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特許7124362情報処理装置、処理方法、自律処理システム、プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】情報処理装置、処理方法、自律処理システム、プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/10 20120101AFI20220817BHJP
【FI】
G06Q10/10 310
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018049815
(22)【出願日】2018-03-16
(65)【公開番号】P2019160203
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】橋場 基樹
【審査官】永野 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-227429(JP,A)
【文献】特開2017-027590(JP,A)
【文献】特開2013-218365(JP,A)
【文献】特開2004-227476(JP,A)
【文献】特開2010-152507(JP,A)
【文献】特開2008-129853(JP,A)
【文献】速水 治夫,グループウェア,第1版,森北出版株式会社,2007年10月05日,p.101
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子ファイルに対して所定の処理を実行する情報処理装置であって、
少なくとも1つ以上の前記電子ファイルに、1つ以上の前記電子ファイルに対する処理の内容を示す処理内容と、前記処理内容に対応する処理を実行するために電子ファイルごとに設定された条件と、複製して使用されるか否か、とが対応付けて登録された記憶手段を参照して、
前記電子ファイルごとに前記条件が満たされたかを監視する監視手段と、
前記電子ファイルに対応付けられた全ての前記条件が満たされた場合、前記処理内容に対応する処理を実行する処理実行手段と、
複製して使用されると設定されている1つ以上の前記電子ファイルを複製する複製手段と、を有し、
前記監視手段は、複製された1つ以上の前記電子ファイルごとに前記条件が満たされたか否かを判断する ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記監視手段は1つの前記条件が満たされた場合に前記条件が満たされた旨を前記電子ファイルに対応付けて記録し、
前記処理実行手段は、前記電子ファイルに対応付けられた全ての前記条件が満たされた旨が設定された場合に前記処理内容に対応する処理を実行することを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
複数の前記電子ファイルにそれぞれ前記条件が設定されている場合、各電子ファイルに対応付けられた前記条件が満たされる順番に制約がないことを特徴とする請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
1つの前記電子ファイルに1つ以上の前記条件が設定されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
1つ以上の前記電子ファイルに1つ以上の前記処理内容が設定されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記電子ファイルは予め定められた格納場所に格納されるものであり、
前記電子ファイルが格納されていない前記格納場所に、前記電子ファイルが格納されることが前記条件に設定されていることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記電子ファイルの予め定められた格納場所に前記電子ファイルが格納されており、
前記電子ファイルが編集されることが前記条件に設定されていることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
電子ファイルに対して所定の処理を実行する情報処理装置であって、
少なくとも1つ以上の前記電子ファイルに、1つ以上の前記電子ファイルに対する処理の内容を示す処理内容と、前記処理内容に対応する処理を実行するために電子ファイルごとに設定された条件とが対応付けて登録された記憶手段を参照して、
前記電子ファイルごとに前記条件が満たされたかを監視する監視手段と、
前記電子ファイルに対応付けられた全ての前記条件が満たされた場合、前記処理内容に対応する処理を実行する処理実行手段と、を有し、
前記電子ファイルの予め定められた格納場所に前記電子ファイルが格納されており、
前記電子ファイルの閲覧回数が閾値以上になることが前記条件に設定されている ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項9】
情報処理装置が電子ファイルに対して所定の処理を実行する処理方法であって、
少なくとも1つ以上の前記電子ファイルに、1つ以上の前記電子ファイルに対する処理の内容を示す処理内容と、前記処理内容に対応する処理を実行するために各電子ファイルごとに設定された条件と、複製して使用されるか否か、とが対応付けて登録された記憶手段を参照して、
監視手段が、前記電子ファイルごとに前記条件が満たされたか否かを監視するステップと、
前記電子ファイルに対応付けられた全ての前記条件が満たされた場合、処理実行手段が前記処理内容に対応する処理を実行するステップと、
複製手段が、複製して使用されると設定されている1つ以上の前記電子ファイルを複製するステップと、
前記監視手段が、複製された1つ以上の前記電子ファイルごとに前記条件が満たされたか否かを判断するステップと、を有する処理方法。
【請求項10】
情報処理装置が電子ファイルに対して所定の処理を実行する処理方法であって、
少なくとも1つ以上の前記電子ファイルに、1つ以上の前記電子ファイルに対する処理の内容を示す処理内容と、前記処理内容に対応する処理を実行するために各電子ファイルごとに設定された条件とが対応付けて登録された記憶手段を参照して、
監視手段が、前記電子ファイルごとに前記条件が満たされたか否かを監視するステップと、
前記電子ファイルに対応付けられた全ての前記条件が満たされた場合、処理実行手段が前記処理内容に対応する処理を実行するステップと、を有し、
前記電子ファイルの予め定められた格納場所に前記電子ファイルが格納されており、
前記電子ファイルの閲覧回数が閾値以上になることが前記条件に設定されていることを特徴とする処理方法。
【請求項11】
電子ファイルに対して所定の処理を実行する情報処理装置を、
少なくとも1つ以上の前記電子ファイルに、1つ以上の前記電子ファイルに対する処理の内容を示す処理内容と、前記処理内容に対応する処理を実行するために各電子ファイルごとに設定された条件と、複製して使用されるか否か、とが対応付けて登録された記憶手段を参照して、
前記電子ファイルごとに前記条件が満たされたか否かを監視する監視手段と、
前記電子ファイルに対応付けられた全ての前記条件が満たされた場合、前記処理内容に対応する処理を実行する処理実行手段と、
複製して使用されると設定されている1つ以上の前記電子ファイルを複製する複製手段、として機能させ、
前記監視手段は、複製された1つ以上の前記電子ファイルごとに前記条件が満たされたか否かを判断するプログラム。
【請求項12】
電子ファイルに対して所定の処理を実行する情報処理装置を、
少なくとも1つ以上の前記電子ファイルに、1つ以上の前記電子ファイルに対する処理の内容を示す処理内容と、前記処理内容に対応する処理を実行するために各電子ファイルごとに設定された条件とが対応付けて登録された記憶手段を参照して、
前記電子ファイルごとに前記条件が満たされたか否かを監視する監視手段と、
前記電子ファイルに対応付けられた全ての前記条件が満たされた場合、前記処理内容に対応する処理を実行する処理実行手段、として機能させ、
前記電子ファイルの予め定められた格納場所に前記電子ファイルが格納されており、
前記電子ファイルの閲覧回数が閾値以上になることが前記条件に設定されているプログラム。
【請求項13】
電子ファイルに対して所定の処理を実行する自律処理システムであって、
少なくとも1つ以上の前記電子ファイルに、1つ以上の前記電子ファイルに対する処理の内容を示す処理内容と、前記処理内容に対応する処理を実行するために各電子ファイルごとに設定された条件と、複製して使用されるか否か、とが対応付けて登録された記憶手段を参照して、
前記電子ファイルごとに前記条件が満たされたか否かを監視する監視手段と、
前記電子ファイルに対応付けられた全ての前記条件が満たされた場合、前記処理内容に対応する処理を実行する処理実行手段と、
複製して使用されると設定されている1つ以上の前記電子ファイルを複製する複製手段と、を有し、
前記監視手段は、複製された1つ以上の前記電子ファイルごとに前記条件が満たされたか否かを判断することを特徴とする自律処理システム。
【請求項14】
電子ファイルに対して所定の処理を実行する自律処理システムであって、
少なくとも1つ以上の前記電子ファイルに、1つ以上の前記電子ファイルに対する処理の内容を示す処理内容と、前記処理内容に対応する処理を実行するために各電子ファイルごとに設定された条件とが対応付けて登録された記憶手段を参照して、
前記電子ファイルごとに前記条件が満たされたか否かを監視する監視手段と、
前記電子ファイルに対応付けられた全ての前記条件が満たされた場合、前記処理内容に対応する処理を実行する処理実行手段と、を有し、
前記電子ファイルの予め定められた格納場所に前記電子ファイルが格納されており、
前記電子ファイルの閲覧回数が閾値以上になることが前記条件に設定されている自律処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、処理方法、自律処理システム、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ある処理を実行するために前提を必要とする業務がある。例えば、予め定められた書類が用意されたら所定の部署に書類を送信するような業務があり、このような業務に適した処理形態としてワークフローシステムが知られている。
【0003】
ワークフローシステムの一例として、ユーザが電子ファイルに操作又は判断を行うことで一連の処理が進行するものがある。また、他の一例として、1つの電子ファイルに対し1つ以上の機器が順番に処理を施し、一連の処理が終了すると電子ファイルが所定のフォルダに配信されたりメールで送信されたりするものがある。
【0004】
このようなワークフローシステムにおいて電子ファイルの属性などによって処理の経路を変更する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1には、文書から回覧ルートの決定に必要な第1の情報を取得し、第1の情報と回覧ルートデータにしたがって回覧ルートを決定するワークフローシステムが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のワークフローシステム等で実行される一連の処理は決まった処理の順番でしか一連の処理を実行できないという問題がある。例えば、処理Aと処理Bという2つの処理を有するワークフローシステムがあるとする。従来のワークフローシステムでは、電子ファイルに処理Aが施されないと処理Bを実行することができない。
【0006】
しかし、互いに独立に実行可能な処理Aと処理Bも多く存在しており、決まった順番でしか処理が実行されないことが一連の処理の制約となることがある。例えば、画像データに対し文字認識を行う処理と、顔認識を行う処理が必要なワークフローシステムがある場合、従来のワークフローシステムでは文字認識又は顔認識が先に行われた後でないと他方の処理を実行できない。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑み、処理の順番の制約が少ない情報処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題に鑑み、本発明は、電子ファイルに対して所定の処理を実行する情報処理装置であって、少なくとも1つ以上の前記電子ファイルに、1つ以上の前記電子ファイルに対する処理の内容を示す処理内容と、前記処理内容に対応する処理を実行するために電子ファイルごとに設定された条件と、複製して使用されるか否か、とが対応付けて登録された記憶手段を参照して、前記電子ファイルごとに前記条件が満たされたかを監視する監視手段と、前記電子ファイルに対応付けられた全ての前記条件が満たされた場合、前記処理内容に対応する処理を実行する処理実行手段と、複製して使用されると設定されている1つ以上の前記電子ファイルを複製する複製手段と、を有し、前記監視手段は、複製された1つ以上の前記電子ファイルごとに前記条件が満たされたか否かを判断することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
処理の順番の制約が少ない情報処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】従来のコンテナの構造の一例を説明する図である。
図2】本実施形態のコンテナの構造の一例を示す図である。
図3】イベントコンテナを用いた処理の概略を説明する図の一例である。
図4】本実施形態の自律処理システムの概略構成図の一例である。
図5】処理管理サーバのハードウェア構成図の一例である。
図6】自律処理システムが有する端末装置、管理者端末、及び、処理管理サーバの機能をブロック状に示す機能ブロック図の一例である。
図7】イベントコンテナのいくつかの例を説明する図である。
図8】管理者端末がイベントコンテナを新規作成する手順を示すシーケンス図の一例である。
図9】ユーザがイベントコンテナの電子ファイルに関する操作を行い、処理管理サーバがイベントドリブン方式に電子ファイルに関するルールを実行する手順を示すシーケンス図の一例である。
図10】端末装置のLCDに表示されたイベントコンテナの表示画面を示す図の一例である。
図11】処理管理サーバがイベントコンテナの更新を行う手順を示すフローチャート図の一例である。
図12】複合機と処理管理サーバを有する自律処理システムの構成図の一例である。
図13】複合機を利用した自律処理システムの動作を説明するシーケンス図の一例である。
図14】複合機のLCDに表示されるいくつかの画面例を説明する図である。
図15】複数人のユーザによる並行処理を説明する図の一例である。
図16】イベントコンテナの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態の一例として、自律処理システム及び自律処理システムが行う処理方法について図面を参照しながら説明する。
【0012】
<本実施形態の自律処理システムの概略>
まず、図1を用いて従来の文書の構造を説明する。図1は、従来のコンテナの構造の一例を説明する図である。従来のコンテナ2は、n個の電子ファイル5を有することができる。すなわち、1つ又は関連した処理に供される複数の電子ファイル5をまとめて扱うことが可能であった。コンテナ2は所定のサーバに保持されている。
【0013】
1つのコンテナ2が有する電子ファイル5の数は0個でもよく2以上でもよい。コンテナ2には、電子ファイル5が格納される格納場所が用意されており、電子ファイル5がコンテナ2に格納される前であっても電子ファイル5の格納場所という概念であるべき電子ファイル5が存在しないことを管理できる。
【0014】
また、コンテナ2は書誌情報7を有している。書誌情報7とは本来、書籍を特定するための情報をいうが、本実施形態では電子ファイル5又はコンテナ2の少なくとも一方に関する情報をいう。例えば、電子ファイル5のファイル名、電子ファイル5の作成者、作成日時、更新日時、ファイルサイズ、などである。また、コンテナ2の管理者、コンテナ2の識別情報、コンテナ名、コンテナ2の作成日時なども書誌情報7となる。書誌情報7は、電子ファイル5ごとに区分して保持されてよい。
【0015】
図2は、本実施形態のコンテナの構造の一例を示す。本実施形態のコンテナをイベントコンテナ3という。イベントコンテナ3は単にコンテナと呼ばれてもよい。イベントコンテナ3は、電子ファイル5ごとに設定可能な条件ファイル6、及び、イベントコンテナ3ごとに設定可能なルールファイル8を有している。管理者は、条件ファイル6に1つ以上の条件を設定可能であり、ルールファイル8に1つ以上のルールを設定可能である。
【0016】
ルールとはイベントコンテナ3の電子ファイル5に対する処理の具体的な処理内容である。条件とはルールの実行が開始される契機を示す。条件ファイル6は電子ファイル5ごとに設定可能であるが、条件ファイル6がない電子ファイル5があってもよい。また、ルールファイル8は1つのイベントコンテナ3に1つであるが、1つのルールファイルに複数のルールを設定可能である。
【0017】
このように、電子ファイル5に少なくとも条件及びルールが関連付けられたデータのことをここではイベントコンテナ3と呼んでいる。なお、条件及びルールが記述されたデータは必ずしもファイル形式である必要はなく、他のデータ形式であってもよいがここでは一例としてファイル形式である場合について説明する。
【0018】
図3は、イベントコンテナ3を用いた処理の概略を説明する図の一例である。図3で電子ファイル5として文書「***.doc」の電子ファイル5が格納されており、条件ファイル6に「修正記入」「コメント記入」という条件が設定されている。また、ルールファイル8には「alluser@mail.com に送信」と設定されている。
【0019】
後述する処理管理サーバは、「***.doc」を監視して、「***.doc」に修正が記入されたか否か、及び、コメントが記入されたか否かを判断する。これらの条件を満たしたと判断すると、ルールファイル8に設定されたルールを実行する。「修正記入」と「コメント記入」の条件はどちらが先に行われてもよいし、一人のユーザ又は異なるユーザにより満たされてもよい。
【0020】
このように、処理管理サーバはイベントコンテナ3に設定された条件が満たされるとルールを実行でき、イベントドリブン方式のように自律的に処理を進めることが可能になる。ワークフローに代表される従来の処理はリクエストリプライ方式であり、ある決まったサーバが処理の1つ1つをプラグイン等で順番に実行しないと処理を完了できない。これに対し、イベントドリブン方式では任意のタイミングかつ任意の順番で処理管理サーバが電子ファイルに対する操作を受け付けることができ、1人以上のユーザが徐々に条件を満たしていくことができる。そして、全ての条件が満たされると、自動的にルールが実行されるという自律的な処理の進行方法を実現できる。
【0021】
<用語について>
電子ファイルとは、電子データとして記録された情報である。情報処理装置が入力、加工、又は、出力する情報になる。データ又は電子データ等と呼ばれてもよい。
【0022】
格納場所とは、電子ファイルのために予め確保されている領域であり、電子ファイルが存在しなくても他の情報が占有することがない領域をいう。
【0023】
処理内容は、電子ファイルに対する具体的な処理の内容をいい、例えば電子ファイルが加工される場合と出力される場合がある。本実施形態ではルールという用語で説明する。
【0024】
<システム構成例>
図4は、本実施形態の自律処理システム100の概略構成図の一例である。自律処理システム100は、ネットワークNを介して通信することが可能な一台以上の端末装置10、及び、処理管理サーバ30を有する。また、図4では、端末装置10の一態様である複合機50、及び、管理者が使用する管理者端末60がネットワークNに接続されている。
【0025】
ネットワークNは端末装置10が存在する施設などに構築されているLAN、広域イーサネット(登録商標)、LAN同士が接続されたWAN、VPN(Virtual Private Network)、通信事業者の電話網、及び、インターネット等の一部又は全体より構築されている。
【0026】
端末装置10-1~端末装置10-n(以下、任意の端末装置の符号を10とする)はユーザが操作する情報処理装置である。端末装置10はユーザの操作を受け付け、操作に応じて処理管理サーバ30が管理するイベントコンテナ3に、操作により作成又は編集された電子ファイルを送信する。この電子ファイルによりイベントコンテナ3の条件が満たされる(ユーザが送信する電子ファイルによっては条件を満たすことができない場合がある)。ユーザとは本実施形態の自律処理システム100を利用する者をいう。一例としては、企業の社員、フリーランス、自営業者、一般消費者などが挙げられる。イベントコンテナ3が管理する電子ファイル5によって想定されるユーザは様々である。
【0027】
端末装置10では、アプリケーションソフト又はブラウザソフトウェアが動作する。端末装置10は、例えばPC(Personal Computer)、タブレット装置、スマートフォン、PDA(Personal Digital Assistant)、ゲーム機、ナビゲーション端末、ウェアラブルPCなどであるが、アプリケーションソフト又はブラウザソフトウェアを実行して処理管理サーバ30と通信することができればよい。
【0028】
複合機50は端末装置10と同様にユーザの操作を受け付け、操作に応じて処理管理サーバ30が管理するイベントコンテナ3に、操作により作成又は編集された電子ファイルを送信する。複合機50は、スキャナ機能を有するため、スキャナ機能で取り込んだ画像データをイベントコンテナ3に送信することができる。
【0029】
なお、複合機50とはスキャナ機能、プリント機能、コピー機能、及び、FAX送受信機能など複数の機能を有する装置をいう。MFP(Multi-Function Printer/Product/Peripheral)、SPC(Scan Print Copy)、又は、AIO(All In One)と呼ばれる場合がある。なお、本実施形態ではスキャナ機能を有していればよい。以下では、特に区別しない場合、端末装置10といった場合には複合機50も含まれるものとする。
【0030】
画像データを作成する装置としては、デジタルスチルカメラでもよいしデジタルビデオカメラでもよい。必ずしも画像の入力を受け付ける装置でなくてもよく、処理管理サーバ30に画像データを送信しうる装置であればよい。例えば、テレビ会議端末、電子黒板、PC、又は、USBメモリなどの記憶媒体でもよい。
【0031】
端末装置10がブラウザソフトウェアを実行して処理管理サーバ30と通信する場合、ユーザは端末装置10が表示するWebページを操作する。本実施形態ではWebページと称した場合、Webアプリにより適宜構築されるWebページが含まれるものとする。Webアプリとは、Webブラウザ上で動作するスクリプト言語(たとえばJavaScript(登録商標))によるプログラムとWebサーバ側のプログラムが協調することによって動作し、Webブラウザ上で使用されるソフトウェア又はその仕組みを言う。
【0032】
管理者端末60は、管理者が操作して処理管理サーバ30にイベントコンテナ3を登録する情報処理装置である。管理者とは、自律処理システム100の運用を管理する者をいう。管理者は社内業務等を考慮して適切なイベントコンテナ3を処理管理サーバ30に登録する。一般のユーザがイベントコンテナ3を登録することも可能である。
【0033】
管理者端末60ではブラウザソフトウェア又は同等の機能を有するアプリケーションソフトが動作している。管理者は管理者端末60を操作して、電子ファイル5(又は電子ファイル5の格納場所)、条件ファイル6、及び、ルールファイル8を処理管理サーバ30に設定することでイベントコンテナ3を登録する。
【0034】
処理管理サーバ30は端末装置10に対しネットワークNを通じて情報や機能を提供する情報処理装置である(サーバ装置)。処理管理サーバ30は、端末装置10で動作するアプリケーションソフトに対し、アプリケーションソフトが表示する表示部品に対応させた情報を送信する。また、端末装置10で動作するブラウザソフトウェアに対し、HTML、スクリプト言語及びCSS(Cascade Style Sheet)で記述されたWebページを端末装置10に提供する。
【0035】
処理管理サーバ30は端末装置10によるイベントコンテナ3への操作を監視して、イベントコンテナ3の各条件ファイル6に設定された条件が満たされたか否かを判断する。イベントコンテナ3ごとに、全ての電子ファイル5の全ての条件が満たされるとルールファイル8に設定されたルールを実行する。
【0036】
処理管理サーバ30はクラウドコンピューティングに対応していてもよい。クラウドコンピューティングとは、特定ハードウェア資源が意識されずにネットワーク上のリソースが利用される利用形態をいう。クラウドコンピューティングに対応している場合、本実施例の処理管理サーバ30の物理的な構成は固定的でなくてもよく、負荷等に応じてハード的なリソースが動的に接続・切断されることで構成されてよい。
【0037】
<ハードウェア構成例>
図5は、処理管理サーバ30のハードウェア構成図の一例である。処理管理サーバ30は一般的な情報処理装置又はサーバ装置の構成を有する。処理管理サーバ30は、CPU201と、CPU201が使用するデータの高速アクセスを可能とするメモリ202とを備える。CPU201及びメモリ202は、システム・バス203を介して、端末装置10の他のデバイス又はドライバ、例えば、グラフィックス・ドライバ204及びネットワーク・デバイス(NIC)205へと接続されている。
【0038】
グラフィックス・ドライバ204は、バスを介してLCD(表示装置)206に接続されて、CPU201による処理結果をモニタする。LCD206にはタッチパネルが一体に配置されていてもよい。
【0039】
また、ネットワーク・ドライバ205は、トランスポート層レベル及び物理層レベルで端末装置10をネットワークNへと接続して、端末装置10とのセッションを確立させている。
【0040】
システム・バス203には、更にI/Oバス・ブリッジ207が接続されている。I/Oバス・ブリッジ207の下流側には、PCIなどのI/Oバス208を介して、IDE、ATA、ATAPI、シリアルATA、SCSI、USB(Universal Serial Bus)などにより、HDD209などの記憶装置が接続されている。HDD209の代わりに又はHDD209と共にSSD(Solid State Drive)を有していてもよい。
【0041】
HDD209は処理管理サーバ30の全体を制御するプログラム209pを記憶している。プログラム209pは、OSの他、本実施形態で説明する処理管理サーバ30の機能を実現するソフトウェアを有する。
【0042】
また、I/Oバス208にはUSBなどのバスを介して、キーボード及びマウス(ポインティング・デバイスと呼ばれる)などの入力装置210が接続され、処理管理サーバ30の管理者などのオペレータによる入力及び指令を受け付けている。
【0043】
なお、LCD206及び入力装置210は、オペレータが処理管理サーバ30を使用する時以外は取り外されていてよい。
【0044】
端末装置10又は管理者端末60のハードウェア構成は図5と同等であるか、又は、相違があるとしても本実施形態の説明の上で支障がないものとする。
【0045】
しかしながら、図5のハードウェア構成例が端末装置10又は管理者端末60の場合、HDD209には端末装置10の全体を制御するプログラム209pを記憶している。プログラム209pは、OS、アプリケーションソフト、ブラウザソフトウェア、及び、処理管理サーバ30が送信したWebページを含んでいる。
【0046】
また、複合機50のハードウェアについては公知の構成でよいものとし、図5の情報処理装置としての構成に、少なくとも原稿の読み取り機能(スキャナ)を有するものとする。
【0047】
<機能について>
図6は、自律処理システム100が有する端末装置10、管理者端末60、及び、処理管理サーバ30の機能をブロック状に示す機能ブロック図の一例である。なお、図6では端末装置10を一台のみ示すが、複数の端末装置10が存在してよい。また、端末装置10と管理者端末60の機能は同じか又は異なっていても本実施形態の説明に支障がないため、図6では端末装置10と管理者端末60が区別されていない。
【0048】
<<端末装置10、管理者端末60>>
端末装置10又は管理者端末60は、表示制御部11、操作受付部12、画面情報取得部13、操作内容送信部14、基本機能部15、及び、ログイン要求部16を有する。端末装置10又は管理者端末60が有するこれらの各機能は、図5に示したHDD209からメモリ202に展開されたプログラム209pをCPU201が実行することにより実現される機能又は手段である。
【0049】
まず、ログイン要求部16は、ユーザ又は管理者が指示した処理管理サーバ30のURL(Universal Resource Locater)に接続し認証情報を送信することで処理管理サーバ30へのログインを要求する。認証情報として、操作受付部12が受け付けたユーザ又は管理者のユーザ名とパスワードを処理管理サーバ30に送信する。ユーザ名とパスワードの組み合わせが正しい場合、ユーザ又は管理者は処理管理サーバ30にログインし、イベントコンテナ3に関する操作が可能になる。
【0050】
画面情報取得部13は、処理管理サーバ30が生成した画面情報を取得する。画面情報は端末装置10又は管理者端末60がLCD206に表示する画面に表示される情報である。Webページ(HTML、JavaScript、CSS)の場合とアプリケーションソフトが表示する表示部品(画面の枠やボタン等)に対応付けられた文字、画像、アイコンなどの場合がある。
【0051】
表示制御部11はWebページを解析してLCD206に表示したり、アプリケーションソフトの表示部品に文字、画像、アイコン等を対応付けてLCD206に表示したりする。また、表示した画面に対する操作に応じて画面を更新する。
【0052】
操作受付部12は、端末装置10に対するユーザの操作、又は管理者端末60に対する管理者の操作を受け付ける。操作受付部12は操作の内容を表示制御部11、操作内容送信部14、基本機能部15、又は、ログイン要求部16に通知する。操作内容は、処理管理サーバ30に対する情報の要求、電子ファイルの送信、表示制御部11に対する所定のボタンの押下、情報の入力、基本機能部15に対する基本機能の実行の要求、ログイン要求部16に対する認証情報、等である。
【0053】
基本機能部15は、端末装置10が有する基本的な機能を実行する。例えば、ユーザの操作に応じて電子ファイルを編集したり、必要であればPDFファイルを作成したりする。また、端末装置10が複合機50の場合、スキャナ機能を利用して画像データを作成したり、コピーしたりする。基本機能部15が処理した電子ファイル(例えば、画像データ)は操作内容送信部14に送出される。
【0054】
操作内容送信部14は処理管理サーバ30に画面情報を要求したり、電子ファイルを送信したりする。また、処理管理サーバ30がイベントコンテナ3で管理する電子ファイルを要求する。管理者端末60の場合、例えば、イベントコンテナ3を設定する操作内容を送信する。
【0055】
<<処理管理サーバ>>
処理管理サーバ30は、画面情報送信部31、操作内容受信部32、イベントコンテナ設定部33、認証処理部34、処理実行部35、ルール実行部36、イベントコンテナ監視部37、及び、イベントコンテナ処理部38を有する。処理管理サーバ30が有するこれらの各機能は、図5に示したHDD209からメモリ202に展開されたプログラム209pをCPU201が実行することにより実現される機能又は手段である。
【0056】
また、処理管理サーバ30は記憶部39を有している。記憶部39は、図5に示したHDD209及びメモリ202の少なくとも一方により実現される記憶手段である。記憶部39には、イベントコンテナDB41(Data Base)、及び、ユーザ情報DB42が構築されている。まず、これらのデータベースについて説明する。
【0057】
【表1】
表1(a)は、イベントコンテナDB41に記憶されたイベントコンテナ3の構成を模式的に示す。イベントコンテナDB41にはイベントコンテナ3ごとにイベントコンテナ3がイベントドリブン方式で処理されるための情報が登録されている。イベントコンテナIDはイベントコンテナ3を識別又は特定する識別情報である。IDはIdentificationの略であり識別子や識別情報という意味である。IDは複数の対象から、ある特定の対象を一意的に区別するために用いられる名称、符号、文字列、数値又はこれらのうち1つ以上の組み合わせをいう。以下のIDについても同様である。格納場所は電子ファイル5の登録欄である。
【0058】
テンプレートタイプの項目は、テンプレートとして使用されるイベントコンテナ3であるか否かを示す。テンプレートとして使用されるイベントコンテナ3は、複数のユーザが個別に(共有せずに)使用するイベントコンテナ3である。このようなイベントコンテナ3は複製(コピー)して利用される。複数のユーザが使用するイベントコンテナ3であっても共有されるイベントコンテナ3はテンプレートタイプではない。テンプレートタイプか否かは管理者が設定できる。
【0059】
格納場所は1つ以上あればよい。1つの格納場所には1つの電子ファイル5が登録される。条件ファイル6には1つ以上の条件が設定される。条件が一切設定されないことも可能であるが、この場合は自動的にルールが実行されることになる。フラグは、初期状態がFalseであり、1つの条件ファイル6の条件が全て満たされるとTrueになる。ルールファイル8には1つ以上のルールが設定される。ルールが一切設定されないことも可能であるが、この場合は条件を満たしても何も処理が行われないことになる。
【0060】
表1(b)は、イベントコンテナ3の構成の別の例を示す。表1(b)では格納場所が2つあるが、いずれも電子ファイル5が設定されていない。1つめの格納場所の条件ファイル6は、1つめの格納場所にカラーのJPEG形式の画像データ(電子ファイル5)が設定されることである。2つめの格納場所の条件ファイル6は、格納場所にPDF形式の電子ファイル5が設定されること、である。このように、イベントコンテナ3には格納場所が用意されるので、電子ファイル5がなくても条件やルールが設定されることができる。
【0061】
格納場所は1以上のn個でよく。nには特に上限がない。また、条件ファイル6がない格納場所があってもよい。例えば、複数の電子ファイル5を一括で扱いたいが(ルールで処理したい)、ある電子ファイル5にだけ条件が設定されるような場合に利用される。条件ファイル6がない格納場所のフラグは自動的にTrueになる。
【0062】
表1(c)はイベントコンテナ3の構成の別の例を示す。表1(c)の説明では主に表1(b)との相違を説明する。表1(c)のイベントコンテナ3はルールファイル8に「1,2の電子ファイル5を圧縮」という設定を有する。この場合、処理管理サーバ30は全てのフラグがTrueになると2つの電子ファイル5を圧縮して1つの電子ファイル5に統合する。その後、ルールにしたがって、圧縮された電子ファイル5がフォルダに保存され、電子メールで送信される。
【0063】
このように、処理管理サーバ30は単に保存したり送信するだけでなく、電子ファイル5に対する加工も行ったりすることができる。加工には、圧縮の他、OCR(Optical Character Reader)、翻訳、PDFへの変換など、種々の処理がある。
【0064】
表1(a)~表1(c)で、イベントコンテナ3にユーザ名が対応付けられていてもよい。この場合、ユーザはログインすることでユーザ名に対応付けられているイベントコンテナ3を使用できる。
【0065】
【表2】
表2はユーザ情報DB42に登録されている情報を模式的に示す。ユーザ情報DB42は処理管理サーバ30を利用しうるユーザ又は管理者のアカウントが登録されたデータベースである。ユーザ情報DB42にはユーザ名及びパスワードが登録されている。ユーザ名は一意性が保証されたユーザの名称である。ユーザ名の代わりに又はユーザ名と共にユーザIDが対応付けられていてもよい。パスワードは各ユーザ別に登録されている秘匿性のある情報である。社員証などのICカードに関する情報が登録されていてもよい。この他、所属、メールアドレス、氏名等が登録されていてもよい。
【0066】
図6に戻って説明する。認証処理部34は端末装置10又は管理者端末60から送信された、ユーザ名及びパスワードがユーザ情報DB42に登録されているか否かに応じて、ユーザ又は管理者の認証が成立するか否かを判断する。なお、認証を処理管理サーバ30が行うのではなく、予め定められた認証サーバによる認証結果を処理管理サーバ30が使用してもよい。
【0067】
画面情報送信部31は端末装置10又は管理者端末60が表示する各種の画面の画面情報を端末装置10又は管理者端末60に送信する。管理者がログインした場合、画面情報送信部31は管理者向けにイベントコンテナ3を新たに生成するための画面情報を送信したり、すでにイベントコンテナDB41に保存されているイベントコンテナ3の編集を行ったりすることができる画面情報を送信する。また、ユーザがログインした場合、画面情報送信部31はすでにイベントコンテナDB41に保存されているイベントコンテナ3の条件を満たす操作をユーザが行うための画面情報を送信する。例えば、格納場所に電子ファイル5が設定されているイベントコンテナ3の場合は電子ファイル5、条件ファイル6及びルールファイル8を表示するための画面情報を送信する。格納場所に電子ファイル5が設定されていないイベントコンテナ3の場合は、条件ファイル6(どのような電子ファイルが必要か)及びルールファイル8を表示するための画面情報を送信する。
【0068】
操作内容受信部32は、端末装置10又は管理者端末60から上記の操作内容を受信して、イベントコンテナ設定部33又はイベントコンテナ処理部38に送出する。主に管理者からのイベントコンテナ3の新規作成又は編集に関する操作はイベントコンテナ設定部33に送出され、主にユーザからのイベントコンテナ3の電子ファイル5はイベントコンテナ処理部38に送出される。
【0069】
イベントコンテナ設定部33は、管理者の操作に応じて、イベントコンテナDB41に新規作成されたイベントコンテナ3を登録したり、すでに登録されているイベントコンテナ3を編集したりする。イベントコンテナ処理部38は端末装置10から送信された電子ファイル5でイベントコンテナの電子ファイル5を更新したり、電子ファイル5を格納場所に新たに登録したりする。
【0070】
イベントコンテナ監視部37は、イベントコンテナDB41のイベントコンテナ3の電子ファイル5と条件を監視して、条件が満たされた場合は条件ファイル6ごとにフラグをTrueに設定する。すなわち、1つのイベントコンテナ3が複数の条件ファイル6を有していても、フラグは任意の順番で独立に更新される。
【0071】
イベントコンテナ監視部37は、フラグをTrueに更新すると、1つのイベントコンテナ3の全ての条件ファイル6のフラグがTrueになったか否かを判断する。全てのフラグがTrueになるとそのイベントコンテナ3のIDをルール実行部36に通知する。ルール実行部36はIDで指示されたイベントコンテナ3をイベントコンテナDB41から取得し(読み取り)、ルールファイル8に設定されたルールを参照して、処理実行部35と連携しながらルールを実行する。
【0072】
処理実行部35は、予め登録された複数のプラグインを有し、ルール実行部36の制御にしたがって実行する。プラグインは例えばルールファイル8の1つのルールと1対1に対応する。ルール実行部36は、処理実行部35と通信してルールファイル8に設定されたルールに対応するプラグインに電子ファイル5を送出してその実行を要求する。OCRなど加工タイプのプラグインからは処理された電子ファイル5が戻ってくるので、ルール実行部36はルールファイル8の処理の順番に、プラグインへの処理の要求を行う。出力タイプのプラグインは処理された電子ファイル5をフォルダに移動したり、電子メールで送信したりする。
【0073】
<イベントコンテナの例>
図7を用いてイベントコンテナ3のいくつかの例を説明する。図7(a)は社内ルールを記載した電子ファイル5に編集と上書きが行われたら、一定の人に電子ファイル5をメールで送信するイベントコンテナ3を示す。
(1)管理者により、イベントコンテナ3の格納場所に「kisoku.doc」という電子ファイル5が設定される。
(2)管理者により、条件ファイル6に「編集」と「上書き保存」という条件が設定される。
(3)管理者により、ルールファイル8に「メールアドレスへ周知するというルールが設定される」
(4)ユーザにより、電子ファイル5が編集され、上書き保存されると、電子ファイル5が電子メールで送信される。なお、編集された電子ファイル5には編集履歴が記録されるので、電子メールを受信した社員はどこが編集されたのかを把握できる。
【0074】
図7(b)は、ローン審査で必要な電子ファイルを収集して、次工程に回すためのイベントコンテナ3を示す。
(1)管理者により、1つめの格納場所の条件ファイル6に「カラーJPEG」という条件が設定され、2つめの格納場所の条件ファイル6に「PDF」という条件が設定される。「カラーJPEG」は身分証明書(免許証、健康保険証、パスポート、マイナンバーカード等)の画像データであり、PDFはローンの申請書である。
(2)管理者により、ルールファイル8に「文書を○○フォルダに移動する」と「条件を満たしたことをメールで周知する」というルールが設定される。
(3)ユーザにより、「カラーJPEG」と「PDF」がイベントコンテナ3に設定されると、2つの電子ファイル5が次工程へ送信される。次工程は例えば審査部門などである。
(4)1つのイベントコンテナ3が次工程に送信されると、そのタイミングで新しいイベントコンテナ3が生成される。すなわち、(1)(2)で作成されたイベントコンテナ3はテンプレートであり、同じイベントコンテナ3がコピーして複数のユーザにより利用される。これにより定型の業務では管理者がイベントコンテナを作成する手間を低減できる。なお、イベントコンテナがコピーされるタイミングは次工程に送信されたタイミングでなくてもよく、例えば、ユーザがイベントコンテナ3を要求したタイミングでもよい。
【0075】
<動作手順>
図8は、管理者端末60がイベントコンテナ3を新規作成する手順を示すシーケンス図の一例である。図8の処理は、管理者がイベントコンテナ3を作成する際にスタートする。
【0076】
S1:まず、管理者は処理管理サーバ30に対し、ユーザ名とパスワードを含むログイン要求を送信する。
【0077】
S2:処理管理サーバ30の認証処理部34はログイン要求を受信して認証処理を実行する。すなわち、管理者端末60が送信したユーザ名とパスワードがユーザ情報DB42に登録されているか否かを判断する。
【0078】
S3:認証処理部34は認証結果を管理者端末60に送信する。登録されていない場合、認証処理部34は認証NGを管理者端末60に送信し、登録されている場合、認証処理部34は認証OKを管理者端末60に送信する。本実施形態では認証が成立したものとして説明する。
【0079】
S4:管理者はイベントコンテナ3を登録するため登録画面を要求する操作を管理者端末60に入力する。操作受付部12はこの操作を受け付ける。操作内容送信部14は登録画面要求を処理管理サーバ30に送信する。
【0080】
S5:処理管理サーバ30の操作内容受信部32は操作内容を受信し、画面情報送信部31に操作内容を通知する。画面情報送信部31は登録画面の画面情報を管理者端末60に送信する。なお、管理者端末60で動作するプログラム209pがアプリケーションソフトの場合、すでに登録画面の画面情報を有している場合もあるので、ステップS4とS5が行われない場合がある。ステップS4とS5は、管理者端末60で動作するプログラム209pがブラウザソフトウェアの場合に主に行われる。
【0081】
S6:管理者は、登録画面に対し電子ファイル5を登録する。操作受付部12は電子ファイル5の登録を受け付ける。上記のように電子ファイル5が登録されないイベントコンテナ3の場合、ステップS6は実行されない。
【0082】
S7:管理者は、登録画面に対し条件を登録する。操作受付部12は条件の登録を受け付ける。
【0083】
S8:管理者は、登録画面に対しルールを登録する。操作受付部12はルールの登録を受け付ける。
【0084】
S9:管理者は、登録画面に対し書誌情報7を登録する。操作受付部12は書誌情報7の登録を受け付ける。
【0085】
S10:管理者は、登録画面に対しテンプレートタイプを登録する。操作受付部12はテンプレートタイプの登録を受け付ける。
【0086】
S11:管理者が例えば送信ボタンを押下すると、操作受付部12がそれを受け付け、操作内容送信部14がイベントコンテナ3の登録要求(電子ファイル5、条件ファイル6、ルールファイル8、書誌情報7)を処理管理サーバ30に送信する。上記のように、電子ファイル5は送信されない場合がある。また、ステップS6~S9のそれぞれの処理の後に、管理者の操作に応じて又は自動的に電子ファイル5、条件ファイル6、ルールファイル8、及び、書誌情報7が別々に送信されてもよい。
【0087】
S12:処理管理サーバ30の操作内容受信部32は登録要求を受信し、イベントコンテナ設定部33に登録要求を送出する。イベントコンテナ設定部33は、イベントコンテナIDを採番してイベントコンテナDB41にイベントコンテナ3を登録する。
【0088】
S13:イベントコンテナ3を登録した処理管理サーバ30の画面情報送信部31はイベントコンテナIDを管理者端末60に送信する。このイベントコンテナIDを例えばURLとして通知するか、イベントコンテナIDと共にURLを通知すれば、管理者は自分が登録したイベントコンテナ3に容易にアクセスできる。
【0089】
図9は、ユーザがイベントコンテナ3の電子ファイル5に関する操作を行い、処理管理サーバ30がイベントドリブン方式で電子ファイル5に関するルールを実行する手順を示すシーケンス図の一例である。
S21~S23:図8のS1~S3と同様にユーザが処理管理サーバ30にログインする。
【0090】
S24:ユーザはイベントコンテナ3のリストを処理管理サーバ30に要求する操作を端末装置10に行う。端末装置10の操作受付部12は該操作を受け付け、操作内容送信部14がイベントコンテナ3のリスト要求を処理管理サーバ30に送信する。
【0091】
S25:処理管理サーバ30の操作内容受信部32はイベントコンテナ3のリスト要求を受信し、イベントコンテナ処理部38に送出する。イベントコンテナ処理部38はイベントコンテナDB41からユーザ名に対応付けられた1つ以上のイベントコンテナ3を読み出して、画面情報送信部31に送出する。画面情報送信部31はイベントコンテナ3のリストを端末装置10に送信する。ユーザが使用できるイベントコンテナ3は予め決まっており、1つ以上あればよい。また、図9ではイベントコンテナ3のリストをユーザが要求しているが、管理者等がイベントコンテナ3を指定するURLをユーザに電子メールなどで送信しておけば、ユーザは自分が使用すべきイベントコンテナ3を一意に特定できる。この場合、ステップS24~S27はなくてもよい。
【0092】
S26:ユーザはイベントコンテナ3のリストからイベントコンテナ3を選択する。端末装置10の操作受付部12はイベントコンテナ3の選択を受け付け、操作内容送信部14がIDと共にイベントコンテナ3の要求を処理管理サーバ30に送信する。
【0093】
S27:処理管理サーバ30の操作内容受信部32はイベントコンテナ3の要求を受信し、イベントコンテナ処理部38に送出する。
【0094】
S28:イベントコンテナ処理部38はIDで指定されたイベントコンテナ3をイベントコンテナDB41から取得して、テンプレートタイプの場合は複製する。
【0095】
S29:イベントコンテナ処理部38はIDで指定されたイベントコンテナ3又は複製したイベントコンテナ3を画面情報送信部31に送出する。画面情報送信部31はイベントコンテナ3を端末装置10に送信する。
【0096】
S30:端末装置10の画面情報取得部13はイベントコンテナ3を取得し、表示制御部11に送出するので、表示制御部11はイベントコンテナ3をLCD206に表示する。イベントコンテナ3の表示画面を図10に示す。これによりユーザは電子ファイル5に関する操作を行うことができる。端末装置10の操作受付部12はユーザによる電子ファイル5に関する操作を受け付ける。電子ファイル5に関する操作とは、例えば条件を満たすための操作であり、イベントコンテナ3によって様々である。
【0097】
S31:端末装置10の操作内容送信部14は電子ファイル5に関する操作内容を処理管理サーバ30に送信する。実際に電子ファイル5が更新された否かに関係なく、更新された電子ファイル5を送信すればよい。例えば、図8(a)のイベントコンテナ3の場合、端末装置10が表示するイベントコンテナ3にユーザが設定した編集後の電子ファイル5が操作内容である。図8(b)のイベントコンテナ3の場合、端末装置10が表示するイベントコンテナ3にユーザが設定したカラーJPEGの電子ファイル5又はPDFの電子ファイル5の少なくとも一方が操作内容である。なお、各電子ファイル5を個別に送信するのではなく、操作内容送信部14はイベントコンテナ3の全体を処理管理サーバ30に送信してもよい。
【0098】
S32:処理管理サーバ30の操作内容受信部32は電子ファイル5に関する操作内容を受信し、イベントコンテナ処理部38に送出する。イベントコンテナ処理部38はイベントコンテナ3を更新する。イベントコンテナ監視部37はフラグを更新する。この詳細を図11にて説明する。
【0099】
S33:また、処理管理サーバ30のルール実行部36はイベントコンテナ3の全てのフラグがTrueになると、ルールを実行する。
【0100】
図10は、端末装置10のLCD206に表示されたイベントコンテナ3の表示画面を示す図である。イベントコンテナ3の表示画面は主にイベントコンテナ欄401と電子ファイル欄402を有する。イベントコンテナ欄401にはイベントコンテナ3に関する情報が表示され、電子ファイル欄402にはイベントコンテナ3に含まれる電子ファイルが表示される。
【0101】
ユーザは編集したい電子ファイルを電子ファイル欄402から選択して編集し、格納場所にドラッグ&ドロップする。これにより、例えば上書き保存という条件を満たすことができる。イベントコンテナ3の格納場所に電子ファイルが格納されていないイベントコンテナ3の場合、ユーザが用意した電子ファイルを電子ファイル欄に表示させ、同様にドラッグ&ドロップすればよい。このように簡単な操作でユーザは電子ファイルを処理管理サーバ30に登録できる。
【0102】
図11は、処理管理サーバ30がイベントコンテナ3の更新を行う手順を示すフローチャート図の一例である。図11の処理は処理管理サーバ30がイベントコンテナ3を受信するとスタートする。
【0103】
まず、イベントコンテナ監視部37は、格納場所ごとに、端末装置10に送信する前の電子ファイル5と、端末装置10から送信された電子ファイル5を比較する(S101)。なお、当然ながら、比較する電子ファイル5は端末装置10から送信されたものだけでよい。
【0104】
そして、電子ファイル5に違いがあるか否かを判断する(S102)。電子ファイル5のテキスト部分の比較では先頭から順番に1文字ずつ比較し、画像データの比較ではマッチングにより比較する。なお、より簡単に、電子ファイル5のタイムスタンプ(更新日時)により判断してもよい。
【0105】
格納場所に電子ファイル5がなかったが、端末装置10から電子ファイル5が送信された場合も違いがあると判断される。
【0106】
2つの電子ファイル5に違いがない場合、処理はステップS105に進む。2つの電子ファイル5に違いがある場合、イベントコンテナ監視部37は条件が満たされたか否かを判断する(S103)。図8(a)のイベントコンテナ3では、電子ファイル5が編集されていればよいので、電子ファイル5に違いがあることで条件が満たされる。図8(b)のイベントコンテナ3では、端末装置10から送信された1つ目の格納場所の電子ファイル5がカラーJPEGである場合、又は、2つ目の格納場所の電子ファイル5がPDFである場合、条件が満たされたと判断する。
【0107】
ステップS103の判断がYesの場合、イベントコンテナ処理部38は格納場所のフラグをTrueに変更する(S104)。これにより、1つの格納場所のフラグがTrueになる。
【0108】
次に、イベントコンテナ監視部37は全ての格納場所を確認したか否かを判断する(S105)。全ての格納場所を確認するまで処理はステップS101に戻る。
【0109】
全ての格納場所を確認すると、イベントコンテナ監視部37はイベントコンテナ3の全てのフラグがTrueか否かを判断する(S106)。
【0110】
全てのフラグがTrueでない場合、ルールを実行できないので、図11の処理は終了する。
【0111】
全てのフラグがTrueである場合、イベントコンテナ監視部37はルール実行部36にルールの実行を要求する(S107)。これにより、イベントドリブン方式で、イベントコンテナ3に設定されたルールが実行される。
【0112】
<複合機を使用したローン申請>
複合機50が有するスキャナ機能を利用することで電子ファイル5を用意することができ、自律処理システム100がこれを条件としてルールを実行できる。例えば、ユーザが複合機50を使用して条件を満たすローン申請のためのイベントコンテナ3の活用例を説明する。
【0113】
図12は、複合機50と処理管理サーバ30を有する自律処理システム100の一例の構成図を示す。図12では端末装置10として複合機50が利用される。複合機50ではブラウザソフトウェア又はアプリケーションソフトが動作しており、ユーザが身分証明書及びローン申請書をイベントコンテナ3に設定するための画面をLCD206に表示する。
【0114】
図13は、複合機50を利用した自律処理システム100の動作を説明するシーケンス図の一例である。図13においてはすでに処理管理サーバ30にイベントコンテナ3が登録されているものとする。また、適宜、図14の画面例を参照して説明する。
【0115】
S41:複合機50の表示制御部11は待機時に図14(a)のメニュー画面301をLCD206に表示している。ローン申請を行うユーザはメニュー画面301のローン申請ボタン302を押下する。複合機50の操作受付部12はローン申請ボタン302の押下を受け付ける。これにより、複合機50の操作内容送信部14はローン申請のイベントコンテナ3を要求する操作内容を処理管理サーバ30に送信する。
【0116】
S42:処理管理サーバ30の操作内容受信部32はローン申請のイベントコンテナ3の要求を受信し、イベントコンテナ処理部38に送出する。イベントコンテナ処理部38は、ローン申請のイベントコンテナ3がテンプレートタイプであると判断し、イベントコンテナ3を複製する。画面情報送信部31は複製されたローン申請のイベントコンテナ3の画面情報を複合機50に送信する。
【0117】
S43:複合機50の画面情報取得部13が画面情報を取得して、表示制御部11が画面情報に基づいて図14(b)の電子ファイル選択画面311をLCD206に表示する。ユーザは身分証明書ボタン312又は申請書ボタン313のどちらでも好きなボタンから選択して押下する。図13では身分証明書ボタン312を先に押下したものとする。複合機50の操作受付部12は身分証明書ボタン312の押下を受け付ける。これにより、複合機50の表示制御部11は図14(c)の身分証コピー画面321をLCD206に表示する。身分証コピー画面321の画面情報を処理管理サーバ30から取得してもよい。
【0118】
S44:ユーザは指示にしたがって身分証をコンタクトガラスに置きスタートボタン323を押下する。操作受付部12はこの操作を受け付け基本機能部15に通知することで、基本機能部15が身分証をコピーする。複合機50の表示制御部11は図14(d)の確認画面331に身分証の画像データを表示し、操作受付部12はユーザがOKボタン333又はキャンセルボタン334のどちらを押下したかを判断する。
【0119】
S45:ユーザがOKボタン333を押下した場合、複合機50の操作内容送信部14は電子ファイル5に関する操作内容として、身分証の画像データを処理管理サーバ30に送信する。身分証の画像データは、申請書のPDFファイルと共に処理管理サーバ30に送信されてもよい。
【0120】
S46:処理管理サーバ30の操作内容受信部32は画像データを受信し、イベントコンテナ処理部38に送出する。これにより、イベントコンテナ処理部38はイベントコンテナ3を更新し、イベントコンテナ監視部37が身分証の電子ファイル5に対応する格納場所のフラグをTrueに設定する。また、全てのフラグがTrueかどうかを確認するが、この時点ではすべてのフラグがTrueでないのでルールは実行されない。
【0121】
S47:また、確認画面331のユーザがOKボタン333を押下すると、表示制御部11は電子ファイル選択画面311を再度、LCD206に表示する。すでに電子ファイル5が処理管理サーバ30に送信された電子ファイル5に対応するボタンは選択不能な状態で表示されるか又は表示されないことが好ましい。ユーザが申請書ボタン313を押下すると、複合機50の操作受付部12は申請書ボタン313の押下を受け付ける。これにより、複合機50の表示制御部11は図14(f)の申請書画面341をLCD206に表示する。
【0122】
S48:ユーザが申請書画面341で必要事項を入力するので、複合機50の操作受付部12は入力を受け付ける。
【0123】
S49:ユーザが申請書画面341のOKボタン343を押下すると、複合機50の操作受付部12が該操作を受け付ける。これにより基本機能部15が、ユーザにより入力された申請書のPDFファイルを作成する。PDFファイルの作成は処理管理サーバ30が行ってもよい。この場合、複合機50はユーザが申請書画面341で入力したテキストデータを処理管理サーバ30に送信する。こうすることで、負荷が高い処理を処理管理サーバ30が行うことができる。
【0124】
S50:複合機50の操作内容送信部14は電子ファイル5に関する操作内容として、申請書画面341で入力されテキストデータから変換されたPDFファイルを処理管理サーバ30に送信する。
【0125】
S51:処理管理サーバ30の操作内容受信部32はPDFファイルを受信し、イベントコンテナ処理部38に送出する。これにより、イベントコンテナ処理部38はイベントコンテナ3を更新し、イベントコンテナ監視部37がPDFファイルに対応する格納場所のフラグをTrueに設定する。
【0126】
S52:イベントコンテナ監視部37は、イベントコンテナ3の全てのフラグがTrueかどうかを確認する。この時点ですべてのフラグがTrueになるので、イベントコンテナIDを指定してルール実行部36にルールの実行を要求する。これにより、ルール実行部36がイベントコンテナ3をイベントコンテナDB41から読み出してイベントコンテナ3に設定されたルールを実行する。なお、ルール実行のタイミングで、新たにイベントコンテナ3をコピーして他のユーザが利用できるようにしてもよい。
【0127】
図14は、複合機50のLCD206に表示されるいくつかの画面例を説明する図である。図14(a)はメニュー画面301の一例を示す。メニュー画面301はローン申請ボタン302とレンタカーボタン303を有する。メニュー画面301はユーザがイベントコンテナ3を選択するための画面である。図14(a)ではローン申請とレンタカーのレンタルが例に挙げられているが一例に過ぎず、スキャナ機能で身分証明書をコピーする各種のイベントコンテナ3を選択可能になる。
【0128】
図14(b)は電子ファイル選択画面311の一例を示す。電子ファイル選択画面311は、身分証明書ボタン312又は申請書ボタン313を有する。ユーザはローン申請のために用意すべき電子ファイル5を順番に複合機50に入力することができる。
【0129】
図14(c)は身分証コピー画面321の一例を示す。身分証コピー画面321は身分証のコピー操作を誘導するアイコン322、スタートボタン323、及び、キャンセルボタン324を有する。ユーザはアイコンにしたがって、身分証をコンタクトガラスに置き身分証の画像データを作成する。
【0130】
図14(d)は確認画面331の一例を示す。確認画面331には、身分証の画像データ332、OKボタン333、及び、キャンセルボタン334が表示される。ユーザは身分証の画像データ332を見て身分証がコピーできたか否かを判断する。OKボタン333の押下により身分証の画像データが処理管理サーバ30のイベントコンテナ3へ登録され、キャンセルボタン334の押下により身分証の画像データが破棄される。この場合、再度、図14(c)の身分証コピー画面321が表示される。
【0131】
図14(e)は図14(b)と同様の電子ファイル選択画面311の一例を示す。図14(e)の電子ファイル選択画面311は、ユーザがこれから入力すべき電子ファイル5に対応する申請書ボタン313のみが選択可能に表示される。身分証明書ボタン312は輝度が低下された状態で表示され、ユーザが選択することができない。
【0132】
図14(f)は申請書画面341の一例を示す。申請書画面341は申請書の必要事項の入力欄342、OKボタン343、及び、キャンセルボタン344を有する。ユーザはタッチパネルのソフトキーやハードキーを使用して必要事項を入力する。OKボタン343の押下により申請書(又はPDFファイル)が処理管理サーバ30のイベントコンテナ3へ登録され、キャンセルボタン344の押下により入力内容が破棄される。
【0133】
このように、ユーザは複合機50に表示される画面にしたがって複合機50を操作すれば、イベントコンテナ3の条件を満たすことができる。
【0134】
<複数人のユーザによる並行処理>
図15は、複数人のユーザによる並行処理を説明する図の一例である。本実施形態の自律処理システム100は従来のワークフローのように処理が順番に進行される必要がないため、複数のユーザが並行して1つのイベントコンテナ3に対し電子ファイル5の格納場所の条件を満たすための操作を行うことができる。
【0135】
図15では処理管理サーバ30に2台の端末装置10が接続されている。また、処理管理サーバ30には、2つの電子ファイル5にそれぞれ条件が設定されたイベントコンテナ3が登録されている。条件は電子ファイル5に対しユーザが署名するというものである。二人のユーザは任意のタイミングで電子ファイル5に署名することができるため、どちらかのユーザの署名の方が早くなければならないということがない。
【0136】
なお、処理管理サーバ30は一人のユーザは1つの電子ファイル5にしか署名できないように制御することも可能である。この場合、処理管理サーバ30は、条件ファイルに条件を満たす操作を行ったユーザのユーザIDを設定しておき、同じユーザによる別の電子ファイル5に対する操作を制限する(禁止する)。あるいは、一人のユーザが複数の電子ファイル5に署名できてもよい。
【0137】
<その他のイベントコンテナの例>
図16は、イベントコンテナ3の一例を示す。「***.pdf」という電子ファイル5が100回、閲覧されると「社内SNSにアップロード」するというルールが実行される。このように、本実施形態の自律処理システム100は、不特定のユーザによる電子ファイル5に対する操作と操作の回数(閲覧回数が閾値以上になること)を条件にできる。従来のワークフローシステムでは電子ファイル5の状態を決まったユーザが更新していたため、不特定のユーザによる処理を条件とすることは困難であった。また、閲覧回数を条件とすることも困難であった。
【0138】
なお、「社内SNSにアップロード」というルールは一例に過ぎず、「監視フォルダにアップロード」「batファイルを実行」等をルールに設定することもできる。
【0139】
<まとめ>
以上説明したように、本実施形態の自律処理システム100イベントドリブン方式のように自律的に処理を進めることが可能になる。1人以上の各ユーザはイベントドリブン方式で任意のタイミングで条件を満たしていくことができる。従来のワークフローでは基本的にユーザの判断・操作によって処理が進行していたが、自律処理システム100はユーザが判断したり操作したりすることは不要で、自律的に条件の判断とルールが実行される。また、端末装置10を操作するユーザは、イベントコンテナ3がどんな状態かを確認することができる。
【0140】
<その他の適用例>
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【0141】
例えば、本実施形態では複数の電子ファイル5の条件が満たされる順番に制約がないと説明したが、順番を設定することも可能である。この場合、処理管理サーバ30はイベントコンテナ3に設定された順番どおりに端末装置10に電子ファイル5を提供したり、格納場所への電子ファイル5の登録を許可したりする。
【0142】
また、複数のイベントコンテナ3が連携してもよい。例えば、1番目のイベントコンテナ3のルールが実行されることで、2番目のイベントコンテナ3が有効になり、2番目のイベントコンテナ3に対する電子ファイル5の条件を満たすようにユーザが操作できるようになる。
【0143】
また、イベントコンテナ3に設定されるルールとしては、フォルダ配信、メール送信等の他、プリンタからの印刷、FAX送信、ディスプレイへの表示、プロジェクタからの投影等、電子ファイルで可能な処理であればよい。また、全てのフラグがTrueになることで、所定のメンバーを会議のため招集したり、会議室を予約したりしてもよく、電子ファイルが直接使用されないルールが設定されてもよい。
【0144】
また、本実施形態では処理管理サーバ30と端末装置10がクライアント・サーバ形式で処理する自律処理システム100について説明したが、例えば端末装置10が単体で自律処理を行ってもよい。この場合、ユーザは端末装置10が有するイベントコンテナ3の電子ファイル5に対し条件を満たす操作を行う。全てのフラグがTrueになるとルールファイル8に設定されたルールを実行するので、例えば、電子ファイル5をアップロードしたり、電子メールで配信したりすることができる。
【0145】
また、イベントコンテナ3は条件ファイル6とルールファイル8を有すると説明したが、条件はファイルに記載されている必要はなく、ルールもファイルに記載されている必要はない。
【0146】
また、イベントコンテナ3は、条件ファイル6とルールファイル8を一体に有する必要はなく、1つ以上の電子ファイル5(又はその格納場所)に条件ファイル6及びルールファイル8が対応付けられていればよい。
【0147】
また、図6などの構成例は、端末装置10、及び処理管理サーバ30の処理の理解を容易にするために、主な機能に応じて分割したものである。処理単位の分割の仕方や名称によって本願発明が制限されることはない。また、端末装置10、及び処理管理サーバ30の処理は、処理内容に応じて更に多くの処理単位に分割することもできる。また、1つの処理単位が更に多くの処理を含むように分割することもできる。
【0148】
また、処理管理サーバ30の機能がそれぞれ複数のサーバ装置に分散されていてもよいし、複数の処理管理サーバ30が存在してもよい。
【0149】
イベントコンテナDB41は記憶手段の一例であり、イベントコンテナ監視部37は監視手段の一例であり、ルール実行部36は処理実行手段の一例であり、イベントコンテナ処理部38は複製手段の一例である。
【符号の説明】
【0150】
3 :イベントコンテナ
5 :電子ファイル
6 :条件ファイル
7 :書誌情報
8 :ルールファイル
10 :端末装置
30 :処理管理サーバ
31 :画面情報送信部
32 :操作内容受信部
33 :イベントコンテナ設定部
34 :認証処理部
35 :処理実行部
36 :ルール実行部
37 :イベントコンテナ監視部
38 :イベントコンテナ処理部
50 :複合機
60 :管理者端末
100 :自律処理システム
【先行技術文献】
【特許文献】
【0151】
【文献】特開2003-050905号公報
図1
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