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特許7124600通信制御装置、通信制御方法、及び、通信制御システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】通信制御装置、通信制御方法、及び、通信制御システム
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/46 20060101AFI20220817BHJP
   H04L 47/24 20220101ALI20220817BHJP
【FI】
H04L12/46 D
H04L47/24
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018180394
(22)【出願日】2018-09-26
(65)【公開番号】P2020053800
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】笠松 琢磨
【審査官】宮島 郁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-064323(JP,A)
【文献】特開2006-262379(JP,A)
【文献】特開2010-283552(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0209891(US,A1)
【文献】特開2004-140486(JP,A)
【文献】特開2001-292167(JP,A)
【文献】QoS経路制御における受付遅延の導入とその効果について,電子情報通信学会技術研究報告,Vol.101 No.374,日本,2001年10月12日,第45-50頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L12/00-13/18,41/00-69/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークに接続された端末から、前記ネットワークの優先利用の要求である優先要求を受け付ける受付部と、
同時又は所定の短時間内に前記受付部で受け付けられた、複数の前記端末からの前記優先要求の有無を判別する判別部と、
前記ネットワークに接続された複数の前記端末に、通信を行う際に用いる帯域幅を、それぞれ設定するネットワークスイッチに対して、前記優先要求を受け付けた前記端末が優先して使用する帯域幅及び使用可能時間の設定である優先度設定を行う設定部と、
を有し、
前記設定部は、前記判別部により、複数の前記端末から前記優先要求を受け付けたことが判別された場合、前記ネットワークスイッチに対して、前記優先して使用する帯域幅及び使用可能時間が設定された設定回数が一番少ない端末、一番多い端末、所定回数以上の端末又は所定回数未満の端末についての前記優先度設定を行う通信制御装置。
【請求項2】
記端末の固有情報と、前記設定回数とが、端末毎に関連付けられて記憶された記憶部とを、さらに備え、
前記設定部は、前記優先して使用可能な前記帯域幅及び使用可能時間が設定された端末の、前記記憶部に記憶されている前記設定回数を更新処理し、前記判別部により、複数の前記端末から前記優先要求を受け付けたことが判別された場合、前記優先要求を受け付けた各前記端末の固有情報に基づいて前記記憶部を参照して前記優先要求を受け付けた各端末の前記設定回数を検出し、前記ネットワークスイッチに対して、検出した前記設定回数が一番少ない端末、一番多い端末、所定回数以上の端末又は所定回数未満の端末に対する前記優先度設定を行うこと
を特徴とする請求項1に記載の通信制御装置。
【請求項3】
複数の端末と、
ネットワークに接続された複数の前記端末に、通信を行う際に用いる帯域幅を、それぞれ設定するネットワークスイッチと、
請求項1または請求項2に記載の通信制御装置と
を有する通信制御システム。
【請求項4】
受付部が、ネットワークに接続された端末から、前記ネットワークの優先利用の要求である優先要求を受け付ける受付ステップと、
判別部が、同時又は所定の短時間内に前記受付部で受け付けられた、複数の前記端末からの前記優先要求の有無を判別する判別ステップと、
設定部が、前記ネットワークに接続された複数の前記端末に、通信を行う際に用いる帯域幅を、それぞれ設定するネットワークスイッチに対して、前記優先要求を受け付けた前記端末が優先して使用する帯域幅及び使用可能時間の設定である優先度設定を行う設定ステップと
を有し、
前記設定ステップにおいて、前記設定部は、前記判別部により、複数の前記端末から前記優先要求を受け付けたことが判別された場合、前記ネットワークスイッチに対して、前記優先して使用する帯域幅及び使用可能時間が設定された設定回数が一番少ない端末、一番多い端末、所定回数以上の端末又は所定回数未満の端末についての前記優先度設定を行う通信制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信制御装置、通信制御方法、及び、通信制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
今日において、通信技術の発展により、様々なデータがネットワークを介して通信されている。ここで、同じネットワークを多くの利用者で利用する場合、スイッチの処理量以上のデータがネットワーク上を流れることがある。この場合、スイッチによるデータ処理が困難となるため通信速度が低下し、例えば業務でネットワークを利用している利用者の業務等に支障を来す問題を生ずる。
【0003】
このような問題を解決する技術として、スイッチで特定のデータを優先的に通信可能とするQoS(Quality of Service)が知られている。このQoSは、宛先IP(Internet Protocol)アドレス又はTCP(Transmission Control Protocol)/UDP(User Datagram Protocol)ポート番号からアプリケーションを判断し、例えば音声又は動画等のように、通信遅延が発生することでサービス品質を低下させるデータ(データの連続性が重要なデータ)を優先的に通信する。
【0004】
また、一般的に、ネットワーク側でQoS制御が行われるが、移動によりネットワークが変更するモバイル端末の場合、ネットワーク側にQoS制御を任せるのは効率的ではない。このようなことから、特許文献1(特開2009-105949号公報)に開示されている端末では、無線技術を利用したモバイルネットワークにおいて、サービスを受ける利用者の端末(スイッチ)がネットワークの状態を受け取り、自身で判断しながらQoSの設定を行う。これにより、サービスを受ける終端の端末で、QoSを取り扱い可能とすることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のQoS制御は、音声又は動画等のアプリケーション単位での優先的な通信設定は可能であるが、業務利用の端末等の特定の端末を優先的に通信設定することは困難であった。すなわち、特定の端末単位でのQoS制御は困難であった。このため、非業務利用の端末で動画を扱うアプリケーションが実行されていた場合、業務利用の端末よりも非業務利用の端末の通信が優先される不都合を生じていた。
【0006】
なお、特許文献1に開示されている技術の場合、端末毎にQoS制御を実行可能ではあるが、例えば業務利用の端末のみQoS制御を実行する等のように、特定の端末単位でのQoS制御は困難である。このため、上述と同様の不都合を生ずる。
【0007】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、特定の端末単位での優先した通信制御を可能とする通信制御装置、通信制御方法、及び、通信制御システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、ネットワークに接続された端末から、ネットワークの優先利用の要求である優先要求を受け付ける受付部と、同時又は所定の短時間内に受付部で受け付けられた、複数の端末からの優先要求の有無を判別する判別部と、ネットワークに接続された複数の端末に、通信を行う際に用いる帯域幅を、それぞれ設定するネットワークスイッチに対して、優先要求を受け付けた端末が優先して使用する帯域幅及び使用可能時間の設定である優先度設定を行う設定部と、を有し、設定部は、判別部により、複数の端末から優先要求を受け付けたことが判別された場合、ネットワークスイッチに対して、優先して使用する帯域幅及び使用可能時間が設定された設定回数が一番少ない端末、一番多い端末、所定回数以上の端末又は所定回数未満の端末についての優先度設定を行う
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、特定の端末単位での優先した通信制御を可能とすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施の形態の通信制御システムのシステム構成図である。
図2図2は、実施の形態の通信制御システムに設けられているQoS管理コントローラのハードウェア構成を示すブロック図である。
図3図3は、実施の形態の通信制御システムにおける、利用者端末からQoS管理コントローラに対して送信された優先的な通信設定の要求である優先要求の処理形態を示す模式図である。
図4図4は、利用者端末の優先要求の衝突が無い場合における、実施の形態の通信制御システムの優先要求の処理動作の流れを示すシーケンス図である。
図5図5は、複数の利用者端末の優先要求が衝突した場合に、業務中の利用者端末を優先してQoS制御する、実施の形態の通信制御システムのシステム動作を示す模式図である。
図6図6は、複数の利用者端末の優先要求が衝突した場合に、業務中であるか否かに基づいて優先要求の処理を行う実施の形態の通信制御システムの動作の流れを示すシーケンス図である。
図7図7は、複数の利用者端末の優先要求が衝突した場合に、過去の優先度変更回数に基づいてQoS制御する、実施の形態の通信制御システムのシステム動作を示す模式図である。
図8図8は、複数の利用者端末の優先要求が衝突した場合に、過去の優先度変更回数に基づいてQoS制御する、実施の形態の通信制御システムのシステム動作の流れを示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、通信制御装置、通信制御方法、及び、通信制御システムを適用した実施の形態の通信制御システムの説明をする。
【0012】
(システム構成)
図1は、実施の形態の通信制御システムのシステム構成図である。この図1に示すように通信制御システムは、一つ又は複数の利用者端末1が、ネットワークスイッチ2(以下、単にスイッチ2という)を介して、例えばインターネット等のネットワーク3に接続されている。また、スイッチ2とネットワーク3との間に、スイッチ2のスイッチング制御(QoS制御)を行うQoS管理コントローラ4が接続されている。
【0013】
利用者端末1は、スイッチ2及びQoS管理コントローラ4によるQoS制御対象である。スイッチ2は、ネットワークスイッチの一例であり、QoS変更部11を有している。スイッチ2は、QoS管理コントローラ4の指示に応じて、優先的に通信可能とする利用者端末1を設定制御(QoS制御)する。
【0014】
QoS管理コントローラ4は、HTTP(Hyper Text Transfer Protocol)サーバ15、優先度設定部16、優先要求衝突検出部17及び利用者端末情報記憶部18を有している。
【0015】
HTTPサーバ15は、受付部の一例であり、利用者端末1からの、ネットワーク3の優先利用の要求である優先要求を受け付ける。優先度設定部16は、設定部の一例であり、利用者端末情報記憶部18に記憶されている利用者情報を参照して、HTTPサーバ15で優先要求を受け付けた利用者端末1に対する優先度をスイッチ2に設定する。優先要求衝突検出機能17は、判別部の一例であり、複数の利用者端末1から、例えば同時又は5秒以内等の短時間内に優先要求があった場合(優先要求の衝突)、これを検出して優先度設定部16に通知する。このような優先要求の衝突が生じた場合、優先度設定部16は、後述する選択条件に基づいて、いずれかの利用者端末1を選択して、スイッチ2に各利用者端末1の優先度の設定を行う。
【0016】
なお、ここで言う「優先度」とは、スイッチ2で制御される各利用者端末1が通信に用いる通信回線の帯域幅を意味する。また、広い帯域幅を設定すれば高速通信が可能となり、帯域幅を狭くすれば通信速度が低速となるため、帯域幅と通信速度は同義であると理解されたい。優先度設定部16は、各利用者端末1に対して使用を許可する帯域幅を、優先度としてスイッチ2に設定する。
【0017】
(QoS管理コントローラのハードウェア構成)
図2は、QoS管理コントローラ4のハードウェア構成を示すブロック図である。この図2に示すように、QoS管理コントローラ4は、CPU(Central Processing Unit)21、ROM(Read Only Memory)22、RAM(Random Access Memory)23、HDD(Hard Disk Drive)24及び通信部25を有している。通信部25は、各利用者端末1との間、及び、スイッチ2との間で通信を行う。
【0018】
ROM22には、オペレーションシステム(OS)が記憶されている。CPU21は、このOSに従って、QoS管理コントローラ4全体の動作を制御する。HDD24には、QoS制御を行うための通信制御プログラムが記憶されている。CPU21は、この通信制御プログラムを読み込み、上述のHTTPサーバ15、優先設定部16及び優先要求衝突検出部17をRAM23に展開して実行する。
【0019】
また、HDD24には、利用者端末情報記憶部18の記憶領域が設けられている。この利用者端末情報記憶部18には、業務用の利用者端末1のQoS管理行うための業務端末管理テーブル31と、各利用者端末1の優先度の変更回数を管理するための優先度変更回数テーブル32が記憶されている。なお、「テーブル」とは記憶領域を意味する。また、HDD24は、記憶部の一例である。
【0020】
なお、この例は、HTTPサーバ15~優先要求衝突検出部17をソフトウェアで実現する例であるが、これらのうち、一部又は全部を、IC(Integrated Circuit)等のハードウェアで実現してもよい。また、HTTPサーバ15~優先要求衝突検出部17が実現する機能は、通信制御プログラム単体で実現しても良いし、他のプログラムに処理の一部を実行させる、又は他のプログラムを用いて間接的に処理を実行させても良い。
【0021】
また、通信制御プログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)などのコンピュータ装置で読み取り可能な記録媒体に記録して提供してもよい。また、通信制御プログラムは、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)、ブルーレイディスク(登録商標)、半導体メモリなどのコンピュータ装置で読み取り可能な記録媒体に記録して提供してもよい。また、通信制御プログラムは、インターネット等のネットワーク経由でインストールするかたちで提供してもよいし、機器内のROM等に予め組み込んで提供してもよい。
【0022】
(優先要求の処理動作)
(衝突する利用者端末が無い場合)
図3は、実施の形態の通信制御システムにおける、利用者端末1からQoS管理コントローラ4に対して送信された優先的な通信設定の要求である優先要求の処理形態を示す模式図である。この図3において、例えば利用者端末1Dの利用者が優先的な通信を希望する場合、利用者端末1Dを介してQoS管理コントローラ4に、優先要求と共に優先希望時間を示す優先希望時間情報を送信する。
【0023】
QoS管理コントローラ4は、利用者端末1Dから優先要求を受信すると、スイッチ2に対して利用者端末1Dを優先的に通信させると共に、他の利用者端末1A~1Cは非優先とする優先度設定を行う。また、QoS管理コントローラ4は、スイッチ2に対して、例えば5分等の優先可能時間の設定を行う(QoS設定)。このようなQoS設定がされると、スイッチ2は、QoS変更部11により、例えば5分等の優先可能時間の間、利用者端末1Dからの通信を、他の利用者端末1A~1Cの通信よりも優先的に処理する。
【0024】
このような優先要求の処理動作の流れは、図4のシーケンス図のようになる。すなわち、利用者端末1DからQoS管理コントローラ4に対して通信の優先要求を送信すると(ステップS1)、QoS管理コントローラ4のHTTPサーバ15は、優先度設定部16に優先度設定指示を行う(ステップS2)。
【0025】
優先度設定部16は、他の利用者端末1A~1Cからの優先要求の有無(衝突)を衝突検知部17に問い合わせる(ステップS3)。衝突検知部17は、他の利用者端末1A~1Cからの優先要求の有無を判別する(ステップS4)。他の利用者端末1A~1Cからの優先要求が無いことを示す衝突判定結果を得た場合(ステップS5)、優先度設定部16は、スイッチ2に対して、利用者端末1Dの優先度設定を行う(ステップS6)。
【0026】
スイッチ2は、QoS変更部11により、利用者端末1Dに対して通信の優先度を反映させる設定を行い(ステップS7)、この設定完了後に、優先度変更完了通知を優先度設定部16に送信する(ステップS8)。スイッチ2から優先度変更完了通知を受信すると、優先度設定部16は、利用者端末情報記憶部18に対して、優先度変更回数の更新要求を行う(ステップS9)。利用者端末情報記憶部18は、優先度変更回数テーブル32に記録されている各利用者端末1A~1Dのうち、利用者端末1Dの優先度変更回数を「1」インクリメントして変更(更新処理)する(ステップS10)。優先度変更回数テーブル32に記録されている各利用者端末1A~1Dの優先度変更回数は、デフォルトでは「0(ゼロ)」であり、優先度設定がされる度に、優先度設定がされた利用者端末の優先度変更回数が「1」ずつインクリメントされる。
【0027】
このように利用者端末1Dの優先度変更回数の変更が完了すると、優先度設定部16は、HTTPサーバ15を介して利用者端末1Dに優先度の変更が完了したことを示す優先度変更完了通知を行う(ステップS11、ステップS12)。これにより、利用者端末1Dの利用者は、例えば5分等の優先可能時間の間、他の利用者端末1A~1Cよりも優先的に通信を行うことができる。
【0028】
(複数の利用者端末からの優先要求が衝突した場合)
(業務中であるか否かに基づくQoS設定)
以上の図4の例は、ステップS4の優先要求の衝突判定において、他の利用者端末からの優先要求が無いものと判定された場合の動作であった。これに対して、ステップS4の優先要求の衝突判定において、利用者端末1Dの優先要求と共に、他の利用者端末からの優先要求も検出された場合、図5及び図6に示すシステム動作となる。
【0029】
図5は、利用者端末1Dの優先要求、及び、利用者端末1Cの優先要求が衝突した場合に、業務中の利用者端末を優先してQoS制御するシステム動作を模式的に示す模式図である。このような優先要求の衝突を検出すると、QoS管理コントローラ4は、利用者端末情報記憶部18の業務端末管理テーブル31に記憶されている業務端末情報を参照する。
【0030】
具体的には、業務端末管理テーブル31には、各利用者端末1A~1Dの固有情報(例えば、製造番号又は携帯電話番号等)と、各固有情報に関連付けられた各利用者の業務時間帯を示す業務時間帯情報とが、業務端末情報として記憶された業務時間テーブルを有している。QoS管理コントローラ4は、この業務時間テーブルの業務端末情報を参照することで、優先要求を受け付けた利用者端末1C及び利用者端末1Dが、現在、業務中であるか非業務中であるかを判別する。図5の例は、利用者端末1Cが非業務中であり、利用者端末1Dが業務中である例である。この場合、QoS管理コントローラ4は、スイッチ2に対して、現在、業務中である利用者端末1Dの通信を優先するようにQoS設定する。
【0031】
このような業務中であるか否かに基づく優先要求の処理動作の流れは、図6のシーケンス図のようになる。なお、この図6のシーケンス図において、図4のシーケンス図と同じ動作を示す箇所には、同じステップ番号を付し、重複説明は省略する。図6のシーケンス図において、衝突検知部17がステップS4で優先要求の衝突判定を行った結果、複数の利用者端末1からの優先要求の衝突が生じているとの衝突判定結果を得た場合(ステップS5)、優先度設定部16は、優先要求の衝突が生じている各利用者端末1の固有情報に基づいて利用者端末情報記憶部18の業務端末管理テーブル31に記憶されている業務時間テーブルを参照する(ステップS21、ステップS22)。また、優先度設定部16は、業務時間テーブルに記憶されている業務端末情報に含まれる業務時間帯情報に基づいて、現在、優先要求を受け付けている利用者端末が、現在、業務中であるか否かを判別する。そして、優先度設定部16は、現在、業務中の利用者端末の通信を優先するように、スイッチ2に対して優先度設定を行う(ステップS23)。
【0032】
スイッチ2は、QoS変更部11により、優先度設定部16から指定された利用者端末に対して通信の優先度を反映させる設定を行い(ステップS24)、この設定完了後に、優先度変更完了通知を優先度設定部16に送信する(ステップS25)。スイッチ2から優先度変更完了通知を受信すると、優先度設定部16は、利用者端末情報記憶部18に対して、優先度変更回数の更新要求を行う(ステップS26)。利用者端末情報記憶部18は、優先度変更回数テーブル32に記録されている各利用者端末1A~1Dのうち、利用者端末1Dの優先度変更回数を「1」インクリメントして変更する(ステップS27)。
【0033】
このように利用者端末1Dの優先度変更回数の変更が完了すると、優先度設定部16は、HTTPサーバ15を介して利用者端末1Dに優先度の変更が完了したことを示す優先度変更完了通知を行う(ステップS28、ステップS29)。これにより、利用者端末1Dの利用者は、例えば5分等の優先可能時間の間、他の利用者端末1A~1Cよりも優先的に通信を行うことができる。
【0034】
(QoS制御のランダム設定)
図5及び図6に示した例では、業務中であるか否かに基づいてQoS設定を行うこととしたが、複数の優先要求の衝突した場合、優先度設定部16は、ランダムに決定した利用者端末に対してQoS設定を行うようにしてもよい。
【0035】
(優先度変更回数に基づくQoS設定)
上述のように、優先度設定部16は、利用者端末の優先度変更処理を行う毎に、利用者端末情報記憶部18に記憶されているが優先度変更回数を「1」ずつインクリメントする。優先度設定部16は、この優先度変更回数を参照して、QoS設定を行ってもよい。この場合、システム動作は、図7及び図8に示すようになる。
【0036】
図7は、利用者端末1Dの優先要求、及び、利用者端末1Cの優先要求が衝突した場合に、各利用者端末の優先度変更回数が少ない利用者端末1Dを優先してQoS設定するシステム動作を模式的に示す模式図である。このような優先要求の衝突を検出すると、QoS管理コントローラ4は、利用者端末情報記憶部18の優先度変更回数テーブル32に記憶されている優先度変更回数情報を参照する。
【0037】
具体的には、優先度変更回数テーブル32には、過去に変更した優先度の変更回数を示す優先度変更回数情報が、利用者端末毎に記憶されている。QoS管理コントローラ4は、優先度変更回数テーブル32を参照することで、優先要求を受け付けた利用者端末1C及び利用者端末1Dの過去の優先度変更回数を検出する。図7に示す例は、利用者端末1Cの、過去の優先度変更回数は30回で、利用者端末1Dの、過去の優先度変更回数は5回の例である。
【0038】
一例ではあるが、QoS管理コントローラ4は、過去の優先度変更回数が少ない方の利用者端末を選択し、この利用者端末に対するQoS設定を、スイッチ2に指示する。図7に示す例の場合は、利用者端末1Cの過去の優先度変更回数が30回で、利用者端末1Dの過去の優先度変更回数が5回である。このため、QoS管理コントローラ4は、優先度変更回数が少ない方である、利用者端末1Dの通信を優先するように、スイッチ2に対してQoS設定を行う。これにより、各利用者端末に対するQoS設定の回数を平均化することができ、システムの公平性を担保できる。
【0039】
なお、この例では、優先度変更回数が少ない方の利用者端末に対してQoS設定を行うこととするが、優先度変更回数が多い方の利用者端末に対してQoS設定してもよい。または、優先度変更回数が所定回数以上又は所定回数未満の利用者端末に対してQoS設定してもよい。
【0040】
このような優先度変更回数に基づく優先要求の処理動作の流れは、図8のシーケンス図のようになる。なお、この図8のシーケンス図において、図4のシーケンス図と同じ動作を示す箇所には、同じステップ番号を付し、重複説明は省略する。図8のシーケンス図において、衝突検知部17がステップS4で優先要求の衝突判定を行った結果、複数の利用者端末からの優先要求の衝突が生じているとの衝突判定結果を得た場合(ステップS5)、優先度設定部16は、利用者端末情報記憶部18の優先度変更回数テーブル32を参照する(ステップS31、ステップS32)。また、優先度設定部16は、優先度変更回数テーブルに記憶されている優先度変更回数情報に基づいて、現在、優先要求を受け付けている各利用者端末の優先度変更回数を判別する。そして、優先度設定部16は、優先度変更回数が一番少ない利用者端末の通信を優先するように、スイッチ2に対して優先度設定を行う(ステップS33)。図7の例では、優先度設定部16は、利用者端末1Dの通信を優先するように、スイッチ2に対して優先度設定を行う。
【0041】
スイッチ2は、QoS変更部11により、優先度設定部16から指定された利用者端末に対して通信の優先度を反映させる設定を行い(ステップS34)、この設定完了後に、優先度変更完了通知を優先度設定部16に送信する(ステップS35)。スイッチ2から優先度変更完了通知を受信すると、優先度設定部16は、利用者端末情報記憶部18に対して、優先度変更回数の更新要求を行う(ステップS36)。利用者端末情報記憶部18は、優先度変更回数テーブル32に記録されている各利用者端末1A~1Dのうち、優先度設定を行った利用者端末の優先度変更回数を「1」インクリメントして変更する(ステップS37)。
【0042】
このような優先度変更回数の変更が完了すると、優先度設定部16は、HTTPサーバ15を介して利用者端末1Dに優先度の変更が完了したことを示す優先度変更完了通知を行う(ステップS38、ステップS39)。これにより、優先度設定がされた利用者端末の利用者は、例えば5分等の優先可能時間の間、他の利用者端末よりも優先的に通信を行うことができる。
【0043】
なお、スイッチ2は、優先可能時間が経過すると、優先度設定を解除する。また、上述の「ランダム」、「業務中か否か」及び「優先度変更回数」に基づく優先度設定は、いずれか一つを選択して実行してもよいし、いくつかを組み合わせて実行してもよい。
【0044】
(実施の形態の効果)
以上の説明から明らかなように、実施の形態の通信システムは、ネットワーク3上に利用者端末のQoS制御を行うQoS管理コントローラ4を設ける。QoS管理コントローラ4は、利用者端末毎に優先度及び優先可能時間をスイッチ2に設定してQoS制御を行う。これにより、業務利用中の利用者端末等の端末単位でのQoS制御を可能とすることができる。
【0045】
また、QoS管理コントローラ4がQoS制御を行うようになっているため、スイッチ2がQoS制御を行う場合と比較してスイッチ2の負荷を大幅に低減することができる。また、利用者端末1が自身で判断するQoS制御機能を設ける場合と比較して、安価な利用者端末1を使用可能とすることができ、システム全体のコストを削減することができる。
【0046】
また、QoS管理コントローラ4は、利用者端末1から送信された優先要求及び優先希望時間を受信し、優先要求を行った利用者端末1に対して、優先度設定を行うと共に、優先可能時間の設定を行う。複数の利用者端末からの優先要求を同時に受信(又は所定時間内に複数受信)した場合、QoS管理コントローラ4は、優先要求を同時に受信した各利用者端末1のうち、ランダムに選択した利用者端末1に対して優先度設定を行う。
【0047】
または、QoS管理コントローラ4は、利用者端末情報記憶部18の業務端末管理テーブルに記憶されている業務時間テーブルを参照し、優先要求を同時に受信した各利用者端末1のうち、現在、業務中の利用者端末1に対して優先度設定を行う。これにより、真に必要な利用者端末1の通信品質を維持可能な通信サービスを提供できる。
【0048】
または、QoS管理コントローラ4は、利用者端末情報記憶部18の優先度変更回数テーブル32を参照し、優先要求を同時に受信した各利用者端末1のうち、過去の優先度変更回数が一番少ない利用者端末1に対して優先度設定を行う。これにより、各利用者端末に対する優先度設定の回数を平均化することができ、システムの公平性を担保できる。
【0049】
最後に、上述の実施の形態は、一例として提示したものであり、本発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことも可能である。また、実施の形態及び実施の形態の変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0050】
1 利用者端末
2 スイッチ
3 ネットワーク
4 QoS管理コントローラ
11 QoS変更部
15 HTTPサーバ
16 優先度設定部
17 優先要求衝突検出部
18 利用者端末情報記憶部
31 業務端末管理テーブル
32 優先度変更回数テーブル
【先行技術文献】
【特許文献】
【0051】
【文献】特開2009-105949号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8