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  • 特許-計量装置 図1
  • 特許-計量装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】計量装置
(51)【国際特許分類】
   G01F 13/00 20060101AFI20220816BHJP
【FI】
G01F13/00 331U
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019027265
(22)【出願日】2019-02-19
(65)【公開番号】P2020134291
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-12-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】沖本 裕二
【審査官】森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】実公昭37-012466(JP,Y1)
【文献】特許第5253765(JP,B2)
【文献】特公昭52-26138(JP,B2)
【文献】特公平5-5047(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を計量する計量装置であって、
液体を計量する計量器と、該計量器の下部に配設され液体を排出する排出手段と、該計量器の上部に配設され液体を供給する供給手段と、を備え、
該供給手段は、該計量器に液体を供給する供給口を下に向けた供給管と、該供給管に連通すると共に液面が該供給管の該供給口より下にある液体収容器に連通する連通管と、該計量器の内部の空気を吸引する吸引器と、
から少なくとも構成され、
該吸引器は、該計量器の上部から挿入される吸引管と、該吸引管と連通する真空エジェクターとから少なくとも構成され、
真空エジェクターによる吸引で該計量器の内部に該供給管から液体が供給され、該供給管の該供給口の上部まで液体が供給された際、該真空エジェクターによる吸引を停止して大気に開放しサイホンの原理で該供給口の上部の液体が該液体収容器に逆流し液面が該供給口と同じ位置になった際逆流が停止して該計量器に所定量が貯留され
該計量器の内部にウキが配設され供給された液体によって浮上し該吸引管の吸気口を塞ぎ該真空エジェクターによる吸引の停止を忘れても該計量器からのオーバーフローを防止できる計量装置。
【請求項2】
該供給管の該供給口の位置を変更して該計量器に貯留される液量を調整する請求項1記載の計量装置。
【請求項3】
該排出手段の下にタンクが配設され、該タンク内の液体と該排出手段から排出される計量された液体とが適宜の割合で混合する請求項1記載の計量装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を計量する計量装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハは、切削ブレードを回転可能に備えた切削装置によって個々のデバイスチップに分割され、分割された各デバイスチップは携帯電話、パソコン等の電気機器に利用される。
【0003】
切削装置は、ウエーハを保持する保持手段と、保持手段に保持されたウエーハを切削する切削ブレードを回転可能に備えた切削手段と、切削ブレードとウエーハの切削領域とに切削水を供給する切削水供給手段と、保持手段と切削手段とを相対的に加工送りする送り手段と、から概ね構成されていてウエーハを高精度に個々のデバイスチップに分割することができる。
【0004】
また、ウエーハの表面に切削屑が付着しないように界面活性剤を切削水に添加する技術が本出願人によって提案されている(たとえば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-13301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、純水に対して界面活性剤を適量添加して切削水を生成する際には、ビーカー等の計量器を使用して行うこととなり、手袋の着脱、液体の漏泄処理等に手間がかかると共に、計量を間違えて切削水を生成し適切な切削加工ができなくなるという問題がある。
【0007】
上記事実に鑑みてなされた本発明の課題は、液体の計量が容易であると共に計量を間違えることなく行うことができる計量装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明が提供するのは以下の計量装置である。すなわち、液体を計量する計量装置であって、液体を計量する計量器と、該計量器の下部に配設され液体を排出する排出手段と、該計量器の上部に配設され液体を供給する供給手段と、を備え、該供給手段は、該計量器に液体を供給する供給口を下に向けた供給管と、該供給管に連通すると共に液面が該供給管の該供給口より下にある液体収容器に連通する連通管と、該計量器の内部の空気を吸引する吸引器と、から少なくとも構成され、該吸引器は、該計量器の上部から挿入される吸引管と、該吸引管と連通する真空エジェクターとから少なくとも構成され、真空エジェクターによる吸引で該計量器の内部に該供給管から液体が供給され、該供給管の該供給口の上部まで液体が供給された際、該真空エジェクターによる吸引を停止して大気に開放しサイホンの原理で該供給口の上部の液体が該液体収容器に逆流し液面が該供給口と同じ位置になった際逆流が停止して該計量器に所定量が貯留され、該計量器の内部にウキが配設され供給された液体によって浮上し該吸引管の吸気口を塞ぎ該真空エジェクターによる吸引の停止を忘れても該計量器からのオーバーフローを防止できる計量装置である。
【0009】
供給管の該供給口の位置を変更して該計量器に貯留される液量を調整するのが好適である。該排出手段の下にタンクが配設され、該タンク内の液体と該排出手段から排出される計量された液体とが適宜の割合で混合するのが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明が提供する計量装置は、液体を計量する計量器と、該計量器の下部に配設され液体を排出する排出手段と、該計量器の上部に配設され液体を供給する供給手段と、を備え、該供給手段は、該計量器に液体を供給する供給口を下に向けた供給管と、該供給管に連通すると共に液面が該供給管の供給口より下にある液体収容器に連通する連通管と、該計量器の内部の空気を吸引する吸引器と、から少なくとも構成され、該吸引器は、該計量器の上部から挿入される吸引管と、該吸引管と連通する真空エジェクターとから少なくとも構成され、真空エジェクターによる吸引で該計量器の内部に該供給管から液体が供給され、該供給管の供給口の上部まで液体が供給された際、該真空エジェクターによる吸引を停止して大気に開放しサイホンの原理で該供給口の上部の液体が該液体収容器に逆流し液面が該供給口と同じ位置になった際逆流が停止して該計量器に所定量が貯留され、該計量器の内部にウキが配設され供給された液体によって浮上し該吸引管の吸気口を塞ぎ該真空エジェクターによる吸引の停止を忘れても該計量器からのオーバーフローを防止できるので、液体の計量が容易であると共に計量を間違えることなく行うことができる。したがって、本発明の計量装置によれば、ビーカー等の計量器を使用して行うことによる手袋の着脱、液体の漏泄処理等に手間がかかると共に、計量を間違えて切削水を生成し適切な切削加工ができなくなるという問題が解消する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に従って構成された計量装置の模式図。
図2図1に示す計量装置の変形例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に従って構成された計量装置の好適実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0013】
図1を参照して説明すると、全体を符号2で示す計量装置は、液体を計量する計量器4と、計量器4の下部に配設され計量器4から液体を排出する排出手段6と、計量器4の上部に配設され計量器4に液体を供給する供給手段8とを備える。
【0014】
図1に示すとおり、計量器4は、底壁10と、底壁10の周縁から上方に延びる側壁12とを有する。計量器4に収容された液体の量を確認することができるように、計量器4は透明材料から形成されていると共に、側壁12の外面には計量器4に収容された液体の量を示す目盛り13(図1において計量器4の一部を拡大して示すとおり、たとえば500cc、700cc、900cc、1100cc)が設けられている。側壁12の上端(開放端)には蓋14が着脱自在に装着されており、この蓋14には一対の貫通開口14a、14bが形成されている。また、計量器4の内部には、貫通開口16aが形成されたウキ16が収容されており、ウキ16は計量器4に供給された液体によって浮上するようになっている。なお、計量器4は適宜のブラケット(図示していない。)によって支持されている。
【0015】
排出手段6は、計量器4の底壁10の下面から下方に延びる排出管18と、排出管18を開閉するバルブ20とを有する。排出管18は計量器4に連通しており、バルブ20を開けることによって計量器4に収容された液体が排出管18を通って排出されるようになっている。なお、バルブ20の開閉は、手動で行えるようになっていてもよく、あるいは適宜のアクチュエータによって行えるようになっていてもよく、これについては後述する他のバルブの開閉も同様である。
【0016】
供給手段8は、計量器4に液体を供給する供給口22aを下に向けた供給管22と、供給管22に連通すると共に液面が供給管22の供給口22aより下にある液体収容器24に連通する連通管26と、計量器4の内部の空気を吸引する吸引器28とから少なくとも構成されている。
【0017】
上下方向に延びる供給管22は、蓋14の一方の貫通開口14aおよびウキ16の貫通開口16aを通っており、供給管22の供給口22aはウキ16の下面よりも下方に位置している。図1に示すとおり、供給口22aは拡径していてウキ16の貫通開口16aよりも大きくなっており、これによって供給管22からウキ16が抜けてしまうのが防止されている。また、供給管22の上端には、上下方向に延びる伸縮自在な蛇腹状の伸縮管30が接続されており、伸縮管30を伸縮させることによって供給口22aの上下方向位置を変更できるようになっている。
【0018】
図1に示すとおり、連通管26の一端は伸縮管30の上端に接続されており、連通管26は伸縮管30を介して供給管22に連通している。また、連通管26の他端は液体収容器24の内部の下端に位置づけられている。液体収容器24には界面活性剤等の液体が収容されており、液体収容器24の液面は、液体収容器24に液体が最大限収容されている場合(満タン時)であっても、供給管22の供給口22aよりも下方に位置するようになっている。
【0019】
図示の実施形態の吸引器28は、計量器4の上部から計量器4の内部に挿入される吸引管32と、吸引管32と連通する真空エジェクター34とから少なくとも構成されている。上下方向に延びる吸引管32は、蓋14の他方の貫通開口14bを通っており、吸引管32の吸気口32aはウキ16の上面よりも上方に位置している。
【0020】
図1に示すとおり、全体として円筒状の真空エジェクター34の軸方向中間部には他の部分よりも内径が小さい小径部34aが設けられており、真空エジェクター34は小径部34aにおいて吸引管32と連通している。真空エジェクター34の一端部はエアー供給源36に管路38を介して接続され、真空エジェクター34とエアー供給源36との間には管路38を開閉するバルブ40が設けられている。また、真空エジェクター34の他端部には、合成樹脂製スポンジ等の通気性を有する多孔質部材から構成され得るサイレンサー42が装着されている。
【0021】
そして、吸引器28においては、バルブ40を開けた状態でエアー供給源36を作動させることにより、エアー供給源36から真空エジェクター34に管路38を介して高圧エアーを供給すると小径部34aの圧力が低下し、これによって小径部34aに連結されている吸引管32を介して計量器4の内部の空気を吸引するようになっている。
【0022】
また、図示の実施形態では図1に示すとおり、排出手段6の下にタンク44が配設されており、排出手段6から排出される、計量器4内の計量された液体がタンク44に収容されるようになっている。また、タンク44の上方には水源46から延びる管路48の開放端50が位置づけられており、水源46と開放端50との間には管路48を開閉するバルブ52が設けられている。そして、バルブ52を開けることにより、管路48を介して開放端50から水源46からタンク44に水が供給されるようになっている。
【0023】
さらに、図示の実施形態では、タンク44の下端から延びる管路54が切削ブレード56を回転可能に備えた切削手段58のブレードハウジング60に接続されている。管路54には、タンク44内の液体をブレードハウジング60に供給する供給ポンプ62と、管路54を開閉するバルブ64とが設けられている。そして、切削手段58でウエーハ等の被加工物に対して切削加工を施す際に、バルブ64を開けた状態で供給ポンプ62を作動させることにより、被加工物の切削領域や切削ブレード56にタンク44内の液体を供給することができるようになっている。
【0024】
上述したとおりの計量装置2を用いて液体を計量する際は、まず、伸縮管30を適宜伸縮させて供給管22の下端位置を計量器4の所望の目盛り13(たとえば500cc)に合わせる。次いで、吸引器28のバルブ40を開けた後、エアー供給源36を作動させて管路38を介してエアー供給源36から真空エジェクター34に高圧エアーを供給する。これによって、小径部34aの圧力が低下し、小径部34aに連結されている吸引管32を介して計量器4の内部の空気が吸引される。そうすると、計量器4の内部に負圧が生成されるため、液体収容器24内の液体が連通管26、伸縮管30および供給管22を通って供給口22aから計量器4に供給されることになる。このようにして、吸引器28の真空エジェクター34による吸引で計量器4の内部に供給管22から液体を供給する。
【0025】
次いで、供給管22の供給口22aの上部(供給管22の下端よりも上方の位置)まで計量器4に液体が供給された際、エアー供給源36の作動を停止して真空エジェクター34による吸引を停止すると共にバルブ40を閉じ、真空エジェクター34の端部に装着された通気性を有するサイレンサー42を介して吸引管32および計量器4の内部を大気に開放する。そうすると、液体収容器24の液面が供給口22aよりも下にあることから、サイホンの原理により、供給口22aの上部の液体が供給管22、伸縮管30および連通管26を介して計量器4から液体収容器24に逆流する。そして、計量器4の内部の液面が供給口22a(供給管22の下端)と同じ位置になった際、計量器4から液体収容器24への逆流が停止して、供給管22の下端位置を合わせた所望の目盛り13が示す量の液体が計量器4に貯留される。このようにして、計量装置2を用いて所定量の液体を計量することができる。
【0026】
図示の実施形態の計量装置2では、供給管22の上端に伸縮管30が接続されているため、伸縮管30を上下方向に適宜伸縮させることにより、供給管22の供給口22aの上下方向位置を変更して計量器4に貯留される液量を調整することができる。
【0027】
また、図示の実施形態の計量装置2では、計量器4の内部にウキ16が配設されていることから、吸引器28の作動で計量器4に供給された液体によってウキ16が浮上する。これによって、真空エジェクター34による吸引の停止を忘れてしまった場合でも、浮上したウキ16によって吸引管32の吸気口32aが塞がれるので、計量器4からの液体のオーバーフローが防止される。
【0028】
さらに、図示の実施形態の計量装置2では、排出手段6の下にタンク44が配設されていると共に、タンク44の上方には水源46に接続された管路48の開放端50が位置づけられていることから、タンク44の液体(図示の実施形態では水源46からタンク44に供給された水)と、排出手段6から排出される計量された液体(たとえば界面活性剤)とを適宜の割合で混合することができる。したがって、タンク44の液体と計量器4から排出された液体とが適宜の割合で混合した混合液が切削手段58に供給され得る。
【0029】
なお、供給手段8の吸引器28については、上述の形態に限定されず、図2に示す形態であってもよい。すなわち、図2に示す吸引器66においては、吸引管32の端部に接続された吸引源68と、吸引管32を開閉する吸引バルブ70と、吸引管32から分岐する分岐管72を開閉する大気開放バルブ74とを含む。
【0030】
そして、吸引器66においては、吸引バルブ70を開けると共に大気開放バルブ74を閉じた状態で吸引源68を作動させることにより、計量器4の内部の空気を吸引するようになっている。これによって、計量器4の内部に負圧が生成されるため、液体収容器24内の液体が計量器4に供給される。
【0031】
また、供給管22の供給口22aの上部まで計量器4に液体が供給された際、吸引器66の吸引源68の作動を停止し、吸引バルブ70を閉じると共に大気開放バルブ74を開けることによって、吸引管32および計量器4の内部が大気に開放される。これによって、サイホンの原理により、供給口22aの上部の液体が計量器4から液体収容器24に逆流し、計量器4の液面が供給口22aと同じ位置になった際、計量器4から液体収容器24への逆流が停止して、所定量の液体が計量器4に貯留される。
【符号の説明】
【0032】
2:計量装置
4:計量器
6:排出手段
8:供給手段
16:ウキ
22:供給管
22a:供給口
24:液体収容器
26:連通管
28:吸引器
32:吸引管
32a:吸気口
34:真空エジェクター
44:タンク
図1
図2