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特許7124645酸化ルテニウム粉の製造方法及び酸化ルテニウム粉、並びに酸化ルテニウム粉を有する厚膜抵抗ペースト
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】酸化ルテニウム粉の製造方法及び酸化ルテニウム粉、並びに酸化ルテニウム粉を有する厚膜抵抗ペースト
(51)【国際特許分類】
   C01G 55/00 20060101AFI20220817BHJP
   H01C 7/00 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
C01G55/00
H01C7/00 324
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018205809
(22)【出願日】2018-10-31
(65)【公開番号】P2020070215
(43)【公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001405
【氏名又は名称】特許業務法人篠原国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100065824
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100104983
【弁理士】
【氏名又は名称】藤中 雅之
(74)【代理人】
【識別番号】100166394
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 和弘
(72)【発明者】
【氏名】安藤 真規
(72)【発明者】
【氏名】矢田 久貴
【審査官】神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-012992(JP,A)
【文献】特開2009-026903(JP,A)
【文献】特開昭50-103499(JP,A)
【文献】特開2017-122043(JP,A)
【文献】国際公開第2012/176696(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 55/00
H01C 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸化ルテニウム粉を焙焼し酸化ルテニウム粉を得る焙焼工程を有する酸化ルテニウム粉の製造方法であって、
前記焙焼工程では、水酸化ルテニウム粉を、所定の焙焼温度を一定時間保持して焙焼する第1回目の焙焼処理を行い、さらに、第1回目の焙焼処理の後に、前回の焙焼処理における焙焼温度よりも高い所定の焙焼温度を一定時間保持して焙焼する焙焼処理を1回以上繰り返して行い、
第1回目の焙焼処理の焙焼温度が、300℃以上500℃以下の所定温度であり、
最終の焙焼処理の焙焼温度が、600℃以上800℃以下の所定温度であることを特徴とする酸化ルテニウム粉の製造方法。
【請求項2】
前記焙焼工程における、第1回目の焙焼処理の次の焙焼処理が最終の焙焼処理であることを特徴とする請求項1に記載の酸化ルテニウム粉の製造方法。
【請求項3】
均粒径が18.2nm以上23.4nm以下である酸化ルテニウム粉であって、前記酸化ルテニウム粉を0.3g採取し、ビーカーに入れ、純水100mLを加え、超音波を照射して、純水中に分散させた後、ビーカーを静置することで酸化ルテニウム粉の粗大粒子を沈降させ、10分静置後、ビーカー内の上澄みを除去することで酸化ルテニウム粉の微細な粒子を除去し、更にフィルターでろ過することにより採取した、酸化ルテニウム粉の粒子を走査型電子顕微鏡にて倍率2000倍で観察し、64μm×48μmの視野内に存在する粒径が1μmを超える粗大粒子数を20視野計数し、その総数を酸化ルテニウム粉における粒径が1μmを超える粗大粒子数の評価値としたとき、該評価値が30個以下であることを特徴とする酸化ルテニウム粉。
【請求項4】
請求項3に記載の酸化ルテニウム粉を有することを特徴とする厚膜抵抗ペースト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化ルテニウム粉の製造方法及び酸化ルテニウム粉、並びに酸化ルテニウム粉を有する厚膜抵抗ペーストに関し、更に詳しくは、水酸化ルテニウム粉を焙焼して酸化ルテニウム粉を製造する方法及び酸化ルテニウム粉、並びに酸化ルテニウム粉を有する厚膜抵抗ペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
厚膜抵抗ペーストは導電粉、ガラス粉およびそれらを印刷に適したペースト状にするための有機ビヒクルから実質構成される。この厚膜抵抗ペーストを任意のパターンで印刷し、高温でガラスを焼結させることで、例えば、厚膜チップ抵抗器を構成する抵抗体として使用されている。酸化ルテニウム粉は、ガラス粉との混合比率を変化させることで緩やかに抵抗値を変化させることができるため、厚膜抵抗体の導電粉として広く用いられている。
【0003】
近年、厚膜チップ抵抗器のような電子素子の小型化が進み、電気的特性の向上が求められ、電子素子当たりの抵抗値のばらつきを小さくすることが求められている。
電子素子の小型化に対応し、かつ電気的特性の良好な厚膜抵抗体を形成するためには、導電粉として用いる酸化ルテニウム粉を微細化し、かつ、粗大粒子を極力少なくすることが必要である。
その理由は、粗大粒子は、導電粉とガラス粉で構成される厚膜抵抗体内の導電部の分布構造を不均一にし、上述の抵抗値のばらつきが大きくなるなど、電気的特性に悪影響を与えることによる。
このため、酸化ルテニウム粉には、抵抗値、抵抗温度係数、等の電気的特性に悪影響を与えない大きさに、粒径が制御されていることが望まれる。
【0004】
酸化ルテニウム粉の製造方法としては、一般的には塩化ルテニウム酸性溶液をアルカリで中和するか、ルテニウム酸アルカリ金属塩をアルコール等で中和還元して得られた水酸化ルテニウムを高温で焙焼する等の方法が用いられている。
【0005】
近年、電子素子の小型化が進むことにより、電子素子内に形成する厚膜抵抗体の厚みを薄くする必要があり、厚膜抵抗体に使用される導電粉である酸化ルテニウム粉には、粒子の小径化が求められている。また、導電粉内に粒径が1μmを超える粗大粒子が存在し、さらに粒径のばらつきが大きいと、厚膜抵抗体の抵抗値のばらつきを低く抑えることができず、電気的特性を悪化させる原因となる。このため、粒径が1μmを超える粗大粒子が少なく、粒径のばらつきが小さな酸化ルテニウム粉が求められている。
【0006】
特許文献1には、粒径が10μmを超える粗大粒子の生成を抑制するための酸化ルテニウム粉末の製造方法として、ボールミル等を用いて不定形酸化ルテニウム水和物を水あるいは有機溶剤中に分散させつつ凝集を解砕した後、乾燥し焙焼する製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平11-157845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の製造方法を用いた場合、酸化ルテニウム水和物を解砕し、焼成開始前の酸化ルテニウム水和物の粒子の凝集のばらつきを低減することで、生成される酸化ルテニウム粉末の粒径のばらつきをある程度低減できるが、解砕時間に40時間程度要し、その分、全体の製造時間が長時間化し、生産性に大きな影響を与える。焼成開始前の酸化ルテニウム水和物の粒子のばらつきが、近年の粒径がより微細で粒径のばらつきの小さな酸化ルテニウム粉末への要求に対応しうる、ばらつきとなるように、酸化ルテニウム水和物をより細かく解砕するためには、精度の高い解砕工程が必要となり、その分、酸化ルテニウム粉末の製造工程がより一層煩雑化し、全体の製造時間がより一層長時間化して生産性が著しく低下する虞がある。
【0009】
本発明は、上述の問題を鑑みてなされたものであり、解砕工程によらずに、生成する酸化ルテニウム粉の粒径を、近年の電子素子の小型化に伴い要求される、より微細でばらつきの小さな大きさに制御し、特に粒径が1μmを超える粗大粒子の生成を抑制し、粒径の揃った酸化ルテニウム粉を簡便に製造することができ、全体の製造時間の長時間化を抑えて、生産性を向上可能な酸化ルテニウム粉の製造方法及び酸化ルテニウム粉、並びに酸化ルテニウム粉を有する厚膜抵抗ペーストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
まず、本発明者は、特許文献1の記載にしたがって、不定形酸化ルテニウム水和物を水や有機溶剤中に分散させつつ凝集を解砕する処理を40時間程度行い、その後、乾燥し、一度の焙焼処理を行って酸化ルテニウム粉を得た。そして、この特許文献1に記載の製造方法を用いて得た酸化ルテニウム粉中に含有する、粒径が1μmを超える粗大粒子の有無を確認した。
詳しくは、特許文献1に記載の方法に従って得た酸化ルテニウム粉末を所定量採取し、ビーカーに入れ、更に純水を加え分散させた後、ビーカーを静置することで酸化ルテニウム粉の粗大粒子をビーカー底に沈降させ、ビーカー内の上澄みを除去することで酸化ルテニウム粉の微細な粒子を除去した残りをフィルターでろ過することにより、酸化ルテニウム粉の粒子を採取し、採取した酸化ルテニウム粉の粒子を、走査型電子顕微鏡にて倍率2000倍で観察することによって行った。
その結果、特許文献1に記載の方法に従って得た酸化ルテニウム粉に含まれる粒径が1μmを超える粗大粒子数は、特許文献1に記載の実施例のようにゼロではなく、少ないながらも所定数存在することが判明した。
特許文献1に記載の実施例において粒径が1μmを超える粗大粒子数がゼロとなったのは、特許文献1の実施例における粒径が1μmを超える粗大粒子数の確認に際し、酸化ルテニウム粉に含まれている微細な粒子の除去を行っていないため、酸化ルテニウム粉に含まれている微細な粒子が、粒径が1μmを超える粗大粒子を覆い隠してしまったことによるものと推察される。
【0011】
次に、本発明者は、解砕処理を行わない、酸化ルテニウムの製造方法について、生成する酸化ルテニウム粉の粒径に対する各種の生成条件の影響について鋭意調査した結果、水酸化ルテニウム粉の焙焼条件が、粗大粒子の生成に対して最も影響が強いことを見出した。
すなわち、通常、水酸化ルテニウム粉の焙焼は、所定の温度に熱せられた焙焼炉に投入して行うか、室温状態の焙焼炉に投入した後、所定の温度にまで昇温して行うが、このような従来の水酸化ルテニウム粉の焙焼方法によって製造した酸化ルテニウム粉は、粒径が十分には制御されておらず、粒径が1μmを超える粗大粒子が多数生成されてしまう場合がある。
本発明者は、このような粒径が1μmを超える粗大粒子が多数生成される原因を、鋭意調査した。その結果、その原因は焼成処理に用いる原料粉の粒径の大きさや、焙焼炉内の温度分布のばらつきなどに起因し、原料粉の粒子に過度の熱量が加わった際に粗大化することを見出した。すなわち、粒径が微細な原料粉を、粒径が所定の大きさに成長するように焼成する場合、焙焼炉の加熱温度の調整に加え、原料粉の粒径の大きさの制御が重要であり、粒径が微細な原料粉を用いて焼成した場合、過度の熱量が加わった粒子が必要以上に成長して粒径が粗大化してしまうことを見出した。
【0012】
酸化ルテニウム粉の粒径の粗大化を防ぐためには、低温で原料粉の粒子に対する供給熱量を少なくして焙焼することが効果的である。
しかしながら、低温での焙焼は、粗大粒子の生成は抑制できる一方、生成される粒子の成長が非常に遅く、焙焼温度によっては長時間かけても、十分な大きさの粒子を得ることができないため、非常に生成効率が悪い。そして、生成しても、近年の電子素子の小型化に伴い、厚膜抵抗ペースト等の製品に要求される粒径に比べてさらに小さな、微細すぎる粒子となる。
このため、低温での焙焼では、小型化した電子素子における一般的な厚膜抵抗ペースト等の製品に適用可能な粒径の酸化ルテニウム粉を生産性良く得るのは困難である。
【0013】
また、供給熱量を少なくするためには、原料粉を高度で短時間にて焙焼する方法も考えられるが、その場合は温度の制御がより重要になる。
すなわち、酸化ルテニウム粉の粒径を所望の大きさに制御するためには、焙焼する原料粉である水酸化ルテニウム粉全体を均一な温度で一斉に処理する必要がある。しかしながら、量産のために、焙焼炉内で一度に焙焼する水酸化ルテニウム粉の処理量が多くなると、焙焼炉内を均一な温度に制御することは困難である。
酸化ルテニウム粉を、粗大粒子を生成させないで製造するためには、炉内における、温度分布において最高温度となる箇所で、所望の粒径に生成する焙焼条件で、原料粉である水酸化ルテニウム粉を焙焼する必要がある。
しかし、この場合、炉内における最高温度となる箇所と、低い温度となる箇所との間で酸化ルテニウム粉の粒子の生成タイミングに差を生じ、低い温度の箇所で生成された、近年の電子素子の小型化に伴い、厚膜抵抗ペースト等の製品に要求される粒径に比べてさらに小さな、微細すぎる粒子を含んだ、粒径のばらつきの大きな、広い粒度分布となってしまい易い。
その結果、粒径が1μmを超える粗大粒子数が少なくても、このような微細すぎる粒子を含んだ、広い粒度分布を有する酸化ルテニウム粉を用いて導体を形成すると、電気特性のばらつきを生じてしまう虞があり好ましくない。
【0014】
このような問題を解決するため、本発明者は、更に鋭意検討を重ねた。その結果、水酸化ルテニウム粉を、低温を一定時間保持した状態で焙焼して酸化ルテニウム粉を得た場合、得られる酸化ルテニウム粉が、微細すぎる粒径である一方で、粒径のばらつきが小さく均一な粒度分布を有することを見出した。
また、本発明者は、この低温を一定時間保持した状態で焙焼して得た、粒径の微細すぎる酸化ルテニウム粉を、更に温度を上げて、一定時間その温度を保持した状態で焙焼すると、既に生成されている、粒径の微細すぎる酸化ルテニウム粉が成長し、焙焼温度に応じた一定の粒径の酸化ルテニウム粉となることを見出した。
また、本発明者は、焙焼温度が高く、また、処理対象となる酸化ルテニウム粉の粒子が微細で、かつ、成長する粒径差が大きくなる焙焼条件であるほど、初期に形成される粒子の粒径のばらつきが大きいため、粒径のばらつきを小さくするための焙焼温度を一定に保持した状態で焙焼する、焙焼時間が長くなることを見出した。
そして、これらのことから、本発明者は、焙焼温度や焙焼時間を焙焼する対象物の粒径に応じて異ならせた焙焼処理を、段階的に行って酸化ルテニウム粉を成長させることで、酸化ルテニウム粉の成長量を制御することが可能となり、粗大粒子の生成を抑制し、酸化ルテニウム粉の粒径を任意に、かつ、ばらつきを小さく制御できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0015】
すなわち、本発明の第一の態様は、水酸化ルテニウム粉を焙焼し酸化ルテニウム粉を得る焙焼工程を有する酸化ルテニウム粉の製造方法であって、焙焼工程では、水酸化ルテニウム粉を、所定の焙焼温度を一定時間保持して焙焼する第1回目の焙焼処理を行い、さらに、第1回目の焙焼処理の後に、前回の焙焼処理における焙焼温度よりも高い所定の焙焼温度を一定時間保持して焙焼する焙焼処理を1回以上繰り返して行い、第1回目の焙焼処理の焙焼温度が、300℃以上500℃以下の所定温度であり、最終の焙焼処理の焙焼温度が、600℃以上800℃以下の所定温度であることを特徴とする酸化ルテニウム粉の製造方法である。
【0016】
本発明の第二の態様は、焙焼工程における、第1回目の焙焼処理の次の焙焼処理が最終の焙焼処理である酸化ルテニウム粉の製造方法である。
【0017】
本発明の第三の態様は、均粒径が18.2nm以上23.4nm以下である酸化ルテニウム粉であって、前記酸化ルテニウム粉を0.3g採取し、ビーカーに入れ、純水100mLを加え、超音波を照射して、純水中に分散させた後、ビーカーを静置することで酸化ルテニウム粉の粗大粒子を沈降させ、10分静置後、ビーカー内の上澄みを除去することで酸化ルテニウム粉の微細な粒子を除去し、更にフィルターでろ過することにより採取した、酸化ルテニウム粉の粒子を走査型電子顕微鏡にて倍率2000倍で観察し、64μm×48μmの視野内に存在する粒径が1μmを超える粗大粒子数を20視野計数し、その総数を酸化ルテニウム粉における粒径が1μmを超える粗大粒子数の評価値としたとき、該評価値が30個以下であることを特徴とする酸化ルテニウム粉である。
【0018】
また、本発明の第四の態様は、上記本発明の酸化ルテニウム粉を有することを特徴とする厚膜抵抗ペーストである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、解砕工程によって全体の製造時間が長時間化し、解砕工程を長時間行わないと、粒度分布が広く、微細粒子や粒径が1μmを超える粗大粒子が生成し易かった従来の酸化ルテニウム粉の製造方法とは異なり、解砕工程によらずに、生成する酸化ルテニウム粉の粒径を近年の電子素子の小型化に伴い要求される、より微細でばらつきの小さな大きさに制御し、特に電気特性悪化の要因となる粒径が1μmを超える粗大粒子の生成を抑制し、粒径の揃った酸化ルテニウム粉を簡便に製造することができ、全体の製造時間の長時間化を抑えて、生産性を向上可能な酸化ルテニウム粉の製造方法及び酸化ルテニウム粉、並びに酸化ルテニウム粉を有する厚膜抵抗ペーストが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明は、下記の実施形態に制限されるものではなく、本発明の範囲内で、下記実施形態に種々の変形および置換を加えることができる。
【0021】
(初期焙焼処理)
本発明の酸化ルテニウム粉の製造方法では、原料粉として水酸化ルテニウム粉を用いる。水酸化ルテニウム粉の製造方法は特に限定されない。例えば、塩化ルテニウム酸性溶液をアルカリで中和して得る方法や、ルテニウム酸アルカリ金属塩をアルコール等で中和還元して得る方法があげられる。
【0022】
準備した水酸化ルテニウム粉を、初期焙焼することによって、近年の電子素子の小型化に伴い、厚膜抵抗ペースト等の製品に要求される粒径に比べてさらに小さな、粒径の微細すぎる酸化ルテニウム粉を得る。初期焙焼処理(第1回目の焙焼処理)における焙焼温度は、その後に行う焙焼回数と最終的に得る粒径に応じて、300℃以上500℃以下の範囲内の所定の温度に任意に設定する。初期焙焼処理における焙焼温度が300℃未満であると、水酸化ルテニウム粉から酸化ルテニウム粉への生成が進まない場合があるので好ましくない。また、初期焙焼処理における焙焼温度が500℃よりも高いと、室温からの上昇温度差分が大きすぎて、生成する酸化ルテニウム粉の粒径のばらつきが大きくなり、一定の粒径に揃うまでに時間がかかりすぎてしまったり、時間をかけても十分均一な粒径に揃わなかったりする場合がある他、生成される初期の酸化ルテニウム粉の粒径が大きくなりすぎてしまう場合があるので好ましくない。
【0023】
初期焙焼処理における焙焼時間は特に限定されないが、生成される初期の酸化ルテニウム粉の粒径が揃うまで初期焙焼処理における焙焼温度を一定時間保持して焙焼するのが好ましい。本発明の製造方法の初期焙焼処理によって生成される酸化ルテニウム粉の到達粒径は、初期焙焼処理における焙焼温度の影響を受ける。上述のように、初期焙焼処理における焙焼温度が500℃を超えて高くなるほど初期に生成される酸化ルテニウム粉の粒径のばらつきが大きくなる。このため、粒径のばらつきを低減させるためには、初期焙焼処理における焙焼温度を上述のように300℃以上500℃以下の範囲内の所定温度に保持するとともに、その所定温度に保持して焙焼する焙焼時間を長くするのが好ましい。このように、初期焙焼処理における焙焼温度と焙焼時間を定めることによって生成される酸化ルテニウム粉の粒径を制御することができるため、製造する最終的な酸化ルテニウム粉の粒径の目標値に応じて、焙焼温度と焙焼時間、及び焙焼処理回数を決定し、それに適した初期焙焼処理における焙焼温度と焙焼時間にする。また、初期焙焼処理の際には、水酸化ルテニウム粉を、予め300℃以上500℃以下の範囲内の所定の焙焼温度に加熱した炉内に投入して、所定時間その焙焼温度を保持して焙焼するが、このような方法に限られることなく、300℃未満の温度の炉内に水酸化ルテニウム粉を投入し、その後に焙焼を開始してもよい。その場合は、300℃以上500℃以下の範囲内で設定した初期焙焼処理における所定の焙焼温度に到達するまで所定の昇温速度で昇温した後、設定した初期焙焼処理における所定の焙焼温度を一定時間保持して焙焼する。このようにしても、予め所定の焙焼温度に加熱した炉内に水酸化ルテニウム粉を投入する場合と同様の初期焙焼の効果を得ることができる。
なお、炉内の温度を300℃未満の温度から初期焙焼処理における300℃以上500℃以下の範囲内で設定した所定の焙焼温度まで昇温するときの昇温速度は、遅ければ遅いほど、生成される酸化ルテニウム粉の粒径にばらつきが生じ難くなるので好ましい。但し、昇温速度を遅くし過ぎると、酸化ルテニウム粉を製造する全体の処理時間が長くなり過ぎて、生産性が低下する。このため、酸化ルテニウム粉の生産性と、生成される酸化ルテニウム粉の粒径のばらつきの双方に影響のないように、昇温速度は、例えば、3℃/分~30℃/分とするのがよい。
【0024】
(最終焙焼処理)
初期焙焼処理で得られた酸化ルテニウム粉を更に少なくとも1回、焙焼温度を上げて、その焙焼温度を一定時間保持して焙焼する焙焼処理により、所定の粒径の酸化ルテニウム粉を得ることができる。本発明では、この初期焙焼処理の後に、前回の焙焼処理における焙焼温度よりも高い所定の焙焼温度を一定時間保持して焙焼する焙焼処理のうち、最後の焙焼処理を最終焙焼処理、初期焙焼処理と最終焙焼処理との間の焙焼処理を中間焙焼処理と称することとする。
最終焙焼処理の焙焼温度は、小型化の進む電子素子用の厚膜抵抗ペーストとして好適に用いられる粒径(平均粒径が21μm程度)とするために、最終焙焼処理における焙焼温度は600℃以上800℃以下の範囲内の所定の温度に任意に設定する。
最終焙焼処理における焙焼温度が600℃未満であると、形成される酸化ルテニウム粉の粒径が小さくなり過ぎてしまう場合があるので好ましくない。また、最終焙焼処理における焙焼温度が800℃を超えると粒子の成長速度が速くなり過ぎ、粒径の制御が難しくなる場合がある他、酸化ルテニウム粉が分解し、金属ルテニウムが生成されてしまう場合があるので好ましくない。最終焙焼処理に用いる酸化ルテニウム粉は、初期焙焼処理あるいは更に各中間焙焼処理において、例えば一旦室温まで冷却して炉内から取り出し、その後に所定の焙焼温度に加熱した焙焼炉に投入しても良いし、初期焙焼処理あるいは更には各中間焙焼から一度も冷却することなく、夫々の焙焼処理の間の温度を所定の昇温速度で昇温することによって、段階的に焙焼温度を上げた焙焼処理を連続して行い、そのまま最終焙焼処理に移行するようにしても良い。
なお、夫々の焙焼処理の間の昇温速度は、遅ければ遅いほど、生成される酸化ルテニウム粉の粒径にばらつきが生じ難くなるので好ましい。但し、昇温速度を遅くし過ぎると、酸化ルテニウム粉を製造する全体の処理時間が長くなり過ぎて、生産性が低下する。このため、酸化ルテニウム粉の生産性と、生成される酸化ルテニウム粉の粒径のばらつきの双方に影響のないように、昇温速度は、例えば、3℃/分~30℃/分とするのがよい。
【実施例
【0025】
以下、本発明をさらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内で、下記実施例に種々の変形および置換を加えることができる。
【0026】
(評価試験1:段階的に温度を上げた焙焼処理の繰り返しの有無及び繰り返し回数による粗大粒子数、平均粒径への影響)
水酸化ルテニウム粉5gをアルミナるつぼに入れ、所定の焙焼温度を30分間保持して、初期焙焼処理を行い、その後、前回の焙焼処理の焙焼温度よりも高い所定の焙焼温度を30分間ずつ保持して焙焼する、段階的に焙焼温度を上げた焙焼処理を行い、最終焙焼処理は700℃の焙焼温度で120分行うことにより、酸化ルテニウム粉末を得た(試料1-1~試料1-5)。なお、初期焙焼温度まで昇温するときの昇温速度、及び、夫々の焙焼処理の間の昇温速度は、10℃/分とした。また、比較のために、段階的に焙焼温度を上げた焙焼処理を行わない従来の焙焼処理方法として、700℃の焙焼温度での焙焼処理のみを行った酸化ルテニウム粉も製造した(試料1-6)。各試料の焙焼処理における焙焼条件(焙焼温度)を表1に示す。表1中、〇は当該焙焼条件で焙焼処理を行ったことを示している。
【0027】
<粗大粒子数の計測>
夫々の焙焼条件で焙焼処理することにより製造した各試料の酸化ルテニウム粉末を0.3g採取し、100mLビーカーに入れ、更に純水100mLを加えた。このビーカーに超音波を照射し、酸化ルテニウム粉末を純水中に分散させた。その後、ビーカーを静置することで酸化ルテニウム粉の粗大粒子をビーカー底に沈降させた。10分間静置した後、ビーカー内の上澄みを除去することで酸化ルテニウム粉の微細な粒子を効率的に除去し、更にフィルターでろ過することにより、酸化ルテニウム粉の粗大粒子を効率的に採取した。本評価においては、平均粒径が21nm程度の微粒子を用いる導電ペースト部材で問題となる、粒径が1μmを超える酸化ルテニウム粉の粗大粒子数を計側し、計測した粒径が1μmを超える酸化ルテニウム粉の粗大粒子数を、酸化ルテニウム粉における粒径のばらつきを示す評価値として用いた。
このような計測値を酸化ルテニウム粉における粒径のばらつきを示す評価値として用いたのは、酸化ルテニウム粉中に存在する個々の粒子が非常に小さく、全ての粒子について粒径を測定して、標準偏差を算出することが非常に困難であり、当該技術分野において酸化ルテニウム粉の粒径のばらつきを示す基準が確立されていないことによる。
詳しくは、採取した酸化ルテニウム粉の粒子を、走査型電子顕微鏡にて倍率2000倍で観察し、64μm×48μmの視野内に存在する粒径が1μmを超える粗大粒子数を20視野計数し、その総数を各試料の酸化ルテニウム粉における粒径が1μmを超える粗大粒子数(の評価値)とした。この方法により計測した、各試料の酸化ルテニウム粉における粒径が1μmを超える粗大粒子数(の評価値)を表1に示す。
なお、粗大粒子の採取に関しては、必要に応じて、上述の上澄みを除去する操作をした後に再び純水を追加し超音波処理を加える操作を複数回繰り返してもよい。このような操作をすることで、粒径が1μmを超える粗大粒子数の計測の妨げとなる微細な粒子をより確実に除去することができる。
【0028】
<酸化ルテニウム粉の平均粒径の算出>
製造した各試料の酸化ルテニウム粉の平均粒径を、BET法により測定した比表面積から算出した。算出した各試料の平均粒径を表1に示す。
【表1】
【0029】
表1に示すように、本試験の条件下においては、最終的に700℃の焙焼温度で、120分の焙焼処理を行うことにより、初期焙焼処理や段階的に焙焼温度を上げた焙焼処理を行わず、最終焙焼処理のみを行った従来の製法で製造した試料1-6も含め、全ての試料が平均粒径21nm~24nm程度の酸化ルテニウム粉となることが認められる結果となった。しかしながら、初期焙焼処理や段階的に焙焼温度を上げた焙焼処理を行わず、最終焙焼処理のみを行った従来の製法で製造した試料1-6は、粒径が1μmを超える粗大粒子数(の評価値)が748個と非常に多く、小型化の進む電子素子用の厚膜抵抗ペーストには適さない酸化ルテニウム粉となることが認められる結果となった。
また、表1に示すように、段階的に焙焼温度を上げた焙焼処理を繰り返し行うことにより、粒径が1μmを超える粗大粒子の形成をより抑制して、粒径を揃えることができることが認められる結果となった。ただし、そのような段階的に焙焼温度を上げた焙焼処理の繰り返し回数を増やすほど、総処理時間が増えてしまい易い。そのため、対象製品に求められる品質精度(粒径が1μmを超える粗大粒子数の許容量や粒径の許容範囲など)に応じて適宜、焙焼処理の繰り返し回数およびその焙焼温度を定めることが好ましい。
【0030】
(評価試験2:初期焙焼処理における焙焼温度による粗大粒子抑制効果)
水酸化ルテニウム粉5gをアルミナるつぼに入れ、最終焙焼温度を700℃にした以外は表2に示す所定の焙焼温度で、それぞれ60分間焙焼を行う三段階の焙焼処理を行い、酸化ルテニウム粉末を得た(試料2-3~試料2-7)。なお、初期焙焼温度まで昇温するときの昇温速度、及び、夫々の焙焼処理の間の昇温速度は、10℃/分とした。
また、比較のために、初期焙焼処理や段階的に焙焼温度を上げた焙焼処理を行わない従来の焙焼処理方法として、700℃の焙焼温度での焙焼処理のみを行った酸化ルテニウム粉も製造した(試料2-1)。なお、試料2-1は他の試料と比べて焙焼処理に供される回数が少ないため、焙焼時間を120分とした。各試料の焙焼処理における焙焼条件(焙焼温度、焙焼時間)を表2に示す。さらに、初期焙焼温度を本発明の範囲外にした二段階の焙焼処理として、初期焙焼温度を200℃、焙焼時間を60分とし、最終焙焼温度を700℃、焙焼時間を120分として、夫々焙焼を行い、酸化ルテニウム粉末を得た(試料2-2)。
また、粗大粒子数の計測及び酸化ルテニウム粉の平均粒径の算出を評価試験1と同様に行った。各試料の酸化ルテニウム粉末における粒径が1μmを超える粗大粒子数(の評価値)及び平均粒径を表2に示す。
【0031】
【表2】
【0032】
表2に示すように、初期焙焼処理や段階的に焙焼温度を上げた焙焼処理を行わず、最終焙焼処理のみを行った従来の製法で製造した試料2-1は、平均粒径は21.5nmと、厚膜抵抗ペーストに適した平均粒径が得られてはいるものの、粒径が1μmを超える粗大粒子数(の評価値)が748個と非常に多く粒径がばらつき、小型化の進む電子素子用の厚膜抵抗ペーストには適さない酸化ルテニウム粉となっていることが認められる結果となった。また、本発明の範囲外である初期焙焼温度の低い試料2-2は、200℃では焙焼の効果がほとんどなく、試料2-1とほぼ同じ結果となり、やはり電子素子用の厚膜抵抗ペーストには適さない酸化ルテニウム粉となっていることが認められる結果となった。
これに対し、本発明の範囲内である試料2-4~試料2-6は、小型化の進む電子素子用の厚膜抵抗ペーストに適した粒径を有し、かつ粒径が1μmを超える粗大粒子数(の評価値)も132個以下と、従来品である試料2-1に比べて非常に少なくなり、粒径のばらつきが小さく抑えられていることが認められる結果となった。特に、試料2-5は粒径が1μmを超える粗大粒子数(の評価値)が16個と非常に少なく、粒径のばらつきがより良好に抑えられていることが認められる結果となった。また、初期焙焼処理での焙焼温度が200℃と本発明の範囲を外れているが、中間焙焼処理と最終焙焼処理での焙焼温度が夫々450℃と700℃で本発明の範囲内となっている試料2-3は、200℃では焙焼の効果がほとんどないものの、450℃と700℃の二段階での焙焼により、試料2-4~試料2-6と同様、小型化の進む電子素子用の厚膜抵抗ペーストに適した粒径を有し、かつ粒径が1μmを超える粗大粒子数(の評価値)も従来品である試料2-1に比べて非常に少なくなり、粒径のばらつきが小さく抑えられていることが認められる結果となった。また、初期焙焼温度の高すぎる試料2-7は、粒径が1μmを超える粗大粒子数(の評価値)が885個と非常に多くなり、小型化の進む電子素子用の厚膜抵抗ペーストには適さない酸化ルテニウム粉となっていることが認められる結果となった。これは、初期焙焼温度が高すぎて、初期形成される酸化ルテニウム粉の粒径がばらついてしまい、しかも、初期焙焼温度と中間焙焼温度の温度差や、中間焙焼温度と最終焙焼温度の温度差が小さいため、段階的に焙焼温度を上げた焙焼処理を行うことによる効果がほとんど得られなかったためと考えられる。
【0033】
(評価試験3:最終焙焼処理における焙焼温度による粒子径への影響)
水酸化ルテニウム粉5gをアルミナるつぼに入れ、初期焙焼温度を400℃に揃えた以外は表3に示す所定の焙焼温度で、それぞれ60分間焙焼を行う三段階の焙焼処理を行い、酸化ルテニウム粉末を得た(試料3-2~試料3-4)。なお、初期焙焼温度まで昇温するときの昇温速度、及び、夫々の焙焼処理の間の昇温速度は、10℃/分とした。また、比較のために、400℃の焙焼温度で、それぞれ60分間焙焼を行う三回の焙焼処理を行った酸化ルテニウム粉も製造した(試料3-1)。各試料の焙焼処理における焙焼条件(焙焼温度、焙焼時間)を表3に示す。また、粗大粒子数の計測及び酸化ルテニウム粉の平均粒径の算出を評価試験1と同様に行った。各試料の酸化ルテニウム粉末における粒径が1μmを超える粗大粒子数(の評価値)及び平均粒径を表3に示す。
【0034】
【表3】
【0035】
表3に示すように、試料3-1は、各焙焼処理の焙焼温度が全て400℃となっており、段階的に焙焼温度を上げた焙焼処理の無い焙焼条件となっている。そして、表3に示すように、試料3-1は、平均粒径が15.7nmと、小型化の進む電子素子用の厚膜抵抗ペーストに適した平均粒径の範囲を外れた、微細すぎる粉末となっていることが認められる結果となった。
また、表3に示すように、本評価試験における焙焼条件下では、粒径が1μmを超える粗大粒子の生成が抑えられた酸化ルテニウム粉を得ることができることが認められる結果となった。ただし、中間焙焼温度や最終焙焼温度が低いほど生成される酸化ルテニウム粉の粒径が小さくなる傾向にあることが認められる結果となった。また、生成される粒径が1μmを超える粗大粒子数も、中間焼結温度や最終焼結温度が高くなるほど増える傾向にあることが認められる結果となった。
評価試験3における試料3-2~試料3-4の結果を、初期焙焼温度を変化させた評価試験2における試料2-4、試料2-6の結果と比べると、平均粒径が、小型化の進む電子素子用の厚膜抵抗ペーストに適した大きさを満たしながら、粒径が1μmを超える粗大粒子数が少なくなる傾向にあることが認められる。そして、このことから、400℃程度の焙焼温度で初期焙焼処理を行い、粒径が一定の大きさの酸化ルテニウム粉を形成した後、中間焙焼処理や最終焙焼処理における焙焼温度を適度な温度差をもって異ならせることにより、粒径が1μmを超える粗大粒子の生成を抑えたまま、所望の酸化ルテニウム粉の粒径に制御することができることが認められる。
【0036】
(評価試験4:最終焙焼処理における焙焼時間による粒子径への影響)
水酸化ルテニウム粉5gをアルミナるつぼに入れ、400℃を60分間保持して、初期焙焼処理を行い、その後、700℃を所定の時間保持して、最終焙焼処理を行うことにより、酸化ルテニウム粉末を得た(試料4-1~試料4-6)。なお、初期焙焼温度まで昇温するときの昇温速度、及び、夫々の焙焼処理の間の昇温速度は、10℃/分とした。各試料の焙焼条件(焙焼温度、焙焼時間)を表4に示す。また、粗大粒子数の計測及び酸化ルテニウム粉の平均粒径の算出を評価試験1と同様に行った。各試料の酸化ルテニウム粉末における粒径が1μmを超える粗大粒子数(の評価値)及び平均粒径を表4に示す。
【0037】
【表4】
【0038】
表4に示すように、最終焙焼処理における焙焼時間を10分~120分の範囲で異ならせても、粒径が1μmを超える粗大粒子数を増大させることなく、酸化ルテニウム粉末の平均粒径を、小型化の進む電子素子用の厚膜抵抗ペーストに適した大きさに調整できることが認められる結果となった。また、試料4-3~試料4-6の結果から、段階的に焙焼温度を上げて行う焙焼処理の回数を減らしても、試料4-1、試料4-2とほぼ同様の効果が得られることが認められる。
【0039】
これらの試験結果から、300℃以上500℃以下の比較的低温の焙焼温度で初期焙焼処理を行うことで初期に形成される微細な酸化ルテニウム粉の粒径ばらつきを抑え、その後、段階的に焙焼温度を上げた焙焼処理を施すことで、粒径が1μmを超える粗大粒子数の形成を抑制しながら、粒径を、小型化の進む電子素子用の厚膜抵抗ペーストに適した平均粒径となるように成長させた、粒径のばらつきの小さい酸化ルテニウム粉を得ることができることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、小型化の進む、厚膜抵抗ペーストを用いた電子素子を製造することが求められている分野に有用である。