(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、レジスト膜、パターン形成方法、電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20220816BHJP
G03F 7/039 20060101ALI20220816BHJP
G03F 7/038 20060101ALI20220816BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20220816BHJP
C07D 327/06 20060101ALN20220816BHJP
C07D 307/46 20060101ALN20220816BHJP
C07D 235/18 20060101ALN20220816BHJP
C07D 307/33 20060101ALN20220816BHJP
【FI】
G03F7/004 503A
G03F7/039 601
G03F7/038 601
G03F7/20 521
G03F7/20 501
C07D327/06
C07D307/46
C07D235/18
C07D307/33 320
(21)【出願番号】P 2020541078
(86)(22)【出願日】2019-08-07
(86)【国際出願番号】 JP2019031070
(87)【国際公開番号】W WO2020049939
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2021-02-22
(31)【優先権主張番号】P 2018165380
(32)【優先日】2018-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】上村 稔
(72)【発明者】
【氏名】小島 雅史
(72)【発明者】
【氏名】後藤 研由
(72)【発明者】
【氏名】川島 敬史
【審査官】高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-221501(JP,A)
【文献】国際公開第2018/042810(WO,A1)
【文献】特開2018-059992(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004-7/18
G03F 7/20
C07D 327/06
C07D 307/46
C07D 235/18
C07D 307/33
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性光線又は放射線の照射により一般式(I)で表される酸を発生する化合物と、樹脂と、を含む、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化1】
一般式(I)中、Rfは、フルオロアルキル基を表す。
tは、0又は1を表す
。
R
1及びR
2は、それぞれ独立に、有機基を表
し、R
1
は、環状の基を有する有機基を表す。
【請求項2】
Rfが、トリフルオロメチル基を表す、請求項1に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項3】
R
1が、脂環基を有する、請求項1
または2に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項4】
前記一般式(I)で表される酸のpKaが、-2.00以上である、請求項1~
3のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項5】
R
1が、フッ素原子を有さない、請求項1~
4のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項6】
R
2が、フッ素原子を有さない、請求項1~
5のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて形成された、レジスト膜。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて支持体上にレジスト膜を形成する工程と、
前記レジスト膜を露光する工程と、
前記露光されたレジスト膜を、現像液を用いて現像する工程と、を有する、パターン形成方法。
【請求項9】
請求項
8に記載のパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、レジスト膜、パターン形成方法、及び、電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
KrFエキシマレーザー(248nm)用レジスト以降、光吸収による感度低下を補うべく、化学増幅を利用したパターン形成方法が用いられている。例えば、ポジ型の化学増幅法では、まず、露光部に含まれる光酸発生剤が、光照射により分解して酸を発生する。そして、露光後のベーク(PEB:Post Exposure Bake)過程等において、発生した酸の触媒作用により、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物に含まれる樹脂が有するアルカリ不溶性の基をアルカリ可溶性の基に変化させる等して現像液に対する溶解性を変化させる。その後、例えば塩基性水溶液を用いて、現像を行う。これにより、露光部を除去して、所望のパターンを得る。
半導体素子の微細化のために、露光光源の短波長化及び投影レンズの高開口数(高NA)化が進み、現在では、193nmの波長を有するArFエキシマレーザーを光源とする露光機が開発されている。
このような現状のもと、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物として、種々の構成が提案されている
【0003】
例えば、特許文献1では、「放射線の照射により下記式(1)で表される化合物を発生する酸発生剤を含有する感放射線性樹脂組成物(請求項1)」が開示されている。
【0004】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、特許文献1に開示された技術を具体的に検討したところ、特許文献1の組成物は、得られるパターンのLWR(line width roughness)性能に改善の余地があることを知見した。
【0007】
そこで本発明は、LWR性能に優れるパターンを得られる感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を提供することを課題とする。
また、本発明は、上記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物に関する、レジスト膜、パターン形成方法、及び、電子デバイスの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、以下の構成により上記課題を解決できることを見出した。
【0009】
〔1〕
活性光線又は放射線の照射により後述する一般式(I)で表される酸を発生する化合物と、樹脂と、を含む、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
〔2〕
後述する一般式(I)中、Rfが、トリフルオロメチル基を表す、〔1〕に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
〔3〕
後述する一般式(I)中、Xが、-COO-を表す、〔1〕又は〔2〕に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
〔4〕
後述する一般式(I)中、R1が、環状の有機基を有する、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
〔5〕
後述する一般式(I)中、R1が、脂環基を有する、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
〔6〕
上記後述する一般式(I)で表される酸のpKaが、-2.0以上である、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
〔7〕
後述する一般式(I)中、R1が、フッ素原子を有さない、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
〔8〕
後述する一般式(I)中、R2が、フッ素原子を有さない、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
〔9〕
〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて形成された、レジスト膜。
〔10〕
〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて支持体上にレジスト膜を形成する工程と、
上記レジスト膜を露光する工程と、
上記露光されたレジスト膜を、現像液を用いて現像する工程と、を有する、パターン形成方法。
〔11〕
〔10〕に記載のパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、LWR性能に優れるパターンを得られる感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を提供できる。
また、本発明は、上記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物に関する、レジスト膜、パターン形成方法、及び、電子デバイスの製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされる場合があるが、本発明はそのような実施態様に限定されない。
本明細書中における基(原子団)の表記について、本発明の趣旨に反しない限り、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さない基と共に置換基を有する基をも包含する。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含する。また、本明細書中における「有機基」とは、少なくとも1個の炭素原子を含む基をいう。
本明細書中における「活性光線」又は「放射線」とは、例えば、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光: Extreme Ultraviolet)、X線、及び電子線(EB:Electron Beam)等を意味する。本明細書中における「光」とは、活性光線又は放射線を意味する。
本明細書中における「露光」とは、特に断らない限り、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線、X線、及びEUV光等による露光のみならず、電子線、及びイオンビーム等の粒子線による描画も含む。
本明細書において、「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本明細書において表記される二価の基の結合方向は、特に断らない限り制限されない。例えば、「X-Y-Z」なる一般式で表される化合物中の、Yが-COO-である場合、上記化合物は「X-O-CO-Z」であってもよく「X-CO-O-Z」であってもよい。
【0012】
本明細書において、(メタ)アクリレートはアクリレート及びメタクリレートを表し、(メタ)アクリルはアクリル及びメタクリルを表す。
本明細書において、樹脂の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、及び分散度(分子量分布ともいう)(Mw/Mn)は、GPC(Gel Permeation Chromatography)装置(東ソー製HLC-8120GPC)によるGPC測定(溶媒:テトラヒドロフラン、流量(サンプル注入量):10μL、カラム:東ソー社製TSK gel Multipore HXL-M、カラム温度:40℃、流速:1.0mL/分、検出器:示差屈折率検出器(Refractive Index Detector))によるポリスチレン換算値として定義される。
【0013】
本明細書においてpKa(酸解離定数pKa)とは、水溶液中での酸解離定数pKaを表し、例えば、化学便覧(II)(改訂4版、1993年、日本化学会編、丸善株式会社)に定義される。酸解離定数pKaの値が低いほど酸強度が大きい。pKaの値は、下記ソフトウェアパッケージ1を用いて、ハメットの置換基定数及び公知文献値のデータベースに基づいた値を、計算により求められる。本明細書中に記載したpKaの値は、全て、このソフトウェアパッケージを用いて計算により求めた値を示す。
【0014】
ソフトウェアパッケージ1: Advanced Chemistry Development (ACD/Labs) Software V8.14 for Solaris (1994-2007 ACD/Labs)。
【0015】
本明細書において、ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及び、ヨウ素原子が挙げられる。
【0016】
〔感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物〕
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物(以下、単に「組成物」又は「本発明の組成物」ともいう)について説明する。
本発明の組成物は、いわゆるレジスト組成物であり、ポジ型のレジスト組成物であっても、ネガ型のレジスト組成物であってもよい。また、アルカリ現像用のレジスト組成物であっても、有機溶剤現像用のレジスト組成物であってもよい。
本発明の組成物は、典型的には、化学増幅型のレジスト組成物である。
【0017】
本発明の組成物は、活性光線又は放射線の照射により後述する一般式(I)で表される酸を発生する化合物と、樹脂と、を含む。
このような構成で本発明の課題が解決されるメカニズムは必ずしも明確ではないが、本発明者らは以下のように推測している。
上記酸は、スルホン酸基のα炭素原子に、フルオロアルキル基と、所定の連結基を有する有機基が置換しているため、酸性度を比較的低くしやすい。また、上記酸は、嵩高い構造になるため、レジスト膜中での拡散を制御しやすい。このような特性が相まって、本発明の組成物を用いて得られるパターンのLWR性能が改善した、と推測している。
【0018】
<樹脂>
本発明の組成物は樹脂を含む。
上記樹脂は、酸分解性樹脂(以下、「樹脂A」とも言う)であるのが好ましい。
酸分解性樹脂は、通常、酸の作用により分解し極性が増大する基(以下、「酸分解性基」とも言う)を有する繰り返し単位を有する。
本発明のパターン形成方法において、典型的には、現像液としてアルカリ現像液を採用した場合には、ポジ型パターンが好適に形成され、現像液として有機系現像液を採用した場合には、ネガ型パターンが好適に形成される。
【0019】
(酸分解性基を有する繰り返し単位)
樹脂Aは、酸分解性基を有する繰り返し単位を有するのが好ましい。
酸分解性基は、極性基が酸の作用により分解し脱離する基(脱離基)で保護された構造を有するのが好ましい。
極性基としては、カルボキシ基、フェノール性水酸基、フッ素化アルコール基、スルホン酸基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)メチレン基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基、ビス(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルスルホニル)メチレン基、ビス(アルキルスルホニル)イミド基、トリス(アルキルカルボニル)メチレン基、及び、トリス(アルキルスルホニル)メチレン基等の酸性基(2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液中で解離する基)、並びに、アルコール性水酸基等が挙げられる。
【0020】
なお、アルコール性水酸基とは、炭化水素基に結合した水酸基であって、芳香環上に直接結合した水酸基(フェノール性水酸基)以外の水酸基をいい、水酸基としてα位がフッ素原子等の電子求引性基で置換された脂肪族アルコール(例えば、ヘキサフルオロイソプロパノール基等)は除く。アルコール性水酸基としては、pKa(酸解離定数)が12~20の水酸基であるのが好ましい。
【0021】
極性基としては、カルボキシ基、フェノール性水酸基、フッ素化アルコール基(好ましくはヘキサフルオロイソプロパノール基)、又は、スルホン酸基が好ましい。
【0022】
酸分解性基として好ましい基は、これらの基の水素原子を酸の作用により脱離する基(脱離基)で置換した基である。
酸の作用により脱離する基(脱離基)としては、例えば、-C(R36)(R37)(R38)、-C(R36)(R37)(OR39)、及び、-C(R01)(R02)(OR39)等が挙げられる。
式中、R36~R39は、それぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、又は、アルケニル基を表す。R36とR37とは、互いに結合して環を形成してもよい。
R01及びR02は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、又は、アルケニル基を表す。
【0023】
R36~R39、R01及びR02のアルキル基は、炭素数1~8のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、へキシル基、及び、オクチル基等が挙げられる。
R36~R39、R01、及び、R02のシクロアルキル基は、単環でも、多環でもよい。単環としては、炭素数3~8のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、及び、シクロオクチル基等が挙げられる。多環としては、炭素数6~20のシクロアルキル基が好ましく、例えば、アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、カンファニル基、ジシクロペンチル基、α-ピネル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデシル基、及び、アンドロスタニル基等が挙げられる。なお、シクロアルキル基中の1つ以上の炭素原子が酸素原子等のヘテロ原子によって置換されていてもよい。
R36~R39、R01、及び、R02のアリール基は、炭素数6~10のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基、及び、アントリル基等が挙げられる。
R36~R39、R01、及び、R02のアラルキル基は、炭素数7~12のアラルキル基が好ましく、例えば、ベンジル基、フェネチル基、及び、ナフチルメチル基等が挙げられる。
R36~R39、R01、及び、R02のアルケニル基は、炭素数2~8のアルケニル基が好ましく、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、及び、シクロへキセニル基等が挙げられる。
R36とR37とが互いに結合して形成される環としては、シクロアルキル基(単環又は多環)であるのが好ましい。単環のシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、又は、シクロヘキシル基等が好ましく、多環のシクロアルキル基としては、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、又は、アダマンチル基等が好ましい。
【0024】
酸分解性基は、第3級のアルキルエステル基、アセタール基、クミルエステル基、エノールエステル基、又は、アセタールエステル基を有するのが好ましく、アセタール基又は第3級アルキルエステル基を有するのがより好ましい。
【0025】
樹脂Aは、酸分解性基を有する繰り返し単位として、下記一般式(AI)で表される繰り返し単位を有するのが好ましい。
【0026】
【0027】
一般式(AI)中、Tは、単結合又は2価の連結基を表す。
Tの2価の連結基としては、アルキレン基、アリーレン基、-COO-Rt-、及び-O-Rt-等が挙げられる。式中、Rtは、アルキレン基、シクロアルキレン基又はアリーレン基を表す。
Tは、単結合又は-COO-Rt-が好ましい。Rtは、炭素数1~5の鎖状アルキレン基が好ましく、-CH2-、-(CH2)2-、又は-(CH2)3-がより好ましい。
Tは、単結合であるのがより好ましい。
【0028】
一般式(AI)中、Xa1は、水素原子、ハロゲン原子、又は、1価の有機基を表す。
Xa1は、水素原子又はアルキル基であるのが好ましい。
Xa1のアルキル基は、置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、水酸基及びハロゲン原子(好ましくは、フッ素原子)が挙げられる。
Xa1のアルキル基は、炭素数1~4が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ヒドロキシメチル基、及び、トリフルオロメチル基等が挙げられる。Xa1のアルキル基は、メチル基であるのが好ましい。
【0029】
一般式(AI)中、Rx1~Rx3は、それぞれ独立に、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
Rx1~Rx3のいずれか2つが結合して環構造を形成してもよく、形成しなくてもよい。
Rx1、Rx2、及び、Rx3のアルキル基としては、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、又は、t-ブチル基等が好ましい。アルキル基の炭素数としては、1~10が好ましく、1~5がより好ましく、1~3が更に好ましい。Rx1、Rx2、及び、Rx3のアルキル基は、炭素間結合の一部が二重結合であってもよい。
Rx1、Rx2、及び、Rx3のシクロアルキル基は、単環でも多環でもよい。単環のシクロアルキル基としては、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基等が挙げられる。多環のシクロアルキル基としては、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及び、アダマンチル基等が挙げられる。
【0030】
Rx1、Rx2、及び、Rx3の2つが結合して形成する環は単環でも多環でもよい。単環の例としては、シクロペンチル環、シクロヘキシル環、シクロヘプチル環、及び、シクロオクタン環等の単環のシクロアルカン環が挙げられる。多環の例としては、ノルボルナン環、テトラシクロデカン環、テトラシクロドデカン環、及び、アダマンタン環等の多環のシクロアルキル環が挙げられる。中でも、シクロペンチル環、シクロヘキシル環、又は、アダマンタン環が好ましい。
また、Rx1、Rx2、及び、Rx3の2つが結合して形成する環としては、下記に示す環も好ましい。
【0031】
【0032】
以下に一般式(AI)で表される繰り返し単位に相当するモノマーの具体例を挙げる。下記の具体例は、一般式(AI)におけるXa1がメチル基である場合に相当するが、Xa1は、水素原子、ハロゲン原子、又は、1価の有機基に任意に置換できる。
【0033】
【0034】
樹脂Aは、酸分解性基を有する繰り返し単位として、米国特許出願公開2016/0070167A1号明細書の段落[0336]~[0369]に記載の繰り返し単位を有するのも好ましい。
【0035】
また、樹脂Aは、酸分解性基を有する繰り返し単位として、米国特許出願公開2016/0070167A1号明細書の段落[0363]~[0364]に記載された酸の作用により分解してアルコール性水酸基を生じる基を含む繰り返し単位を有していてもよい。
【0036】
樹脂Aに含まれる酸分解性基を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂Aの全繰り返し単位に対して、10~90モル%が好ましく、20~80モル%がより好ましく、30~70モル%が更に好ましい。
樹脂Aは、酸分解性基を有する繰り返し単位を1種単独で有していてもよく、2種以上を有していてもよい。2種以上有する場合は、その合計含有量が上記好適含有量の範囲内であるのが好ましい。
【0037】
(ラクトン構造、スルトン構造、及び、カーボネート構造からなる群から選択される少なくとも1種を有する繰り返し単位)
樹脂Aは、ラクトン構造、スルトン構造、及び、カーボネート構造からなる群から選択される少なくとも1種を有する繰り返し単位を有するのが好ましい。
【0038】
ラクトン構造又はスルトン構造としては、ラクトン環又はスルトン環を有していればよく、5~7員環のラクトン環を有するラクトン構造又は5~7員環のスルトン環を有するスルトン構造が好ましい。
ビシクロ構造又はスピロ構造を形成する形で5~7員環ラクトン環に他の環が縮環しているラクトン構造も好ましい。ビシクロ構造又はスピロ構造を形成する形で5~7員環スルトン環に他の環が縮環しているスルトン構造も好ましい。
【0039】
中でも、樹脂Aは、下記一般式(LC1-1)~(LC1-22)のいずれかで表されるラクトン構造、又は、下記一般式(SL1-1)~(SL1-3)のいずれかで表されるスルトン構造を有する繰り返し単位を有するのが好ましい。また、ラクトン構造又はスルトン構造が主鎖に直接結合していてもよい。
中でも、一般式(LC1-1)、一般式(LC1-4)、一般式(LC1-5)、一般式(LC1-8)、一般式(LC1-16)、一般式(LC1-21)、若しくは、一般式(LC1-22)で表されるラクトン構造、又は、一般式(SL1-1)で表されるスルトン構造が好ましい。
【0040】
【0041】
ラクトン構造又はスルトン構造は、置換基(Rb2)を有していても、有していなくてもよい。置換基(Rb2)としては、炭素数1~8のアルキル基、炭素数4~7のシクロアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、炭素数2~8のアルコキシカルボニル基、カルボキシ基、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、又は、酸分解性基等が好ましく、炭素数1~4のアルキル基、シアノ基、又は、酸分解性基がより好ましい。n2は、0~4の整数を表す。n2が2以上の場合、複数存在する置換基(Rb2)は、同一でも異なっていてもよい。また、複数存在する置換基(Rb2)同士が結合して環を形成してもよい。
【0042】
ラクトン構造又はスルトン構造を有する繰り返し単位としては、下記一般式(III)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0043】
【0044】
上記一般式(III)中、
Aは、エステル結合(-COO-で表される基)又はアミド結合(-CONH-で表される基)を表す。
【0045】
nは、-R0-Z-で表される構造の繰り返し数であり、0~5の整数を表し、0又は1であるのが好ましく、0であるのがより好ましい。nが0である場合、(-R0-Z-)nは、単結合となる。
【0046】
R0は、アルキレン基、シクロアルキレン基、又は、その組み合わせを表す。R0が複数存在する場合、複数存在するR0は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
R0のアルキレン基又はシクロアルキレン基は置換基を有してもよい。
【0047】
Zは、単結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、又は、ウレア結合を表す。Zが複数存在する場合、複数存在するZは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
中でもZは、エーテル結合又はエステル結合が好ましく、エステル結合がより好ましい。
【0048】
R8は、ラクトン構造又はスルトン構造を有する1価の有機基を表す。
中でも、一般式(LC1-1)~(LC1-22)で表される構造及び、一般式(SL1-1)~(SL1-3)で表される構造のいずれかにおいて、ラクトン構造又はスルトン構造を構成する炭素原子1つから、水素原子を1つ除いてなる基であるのが好ましい。なお、上記水素原子を1つ除かれる炭素原子は、置換基(Rb2)を構成する炭素原子ではないのが好ましい。
【0049】
R7は、水素原子、ハロゲン原子、又は、1価の有機基(好ましくはメチル基)を表す。
【0050】
以下にラクトン構造、及び、スルトン構造からなる群から選択される少なくとも1種を有する繰り返し単位に相当するモノマーを例示する。
下記の例示において、ビニル基に結合するメチル基は、水素原子、ハロゲン原子、又は1価の有機基に置き換えられてもよい。
【0051】
【0052】
【0053】
樹脂Aは、カーボネート構造を有する繰り返し単位を有していてもよい。カーボネート構造としては、環状炭酸エステル構造が好ましい。
環状炭酸エステル構造を有する繰り返し単位としては、下記一般式(A-1)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0054】
【0055】
一般式(A-1)中、RA
1は、水素原子、ハロゲン原子、又は、1価の有機基(好ましくはメチル基)を表す。
nは0以上の整数を表す。
RA
2は、置換基を表す。nが2以上の場合、複数存在するRA
2は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
Aは、単結合又は2価の連結基を表す。
Zは、式中の-O-CO-O-で表される基と共に単環又は多環を形成する原子団を表す。
【0056】
樹脂Aは、ラクトン構造、スルトン構造、及び、カーボネート構造からなる群から選択される少なくとも1種を有する繰り返し単位として、米国特許出願公開2016/0070167A1号明細書の段落[0370]~[0414]に記載の繰り返し単位を有するのも好ましい。
【0057】
樹脂Aがラクトン構造、スルトン構造、及び、カーボネート構造からなる群から選択される少なくとも1種を有する繰り返し単位を有する場合、樹脂Aに含まれるラクトン構造、スルトン構造、及び、カーボネート構造からなる群から選択される少なくとも1種を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂A中の全繰り返し単位に対して、5~70モル%が好ましく、10~65モル%がより好ましく、20~60モル%が更に好ましい。
樹脂Aは、ラクトン構造、スルトン構造、及び、カーボネート構造からなる群から選択される少なくとも1種を有する繰り返し単位を1種単独で有していてもよく、2種以上を有していてもよい。2種以上有する場合は、その合計含有量が上記好適含有量の範囲内であるのが好ましい。
【0058】
(極性基を有する繰り返し単位)
樹脂Aは、上述した繰り返し単位とは別に、極性基を有する繰り返し単位を有していてもよい。
極性基としては、水酸基、シアノ基、カルボキシ基、及び、フッ素化アルコール基等が挙げられる。
極性基を有する繰り返し単位としては、極性基で置換された脂環炭化水素構造を有する繰り返し単位が好ましい。また、極性基を有する繰り返し単位は、酸分解性基を有さないのが好ましい。極性基で置換された脂環炭化水素構造における、脂環炭化水素構造としては、アダマンチル基又はノルボルナン基が好ましい。
【0059】
以下に極性基を有する繰り返し単位に相当するモノマーの具体例を挙げるが、本発明は、これらの具体例に限定されない。
【0060】
【0061】
この他にも、極性基を有する繰り返し単位の具体例としては、米国特許出願公開2016/0070167A1号明細書の段落[0415]~[0433]に開示された繰り返し単位が挙げられる。
樹脂Aが極性基を有する繰り返し単位を有する場合、極性基を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂A中の全繰り返し単位に対して、5~40モル%が好ましく、5~30モル%がより好ましく、10~25モル%が更に好ましい。
樹脂Aは、極性基を有する繰り返し単位を、1種単独で有していてもよく、2種以上を有していてもよい。2種以上有する場合は、その合計含有量が上記好適含有量の範囲内であるのが好ましい。
【0062】
(酸分解性基及び極性基のいずれも有さない繰り返し単位)
樹脂Aは、上述した繰り返し単位とは別に、更に、酸分解性基及び極性基のいずれも有さない繰り返し単位を有していてもよい。酸分解性基及び極性基のいずれも有さない繰り返し単位は、脂環基等の脂環炭化水素構造を有するのが好ましい。酸分解性基及び極性基のいずれも有さない繰り返し単位としては、例えば、米国特許出願公開2016/0026083A1号明細書の段落[0236]~[0237]に記載された繰り返し単位が挙げられる。酸分解性基及び極性基のいずれも有さない繰り返し単位に相当するモノマーの好ましい例を以下に示す。
【0063】
【0064】
この他にも、酸分解性基及び極性基のいずれも有さない繰り返し単位の具体例としては、米国特許出願公開2016/0070167A1号明細書の段落[0433]に開示された繰り返し単位が挙げられる。
樹脂Aが酸分解性基及び極性基のいずれも有さない繰り返し単位を有する場合、酸分解性基及び極性基のいずれも有さない繰り返し単位の含有量は、樹脂A中の全繰り返し単位に対して、5~40モル%が好ましく、5~30モル%がより好ましく、5~25モル%が更に好ましい。
樹脂Aは、酸分解性基及び極性基のいずれも有さない繰り返し単位を1種単独で有していてもよく、2種以上を有していてもよい。2種以上有する場合は、その合計含有量が上記好適含有量の範囲内であるのが好ましい。
【0065】
樹脂Aは、上記の繰り返し構造単位以外に、ドライエッチング耐性、標準現像液適性、基板密着性、レジストプロファイル、又は、更にレジストの一般的な必要な特性である解像力、耐熱性、感度等を調節する目的で様々な繰り返し構造単位を有していてもよい。
このような繰り返し構造単位としては、所定の単量体に相当する繰り返し構造単位が挙げられるが、これらに限定されない。
【0066】
所定の単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド類、アリル化合物、ビニルエーテル類、及び、ビニルエステル類等から選ばれる付加重合性不飽和結合を1個有する化合物等が挙げられる。
その他にも、上記種々の繰り返し構造単位に相当する単量体と共重合可能である付加重合性の不飽和化合物を用いてもよい。
樹脂Aにおいて、各繰り返し構造単位の含有モル比は、種々の性能を調節するために適宜設定される。
【0067】
本発明の組成物がArF露光用であるとき、ArF光の透過性の観点から、樹脂Aは実質的には芳香族基を有さないのが好ましい。より具体的には、樹脂A中の全繰り返し単位に対して、芳香族基を有する繰り返し単位が5モル%以下であるのが好ましく、3モル%以下であるのがより好ましく、理想的には0モル%、すなわち芳香族基を有する繰り返し単位を有さないのが更に好ましい。また、樹脂Aは単環又は多環の脂環炭化水素構造を有するのが好ましい。
【0068】
樹脂Aは、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂であるのが好ましく、メタクリル酸エステル系樹脂であるのがより好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル系樹脂(又はメタクリル酸エステル系樹脂)は、樹脂Aの全繰り返し単位に対して、(メタ)アクリレート系繰り返し単位(又はメタクリレート系繰り返し単位)の含有量が80モル%以上であり、90モル%以上が好ましく、95モル%以上がより好ましく、99モル%以上が更に好ましい。
樹脂Aは、繰り返し単位のすべてが(メタ)アクリレート系繰り返し単位で構成されていてもよい。この場合、繰り返し単位のすべてがメタクリレート系繰り返し単位であってもよく、繰り返し単位のすべてがアクリレート系繰り返し単位であってもよく、繰り返し単位のすべてがメタクリレート系繰り返し単位とアクリレート系繰り返し単位との組み合わせであってもよい。中でも、アクリレート系繰り返し単位の含有量は、樹脂Aの全繰り返し単位に対して50モル%以下が好ましい。
【0069】
他にも、樹脂Aとしては、公知の樹脂を適宜使用できる。例えば、米国特許出願公開2016/0274458A1号明細書の段落[0055]~[0191]、米国特許出願公開2015/0004544A1号明細書の段落[0035]~[0085]、及び、米国特許出願公開2016/0147150A1号明細書の段落[0045]~[0090]に開示された公知の樹脂を樹脂Aとして好適に使用できる。
【0070】
本発明の組成物がKrF露光用、EB露光用、又は、EUV露光用であるとき、樹脂Aは芳香族炭化水素基を有する繰り返し単位を有するのが好ましく、樹脂Aがフェノール性水酸基を含む繰り返し単位を有するのがより好ましい。フェノール性水酸基を含む繰り返し単位としては、ヒドロキシスチレン系繰り返し単位、及び、ヒドロキシスチレン(メタ)アクリレート系繰り返し単位が挙げられる。
本発明の組成物がKrF露光用、EB露光用、又は、EUV露光用であるとき、樹脂Aは、フェノール性水酸基の水素原子が酸の作用により分解し脱離する基(脱離基)で保護された構造を有するのが好ましい。
この場合、樹脂Aに含まれる芳香族炭化水素基を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂A中の全繰り返し単位に対して、30~100モル%が好ましく、40~100モル%がより好ましく、50~100モル%が更に好ましい。
【0071】
樹脂Aの重量平均分子量は、1,000~200,000が好ましく、2,000~20,000がより好ましく、3,000~19,000が更に好ましい。分散度(Mw/Mn)は、通常1.00~3.00であり、1.00~2.60が好ましく、1.00~2.00がより好ましく、1.10~2.00が更に好ましい。
【0072】
樹脂Aは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
樹脂Aの組成物中の含有量は、組成物中の全固形分に対し、通常20質量%以上で、40質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、75質量%以上が更に好ましい。上限は特に制限されないが、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましい。
組成物が樹脂Aを2種以上使用する場合は、その合計含有量が上記好適含有量の範囲内であるのが好ましい。
なお、固形分とは、組成物中の溶剤を除いた成分を意図し、溶剤以外の成分であれば液状成分であっても固形分とみなす。
【0073】
<特定光酸発生剤>
本発明の組成物は、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(光酸発生剤)であって、発生する酸が後述する一般式(I)で表される酸である光酸発生剤を含む。
一般式(I)で表される酸を発生する光酸発生剤を、以下、特定光酸発生剤ともいう。
【0074】
特定光酸発生剤から発生する酸のpKaは、-3.00以上が好ましく、-2.50以上がより好ましく、-2.00以上が更に好ましい。
特定光酸発生剤から発生する酸のpKaの上限に特に制限はないが、2.00以下が好ましい。
特定光酸発生剤から発生する酸は、下記一般式(I)で表される化合物である。
【0075】
【0076】
一般式(I)中、Rfは、フルオロアルキル基を表す。
フルオロアルキル基は、置換基としてフッ素原子を1つ以上有するアルキル基であり、フッ素原子を1つ以上有する限り、上記アルキル基は、フッ素原子以外の置換基を有していてもよい。
Rfのフルオロアルキル基は、アルキル基が有する水素原子の30モル%以上がフッ素原子で置換されているのが好ましく、60モル%以上がフッ素原子で置換されているのがより好ましく、90モル%以上がフッ素原子で置換されているのが更に好ましい。中でも、Rfのフルオロアルキル基は、アルキル基が有する水素原子の全てがフッ素原子で置換されたパーフルオロアルキル基であるのが特に好ましい。
Rfのフルオロアルキル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、環状構造を有していてもよい。
Rfのフルオロアルキル基の炭素数は、1~10が好ましく、1~3がより好ましく、1が更に好ましい。
Rfのフルオロアルキル基が有するフッ素原子の数は、1~10が好ましい。
中でも、Rfは、トリフルオロメチル基が好ましい。
【0077】
一般式(I)中、tは、0又は1を表す。
一般式(I)中、Xは、-COO-、-O-、-CO-、-S(O)n-、-CS-、-NR3-、又は、これらの組み合わせからなる基を表す。
-NR3-におけるR3は、水素原子又は有機基(アルキル基が好ましい。炭素数1~3が好ましい)を表す。
-S(O)n-におけるnは、0~3の整数を表す。例えば、n=0の場合、-S(O)n-は-S-を表し、n=1の場合、-S(O)n-は-SO-を表し、n=2の場合、-S(O)n-は-SO2-を表し、n=3の場合、-S(O)n-は-SO3-を表す。
上記組み合わせからなる基としては、例えば、-NR3-CO-が挙げられる。
また、上記組み合わせからなる基は、-COO-及び-S(O)n-以外の基であるのが好ましい。
中でも、Xは、-COO-が好ましい。なお、-COO-の結合の向きはいずれでもよく、例えば、-COO-中のカルボニル基部分がR2と結合していてもよいし、-COO-中のエーテル基部分がR2と結合していてもよい。
また、tが1である場合、Xは、-S(O)n-又は-NR3-が好ましい。
【0078】
一般式(I)中、R1は、有機基を表す。
R1の有機基は、環状の基を有するのが好ましい。R1の有機基が環状の基を有する場合、R1は環状の基を一部分に含んでいてもよいし、R1が環状の基そのものであってもよい。
上記環状の基は、単環でも多環でもよい。上記環状の基の炭素数は、3~20が好ましく、5~15がより好ましく、6~10が更に好ましい。上記環状の基が有してもよい置換基が有する炭素原子の数は、上記環状の基の炭素数に含まない。上記環状の基は、芳香族性を有してもよく有していなくてもよく、有していないのが好ましい。
上記環状の基は、環状の有機基であるのが好ましく、脂環基等であるのがより好ましい。
上記環状の基としては、シクロヘキシル基及びアダマンチル基が好ましい。
また、R1はフッ素原子を有さないのが好ましい。
【0079】
R1は、例えば、下記一般式(II)で表される基が好ましい。
【0080】
【0081】
一般式(II)中、pは、0~10の整数を表し、qは、0~10の整数を表す。*は結合位置を表す。pは、0~2が好ましく、0又は1がより好ましい。qは、0~2が好ましく、0又は1がより好ましい。
【0082】
R4及びR5は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、又は、アルキル基を表し、水素原子又はアルキル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
R4及びR5が複数存在する場合、R4及びR5は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
R4及びR5で表されるアルキル基は、置換基(好ましくはフッ素原子以外の置換基)を有していてもよく、炭素数1~4が好ましい。
【0083】
Lは、2価の連結基を表す。Lが複数存在する場合、Lは、それぞれ同一でもよく異なっていてもよい。
2価の連結基としては、例えば、-COO-、-CONH-、-CO-、-O-、-S-、-SO-、-SO2-、アルキレン基(好ましくは炭素数1~6)、シクロアルキレン基(好ましくは炭素数3~15)、アルケニレン基(好ましくは炭素数2~6)、及び、これらの複数を組み合わせた2価の連結基等が挙げられる。
【0084】
Wは、環状構造を有する有機基を表す。Wは、環状の有機基そのものであるのが好ましい。
環状の有機基としては、例えば、脂環基、アリール基、及び、複素環基が挙げられる。
脂環基は、単環であってもよく、多環であってもよい。単環の脂環基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及び、シクロオクチル基等の単環のシクロアルキル基が挙げられる。多環の脂環基としては、例えば、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及び、アダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が挙げられる。
【0085】
アリール基は、単環であってもよく、多環であってもよい。このアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、及び、アントリル基が挙げられる。
複素環基は、単環であってもよく、多環であってもよい。また、複素環基は、芳香族性を有していてもよいし、芳香族性を有していなくてもよい。芳香族性を有している複素環基としては、例えば、ピロール環基、フラン環基、チオフェン環基、ベンゾフラン環基、ベンゾチオフェン環基、ジベンゾフラン環基、ジベンゾチオフェン環基、及び、ピリジン環基が挙げられる。芳香族性を有していない複素環基としては、例えば、テトラヒドロピラン環基、ラクトン環基、スルトン環基、及び、デカヒドロイソキノリン環基が挙げられる。
【0086】
上記環状の有機基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、アルキル基(直鎖状及び分岐鎖状のいずれであってもよく、炭素数1~12が好ましい)、シクロアルキル基(単環、多環(スピロ環を含む)のいずれであってもよく、炭素数3~20が好ましい)、アリール基(炭素数6~14が好ましい)、水酸基、及び、アルコキシ基が挙げられる。また置換基が、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレイド基、チオエーテル基、スルホンアミド基、及び/又は、スルホン酸エステル基が挙げられる。
なお、環状の有機基を構成する炭素(環形成に寄与する炭素)は、一つ以上がカルボニル炭素で置換されていてもよいし、置換されていなくてもよい。
【0087】
一般式(I)中、R2は、有機基を表す。
R2の有機基としては、アルキル基、アルケニル基、脂環基、アリール基、及び、複素環基が挙げられる。
上記有機基としてのアルキル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよく、炭素数としては、1~10が好ましく、1~5がより好ましい。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、又は、t-ブチル基が好ましい。
上記有機基としてのアルケニル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよく、炭素数としては、2~10が好ましく、2~5がより好ましい。アルケニル基としては、例えば、上記アルキル基の例として挙げた基において、1つ以上のエチレン基(又はエチル基)が、ビニレン基(又はビニル基)に置き換わった基が好ましい。
上記有機基としての脂環基、アリール基、及び、複素環基は、例えば、上述のWにおける脂環基、アリール基、及び、複素環基が同様に好ましい。
また、R2はフッ素原子を有さないのが好ましい。
【0088】
特定光酸発生剤は、発生する酸が上述の要件を満たせば特に制限はなく、オニウム塩化合物でも双性イオンでもよい。
中でも、特定光酸発生剤は、アニオンとカチオンとを有するオニウム塩化合物であるのが好ましい。
特定光酸発生剤は、一般式(ZaI)で表される化合物(化合物(ZaI))又は一般式(ZaII)で表される化合物(化合物(ZaII))が好ましい。
【0089】
【0090】
一般式(ZaI)におけるRf、R1、R2、t、及び、Xは、上述の一般式(I)におけるRf、R1、R2、t、及び、Xと、それぞれ同義である。
【0091】
上記一般式(ZaI)において、
R201、R202、及び、R203は、それぞれ独立に、有機基を表す。
R201、R202、及び、R203としての有機基の炭素数は、通常1~30であり、1~20が好ましい。また、R201~R203のうち2つが結合して環構造を形成してもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル基、アミド基、又はカルボニル基を含んでいてもよい。R201~R203の内の2つが結合して形成する基としては、例えば、アルキレン基(例えば、ブチレン基、ペンチレン基)、及び、-CH2-CH2-O-CH2-CH2-が挙げられる。
【0092】
一般式(ZaI)におけるカチオンの好適な態様としては、後述する、化合物(ZaI-1)、化合物(ZaI-2)、一般式(ZaI-3b)で表される化合物(化合物(ZaI-3b))、及び、一般式(ZaI-4b)で表される化合物(化合物(ZaI-4b))における対応する基が挙げられる。
なお、特定光酸発生剤は、一般式(ZaI)で表される構造を複数有する化合物であってもよい。例えば、一般式(ZaI)で表される化合物のR201~R203の少なくとも1つと、一般式(ZaI)で表されるもうひとつの化合物のR201~R203の少なくとも1つとが、単結合又は連結基を介して結合した構造を有する化合物であってもよい。
【0093】
まず、化合物(ZaI-1)について説明する。
化合物(ZaI-1)は、上記一般式(ZaI)のR201~R203の少なくとも1つがアリール基である、アリールスルホニウム化合物、すなわち、アリールスルホニウムをカチオンとする化合物である。
アリールスルホニウム化合物は、R201~R203の全てがアリール基でもよいし、R201~R203の一部がアリール基であり、残りがアルキル基又はシクロアルキル基であってもよい。
また、R201~R203のうちの1つがアリール基であり、R201~R203のうちの残りの2つが結合して環構造を形成してもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル基、アミド基、又はカルボニル基を含んでいてもよい。R201~R203のうちの2つが結合して形成する基としては、例えば、1つ以上のメチレン基が酸素原子、硫黄原子、エステル基、アミド基、及び/又は、カルボニル基で置換されていてもよいアルキレン基(例えば、ブチレン基、ペンチレン基、又は、-CH2-CH2-O-CH2-CH2-)が挙げられる。
アリールスルホニウム化合物としては、例えば、トリアリールスルホニウム化合物、ジアリールアルキルスルホニウム化合物、アリールジアルキルスルホニウム化合物、ジアリールシクロアルキルスルホニウム化合物、及び、アリールジシクロアルキルスルホニウム化合物が挙げられる。
【0094】
アリールスルホニウム化合物に含まれるアリール基としては、フェニル基又はナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。アリール基は、酸素原子、窒素原子、又は、硫黄原子等を有するヘテロ環構造を有するアリール基であってもよい。ヘテロ環構造としては、ピロール残基、フラン残基、チオフェン残基、インドール残基、ベンゾフラン残基、及び、ベンゾチオフェン残基等が挙げられる。アリールスルホニウム化合物が2つ以上のアリール基を有する場合に、2つ以上あるアリール基は同一であっても異なっていてもよい。
アリールスルホニウム化合物が必要に応じて有しているアルキル基又はシクロアルキル基は、炭素数1~15の直鎖状アルキル基、炭素数3~15の分岐鎖状アルキル基、又は、炭素数3~15のシクロアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、及び、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0095】
R201~R203のアリール基、アルキル基、及び、シクロアルキル基が有していてもよい置換基としては、それぞれ独立に、アルキル基(例えば炭素数1~15)、シクロアルキル基(例えば炭素数3~15)、アリール基(例えば炭素数6~14)、アルコキシ基(例えば炭素数1~15)、シクロアルキルアルコキシ基(例えば炭素数1~15)、ハロゲン原子、水酸基、及び、フェニルチオ基が挙げられる。
上記置換基は可能な場合さらに置換基を有していてもよく、例えば、上記アルキル基が置換基としてハロゲン原子を有して、トリフルオロメチル基などのハロゲン化アルキル基となっていてもよい。
【0096】
次に、化合物(ZaI-2)について説明する。
化合物(ZaI-2)は、式(ZaI)におけるR201~R203が、それぞれ独立に、芳香環を有さない有機基を表す化合物である。ここで芳香環とは、ヘテロ原子を含む芳香族環も包含する。
R201~R203としての芳香環を有さない有機基は、一般的に炭素数1~30であり、炭素数1~20が好ましい。
R201~R203は、それぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリル基、又は、ビニル基が好ましく、直鎖状又は分岐鎖状の2-オキソアルキル基、2-オキソシクロアルキル基、又は、アルコキシカルボニルメチル基がより好ましく、直鎖状又は分岐鎖状の2-オキソアルキル基が更に好ましい。
【0097】
R201~R203のアルキル基及びシクロアルキル基としては、例えば、炭素数1~10の直鎖状アルキル基又は炭素数3~10の分岐鎖状アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、及び、ペンチル基)、並びに、炭素数3~10のシクロアルキル基(例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、及び、ノルボルニル基)が挙げられる。
R201~R203は、ハロゲン原子、アルコキシ基(例えば炭素数1~5)、水酸基、シアノ基、又は、ニトロ基によって更に置換されていてもよい。
【0098】
次に、化合物(ZaI-3b)について説明する。
化合物(ZaI-3b)は、下記一般式(ZaI-3b)で表され、フェナシルスルフォニウム塩構造を有する化合物である。
【0099】
【0100】
一般式(ZaI-3b)中、
R1c~R5cは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、シクロアルキルカルボニルオキシ基、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アルキルチオ基、又は、アリールチオ基を表す。
R6c及びR7cは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基(t-ブチル基等)、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、又は、アリール基を表す。
Rx及びRyは、それぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、2-オキソアルキル基、2-オキソシクロアルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基、アリル基、又は、ビニル基を表す。
【0101】
R1c~R5c中のいずれか2つ以上、R5cとR6c、R6cとR7c、R5cとRx、及び、RxとRyは、それぞれ結合して環を形成してもよく、この環は、それぞれ独立に酸素原子、硫黄原子、ケトン基、エステル結合、又は、アミド結合を含んでいてもよい。
上記環としては、芳香族又は非芳香族の炭化水素環、芳香族又は非芳香族のヘテロ環、及び、これらの環が2つ以上組み合わされてなる多環縮合環が挙げられる。環としては、3~10員環が挙げられ、4~8員環が好ましく、5又は6員環がより好ましい。
【0102】
R1c~R5c中のいずれか2つ以上、R6cとR7c、及び、RxとRyが結合して形成する基としては、ブチレン基及びペンチレン基等のアルキレン基が挙げられる。このアルキレン基中のメチレン基が酸素原子等のヘテロ原子で置換されていてもよい。
R5cとR6c、及び、R5cとRxが結合して形成する基としては、単結合又はアルキレン基が好ましい。アルキレン基としては、メチレン基及びエチレン基等が挙げられる。
Zac-は、一般式(ZaI)中の「R2-X-(CH2)t-C(Rf)(R1)-SO3
-」と同義である。
【0103】
次に、化合物(ZaI-4b)について説明する。
化合物(ZaI-4b)は、下記一般式(ZaI-4b)で表される化合物である。
【0104】
【0105】
一般式(ZaI-4b)中、
lは0~2の整数を表す。
rは0~8の整数を表す。
R13は、水素原子、フッ素原子、水酸基、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、又は、シクロアルキル基を有する基(シクロアルキル基そのものであってもよく、シクロアルキル基を一部に含む基であってもよい)を表す。これらの基は置換基を有してもよい。
R14は、水酸基、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アルキルスルホニル基、シクロアルキルスルホニル基、又は、シクロアルキル基を有する基(シクロアルキル基そのものであってもよく、シクロアルキル基を一部に含む基であってもよい)を表す。これらの基は置換基を有してもよい。R14は、複数存在する場合はそれぞれ独立して、水酸基等の上記基を表す。
R15は、それぞれ独立して、アルキル基、シクロアルキル基、又は、ナフチル基を表す。これらの基は置換基を有してもよい。2つのR15が互いに結合して環を形成してもよい。2つのR15が互いに結合して環を形成するとき、環骨格内に、酸素原子、又は、窒素原子等のヘテロ原子を含んでもよい。一態様において、2つのR15がアルキレン基であり、互いに結合して環構造を形成するのが好ましい。
Za-は、一般式(ZaI)中の「R2-X-(CH2)t-C(Rf)(R1)-SO3
-」と同義である。
【0106】
一般式(ZaI-4b)において、R13、R14、及び、R15のアルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状である。アルキル基の炭素数は、1~10が好ましい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-ブチル基、又は、t-ブチル基等がより好ましい。
【0107】
次に、一般式(ZaII)について説明する。
一般式(ZaII)中、R204及びR205は、それぞれ独立に、アリール基、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
R204及びR205のアリール基としてはフェニル基、又は、ナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。R204及びR205のアリール基は、酸素原子、窒素原子、又は、硫黄原子等を有するヘテロ環を有するアリール基であってもよい。ヘテロ環を有するアリール基の骨格としては、例えば、ピロール、フラン、チオフェン、インドール、ベンゾフラン、及び、ベンゾチオフェン等が挙げられる。
R204及びR205のアルキル基及びシクロアルキル基としては、炭素数1~10の直鎖状アルキル基又は炭素数3~10の分岐鎖状アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、又は、ペンチル基)、又は、炭素数3~10のシクロアルキル基(例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、又は、ノルボルニル基)が好ましい。
【0108】
R204及びR205のアリール基、アルキル基、及び、シクロアルキル基は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい。R204及びR205のアリール基、アルキル基、及び、シクロアルキル基が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基(例えば炭素数1~15)、シクロアルキル基(例えば炭素数3~15)、アリール基(例えば炭素数6~15)、アルコキシ基(例えば炭素数1~15)、ハロゲン原子、水酸基、及び、フェニルチオ基等が挙げられる。
一般式(ZaII)中の「R2-X-(CH2)t-C(Rf)(R1)-SO3
-」はアニオンであり、一般式(ZaI)中の「R2-X-(CH2)t-C(Rf)(R1)-SO3
-」と同義である。
【0109】
以下に、特定光酸発生剤の好ましい例を示す。下記例示中、アニオンとカチオンとの組み合わせは交換して使用してもよい。
【0110】
【0111】
【0112】
特定光酸発生剤は、低分子化合物の形態であってもよく、重合体の一部に組み込まれた形態であってもよい。また、低分子化合物の形態と重合体の一部に組み込まれた形態を併用してもよい。
特定光酸発生剤は、低分子化合物の形態であるのが好ましい。
特定光酸発生剤が、低分子化合物の形態である場合、分子量は3,000以下が好ましく、2,000以下がより好ましく、1,000以下が更に好ましい。
【0113】
特定光酸発生剤の含有量は、組成物の全固形分に対して、0.1~35質量%が好ましく、0.5~30質量%がより好ましく、10~25質量%が更に好ましい。
特定光酸発生剤の含有量は、組成物の固形分1gに対して、0.01~1.00mmolが好ましく、0.05~0.70mmolがより好ましく、0.10~0.40mmolが更に好ましい。
特定光酸発生剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を使用してもよい。2種以上使用する場合は、その合計含有量が、上記好適含有量の範囲内であるのが好ましい。
【0114】
<酸拡散制御剤>
本発明の組成物は、酸拡散制御剤を含むのが好ましい。酸拡散制御剤は、露光時に光酸発生剤(特定光酸発生剤を含む)等から発生する酸をトラップし、余分な発生酸による、未露光部における酸分解性樹脂の反応を抑制するクエンチャーとして作用する。
酸拡散制御剤としては、例えば、塩基性化合物(DA)、活性光線又は放射線の照射により塩基性が低下又は消失する塩基性化合物(DB)、及び、窒素原子を有し、酸の作用により脱離する基を有する低分子化合物(DD)が挙げられる。本発明の組成物においては、公知の酸拡散制御剤を適宜使用できる。例えば、米国特許出願公開2016/0070167A1号明細書の段落[0627]~[0664]、米国特許出願公開2015/0004544A1号明細書の段落[0095]~[0187]、米国特許出願公開2016/0237190A1号明細書の段落[0403]~[0423]、米国特許出願公開2016/0274458A1号明細書の段落[0259]~[0328]に開示された公知の化合物を酸拡散制御剤として好適に使用できる。
【0115】
(塩基性化合物(DA))
塩基性化合物(DA)としては、好ましくは、下記式(A)~(E)で示される構造を有する化合物を挙げることができる。
【0116】
【0117】
一般式(A)及び(E)中、
R200、R201、及び、R202は、同一でも異なってもよく、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1~20)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3~20)、又は、アリール基(炭素数6~20)を表す。R201とR202は、互いに結合して環を形成してもよい。
R203、R204、R205、及び、R206は、同一でも異なってもよく、それぞれ独立に、炭素数1~20個のアルキル基を表す。
【0118】
一般式(A)及び(E)中のアルキル基は、置換基を有していても無置換であってもよい。
上記アルキル基について、置換基を有するアルキル基としては、炭素数1~20のアミノアルキル基、炭素数1~20のヒドロキシアルキル基、又は炭素数1~20のシアノアルキル基が好ましい。
一般式(A)及び(E)中のアルキル基は、無置換であることがより好ましい。
【0119】
塩基性化合物(DA)としては、グアニジン、アミノピロリジン、ピラゾール、ピラゾリン、ピペラジン、アミノモルホリン、アミノアルキルモルフォリン、又は、ピペリジン等が好ましく、イミダゾール構造、ジアザビシクロ構造、オニウムヒドロキシド構造、オニウムカルボキシレート構造、トリアルキルアミン構造、アニリン構造若しくはピリジン構造を有する化合物、水酸基及び/若しくはエーテル結合を有するアルキルアミン誘導体、又は水酸基及び/若しくはエーテル結合を有するアニリン誘導体等がより好ましい。
【0120】
(化合物(DB))
活性光線又は放射線の照射により塩基性が低下又は消失する塩基性化合物(DB)(以下、「化合物(DB)」ともいう。)は、プロトンアクセプター性官能基を有し、かつ、活性光線又は放射線の照射により分解して、プロトンアクセプター性が低下、消失、又はプロトンアクセプター性から酸性に変化する化合物である。
【0121】
プロトンアクセプター性官能基とは、プロトンと静電的に相互作用し得る基又は電子を有する官能基であって、例えば、環状ポリエーテル等のマクロサイクリック構造を有する官能基や、π共役に寄与しない非共有電子対をもった窒素原子を有する官能基を意味する。π共役に寄与しない非共有電子対を有する窒素原子とは、例えば、下記式に示す部分構造を有する窒素原子である。
【0122】
【0123】
プロトンアクセプター性官能基の好ましい部分構造として、例えば、クラウンエーテル、アザクラウンエーテル、1~3級アミン、ピリジン、イミダゾール、及び、ピラジン構造が挙げられる。
【0124】
化合物(DB)は、活性光線又は放射線の照射により分解してプロトンアクセプター性が低下若しくは消失し、又はプロトンアクセプター性から酸性に変化した化合物を発生する。ここでプロトンアクセプター性の低下若しくは消失、又はプロトンアクセプター性から酸性への変化とは、プロトンアクセプター性官能基にプロトンが付加することに起因するプロトンアクセプター性の変化であり、具体的には、プロトンアクセプター性官能基を有する化合物(DB)とプロトンとからプロトン付加体が生成するとき、その化学平衡における平衡定数が減少することを意味する。
プロトンアクセプター性は、pH測定を行うことによって確認することができる。
【0125】
活性光線又は放射線の照射により化合物(DB)が分解して発生する化合物の酸解離定数pKaは、pKa<-1が好ましく、-13<pKa<-1がより好ましく、-13<pKa<-3が更に好ましい。
【0126】
化合物(DB)は、一般式(c-1)で表される化合物であるのが好ましい。
R-B-X-A-W1-N--W2-Rf [C+] (c-1)
【0127】
一般式(c-1)中、
W1及びW2は、それぞれ独立に、-SO2-又は-CO-を表す。
Rfは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、又は、置換基を有していてもよいアリール基を表す。
Aは、単結合又は2価の連結基を表す。
Xは、単結合、-SO2-、又は、-CO-を表す。
Bは、単結合、酸素原子、又は、-N(Rx)Ry-を表す。
Rxは、水素原子又は有機基を表す。
Ryは、単結合又は2価の有機基を表す。
Rは、プロトンアクセプター性官能基を有する1価の有機基を表す。
Rxは、Ryと結合して環を形成していてもよく、Rと結合して環を形成していてもよい。
[C+]は、カウンターカチオンを表す。
【0128】
W1及びW2は、少なくとも一方が-SO2-であるのが好ましく、双方が-SO2-であるのがより好ましい。
【0129】
Rfは、炭素数1~6のフッ素原子を有してもよいアルキル基であるのが好ましく、炭素数1~6のパーフルオロアルキル基であるのがより好ましく、炭素数1~3のパーフルオロアルキル基であるのが更に好ましい。
【0130】
Aにおける2価の連結基としては、炭素数2~12の2価の連結基が好ましく、例えば、アルキレン基、及び、フェニレン基等が挙げられる。中でも、少なくとも1つのフッ素原子を有するアルキレン基が好ましく、炭素数は2~6が好ましく、2~4がより好ましい。アルキレン鎖中に酸素原子、又は硫黄原子等の連結基を有していてもよい。アルキレン基は、水素原子の数の30~100%がフッ素原子で置換されたアルキレン基が好ましく、Q部位と結合した炭素原子がフッ素原子を有するのがより好ましい。中でも、Aにおける2価の連結基はパーフルオロアルキレン基が好ましく、パーフルオロエチレン基、パーフルオロプロピレン基、又は、パーフルオロブチレン基がより好ましい。
【0131】
Rxにおける1価の有機基としては、炭素数2~30が好ましく、例えば、アルキル基、環内に酸素原子を有していてもよいシクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、及び、アルケニル基等が挙げられる。
Rxにおけるアルキル基としては、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数1~20の直鎖及び分岐アルキル基であり、アルキル鎖中に酸素原子、硫黄原子、及び/又は、窒素原子を有していてもよい。
なお、置換基を有するアルキル基として、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基にシクロアルキル基が置換した基(例えば、アダマンチルメチル基、アダマンチルエチル基、シクロヘキシルエチル基、及び、カンファー残基等)が挙げられる。
Rxにおけるシクロアルキル基としては、置換基を有していてもよく、炭素数3~20のシクロアルキル基が好ましい。また、シクロアルキル基の環内に酸素原子を有していてもよい。
Rxにおけるアリール基としては、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数6~14のアリール基である。
Rxにおけるアラルキル基としては、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数7~20のアラルキル基が挙げられる。
Rxにおけるアルケニル基としては、置換基を有していてもよく、例えば、Rxとして挙げたアルキル基の任意の位置に2重結合を有する基が挙げられる。
【0132】
Bが-N(Rx)Ry-を表す場合、Ryにおける2価の有機基としては、アルキレン基が好ましい。また、この場合、RxとRyとが互いに結合して形成し得る環としては、例えば、窒素原子を含む5~8員の環、特に好ましくは6員の環が挙げられる。環が含む窒素原子は、-N(Rx)Ry-においてXと直接結合する窒素原子以外の窒素原子であってもよい。
【0133】
Bが-N(Rx)Ry-を表す場合、RとRxとが互いに結合して環を形成しているのが好ましい。環を形成すれば、安定性が向上し、これを用いた組成物の保存安定性が向上する。環を形成する炭素数は4~20が好ましく、単環でも多環でもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、及び/又は、窒素原子を含んでいてもよい。環が含む窒素原子は、-N(Rx)Ry-においてXと直接結合する窒素原子以外の窒素原子であってもよい。
【0134】
単環としては、窒素原子を含む4員環、5員環、6員環、7員環、及び、8員環等が挙げられる。このような環構造としては、例えば、ピペラジン環及びピペリジン環が挙げられる。多環としては、2又は3以上の単環式構造の組み合わせから成る構造が挙げられる。単環及び多環のそれぞれは、置換基を有していてもよく、例えば、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、カルボキシ基、カルボニル基、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3~10)、アリール基(好ましくは炭素数6~14)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~10)、アシル基(好ましくは炭素数2~15)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2~15)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2~15)、又は、アミノアシル基(好ましくは炭素数2~20)等が好ましい。これらの置換基は、可能な場合は更に置換基を有していてもよい。アリール基、及び、シクロアルキル基が更に置換基を有する場合の例としては、アルキル基(好ましくは炭素数1~15)が挙げられる。アミノアシル基が更に有する置換基の例としては、アルキル基(好ましくは炭素数1~15)が挙げられる。
【0135】
Rにおけるプロトンアクセプター性官能基としては、上記の通りであり、部分構造として、例えば、クラウンエーテル、1~3級アミン、及び、含窒素ヘテロ環(ピリジン、イミダゾール、及び、ピラジン等)の構造を有するのが好ましい。
なお、プロトンアクセプター性官能基としては、窒素原子を有する官能基が好ましく、1~3級アミノ基を有する基、又は、含窒素ヘテロ環基がより好ましい。これら構造においては、構造中に含まれる窒素原子に隣接する原子の全てが、炭素原子又は水素原子であるのが好ましい。また、窒素原子に対して、電子求引性の官能基(カルボニル基、スルホニル基、シアノ基、及び、ハロゲン原子等)が直結していないのが好ましい。
このようなプロトンアクセプター性官能基を含む1価の有機基(基R)における一価の有機基としては、好ましい炭素数は2~30であり、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、及び、アルケニル基等を挙げられ、各基は置換基を有していてもよい。
【0136】
Rにおけるプロトンアクセプター性官能基を含む、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、及び、アルケニル基における、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、及び、アルケニル基は、それぞれ、Rxとして挙げたアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、及び、アルケニル基と同様の基が挙げられる。
【0137】
上記各基が有してもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシ基、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3~10。一部がヘテロ原子又はヘテロ原子を有する基(エステル基等)で置換されていてもよい)、アリール基(好ましくは炭素数6~14)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~10)、アシル基(好ましくは炭素数2~20)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2~10)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2~20)、及び、アミノアシル基(好ましくは炭素数2~20)等が挙げられる。アリール基及びシクロアルキル基等における環状基が有する置換基としては、例えば、アルキル基(好ましくは炭素数1~20)が挙げられる。アミノアシル基が有する置換基としては、例えば、1又は2のアルキル基(好ましくは炭素数1~20)が挙げられる。
【0138】
[C+]は、カウンターカチオンとしては、スルホニウムカチオン又はヨードニウムカチオンが好ましい。スルホニウムカチオン及びヨードニウムカチオンとしては、例えば、特定光酸発生剤が有してもよいカチオンにおけるスルホニウムカチオン及びヨードニウムカチオン(より具体的には、一般式(ZaI)で表される化合物におけるカチオン、及び、一般式(ZaII)で表される化合物におけるカチオン等)が同様に使用できる。
【0139】
(化合物(DC))
本発明の組成物では、光酸発生剤に対して相対的に弱酸となるオニウム塩(DC)(以下、「化合物(DC)」ともいう。)を酸拡散制御剤として使用できる。
光酸発生剤と、酸発生剤から生じた酸に対して相対的に弱酸である酸を発生するオニウム塩とを混合して用いた場合に、活性光線性又は放射線の照射により光酸発生剤から生じた酸が未反応の弱酸アニオンを有するオニウム塩と衝突すると、塩交換により弱酸を放出して強酸アニオンを有するオニウム塩を生じる。この過程で強酸がより触媒能の低い弱酸に交換されるため、見かけ上、酸が失活するため酸拡散の制御できる。
【0140】
酸発生剤に対して相対的に弱酸となるオニウム塩としては、下記一般式(d1-1)~(d1-3)で表される化合物が好ましい。
【0141】
【0142】
式中、一般式(d1-1)~(d1-3)R51は置換基を有していてもよい炭化水素基(アリール基が好ましい。置換基としては水酸基が好ましい)である。Z2cは置換基を有していてもよい炭素数1~30の炭化水素基(ただし、Sに隣接する炭素は、置換基として、フッ素原子及び/又はフルオロアルキル基を有さない)である。R52は有機基(アルキル基等)であり、Y3は、-SO2-、直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキレン基、又は、アリーレン基であり、Y4は、-CO-又は-SO2-であり、Rfはフッ素原子を有する炭化水素基(フルオロアルキル基等)である。M+はそれぞれ独立に、アンモニウムカチオン、スルホニウムカチオン又はヨードニウムカチオンである。
【0143】
M+として表されるスルホニウムカチオン又はヨードニウムカチオンの好ましい例としては、一般式(ZaI)で例示したスルホニウムカチオン及び一般式(ZaII)で例示したヨードニウムカチオンが挙げられる。
【0144】
化合物(DC)は、カチオン部位とアニオン部位を同一分子内に有し、かつ、カチオン部位とアニオン部位が共有結合により連結している化合物(以下、「化合物(DCA)」ともいう。)であってもよい。
化合物(DCA)としては、下記一般式(C-1)~(C-3)のいずれかで表される化合物であることが好ましい。
【0145】
【0146】
一般式(C-1)~(C-3)中、
R1、R2、及びR3は、各々独立に炭素数1以上の置換基を表す。
L1は、カチオン部位とアニオン部位とを連結する2価の連結基又は単結合を表す。
-X-は、-COO-、-SO3
-、-SO2
-、及び、-N--R4からなる群から選択されるアニオン部位を表す。R4は、隣接するN原子との連結部位に、カルボニル基(-CO-)、スルホニル基(-SO2-)、及びスルフィニル基(-SO-)のうち少なくとも1つを有する1価の置換基を表す。
R1、R2、R3、R4、及び、L1は、互いに結合して環構造を形成してもよい。また、一般式(C-3)において、R1~R3のうち2つを合わせて1つの2価の置換基を表し、N原子と2重結合により結合していてもよい。
【0147】
R1~R3における炭素数1以上の置換基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルオキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、シクロアルキルアミノカルボニル基、及び、アリールアミノカルボニル基が挙げられる。中でも、アルキル基、シクロアルキル基、又は、アリール基が好ましい。
【0148】
2価の連結基としてのL1は、直鎖若しくは分岐鎖状アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、ウレア結合、及び、これらの2種以上を組み合わせてなる基等が挙げられる。中でも、L1は、アルキレン基、アリーレン基、エーテル結合、エステル結合、又は、これらの2種以上を組み合わせてなる基が好ましい。
【0149】
(化合物(DD))
窒素原子を有し、酸の作用により脱離する基を有する低分子化合物(DD)(以下、「化合物(DD)」ともいう。)は、酸の作用により脱離する基を窒素原子上に有するアミン誘導体であるのが好ましい。
酸の作用により脱離する基としては、アセタール基、カルボネート基、カルバメート基、3級エステル基、3級水酸基、又はヘミアミナールエーテル基が好ましく、カルバメート基、又は、ヘミアミナールエーテル基がより好ましい。
化合物(DD)の分子量は、100~1000が好ましく、100~700がより好ましく、100~500が更に好ましい。
化合物(DD)は、窒素原子上に保護基を有するカルバメート基を有してもよい。カルバメート基を構成する保護基としては、下記一般式(d-1)で表すことができる。
【0150】
【0151】
一般式(d-1)において、
Rbは、各々独立に、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1~10)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3~30)、アリール基(好ましくは炭素数3~30)、アラルキル基(好ましくは炭素数1~10)、又は、アルコキシアルキル基(好ましくは炭素数1~10)を表す。Rbは相互に連結して環を形成していてもよい。
Rbが示すアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基は、それぞれ独立にヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、ピロリジノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、オキソ基等の官能基、アルコキシ基、又は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。Rbが示すアルコキシアルキル基についても同様である。
【0152】
Rbとしては、直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、又は、アリール基が好ましく、直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又はシクロアルキル基がより好ましい。
2つのRbが相互に連結して形成する環としては、脂環式炭化水素環、芳香族炭化水素環、複素環式炭化水素環、及び、その誘導体等が挙げられる。
一般式(d-1)で表される基の具体的な構造としては、米国特許公報US2012/0135348A1号明細書の段落[0466]に開示された構造を挙げることができるが、これに限定されない。
【0153】
化合物(DD)は、下記一般式(6)で表される化合物であるのが好ましい。
【0154】
【0155】
一般式(6)において、
lは0~2の整数を表し、mは1~3の整数を表し、l+m=3を満たす。
Raは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又は、アラルキル基を表す。lが2のとき、2つのRaは同じでも異なっていてもよく、2つのRaは相互に連結して式中の窒素原子と共に複素環を形成していてもよい。この複素環には式中の窒素原子以外のヘテロ原子を含んでいてもよい。
Rbは、上記一般式(d-1)におけるRbと同義であり、好ましい例も同様である。
一般式(6)において、Raとしてのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基は、それぞれ独立に、Rbとしてのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及び、アラルキル基が置換されていてもよい基として前述した基と同様な基で置換されていてもよい。
【0156】
上記Raのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及び、アラルキル基(これらの基は、上記基で置換されていてもよい)の具体例としては、Rbについて前述した具体例と同様な基が挙げられる。
本発明における特に好ましい化合物(DD)の具体的な構造としては、例えば、米国特許出願公開2012/0135348A1号明細書の段落[0475]に開示された化合物が挙げられる。
【0157】
(化合物(DE))
カチオンに窒素原子を有するオニウム塩化合物(DE)(以下、「化合物(DE)」ともいう。)は、カチオンに窒素原子を含む塩基性部位を有する化合物であるのが好ましい。塩基性部位は、アミノ基であるのが好ましく、脂肪族アミノ基であるのがより好ましい。塩基性部位中の窒素原子に隣接する原子の全てが、水素原子又は炭素原子であるのが更に好ましい。また、塩基性向上の観点から、窒素原子に対して、電子求引性の官能基(カルボニル基、スルホニル基、シアノ基、及び、ハロゲン原子など)が直結していないのが好ましい。
化合物(DE)の好ましい具体的な化合物としては、例えば、米国特許出願公開2015/0309408A1号明細書の段落[0203]に開示された化合物を挙げられる。
【0158】
酸拡散制御剤の好ましい例を以下に示す。
【0159】
【0160】
【0161】
組成物が酸拡散制御剤を含む場合、酸拡散制御剤の含有量は、組成物の全固形分に対して、0.1~12質量%が好ましく、0.2~10質量%がより好ましく、0.3~8質量%が更に好ましい。
組成物が酸拡散制御剤を含む場合、酸拡散制御剤の含有量は、組成物の固形分1gに対して、0.01~1.00mmolが好ましく、0.02~0.30mmolがより好ましく、0.03~0.20mmolが更に好ましい。
【0162】
<疎水性樹脂>
本発明の組成物は、疎水性樹脂を含んでいてもよい。なお、疎水性樹脂は、樹脂Aとは異なる樹脂であるのが好ましい。
本発明の組成物が、疎水性樹脂を含む場合、レジスト膜(感活性光線性又は感放射線性膜)の表面における静的、及び/又は、動的な接触角を制御しやすい。これにより、現像特性の改善、アウトガスの抑制、液浸露光における液浸液追随性の向上、及び、液浸欠陥の低減等が可能となる。
疎水性樹脂は、レジスト膜の表面に偏在するように設計されるのが好ましいが、界面活性剤とは異なり、必ずしも分子内に親水基を有する必要はなく、極性物質及び非極性物質を均一に混合するのに寄与しなくてもよい。
【0163】
疎水性樹脂は、膜表層への偏在化の観点から、“フッ素原子”、“ケイ素原子”、及び“樹脂の側鎖部分に含まれたCH3部分構造”からなる群から選択される少なくとも1種を有する繰り返し単位を有する樹脂であるのが好ましい。
疎水性樹脂が、フッ素原子及び/又はケイ素原子を含む場合、疎水性樹脂における上記フッ素原子及び/又はケイ素原子は、樹脂の主鎖中に含まれていてもよく、側鎖中に含まれていてもよい。
【0164】
疎水性樹脂がフッ素原子を含む場合、フッ素原子を有する部分構造として、フッ素原子を有するアルキル基、フッ素原子を有するシクロアルキル基、又は、フッ素原子を有するアリール基を有する樹脂であるのが好ましい。
【0165】
疎水性樹脂は、下記(x)~(z)の群から選ばれる基を少なくとも1つを有するのが好ましい。
(x)酸基
(y)アルカリ現像液の作用により分解してアルカリ現像液に対する溶解度が増大する基(以下、極性変換基ともいう)
(z)酸の作用により分解する基
【0166】
酸基(x)としては、フェノール性水酸基、カルボキシ基、フッ素化アルコール基、スルホン酸基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)メチレン基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基、ビス(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルスルホニル)メチレン基、ビス(アルキルスルホニル)イミド基、トリス(アルキルカルボニル)メチレン基、及び、トリス(アルキルスルホニル)メチレン基等が挙げられる。
酸基としては、フッ素化アルコール基(好ましくはヘキサフルオロイソプロパノール)、スルホンイミド基、又は、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基が好ましい。
【0167】
アルカリ現像液の作用により分解してアルカリ現像液に対する溶解度が増大する基(y)としては、例えば、ラクトン基、カルボキシエステル基(-COO-)、酸無水物基(-CO-O-CO-)、酸イミド基(-NHCONH-)、カルボキシチオエステル基(-COS-)、炭酸エステル基(-O-CO-O-)、硫酸エステル基(-OSO2O-)、及び、スルホン酸エステル基(-SO2O-)等が挙げられ、ラクトン基又はカルボキシエステル基(-COO-)が好ましい。
これらの基を含んだ繰り返し単位としては、例えば、樹脂の主鎖にこれらの基が直接結合している繰り返し単位であり、例えば、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルによる繰り返し単位等が挙げられる。この繰り返し単位は、これらの基が連結基を介して樹脂の主鎖に結合していてもよい。又は、この繰り返し単位は、これらの基を有する重合開始剤又は連鎖移動剤を重合時に用いて、樹脂の末端に導入されていてもよい。
ラクトン基を有する繰り返し単位としては、例えば、先に樹脂Aの項で説明したラクトン構造を有する繰り返し単位と同様の繰り返し単位が挙げられる。
【0168】
疎水性樹脂がアルカリ現像液の作用により分解してアルカリ現像液に対する溶解度が増大する基(y)を有する繰り返し単位を有する場合、その含有量は、疎水性樹脂中の全繰り返し単位に対して、1~100モル%が好ましく、3~98モル%がより好ましく、5~95モル%が更に好ましい。
【0169】
疎水性樹脂における、酸の作用により分解する基(z)を有する繰り返し単位は、樹脂Aで挙げた酸分解性基を有する繰り返し単位と同様の繰り返し単位が挙げられる。酸の作用により分解する基(z)を有する繰り返し単位は、フッ素原子及びケイ素原子の少なくともいずれかを有していてもよい。疎水性樹脂が酸の作用により分解する基(z)を有する繰り返し単位を有する場合、その含有量は、疎水性樹脂中の全繰り返し単位に対して、1~80モル%が好ましく、10~80モル%がより好ましく、15~60モル%が更に好ましい。
疎水性樹脂は、更に、上述した繰り返し単位とは別の繰り返し単位を有していてもよい。
【0170】
疎水性樹脂がフッ素原子を含む繰り返し単位を有する場合、その含有量は、疎水性樹脂中の全繰り返し単位に対して、10~100モル%が好ましく、30~100モル%がより好ましい。また、疎水性樹脂がケイ素原子を含む繰り返し単位を有する場合、その含有量は、疎水性樹脂中の全繰り返し単位に対して、10~100モル%が好ましく、20~100モル%がより好ましい。
【0171】
一方、特に疎水性樹脂が側鎖部分にCH3部分構造を含む場合においては、疎水性樹脂が、フッ素原子及びケイ素原子を実質的に含まない形態も好ましい。また、疎水性樹脂は、炭素原子、酸素原子、水素原子、窒素原子、及び、硫黄原子から選ばれる原子のみによって構成された繰り返し単位のみで実質的に構成されるのが好ましい。
【0172】
疎水性樹脂の標準ポリスチレン換算の重量平均分子量は、1,000~100,000が好ましく、1,000~50,000がより好ましい。
【0173】
疎水性樹脂に含まれる残存モノマー及び/又はオリゴマー成分の合計含有量は、0.01~5質量%が好ましく、0.01~3質量%がより好ましい。また、分散度(Mw/Mn)は、1.0~5.00が好ましく、1.0~3.00がより好ましい。
【0174】
疎水性樹脂としては、公知の樹脂を、単独又はそれらの混合物として適宜に選択して使用できる。例えば、米国特許出願公開2015/0168830A1号明細書の段落[0451]~[0704]、及び、米国特許出願公開2016/0274458A1号明細書の段落[0340]~[0356]に開示された公知の樹脂を疎水性樹脂として好適に使用できる。また、米国特許出願公開2016/0237190A1号明細書の段落[0177]~[0258]に開示された繰り返し単位も、疎水性樹脂を構成する繰り返し単位として好ましい。
【0175】
疎水性樹脂を構成する繰り返し単位に相当するモノマーの好ましい例を以下に示す。
【0176】
【0177】
【0178】
疎水性樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
表面エネルギーが異なる2種以上の疎水性樹脂を混合して使用するのも、液浸露光における液浸液追随性と現像特性の両立の観点から好ましい。
疎水性樹脂の組成物中の含有量は、本発明の組成物中の全固形分に対し、0.01~10質量%が好ましく、0.03~8.0質量%がより好ましく、0.10~1.0質量%が更に好ましい。2種以上の疎水性樹脂を使用する場合は、その合計含有量が上記好適含有量の範囲内であるのが好ましい。
【0179】
<溶剤>
本発明の組成物は、溶剤を含んでいてもよい。
本発明の組成物においては、公知のレジスト溶剤を適宜使用できる。例えば、米国特許出願公開2016/0070167A1号明細書の段落[0665]~[0670]、米国特許出願公開2015/0004544A1号明細書の段落[0210]~[0235]、米国特許出願公開2016/0237190A1号明細書の段落[0424]~[0426]、及び、米国特許出願公開2016/0274458A1号明細書の段落[0357]~[0366]に開示された公知の溶剤を好適に使用できる。
組成物を調製する際に使用できる溶剤としては、例えば、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸アルキルエステル、アルコキシプロピオン酸アルキル、環状ラクトン(好ましくは炭素数4~10)、環を有してもよいモノケトン化合物(好ましくは炭素数4~10)、アルキレンカーボネート、アルコキシ酢酸アルキル、及び、ピルビン酸アルキル等の有機溶剤が挙げられる。
【0180】
有機溶剤として、構造中に水酸基を有する溶剤と、水酸基を有さない溶剤とを混合した混合溶剤を使用してもよい。
水酸基を有する溶剤、及び水酸基を有さない溶剤としては、前述の例示化合物を適宜選択できるが、水酸基を含む溶剤としては、アルキレングリコールモノアルキルエーテル又は乳酸アルキル等が好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(PGEE)、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、又は、乳酸エチルがより好ましい。また、水酸基を有さない溶剤としては、アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、アルキルアルコキシプロピオネート、環を有していてもよいモノケトン化合物、環状ラクトン、又は、酢酸アルキル等が好ましく、これらの中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、エチルエトキシプロピオネート、2-ヘプタノン、γ-ブチロラクトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、又は、酢酸ブチルがより好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン、エチルエトキシプロピオネート、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、又は、2-ヘプタノンが更に好ましい。水酸基を有さない溶剤としては、プロピレンカーボネートも好ましい。
水酸基を有する溶剤と水酸基を有さない溶剤との混合比(質量比)は、1/99~99/1が好ましく、10/90~90/10がより好ましく、20/80~60/40が更に好ましい。水酸基を有さない溶剤を50質量%以上含む混合溶剤が、塗布均一性の点で好ましい。
溶剤は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含むのが好ましい。この場合、溶剤は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート単独溶剤でもよいし、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含む2種類以上の混合溶剤でもよい。
【0181】
本発明の組成物の固形分濃度は、1.0~10質量%が好ましく、2.0~5.7質量%がより好ましく、2.0~5.3質量%が更に好ましい。つまり組成物が溶剤を含む場合における、組成物中の溶剤の含有量は、上記固形分濃度の好適な範囲を満たせるように調整するのが好ましい。なお、固形分濃度とは、組成物の総質量に対する、溶剤を除く他のレジスト成分の質量の質量百分率である。
組成物中の固形分濃度を適切な範囲に設定して適度な粘度をもたせ、塗布性又は製膜性を向上させて、本発明の組成物からなるレジスト膜(感活性光線性又は感放射線性膜)の膜厚を調整できる。
【0182】
<界面活性剤>
本発明の組成物は、界面活性剤を含んでもよい。
界面活性剤は、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤(具体的には、フッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、又はフッ素原子とケイ素原子との両方を有する界面活性剤)が好ましい。
【0183】
本発明の組成物が界面活性剤を含む場合、250nm以下、特に220nm以下の露光光源を使用した場合に、良好な感度及び解像度で、密着性及び現像欠陥の少ないパターンを得やすい。
フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤として、米国特許出願公開第2008/0248425号明細書の段落[0276]に記載の界面活性剤が挙げられる。
また、米国特許出願公開第2008/0248425号明細書の段落[0280]に記載の、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤以外の他の界面活性剤を使用してもよい。
【0184】
界面活性剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を使用してもよい。
本発明の組成物が界面活性剤を含有する場合、界面活性剤の含有量は、組成物の全固形分に対して、0.0001~2質量%が好ましく、0.0005~1質量%がより好ましい。
界面活性剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を使用してもよい。界面活性剤を2種以上使用する場合は、その合計含有量が上記好適含有量の範囲内であるのが好ましい。
一方、界面活性剤の含有量が、組成物の全固形分に対して10質量ppm以上とすれば、疎水性樹脂の表面偏在性が上がる。それにより、レジスト膜の表面をより疎水的にでき、液浸露光時の水追随性が向上する。
【0185】
<その他の添加剤>
本発明の組成物は、更に、上述した以外の樹脂、架橋剤、酸増殖剤、染料、可塑剤、光増感剤、光吸収剤、アルカリ可溶性樹脂、溶解阻止剤、又は、溶解促進剤等を含んでいてもよい。
【0186】
<調製方法>
本発明の組成物は、上記の成分を所定の有機溶剤(好ましくは上記混合溶剤)に溶解し、これをフィルター濾過した後、所定の支持体(基板)上に塗布して用いるのが好ましい。
フィルター濾過に用いるフィルターのポアサイズは0.1μm以下が好ましく、0.05μm以下がより好ましく、0.03μm以下が更に好ましい。また、組成物の固形分濃度が高い場合(例えば、25質量%以上)は、フィルター濾過に用いるフィルターのポアサイズは3μm以下が好ましく、0.5μm以下がより好ましく、0.3μm以下が更に好ましい。このフィルターは、ポリテトラフロロエチレン製、ポリエチレン製、又は、ナイロン製のフィルターが好ましい。フィルター濾過においては、例えば日本国特許出願公開第2002-62667号明細書(特開2002-62667)に開示されるように、循環的な濾過を行ってもよく、複数種類のフィルターを直列又は並列に接続して濾過を行ってもよい。また、組成物を複数回濾過してもよい。更に、フィルター濾過の前後で、組成物に対して脱気処理等を行ってもよい。
【0187】
<用途>
本発明の組成物は、活性光線又は放射線の照射により反応して性質が変化する感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物に関する。更に詳しくは、本発明の組成物は、IC(Integrated Circuit)等の半導体製造工程、液晶若しくはサーマルヘッド等の回路基板の製造、インプリント用モールド構造体の作製、その他のフォトファブリケーション工程、又は、平版印刷版、若しくは酸硬化性組成物の製造に使用される感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物に関する。本発明において形成されるパターンは、エッチング工程、イオンインプランテーション工程、バンプ電極形成工程、再配線形成工程、及び、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)等において使用できる。
【0188】
〔パターン形成方法、レジスト膜〕
本発明は上記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いたパターン形成方法にも関する。以下、本発明のパターン形成方法について説明する。また、パターン形成方法の説明と併せて、本発明のレジスト膜(感活性光線性又は感放射線性膜)についても説明する。
【0189】
本発明のパターン形成方法は、
(i)上述した感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いてレジスト膜(感活性光線性又は感放射線性膜)を支持体上に形成する工程(レジスト膜形成工程(成膜工程))、
(ii)上記レジスト膜を露光する(活性光線又は放射線を照射する)工程(露光工程)、及び、
(iii)上記露光されたレジスト膜を、現像液を用いて現像する工程(現像工程)、
を有する。
【0190】
本発明のパターン形成方法は、上記(i)~(iii)の工程を含んでいれば特に限定されず、更に下記の工程を有していてもよい。
本発明のパターン形成方法は、(ii)露光工程における露光方法が、液浸露光であってもよい。
本発明のパターン形成方法は、(ii)露光工程の前に、(iv)前加熱(PB:PreBake)工程を含むのが好ましい。
本発明のパターン形成方法は、(ii)露光工程の後、かつ、(iii)現像工程の前に、(v)露光後加熱(PEB:Post Exposure Bake)工程を含むのが好ましい。
本発明のパターン形成方法は、(ii)露光工程を、複数回含んでいてもよい。
本発明のパターン形成方法は、(iv)前加熱工程を、複数回含んでいてもよい。
本発明のパターン形成方法は、(v)露光後加熱工程を、複数回含んでいてもよい。
【0191】
本発明のパターン形成方法において、上述した(i)レジスト膜形成工程(成膜工程)、(ii)露光工程、及び(iii)現像工程は、一般的に知られている方法により行える。
【0192】
レジスト膜の膜厚は、解像力向上の観点から、110nm以下が好ましく、95nm以下がより好ましい。
また、必要に応じて、レジスト膜と支持体との間にレジスト下層膜(例えば、SOG(Spin On Glass)、SOC(Spin On Carbon)、及び、反射防止膜)を形成してもよい。レジスト下層膜を構成する材料としては、公知の有機系又は無機系の材料を適宜使用できる。
レジスト膜の上層に、保護膜(トップコート)を形成してもよい。保護膜としては、公知の材料を適宜使用できる。例えば、米国特許出願公開第2007/0178407号明細書、米国特許出願公開第2008/0085466号明細書、米国特許出願公開第2007/0275326号明細書、米国特許出願公開第2016/0299432号明細書、米国特許出願公開第2013/0244438号明細書、国際特許出願公開第2016/157988A号明細書に開示された保護膜形成用組成物を好適に使用できる。保護膜形成用組成物としては、上述した酸拡散制御剤を含むのが好ましい。
上述した疎水性樹脂を含むレジスト膜の上層に保護膜を形成してもよい。
【0193】
支持体は、特に限定されず、IC等の半導体の製造工程、又は液晶若しくはサーマルヘッド等の回路基板の製造工程のほか、その他のフォトファブリケーションのリソグラフィー工程等で一般的に用いられる基板を使用できる。支持体の具体例としては、シリコン、SiO2、及びSiN等の無機基板等が挙げられる。
【0194】
加熱温度は、(iv)前加熱工程及び(v)露光後加熱工程のいずれにおいても、70~130℃が好ましく、80~120℃がより好ましい。
加熱時間は、(iv)前加熱工程及び(v)露光後加熱工程のいずれにおいても、30~300秒が好ましく、30~180秒がより好ましく、30~90秒が更に好ましい。
加熱は、露光装置及び現像装置に備わっている手段で行え、ホットプレート等を用いて行ってもよい。
【0195】
露光工程に用いられる光源波長に制限はないが、例えば、赤外光、可視光、紫外光、遠紫外光、極紫外光(EUV)、X線、及び電子線等が挙げられる。これらの中でも遠紫外光が好ましく、その波長は250nm以下が好ましく、220nm以下がより好ましく、1~200nmが更に好ましい。具体的には、KrFエキシマレーザー(248nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)、F2エキシマレーザー(157nm)、X線、EUV(13nm)、又は、電子線等が好ましく、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、EUV、又は、電子線がより好ましい。
【0196】
(iii)現像工程においては、アルカリ現像液であっても、有機溶剤を含む現像液(以下、有機系現像液ともいう)であってもよい。
【0197】
アルカリ現像液としては、通常、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドに代表される4級アンモニウム塩が用いられるが、これ以外にも無機アルカリ、1~3級アミン、アルコールアミン、及び、環状アミン等のアルカリ水溶液も使用可能である。
更に、上記アルカリ現像液は、アルコール類、及び/又は、界面活性剤を適当量含んでいてもよい。アルカリ現像液のアルカリ濃度は、通常0.1~20質量%である。アルカリ現像液のpHは、通常10~15である。
アルカリ現像液を用いて現像を行う時間は、通常10~300秒である。
アルカリ現像液のアルカリ濃度、pH、及び現像時間は、形成するパターンに応じて、適宜調整できる。
【0198】
有機系現像液は、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤、及び、炭化水素系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤を含む現像液であるのが好ましい。
【0199】
ケトン系溶剤としては、例えば、1-オクタノン、2-オクタノン、1-ノナノン、2-ノナノン、アセトン、2-ヘプタノン(メチルアミルケトン)、4-ヘプタノン、1-ヘキサノン、2-ヘキサノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセトニルアセトン、イオノン、ジアセトニルアルコール、アセチルカービノール、アセトフェノン、メチルナフチルケトン、イソホロン、及び、プロピレンカーボネート等が挙げられる。
【0200】
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、酢酸アミル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチル-3-エトキシプロピオネート、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル、ブタン酸ブチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、酢酸イソアミル、イソ酪酸イソブチル、及び、プロピオン酸ブチル等が挙げられる。
【0201】
アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤、及び、炭化水素系溶剤としては、米国特許出願公開2016/0070167A1号明細書の段落[0715]~[0718]に開示された溶剤を使用できる。
【0202】
上記の溶剤は、複数混合してもよいし、上記以外の溶剤又は水と混合してもよい。現像液全体としての含水率は、50質量%未満が好ましく、20質量%未満がより好ましく、10質量%未満が更に好ましく、実質的に水分を含まないのが特に好ましい。
有機系現像液に対する有機溶剤の含有量は、現像液の全量に対して、50~100質量%が好ましく、80~100質量%がより好ましく、90~100質量%が更に好ましく、95~100質量%が特に好ましい。
【0203】
現像液は、必要に応じて公知の界面活性剤を適当量含んでいてもよい。
【0204】
界面活性剤の含有量は現像液の全量に対して、通常0.001~5質量%であり、0.005~2質量%が好ましく、0.01~0.5質量%がより好ましい。
【0205】
有機系現像液は、酸拡散制御剤を含んでいてもよい。
【0206】
現像方法としては、例えば、現像液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止する方法(パドル法)、基板表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、及び、一定速度で回転している基板上に一定速度で現像液吐出ノズルをスキャンしながら現像液を吐出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)等が挙げられる。
【0207】
アルカリ水溶液を用いて現像を行う工程(アルカリ現像工程)、及び、有機溶剤を含む現像液を用いて現像する工程(有機溶剤現像工程)を組み合わせてもよい。これにより、中間的な露光強度の領域のみを溶解させずにパターン形成が行えるので、より微細なパターンを形成できる。
【0208】
(iii)現像工程の後に、リンス液を用いて洗浄する工程(リンス工程)を含むのが好ましい。
【0209】
アルカリ現像液を用いた現像工程の後のリンス工程に用いるリンス液は、例えば純水を使用できる。純水は、界面活性剤を適当量含んでいてもよい。また、現像工程又はリンス工程の後に、パターン上に付着している現像液又はリンス液を超臨界流体により除去する処理を追加してもよい。更に、リンス処理又は超臨界流体による処理の後、パターン中に残存する水分を除去するために加熱処理を行ってもよい。
【0210】
有機溶剤を含む現像液を用いた現像工程の後のリンス工程に用いるリンス液は、パターンを溶解しなければ特に制限はなく、一般的な有機溶剤を含む溶液を使用できる。リンス液としては、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、及び、エーテル系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤を含むリンス液を使用するのが好ましい。
炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、及び、エーテル系溶剤の具体例としては、有機溶剤を含む現像液において説明した溶剤と同様の溶剤が挙げられる。
この場合のリンス工程に用いるリンス液としては、1価アルコールを含むリンス液がより好ましい。
【0211】
リンス工程で用いられる1価アルコールとしては、直鎖状、分岐鎖状、又は、環状の1価アルコールが挙げられる。具体的には、1-ブタノール、2-ブタノール、3-メチル-1-ブタノール、tert―ブチルアルコール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、1-ヘキサノール、4-メチル-2-ペンタノール、1-ヘプタノール、1-オクタノール、2-ヘキサノール、シクロペンタノール、2-ヘプタノール、2-オクタノール、3-ヘキサノール、3-ヘプタノール、3-オクタノール、4-オクタノール、及び、メチルイソブチルカルビノールが挙げられる。
1価アルコールは炭素数5以上であるのも好ましく、このような例としては、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、4-メチル-2-ペンタノール、1-ペンタノール、3-メチル-1-ブタノール、及び、メチルイソブチルカルビノール等が挙げられる。
【0212】
各成分は、複数混合してもよいし、上記以外の有機溶剤と混合して使用してもよい。
有機溶剤を含む現像液を用いた現像工程の後のリンス工程に用いるリンス液中の含水率は、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下が更に好ましい。含水率を10質量%以下とすれば、良好な現像特性が得られる。
有機溶剤を含む現像液を用いた現像工程の後のリンス液は、界面活性剤を適当量含んでいてもよい。
【0213】
リンス工程においては、現像を行った基板を、リンス液を用いて洗浄処理する。洗浄処理の方法は特に限定されないが、例えば、一定速度で回転している基板上にリンス液を吐出しつづける方法(回転塗布法)、リンス液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面にリンス液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止する方法(パドル法)、又は、基板表面にリンス液を噴霧する方法(スプレー法)等が挙げられる。また、洗浄後に基板を2,000~4,000rpmの回転数で回転させ、リンス液を基板上から除去するのも好ましい。また、リンス工程の後に加熱工程(Post Bake)を含むのも好ましい。この加熱工程によりパターン間及びパターン内部に残留した現像液及びリンス液が除去される。リンス工程の後の加熱工程において、加熱温度は通常40~160℃であり、70~95℃が好ましく、加熱時間は通常10秒~3分であり、30~90秒が好ましい。
【0214】
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、及び、本発明のパターン形成方法において使用される各種材料(例えば、レジスト溶剤、現像液、リンス液、反射防止膜形成用組成物、又は、トップコート形成用組成物等)は、金属成分、異性体、及び、残存モノマー等の不純物を含まないのが好ましい。上記の各種材料に含まれるこれらの不純物の含有量としては、1質量ppm以下が好ましく、100質量ppt以下がより好ましく、10質量ppt以下が更に好ましく、実質的に含まないこと(測定装置の検出限界以下であること)が特に好ましい。
【0215】
上記各種材料から金属等の不純物を除去する方法としては、例えば、フィルターを用いた濾過が挙げられる。フィルター孔径としては、ポアサイズ10nm以下が好ましく、5nm以下がより好ましく、3nm以下が更に好ましい。フィルターの材質としては、ポリテトラフロロエチレン製、ポリエチレン製、又は、ナイロン製のフィルターが好ましい。フィルターは、有機溶剤であらかじめ洗浄したフィルターを用いてもよい。フィルター濾過工程では、複数種類のフィルターを直列又は並列に接続して用いてもよい。複数種類のフィルターを使用する場合は、孔径及び/又は材質が異なるフィルターを組み合わせて使用してもよい。また、各種材料を複数回濾過してもよく、複数回濾過する工程が循環濾過工程であってもよい。フィルターとしては、日本国特許出願公開第2016-201426号明細書(特開2016-201426)に開示されるような溶出物が低減されたフィルターが好ましい。
フィルター濾過のほか、吸着材を用いて不純物の除去を行ってもよく、フィルター濾過と吸着材を組み合わせて使用してもよい。吸着材としては、公知の吸着材を使用でき、例えば、シリカゲル若しくはゼオライト等の無機系吸着材、又は、活性炭等の有機系吸着材を使用できる。金属吸着材としては、例えば、日本国特許出願公開第2016-206500号明細書(特開2016-206500)に開示される材料が挙げられる。
また、上記各種材料に含まれる金属等の不純物を低減する方法としては、各種材料を構成する原料として金属含有量が少ない原料を選択する、各種材料を構成する原料に対してフィルター濾過を行う、又は、装置内をテフロン(登録商標)でライニングする等してコンタミネーションを可能な限り抑制した条件下で蒸留を行う等の方法が挙げられる。レジスト成分の各種材料(バインダー、PAG等)を合成する製造設備の全工程にグラスライニングの処理を施すのも、pptオーダーまでメタルを低減するために好ましい。各種材料を構成する原料に対して行うフィルター濾過における好ましい条件は、上記した条件と同様である。
【0216】
上記の各種材料は、不純物の混入を防止するために、米国特許出願公開第2015/0227049号明細書、日本国特許出願公開第2015-123351号明細書(特開2015-123351)、及び、日本国特許出願公開第2017-13804号明細書(特開2017-13804)等に記載された容器に保存されるのが好ましい。
【0217】
本発明のパターン形成方法により形成されるパターンに、パターンの表面荒れを改善する方法を適用してもよい。パターンの表面荒れを改善する方法としては、例えば、米国特許出願公開第2015/0104957号明細書に開示された、水素を含むガスのプラズマによってパターンを処理する方法が挙げられる。その他にも、日本国特許出願公開第2004-235468号明細書(特開2004-235468)、米国特許出願公開第2010/0020297号明細書、及び、Proc. of SPIE Vol.8328 83280N-1“EUV Resist Curing Technique for LWR Reduction and Etch Selectivity Enhancement”に記載されるような公知の方法を適用してもよい。
また、上記の方法によって形成されたパターンは、例えば日本国特許出願公開第1991-270227号明細書(特開平3-270227)、及び、米国特許出願公開第2013/0209941号明細書に開示されたスペーサープロセスの芯材(Core)として使用できる。
【0218】
〔電子デバイスの製造方法〕
また、本発明は、上記したパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法にも関する。本発明の電子デバイスの製造方法により製造された電子デバイスは、電気電子機器(例えば、家電、OA(Office Automation)関連機器、メディア関連機器、光学用機器、及び、通信機器等)に、好適に搭載される。
【実施例】
【0219】
以下に、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更できる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されない。
【0220】
〔組成物の成分〕
以下に、実施例又は比較例で用いた感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物(以下「組成物」ともいう)が含む成分を示す。
【0221】
<酸分解性樹脂(樹脂A)>
組成物の製造に使用した酸分解性樹脂(樹脂A)を以下に示す。
各樹脂の繰り返し単位に付された数字は、各繰り返し単位のモル分率を示す。また、各樹脂の重量平均分子量(Mw)、及び、分散度(Mw/Mn)についても示す。
【0222】
【0223】
<光酸発生剤>
(PAG-1)
PAG-1は、下記スキームに従って合成した。
【0224】
【0225】
化合物(1)(5.0g)、亜硫酸水素ナトリウム(2.2g)、メタノール(60mL)、及び、水(6mL)を混合した反応溶液を作製し、室温で12時間攪拌した。反応溶液から溶媒を留去し、化合物(2)を得た。
得られた化合物(2)全量を、水(60mL)及びクロロホルム(60mL)の混合液に懸濁させて反応溶液とした。この反応溶液に、更に、トリフェニルスルホニウムブロミド(4.9g)を加え、室温で1時間攪拌した。反応溶液を分液ロートに移し、有機相を水(20mL)で3回洗浄した。有機相をエバポレーターで濃縮し、化合物(3)(6.0g)を得た。
得られた化合物(3)全量を、クロロホルム(60mL)に溶解させた後、トリエチルアミン(1.1g)を加えて、反応溶液とした。この反応溶液に、更に、シクロヘキサンカルボニルクロリド(2.2g)を加え、室温で12時間撹拌した。反応溶液に水(60mL)を加えた後、分液ロートに移し、有機相を水(20mL)で3回洗浄した。有機相をエバポレーターで濃縮し、PAG-1(4.7g)を得た。
【0226】
(PAG-2~PAG-20)
PAG-1の合成方法を参照にPAG-2~PAG-20を合成した。
【0227】
組成物の調製に使用した光酸発生剤を以下に示す。
下記光酸発生剤のうち、PAG-1~PAG-20が特定光酸発生剤に該当する。
【0228】
【0229】
【0230】
【0231】
PAG-1~PAG-20から発生する酸のpkaは、以下のとおりである。
【0232】
【0233】
<酸拡散制御剤>
組成物の調製に使用した酸拡散制御剤を以下に示す。
【0234】
【0235】
<疎水性樹脂>
組成物の調製に使用した疎水性樹脂を以下に示す。
各疎水性樹脂の繰り返し単位に付された数字は、各繰り返し単位のモル分率を示す。また、各樹脂の重量平均分子量(Mw)、及び、分散度(Mw/Mn)についても示す。
【0236】
【0237】
<溶剤>
組成物の調製に使用した溶剤を以下に示す。
SL-1: プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA:1-メトキシ-2-アセトキシプロパン)
SL-2: プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME:1-メトキシ-2-プロパノール)
SL-3: γ-ブチロラクトン
【0238】
〔組成物の調製〕
後段の表2に記載の配合を満たし、かつ、固形分濃度3.8質量%となるように、後段の表に示す各成分を溶剤に溶解させ、溶液を調製した。
次いで、得られた溶液を0.1μmのポアサイズを有するポリエチレンフィルターで濾過して、組成物(感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物)を調製した。
【0239】
〔評価〕
<パターンの形成>
シリコンウエハ上に有機反射防止膜形成用組成物ARC29SR(日産化学社製)を塗布し、205℃で60秒間ベークを行い、膜厚95nmの反射防止膜を形成した。得られた反射防止膜上に組成物を塗布し、100℃で60秒間にベーク(PB:Prebake)を行い、膜厚85nmのレジスト膜を形成した。得られたウエハをArFエキシマレーザー液浸スキャナー(ASML社製;XT1700i、NA1.20、C-Quad、アウターシグマ0.900、インナーシグマ0.812、XY偏向)を用い、線幅44nmの1:1ラインアンドスペースパターンの6%ハーフトーンマスクを通して露光した。液浸液としては超純水を用いた。その後、105℃で60秒間加熱(PEB:Post Exposure Bake)した。次いで、有機系現像液(酢酸ブチル)で30秒間パドルして現像し、リンス液(メチルイソブチルカルビノール(MIBC))で30秒間パドルしてリンスした。続いて、4000rpmの回転数で30秒間ウエハを回転させて、線幅44nmの1:1ラインアンドスペースのパターンを形成した。
【0240】
<LWR性能>
得られた線幅44nmの1:1ラインアンドスペースパターンについて、測長走査型電子顕微鏡(SEM((株)日立製作所S-8840))にてパターン上部から観察した。
ラインパターンの長手方向のエッジ2μmの範囲について、線幅を50ポイント測定し、その測定ばらつきについて標準偏差を求め、3σ(nm)を算出し、この値をLWR(nm)とした。得られたLWR(nm)を下記基準に当てはめて区分し、LWR性能を評価した。
LWR(nm)の値が小さいほど良好なLWR性能であることを示す。
【0241】
「4」:LWR<3.3nm
「3」:3.3nm≦LWR<3.5nm
「2」:3.5nm≦LWR<3.7nm
「1」:3.7nm≦LWR
【0242】
〔結果〕
組成物の配合、及び、それらの組成物を用いて行った評価の結果を下記表に示す。
「固形分」の欄中における、各成分名の下に記載された数字は、各成分の添加量(「g」又は「mmol」)を示す。なお、各組成物において、樹脂は10g、光酸発生剤は3mmol、酸拡散制御剤は1mmol、疎水性樹脂は0.05g添加した。溶剤は、各溶剤を表中に示す質量比で添加した。
表中「Rf」の欄は、各組成物における特定光酸発生剤が発生する酸を、一般式(I)に当てはめた場合において、Rfに相当する基の構造を示す。
表中「X」の欄は、各組成物における特定光酸発生剤が発生する酸を、一般式(I)に当てはめた場合において、Xに相当する基が「-COO-」であるか否かを示す。上記要件を満たす場合はAと記載し、要件を満たさない場合はBと記載した。
【0243】
【0244】
表に示した結果から、本発明の組成物は、LWR性能に優れるパターンを得られることが確認された。
また、特定光酸発生剤が発生する酸のRfに相当する基が、トリフルオロメチル基である場合、得られるパターンのLWRがより優れることが確認された(実施例15と16との比較等)。
また、特定光酸発生剤が発生する酸のXに相当する基が、-COO-である場合、得られるパターンのLWRがより優れることが確認された(実施例2と7との比較等)。