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特許7124098周期的堆積プロセスにより基材上にルテニウム含有膜を堆積させる方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】周期的堆積プロセスにより基材上にルテニウム含有膜を堆積させる方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/06 20060101AFI20220816BHJP
   C23C 16/40 20060101ALI20220816BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20220816BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20220816BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20220816BHJP
   H01L 21/285 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
C23C16/06
C23C16/40
H01L29/78 301G
H01L21/28 301R
H01L21/285 C
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2020542941
(86)(22)【出願日】2018-02-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-26
(86)【国際出願番号】 IB2018000192
(87)【国際公開番号】W WO2019158960
(87)【国際公開日】2019-08-22
【審査請求日】2021-02-05
(73)【特許権者】
【識別番号】519237203
【氏名又は名称】エーエスエム・アイピー・ホールディング・ベー・フェー
(73)【特許権者】
【識別番号】513008731
【氏名又は名称】ユニヴェルシテイト ヘント
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITEIT GENT
【住所又は居所原語表記】Sint-Pietersnieuwstraat 25, B-9000 Gent, Belgium
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マティアス・ミンヤウ
(72)【発明者】
【氏名】ヨリエン・デンドゥーヴェン
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・デタヴェルニエ
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-508003(JP,A)
【文献】特開2006-097044(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0059078(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0148347(US,A1)
【文献】特開2018-011054(JP,A)
【文献】特表2002-524872(JP,A)
【文献】特開2017-183242(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/00-16/56
H01L 21/28-21/288
H01L 21/336
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周期的堆積プロセスにより基材上にルテニウム含有膜を堆積させる方法であって、前記方法が、
前記基材を、有機金属前駆体を含む第一の気相反応物質と接触させることであって、前記有機金属前駆体が、白金、パラジウム、アルミニウム、チタン、ビスマス、亜鉛、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される金属を含むことと、
前記基材を、四酸化ルテニウムを含む第二の気相反応物質と接触させることとを含み、
前記ルテニウム含有膜が、ルテニウム-白金合金、ルテニウム-パラジウム合金、又は三元酸化ルテニウムのうちの少なくとも一つを含み、
前記方法が、前記ルテニウム含有膜のルテニウム含有量を制御するために、前記基材を前記第一の気相反応物質と接触させた後に、前記基材を酸素含有プラズマと接触させることをさらに含む、方法。
【請求項2】
前記周期的堆積プロセスが原子層堆積プロセスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記周期的堆積プロセスが周期的化学気相堆積プロセスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記方法が、前記基材を前記第一の気相反応物質及び前記第二の気相反応物質と交互かつ連続的に接触させる少なくとも一つの堆積サイクルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記堆積サイクルが二回以上繰り返される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記有機金属前駆体が、(トリメチル)メチルシクロペンタジエニル白金、(トリメチル)シクロペンタジエニル(C5H5)Pt(CH3)3、Pt(アセチルアセトナート)2、Pt(PF3)4、Pt(CO)2Cl2、cis-[Pt(CH3)2((CH3)NC)2]及びヘキサフルオロアセチルアセトン酸白金からなる群から選択される有機金属白金前駆体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ルテニウム含有膜がルテニウム-白金合金を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記有機金属前駆体が、Pd(thd)及びPd(hfac)からなる群から選択される有機金属パラジウム前駆体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ルテニウム含有膜がルテニウム-パラジウム合金を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記有機金属前駆体が、テトラキス(ジメチルアミド)チタン(TMDAT)、ペンタメチルシクロペンタジエニルトリメトキシチタン(CpMeTi(OMe))、チタンメトキシド(Ti(OMe))、チタンエトキシド(Ti(OEt))、チタンイソプロポキシド(Ti(OPr))、又はチタンブトキシド(Ti(OBu))からなる群から選択される有機金属チタン前駆体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ルテニウム含有膜が酸化ルテニウムチタン(RuTi)を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記有機金属前駆体が、[(dmp)Bi-O-Bi(dmb)、トリス(2,3-ジメチル-2-ブチキシ)ビスマス(III)、トリス(tert-ブトキシ)ビスマス(III)、トリ(イソプロポキシ)ビスマス(III)、Bi(N(SiMe、Bi(thd)、Bi(OBu)、Bi(dmb)、及びBi(CHSiMeからなる群から選択される有機金属ビスマス前駆体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記ルテニウム含有膜が酸化ビスマスルテニウム(BiRu)を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記有機金属前駆体が、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルアルミニウム(TEA)、塩化ジメチルアルミニウム(AlMeCl)、ジメチルアルミニウムイソプロポキシド(AlMeOPr)、又はアルミニウムエトキシド(AlOEt)からなる群から選択される有機金属アルミニウム前駆体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記ルテニウム含有膜が酸化アルミニウムルテニウム(AlRu)を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記有機金属前駆体が、ジメチル亜鉛(ZnMe)、ジエチル亜鉛(ZnEt)、メチル亜鉛イソプロポキシド(ZnMe(OPr))、又は酢酸亜鉛(Zn(CHCO)からなる群から選択される有機金属亜鉛前駆体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記ルテニウム含有膜が酸化亜鉛ルテニウム(ZnRu)を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記基材を前記第一の気相反応物質と接触させた後に、前記基材を、追加的有機前駆体を含む第四の気相反応物質と接触させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記追加的有機前駆体が、アルコール、アルデヒド、又はカルボン酸のうちの少なくとも一つを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記基材をおよそ150℃未満の温度に加熱することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記周期的堆積プロセスの前に、前記基材の表面をアルコールと接触させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
周期的堆積プロセスにより基材上に三元酸化ルテニウム膜を堆積させる方法であって、前記方法が、
前記基材を、有機金属前駆体を含む第一の気相反応物質と接触させることであって、前記有機金属前駆体が、リチウム、カルシウム、バリウム、コバルト、鉛及びそれらの組み合わせからなる群から選択される金属を含むことと、
前記基材を、四酸化ルテニウムを含む第二の気相反応物質と接触させることとを含み、
前記三元酸化ルテニウムが、酸化リチウムルテニウム、酸化カルシウムルテニウム、酸化バリウムルテニウム、酸化コバルトルテニウム、又は酸化鉛ルテニウムのうちの少なくとも一つを含み、
前記方法が、前記三元酸化ルテニウム膜のルテニウム含有量を制御するために、前記基材を前記第一の気相反応物質と接触させた後に、前記基材を酸素含有プラズマと接触させることをさらに含む、方法。
【請求項23】
請求項1に記載の方法を実施するように構成された反応システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、周期的堆積プロセスにより基材上にルテニウム含有膜を堆積させる方法、及び特に、有機金属前駆体及び四酸化ルテニウムを用いてルテニウム含有膜を堆積させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
先端技術ノードにおける半導体デバイス製造プロセスは一般に、例えば、ルテニウム含有膜などの金属含有膜を形成するための最先端の堆積法を必要とする。
【0003】
金属含有膜の堆積に対する共通要件は、堆積プロセスが極めて共形であることである。例えば、高アスペクト比特徴を含む三次元構造上に金属含有膜を均一に堆積させるために、共形堆積が必要とされることが多い。金属含有膜の堆積に対する別の共通要件は、堆積プロセスが、大きな基材領域の上に連続する超薄膜を堆積することができることである。金属含有膜が導電性である特定の場合において、堆積プロセスは、低抵抗導電性膜を生成するように最適化される必要があり得る。
【0004】
例えば、原子層堆積(ALD)及び周期的化学気相堆積(CCVD)などの周期的堆積プロセスは、一つまた複数の前駆体(反応物質)を反応チャンバーに逐次的に導入し、そこで前駆体は逐次的、自己制御的に一度に一つずつ基材の表面と反応する。原子レベルの厚さ制御による優れた共形性を有する金属含有膜を生成する周期的堆積プロセスが実証されてきた。
【0005】
周期的堆積方法は、金属合金の堆積に利用され得る。例えば、金属合金は、第一の金属を含む第一の前駆体及び第二の金属を含む第二の前駆体を利用して、原子層堆積プロセスによって堆積されてもよい。従って、一つ又は複数の金属合金を含む金属合金及び半導体デバイス構造を堆積するための方法が望ましい。
【0006】
金属合金に加えて、周期的堆積方法は、金属酸化物の堆積に利用され得る。例えば、金属酸化物は、金属を含む第一の前駆体及び酸素成分を含む第二の前駆体を利用して、原子層堆積によって堆積されてもよい。三元金属酸化物は、次世代装置のために特に価値がある場合がある。しかしながら、三元金属酸化物を形成するための一般的な堆積プロセスは、例えば、第一の金属前駆体、第二の金属前駆体、及び酸素成分を含有する前駆体などの三つの別個の前駆体を必要とし得る。従って、堆積金属酸化物、特に三元金属酸化物の改善された方法が望まれる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の概要は、概念の選択を簡略化した形で紹介するように提供する。これらの概念について、以下の本開示の例示的な実施形態の「発明を実施するための形態」において、更に詳細に説明される。この発明の概要は、特許請求される主題の主要な特徴又は本質的な特徴を特定することを意図していない、又は特許請求される主題の範囲を限定するために使用することも意図していない。
【0008】
いくつかの実施形態では、周期的堆積プロセスにより基材上にルテニウム含有膜を形成する方法が提供されている。方法は、有機金属前駆体を含む第一の気相反応物質と基材を接触させることであって、有機金属前駆体が、白金、パラジウム、アルミニウム、チタン、ビスマス、亜鉛、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される金属を含むことと、四酸化ルテニウムを含む第二の気相反応物質と基材を接触させることとを含み、ルテニウム含有膜は、ルテニウム-白金合金、ルテニウム-パラジウム合金、又は三元酸化ルテニウムのうちの少なくとも一つを含む。
【0009】
本発明と先行技術を超えて達成された利点とを要約する目的で、本発明の特定の目的及び利点が本明細書において上記に説明されている。当然のことながら、必ずしもこうした目的又は利点のすべてが本発明の任意の特定の実施形態によって達成されなくてもよいことが理解されるべきである。それ故に、例えば本明細書に教示又は示唆する通り、一つの利点又は一群の利点を達成又は最適化する様態で、本明細書で教示又は示唆されうる通りの他の目的又は利点を必ずしも達成することなく、本発明が具体化又は実行されてもよいことを当業者は認識するであろう。
【0010】
これらの実施形態のすべては、本明細書に開示する本発明の範囲内であることが意図されている。当業者には、これらの及び他の実施形態は、添付の図面を参照して、以下のある特定の実施形態の詳細な説明から容易に明らかとなり、本発明は、開示されるいかなる特定の実施形態にも限定されない。
【0011】
本明細書は、本発明の実施形態とみなされるものを具体的に指摘し、明確に特許請求する特許請求の範囲で結論付ける一方で、本開示の実施形態の利点は、添付の図面と併せて読むと、本開示の実施形態のある特定の実施例の説明から、より容易に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本開示の実施形態による例示的な周期的堆積方法のプロセスフローを示す。
図2図2は、本開示の実施形態によって堆積されたルテニウム含有膜を含む半導体デバイス構造の断面概略図を示す。
図3図3は、本開示の方法を実施するために構成された反応系の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ある特定の実施形態及び実施例を以下に開示するが、それらは、本発明が具体的に開示する本発明の実施形態及び/又は用途、ならびにその明白な変更及び均等物を超えて拡大することは、当業者により理解されるであろう。それ故に、開示される本発明の範囲は、以下に説明される特定の開示された実施形態によって限定されるべきではないことが意図される。
【0014】
本明細書に示される図は、任意の特定の材料、構造又はデバイスの実際の図であることを意味せず、本開示の実施形態を説明するために使用される、単に理想化された表現にすぎない。
【0015】
本明細書で使用される「周期的堆積」という用語は、基材上に膜を堆積させるために反応チャンバーに前駆体(反応物質)を連続的に導入することを指し、原子層堆積及び周期的化学気相堆積などの堆積技術を含む。
【0016】
本明細書で使用される「周期的化学気相堆積」という用語は、基材を二つ以上の揮発性前駆体に逐次曝し、その前駆体が基材上で反応及び/又は分解して所望の堆積物を生成する、任意のプロセスを指すことができる。
【0017】
本明細書で使用する通り、「基材」という用語は、使用される場合がある、又はその上にデバイス、回路もしくは膜が形成される場合がある、あらゆる下層材料又は複数の下層材料を指してもよい。基材は、ウエハ、ガラス、ポリマー、プラスチック、固体物質、繊維及び粉末を含むが、これらに限定されない。
【0018】
本明細書で使用する用語「原子層堆積」(ALD)は、堆積サイクル、好ましくは複数の連続堆積サイクルがプロセスチャンバー内で行われる蒸着プロセスを指すことができる。典型的には、各サイクルの間、前駆体は、堆積表面(例えば、基材の表面又は以前に堆積させた下地の表面、例えば、以前のALDサイクルを用いて堆積させた材料など)に化学吸着し、追加の前駆体と容易に反応しない単層又はサブ単層を形成する(すなわち、自己制御反応)。その後、必要に応じて、化学吸着した前駆体を堆積表面上で所望の材料に変換するのに使用するために、反応物質(例えば、別の前駆体又は反応ガス)をその後プロセスチャンバー内に導入することができる。典型的には、この反応物質は前駆体と更に反応することができる。更に、各サイクル中にパージ工程を利用して、化学吸着された前駆体の変換後に、過剰な前駆体をプロセスチャンバーから除去する、ならびに/又は過剰の反応物質及び/もしくは反応副生成物をプロセスチャンバーから除去することができる。更に、本明細書で使用される「原子層堆積」という用語は、関連する用語、例えば、「化学蒸着原子層堆積」、「原子層エピタキシー」(ALE)、分子線エピタキシー(MBE)、ガス源MBE、又は有機金属MBE、並びに前駆体組成物、反応性ガス、及びパージ(例えば、不活性キャリア)ガスの交互パルスで実施される場合の化学ビームエピタキシー等、により示されるプロセスを含むことも意味する。
【0019】
本明細書で使用される用語「膜」及び「薄膜」は、本明細書に開示される方法により堆積させた任意の連続的又は非連続的な構造体及び材料を指すことができる。「膜」及び「薄膜」としては、例えば、2D材料、ナノロッド、ナノチューブ若しくはナノ粒子、又は平坦な部分的な若しくは完全な分子層、又は部分的な若しくは完全な原子層、又は原子及び/若しくは分子のクラスタ、を挙げることができる。「膜」及び「薄膜」は、ピンホールを有する材料又は層を含み得るが、それでも少なくとも部分的に連続している。
【0020】
本明細書で使用される「金属有機」又は「有機金属」という用語は、互換的に使用され、金属種を含有する有機化合物を指すことができる。有機金属化合物は、直接的な金属-炭素結合を有する有機金属化合物のサブクラスであると考えることができる。
【0021】
本開示の実施形態を通じて多くの例示的な材料が与えられており、例示的な材料のそれぞれに与えられる化学式は限定的であると解釈されるべきではなく、与えられる非限定的な例示的な材料はある例示的な化学量論によって限定されるべきではないことに留意されたい。
【0022】
本開示は、ルテニウム含有膜を堆積させるために利用され得る方法、及び特に、ルテニウム-白金合金、ルテニウム-パラジウム合金、又は三元酸化ルテニウム膜を堆積させるために利用される堆積方法を含む。
【0023】
ルテニウム(Ru)は、DRAMコンデンサ及びMOSFETのための潜在的な高仕事関数電極材料である。加えて、ルテニウムは、燃料電池電極、触媒として、及び集積回路相互接続のためのバリア層上の銅(Cu)の電気堆積のためのシード層として有用な用途を有し得る。しかしながら、ルテニウム前駆体は法外に高価であり、元素ルテニウムの堆積は費用対効果の良くないものとなっている。従って、本開示の方法は、ルテニウム-白金合金の組成物を所望の装置用途に基づいて調整することができ、それによってより少ないルテニウム前駆体を利用する一方、適合された特性を有するルテニウム-白金合金を堆積させる、ルテニウム-白金合金を堆積させる方法を含む。
【0024】
ルテニウム-白金金属合金に加えて、本開示の実施形態は、三元酸化ルテニウムを堆積させるための方法も提供し得る。非限定的な例示的な実施形態として、本開示の方法は、燃料電池用途を有し得るルテニウムチタン酸化物(RuTi)及びビスマスルテニウム酸化物(BiRu)の堆積のために利用され得る。
【0025】
従って、本開示の実施形態は、周期的堆積プロセスにより、基材上にルテニウム含有膜を堆積させるための方法を含み得る。方法は、有機金属前駆体を含む第一の気相反応物質と基材を接触させること、及び四酸化ルテニウムを含む第二の気相反応物質と基材を接触させることを含み得る。
【0026】
周期的堆積プロセスの非限定的な例示の実施形態は原子層堆積(ALD)を含み、ALDは典型的な自己制御反応に基づいており、それにより反応物質の逐次及び交互パルスを用いて、堆積サイクル当たり材料の約一原子(又は分子)単層を堆積する。堆積条件及び前駆体は、典型的には、一つの反応物質の吸着層が同じ反応物質の気相反応物質と非反応性の表面終端を残すように、自己飽和反応を提供するように選択される。その後、基材を、前の終端と反応する異なる反応物質と接触させ、連続的な堆積を可能にする。従って、交互パルスの各サイクルは、典型的には、所望の材料の約一単層以下を残す。しかし、上記のように、一回又は複数回のALDサイクルにおいて、例えば、交互するプロセスの性質にもかかわらずいくつかの気相反応が起こる場合、材料の複数の単層を堆積させることができることを、当業者は認識するであろう。
【0027】
ルテニウム含有膜を堆積させるALDタイプのプロセスでは、一回の堆積サイクルは、基材を第一の反応物質に曝露することと、任意の未反応の第一の反応物質及び反応副生成物を反応空間から除去することと、基材を第二の反応物質に曝露することと、を含むことができ、第二の除去工程に続く。第一の反応物質は有機金属前駆体(「有機金属前駆体」)を含んでもよく、第二の反応物質は四酸化ルテニウム(「ルテニウム前駆体」)を含んでもよい。
【0028】
前駆体は、反応物質間の気相反応を防止し、自己飽和表面反応を可能にするように、不活性ガス、例えばアルゴン(Ar)又は窒素(N)によって分離されることができる。しかし、いくつかの実施形態では、基材を移動させて、第一の気相反応物質と第二の気相反応物質とを、別々に接触させることができる。反応が自己飽和するので、基材の厳密な温度制御及び前駆体の正確な投与量制御は通常必要ではない。しかし、基材温度は、入射ガス種が単層に凝縮しないように、及び表面で分解しないようにすることが好ましい。余分な化学物質及び反応副生成物がある場合には、基材を次の反応性化学物質と接触させる前に、それらを、例えば反応空間をパージすることにより又は基材を移動させることにより、基材の表面から除去する。望ましくない気体の分子を、不活性パージガスを用いて反応空間から効果的に排出することができる。パージを促進するために、真空ポンプを使用することができる。ルテニウム含有膜を堆積させるために使用できる反応器を、堆積に使用できる。このような反応器としては、前駆体を供給するための適切な装置及び手段を備えたALD反応器、並びにCVD反応器が挙げられる。いくつかの実施形態によれば、シャワーヘッド反応器を使用し得る。いくつかの実施形態によれば、クロスフロー、バッチ、ミニバッチ、又は空間ALD反応器が使用され得る。
【0029】
使用することができる適切な反応器の例としては、アリゾナ州フェニックスのASM America, Inc.、及びオランダ アルメアのASM Europe B.V. から入手可能な、市販の単一基材(又は単一ウエハ)成膜装置、例えば、Pulsar(登録商標)反応器(例えば、Pulsar(登録商標)2000、Pulsar(登録商標)3000、及びPulsar(登録商標)XP ALD等)、並びにEmerALD(登録商標)XP及びEmerALD(登録商標)反応器等が挙げられる。他の市販の反応器としては、商品名Eagle(登録商標)XP及びXP8、日本エー・エス・エム(株)(日本、東京)製の反応器が挙げられる。いくつかの実施形態では、反応器は処理中に基材が移動又は回転する空間ALD反応器である。
【0030】
本開示のいくつかの実施形態では、バッチ式反応器を使用し得る。適切なバッチ式反応器としては、商品名A400及びA412PLUSでASM Europe B.V(オランダ アルメア)から市販のAdvance(登録商標)400シリーズ反応器が挙げられるが、これに限定されない。いくつかの実施形態では、処理中に反応器内でボートが回転するA412等の垂直バッチ式反応器が利用される。したがって、いくつかの実施形態では、ウエハは処理中に回転する。他の実施形態では、バッチ式反応器は、10枚以下のウエハ、8枚以下のウエハ、6枚以下のウエハ、4枚以下のウエハ、もしくは2枚以下のウエハを収容するように構成されるミニバッチ式反応器を備える。バッチ式反応器が使用されるいくつかの実施形態では、ウエハ間の不均一性は3%(1シグマ)未満、2%未満、1%未満又は更には0.5%未満である。
【0031】
本明細書に記載の堆積プロセスを、クラスタツールに連結された反応器又は反応空間で任意に行うことができる。クラスタツールでは、各反応空間が一つの型の方法専用であるため、各モジュール内の反応空間の温度を一定に保つことができ、各運転の前に基材を方法温度まで加熱する反応器と比較してスループットが向上する。更に、クラスタツールでは、反応空間を基材間で所望の方法圧力レベルに排気する時間を短縮することが可能である。本開示のいくつかの実施形態では、堆積プロセスは、複数の反応チャンバーを含むクラスタツール内で実施されてもよく、各個々の反応チャンバーは、基材を、個々の前駆体ガスに曝すために使用されてもよく、基材を、複数の前駆体ガスに曝すように異なる反応チャンバー間を搬送してもよく、基材の搬送は基材の酸化/汚染を回避するために制御された周辺環境下で実施される。本開示のいくつかの実施形態では、堆積プロセスは、複数の反応チャンバーを備えるクラスタツール内で実施されてもよく、各個々の反応チャンバーは、基材を異なる堆積温度に加熱するように構成されてもよい。
【0032】
独立型反応器にはロードロックが装備されている。その場合、各運転と運転との間に反応空間を冷却する必要はない。いくつかの実施形態では、金属含有膜の堆積のための堆積プロセスは、例えばALDサイクル又は周期的CVDサイクルなどの複数の堆積サイクルを含み得る。
【0033】
いくつかの実施形態では、周期的堆積プロセスは、基材上にルテニウム含有膜を形成するのに使用され、周期的堆積プロセスはALDタイプのプロセスであり得る。いくつかの実施形態では、周期的堆積は、ハイブリッドALD/CVD又は周期的CVDプロセスであることができる。例えば、いくつかの実施形態では、ALDプロセスの成長速度は、CVDプロセスと比較して低い場合がある。成長速度を増加させる一つのアプローチは、ALDプロセスにおいて典型的に使用される温度よりも高い基材温度で動作するアプローチであり、結果として化学蒸着プロセスになるが、更に前駆体の逐次導入を利用し、このようなプロセスは周期的CVDと呼ばれ得る。
【0034】
本開示のいくつかの実施形態によれば、ALDプロセスを用いて、ルテニウム含有膜を、例えば集積回路ワークピースなどの基材上に堆積させる。本開示のいくつかの実施形態では、各ALDサイクルは、二つの異なる堆積工程又は段階を含む。堆積サイクルの第一段階(「金属段階」)では、堆積が望まれる基材の表面を、基材の表面上に化学吸着する金属前駆体を含み、基材の表面上に反応物質種の約一単層以下の単層を形成する第一の気相反応物質と接触させる。堆積の第二段階(「ルテニウム段階」)では、堆積が望まれる基材表面を、四酸化ルテニウムを含む第二の気相反応物質と接触させ、ここで四酸化ルテニウムが反応してルテニウム-白金合金、ルテニウム-パラジウム合金、又は三元酸化ルテニウムを形成し得る。
【0035】
本開示のいくつかの実施形態では、第一の気相反応物質は、本明細書で「金属化合物」とも称される、金属含有前駆体を含むことができる。いくつかの実施形態では、第一の気相反応物質は有機金属前駆体を含んでもよく、有機金属前駆体は白金、パラジウム、アルミニウム、チタン、ビスマス、亜鉛、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される金属を含む。いくつかの実施形態では、有機金属前駆体は、周期表の第2族金属、すなわちアルカリ土類金属を含まないか、又は実質的に含まない場合がある。いくつかの実施形態では、有機金属前駆体は、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、及びバリウム(Ba)からなる群から選択される金属を含まないか、又は実質的に含まない場合がある。
【0036】
本開示のいくつかの実施形態では、第一の気相反応物質は、本明細書で「金属化合物」とも称される、金属含有前駆体を含むことができる。いくつかの実施形態では、金属含有前駆体は、0、+I、+II、+III、+IV、+V、又は+VIの酸化状態を有する金属を含んでもよい。いくつかの実施形態では、金属含有前駆体の酸化状態は、+II、又は+IIIの酸化状態を有してもよい。いくつかの実施形態では、金属含有前駆体の酸化状態は、0と等しくなくてもよい。
【0037】
本開示のいくつかの実施形態では、有機金属前駆体は有機金属白金前駆体、すなわち白金元素を含む有機金属前駆体を含んでもよい。いくつかの実施形態では、有機金属白金前駆体は、(トリメチル)メチルシクロペンタジエニル白金又は(トリメチル)シクロペンタジエニル(C5H5)Pt(CH3)3などの白金のシクロペンタジエニル化合物、Pt(アセチルアセトナート)2などの白金ベータジケトネート化合物、又はPt(PF3)4、Pt(CO)2Cl2、cis-[Pt(CH3)2((CH3)NC)2]及びヘキサフルオロアセチルアセトン酸白金などのその他の白金化合物からなる群から選択され得る。
【0038】
本開示のいくつかの実施形態では、有機金属前駆体は有機金属アルミニウム前駆体、すなわちアルミニウム元素を含む有機金属前駆体を含んでもよい。いくつかの実施形態では、有機金属アルミニウム前駆体は、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルアルミニウム(TEA)、塩化ジメチルアルミニウム(AlMeCl)、ジメチルアルミニウムイソプロポキシド(AlMeOPr)、又はアルミニウムエトキシド((AlOEt))のうちの少なくとも一つを含んでもよい。
【0039】
本開示のいくつかの実施形態では、有機金属前駆体は有機金属亜鉛前駆体、すなわち亜鉛元素を含む有機金属前駆体を含んでもよい。いくつかの実施形態では、有機金属亜鉛前駆体は、ジメチル亜鉛(ZnMe)、ジエチル亜鉛(ZnEt)、メチル亜鉛イソプロポキシド(ZnMe(OPr))、又は酢酸亜鉛(Zn(CHCO)のうちの少なくとも一つを含んでもよい。
【0040】
本開示のいくつかの実施形態では、有機金属前駆体は有機金属パラジウム前駆体、すなわちパラジウム元素を含む有機金属前駆体を含んでもよい。いくつかの実施形態では、有機金属パラジウム前駆体は、Pd(thd)、又はPd(Hfac)のうちの少なくとも一つを含んでもよい。
【0041】
本開示のいくつかの実施形態では、有機金属前駆体は有機金属チタン前駆体、すなわちチタン元素を含む有機金属前駆体を含んでもよい。いくつかの実施形態では、有機金属チタン前駆体は、テトラキスジメチルアミノチタン(TDMAT)、テトラキシジエチルアミノチタン(TDEAT)、ペンタメチルシクロペンタジエニルトリメトキシチタン(CpMeTi(OMe))、チタンメトキシド(Ti(OMe))、チタンエトキシド(Ti(OEt))、チタンイソプロポキシド(Ti(OPr))、又はチタンブトキシド(Ti(OBu))のうちの少なくとも一つを含み得る。有機金属チタン前駆体は、Blombergに交付された米国特許第9,062,390号に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0042】
本開示のいくつかの実施形態では、有機金属前駆体は有機金属ビスマス前駆体、すなわちビスマス元素を含む有機金属前駆体を含んでもよい。いくつかの実施形態では、有機金属ビスマス前駆体は、ビスマス-アルコキシド又はビスマス-シリアミドのうちの少なくとも一つを含んでもよい。いくつかの実施形態では、有機金属ビスマス前駆体は、[(dmb)Bi-O-Bi(dmb)、トリス(2,3-ジメチル-2-ブチキシ)ビスマス(III)、トリス(tert-ブトキシ)ビスマス(III)、及びトリ(イソプロポキシ)ビスマス(III)からなる群から選択され得る。いくつかの実施形態では、有機金属ビスマス前駆体は、少なくともBi(N(SiMe)、Bi(thd)、Bi(OBu)、Bi(dmb)、又はBi(CHSiMeを含んでもよい。有機金属ビスマス前駆体は、Hatanpaaらに交付された米国特許第7,713,584号に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0043】
本開示のいくつかの実施形態では、有機金属前駆体を含む第一の気相反応物質と基材を接触させることは、基材を有機金属前駆体に、約0.01秒~約60秒の間、約0.05秒~約10秒の間、又は約0.1秒~約5.0秒の間、曝露することを含み得る。加えて、金属含有前駆体(例えば、有機金属前駆体)をパルスする間、有機金属前駆体の流量は、2000sccm未満、又は500sccm未満、又は100sccm未満、又は50sccm未満、又は10sccm、又は1sccm、又はさらに0.1sccmであってもよい。加えて、基材上に有機金属前駆体をパルスする間、有機金属前駆体の流量は、約0.05~約2000sccm、約0.1~約1000sccm、又は約1~約500sccmであってもよい。
【0044】
過剰な有機金属前駆体及び反応副生成物がある場合には、それらを、例えば不活性ガスでパージすることにより、表面から除去し得る。例えば、本開示のいくつかの実施形態では、この方法は、基材の表面をおよそ2.0秒未満の時間パージするパージサイクルを含み得る。過剰な有機金属前駆体及び反応副生成物は、反応チャンバーと流体連通するポンプシステムによって生成される真空を用いて除去してもよい。
【0045】
堆積サイクルの第二段階(「四酸化ルテニウム段階」)において、基材は、四酸化ルテニウム(RuO)を含む第二の気相反応物質と接触してもよい。本開示のいくつかの実施形態では、四酸化ルテニウムのルテニウム成分は、+VIII、又は少なくとも+VIIの酸化状態を有し得る。いくつかの実施形態では、四酸化ルテニウムのルテニウム成分は、少なくとも+III、又は0より大きい酸化状態を有し得る。
【0046】
本開示のいくつかの実施形態では、四酸化ルテニウム(RuO)は、例えば、不活性有機溶媒、又はエチル-メチル-フッ化溶媒混合物などのフッ化炭素溶媒などの溶媒中に溶解されてもよい。いくつかの実施形態では、溶媒中の四酸化ルテニウム(RuO)の濃度(%w/w)は、0.01%より大きい、又は0.1%より大きい、又は0.5%より大きい、又は1.0%より大きい、又は1.5%よりも大きくてもよい。いくつかの実施形態では、溶媒中の四酸化ルテニウム(RuO)の濃度(%w/w)は、100%未満、又は50%未満、又は20%未満、又は10%未満、又は5%未満、又は2%未満、又は1%未満であってもよい。四酸化ルテニウム(RuO)前駆体及びそれらの用途は、米国特許出願第2010/0212021712号に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0047】
いくつかの実施形態では、基材を四酸化ルテニウム(RuO)に曝露することは、0.1秒~2.0秒、又は約0.01秒~約10秒、又は約20秒未満、又は約10秒未満、又は約5秒未満の時間、基材上に四酸化ルテニウム(RuO)前駆体をパルスすることを含み得る。基材上への四酸化ルテニウム(RuO)前駆体のパルス中、四酸化ルテニウム(RuO)の流量は、50sccm未満、又は25sccm未満、又は15sccm未満、又は10sccm未満であってもよい。本開示のいくつかの実施形態では、四酸化ルテニウム(RuO)は、適切な溶媒に溶解されてもよく、溶媒に溶解された四酸化ルテニウム(RuO)の流量は、0.00001sccm~2000sccm、又は0.001sccm~100sccm、又は0.1sccm~20sccmであってもよい。
【0048】
四酸化ルテニウム(RuO)を含む第二の気相反応物質は、基材上に残った金属含有分子と反応し得る。いくつかの実施形態では、第二相の前駆体は、四酸化ルテニウム(RuO)を含む場合があり、反応により、ルテニウム-白金合金、ルテニウム-パラジウム合金、又は三元酸化ルテニウムが堆積し得る。
【0049】
例えば、パージガスのパルス及び/又は排気系により生成された真空により、過剰な第二の気相反応物質(例えば、四酸化ルテニウム(RuO))及び反応副生成物がある場合には、基材の表面からそれらを除去してもよい。パージガスは、任意の不活性ガス、例えば、アルゴン(Ar)、窒素(N)、又はヘリウム(He)等であることが好ましいが、これらに限定されない。一つの段階は、パージ(すなわち、パージガスのパルス)又は他の反応物質除去工程が介在する場合、一般に別の段階の直後に続くと考えられる。
【0050】
基材を第一の気相反応物質(すなわち、有機金属前駆体)及び第二の気相反応物質(すなわち、四酸化ルテニウム(RuO))と交互に接触させる堆積サイクルは、所望の厚さのルテニウム含有膜が堆積されるまで二回以上繰り返されてもよい。当然のことながら、本開示のいくつかの実施形態では、基材を第一の気相反応物質及び第二の気相反応物質と接触させる順序は、基材を最初に第二の気相反応物質と接触させるのに続いて、第一の気相反応物質と接触させる順序であってもよい。加えて、いくつかの実施形態では、周期的堆積プロセスは、基材を第二の気相反応物質(すなわち、四酸化ルテニウム(RuO))と一回又は複数回接触させる前に、基材を第一の気相反応物質(すなわち、有機金属前駆体)と一回又は複数回接触させることを含むことができ、あるいは同様に、基材を第一の気相反応物質と一回又は複数回接触させる前に、基材を第二の気相反応物質と一回又は複数回接触させることを含むことができる。更に、本開示のいくつかの実施形態は、プラズマ反応物質を含まなくてもよく、例えば第一及び第二の気相反応物質はイオン化された反応種を実質的に含まない。いくつかの実施形態では、第一及び第二の気相反応物質は、イオン化反応種、励起種及びラジカル種を実質的に含まない。例えば、第一の気相反応物質及び第二の気相反応物質の両方は、下地の基材のイオン化損傷及びそれにより生成される関連する欠陥を防止するために、プラズマ反応物質を含まないことができる。
【0051】
有機金属前駆体及び四酸化ルテニウム(RuO)を利用して、ルテニウム-白金合金、ルテニウム-パラジウム合金、又は三元酸化ルテニウムのうちの少なくとも一つを堆積させる本明細書に記載の周期的堆積プロセスは、加熱された基材を使用するALD又はCVD堆積システムで行うことができる。例えば、いくつかの実施形態では、方法は、基材をおよそ80℃~およそ150℃の温度に加熱すること、又は更に基材をおよそ80℃~およそ120℃の温度に加熱することを含み得る。もちろん、任意の所定の周期的堆積プロセス、例えばALD反応等の適切な温度ウィンドウは、表面終端及び含まれる反応物質種に依存するであろう。ここで、温度は、使用される前駆体に応じて変化し、一般に約700℃以下である。いくつかの実施形態では、蒸着プロセスの場合、堆積温度は一般に約100℃以上であり、いくつかの実施形態では、堆積温度は約100℃~約250℃であり、いくつかの実施形態では、堆積温度は約120℃~約200℃である。いくつかの実施形態では、堆積温度は約500℃より低い、又は約400℃より低い、又は約300℃より低い。場合によっては、堆積温度は約200℃より低い、約150℃より低い、又は約100℃より低いことがある。場合によっては、堆積温度は、約20℃より高い、約50℃より高い、及び約75℃より高いことがある。本開示のいくつかの実施形態では、堆積温度、すなわち堆積中の基材の温度はおよそ150℃である。
【0052】
いくつかの実施形態では、ルテニウム含有膜の成長速度は、約0.005Å/サイクル~約5Å/サイクル、約0.01Å/サイクル~約2.0Å/サイクルである。いくつかの実施形態では、ルテニウム含有膜の成長速度は、約0.05Å/サイクルより大きい、約0.1Å/サイクルより大きい、約0.15Å/サイクルより大きい、約0.20Å/サイクルより大きい、約0.25Å/サイクルより大きい、又は約0.3Å/サイクルより大きい。いくつかの実施形態では、ルテニウム含有膜の成長速度は、約2.0Å/サイクル未満、約1.0Å/サイクル未満、約0.75Å/サイクル未満、約0.5Å/サイクル未満、又は0.2Å/サイクル未満である。いくつかの実施形態では、ルテニウム含有膜の成長速度は、0.01Å/サイクル~100Å/サイクルであってもよい。いくつかの実施形態では、ルテニウム含有膜の成長速度は、0.01Å/サイクル~10Å/サイクル、又は0.05Å/サイクル~5Å/サイクル、又は0.1Å/サイクル~1Å/サイクルであってもよい。本開示のいくつかの実施形態では、ルテニウム含有膜の成長速度はおよそ10Å/サイクルである。
【0053】
本開示の実施形態は、図1の例示的方法100により詳細に例示され得る周期的堆積を含んでもよい。方法100は、反応チャンバーに少なくとも一つの基材を提供し、基材を堆積温度に加熱することを含むプロセスブロック110で開始することができ、例えば、基材はバルクシリコン基材を含んでもよく、反応チャンバーは原子層堆積反応チャンバーを含んでもよく、基材はおよそ150℃の堆積まで加熱されてもよい。方法100は、基材を金属含有気相反応物質と接触させることを含むプロセスブロック120に進んでもよく、例えば、基材はおよそ1秒の時間、有機金属前駆体と接触してもよい。基材を有機金属前駆体と接触させると、過剰な有機金属前駆体及びあらゆる反応副生成物は、パージ/排気プロセスによって反応チャンバーから除去され得る。方法100は、基材を四酸化ルテニウム(RuO)とおよそ4秒間接触させることを含む、プロセスブロック130に進み得る。基材を四酸化ルテニウム(RuO)前駆体と接触させると、過剰なRuO前駆体及びあらゆる反応副生成物は、パージ/排気プロセスによって反応チャンバーから除去され得る。
【0054】
基材が交互かつ連続的に有機金属前駆体と接触し、四酸化ルテニウム(RuO)前駆体と接触する方法は、一つの堆積サイクルを構成し得る。本開示のいくつかの実施形態では、ルテニウム含有膜を堆積させる方法は、堆積サイクルを一回又は複数回繰り返すことを含んでもよい。例えば、方法100は、方法100を継続するか又は終了するかを判断する決定ゲート140に進み得る。プロセスブロックの決定ゲート140は、堆積したルテニウム含有膜の厚さに基づいて決定され、例えば、金属含有膜の厚さが所望の装置構造に対して不十分である場合、方法100はプロセスブロック120に戻り、基材を有機金属前駆体と接触させ、そして基材を四酸化ルテニウム(RuO)前駆体と接触させるプロセスが一回又は複数回繰り返され得る。ルテニウム含有膜が所望の厚さに堆積されると、方法は終了150し、ルテニウム含有膜は、装置構造を形成するための追加的なプロセスを受けることができる。
【0055】
本開示のいくつかの実施形態では、方法100は、本開示の実施形態によって堆積されたルテニウム含有膜中の、ルテニウム含有量、すなわち、ルテニウムの原子百分率at-%を制御するために利用され得る追加的処理工程を含んでもよい。いくつかの実施形態では、第一の追加的処理工程は、基材を有機金属前駆体と接触させた後、かつ基材を四酸化ルテニウムと接触させる前に実施されてもよい。いくつかの実施形態では、第一の追加的処理工程は、基材を、例えば、分子状酸素の励起によって生成されるプラズマ(O)など、酸素含有プラズマと接触させることを含んでもよい。本開示のいくつかの実施形態では、基材の酸素含有プラズマへの曝露が、本開示の方法によって堆積されたルテニウム含有層中のルテニウム含有量を減少させ得る。いくつかの実施形態では、第二の追加的処理工程は、基材を有機金属前駆体と接触させた後、かつ基材を四酸化ルテニウムと接触させる前に実施されてもよい。いくつかの実施形態では、第二の追加的処理工程は、基材を追加的な有機前駆体(例えば、アルコール、アルデヒド、又はカルボン酸など)と接触させることを含みうる。
【0056】
本開示のいくつかの実施形態では、追加的有機前駆体はアルコールを含んでもよく、アルコールは、第一級アルコール、第二級アルコール、第三級アルコール、ポリヒドロキシアルコール、環状アルコール、芳香族アルコール、及び他のアルコール類の誘導体であってもよい。
【0057】
本開示のいくつかの実施形態では、追加的有機前駆体は、一般式(I)を有する化合物、一般式(II)を有するアルカンジアール化合物、ハロゲン化アルデヒド及びアルデヒドの他の誘導体からなる群から選択される、少なくとも一つのアルデヒド基(-CHO)を含んでもよい。
【0058】
それゆえ、いくつかの実施形態では、追加的有機前駆体は、以下の一般式を有するアルデヒドを含んでもよい。
R3-CHO (I)_
【0059】
式中、R3は、水素及びメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル又はヘキシルなどの直鎖又は分岐鎖C1-C20アルキル及びアルケニル基からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、R3は、メチル又はエチルからなる群から選択される。式(I)による例示的な化合物は、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、及びブチルアルデヒドであるが、これらに限定されない。
【0060】
本開示のいくつかの実施形態では、追加的有機前駆体は、一般式(II)を有するアルデヒドを含んでもよい。
OHC-R4-CHO (II)
【0061】
式中、R4は直鎖又は分岐鎖C1-C20飽和又は不飽和炭化水素である。別の方法として、アルデヒド基は相互に直接結合されてもよい(R4はnullである)。
【0062】
本開示のいくつかの実施形態では、追加的有機前駆体は、少なくとも一つの-COOH基を含んでもよく、一般式(III)の化合物、ポリカルボン酸、ハロゲン化カルボン酸、及びカルボン酸の他の誘導体からなる群から選択されうる。それゆえ、いくつかの実施形態では、追加的有機前駆体は、一般式(III)を有するカルボン酸を含んでもよい。
R5-COOH (III)
【0063】
式中、R5は、水素、又はメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルもしくはヘキシルなどの直鎖又は分岐鎖C1-C20アルキル又はアルケニル基、例えば、メチルもしくはエチルである。いくつかの実施形態では、R5は、直鎖又は分岐鎖C1~C3アルキル又はアルケニル基である。式(III)による化合物の例は、ギ酸、プロパン酸及び酢酸である。
【0064】
本開示のいくつかの実施形態では、基材の追加的有機前駆体への曝露は、堆積された膜の有機金属によって供給される金属に対するルテニウム含有層中のルテニウム含有量を増加させ得る。
【0065】
本開示のいくつかの実施形態、特に、開示された堆積方法を利用して三元酸化ルテニウムを堆積させる実施形態では、基材は、堆積プロセス前に表面前処理を受けてもよい。いくつかの実施形態では、基材の表面は、基材の表面上の炭素量を増やすためにアルコールで前処理され得る。例えば、基材は、C1~C10アルコール、C2~C10ジオール、及びC3~C10トリオールからなる群から選択されるアルコールで前処理されてもよい。本開示のいくつかの実施形態では、基材の表面は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、又は基材の表面上に化学吸着し得るC-H基を含有するその他の有機分子のうち少なくとも一つで前処理されてもよい。
【0066】
本開示のいくつかの実施形態では、本開示の方法は、例えば、純粋ルテニウムなどのルテニウム含有膜を適切な基材上に堆積させるために利用され得る。いくつかの実施形態では、基材上のルテニウム含有膜の核形成は遅延されてもよく、すなわち、堆積が起こらないインキュベーション期間がある。例えば、酸化ケイ素表面上のルテニウム堆積については、膜を堆積させる前に、100堆積サイクルを超えるインキュベーション期間があってもよい。インキュベーション期間を改善し、ルテニウム含有膜のより速い核形成を可能にするために、基材を堆積前に処理してもよい。従って、本開示のいくつかの実施形態では、基材表面は、インキュベーション時間を減少させ、ルテニウム含有膜の核形成を増加させるために、有機分子で前処理され得る。いくつかの実施形態では、有機分子は、アルコール、又は例えば、トリメチルアルミニウム(TMA)などの有機金属を含み得る。例えば、基材表面は酸化シリコン表面を含んでもよく、酸化シリコン表面は、基材をルテニウム前駆体と接触させる前に、トリメチルアルミニウム(TMA)に曝露されてもよい。トリメチルアルミニウム(TMA)を使用した酸化シリコン表面のこのような前処理は、インキュベーション時間を大幅に減少させ、例えば、四酸化ルテニウム(RuO)及び水素(H)堆積プロセスを介した純粋なルテニウムなど、ルテニウム含有膜の迅速な核形成を可能にし得る。
【0067】
例えば、本明細書に記載されるいくつかの実施形態に従って堆積させたルテニウム-白金合金、ルテニウム-パラジウム合金、又は三元酸化ルテニウムなど、ルテニウム含有膜を含む薄膜は、連続的な薄膜であってもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のいくつかの実施形態に従って堆積させたルテニウム含有膜を含む薄膜は、約100nm未満、約60nm未満、約50nm未満、約40nm未満、約30nm未満、約25nm未満、又は約20nm未満、又は約15nm未満、又は約10nm未満、又は約5nm未満若しくはそれ未満の厚さで、連続的であり得る。本明細書で言及される連続性は、物理的連続性又は電気的連続性であり得る。いくつかの実施形態では、膜が物理的に連続し得る厚さは、膜が電気的に連続する厚さと同じでなくてもよく、膜が電気的に連続し得る厚さは、膜が物理的に連続している厚さと同じでなくてもよい。
【0068】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のいくつかの実施形態に従って堆積させたルテニウム含有膜は、約20nm~約100nmの厚さを有することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のいくつかの実施形態に従って堆積させたルテニウム含有膜は、約20nm~約60nmの厚さを有することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のいくつかの実施形態に従って堆積させたルテニウム含有膜は、約20nmを超える、約30nmを超える、約40nmを超える、約50nmを超える、約60nmを超える、約100nmを超える、約250nmを超える、約500nmを超える又はそれを超える厚さを有することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のいくつかの実施形態に従って堆積させたルテニウム含有膜は、約50nm未満、約30nm未満、約20nm未満、約15nm未満、約10nm未満、約5nm未満、約3nm未満、約2nm未満、又は約1nm未満の厚さを有することができる。
【0069】
本開示のいくつかの実施形態では、ルテニウム含有膜は、例えば高いアスペクト比特徴を含む三次元構造上に堆積し得る。いくつかの実施形態では、ルテニウム含有膜のステップカバレッジは、アスペクト比(高さ/幅)が約2より大きい、約5より大きい、約10より大きい、約25より大きい、約50より大きい、又は約100より大きい構造において、約50%以上、約80%以上、約90%以上、約95%、約98%、又は約99%又はそれより大きい。
【0070】
本開示のいくつかの実施形態では、有機金属前駆体は、有機金属白金前駆体を含んでもよく、本開示の方法により堆積させたルテニウム含有膜は、ルテニウム-白金合金を含んでもよい。いくつかの実施形態において、ルテニウム-白金合金は、5原子%よりも大きい、又は10原子%よりも大きい、又は15原子%よりも大きい、又は25原子%よりも大きい、又は50原子%よりも大きい、又は75原子%よりも大きい、又は90原子%よりも大きい白金含有量を含み得る。いくつかの実施形態では、ルテニウム-白金合金は、およそ15原子%の白金含有量を含んでもよい。
【0071】
追加的実施形態では、ルテニウム-白金合金は、約20原子%未満の酸素、又は約10原子%未満の酸素、又は約5原子%未満の酸素、又は約2原子%未満の酸素を含んでもよい。さらなる実施形態では、ルテニウム-白金合金は、約10原子%未満の水素、又は約5原子%未満の水素、又は約2原子%未満の水素、又は約1原子%未満の水素を含んでもよい。またさらなる実施形態では、ルテニウム-白金合金は、約10原子%未満の炭素、又は約5原子%未満の炭素、又は約2原子%未満の炭素、又は約1原子%未満の炭素、又は約0.5原子%未満の炭素を含むことができる。本明細書で概要を述べる実施形態では、元素の原子濃度は、ラザフォード後方散乱(RBS)を利用して決定され得る。
【0072】
本明細書に開示される周期的堆積プロセスによって堆積されたルテニウム-白金合金は、例えば、燃料電池用途の陽極触媒として、及び半導体トランジスタ用途の仕事関数金属として、様々な状況で利用され得る。
【0073】
より詳細には、本開示の方法によって堆積されるルテニウム-白金合金は、直接メタノール燃料電池(DMFC)の陽極触媒などの電極として利用され得る。DMFCは、メタノール水溶液の酸化が陽極で起こる、広く知られている膜電気化学発生器である。DMFCは、液体燃料を使用し、これはエネルギー密度に関して優れた利点をもたらし、かつ充填又は補充がより簡単でより迅速であるため、他のタイプの低温燃料電池と比較して非常に魅力的である。多くの研究では、陽極触媒の改善に集中しており、触媒活性の観点からは白金及びルテニウム合金が非常に好ましい。しかし、白金及びルテニウムは、従来の形成方法を利用して真の合金に組み合わせることが非常に困難であり、従って、本開示は高品質なルテニウム-白金合金の形成方法を提供する。例えば、本開示のいくつかの実施形態では、ルテニウム-白金合金を、例えば、炭素支持体などの不活性支持体上に堆積させて、燃料電池装置で使用する触媒陽極を形成してもよい。
【0074】
本開示のいくつかの実施形態では、本明細書の方法開示によって堆積されたルテニウム-白金合金は、例えば、平面トランジスタ構造又はFinFETなどの複数ゲートトランジスタなどのトランジスタ構造中の仕事関数金属として利用され得る。より詳細には、図2を参照すると、半導体デバイス構造200は、半導体本体216と、半導体本体216の上に配置されたルテニウム-白金合金を含むゲート電極210とを備え得る。いくつかの実施形態では、半導体デバイス構造200は、トランジスタ構造を備えてもよく、またソース領域202、ドレイン領域204、及びその間のチャネル領域206を含んでもよい。トランジスタゲート構造208は電極210、すなわちゲート電極を備えてもよく、ゲート電極は、ゲート誘電体212によってチャネル領域206から分離されてもよい。本開示によると、ゲート電極210は、本明細書に記載の周期的堆積方法によって堆積されたルテニウム-白金合金を含み得る。図2に示すように、いくつかの実施形態では、トランジスタゲート構造208は、ゲート電極210上に形成された一つ又は複数の追加的導電層214をさらに備えうる。一つ又は複数の追加的導電層214は、ポリシリコン、耐熱金属、遷移金属炭化物、及び遷移金属窒化物のうちの少なくとも一つを含んでもよい。
【0075】
本開示のいくつかの実施形態では、有機金属前駆体は、アルミニウム、チタン、ビスマス、亜鉛、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される金属を含んでもよく、本開示の方法は、三元酸化ルテニウムを堆積させることを含み得る。例えば、本明細書に開示される周期的堆積方法は、一般式MRuの三元酸化ルテニウムの堆積に利用することができ、式中、Mはアルミニウム、チタン、ビスマス、亜鉛、及びそれらの組み合わせから選択される金属であり、Ruはルテニウム、Oは酸素である。従って、本開示の実施形態は、酸化アルミニウムルテニウム(AlRu)、酸化チタンルテニウム(TiRu)酸化ビスマスルテニウム(BiRu)及び酸化亜鉛ルテニウム(ZnRu)のうち少なくとも一つを堆積させるために利用され得る。
【0076】
本開示のいくつかの実施形態では、三元酸化ルテニウム(MRu)は、1原子%よりも大きい、又は10原子%よりも大きい、又は15原子%よりも大きい、又は20原子%よりも大きい金属含有量、すなわちMの原子%を含んでもよい。本開示のいくつかの実施形態では、三元酸化ルテニウム(MRu)は、ルテニウム含有量、すなわち、1原子%よりも大きい、10原子%よりも大きい、又は15原子%よりも大きい、又は20原子%よりも大きいルテニウム含有量、すなわちRuの原子%を含んでもよい。本開示のいくつかの実施形態では、三元酸化ルテニウム(MRu)は、20原子%よりも大きい、又は40原子%よりも大きい、又は60原子%よりも大きい、又は65原子%よりも大きい酸素含有量、すなわちOの原子%を含んでもよい。
【0077】
追加的実施形態では、三元酸化ルテニウムは、約5原子%未満の水素、又は約2原子%未満の水素、又は約1原子%未満の水素を含んでもよい。またさらなる実施形態では、三元酸化ルテニウムは、約10原子%未満の炭素、又は約5原子%未満の炭素、又は約2原子%未満の炭素、又は約1原子%未満の炭素、又は約0.5原子%未満の炭素を含んでもよい。本明細書で概要を述べる実施形態では、元素の原子濃度は、ラザフォード後方散乱(RBS)を利用して決定され得る。
【0078】
本明細書に開示される周期的堆積プロセスによって堆積された三元酸化ルテニウム(MRu)は、例えば、燃料電池用途などの様々な状況で利用され得る。例えば、酸化チタンルテニウム(TiRu)は、水素燃料電池用途の安定触媒支持体として利用されてもよく、ここで酸化チタンルテニウムは、一般に使用される炭素支持体と置き換えられ、白金ナノ粒子が触媒材料として支持体上に堆積される。加えて、酸化ビスマスルテニウム(BiRu)は、固体酸化物燃料電池の適切な電極材料として利用され得る。
【0079】
本開示のいくつかの実施形態では、有機金属前駆体を含む第一の気相反応物質は、リチウム、カルシウム、バリウム、コバルト、鉛、及びこれらの組み合わせの群から選択される金属をさらに含んでもよい。いくつかの実施形態では、有機金属前駆体はリチウム金属を含んでもよく、堆積された膜は酸化リチウムルテニウムを含んでもよい。例えば、酸化リチウムルテニウムは、リチウムイオン電池用途の電極材料として利用され得る。いくつかの実施形態では、有機金属前駆体はカルシウム金属を含んでもよく、堆積された膜は酸化カルシウムルテニウムを含んでもよい。例えば、酸化カルシウムルテニウムは、酸素発生陽極として電気化学用途に利用されてもよい。いくつかの実施形態では、有機金属前駆体はバリウム金属を含んでもよく、堆積された膜は酸化バリウムルテニウムを含んでもよい。例えば、酸化バリウムルテニウムは、不均一触媒構造で利用され得る。いくつかの実施形態では、有機金属前駆体はコバルト金属を含んでもよく、堆積された膜は酸化コバルトルテニウムを含んでもよい。例えば、酸化コバルトルテニウムは、サーミスタデバイス構造で利用され得る。いくつかの実施形態では、有機金属前駆体は鉛金属を含んでもよく、堆積された膜は酸化鉛ルテニウムを含んでもよい。例えば、酸化鉛ルテニウムは、リチウム系電池の電極、固体酸化物燃料電池中の陰極材料、及びアルコールの選択的酸化を含むがこれらに限定されないいくつかの用途で利用され得る。
【0080】
本開示のいくつかの実施形態では、本明細書に開示されるプロセスによって堆積されたルテニウム含有膜を不均一触媒として利用することができ、ルテニウム含有膜は、不均一触媒構造の少なくとも一部分を含んでもよい。例えば、ルテニウム含有膜は、触媒支持体などの適切な基材上に堆積されてもよい。いくつかの実施形態では、触媒支持体は、その上にルテニウム含有膜が堆積される高表面積支持体を含みうる。例えば、触媒支持体は、炭素、アルミナ及びシリカを含み、触媒支持体の表面積、従って不均一触媒の活性を増加させるために、触媒支持体は粉末を含み得る。本開示の実施形態に従って堆積させたルテニウム含有膜を含む不均一触媒構造は、例えば、気相酸化、選択的水素化、及び燃料電池電力用途などのいくつかの化学的プロセスを向上させるために利用され得る。
【0081】
本開示の実施形態はまた、本開示のルテニウム含有膜を形成するように構成された反応システムを含み得る。より詳細には、図3は、所定の圧力、温度、及び周囲条件下で基材(図示せず)を保持し、基材を様々なガスに選択的に曝す機構を更に含む反応チャンバー302を含む反応システム300を概略的に例示する。前駆体反応物質源304は、導管又は他の適切な手段304Aにより反応チャンバー302に連結されていてもよく、更に、前駆体反応物質源304に由来する気体前駆体を制御する、マニホールド、バルブ制御システム、質量流量制御システム、又は機構を含む。前駆体反応物質源304により供給される前駆体(図示せず)、反応物質(図示せず)は、室温及び標準大気圧条件下で液体又は固体であることができる。このような前駆体は、反応物質源の真空容器内で気化されることができ、そして前駆体は前駆体源チャンバー内で気化温度以上に維持され得る。このような実施形態では、気化された前駆体は、キャリアガス(例えば、不活性ガス(inactive gas)又は不活性ガス(inert gas))で輸送され、そして導管304Aを通って反応チャンバー302の中へ供給され得る。他の実施形態では、前駆体は、標準的な条件下で気体であることができる。このような実施形態では、前駆体は気化する必要がなく、キャリアガスを必要としない。例えば、一実施形態では、前駆体をガスボンベに貯蔵し得る。上記のように、反応システム300はまた、導管306Aにより反応チャンバーに連結されることもできる前駆体反応物質源306等の追加の前駆体反応物質源も含み得る。
【0082】
パージガス源308はまた、導管308Aを介して反応チャンバー302に連結され、反応チャンバー302に様々な不活性ガス又は希ガスを選択的に供給して、反応チャンバーからの前駆体ガス又は排気ガスの除去を支援する。供給され得る様々な不活性ガス又は希ガスは、固体、液体又は貯蔵される気体形態に由来し得る。
【0083】
図3の反応システム300はまた、反応システム300に含まれるバルブ、マニホールド、ポンプ及び他の装置を選択的に動作させるための電子回路及び機械的構成要素を提供するシステム動作及び制御機構310を備え得る。このような回路及び構成要素は、前駆体、パージガスを、それぞれの前駆体源304、306、及びパージガス源308から、導入するように動作する。システム動作及び制御機構310はまた、ガスパルスシーケンスのタイミング、基材及び反応チャンバーの温度、反応チャンバーの圧力、並びに反応システム300を適切に動作させるのに必要な様々な他の動作を制御する。動作及び制御機構310は、反応チャンバー302内外への前駆体、反応物質、及びパージガスの流れを制御するための制御ソフトウェア及び電気的又は空気制御バルブを含むことができる。制御システムは、特定のタスクを実行するソフトウェア又はハードウェアコンポーネント、例えばFPGA又はASIC等のモジュールを含むことができる。モジュールは、有利には、制御システムのアドレス指定可能な記憶媒体上に存在するように構成され、一つ又は複数のプロセスを実行するように構成され得る。
【0084】
関連技術分野の当業者は、異なる数及び種類の前駆体反応物質源及びパージガス源を備える本反応システムの他の形態が可能であることを理解する。更に、このような当業者は、反応チャンバー302の中へ選択的にガスを供給するという目的を達成するために使用され得るバルブ、導管、前駆体源、パージガス源の多くの配置があることも理解するであろう。更に、反応システムの略図として、説明を簡単にするために多くの構成要素を省略する。このような構成要素としては、例えば、様々なバルブ、マニホールド、浄化装置、ヒーター、容器、通気孔、及び/又はバイパス等を挙げることができる。
【0085】
上に記載した本開示の例示的実施形態は、添付の特許請求の範囲及びその法的等価物により定義される、本発明の実施形態の単なる例であるため、これらの実施形態によって本発明の範囲は限定されない。いかなる同等の実施形態も、本発明の範囲内にあることを意図している。実際に、記載した要素の代替の有用な組み合わせなど、本明細書に示し記載したものに加えて、本開示の様々な改変が、説明から当業者に明らかとなってもよい。このような改変及び実施形態もまた、添付の特許請求の範囲に入ると意図される。
【符号の説明】
【0086】
200 半導体デバイス構造
202 ソース領域
204 ドレイン領域
206 チャネル領域
208 トランジスタゲート構造
210 ゲート電極
212 ゲート誘電体
214 追加的導電層
216 半導体本体
300 反応システム
302 反応チャンバー
304 前駆体反応物質源
306 前駆体反応物質源
306A 導管
308 パージガス源
308A 導管
310 制御機構
図1
図2
図3