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特許7123449ヘアスタイリング組成物及びスプレーシステム
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  • 特許-ヘアスタイリング組成物及びスプレーシステム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】ヘアスタイリング組成物及びスプレーシステム
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/81 20060101AFI20220816BHJP
   A61Q 5/06 20060101ALI20220816BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20220816BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20220816BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20220816BHJP
   A61K 8/33 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
A61K8/81
A61Q5/06
A61K8/34
A61K8/02
A61K8/31
A61K8/33
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021502814
(86)(22)【出願日】2019-07-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-18
(86)【国際出願番号】 KR2019008752
(87)【国際公開番号】W WO2020017857
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2021-01-18
(31)【優先権主張番号】10-2018-0082702
(32)【優先日】2018-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】514112488
【氏名又は名称】エルジー ハウスホールド アンド ヘルスケア リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 允辰
(74)【代理人】
【識別番号】100202599
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 一貴
(74)【代理人】
【識別番号】100195796
【弁理士】
【氏名又は名称】塩尻 一尋
(72)【発明者】
【氏名】ス・ジ・クォン
(72)【発明者】
【氏名】ファ・チュン・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・エ・ユン
(72)【発明者】
【氏名】イン・ホ・イ
(72)【発明者】
【氏名】スン・ス・ユン
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-516069(JP,A)
【文献】特開2004-203761(JP,A)
【文献】特開2017-066152(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0197704(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0236397(US,A1)
【文献】特開2014-205650(JP,A)
【文献】特開2003-081775(JP,A)
【文献】特表平06-508158(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/KOSMET(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー及び溶剤を含む組成物であり、
前記ポリマーは、下記化1の単位を含むポリマー(P1)を含むヘアスタイリング組成物:
【化1】
前記化1において、
、X、X、及びXは、それぞれ独立して、水素又はアルキル基であり、
は、1~4であるアルキル基であり、R は、炭素数が5~20であるアルキル基であり、
Aは、2価炭化水素基であり、
nは、1~50の間の整数であり、
は、水素又はアルキル基であり、
は、Na、K、イミダゾリウム、アンモニウム、ピリジニウム、トリアゾリウム、及びホスホニウムから構成されたグループから選ばれ、
a、b、c 及び dは、各重合単位の平均重合数(degree of polymerization)であって0より大きく、a+b+cは、50~1,000の間の値を持ち、
重合度がaである単位をA単位と呼称し、重合度がbである単位をB単位と呼称する場合に、前記A単位の前駆体モノマーの重量Waと前記B単位の前駆体モノマーの重量Wbの割合Wb/Waが、1~4である
【請求項2】
前記Mは、Na、K、及び4級アンモニウムの中から選ばれる1つ以上である、請求項1に記載のヘアスタイリング組成物。
【請求項3】
前記Rは、水素又はメチル基である、請求項1または2に記載のヘアスタイリング組成物。
【請求項4】
前記ポリマー(P1)は、5,000~200,000の範囲内の重量平均分子量(Mw)及び1.0~5.0の範囲内の分子量分布(PDI)を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のヘアスタイリング組成物。
【請求項5】
組成物全体の含量100重量部に対して0.1~30重量部の範囲で前記ポリマー(P1)を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のヘアスタイリング組成物。
【請求項6】
前記ポリマー(P1)と異なるポリマー(P2)をさらに含み、
前記ポリマー(P2)は、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン/ビニルアセテートの共重合体、及びポリビニルピロリドン/ジメチルアミノエチルメタクリレートの共重合体から選ばれる1つ以上の非イオン性ポリマー;及び、
メタクリロイルエチルベタイン/メタクリレート共重合体及びオクチルアクリルアミド/アクリレート/ブチルアミノエチルメタクリレートの共重合体から選ばれる1つ以上の両性ポリマー;の中から選ばれる、請求項1から5のいずれか一項に記載のヘアスタイリング組成物。
【請求項7】
前記ポリマー(P1)及びポリマー(P2)の重量比率は、1:99~99:1の範囲である、請求項6に記載のヘアスタイリング組成物。
【請求項8】
組成物の全体の含量100重量部に対して0.1~30重量部の範囲で前記ポリマー(P1及びP2)を含む、請求項6または7に記載のヘアスタイリング組成物。
【請求項9】
前記溶剤は、アルコールを含むか、アルコールと水の混合物を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載のヘアスタイリング組成物。
【請求項10】
前記ポリマー100重量部に対して100~2,000重量部の範囲の溶剤を含む、請求項9に記載のヘアスタイリング組成物。
【請求項11】
前記組成物は、ガス状で噴霧されるエアゾールスプレー組成物であり、前記組成物は、プロパン、n-ブタン、イソブタン、及びジメチルエーテル(DME)の中から選ばれる1つ以上の物質を推進としてさらに含む、請求項1から10のいずれか一項に記載のヘアスタイリング組成物。
【請求項12】
前記ポリマー100重量部に対して100~1,500重量部の範囲の推進剤を含む、請求項11に記載のヘアスタイリング組成物。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載のヘアスタイリング組成物を噴射する、スプレーシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
本出願は、2018年07月17日付韓国特許出願第10-2018-0082702号に基づく優先権の利益を主張しており、該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は、本明細書の一部として含まれる。
技術分野
本出願は、ヘアスタイリング組成物及びスプレーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ヘア(頭髪)スタイリングに関連して、様々な製品が発売されている。例えば、ヘアスプレー、ジェル、ムース、ヘア用トニック、ヘアローションなどが販売されている。これらの製品には、ヘアに接触した後、ユーザーの所望の状態でデザインされた髪型を所定時間の間維持する成分(組成物)が含まれている。
【0003】
ヘアスプレーの例を挙げれば、ヘアスプレー組成物(エアゾール)は、高圧ガス推進剤、溶剤、及びヘアセット用ポリマー、可塑剤、保湿剤、及び/又は香り提供成分などを含んでいてもよい。前記組成物は、所定の噴射システム内に保管される。例えば、ユーザーがスプレー容器に形成された噴射ボタンを押すと、高圧ガス推進剤(例:LPGなど)により、前記組成物をガスを伴う微細粒子、泡や液状の形態でヘアに噴射することができ、ユーザーは、前記組成物が噴射されたヘアを所望の形態でデザイン(又はセット)することができる。前記組成物の構成の中でヘアセット用ポリマーは、組成物が噴射された後、ユーザーによってセットされたヘアの部分に対して所定時間の間ヘアセット保持力(又は保有力)を提供する構成である。より具体的には、スプレー組成物がヘアに噴射された後に溶剤(例えば、エタノールやLPGなどの液化ガス)が蒸発すると、ヘアセット用ポリマーは、ヘアの表面にフィルムを形成することになるが、前記フィルムが有する強度(hardness)によってセットされた状態でヘアが固定され得るものである。
【0004】
前記作用を行うヘアセット用ポリマーとしては、水やアルコールに可溶性のポリマーが使用される。例えば、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン/ビニルアセテート共重合体、ビニルアセテート/クロトン酸共重合体、又はアクリル樹脂などがヘアセット用ポリマーとして広く使用されている。前記ポリマーは、ポリマー特有のハードネス(hardness)によって、ヘアに噴射された後、ヘアに対する固定効果を容易に提供するが、様々な添加剤とともに使用される特性上、過度に硬く見えたり、荒く、べたつくという短所がある。つまり、良い美感や肌触りが提供できない。そして、前記のようなポリマーは、柔軟性(flexibility)に劣るが、それによって噴射後、ブラッシングを続けたり、固定されたヘアに外力が加わる場合、コーティングされたポリマーフィルムが割れて白粉が観察される(以下、フレーキング(flaking)という)。
【0005】
一方、最近では、ヘアスタイリング製品の中にシリコングラフトされた有機主鎖ポリマーを使用する方法が紹介されたことがある。例えば、大韓民国特許公開第10-1999-0067122号、特許公開第10-2001-0030417号、及び特許公開第10-1991-002421号は、シリコングラフトされたポリマーを使用してヘアスタイリング保有力と改善されたヘア感触を提供する技術を提案する。しかし、これらの組成物は、通常、容器から噴射される粒子が泡を形成しながらヘアに噴射されるため、白い雪粉または白い玉のような粒子が黒いヘアに噴射されたような様相を示す(以下、ビーディング(beading)という)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本出願の1つの目的は、フレーキング現象とビーディング現象を改善できるヘアスタイリング組成物を提供するものである。
【0007】
本出願の他の目的は、美感と肌触りに優れたヘアスタイリング組成物を提供するものである。
【0008】
本出願のさらに他の目的は、洗浄性に優れたヘアスタイリング組成物を提供するものである。
【0009】
本出願のさらに他の目的は、ヘアスプレー用ヘアスタイリング組成物を提供するものである。
【0010】
本出願の前記目的及びその他の目的は、下記詳細に説明される本出願によってすべて解決することができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本出願に関する一例において、本出願は、噴射、噴霧又はポンピングシステムを介してヘアに接触し、ヘアを所定の形態で固定させるのに使用されるヘアスタイリング組成物に関する。前記組成物は、ユーザーによって形成されたセット状態を長い間保持しながらも優れた美感と肌触りを提供し、ビーディングやフレーキング現象を改善し、使用後には、優れた洗浄性を提供する。
【0012】
前記組成物は、ポリマーと溶剤を含む。
【0013】
具体的に、前記組成物は、下記化1で表される単位を有するポリマーを含む。下記化1の両端には、他のチェーンが連結されていてもよい。下記構成のポリマーは、ユーザーによってセットされたヘアの部分に対して所定時間の間、ヘアセット保持力を提供できるようにし、溶剤に対する優れた溶解性、ヘアに対する均一な塗布性、及び使用後のヘアの洗浄時に優れた洗浄性を提供することに寄与する。
【0014】
【化1】
【0015】
前記化1において、
、X、X、及びXは、それぞれ独立して、水素又はアルキル基であり、
及びRは、炭素数が互いに同一、又は異なるアルキル基であり、
Aは、2価炭化水素(例:アルキレン基又はアルキリデン基)であり、
nは、1~50の間の整数であり、
は、水素又はアルキル基であり、
は、Na、K、イミダゾリウム、アンモニウム、ピリジニウム、トリアゾリウム、及びホスホニウムから構成されたグループから選ばれ、
a、b、及びcは、各重合単位の平均重合数(degree of polymerization)であって0より大きく、a+b+cは、50~1,000の間の値を持つ。
【0016】
本出願において、特に定義しない限り、アルキル基は、炭素数1~20のアルキル基を意味しうる。例えば、アルキル基は、炭素数1~16、炭素数1~12、炭素数1~8又は炭素数1~4のアルキル基を意味しうる。前記アルキル基は、直鎖状、分枝鎖状、又は環状であってもよい。前記アルキル基は、一つ以上の置換基によって置換されている、又は非置換の状態であってもよい。
【0017】
また、本出願において、特に定義しない限り、アルキレン基又はアルキリデン基は、炭素数1~20の間のアルキレン基、又はアルキリデン基をそれぞれ意味しうる。例えば、前記アルキレン基又はアルキリデン基は、炭素数1~16、炭素数1~12、炭素数1~8、又は炭素数1~4のアルキレン基又はアルキリデン基であってもよい。前記アルキレン基又はアルキリデン基は、直鎖状、分枝鎖状、又は環状であってもよい。前記アルキレン基又はアルキリデン基は、必要に応じて1つ以上の置換基によって置換されていてもよい。
【0018】
前記ポリマーは、アニオン性アクリル系ポリマーである。すなわち、前記化1の単位を有するポリマーにおいて、Mは、ポリマーに結合しておらず、イオンバランス(ionic balance)を合わせながら移動可能な構成である。
【0019】
前記重合度を満たす場合、平均重合数がa、b、及びcである単位は、ビーディング現象の改善、フレーキング現象の改善、洗浄性の改善、及びポリマーの溶剤に対する溶解性の改善に主に寄与し、平均重合数がdである単位は、スタイリング製品の使用後のヘア洗浄時に水に対する溶解度の付与に主に寄与する。平均重合数がaである単位、bである単位、cである単位のいずれか一つのみを含む場合には、前記羅列された改善効果がバランスよく現れない。
【0020】
一つの例示で、X、X、X、及びXは、それぞれ独立して、水素又は炭素数が1~6であるアルキル基であってもよい。
【0021】
一つの例示で、前記Rは、1~4であるアルキル基であり、Rは、炭素数が5~20であるアルキル基であってもよい。例えば、前記Rは、5~20、7~18、9~16の範囲であるアルキル基であってもよい。R及びRのそれぞれの炭素数が前記範囲をそれぞれ満たす場合、洗浄性に妨害を与えずに、本出願の目的を達成できるように、前記ポリマー内で適切な親水性/疎水性のバランスが具現され得る。
【0022】
一つの例示で、前記Aは、炭素数が1~6の範囲内である2価炭化水素であってもよい。例えば、前記Aは、アルキレン基又はアルキリデン基であってもよい。Aの炭素数が前記範囲を超える場合、疎水性が過度に強くなるので、洗浄性が低下する。例えば、前記Aは、エチレン基であるか、プロピレン基であってもよい。前記のような効果を考慮すると、エチレン基が好ましい。
【0023】
一つの例示で、前記Rは、水素であってもよく、又は前記Rは、炭素数が1~6であるアルキル基であってもよい。Rが水素であるか、炭素数1~6を満たすアルキル基である場合、ポリマーの溶剤に対する溶解性及び洗浄性を適切に確保することができる。
【0024】
もう一つの例示で、前記Rは、水素であってもよい。さらに他の例示で、前記Rは、炭素数が3以下、2以下、又は1である短鎖アルキル基であってもよい。短鎖アルキル基の具体的な例示としては、メチル基を挙げることができる。Rが水素又は短鎖アルキル基である場合、ポリマーの使用によって得ようとする効果を達成するのに有利になる。
【0025】
前記化1の単位を含むポリマーを製造する方法は、特に制限されるものではない。例えば、重合数がa、b、c、dである各単位をA、B、C、及びDの単位というとき、前記各単位を提供できるモノマー(前駆体モノマーという)を共重合することにより、前記ポリマーを得ることができる。
【0026】
前記A、B、C、及びDの単位を提供するモノマー成分は、前述した化1のX~X、R~R、A、Mなどを満たすように選ばれてもよい。前記ヘアセット用ポリマーを製造するためのモノマー成分の例は、以下の通りである。
【0027】
一つの例示で、A及び/又はB単位の前駆体モノマーとしては、炭素数が1~20であるアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが用いられてもよい。例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、又はステアリル(メタ)アクリレートが用いられてもよい。また、これらのうちの2以上がともに用いられてもよい。
【0028】
一つの例示で、前記A単位の前駆体モノマーとB単位の前駆体モノマーが有するアルキレン基の数は、互いに同一であってもよい。
【0029】
一つの例示で、前記A単位の前駆体モノマーとB単位の前駆体モノマーが有するアルキル基の数は、互いに異なりうる。例えば、前記A単位の前駆体モノマーとしては、炭素数が1~4であるアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが用いられてもよく、前記B単位の前駆体モノマーとしては、炭素数が5~20であるアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが用いられてもよい。前記のように、A単位とB単位の形成に使用されるモノマーのアルキル基を互いに異なるように調節する場合、ポリマーに適切な疎水性/親水性のバランスを付与することができ、それによって優れた洗浄性を持ちながら、ビーディング現象とフレーキング現象が改善され得る。
【0030】
一つの例示で、前記A及び/又はB単位の前駆体モノマーは、前記ポリマーを形成するための全体のモノマー成分100重量部を基準として、15重量部以上、又は20重量部以上が含まれていてもよい。具体的に、25重量部以上、30重量部以上、35重量部以上、40重量部以上、45重量部以上、又は50重量部以上使用されてもよい。そして、前記A及び/又はB単位の前駆体モノマーは、85重量部以下、80重量部以下、75重量部以下、又は70重量部以下使用されてもよい。前記範囲よりも少ない量で使用される場合には、ポリマーの親水性が過度に強くなり、下記の実施例から確認されるように、水に対する接触角が低くなり、ビーディング現象が酷くなる。ビーディング現象は、空気中に噴射されたヘアスプレー粒子がヘアの表面に均等に広がらず、丸く固まりながら視認される現象で、ヘアの表面の疎水性が高いことを考慮するとき、ポリマーの疎水性が適切な水準に保たれる場合にビーディング現象が改善されるものと考えられる。また、前記範囲よりも多くの量で使用される場合には、ポリマーの疎水性が過度に強くなり、水に対する溶解度が低くなり、そのため、製品の使用後の洗浄時に水でよく洗えないという問題がある。
【0031】
一つの例示で、前記A単位の前駆体モノマーとB単位の前駆体モノマーの重量比は、1:10~10:1の範囲を満たすことができる。
【0032】
一つの例示で、前記A単位の前駆体であるアルキル(メタ)アクリレートが有するアルキル基が、炭素数がB単位の前駆体であるアルキル(メタ)アクリレートが有するアルキル基の炭素数よりも短い場合、前記A単位の前駆体モノマーの重量(Wa)とB単位の前駆体モノマーの重量(Wb)の割合(Wb/Wa)は、1~4、1~3.5、1~3、1~2.5、又は1~2の範囲内であるように、前記B単位の前駆体モノマーがより過量で使用されてもよい。前記含量の範囲を満たす場合、前記ポリマーは、約-10~70℃、より好ましくは、10~50℃の範囲内のガラス転移温度を有してもよい。A単位の前駆体モノマーが過量で使用される場合、ポリマーのガラス転移温度が高くなり、ポリマーが硬い特性を有するため、ハードネスが過度に強くなる場合がある。前記含量の範囲を満たす場合、ヘアに対する塗布性に優れている。しかし、前記範囲を超える場合には、ポリマーが過度に硬いためフレーキングが酷くなり、前記範囲よりも低い場合には、ポリマーの柔軟な特性が強くなるため、スタイリング保持力が低下する。
【0033】
前記C単位の前駆体モノマーは、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのようなヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-(2-メトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)モノ(アルキル)エーテル(メタ)アクリレートなどが使用されてもよい。また、これらのうちの2以上がともに使用されてもよい。前記モノマーを使用する場合、溶媒に対する溶解度を維持しながらポリマーの親水性/疎水性のバランスを維持するのに有利である。これらの効果を考慮すると、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの使用が好ましい。
【0034】
一つの例示で、前記C単位の前駆体モノマーは、前記ポリマーを形成するための全体のモノマー成分100重量部を基準として、5重量部以上含まれていてもよい。具体的に、10重量部以上、又は15重量部以上使用されてもよい。そして、前記C単位の前駆体モノマーは、65重量部以下、60重量部以下、55重量部以下、50重量部以下、45重量部、40重量部以下、35重量部以下、30重量部以下、25重量部以下、又は20重量部以下使用されてもよい。前記範囲よりも少ない量で使用される場合には、溶剤に対する溶解度が十分でないため、例えば、スプレー形成用組成物に必要なエアゾール剤形などに適さず、ヘアスプレーのノズルの目詰まり現象が酷くなり、このためヘアに対する均一な塗布性を確保し難い。また、前記範囲よりも多くの量で使用される場合には、水に対する接触角が低くなるため、ヘアの表面にビーディング現象が酷くなる可能性がある。
【0035】
前記M+は、Na+、K+、及び4級アンモニウムの中から選ばれる1つ以上である.一つの例示で、D単位の形成には、所定の過程を経て前記Mを提供する化合物が使用されてもよい。例えば、前記D単位の前駆体モノマーとしては、架橋性官能基を有する酸性モノマーと塩基性化合物(例:KOH)が使用されてもよく、それらの反応によってMでK(カリウムイオン)が発生し得る。特に制限されるものではないが、酸性モノマーとしては、(メタ)アクリル酸が使用されてもよく、これを中和させる塩基性化合物としては、KOHやNaOHが使用されてもよい。また、トリアルキルアミン(trialkylamine)のような化合物で酸性モノマーの中和の際には、4級アンモニウム塩が発生し得る。
【0036】
一つの例示で、前記D単位の前駆体モノマーは、前記ポリマーを形成するための全体のモノマー成分100重量部を基準として、1重量部以上含まれてもよい。具体的に、5重量部以上、10重量部以上、又は15重量部以上使用されてもよい。そして、前記D単位の前駆体モノマーは、50重量部以下、45重量部以下、40重量部以下、35重量部以下、30重量部以下、25重量部以下、20重量部以下、15重量部以下、又は10重量部以下使用されてもよい。前記範囲を超える場合には、溶剤やガスに対する溶解度が低いため、エアゾール剤形での製造が困難な問題があり、前記範囲未満である場合には、十分な洗浄性を提供できない。
【0037】
一つの例示で、前記ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、5,000~200,000の範囲内であってもよい。例えば、前記ポリマーは、6,000以上、7,000以上、8,000以上、9,000以上、10,000以上、11,000以上、12,000以上、13,000以上、14,000以上、15,000以上、16,000以上、又は17,000以上の重量平均分子量を有してもよい。また、例えば、前記ポリマーは、180,000以下、150,000以下、120,000以下、90,000以下、60,000以下、又は30,000以下の重量平均分子量を有してもよく、具体的には、25,000以下、24,000以下、23,000以下、22,000以下、21,000以下又は20,000以下の重量平均分子量を有してもよい。特に言及しない限り、本出願において重量平均分子量は、GPC(Gel Permeation Chromatograph)を使用して測定した標準ポリスチレンに対する換算数値であってもよい。
【0038】
一つの例示で、前記ポリマーの分子量分布(PDI=Mw/Mn、Mw:重量平均分子量、Mn:数平均分子量)は、1.0~5.0の範囲内であってもよい。例えば、前記分子量分布は1.1以上、1.2以上、1.3以上、1.4以上、又は1.5以上であってもよい。また、例えば、前記分子量分布は、4.9以下、4.8以下、4.7以下、4.6以下、4.5以下、4.4以下、4.3以下、4.2以下、4.1以下、4.0以下、3.9以下、3.8以下、3.7以下、3.6以下、3.5以下、3.4以下、3.3以下、3.2以下、3.1以下、又は3.0以下であってもよく、具体的には、2.5以下、2.4以下、2.3以下、2.2以下、2.1以下、又は2.0以下であってもよい。
【0039】
一つの例示で、前記組成物は、全体の組成物の全体含量100重量部に対して0.1~30重量部の範囲で前記化1の単位を含むポリマー(P1)を含んでいてもよい。例えば、前記ポリマー(P1)の含量は、1重量部以上、2重量部以上、3重量部以上、4重量部以上、又は5重量部以上であってもよい。又は、前記範囲内で、前記ポリマーの含量は、10重量部以上、15重量部以上、又は20重量部以上であってもよい。
【0040】
一つの例示で、前記組成物は、前記化1の単位を含むポリマーを2以上含んでいてもよい。例えば、前記組成物は、Rなどが互いに異なる化1の単位を含むポリマー(P11)及びポリマー(P12)を含んでいてもよい。この場合にも、前記化1の単位を含むポリマー(P1)は、全体の組成物の全体含量100重量部に対して0.1~30重量部の範囲内で使用されてもよい。
【0041】
もう一つの例示で、前記組成物は、2種以上のポリマーを含んでいてもよい。例えば、前記組成物は、[化1]の単位を含むポリマー(P1)を含むことの他に、構成が異なる異種のポリマー(P2)をさらに含んでいてもよい。構成が異なる異種のポリマー(P2)は、[化1]の単位を含まないポリマーを意味しうる。又は前記組成物は、前記アニオン性ポリマー(P1)に対応する概念として、カチオン性ポリマー、両性(又は両方のイオン性)ポリマー、又は非イオン性ポリマーをポリマー(P2)としてさらに含んでいてもよい。
【0042】
一つの例示で、前記組成物は、ポリビニルピロリドン(Polyvinylpyrrolidone)、ポリビニルピロリドン/ビニルアセテートの共重合体(PVP/VA copolymer)、ポリビニルピロリドン/ジメチルアミノエチルメタクリレートの共重合体(PVP/dimethylaminoethylmethacrylate copolymer)のような非イオン性ポリマーをポリマー(P2)としてさらに含んでいてもよい。
【0043】
もう一つの例示で、前記組成物は、メタクリロイルエチルベタイン/メタクリレートの共重合体(Methacryloylethylbetaine/methacrylate copolymer)、及びオクチルアクリルアミド/アクリレート/ブチルアミノエチルメタクリレートの共重合体(Octylacrylamide/acrylates/butylaminoethylmethacrylatecopolymer)のような両性ポリマー(P2)をさらに含んでいてもよい。
【0044】
もう一つの例示で、前記例示されたポリマー(P2)の中から2以上のポリマーをさらに含んでいてもよい。
【0045】
前記組成物がポリマー(P1)及びポリマー(P2)を全て含む場合、ポリマー(P1)とポリマー(P2)の重量比(P1:P2)は、1:99~99:1の範囲であってもよい。
【0046】
一つの例示で、前記ポリマー(P1)は、ポリマー(P2)に対して同等又は少ない含量で使用されてもよい。具体的に、ポリマー(P1)とポリマー(P2)間の重量比率(P1:P2、重量部)は、5:95~50:50の範囲であってもよい。具体的に、前記範囲内で、ポリマー(P1)の重量比率は、10重量部以上、15重量部以上、20重量部以上、25重量部以上、30重量部以上、35重量部以上、40重量部以上又は45重量部以上であってもよい。
【0047】
もう一つの例示で、前記ポリマー(P1)は、ポリマー(P2)に対して同等又は過量で使用されてもよい。例えば、ポリマー(P1)とポリマー(P2)間の重量比率(P1:P2)は、50:50~95:5の範囲であってもよい。具体的に、前記範囲内で、ポリマー(P1)の重量比率は、55重量部以上、60重量部以上、65重量部以上、70重量部以上、75重量部以上、80重量部以上、85重量部以上、又は90重量部以上であってもよい。
【0048】
前記のようにポリマー(P1)及びポリマー(P2)がともに使用される場合、組成物内に使用されるポリマーの総含量は、組成物の全体の含量100重量部に対して0.1~30重量部の範囲であってもよい。例えば、前記ポリマーの総含量は、1重量部以上、2重量部以上、3重量部以上、4重量部以上、又は5重量部以上であってもよい。又は、前記範囲内で、前記ポリマーの総含量は、10重量部以上、15重量部以上、又は20重量部以上であってもよい。
【0049】
一つの例示で、前記組成物は、溶剤をさらに含む。前記溶剤としては、例えば、エタノールやイソプロパノールのようなアルコールが使用されてもよい。その他にも、水が使用されてもよい。例えば、水とアルコールの混合物が溶剤として使用されてもよい。水とアルコールが混合使用される場合、全体の溶剤成分に対して水の含量は、10重量部以下であることが好ましい。
【0050】
一つの例示で、前記組成物は、前記ポリマー成分(P1及び/又はP2)100重量部に対して100~2,000重量部の範囲の溶剤を含んでいてもよい。
【0051】
一つの例示で、前記組成物は、所定の接触角を満たすことができる。具体的に、前記組成物は、前記組成物から形成されたコーティング面、すなわち、前記組成物が塗布された膜に対する水滴の接触角が90~120°の範囲を満たすことができる。前記接触角は、下記の実施例で説明する方法によって測定されてもよい。接触角が前記範囲未満である場合には、スプレー組成物のヘアに対する塗布特性が悪化してビーディング現象が増加し、前記範囲を超える場合には、ポリマーの硬い特性が増加することによりフレーキング現象が増加しうる。また、下記実施例から確認されるように、接触角が過度に低い親水性の性質のポリマーは、水に対する溶解性が高いため、ジェル製品やローション製品のように水に溶解して製品化するが、毛髪に使用時に大気中の水分を吸収するため、ハードネスが低い。一方、接触角の高い疎水性ポリマーは、水に対する溶解性が低いため、ジェル製品やローション製品としては使用できず、水ではないエタノールやLPGに溶解されてヘアスプレーとして製品化され、前記親水性ポリマーとは異なり、最もヘア製品の中で最も高いハードネスを持つ。強い疎水性は、洗浄力を低下させ、過度に高いハードネスは、フレーキング現象を容易に誘発する。
【0052】
一つの例示で、前記組成物は、ガス状で噴霧されるエアゾールスプレー組成物であってもよい。すなわち、前記組成物は、エアゾールを噴射できる高圧ガス推進剤を含んでいてもよい。推進剤の種類は、特に制限されるものではないが、例えば、プロパン、n-ブタン、イソブタン、及びジメチルエーテル(DME)のうちの1つ以上を含むものであってもよい。
【0053】
一つの例示で、前記組成物は、前記ポリマー成分(P1及び/又はP2)100重量部に対して100~1500重量部の範囲の推進剤を含んでいてもよい。
【0054】
一つの例示で、前記組成物は、可塑剤をさらに含んでいてもよい。可塑剤の種類は特に制限されず、例えば、シリコン化合物、又は2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(2-amino-2-methyl-1-propanol)などのように、公知の可塑剤が制限なく使用されてもよい。
【0055】
一つの例示で、前記組成物は、保湿剤をさらに含んでいてもよい。保湿剤の種類も特に制限されず、例えば、プロピレングリコール(propylene glycol)のような公知の材料が制限なく使用されてもよい。
【0056】
その他に、前記組成物は、ヘアに対する保湿、コンディショニング及び/又は香りを提供できる添加剤(pH調整剤、香料、紫外線遮断剤など)をさらに含んでいてもよい。
【0057】
本出願に係る他の一例で、本出願は、ヘアスプレー噴射システムに関する。前記噴射システムは、前記組成物を噴射するのに使用されるもので、バルブの目詰まりがなく、前記組成物が噴射されるように構成されてもよい。
【0058】
具体的に、高圧ガスにより、エアゾールの形態でヘアセット用組成物を噴射するように構成されたシステムは、組成物が移動して噴射されるように、様々なサイズの穴、すなわち、オリフィス(orifice)を有する。したがって、噴射される組成物によってオリフィスのサイズを適切に設定することが重要である。つまり、オリフィスの適切な設計によって組成物の噴射量、噴射される粒子のサイズ、噴射幅のような噴射形状などが決められ、結果として、ヘアセット剤を噴射する全体の製品の機能が左右される。
【0059】
例示的な噴射システムのオリフィスに関する説明は、図1を参考して説明すると、ユーザーがボタン(actuator)を押すと、容器の内にあるヘアスプレー組成物が推進剤によってバルブ内を移動しながらボディオリフィス、ヴェイパータップオリフィス、及びステムオリフィスのような穴を通過しながら微細な粒子に形成され(break-up)、最終的に粒子化された組成物が、ボタンオリフィス(actuator orifice)から排出される方式でヘアに向かって組成物が噴射される。したがって、前記のようなヘア組成物の噴射過程において障害とならないようにオリフィスを適切に設計して、バルブが詰まらず、同時に噴射される粒子のサイズや噴射幅などが適切に行われるようにしなければならない。具体的に、噴射量が多すぎると、ビーディング現象とフレーキング現象が酷くなることがあり、ユーザーの毛髪が束になることがある。また、噴射粒子のサイズが小さすぎると、粒子の飛散が酷いので、ユーザーがヘア組成物を鼻で吸入することになるおそれがある。
【0060】
本出願は、前記のような問題点がなく、ヘアセット効果を十分に行うことができる噴射システムを提供する。
【0061】
前記システムは、ボタンオリフィス(atutator orifice)、ステムオリフィス(stem orifice)、ボディオリフィス(body orifice)、及びヴェイパータップオリフィス(vapor tap orifice)を備えていてもよい。
【0062】
また、前記システムは、組成物が保管され得るチャネルや容器、及びチューブを含む。
【0063】
前記システムの内部は、所定の圧力が形成されていてもよい。
【0064】
一つの例示で、ボタンオリフィスの直径は、0.3mm以上、0.4mm以上、又は0.5mm以上であってもよい。また、前記ボタンオリフィスの直径の上限は、例えば、0.7mm以下、又は0.6mm以下であってもよい。
【0065】
一つの例示で、前記システムは、ステムオリフィスを1つ以上備えていてもよい。例えば、前記システムは、ステムオリフィスを2つ、又はそれ以上備えていてもよい。
【0066】
一つの例示で、前記ステムオリフィスの直径は、0.3mm以上、0.4mm以上、又は0.5mm以上であってもよい。また、前記ステムオリフィスの直径の上限は、例えば、0.7mm以下、又は0.6mm以下であってもよい。
【0067】
一つの例示で、前記ボディオリフィスの直径は、0.5mm以上、0.6mm以上、又は0.7mm以上であってもよい。また、前記ボディオリフィスの直径の上限は、例えば、1mm以下、0.9mm以下、又は0.8mm以下であってもよい。
【0068】
一つの例示で、前記ヴェイパータップオリフィスの直径は、例えば、0.6mm以下、0.5mm以下、0.4mm以下、又は0.3mm以下であってもよく、実質的に0mmであってもよい。又は前記ヴェイパータップオリフィスは、直径がなくてもよい。
【0069】
前記のようにオリフィスの個数及び/又は直径を持つようにシステムが設計される場合、前述した問題点を解決することができ、優れたユーザー経験を提供しうる。
【発明の効果】
【0070】
本出願は、従来技術の問題点を解決できる。例えば、本出願の一例によると、セットされたヘアのスタイル保持力に優れながらもビーディング現象やフレーキング現象の少ないヘアスタイリング組成物が提供され得る。また、前記組成物は、ヘアスタイリング製品の使用後にも優れた洗浄力を提供しうる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
図1図1は、スプレーシステムに関する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0072】
以下、実施例によって本出願を詳細に説明する。しかし、本出願の保護範囲が下記説明される実施例により制限されるものではない。
【0073】
<物性測定方法>
*接触角の測定
接触角測定機器(Attension Theta Lite、Biolin Scientific社)を使用して接触角を測定した。具体的に、下記表1に示すように配合された各組成物1gを、横6cm、縦4cm、高さ0.3cmのアクリル板上に均一な厚さ(120μm)でコーティングした。コーティングの表面に4mgの水滴を落とした直後から1分の間1秒間隔でコーティング表面と水滴の接触角を測定し、平均値を求めた。コーティング表面の位置を互いに異なるようにしながら、前記のような計算を3回繰り返し、平均値を求めた。接触角は、固体(polymerコーティング表面)、液体(水滴)、及び気体(空気)3相の接点で液体の接線と固体面がなす角度を意味する。接触角によってポリマーコーティング表面の特性を以下のように判断した。その結果は、表2の通りである。
【0074】
-50°未満:親水性であってハードネスに劣るポリマーであり、水に対する溶解性が強い。
-50以上90°未満:弱い疎水性であって普通水準のハードネスを持ち、水に対する溶解性が普通である。
-90以上120°未満:疎水性を持ち、高いハードネスを持ち、水に対する溶解性が大きくない。
-120°以上:強い疎水性を持ち、非常に高いハードネスを持ち、ヘア製品に使用するのに適していない。
【0075】
*ビーディング評価
ヘアスプレー製品を実際に使用する200人の評価者が、実施例及び比較例で配合されたヘアスプレー組成物を使用するようにした。官能テストを行った。具体的に、噴射時に噴射粒子(Beading)がない場合を10点と評価し、球状の噴射粒子(Beading)が非常に多い場合を1点と評価するようにして、各実施例及び比較例に対してその平均点数を記録するようにした。その結果は、表2の通りである。
【0076】
-7~10点(良好):ビーディングなし。
-4~6点(普通):ビーディングが発生するが、その程度が低い。
-1~3点(不良):ビーディングが酷く発生する。
【0077】
*フレーキング評価
ヘアスプレー製品を実際に使用する200人の評価者が、実施例及び比較例で配合されたヘアスプレー組成物を使用するようにした。官能テストを行った。具体的に、ヘアに白粉(Flaking)が視認されない場合を10点と評価し、白粉(Flaking)が過度に視認される場合を1点と評価するようにして、各実施例及び比較例に対して、その平均点数を記録するようにした。その結果は、表2の通りである。
【0078】
-7~10点(良好):フレーキングなし。
-4~6点(普通):フレーキングが発生するが、その程度が低い。
-1~3点(不良):フレーキングが酷く発生する。
【0079】
<実施例及び比較例>
ポリマーの製造
製造例1
ポリマー(A1)の製造:1Lの丸底フラスコにbutyl methacrylate(BMA)20g、lauryl methacrylate(LMA)55g、2-hydroxyethyl methacrylate(HEMA)19g、methacrylic acid(MAA)6g、エタノール400gを入れてフラスコをシーリングした後、30分間攪拌とともに窒素バブリングした。フラスコを70℃のオイルバスに浸してazobis(isobutyronitrile)(AIBN)2gを投入し、24時間の間反応させた(製造されたポリマーの分子量は、Mwが1.8万であり、Mw/Mnは、1.73である)。ここにKOH3.9gを投入して、酸基を中和した。
【0080】
製造例2
ポリマー(A2)の製造:1Lの丸底フラスコにbutyl methacrylate(BMA)20g、lauryl methacrylate(LMA)60g、poly(ethylene glycol monomethyl ether methacrylate(mPEGMA、Mw500)14g、methacrylic acid(MAA)6g、エタノール400gを入れてフラスコをシーリングした後、30分間攪拌とともに窒素バブリングした。フラスコを70℃のオイルバスに浸してazobis(isobutyronitrile)(AIBN)2gを投入し、24時間の間反応させた(製造されたポリマーの分子量は、Mwが1.9万で、Mw/Mnは、1.71である)。ここにKOH3.9gを投入して、酸基を中和した。
【0081】
製造例3
ポリマー(A3)の製造:1Lの丸底フラスコにbutyl methacrylate(BMA)20g、hexadecyl methacrylate(HDMA)55g、poly(ethylene glycol monomethyl ether methacrylate(mPEGMA、Mw500)19g、methacrylic acid(MAA)6g、エタノール400gを入れてフラスコをシーリングした後、30分間攪拌とともに窒素バブリングした。フラスコを70℃のオイルバスに浸してazobis(isobutyronitrile)(AIBN)2gを投入し、24時間の間反応させた(製造されたポリマーの分子量は、Mwが1.3万で、Mw/Mnは、1.68である)。ここにKOH3.9gを投入して、酸基を中和した。
【0082】
製造例4
ポリマー(B1):両性イオン性ポリマーであり、Octylacrylamide、Acrylate、及びButylaminoethyl Methacrylateの共重合体である商品名Amphomer(AkzoNobel社)の共重合体を使用した。
【0083】
製造例5
ポリマー(B2):実施例とは異なり、実施例のポリマーのb単位を持たないアニオン性ポリマーとして、AMP-Acrylates Copolymerである商品名Mihapol PAH-50(Miwon Commercial Co.)の共重合体を使用した。
【0084】
製造例6
ポリマー(B3):非イオン性ポリマーであり、Hydroxyethyl acrylate、Methoxyethyl Acrylate、及びButyl Acrylateの共重合体である商品名Plascize L-301(GOO Chemical社)共重合体を使用した。
【0085】
実施例及び比較例
組成物の製造:下記表1に記載された割合で各成分を配合し、エアゾールヘアスプレー用組成物を製造した。実施例と比較例に対する物性測定結果は、表2の通りである。
【0086】
【表1】
【0087】
【表2】
【0088】
表2において、実施例1~5のように、所定のポリマーを含むように構成された組成物は、ビーディング現象が良好で、ポリマーのハードネス(hardness)が適正水準を持つため、フレーキング現象が良好な効果を提供することが分かる。また、前記実施例の組成物は、ポリマーコーティングに対する水滴の接触角が90~120°を満たしてヘアに対する塗布特性に優れていることが分かる。しかし、比較例1~3の組成物は、ビーディング現象とフレーキング現象を改善できないことが分かる。
【符号の説明】
【0089】
100:スプレーシステム
10:ボタンオリフィス
20:ステムオリフィス
30:ヴェイパータップオリフィス
40:ボディオリフィス
50:容器
60:ディップチューブ(dip tube)
70:組成物と推進剤の混合物
80:耐圧
図1