(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-12
(45)【発行日】2022-08-22
(54)【発明の名称】メタクリル共重合体および成形体
(51)【国際特許分類】
C08F 220/18 20060101AFI20220815BHJP
C08F 220/28 20060101ALI20220815BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20220815BHJP
【FI】
C08F220/18
C08F220/28
C08J5/18 CEY
(21)【出願番号】P 2019526865
(86)(22)【出願日】2018-06-22
(86)【国際出願番号】 JP2018023821
(87)【国際公開番号】W WO2019004083
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2020-12-28
(31)【優先権主張番号】P 2017125727
(32)【優先日】2017-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017223455
(32)【優先日】2017-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 竹友
(72)【発明者】
【氏名】岡部 史彦
(72)【発明者】
【氏名】中原 淳裕
【審査官】中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-221394(JP,A)
【文献】特開平02-225511(JP,A)
【文献】特開2005-113109(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 220/18
C08J 5/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される単量体に由来する構造単位5~50質量%およびメタクリル酸メチルに由来する構造単位50~95質量%を含むメタクリル共重合体を80質量%以上含有する成形体
であって、該メタクリル共重合体の重量平均分子量が8万~20万である、成形体。
【化1】
(式(1)中、R
1
は水素原子またはメチル基を示す。R
2
、R
3
はそれぞれ独立に炭素数1~15の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基、又は、R
2
、R
3
は互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に脂肪族炭化水素環を形成してもよい。)
【請求項2】
前記式(1)で表される単量体が、R
2
の炭素数とR
3
の炭素数の和が2~9である、請求項1に記載の成形体。
【請求項3】
前記メタクリル共重合体の重量平均分子量/数平均分子量の比が1.01~3.0である請求項1又は2に記載の成形体。
【請求項4】
前記メタクリル共重合体の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで得られるクロマトグラムに基づいて算出されるポリスチレン換算の、数平均分子量Mnに対する重量平均分子量Mwの比Mw/Mnについて、260℃で1時間加熱処理を実施した後の値が、処理前の値の1.4倍以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の成形体。
【請求項5】
前記メタクリル共重合体の、前記260℃で1時間加熱処理を実施した後のMw/Mnが、処理前の値の1.2倍以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の成形体。
【請求項6】
溶融成形体である請求項
1~5のいずれか1項に記載の成形体。
【請求項7】
厚さ0.5mm以上のシートである請求項
1~6のいずれか1項に記載の成形体。
【請求項8】
厚さ1μm~500μmのフィルムである請求項
1~6のいずれか1項に記載の成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はメタクリル共重合体およびかかる共重合体を含有する成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、メタクリル樹脂は透明性等の光学特性および耐候性に優れることから、従来から、照明器具、看板等に用いる表示部材、電子・電気部材、医療用部材をはじめとする様々な用途で使用されている。これらの用途において、光学特性および耐候性に加え、耐熱分解性などが求められることがある。
【0003】
メタクリル樹脂の物性を改善する方法として、特定の構造を有する単量体を共重合する方法が挙げられる。例えば特許文献1には、メタクリル酸シクロアルキルエステルに由来する単量体と共重合することで、着色が少なく、透明性が高く、ヘイズが低く、衝撃強度が高く、飽和吸水率が低く、寸法変化が小さく、外観良好な成形品が得られることが開示されている。
【0004】
一方、水酸基などの官能基を有する単量体を共重合することでも樹脂物性の改良が期待される。しかし、特許文献2には、メタクリル酸メチルと水酸基を有する単量体とを共重合させると反応中にゲルが発生することが開示されており、成形材料用としての共重合体を得るには課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】WO2013-161267号公報
【文献】特許第3550152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、水酸基を含有する重合性単量体を適量用いて、熱分解し難く、耐薬品性に優れ、溶融成形時のゲルブツ発生が抑制させる共重合体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば前記目的は、以下の態様により達成される。
[1]
下記式(1)で表される単量体に由来する構造単位5~50質量%およびメタクリル酸メチルに由来する構造単位50~95質量%を含むメタクリル共重合体。
【0008】
【0009】
(式(1)中、R1は水素原子またはメチル基を示す。R2、R3はそれぞれ独立に炭素数1~15の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基、又は、R2、R3は互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に脂肪族炭化水素環を形成してもよい。)
[2]
前記式(1)で表される単量体が、R2の炭素数とR3の炭素数の和が2~9である、[1]に記載のメタクリル共重合体。
[3]
重量平均分子量が4万~30万である[1]又は[2]に記載のメタクリル共重合体。
[4]
重量平均分子量/数平均分子量の比が1.01~3.0である[1]~[3]のいずれか1項に記載のメタクリル共重合体。
[5]
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで得られるクロマトグラムに基づいて算出されるポリスチレン換算の、数平均分子量Mnに対する重量平均分子量Mwの比Mw/Mnについて、260℃で1時間加熱処理を実施した後の値が、処理前の値の1.4倍以下である、[1]~[4]のいずれか1項に記載のメタクリル共重合体。
[6]
前記260℃で1時間加熱処理を実施した後のMw/Mnが、処理前の値の1.2倍以下である、[1]~[5]のいずれか1項に記載の共重合体。
[7]
[1]~[6]のいずれか1項に記載の共重合体を80質量%以上含有する成形体。
[8]
溶融成形体である[7]に記載の成形体。
[9]
厚さ0.5mm以上のシートである[7]又は[8]に記載の成形体。
[10]
厚さ1μm~500μmのフィルムである[7]又は[8]に記載の成形体。
【発明の効果】
【0010】
本発明のメタクリル共重合体は、優れた耐薬品性を有し、溶融成形時のゲルブツ発生が抑制されたものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のメタクリル共重合体(以下、単に「共重合体」と称することがある)は、式(1)で表される単量体に由来する構造単位を含有する。
【0012】
式(1)で表される単量体は、水酸基を有しており、共重合させた場合に耐薬品性を与えることができる。また、力学強度の向上や金属など異種材料との密着性向上も期待できる。置換基R2およびR3を有することで、得られる共重合体に高い耐熱性を与えることができる。また(メタ)アクリロイルオキシメチル基、ヒドロキシメチル基が結合した部位の炭素原子が置換基R2、R3により4級炭素原子であること、および(メタ)アクリロイルオキシ基、水酸基にメチレン基を介して結合していることで、加熱による脱離が起きにくく、耐熱分解性に優れる。この炭素原子が2、3級炭素原子であると、得られる共重合体の耐熱分解性が低下してしまい、成形温度が制限されてしまう。
【0013】
【0014】
(式(1)中、R1は水素原子またはメチル基を示す。R2、R3はそれぞれ独立に炭素数1~15の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基、又は、R2、R3は互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に脂肪族炭化水素環を形成してもよい。)
【0015】
本発明の共重合体は、共重合体の質量に対して式(1)で表される単量体に由来する構造単位を5~50質量%含有し、好ましくは8~40質量%含有し、より好ましくは10~20質量%含有する。式(1)で表される単量体に由来する構造単位の含有量がこの範囲であることで、本発明の共重合体は、耐熱分解性に優れる。本発明の好ましい実施形態において、前記式(1)で表される単量体は、好ましくはR2の炭素数とR3の炭素数の和が2~9である。
【0016】
R2、R3で表される1価炭化水素基の炭素数は、1~15、好ましくは1~12、より好ましくは1~8、さらに好ましくは1~6、特に好ましくは1~4である。R2、R3で表される炭素数1~15の1 価炭化水素基として、具体的には、それぞれ独立にメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、アミル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロペンチルブチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルブチル基、メチルシクロヘキシルメチル基、エチルシクロヘキシルメチル基、エチルシクロヘキシルエチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチルメチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチルエチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチルブチル基、メチルビシクロ[ 2.2.1]ヘプチルメチル基、エチルビシクロ[2.2.1]ヘプチルメチル基、エチルビシクロ[2.2.1]ヘプチルエチル基、ビシクロ[2.2.2]オクチル基、ビシクロ[2.2.2]オクチルメチル基、ビシクロ[2.2.2]オクチルエチル基、ビシクロ[2.2.2]オクチルブチル基、メチルビシクロ[2.2.2]オクチルメチル基、エチルビシクロ[2.2.2]オクチルメチル基、エチルビシクロ[2.2.2]オクチルエチル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシルメチル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシルエチル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシルブチル基、メチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デシルメチル基、エチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デシルメチル基、エチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デシルエチル基、アダマンチル基、アダマンチルメチル基、アダマンチルエチル基、アダマンチルブチル基、メチルアダマンチルメチル基、エチルアダマンチルメチル基、エチルアダマンチルエチル基、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシル基、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシルメチル基、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシルエチル基、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシルブチル基、エチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシルメチル基、エチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシルエチル基、フェニル基、トリル基、ナフチル基等の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を例示できる。これらの1価炭化水素基のうち、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基が好ましい。R2とR3が異なる場合、R2とR3が結合する炭素原子は不斉炭素となり、R2とR3は不斉炭素を有し得る。本発明の式(1)で表される単量体が不斉炭素を1個または2個以上有する光学活性化合物である場合、各不斉炭素に対しRまたはSの純粋なエナンチオマーあるいはR体とS体が任意の比率で混合した単量体(ラセミ混合物を含む)を全て包含する。
【0017】
R2、R3が互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に脂肪族炭化水素環を形成してもよく、この場合の脂肪族炭化水素環として、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.2]オクタン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、アダマンタン、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン等の炭素数3~12の脂環式炭化水素が例示でき、これらを含む縮合環でもよく、これらの脂環式炭化水素の水素原子の一部が直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1~15の1価炭化水素基で置換されていてもよい。これらの脂肪族炭化水素環のうち、シクロペンタン、シクロヘキサン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.2]オクタン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、アダマンタン等が好ましく、更にこれらのうち、シクロペンタン、シクロヘキサンが特に好ましい。
【0018】
本発明の式(1)で表される単量体として、更に具体的には以下のものを例示できるが、これらのものに限定されない。
【0019】
【0020】
本発明の共重合体は、共重合体の質量に対して上述の式(1)で表される単量体以外にメタクリル酸メチルに由来する構造単位を50質量%~95質量%含有する。メタクリル酸メチルに由来する構造単位の含有量は60質量%~92質量%がより好ましく、80質量%~90質量%が特に好ましい。
【0021】
本発明の共重合体は、式(1)で表される単量体およびメタクリル酸メチル以外のラジカル重合性単量体(以下ラジカル重合性単量体(2)と呼ぶことがある)に由来する構造単位を有していてもよい。かかるラジカル重合性単量体(2)としては、
アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸s-ブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n-へキシル、アクリル酸2-エチルへキシル、アクリル酸ペンタデシル、アクリル酸ドデシルなどのアクリル酸アルキルエステル;アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2-エトキシエチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸アリル、アクリル酸ベンジルなどのアクリル酸誘導体;スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、m-メチルスチレンなどのビニル芳香族炭化水素;ビニルシクロヘキサン、ビニルシクロペンタン、ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘプタン、ビニルシクロヘプセン、ビニルノルボルネンなどのビニル脂環式炭化水素;無水マレイン酸、マレイン酸、イタコン酸などのエチレン性不飽和カルボン酸;エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブチレン、1-オクテンなどのオレフィン;ブタジエン、イソプレン、ミルセンなどの共役ジエン;アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、ビニルケトン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン;2-ビニルフラン、2-イソプロペニルフラン、2-ビニルベンゾフラン、2-イソプロペニルベンゾフラン、2-ビニルジベンゾフラン、2-ビニルチオフェン、2-イソプロペニルチオフェン、2-ビニルジベンゾチオフェン、2-ビニルピロール、N-ビニルインドール、N-ビニルカルバゾール、2-ビニルオキサゾール、2-イソプロペニルオキサゾール、2-ビニルベンゾオキサゾール、3-ビニルイソオキサゾール、3-イソプロペニルイソオキサゾール、2-ビニルチアゾール、2-ビニルイミダゾール、4(5)-ビニルイミダゾール、N-ビニルイミダゾール、N-ビニルイミダゾリン、2-ビニルベンゾイミダゾール、5(6)-ビニルベンゾイミダゾール、5-イソプロペニルピラゾール、2-イソプロペニル1,3,4-オキサジアゾール、ビニルテトラゾール、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、2-イソプロペニルピリジン、3-ビニルピリジン、3-イソプロペニルピリジン、2-ビニルキノリン、2-イソプロペニルキノリン、4-ビニルキノリン、4-ビニルピリミジン、2,4-ジメチル-6-ビニル-S-トリアジン、3-メチリデンジヒドロフラン-2(3H)-オン、4-メチル-3-メチリデンジヒドロフラン-2(3H)-オン、4-デシル-3-メチリデンジヒドロフラン-2(3H)-オンなどのエチレン性不飽和ヘテロ環式化合物;ジメチルメタクリロイルオキシメチルホスフェート、2-メタクリロイルオキシ-1-メチルエチルホスフェートなどのエチレン性不飽和基を有するリン酸エステルなどが挙げられる。
【0022】
本発明の共重合体に含まれるラジカル重合性単量体(2)に由来する構造単位の量は、耐熱性、低吸水性、溶融成形性等のバランスから、共重合体の質量に対して、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。本発明の共重合体に含まれるラジカル重合性単量体(2)に由来する構造単位の量は、0.5質量%以上でもよい。
【0023】
本発明の共重合体の重量平均分子量は、好ましくは4万~30万、より好ましくは6万~25万、特に好ましくは8万~20万である。重量平均分子量がこの範囲にあることで、強度および成形性に優れる。
【0024】
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる測定は、以下のようにして行うことができる。溶離液としてテトラヒドロフラン、カラムとして東ソー株式会社製のTSKgelSuperMultiporeHZM-Mの2本とSuperHZ4000を直列に繋いだものを用いる。分析装置として、示差屈折率検出器(RI検出器)を備えた東ソー株式会社製のHLC-8320(品番)を使用する。試験対象の樹脂材料、すなわちメタクリル共重合体4mgをテトラヒドロフラン5mlに溶解させて、さらに0.1μmのフィルターでろ過して試験対象溶液を調製する。カラムオーブンの温度を40℃に設定し、溶離液流量0.35ml/分で、試験対象溶液20μlを注入して、クロマトグラムを測定する。クロマトグラムは、試験対象溶液と参照溶液との屈折率差に由来する電気信号値(強度Y)をリテンションタイムXに対してプロットしたチャートである。
【0025】
分子量400~5000000の範囲の標準ポリスチレンをゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定し、リテンションタイムと分子量との関係を示す検量線を作成した。クロマトグラムの高分子量側の傾きがゼロからプラスに変化する点と、低分子量側のピークの傾きがマイナスからゼロに変化する点を結んだ線をベースラインとする。クロマトグラムが複数のピークを示す場合は、最も高分子量側のピークの傾きがゼロからプラスに変化する点と、最も低分子量側のピークの傾きがマイナスからゼロに変化する点を結んだ線をベースラインとする。
【0026】
本発明の共重合体は、重量平均分子量/数平均分子量の比(以下、この比を「分子量分布」と称する。)が、260℃で1時間の加熱処理を行なう前の状態で、好ましくは1.01~3.0、より好ましくは1.05~2.7、さらに好ましくは1.10~2.5である。分子量分布がこのような範囲にあると、成形性が良好な共重合体が得られる。重量平均分子量および数平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)で測定した標準ポリスチレン換算の値である。
【0027】
かかる重量平均分子量および分子量分布は、重合反応時の重合開始剤および連鎖移動剤の種類や量などを調整することによって制御できる。
【0028】
本発明の共重合体は、260℃で1時間加熱処理を実施した後のMw/Mnの値が、処理前の値の1.0~1.4倍であることが好ましく、1.0~1.2倍であることがより好ましく、1.0~1.15倍であることがさらに好ましく、1.0~1.1倍であることが特に好ましい。この値が小さい方が溶融成形時のゲルブツの発生が抑制される傾向にある。
【0029】
260℃で1時間の加熱処理は、メタクリル共重合体のゲル化を評価するものであり、この処理によりMw/Mnの値が、処理前の値の1.4倍を超える共重合体は成形機内で一部がゲル化してゲルブツが発生し得る。
【0030】
本発明のメタクリル共重合体は、粉末状、ペレット状等の様々な形状の成形材料を包含する。例えば、ペレット状の成形材料は、例えば押出成形機で溶融状態にした本発明のメタクリル共重合体をダイスプレートからストランド状に押出される樹脂を冷却、切断する事によって得ることができる。前記ストランドを切断してペレットにする方法としては、水中カット、ホットカット、ストランドカットなどの方式を採用できる。
【0031】
ペレット状などの形状に成形する際にメタクリル共重合体は熱履歴を受けるが、本発明のメタクリル共重合体は、水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルとメタクリル酸メチルを含む単量体を重合し、再沈殿などにより精製し、乾燥された熱履歴の少ない粉末状のものであってもよく、ペレット状などの様々な形状に成形され、熱履歴を受けたものであってもよい。
【0032】
本発明の共重合体は、ガラス転移温度が、好ましくは100~350℃、より好ましくは110~250℃である。ガラス転移温度が低すぎると共重合体の耐熱性が不足し、使用できる用途が限定されてしまう。ガラス転移温度が高すぎると共重合体が脆く割れ易くなってしまう。なお、ガラス転移温度はJIS K7121に準拠して測定した値である。すなわち、本発明の共重合体を270℃まで一度昇温し、次いで室温まで冷却し、その後室温から270℃までを10℃/分で昇温させる条件にて示差走査熱量測定法にてDSC曲線を測定し、2回目の昇温時に測定されるDSC曲線から求められる中間点ガラス転移温度を本発明のガラス転移温度とすることができる。
【0033】
本発明の共重合体の熱分解温度は、好ましくは270℃以上、より好ましくは290℃以上、さらに好ましくは295℃以上、特に好ましくは300℃以上である。熱分解温度は320℃以下であってもよい。なお、熱分解温度は実施例に記載の方法で測定することができる。
【0034】
本発明の共重合体の製造方法に特に制限はない。通常、生産性の観点から、ラジカル重合法を採用して、重合温度、重合時間、連鎖移動剤の種類や量、重合開始剤の種類や量などを調整することによって、共重合体を製造する方法が好ましい。また、式(1)で表される単量体は、アニオン重合も可能であるため、ブロック共重合体や立体規則性の高い共重合体を得たい場合には、アニオン重合法を採用することも可能である。
【0035】
本発明の共重合体の製造のためのラジカル重合法においては、無溶媒または溶媒中で行うことが好ましく、低不純物濃度の共重合体が得られるという観点から無溶媒で行うことが好ましい。成形体にシルバーや着色が発生するのを抑制する観点から、重合反応は重合反応原料の溶存酸素量を低くして行うことが好ましい。また、重合反応は、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。
【0036】
本発明の共重合体の製造のためのラジカル重合法において用いられる重合開始剤は、反応性ラジカルを発生するものであれば特に限定されない。例えば、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ヘキシルパーオキシ2-エチルヘキサノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシネオデカノエ-ト、t-ヘキシルパーオキシネオデカノエ-ト、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、ベンゾイルパーオキシド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)などが挙げられる。これらのうち、t-ヘキシルパーオキシ2-エチルヘキサノエート、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)が好ましい。
【0037】
かかる重合開始剤の1時間半減期温度は好ましくは60~140℃、より好ましくは80~120℃である。また、共重合体の製造のために用いられる重合開始剤は、水素引抜き能が好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下である。このような重合開始剤は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。重合開始剤の使用量は、重合反応に供される単量体100質量部に対して好ましくは0.0001~0.02質量部、より好ましくは0.001~0.01質量部、さらに好ましくは0.005~0.007質量部である。
【0038】
なお、水素引抜き能は重合開始剤製造業者の技術資料(例えば日本油脂株式会社技術資料「有機過酸化物の水素引抜き能と開始剤効率」(2003年4月作成))などによって知ることができる。また、α-メチルスチレンダイマーを使用したラジカルトラッピング法、即ちα-メチルスチレンダイマートラッピング法によって測定することができる。当該測定は、一般に、次のようにして行われる。まず、ラジカルトラッピング剤としてのα-メチルスチレンダイマーの共存下で重合開始剤を開裂させてラジカル断片を生成させる。生成したラジカル断片のうち、水素引抜き能が低いラジカル断片はα-メチルスチレンダイマーの二重結合に付加して捕捉される。一方、水素引抜き能が高いラジカル断片はシクロヘキサンから水素を引き抜き、シクロヘキシルラジカルを発生させ、該シクロヘキシルラジカルがα-メチルスチレンダイマーの二重結合に付加して捕捉され、シクロヘキサン捕捉生成物を生成する。そこで、シクロヘキサン、またはシクロヘキサン捕捉生成物を定量することで求められる、理論的なラジカル断片発生量に対する水素引抜き能が高いラジカル断片の割合(モル分率)を水素引抜き能とする。
【0039】
本発明の共重合体の製造のためにラジカル重合法を選択した場合に用いられる連鎖移動剤としては、n-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、1,4-ブタンジチオール、1,6-ヘキサンジチオール、エチレングリコールビスチオプロピオネート、ブタンジオールビスチオグリコレート、ブタンジオールビスチオプロピオネート、ヘキサンジオールビスチオグリコレート、ヘキサンジオールビスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリス-(β-チオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネートなどのアルキルメルカプタン類などが挙げられる。これらのうちn-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタンなどの単官能アルキルメルカプタンが好ましい。これら連鎖移動剤は1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
かかる連鎖移動剤の使用量は重合反応に供される単量体100質量部に対して好ましくは0.1~1質量部、より好ましくは0.15~0.8質量部、さらに好ましくは0.2~0.6質量部、最も好ましくは0.2~0.5質量部である。また、該連鎖移動剤の使用量は、重合開始剤100質量部に対して好ましくは2500~10000質量部、より好ましくは3000~9000質量部、さらに好ましくは3500~6000質量部である。連鎖移動剤の使用量を上記範囲にすると、得られる共重合体の分子量を制御できるため、得られる共重合体に良好な成形加工性と高い力学強度を持たせることができる。
【0041】
本発明の共重合体の製造のためにラジカル重合法を選択した場合において溶媒を用いる場合、単量体および共重合体を溶解できるものであれば制限されないが、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素が好ましい。これらの溶媒は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。溶媒の使用量は、反応液の粘度と生産性との観点から適宜設定できる。溶媒の使用量は、例えば、重合反応原料100質量部に対して好ましくは100質量部以下、より好ましくは90質量部以下である。
【0042】
本発明の共重合体の製造のためにラジカル重合法を選択した場合において重合反応時の温度は好ましくは100~200℃、より好ましくは110~180℃である。重合温度が100℃以上であることで、重合速度の向上、重合液の低粘度化などに起因して生産性が向上する傾向となる。また重合温度が200℃以下であることで、重合速度の制御が容易になり、さらに副生成物の生成が抑制されるので本発明の共重合体の着色を抑制できる。重合反応の時間は好ましくは0.5~4時間、より好ましくは1.5~3.5時間、さらに好ましくは1.5~3時間である。なお、連続流通式反応装置の場合は、かかる重合反応の時間は反応器における平均滞留時間である。重合反応時の温度および重合反応の時間が上記範囲にあると、透明性に優れた共重合体を高効率で生産できる。
【0043】
ラジカル重合は回分式反応装置を用いて行ってもよいが、生産性の観点から連続流通式反応装置を用いて行うことが好ましい。連続流通式反応では、例えば窒素雰囲気下などで重合反応原料(単量体(式(1)で表される単量体、メタクリル酸メチル、必要に応じて添加されるラジカル重合性単量体(2)を意味する)、重合開始剤、連鎖移動剤などを含む混合液)を調製し、それを反応器に一定流量で供給し、該供給量に相当する流量で反応器内の液を抜き出す。反応器として、栓流に近い状態にすることができる管型反応器および/または完全混合に近い状態にすることができる槽型反応器を用いることができる。また、1基の反応器で連続流通式の重合を行ってもよいし、2基以上の反応器を繋いで連続流通式の重合を行ってもよい。
【0044】
本発明においては少なくとも1基は連続流通式の槽型反応器を採用することが好ましい。重合反応時における槽型反応器内の液量は、槽型反応器の容積に対して好ましくは1/4~3/4、より好ましくは1/3~2/3である。反応器には通常、撹拌装置が取り付けられている。撹拌装置としては静的撹拌装置、動的撹拌装置が挙げられる。動的撹拌装置としては、マックスブレンド式撹拌装置、中央に配した縦型回転軸の回りを回転する格子状の翼を有する撹拌装置、プロペラ式撹拌装置、スクリュー式撹拌装置などが挙げられる。これらのうちでマックスブレンド式撹拌装置が均一混合性の点から好ましく用いられる。
【0045】
本発明の共重合体の製造のためにラジカル重合法を選択した場合における重合転化率は、回分式反応装置を用いて懸濁重合する場合は、好ましくは50~100質量%、より好ましくは70~99質量%である。
【0046】
また、連続流通式の槽型反応器を用いる場合の重合転化率は、好ましくは20~80質量%、より好ましくは30~70質量%、さらに好ましくは35~65質量%である。重合転化率が20質量%以上であることで残存する未反応単量体の除去が容易となり、共重合体からなる成形体の外観が良好となる傾向がある。重合転化率が80質量%以下であることで、重合液の粘度が低くなり生産性が向上する傾向となる。
【0047】
本発明のメタクリル共重合体において、式(1)で表される単量体に由来する構造単位とメタクリル酸メチルに由来する構造単位の割合(質量%)は、原料となる単量体の仕込み比にほぼ等しい。各構造単位の割合は、1H-NMRにより決定することができる。
【0048】
重合終了後、必要に応じて、未反応単量体等の揮発分を除去する。除去方法は特に制限されないが、加熱脱揮が好ましい。脱揮法としては、平衡フラッシュ方式や断熱フラッシュ方式が挙げられる。断熱フラッシュ方式による脱揮温度は、メタクリル共重合体の熱分解温度未満であればよく、好ましくは200~280℃、より好ましくは220~260℃である。断熱フラッシュ方式で樹脂を加熱する時間は、好ましくは0.3~5分、より好ましくは0.4~3分、さらに好ましくは0.5~2分である。このような温度範囲および加熱時間で脱揮させると、着色の少ない共重合体を得やすい。除去した未反応単量体は、回収して、再び重合反応に使用することができる。回収された単量体のイエロインデックスは回収操作時などに加えられる熱によって高くなっていることがあるので、回収された単量体は、適切な方法で精製して、イエロインデックスを小さくすることが好ましい。
【0049】
本発明の成形体の製造においては、本発明の効果を損なわない範囲で、本発明の共重合体に他の重合体を混合して成形してもよい。かかる他の重合体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン-1、ポリ-4-メチルペンテン-1、ポリノルボルネンなどのポリオレフィン樹脂;エチレン系アイオノマー;ポリスチレン、スチレン-無水マレイン酸共重合体、ハイインパクトポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、AAS樹脂、ACS樹脂、MBS樹脂などのスチレン系樹脂;メチルメタクリレート系重合体、メチルメタクリレート-スチレン共重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ポリアミドエラストマーなどのポリアミド;ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアセタール、ポリフッ化ビニリデン、ポリウレタン、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、シリコーン変性樹脂;アクリルゴム、アクリル系熱可塑性エラストマー、シリコーンゴム;SEPS、SEBS、SISなどのスチレン系熱可塑性エラストマー;IR、EPR、EPDMなどのオレフィン系ゴムなどが挙げられる。
【0050】
本発明の成形体は本発明の共重合体を80質量%以上含有するのが好ましく、90質量%以上含有するのがより好ましい。本発明の成形体の製造法は特に限定されない。本発明の共重合体または本発明の共重合体を含む成形用材料を、例えば、Tダイ法(ラミネート法、共押出法など)、インフレーション法(共押出法など)、圧縮成形法、ブロー成形法、カレンダー成形法、真空成形法、射出成形法(インサート法、二色法、プレス法、コアバック法、サンドイッチ法など)などの溶融成形法ならびに溶液キャスト法などで成形する方法が挙げられる。これらのうち、生産性の高さ、コストなどの点から、Tダイ法、インフレーション法または射出成形法が好ましい。本発明の成形体は、溶融成形法で得られる溶融成形体が好ましい。
【0051】
本発明の共重合体は、保存、運搬、または成形時の利便性を高めるために、ペレットなどの形態にすることができる。また、本発明の成形体を得るにあたり、成形は、複数回行なってもよい。例えば、本発明の共重合体を成形してペレット状の成形体を得た後、かかるペレット状の成形体をさらに成形して所望の形状の成形体とすることができる。本発明の成形体は、ペレットを含む。
【0052】
本発明の共重合体に、必要に応じて、酸化防止剤、熱劣化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、離型剤、高分子加工助剤、帯電防止剤、難燃剤、染顔料、光拡散剤、有機色素、艶消し剤、および蛍光体などの各種の添加剤を加えても良い。このような各種の添加剤の配合量は、本発明の共重合体に対して、好ましくは7質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは4質量%以下である。
【0053】
各種の添加剤は、共重合体を製造する際の重合反応液に添加してもよいし、重合反応により製造された共重合体に添加してもよいし、成形体の製造時に添加しても良い。
【0054】
酸化防止剤は、酸素存在下においてそれ単体で樹脂の酸化劣化防止に効果を有するものである。例えば、リン系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤などが挙げられる。これらの酸化防止剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。中でも、着色による光学特性の劣化防止効果の観点から、リン系酸化防止剤やヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましく、リン系酸化防止剤とヒンダードフェノール系酸化防止剤との併用がより好ましい。
【0055】
リン系酸化防止剤とヒンダードフェノール系酸化防止剤とを併用する場合、リン系酸化防止剤の使用量:ヒンダードフェノール系酸化防止剤の使用量は、質量比で、1:5~2:1が好ましく、1:2~1:1がより好ましい。
【0056】
リン系酸化防止剤としては、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)オクチルホスファイト(ADEKA社製;商品名:アデカスタブHP-10)、トリス(2,4-ジt-ブチルフェニル)ホスファイト(BASF社製;商品名:IRGAFOS168)、3,9-ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサー3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン(ADEKA社製;商品名:アデカスタブPEP-36)などが好ましい。
【0057】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、ペンタエリスリチル-テトラキス〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕(BASF社製;商品名IRGANOX1010)、オクタデシル-3-(3,5-ジt-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(BASF社製;商品名IRGANOX1076)などが好ましい。
【0058】
熱劣化防止剤は、実質上無酸素の状態下で高熱にさらされたときに生じるポリマーラジカルを捕捉することによって樹脂の熱劣化を防止できるものである。
【0059】
該熱劣化防止剤としては、2-t-ブチル-6-(3’-t-ブチル-5’-メチル-ヒドロキシベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート(住友化学社製;商品名スミライザーGM)、2,4-ジ-t-アミル-6-(3’,5’-ジ-t-アミル-2’-ヒドロキシ-α-メチルベンジル)フェニルアクリレート(住友化学社製;商品名スミライザーGS)などが好ましい。
【0060】
紫外線吸収剤は、紫外線を吸収する能力を有する化合物であり、主に光エネルギーを熱エネルギーに変換する機能を有すると言われる。
【0061】
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、トリアジン類、ベンゾエート類、サリシレート類、シアノアクリレート類、蓚酸アニリド類、マロン酸エステル類、ホルムアミジン類などが挙げられる。これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0062】
ベンゾトリアゾール類は紫外線被照による着色などの光学特性低下を抑制する効果が高いので、本発明のフィルムを光学用途に適用する場合に用いる紫外線吸収剤として好ましい。ベンゾトリアゾール類としては、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(BASF社製;商品名TINUVIN329)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール(BASF社製;商品名TINUVIN234)、2,2‘-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-t-オクチルフェノール](ADEKA社製;LA-31)、2-(5-オクチルチオ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-tert-ブチル-4-メチルフェノールなどが好ましい。
【0063】
また、トリアジン類の紫外線吸収剤としては、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシ-3-メチルフェニル)-1,3,5-トリアジン(ADEKA社製;LA-F70)や、その類縁体であるヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(BASF社製;TINUVIN477やTINUVIN460)、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジンなどを挙げることができる。
【0064】
さらに380~400nmの波長の光を特に効果的に吸収したい場合は、国際公開第2011/089794号、国際公開第2012/124395号、特開2012-012476号公報、特開2013-023461号公報、特開2013-112790号公報、特開2013-194037号公報、特開2014-62228号公報、特開2014-88542号公報、および特開2014-88543号公報等に開示される複素環構造の配位子を有する金属錯体を紫外線吸収剤として用いることが好ましい。
【0065】
光安定剤は、主に光による酸化で生成するラジカルを捕捉する機能を有すると言われる化合物である。好適な光安定剤としては、2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン骨格を持つ化合物などのヒンダードアミン類が挙げられる。
【0066】
滑剤としては、例えば、ステアリン酸、ベヘニン酸、ステアロアミド酸、メチレンビスステアロアミド、ヒドロキシステアリン酸トリグリセリド、パラフィンワックス、ケトンワックス、オクチルアルコール、硬化油などが挙げられる。
【0067】
離型剤としては、セチルアルコール、ステアリルアルコールなどの高級アルコール類;ステアリン酸モノグリセライド、ステアリン酸ジグリセライドなどのグリセリン高級脂肪酸エステルなどが挙げられる。本発明においては、離型剤として、高級アルコール類とグリセリン脂肪酸モノエステルとを併用することが好ましい。高級アルコール類とグリセリン脂肪酸モノエステルとを併用する場合、その割合は特に制限されないが、高級アルコール類の使用量:グリセリン脂肪酸モノエステルの使用量は、質量比で、2.5:1~3.5:1が好ましく、2.8:1~3.2:1がより好ましい。
【0068】
高分子加工助剤としては、通常、乳化重合法によって製造できる、0.05~0.5μmの粒子径を有する重合体粒子を用いる。該重合体粒子は、単一組成比および単一極限粘度の重合体からなる単層粒子であってもよいし、また組成比または極限粘度の異なる2種以上の重合体からなる多層粒子であってもよい。この中でも、内層に低い極限粘度を有する重合体層を有し、外層に5dl/g以上の高い極限粘度を有する重合体層を有する2層構造の粒子が好ましいものとして挙げられる。高分子加工助剤は、極限粘度が3~6dl/gであることが好ましい。極限粘度が小さすぎると成形性の改善効果が低い傾向がある。極限粘度が大きすぎると共重合体の成形加工性の低下を招く傾向がある。
【0069】
帯電防止剤としては、ヘプチルスルホン酸ナトリウム、オクチルスルホン酸ナトリウム、ノニルスルホン酸ナトリウム、デシルスルホン酸ナトリウム、ドデシルスルホン酸ナトリウム、セチルスルホン酸ナトリウム、オクタデシルスルホン酸ナトリウム、ジヘプチルスルホン酸ナトリウム、ヘプチルスルホン酸カリウム、オクチルスルホン酸カリウム、ノニルスルホン酸カリウム、デシルスルホン酸カリウム、ドデシルスルホン酸カリウム、セチルスルホン酸カリウム、オクタデシルスルホン酸カリウム、ジヘプチルスルホン酸カリウム、ヘプチルスルホン酸リチウム、オクチルスルホン酸リチウム、ノニルスルホン酸リチウム、デシルスルホン酸リチウム、ドデシルスルホン酸リチウム、セチルスルホン酸リチウム、オクタデシルスルホン酸リチウム、ジヘプチルスルホン酸リチウム等のアルキルスルホン酸塩等が挙げられる。
【0070】
難燃剤としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水和珪酸アルミニウム、水和珪酸マグネシウム、ハイドロタルサイト等の水酸基または結晶水を有する金属水和物、ポリリン酸アミン、リン酸エステル等のリン酸化合物、シリコーン化合物等が挙げられ、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリプロピルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリシクロヘキシルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、ジメチルエチルホスフェート、メチルジブチルホスフェート、エチルジプロピルホスフェート、ヒドロキシフェニルジフェニルホスフェートなどのリン酸エステル系難燃剤が好ましい。
【0071】
染顔料としては、パラレッド、ファイヤーレッド、ピラゾロンレッド、チオインジコレッド、ペリレンレッドなどの赤色有機顔料、としてシアニンブルー、インダンスレンブルーなどの青色有機顔料、としてシアニングリーン、ナフトールグリーンなどの緑色有機顔料が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。
【0072】
有機色素としては、紫外線を可視光線に変換する機能を有する化合物が好ましく用いられる。
【0073】
蛍光体としては、蛍光顔料、蛍光染料、蛍光白色染料、蛍光増白剤、蛍光漂白剤などが挙げられる。
【0074】
光拡散剤や艶消し剤としては、ガラス微粒子、ポリシロキサン系架橋微粒子、架橋ポリマー微粒子、タルク、炭酸カルシウム、硫酸バリウムなどが挙げられる。本発明の共重合体は、酸発生剤を含まないことが好ましい。
【0075】
本発明の成形体は、本発明の共重合体を含有してなるものである。本発明の成形体は、その製法において特に限定されない。本発明の成形体は、例えば、Tダイ法(ラミネート法、共押出法など)、インフレーション法(共押出法など)、圧縮成形法、ブロー成形法、カレンダー成形法、真空成形法、射出成形法(インサート法、二色法、プレス法、コアバック法、サンドイッチ法など)などの溶融成形法ならびにセルキャスト重合法などのような反応成形法にて本発明の共重合体を成形することによって得ることができる。これら成形方法のうち、生産性の高さ、コストなどの点から、Tダイ法、インフレーション法、射出成形法、セルキャスト重合法が好ましい。
【0076】
また、本発明の成形体を得るにあたり、成形は、複数回行なってもよい。例えば、本発明のメタクリル樹脂組成物を成形してペレット状の成形体を得たのち、かかるペレット状の成形体をさらに成形して所望の形状の成形体とすることができる。
【0077】
本発明の成形体の一形態であるシートまたはフィルムは、押出成形法またはセルキャスト重合法が好ましい。得られるシートの厚さは、0.5mm以上、例えば0.5~20mmが好ましい。また、得られるフィルムの厚さは、好ましくは1μm~500μm、より好ましくは10μm~300μm、さらに好ましくは15~50μmである。
【0078】
本発明の成形体の用途としては、例えば広告塔、スタンド看板、袖看板、欄間看板、屋上看板などの看板部材;ショーケース、仕切板、店舗ディスプレイなどのディスプレイ部品;蛍光灯カバー、ムード照明カバー、ランプシェード、光天井、光壁、シャンデリアなどの照明部品;ペンダント、ミラーなどのインテリア部品、ドア、ドーム、安全窓ガラス、間仕切り、階段腰板、バルコニー腰板、レジャー用建築物の屋根などの建築用部品;航空機風防、パイロット用バイザー、オートバイ、モーターボート風防、バス用遮光版、自動車用サイドバイザー、リアバイザー、ヘッドウィング、ヘッドライトカバーなどの輸送機関部品;音響映像用銘板、ステレオカバー、テレビ用保護マスク、自動販売機ディスプレイカバーなどの電子機器部品;保育器、レントゲン部品などの医療機器部品;機械カバー、計器カバー、実験装置、定規、文字盤、観察窓などの機器関係部品;液晶保護板、導光板、導光フィルム、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、各種ディスプレイの前面板、拡散板などの光学関係部品;道路標識、案内板、カーブミラー、防音壁などの交通関係部品;自動車内装用表面材、携帯電話の表面材、マーキングフィルムなどのフィルム部材;洗濯機の天蓋材やコントロールパネル、炊飯ジャーの天面パネルなどの家電製品用部材;その他、温室、大型水槽、箱水槽、時計パネル、バスタブ、サニタリー、デスクマット、遊技部品、玩具、熔接時の顔面保護用マスクなどが挙げられる。
【実施例】
【0079】
以下、実施例および比較例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されない。なお、物性値等の測定は以下の方法によって実施した。
【0080】
(GPCによるクロマトグラム測定およびクロマトグラムに基づく分子量分布などの決定)
試験対象の樹脂材料4mgをテトラヒドロフラン5mlに溶解させて、さらに0.1μmのフィルターでろ過して試験対象溶液を調製した。東ソー株式会社製のTSKgelSuperMultiporeHZM-Mの2本とSuperHZ4000を直列に繋いだカラムが取り付けられ、且つ検出部が示差屈折率検出器であるGPC装置(東ソー株式会社製、HLC-8320)に試験対象溶液20μlを注入して、クロマトグラムを測定した。溶離剤としてテトラヒドロフランを流量:0.35ml/分で流し、カラム温度を40℃に設定した。
【0081】
検量線は標準ポリスチレン10点のデータを用いて作成した。分子量400~5000000の範囲の標準ポリスチレンをゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定し、リテンションタイムと分子量との関係を示す検量線を作成した。クロマトグラムの高分子量側の傾きがゼロからプラスに変化する点と、低分子量側のピークの傾きがマイナスからゼロに変化する点を結んだ線をベースラインとした。クロマトグラムが複数のピークを示す場合は、最も高分子量側のピークの傾きがゼロからプラスに変化する点と、最も低分子量側のピークの傾きがマイナスからゼロに変化する点を結んだ線をベースラインとした。
【0082】
また、公知の計算法によって、クロマトグラムから、ポリスチレン換算の重量平均分子量Mwおよび数平均分子量Mn、さらに分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
【0083】
(1H-NMR測定)
製造例で合成した化合物の構造確認や、実施例や比較例の共重合体中の共重合組成は、1H-NMRにて実施した。1H-NMRスペクトルは、核磁気共鳴装置(Bruker社製 ULTRA SHIELD 400 PLUS)を用いて、試料10mgに対して溶媒として重水素化クロロホルム1mLを用い、室温、積算回数64回の条件にて、測定した。
【0084】
(熱分解温度)
窒素雰囲気下、JIS K7120に準じて10℃/分の昇温速度で共重合体の熱質量分析(TG)を行った。250℃での重量を原点とし、2.5%重量減少する温度を熱分解温度とした。測定装置として、島津製作所製のTGA-50(品番)を用いた。
【0085】
(加熱滞留試験)
メルトインデクサー(立山科学工業製 L-220)を用い、共重合体を260℃で1時間加熱した。加熱前後のサンプルについてGPC測定を実施し、Mw/Mnを求め、変化率(加熱試験でのMw/Mnの変化率)を算出した。
【0086】
(耐薬品性試験(耐メタノール性))
共重合体を熱プレス成形して、80mm×10mm×厚さ1.0mmの試験片を得た。試験片を23℃、50%RHの条件下で16時間以上静置し、調湿した。マイクロシリンジを用いて溶剤(メタノール)10mLを試験片に滴下し、外観を目視で観察した。
A:変化なし B:薄く液滴の跡が残る C:白濁 D:膨潤・溶解
【0087】
実施例および比較例に用いる単量体としては、以下のものを用意した。
【0088】
・メタクリル酸メチル(以下、「MMA」と表記する。)
・アクリル酸メチル(以下、「MA」と表記する。)
・メタクリル酸(3-ヒドロキシ-2,2-ジメチル)プロピル(式(2)参照、以下、「NPGMA」と表記する。)
・メタクリル酸(3-ヒドロキシ-2-シクロヘキシル)プロピル(式(3)参照、以下、「CHDMA」と表記する。)
・メタクリル酸(3-ヒドロキシ-2,2-ジエチル)プロピル(式(4)参照、以下、「PRDMA」と表記する。)
・メタクリル酸(3-ヒドロキシ-2-ブチル-2-エチル)プロピル(式(5)参照、以下、「BEPMA」と表記する。)
・メタクリル酸(2-ヒドロキシエチル)(以下、「HEMA」と表記する。)
なお、上記NPGMAは後述の製造例1、上記PRDMAは後述の製造例2、上記BEPMAは後述の製造例3、上記CHDMAは後述の製造例4により得られたものを使用した。
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
<製造例1>
メタクリル酸(3-ヒドロキシ-2,2-ジメチル)プロピル(NPGMA)の合成
温度計、攪拌機、滴下ロートを備え付けた四口フラスコに、644質量部のトルエン、313質量部の2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、12質量部のナトリウムメトキシド(28%メタノール溶液)、0.75質量部のヒドロキノンを仕込み撹拌した。60℃に昇温し、180質量部のメタクリル酸メチルを滴下ロートより1時間かけて滴下した。その後、600Torrに減圧し、副生成物のメタノールを留去しながら、4時間反応させた。反応終了後、750質量部のイオン交換水で2回洗浄した。減圧蒸留により濃縮した後、カラムクロマトグラフィーにより精製することで、113質量部のメタクリル酸(3-ヒドロキシ-2,2-ジメチル)プロピル(NPGMA、式(2)参照)を得た。
【0094】
<製造例2>
メタクリル酸(3-ヒドロキシ-2-シクロヘキシル)プロピル(CHDMA)の合成
2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオールの代わりに2-シクロヘキシル-1,3-プロパンジオールを用い、70℃で反応させた以外は製造例1と同様にして、98質量部のメタクリル酸(3-ヒドロキシ-2-シクロヘキシル)プロピル(CHDMA、式(3)参照)を得た。
【0095】
<製造例3>
メタクリル酸(3-ヒドロキシ-2,2-ジエチル)プロピル(PRDMA)の合成
2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオールの代わりに2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオールを用いた以外は製造例1と同様にして、105質量部のメタクリル酸(3-ヒドロキシ-2,2-ジエチル)プロピル(PRDMA、式(4)参照)を得た。
【0096】
<製造例4>
メタクリル酸(3-ヒドロキシ-2-ブチル-2-エチル)プロピル(BEPMA)の合成
2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオールの代わりに2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールを用いた以外は製造例1と同様にして、110質量部のメタクリル酸(3-ヒドロキシ-2-ブチル-2-エチル)プロピル(BEPMA、式(5)参照)を得た。式(2)~(5)のメタクリル酸エステルが得られたことは、1H-NMRにより確認した。
【0097】
<実施例1>
充分乾燥させた撹拌装置付き耐圧容器内を窒素置換した。該耐圧容器に、7.9質量部のMMA、2.0質量部のNPGMA、0.1質量部のMA、0.012質量部のn-オクチルメルカプタンを仕込んだ。
【0098】
耐圧容器を窒素ガスにて十分置換した後、撹拌しながら140℃に昇温した。0.00015質量部のジ-t-ブチルパーオキサイド(日本油脂製:パーブチルD)を該耐圧容器に添加し、重合を開始した。重合開始から4時間後に室温まで冷却して重合を停止した。得られた溶液にトルエンの50質量部を添加して希釈した後に、メタノール4000質量部に注ぎ、固形物を析出させた。析出固形物をろ別し、充分に乾燥して、共重合体(A1)7.4質量部を得た。共重合体(A1)の1H-NMRを測定したところ、MMAに由来する構造単位の含量は81.6質量%、NPGMAに由来する構造単位の含量は17.7質量%、MAに由来する構造単位の含量は0.8質量%であった。共重合体(A1)は、重量平均分子量(Mw)が209,000、分子量分布(Mw/Mn)が2.09であった。その他評価結果を表1に示す。
【0099】
<実施例2>
該耐圧容器に、7.9質量部のMMA、2.0質量部のCHDMA、0.1質量部のMA、0.012質量部のn-オクチルメルカプタンを仕込んだ以外は実施例1と同様にして共重合体(A2)7.2質量部を得た。共重合体(A2)の1H-NMRを測定したところ、MMAに由来する構造単位の含量は83.3質量%、CHDMAに由来する構造単位の含量は16.1質量%、MAに由来する構造単位の含量は0.7質量%であった。共重合体(A2)は、重量平均分子量(Mw)が165,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.99であった。その他評価結果を表1に示す。
【0100】
<実施例3>
該耐圧容器に、5.9質量部のMMA、4.1質量部のCHDMA、0.1質量部のMA、0.012質量部のn-オクチルメルカプタンを仕込んだ以外は実施例1と同様にして共重合体(A3)7.4質量部を得た。共重合体(A3)の1H-NMRを測定したところ、MMAに由来する構造単位の含量は65.3質量%、CHDMAに由来する構造単位の含量は35.5質量%、MAに由来する構造単位の含量は0.8質量%であった。共重合体(A3)は、重量平均分子量(Mw)が158,000、分子量分布(Mw/Mn)が2.08であった。その他評価結果を表1に示す。
【0101】
<実施例4>
該耐圧容器に、7.9質量部のMMA、2.0質量部のPRDMA、0.1質量部のMA、0.012質量部のn-オクチルメルカプタンを仕込み、重合開始から2時間後に冷却した以外は実施例1と同様にして共重合体(A4)7.4質量部を得た。共重合体(A4)の1H-NMRを測定したところ、MMAに由来する構造単位の含量は83.3質量%、PRDMAに由来する構造単位の含量は16.0質量%、MAに由来する構造単位の含量は0.7質量%であった。共重合体(A4)は、重量平均分子量(Mw)が186,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.68であった。その他評価結果を表1に示す。
【0102】
<実施例5>
該耐圧容器に、7.9質量部のMMA、2.0質量部のBEPMA、0.1質量部のMA、0.012質量部のn-オクチルメルカプタンを仕込み、重合開始から2時間後に冷却した以外は実施例1と同様にして共重合体(A5)7.2質量部を得た。共重合体(A5)の1H-NMRを測定したところ、MMAに由来する構造単位の含量は83.7質量%、BEPMAに由来する構造単位の含量は15.5質量%、MAに由来する構造単位の含量は0.8質量%であった。共重合体(A5)は、重量平均分子量(Mw)が187,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.73であった。その他評価結果を表1に示す。
【0103】
<比較例1>
該耐圧容器に、7.9質量部のMMA、2.0質量部のHEMA、0.1質量部のMA、0.012質量部のn-オクチルメルカプタンを仕込んだ以外は実施例1と同様にして共重合体(B1)を得た。大半が容器底部で不溶化(ゲル化)していたため可溶分のみ回収し、物性評価を実施した。評価結果を表1に示す。
【0104】
<比較例2>
該耐圧容器に、5.9質量部のMMA、4.1質量部のHEMA、0.1質量部のMA、0.012質量部のn-オクチルメルカプタンを仕込んだ以外は実施例1と同様にして共重合体(B2)を得た。大半が容器底部で不溶化(ゲル化)していたため可溶分のみ回収し、物性評価を実施した。評価結果を表1に示す。
【0105】
【0106】
表1から分かるように、式(1)で表される単量体に由来する構造単位を含有する共重合体(A1)~(A5)は、重合時にゲル化が起こらないことが分かる。また、熱分解温度が高いため、耐熱分解性に優れることがわかる。さらに、加熱試験前後のMw/Mnの変化率が小さいため、溶融成形時のゲルブツ発生が抑制されていることが分かる。また、耐薬品性に優れることが分かる。