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特許7124711配線基板及びその製造方法、並びにストレッチャブルデバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】配線基板及びその製造方法、並びにストレッチャブルデバイス
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20220817BHJP
   H05K 3/42 20060101ALI20220817BHJP
   H05K 3/06 20060101ALI20220817BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
H05K1/02 B
H05K3/42 620A
H05K3/06 A
H05K1/03 610H
H05K1/03 670A
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2018559089
(86)(22)【出願日】2017-12-19
(86)【国際出願番号】 JP2017045535
(87)【国際公開番号】W WO2018123732
(87)【国際公開日】2018-07-05
【審査請求日】2020-11-25
(31)【優先権主張番号】P 2016251400
(32)【優先日】2016-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】正木 剛史
(72)【発明者】
【氏名】川守 崇司
(72)【発明者】
【氏名】山田 薫平
(72)【発明者】
【氏名】シム タンイー
(72)【発明者】
【氏名】小川 禎宏
【審査官】齊藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-178121(JP,A)
【文献】特開2012-33674(JP,A)
【文献】国際公開第2016/080346(WO,A1)
【文献】特開2013-187380(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K1/00―3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮性樹脂層と、
前記伸縮性樹脂層上に前記伸縮性樹脂層と密着して設けられ、配線パターンを形成している導体箔と、
前記伸縮性樹脂層に設けられたビアホールと、
を有する、配線基板。
【請求項2】
前記導体箔が銅箔である、請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
前記ビアホールがレーザ又はドリルにより形成されたものである、請求項1又は2に記載の配線基板。
【請求項4】
前記ビアホールの直径が10~500μmである、請求項1~3のいずれか一項に記載の配線基板。
【請求項5】
前記ビアホールの内壁面に設けられた銅めっき層を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の配線基板。
【請求項6】
前記伸縮性樹脂層上において前記ビアホールの周囲に設けられ、前記銅めっき層と接続されたランド部を有し、
前記ランド部の前記ビアホールの端面からの幅が10μm以上である、請求項5に記載の配線基板。
【請求項7】
前記伸縮性樹脂層が、(A)ゴム成分を含有し、
前記ゴム成分が、アクリルゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、フッ素ゴム、硫化ゴム、エピクロルヒドリンゴム、及び塩素化ブチルゴムからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の配線基板。
【請求項8】
前記伸縮性樹脂層が、(A)ゴム成分を含有する樹脂組成物の硬化物を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の配線基板。
【請求項9】
前記(A)ゴム成分が、架橋基を有するゴムを含む、請求項8に記載の配線基板。
【請求項10】
前記架橋基が、酸無水物基又はカルボキシル基のうち少なくとも一方である、請求項9に記載の配線基板。
【請求項11】
前記樹脂組成物が、(B)架橋成分を更に含有し、
前記架橋成分が、(メタ)アクリル基、ビニル基、エポキシ基、スチリル基、アミノ基、イソシアヌレート基、ウレイド基、シアネート基、イソシアネート基、及びメルカプト基からなる群より選ばれる少なくとも1種の反応性基を有する化合物である、請求項8~10のいずれか一項に記載の配線基板。
【請求項12】
前記樹脂組成物が、前記(A)ゴム成分である無水マレイン酸基又はカルボキシル基を有するゴムと、(B)架橋成分であるエポキシ基を有する化合物とを含有する、請求項8~10のいずれか一項に記載の配線基板。
【請求項13】
前記樹脂組成物が、(C)硬化剤又は硬化促進剤のうち少なくとも一方を更に含有する、請求項8~12のいずれか一項に記載の配線基板。
【請求項14】
前記ゴム成分の含有量が、前記伸縮性樹脂層100質量%に対して30~100質量%である、請求項7~13のいずれか一項に記載の配線基板。
【請求項15】
伸縮性樹脂層と前記伸縮性樹脂層上に前記伸縮性樹脂層と密着して積層された導体箔とを有する積層板を準備する工程と、
前記伸縮性樹脂層にビアホールを形成する工程と、
前記導体箔上にエッチングレジストを形成する工程と、
前記エッチングレジストを露光し、露光後の前記エッチングレジストを現像して、前記導体箔の一部を覆うレジストパターンを形成する工程と、
前記レジストパターンによって覆われていない部分の前記導体箔を除去する工程と、
前記レジストパターンを除去する工程と、
を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の配線基板を製造する方法。
【請求項16】
前記伸縮性樹脂層にビアホールを形成する工程の後に、前記ビアホールの内壁面に銅めっき層を形成する工程を更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
請求項1~14のいずれか一項に記載の配線基板と、前記配線基板に搭載された電子素子と、を備えるストレッチャブルデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配線基板及びその製造方法、並びにストレッチャブルデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ウェアラブル機器、ヘルスケア関連機器等の分野において、例えば身体の曲面又は関節部に沿って使用できると共に、脱着しても接続不良が生じにくいためのフレキシブル性及び伸縮性が求められている。このような機器を構成するためには、高い伸縮性を持つ部材が求められる。
【0003】
高い伸縮性を持つ部材を実現させる方法として、高い耐折性を有したポリイミド樹脂等をベースとしたフレキシブル基板にチップ又は半導体素子等を実装し、伸縮性を有した樹脂組成物を用いて封止する方法が報告されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2016/080346号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のように、封止材に伸縮性を持たせることで従来の封止材では困難であった伸縮性を有した部材の実現が可能となった。一方で、ベース基材は伸縮性を有していないため、より高い伸縮性を持たせるのが困難であった。そのため、より高い伸縮性を有する配線基板が求められている。また、より高い伸縮性を有しつつ、積層時に層間接続が可能な配線基板が求められている。
【0006】
このような状況において、本開示は、高い伸縮性を有すると共に、積層時に層間接続が可能な配線基板及びその製造方法、並びにストレッチャブルデバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記の課題を解決するために鋭意研究した結果、ベース基材に伸縮性樹脂層を用いることで高い伸縮性を付与し、伸縮性樹脂層と導体箔とを組み合わせると共に、その伸縮性樹脂層にビアホールを設けることにより、上記課題を解決できることを見出した。
【0008】
すなわち、本開示の一側面は、以下の発明を提供する。
[1]伸縮性樹脂層と、上記伸縮性樹脂層上に設けられ、配線パターンを形成している導体箔と、上記伸縮性樹脂層に設けられたビアホールと、を有する、配線基板。
[2]上記導体箔が銅箔である、上記[1]に記載の配線基板。
[3]上記ビアホールがレーザ又はドリルにより形成されたものである、上記[1]又は[2]に記載の配線基板。
[4]上記ビアホールの直径が10~500μmである、上記[1]~[3]のいずれかに記載の配線基板。
[5]上記ビアホールの内壁面に設けられた銅めっき層を有する、上記[1]~[4]のいずれかに記載の配線基板。
[6]上記伸縮性樹脂層上において上記ビアホールの周囲に設けられ、上記銅めっき層と接続されたランド部を有し、上記ランド部の上記ビアホールの端面からの幅が10μm以上である、上記[5]に記載の配線基板。
[7]上記伸縮性樹脂層が、(A)ゴム成分を含有し、上記ゴム成分が、アクリルゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、フッ素ゴム、硫化ゴム、エピクロルヒドリンゴム、及び塩素化ブチルゴムからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、上記[1]~[6]のいずれかに記載の配線基板。
[8]上記伸縮性樹脂層が、(A)ゴム成分を含有する樹脂組成物の硬化物を含む、上記[1]~[7]のいずれかに記載の配線基板。
[9]上記(A)ゴム成分が、架橋基を有するゴムを含む、上記[8]に記載の配線基板。
[10]上記架橋基が、酸無水物基又はカルボキシル基のうち少なくとも一方である、上記[9]に記載の配線基板。
[11]上記樹脂組成物が、(B)架橋成分を更に含有し、上記架橋成分が、(メタ)アクリル基、ビニル基、エポキシ基、スチリル基、アミノ基、イソシアヌレート基、ウレイド基、シアネート基、イソシアネート基、及びメルカプト基からなる群より選ばれる少なくとも1種の反応性基を有する化合物である、上記[8]~[10]のいずれかに記載の配線基板。
[12]上記樹脂組成物が、(C)硬化剤又は硬化促進剤のうち少なくとも一方を更に含有する、上記[8]~[11]のいずれかに記載の配線基板。
[13]上記ゴム成分の含有量が、上記伸縮性樹脂層100質量%に対して30~100質量%である、上記[7]~[12]のいずれかに記載の配線基板。
[14]伸縮性樹脂層と上記伸縮性樹脂層上に積層された導体箔とを有する積層板を準備する工程と、上記伸縮性樹脂層にビアホールを形成する工程と、上記導体箔上にエッチングレジストを形成する工程と、上記エッチングレジストを露光し、露光後の上記エッチングレジストを現像して、上記導体箔の一部を覆うレジストパターンを形成する工程と、上記レジストパターンによって覆われていない部分の上記導体箔を除去する工程と、上記レジストパターンを除去する工程と、を含む、上記[1]~[13]のいずれかに記載の配線基板を製造する方法。
[15]上記伸縮性樹脂層にビアホールを形成する工程の後に、上記ビアホールの内壁面に銅めっき層を形成する工程を更に含む、上記[14]に記載の方法。
[16]上記[1]~[13]のいずれかに記載の配線基板と、上記配線基板に搭載された電子素子と、を備えるストレッチャブルデバイス。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、高い伸縮性を有すると共に、積層時に層間接続が可能な配線基板及びその製造方法、並びにストレッチャブルデバイスを提供することができる。また、本開示により提供される配線基板を用いることで、伸縮性を有し且つ高密度な多層配線基板を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】配線基板の一実施形態を示す断面図である。
図2】回復率の測定例を示す応力-ひずみ曲線である。
図3】配線基板の一実施形態を示す平面図である。
図4】耐熱性試験の温度プロファイルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0012】
本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート、及び、それに対応するメタクリレートの少なくとも一方を意味する。「(メタ)アクリル」等の他の類似の表現においても同様である。以下で例示する材料は、特に断らない限り、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。「A又はB」とは、A及びBのどちらか一方を含んでいればよく、両方とも含んでいてもよい。
【0013】
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例(参考例)に示されている値に置き換えてもよい。
【0014】
一実施形態に係る配線基板は、伸縮性樹脂層と、伸縮性樹脂層上に設けられ、配線パターンを形成している導体箔と、伸縮性樹脂層に設けられたビアホールと、を有する。
【0015】
図1は、配線基板の一実施形態を示す断面図である。図1に示す配線基板100は、基材としての伸縮性樹脂層10と、伸縮性樹脂層10上に設けられ、配線パターンを形成している導体箔20と、伸縮性樹脂層10に形成されたビアホール30と、ビアホール30の内壁面に設けられた無電解銅めっき層40と、伸縮性樹脂層10上においてビアホール30の周囲に設けられ、無電解銅めっき層40と接続されたランド部50と、を有する。
【0016】
本実施形態に係る配線基板は、伸縮性樹脂層10から形成された基材を用いることで、従来の基板を用いた場合に比して優れた伸縮性を有し、ビアホール30を形成し無電解銅めっきを施して無電解銅めっき層40を形成することで、層間接続を可能とし、従来の配線基板と同等な配線設計が可能となる。これにより、優れた伸縮性を有し、高密度配線が可能な多層配線基板の製造が可能となる。
【0017】
ビアホール30の無電解銅めっき層40を形成する前の開口部の直径(穴径)Dは、無電解銅めっきの析出性の観点から10μm以上あることが望ましく、40μm以上であることがより望ましく、ビア加工性及び配線密度の関係から500μm以下であることが望ましく、250μm以下であることがより望ましい。
【0018】
無電解銅めっき層40の厚さは特に限定されないが、伸縮性樹脂層10との密着性の観点から、0.1~1.5μmであることが好ましく、0.3~1.0μmであることがより好ましい。
【0019】
また、導体厚を厚くすることを目的として、無電解銅めっき層40上に更に電解銅めっきを行い、電解銅めっき層を形成してもよい。電解銅めっき層の厚さは特に限定されないが、ビアホール接続信頼性の観点から、1~100μmであることが好ましく、10~50μmであることがより好ましい。
【0020】
ランド部50のビアホール30の端面からの幅Wは、基板伸縮時の無電解銅めっき層40による層間接続を維持するために、10μm以上であることが望ましく、100μm以上であることがより望ましい。
【0021】
ランド部50は、ビアホール30の周囲に設けられた導体層であり、伸縮性樹脂層10表面にビアホール30と同心円状に形成されていることが望ましい。ランド部50は、後述する導体箔20と同様の材料で構成されていてもよい。伸縮性樹脂層10表面におけるランド部50の直径は、ランド部50の幅Wが上記範囲となるように調整される。
【0022】
導体箔20は、図1中の手前側から奥側に向かう方向に沿って蛇行する波形の配線パターンを形成していてもよい。なお、導体箔20の配線パターンの形状に特に制限はなく、適宜決定できる。
【0023】
導体箔20の弾性率は、40~300GPaであってもよい。導体箔の弾性率が40~300GPaであることにより、配線基板の伸長による導体箔の破断が生じ難い傾向がある。同様の観点から、導体箔の弾性率は50GPa以上又は280GPa以上であってもよく、60GPa以下、又は250GPa以下であってもよい。ここでの導体箔の弾性率は、共振法によって測定される値であることができる。
【0024】
導体箔は、金属箔であることができる。金属箔としては、銅箔、チタン箔、ステンレス箔、ニッケル箔、パーマロイ箔、42アロイ箔、コバール箔、ニクロム箔、ベリリウム銅箔、燐青銅箔、黄銅箔、洋白箔、アルミニウム箔、錫箔、鉛箔、亜鉛箔、半田箔、鉄箔、タンタル箔、ニオブ箔、モリブデン箔、ジルコニウム箔、金箔、銀箔、パラジウム箔、モネル箔、インコネル箔、ハステロイ箔等が挙げられる。適切な弾性率等の観点から、導体箔は、銅箔、金箔、ニッケル箔、及び鉄箔から選ばれることが好ましい。配線形成性の観点から、銅箔を使用することが好ましい。
【0025】
銅箔としては、特に制限はなく、例えば、銅張積層板、フレキシブル配線板等に一般的に用いられる電解銅箔及び圧延銅箔を使用できる。市販の電解銅箔としては、例えばF0-WS-18(古河電工(株)製、商品名)、NC-WS-20(古河電工(株)製、商品名)、YGP-12(日本電解(株)製、商品名)、GTS-18(古河電工(株)製、商品名)、及びF2-WS-12(古河電工(株)製、商品名)が挙げられる。圧延銅箔としては、例えばTPC箔(JX金属(株)製、商品名)、HA箔(JX金属(株)製、商品名)、HA-V2箔(JX金属(株)製、商品名)、及びC1100R(三井住友金属鉱山伸銅(株)製、商品名)が挙げられる。伸縮性樹脂層との接着性が更に向上する観点から、粗化処理を施している銅箔を使用することが好ましい。また、耐折性及び伸縮性の観点から、圧延銅箔を用いることが好ましい。
【0026】
伸縮性樹脂層10は、例えば歪み20%まで引張変形した後の回復率が80%以上であるような、伸縮性を有することができる。この回復率は、伸縮性樹脂層の測定サンプルを用いた引張試験において求められる。1回目の引っ張り試験で加えたひずみ(変位量)をX、次に初期位置に戻し再度引っ張り試験を行ったときに荷重が掛かり始めるときの位置とXとの差をYとし、式:R(%)=Y/X×100で計算されるRが、回復率として定義される。回復率は、Xを20%として測定することができる。図2は、回復率の測定例を示す応力-ひずみ曲線である。回復率が80%以上であれば繰り返しの使用に耐えることができるため、回復率は、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましい。
【0027】
伸縮性樹脂層の弾性率は、0.1MPa以上1000MPa以下であることが好ましい。弾性率が0.1MPa以上1000MPa以下であると、基材としての取り扱い性及び可撓性が特に優れる傾向がある。この観点から、弾性率が0.3MPa以上100MPa以下であることがより好ましく、0.5MPa以上50MPa以下であることが更に好ましい。
【0028】
伸縮性樹脂層の破断伸び率は、100%以上であることが好ましい。破断伸び率が100%以上であると、十分な伸縮性が得られ易い傾向がある。この観点から、破断伸び率は150%以上であることがより好ましく、200%以上であることが更に好ましく、300%以上であることが特に好ましく、500%以上であることが極めて好ましい。破断伸び率の上限は、特に制限されないが、通常1000%程度以下である。
【0029】
伸縮性樹脂層は、(A)ゴム成分を含有することができる。主にこのゴム成分によって、伸縮性樹脂層に容易に伸縮性が付与される。ゴム成分の含有量が、伸縮性樹脂層100質量%に対して30~100質量%であってもよい。
【0030】
ゴム成分は、例えば、アクリルゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、フッ素ゴム、硫化ゴム、エピクロルヒドリンゴム、及び塩素化ブチルゴムの少なくとも1種を含むことができる。吸湿等による配線へのダメージを保護する観点から、ゴム成分のガス透過性が低いことが好ましい。かかる観点から、ゴム成分が、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、及びブチルゴムから選ばれる少なくとも1種であってもよい。
【0031】
アクリルゴムの市販品としては、例えば日本ゼオン(株)製の「Nipol ARシリーズ」、クラレ(株)製の「クラリティシリーズ」が挙げられる。
【0032】
イソプレンゴムの市販品としては、例えば日本ゼオン(株)製の「Nipol IRシリーズ」が挙げられる。
【0033】
ブチルゴムの市販品としては、例えばJSR(株)製の「BUTYLシリーズ」が挙げられる。
【0034】
スチレンブタジエンゴムの市販品としては、例えばJSR(株)製の「ダイナロンSEBSシリーズ」、「ダイナロンHSBRシリーズ」、クレイトンポリマージャパン(株)製の「クレイトンDポリマーシリーズ」、及びアロン化成(株)製の「ARシリーズ」が挙げられる。
【0035】
ブタジエンゴムの市販品としては、例えば日本ゼオン(株)製の「Nipol BRシリーズ」が挙げられる。
【0036】
アクリロニトリルブタジエンゴムの市販品としては、例えばJSR(株)製の「JSR NBRシリーズ」が挙げられる。
【0037】
シリコーンゴムの市販品としては、例えば信越シリコーン(株)製の「KMPシリーズ」が挙げられる。
【0038】
エチレンプロピレンゴムの市販品としては、例えばJSR(株)製の「JSR EPシリーズ」が挙げられる。
【0039】
フッ素ゴムの市販品としては、例えばダイキン(株)製の「ダイエルシリーズ」が挙げられる。
【0040】
エピクロルヒドリンゴムの市販品としては、例えば日本ゼオン(株)製の「Hydrinシリーズ」が挙げられる。
【0041】
ゴム成分は、合成により作製することもできる。例えば、アクリルゴムでは、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物等を反応させることにより得られる。
【0042】
ゴム成分は、架橋基を有するゴムを含んでいてもよい。架橋基を有するゴムを用いることにより、伸縮性樹脂層の耐熱性が向上し易い傾向がある。架橋基は、ゴム成分の分子鎖を架橋する反応を進行させ得る反応性基であればよい。その例としては、後述する(B)架橋成分が有する反応性基、酸無水物基、アミノ基、水酸基、エポキシ基及びカルボキシル基が挙げられる。
【0043】
ゴム成分は、酸無水物基又はカルボキシル基のうち少なくとも一方の架橋基を有するゴムを含んでいてもよい。酸無水物基を有するゴムの例としては、無水マレイン酸で部分的に変性されたゴムが挙げられる。無水マレイン酸で部分的に変性されたゴムは、無水マレイン酸に由来する構成単位を含む重合体である。無水マレイン酸で部分的に変性されたゴムの市販品としては、例えば、旭化成(株)製のスチレン系エラストマ「タフプレン912」がある。
【0044】
無水マレイン酸で部分的に変性されたゴムは、無水マレイン酸で部分的に変性された水素添加型スチレン系エラストマであってもよい。水素添加型スチレン系エラストマは、耐候性向上等の効果も期待できる。水素添加型スチレン系エラストマは、不飽和二重結合を含むソフトセグメントを有するスチレン系エラストマの不飽和二重結合に水素を付加反応させて得られるエラストマである。無水マレイン酸で部分的に変性された水素添加型スチレン系エラストマの市販品の例としては、クレイトンポリマージャパン(株)製の「FG1901」、「FG1924」、旭化成(株)製の「タフテックM1911」、「タフテックM1913」、「タフテックM1943」がある。
【0045】
ゴム成分の重量平均分子量は、塗膜性の観点から、20000~200000、30000~150000、又は50000~125000であってもよい。ここでの重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって求められる標準ポリスチレン換算値を意味する。
【0046】
伸縮性樹脂層は、(A)ゴム成分を含有する樹脂組成物の硬化物であってもよい。この場合、伸縮性樹脂層を形成するための樹脂組成物として硬化性樹脂組成物が用いられる。この硬化性樹脂組成物は、例えば、(B)架橋成分を更に含有していてもよい。すなわち、伸縮性樹脂層は、(B)架橋成分の架橋重合体を更に含有していてもよい。架橋成分は、例えば、(メタ)アクリル基、ビニル基、エポキシ基、スチリル基、アミノ基、イソシアヌレート基、ウレイド基、シアネート基、イソシアネート基、メルカプト基、水酸基、及びカルボキシル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の反応性基を有する化合物であってもよく、これら反応性基の反応によって架橋重合体を含む硬化物を形成することができる。伸縮性樹脂層の耐熱性向上の観点から、架橋成分は、エポキシ基、アミノ基、水酸基、及びカルボキシル基から選ばれる反応性基を有する化合物であってもよい。これらの化合物は、単独で又は2種類以上組み合わせて使用することができる。
【0047】
(メタ)アクリル基を有する化合物としては、(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。(メタ)アクリレート化合物としては、単官能、2官能又は多官能のいずれでもよく、特に制限はないが、十分な硬化性を得るためには2官能又は多官能の(メタ)アクリレートが好ましい。
【0048】
単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチルヘプチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、モノ(2-(メタ)アクリロイロキシエチル)スクシネート等の脂肪族(メタ)アクリレート;シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、モノ(2-(メタ)アクリロイロキシエチル)テトラヒドロフタレート、モノ(2-(メタ)アクリロイロキシエチル)ヘキサヒドロフタレート等の脂環式(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、o-ビフェニル(メタ)アクリレート、1-ナフチル(メタ)アクリレート、2-ナフチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、p-クミルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、1-ナフトキシエチル(メタ)アクリレート、2-ナフトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(o-フェニルフェノキシ)プロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(1-ナフトキシ)プロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(2-ナフトキシ)プロピル(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリレート;2-テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、N-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-N-カルバゾール等の複素環式(メタ)アクリレート、及びこれらのカプロラクトン変性体が挙げられる。これらの中でもスチレン系エラストマとの相溶性、また透明性及び耐熱性の観点から、上記脂肪族(メタ)アクリレート及び上記芳香族(メタ)アクリレートが好ましい。
【0049】
2官能(メタ)アクリレートとしては、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、エトキシ化2-メチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート等の脂肪族(メタ)アクリレート;シクロヘキサンジメタノール(メタ)アクリレート、エトキシ化シクロヘキサンジメタノール(メタ)アクリレート、プロポキシ化シクロヘキサンジメタノール(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化シクロヘキサンジメタノール(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、エトキシ化トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、エトキシ化水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化水添ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化水添ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化水添ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート等の脂環式(メタ)アクリレート;エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAFジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAFジ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化ビスフェノールAFジ(メタ)アクリレート、エトキシ化フルオレン型ジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化フルオレン型ジ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化フルオレン型ジ(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリレート;エトキシ化イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート等の複素環式(メタ)アクリレート;これらのカプロラクトン変性体;ネオペンチルグリコール型エポキシ(メタ)アクリレート等の脂肪族エポキシ(メタ)アクリレート;シクロヘキサンジメタノール型エポキシ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールF型エポキシ(メタ)アクリレート等の脂環式エポキシ(メタ)アクリレート;及びレゾルシノール型エポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールF型エポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAF型エポキシ(メタ)アクリレート、フルオレン型エポキシ(メタ)アクリレート等の芳香族エポキシ(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの中でもスチレン系エラストマとの相溶性、また透明性及び耐熱性の観点から、上記脂肪族(メタ)アクリレート及び上記芳香族(メタ)アクリレートが好ましい。
【0050】
3官能以上の多官能(メタ)アクリレートとしては、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の脂肪族(メタ)アクリレート;エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート等の複素環式(メタ)アクリレート;これらのカプロラクトン変性体;及びフェノールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、クレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート等の芳香族エポキシ(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの中でもスチレン系エラストマとの相溶性、また透明性及び耐熱性の観点から、上記脂肪族(メタ)アクリレート及び上記芳香族(メタ)アクリレートが好ましい。
【0051】
無水マレイン酸基又はカルボキシル基を有するゴムと、エポキシ基を有する化合物(エポキシ樹脂)との組み合わせにより、伸縮性樹脂層の耐熱性及び低透湿度、伸縮性樹脂層と導電層との密着性、及び、硬化後の樹脂層の低いタックの点で、特に優れた効果が得られる。伸縮性樹脂層の耐熱性が向上すると、例えば窒素リフローのような加熱工程における伸縮性樹脂層の劣化を抑制することができる。硬化後の樹脂層が低いタックを有すると、作業性良く導体基板又は配線基板を取り扱うことができる。
【0052】
エポキシ基を含有する化合物は、分子内にエポキシ基を有していれば特に制限されず、例えば一般的なエポキシ樹脂であることができる。エポキシ樹脂としては、単官能、2官能又は多官能のいずれでもよく、特に制限はないが、十分な硬化性を得るためには2官能又は多官能のエポキシ樹脂が好ましい。
【0053】
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、フェノールノボラック型、ナフタレン型、ジシクロペンタジエン型、クレゾールノボラック型等が挙げられる。脂肪鎖で変性したエポキシ樹脂であれば、柔軟性を付与でき、好ましい。市販の脂肪鎖変性エポキシ樹脂としては、例えばDIC(株)製のEXA-4816が挙げられる。硬化性、低タック性、及び耐熱性の観点から、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、ナフタレン型、ジシクロペンタジエン型を選択してもよい。これらのエポキシ樹脂は、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0054】
架橋成分から形成された架橋重合体の含有量は、伸縮性樹脂層の質量を基準として、10~50質量%であることが好ましい。架橋成分から形成された架橋重合体の含有量が上記の範囲であれば、伸縮性樹脂層の特性を維持したまま、導体箔との密着力が向上する傾向がある。以上の観点から、架橋成分から形成された架橋重合体の含有量が15~40質量%であることがより好ましい。伸縮性樹脂層を形成するための樹脂組成物における架橋成分の含有量が、これらの範囲内にあってもよい。
【0055】
伸縮性樹脂層、又はこれを形成するために用いられる樹脂組成物は、(C)成分として添加剤を更に含有することもできる。(C)添加剤は、硬化剤又は硬化促進剤のうち少なくとも一方であってもよい。硬化剤は、それ自体が硬化反応に関与する化合物であり、硬化促進剤は、硬化反応の触媒として機能する化合物である。硬化剤及び硬化促進剤の両方の機能を有する化合物を用いることもできる。硬化剤は、重合開始剤であってもよい。これらは樹脂組成物が含有する他の成分に応じて適宜選択できる。例えば、(メタ)アクリレート化合物等を含有する樹脂組成物であれば、重合開始剤を添加してもよい。重合開始剤としては、加熱又は紫外線等の照射によって重合を開始させるものであれば特に制限はなく、例えば熱ラジカル重合開始剤、又は光ラジカル重合開始剤を用いることができる。熱ラジカル開始剤であれば、樹脂組成物の反応が均一に進行するという点で好ましい。光ラジカル開始剤であれば、常温硬化が可能なことから、デバイスの熱による劣化を防止するという点、及び、伸縮性樹脂層の反りを抑制できるという点で好ましい。
【0056】
熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、メチルエチルケトンパーオキシド、シクロヘキサノンパーオキシド、メチルシクロヘキサノンパーオキシド等のケトンパーオキシド;1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-2-メチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン等のパーオキシケタール;p-メンタンヒドロパーオキシド等のヒドロパーオキシド;α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキシド、t-ブチルクミルパーオキシド、ジ-t-ブチルパーオキシド等のジアルキルパーオキシド;オクタノイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ステアリルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド等のジアシルパーオキシド;ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ-2-エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ-3-メトキシブチルパーオキシカーボネート等のパーオキシカーボネート;t-ブチルパーオキシピバレート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウリレート、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシアセテート等のパーオキシエステル;及び2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2’-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物が挙げられる。これらの中で、硬化性、透明性、及び耐熱性の観点から、上記ジアシルパーオキシド、上記パーオキシエステル、及び上記アゾ化合物が好ましい。
【0057】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン等のベンゾインケタール;1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン等のα-ヒドロキシケトン;2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン、1,2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン等のα-アミノケトン;1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-1,2-オクタジオン-2-(ベンゾイル)オキシム等のオキシムエステル;ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド等のホスフィンオキシド;2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(p-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体;ベンゾフェノン、N,N,N’,N’-テトラメチル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン、N,N,N’,N’-テトラエチル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4-メトキシ-4’-ジメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン化合物;2-エチルアントラキノン、フェナントレンキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2-ベンズアントラキノン、2,3-ベンズアントラキノン、2-フェニルアントラキノン、2,3-ジフェニルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-メチルアントラキノン、1,4-ナフトキノン、9,10-フェナントラキノン、2-メチル-1,4-ナフトキノン、2,3-ジメチルアントラキノン等のキノン化合物;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル;ベンゾイン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン化合物;ベンジルジメチルケタール等のベンジル化合物;9-フェニルアクリジン、1,7-ビス(9,9’-アクリジニルヘプタン)等のアクリジン化合物;N-フェニルグリシン;及びクマリンが挙げられる。
【0058】
2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体において、2つのトリアリールイミダゾール部位のアリール基の置換基は、同一で対称な化合物を与えてもよく、相違して非対称な化合物を与えてもよい。ジエチルチオキサントンとジメチルアミノ安息香酸との組み合わせのように、チオキサントン化合物と3級アミンとを組み合わせてもよい。
【0059】
これらの中で、硬化性、透明性、及び耐熱性の観点から、上記α-ヒドロキシケトン及び上記ホスフィンオキシドが好ましい。これらの熱及び光ラジカル重合開始剤は、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。更に、適切な増感剤と組み合わせて使用することもできる。
【0060】
伸縮性樹脂層を形成するための硬化性樹脂組成物が(A)ゴム成分、(B)架橋成分及び(C)成分としての硬化剤を含有する場合、硬化剤(又は重合開始剤)の含有量は、ゴム成分及び架橋成分の合計量100質量部に対して、0.1~10質量部であることが好ましい。硬化剤(又は重合開始剤)の含有量が0.1質量部以上であると、十分な硬化が得られ易い傾向がある。硬化剤(又は重合開始剤)の含有量が10質量部以下であると十分な光透過性が得られ易い傾向がある。以上の観点から、硬化剤(又は重合開始剤)の含有量は0.3~7質量部であることがより好ましく、0.5~5質量部であることが更に好ましい。
【0061】
硬化剤は、脂肪族ポリアミン、ポリアミノアミド、ポリメルカプタン、芳香族ポリアミン、酸無水物、カルボン酸、フェノールノボラック樹脂、エステル樹脂、及びジシアンジアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種を含んでいてもよい。これらの硬化剤は、例えばエポキシ基を有する化合物(エポキシ樹脂)と組み合わせて使用することができる。
【0062】
エポキシ樹脂を含有する樹脂組成物に、(C)成分として、三級アミン、イミダゾール、酸無水物、ホスフィン系から選ばれる硬化促進剤を添加してもよい。ワニスの保存安定性及び硬化性の観点から、イミダゾールを使用することが好ましい。ゴム成分が無水マレイン酸で部分的に変性されたゴムを含む場合、これと相溶するイミダゾールを選択してもよい。
【0063】
伸縮性樹脂層を形成するための樹脂組成物が(A)ゴム成分及び(B)架橋成分を含有する場合、イミダゾールの含有量は、ゴム成分及び架橋成分の合計量100質量部に対して、0.1~10質量部であってもよい。イミダゾールの含有量が0.1質量部以上であると、十分な硬化が得られ易い傾向がある。イミダゾールの含有量が10質量部以下であると十分な耐熱性が得られ易い傾向がある。以上の観点から、イミダゾールの含有量は0.3~7質量部、又は0.5~5質量部であってもよい。
【0064】
伸縮性樹脂層を形成するための樹脂組成物が(A)ゴム成分、(B)架橋成分及び(C)添加剤を含有する場合、ゴム成分の含有量は、(A)ゴム成分、(B)架橋成分及び(C)添加剤の総量を基準として、30~98質量%、50~97質量%、又は60~95質量%であってもよい。ゴム成分の含有量が30質量%以上であると、十分な伸縮性が得られ易い。ゴム成分の含有量が98質量%以下であると、伸縮性樹脂層が密着性、絶縁信頼性、及び耐熱性の点で特に優れた特性を有する傾向がある。
【0065】
伸縮性樹脂層、又はこれを形成するための樹脂組成物は、以上の成分の他、必要に応じて、酸化防止剤、黄変防止剤、紫外線吸収剤、可視光吸収剤、着色剤、可塑剤、安定剤、充填剤、難燃剤、レべリング剤等を、本開示の効果を著しく損なわない範囲で更に含んでもよい。
【0066】
伸縮性樹脂層は、例えば、カップリング剤、ゴム成分及び必要により他の成分を、有機溶剤に溶解又は分散して樹脂ワニスを得ることと、樹脂ワニスを後述の方法によって導体箔又はキャリアフィルム上に成膜することとを含む方法により、製造することができる。
【0067】
ここで用いる有機溶剤としては、特に制限はないが、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、クメン、p-シメン等の芳香族炭化水素;テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等の環状エーテル;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン等のケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン等のエステル;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の炭酸エステル;及びN,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミドが挙げられる。これらの有機溶剤は、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。溶解性及び沸点の観点から、トルエン、又はN,N-ジメチルアセトアミドを用いてもよい。樹脂ワニス中の固形分(有機溶媒以外の成分)濃度は、通常20~80質量%であることが好ましい。
【0068】
キャリアフィルムの材質としては、特に制限されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリスルホン及び液晶ポリマが挙げられる。これらの中でも、柔軟性及び強靭性の観点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、又はポリスルホンのフィルムをキャリアフィルムとして用いてもよい。
【0069】
キャリアフィルムの厚さは、特に制限されないが、3~250μmであることが好ましい。3μm以上であるとフィルム強度が十分であり、250μm以下であると十分な柔軟性が得られる。以上の観点から、厚さは5~200μmであることがより好ましく、7~150μmであることが更に好ましい。伸縮性樹脂層との剥離性向上の観点から、シリコーン系化合物、含フッ素化合物等により基材フィルムに離型処理が施されたフィルムを必要に応じて用いてもよい。
【0070】
必要に応じて、保護フィルムを伸縮性樹脂層上に貼り付け、導体箔又はキャリアフィルム、伸縮性樹脂層及び保護フィルムからなる3層構造の積層フィルムとしてもよい。
【0071】
保護フィルムの材質としては、特に制限はなく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;及びポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンが挙げられる。これらの中で、柔軟性及び強靭性の観点から、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル;及びポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンであることが好ましい。伸縮性樹脂層との剥離性向上の観点から、シリコーン系化合物、含フッ素化合物等により離型処理が施されていてもよい。
【0072】
保護フィルムの厚さは、目的とする柔軟性により適宜変えてよいが、10~250μmであることが好ましい。厚さが10μm以上であるとフィルム強度が十分である傾向があり、250μm以下であると十分な柔軟性が得られる傾向がある。以上の観点から、厚さは15~200μmであることがより好ましく、20~150μmであることが更に好ましい。
【0073】
次に、一実施形態に係る配線基板の製造方法について説明する。一実施形態に係る配線基板は、例えば、伸縮性樹脂層と伸縮性樹脂層上に積層された導体箔とを有する積層板を準備する工程と、伸縮性樹脂層にビアホールを形成する工程と、ビアホールの内壁面に銅めっき層等のめっき層を形成する工程と、導体箔上にエッチングレジストを形成する工程と、エッチングレジストを露光し、露光後の上記エッチングレジストを現像して、導体箔の一部を覆うレジストパターンを形成する工程と、レジストパターンによって覆われていない部分の導体膜を除去する工程と、レジストパターンを除去する工程と、を含む方法により、製造することができる。
【0074】
伸縮性樹脂層及び導体箔を有する積層板を得る手法としては、どのような手法を用いてもよいが、例えば、伸縮性樹脂層を形成するための樹脂組成物のワニスを導体箔に塗工する方法、及び、キャリアフィルム上に形成された伸縮性樹脂層に導体箔を真空プレス又はラミネータ等により積層する方法がある。伸縮性樹脂層を形成するための樹脂組成物が架橋成分を含有する場合、加熱又は光照射によって架橋成分の架橋反応(硬化反応)を進行させることで、伸縮性樹脂層が形成される。
【0075】
キャリアフィルム上の伸縮性樹脂層を導体箔に積層する手法としては、どのようなものでもよいが、例えば、ロールラミネータ、真空ラミネータ、真空プレス等が用いられる。生産効率の観点から、ロールラミネータ又は真空ラミネータを用いて積層することが好ましい。
【0076】
伸縮性樹脂層の乾燥後の厚さは、特に限定されないが、通常は5~1000μmである。上記の範囲であると、伸縮性基材の十分な強度が得られ易く、且つ乾燥が十分に行えるため樹脂フィルム中の残留溶媒量を低減できる。
【0077】
伸縮性樹脂層の導体箔とは反対側の面に更に導体箔を積層することにより、伸縮性樹脂層の両面上に導体箔が形成された積層板を作製してもよい。伸縮性樹脂層の両面上に導体箔を設けることにより、硬化時の積層板の反りを抑制することができる。
【0078】
ビアホールの形成は、ドリル加工又はレーザ加工により容易に形成することができる。ドリル加工では貫通スルーホール形状を形成することができる。一方、レーザ加工では貫通スルーホール形状の他、ブラインドビア形状を形成することができ、配線設計の裕度をより高くすることができる。
【0079】
ビアホールの形状及び直径によって、ドリル加工又はレーザ加工を選択することが好ましい。貫通ビア形成を行う場合はドリル加工を用い、非貫通のブラインドビア形状を形成する場合はレーザ加工を用いることが好ましい。
【0080】
銅めっき層等のめっき層は、公知の方法により形成することができる。例えば、ビアホールの内壁面にパラジウムを付着させるめっき触媒付与処理を行った後、無電解めっき液に浸漬してビアホールの内壁面全面に厚さ0.3~1.5μmの無電解めっき層(導体層)を析出させる。必要に応じて、電解めっき(電気めっき)を更に行って、必要な厚さに調整することができる。無電解めっきに用いる無電解めっき液としては、公知の無電解めっき液を用いることが可能であり、特に制限はない。また、電解めっきについても公知の方法を用いることが可能であり、特に制限はない。これらのめっき(無電解めっき、電解めっき)としては、コスト面及び抵抗値の観点から、銅めっきが好ましい。
【0081】
積層板(配線基板形成用積層板)の導体箔に配線パターンを形成させる手法としては、一般的にエッチング等を用いた手法が用いられる。例えば導体箔として銅箔を用いた場合、エッチング液としては、例えば濃硫酸と過酸化水素水との混合溶液、塩化第二鉄溶液等を使用できる。なお、配線パターンと共に、ビアホールの周囲のランド部も形成することができる。
【0082】
エッチングに用いるエッチングレジストとしては、例えばフォテックH-7025(日立化成(株)製、商品名)、フォテックH-7030(日立化成(株)製、商品名)、及びX-87(太陽ホールディングス(株)製、商品名)が挙げられる。エッチングレジストは、配線パターンの形成の後、通常、除去される。
【0083】
配線基板に各種の電子素子を搭載することにより、ストレッチャブルデバイスを得ることができる。
【実施例
【0084】
本開示について以下の参考例を挙げて更に具体的に説明する。ただし、本開示はこれらの参考例に限定されるものではない。
【0085】
検討1
1-1.伸縮性樹脂層形成用のワニス調製
[樹脂ワニスA]
(A)成分として水添型スチレンブタジエンゴム(旭化成(株)製、タフテックP1500、商品名)30gと、トルエン70gとを攪拌しながら混合し、樹脂ワニスAを得た。
[樹脂ワニスB]
(A)成分として水添型スチレンブタジエンゴム(JSR(株)製、ダイナロン2324P、商品名)20g、(B)成分としてブタンジオールアクリレート(日立化成(株)製、ファンクリルFA-124AS、商品名)5g、及び(C)成分としてビス(2、4、6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(BASF(株)製、イルガキュア819、商品名)0.4gと、溶剤としてトルエン15gとを撹拌しながら混合し、樹脂ワニスBを得た。
[樹脂ワニスC]
(A)成分としてアクリルポリマ((株)クラレ製、クラリティLA2140、商品名)20g、(B)成分として脂肪鎖変性エポキシ樹脂(DIC(株)製、EXA4816、商品名)5g、及び(C)成分として2-フェニルイミダゾール(四国化成(株)製、2PZ、商品名)0.5gと、溶剤としてメチルエチルケトン15gとを撹拌しながら混合し、樹脂ワニスCを得た。
[樹脂ワニスD]
ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製、NC-3000H、商品名)50gに、メチルエチルケトン25.0gを混合した。そこにフェノールノボラック型フェノール樹脂(DIC(株)製、TD2131、商品名)20gを加え、更に硬化促進剤として2-フェニルイミダゾール(四国化成工業(株)製、2PZ、商品名)0.15gを添加した。その後、メチルエチルケトンで希釈し、樹脂ワニスDを得た。
【0086】
1-2.導体層付積層板の作製
参考例1-1
[伸縮性樹脂層を有する積層フィルム]
キャリアフィルムとして離型処理ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(帝人デュポンフィルム(株)製「ピューレックスA31」、厚さ25μm)を準備した。このPETフィルムの離型処理面上にナイフコータ((株)康井精機製「SNC-350」を用いて樹脂ワニスAを塗布した。塗膜を乾燥機((株)二葉科学製「MSO-80TPS」)中100℃で20分乾燥して、塗工後の厚さが100μmである伸縮性樹脂層を形成させた。形成された伸縮性樹脂層に、キャリアフィルムと同じ離型処理PETフィルムを、離型処理面が伸縮性樹脂層側になる向きで保護フィルムとして貼付けて、積層フィルムAを得た。
[導体層付積層板]
積層フィルムAの保護フィルムを剥離し、銅箔(日本電解(株)製、YGP-12、商品名)の粗化面側に積層フィルムAの伸縮性樹脂層を重ねた。真空加圧式ラミネータ(ニチゴー・モートン(株)製「V130」)を用いて、圧力0.5MPa、温度90℃及び加圧時間60秒の条件で圧着して、導体層付積層板を作製した。
【0087】
参考例1-2
樹脂ワニスAを樹脂ワニスBに、銅箔を別の銅箔(JX金属株式会社製、BHY-82F-HA-V2-12μm、商品名)に変更したこと以外は参考例1-1と同様にして、銅箔及び未硬化の樹脂層を有する積層体を得た。その後、紫外線露光機(ミカサ(株)製「ML-320FSAT」)によって紫外線(波長365nm)を2000mJ/cm照射することで樹脂層を硬化させて、導体層付積層板を得た。
【0088】
参考例1-3
樹脂ワニスAを樹脂ワニスCに変更したこと以外は参考例1-1と同様にして、銅箔及び未硬化の樹脂層を有する積層体を得た。その後、乾燥機を用いて180℃1時間の条件で樹脂層を硬化させて、導体層付積層板を得た。
【0089】
比較参考例1-1
樹脂ワニスAを樹脂ワニスDに変更したこと以外は参考例1-1と同様にして、銅箔及び未硬化の樹脂層を有する積層体を得た。その後、乾燥機を用いて180℃1時間の条件で樹脂層を硬化させて、導体層付積層板を得た。
【0090】
[配線基板の作製とその評価]
図3に示すような、伸縮性樹脂層3及び伸縮性樹脂層3上に形成された波型パターンを有する導体箔5を導体層として有する試験用の配線基板1を作製した。まず、各導体層付積層板の導体層上にエッチングレジスト(日立化成(株)製、Photec RY-5325、商品名)をロールラミネータで貼着し、そこに波型パターンを形成したフォトツールを密着させた。エッチングレジストを、オーク製作所社製EXM-1201型露光機を使用して、50mJ/cmのエネルギー量で露光した。次いで、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液で、240秒間スプレー現像を行い、エッチングレジストの未露光部を溶解させ、波型の形状を有するレジストパターンを形成した。次いで、エッチング液により、レジストパターンによって覆われていない部分の銅箔を除去した。その後、はく離液によりエッチングレジストを除去し、配線幅が50μmで所定の方向Xに沿って蛇行する波型の配線パターンを形成している導体箔5を伸縮性樹脂層3上に有する配線基板1を得た。
得られた配線基板をXの方向に歪み10%まで引張変形させ、元に戻したときの、伸縮性樹脂層及び波型の配線パターンを観察した。伸縮性樹脂層及び配線パターンについては、伸張時に破断を生じなかった場合を「A」、破断を生じた場合を「C」とした。
【0091】
【表1】
【0092】
参考例1-1~1-3及び比較参考例1-1の評価結果を表1に示す。参考例1-1~1-3の導体層付積層板によって形成された波型の配線パターンを有する配線基板においては、10%伸張時も伸縮性樹脂層が破断せず、波型の配線パターンの外観も問題ないことが分かった。一方で、比較参考例1-1では、樹脂層が伸縮性を有しないため、10%伸張前に樹脂層が破断してしまい、配線も同時に破断してしまうことがわかった。上記参考例1-1~1-3の導体層付積層板によって形成された配線基板にビアホールを設けることにより、高い伸縮性を有すると共に、積層時に層間接続が可能な配線基板を得ることができる。
【0093】
検討2
参考例2-1
[樹脂ワニス]
(A)成分として無水マレイン酸変性スチレンエチレンブタジエンゴム(KRATON(株)製、FG1924GT、商品名)10g、(B)成分としてジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC(株)製、EPICLON HP7200H、商品名)2.5g、及び(C)成分(硬化促進剤)として1-ベンジル-2-メチルイミダゾール(四国化成(株)製、1B2MZ、商品名)0.38gと、トルエン50gとを撹拌しながら混合して、樹脂ワニスを得た。
【0094】
[積層フィルム]
キャリアフィルムとして離型処理ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(帝人デュポンフィルム(株)製「ピューレックスA31」、厚さ25μm)を準備した。このPETフィルムの離型処理面上にナイフコータ((株)康井精機製「SNC-350」を用いて上記樹脂ワニスを塗布した。塗膜を乾燥機((株)二葉科学製「MSO-80TPS」)中で100℃で20分の加熱により乾燥して、厚さ100μmの樹脂層を形成させた。形成された樹脂層に、キャリアフィルムと同じ離型処理PETフィルムを、離型処理面が樹脂層側になる向きで保護フィルムとして貼付けて、積層フィルムを得た。
【0095】
[導体基板の作製]
積層フィルムの保護フィルムを剥離し、露出した樹脂層に、表面粗さRaが1.5μmの粗化面を有する電解銅箔(古河電気工業(株)製、F2-WS-12、商品名)を、粗化面が樹脂層側になる向きで重ねた。その状態で、真空加圧式ラミネータ(ニッコー・マテリアルズ(株)製「V130」)を用いて、圧力0.5MPa、温度90℃及び加圧時間60秒の条件で電解銅箔を樹脂層にラミネートした。その後、乾燥機((株)二葉科学製「MSO-80TPS」)中、180℃で60分の加熱により、樹脂層の硬化物である伸縮性樹脂層と、電解銅箔とを有する導体基板を得た。
【0096】
参考例2-2
(A)成分として無水マレイン酸変性スチレンエチレンブタジエンゴム(KRATON(株)製、FG1924GT、商品名)10g、(B)成分としてジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC(株)製、EPICLON HP7200H、商品名)2.5g、(C)成分(硬化促進剤)として1-ベンジル-2-メチルイミダゾール(四国化成(株)製、1B2MZ、商品名)0.38g、フェノール系酸化防止剤((株)ADEKA製、AO-60、商品名)0.1g、及びホスファイト酸化防止剤((株)ADEKA製、2112、商品名)0.1gと、トルエン50gとを撹拌しながら混合して、樹脂ワニスを得た。得られた樹脂ワニスを用い、参考例2-1と同様にして樹脂層を有する積層フィルム、及び導体基板を作製した。
【0097】
評価
[耐熱性試験]
積層フィルムを180℃で60分加熱することにより樹脂層を硬化させて、伸縮性樹脂層を形成させた。キャリアフィルム及び保護フィルムを除去してから、伸縮性樹脂層を窒素リフローシステム(田村製作所(株)製、TNV-EN)を用いて、IPC/JEDEC J-STD-020に準拠する図4の温度プロファイルで加熱処理する耐熱性試験を行った。耐熱性試験前後の伸縮性樹脂層の伸び率及び引張弾性率を測定した。導体基板も同様の耐熱性試験に供し、耐熱性試験前後の90度ピール強度を測定した。
【0098】
[引張弾性率及び破断伸び率]
長さ40mm、幅10mmの短冊状の伸縮性樹脂層の試験片を準備した。この試験片の引張試験をオートグラフ((株)島津製作所製「EZ-S」)を用いて行い、応力-ひずみ曲線を得た。得られた応力-ひずみ曲線から、引張弾性率及び破断伸び率を求めた。引張試験は、チャック間距離20mm、引張速度50mm/分の条件で行った。引張弾性率は、応力0.5~1.0Nの範囲の応力-ひずみ曲線の傾きから求めた。試験片が破断した時点のひずみを破断伸び率として記録した。
【0099】
[密着性(90度ピール強度)]
導体基板から剥離角度90度で銅箔を剥離する剥離試験によって、銅箔と伸縮性樹脂層との90度ピール強度を測定した。
【0100】
[タック]
積層フィルムを180℃で60分加熱することにより樹脂層を硬化し、伸縮性樹脂層を形成させた。硬化後の積層フィルムからキャリアフィルム及び保護フィルムを除去し、長さ70mm、幅20mmの積層フィルムの試験片を準備した。露出した樹脂層の表面のタックを、タッキング試験機((株)レスカ製「TACII」)を用いて測定した。測定条件は、定荷重モード、浸没速度120mm/分、テスト速度600mm/分、荷重100gf、荷重保持時間1s、温度30℃に設定した。
【0101】
【表2】
【0102】
表2に示されるように、参考例2-1及び参考例2-2の伸縮性樹脂層は、耐熱性試験後も、優れた伸縮性、及び銅箔に対する高い密着性を維持した。また、樹脂層のタックは適度に低く、樹脂層の取り扱い性も優れていた。上記参考例2-1~2-2の導体基板に配線パターン及びビアホールを形成することにより、高い伸縮性を有し、積層時に層間接続が可能であると共に、耐熱性試験後も、優れた伸縮性、及び銅箔と伸縮性樹脂層との優れた密着性を維持することができ、伸縮性樹脂層のタックが適度に低い、配線基板を得ることができる。
【符号の説明】
【0103】
10…伸縮性樹脂層、20…導体箔、30…ビアホール、40…無電解銅めっき層、50…ランド部、100…配線基板。
図1
図2
図3
図4