(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】基板処理装置、半導体装置の製造方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20220816BHJP
【FI】
H01L21/68 A
(21)【出願番号】P 2020548350
(86)(22)【出願日】2019-09-09
(86)【国際出願番号】 JP2019035362
(87)【国際公開番号】W WO2020066571
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-03-17
(31)【優先権主張番号】P 2018181416
(32)【優先日】2018-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡▲ざき▼ 太洋
(72)【発明者】
【氏名】高橋 哲
【審査官】中田 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-205044(JP,A)
【文献】特開平07-029963(JP,A)
【文献】特開2016-219464(JP,A)
【文献】国際公開第2018/061108(WO,A1)
【文献】特開2012-069658(JP,A)
【文献】特表2015-502667(JP,A)
【文献】米国特許第08430620(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板搬送アームと第2の基板搬送アームをそれぞれ駆動することにより基板を搬送するよう構成された基板搬送装置と、
前記基板を冷却するよう構成された基板冷却ユニット、及び前記基板搬送装置が内部に配置された搬送室と、
前記搬送室と隣接するように配置され、前記基板を加熱する処理が行われるよう構成された少なくとも1つの基板処理室と、
前記搬送室と隣接するように配置されたロードロック室と、
前記基板搬送装置を制御する制御部と、
を有し、
前記制御部は、
前記第1の基板搬送アームを制御して、前記ロードロック室内の前記基板を前記基板処理室内へ搬送する第1の搬送処理と、前記基板冷却ユニットに載置された前記基板を前記ロードロック室内へ搬送する第3の搬送処理と、を実行させ、
前記第2の基板搬送アームを制御して、前記基板処理室内の前記基板を前記基板冷却ユニットへ搬送し、前記基板冷却ユニットに載置する第2の搬送処理を実行させ、
前記第1の搬送処理と前記第3の搬送処理では、前記基板にかかる加速度の最大値が、前記第2の搬送処理において前記基板にかかる加速度の最大値よりも大きくなるように前記第1の基板搬送アームおよび前記第2の基板搬送アームを制御するよう構成さ
れ、
前記第2の搬送処理において前記基板にかかる加速度の最大値は、前記基板処理室における前記基板の処理温度に応じて異なるように設定されている、
基板処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記第1の基板搬送アームでは第1の温度以下の前記基板のみを搬送し、
前記第2の基板搬送アームでは前記第1の温度を超える前記基板のみを搬送するように、前記基板搬送装置を制御するように構成されている、
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記第1の基板搬送アームは、前記基板の下面を支持するよう構成された第1の基板保持具を備え、
前記第2の基板搬送アームは、前記基板の下面を支持するよう構成された第2の基板保持具を備え、
前記第1の基板保持具は、
前記基板の下に配置される第1の板状体と、
前記第1の板状体の上面上に配置された複数の凸部により構成され、前記基板の下面を支持するように構成された第1の支持部と、
を有し、
前記第2の基板保持具は、
前記基板の下に配置される第2の板状体と、
前記第2の板状体の上面上に配置された複数の凸部により構成され、前記基板の下面を支持するように構成された第2の支持部と、
を有し、
前記第1の支持部は、前記第2の支持部を構成する材料よりも摩擦係数が大きい材料により構成されている、
請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記第1の支持部は、ゴム材料により構成されている、
請求項3に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記第2の支持部は、セラミック材料、又は炭化珪素により構成されている、
請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記第1の支持部を構成する材料の耐熱温度は、前記第2の支持部を構成する材料の耐熱温度よりも低い、
請求項3に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記第1の温度は、前記第1の支持部を構成する材料の耐熱温度である、
請求項3に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記基板冷却ユニットは、
基板冷却プレートと、
前記基板を前記基板冷却プレートの上方又は下方で保持するように構成された基板保持部と、
を有し、
前記第2の基板搬送アームは、前記基板の下面を支持するよう構成された第2の基板保持具を有し、
前記制御部は、
前記第2の搬送処理では、前記基板を前記基板保持部によって前記基板冷却プレートの上方又は下方で保持させた後、前記基板を前記基板保持部によって保持させた状態で、前記第2の基板保持具が、前記基板冷却プレートの上方又は下方において所定時間停止する状態を維持するように、前記第2の基板搬送アームを制御するように構成されている、
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記基板処理室は複数設けられ、
前記制御部は、
複数の前記基板処理室のうち、一の前記基板処理室から他の前記基板処理室へ前記基板を搬送する動作を実行しないように、前記第1の基板搬送アーム及び前記第2の基板搬送アームを制御するように構成されている、
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記第2の搬送処理において前記基板にかかる加速度の最大値は、前記基板処理室における前記基板の処理温度が低いほど大きくなるように設定されている、
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項11】
搬送室内に設けられた基板搬送装置の第1の基板搬送アームを用い、且つ前記基板搬送装置の第2の基板搬送アームを用いずに、ロードロック室内の基板を基板処理室内へ搬送し、前記基板処理室内で前記基板を加熱する第1の搬送工程と、
前記第2の基板搬送アームを用い、且つ前記第1の基板搬送アームを用いずに、前記基板処理室内の前記基板を、前記搬送室内に設けられた基板冷却ユニットに搬送して前記基板冷却ユニットに載置し、前記基板冷却ユニットにより前記基板を冷却する第2の搬送工程と、
前記第1の基板搬送アームを用い、且つ前記第2の基板搬送アームを用いずに、前記基板冷却ユニットに載置された前記基板を前記ロードロック室内へ搬送する第3の搬送工程と、
を有し、
前記第1の搬送工程と前記第3の搬送工程では、前記第1の基板搬送アームによる前記基板の搬送時に前記基板にかかる加速度の最大値を、前記第2の搬送工程において、前記第2の基板搬送アームによる前記基板の搬送時に前記基板にかかる加速度の最大値よりも大きくし、
前記第2の搬送工程において前記基板にかかる加速度の最大値は、前記基板処理室における前記基板の処理温度に応じて異なるように設定されている、
半導体装置の製造方法。
【請求項12】
コンピュータにより基板処理装置に所定の手順を実行させるプログラムであって、
前記所定の手順は、
搬送室内に設けられた基板搬送装置の第1の基板搬送アームを用い、且つ前記基板搬送装置の第2の基板搬送アームを用いずに、ロードロック室内の基板を、前記基板を加熱する基板処理室内へ搬送する第1の搬送手順と、
前記第2の基板搬送アームを用い、且つ前記第1の基板搬送アームを用いずに、前記基板処理室内の前記基板を、前記搬送室内に設けられ、前記基板を冷却する基板冷却ユニットに搬送して、前記基板冷却ユニットに載置する第2の搬送手順と、
前記第1の基板搬送アームを用い、且つ前記第2の基板搬送アームを用いずに、前記基板冷却ユニットに載置された前記基板を前記ロードロック室内へ搬送する第3の搬送手順と、
を有し、
前記第1の搬送手順と前記第3の搬送手順では、前記第1の基板搬送アームによる前記基板の搬送時に前記基板にかかる加速度の最大値を、前記第2の搬送手順において、前記第2の基板搬送アームによる前記基板の搬送時に前記基板にかかる加速度の最大値よりも大きくし、
前記第2の搬送手順において前記基板にかかる加速度の最大値は、前記基板処理室における前記基板の処理温度に応じて異なるように設定されている、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置、半導体装置の製造方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程で用いられる基板処理装置は、ウエハ等の基板を処理する処理室と、当該処理室内への基板の搬入および当該処理室内からの基板の搬出を行う搬送装置とを備えている。例えば特開2012-82071号公報には、搬送装置および当該搬送装置が備える基板保持具(ツィーザ)が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
搬送装置による基板の搬送能力(搬送スループット)は、搬送装置を備える基板処理装置全体における基板処理能力に大きく影響するため、搬送装置による基板の搬送能力の向上が求められている。
【0004】
本開示は、基板搬送装置における基板搬送能力を向上させ、基板処理装置の処理能力を改善する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によれば、
第1の基板搬送アームと第2の基板搬送アームをそれぞれ駆動することにより基板を搬送するよう構成された基板搬送装置と、
前記基板を冷却するよう構成された基板冷却ユニット、及び前記基板搬送装置が内部に配置された搬送室と、
前記搬送室と隣接するように配置され、前記基板を加熱する処理が行われるよう構成された少なくとも1つの基板処理室と、
前記搬送室と隣接するように配置されたロードロック室と、
前記基板搬送装置を制御する制御部と、
を有し、
前記制御部は、
前記第1の基板搬送アームを制御して、前記ロードロック室内の前記基板を前記基板処理室内へ搬送する第1の搬送処理と、前記基板冷却ユニットに載置(装填)された前記基板を前記ロードロック室内へ搬送する第3の搬送処理と、を実行させ、
前記第2の基板搬送アームを制御して、前記基板処理室内の前記基板を前記基板冷却ユニットへ搬送し、前記基板冷却ユニットに載置する第2の搬送処理を実行させ、
前記第1の搬送処理と前記第3の搬送処理では、前記基板にかかる加速度の最大値が、前記第2の搬送処理において前記基板にかかる加速度の最大値よりも大きくなるように前記第1の基板搬送アームおよび前記第2の基板搬送アームを制御するよう構成されている技術が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本開示に係る技術によれば、基板搬送装置における基板搬送能力を向上させ、基板処理装置の処理能力を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の第1の実施形態に係る基板処理装置の概略構成図である。
【
図2】
図1に示す基板処理装置の一部分の垂直断面図である。
【
図3】
図1に示す基板処理装置の他の一部分の垂直断面図である。
【
図4】本開示の第1の実施形態に係る基板冷却ユニットを上方から見た構成図である。
【
図5】本開示の第1の実施形態に係る基板冷却ユニットを側方から見た断面構成図である。
【
図6】本開示の第1の実施形態に係る基板搬送装置の概略構成図である。
【
図7】本開示の第1の実施形態に係るツィーザの一例を示す斜視図である。
【
図8】本開示の第1の実施形態に係る他のツィーザの一例を示す斜視図である。
【
図9】本開示の第1の実施形態に係る基板処理装置のコントローラの構成例を示すブロック図である。
【
図10】本開示の第1の実施形態に係る基板処理工程の概要を示すフロー図である。
【
図11】本開示の第1の実施形態に係る基板搬送装置による基板搬送のシーケンスと、比較例に係る基板搬送装置による基板搬送のシーケンスとを比較するシーケンス図である。
【
図12】本開示の第1の実施形態に係るツィーザ上で熱変形した基板を搬送する際の状態の一例を示す断面図である。
【
図13】本開示の他の実施形態に係るツィーザの一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<本開示の第1の実施形態>
以下に、本開示の第1の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0009】
(1)基板処理装置の構成
先ず、本実施形態にかかる基板処理装置の構成例について、
図1~7を参照しながら説明する。本実施形態では、基板処理装置が基板に対してアニール処理を行うためのアニール装置である場合を例に挙げる。
図2は、
図1で示される基板処理装置をY軸方向に沿って切断した垂直断面図である。
図3は、
図1で示される基板処理装置をX軸方向に沿って切断した垂直断面図である。
【0010】
図1に示すように、本実施形態に係る基板処理装置10は、筐体11と、基板処理装置10の各構成部を制御するコントローラ121とを備えている。
【0011】
筐体11内には、搬送室12を中心として、2つのロードロック室14a,14b、第1の処理室群116、および第2の処理室群117が配置されている。搬送室12と各ロードロック室14a,14bとの間には、それぞれゲートバルブ361a,361bが設けられている。これらのゲートバルブ361a,361bが開くことで、搬送室12内と各ロードロック室14a,14b内とが連通可能なように構成されている。また、搬送室12と第1の処理室群116および第2の処理室群117との間にもそれぞれゲートバルブ351a,351bが設けられている。このゲートバルブ351a,351bが開くことで、搬送室12内と第1の処理室群116および第2の処理室群117内とが連通可能なように構成されている。なお、搬送室12、ロードロック室14a,14b、第1の処理室群116、および第2の処理室群117の各々の内部は、図示しない排気路及び排気路に設けられた排気バルブを介して真空ポンプ118(
図9参照)に接続されている。真空ポンプ118及び各排気バルブは、搬送室12、ロードロック室14a,14b、第1の処理室群116、および第2の処理室群117の内部の圧力が所定の値となるように、コントローラ121によって制御される。また、搬送室12内には、2つの基板冷却ユニット13a,13bが配置されている。
【0012】
筐体11外には、ロードロック室14a,14bと面するように、フロントモジュールであるEFEM(Equipment Front End Module)18が配置されている。EFEM18は、例えば、基板であるウエハ1を25枚ストックするフープ(FOUP:Front Open Unified Pod)を搭載可能に構成されている。また、EFEM18内には、大気中にて各ロードロック室14a,14bとフープとの間でウエハ1の移載を行うことが可能な大気ロボット19(
図9参照)が設けられている。
【0013】
(ロードロック室)
図2に示すように、ロードロック室14a,14b内には、例えば25枚のウエハ1を縦方向に一定間隔を隔てて収容する基板支持体(ボート)20がそれぞれ設けられている。この基板支持体20によって、各ロードロック室14a,14b内にウエハ1が保持される。基板支持体20は、例えば炭化珪素(SiC)、又はアルミニウム等で構成されている。また、基板支持体20は、ロードロック室14a,14b内において、鉛直方向(上下方向)に移動するように構成されているとともに、鉛直方向に延びる回転軸を軸として回転するように構成されている(
図2の矢印参照)。
【0014】
(第1・第2の処理室群)
図1に示すように、第1の処理室群116は、基板処理室としての処理室16a,16bを有し、第2の処理室群117は、基板処理室の一例としての処理室17a,17bを有している。また、第1の処理室群116内と第2の処理室群117内には、それぞれ基板保持台36a,36bとロボットアーム40が設けられている。処理室16aと処理室16bとは、連接空間48を介して連通している。連接空間48は、処理室16aと処理室16bとの間に設けられている。また、連接空間48には、仕切り部材46(
図2参照)が設けられている。
【0015】
ロボットアーム40は、後述するロボット30(
図2参照)により搬送されたウエハ1を受け取り、基板保持台36a,36bにそれぞれ載置するように構成されている。また、ロボットアーム40は、基板保持台36a,36bに載置されている処理済みのウエハ1を、ロボット30のツィーザ上へ移載するように構成されている。
【0016】
図2に示すように、処理室16a,16bでは、基板保持台36a,36bにそれぞれ載置された2枚のウエハ1が同時に処理される。基板保持台36a,36bには、加熱部としてのヒータ37a,37bがそれぞれ内蔵されている。ヒータ37a,37bは、ウエハ1を450℃まで昇温可能である。本実施形態では、処理室16a,16b内において、ヒータ37a,37bによってウエハ1を昇温(加熱)することにより、ウエハ1に対するアニール処理を行う。
【0017】
なお、本実施形態では基板保持台36a,36bに内蔵されたヒータ37a,37bによりウエハ1を450℃まで昇温可能な構成とした。しかし、本実施形態は、ウエハ1に対する処理の種類に応じて、より高温までウエハ1を昇温可能な構成としてもよい。例えばランプヒータを処理室16a,16b内にそれぞれ更に設けることにより、ウエハ1を1000℃程度まで昇温可能な構成としてもよい。
【0018】
(基板冷却ユニット)
搬送室12内には、基板冷却ユニット13a,13bが設けられている。なお、基板冷却ユニット13bは、基板冷却ユニット13aと同様の構成を有している。
図4および
図5に示すように、基板冷却ユニット13aは、基板冷却部材としての基板冷却プレート131aを備えている。
【0019】
基板冷却プレート131aには、基板保持部としてのスペーサ152aが4個設けられている。4個のスペーサ152aは、基板冷却プレート131aの上方で、ウエハ1を支持するように構成されている。なお、本実施形態では、基板保持部をスペーサ152aにより構成している。しかし、基板保持部は、スペーサ152aに限らない。基板保持部は、各基板冷却プレートの上方又は下方において、基板冷却プレートの上面又は下面から所定の間隔でウエハ1を支持できるように構成可能である。例えば、突起状若しくは棒状に形成された支持ピンで基板保持部を構成してもよい。また、基板冷却プレート131aの外側からウエハ1の外縁を支持するように延出した保持具などで基板保持部を構成してもよい。また、複数の基板保持部を上下方向に昇降させる駆動装置を基板冷却ユニット13aに設け、複数の基板保持部、及び複数の基板保持部で支持されたウエハ1を昇降可能に構成してもよい。
【0020】
基板冷却プレート131aの内部には、冷媒が流れる冷媒流路153aが設けられている。この冷媒流路153aを流れる冷媒によって、基板冷却プレート131aの上面側及び下面側が冷却される。これにより、スペーサ152aによって支持されたウエハ1が、冷却されるように構成されている。基板冷却プレート131aは、本体を構成する板状構造体と、板状構造体の内部に設けられた冷媒流路153aと、によって構成された構造として捉えることもできる。板状構造体は、例えばステンレス等の金属により構成される。
【0021】
図5に示すように、基板冷却ユニット13aは更に、冷媒を冷媒流路153aに供給する冷媒供給ユニット(冷媒供給部)155を備えている。冷媒供給ユニット155において冷却された冷媒は、冷媒流路153aの一端へ供給され、冷媒流路153aの他端から冷媒供給ユニット155へ戻るように循環する。冷媒供給ユニット155は、冷媒流路153aへ供給する冷媒の温度および流量を個別に調整できるように構成されている。
【0022】
本実施形態では、冷媒として水を用いている。しかし、冷媒には、他の液体(冷却溶媒)を用いてもよい。また、冷媒として気体を用いてもよい。また、冷媒流路153aではなく、ペルティエ素子等の熱電素子を用いてウエハ1を冷却してもよい。
【0023】
また、基板冷却プレート131aには、
図4に示すように、後述するツィーザ32aのフィンガープレート321a(
図7参照)、およびツィーザ32bのフィンガープレート321bと同形状の切り欠きが設けられている。これにより、フィンガープレート321a,321bが、切り欠きの内側を鉛直方向に移動可能とされている。
図4は、フィンガープレート321bが切り欠き内に挿入されている様子を示している。
【0024】
本実施形態では、処理室16a,16b等において、加熱されたウエハ1を基板冷却プレート131aの上面に載置して、ウエハ1を例えば室温まで急速に冷却可能な構成としている。但し、冷媒流路153aに流す冷媒温度を更に低くして、ウエハ1を室温未満まで冷却可能な構成としてもよい。また、基板冷却ユニット13a,13bにおいて、ウエハ1の温度を必ずしも室温まで冷却する必要はない。処理スループット等を考慮して、ウエハ1の温度が、室温より高く、基板冷却ユニット13a,13b内に搬入される前の温度よりも低い所定の温度(例えば100~300℃)となるまで、ウエハ1を基板冷却プレート131a,131b上に載置してウエハ1の冷却を行うようにしてもよい。
【0025】
また、基板冷却ユニット13a,13bは、搬送室12内に設けられている。基板冷却ユニット13a,13bに搬送されたウエハ1は、搬送室12と同じ雰囲気下で冷却される。すなわち、基板冷却ユニット13a,13bと搬送室12との間には、ゲートバルブなどの両者間を隔てる構成は設けられていない。
【0026】
(ロボット(基板搬送装置))
図1に示すように、搬送室12内には、ロードロック室14a,14bと、第1の処理室群116および第2の処理室群117と、基板冷却ユニット13a,13bとの間でウエハ1を搬送する基板搬送装置の一例としてのロボット30が設けられている。
図6に示すように、ロボット30は、ウエハ1(
図4参照)を下面から支持するように保持する基板保持具の一例であるツィーザと、当該ツィーザを移動させる基板搬送アームの一例としてのアームとを備えている。
【0027】
ツィーザは、第1の基板保持具の一例であるツィーザ32aと、第2の基板保持具の一例であるツィーザ32bとから構成されている。アームは、ツィーザ32aを先端に備えるアーム34aと、ツィーザ32bを先端に備えるアーム34bとから構成されている。ツィーザ32aおよびツィーザ32bは、ともに二又状の形状をしており、上下方向に所定の間隔で離間されている。また、ツィーザ32aおよびツィーザ32bは、アーム34aおよびアーム34bからそれぞれ略水平で、かつ、同じ方向に延びている。これらのツィーザ32aおよびツィーザ32bは、それぞれが搬送対象物であるウエハ1を支持するように構成されている。ツィーザ32aおよびツィーザ32bの詳細な構造については後述する。
【0028】
アーム34a,34bは、それぞれが別個に、水平方向(
図6中のX1,X2方向)に水平移動できるように構成されている。また、アーム34a,34bは、それぞれが別個に、
図6中のR方向に回転移動できるように構成されている。さらに、アーム34a,34bは、それぞれが別個に、
図6中のZ方向に昇降移動できるように構成されている。アーム34a,34bは、互いが干渉することなく個別移動が可能となるように配置されている。本実施形態では、ツィーザ32aが上方側に位置し、ツィーザ32bが下方側に位置した状態で、それぞれが干渉することなく別個に移動し得るように構成されている。
【0029】
(上ツィーザ)
ツィーザ32aは、
図7に示すように、例えばφ300mmの円板状基板であるウエハ1を支持する基板保持具の一例である。このツィーザ32aは、ウエハ1の支持基体である第1の板状体の一例としてのフィンガープレート321aを有している。フィンガープレート321aは、例えば酸化物系のセラミック材料(アルミナセラミック等)又はSiCにより、二股フォーク状に形成されている。また、フィンガープレート321aは、一対の帯形状部分を有している。各帯形状部分は、ツィーザ32aがウエハ1を支持している状態において、ウエハ1の一部に重なるように配置されている。また、各帯形状部分の先端は、ツィーザ32aがウエハ1を支持している状態において、ウエハ1の外周端縁よりも外側の位置まで延びている。
【0030】
フィンガープレート321a上には、複数の凸部により構成される第1の支持部322aが設けられている。第1の支持部322aは、ウエハ1の径より小さく、中心がウエハ1の中心と同じ位置にある円の円周上(すなわちウエハ1の径より小さい同心円の円周上)に設けられている。後述するガイド側壁324aによって囲まれるフィンガープレート321a上の領域内には、フィンガープレート321aの上面からウエハ1側に向けて突出する複数の凸部により構成される第1の支持部322aが形成されている。ここで、第1の支持部322aを構成する複数の凸部は、それぞれ円柱状のパッドにより構成されている。
【0031】
[第1の支持部]
複数の円柱状のパッドのそれぞれは、ゴム材料(室温においてゴム弾性を有する高分子材料)により形成されている。また、フィンガープレート321aの上面から突出する複数のパッドの頂面は、ウエハ1の下面(被処理面の反対面)にそれぞれ当接される。これらのパッドによって、ウエハ1の下面を支持する第1の支持部322aが構成されている。本実施形態では、第1の支持部322aをゴム材料で形成されたパッドにより構成することにより、第1の支持部322aをフィンガープレート321aと同材料で形成されたパッド等により構成する場合に比べて、第1の支持部322a(特にウエハ1の下面との接触面)とウエハ1の下面との間の摩擦係数(摩擦力)を大きくすることができる。
【0032】
ゴム材料としては特に、耐熱性および耐摩耗性等の特性に優れた合成ゴムを用いることが望ましい。ゴム材料としては、例えば、フッ素ゴム、シリコンゴム、又はパーフロロエラストマー等の合成ゴムが用いられる。これらの合成ゴムの耐熱温度は、一般的に200~350℃程度である。
【0033】
本実施形態において、第1の支持部322aとウエハ1の下面との間で十分な摩擦力を得るため、パッドの直径はφ5.0mm以上であることが望ましい。また、ウエハ1の下面へのパッドの張り付きを避けるため、パッドの直径はφ20.0mm以下であることが望ましい。本実施形態では、パッドの直径をφ10.0mmとしている。
【0034】
また、第1の支持部322aを構成する円柱状のパッドは、フィンガープレート321a面上(上面上)の一つの円周上において、ウエハ1を均等に支持可能な複数箇所に分散して配置されている。ウエハ1を均等に支持可能な複数箇所としては、例えば、ウエハ1の上面の中心点(図心)を基準とした場合に点対称となる複数箇所、およびウエハ1の上面の中心点を通る線分を基準とした場合に線対称となる複数箇所(左右均等な複数箇所等)が挙げられる。第1の支持部322aを構成する円柱状のパッドは、フィンガープレート321aの上面上の一つの円周上において、互いに離間する4箇所に分散配置されている。
【0035】
このようにフィンガープレート321aの4箇所へパッドを分散配置することによって、フィンガープレート321aの上面上の一つの円周上には、4つの支持箇所(パッド)が存在する。4つの支持箇所(パッド)は、例えば、ウエハ1の外周端縁近傍の4箇所を均等に支持する。これら4つの支持箇所によって、ウエハ1に対する支持部が構成される。なお、ここでは、パッドをフィンガープレート321aの4箇所へ分散配置した例を挙げている。しかし、パッドの配置は、フィンガープレート321aの4個所に限定されない。パッドは、例えばフィンガープレート321aの4箇所未満、又は5箇所以上へ分散配置してもよい。なお、第1の支持部322aを構成する複数の円柱状のパッドのうち、対称関係にある複数のパッドは、ウエハ1に対する支持面積を互いに等しく構成することが望ましい。
【0036】
[ガイド側壁]
フィンガープレート321aの各帯形状部分の先端部分には、ウエハ1の外周形状に対応する円弧状のガイド側壁324aが設けられている。また、各帯形状部分の先端部分と対向する側(すなわちツィーザ32aの根本側)にも、ウエハ1の外周形状に対応する円弧状のガイド側壁324aが設けられている。これらのガイド側壁324aは、第1の支持部322aを構成する凸部であるパッドよりもそれぞれ高く形成されている。
【0037】
(下ツィーザ)
ツィーザ32bは、
図8に示すように、ツィーザ32aと同様、ウエハ1を支持する基板保持具の一例である。このツィーザ32bは、ウエハ1の支持基体である二股フォーク状の第2の板状体の一例としてのフィンガープレート321bを有している。
【0038】
フィンガープレート321b上には、第2の支持部322bが設けられている。第2の支持部322bは、ガイド側壁324bによって囲まれる領域内で、かつ、ウエハ1の径より小さい同心円の円周上に配置された複数の凸部により構成されている。第2の支持部322bを構成する複数の凸部は、フィンガープレート321bの上面からウエハ1側に向けて突出するように形成されている。フィンガープレート321b及びガイド側壁324bの構成は、ツィーザ32aのフィンガープレート321a及びガイド側壁324aの構成と同様である。また、ガイド側壁324bは、第2の支持部322bを構成する凸部よりもそれぞれ高く形成されている。
【0039】
(第2の支持部)
第2の支持部322bは、それぞれ円弧状に形成された複数の凸部(以下、「円弧状凸部」という)により構成されている。これら複数の円弧状凸部は、いずれもフィンガープレート321bと同材料によって形成されている。また、フィンガープレート321bの上面から突出する複数の円弧状凸部の頂面は、ウエハ1の下面にそれぞれ当接される。これらの円弧状凸部によって、ウエハ1の下面を支持する第2の支持部322bが構成されている。
【0040】
(上ツィーザと下ツィーザの対比)
ここで、ツィーザ32aとツィーザ32bとの構成の相違について説明する。上述の通り、ツィーザ32aの第1の支持部322aは、ゴム材料により形成される複数のパッドにより構成されている。これに対して、ツィーザ32bの第2の支持部322bは、フィンガープレート321bと同材料により形成された複数の円弧状凸部により構成されている。この構造上の相違点によりツィーザ32aとツィーザ32bは、以下のような違いを有している。
【0041】
(搬送可能速度の相違)
第1の支持部322aを構成する複数のパッドは、ゴム材料で形成されている。一方、第2の支持部322bを構成する複数のパッドは、セラミック材料又はSiC等により形成されている。そのため、搬送対象であるウエハ1の下面に対する第1の支持部322aの摩擦係数(摩擦力)が、ウエハ1の下面に対する第2の支持部322bの摩擦係数(摩擦力)に比べて大きい。したがって、ツィーザ32aを用いてウエハ1を搬送する場合は、ツィーザ32bを用いてウエハ1を搬送する場合に比べて、搬送中におけるウエハ1のずれおよび滑りが発生しにくい。より具体的には、例えば、搬送中にウエハ1にかかる加速度が同じ場合であっても、ツィーザ32aを用いてウエハ1を搬送する場合は、ツィーザ32bを用いてウエハ1を搬送する場合に比べて、ウエハ1のずれおよび滑りが発生しにくい。したがって、ツィーザ32aを用いてウエハ1を搬送する場合は、ウエハ1のずれおよび滑りの発生を抑制しながら、ウエハ1の搬送速度を、ツィーザ32bを用いてウエハ1の搬送する場合のウエハ1の搬送速度よりも大きくすることができる。
【0042】
(搬送可能なウエハ温度の相違)
第1の支持部322aを構成する複数のパッドは、ゴム材料で形成されている。そのため、第1の支持部322aの耐熱温度は、セラミック材料又はSiC等により形成されている第2の支持部322bの耐熱温度に比べて低い。したがって、ツィーザ32aの耐熱温度よりも高い温度のウエハ1をツィーザ32aを用いて搬送すると、ゴム材料で形成されたパッドの変形、又はウエハ1の下面へのパッドの張り付きが発生しやすくなる。すなわち、パッドのゴム材料の耐熱温度よりも高い温度まで加熱されたウエハ1を、ツィーザ32aを用いて搬送することは望ましくない。パッドのゴム材料の耐熱温度よりも高い温度まで加熱されたウエハ1は、ツィーザ32bを用いて搬送することが望ましい。
【0043】
(コントローラ)
図9に示すように、制御部(制御手段)の一例であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a、RAM(Random Access Memory)121b、記憶装置121c、およびI/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b、記憶装置121c、およびI/Oポート121dは、内部バス121eを介して、CPU121aとデータ交換可能なように接続されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。
【0044】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、又はHDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムと、後述する基板処理の工程を行う手順および条件等が記載されたプロセスレシピと等が、読み出し可能に格納(記憶)されている。プロセスレシピは、後述する基板処理工程における各手順をコントローラ121(CPU121a)に実行させるプログラムとして機能する。以下、このプロセスレシピおよび制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。また、プロセスレシピを、単に、レシピともいう。本明細書におけるプログラムとは、レシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、レシピおよび制御プログラムの両方を含む場合がある。RAM121bは、CPU121aよって読み出されたプログラムおよびデータ等が一時的に保持されるメモリ領域として構成されている。
【0045】
I/Oポート121dは、ロボット30、ゲートバルブ351a,351b,361a,361b、冷媒供給ユニット155、ロボットアーム40、およびヒータ37a,37b等に接続されている。
【0046】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからレシピを読み出すように構成されている。CPU121aは、読み出したレシピの内容に沿うように、ロボット30による基板搬送動作、ゲートバルブ351a,351b,361a,361bの開閉動作、ヒータ37a,37bの温度調整動作、真空ポンプ118の起動および停止、および大気ロボット19による基板搬送動作等を制御するように構成されている。
【0047】
コントローラ121は、外部記憶装置(例えば、ハードディスク等の磁気ディスク、CD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、又はUSBメモリ等の半導体メモリ)123に格納された上述のプログラムを、コンピュータにインストールすることにより構成することができる。記憶装置121cおよび外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、記憶装置121cおよび外部記憶装置123を総称して、単に、記録媒体ともいう。本明細書における記録媒体には、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、記憶装置121cおよび外部記憶装置123の両方を含む場合がある。なお、コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置123を用いず、インターネット又は専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0048】
(2)基板処理装置の動作
次に、本実施形態にかかる基板処理装置10の動作について、
図10に示す基板処理装置10における基板処理フローに沿って説明する。
【0049】
(大気側搬入工程S100)
まず、CPU121aは、EFEM18からロードロック室14a内へ未処理のウエハ1を移載し、ロードロック室14a内を気密に閉塞する。その後、CPU121aは、ゲートバルブ361aを開放し、ロードロック室14aと搬送室12を連通させる。
【0050】
(第1の搬送工程S110)
続いて、CPU121aは、ロボット30のアーム34aを駆動して、ロードロック室14a内の基板支持体20が保持するウエハ1をツィーザ32aで受け取る。その後、CPU121aは、ゲートバルブ351a又はゲートバルブ351bを開放し、ツィーザ32a上のウエハ1を、第1の処理室群116内又は第2の処理室群117内のいずれかへ搬送する。なお、第1の処理室群116および第2の処理室群117は、ウエハ1を同様に処理する。そのため、以下では、第1の処理室群116内へウエハ1を搬入し、ウエハ1を処理する場合について説明し、第2の処理室群117内へウエハ1を搬入し、ウエハ1を処理する場合の説明は省略する。
【0051】
第1の処理室群116に搬送されたウエハ1を処理室16aで処理する場合、ロボット30は、ウエハ1を保持するツィーザ32aを第1の処理室群116内に挿入し、基板保持台36a上にウエハ1を載置する。また、第1の処理室群116に搬送されたウエハ1を処理室16bで処理する場合、ロボット30は、ウエハ1を保持するツィーザ32aを第1の処理室群116内に挿入し、ロボットアーム40とツィーザ32aとの間でウエハ1の受け渡しを行う。ロボットアーム40は、受け取ったウエハ1を基板保持台36b上に載置するように動作する。
ここで、ロボット30により、ロードロック室14a又はロードロック室14b内から第1の処理室群116又は第2の処理室群117内にウエハ1を搬送するまでの工程を第1の搬送工程S110と称する。
後述するように、本実施形態では、第1の搬送工程S110において、アーム34a及びツィーザ32aのみを用い、アーム34b及びツィーザ32bを用いないように、ロボット30がコントローラ121(CPU121a)により制御される。
【0052】
(基板処理工程S120)
その後、CPU121aは、ゲートバルブ351aを閉塞し、基板保持台36a,36b上のウエハ1をヒータ37a,37bによってそれぞれ加熱する。これにより、ウエハ1に所定の処理が施される。本実施形態では、ウエハ1が400℃まで昇温され、ウエハ1にアニール処理が実行される。
【0053】
(第2の搬送工程S130)
第1の処理室群116内での処理が完了すると、CPU121aは、ゲートバルブ351aを開放する。その後、CPU121aは、ロボット30のアーム34bを駆動させて、ツィーザ32bを第1の処理室群116内へ挿入し、処理された基板保持台36a上のウエハ1をツィーザ32bで受け取るか、又は基板保持台36b上で処理されたウエハ1をロボットアーム40からツィーザ32bで受け取る。続いて、ロボット30は、ツィーザ32b上に保持された処理済みのウエハ1を第1の処理室群116内から搬送室12内を介して、基板冷却ユニット13a又は基板冷却ユニット13bのいずれかへ搬送して装填する。なお、基板冷却ユニット13aおよび基板冷却ユニット13bは、ウエハ1を同様に冷却する。そのため、以下では、基板冷却ユニット13aへウエハ1を搬送して冷却する場合について説明し、基板冷却ユニット13bへウエハ1を搬送して冷却する場合については、説明を省略する。
【0054】
ロボット30は、基板冷却ユニット13aにウエハ1を搬送し、スペーサ152a上にウエハ1を載置する。具体的には、ロボット30は、ツィーザ32bで支持したウエハ1の下面の高さがスペーサ152aよりも高い状態で、ツィーザ32bを基板冷却プレート131aの上方に移動させる。続いて、ロボット30は、ツィーザ32bを下方に降下させることにより、ウエハ1をスペーサ152a上に載置する。
【0055】
ここで、ロボット30により、第1の処理室群116又は第2の処理室群117内から基板冷却ユニット13a又は基板冷却ユニット13bにウエハ1を搬送する工程を第2の搬送工程S130と称する。
後述するように、本実施形態では、第2の搬送工程S130において、アーム34b及びツィーザ32bのみを用い、アーム34a及びツィーザ32aを用いないように、ロボット30がコントローラ121(CPU121a)により制御される。
【0056】
(基板冷却工程S140)
基板冷却プレート131a上に載置されたウエハ1の下面は、内部を流れる冷媒により冷却された基板冷却プレート131aと接する。これにより、ウエハ1が、所定の温度未満になるまで冷却される。本実施形態では、200℃未満になるまでウエハ1が冷却される。
【0057】
(第3の搬送工程S150)
ウエハ1を所定の温度未満まで冷却する冷却工程が完了すると、ロボット30は、アーム34aを駆動させてツィーザ32aを基板冷却ユニット13a内に挿入し、基板冷却プレート131a上に載置された冷却済みのウエハ1をツィーザ32aで受け取る。
続いて、CPU121aは、ゲートバルブ361bを開放し、ツィーザ32aで受け取ったウエハ1を、ロードロック室14b内の空き状態の基板支持体20上へ移載する。
ここで、ロボット30により、基板冷却ユニット13a又は基板冷却ユニット13bからロードロック室14b内にウエハ1を搬送するまでの工程を第3の搬送工程S150と称する。
後述するように、本実施形態では、第3の搬送工程S150において、アーム34a及びツィーザ32aのみを用い、アーム34b及びツィーザ32bを用いないように、ロボット30がコントローラ121(CPU121a)により制御される。
【0058】
(大気側搬出工程S160)
以上のような処理動作が繰り返されて、ロードロック室14b内の基板支持体20が所定数の処理済みのウエハ1を受け取ると、CPU121aによってゲートバルブ361bが閉塞され、ロードロック室14b内が大気に開放される。その後、処理済みのウエハ1がロードロック室14b内からEFEM18へ移載され、図示しない外部搬送装置により外部に搬出される。
【0059】
(3)ロボット30による基板搬送動作
続いて、上述した第1~第3の搬送工程S110,S130,S150におけるロボット30の動作について、
図11を用いて本実施形態と比較例との対比を行いながら詳述する。
図11中のシーケンスAは、本実施形態に係るロボット30の動作シーケンスであり、シーケンスBは、比較例に係るロボット30の動作シーケンスである。また、シーケンスA,Bの各々において、上段はアーム34aによる基板搬送動作を示しており、下段はアーム34bによる基板搬送動作を示している。
【0060】
ここで、本実施形態と比較例との相違点の一つは、本実施形態ではアーム34aがツィーザ32aを備えるのに対して、比較例ではアーム34aがツィーザ32bと同一の構成を有するツィーザ(以下説明の便宜のためこのツィーザを「ツィーザ32b´」と称する)を備える点である。すなわち、比較例では、アーム34bがツィーザ32bを備え、アーム34aがツィーザ32bと同一の構成を有するツィーザ32b´を備えている。
【0061】
また、本実施形態では、ツィーザ32aを備えるアーム34aを用いてウエハ1を搬送する際にウエハ1にかかる加速度の最大値Vaを最大加速度Vaとする。また、本実施形態では、ツィーザ32bを備えるアーム34bを用いてウエハ1を搬送する際にウエハ1にかかる加速度の最大値Vbを最大加速度Vbとする。本実施形態では、最大加速度Vaが最大加速度Vbよりも大きくなるように、ロボット30がコントローラ121(CPU121a)により制御される。一方、比較例では、ツィーザ32b´を備えるアーム34aを用いてウエハ1を搬送する際にウエハ1にかかる加速度の最大値Va´を最大加速度Va´とする。また、比較例では、ツィーザ32bを備えるアーム34bを用いてウエハ1を搬送する際にウエハ1かかる加速度の最大値Vb´を最大加速度Vb´とする。比較例では、最大加速度Va´と最大加速度Vb´とが同じになるように、ロボット30がコントローラ121(CPU121a)により制御される。このように本実施形態と比較例は異なる。その他の構成については、比較例と本実施形態は同様であるため、説明を省略する。
【0062】
なお、本明細書における「加速度」とは、主にウエハ1の搬送中においてウエハ1に水平方向にかかる加速度を意味する。また、本明細書における「加速度」には、第1の支持部322a又は第2の支持部322bとウエハ1の下面との間に働く摩擦力によってウエハ1の移動方向にかかる加速度全般も含まれる。
【0063】
(第1の搬送工程)
本実施形態では、上述の通り、アーム34a及びツィーザ32aを用いて第1の搬送工程S110を実行し、アーム34b及びツィーザ32bを用いて第1の搬送工程S110を実行しないように、ロボット30がコントローラ121(CPU121a)により制御される。この際、ロボット30は、アーム34aを用いたウエハ1の搬送においてウエハ1にかかる最大加速度Vaが加速度vhとなるようにアーム34aを駆動する。
【0064】
一方、比較例では、第1の搬送工程において、ツィーザ32b´を備えるアーム34aによりウエハ1を搬送する。この際、ロボット30は、アーム34aを用いたウエハ1の搬送においてウエハ1にかかる最大加速度Va´が加速度vhよりも小さい加速度vlとなるようにアーム34aを駆動する。
【0065】
加速度vhは、ツィーザ32aを用いて第1の搬送工程S110及び第3の搬送工程S150を行う際に、ウエハ1とツィーザ32aとの間でずれおよび滑りが発生しないという条件下において許容される加速度の最大値である。加速度vlは、ツィーザ32b,32b´を用いて第2の搬送工程S130を行う際に、ウエハ1とツィーザ32b,32b´との間でずれおよび滑りが発生しないという条件下において許容される加速度の最大値である。
【0066】
ここで、許容される加速度vh,vlの最大値の違いは、第1の搬送工程S110及び第3の搬送工程S150と、第2の搬送工程S130との間における次の2点の違いにより生じる。
【0067】
<基板に熱変形が発生することに起因する違い>
まず、第1の搬送工程S110及び第3の搬送工程S150と、第2の搬送工程S130とでは、搬送される基板の温度に違いがある。具体的には、第2の搬送工程S130では、処理室16a,16b内における所定の処理の過程で昇温された状態のウエハ1が搬送される。一方、第1の搬送工程S110及び第3の搬送工程S150では、処理室16a,16bにおいて昇温される前のウエハ1、又は、基板冷却ユニット13a,13bにおいて冷却された後のウエハ1が搬送される。
【0068】
ここで、ウエハ1は一般的に、常温では平面を維持している。しかし、ウエハ1が加熱されると、ウエハ1の表裏、あるいはウエハ1の面内に温度偏差が発生する。この温度偏差によって、ウエハ1に歪み、反り、又は波打つ変形などが生じることがある。このため、所定の処理の過程で昇温された状態であるウエハ1(すなわち、第2の搬送工程S130におけるウエハ1)は、処理室16a,16bにおいて昇温される前のウエハ1、又は、基板冷却ユニット13a,13bにおいて冷却された後のウエハ1(すなわち、第1の搬送工程S110又は第3の搬送工程S150におけるウエハ1)に比べて、変形が生じる可能性又は変形の度合いが大きくなる。
【0069】
また、例えば
図12に示すように、第2の搬送工程S130において、ウエハ1の中央側から外縁側に向かって反り上がるようにウエハ1が変形が発生すると、図中に示す点Aのように、第2の支持部322bの限られた部分においてウエハ1の下面(裏面)を支持する状態となる。したがって、ウエハ1の下面と第2の支持部322bとの接触面積が減少する。この結果、ウエハ1の下面と第2の支持部322bとの間の摩擦力が減少し、ウエハ1を保持する第2の支持部322bの保持力が低下する。また、ウエハ1を保持する第2の支持部322bの保持力の低下に伴って、ウエハ1の搬送中にツィーザ32b上でウエハ1の位置ずれが生じると、ウエハ1の下面と第2の支持部322bとの間で擦れが発生し、ウエハ1の下面に傷が発生したり、パーティクルが発生したりすることがある。
【0070】
従って、搬送中のウエハ1の位置ずれおよび位置ずれに伴う擦れの発生を避けるため、本実施形態では、ウエハ1の変形が生じやすい第2の搬送工程S130において許容される最大の加速度vlを、ウエハ1の変形が相対的に生じにくい第1の搬送工程S110及び第3の搬送工程S150において許容される最大の加速度vhよりも小さくする。換言すると、本実施形態によれば、ウエハ1の変形が相対的に生じにくい第1の搬送工程S110及び第3の搬送工程S150における最大の加速度vhを、第2の搬送工程S130における最大の加速度vlよりも大きくすることができる。
【0071】
また、ウエハ1が加熱されることにより生じる変形は、一般的に、ウエハ1の温度が高くなるほど発生しやすく、また、変形の度合いも大きくなりやすい傾向がある。したがって、処理室16a,16bにおいて行われる所定の処理においてウエハ1が昇温される温度(処理温度)に応じて、第2の搬送工程S130における最大の加速度vlを異なるように設定してもよい。例えば、処理温度が相対的に低くなる場合は、最大の加速度vlが大きくなるように変更し、処理温度が相対的に高くなる場合は、最大の加速度vlが小さくなるように変更してもよい。
【0072】
<ツィーザの構成に起因する違い>
また、上述の通り、本実施形態では、第1の支持部322a上でウエハ1を保持するツィーザ32aを用いることにより、第2の支持部322b上でウエハ1を保持するツィーザ32b,32b´を用いる場合に比べて、ウエハ1のずれおよび滑りが発生しない加速度値を大きくすることができる。すなわち、本実施形態では、加速度vh>加速度vlとすることができる。
【0073】
本実施形態では、加速度vh>加速度vlとし、最大加速度Va=vh、最大加速度Vb=vlとして本工程(第1の搬送工程S110)を実行することにより、本工程におけるウエハ1の搬送速度(搬送スループット)を最大化することができる。一方、比較例では、最大加速度Va=Vb=vlとして本工程を実行するため、ウエハ1の搬送速度(搬送スループット)の観点で、本実施形態に劣っている。
図11において示す通り、本工程完了までに要する時間は、本実施形態の場合よりも比較例の場合の方が長い。
【0074】
なお、他の実施形態としては、加速度vh及び加速度vlはそれぞれ、前述した条件下における最大値である必要はなく、少なくとも加速度vh>加速度vlであればよい。ただし、ウエハ1の搬送スループットを最大化するという観点からは、本実施形態のように、加速度vh,vlが前述した条件下における最大値であることが望ましい。
【0075】
ここで、本工程(第1の搬送工程S110)は、ウエハ1が加熱される基板処理工程S120よりも前に実行される。そのため、本工程において、搬送されるウエハ1の温度は、基板処理工程S120により加熱された後の温度よりも低い。したがって本工程では、ゴム材料により形成されたパッドにより構成された第1の支持部322aでウエハ1を保持するツィーザ32aを用いてウエハ1を搬送しても、パッドの変形、およびウエハ1の下面へのパッドの張り付きといった課題をほとんど考慮する必要がない。
【0076】
換言すれば、本工程では、アーム34a及びツィーザ32aを用いて、第1の支持部322aを構成するパッドのゴム材料の耐熱温度(以下、「第1の温度」とも称する)以下の温度であるウエハ1のみを搬送する。
【0077】
(第2の搬送工程)
本実施形態では、上述の通り、アーム34b及びツィーザ32bを用いて第2の搬送工程S130を実行するようにロボット30がコントローラ121(CPU121a)により制御される。また、本工程においては、本実施形態および比較例のいずれもが、ツィーザ32bを備えるアーム34bによりウエハ1を搬送する。したがって、本工程では、本実施形態と比較例のいずれにおいても、ロボット30は、ウエハ1にかかる最大加速度Vbが加速度vlとなるように(すなわち、Vb=vlとなるように)アーム34bを駆動する。
すなわち、
図11において示す通り、本工程完了までに要する時間は、本実施形態の場合と比較例の場合で同じである。
【0078】
ここで、本工程(第2の搬送工程S130)は、ウエハ1が加熱される基板処理工程S120よりも後に実行される。そのため、本工程において、搬送されるウエハ1の温度は、基板処理工程S120により加熱される前の温度よりも高い。したがって、第1の支持部322aを構成するパッドがゴム材料で形成されたツィーザ32aを用いて本工程におけるウエハ1を搬送しようとした場合、ウエハ1の温度が当該ゴム材料の耐熱温度(第1の温度)を超え、パッドの変形又はウエハ1の下面へのパッドの張り付きが発生する可能性がある。
【0079】
本実施形態では、アーム34b及びツィーザ32bを用いて本工程を実行し、アーム34a及びツィーザ32aを用いて本工程を実行しないように、ロボット30がコントローラ121(CPU121a)により制御される。すなわち、本工程では、アーム34b及びツィーザ32bのみを用いて、第1の支持部322aを構成するパッドのゴム材料の耐熱温度(第1の温度)を超える温度のウエハ1を搬送する。このように、本工程においてアーム34b及びツィーザ32bのみを用いるようにロボット30を制御することによって、ツィーザ32aにゴム材料を用いることによる上述の課題を回避することができる。
【0080】
(第3の搬送工程)
本実施形態では、第1の搬送工程S110と同様に、アーム34a及びツィーザ32aを用いて第3の搬送工程S150を実行し、アーム34b及びツィーザ32bを用いて本工程を実行しないように、ロボット30がコントローラ121(CPU121a)により制御される。この際、ロボット30は、アーム34aを用いたウエハ1の搬送においてウエハ1にかかる最大加速度Vaが加速度vhとなるようにアーム34aを駆動する。
【0081】
また、比較例は、第1の搬送工程S110と同様に、本工程において、ツィーザ32b´を備えるアーム34aによりウエハ1を搬送する。この際、ロボット30は、アーム34aを用いたウエハ1の搬送において、ウエハ1にかかる最大加速度Va´が加速度vhよりも小さい加速度vlとなるようにアーム34aを駆動する。
【0082】
したがって、本実施形態では、第1の搬送工程S110の場合と同様に、加速度vh>加速度vlとし、最大加速度Va=vh、最大加速度Vb=vlとして本工程を実行することにより、本工程におけるウエハ1の搬送速度(搬送スループット)を最大化することができる。
図11において示す通り、本工程完了までに要する時間は、本実施形態の場合よりも比較例の場合の方が長い。
【0083】
また、本実施形態における本工程では、第1の搬送工程S110の場合と同様に、アーム34a及びツィーザ32aを用いて、第1の温度以下のウエハ1のみを搬送する。
【0084】
以上のように、本実施形態のコントローラ121(CPU121a)は、ロードロック室14aから第1の処理室群116へウエハ1を搬送する第1の搬送工程S110と、基板冷却ユニット13aからロードロック室14bへウエハ1を搬送する第3の搬送工程S150をアーム34aに実行させるとともに、第1の処理室群116から基板冷却ユニット13aへウエハ1を搬送する第2の搬送工程S130をアーム34aに実行させないように、ロボット30を制御する。また、本実施形態のコントローラ121は、第2の搬送工程S130をアーム34bに実行させるとともに、第1の搬送工程S110と第3の搬送工程S150をアーム34bに実行させないように、ロボット30を制御する。
【0085】
また、本実施形態における第1~第3の搬送工程S110,S130,S150では、ツィーザ32aが第1の支持部322aを構成するパッドのゴム材料の耐熱温度(第1の温度)以下のウエハ1のみを搬送するように構成され、ツィーザ32bが第1の支持部322aを構成するパッドのゴム材料の耐熱温度(第1の温度)を超えるウエハ1のみを搬送するように構成されている。また、アーム34aが第1の温度以下のウエハ1のみを搬送するように、かつ、アーム34bが第1の温度を超えるウエハ1のみを搬送するように、ロボット30がコントローラ121(CPU121a)により制御される。
【0086】
(4)本実施形態にかかる効果
本実施形態によれば、以下に示す一つまたは複数の効果を奏する。
【0087】
本実施形態によれば、
図11において示す通り、第1の搬送工程S110においてロードロック室14aから第1の処理室群116へのウエハ1の搬送を開始してから、第3の搬送工程S150において基板冷却ユニット13aからロードロック室14bへのウエハ1の搬送を完了するまでの間の所要時間を、比較例の場合よりも短縮することが可能となる。すなわち、ウエハ1の搬送スループットを向上し、基板処理装置10の生産性を向上させることができる。
【0088】
また、本実施形態によれば、ツィーザ32aを構成する第1の支持部322aを形成する材料として、耐熱温度の低い材料を適用することが許容される。そのため、第1の支持部322aを形成する材料の選択自由度を大きくすることができる。たとえば、第1の支持部322aを、ゴム材料のようなウエハ1を保持する力が大きい(すなわち摩擦係数が大きい)材料により構成することが可能となる。
【0089】
また、本実施形態によれば、第1の支持部322aを構成するパッドの変形を抑制することができるので、パッド等の部品交換の頻度を少なくすることができる。
【0090】
また、本実施形態によれば、第1の支持部322aを構成するパッドがウエハ1の下面に張り付くのを回避することができる。そのため、パッドがウエハ1の下面に張り付くことによるウエハ1の搬送エラーの発生、およびウエハ1の品質低下などを防止することができる。
【0091】
また、本実施形態によれば、基板冷却ユニット13a,13bを備える基板処理装置10において基板搬送動作を行う。そのため、本実施形態では、基板冷却ユニット13a,13bを備えない基板処理装置において基板搬送動作を行う場合に比べて、低温のウエハ1を搬送する工程が実行される頻度が、加熱処理された直後のウエハ1のような高温のウエハ1を搬送する工程が実行される頻度よりも相対的に大きい。したがって、第1の温度以下のような低温のウエハ1を搬送する工程における搬送速度を大きくすることで、より効果的にウエハ1の搬送スループットを向上させることができる。
【0092】
以上のような本実施形態にかかる基板処理装置10を用いて半導体装置を製造すれば、半導体装置の製造を高効率で行うことが可能となる。
【0093】
また、第1の実施形態では、第1の支持部322aを構成する凸部として円柱状のパッドを例に説明した。しかし、第1の支持部322aを構成する凸部は、円柱状のパッドに限定されない。すなわち、第1の支持部322aを構成する凸部としては、円環状に形成された部材により構成されてもよい。より具体的には、円環状に形成された部材はO-ringにより構成されてもよい。
図13では、ツィーザ32aにおいて、O-ringにより第1の支持部322a´が構成される例が示されている。O-ringの頂面の高さは、上述した実施形態におけるパッドと同様、ガイド側壁324aよりもそれぞれ低く形成されている。
また、第1の支持部322aを構成する凸部の形状は円柱状に限られず、角柱状および円弧状等の種々の形状とすることもできる。
【0094】
<本開示の第2の実施形態>
また、本開示の第2の実施形態では、第1の実施形態における第2の搬送工程S130の後、ツィーザ32bを基板冷却ユニット13a,13bによって冷却するツィーザ冷却工程S200を更に行う。
【0095】
(ツィーザ冷却工程S200)
第1の実施形態では、第2の搬送工程S130においてウエハ1をスペーサ152a上に載置する際に、ツィーザ32bを下方に降下させる。しかし、ツィーザ冷却工程S200では、スペーサ152a上にウエハ1を載置した後、更にツィーザ32bを基板冷却プレート131aの下方の位置まで移動させ、その位置でツィーザ32bを所定時間維持するようにロボット30が制御される。具体的には、スペーサ152a上にウエハ1を載置した後、ツィーザ32aをそのまま基板冷却プレート131aの下面よりも低い位置まで垂直降下させ、その位置でツィーザ32bを所定時間だけ停止させる。なお、本明細書において基板冷却プレート131aの下方とは、基板冷却プレート131aに設けられたツィーザ32bを下方に通過させるための切り欠きの下方を含む位置のことである。
【0096】
本工程を行うことにより、温度が上昇していたツィーザ32bを、ツィーザ32bに支持されていたウエハ1によって急速に冷却することができる。ツィーザ32bを冷却することにより、熱によるツィーザ32aの変形および劣化を抑制することができる。
ツィーザ32aの停止状態を維持させる上述の所定時間は、ツィーザ32bを実質的に冷却可能な時間であればよい。しかし、上述の所定時間が長すぎると、ウエハ1の搬送スループットを低下させたり、ウエハ1を搬送する際に、過冷却されたツィーザ32bによってウエハ1に顕著な温度偏差を生じさせたりしてしまう可能性がある。そのため、上述の所定時間は、例えば5~60秒とすることができる。
【0097】
また、本実施形態では、ツィーザ32bを基板冷却プレート131aの下方に停止させる例について説明した。しかし、基板冷却ユニット13aの構成によっては、ツィーザ32bを基板冷却プレート131aの上方において停止させるようにしてもよい。
なお、本実施形態では、搬送室12内に基板冷却ユニット13a,13bが設けられているため、ウエハ1を冷却しながら、ツィーザ32bを基板冷却ユニット13a,13bによって冷却し続けることができる。
【0098】
<本開示の第3の実施形態>
また、本開示の第3の実施形態では、アーム34a,34bのいずれにおいても、第1の処理室群116内と第2の処理室群117内との間でウエハ1を搬送する動作を実行しないように、ロボット30がコントローラ121(CPU121a)により制御される。このようにロボット30を制御することにより、第1の処理室群116内および第2の処理室群117内で昇温されたウエハ1をアーム34bが搬送する際に、第2の搬送工程S130のように基板冷却ユニット13a,13bにウエハ1を搬送する動作のみが行われるため、昇温されたウエハ1をツィーザ32bで連続搬送することがない。したがって、ツィーザ32bが過度に加熱されることを防止することができる。なお、第1の処理室群116および第2の処理室群117は、基板処理室の一例である。
【0099】
<本開示の他の実施形態>
上述した実施形態では、基板処理装置10がアニール装置である場合を例に挙げた。しかし、本開示の基板処理装置は、アニール装置に限定されない。すなわち、本開示は、処理室内での処理内容によらず、処理室において基板の昇温が生じる基板処理装置に適用することが可能である。基板処理装置としては、例えば、成膜処理、エッチング処理、拡散処理、酸化処理、窒化処理、又はアッシング処理等の他の処理を行う装置が挙げられる。
【0100】
また、上述した実施形態では、アーム34aにツィーザ32aが1つ設けられ、アーム34bにツィーザ32bが1つ設けられる場合を例に挙げた。しかし、アーム34a,34bにそれぞれ設けられるツィーザ32a,32bの数は、1つに限定されない。すなわち、アーム34a,34bは、それぞれ複数のツィーザを有するように構成されてもよい。
【0101】
また、上述した実施形態では、ロボット30が2本のアーム34a,34bを有する場合を例に挙げた。しかし、ロボット30に設けられるアームの本数は、2本に限定されない。すなわち、ロボット30は、アーム34a,34b以外の他の基板搬送用のアームを有するように構成されてもよい。
【0102】
また、上述した実施形態では、第1の搬送工程S110でウエハ1が搬出されるロードロック室14a,14bと、第3の搬送工程S150でウエハ1が搬入されるロードロック室14a,14bとが異なる例について説明した。しかし、第1の搬送工程S110および第3の搬送工程S150において、ウエハ1を搬出又は搬入するロードロック室14a,14bは変更可能である。すなわち、第1の搬送工程S110及び第3の搬送工程S150において、ウエハ1が搬出又は搬入されるロードロック室14a,14bを同一にしてもよい。
【0103】
また、上述した実施形態では、搬送対象物である基板がウエハ1である場合を例に挙げた。しかし、搬送対象物である基板は、ウエハ1に限定されない。すなわち、本開示において搬送対象物となる基板は、フォトマスク、プリント配線基板、又は液晶パネル等であってもよい。
【0104】
また、上述した実施形態では、基板処理装置10が、基板処理室としての複数の処理室16a,16b,17a,17bを有する場合を例に挙げた。しかし、基板処理装置は、少なくとも1つの基板処理室を有することができる。
【0105】
以上のように、本開示は色々な形態で実施され得るので、本開示の技術的範囲が上述の実施形態に限定されることはない。例えば、上述した実施形態で説明した基板処理装置10の構成(例えば第1の処理室群116および第2の処理室群117等の構成)は一具体例に過ぎず、その要旨を逸脱しない範囲で種々に変更可能であることはいうまでもない。
【0106】
なお、2018年9月27日に出願された日本国特許出願2018-181416号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。