(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】端子のシール構造
(51)【国際特許分類】
H01M 50/571 20210101AFI20220817BHJP
H01M 50/562 20210101ALI20220817BHJP
【FI】
H01M50/571
H01M50/562
(21)【出願番号】P 2020055013
(22)【出願日】2020-03-25
【審査請求日】2020-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】北川 尭生
(72)【発明者】
【氏名】横田 将幸
【審査官】藤原 敬士
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-107473(JP,A)
【文献】特開2020-035694(JP,A)
【文献】特開2018-107122(JP,A)
【文献】特開2018-055799(JP,A)
【文献】特開2017-041299(JP,A)
【文献】特開2016-085961(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/571
H01M 50/562
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
純AlまたはAl基合金からなるAl層と、純CuまたはCu基合金からなるCu層とが、この順に積層された状態で接合されている端子のシール構造であって、
前記端子は、上面側に前記Al層が配置され、下面側に前記Cu層が配置され、前記端子の側面側に位置する前記Al層と前記Cu層との界面の露出部は、前記側面側に対向配置されたシール部材に向かって押圧された状態で前記シール部材によって覆われている、端子のシール構造。
【請求項2】
前記端子は、前記Al層側から前記Cu層側に延びる軸部と、前記軸部の側方から放射方向に広がる鍔部と、を備え、
前記鍔部は、上面側に前記Al層が配置され、下面側に前記Cu層が配置され、前記Al層と前記Cu層との界面の露出部は、前記鍔部の側面側に位置する、請求項1に記載の端子のシール構造。
【請求項3】
前記端子は、前記軸部が前記Al層側から前記Cu層側に突出して延びるT字形状、または、前記軸部が前記Al層側から前記Cu層側に突出して延びる第1軸部および前記Cu側への突出して延びる長さよりも小さい突出長さで前記Al層側に突出する第2軸部を有する十字形状を含む、請求項2に記載の端子のシール構造。
【請求項4】
純AlまたはAl基合金からなるAl層と、純CuまたはCu基合金からなるCu層とが、この順に積層された状態で接合されている端子のシール構造であって、
前記端子は、前記Al層側から前記Cu層側に延びる軸部と、前記軸部の側方から放射方向に広がる鍔部と、を備え、
前記鍔部は、上面側に前記Al層が配置され、下面側に前記Cu層が配置され、前記Al層と前記Cu層との界面の露出部は、前記鍔部の下面側に位置するとともに、前記軸部から前記鍔部が突出する方向の前記鍔部の先端側に位置し
、前記下面側に対向配置されたシール部材に向かって押圧された状態で前記シール部材によって覆われている、端子のシール構造。
【請求項5】
純AlまたはAl基合金からなるAl層と、純CuまたはCu基合金からなるCu層とが、この順に積層された状態で接合されている端子のシール構造であって、
前記端子は、前記Al層側から前記Cu層側に延びる軸部と、前記軸部の側方から放射方向に広がる鍔部と、を備え、
前記鍔部は、上面側に前記Al層が配置され、下面側に前記Cu層が配置され、
前記Al層と前記Cu層との界面の露出部は、前記鍔部の下面側または側面側に位置するとともに、シール部材に向かって押圧された状態で前記シール部材によって覆われ、
前記Al層と前記Cu層との界面は、前記鍔部の前記軸部から突出する方向の中間部から先端部に向かって下面側へ湾曲している、端子のシール構造。
【請求項6】
純AlまたはAl基合金からなるAl層と、純CuまたはCu基合金からなるCu層と、純NiまたはNi基合金からなるNi層とが、この順に積層された状態で接合されている端子のシール構造であって、
前記端子の前記Al層と前記Cu層との界面の露出部は、シール部材に向かって押圧された状態で前記シール部材によって覆われている、端子のシール構造。
【請求項7】
前記端子は、上面側に前記Al層が配置され、下面側に前記Ni層が配置され、前記Al層と前記Ni層との間は前記Cu層が配置されて離間され、
前記Al層と前記Cu層との界面の露出部は、前記端子の下面側に位置し、
前記Cu層と前記Ni層との界面の露出部は、前記端子の下面側に位置する、請求項6に記載の端子のシール構造。
【請求項8】
前記端子は、電池用端子である、請求項1~7のいずれか1項に記載の端子のシール構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、端子のシール構造に関し、特に、Al層とCu層とを備える端子のシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、Al基合金から構成される第1金属層と、Cu基合金から構成される第2金属層とを備えるクラッド端子が知られている(たとえば、特許文献1および特許文献2参照)。
【0003】
上記特許文献1では、Al基合金からなる第1金属層と、Cu基合金からなる第2金属層と、Ni基合金からなる第3金属層とがこの順番で接合されたクラッド材を電池用端子として用いている。
【0004】
また、上記特許文献2では、Alを主成分とするAl層と、Cuを主成分とするCu層とを2層以上に積層した複合材をケーブル用の接続端子として用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6014808号公報
【文献】特開2006-24523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、異種金属が積層された状態で接合されている端子は、水分に接触することにより電気が流れて腐食(電食)することが知られている。電食は、異種金属間の電位差が大きい程起こりやすいため、電位差の大きいAl(層)とCu(層)とが接合された端子では、Al(層)とCu(層)との界面の外部に露出した部分に腐食が生じることを抑制することが望まれている。上記端子の電食に関する問題点は、上記特許文献1および特許文献2には開示されていない。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、端子が、Al層とCu層との界面の露出部から腐食することを抑制することが可能な、端子のシール構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の局面による端子のシール構造は、純AlまたはAl基合金からなるAl層と、純CuまたはCu基合金からなるCu層とが、この順に積層された状態で接合されている端子のシール構造であって、端子は、上面側にAl層が配置され、下面側にCu層が配置され、端子の側面側に位置するAl層とCu層との界面の露出部は、側面側に対向配置されたシール部材に向かって押圧された状態でシール部材によって覆われている。
【0009】
この発明の第1の局面による端子のシール構造は、端子のAl層とCu層との界面の露出部が、シール部材に向かって押圧された状態で覆われている。これにより、端子のAl層とCu層との界面の露出部がシール部材に向かって押圧された状態で覆われていることにより、シール部材と、端子のAl層とCu層との界面の露出部との間に隙間が形成されることを抑制することができる。その結果、端子のAl層とCu層との界面の露出部に水分が接触することを抑制することができるため、端子が、Al層とCu層との界面の露出部から腐食することを抑制することができる。また、端子の側面側に位置するAl層とCu層との界面の露出部は、端子の側面側に対向配置されたシール部材に向かって押圧された状態でシール部材によって覆われている。これにより、端子のAl層とCu層との界面の露出部が側面に位置しているとともに、シール部材を端子の側面側に配置することにより、端子のAl層とCu層との界面の露出部が側面にある場合でもAl層とCu層との界面の露出部が水分に接触することを抑制することができる。
【0012】
上記第1の局面による端子のシール構造において、端子は、Al層側からCu層側に延びる軸部と、軸部の側方から放射方向に広がる鍔部と、を備え、鍔部は、上面側にAl層が配置され、下面側にCu層が配置され、Al層とCu層との界面の露出部が、鍔部の側面側に位置する構成であってよい。軸部および鍔部を備える端子であれば、軸部および鍔部を用いることにより、シール部材に端子を容易に固定することができる。これにより、端子のAl層とCu層との界面の露出部がシール部材に押圧された状態を維持することが容易になるため、効果的に腐食を抑制することができる。
【0013】
上記第1の局面による端子のシール構造において、上記した軸部および鍔部を備える端子の場合、端子は、軸部がAl層側からCu層側に突出して延びるT字形状、または、軸部がAl層側からCu層側に突出して延びる第1軸部およびCu層側への突出して延びる長さよりも小さい突出長さでAl層側に突出する第2軸部を有する十字形状を含む構成であってよい。端子がT字形状を含む構成を有している場合、端子のシール構造は、たとえば、シール部材に軸部の径より大きい孔部を設けて軸部を挿入し、端子の鍔部をシール部材に当接させる構成にすることができる。このように構成すれば、端子の固定が容易になるとともに、端子のAl層とCu層との界面の露出部がシール部材に押圧された状態を維持することが容易となる。また、端子が十字形状を含む構成を有している場合、端子のシール構造は、たとえば、シール部材に第1軸部の径より大きい孔部を設けて第1軸部を挿入し、端子の鍔部をシール部材に当接させる構成にすることができる。このように構成すれば、端子の固定が容易になるとともに、端子のAl層とCu層との界面の露出部がシール部材に押圧された状態を維持することが容易となる。加えて、たとえば、端子の第2軸部にバスバーなどの部品を容易に接続することができるし、端子の第2軸部を利用してバスバーなどの部品の位置決めを容易に行うことができる。
【0014】
この発明の第2の局面による端子のシール構造は、純AlまたはAl基合金からなるAl層と、純CuまたはCu基合金からなるCu層とが、この順に積層された状態で接合されている端子のシール構造であって、端子は、Al層側からCu層側に延びる軸部と、軸部の側方から放射方向に広がる鍔部と、を備え、鍔部は、上面側にAl層が配置され、下面側にCu層が配置され、Al層とCu層との界面の露出部は、鍔部の下面側に位置するとともに、軸部から鍔部が突出する方向の鍔部の先端側に位置し、下面側に対向配置されたシール部材に向かって押圧された状態でシール部材によって覆われている。これにより、端子のAl層とCu層との界面の露出部がシール部材に向かって押圧された状態で覆われていることにより、シール部材と、端子のAl層とCu層との界面の露出部との間に隙間が形成されることを抑制することができる。その結果、端子のAl層とCu層との界面の露出部に水分が接触することを抑制することができるため、端子が、Al層とCu層との界面の露出部から腐食することを抑制することができる。また、軸部および鍔部を備える端子であれば、軸部および鍔部を用いることにより、シール部材に端子を容易に固定することができる。これにより、端子のAl層とCu層との界面の露出部がシール部材に押圧された状態を維持することが容易になるため、効果的に腐食を抑制することができる。また、端子の軸部に近い部分において、Al層よりも硬いCu層の厚みが大きくなるため、端子の強度を向上させることができる。
【0015】
この発明の第3の局面による端子のシール構造は、純AlまたはAl基合金からなるAl層と、純CuまたはCu基合金からなるCu層とが、この順に積層された状態で接合されている端子のシール構造であって、端子は、Al層側からCu層側に延びる軸部と、軸部の側方から放射方向に広がる鍔部と、を備え、鍔部は、上面側にAl層が配置され、下面側にCu層が配置され、Al層とCu層との界面の露出部は、鍔部の下面側または側面側に位置するとともに、シール部材に向かって押圧された状態でシール部材によって覆われ、Al層とCu層との界面は、鍔部の軸部から突出する方向の中間部から先端部に向かって下面側へ湾曲している。これにより、端子のAl層とCu層との界面の露出部がシール部材に向かって押圧された状態でシール部材によって覆われていることにより、シール部材と、端子のAl層とCu層との界面の露出部との間に隙間が形成されることを抑制することができる。その結果、端子のAl層とCu層との界面の露出部に水分が接触することを抑制することができるため、端子が、Al層とCu層との界面の露出部から腐食することを抑制することができる。また、軸部および鍔部を備える端子であれば、軸部および鍔部を用いることにより、シール部材に端子を容易に固定することができる。これにより、端子のAl層とCu層との界面の露出部がシール部材に押圧された状態を維持することが容易になるため、効果的に腐食を抑制することができる。また、端子の鍔部の突出方向の中間部のCu層の厚みを先端部のCu層の厚みよりも大きくすることができる。これにより、Al層より硬度が大きいCu層が鍔部の中間部の位置において十分な厚みを有することにより、端子の強度を向上させることができる。
【0016】
この発明の第4の局面による端子のシール構造は、純AlまたはAl基合金からなるAl層と、純CuまたはCu基合金からなるCu層と、純NiまたはNi基合金からなるNi層とが、この順に積層された状態で接合されている端子のシール構造であって、端子のAl層とCu層との界面の露出部は、シール部材に向かって押圧された状態でシール部材によって覆われている。これにより、端子のAl層とCu層との界面の露出部がシール部材に向かって押圧された状態で覆われていることにより、シール部材と、端子のAl層とCu層との界面の露出部との間に隙間が形成されることを抑制することができる。その結果、端子のAl層とCu層との界面の露出部に水分が接触することを抑制することができるため、端子が、Al層とCu層との界面の露出部から腐食することを抑制することができる。また、Cu層よりも硬いNi層により端子の強度がさらに向上するとともに、Cu層よりも耐食性のよいNi層により端子のCu層側の耐食性を向上させることができる。
【0017】
この場合、上面側にAl層が配置され、下面側にNi層が配置され、Al層とNi層との間はCu層が配置されて離間され、Al層とCu層との界面の露出部は、端子の下面側に位置し、Cu層とNi層との界面の露出部は、端子の下面側に位置する構成であってよい。このように構成された端子であれば、端子の下面側にNi層が配置されるため、Cu層よりも溶接性のよいNi層を介して他の部品と容易に溶接することができる。
【0018】
上記第1~第4の局面による端子のシール構造において、端子は、電池用端子であってよい。上記一の局面による端子のシール構造を電池用端子に適用すれば、電池用端子が、Al層とCu層との界面の露出部から腐食することを抑制することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、上記のように、端子が、Al層とCu層との界面の露出部から腐食することを抑制することが可能な、シール構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1実施形態による組電池を示した斜視図である。
【
図2】本発明の第1実施形態によるリチウムイオン電池の全体構成を示した斜視図である。
【
図3】本発明の第1実施形態によるリチウムイオン電池の全体構成を示した分解斜視図である。
【
図4】本発明の第1実施形態による負極端子を示した断面図である。
【
図5】本発明の第1実施形態による負極端子をかしめた状態を示す断面図である。
【
図6】本発明の第1実施形態による負極端子の他の例を示した断面図である。
【
図7】本発明の第1実施形態による負極端子のプレス加工前の模式図である。
【
図8】本発明の第1実施形態による負極端子のプレス加工中の模式図である。
【
図9】本発明の第1実施形態による負極端子のプレス加工後の模式図である。
【
図10】本発明の第1実施形態による負極端子の製造方法を説明するための模式図である。
【
図11】本発明の第1実施形態による負極端子をかしめる前の状態を示した断面図である。
【
図12】本発明の第1実施形態による負極端子をかしめている途中の状態を示した断面図である。
【
図13】本発明の第1実施形態による負極端子のかしめ完了後の状態を示した断面図である。
【
図14】本発明の第1実施形態による負極端子のレーザ溶接時の状態を示した断面図である。
【
図15】本発明の第2実施形態による負極端子を示した断面図である。
【
図16】本発明の第2実施形態による負極端子をかしめた状態を示した断面図である。
【
図17】本発明の第3実施形態による負極端子を示した断面図である。
【
図18】本発明の第3実施形態による負極端子をかしめた状態を示した断面図である。
【
図19】本発明の第3実施形態による負極端子の製造方法を示した図である。
【
図20】本発明の第2実施形態の変形例による負極端子を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
(端子の構造)
本発明の端子のシール構造を、端子が、
図1に示すような、組電池100の負極端子20である場合を例に挙げて説明する。
【0023】
組電池100は、電気自動車(EV、electric vehicle)、ハイブリッド自動車(HEV、hybrid electric vehicle)、および住宅蓄電システムなどに用いられる大型の電池システムである。この組電池100は、
図1に示すように、複数のリチウムイオン電池1が、複数の平板状のバスバー101(点線で図示)によって電気的に接続されることによって構成されている。
【0024】
組電池100では、平面的に見てリチウムイオン電池1の短手方向(X方向)に沿って並ぶように、複数のリチウムイオン電池1が配置されている。また、組電池100では、平面的に見て短手方向と直交する長手方向(Y方向)の一方側(Y1側)に正極端子10が位置するとともに、Y方向の他方側(Y2側)に負極端子20が位置するリチウムイオン電池1(1a)と、Y2側に正極端子10が位置するとともに、Y1側に負極端子20が位置するリチウムイオン電池1(1b)とが、X方向に沿って交互に配置されている。
【0025】
また、所定のリチウムイオン電池1と隣接するリチウムイオン電池1の負極端子20と、所定のリチウムイオン電池1の正極端子10とが、X方向に延在する純Alから構成されるバスバー101のX方向の一方端に抵抗溶接により接合されている。これにより、リチウムイオン電池1の負極端子20は、バスバー101を介して、隣接するリチウムイオン電池1の正極端子10と接続されている。このようにして、複数のリチウムイオン電池1が直列に接続された組電池100が構成されている。
【0026】
なお、純Alからなるバスバー101を用いることによって、純Cuからなるバスバーを用いる場合と比べて、バスバー101を軽量化することができるので、複数のバスバー101を用いる組電池100全体を軽量化することが可能である。ここで、純Alとは、たとえば、JIS規格に規定されたA1000番台のアルミニウムを意味している。また、純Cuとは、たとえば、無酸素銅やタフピッチ銅、りん脱酸銅などのJIS規格に規定されたC1000番台の銅を意味している。
【0027】
<リチウム電池の構造>
リチウムイオン電池1は、
図2に示すように、略直方体形状の外観を有している。また、リチウムイオン電池1は、X方向およびY方向と直交する上下方向(Z方向)の一方側(Z1側)に配置される蓋部材2と、他方側(Z2側)に配置される電池ケース本体3とを備えている。この蓋部材2および電池ケース本体3は、共にNiめっき鋼板からなる。
【0028】
蓋部材2は、
図3に示すように、平板状に形成されている。また、蓋部材2には、Z方向に貫通するように、一対の挿入孔2aおよび挿入孔2bが設けられている。この一対の挿入孔2aおよび挿入孔2bは、蓋部材2のY方向に所定の間隔を隔てて形成されているとともに、蓋部材2のX方向の略中央に形成されている。また、一対の挿入孔2aおよび挿入孔2bには、それぞれ、正極端子10および負極端子20が挿入されるように構成されている。
【0029】
また、リチウムイオン電池1は、正極4a、負極4bおよびセパレータ4cがロール状に積層された発電素子4と、図示しない電解液とを備えている。正極4aは、正極活物質が塗布されたAl箔から構成されている。負極4bは、負極活物質が塗布されたCu箔から構成されている。セパレータ4cは、正極4aと負極4bとを絶縁する機能を有している。
【0030】
また、リチウムイオン電池1は、正極端子10と発電素子4の正極4aとを電気的に接続する正極集電体5と、負極端子20と発電素子4の負極4bとを電気的に接続する負極集電体6とを備えている。正極集電体5は、正極端子10に対応するようにY1側に配置されている。また、正極集電体5は、正極端子10が挿入される孔部5dが形成された接続部5aと、Z2側に延びる脚部5bと、脚部5bと複数の正極4aとを接続する接続板5cとを含んでいる。また、正極集電体5は、正極4aと同様に純Alから構成されている。
【0031】
負極集電体6は、負極端子20に対応するようにY2側に配置されている。また、負極集電体6は、負極端子20が挿入される孔部6dが形成された接続部6aと、Z2側に延びる脚部6bと、脚部6bと複数の負極4bとを接続する接続板6cとを含んでいる。また、負極集電体6は、負極4bと同様に純Cuから構成されている。
【0032】
また、蓋部材2の挿入孔2aおよび挿入孔2bには、それぞれ絶縁性を有するパッキン7およびパッキン8が嵌め込まれている。パッキン7には、正極端子10が挿入される孔部7aが形成されている。このパッキン7は、蓋部材2のZ1側の上面および挿入孔2aの内側面と正極端子10とが接触するのを抑制するとともに、蓋部材2のZ2側の下面と正極集電体5とが接触するのを抑制するように配置されている。同様に、パッキン8には、負極端子20が挿入される孔部8aが形成されている。パッキン8は、蓋部材2のZ1側の上面および挿入孔2bの内側面と負極端子20とが接触するのを抑制するとともに、蓋部材2のZ2側の下面と負極集電体6とが接触するのを抑制するように配置されている。パッキン7の孔部7aおよびパッキン8の孔部8aの径は、正極端子10および負極端子20が挿入されたときに隙間が生じないように調整されている。なお、パッキン8は特許請求の範囲に記載された「シール部材」の一例である。
【0033】
(正極端子の構造)
正極端子10は、
図3に示すように、Z方向に延びる円柱状の軸部11と、軸部11のZ1側の端部において、軸部11からX-Y平面方向に放射状の広がりを持つように形成された円環状の鍔部12とを有している。軸部11は、正極端子10のX方向およびY方向の略中央に位置するように構成されている。
【0034】
また、正極端子10は、正極集電体5およびバスバー101と同様に、純Alから構成されている。また、軸部11のZ2側の端部には凹部13が形成されている。また、正極端子10は、軸部11が蓋部材2の挿入孔2a(パッキン7の孔部7a)および正極集電体5の孔部5dに挿入された状態で、凹部13を形成する壁部を用いて正極集電体5に対してかしめられるとともに、かしめられた状態で、レーザ溶接により正極集電体5に接合されて固定されている。なお、軸部11、鍔部12および凹部13を有する正極端子10は、図示しないAl板材をプレス加工することにより形成されている。
【0035】
(負極端子の構造)
図3に示すように、負極端子20は、Z方向に延びる円柱状の軸部21と、軸部21のZ1側の端部において、軸部21からX-Y平面方向に放射状の広がりを持つように形成された円環状の鍔部22とを有している。軸部21は、負極端子20のX方向およびY方向の略中央に位置するように構成されている。なお、負極端子20は、特許請求の範囲の「電池用端子」の一例である。また、X-Y平面方向は、特許請求の範囲の「放射方向」の一例である。
【0036】
図4および
図5に示すように、軸部21のZ2側の端部には凹部23が形成されている。凹部23は、軸部21のZ2側においてZ2側に向かって延びるように形成された壁部24により囲まれた空間である。負極端子20は、軸部21が蓋部材2の挿入孔2b(パッキン8の孔部8a)および負極集電体6の孔部6dに挿入された状態で、凹部23を形成する壁部24を用いて負極集電体6に対してかしめられるとともに、かしめられた状態で、レーザ溶接により負極集電体6に接合されて固定されている。なお、凹部23の形状は特に限定されないが、たとえば、円形、楕円形、長方形の4つの角が丸くなった形状である角丸長方形などであってもよい。
【0037】
図4に示すように、負極端子20は、純AlまたはAl基合金から構成されたAl層31と、純CuまたはCu基合金から構成されたCu層32とがZ1側からこの順に積層された状態で圧延されて接合された、2層構造のクラッド材から構成される。そして、クラッド接合されているAl層31とCu層32との接合された界面において、Al層31とCu層32とは原子的(化学的)に接合されている。
図4に示す負極端子20において、Al層31とCu層32との界面の露出部33は、円環状の鍔部22の下面側(Z2側)に位置している。
【0038】
Al層31を構成する純Alとしては、A1050(JIS規格)、A1100(JIS規格)、A1200(JIS規格)などの約99質量%以上のAlを含む純Alなどを用いることが可能である。また、Al基合金としては、A5052などのA5000番台(JIS規格)を用いてよく、A3000番台(JIS規格)なども用いることが可能である。
【0039】
Cu層32を構成する純Cuとしては、C1000番台(JIS規格)の、いわゆる、無酸素銅、りん脱酸銅、タフピッチ銅などを用いてよく、結晶の粗大化を抑制するために微量のZrが添加されたC1510(JIS規格)なども用いることが可能である。また、Cu基合金としては、C2600などのC2000番台(JIS規格)などを用いることが可能である。
【0040】
図4に示す負極端子20は、Al層とCu層とが積層された状態で圧延されて接合された成形用クラッド材30(
図7参照)がプレス加工されることにより形成される。具体的には、Al層31側からCu層32側に延びる軸部21と、軸部21の側方から放射方向に広がる鍔部22とが形成されるとともに、軸部21のX2側においてZ2側に向かって延びるように壁部24が形成されることにより凹部23が形成される。
【0041】
負極端子20は、
図4に示すように、軸部21がAl層31側からCu層32側に突出して延びるT字形状を有するか、または、
図6に示すように、軸部21がAl層31側からCu層32側に突出して延びる第1軸部21aおよびCu層32側への突出して延びる長さt1よりも小さい突出長さt2でAl層31側に突出する第2軸部21bを有する十字形状を有する構成であってよい。十字形状を有する負極端子20は、第2軸部21bにバスバー101が接続されてもよい。
【0042】
図5に示すように、負極端子20は、パッキン8と負極集電体6とに挿入された状態でかしめられて負極集電体6に溶接される。これにより、リチウムイオン電池1には、軸部21と、負極集電体6の接続部6aとを接合する溶接部W1(細かい斜線の領域)が環状に形成されている。
【0043】
この場合、負極端子20が負極集電体6の孔部6dに挿入され、パッキン8に対向配置された鍔部22が、パッキン8に当接する。これにより、負極端子20のAl層31とCu層32との界面の露出部33がパッキン8に押圧された状態で覆われる。
【0044】
第1実施形態では、
図5に示すように、負極端子20のAl層31とCu層32との界面の露出部33は、鍔部22のCu層32のAl層31が接合される面と反対側の面である下面側(Z2側)に位置する。なお、軸部21の近くの鍔部22は、構造上十分な強度を確保するほうが好ましい。ここで、Al層31とCu層32とのうち、純CuまたはCu基合金により構成されたCu層32は、純AlまたはAl基合金により構成されたAl層31よりも硬い。そのため、構造上十分な強度を確保するためには、Al層31よりも硬いCu層32を厚くすることが好ましい。そこで、軸部21の近くの鍔部22を構成するCu層32の下面がAl層31に覆われることによりAl層31の厚みが大きくなり、相対的にCu層32の厚みが小さくなることを抑制するために、Al層31とCu層32との界面の露出部33が軸部21から鍔部22が突出する方向(X-Y平面方向)の鍔部22の先端側に位置することが好ましい。
【0045】
Al層31とCu層32との界面は、鍔部22の軸部21から突出する方向(X-Y平面方向)において、鍔部22の軸部21に接する部分と鍔部22の先端部との中間部から先端部にかけて下方(Z2側)へ湾曲している。下方(Z2側)へ湾曲しているのは、後述するプレス加工の際に、Cu層32の側面側(X-Y平面方向の先端側)に位置していたAl層31が、Cu層32の下面側(Z2側)へと移動し、Cu層32を被覆することに起因する。なお、Al層31とCu層32との界面は、鍔部22の軸部21から突出する方向(X-Y平面方向)において、鍔部22の軸部21に接する部分から、軸部21と接する部分と鍔部22の先端との中間部までの形状は特に限定されない。
【0046】
Al層31とCu層32との界面の露出部33の位置は、プレス加工前のクラッド材のAl層31とCu層32との厚み比率と、そのクラッド材をプレス加工する金型の構成およびその調整状態によって異なる。
図7に示すように、プレス加工機102の金型102aにセットした成形用クラッド材30をAl層31側(Z1側)からCu層32側(Z2側)に向ってプレスする。この場合、純CuまたはCu基合金により構成されるCu層32よりも軟らかい、純AlまたはAl基合金により構成されたAl層31は、Z2方向に変形するとともに、
図8に示すように、X-Y平面方向にも放射状に広がりながら変形する。そして、X-Y平面方向に放射状に広がったAl層31は、
図9に示すように、さらに変形してCu層32の側面側(X-Y平面方向の先端側)に入り込み、Cu層32の側面を覆うようになる。つまり、Al層31の厚さが大きくなればなるほど、X-Y平面方向に放射状に広がる体積が大きくなり、Cu層32の側面に入り込む体積と、鍔部22の下面側(Z2側)に入り込む体積が大きくなる。その結果、負極端子20の鍔部22の下面側(Z2側)において、Al層31とCu層32との界面の露出部33の位置が、負極端子20の軸心に向かって、軸部21側へ近づいていく。
【0047】
一方、プレス加工機102の金型102aの構成およびその調整状態によっても、負極端子20のAl層31とCu層32との界面の露出部33の位置が異なってくる。上記の通り、Al層31を構成する純AlまたはAl基合金はX-Y平面方向に放射状に広がる。このとき、たとえば、
図7に示す金型102aの内面と成形用クラッド材30の側面との間の隙間Gがより小さく調整されていると、X-Y平面方向に放射状に広がるAl層31の移動量がより小さくなる。そのため、Al層31が変形してCu層32の側面側(X-Y平面方向の先端側)に入り込む体積がより小さくなり、鍔部22の下面側(Z2側)に入り込む体積がより小さくなる。その結果、負極端子20の鍔部22の下面側(Z2側)において、Al層31とCu層32との界面の露出部33の位置が、軸部21からより遠ざかるようになり、鍔部22の先端側により近づいていく。
【0048】
(負極端子の製造方法)
次に、
図7~
図10を参照して、第1実施形態における負極端子20の製造方法について説明する。
【0049】
まず、
図10に示すように、純AlまたはAl基合金により構成される帯状のAl板材131と、純CuまたはCu基合金により構成される帯状のCu板材132とを準備する。Al板材131の厚みとCu板材132の厚みとの比率は、プレス加工後の負極端子20の構成、たとえば、Al層31とCu層32の分布形態を考慮して設定される。ここで、負極端子20のAl層31とCu層32との界面の露出部33を、鍔部22の下面側(Z2側)に配置するために、Al板材131の厚みがCu板材132の厚みよりも適度に大きく設定される。たとえば、Al板材131の厚みは、Cu板材132の厚みの1.1倍以上2倍以下に設定される。
【0050】
そして、帯状のAl板材131と帯状のCu板材132とをこの順に積層させた状態で、ローラRを用いて所定の圧下率で連続的に圧延を行う。これにより、Al層31とCu層32とがこの順で積層された状態で接合された2層構造のクラッド材を作製する。この際、帯状のAl板材131およびCu板材132の長手方向が、圧延方向になる。これにより、Al板材131と、Cu板材132とがこの順に積層された状態で互いに接合(圧延接合)された、帯状のクラッド材が作製される。なお、クラッド圧延のパス数は、適宜選択可能である。
【0051】
その後、必要に応じて中間圧延等を行った後に、焼鈍炉50を用いてクラッド材を所定の温度環境下で所定時間保持することによって、拡散焼鈍を行う。これにより、Al層31とCu層32とが接合された界面において適度な金属拡散を生じさせ、層間の接合強度を高くする。そして、必要に応じて、仕上げ圧延、形状矯正などを行い、打ち抜き加工を行う。
【0052】
その後、クラッド材を打ち抜き加工により所定の形状に打ち抜き、
図4または
図6に示す形態の負極端子20を作製するためのクラッド個片(成形用クラッド材30)を得る。そして、
図7に示すように、成形用クラッド材30に対してプレス加工を行う。具体的には、まず、プレス加工機102の金型102aのキャビティ内に、成形用クラッド材30を配置する。この金型102aのキャビティは、たとえば
図4に示す負極端子20の軸部21、鍔部22および凹部23に対応するキャビティ形状を有している。そして、
図8に示すように、Z1側から圧力を加えることによって、成形用クラッド材30に対してプレス加工を行う。このプレス加工により、Cu層32が軸部21に対応するZ2側のキャビティ内に移動される。ここで、Al層31を構成する純AlまたはAl基合金がCu層32を構成する純CuまたはCu基合金よりも硬度が小さく、変形しやすいため、鍔部22の下面に対応するCu層32のZ2側の表面において、Al層31は、X-Y平面方向における鍔部22の先端側に対応する側から軸部21に向かって、Cu層32を覆うように移動される。これにより、
図9に示すように、Al層31とCu層32との界面が鍔部22の下面側に対応する位置に形成される。その結果、軸部21、鍔部22および凹部23を備え、Al層31とCu層32との界面の露出部33が鍔部22の下面側(Z2側)に位置する、負極端子20が作製される。
【0053】
(負極端子の溶接工程)
次に、
図5および
図11~
図14を参照して、第1実施形態における負極端子20の負極集電体6への溶接工程の一例について説明する。
【0054】
まず、
図11に示すように、パッキン8が挿入孔2bに嵌め込まれた蓋部材2を準備する。そして、負極集電体6の接続部6aを蓋部材2のZ2側の面に当接させる。その状態で、負極集電体6のZ2側の面に、かしめ治具103の固定部材103aを当接させて固定する。その状態で、かしめ治具103の棒状部材103bをZ2側から挿入孔2b(パッキン8の孔部8a)に挿入する。そして、挿入された棒状部材103bのZ1側の端部を、負極端子20の凹部23内に嵌め込む。
【0055】
そして、かしめ治具103の押圧部材103cにより、負極端子20をZ1側から押圧する。これにより、
図12に示すように、負極端子20は、棒状部材103bとともに、Z2側に移動される。そして、押圧部材103cの押圧力により、負極端子20は、壁部24のZ2側の端部が挿入孔2bよりもZ2側に位置するまで移動される。続いて、負極端子20は、円筒状の壁部24が棒状部材103bの外周面に沿って変形されながらZ2側に移動される。続いて、負極端子20は、円筒状の壁部24がかしめ治具103の固定部材103aのZ1側の凹状表面に沿って変形されながらZ2側に移動される。その後、負極端子20の壁部24が、
図13に示すように曲げ変形されると、棒状部材103bの移動が停止する。その結果、負極端子20の壁部24が、
図13に示すような半円状の断面になるように折り曲げられる。これにより、負極端子20は、X-Y平面方向において放射状に折り曲げられた壁部24によって、負極集電体6にかしめられる。
【0056】
その後、
図14に示すように、かしめられた状態の負極端子20と負極集電体6とをレーザ溶接により溶接する。そして、負極端子20のX-Y平面方向において放射状に折り曲げられた壁部24の先端側の部分を、環状に溶接して接合することによって、
図5に示すように、リチウムイオン電池1の負極集電体6と接合する側である負極端子20のZ2側が、負極集電体6に接合される。このように、負極端子20を負極集電体6にかしめてから溶接することにより、負極端子20が負極集電体6に強固に固定されるとともに、負極端子20のAl層31とCu層32との界面の露出部33がパッキン8に対して十分に押圧されるため、負極端子20のシール構造の封止状態を維持することができる。
【0057】
<第1実施形態の効果>
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0058】
第1実施形態では、端子のシール構造は、負極端子20のAl層31とCu層32との界面の露出部33は、パッキン8(シール部材)に向かって押圧された状態で覆われている。これにより、負極端子20のAl層31とCu層32との界面の露出部33が覆われることにより、パッキン8と、負極端子20のAl層31とCu層32との界面の露出部33との間に隙間が形成されることを抑制することができる。その結果、Al層31とCu層32との界面の露出部33に水分が接触することを抑制することができるため、Al層31とCu層32との界面の露出部33から腐食することを抑制することができる。
【0059】
第1実施形態では、上面側(Z1側)にAl層31が配置され、下面側にCu層32が配置され、負極端子20の下面側に位置するAl層31とCu層32との界面の露出部33は、下面側に対向配置されたパッキン8に向かって押圧された状態で覆われている。これにより、パッキン8がAl層31とCu層32との界面の露出部33の下面側に対向配置されていることにより、Al層31とCu層32との界面の露出部33はパッキン8に向かって鉛直方向に押圧される。そのため、Al層31とCu層32との界面の露出部33がパッキン8に向かって押圧された状態を維持することが容易になるとともに、負極端子20の下面側に位置するAl層31とCu層32との界面の露出部33を効果的に覆うことができる。
【0060】
第1実施形態では、負極端子20は、Al層31側からCu層32側に延びる軸部21と、軸部21の側方から放射方向に広がる鍔部22と、を備え、鍔部22は、上面側にAl層31が配置され、下面側にCu層32が配置され、Al層31とCu層32との界面の露出部33が、鍔部22の下面側に位置する。これにより、軸部21および鍔部22を備える負極端子20であれば、軸部21および鍔部22を用いることにより、パッキン8に負極端子20を容易に固定することができる。これにより、負極端子20のAl層31とCu層32との界面の露出部33がパッキン8に押圧された状態を維持することが容易になるため、効果的に腐食を抑制することができる。
【0061】
第1実施形態では、負極端子20は、軸部21がAl層31側からCu層32側に突出して延びるT字形状、または、軸部21がAl層31側からCu層32側に突出して延びる第1軸部21aおよびCu層32側への突出して延びる長さよりも小さい突出長さでAl層31側に突出する第2軸部21bを有する十字形状を含む。これにより、負極端子20がT字形状を含む構成を有している場合、負極端子20のシール構造は、たとえば、パッキン8に軸部21の径より大きい孔部8aを設けて軸部21を挿入し、負極端子20の鍔部22をパッキン8に当接させる構成にすることができる。これにより、負極端子20の固定が容易になるとともに、負極端子20のAl層31とCu層32との界面の露出部33がパッキン8に押圧された状態を維持することが容易となる。また、負極端子20が十字形状を含む構成を有している場合、負極端子20のシール構造は、たとえば、パッキン8に第1軸部21aの径より大きい孔部8aを設けて第1軸部21aを挿入し、負極端子20の鍔部22をパッキン8に当接させる構成にすることができる。これにより、負極端子20の固定が容易になるとともに、負極端子20のAl層31とCu層32との界面の露出部33がパッキン8に押圧された状態を維持することが容易となる。加えて、たとえば、負極端子20の第2軸部21bにバスバー101などの部品を容易に接続することができるし、負極端子20の第2軸部21bを利用してバスバー101などの部品の位置決めを容易に行うことができる。
【0062】
第1実施形態では、負極端子20のシール構造は、Al層31とCu層32との界面の露出部33は、鍔部22の下面側であって、軸部21から鍔部22が突出する方向の鍔部22の先端側に位置している。これにより、負極端子20の軸部21に近い部分において、Al層31よりも硬いCu層32の厚みが大きくなるため、負極端子20の強度を向上させることができる。
【0063】
第1実施形態では、Al層31とCu層32との界面は、鍔部22の軸部21から突出する方向の中間部から先端部に向かって下面側へ湾曲している。これにより、負極端子20の鍔部22の突出方向の中間部のCu層32の厚みを先端部のCu層32の厚みよりも大きくすることができる。これにより、Al層31より硬度が大きいCu層32が鍔部22の中間部の位置において十分な厚みを有することにより、負極端子20の強度を向上させることができる。
【0064】
第1実施形態では、端子は、電池用端子である。これにより、Al層31とCu層32との界面の露出部33から腐食することを抑制することができる電池用端子を提供することができる。
【0065】
(第2実施形態)
次に、
図15および
図16を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。この第2実施形態では、上記第1実施形態の構成と異なり、Al層31とCu層32との界面の露出部331が側面に位置している。なお、第1実施形態と同じ箇所は同一の符号を付し説明を省略する。
【0066】
第2実施形態では、Al層31とCu層32との界面の露出部331が、X-Y平面方向においては端面となる、側面に位置している。なお、
図15では、Al層31とCu層32との界面は、断面視で直線状であるが、曲線状であってもよい。つまり、Al層31によって、Cu層32のX-Y平面方向における側面の一部が被覆されていてもよい。
【0067】
図16に示すように、第2実施形態では、蓋部材2に取り付けられるパッキン8とは別に、負極端子20の鍔部22のX-Y平面方向における側面側に対向配置されるパッキン81を備えている。この場合、パッキン81とパッキン8とは、個別の部材である。なお、パッキン81は特許請求の範囲に記載された「シール部材」の一例である。
【0068】
パッキン81は、負極端子20の鍔部22を挿入するための穴を有する。パッキン81の穴形状は、負極端子20の鍔部22を挿入(圧入)することにより、負極端子20とパッキン81との間がしまり嵌めされ、負極端子20がパッキン81に向かって押圧された状態になるように構成されている。
【0069】
第2実施形態における負極端子20の製造方法は、第1実施形態とほぼ同じである。ただし、第1実施形態では、
図7に示す金型102aの内面と成形用クラッド材30の側面との間の隙間Gにより、Al層31を構成する純AlまたはAl基合金がCu層32のZ2側に入り込むが、第2実施形態では、たとえば、金型102aの内面と成形用クラッド材30の側面との間の隙間Gをより小さく設定する。これにより、プレス加工時に、Al層31を構成する純AlまたはAl基合金がCu層32のZ2側に入り込むことを抑制することができる。
【0070】
なお、第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0071】
第2実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0072】
第2実施形態では、上記第1実施形態と同様に、負極端子20そのものによりパッキン81に向かって押圧された状態で、Al層31とCu層32との界面の露出部33が覆われることにより、パッキン81と、Al層31とCu層32との界面の露出部331との間に隙間が形成されることを抑制することができる。その結果、Al層31とCu層32との界面の露出部331に水分が接触することを抑制することができるため、Al層31とCu層32との界面の露出部331から腐食することを抑制することができる。
【0073】
また、第2実施形態では、Al層31とCu層32との界面の露出部331は、上面側にAl層31が配置され、下面側にCu層32が配置され、負極端子20の鍔部22のX-Y平面方向における側面側に位置するAl層31とCu層32との界面の露出部331は、鍔部22のX-Y平面方向における側面側に対向配置されたパッキン81に向かって押圧された状態で覆われている。これにより、負極端子20のAl層31とCu層32との界面の露出部33が鍔部22のX-Y平面方向における側面にある場合でも、Al層31とCu層32との露出部33が水分に接触することを抑制することができる。
【0074】
(第3実施形態)
次に、
図17~
図19を参照して、本発明の第3実施形態について説明する。この第3実施形態では、上記第1実施形態の構成に加えて、負極端子200がさらにNi層34を備える3層のクラッド材である場合について説明する。なお、第1実施形態と同じ箇所は同一の符号を付し説明を省略する。
【0075】
Ni層34は、純NiまたはNi基合金から構成される。純Niとは、JIS規格に規定されたNW2200やNW2201などのニッケルを用いることができる。また、Ni基合金としては、JIS規格に規定されたNW4400番台のNi-Cu系合金を用いることができる。
【0076】
負極端子200は、
図17に示すように、下面側(Z2側)にNi層34が配置され、Al層31とNi層34との間にCu層32が配置されていることにより、Al層31とNi層34とは離間している。負極端子200のAl層31とCu層32との界面の露出部33は、負極端子200の鍔部22の下面側(Z2側)に位置する。また、負極端子200のCu層32とNi層34との界面の露出部332は、負極端子200の鍔部22の下面側(Z2側)に位置する。
【0077】
(負極端子の製造方法)
負極端子200は、Al層31とCu層32とNi層34とがこの順に積層して接合しているクラッド材を作製する前に、
図19に示すように、軟化焼鈍炉51によりNi板材133を十分に軟化させておく。Ni板材133に対して軟化焼鈍を行うことにより、Ni板材133を十分に軟化させると、Al板材131およびCu板材132(
図10参照)の硬度と、Ni板材133の硬度との差が小さくなる。これにより、クラッド圧延した際に、Ni板材133がAl板材131およびCu板材132の延びに追従できなくなって、Ni層34が破れることを抑制することができる。また、Ni層34の厚みをAl層31およびCu層32の厚みよりも小さくするために、Ni板材133の厚みをAl板材131およびCu板材132の厚みよりも小さくする。もし、Ni板材133の厚みが大きすぎると、Ni板材133を予め十分に軟化させたとしても、Ni層34よりもCu層32が軟らかくなりプレス加工によりZ2側に延びて軸部21を形成するときに、Cu層32のZ2側の延びにNi層34が追従できなくなって破断するおそれがある。そこで、Ni板材133の厚みを適度に小さくすることにより、Ni層34の機械的強度を相対的に小さくして延びやすくし、Ni層34が破れることを抑制する。なお、それ以外の製造方法は第1実施形態と同じである。
【0078】
なお、第3実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0079】
第3実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0080】
第3実施形態では、
図18に示すように、上記第1実施形態と同様に、負極端子200そのものによりパッキン8に向かって押圧された状態で、Al層31とCu層32との界面の露出部33が覆われることにより、パッキン8と、Al層31とCu層32との界面の露出部33との間に隙間が形成されることを抑制することができる。その結果、Al層31とCu層32との界面の露出部33に水分が接触することを抑制することができるため、Al層31とCu層32との界面の露出部33から腐食することを抑制することができる。
【0081】
また、第3実施形態では、負極端子200は、Al層31と、Cu層32と、純NiまたはNi基合金からなるNi層34とが、この順に積層された状態で接合されている。これにより、Cu層32よりも硬いNi層34により負極端子200の強度がさらに向上するとともに、Cu層32よりも耐食性のよいNi層34により負極端子200のCu層32側の耐食性を向上させることができる。
【0082】
また、第3実施形態では、負極端子200は、上面側(Z1側)にAl層31が配置され、下面側(Z2側)にNi層34が配置され、Al層31とNi層34との間はCu層32が配置されて離間され、Al層31とCu層32との界面の露出部33は、負極端子200の鍔部22の下面側(Z2側)に位置し、Cu層32とNi層34との界面の露出部332は、負極端子200の鍔部22の下面側(Z2側)に位置する。これにより、負極端子200の下面側(Z2側)の表面に配置されるため、Cu層32よりも溶接性のよいNi層34を介して他の部品と容易に溶接することができる。なお、第3実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0083】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0084】
たとえば、第1~第3実施形態では軸部に凹部を設けることにより、かしめて負極集電体に溶接する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、軸部に凹部を形成しなくてもよく、また、かしめずに負極集電体に溶接してもよい。
【0085】
また、第1~第3実施形態では、端子が負極端子である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、端子は、電池各種、電気・電子機器各種、コネクタなどの用途に向けた端子であってもよい。
【0086】
また、第1~第3実施形態では、端子に鍔部と軸部とを設ける例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、鍔部と軸部とを設けなくてもよい。この場合、クラッド材をプレス加工することなく端子を作製してもよい。
【0087】
また、第1~第3実施形態では、2層構造または3層構造のクラッド材から負極端子を構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、4層以上のクラッド材により電池用端子を構成してもよい。
【0088】
また、第2実施形態では、
図16に示すように、蓋部材2に設けられるパッキン8と、負極端子20の鍔部22のX-Y平面方向における側面側に対向配置されるパッキン81とが、個別の部材である例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、
図20に示すように、蓋部材2に設けられるパッキン部分と、Al層31とCu層32との界面の露出部331を覆うパッキン部分とが一体となった構成を有する、パッキン82を用いてもよい。なお、パッキン82は特許請求の範囲に記載された「シール部材」の一例である。
【0089】
また、第3実施形態では、Al層とCu層との界面の露出部と、Cu層とNi層との界面の露出部とが、ともに、負極端子の鍔部の下面側(Z2側)に位置する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、Al層とCu層との界面の露出部が負極端子の鍔部のX-Y平面方向におけるは側面側に位置していてもよい。この場合、Ni層を設けること以外の構成は第2実施形態と同じである。
【符号の説明】
【0090】
8、81、82 パッキン(シール端子)
20、200 負極端子(端子)
21 軸部
22 鍔部
31 Al層
32 Cu層
33 露出部
34 Ni層