(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】寿命が延長されたレーザチャンバ電極及びこれを有するレーザ
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20220816BHJP
H01S 3/038 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
G03F7/20 505
G03F7/20 521
H01S3/038 A
(21)【出願番号】P 2021512575
(86)(22)【出願日】2019-08-28
(86)【国際出願番号】 US2019048622
(87)【国際公開番号】W WO2020060735
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-04-12
(32)【優先日】2018-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513192029
【氏名又は名称】サイマー リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ラミン,レイラ
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-139390(JP,A)
【文献】特開2001-274487(JP,A)
【文献】特開2013-141030(JP,A)
【文献】米国特許第07535948(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
H01S 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザチャンバのための電極であり、前記電極はコバルトと銅との合金を含
み、前記合金はCoCu(5~15wt%)である、レーザチャンバのための電極。
【請求項2】
前記合金はCo90Cu10wt%である、請求項
1に記載のレーザチャンバのための電極。
【請求項3】
レーザチャンバのための電極であり、前記電極は銅と銀との合金を含
み、前記合金はCu(x)Ag(100-x)wt%であり、xは約95から約60の範囲内である、レーザチャンバのための電極。
【請求項4】
前記合金はCu60Ag40wt%である、請求項3に記載のレーザチャンバのための電極。
【請求項5】
レーザであって、
放電チャンバと、
前記放電チャンバ内に少なくとも部分的に位置決めされる第1の電極と、
を備え、
前記第1の電極はコバルトと銅との合金を含
み、
前記合金はCoCu(5~15wt%)である、
レーザ。
【請求項6】
前記電極はアノードである、請求項5に記載のレーザ。
【請求項7】
前記合金はCo90Cu10wt%である、請求項
5に記載のレーザ。
【請求項8】
レーザであって、
放電チャンバと、
前記放電チャンバ内に少なくとも部分的に位置決めされる第1の電極と、
を備え、
前記第1の電極は銅と銀との合金を含み、
前記合金はCu(x)Ag(100-x)wt%であり、xは約95から約60の範囲内である、
レーザ。
【請求項9】
前記電極はアノードである、請求項8に記載のレーザ。
【請求項10】
前記合金はCu60Ag40wt%である、請求項8に記載のレーザ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] 本願は、2018年9月20日出願の米国出願第62/733,708号の優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[0002] 開示される本主題は、集積回路フォトリソグラフィ製造プロセスに使用されるようなレーザ生成光源に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003] ArFパワーリング増幅器エキシマ放電チャンバ(「PRA」)又はKrFエキシマ放電チャンバなどのレーザ放電チャンバにおいて、電極腐食はチャンバモジュールの耐用年数に著しい制限を課す。KrFエキシマ放電チャンバモジュールの耐用年数を延長するための一手段は、耐摩耗性のある材料のアノードを作ることを含む。アノード材料として用いるのに適した材料に関する情報は、例えば、2007年11月27日発行の米国特許第7,301,980号、及び、2004年2月10日発行の米国特許第6,690,706号に見ることができ、その両方は本願の譲受人に譲渡され、またその両方は全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0004】
[0004] フッ素含有プラズマは、金属に対する腐食性が高く、結果としてチャンバの動作中に電極腐食及び浸食が生じる。例えば、アノードの表面上に積層される腐食生成物の局所ゾーンの核生成及び成長が生じる可能性がある。これは、電極間の放電及びダウンストリームのアーク放電における非均一性につながる。これらの島状の腐食の積層は、「リーフ(reef)」形成又は「リーフィング(reefing)」と呼ぶことができる。電極上にリーフィングが生じるスポットは、電極の表面の残りの部分よりも大きくプラズマ内に突出する。したがってリーフィングは、プラズマ内にアーク放電を発生させる可能性がある。エネルギーはレーザキャビティ内よりもアーク放電内に進入するため、プラズマ内のアーク放電はレーザチャンバのエネルギーを奪うことになり、望ましくない。したがって、プラズマ内で大量のアーク放電が発生するとき、レーザチャンバの効率的な動作を維持するために電極を交換しなければならない。したがってリーフィングは、レーザチャンバ内で電極を有効に使用できる寿命を短くする。
【0005】
[0005] 浸食は、放電ギャップの幅の増加及び放電の拡大の両方につながる。これらの現象はどちらも放電のエネルギー密度の低下につながり、これによって、エネルギー出力を維持するために必要な電極間の電圧差を増加させる必要性が高まる。加えて、放電の拡大は、エネルギードロップアウト及び結果として生じるドーズエラーにつながる、ダウンストリームのアーク放電の増加につながるガスフローの除去率を低下させる。ドーズエラー率が所定の閾値より上に上昇すると、チャンバはその耐用年数の終わりに達したものとみなされ、交換しなければならない。
【0006】
[0006] したがって、重要な問題は、リーフ状の層を連続的に形成及び成長させ、結果として、不揃いな電極腐食に起因して電極が効率的にプラズマを形成するのを妨げることになる、電極材料とフッ素ガスとの間の化学反応である。
【発明の概要】
【0007】
[0007] 下記に、本発明を基本的に理解するための1つ以上の実施形態の簡略的な概要を示す。本概要は、企図されるすべての実施形態の広範な概要ではなく、すべての実施形態の主要又は重要な要素を識別することを意図するものでも、また、任意又はすべての実施形態の範囲を定めるものでもない。その唯一の目的は、後述するより詳細な説明のための前段階として、1つ以上の実施形態のいくつかの概念を簡略的な形で示すことである。
【0008】
[0008] 一実施形態の一態様によれば、レーザチャンバのための電極が開示され、電極は、銅のフッ素との生成自由エネルギーよりも大きいか又は銅のフッ素との生成自由エネルギーに等しい、フッ素との第1の生成自由エネルギーを有する第1の金属と、第1の自由エネルギーよりも小さいフッ素との第2の生成自由エネルギーを有する第2の金属との、合金を含む。第1の金属は、CO-Cu合金においてより大きな形成エネルギーを有することから、コバルトであってよい。第2の金属は、CO-Cu合金においてより小さな形成エネルギーを有することから、銅であってよい。合金は、CoCu(5~15wt%)であってよい。合金は、Co90Cu10wt%であってよい。第2の金属は銀であってよい。合金は、Cu(x)Ag(100-x)wt%であってよく、xは約95から約60の範囲内である。合金は、Cu60Ag40wt%であってよい。
【0009】
[0009] 一実施形態の別の態様によれば、放電チャンバと、放電チャンバ内に少なくとも部分的に位置決めされる第1の電極とを有する、レーザが開示され、第1の電極は、銅のフッ素との生成自由エネルギーよりも大きいか又は銅のフッ素との生成自由エネルギーに等しい、フッ素との第1の生成自由エネルギーを有する第1の金属と、第1の自由エネルギーよりも小さいフッ素との第2の生成自由エネルギーを有する第2の金属との、合金を含む。電極はアノードであってよい。第1の金属はコバルトであってよい。第2の金属は銅であってよい。合金は、CoCu(5~15wt%)であってよい。合金は、Co90Cu10wt%であってよい。第2の金属は銀であってよい。合金は、Cu(x)Ag(100-x)wt%であってよく、ここでxは約95から約60の範囲内である。合金は、Cu60Ag40wt%であってよい。
【0010】
[0010] 本発明の更なる実施形態、特徴、及び利点、並びに様々な実施形態の構造及び動作を、添付の図面を参照しながら下記で詳細に説明する。
【0011】
[0011] 本明細書に組み込まれ本明細書の一部を形成する添付の図面は、本発明の実施形態の方法及びシステムを限定ではなく単なる例として示す。図面は更に、詳細な説明と共に、本明細書に示される方法及びシステムの原理を説明し、また、本明細書に示される方法及びシステムを当業者が作成及び使用できるようにする働きをする。図面において、同じ参照番号は同一の要素又は機能的に同様の要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】[0012]開示される主題の一態様に従った、フォトリソグラフィシステムの包括的な幅広い概念を示す、一定の縮尺でない概略図である。
【
図2】[0013]開示される主題の一態様に従った、照明システムの包括的な幅広い概念を示す、一定の縮尺でない概略図である。
【
図3】[0014]開示される主題の態様に従った、エキシマレーザのための放電チャンバを示す、一定の縮尺でない断面図である。
【
図4A】[0015]異なる材料の2つの電極上の保護層を比較する図である。
【
図4B】[0015]異なる材料の2つの電極上の保護層を比較する図である。
【
図5A】[0016]開示される主題の態様に従った、いくつかの理論的原理を説明する図である。
【
図5B】[0016]開示される主題の態様に従った、いくつかの理論的原理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[0017] 本発明の更なる特徴及び利点、並びに本発明の様々な実施形態の構造及び動作を、添付の図面を参照しながら下記で詳細に説明する。本発明は、本明細書で説明する特定の実施形態に限定されないことに留意されたい。こうした実施形態は、単なる例示の目的で本明細書に示される。当業者であれば、本明細書に含まれる教示に基づく追加の実施形態が明らかとなろう。
【0014】
[0018] 次に、図面を参照しながら様々な実施形態を説明し、図面では全体を通じて同じ参照番号は同じ要素を示すために用いられる。下記の記述では、説明の目的で1つ以上の実施形態の完全な理解を進めるために多数の特定の細部が示される。しかしながら、いくつか又はすべての場合に、下記で説明する任意の実施形態は、下記で説明する特定の設計細部を採用することなく実施可能であることが明白であり得る。他の場合には、1つ以上の実施形態の説明を容易にするために、周知の構造及びデバイスがブロック図の形で示される。下記に、実施形態を基本的に理解するために、1つ以上の実施形態の簡略的な概要を示す。本概要は、企図されるすべての実施形態の広範な概要ではなく、すべての実施形態の主要又は重要な要素を識別することを意図するものでも、また、任意又はすべての実施形態の範囲を定めるものでもない。
【0015】
[0019]
図1を参照すると、フォトリソグラフィシステム100は照明システム105を含む。下記でより詳細に説明するように、照明システム105は光源を含み、光源は、パルス光ビーム110を生成し、これを、ウェーハ120上にマイクロ電子フィーチャをパターン付与するフォトリソグラフィ露光装置又はスキャナ115に誘導する。ウェーハ120はウェーハテーブル125上に配置され、ウェーハテーブル125は、ウェーハ120を保持するように構築され、あるパラメータに従ってウェーハ120を正確に位置決めするように構成されたポジショナに接続される。
【0016】
[0020] フォトリソグラフィシステム100は、深紫外線(DUV)レンジ内の波長を有する、例えば248ナノメートル(nm)又は193nmの波長を伴う、光ビーム110を使用する。ウェーハ120上にパターン付与可能なマイクロ電子フィーチャの最小サイズは光ビーム110の波長に依存し、波長が低いほど、結果として最小フィーチャサイズは小さくなる。光ビーム110の波長が248nm又は193nmのとき、マイクロ電子フィーチャの最小サイズは、例えば50nm以下とすることができる。光ビーム110の帯域幅は、その光学スペクトル(又は発光スペクトル)の実際の瞬時帯域幅とすることができ、光ビーム110の光学エネルギーが異なる波長にわたってどのように分散されるかに関する情報を含む。スキャナ115は、例えば、1つ以上のコンデンサレンズ、マスク、及び対物系配置を有する、光学配置を含む。マスクは、光ビーム110の光軸に沿うか、又は光軸に垂直な平面内などの、1つ以上の方向に沿って移動可能である。対物系配置は投影レンズを含み、マスクからウェーハ120上のフォトレジストへの像転写を発生させることができる。照明システム105は、マスクに衝突する光ビーム110の角度レンジを調節する。照明システム105は、また、マスクを横切る光ビーム110の強度分布も均質化する(均一にする)。
【0017】
[0021] スキャナ115は、フィーチャの中でもとりわけ、リソグラフィコントローラ130、空調デバイス、及び様々な電気コンポーネント用の電源を含むことができる。リソグラフィコントローラ130は、層がウェーハ120上にどのようにプリントされるかを制御する。リソグラフィコントローラ130は、プロセスレシピなどの情報を記憶するメモリを含む。プロセスプログラム又はレシピは、例えば、使用されるマスク、並びに露光に影響を与える他の要因に基づいて、ウェーハ120上の露光の長さを決定する。リソグラフィの間、光ビーム110の複数のパルスはウェーハ120の同じエリアを照明して、照明ドーズを構築する。
【0018】
[0022] フォトリソグラフィシステム100は、好ましくは、制御システム135も含む。一般に、制御システム135は、デジタル電子回路、コンピュータハードウェア、ファームウェア、及びソフトウェアのうちの1つ以上を含む。制御システム135はメモリも含み、メモリは読み取り専用メモリ及び/又はランダムアクセスメモリとすることができる。コンピュータプログラム命令及びデータを有形に具体化するのに適したストレージデバイスは、すべての形の不揮発性メモリを含み、例として、EPROM、EEPROM、及びフラッシュメモリデバイスなどの半導体メモリデバイス、内部ハードディスク及び取り外し可能ディスクなどの磁気ディスク、磁気光学ディスク、及びCD-ROMディスクを含む。
【0019】
[0023] 制御システム135は、1つ以上の入力デバイス(キーボード、タッチスクリーン、マイクロフォン、マウス、ハンドヘルド入力デバイスなど)、及び、1つ以上の出力デバイス(スピーカ又はモニタなど)も含むことができる。制御システム135は、1つ以上のプログラマブルプロセッサ、及び、1つ以上のプログラマブルプロセッサによる実行のために機械可読ストレージデバイス内に有形に具体化される1つ以上のコンピュータプログラム製品も含む。1つ以上のプログラマブルプロセッサは各々、入力データ上で動作し、適切な出力を生成することによって、所望の機能を実施するために、命令のプログラムを実行することができる。一般に、プロセッサはメモリから命令及びデータを受信する。前述のいずれかは、特別に設計されたASIC(特定用途向け集積回路)によって補足するか、又はこれに組み込むことができる。制御システム135は集中型とするか、あるいは、フォトリソグラフィシステム100全体を通じて部分的又は全体的に分散させることができる。
【0020】
[0024]
図2を参照すると、例示の照明システム105は、光ビーム110としてパルスレーザビームを生成するパルスレーザ源である。
図2は、開示される主題のある態様の一実施形態に従ったガス放電レーザシステムを、例示的に及びブロック図で示す。ガス放電レーザシステムは、例えば、ソリッドステート又はガス放電シードレーザシステム140、増幅ステージ、例えばパワーリング増幅器(「PRA」)ステージ145、リレー光学系150、及びレーザシステム出力サブシステム160を含んでもよい。シードシステム140は、例えば主発振器(「MO」)チャンバ165を含んでもよい。
【0021】
[0025] シードレーザシステム140は、主発振器出力カップラ(「MO OC」)175も含んでよく、MO OC175は、ライン狭隘化モジュール(「LNM」)170内の反射格子(図示せず)と共に発振器キャビティを形成する部分反射ミラーを備えることができ、発振器キャビティ内では、シードレーザ140が発振してシードレーザ出力パルスを形成し、すなわち主発振器(「MO」)を形成する。システムは、ライン中心分析モジュール(「LAM」)180を含むこともできる。LAM180は、微細波長測定のためのエタロンスペクトロメータ、及び、より粗い分解能の格子スペクトロメータを含むことができる。MO波面エンジニアリングボックス(「WEB」)185は、MOシードレーザシステム140の出力を増幅ステージ145に向けて方向転換させるために働くことができ、また、例えばマルチプリズムビームエキスパンダ(図示せず)を用いる例えばビームエキスパンド、及び、例えば光遅延路(図示せず)の形のコヒーレンス破壊を含むことができる。
【0022】
[0026] 増幅ステージ145は、例えばPRAレージングチャンバ200を含むことができ、PRAレージングチャンバ200は、PRA WEB210に組み込まれ得、またビーム反転器220によってチャンバ200内の利得媒体を介して後方へ方向転換され得る、例えばシードビーム入射及び出力結合光学系(図示せず)によって形成される、発振器であってもよい。PRA WEB210は、公称動作波長(例えば、ArFシステムについておよそ193nmにおける)及び1つ以上のプリズムのための、部分反射入力/出力カップラ(図示せず)及び最大反射ミラーを組み込むことができる。
【0023】
[0027] 増幅ステージ145の出力における帯域幅分析モジュール(「BAM」)230は、増幅ステージから出力レーザ光ビームを受け取ること、及び、例えば出力帯域幅及びパルスエネルギーを測定するために、メトロロジの目的で光ビームの一部を選び出すことができる。次いで、パルスのレーザ出力光ビームは光パルスストレッチャ(「OPuS」)240、及び、パルスエネルギーメータの場所でもあり得る出力結合自動シャッターメトロロジモジュール(「CASMM」)250を通過する。OPuS240の1つの目的は、例えば、単一の出力レーザパルスをパルス列に変換することであり得る。元の単一出力パルスから作られる二次パルスは、互いに関して遅延し得る。元のレーザパルスエネルギーを二次パルスの列に分散することによって、レーザの有効パルス長さを拡張すること、及び同時にピークパルス強度を減少させることが可能である。したがってOPuS240は、BAM230を介してPRA WEB210からレーザビームを受け取り、OPuS240の出力をCASMM250に誘導することができる。
【0024】
[0028] PRAレージングチャンバ200及びMO165は、当分野で周知のように、相対的に非常に狭い帯域幅にライン狭隘化することができる相対的に広い帯域放射、及びライン狭隘化モジュール(「LNM」)170内で選択される中心波長を生成するために、例えばAr、Kr、及び/又はXeを含む高エネルギー分子の反転分布を作るために、電極間の放電がレージングガス内にレージングガス放電を生じさせ得る、チャンバとして構成される。こうしたチャンバ300についての構成が、放電チャンバの高度に定型化された断面図である、
図3に示される。チャンバ300は、カソードとして作用する上部電極310及びアノードとして作用する下部電極320を含む。下部電極300及び上部電極310のうちの1つ又は両方は、全体として、チャンバ壁305によって画定されるチャンバ300の圧力エンベロープ内に含めることができるか、又は、電極のうちの1つをそのように含めないことができる。レージングガス放電は、幅Aを有するギャップ内のこれら2つの電極間で生じる。
図3には、上部絶縁体315及び下部絶縁体325も示されている。下部電極320は、チャンバ300の壁305に電気的に接続される。安全のために、チャンバ壁300及びしたがって下部電極320を接地電位で維持することが望ましい。
図3に示される実施形態において、上部電極310は、下部電極320に関して負の電圧で電圧供給340によって駆動される。
【0025】
[0029]
図3に示されるようにアノードとして作用しているとき、下部電極320は、有利には摩耗を示さない材料で作られるが、実際には、耐腐食性コーティング330を成長させる。
図3におけるコーティング330のサイズは、例示のために誇張されている。上部電極には小さな突起312が提供されていることにも留意されたい。
【0026】
[0030] 前述のように、
図3には、カソード310及びアノード320を横切って電圧勾配を確立する電圧供給340も示されている。電圧供給340の出力の極性について表記(-)が示されているが、これは絶対極性ではなく相対極性であって、すなわち、一般に、チャンバ300の本体と電気的に接触し、接地(0)電位に保持され続けなければならない下部電極320の極性に対して相対的であることを理解されよう。上部電極(カソード310)は、大きな(例えば約20kV)負電圧まで充電される。
【0027】
[0031] リーフィング及び高浸食率は、MOにおける問題である。これらは電極材料とのフッ素反応の結果である。一実施形態の一態様によれば、電極は、銅の形成エネルギーに等しいか又は銅の形成エネルギーより大きいF2との形成エネルギーを伴う第1の金属と、第1の金属よりもF2との形成エネルギーより小さいF2との形成エネルギーを伴う第2の金属とを含む、合金で作られる。合金は、良好な熱伝導率及び導電率並びに良好な対フッ素化抵抗率を有する、銅などの金属を含む。他のこうした金属には、ニッケル、コバルト、及び銀が含まれる。非合金の純元素は、典型的には一般構造用金属に比べて相対的に柔らかく、高浸食率を生じさせる非常に高い熱膨張を有する。したがって、硬度を増加させ、浸食率を潜在的に減少させるために、銅などの別の金属との合金にすることが有利である。
【0028】
[0032] 化合物の標準ギブス生成自由エネルギーとも呼ばれる生成自由エネルギーは、構成元素の標準状態(1バールの圧力及び指定温度、通常は298.15K又は25℃での元素の最も安定した形)において、構成元素から物質の標準状態における1モルの物質形成に伴って起こる、ギブス自由エネルギーの変化である。
【0029】
[0033] 第2の金属のフッ素との反応の結果として、電極表面の頂部に形成される保護層は、電極のバルク材料とのフッ素反応を減少させる際に、重要な役割も果たす。保護層がより高密度でありより均一であるほど、浸食率がより減少することが予測できる。Co90Cu10wt%は、動作条件の下で、高密度且つ連続するフィルム層の形成を示す。これは、相対的重さ割合CoCu(5~15wt%)の範囲内であり、動作条件の下で、高密度且つ連続するフィルム層の形成を示すことも予測できる。
【0030】
[0034] 前述のように、銀も、F2との低い標準生成自由エネルギーを示す。Cu60Ag40wt%も、動作条件の下で、高密度且つ連続するフィルム層の形成を示す。これは、相対的重さ割合5~40wt%Ag-Cuの範囲内であり、動作条件の下で、高密度且つ連続するフィルム層の形成を示すことも予測できる。
【0031】
[0035] これらの合金を従来の材料に対するものとして使用することの効果が、
図4A及び
図4Bに示される。
図4Aは、真鍮で作られた電極のバルク材料400とのフッ素反応の効果を示す。図を見るとわかるように、バルク材料400上に保護層410が形成されるが、層410は不均一であり、クラックを示す。他方で、
図4Bは、Co90Cu10wt%で作られた電極のバルク材料420とのフッ素反応の効果を示す。図を見るとわかるように、バルク材料400の上に保護層410が形成されるが、層410は層410よりも均一であり、より少ないクラックを示す。これらの層は、450℃及び1%F
2(チャンバ条件と同様)のTGA(熱重量分析)炉内に置かれたCO-Cu及びAg-Cuサンプル上に形成された。不動態層がSEM-EDXにおいて検出された。
【0032】
[0036] 再度
図3を参照すると、下部電極320はアノードとして使用されるとき、有利には、使用中に形成する耐腐食性コーティング(不動態層)330が、より高密度且つより連続的であり、また電極の本体に良好に密着するように、前述の合金で作ることができる。
【0033】
[0037]
図5A及び
図5Bは、観察される効果の基礎にあるものと考えられる原理を示す。
図5Aは、バルク材料500がフッ素分子530に露光される環境における、第1の金属の原子510及び第2の金属の原子520で構成される電極バルク材料500を示す。前述のように、第1の金属は、銅の生成自由エネルギーに等しいか又は銅の生成自由エネルギーよりも大きい、フッ素との生成自由エネルギーを有する。例えば、第1の金属はコバルト又は銀であってよい。第2の金属は、第1の金属のフッ素との生成自由エネルギーよりも小さい、フッ素との生成自由エネルギーを有する。例えば、第2の金属は銅であってよい。
図5Bに示されるように、第2の金属の原子520はフッ素を含む環境とのインターフェースに移動し、ここでフッ素と結合して不動態層540を形成する。もちろん、他の原理又は追加の原理も観察される効果に寄与し得、実施形態はこれらの原理が適用される配置に限定されない。
【0034】
[0038] 上記の記載は1つ以上の実施形態の例を含む。無論、上述の実施形態を記載する目的で構成要素又は方法の考えられる全ての組み合わせを記載することは可能ではないが、当業者であれば、様々な実施形態の多くの更なる組み合わせ及び順列が可能であることを認識するであろう。したがって、記載された実施形態は、添付の請求項の精神及び範囲に該当するそのような変更、修正、及びバリエーションを全て包含することが意図されている。また、「備える(comprising)」という用語は請求項において使用されるとき移行語として解釈されるので、詳細な説明又は特許請求の範囲のいずれかにおいて「含む(includes)」という用語が用いられる限りにおいて、そのような用語は、「備える(comprising)」と同様に包括的であることが意図される。また、記載された態様及び/又は実施形態の複数の要素は、単数として記載され又は特許を請求されるかもしれないが、単数への限定が明記されない限り、複数であると考えられる。さらに、いずれかの態様及び/又は実施形態の全て又は一部は、別段の規定がない限り、いずれかの他の態様及び/又は実施形態の全て又は一部と共に利用され得る。
【0035】
[0039] 本発明の他の態様は、下記の番号付けされた条項に示される。
1.レーザチャンバのための電極であって、電極は、銅のフッ素との生成自由エネルギーよりも大きいか又は銅のフッ素との生成自由エネルギーに等しい、フッ素との第1の生成自由エネルギーを有する第1の金属と、第1の自由エネルギーよりも小さいフッ素との第2の生成自由エネルギーを有する第2の金属との、合金を含む、レーザチャンバのための電極。
2.第1の金属はコバルトである、条項1に記載のレーザチャンバのための電極。
3.第2の金属は銅である、条項1に記載のレーザチャンバのための電極。
4.第1の金属はコバルトであり、また第2の金属は銅である、条項1に記載のレーザチャンバのための電極。
5.合金はCoCu(5~15wt%)である、条項4に記載のレーザチャンバのための電極。
6.合金はCo90Cu10wt%である、条項5に記載のレーザチャンバのための電極。
7.第2の金属は銀である、条項1に記載のレーザチャンバのための電極。
8.第1の金属は銅であり、また第2の金属は銀である、条項1に記載のレーザチャンバのための電極。
9.合金はCu(x)Ag(100-x)wt%であり、xは約95から約60の範囲内である、条項8に記載のレーザチャンバのための電極。
10.合金はCu60Ag40wt%である、条項9に記載のレーザチャンバのための電極。
11.レーザチャンバのための電極であり、電極はコバルトと銅との合金を含む、レーザチャンバのための電極。
12.合金はCoCu(5~15wt%)である、条項11に記載のレーザチャンバのための電極。
13.合金はCo90Cu10wt%である、条項11に記載のレーザチャンバのための電極。
14.レーザチャンバのための電極であり、電極は銅と銀との合金を含む、レーザチャンバのための電極。
15.合金はCu(x)Ag(100-x)wt%であり、xは約95から約60の範囲内である、条項14に記載のレーザチャンバのための電極。
16.合金はCu60Ag40wt%である、条項14に記載のレーザチャンバのための電極。
17.レーザであって、
放電チャンバと、
放電チャンバ内に少なくとも部分的に位置決めされる第1の電極と、
を備え、
第1の電極は、銅のフッ素との生成自由エネルギーよりも大きいか又は銅のフッ素との生成自由エネルギーに等しい、フッ素との第1の生成自由エネルギーを有する第1の金属と、第1の自由エネルギーよりも小さいフッ素との第2の生成自由エネルギーを有する第2の金属との、合金を含む、
レーザ。
18.電極はアノードである、条項17に記載のレーザ。
19.第1の金属はコバルトである、条項17に記載のレーザ。
20.第2の金属は銅である、条項17に記載のレーザ。
21.第1の金属はコバルトであり、また第2の金属は銅である、条項17に記載のレーザ。
22.合金はCoCu(5~15wt%)である、条項21に記載のレーザ。
23.合金はCo90Cu10wt%である、条項に記載のレーザ。
24.第2の金属は銀である、条項17に記載のレーザ。
25.第1の金属は銅であり、また第2の金属は銀である、条項17に記載のレーザ。
26.合金はCu(x)Ag(100-x)wt%であり、xは約95から約60の範囲内である、条項25に記載のレーザ。
27.合金はCu60Ag40wt%である、条項26に記載のレーザ。
28.レーザであって、
放電チャンバと、
放電チャンバ内に少なくとも部分的に位置決めされる第1の電極と、
を備え、
第1の電極はコバルトと銅との合金を含む、
レーザ。
29.合金はCoCu(5~15wt%)である、条項28に記載のレーザ。
30.合金はCo90Cu10wt%である、条項28に記載のレーザ。
31.レーザであって、
放電チャンバと、
放電チャンバ内に少なくとも部分的に位置決めされる第1の電極と、
を備え、
第1の電極は銅と銀との合金を含む、
レーザ。
32.合金はCu(x)Ag(100-x)wt%であり、xは約95から約60の範囲内である、条項31に記載のレーザ。
33.合金はCu60Ag40wt%である、条項31に記載のレーザ。
34. レーザチャンバのための電極であって、電極は、銅のフッ素との生成自由エネルギーよりも大きいか又は銅のフッ素との生成自由エネルギーに等しい、フッ素との第1の生成自由エネルギーを有する第1の金属と、第1の自由エネルギーよりも小さいフッ素との第2の生成自由エネルギーを有する第2の金属との、合金を含む。