(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化型インク
(51)【国際特許分類】
C09D 11/101 20140101AFI20220817BHJP
C09D 11/38 20140101ALI20220817BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20220817BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
C09D11/101
C09D11/38
B41J2/01 501
B41J2/01 129
B41M5/00 120
(21)【出願番号】P 2018136884
(22)【出願日】2018-07-20
【審査請求日】2021-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 逸郎
【審査官】松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】特開昭52-024296(JP,A)
【文献】特開2006-274025(JP,A)
【文献】特開2011-213965(JP,A)
【文献】特開2009-191118(JP,A)
【文献】特表2006-514711(JP,A)
【文献】特表2005-514658(JP,A)
【文献】特開2009-023341(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00-11/54
B41J 2/01
B41M 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光体と、前記蛍光体の発光により光増感作用を示す増感剤と、を含
み、
前記蛍光体は、蛍光ガラスであり、
前記蛍光体を15~20質量%含むことを特徴とする活性エネルギー線硬化型インク。
【請求項2】
前記蛍光体が、紫外光領域に発光帯を有することを特徴とする請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型インク。
【請求項3】
前記蛍光体の最大蛍光波長が405nmであることを特徴とする請求項1または2に記載の活性エネルギー線硬化型インク。
【請求項4】
前記蛍光体の平均粒子径が、15nm以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型インク。
【請求項5】
前記増感剤を3~5質量%含むことを特徴とする請求項1~
4のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型インク。
【請求項6】
前記蛍光ガラスは、ガラス成分に蛍光活性元素を分布させたものであり、
前記蛍光活性元素は、Tb
3+
、Eu
2+
およびEu
3+
から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型インク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化型インクに関する。
【背景技術】
【0002】
紙等の記録媒体上に画像を形成する方法として、インクジェット記録方式が知られている。このインクジェット記録方式は、インクの消費効率が高く省資源性に優れており、単位記録当たりのインクコストを低く抑えることが可能である。
【0003】
近年、活性エネルギー硬化型インクを用いたインクジェット記録方式が注目され、数多くの提案がなされている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
活性エネルギー線硬化型インクは、重合性モノマーを含有し、また水銀ランプやメタルハライドランプ等の活性エネルギー線の照射源の種類に応じて吸収波長の異なる数種類の重合開始剤を用い、該重合性モノマーを重合させることにより硬化する。その硬化物(塗膜)は様々な用途で用いられ、一般的には、傷に強い、高い硬度が望まれている。
【0005】
塗膜硬度を向上させるため、活性エネルギー線硬化型インク内にシリカ、炭酸カルシウム等のフィラーを配合する技術が知られている(例えば特許文献2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、塗膜硬度を向上させるため、活性エネルギー線硬化型インク内に単にフィラーを配合しただけでは、硬度の上昇に限界があるという問題点があった。
【0007】
したがって本発明の目的は、塗膜内部の硬化性を向上させ、塗膜硬度を著しく高めることが可能な、活性エネルギー線硬化型インクの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、下記構成1)により解決される。
1)蛍光体と、前記蛍光体の発光により光増感作用を示す増感剤と、を含み、
前記蛍光体は、蛍光ガラスであり、
前記蛍光体を15~20質量%含むことを特徴とする活性エネルギー線硬化型インク。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、塗膜内部の硬化性を向上させ、塗膜硬度を著しく高めることが可能な、活性エネルギー線硬化型インクを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態についてさらに詳しく説明する。
本発明の活性エネルギー線硬化型インクは、蛍光体と、前記蛍光体の発光により光増感作用を示す増感剤と、を含むことを特徴とする。
本発明の活性エネルギー線硬化型インクは、蛍光体を添加することにより、活性エネルギー線の照射により蛍光体が励起および発光し、その発光により増感剤が光増感作用を示し、塗膜内部での重合反応が促進される。これにより、塗膜内部の硬化性が向上し、塗膜硬度を著しく高めることが可能となる。塗膜硬度は、非蛍光体であるシリカや炭酸カルシウム等のフィラーを配合した活性エネルギー線硬化型インクよりも向上する。
【0011】
本発明では、蛍光体の発光帯に光増感作用を示す増感剤を使用する。この条件を満たす限り、蛍光体と増感剤との組み合わせは任意である。
【0012】
蛍光体としては、例えば、ZnS:Cu,Al、(Zn,Cd)S:Cu,Al、ZnS:Cu,Au,Al、Y2SiO5:Tb、(Zn,Cd)S:Cu、Gd2O2S:Tb、Y2O2S:Tb、Y3Al5O12:Ce、(Zn,Cd)S:Ag、ZnS:Ag,Cu,Ga,Cl、Y3Al5O12:Tb、Y3(Al,Ga)5O12:Tb、Zn2SiO4:Mn、LaPO4:Ce,Tb、Y2O3S:Eu、YVO4:Eu、ZnS:Mn、Y2O3:Eu、ZnS:Ag、ZnS:Ag,Al、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO4)6Cl2:Eu、Sr10(PO4)6Cl2:Eu、(Ba,Sr,Eu)(Mg,Mn)Al10O17、(Ba,Eu)MgAl10O17、ZnO:Zn、Y2SiO5:Ce等の1種以上が挙げられるが、本発明では、塗膜硬度がさらに高まるという観点から、以下の蛍光ガラスを使用することが好ましい。
【0013】
蛍光ガラスとは、ガラス成分に蛍光活性元素を好ましくは均一に分布させたものであって、例えば、フツリン酸塩等の基本ガラス成分に蛍光活性を有する希土類元素をドープしたものが挙げられる。
具体的には、特開平8-133780号公報、特開平9-202642号公報等に記載されるフツリン酸塩蛍光ガラス、特開平10-167755号公報等に記載される酸化物蛍光ガラスを用いることができる。
これらの蛍光ガラスにはTb3+、Eu2+、Eu3+が蛍光活性元素としてドープされている。これら蛍光ガラスは可視光線下では殆ど着色のない透明である一方、広い波長範囲の紫外光に対して強い蛍光を発生する。紫外光を受けてTb3+は緑色系の蛍光を、Eu2+は青色系の蛍光を、Eu3+は赤色系の蛍光をそれぞれ呈する。かかる蛍光ガラスとしては、市販されているものを使用することができ、例えば株式会社住田光学ガラス製の商品名ルミラス-G9、ルミラス-B、ルミラス-R7等が挙げられる。
ルミラス-G9は、紫外光を受けて540nmの緑色系の蛍光を発光する。ルミラス-Bは、紫外光を受けて405nmの青色系の蛍光を発光する。ルミラス-R7は、紫外光を受けて610nmの赤色系の蛍光を発光する。
本発明では、塗膜硬度がさらに高まるという観点から、とくに紫外光を受けて最大蛍光波長として405nmの青色系の蛍光を発光する、ルミラス-Bを使用するのが好ましい。
【0014】
本発明において、蛍光体の平均粒子径は、15nm以下であることが好ましい。この平均粒子径の条件を満たすことにより、蛍光体からの発光が塗膜の全方向に放射し易くなり、塗膜硬度が向上する。蛍光体の平均粒子径は、5nm~10nmがさらに好ましい。なお、蛍光体の平均粒子径は公知の方法により測定することができ、例えば動的光散乱式測定装置(DLS測定、Nicomp 380、Particle Sizing Systems社製)等を用いて測定できる。
【0015】
本発明の活性エネルギー線硬化型インクは、塗膜硬度がさらに高まるという観点から、前記蛍光体を15~20質量%含むことが好ましく、18~20質量%含むことがさらに好ましい。
【0016】
増感剤としては、公知のものを使用でき、例えば、アントラセン系、ベンゾフェノン系、チオキサントン系、ペリレン、フェノチアジン、ローズベンガル等の化合物を用いることができる。市販されているものとしては、例えば、川崎化成工業株式会社製の商品名アントラキュアーUVS-581、1101、1331、日本化薬株式会社製のKAYACURE DETX-S等が挙げられるが、蛍光体として405nmの青色系の蛍光を発光する材料(例えば前記ルミラス-B)を使用する場合は、増感剤として405nmの発光を吸収して光増感作用を示す、前記アントラキュアーUVS-1331(9,10-ジブトキシアントラセン)を使用するのがとくに好ましい。
【0017】
本発明の活性エネルギー線硬化型インクは、塗膜硬度がさらに高まるという観点から、前記増感剤を3~5質量%含むことが好ましく、4~5質量%含むことがさらに好ましい。
【0018】
本発明の活性エネルギー線硬化型インクは、前記蛍光体および前記増感剤以外にも、公知の各種成分を含有することができる。以下、当該成分について説明する。
【0019】
<重合性化合物>
前記重合性化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、重合性不飽和モノマー化合物、重合性オリゴマーなどが挙げられる。
【0020】
<<重合性不飽和モノマー化合物>>
前記重合性不飽和モノマー化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、一官能の重合性不飽和モノマー化合物、二官能の重合性不飽和モノマー化合物、三官能の重合性不飽和モノマー化合物、四官能以上の重合性不飽和モノマー化合物などが挙げられる。これらは1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0021】
前記一官能の重合性不飽和モノマー化合物としては、例えば、アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル(VEEA)、2-エチルヘキシルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート(PEA)、イソボルニルアクリレート、フェニルグリコールモノアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、アクリロイルモルホリン(ACMO)、テトラヒドロフルフリルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イルメチルアクリレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
前記二官能の重合性不飽和モノマー化合物としては、例えば、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
前記三官能の重合性不飽和モノマー化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
前記四官能以上の重合性不飽和モノマー化合物としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
前記重合性不飽和モノマー化合物は、それぞれ1種単独で用いても、2種以上を併用してもよく、また、異種の重合性不飽和モノマー化合物を2種以上併用してもよい。
【0022】
前記重合性不飽和モノマー化合物の含有量としては、活性エネルギー線硬化型インク全量に対して、50質量%以上90質量%以下が好ましく、65質量%以上85質量%以下がより好ましい。
【0023】
<<重合性オリゴマー>>
前記重合性オリゴマーとしては、エチレン性不飽和二重結合を1個以上有することが好ましい。なお、オリゴマーとは、モノマー構造単位の繰り返し数が2以上20以下の重合体を意味する。
【0024】
前記重合性オリゴマーの重量平均分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、ポリスチレン換算で、1,000以上30,000以下が好ましく、5,000以上20,000以下がより好ましい。前記重量平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
【0025】
前記重合性オリゴマーとしては、例えば、ウレタンアクリルオリゴマー(例えば、芳香族ウレタンアクリルオリゴマー、脂肪族ウレタンアクリルオリゴマー等)、エポキシアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレートオリゴマー、その他の特殊オリゴマーなどが挙げられる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、不飽和炭素-炭素結合が2個以上5個以下のオリゴマーが好ましく、不飽和炭素-炭素結合が2個のオリゴマーがより好ましい。不飽和炭素-炭素結合の数が、2個以上5個以下であると、良好な硬化性を得ることができる。
【0026】
前記重合性オリゴマーとしては、市販品を使用することができ、前記市販品としては、例えば、日本合成化学工業株式会社製のUV-2000B、UV-2750B、UV-3000B、UV-3010B、UV-3200B、UV-3300B、UV-3700B、UV-6640B、UV-8630B、UV-7000B、UV-7610B、UV-1700B、UV-7630B、UV-6300B、UV-6640B、UV-7550B、UV-7600B、UV-7605B、UV-7610B、UV-7630B、UV-7640B、UV-7650B、UT-5449、UT-5454;サートマー社製のCN902、CN902J75、CN929、CN940、CN944、CN944B85、CN959、CN961E75、CN961H81、CN962、CN963、CN963A80、CN963B80、CN963E75、CN963E80、CN963J85、CN964、CN965、CN965A80、CN966、CN966A80、CN966B85、CN966H90、CN966J75、CN968、CN969、CN970、CN970A60、CN970E60、CN971、CN971A80、CN971J75、CN972、CN973、CN973A80、CN973H85、CN973J75、CN975、CN977、CN977C70、CN978、CN980、CN981、CN981A75、CN981B88、CN982、CN982A75、CN982B88、CN982E75、CN983、CN984、CN985、CN985B88、CN986、CN989、CN991、CN992、CN994、CN996、CN997、CN999、CN9001、CN9002、CN9004、CN9005、CN9006、CN9007、CN9008、CN9009、CN9010、CN9011、CN9013、CN9018、CN9019、CN9024、CN9025、CN9026、CN9028、CN9029、CN9030、CN9060、CN9165、CN9167、CN9178、CN9290、CN9782、CN9783、CN9788、CN9893;ダイセル・サイテック株式会社製のEBECRYL210、EBECRYL220、EBECRYL230、EBECRYL270、KRM8200、EBECRYL5129、EBECRYL8210、EBECRYL8301、EBECRYL8804、EBECRYL8807、EBECRYL9260、KRM7735、KRM8296、KRM8452、EBECRYL4858、EBECRYL8402、EBECRYL9270、EBECRYL8311、EBECRYL8701などが挙げられる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
また、市販品ではなく、合成により得た合成品を使用することもでき、合成品及び市販品を併用することもできる。
【0027】
前記重合性オリゴマーの含有量としては、活性エネルギー線硬化型インク全量に対して、10質量%以下が好ましく、9質量%以下がより好ましく、8質量%以下がさらに好ましく、5質量%以下が特に好ましい。
【0028】
<重合開始剤>
前記重合開始剤としては、活性エネルギー線のエネルギーによって、ラジカルやカチオンなどの活性種を生成し、重合性化合物(モノマーやオリゴマー)の重合を開始させることが可能なものであればよい。このような重合開始剤としては、公知のラジカル重合開始剤やカチオン重合開始剤を、1種単独もしくは2種以上を組み合わせて用いることができ、中でもラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。また、前記重合開始剤の含有量としては、十分な硬化速度を得るために、活性エネルギー線硬化型インク全量に対して、5質量%以上20質量%以下が好ましい。
【0029】
前記ラジカル重合開始剤としては、例えば、芳香族ケトン類、アシルフォスフィンオキサイド化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物(チオキサントン化合物、チオフェニル基含有化合物など)、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、及びアルキルアミン化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0030】
前記重合開始剤としては、市販品を使用することもでき、前記市販品としては、例えば、BASF社製のイルガキュア819、イルガキュア369、イルガキュア907、DarocurITX、ルシリンTPO、Stauffer Chemical社製のVicure 10、30などが挙げられる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0031】
<色材>
本発明における活性エネルギー線硬化型インクは、色材を含有していてもよい。色材としては、ブラック、ホワイト、マゼンタ、シアン、イエロー、グリーン、オレンジ、金や銀等の光沢色、などを付与する種々の顔料や染料を用いることができる。色材の含有量は、所望の色濃度やインク中における分散性等を考慮して適宜決定すればよく、特に限定されないが、インクの総質量(100質量%)に対して、0.1~20質量%であることが好ましい。なお、本発明における活性エネルギー線硬化型インクは、色材を含まず無色透明であってもよく、その場合には、例えば、画像を保護するためのオーバーコート層として好適である。
顔料としては、無機顔料又は有機顔料を使用することができ、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
無機顔料としては、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、酸化鉄、酸化チタンを使用することができる。
有機顔料としては、例えば、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、アゾレーキ、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等の多環式顔料、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等)、染色レーキ(塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料が挙げられる。
また、顔料の分散性をより良好なものとするため、分散剤をさらに含んでもよい。分散剤としては、特に限定されないが、例えば、高分子分散剤などの顔料分散物を調製するのに慣用されている分散剤が挙げられる。
染料としては、例えば、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能であり、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
<その他の成分>
その他の成分としては、特に制限されないが、例えば、従来公知の、有機溶剤、重合禁止剤、スリップ剤(界面活性剤)、浸透促進剤、湿潤剤(保湿剤)、定着剤、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート剤、pH調整剤、及び増粘剤などが挙げられる。
【0033】
<<重合禁止剤>>
前記重合禁止剤としては、例えば、4-メトキシ-1-ナフトール、メチルハイドロキノン、ハイドロキノン、t-ブチルハイドロキノン、ジ-t-ブチルハイドロキノン、メトキノン、2,2’-ジヒドロキシ-3,3’-ジ(α-メチルシクロヘキシル)-5,5’-ジメチルジフェニルメタン、p-ベンゾキノン、ジ-t-ブチルジフェニルアミン、9,10-ジ-n-ブトキシシアントラセン、4,4’-〔1,10-ジオキソ-1,10-デカンジイルビス(オキシ)〕ビス〔2,2,6,6-テトラメチル〕-1-ピペリジニルオキシ、p-メトキシフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾールなどが挙げられる。
【0034】
前記重合禁止剤の含有量としては、重合開始剤全量に対して、0.005質量%以上3質量%以下が好ましい。前記含有量が、0.005質量%以上であると、保存安定性を向上でき、高温環境下で粘度の上昇を抑制でき、3質量%以下であると、硬化性を向上できる。
【0035】
<<界面活性剤>>
前記界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、高級脂肪酸系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤などが挙げられる。
【0036】
前記界面活性剤の含有量としては、活性エネルギー線硬化型インク全量に対して、0.1質量%以上3質量%以下が好ましく、0.2質量%以上1質量%以下がより好ましい。
【0037】
<<有機溶剤>>
本発明の活性エネルギー線硬化型インクは、有機溶剤を含んでもよいが、可能であれば含まない方が好ましい。有機溶剤を含まない(例えば、VOC(Volatile Organic Compounds)フリー)ことにより、硬化膜中に揮発性の有機溶剤の残留が無くなり、印刷現場の安全性が得られ、環境汚染防止を図ることが可能となる。なお、前記「有機溶剤」とは、一般的に揮発性有機化合物(VOC)と呼ばれているものを意味し、例えば、エーテル、ケトン、キシレン、酢酸エチル、シクロヘキサノン、トルエンなどが挙げられ、反応性モノマーとは区別すべきものである。また、有機溶剤を「含まない」とは、実質的に含まないことを意味し、その含有量が、0.1質量%未満であることが好ましい。
【0038】
<製造方法>
前記活性エネルギー線硬化型インクの製造方法としては、各種成分をボールミル、キティーミル、ディスクミル、ピンミル、ダイノーミルなどのメディアを用いた分散機に投入し、分散、混練して顔料分散液を調製し、これに、必要に応じて重合開始剤、重合禁止剤、界面活性剤などを混合することにより得ることができる。また、ディスパー、ホモジナイザー等のメディアレス分散装置を用いてもよい。
【0039】
<活性エネルギー線>
本発明の活性エネルギー線硬化型インクを硬化させるために用いる活性エネルギー線としては、紫外線の他、電子線、α線、β線、γ線、X線等の、インク中の重合性成分の重合反応を進める上で必要なエネルギーを付与できるものであればよく、特に限定されない。特に高エネルギーな光源を使用する場合には、重合開始剤を使用しなくても重合反応を進めることができる。
【0040】
前記活性エネルギー線の光源としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、例えば、水銀ランプ、メタルハライドランプ、UV-LEDランプなどが挙げられる。
前記水銀ランプとしては、石英ガラス製の発光管の中に高純度の水銀(Hg)と少量の希ガスが封入されたもので、365nmを主波長とし、254nm、303nm、313nmの紫外線を効率よく放射し、短波長紫外線の出力が高いのが特徴である。
前記メタルハライドランプとしては、発光管の中に水銀に加えて金属をハロゲン化物の形で封入したもので、200nmから450nmまで広範囲にわたり活性エネルギー線スペクトルを放射し、水銀ランプに比べ、300nm以上450nm以下の長波長紫外線の出力が高いのが特徴である。
前記UV-LEDランプとしては、長寿命、及び低消費電力のLED方式により、環境負荷を低減でき、オゾン発生がなく装置もコンパクトにできる特徴があり、本発明の活性エネルギー線硬化型インクを硬化する際に用いるランプとして好ましい。
【0041】
本発明の活性エネルギー線硬化型インクは、インクジェット用であることができる。前記活性エネルギー線硬化型インクの25℃における静的表面張力は、20mN/m以上40mN/m以下が好ましく、28mN/m以上35mN/m以下がより好ましい。
前記静的表面張力は、静的表面張力計(協和界面科学株式会社製、CBVP-Z型)を使用し、25℃で測定した。前記静的表面張力は、例えば、リコープリンティングシステムズ株式会社製GEN4など、市販のインクジェット吐出ヘッドの仕様を想定したものである。
【実施例】
【0042】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。なお、実施例3とあるのは、本発明に含まれない参考例3とする。
【0043】
(実施例1)
アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル(VEEA)(株式会社日本触媒製)25質量部、フェノキシエチルアクリレート(PEA)(大阪有機化学工業株式会社製)30質量部、アクリロイルモルフォリン(ACMO)(KJ ケミカルズ製)10質量部、OMNIRAD 369(IGMジャパン合同会社製)5質量部、OMNIRAD TPO(IGMジャパン合同会社製)5質量部、アントラキュアーUVS-1331(川崎化成工業株式会社製)5質量部、p-メトキシフェノール(日本化薬株式会社製)0.2質量部、およびルミラス-B(株式会社住田光学ガラス製)19.8質量部を混合し、活性エネルギー線硬化型インク1を得た。
【0044】
(実施例2)
アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル(VEEA)(株式会社日本触媒製)29.8質量部、フェノキシエチルアクリレート(PEA)(大阪有機化学工業株式会社製)30質量部、アクリロイルモルフォリン(ACMO)(KJ ケミカルズ製)10質量部、OMNIRAD 369(IGMジャパン合同会社製)5質量部、OMNIRAD TPO(IGMジャパン合同会社製)5質量部、アントラキュアーUVS-1331(川崎化成工業株式会社製)5質量部、p-メトキシフェノール(日本化薬株式会社製)0.2質量部およびルミラス-B(株式会社住田光学ガラス製)15質量部を混合し、活性エネルギー線硬化型インク2を得た。
【0045】
(実施例3)
アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル(VEEA)(株式会社日本触媒製)31.8質量部、フェノキシエチルアクリレート(PEA)(大阪有機化学工業株式会社製)30質量部、アクリロイルモルフォリン(ACMO)(KJ ケミカルズ製)10質量部、OMNIRAD 369(IGMジャパン合同会社製5質量部、OMNIRAD TPO(IGMジャパン合同会社製)5質量部、アントラキュアーUVS-1331(川崎化成工業株式会社製)5質量部、p-メトキシフェノール(日本化薬株式会社製)0.2質量部およびルミラス-B(株式会社住田光学ガラス製)13質量部を混合し、活性エネルギー線硬化型インク3を得た。
【0046】
(実施例4)
アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル(VEEA)(株式会社日本触媒製)27質量部、フェノキシエチルアクリレート(PEA)(大阪有機化学工業株式会社製)30質量部、アクリロイルモルフォリン(ACMO)(KJ ケミカルズ製)10質量部、OMNIRAD 369(IGMジャパン合同会社製)5質量部、OMNIRAD TPO(IGMジャパン合同会社製)5質量部、アントラキュアーUVS-1331(川崎化成工業株式会社製)3質量部、p-メトキシフェノール(日本化薬株式会社製)0.2質量部およびルミラス-B(株式会社住田光学ガラス製)19.8質量部を混合し、活性エネルギー線硬化型インク4を得た。
【0047】
(実施例5)
アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル(VEEA)(株式会社日本触媒製)28質量部、フェノキシエチルアクリレート(PEA)(大阪有機化学工業株式会社製)30質量部、アクリロイルモルフォリン(ACMO)(KJ ケミカルズ製)10質量部、OMNIRAD 369(IGMジャパン合同会社製)5質量部、OMNIRAD TPO(IGMジャパン合同会社製)5質量部、アントラキュアーUVS-1331(川崎化成工業株式会社製)2質量部、p-メトキシフェノール(日本化薬株式会社製)0.2質量部およびルミラス-B(株式会社住田光学ガラス製)19.8質量部を混合し、活性エネルギー線硬化型インク5を得た。
【0048】
(実施例6)
アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル(VEEA)(株式会社日本触媒製)33.8質量部、フェノキシエチルアクリレート(PEA)(大阪有機化学工業株式会社製)30質量部、アクリロイルモルフォリン(ACMO)(KJ ケミカルズ製)10質量部、OMNIRAD 369(IGMジャパン合同会社製)5質量部、OMNIRAD TPO(IGMジャパン合同会社製)5質量部、アントラキュアーUVS-1331(川崎化成工業株式会社製)3質量部、p-メトキシフェノール(日本化薬株式会社製)0.2質量部およびルミラス-B(株式会社住田光学ガラス製)15質量部を混合し、活性エネルギー線硬化型インク6を得た。
【0049】
(比較例1)
アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル(VEEA)(株式会社日本触媒製)25質量部、フェノキシエチルアクリレート(PEA)(大阪有機化学工業株式会社製)30質量部、アクリロイルモルフォリン(ACMO)(KJ ケミカルズ製)10質量部、OMNIRAD 369(IGMジャパン合同会社製)5質量部、OMNIRAD TPO(IGMジャパン合同会社製)5質量部、アントラキュアーUVS-1331(川崎化成工業株式会社製)5質量部、p-メトキシフェノール(日本化薬株式会社製)0.2質量部およびルミラス-R7(株式会社住田光学ガラス製)19.8質量部を混合し、活性エネルギー線硬化型インク7を得た。
【0050】
(比較例2)
アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル(VEEA)(株式会社日本触媒製)25質量部、フェノキシエチルアクリレート(PEA)(大阪有機化学工業株式会社製)30質量部、アクリロイルモルフォリン(ACMO)(KJ ケミカルズ製)10質量部、OMNIRAD 369(IGMジャパン合同会社製)5質量部、OMNIRAD TPO(IGMジャパン合同会社製)5質量部、アントラキュアーUVS-1331(川崎化成工業株式会社製)5質量部、p-メトキシフェノール(日本化薬株式会社製)0.2質量部およびルミラス-G9(株式会社住田光学ガラス製)19.8質量部を混合し、活性エネルギー線硬化型インク8を得た。
【0051】
(比較例3)
アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル(VEEA)(株式会社日本触媒製)25質量部、フェノキシエチルアクリレート(PEA)(大阪有機化学工業株式会社製)30質量部、アクリロイルモルフォリン(ACMO)(KJ ケミカルズ製)10質量部、OMNIRAD 369(IGMジャパン合同会社製)5質量部、OMNIRAD TPO(IGMジャパン合同会社製)5質量部、アントラキュアーUVS-1331(川崎化成工業株式会社製)5質量部、p-メトキシフェノール(日本化薬株式会社製)0.2質量部およびシリカ(東ソー・シリカ株式会社製商品名ニップシール)19.8質量部を混合し、活性エネルギー線硬化型インク9を得た。
【0052】
前記実施例1~6および比較例1~3におけるインク処方を下記表1に示す。
【0053】
<硬化膜(塗膜)作成>
活性エネルギー線硬化型インク1~9をそれぞれプラスチック製の収容容器に充填し、吐出手段としてのインクジェットヘッド(株式会社リコー製「MH5440」)、活性エネルギー線照射手段としてのフュージョン社製UV照射機LightHammmer6(Dバルブ)、吐出を制御するコントローラー、および組成物収容容器からインクジェットヘッドへの供給経路を備えた像形成装置に組み込んだ。活性エネルギー線硬化型インクの粘度が10~12mPa・sとなるように適宜インクジェットヘッドの温調を行い、汎用的なフィルム材料である市販のPETフィルム(東洋紡株式会社製「コスモシャインA4100」、厚み188μm)上に活性エネルギー線硬化型インクを膜厚10μmでインクジェット吐出し、UV照射機で紫外線照射を行って印刷画像(10cm×10cmのベタ画像)を作製した。このとき、紫外線照射の積算光量は、1000mJ/cm2とした。
【0054】
(評価)
<引っかき硬度(鉛筆法)>
前記で得られたベタ画像の部分をJIS K5600 5-4に準じて、鉛筆で塗膜を削り、その引っかき硬度を測定し、以下の評価基準で評価した。△以上が実用可能な範囲であり、○が好ましく、◎がさらに好ましい。
◎:比較例3よりも引っかき硬度が2段階以上硬い
○:比較例3よりも引っかき硬度が1段階硬い
△:比較例3と引っかき硬度が同等
結果を併せて表1に示す。
【0055】
【0056】
実施例のインクは、蛍光体と、蛍光体の発光により光増感作用を示す増感剤と、を含んでいるので、比較例のインクに対し、塗膜硬度が向上していることが確認された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0057】
【文献】特開2018-9074号公報
【文献】国際公開WO2012/176570号パンフレット