(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】レジスト多層膜付き基板及びパターン形成方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/11 20060101AFI20220816BHJP
G03F 7/26 20060101ALI20220816BHJP
H01L 21/027 20060101ALI20220816BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20220816BHJP
C08G 8/04 20060101ALI20220816BHJP
G03F 7/40 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
G03F7/11 503
G03F7/11 502
G03F7/26 511
H01L21/30 573
G03F7/20 521
H01L21/30 572B
G03F7/20 501
C08G8/04
G03F7/40 521
(21)【出願番号】P 2018129630
(22)【出願日】2018-07-09
【審査請求日】2021-03-02
(32)【優先日】2017-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】P 2017181440
(32)【優先日】2017-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390009531
【氏名又は名称】インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
【住所又は居所原語表記】New Orchard Road, Armonk, New York 10504, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】橘 誠一郎
(72)【発明者】
【氏名】荻原 勤
(72)【発明者】
【氏名】長井 洋子
(72)【発明者】
【氏名】ロマン ジェイ ラルマン
(72)【発明者】
【氏名】カレン ペトリロ
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-140252(JP,A)
【文献】特開2007-017949(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004 - 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、該基板上に形成されたレジスト多層膜とを有するレジスト多層膜付き基板であって、
前記レジスト多層膜が、前記基板側から、アンモニア過水に難溶な有機レジスト下層膜と、アンモニア過水に可溶な有機膜と、ケイ素含有レジスト中間膜と、レジスト上層膜とをこの順序で有するものであ
り、かつ、
前記アンモニア過水に可溶な有機膜が、下記一般式(1)~(4)で示されるいずれか1種以上の繰り返し単位を有する高分子化合物と有機溶媒とを含む有機膜形成用組成物の硬化物であり、かつ、
前記アンモニア過水に難溶な有機レジスト下層膜が、29%アンモニア水/35%過酸化水素水/水=1/1/8で混合した65℃の溶液による浸漬処理によって、3nm/分以下の溶解速度を有するものであることを特徴とするレジスト多層膜付き基板。
【化1】
(式中、R
1
は炭素数1~19の炭化水素基、ハロゲン原子、アルコキシ基、カルボキシ基、スルホ基、メトキシカルボニル基、ヒドロキシフェニル基、又はアミノ基であり、R
2
は水素原子又はALである。ALは加熱又は酸の作用により酸性の官能基を生じる基である。R
3
は水素原子、フラニル基、又は塩素原子もしくはニトロ基を有していてもよい炭素数1~16の炭化水素基である。k
1
、k
2
、及びk
3
は1~2であり、lは1~3であり、mは0~3であり、nは0又は1である。ただし、前記高分子化合物はm-クレゾールノボラックではない。)
【請求項2】
前記有機膜形成用組成物が、さらに、熱酸発生剤及び架橋剤のいずれかもしくは両方を含有するものであることを特徴とする
請求項1に記載のレジスト多層膜付き基板。
【請求項3】
前記アンモニア過水に可溶な有機膜が、29%アンモニア水/35%過酸化水素水/水=1/1/8で混合した65℃の溶液による
浸漬処理によって、5nm/分以上の溶解速度を有するものであることを特徴とする
請求項1又は請求項2に記載のレジスト多層膜付き基板。
【請求項4】
前記アンモニア過水に可溶な有機膜の膜厚が、10nm以上100nm未満のものであることを特徴とする請求項1から
請求項3のいずれか一項に記載のレジスト多層膜付き基板。
【請求項5】
前記ケイ素含有レジスト中間膜が、ホウ素及びリンのいずれかもしくは両方を含むものであることを特徴とする請求項1から
請求項4のいずれか一項に記載のレジスト多層膜付き基板。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のレジスト多層膜付き基板の製造方法であって、
前記有機膜形成用組成物として、前記有機溶媒において、プロピレングリコールエステル、ケトン、及びラクトンから選ばれる1種以上の合計が全有機溶媒中の30wt%を超える量を占める
ものを用いることを特徴とするレジスト多層膜付き基板の製造方法。
【請求項7】
請求項1から
請求項5のいずれか一項に記載のレジスト多層膜付き基板のレジスト上層膜を露光し、現像液で現像して前記レジスト上層膜にパターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト上層膜をエッチングマスクとして前記ケイ素含有レジスト中間膜をエッチングしてパターンを形成し、該パターンが形成されたケイ素含有レジスト中間膜をエッチングマスクとして前記有機膜と前記有機レジスト下層膜とをエッチングしてパターンを形成し、前記パターンが形成されたケイ素含有レジスト中間膜と前記パターンが形成された有機膜とをアンモニア過水による処理により除去し、前記パターンが形成された有機レジスト下層膜をマスクとして前記基板にパターンを形成することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項8】
前記基板にパターンを形成した後、前記パターンが形成された有機レジスト下層膜を、ドライエッチング又はウエットエッチングにより除去することを特徴とする
請求項7に記載のパターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置製造用基板に配線パターンを形成する方法、ならびにその方法に使用されるレジスト多層膜付き基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置の処理能力の高性能化は、リソグラフィー技術における光源の短波長化によるパターン寸法の微細化がけん引していた。しかし、近年、ArF光源以降の短波長化の速度が鈍化しているため、微細化に代わる半導体装置の処理能力の高性能化が求められていた。その方法の一つとして、平面型トランジスタより高速で動作可能な3次元トランジスタを高密度に配置した、処理能力の高い半導体装置が提案されている。このような半導体装置を製造するための基板(以下、基板とする)は、従来の基板に比べて複雑な段差加工を経た3次元構造となっている。そのため、従来の平面型トランジスタを形成する際に適用されていた単層フォトレジストによるパターン形成方法でパターン形成を行おうとすると、基板加工途中で形成される段差に対してフォトレジスト膜が追従してしまい、フォトレジスト膜表面に段差が発生し、結果として平坦なレジスト膜を得ることができなくなる。それによりフォトレジストを露光してパターン形成する時に、フォトレジストに焦点を正確に合わせることができなくなり、結果として基板加工の歩留まりが低下する。これを防止するための新しい材料や方法が求められている。
【0003】
このような問題点を解決する方法の一つとして、多層レジスト法がある。この方法は、平坦化性能の高い下層膜で段差のある基板を平坦化し、この平坦膜上でフォトレジスト膜を形成することで、露光時の焦点裕度が広くなり基板加工における歩留まりの低下を防ぐことができる。さらに、この方法では、上層フォトレジスト膜と基板に対してそれぞれエッチング選択性が異なる下層膜を選択すると、レジスト上層膜にパターンを形成した後、レジスト上層膜パターンをドライエッチングマスクとしてドライエッチングで中間膜にパターンを転写し、さらに下層膜をドライエッチングマスクとして、ドライエッチングで被加工基板にパターンを転写することが可能になる。
【0004】
この多層レジスト法としては、単層レジスト法で使用されている一般的なレジスト組成物を用いて行うことができる3層レジスト法が一般的である。例えば、被加工基板上に平坦性が高く基板加工に十分なドライエッチング耐性を持つ有機レジスト下層膜を成膜し、その上にケイ素含有レジスト下層膜を中間膜として成膜し(以下、ケイ素含有レジスト中間膜と言う)、その上にフォトレジスト膜をレジスト上層膜として形成する。フッ素系ガスプラズマによるドライエッチングに対しては、有機系のレジスト上層膜は、ケイ素含有レジスト中間膜に対して良好なエッチング選択比が取れるため、レジストパターンはフッ素系ガスプラズマによるドライエッチングを用いることでケイ素含有レジスト中間膜に転写できる。さらに酸素系ガスプラズマによるドライエッチングに対しては、ケイ素系のレジスト中間膜は、有機レジスト下層膜に対して良好なエッチング選択比が取れるため、ケイ素含有レジスト中間膜パターンは酸素系ガスプラズマによるドライエッチングを用いることで有機レジスト下層膜に転写できる。この方法によれば、直接被加工基板を加工するための十分な膜厚を持ったパターンは形成することが難しいレジスト上層膜形成用組成物や、基板を加工するためにはドライエッチング耐性が十分でないレジスト上層膜形成用組成物を用いても、ケイ素含有膜にだけパターンを転写することができれば、加工に十分なドライエッチング耐性を持つ有機レジスト下層膜のパターンを得ることができる。このようなドライエッチングによるパターン転写は、レジスト現像時の現像液による摩擦等を原因としたパターン倒れのような問題が発生することは無いため、高いアスペクト比であってもドライエッチングマスクとして十分機能する厚さの有機膜のパターンが得られるようになる。そして、このように形成された有機レジスト下層膜のパターンをドライエッチングマスクとして用いることで、複雑な段差を有する3次元トランジスタ構造を持つ基板にパターンを転写することが可能となる。上述のような有機レジスト下層膜としては、例えば特許文献1に記載のもの等、すでに多くのものが公知となっている。
【0005】
一般に3層レジスト法では、加工寸法を安定化させるため有機レジスト下層膜へのドライエッチングによるパターン転写では、有機レジスト下層膜パターンの上に数nmの厚さのケイ素含有レジスト中間膜を残す必要がある。この残ったケイ素分は、有機レジスト下層膜パターンをマスクとして基板にパターンを転写している最中に、基板を加工するドライエッチングガスによりエッチング除去されるため、基板加工後には有機レジスト下層膜パターン上に残らない。そのため、基板加工後に残った有機レジスト下層膜パターンをドライエッチング(アッシング)又は湿式除去しても、基板上にそのケイ素分が残渣として残ることは無い。
【0006】
このように多層レジスト法は、基板加工方法として大きな段差が形成されている基板に対しても適用できることから、広範な基板加工に利用されている。そこで、この特徴を利用して、3次元トランジスタ形成工程の一部であるイオン打込み工程のイオン打込み遮蔽マスクとしての利用が期待されている。しかしながら、3層レジスト法で形成されたイオン打込み用の有機レジスト下層膜パターンでは、当該有機レジスト下層膜パターンをマスクとして基板加工をしていないため、実際には、上記のように有機レジスト下層膜パターン上にケイ素分が残留している。そのため、このような有機レジスト下層膜パターンを遮蔽マスクとしてイオンを打込むと、有機レジスト下層膜上に残っているケイ素分が打込まれるイオンにより変性し、打込み工程終了後の洗浄工程では有機レジスト下層膜パターンと同時に除去することができず、除去できなかったものは最終的に基板上に異物として残留してしまい、イオン打込み工程の歩留まり低下を引き起こす。これを防ぐためには、イオン打込み前に有機レジスト下層膜パターン上に残っているケイ素分を有機レジスト下層膜パターンに影響を与えることなく選択的に洗浄除去しなくてはいけない。しかし、このケイ素分は有機レジスト下層膜にパターン転写する際のドライエッチングガスにより変性しており、基板に損傷を与えない洗浄液として半導体製造工程で一般的に適用されている過酸化水素含有アンモニア水溶液(以下、アンモニア過水とも言う)では洗浄除去できない。この変性したケイ素分を完全に洗浄除去するためにはフッ酸系洗浄液の適用が必要であるが、この洗浄液では半導体基板表面にも損傷を与えてしまい当該加工工程における歩留まりが低下する。そこで、ドライエッチングによる有機レジスト下層膜へのパターン転写が終了した後、有機レジスト下層膜パターン上に残ったケイ素分を基板に損傷を与えないで除去できる方法ならびにそれに適した材料が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2016-094612号公報(米国特許出願公開第2013/0337649(A1)号明細書)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、半導体装置基板やパターニング工程で必要な有機レジスト下層膜に対してダメージを与えない剥離液、例えば半導体製造プロセスで一般的に使用されているSC1(Standard Cleaner 1)と呼ばれる過酸化水素含有アンモニア水溶液を用い、ドライエッチングで変性したケイ素分残渣を容易に湿式除去可能なレジスト多層膜付き基板、及びそのレジスト多層膜付き基板を用いたパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明では、基板と、該基板上に形成されたレジスト多層膜とを有するレジスト多層膜付き基板であって、前記レジスト多層膜が、前記基板側から、アンモニア過水に難溶な有機レジスト下層膜と、アンモニア過水に可溶な有機膜と、ケイ素含有レジスト中間膜と、レジスト上層膜とをこの順序で有するレジスト多層膜付き基板を提供する。
【0010】
このようなレジスト多層膜付き基板であれば、半導体装置基板やパターニング工程で必要な有機レジスト下層膜に対してダメージを与えない剥離液、例えば半導体製造プロセスで一般的に使用されているSC1と呼ばれるアンモニア過水を用い、ドライエッチングで変性したケイ素分残渣を容易に湿式除去できるものとなる。
【0011】
このとき、前記アンモニア過水に可溶な有機膜が、下記一般式(1)~(4)で示されるいずれか1種以上の繰り返し単位を有する高分子化合物と有機溶媒とを含む有機膜形成用組成物の硬化物であることが好ましい。
【化1】
(式中、R
1は炭素数1~19の炭化水素基、ハロゲン原子、アルコキシ基、カルボキシ基、スルホ基、メトキシカルボニル基、ヒドロキシフェニル基、又はアミノ基であり、R
2は水素原子又はALである。ALは加熱又は酸の作用により酸性の官能基を生じる基である。R
3は水素原子、フラニル基、又は塩素原子もしくはニトロ基を有していてもよい炭素数1~16の炭化水素基である。k
1、k
2、及びk
3は1~2であり、lは1~3であり、mは0~3であり、nは0又は1である。)
【0012】
このようなアンモニア過水に可溶な有機膜(以下、単に有機膜とも言う)であれば、半導体装置基板やパターニング工程で必要な有機レジスト下層膜に対してダメージを与えない剥離液、例えば半導体製造プロセスで一般的に使用されているSC1と呼ばれるアンモニア過水の処理によって、ドライエッチングで変性したケイ素分残渣とともに容易に湿式除去可能なものとなる。このような有機膜を有するレジスト多層膜付き基板を用いてパターン形成を行うと、ケイ素分残渣の無い有機レジスト下層膜パターンを得ることができ、この有機レジスト下層膜パターンを用いることで、3次元トランジスタの基板加工を高い歩留りで行うことができる。
【0013】
またこのとき、前記有機溶媒において、プロピレングリコールエステル、ケトン、及びラクトンから選ばれる1種以上の合計が全有機溶媒中の30wt%を超える量を占めることが好ましい。
【0014】
このような条件を満たす有機溶媒を含む有機膜形成用組成物であれば、有機レジスト下層膜上における有機膜の塗布性が担保され、得られるレジスト多層膜付き基板における有機膜が欠陥の無い均質なものとなる。
【0015】
またこのとき、前記有機膜形成用組成物が、さらに、熱酸発生剤及び架橋剤のいずれかもしくは両方を含有するものであることが好ましい。
【0016】
有機膜形成用組成物が熱酸発生剤及び架橋剤のいずれかもしくは両方を含有するものであれば、得られるレジスト多層膜付き基板において、有機膜が有機レジスト下層膜上に均一な膜厚で均一組成のものとなるだけでなく、有機膜上にケイ素含有レジスト中間膜を積層する際のインターミキシングを抑制できる。
【0017】
またこのとき、前記アンモニア過水に可溶な有機膜が、29%アンモニア水/35%過酸化水素水/水=1/1/8で混合した65℃の溶液による処理によって、5nm/分以上の溶解速度を有するものであることが好ましい。
【0018】
このような性能をもつ有機膜を含むレジスト多層膜付き基板であれば、半導体装置製造用基板に損傷を与えずに、アンモニア過水で有機膜と、有機膜上のケイ素分残渣を十分に取り除くことができる。
【0019】
さらに、前記アンモニア過水に可溶な有機膜の膜厚が、10nm以上100nm未満のものであることが好ましい。
【0020】
本発明のレジスト多層膜付き基板において、有機膜の膜厚がこの範囲であれば、ケイ素分残渣を十分に取り除くことができ、かつ、ケイ素含有レジスト中間膜をドライエッチングマスクとして一気に有機膜と有機レジスト下層膜にパターン転写しても、レジスト上層膜で形成されたパターンの精度を保持した状態でパターン転写することが可能になる。
【0021】
また、前記ケイ素含有レジスト中間膜が、ホウ素及びリンのいずれかもしくは両方を含むものであることが好ましい。
【0022】
パターン形成されたケイ素含有レジスト中間膜をマスクとして、ドライエッチングで有機膜と有機レジスト下層膜に一気にパターン転写すると、ケイ素含有レジスト中間膜パターンはドライエッチング中のガスやプラズマの作用により構造変化が発生し、アンモニア過水に対する溶解性が低下する場合がある。しかしながら、ケイ素含有レジスト中間膜がホウ素及びリンのいずれかもしくは両方を含むことにより、ドライエッチングのガスや条件に依らず、ドライエッチング後においてもアンモニア過水に可溶なケイ素含有レジスト中間膜及び/又はケイ素分残渣とすることができる。
【0023】
また、本発明では、上述のレジスト多層膜付き基板のレジスト上層膜を露光し、現像液で現像して前記レジスト上層膜にパターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト上層膜をエッチングマスクとして前記ケイ素含有レジスト中間膜をエッチングしてパターンを形成し、該パターンが形成されたケイ素含有レジスト中間膜をエッチングマスクとして前記有機膜と前記有機レジスト下層膜とをエッチングしてパターンを形成し、前記パターンが形成されたケイ素含有レジスト中間膜と前記パターンが形成された有機膜とをアンモニア過水による処理により除去し、前記パターンが形成された有機レジスト下層膜をマスクとして前記基板にパターンを形成するパターン形成方法を提供する。
【0024】
このようなパターン形成方法であれば、半導体装置基板やパターニング工程で必要な有機レジスト下層膜に対してダメージを与えない剥離液、例えば半導体製造プロセスで一般的に使用されているSC1と呼ばれるアンモニア過水を用い、ドライエッチングで変性したケイ素分残渣を容易に湿式除去できるため、ケイ素分がパターン上に残留していない有機レジスト下層膜パターンを形成することができる。
【0025】
さらに、前記基板にパターンを形成した後、前記パターンが形成された有機レジスト下層膜を、ドライエッチング又はウエットエッチングにより除去することが好ましい。
【0026】
本発明のパターン形成方法は、基板上に形成された3層レジスト法において、有機レジスト下層膜とフォトレジスト直下に形成されたケイ素含有レジスト中間膜の間にアンモニア過水に可溶な有機膜を導入したレジスト多層膜付き基板を用いる方法であり、実質4層レジスト法となる。基板上に有機レジスト下層膜を形成し、アンモニア過水に可溶な有機膜を有機レジスト下層膜上に(即ち、有機レジスト下層膜とケイ素含有レジスト中間膜の間に)形成し、次にケイ素含有レジスト中間膜を形成し、さらにレジスト上層膜を形成した後、レジスト上層膜にパターンを形成し、このパターンをドライエッチングでケイ素含有レジスト中間膜に転写し、その転写されたパターンをマスクとして、一気に有機膜と有機レジスト下層膜をドライエッチングしてパターン転写する。ここで、ケイ素含有レジスト中間膜がアンモニア過水に可溶なものであり、かつ、有機レジスト下層膜がアンモニア過水に難溶なものであれば、アンモニア過水処理で有機レジスト下層膜パターン上に残るケイ素分は有機膜とともに除去され、結果としてケイ素分残渣の無い有機レジスト下層膜パターンを形成することができる。こうして得られる有機レジスト下層膜パターンを基板にパターンを形成する際のマスクとして適用すると、最終的に有機レジスト下層膜パターンをドライエッチング又はウエットエッチングで除去した際に基板上に異物が残らず、段差の大きな3次元トランジスタを形成する場合においても高い歩留まりで基板加工が可能となる。
【発明の効果】
【0027】
本発明のレジスト多層膜付き基板であれば、半導体装置基板やパターニング工程で必要な有機レジスト下層膜に対してダメージを与えない剥離液、例えば半導体製造プロセスで一般的に使用されているSC1と呼ばれるアンモニア過水を用い、湿式除去可能な有機膜とともにドライエッチングで変性したケイ素分残渣を除去できる。これにより、ケイ素分がパターン上に残留していない有機レジスト下層膜パターンを形成することができ、これをマスクとして基板を加工してパターンを形成することができる。このような有機レジスト下層膜パターンをドライエッチング又はウエットエッチングで除去した後では、基板上に異物が残らないため、3次元トランジスタの製造工程における歩留まり低下を防止することができる。即ち、より高性能の半導体装置を経済的に製造することが可能となる。
また、本発明のパターン形成方法であれば、半導体装置基板やパターニング工程で必要な有機レジスト下層膜に対してダメージを与えない剥離液、例えば半導体製造プロセスで一般的に使用されているSC1と呼ばれるアンモニア過水を用い、ドライエッチングで変性したケイ素分残渣を容易に湿式除去できるため、ケイ素分がパターン上に残留していない有機レジスト下層膜パターンを形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
上述のように、半導体装置基板やパターニング工程で必要な有機レジスト下層膜に対してダメージを与えない剥離液、例えば半導体製造プロセスで一般的に使用されているSC1と呼ばれるアンモニア過水を用いてドライエッチングで変性したケイ素分残渣を除去でき、かつ加工後の基板上への異物の残留を抑制できるレジスト多層膜付き基板及びパターン形成方法が求められていた。
【0029】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、基板と、基板上に形成されたレジスト多層膜とを有するレジスト多層膜付き基板であって、レジスト多層膜が、基板側から、アンモニア過水に難溶な有機レジスト下層膜と、アンモニア過水に可溶な有機膜と、ケイ素含有レジスト中間膜と、レジスト上層膜とをこの順序で有するレジスト多層膜付き基板であれば上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0030】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0031】
〔レジスト多層膜付き基板〕
本発明のレジスト多層膜付き基板は、基板と、基板上に形成されたレジスト多層膜(積層膜)とを有するものである。
【0032】
[基板]
本発明のレジスト多層膜付き基板における基板(被加工基板)としては、特に限定されるものではなく、シリコン基板等の半導体基板、ガラス基板等の絶縁性基板、金属基板、樹脂基板等が挙げられるが、特に表面の加工される被加工層としては、TiN、W、SiO2、SiN、p-Si、Al、シリカ系低誘電率絶縁膜等を好適に用いることができる。
【0033】
[レジスト多層膜]
本発明のレジスト多層膜付き基板におけるレジスト多層膜は、基板側から、アンモニア過水に難溶な有機レジスト下層膜と、アンモニア過水に可溶な有機膜と、ケイ素含有レジスト中間膜と、レジスト上層膜とをこの順序で有するものである。以下、それぞれの膜について詳述する。
【0034】
<有機レジスト下層膜>
本発明のレジスト多層膜付き基板におけるレジスト多層膜は、有機レジスト下層膜を有する。この有機レジスト下層膜は、アンモニア過水に対して耐性のあるもの(即ち、アンモニア過水に難溶なもの)である。ここで、アンモニア過水に難溶な有機レジスト下層膜とは、具体的には、29%アンモニア水/35%過酸化水素水/水=1/1/8で混合した65℃の溶液による処理によって、3nm/分以下の溶解速度を有するものを指す。
【0035】
このような有機レジスト下層膜としては、例えば、特開2004-205685号公報(米国特許第7,427,464(B2)号明細書)、特開2010-122656号公報(米国特許出願公開第2010/0099044(A1)号明細書及び米国特許出願公開第2013/0184404(A1)号明細書)、特開2012-214720号公報(米国特許出願公開第2012/0252218(A1)号明細書)、特開2016-094612号公報(米国特許出願公開第2013/0337649(A1)号明細書)にて開示されている有機レジスト下層膜を使用することができる。
【0036】
上記の有機レジスト下層膜は、スピンコート法等で有機レジスト下層膜形成用組成物を被加工基板上にコーティングすることで形成される。スピンコート法等を用いることで、良好な埋め込み特性を得ることができる。スピンコート後、溶媒を蒸発し、レジスト上層膜やケイ素含有レジスト中間膜とのミキシング防止のため、あるいは架橋反応を促進させるためにベークを行う。ベークは100℃以上、600℃以下の範囲内で行い、10~600秒、好ましくは10~300秒の範囲内で行う。ベーク温度は、より好ましくは200℃以上500℃以下である。デバイスダメージやウエハの変形への影響を考えると、リソグラフィーのウエハプロセスでの加熱温度の上限は、600℃以下とすることが好ましく、より好ましくは500℃以下である。
【0037】
上記のように有機レジスト下層膜を形成する方法においては、被加工基板上に有機レジスト下層膜形成用組成物を、スピンコート法等でコーティングし、この組成物を空気、N2、Ar、He等の雰囲気中で焼成して硬化させることにより有機レジスト下層膜を形成することができる。この有機レジスト下層膜形成用組成物を、酸素を含む雰囲気中で焼成することにより、アンモニア過水に対して耐性のある硬化膜を得ることができる。
【0038】
このようにして有機レジスト下層膜を形成することにより、その優れた埋め込み/平坦化特性により、被加工基板の凹凸に係らず平坦な硬化膜を得ることができるため、高さ30nm以上の構造体又は段差を有する基板上に平坦な硬化膜を形成する場合に極めて有用である。
【0039】
なお、この半導体装置製造用・平坦化用の有機レジスト下層膜の厚さは適宜選定されるが、5~500nm、特に10~400nmとすることが好ましい。
【0040】
<アンモニア過水に可溶な有機膜>
本発明のレジスト多層膜付き基板におけるレジスト多層膜は、アンモニア過水に可溶な有機膜を有する。アンモニア過水に可溶な有機膜としては、下記一般式(1)~(4)で示されるいずれか1種以上の繰り返し単位を有する高分子化合物と有機溶媒とを含む有機膜形成用組成物から形成されるもの(即ち、有機膜形成用組成物の硬化物)であることが好ましい。
【化2】
(式中、R
1は炭素数1~19の炭化水素基、ハロゲン原子、アルコキシ基、カルボキシ基、スルホ基、メトキシカルボニル基、ヒドロキシフェニル基、又はアミノ基であり、R
2は水素原子又はALである。ALは加熱又は酸の作用により酸性の官能基を生じる基である。R
3は水素原子、フラニル基、又は塩素原子もしくはニトロ基を有していてもよい炭素数1~16の炭化水素基である。k
1、k
2、及びk
3は1~2であり、lは1~3であり、mは0~3であり、nは0又は1である。)
【0041】
ここで、一般式(1)で示される繰り返し単位としては、以下の構造のものを例示することができる。
【化3】
【0042】
一般式(2)で示される繰り返し単位としては、以下の構造のものを例示することができる。
【化4】
【0043】
一般式(3)で示される繰り返し単位としては、以下の構造のものを例示することができる。
【化5】
【0044】
一般式(4)で示される繰り返し単位としては、以下の構造のものを例示することができる。
【化6】
【0045】
このうち、好ましい繰り返し単位としては、上記一般式(2)又は(3)で示されるものを例示できる。このような繰り返し単位を有する高分子化合物を含む有機膜形成用組成物であれば、極性の高いカルボキシ基が効果的に位置することにより、アンモニア過水による湿式除去性に優れた有機膜を形成できる。
【0046】
ここで、上記一般式(1)~(4)で示される繰り返し単位として、n=0のものを得るためのモノマーとしては、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、2,3-ジメチルフェノール、2,5-ジメチルフェノール、3,4-ジメチルフェノール、3,5-ジメチルフェノール、2,4-ジメチルフェノール、2,6-ジメチルフェノール、2,3,5-トリメチルフェノール、3,4,5-トリメチルフェノール、2-t-ブチルフェノール、3-t-ブチルフェノール、4-t-ブチルフェノール、レゾルシノール、2-メチルレゾルシノール、4-メチルレゾルシノール、5-メチルレゾルシノール、カテコール、4-t-ブチルカテコール、2-メトキシフェノール、3-メトキシフェノール、2-プロピルフェノール、3-プロピルフェノール、4-プロピルフェノール、2-イソプロピルフェノール、3-イソプロピルフェノール、4-イソプロピルフェノール、2-メトキシ-5-メチルフェノール、2-t-ブチル-5-メチルフェノール、4-フェニルフェノール、トリチルフェノール、ピロガロール、チモール、ヒドロキシフェニルグリシジルエーテル、4-フルオロフェノール、3,4-ジフルオロフェノール、4-トリフルオロメチルフェノール、4-クロロフェノール、4-ヒドロキシベンゼンスルホン酸、4-ビニルフェノール、1-(4-ヒドロキシフェニル)ナフタレン等を挙げることができる。
【0047】
n=1のものを得るためのモノマーとしては、1-ナフトール、2-ナフトール、2-メチル-1-ナフトール、4-メトキシ-1-ナフトール、7-メトキシ-2-ナフトール、1,2-ジヒドロキシナフタレン、1,3-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン、1,4-ジヒドロキシナフタレン、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、1,8-ジヒドロキシナフタレン、5-アミノ-1-ナフトール、2-メトキシカルボニル-1-ナフトール、6-(4-ヒドロキシフェニル)-2-ナフトール、6-(シクロヘキシル)-2-ナフトール、1,1’-ビ-2,2’-ナフトール、6,6’-ビ-2,2’-ナフトール、9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)フルオレン、6-ヒドロキシ-2-ビニルナフタレン、1-ヒドロキシメチルナフタレン、2-ヒドロキシメチルナフタレン、8-ヒドロキシナフタレン-1-スルホン酸、2-ヒドロキシナフタレン-7-スルホン酸、2,3-ジヒドロキシナフタレン-7-スルホン酸、1,7-ジヒドロキシナフタレン-3-スルホン酸等を挙げることができる。
【0048】
これらはそれぞれ単独で使用してもよいし、n値、k値、及びエッチング耐性を制御するため、2種類以上を組み合わせてもよい。
【0049】
これらのモノマーと縮合反応させる縮合剤としては、以下のアルデヒド化合物を例示できる。例えば、ホルムアルデヒド、トリオキサン、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、ブチルアルデヒド、シクロペンタンカルボキシアルデヒド、シクロペンテンカルボキシアルデヒド、シクロヘキサンカルボキシアルデヒド、シクロヘキセンカルボキシアルデヒド、ノルボルナンカルボキシアルデヒド、ノルボルネンカルボキシアルデヒド、アダマンタンカルボアルデヒド、ベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、α-フェニルプロピルアルデヒド、β-フェニルプロピルアルデヒド、2-ヒドロキシベンズアルデヒド、3-ヒドロキシベンズアルデヒド、4-ヒドロキシベンズアルデヒド、2、3-ジヒドロキシベンズアルデヒド、2,4-ジヒドロキシベンズアルデヒド、3、4-ジヒドロキシベンズアルデヒド、2-クロロベンズアルデヒド、3-クロロベンズアルデヒド、4-クロロベンズアルデヒド、2-ニトロベンズアルデヒド、3-ニトロベンズアルデヒド、4-ニトロベンズアルデヒド、2-メチルベンズアルデヒド、3-メチルベンズアルデヒド、4-メチルベンズアルデヒド、2-エチルベンズアルデヒド、3-エチルベンズアルデヒド、4-エチルベンズアルデヒド、2-メトキシベンズアルデヒド、3-メトキシベンズアルデヒド、4-メトキシベンズアルデヒド、アントラセンカルボアルデヒド、ピレンカルボアルデヒド、フルフラール等を挙げることができる。
【0050】
その他にも、以下の式で表すことができる化合物を例示できる。
【化7】
【0051】
モノマーと縮合剤であるアルデヒド化合物の比率は、モノマーのモル量の合計量1モルに対して好ましくは0.01~5モルであり、より好ましくは0.05~2モルである。
【0052】
上記一般式(1)~(4)で示される繰り返し単位が占める全繰り返し単位中の比率としては、全体を100%として、10%以上が好ましく、より好ましくは30%以上である。
【0053】
上記のような原料を使用して重縮合反応を行う場合、通常、無溶媒又は溶媒中で酸又は塩基を触媒として用いて、室温又は必要に応じて冷却もしくは加熱下にて行うことができ、これにより高分子化合物(ポリマー)を得ることができる。用いられる溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、グリセロール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル類、塩化メチレン、クロロフォルム、ジクロロエタン、トリクロロエチレン等の塩素系溶剤類、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン等の炭化水素類、アセトニトリル等のニトリル類、アセトン、エチルメチルケトン、イソブチルメチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のエステル類、γ-ブチロラクトン等のラクトン類、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド等の非プロトン性極性溶媒類が例示でき、これらを単独あるいは2種類以上を混合して用いることができる。これらの溶媒は、反応原料100質量部に対して0~2,000質量部の範囲で使用できる。
【0054】
酸触媒としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、ヘテロポリ酸等の無機酸類、シュウ酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の有機酸類、三塩化アルミニウム、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、四塩化錫、四臭化錫、二塩化ジブチル錫、ジブチル錫ジメトキシド、ジブチル錫オキシド、四塩化チタン、四臭化チタン、チタン(IV)メトキシド、チタン(IV)エトキシド、チタン(IV)イソプロポキシド、酸化チタン(IV)等のルイス酸類を用いることができる。塩基触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化カルシウム等の無機塩基類、メチルリチウム、n-ブチルリチウム、塩化メチルマグネシウム、臭化エチルマグネシウム等のアルキル金属類、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムt-ブトキシド等のアルコキシド類、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N,N-ジメチルアニリン、ピリジン、4-ジメチルアミノピリジン等の有機塩基類を用いることができる。その使用量は、原料に対して好ましくは0.001~100重量%、より好ましくは0.005~50重量%の範囲である。反応温度は-50℃から溶媒の沸点程度が好ましく、室温から100℃がさらに好ましい。
【0055】
重縮合反応の方法としては、モノマー、縮合剤、触媒を一括で仕込む方法や、触媒存在下でモノマー、縮合剤を滴下していく方法が挙げられる。
【0056】
また、重縮合反応終了後、系内に存在する未反応原料、触媒等を除去するために、反応釜の温度を130~230℃にまで上昇させ、1~50mmHg程度で揮発分を除去する方法や、適切な溶媒や水を加えてポリマーを分画する方法、ポリマーを良溶媒に溶解後、貧溶媒中で再沈する方法等を、得られた反応生成物の性質により使い分けることができる。
【0057】
このようにして得られたポリマーのポリスチレン換算の分子量としては、重量平均分子量(Mw)が500~500,000であることが好ましく、特に1,000~100,000であることが好ましい。また、分子量の分散度は1.2~20の範囲内が好ましく用いられる。モノマー成分、オリゴマー成分、又は分子量(Mw)1,000以下の低分子量体をカットすることでベーク中の揮発成分を抑えられ、ベークカップ周辺の汚染、あるいは堆積した揮発成分がウエハ上に落下することによる表面欠陥を防ぐことができる。
【0058】
アンモニア過水に可溶な有機膜を形成するのに好適な有機膜形成用組成物は、有機溶媒を含む。有機溶媒の具体例としては、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチル-2-アミルケトン等のケトン類、3-メトキシブタノール、3-メチル-3-メトキシブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のアルコール類、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert-ブチル、プロピオン酸tert-ブチル、プロピレングリコールモノtert-ブチルエーテルアセテート等のエステル類、γ-ブチロラクトン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を混合使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0059】
ここで、上記有機溶媒のうち、プロピレングリコールエステル、ケトン、ラクトンから選ばれる1種以上(例えば、上記例示した有機溶媒のうち、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチル-2-アミルケトン、γ-ブチロラクトンから選ばれる1種以上)の合計が全有機溶媒中の30wt%を超える量を占めていることが好ましい。有機溶媒がこの条件を満たす場合、有機レジスト下層膜の直上に均質な有機膜を確実に形成することができる。
【0060】
また、上記の有機膜形成用組成物には、架橋反応をさらに促進させるための酸発生剤や架橋剤を添加することができる。酸発生剤としては、熱分解によって酸を発生するもの(熱酸発生剤)や、光照射によって酸を発生するものがあるが、いずれのものも添加することができる。
【0061】
酸発生剤としては、オニウム塩、ジアゾメタン誘導体、グリオキシム誘導体、ビススルホン誘導体、N-ヒドロキシイミド化合物のスルホン酸エステル、β-ケトスルホン酸誘導体、ジスルホン誘導体、ニトロベンジルスルホネート誘導体、スルホン酸塩、スルホン酸エステル誘導体等を挙げることができる。具体的には、特開2008-65303号公報(米国特許出願公開第2008/0038662(A1)号明細書)の(0081)~(0111)段落に記載のものを挙げることができる。
【0062】
架橋剤としては、メチロール基、アルコキシメチル基、アシロキシメチル基から選ばれる少なくとも一つの基で置換されたメラミン化合物、グアナミン化合物、グリコールウリル化合物又はウレア化合物、エポキシ化合物、チオエポキシ化合物、イソシアネート化合物、アジド化合物、アルケニルエーテル基等の二重結合を含む化合物等を挙げることができる。具体的には、特開2008-65303号公報(米国特許出願公開第2008/0038662(A1)号明細書)の(0074)~(0080)段落に記載のものを挙げることができる。
【0063】
また、上記の有機膜形成用組成物には、スピンコーティングにおける塗布性を向上させるために界面活性剤を添加することもできる。界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルのノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、部分フッ素化オキセタン開環重合物系の界面活性剤等を挙げることができる。具体的には、特開2009-269953号公報(米国特許出願公開第2009/0274978(A1)号明細書)の(0142)~(0147)段落に記載のものを挙げることができる。
【0064】
さらに、上記の有機膜形成用組成物には、保存安定性を向上させるための塩基性化合物を添加することができる。塩基性化合物は、酸発生剤より微量に発生した酸が架橋反応を進行させるのを防ぐための、酸に対するクエンチャーの役割を果たす。このような塩基性化合物としては、第一級、第二級、第三級の脂肪族アミン類、混成アミン類、芳香族アミン類、複素環アミン類、カルボキシ基を有する含窒素化合物、スルホニル基を有する含窒素化合物、水酸基を有する含窒素化合物、ヒドロキシフェニル基を有する含窒素化合物、アルコール性含窒素化合物、アミド誘導体、イミド誘導体等を挙げることができる。具体的には、特開2008-65303号公報(米国特許出願公開第2008/0038662(A1)号明細書)の(0112)~(0119)段落に記載のものを挙げることができる。
【0065】
以上説明した有機膜形成用組成物は、ケイ素含有レジスト中間膜の直下、かつ、アンモニア過水に難溶である有機レジスト下層膜の直上に導入する、アンモニア過水に可溶な有機膜の形成に好適に用いることができる。
【0066】
ドライエッチングで変性したケイ素分残渣を一緒に湿式除去するため、上記の有機膜は、29%アンモニア水/35%過酸化水素水/水=1/1/8で混合した65℃の溶液による処理にて5nm/分以上の溶解速度を有するものであることが好ましい。
【0067】
また、上記の有機膜は、膜厚が10nm以上100nm未満であることが好ましく、膜厚が20nm以上80nm以下であることがさらに好ましい。有機膜の膜厚が10nm以上であれば湿式処理によるケイ素分の除去効果を十分に得ることができ、また、100nm未満であればドライエッチング加工時のサイドエッチングが抑制され加工に不具合が生じない。
【0068】
上記の有機膜を形成する方法としては、有機膜形成用組成物をスピンコート法等で被加工基板上にコーティングする方法が挙げられる。スピンコート後、溶媒を蒸発させ、レジスト上層膜やケイ素含有レジスト中間膜とのミキシング防止のため、あるいは架橋反応を促進させるためにベークを行う。ベークは100℃以上、400℃以下の範囲内で行い、10~600秒、好ましくは10~300秒の範囲内で行う。ベーク温度は、より好ましくは150℃以上350℃以下である。
【0069】
<ケイ素含有レジスト中間膜>
本発明のレジスト多層膜付き基板におけるレジスト多層膜は、ケイ素含有レジスト中間膜を有する。このようなケイ素含有レジスト中間膜としては、アンモニア過水に可溶であり、アンモニア過水で溶解又は剥離可能なものが好ましい。例えば、特開2010-085912号公報(米国特許出願公開第2010/0086870(A1)号明細書)、特開2010-085893号公報(米国特許出願公開第2010/0086872(A1)号明細書)、特開2015-028145号公報(米国特許出願公開第2015/0004791(A1)号明細書)、国際公開第2010/068336号(米国特許出願公開第2011/0233489(A1)号明細書)、特開2016-074772号公報(米国特許出願公開第2016/0096977(A1)号明細書)、特開2016-074774号公報(米国特許出願公開第2016/0096978(A1)号明細書)に記載のケイ素含有レジスト下層膜を、本発明におけるケイ素含有レジスト中間膜として用いることが好ましい。これらの中でも、ホウ素及びリンのいずれかもしくは両方を含むものはアンモニア過水での湿式除去性に優れるため、特に好ましい。
【0070】
<レジスト上層膜>
本発明のレジスト多層膜付き基板におけるレジスト多層膜は、レジスト上層膜を有する。レジスト上層膜は、特に限定されるものではなく、パターンを形成する方法に応じて適宜選択することができる。例えば、波長300nm以下の光もしくはEUV光を用いたリソグラフィーを行う場合、レジスト上層膜としては、例えば化学増幅型のフォトレジスト膜を用いることができる。このようなフォトレジスト膜としては、露光を行った後にアルカリ現像液を用いて露光部を溶解することによりポジ型パターンを形成するものや、有機溶剤からなる現像液を用いて未露光部を溶解することによりネガ型パターンを形成するものを例示できる。
【0071】
また、波長300nm以下の光として、ArFエキシマレーザー光を用いてリソグラフィーを行う場合、レジスト上層膜としては通常のArFエキシマレーザー光用レジスト膜であればいずれも使用可能である。このようなArFエキシマレーザー光用レジスト膜を与える組成物は多数の候補が既に公知であり、大別すると、ポリ(メタ)アクリル系、COMA(Cyclo Olefin Maleic Anhydride)系、COMA-(メタ)アクリルハイブリッド系、ROMP(Ring Opening Metathesis Polymerization)系、ポリノルボルネン系等があるが、このうち、ポリ(メタ)アクリル系樹脂を使用したレジスト組成物は側鎖に脂環式骨格を導入することでエッチング耐性を確保しているため、解像性能が他の樹脂系と比較して優れており、好ましく用いることができる。
【0072】
レジスト上層膜は、スピンコート法等で形成することが可能である。レジスト上層膜の厚さは適宜選定されるが、20~500nm、特に30~400nmが好ましい。
【0073】
以上説明したようなレジスト多層膜付き基板であれば、半導体装置基板やパターニング工程で必要な有機レジスト下層膜に対してダメージを与えない剥離液、例えば半導体製造プロセスで一般的に使用されているSC1と呼ばれるアンモニア過水を用い、ドライエッチングで変性したケイ素分残渣を有機膜とともに容易に湿式除去することができる。また、得られる有機レジスト下層膜のパターンを、基板加工後にドライエッチング又はウエットエッチングで除去した際には、基板上への異物の残留を抑制することができる。これにより3次元トランジスタの製造工程における歩留まり低下を防止することが可能になり、高性能の半導体装置を経済的に製造することが可能となる。
【0074】
(パターン形成方法)
本発明では、上述のレジスト多層膜付き基板を用いたパターン形成方法を提供する。本発明のパターン形成方法では、上述のレジスト多層膜付き基板のレジスト上層膜を露光し、現像液で現像してレジスト上層膜にパターンを形成し、パターンが形成されたレジスト上層膜をエッチングマスクとしてケイ素含有レジスト中間膜をエッチングしてパターンを形成し、パターンが形成されたケイ素含有レジスト中間膜をエッチングマスクとして有機膜と有機レジスト下層膜とをエッチングしてパターンを形成し、パターンが形成されたケイ素含有レジスト中間膜とパターンが形成された有機膜とをアンモニア過水による処理により除去し、パターンが形成された有機レジスト下層膜をマスクとして基板にパターンを形成する。
【0075】
さらに、基板にパターンを形成した後、パターンが形成された有機レジスト下層膜を、ドライエッチング又はウエットエッチングにより除去することで、基板加工を完了することが好ましい。
【0076】
本発明のパターン形成方法では、まず、上述した本発明のレジスト多層膜付き基板のレジスト上層膜を露光し、現像液で現像してレジスト上層膜にパターンを形成する。レジスト上層膜としては、上記したようにポジ型でもネガ型でもどちらでもよく、通常用いられているフォトレジスト組成物と同じものを用いることができる。フォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成する場合、スピンコート法が好ましく用いられる。
【0077】
フォトレジスト組成物をスピンコート後にプリベークを行う場合は60~180℃で10~300秒の範囲が好ましい。その後常法に従い、露光を行い、ポストエクスポージャーベーク(PEB)、現像を行い、レジストパターンを得る。なお、レジスト上層膜の厚さは特に制限されないが、20~500nm、特に30~400nmが好ましい。また、露光光としては、波長300nm以下の高エネルギー線、具体的には248nm、193nmのエキシマレーザー、13.5nmの極端紫外線、電子ビーム、X線等を挙げることができる。
【0078】
次に、得られたレジスト上層膜パターンをエッチングマスクにして、ケイ素含有レジスト中間膜のドライエッチングを行い、パターンを形成する。この際のドライエッチングは特に限定されないが、例えばCF4、CHF3といったCF系ガスを用いることが好ましい。
【0079】
次いで、ケイ素含有レジスト中間膜パターンをエッチングマスクにして、アンモニア過水に可溶な有機膜と有機レジスト下層膜とを一度にエッチングし、パターンを形成する。この際のドライエッチングは特に限定されないが、例えばN2/H2ガス、あるいはO2ガスを用いることが好ましい。
【0080】
さらに、残存するケイ素含有レジスト中間膜パターンと有機膜パターンとを一緒に湿式除去する。ここでは、過酸化水素を含有した剥離液を用いることが好ましい。また、剥離を促進するため、剥離液に酸又はアルカリを加えてpH調整するとさらに好ましい。このようなpH調整剤(酸又はアルカリ)としては、塩酸や硫酸等の無機酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸、クエン酸、乳酸等の有機酸、アンモニア、エタノールアミン、水酸化テトラメチルアンモニウム等の窒素を含むアルカリ、EDTA(エチレンジアミン4酢酸)等の窒素を含む有機酸化合物等を例示できる。特にアンモニアが好ましい。即ち、上記剥離液としてはアンモニア過水が好ましい。
【0081】
剥離液としてアンモニア過水を用いる場合、アンモニアと過酸化水素と希釈用脱イオン水の比率としては、脱イオン水100質量部に対して、アンモニアは0.01~20質量部、好ましくは0.05~15質量部、より好ましくは0.1~10質量部であり、過酸化水素は0.01~20質量部、好ましくは0.05~15質量部、より好ましくは0.1~10質量部である。
【0082】
アンモニア過水の処理は、0℃~80℃、好ましくは5℃~70℃の剥離液を用意し、これに処理したい被加工基板が形成されているシリコンウエハを浸漬するだけでよい。さらに必要であれば、表面に剥離液をスプレーしたり、ウエハを回転させながら剥離液を塗布したりする等、定法の手順により、容易にケイ素含有レジスト中間膜とアンモニア過水に可溶な有機膜を一括除去できる。
【0083】
なお、アンモニア過水の処理の後、有機レジスト下層膜の表面に残るケイ素を定量してケイ素分の除去程度を確認することが好ましい。例えば、特開2016-177262号公報(米国特許出願公開第2016/0276152(A1)号明細書)に記載されている方法により分析が可能である。
【0084】
こうして得られた有機レジスト下層膜のパターンをマスクとして、基板にパターンを形成する(基板加工)。本発明のパターン形成方法は、ドライエッチングを用いない基板加工、例えば各種イオンの打ち込み加工、ウエットエッチングによる基板加工において好適に用いることができる。なお、被加工基板がTiNやWのようにアンモニア過水でエッチングできる場合には、ケイ素分残渣と有機膜とをアンモニア過水で一括除去する際に基板加工も一緒に行うことができる。また、ドライエッチングによる基板加工も可能であり、例えば被加工基板がSiO2、SiN、シリカ系低誘電率絶縁膜であればフロン系ガスを主体とした条件、p-SiやAl、Wでは塩素系、臭素系ガスを主体とした条件が用いられる。
【0085】
基板加工を済ませた後、マスクとなった有機レジスト下層膜パターンはドライエッチング又はウエットエッチングにより除去する。ドライエッチング(アッシング)の条件は特に限定されないが、有機レジスト下層膜の加工と同様、例えばN2/H2ガス、あるいはO2ガスを用いることが好ましい。ウエットエッチングの条件も特に限定は無いが、硫酸過水を用いた湿式処理を例示できる。本発明のパターン形成方法を用いれば、有機レジスト下層膜パターンを除去した後において、基板上への異物の残留を抑制することができる。
【0086】
以上説明したように、本発明のパターン形成方法では、基板上に有機レジスト下層膜を形成し、アンモニア過水に可溶な有機膜を有機レジスト下層膜上に形成し、次にケイ素含有レジスト中間膜を形成し、さらにレジスト上層膜を形成してレジスト多層膜付き基板を得た後、レジスト上層膜にパターンを形成し、このパターンをドライエッチングでケイ素含有レジスト中間膜に転写し、その転写されたパターンをマスクとすることで、一気に有機膜と有機レジスト下層膜をドライエッチングしてパターン転写することができる。上記の通り、転写されたパターン上に残るケイ素分は有機膜とともにアンモニア過水で除去することができ、ケイ素分残渣の無い有機レジスト下層膜パターンを得ることができる。この有機レジスト下層膜パターンは基板加工のマスクとすることができ、最終的にドライエッチング又はウエットエッチングで除去した際に基板上への異物の残留を抑制することができる。これにより、段差の大きな3次元トランジスタを形成する場合においても高い歩留まりで基板加工が可能となる。
【実施例】
【0087】
以下、合成例、実施例、及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの記載によって限定されるものではない。なお、下記例において、%は質量%を示し、分子量測定はGPCによって行った。GPC測定において、検出はRIで行い、溶離溶剤はテトラヒドロフランとして、ポリスチレン換算の分子量を求めた。
【0088】
[高分子化合物の合成]
[合成例(A1)]
500mlの3口フラスコにレゾルシノール40.00g(0.36mol)、p-トルエンスルホン酸一水和物の20質量%PGME溶液10.00g、及び2-メトキシ-1-プロパノール72.00gを採り、攪拌しながら80℃まで加熱した。そこへ37%ホルマリン23.59g(ホルムアルデヒド0.29mol)を加え、11時間攪拌した。反応液に超純水160gと酢酸エチル200gを加えて分液ロートに移し、酸触媒と金属不純物を除去するために超純水150gで10回洗浄した。得られた有機層を76gまで減圧濃縮した後、酢酸エチルを加えて150gの溶液とし、n-ヘキサン217gを加えた。n-ヘキサン層が上層、高濃度ポリマー溶液が下層となって分離し、この上層を除いた。同様の操作を2度繰り返し、得られたポリマー溶液を濃縮、さらに80℃で13時間減圧乾燥して高分子化合物A1を得た。GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、Mw=800、Mw/Mn=1.3であった。この高分子化合物A1は、一般式(4)で示される繰り返し単位を有するものである。
【0089】
[合成例(A2)]
1,000mlの3口フラスコに1,5-ジヒドロキシナフタレン80.1g(0.50mol)、37%ホルマリン溶液26.4g(0.24mol)、及び2-メトキシ-1-プロパノール250gを窒素雰囲気下、液温80℃で均一溶液とした後、20%パラトルエンスルホン酸2-メトキシ-1-プロパノール溶液18gをゆっくり加え、液温110℃で12時間撹拌した。室温まで冷却後、メチルイソブチルケトン500gを加え、有機層を純水200gで5回洗浄後、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF300mLを加え、ヘキサン2,000mLでポリマーを再沈させた。沈降したポリマーをろ過で分別し減圧乾燥して高分子化合物A2を得た。GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、Mw=3,000、Mw/Mn=2.7であった。この高分子化合物A2は、一般式(4)で示される繰り返し単位を有するものである。
【0090】
[合成例(A3)]
2,000mlの3口フラスコに1,5-ジヒドロキシナフタレン80.1g(0.50mol)、3,4-ジ-t-ブトキシベンズアルデヒド100.1g(0.40mol)、及び2-メトキシ-1-プロパノール600gを窒素雰囲気下、液温80℃で均一溶液とした後、25%水酸化ナトリウム水溶液6.4gをゆっくり加え、液温110℃で24時間撹拌した。室温まで冷却後、酢酸エチル1,500gを加え、有機層を3%硝酸水溶液300gで洗浄後、さらに純水300gで5回洗浄を行い減圧乾固した。残渣にTHF400mLを加え、ヘキサン3,000mLでポリマーを再沈させた。沈降したポリマーをろ過で分別し減圧乾燥して高分子化合物A3を得た。GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、Mw=2,900、Mw/Mn=2.9であった。この高分子化合物A3は、一般式(1)で示される繰り返し単位を有するものである。
【0091】
[合成例(A4)]
1,000mLのフラスコに1,5-ジヒドロキシナフタレン80g(0.50mol)、4-ヒドロキシベンズアルデヒド36.6g(0.30mol)、及びメチルセロソルブ145gを加え、70℃で撹拌しながらp-トルエンスルホン酸の20質量%メチルセロソルブ溶液20gを添加した。温度を85℃に上げ6時間撹拌後、室温に冷却し、酢酸エチル800mLで希釈した。分液ロートに移し変え、脱イオン水200mLで洗浄を繰り返し、反応触媒と金属不純物を除去した。得られた溶液を減圧濃縮した後、残渣に酢酸エチル600mLを加え、ヘキサン2,400mLでポリマーを沈殿させた。沈殿したポリマーをろ別、回収後、減圧乾燥して高分子化合物A4を得た。GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、Mw=3,800、Mw/Mn=2.4であった。この高分子化合物A4は、一般式(1)で示される繰り返し単位を有するものである。
【0092】
[合成例(A5)]
2,000mlの3口フラスコに2,7-ジヒドロキシナフタレン80.1g(0.50mol)、テレフタルアルデヒド酸=t-ブチル100.1g(0.40mol)、及び2-メトキシ-1-プロパノール600gを窒素雰囲気下、液温80℃で均一溶液とした後、25%水酸化ナトリウム水溶液6.4gをゆっくり加え、液温110℃で24時間撹拌した。室温まで冷却後、酢酸エチル1,500gを加え、有機層を3%硝酸水溶液300gで洗浄後、さらに純水300gで5回洗浄を行い減圧乾固した。残渣にTHF400mLを加え、ヘキサン3,000mLでポリマーを再沈させた。沈降したポリマーをろ過で分別し減圧乾燥して高分子化合物A5を得た。GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、Mw=2,900、Mw/Mn=2.9であった。この高分子化合物A5は、一般式(2)で示される繰り返し単位を有するものである。
【0093】
[合成例(A6)]
2,000mlの3口フラスコに6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸94.4g(0.50mol)、テレフタルアルデヒド酸=t-ブチル100.1g(0.40mol)、及び2-メトキシ-1-プロパノール600gを窒素雰囲気下、液温80℃で均一溶液とした後、25%水酸化ナトリウム水溶液6.4gをゆっくり加え、液温110℃で24時間撹拌した。室温まで冷却後、酢酸エチル1,500gを加え、有機層を3%硝酸水溶液300gで洗浄後、さらに純水300gで5回洗浄を行い減圧乾固した。残渣にTHF400mLを加え、ヘキサン3,000mLでポリマーを再沈させた。沈降したポリマーをろ過で分別し減圧乾燥して高分子化合物A6を得た。GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、Mw=3,500、Mw/Mn=2.8であった。この高分子化合物A6は、一般式(2)で示される繰り返し単位を有するものである。
【0094】
[合成例(A7)]
2,000mlの3口フラスコに1,5-ジヒドロキシナフタレン80.1g(0.50mol)、テレフタルアルデヒド酸60.1g(0.40mol)、及び2-メトキシ-1-プロパノール600gを窒素雰囲気下、液温80℃で均一溶液とした後、25%水酸化ナトリウム水溶液6.4gをゆっくり加え、液温110℃で24時間撹拌した。室温まで冷却後、酢酸エチル1,500gを加え、有機層を3%硝酸水溶液300gで洗浄後、さらに純水300gで5回洗浄を行い減圧乾固した。残渣にTHF400mLを加え、ヘキサン3,000mLでポリマーを再沈させた。沈降したポリマーをろ過で分別し減圧乾燥して高分子化合物A7を得た。GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、Mw=2,200、Mw/Mn=2.9であった。この高分子化合物A7は、一般式(2)で示される繰り返し単位を有するものである。
【0095】
[合成例(A8)]
200mlの3口フラスコに6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸9.4g(0.05mol)、テレフタルアルデヒド酸5.3g(0.05mol)、及び2-メトキシ-1-プロパノール60gを窒素雰囲気下、液温80℃で均一溶液とした後、25%水酸化ナトリウム水溶液0.6gをゆっくり加え、液温110℃で24時間撹拌した。室温まで冷却後、酢酸エチル150gを加え、有機層を3%硝酸水溶液30gで洗浄後、さらに純水30gで5回洗浄を行い減圧乾固した。残渣にTHF40mLを加え、ヘキサン300mLでポリマーを再沈させた。沈降したポリマーをろ過で分別し減圧乾燥して高分子化合物A8を得た。GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、Mw=2,000、Mw/Mn=2.6であった。この高分子化合物A8は、一般式(2)で示される繰り返し単位を有するものである。
【0096】
[合成例(A9)]
2,000mlの3口フラスコにo-クレゾール54.1g(0.50mol)、3,4-ビス(t-ブトキシカルボニルメトキシ)ベンズアルデヒド140.2g(0.40mol)、及び2-メトキシ-1-プロパノール600gを窒素雰囲気下、液温80℃で均一溶液とした後、25%水酸化ナトリウム水溶液6.4gをゆっくり加え、液温110℃で24時間撹拌した。室温まで冷却後、酢酸エチル1,500gを加え、有機層を3%硝酸水溶液300gで洗浄後、さらに純水300gで5回洗浄を行い減圧乾固した。残渣にTHF400mLを加え、ヘキサン3,000mLでポリマーを再沈させた。沈降したポリマーをろ過で分別し減圧乾燥して高分子化合物A9を得た。GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、Mw=3,200、Mw/Mn=3.0であった。この高分子化合物A9は、一般式(3)で示される繰り返し単位を有するものである。
【0097】
[合成例(A10)]
2,000mlの3口フラスコに1,6-ジヒドロキシナフタレン80.1g(0.50mol)、4-t-ブトキシカルボニルメトキシベンズアルデヒド94.5g(0.40mol)、及び2-メトキシ-1-プロパノール600gを窒素雰囲気下、液温80℃で均一溶液とした後、25%水酸化ナトリウム水溶液6.4gをゆっくり加え、液温110℃で24時間撹拌した。室温まで冷却後、酢酸エチル1,500gを加え、有機層を3%硝酸水溶液300gで洗浄後、さらに純水300gで5回洗浄を行い減圧乾固した。残渣にTHF400mLを加え、ヘキサン3,000mLでポリマーを再沈させた。沈降したポリマーをろ過で分別し減圧乾燥して高分子化合物A10を得た。GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、Mw=2,700、Mw/Mn=2.7であった。この高分子化合物A10は、一般式(3)で示される繰り返し単位を有するものである。
【0098】
[有機膜形成用組成物(Sol.1~22)の調製]
上記の高分子化合物A1~A10、添加剤として架橋剤XL1~3、熱酸発生剤AG1、界面活性剤としてFC-4430(住友スリーエム(株)製)0.1質量%を含む有機溶媒を表1に示す割合で混合し、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって有機膜形成用組成物(Sol.1~22)をそれぞれ調製した。なお、Sol.1~10、15~16、20~22が本発明のレジスト多層膜付き基板を得るための有機膜形成用組成物であり、Sol.11~14、17~19は比較用の有機膜形成用組成物である。また、調製した有機膜形成用組成物中、プロピレングリコールエステル、ケトン、及びラクトンから選ばれる1種以上の合計が全有機溶媒を占める量を表1に併せて示す。
【0099】
【0100】
以下に、熱酸発生剤AG1、架橋剤XL1~3を示す。
【化8】
【0101】
また、表1中の有機溶媒は以下を意味する。
PGMEA:プロピレングリコ-ルメチルエーテルアセテート
Cyho:シクロヘキサノン
PGEE:プロピレングリコールエチルエーテル
GBL:γ-ブチロラクトン
4M2P:4-メチル-2-ペンタノール
【0102】
[溶剤耐性評価]
本発明のレジスト多層膜付き基板における有機膜は、直上にケイ素含有レジスト中間膜がスピンコートされることから、形成される有機膜がインターミキシングが起こらない有機膜であるかを調べるために有機溶剤への耐性を評価した。上記の有機膜形成用組成物(Sol.1~22)をそれぞれシリコン基板上に塗布し、285℃で60秒間焼成して有機膜を形成して膜厚T1を測定した。得られた有機膜上にPGMEA/PGME=30/70(質量比)をスピンコートした後、100℃で30秒間加熱処理して膜厚T2を測定した。これらの測定結果から、T1-T2で示される膜厚減を算出した。結果を表2に示す。
【0103】
【0104】
表2に示されるように、Sol.1~10、15~16、20~22から形成される有機膜は十分な有機溶剤耐性を有する。従って、これらの有機膜の直上にケイ素含有レジスト中間膜をスピンコートしても、インターミキシングすることなく積層膜を形成できることが明らかとなった。
【0105】
[有機レジスト下層膜上の成膜性評価]
本発明のレジスト多層膜付き基板における有機膜は有機レジスト下層膜上に積層されることから、有機レジスト下層膜上での成膜性を確認した。シリコンウエハ上に、有機レジスト下層膜として信越化学工業(株)製スピンオンカーボン膜ODL-102を塗布し、膜厚200nmの有機レジスト下層膜を形成した。この上に有機膜形成用組成物(Sol.1~22)を塗布し、285℃で60秒間焼成して有機膜を形成し、有機膜の成膜状態を確認した。結果を表3に示す。
【0106】
【0107】
表3に示される通り、Sol.1~10、15~16、20~22はスピンコートによって有機レジスト下層膜上に成膜不良なく膜形成することができた。一方で、アルコール系有機溶媒を70wt%以上含むSol.11~14、17~19は有機レジスト下層膜上ではじきを生じ、膜を積層することができなかった。
【0108】
[有機膜のアンモニア過水による湿式除去性]
上記の有機膜形成用組成物(Sol.1~10、15~16)をそれぞれシリコン基板上に塗布し、285℃で60秒間焼成して25nmになるように有機膜を形成して膜厚T1を測定した。この膜を29%アンモニア水/35%過酸化水素水/水=1/1/8で混合し65℃に保ったアンモニア過水中に5分間浸漬し、純水で洗浄した後に100℃で60秒間加熱乾燥させ、膜厚T3を測定した。また、このときの膜除去速度を求めた。これらの結果を表4に示す。
【0109】
【0110】
表4に示される通り、Sol.1~10、15~16から形成される有機膜は、アンモニア過水にて5nm/分以上の速度で除去可能であることが分かった。
【0111】
[レジスト多層膜付き基板の製造及び有機レジスト下層膜アッシング後の残渣評価]
(実施例1~15及び比較例1)
シリコンウエハ上に、有機レジスト下層膜として信越化学工業(株)製スピンオンカーボン膜ODL-102を膜厚200nmで形成した。その上に有機膜形成用組成物(Sol.1~10、15~16、20~22)をそれぞれ塗布し、285℃で60秒間加熱して有機膜を積層した。一方、上記の通り、Sol.11~14、17~19は有機レジスト下層膜上ではじきを生じ、膜を積層することができなかった(即ち、本発明のレジスト多層膜付き基板を製造できなかった)ため、有機膜を導入しないものを比較例1とした。
【0112】
次に、下記の表5に示すケイ素含有レジスト中間膜形成用組成物(SiARC-1)を塗布し、220℃で60秒間加熱して膜厚35nmのケイ素含有レジスト中間膜を積層した。その上に下記の表6に示すポジ型現像用ArFレジスト溶液(PR-1)を塗布し、110℃で60秒間加熱して膜厚100nmのフォトレジスト膜をレジスト上層膜として形成し、レジスト多層膜付き基板を得た。さらに、フォトレジスト膜上に下記の表7に示す液浸保護膜組成物(TC-1)を塗布し、90℃で60秒間加熱して膜厚50nmの保護膜を形成した。
【0113】
続いて、これらのウエハをArF液浸露光装置((株)ニコン製NSR-S610C、NA1.30、σ0.98/0.65、35度ダイポール偏光照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク)で露光し、100℃で60秒間ベーク(PEB)し、2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液で30秒間現像し、160nm1:1のポジ型のラインアンドスペースパターンを得た。このようにして得られたウエハに対し、(株)日立製作所製電子顕微鏡(S-4800)でパターンの断面形状を、また、(株)日立ハイテクノロジーズ製電子顕微鏡(CG4000)でパターンの倒れを観察した。
【0114】
フォトレジストパターンが得られたこれらのウエハに対し、東京エレクトロン製エッチング装置Teliusを用いて、表8、表9に示す処理条件でドライエッチングを行い、それぞれケイ素含有レジスト中間膜と有機レジスト下層膜を加工した。また、得られたウエハにおいて、(株)日立製作所製電子顕微鏡(S-9380)でパターンの断面形状を観察した。
【0115】
次に、有機レジスト下層膜加工後に残存したケイ素含有レジスト中間膜を湿式除去するため、上記ウエハを29%アンモニア水/35%過酸化水素水/水=1/1/8で混合して65℃に保ったアンモニア過水で5分間処理した。処理後に純水で洗浄し、100℃で60秒間加熱乾燥させた。また、アンモニア過水処理でケイ素分を除去できているか確認するため、有機レジスト下層膜表面をサーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製のK-ALPHAでXPS分析し、有機レジスト下層膜上のケイ素を定量した。
【0116】
以上の工程で得られた有機レジスト下層膜パターンを、東京エレクトロン製エッチング装置Teliusを用いて表10に示す処理条件で処理し、残存した有機レジスト下層膜をアッシング除去した。アッシング処理後のウエハを(株)日立ハイテクノロジーズ製電子顕微鏡(CG4000)で観察し、残渣の有無を確認した。結果を表11に示す。
【0117】
上記のケイ素含有レジスト中間膜形成用組成物(SiARC-1)の組成を以下の表5に示す。
【0118】
【表5】
TPSNO
3:硝酸トリフェニルスルホニウム
【0119】
表5に示されるSiARCポリマー1の分子量、及び構造式を以下に示す。
SiARCポリマー1:分子量(Mw)=2,800
【化9】
【0120】
表5に示されるSiARCポリマー2の分子量、及び構造式を以下に示す。
SiARCポリマー2:分子量(Mw)=2,800
【化10】
【0121】
上記のポジ型現像用ArFレジスト溶液(PR-1)の組成を以下の表6に示す。
【表6】
【0122】
表6に示されるArFレジストポリマー1の分子量、分散度、及び構造式を以下に示す。
ArFレジストポリマー1:分子量(Mw)=7,800
分散度(Mw/Mn)=1.78
【化11】
【0123】
表6に示される酸発生剤:PAG1の構造式を以下に示す。
【化12】
【0124】
表6に示される塩基:Quencherの構造式を以下に示す。
【化13】
【0125】
上記のポジ型現像によるパターニング試験に用いる液浸保護膜組成物(TC-1)の組成を以下の表7に示す。
【表7】
【0126】
上記の表7に示される保護膜ポリマーの分子量、分散度、及び構造式を以下に示す。
保護膜ポリマー:分子量(Mw)=8,800
分散度(Mw/Mn)=1.69
【化14】
【0127】
ケイ素含有レジスト中間膜のドライエッチング加工条件を、以下の表8に示す。
【表8】
【0128】
有機レジスト下層膜のドライエッチング加工条件を、以下の表9に示す。
【表9】
【0129】
有機レジスト下層膜のアッシング除去条件を、以下の表10に示す。
【表10】
【0130】
上記の評価において得られた、フォトレジストパターンの断面形状及びパターンの倒れの観察結果、ドライエッチング加工後のパターン断面形状の観察結果、アンモニア過水処理後の有機レジスト下層膜表面のケイ素残量、そして有機レジスト下層膜パターンをアッシングした後の残渣の有無について、以下の表11に示す。
【0131】
【0132】
表11に示される通り、アンモニア過水で除去可能なSol.1~10、15~16から形成される有機膜を導入した実施例1~12では、アンモニア過水処理後に有機レジスト下層膜上にケイ素が残らず、有機レジスト下層膜パターンをアッシングした後に残渣が発生しなくなった。また、実施例13~15、比較例1にて有機膜の膜厚の影響を確認したところ、実施例13に示されるように、有機膜が薄い場合には、アンモニア過水処理後の有機レジスト下層膜表面にケイ素分残渣は見られず、有機レジスト下層膜パターンをアッシングした後に残渣は発生しなかった。また、実施例15に示されるように、膜が厚い場合には、ドライエッチング加工時に有機膜部分にサイドエッチングが入ったものの、有機レジスト下層膜パターンをアッシングした後に残渣は発生しなかった。一方で、比較例1が示す通り、有機膜が無い場合にはケイ素分残渣の除去効果が得られず、有機レジスト下層膜パターンをアッシングした後に残渣が発生した。
【0133】
以上より、本発明のレジスト多層膜付き基板は、半導体装置基板やパターニング工程で必要な有機レジスト下層膜に対してダメージを与えない剥離液を用い、ドライエッチングで変性したケイ素分残渣とともに容易に湿式除去可能な有機膜を有するものとなり、3次元トランジスタ形成時のイオン打込み遮蔽マスク用材料として適用することが可能なものとなることが明らかとなった。特に有機膜を10nm以上100nm未満の膜厚で導入することにより、残渣の発生しない加工プロセスをより確実に構築することができることが明らかとなった。これにより、3次元トランジスタの製造工程における歩留まり低下を防止することが可能になり、より高性能の半導体装置を経済的に製造することが可能となる。
【0134】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。