウム(BWA社製 Belclene 400を中和したもの)
H-5:トリポリリン酸カリウム
尚、(H)成分は、組成を調製する際に用いた脂肪酸が組成物中にアルカリ金属塩になった場合には、アルカリ金属塩として示している。
【0055】
実施例1~60、比較例1~12
表1~7に示す配合に基づき液体アルカリ性洗浄剤組成物を調製した。実施例および比較例は、いずれもpH9以上、14以下の範囲に調整した。各液体アルカリ性洗浄剤組成物の性状及び各液体アルカリ性洗浄剤組成物を希釈した希釈洗浄液の性状を表1~7にあわせて示す。尚、表中における実施例および比較例の配合の数値は純分の質量%を表す。
【0056】
※1:洗浄性試験(非加熱油汚れ)
試験方法:
縦70mm×横60mm×厚さ1mmのステンレス(SUS304)片の片面に油(牛脂10g、大豆油10g、モノオレイン酸グリセリド0.25g、スダンIII0.1gをクロロホルム60mlに溶解したもの)を塗布し、25℃で2時間乾燥させたものを試験片とし重量を測定した。この試験片を炭酸カルシウム換算で75mg/L[ドイツ硬度4.2°DH]の硬水で、各液体アルカリ性洗浄剤組成物を3質量%に希釈して調整した常温の希釈洗浄液200mlに浸漬し、5分間放置した後、イオン交換水ですすぎ、自然乾燥させた後、重量を測定した。非加熱油汚れの洗浄率を洗浄前後の試験片の重量変化から下記式により算出し、次の尺度で示した。尚、下記に示す汚れ付着量とは、上述のとおり油が塗布された試験片の質量から試験片のみの質量を減じた値である。
洗浄率(%)={(洗浄前試験片質量-洗浄後試験片質量)/(汚れ付着量)}×100
評価基準:
◎:洗浄率100% ~80%以上
○:洗浄率80%未満~60%以上
△:洗浄率60%未満~40%以上
×:洗浄率40%未満
とし、△、○、◎を実用性のあるものとして判定した。
【0057】
※2:洗浄性試験(加熱油汚れ)
試験方法:
縦70mm×横60mm×厚さ1mmのステンレス(SUS304)片の片面に油(牛脂10g、大豆油10g、モノオレイン酸グリセリド0.25g、スダンIII0.1gをクロロホルム60mlに溶解したもの)を塗布し、180℃で90分焼き付けたものを試験片とし重量を測定した。この試験板を炭酸カルシウム換算で75mg/L[ドイツ硬度4.2°DH]の硬水で、各液体アルカリ性洗浄剤組成物を5質量%に希釈して調整した常温の希釈洗浄液200mlに浸漬し、5分放置した後、イオン交換水ですすぎ、自然乾燥させた後、重量を測定した。加熱油汚れの洗浄率を洗浄前後の試験片の重量変化から下記式により算出し、次の尺度で示した。尚、下記に示す汚れ付着量とは、上述のとおり油が塗布された試験片の質量から試験片のみの質量を減じた値である。
洗浄率(%)={(洗浄前試験片質量-洗浄後試験片質量)/(汚れ付着量)}×100
評価基準:
◎:洗浄率100% ~80%以上
○:洗浄率80%未満~60%以上
△:洗浄率60%未満~40%以上
×:洗浄率40%未満
とし、△、○、◎を実用性のあるものとして判定した。
【0058】
※3:すすぎ時の泡切れ性試験
試験方法:
炭酸カルシウム換算で75mg/L[ドイツ硬度4.2°DH]の硬水で、各液体アルカリ性洗浄剤組成物を20℃で5質量%に希釈して調製した洗浄液を、DEMA社製910N PORTABLE FOAMERを用いて、比重0.15g/立方センチメートルの泡状に発泡させ、ステンレス製ボックス[ステンレス(SUS304)]の下部(縦500mm、横幅700mm)に20秒間噴霧し、一分経過後に炭酸カルシウム換算で75mg/L[ドイツ硬度4.2°DH]の硬水ですすぎ(シャワーノズル)を行い、ステンレス製ボックス下部中央の排水口(直径50mm、内部に40メッシュのポリエチレン網あり)周辺から泡が消えるまでのすすぎ時間について次の尺度で判定した。
評価基準:
◎:60秒未満
○:60秒以上、90秒未満
△:90秒以上、120秒未満
×:120秒以上
とし、△、○、◎を実用性のあるものとして判定した。
【0059】
※4:泡の滞留性試験
炭酸カルシウム換算で75mg/L[ドイツ硬度4.2°DH]の硬水で、各発泡洗浄剤組成物を20℃で3質量%に希釈して調製した洗浄液を、DEMA社製910N PORTABLE FOAMERを用いて、比重0.15g/立方センチメートルの泡状に発泡させ、ステンレス板[ステンレス(SUS304)]垂直面の縦1m、横1mの範囲に対して、2cm以下の泡の厚みとなるように吹付け、1分経過後の垂直壁面への付着具合(泡が残っている面積)を目視により以下の基準で評価した。
評価基準:
◎:泡の保持が70%以上
○:泡の保持が60%以上、70%未満
△:泡の保持が50%以上、60%未満
×:泡の保持が50%未満
とし、△、○、◎を実用性のあるものとして判定した。
【0060】
※5:希釈した洗浄液の起泡性試験
<試験方法>
炭酸カルシウム換算で75mg/L[ドイツ硬度4.2°DH]の硬水で、各液体アルカリ性洗浄剤組成物を20℃で3質量%に希釈して調製した洗浄液を、DEMA社製910N PORTABLE FOAMERを用いて、比重0.15g/立方センチメートルの泡状に発泡させた後、ステンレス板[ステンレス(SUS304)]垂直面の縦1m、横1mの範囲に10秒間噴射し、目視により泡の状態を観察し、評価した。
評価基準:
◎:水っぽくきめ細かい泡
○:水っぽくないきめ細かい泡
△:水っぽくきめの粗い泡
×:水っぽくないきめの粗い泡もしくは泡にならない
とし、△、○、◎を実用性のあるものとして判定した。
【0061】
※6:希釈した洗浄液の安定性試験
試験方法:
各液体アルカリ性洗浄剤組成物を炭酸カルシウム換算で75mg/L[ドイツ硬度4.2°DH]の硬水で3質量%に希釈して調製した洗浄液を作製し、作製から15分以内に希釈した洗浄液に濁りが生じるか目視観察し、次の尺度で安定性を判定した。
評価基準:
◎:濁りを生じない
○:わずかに濁りを生じる
△:やや濁りを生じるが、使用上問題ないレベル
×:濁りを生じる
とし、△、○、◎を実用性のあるものとして判定した。
【0062】
※7:除菌性試験
試験方法:
各液体アルカリ性洗浄剤組成物をイオン交換水で1質量%、3質量%、5質量%に希釈して調整した希釈洗浄液10mLに、下記供試菌株をそれぞれSCDブイヨン培地で培養した菌液0.1mlを添加し、25℃にて1分間接触させたものを試験液とした。この試験液0.01mlを、チオ硫酸ナトリウム0.1質量%含有したSCDLPブイヨン培地1mlを入れた24穴マイクロプレートの1Wellに入れ、37℃で24時間培養した。培養終了後、目視観察にてマイクロプレートの濁りを評価し、次の尺度で判定した。
供試菌株:
財団法人発酵研究所のEscherichia coli NBRC3972(10の9乗CFU/mLレベル)、およびStaphylococcus aureus NBRC12732(10の9乗CFU/mLレベル)を用いた。
評価基準:
◎:1質量%、3質量%、5質量%希釈洗浄液のいずれも濁りが生じていない
○:3質量%、5質量%希釈洗浄液のみ濁りが生じていない
△:5質量%の希釈洗浄液のみ濁りが生じていない
×:いずれの希釈洗浄液も濁りが生じている
とし、△、○、◎を実用性のあるものとして判定した。
【0063】
※8:金属腐食防止性試験(ステンレス)
試験片として、縦70mm×横60mm×厚さ1mmのステンレス(SUS304)片を予め中性洗剤で洗浄しアセトン処理して乾燥させたものを使用した。炭酸カルシウム換算で、75mg/L[ドイツ硬度4.2°DH]の硬水で各液体アルカリ性洗浄剤組成物を5質量%に希釈して調整した希釈洗浄液60mlを70ml容量の蓋付ガラス瓶に入れ、その中に試験片を浸漬し、蓋ガラス瓶ごと25℃の恒温器内で30分間保存した。その後、恒温器から取り出した蓋付ガラス瓶から試験片を取り出し、イオン交換水にてすすぎ、自然乾燥させて、試験片表面の状態を目視により外観観察し、下記基準で腐食性を判定した。
評価基準:
○:腐食がない
△:やや腐食がみられるが、使用上問題ないレベル
×:腐食した
とし、△、○を実用性のあるものとして判定した。
【0064】
※9:貯蔵安定性試験
試験方法:
各液体アルカリ性洗浄剤組成物100gをポリプロピレン製容器に入れ、-5℃、25℃、40℃で1ヶ月静置した後に外観を観察した。
評価基準:
○:分離や濁りが見られず安定である
△:全体的な分離はないが、若干の濁りが見られる
×:分離もしくは濁りが見られる
とし、△、○を実用性のあるものとして判定した。
【0065】
※10:有効塩素安定性試験
試験方法:
各液体アルカリ性洗浄剤組成物を40℃で2週間保存し、その時の次亜塩素酸塩又は亜塩素酸塩の保存安定性を有効塩素残存率から以下の基準で評価した。なお、有効塩素残存率はJIS法 JIS K-0101に基づき、以下に示す式により求めた。
有効塩素残存率(%)=(保存後の組成物中の有効塩素濃度)/(保存前の組成物中の有効塩素濃度)×100
評価基準:
◎:有効塩素残存率80%以上
○:有効塩素残存率80%未満~65%以上
△:有効塩素残存率65%未満~50%以上
×:有効塩素残存率50%未満
とし、△、○、◎を実用性のあるものとして判定した。
【0066】
※11:金属腐食防止性試験(アルミ)
試験方法:
試験片として、縦50mm×横30mm×厚さ2mmのアルミニウム(A5052P)片を予め中性洗剤で洗浄しアセトン処理して乾燥させたものを使用した。炭酸カルシウム換算で、75mg/L[ドイツ硬度4.2°DH]の硬水で各液体アルカリ性洗浄剤組成物を5質量%に希釈して調整した希釈洗浄液60mlに、試験片、60mlを70ml容量の蓋付ガラス瓶に入れ、その中に試験片テストピースを浸漬し、蓋ガラス瓶ごと25℃の恒温器内で30分間保存した。その後、恒温器から取り出した蓋付ガラス瓶から保存後のテストピース試験片を取り出し、イオン交換水にてすすぎ、自然乾燥させて、試験片表面の状態を目視により外観観察し、下記基準で腐食性を判定した。
評価基準:
○:腐食がない
△:やや腐食がみられるが、使用上問題ないレベル
×:腐食した
とし、△、○を実用性のあるものとして判定した。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【0069】
【表3】
【0070】
【表4】
【0071】
【表5】
【0072】
【表6】
【0073】
【表7】

【0074】
上述する本発明の実施態様は以下の技術思想を包含する。
(1)(A)成分として塩素系酸化剤0.1質量%以上、10質量%以下、
(B)成分として炭素数10~14の脂肪酸及び/又はその塩0.01質量%以上、0.45質量%以下、
(C)成分としてデシルジメチルアミンオキサイド1質量%以上、12質量%以下、
(D)成分としてドデシルジメチルアミンオキサイド0.01質量%以上、3質量%以下、
(E)成分としてアルカリ金属水酸化物0.1質量%以上、10質量%以下、
(F)成分として水、
を含有し、前記(C)成分と前記(D)成分との質量比が、(C)成分/(D)成分の値で4以上、200以下であることを特徴とする液体アルカリ性洗浄剤組成物。
(2)前記(B)成分が、ラウリン酸又はその塩と、ミリスチン酸又はその塩とを含有し、
質量比で、(ラウリン酸又はその塩)/(ミリスチン酸又はその塩)の値が0.05以上、40以下である上記(1)に記載の液体アルカリ性洗浄剤組成物。
(3)さらに(G)成分として、珪酸塩を含有する上記(1)又は(2)に記載の液体アルカリ性洗浄剤組成物。
(4)さらに(H)成分として、ホスホン酸、ホスフィン酸、ホスフィノカルボン酸、縮合リン酸又はそれらの塩より選ばれた少なくとも一種以上を含有する上記(1)から(3)のいずれか一項に記載の液体アルカリ性洗浄剤組成物。
(5)上記(1)から(4)のいずれかに記載の液体アルカリ性洗浄剤組成物を被洗浄物に泡状に噴射し洗浄することを特徴とする洗浄方法。
(6)前記液体アルカリ性洗浄剤組成物を、1倍を超えて100倍以下の希釈倍率に、予め希釈し、及び/又は、希釈しながら前記被洗浄物に泡状に噴射し洗浄する上記(5)に記載の洗浄方法。