(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】鉱石選別方法及びその装置
(51)【国際特許分類】
B07C 5/36 20060101AFI20220817BHJP
B07C 5/342 20060101ALI20220817BHJP
G01N 21/84 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
B07C5/36
B07C5/342
G01N21/84 Z
(21)【出願番号】P 2021041273
(22)【出願日】2021-03-15
(62)【分割の表示】P 2016172900の分割
【原出願日】2016-09-05
【審査請求日】2021-03-15
(31)【優先権主張番号】P 2015213173
(32)【優先日】2015-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095223
【氏名又は名称】上田 章三
(74)【代理人】
【識別番号】100085040
【氏名又は名称】小泉 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】杉原 淳
【審査官】小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開昭53-142281(JP,A)
【文献】特開平04-012925(JP,A)
【文献】実開平07-035426(JP,U)
【文献】特開2014-233644(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B07C 5/36
B07C 5/342
G01N 21/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
岩石粉砕物から目的鉱物の含有比率にて予め決められた鉱石の良品・不良品を選別するに際し、
複数の張架ロールに掛け渡されて循環移動し、前記岩石粉砕物を搬送するベルト状搬送体を用い、前記ベルト状搬送体の搬送方向の下流端から前記岩石粉砕物を予め決められた放物線状の落下軌跡で落下させるように供給する供給工程と、
前記供給工程で供給された前記岩石粉砕物を落下軌跡の途中で重力方向に交差する方向から撮像する撮像工程と、
前記撮像工程による撮像結果に基づいて前記撮像工程を経た岩石粉砕物の中から鉱石の良品・不良品を選別し、選別された鉱石の良品・不良品の落下軌跡を異ならせるように、いずれか一方の対象物に向けて重力方向に交差する方向から空気を吹き付ける選別工程と、
を備え、
前記供給工程は、前記ベルト状搬送体の搬送方向の下流端に位置する前記張架ロールに掛け渡された
湾曲部では、前記岩石粉砕物が前記
湾曲部の周面の曲率に
沿った落下軌跡を描いて前記
湾曲部との接触部位では滑らずに
食い込み量0の状態で搬送されることを特徴とする鉱石選別方法。
【請求項2】
岩石粉砕物から目的鉱物の含有比率にて予め決められた鉱石の良品・不良品を選別するに際し、
複数の張架ロールに掛け渡されて循環移動し、前記岩石粉砕物を搬送するベルト状搬送体を用い、前記ベルト状搬送体の搬送方向の下流端から前記岩石粉砕物を予め決められた放物線状の落下軌跡で落下させるように供給する供給工程と、
前記供給工程で供給された前記岩石粉砕物を落下軌跡の途中で重力方向に交差する方向から撮像する撮像工程と、
前記撮像工程による撮像結果に基づいて前記撮像工程を経た岩石粉砕物の中から鉱石の良品・不良品を選別し、選別された鉱石の良品・不良品の落下軌跡を異ならせるように、いずれか一方の対象物に向けて重力方向に交差する方向から空気を吹き付ける選別工程と、
を備え、
前記供給工程は、前記ベルト状搬送体の搬送方向の下流端に位置する前記張架ロールに掛け渡された
湾曲部では、前記岩石粉砕物が前記
湾曲部の周面の曲率
未満の曲率に沿った落下軌跡を描いて前記
湾曲部との接触部位では滑らずに
食い込み量無しの状態で搬送されることを特徴とする鉱石選別方法。
【請求項3】
岩石粉砕物から目的鉱物の含有比率にて予め決められた鉱石の良品・不良品を選別する鉱石選別装置であって、
前記岩石粉砕物を予め決められた放物線状の落下軌跡で落下させるように供給する供給装置と、
前記供給装置で供給された前記岩石粉砕物を落下軌跡の途中で重力方向に交差する方向から撮像する撮像器具と、
前記撮像器具による撮像結果に基づいて前記岩石粉砕物の中から鉱石の良品・不良品を判別する判別装置と、
前記判別装置による判別結果に基づいて前記撮像器具による撮像位置よりも下方に落下した鉱石の良品・不良品の落下軌跡を異ならせるように、いずれか一方の対象物に向けて重力方向に交差する方向から空気を吹き付ける空気吹付器具と、
を備え、
前記供給装置は、複数の張架ロールに掛け渡されて循環移動し、前記岩石粉砕物を搬送するベルト状搬送体と、前記ベルト状搬送体の搬送方向の下流端に位置する前記張架ロールに掛け渡された
湾曲部では、前記岩石粉砕物が前記
湾曲部の周面の曲率に
沿った落下軌跡を描いて前記
湾曲部との接触部位では滑らずに
食い込み量0の状態で搬送されるように、前記ベルト状搬送体を予め決められた搬送速度で駆動する駆動装置と、を有することを特徴とする鉱石選別装置。
【請求項4】
岩石粉砕物から目的鉱物の含有比率にて予め決められた鉱石の良品・不良品を選別する鉱石選別装置であって、
前記岩石粉砕物を予め決められた放物線状の落下軌跡で落下させるように供給する供給装置と、
前記供給装置で供給された前記岩石粉砕物を落下軌跡の途中で重力方向に交差する方向から撮像する撮像器具と、
前記撮像器具による撮像結果に基づいて前記岩石粉砕物の中から鉱石の良品・不良品を判別する判別装置と、
前記判別装置による判別結果に基づいて前記撮像器具による撮像位置よりも下方に落下した鉱石の良品・不良品の落下軌跡を異ならせるように、いずれか一方の対象物に向けて重力方向に交差する方向から空気を吹き付ける空気吹付器具と、
を備え、
前記供給装置は、複数の張架ロールに掛け渡されて循環移動し、前記岩石粉砕物を搬送するベルト状搬送体と、前記ベルト状搬送体の搬送方向の下流端に位置する前記張架ロールに掛け渡された
湾曲部では、前記岩石粉砕物が前記
湾曲部の周面の曲率
未満の曲率に沿った落下軌跡を描いて前記
湾曲部との接触部位では滑らずに
食い込み量無しの状態で搬送されるように、前記ベルト状搬送体を予め決められた搬送速度で
食い込み量0の近傍を許容範囲として駆動する駆動装置と、を有することを特徴とする鉱石選別装置。
【請求項5】
請求項4に記載の鉱石選別装置において、
前記駆動装置は、前記ベルト状搬送体の搬送速度として、前記食い込み量0の搬送速度に対し20%未満の増加分を持つ搬送速度を選定することを特徴とする鉱石選別装置。
【請求項6】
請求項
3又は4に記載の鉱石選別装置において、
前記判別装置は、前記岩石粉砕物の撮像結果から鉱石に起因する濃淡情報を抽出し、この濃淡情報の割合が予め決められた閾値以上であるときに鉱石の良品であると判別することを特徴とする鉱石選別装置。
【請求項7】
請求項
3又は4に記載の鉱石選別装置において、
前記判別装置は、前記撮像器具による撮像結果に基づいて空気の吹付対象物である鉱石に対する空気の吹付開始時間及び空気の吹付対象物である鉱石の重力方向に面した投影面積を算出することで、前記空気吹付器具による空気の吹付動作の開始及び空気吹付時間を調整することを特徴とする鉱石選別装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、岩石粉砕物から鉱石の良品・不良品を選別する鉱石選別方法に係り、特に、岩石粉砕物の落下過程にて鉱石の良品・不良品を選別する鉱石選別方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来における鉱石選別方法としては、例えば選別対象として金鉱石を例に挙げると、金鉱石を破砕した後、適当な粒度に微粉砕し、得られた鉱粒をシアン化物水溶液中に懸濁させて金を浸出するいわゆる青化法によって金を脈石鉱物や硫化鉱物から分離・濃縮する方法や、比重選鉱および浮遊選鉱によって金鉱物を脈石鉱物や硫化鉱物から分離・濃縮した後に、さらに青化法により金を分離・濃縮する方法が採られている。
しかし、これらの方法を行うには、鉱石を数十ミクロンから数百ミクロンに粉砕しなければならず、非常に莫大なエネルギを必要とするものである。すなわち、採掘されたままの鉱石中には、金銀をほとんど含まない母岩の塊が多く含まれており、このような母岩をそのように微粒子に粉砕することは、それだけエネルギを無駄に消費することになる。また、母岩には粘土鉱物が多く含まれていることから、青化法、銅精錬の溶剤、浮遊選鉱法のいずれの方法においても粘土鉱物が悪影響を及ぼすことは一般によく知られていることである。
【0003】
元来、金銀を含有している石英は白色であり、灰色もしくは黒色の母岩とは目視で容易に判別できるものである。したがって、粗破砕物から母岩を取り除く方法として、光学検査を行い、母岩かどうか区別する鉱石選別装置による自動選別が知られている。
上記のような鉱石選別装置は、例えば特許文献1に記載されているように、ベルトコンベアで物品を高速にて定速搬送させ、ベルトコンベアのプーリ端から、真横に飛び出させ、プーリ端の飛び出し直後の水平飛行状態において画像検査し、その判定結果を電磁弁で制御するエアノズル列を使用し落下飛行の軌道を変えることで物品の良否を選別する技術を適用することが可能である。
【0004】
また、選別対象が鉱石ではないが、穀粒の選別装置としては例えば特許文献2~4に記載のものが既に知られている。
特許文献2には、振動供給装置から流樋を介して供給された異種粒混入穀粒を、光源と受光素子とのなす光電装置の間隙に対しほぼ一定の軌跡をなして通過させ、異種粒混入穀粒に対し光源から投光した光線が穀粒を透過した光線を受光素子が受光し、その光量の程度によって受光素子の信号より、間隙を通過した穀粒を吹散できる位置に設けた吹管の開閉弁を開閉作動する電磁石の制御装置と受光素子とを連結した穀粒色彩選別装置が開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、一対のローラにより回動可能に横設された原料用の搬送ベルトの搬送始端側に振動供給樋を設ける一方、搬送ベルトの搬送終端から落下する原料の軌跡の近傍に検出部を設けるとともに、この検出部と連絡する制御部からの信号によって作動するエジェクタを前記軌跡に臨設してなる粒状物の色彩選別機であって、搬送ベルトの搬送面を、搬送終端側よりも搬送始端側を高位とすべく傾斜させて設けた粒状物色彩選別機が開示されている。
更に、特許文献4には、原料供給ホッパ及び再選用ホッパの直下にロータリバルブが設けられており、さらにロータリバルブの下方にはベルトコンベアが水平面上に配置されており、穀粒は、ロータリバルブからベルトコンベアへ放出されて搬送され、終端部から自由落下して検査・選別位置へ供給される穀粒選別機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-55274号公報(発明を実施するための最良の形態,
図1)
【文献】特開昭55-56874号公報(発明の詳細な説明,
図2)
【文献】特開平8-108146号公報(実施例,
図1)
【文献】特開平9-122606号公報(発明の実施の形態,
図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、例えば特許文献1にあっては、高速搬送による水平飛行にて物品である鉱石の良否を選別する方式であるため、水平方向に対して装置の設置スペースを広く確保する必要があるばかりか、画像検査用カメラとエアノズル列との間の水平距離に対して鉱石を水平飛行させるように搬送制御する必要がある。
更に、特許文献1にあっては、処理量を稼ぐためにベルトコンベア上に鉱石を密な状態で供給して搬送させると、鉱石同士が上下に重なることがあり、上下に重なると下に隠れた鉱石が画像に映らなくなり、鉱石の選別性能が落ちる。また、鉱石同士が重ならないが隣り合っているとエアノズルによる撃ち落としで、撃つべきでない鉱石まで撃ち落とす確率が高くなり、選鉱性能が落ちる。そのため鉱石同士が隣り合わず且つ重ならないように、散らばった状態で搬送させる必要があり、処理量を稼ぎづらいという懸念がある。
【0008】
また、特許文献2,3にあっては、穀粒の透過情報に基づいて穀粒を選別し、異種粒を吹散させる方式であるが、穀粒は比較的サイズが揃っていて、流樋を滑らせて落下させても、落下速度、落下軌跡、落下時の回転速度が安定するのに対し、本願の選別対象である鉱石が含まれる岩石粉砕物は、サイズが揃っておらず、形状も多様であることから、同様な方式を採用すると、流樋の滑り方が滑り抵抗の違いにより安定しなかったり、転がるように滑り落ちたりなどして落下速度、落下軌跡、落下時の回転速度が不安定になり易く、鉱石の選別性能が低下する懸念がある。
また、特許文献4にあっては、穀粒を規則的に均一かつ安定して検査位置へと送り込み、更に、検査位置へ送り込む穀粒の供給量を変更することができる。これにより、穀粒が不良品であるか否かの検査・選別を高い精度で効率良く行うことができる。しかしながら、本願の選別対象である鉱石が含まれる岩石粉砕物は、サイズが揃っておらず、形状も多様であることから、同様な方式をそのまま採用することは困難である。
【0009】
本発明が解決しようとする技術的課題は、コンパクトな設備構成で、複雑な搬送制御を不要としてベルト状搬送体の搬送方向の下流端から岩石粉砕物を安定した落下軌跡に沿って鉱石の撮像・選別ステージに供給し、鉱石を選別可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、岩石粉砕物から目的鉱物の含有比率にて予め決められた鉱石の良品・不良品を選別するに際し、複数の張架ロールに掛け渡されて循環移動し、前記岩石粉砕物を搬送するベルト状搬送体を用い、前記ベルト状搬送体の搬送方向の下流端から前記岩石粉砕物を予め決められた放物線状の落下軌跡で落下させるように供給する供給工程と、前記供給工程で供給された前記岩石粉砕物を落下軌跡の途中で重力方向に交差する方向から撮像する撮像工程と、前記撮像工程による撮像結果に基づいて前記撮像工程を経た岩石粉砕物の中から鉱石の良品・不良品を選別し、選別された鉱石の良品・不良品の落下軌跡を異ならせるように、いずれか一方の対象物に向けて重力方向に交差する方向から空気を吹き付ける選別工程と、を備え、前記供給工程は、前記ベルト状搬送体の搬送方向の下流端に位置する前記張架ロールに掛け渡された湾曲部では、前記岩石粉砕物が前記湾曲部の周面の曲率に沿った落下軌跡を描いて前記湾曲部との接触部位では滑らずに食い込み量0の状態で搬送されることを特徴とする鉱石選別方法である。
請求項2に係る発明は、岩石粉砕物から目的鉱物の含有比率にて予め決められた鉱石の良品・不良品を選別するに際し、複数の張架ロールに掛け渡されて循環移動し、前記岩石粉砕物を搬送するベルト状搬送体を用い、前記ベルト状搬送体の搬送方向の下流端から前記岩石粉砕物を予め決められた放物線状の落下軌跡で落下させるように供給する供給工程と、前記供給工程で供給された前記岩石粉砕物を落下軌跡の途中で重力方向に交差する方向から撮像する撮像工程と、前記撮像工程による撮像結果に基づいて前記撮像工程を経た岩石粉砕物の中から鉱石の良品・不良品を選別し、選別された鉱石の良品・不良品の落下軌跡を異ならせるように、いずれか一方の対象物に向けて重力方向に交差する方向から空気を吹き付ける選別工程と、を備え、前記供給工程は、前記ベルト状搬送体の搬送方向の下流端に位置する前記張架ロールに掛け渡された湾曲部では、前記岩石粉砕物が前記湾曲部の周面の曲率未満の曲率に沿った落下軌跡を描いて前記湾曲部との接触部位では滑らずに食い込み量無しの状態で搬送されることを特徴とする鉱石選別方法である。
【0011】
請求項3に係る発明は、岩石粉砕物から目的鉱物の含有比率にて予め決められた鉱石の良品・不良品を選別する鉱石選別装置であって、前記岩石粉砕物を予め決められた放物線状の落下軌跡で落下させるように供給する供給装置と、前記供給装置で供給された前記岩石粉砕物を落下軌跡の途中で重力方向に交差する方向から撮像する撮像器具と、前記撮像器具による撮像結果に基づいて前記岩石粉砕物の中から鉱石の良品・不良品を判別する判別装置と、前記判別装置による判別結果に基づいて前記撮像器具による撮像位置よりも下方に落下した鉱石の良品・不良品の落下軌跡を異ならせるように、いずれか一方の対象物に向けて重力方向に交差する方向から空気を吹き付ける空気吹付器具と、を備え、前記供給装置は、複数の張架ロールに掛け渡されて循環移動し、前記岩石粉砕物を搬送するベルト状搬送体と、前記ベルト状搬送体の搬送方向の下流端に位置する前記張架ロールに掛け渡された湾曲部では、前記岩石粉砕物が前記湾曲部の周面の曲率に沿った落下軌跡を描いて前記湾曲部との接触部位では滑らずに食い込み量0の状態で搬送されるように、前記ベルト状搬送体を予め決められた搬送速度で駆動する駆動装置と、を有することを特徴とする鉱石選別装置である。
請求項4に係る発明は、岩石粉砕物から目的鉱物の含有比率にて予め決められた鉱石の良品・不良品を選別する鉱石選別装置であって、前記岩石粉砕物を予め決められた放物線状の落下軌跡で落下させるように供給する供給装置と、前記供給装置で供給された前記岩石粉砕物を落下軌跡の途中で重力方向に交差する方向から撮像する撮像器具と、前記撮像器具による撮像結果に基づいて前記岩石粉砕物の中から鉱石の良品・不良品を判別する判別装置と、前記判別装置による判別結果に基づいて前記撮像器具による撮像位置よりも下方に落下した鉱石の良品・不良品の落下軌跡を異ならせるように、いずれか一方の対象物に向けて重力方向に交差する方向から空気を吹き付ける空気吹付器具と、を備え、前記供給装置は、複数の張架ロールに掛け渡されて循環移動し、前記岩石粉砕物を搬送するベルト状搬送体と、前記ベルト状搬送体の搬送方向の下流端に位置する前記張架ロールに掛け渡された湾曲部では、前記岩石粉砕物が前記湾曲部の周面の曲率未満の曲率に沿った落下軌跡を描いて前記湾曲部との接触部位では滑らずに食い込み量無しの状態で搬送されるように、前記ベルト状搬送体を予め決められた搬送速度で食い込み量0の近傍を許容範囲として駆動する駆動装置と、を有することを特徴とする鉱石選別装置である。
【0012】
請求項5に係る発明は、請求項4に係る鉱石選別装置において、前記駆動装置は、前記ベルト状搬送体の搬送速度として、前記食い込み量0の搬送速度に対し20%未満の増加分を持つ搬送速度を選定することを特徴とする鉱石選別装置である。
請求項6に係る発明は、請求項3又は4に係る鉱石選別装置において、前記判別装置は、前記岩石粉砕物の撮像結果から鉱石に起因する濃淡情報を抽出し、この濃淡情報の割合が予め決められた閾値以上であるときに鉱石の良品であると判別することを特徴とする鉱石選別装置である。
請求項7に係る発明は、請求項3又は4に係る鉱石選別装置において、前記判別装置は、前記撮像器具による撮像結果に基づいて空気の吹付対象物である鉱石に対する空気の吹付開始時間及び空気の吹付対象物である鉱石の重力方向に面した投影面積を算出することで、前記空気吹付器具による空気の吹付動作の開始及び空気吹付時間を調整することを特徴とする鉱石選別装置である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1又は2に係る発明によれば、コンパクトな設備構成で、複雑な搬送制御を不要としてベルト状搬送体の搬送方向の下流端から岩石粉砕物を安定した落下軌跡に沿って鉱石の撮像・選別ステージに供給し、鉱石の良品・不良品を選別することができる。
請求項3又は4に係る発明によれば、コンパクトな設備構成で、複雑な搬送制御を不要としてベルト状搬送体の搬送方向の下流端から岩石粉砕物を安定した落下軌跡に沿って鉱石の撮像・選別ステージに供給し、鉱石の良品・不良品を選別することが可能な鉱石選別方法を具現化することができる。
特に、請求項1又は3に係る発明によれば、張架ロールに掛け渡されたベルト状搬送体の湾曲部に対し、食い込み量0の状態で、ベルト状搬送体の搬送方向下流端から岩石粉砕物を落下時間、飛び出し量や回転量のばらつきを抑制して供給することができる。
請求項2又は4に係る発明によれば、張架ロールに掛け渡されたベルト状搬送体の湾曲部に対し、食い込み量無しの状態で食い込み量0の近傍を許容範囲として、ベルト状搬送体の搬送方向下流端から岩石粉砕物を落下時間、飛び出し量や回転量のばらつきを抑制して供給することができる。
請求項5に係る発明によれば、張架ロールに掛け渡されたベルト状搬送体の湾曲部に対し、食い込み量無しの状態で食い込み量0の近傍の許容範囲を容易に選定することができる。
請求項6に係る発明によれば、選別対象である鉱石が濃淡特性を有する態様において、良品・不良品を正確に判別することができる。
請求項7に係る発明によれば、空気の吹付対象物に対して空気吹付器具による空気の吹き付けを無駄なく実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明が適用された鉱石選別方法及びその装置の実施の形態の概要を示す説明図である。
【
図2】実施の形態1に係る鉱石選別装置の全体構成を示す説明図である。
【
図3】実施の形態1に係る鉱石選別装置の要部を示す説明図である。
【
図4】実施の形態1に係る鉱石選別装置の制御系を示す説明図である。
【
図5】実施の形態1に係る鉱石選別処理過程を示すフローチャートである。
【
図6】(a)はカメラによる撮像結果から鉱石であるか否かを判別する手法を示す説明図、(b)はカメラによる撮像結果からの判別例を示す説明図である。
【
図7】(a)はカメラ、ノズルアレイの前を通過する鉱石の速度v(v
1,v
2)、落下経過時間t(t
1,t
2)の算出例を示す説明図、(b)はカメラによる撮像結果から鉱石の大きさの算出例を示す説明図、(c)は吹付ノズルによる空気吹付時間の算出例を示す説明図である。
【
図8】(a)は吹付けノズルによる空気の吹付けに伴う鉱石の挙動を示す説明図、(b)は鉱石の落下に伴う吹付けノズルによる空気の吹付け動作を模式的に示す説明図である。
【
図9】実施の形態2に係る鉱石選別装置の要部を示す説明図である。
【
図10】(a)は実施の形態2で用いられる2列型吹付けノズルによる空気の吹付け動作の一例を示す説明図、(b)は同吹付けノズルによる空気の吹付け動作の他の例を示す説明図、(c)は鉱石の落下に伴う2列型吹付けノズルによる空気の吹付け動作を模式的に示す説明図である。
【
図11】(a)は変形の形態で用いられる3列型吹付けノズルによる空気の吹付け動作の一例を示す説明図、(b)~(d)は同吹付けノズルによる空気の吹付け動作の他の例を示す説明図である。
【
図12】(a)は実施例1に係る鉱石選別装置においてベルトコンベアから落下した鉱石の挙動を示す説明図、(b)はベルトコンベア方式と振動フィーダ方式とによる落下時の鉱石の挙動を対比した説明図である。
【
図13】実施例1に係る鉱石選別装置においてベルトコンベアから落下する鉱石の落下時間と、ベルトコンベアの搬送速度との関係を示す説明図である。
【
図14】実施例1に係る鉱石選別装置においてベルトコンベアから落下する鉱石の飛び出し量と、ベルトコンベアの搬送速度との関係を示す説明図である。
【
図15】実施例1に係る鉱石選別装置においてベルトコンベアから落下する鉱石の回転量と、ベルトコンベアの搬送速度との関係を示す説明図である。
【
図16】実施例1で用いられるベルトコンベア(ロール径:200mm)の各搬送速度におけるコンベア先端からの鉱石の落下軌跡のシミュレーションを示す説明図である。
【
図17】実施例1で用いられるベルトコンベア(ロール径:300mm)の各搬送速度におけるコンベア先端からの鉱石の落下軌跡のシミュレーションを示す説明図である。
【
図18】実施例2-1に係る鉱石選別装置(ベルトコンベア搬送面から空気吹付け位置までの落差550mm)における空気吹付けに伴う飛距離の分布を示す説明図である。
【
図19】実施例2-2に係る鉱石選別装置(ベルトコンベア搬送面から空気吹付け位置までの落差750mm)における空気吹付けに伴う飛距離の分布を示す説明図である。
【
図20】実施例2-1に係る鉱石選別装置における落差550mm中の鉱石の回転量の分布を示す説明図である。
【
図21】実施例2-2に係る鉱石選別装置における落差750mm中の鉱石の回転量の分布を示す説明図である。
【
図22】実施例3に係る鉱石選別装置における空気吹付け条件の違いに伴う飛距離の変化を示す説明図である。
【
図23】実施例3に係る鉱石選別装置における空気吹付け条件の違いに伴う鉱石の落下角度の変化を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
◎実施の形態の概要
図1は本発明が適用された鉱石選別方法及びその装置の実施の形態の概要を示す。
同図において、鉱石選別方法は、岩石粉砕物1から目的鉱物の含有比率にて予め決められた鉱石の良品1a・不良品1bを選別するに際し、複数の張架ロール9aに掛け渡されて循環移動し、岩石粉砕物1を搬送するベルト状搬送体6を用い、ベルト状搬送体6の搬送方向の下流端から岩石粉砕物1を予め決められた放物線状の落下軌跡wで落下させるように供給する供給工程Aと、供給工程Aで供給された岩石粉砕物1を落下軌跡wの途中で重力方向に交差する方向から撮像する撮像工程Bと、撮像工程Bによる撮像結果に基づいて撮像工程Bを経た岩石粉砕物1の中から鉱石の良品1a・不良品1bを選別し、選別された鉱石の良品1a・不良品1bの落下軌跡w(本例ではw1,w2)を異ならせるように、いずれか一方の対象物(
図1では鉱石の良品1aを例示)に向けて重力方向に交差する方向から空気を吹き付ける選別工程Cと、を備え、供給工程Aは、ベルト状搬送体6の搬送方向の下流端に位置する張架ロール9aに掛け渡された
湾曲部では、岩石粉砕物1が
湾曲部の周面の曲率に近い曲率の落下軌跡wを描いて
湾曲部との接触部位では滑らずに搬送されるものである。
【0016】
本例では、鉱石の良品1a・不良品1bの選別方法は、鉱石中の目的鉱物の含有比率の閾値を予め定めておき、閾値以上の鉱石を良品1a、閾値未満の鉱石を不良品1bとして選別するものである。
ここで、供給工程Aについては、所定速度のベルトコンベア方式で岩石粉砕物1を繰り出して落下させ、選別ステージに供給する態様が代表的である。
また、撮像工程Bとしては、落下途中の鉱石を撮像器具3を用いて画像として撮影する工程であればよく、一方向からの撮像に限らず、複数方向から撮像してもよい。
更に、選別工程Cとしては、撮像工程Bを経て選別対象である鉱石の良品1a・不良品1bを選別し、いずれかの対象物に空気を吹き付けることで落下軌跡wを変更させ、鉱石の良品1a・不良品1bを物理的に仕分けるものであればよい。この場合において、吹付け対象を良品1aにするか不良品1bにするかについては適宜選定して差し支えないが、選別対象物の中でどちらの比率が高いかに関係し、比率の低い方を吹付け対象にするのが好ましい。この理由は、吹付け対象の比率が少ない方が空気の吹付量が少なくて済み、空気圧縮のためのコンプレッサの負荷を軽減することが可能になることによる。
【0017】
そして、鉱石選別方法を具現化した鉱石選別装置は、
図1に示すように、岩石粉砕物1から目的鉱物の含有比率にて予め決められた鉱石の良品1a・不良品1bを選別する鉱石選別装置であって、岩石粉砕物1を予め決められた放物線状の落下軌跡wで落下させるように供給する供給装置2と、供給装置2で供給された岩石粉砕物1を落下軌跡wの途中で重力方向に交差する方向から撮像する撮像器具3と、撮像器具3による撮像結果に基づいて岩石粉砕物1の中から鉱石の良品1a・不良品1bを判別する判別装置4と、判別装置4による判別結果に基づいて撮像器具3による撮像位置よりも下方に落下した鉱石の良品1a・不良品1bの落下軌跡w(本例ではw1,w2)を異ならせるように、いずれか一方の対象物に向けて重力方向に交差する方向から空気を吹き付ける空気吹付器具5と、を備えたものである。
尚、
図1中、符号8は鉱石の良品1a又は不良品1bを選別して収容する選別容器であって、例えば鉱石の良品1aの収容領域R1と鉱石の不良品1bの収容領域R2とを仕切り壁にて仕切った構造になっている。
【0018】
このような技術的手段において、判別装置4は、撮像器具3による撮像結果に基づいて鉱石の良品1aであること、または、鉱石の不良品1bであることを認識することで、鉱石の良品1a・不良品1bを判別するものであればよい。ここでの判別法は、鉱石中の鉱物の特性に基づいて、例えば濃度特性を有する鉱物については濃淡情報に着目し、この濃淡情報から鉱物比率を選定する手法が挙げられるが、これ以外に例えば色特性を有する鉱物については色情報に着目し、この色情報から鉱物比率を選定する等適宜選定すればよい。
また、空気吹付器具5としては、撮像位置よりも下方に落下した岩石粉砕物1を吹付対象とし、その吹付方向は重力方向に交差する方向(水平方向は勿論、水平方向に対して傾斜した方向をも含む)であればよい。
【0019】
次に、本実施の形態における鉱石選別装置の代表的態様又は好ましい態様について説明する。
先ず、供給装置2の代表的態様としては、
図1に示すように、複数の張架ロールに掛け渡されて循環移動し、岩石粉砕物1を搬送するベルト状搬送体6と、ベルト状搬送体6の搬送方向の下流端に位置する張架ロール9aに掛け渡された
湾曲部では、岩石粉砕物1が
湾曲部の周面の曲率に近い曲率の落下軌跡wを描いて
湾曲部との接触部位では滑らずに搬送されるように、ベルト状搬送体6を予め決められた搬送速度vで駆動する駆動装置7と、を有する態様が挙げられる。
本例は、所定の搬送速度vのベルト状搬送体6で、岩石粉砕物1を繰り出して落下させる態様である。
ここで、ベルト状搬送体6にて岩石粉砕物1を搬送するに当たり、ベルト状搬送体6の搬送速度vは予め決められた範囲内に調整されることが好ましい。本例では、ベルト状搬送体6の搬送速度vが予め決められた範囲に調整されるということは、ベルト状搬送体6の搬送方向の下流端に位置する張架ロール9aに掛け渡された
湾曲部において、岩石粉砕物1が
湾曲部の周面の曲率に近い曲率の落下軌跡wを描いて
湾曲部との接触部位では滑らずに搬送されるという挙動を示すことを条件とした。
今、ベルト状搬送体6の搬送速度vが予め決められた範囲を超えたと仮定すると、岩石粉砕物1はベルト状搬送体6の搬送方向の下流端にて大きな水平方向の速度成分を持った状態で飛翔する。この状態では、岩石粉砕物1の落下軌跡wは安定したものとして得られるが、水平方向の速度成分が大きいために、岩石粉砕物1の水平方向の飛行距離が大きくなってしまい、その分、鉱物選別装置の水平方向寸法が大型化してしまう懸念がある。
一方、ベルト状搬送体6の搬送速度vが予め決められた範囲を下回ると、ベルト状搬送体6の張架ロール9aに掛け渡された
湾曲部において、ベルト状搬送体6の搬送速度vが遅いために、岩石粉砕物1が
湾曲部との接触部位で滑り移動してしまい、ベルト状搬送体6から離れる岩石粉砕物1の落下開始位置がばらついたり、あるいは、ベルト状搬送体6から離れる岩石粉砕物1の落下開始姿勢がばらついてしまい、岩石粉砕物1の落下軌跡wが不安定になり易い懸念がある。
また、判別装置4の代表的態様としては、岩石粉砕物1の撮像結果から鉱石に起因する濃淡情報を抽出し、この濃淡情報の割合が予め決められた閾値以上であるときに鉱石の良品であると判別する態様が挙げられる。
更に、判別装置4の好ましい態様としては、撮像器具3による撮像結果に基づいて空気の吹付対象物である鉱石に対する空気の吹付開始時間及び空気の吹付対象物である鉱石の重力方向に面した投影面積を算出することで、空気吹付器具5による空気の吹付動作の開始及び空気吹付時間を調整する態様が挙げられる。本例は、撮像器具3による撮像結果に基づいて、空気吹付器具5の前を過ぎる空気の吹付対象物の吹付開始時間、及び、重力方向に面した投影面積を算出することで、算出された吹付開始時間から空気吹付器具5による空気の吹付動作を開始し、空気の吹付対象物の投影面積の大きさに対向して空気の吹付動作を続行するようにすればよい。これにより、空気の吹付動作は、空気吹付器具5の前を過ぎる空気の吹付対象物に対して行われ、空気の吹付対象物以外の無駄な領域に対して行われることは少ない。
【0020】
更に、空気吹付器具5の代表的態様としては、岩石粉砕物1のサイズが予め決められた最小寸法以上最大寸法以下の範囲内であるときに、空気吹付器具5は、空気が個別に吹き付け可能であって最小寸法より小径のノズルを最小寸法未満のピッチで水平方向に並設する態様が挙げられる。岩石粉砕物1のサイズが篩い分けにより所定範囲に決まっている場合において、空気吹付器具5を選定するに当たって、最小寸法より小径のノズルを最小寸法未満のピッチで水平方向に並設すれば、最小寸法の岩石粉砕物1であっても、空気を吹き付けることが可能である。
更にまた、空気吹付器具5の好ましい態様としては、空気が個別に吹き付け可能なノズルを水平方向に並設すると共に重力方向に複数段有する態様が挙げられる。本例はノズル列が複数段である態様を示すが、各列のノズルの空気の吹付タイミングは同時でもよいし、別個でもよい。また、吹き付け方向は平行でもよいし、非平行として一箇所に集中して吹き付けるようにしてもよい。
また、空気吹付器具5の好ましい別の態様としては、鉱石の良品1a・不良品1bのいずれか一方の対象物に空気を吹き付けるに当たり、空気の吹付対象物に対して上方向に向かう吹付力成分を生成させるように空気を吹き付ける態様が挙げられる。
本例では、落下する空気の吹付対象物が落下軌跡wに沿って回転しながら落下する挙動に着目し、落下する空気の吹付対象物の回転姿勢が、例えば空気の吹付対象物の上側が下側よりも空気吹付器具5側に接近するように傾いた姿勢に至ったとすれば、空気の吹付力により、吹付対象物に対して上向きに向かう吹付力成分が与えられる。この場合、吹付対象物に上向きの吹付力成分が作用することで、吹付対象物が落下する際の抵抗力が発生し、その分、吹付対象物の落下時間を稼ぐことができ、空気吹付器具5による空気の吹き付けに伴う対象物の飛距離を多く確保することができる。
また、空気吹付器具5の好ましい更に別の態様としては、鉱石の良品1a・不良品1bのいずれか一方の対象物に空気を吹き付けるに当たり、空気の吹付対象物の重力方向に面した投影面の過半領域に亘って空気を吹き付ける態様が挙げられる。本例は、空気の吹付対象物が落下するものであるため、重力方向に交差する方向に対して当該対象物を移動させる上で十分な空気の吹き付け力を必要とする。このため、吹付対象物に対しては可能な限り空気の吹き付け面積を広く確保することが好ましく、本例では、空気の吹付対象物の重力方向に面した投影面の過半領域としている。
【0021】
以下、添付図面示す実施の形態に基づいて本発明を更に詳細に説明する。
◎実施の形態1
-鉱石選別装置の全体構成-
図2は実施の形態1に係る鉱石選別装置の全体構成を示す説明図である。
同図において、鉱石選別装置20は、選別対象である鉱石(例えば金鉱石)を含む岩石粉砕物が収容される収容容器21を有し、この収容容器21には岩石粉砕物が予め決められた大きさ、例えば最大径寸法50~75mmの大きさに揃えられるための篩22を付設すると共に、図示外の水洗器具を付設し、収容容器21内で岩石粉砕物を水洗しながら篩22にかけて所定範囲の大きさの岩石粉砕物のみを通過するようにしたものである。
そして、本例では、収容容器21の篩22の下方には振動フィーダ23が傾斜配置されており、この振動フィーダ23の下流側には案内シュート24を介してベルトコンベア25が配設されている。
【0022】
本実施の形態において、ベルトコンベア25は例えば一対の張架ロール27,28間に搬送ベルト26を循環移動可能に掛け渡したものであり、例えば一方の張架ロール27を駆動モータ29による駆動力が伝達可能な駆動ロールとし、搬送ベルト26を循環移動させるようになっている。
本例では、搬送ベルト26は岩石粉砕物が搬送可能な厚肉の耐摩耗性のベルト材料(例えばスチールコード、不織布等の補強材を含むエチレン、プロピレン等の弾性ゴム)を用いて構成されており、その表面部には適度な摩擦抵抗を具備させることで、案内シュート24を介して搬入された岩石粉砕物を不必要に転がすことなく、適度の間隔をおいて保持して搬送するようになっている。
そして、本例では、ベルトコンベア25は駆動モータ29によって搬送ベルト26を予め決められた速度vcで搬送するように調整されている。
尚、
図2において、ベルトコンベア25上には岩石粉砕物Gが予め決められた許容幅寸法内において載せられているが、この岩石粉砕物Gには選別対象である鉱石の良品Ga(図中○で表記)と、所謂ずりと称される不良品Gb(図中●で表記)とが含まれている。ここでいう鉱石の良品Ga・不良品Gbの判別基準の詳細については後述する。
【0023】
また、ベルトコンベア25は、
図2及び
図3に示すように、搬送ベルト26の搬送方向下流側端の張架ロール28に掛け渡された部分の先端部位から、岩石粉砕物Gを所定の落下軌跡wに沿って落下させるようになっている。
そして、岩石粉砕物Gの落下軌跡wの途中に位置する撮像位置Q1に対向した部位には撮像器具としてのカメラ30が略水平方向に沿って配設されており、更に、カメラ30の近傍には撮像位置Q1を照明するための照明ランプ40が一若しくは複数設けられている。
更に、岩石粉砕物Gの落下軌跡wの途中のうち撮像位置Q1の下方に位置する吹付位置Q2に対向する部位には空気吹付器具50の一要素であるノズルアレイ51が配設されている。
更にまた、岩石粉砕物Gの落下軌跡wにおける吹付位置Q2の下方には、選別対象である鉱石の良品Ga・不良品Gbを選別した収容する選別容器70が設置されている。
また、符号80はカメラ30、照明ランプ40、空気吹付器具50及び駆動モータ29に対して所定の制御信号を送出し、各要素を制御する制御装置である。
【0024】
<ベルトコンベアの搬送速度の選定>
本実施の形態において、ベルトコンベア25(具体的には搬送ベルト26)の搬送速度vcは以下のように選定されている。
本例において、ベルトコンベア25の搬送方向下流側に位置する張架ロール28は直径dであり、搬送ベルト26は直径dの張架ロール28に掛け渡されて断面半円状に湾曲配置されている。
ここで、岩石粉砕物Gはベルトコンベア25の搬送ベルト26のうち水平方向に延びる直線部26aに載置されて搬送され、搬送ベルト26の直線部26aから湾曲部26bに至る部位にて水平方向に放出される。
このとき、搬送ベルト26の搬送速度を所定の閾値よりも速く設定すると、岩石粉砕物Gの水平方向への放出速度が速くなり、岩石粉砕物Gが搬送ベルト26の湾曲部26bから離れた状態で飛翔してしまう。この場合、岩石粉砕物Gの落下軌跡wは粒径(重さ)の違いによりばらつきはあるものの、比較的安定したものとして得られるが、岩石粉砕物Gの水平方向の放出速度が速すぎると、岩石粉砕物Gの水平方向の飛行距離が大きくなってしまい、その分、カメラ30や空気吹付器具50の設置スペースをベルトコンベア25から十分に離れた位置に確保することが必要であり、鉱石選別装置20の大型化につながる懸念がある。
一方、搬送ベルト26の搬送速度が所定の閾値を下回ると、岩石粉砕物Gが搬送ベルト26の湾曲部26bの先端位置に相当する落下開始位置に至るまで搬送ベルト26に接触した状態で搬送されるという落下軌跡を描くが、搬送ベルト26の搬送速度が極端に遅くなると、岩石粉砕物Gが搬送ベルト26の湾曲部26bとの接触部位で滑り移動してしまい、搬送ベルト26から離れる岩石粉砕物Gの落下開始位置がばらついたり、あるいは、滑り移動した岩石粉砕物Gが湾曲部26b上で転動し、搬送ベルト26から離れる岩石粉砕物Gの落下開始姿勢がばらついてしまい、岩石粉砕物Gの落下軌跡wが不安定になり易い懸念がある。
そこで、本実施の形態では、搬送ベルト26の湾曲部26bでは、岩石粉砕物Gが湾曲部26bの周面の曲率に近い曲率の落下軌跡wを描いて当該湾曲部26bとの接触部位では滑らずに搬送されるように、搬送ベルト26の搬送速度が予め決められた搬送速度vcに選定されている。
尚、具体的な選定例については実施例にて詳述する。
【0025】
<カメラ>
本実施の形態において、カメラ30は、
図2乃至
図4に示すように、モノクロCCD等の撮像素子31を所定の画素密度間隔kで水平方向に沿って配列したラインセンサにて構成され、撮像位置Q1にて落下する岩石粉砕物Gを逐次撮像するようにしたものである。
本例では、カメラ30は、ベルトコンベア25の搬送ベルト26の直線部26aに沿った水平位置から鉛直方向にh1だけ下方の撮像位置Q1を有し、当該撮像位置Q1を横切る岩石粉砕物Gの投影面積及び岩石粉砕物Gの濃淡情報を含む撮像情報を取得するようになっている。尚、本例では、選別対象が金鉱石であり、目的鉱物である金はモノクロ画像中では白色に近い画像になることから、岩石粉砕物Gの投影面積内での濃淡画像のうち白色に近い画像部の占める比率が目的鉱物の含有比率になり、この含有比率が予め決められた閾値以上か否かによって鉱石の良品・不良品を判別することが可能である。
【0026】
<空気吹付器具>
本実施の形態において、空気吹付器具50の一要素であるノズルアレイ51は、
図2乃至
図4に示すように、ベルトコンベア25の搬送ベルト26の直線部26aに沿った水平位置から鉛直方向にh2(h2>h1)だけ下方の吹付位置Q2に対向して配置されており、略水平方向に亘って複数の吹付ノズル52を所定ピッチ間隔pで配列したものであり、各吹付ノズル52による空気の吹付け動作を夫々対応する電磁弁53にてオンオフ制御するようになっている。
ここで、吹付ノズル52の内径u及びピッチ間隔pは適宜選定して差し支えないが、岩石粉砕物Gへの空気の吹付けを良好に保つという観点からすれば、岩石粉砕物Gの最小寸法(本例では50mm)よりも小さく設定されていればよく、例えば8~20mm位(本例ではいずれも10mm前後)に設定されている。
本例では、ノズルアレイ51が例えばn個の吹付ノズル52が一列に並んでいると仮定すると、各吹付ノズル52に対応する電磁弁53は複数段(本例では4段)に分かれ、各段にn/4個ずつ配列された電磁弁ユニット54として構成されている。そして、所定の圧力(例えば0.7~1.0MPa)に加圧された圧搾空気が貯留されているエアタンク55が設けられ、このエアタンク55が各電磁弁53の流路に連通接続されており、対応する電磁弁53のオン動作に伴ってエアタンク55の圧搾空気が対応する吹付ノズル52に供給され、吹付ノズル52による空気の吹付け動作が行われる。
また、各電磁弁53には電磁弁駆動回路56からのオンオフ信号が発生するようになっており、この電磁弁駆動回路56には制御装置80からの制御信号が送出される。
特に、本例では、制御装置80は、カメラ30による撮像結果から岩石粉砕物Gが鉱石の良品Gaであると判別したときに、当該鉱石の良品Gaが吹付位置Q2を通過するタイミングにて対応する電磁弁53をオン動作させ、対応する吹付ノズル52による空気の吹付け動作を実施するものである。
【0027】
<選別容器>
本実施の形態において、選別容器70は、
図2及び
図3に示すように、吹付位置Q2から鉛直方向にh3だけ下方に鉱石の良品Ga・不良品Gbの収容領域(本例では、第1の収容領域R1が良品Ga、第2の収容領域R2が不良品Gbの収容領域として使用)を確保するようになっており、更に、吹付位置Q2の略直下位置には各収容領域R1,R2が仕切られる仕切り壁71を有している。
ここで、各吹付ノズル52による空気の吹付け動作に伴って鉱石の良品Gaが吹き付けられると、当該鉱石の良品Gaは不良品Gbの落下軌跡w2とは異なる落下軌跡w1にて落下することになるが、この鉱石の良品Gaの落下軌跡w1としては、良品Gaが決められた収容領域R1に確実に収容されるように、仕切り壁71からの飛び出し量jが十分に確保されていればよく、吹付位置Q2から選別容器70までの距離h3は飛び出し量jが十分確保されるように選定すればよい。
【0028】
-鉱石選別処理-
本実施の形態では、制御装置80は、岩石粉砕物Gから鉱石の良品Ga・不良品Gbが選別可能な鉱石選別処理プログラム(
図5参照)を有しており、このプログラムを実行することにより、鉱石の良品Ga及び不良品Gbの選別を実施するようになっている。
今、
図5に示すように、図示外のスタートスイッチをオン操作すると、鉱石選別装置20が稼働し、収容容器21内で岩石粉砕物Gが水洗されながら篩22にかけられ、所定範囲の寸法に絞られた後、振動フィーダ23及び案内シュート24を介してベルトコンベア25上に岩石粉砕物Gが供給される。
このとき、ベルトコンベア25は所定の搬送速度vcにて搬送されており、ベルトコンベア25上の岩石粉砕物Gは所定の搬送速度vcにて搬送され、ベルトコンベア25の搬送方向下流側にて張架ロール28に沿う搬送ベルト26の湾曲部26bの周面の曲率に近い曲率の落下軌跡wを描いて落下する。
【0029】
そして、岩石粉砕物Gが撮像位置Q1を通過すると、照明ランプ40による照明光に照らされた状態でカメラ30が岩石粉砕物Gを撮像する。
この状態において、制御装置80は、岩石粉砕物Gにつき鉱石の良品Ga・不良品Gbを判別する。
本例で用いられる判別法としては、
図6(a)に示すように、カメラ30からの撮像結果に基づき、撮像画像中の目的鉱物(本例では金)の占有面積Sa、岩石粉砕物Gの投影面積Sbを演算した後、以下の式から鉱石の良品Ga・不良品Gbを判別する。
(Sa/Sb)≧α ……(式1)
ここで、αは鉱石の良品Gaであることを許容する割合(例えば30%)を示す。
本例では、目的鉱物である金を含有する石英は白色であることから、Saはカメラ30による撮像画像の濃淡情報(白色に相当)に基づいて演算する。一方、目的鉱物以外は灰色又は黒色であることから、SbはSaを含んだ岩石粉砕物Gの全体の投影面積を演算するようにすればよい。具体的には、制御装置80は、カメラ30による撮像結果(投影面積、濃淡情報)から、モノクロ濃淡8ビットの多階調(本例では256階調)画像を取得し、これを3値化(白領域、灰色領域、黒領域)した後、白領域の占有比率(目的鉱物の占有比率)が閾値α以上か否かを判別する。この場合、黒領域は背景であり、白領域と灰色領域とが岩石粉砕物Gとしての鉱石全体、白領域が目的鉱物である金であるため、Sa/Sb=(白領域)/(白領域+灰色領域)として演算される。
そして、(式1)による演算結果に基づいて、例えば
図6(b)のケース1に示すように、(Sa/Sb)≧αの条件では、当該岩石粉砕物Gは鉱石の良品Gaと判別する。
また、
図6(b)のケース2に示すように、(Sa/Sb)<αの条件(鉱物の含有割合が少ない条件)では、当該岩石粉砕物Gは鉱石の不良品Gbと判別する。
更に、
図6(c)のケース3に示すように、Saが略0の場合には、当該岩石粉砕物Gは鉱石の不良品Gbと判別する。
【0030】
次いで、制御装置80は、カメラ30による撮像結果に基づいて、例えば岩石粉砕物Gが鉱石の良品Gaであると判別した場合には、当該鉱石の良品Gaが吹付位置Q2を通過するタイミングにて対応する吹付ノズル52が鉱石の良品Gaに対して空気(Air)を吹き付ける。
このとき、撮像位置Q1と吹付位置Q2とでは、鉱石の良品Gaの落下速度が異なるが、両者間の距離は一定であるため、撮像位置Q1を通過した鉱石の良品Gaが吹付位置Q2に到達するまでの落下時間は一定であり、これに基づいて、吹付ノズル52による空気の吹付け動作タイミングが決定される。
本例では、制御装置80は、
図5に示すように、吹付位置Q2を過ぎる鉱石の良品Gaに対し、対応する吹付ノズル52による空気の吹付け動作を実施するように、空気の吹付け条件を演算した後、この空気の吹付け条件に基づいて制御信号を生成する。
【0031】
ここで、対応する吹付ノズル52による空気の吹付け条件の演算方法の一例について説明する。
本例において、空気の吹付け条件としては、カメラ30による撮像結果に基づいて鉱石の大きさや撮像位置Q1から吹付位置Q2までの経過時間を算出し、対応する吹付ノズル52による空気の吹付け動作の開始時点、及び、鉱石の大きさに合わせた空気吹付時間を算出することが挙げられる。
(1)撮像位置Q1、吹付位置Q2での鉱石の速度、時間について
本例では、
図7(a)に示すように、撮像位置Q1は鉱石の落下開始位置から鉛直方向にh1だけ下方に設定され、吹付位置Q2は鉱石の落下開始位置から鉛直方向にh2(h2>h1)だけ下方に設定されている。
これらの情報h1,h2は制御装置80のメモリ内に予め入力されており、制御装置80はこれらの情報h1,h2を用いて、撮像位置Q1での速度v1、落下開始位置からの経過時間t1、吹付位置Q2での鉱石の速度v2、落下開始位置からの経過時間t2、更には、撮像位置Q1から吹付位置Q2に至るまでの経過時間Δt(t2-t1)を予め演算して記録する。尚、以下の式においてgは重力加速度を示す。
【0032】
v1=√(2・g・h1)……(式1)
v2=√(2・g・h2)……(式2)
h1=(1/2)g・t12であるから、t1=√(2・h1/g)……(式3)
h2=(1/2)g・t22であるから、t2=√(2・h2/g)……(式4)
Δt=t2-t1=√(2・h2/g)-√(2・h1/g)……(式5)
よって、鉱石は、撮像位置Q1に到達した後にΔtを経過したときに吹付位置Q2に到達し、そのときの速度vは√(2・g・h2)であることが理解される。
この状態において、制御装置80は鉱石が撮像位置Q1から吹付位置Q2までの経過時間を算出し、吹付けノズル52による空気の吹付け動作を開始すればよい。
尚、本例では、(式5)を用いてΔtを算出する手法を採用したが、これに限られるものではなく、例えばh1、h2の距離差分が短い場合や鉱石が小さい場合には、撮像位置Q1での鉱石の速度v1を用いて以下の(式5’)にて簡易的に算出するようにしてもよい。
Δt=(h2-h1)/v1……(式5’)
【0033】
(2)鉱石の大きさについて
本例では、鉱石は、
図7(b)に示すように、撮像位置Q1においてカメラ30に撮影され、重力方向に面した投影像が得られる。このとき、前述したように、鉱石の投影像の濃度差情報によって鉱石が良品Gaであるか不良品Gbであるかが判定されるが、更に、本例では、鉱石の投影像のうち鉛直方向yの最上端位置y
maxと、最下端位置y
minとを割り出し、両者の差分L(y
max-y
min)を算出する。このとき、鉱石の投影像の鉛直方向の寸法Lを算出するには、例えば予め寸法の計測された鉱石サンプル(鉛直方向寸法をL0とする)の投影像の鉛直方向の画素(ピクセル)数がn0であるとすれば、撮影対象の鉱石の投影像の鉛直方向の画素数nを計数すれば、当該鉱石の鉛直方向の寸法Lは以下の(式6)にて算出される。
L=(n/n0)・L0……(式6)
例えばL0が0.05[m]で、画素数n0が2500とした場合、例えば計測した鉱石の投影像の鉛直方向の寸法Lに相当する箇所の画素数nが2000の場合には、Lは0.04[m]として算出される。
特に、本例では、カメラ30はラインセンサを用いたラインカメラであるため、撮像位置Q1での速度がv1[m/s]に対して、撮像レートf[Hz](ラインカメラであれば、1ライン毎のラインレート)は一定なので、画素分解能B[m/画素]はB=v1/f[m/画素]で算出することができる。このため、鉱石の投影像のうち鉛直方向yの最上端位置y
maxと、最下端位置y
minまでの画素数をn[画素]とすると、当該鉱石の鉛直方向の寸法Lは以下の(式6’)で算出される。
L=B・n……(式6’)
【0034】
(3)吹付ノズルによる空気吹付時間の調整について
前述した(1)の算出過程において、吹付ノズル52による空気の吹付開始時点、及び、吹付位置Q2での鉱石の速度v2が認識され、更に、前述した(2)の算出過程において、鉱石の大きさのパラメータとして、鉱石の投影像の鉛直方向の寸法Lが認識される。
本例では、寸法Lの鉱石が速度v2で吹付ノズル52の吹付位置Q2を過ぎる間だけ、吹付ノズル52による空気の吹付け動作を実施させるように、制御装置80は以下の(式7)にて吹付ノズル52による空気吹付時間tairを算出する。
tair=L/v2……(式7)
よって、制御装置80は、吹付ノズル52による空気の吹付開始時点から空気の吹付け動作を開始し、算出した空気吹付時間tairの間、空気の吹付動作を継続した後に停止させるようにすればよい。
このような空気の吹付制御を行うようにすれば、空気を吹き付けるべき鉱石(本例では鉱石の良品Ga)についてのみ空気を吹き付けることが可能になり、吹付対象でない鉱石(本例では鉱石の不良品Gb)に吹付ノズル52からの空気が吹き付けられることは少ないことから、鉱石の選別率は良好に保たれる。
【0035】
今、ノズルアレイ51に対向して鉱石の良品Gaが落下していくと、制御装置80は、吹付位置Q2を通過する鉱石の良品Gaの落下移動位置を認識し、
図8(b)の時間経過(t=Δt→6Δt)に伴って、鉱石の良品Gaに対応する位置の吹付ノズル52にて空気の吹付け動作を行うようにする。尚、
図8(b)中、○の吹付ノズル52は空気の吹付け動作が不実施、●の吹付ノズル52は空気の吹付け動作を実施している状態を示す。
このような吹付ノズル52による空気の吹付け動作が実施されると、鉱石の良品Gaの重力方向に面した投影面の略全域に亘っては圧搾空気が吹き付けられ、選別容器70の仕切り壁71から十分な飛び出し量jをもった落下軌跡w2を経て第2の収容領域R2に収容される。本例では、鉱石の良品Gaの重力方向に面した投影面の略全域に圧搾空気が吹き付けられているが、前述した投影面の過半領域に圧搾空気を吹き付けるようにすれば、選別容器70に対する鉱石の選別動作は良好に実施可能である。
尚、鉱石の不良品Gbに対しては、吹付ノズル52による空気の吹付け動作は実施されないため、鉱石の不良品Gbは、予め決められた落下軌跡wに連なる落下軌跡w2を経て第2の収容領域R2に収容される。
【0036】
また、本実施の形態では、
図8(a)に示すように、吹付ノズル52は、M方向に回転しながら落下中の鉱石の良品Gaに対し空気を吹き付けるため、鉱石の良品Gaの回転姿勢が、良品Gaの上側が下側よりも吹付ノズル52側に接近するように傾いた姿勢に至ると、吹付ノズル52からの空気が良品Gaに吹き付けられたとき、この良品Gaには、水平方向に押す吹付力成分Fhに加えて、上向きに向かう吹付力成分Fvが与えられる。このとき、鉱石の良品Gaに上向きの吹付力成分Fvが作用することで、当該良品Gaが落下する際の抵抗力が発生し、その分、良品Gaの落下時間を稼ぐことができ、空気の吹付けに伴う良品Gaの飛距離を多く確保することができる。
更に、本実施の形態では、ベルトコンベア25から落下した岩石粉砕物Gである鉱石は落下に伴って重力加速度が働き、落下方向に散らばる挙動を示す。このため、ベルトコンベア25上への岩石粉砕物Gの供給量については岩石粉砕物Gが重ならない程度のばらつきでよく、水平飛行方式を採用する場合のように、ベルトコンベア25上に分散させた状態で岩石粉砕物Gを供給する必要はない。
【0037】
◎実施の形態2
図9は実施の形態2に係る鉱石選別装置の要部を示す説明図である。
同図において、鉱石選別装置20の基本的構成は、実施の形態1と略同様であるが、実施の形態1と異なる空気吹付器具50を備えている。尚、実施の形態1と同様な構成要素については実施の形態1と同様な符号を付してここではその詳細な説明を省略する。
本例において、空気吹付器具50は上下2段のノズルアレイ51a,51bを有しており、各ノズルアレイ51a,51bには夫々吹付ノズル52を所定ピッチ間隔毎に配列したものである。
本実施の形態では、上下2段のノズルアレイ51a,51bは、例えば
図10(a)に示すように、各列の吹付ノズル52による空気の吹付け動作を同時に実施する態様(同時打撃方式)でもよいし、
図10(b)に示すように、各列の吹付ノズル52による空気の吹付け動作を時間差をもって実施する態様(時間差打撃方式)でもよい。
また、本例では、今、ノズルアレイ51a,51bに対向して鉱石の良品Gaが落下していくと、制御装置80は、吹付位置Q2を通過する鉱石の良品Gaの落下移動位置を認識し、
図10(c)の時間経過(t=Δt→6Δt)に伴って、鉱石の良品Gaに対応する位置の吹付ノズル52にて空気の吹付け動作を行うようにする。尚、
図10(c)中、○の吹付ノズル52は空気の吹付け動作が不実施、●の吹付ノズル52は空気の吹付け動作を実施している状態を示す。
このような吹付ノズル52による空気の吹付け動作が実施されると、実施の形態1に比べて、鉱石の良品Gaは約2倍の圧搾空気によって吹き付けられ、選別容器70の仕切り壁71から更に十分な飛び出し量jをもった落下軌跡w1を経て第1の収容領域R1に収容される。
【0038】
◎変形の形態
本実施の形態では、空気吹付器具50として、上下2段のノズルアレイ51a,51bを採用しているが、これに限られるものではなく、例えば
図11(a)に示すように、上下3段のノズルアレイ51a~51cを有し、各ノズルアレイ51a~51cには夫々吹付ノズル52を所定ピッチ間隔毎に配列したものである。
本変形の形態では、上下3段のノズルアレイ51a,51bは、例えば
図11(a)に示すように、各列の吹付ノズル52による空気の吹付け動作を同時に実施する態様(同時打撃方式)でもよいし、
図11(b)に示すように、各列の吹付ノズル52による空気の吹付け動作を時間差をもって実施する態様(時間差打撃方式)でもよい。
更に、
図11(c)に示すように、各列の吹付ノズル52を平行に配置し、平行な空気流による吹付け動作を実施する態様(平行打撃方式)でもよいし、
図11(d)に示すように、各列の吹付ノズル52を角度を付けて一点に集中するように配置し、一点に集中する空気流による吹付け動作を実施する態様(一点集中打撃方式)でもよい。
尚、空気吹付器具50として、上下4段以上のノズルアレイを採用するようにしてもよいことは勿論である。
【実施例】
【0039】
◎実施例1
本実施例は、実施の形態1に係る鉱石選別装置を具現化したものについて、その性能を評価したものである。
本実施例は、
図12(a)に示すように、ベルトコンベア25の搬送方向端部から鉱石が含まれる岩石粉砕物Gを繰り出し落下させたものである。
ここで、岩石粉砕物Gとしては転がりやすい形状のものを選定した。
図12(a)において、Aはベルトコンベア25の岩石粉砕物Gの搬送面から0.5m下方の位置、BはA位置から0.5m下方の位置である。
tfはAからBに至るまでの落下時間(落下距離)、xはベルトコンベア25の先端位置からBに至るまでの飛び出し量(1m落下時)、θはAからBに至るまでの回転量(100ms当たり)を示し、夫々複数回(N=10回)実験を行った。
本例では、ベルトコンベア25の張架ロール径は200mmで、ベルトコンベア25の搬送速度は1m/sである。
尚、比較例1は、ベルトコンベア25を用いずに、振動フィーダ23から直接落下させたものである。但し、振動フィーダ23の振動条件は60Hz、搬送速度は8m/min.である。
実施例1,比較例1についての比較項目の結果を
図12(b)に示す。
実施例1は、全ての比較項目において、比較例1よりもばらつきが少なく、岩石粉砕物Gの落下挙動が安定することが理解される。
【0040】
実施例1において、ベルトコンベア25の搬送速度を変化させた条件で、各搬送速度で20回ずつ実験を行い、落下時間のばらつき、飛び出し量のばらつき、回転量のばらつきを調べたところ、
図13乃至
図15に示す結果が得られた。
但し、落下時間のばらつきは、700mmから1200mmとした。また、飛び出し量のばらつきについては落差を1200mmとした。更に、回転量のばらつきについては700mmから1200mmでの落差間とした。
図13は落下時間のばらつきを示すものである。
ここで、「食い込み量0」とは、岩石粉砕物が張架ロールに掛け渡された搬送ベルトの湾曲部の周面の曲率に沿った落下軌跡を描いて搬送されるようにベルトコンベアの搬送速度を選定した場合に相当し、また、「食い込み無し」とは、岩石粉砕物が張架ロールに掛け渡された湾曲部の曲率未満の曲率軌跡を描いて搬送されるようにベルトコンベアの搬送速度を選定した場合に相当し、「食い込み有り」とは、岩石粉砕物が張架ロールに掛け渡された湾曲部の曲率より大きい曲率軌跡を描いて搬送されるようにベルトコンベアの搬送速度を選定した相当に相当する。
同図によれば、「食い込み無し」の場合には、「食い込み有り」の場合に比べて、落下時間のばらつきが小さいことが理解され、また、「食い込み有り」の場合には、「食い込み量0」に相当する速度(
図13では1.04m/s)に対して遅くなればなるほど落下時間のばらつきが大きくなることが理解される。このことは、ベルトコンベアの搬送速度を極端に遅くした場合には、岩石粉砕物がベルトコンベアの湾曲部から繰り出し落下する際に、岩石粉砕物がベルトコンベアの湾曲部との接触部位で滑り移動してしまい、これに伴って、ベルトコンベアからの落下開始位置や落下開始姿勢がばらつくことに起因するものと推測される。
また、
図14は岩石粉砕物の飛び出し量のばらつき、
図15は岩石粉砕物の回転量のばらつきであるが、いずれも、「食い込み量0」、「食い込み量無し」の場合に、「食い込み量有り」の場合に比べて、岩石粉砕物の飛び出し量、回転量のばらつきが小さいことが理解され、また、「食い込み有り」の場合には、「食い込み量0」に相当する速度に対して遅くなればなるほど飛び出し量、回転量のばらつきが大きくなることが理解される。
尚、実施例1において、張架ロール径を200mmから300mmのものに変更し、ベルトコンベア25の搬送速度を変化させた条件で、各搬送速度で20回ずつ実験を行い、岩石粉砕物の落下時間のばらつき、飛び出し量のばらつき、回転量のばらつきを調べたところ、張架ロールが200mmの場合と略同様な傾向が見られた。
【0041】
また、ベルトコンベアの張架ロール(本例では張架ロール径:200mm)に掛け渡された部分における岩石粉砕物の落下軌跡をベルトコンベアの搬送速度を変えて調べたところ、
図16に示す結果が得られた。
同図によれば、ベルトコンベアの搬送速度が1m/s(「食い込み量0」に略相当する速度)である場合、岩石粉砕物の落下軌跡はベルトコンベアの湾曲部の曲率に略対応しており、落下軌跡が安定することが理解される。また、ベルトコンベアの搬送速度を例えば1.2m/sにすると、岩石粉砕物の落下軌跡はベルトコンベアの湾曲部の曲率未満になるが、ベルトコンベアの湾曲部の曲率に近い曲率の軌跡に変化することが理解される。尚、「食い込み有り」の場合でも、食い込み量0の近傍(例えばベルトコンベアの搬送速度を0.8m/sにする)であれば、岩石粉砕物の落下軌跡はベルトコンベアの湾曲部の曲率に近い軌跡になることが理解される。
更に、ベルトコンベアの張架ロール(本例では張架ロール径:300mm)に掛け渡された部分における岩石粉砕物の落下軌跡をベルトコンベアの搬送速度を変えて調べたところ、
図17に示す結果が得られた。
同図によれば、ベルトコンベアの搬送速度が1.2m/s(「食い込み量0」に略相当する速度)である場合、岩石粉砕物の落下軌跡がベルトコンベアの湾曲部の曲率に略対応しており、落下軌跡が安定することが理解される。また、ベルトコンベアの搬送速度を例えば1.4m/sにすると、岩石粉砕物の落下軌跡はベルトコンベアの湾曲部の曲率未満になるが、ベルトコンベアの湾曲部の曲率に近い曲率の軌跡に変化することが理解される。尚、「食い込み有り」の場合でも、食い込み量0の近傍(例えばベルトコンベアの搬送速度を1.0m/sにする)であれば、岩石粉砕物の落下軌跡はベルトコンベアの湾曲部の曲率に近い軌跡になることが理解される。
よって、「食い込み無し」の場合、つまり、「食い込み量0」に相当するベルトコンベアの速度を超える速度条件であれば、岩石粉砕物の落下軌跡は安定するが、ベルトコンベアの速度を速く設定し過ぎると、岩石粉砕物の水平方向に沿う移動量が大きくなることから、岩石粉砕物の水平方向に沿う移動量を少なくするという観点からすれば、「食い込み量0」に相当するベルトコンベアの速度に近い速度を選定することが好ましい。
また、「食い込み有り」の場合には、「食い込み量0」の近傍では岩石粉砕物の落下軌跡はベルトコンベアの湾曲部の曲率に近い軌跡にはなるものの、岩石粉砕物の形状によっては岩石粉砕物の落下時間、飛び出し量、あるいは、回転量のばらつきが大きくなる可能性があるため、ベルトコンベアの搬送速度の選定に当たっては、少なくとも「食い込み有り」を除き、「食い込み量0」又は「食い込み無し」で「食い込み量0」の近傍を許容範囲として選定することが好ましい。
【0042】
◎実施例2
本実施例は、実施の形態1に係る鉱石選別装置を具現化したもので、
図3に示すように、ベルトコンベア25の岩石粉砕物Gの搬送面から空気吹付器具50による空気の吹付位置Q2までの落差h2を550mm、750mmに代えて、鉱石の選別性能(本例では選別容器の仕切り壁からの飛距離)に対する影響を調べたものである。尚、本実施例では、h3=500mmである。
図18はh2=550mmの態様につき、吹付ノズル52による空気の吹付け動作を行うように構成し、20種類の岩石粉砕物Gである鉱石に対し8回ずつ160回実施した結果を示す。
また、
図19はh2=750mmの態様につき、吹付ノズル52による空気の吹付け動作を行うように構成し、20種類の岩石粉砕物Gである鉱石に対し8回ずつ160回実施した結果を示す。
尚、
図18及び
図19において、Pzは吹付ノズル52による空気の吹付け動作不実施時における鉱石の落下位置を示す。
【0043】
図18及び
図19によれば、落差550mmにおける空気の吹付け動作方式の方が、落差750mmにおける空気の吹付け動作方式に比べて、全体として飛距離(飛び出し量)jがアップしていることが理解される。
ここで、h2=550mmにおいて、吹付位置Q2に至るまでの鉱石の回転量の分布を調べたところ、
図20に示す結果が得られた。
図20によれば、鉱石の回転量は40度から145度の広がりの中で中央値が95度であった。
また、h2=750mmにおいて、吹付位置Q2に至るまでの鉱石の回転量の分布を調べたところ、
図21に示す結果が得られた。
図21によれば、鉱石の回転量は50度から165度の広がりの中で中央値が110度であった。
このように、h2=550mmの態様の方が全体として飛距離(飛び出し量)jがアップしたのは、鉱石の回転量が最適になり、吹付ノズル52による空気の吹付けにより、鉱石への上向きの吹付力成分が有効に作用し、その分、鉱石の落下速度も遅くなったことが要因であると推測される。
【0044】
◎実施例3
実施例3は実施の形態2に係る鉱石選別装置を具現化したもので、空気吹付器具50による空気の吹付け条件を変えて、鉱石の選別性能を評価するようにしたものである。
本例では、以下の4つの態様について、鉱石の選別性能(飛距離j)を評価した。
(1)1列吹付ノズル
エア圧力 0.7MPa
(2)2列吹付ノズル
エア圧力 0.7MPa
同時打撃方式
(3)2列吹付ノズル
エア圧力 1.0MPa
同時打撃方式
(4)2列吹付ノズル
エア圧力 1.0MPa
時間差打撃方式
尚、(1)は比較の意味で1列吹付ノズル方式について同様な実験を行った。
【0045】
各ケースについて、夫々10回測定したところ、
図22に示す結果が得られた。
1列吹付ノズル方式よりも2列吹付ノズル方式による空気の吹付け動作を実施した方が選別容器の仕切り壁からの飛距離(飛び出し量)jが大きく、鉱石の選別性能が高いことが理解される。
また、2列吹付ノズル方式においては、エア圧力が高い方が飛距離jが大きいことが理解される。
更に、2列吹付ノズル方式では、同時打撃方式より時間差打撃方式の方が飛距離jが大きいことが理解される。
尚、
図22中、Pzは吹付ノズルによる空気の吹付け動作を実施しない条件下での鉱石の不良品の落下位置を示す。
【0046】
また、実施例3において、吹付ノズル列数、エア圧力を変更し、吹付位置Q2から鉱石の落下位置(飛距離)までの傾斜角度を落下角度として、各ケースにつき30回ずつ測定したところ、
図23に示す結果が得られた。
同図によれば、エア圧力が同じであれば、2列吹付ノズル方式が1列吹付ノズル方式よりも大きな落下角度が得られることが理解される。
また、1列吹付ノズル方式、2列吹付ノズル方式では、エア圧力が0.7MPaよりも1.0MPaである態様の方が落下角度が大きいことが理解される。
尚、
図23中、理論アップ率は、1列吹付ノズル方式でエア圧力0.7MPaの態様の空気の吹付け力を1とした場合の各ケースの理論上の空気の吹付け力の比率を示す。
【符号の説明】
【0047】
1 岩石粉砕物
1a 鉱石の良品
1b 鉱石の不良品
2 供給装置
3 撮像器具
4 判別装置
5 空気吹付器具
6 ベルト状搬送体
7 駆動装置
8 選別容器
9a 張架ロール
A 供給工程
B 撮像工程
C 選別工程