(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】フェノール性水酸基含有樹脂、アルカリ現像性レジスト用樹脂組成物、及びレジスト硬化性樹脂組成物、並びにフェノール性水酸基含有樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 8/20 20060101AFI20220817BHJP
C07C 49/747 20060101ALN20220817BHJP
G03F 7/11 20060101ALN20220817BHJP
【FI】
C08G8/20 B
C07C49/747 C
G03F7/11 502
G03F7/11 503
(21)【出願番号】P 2022516672
(86)(22)【出願日】2021-09-09
(86)【国際出願番号】 JP2021033079
【審査請求日】2022-03-15
(31)【優先権主張番号】P 2020162575
(32)【優先日】2020-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】今田 知之
(72)【発明者】
【氏名】長江 教夫
【審査官】堀 洋樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-202750(JP,A)
【文献】特開2010-230773(JP,A)
【文献】特開2010-235643(JP,A)
【文献】特開2011-016891(JP,A)
【文献】国際公開第2015/008560(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 8/00-8/38
C07C 1/00-409/44
G03F 7/11
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記構造式(1)で表される化合物(1)及び下記構造式(1’)で表される化合物(1’)からなる群より選ばれる1種以上のフェノール性水酸基含有化合物(1)を含有することを特徴とするフェノール性水酸基含有樹脂。
【化1】
[式中R
1は、それぞれ独立して、水素原子、脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、又はハロゲン原子であり、nは、それぞれ独立して、0~2の整数である。]
【化2】
[式中R
1は、それぞれ独立して、水素原子、脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、又はハロゲン原子であり、nは、それぞれ独立して、0~2の整数である。]
【請求項2】
下記構造式(2)で表される化合物(2)及び下記構造式(2’)で表される化合物(2’)からなる群より選ばれる1種以上のフェノール性水酸基含有化合物(2)を含有することを特徴とする請求項1に記載のフェノール性水酸基含有樹脂。
【化3】
[式中R
1は、それぞれ独立して、水素原子、脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、又はハロゲン原子であり、nは、それぞれ独立して、0~2の整数である。]
【化4】
[式中R
1は、それぞれ独立して、水素原子、脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、又はハロゲン原子であり、nは、それぞれ独立して、0~2の整数である。]
【請求項3】
前記フェノール性水酸基含有樹脂中の前記フェノール性水酸基含有化合物(1)と前記フェノール性水酸基含有化合物(2)との合計の含有量が、下記条件で測定して得られたGPCチャート図の面積比から算出される値で9%以上から45%以下までの範囲である請求項2に記載のフェノール性水酸基含有樹脂。
<GPCの測定条件>
測定装置:東ソー株式会社製「HLC-8220 GPC」
カラム :昭和電工株式会社製「Shodex KF802」(8.0mmФ×300mm)+昭和電工株式会社製「Shodex KF802」(8.0mmФ×300mm)+昭和電工株式会社製「Shodex KF803」(8.0mmФ×300mm)+昭和電工株式会社製「Shodex KF804」(8.0mmФ×300mm)
カラム温度:40℃
検出器 :RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「GPC-8020モデルIIバージョン4.30」
展開溶媒 :テトラヒドロフラン流速:1.0mL/分
試料 :樹脂固形分換算で0.5質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの
注入量 :0.1mL
標準試料 :単分散ポリスチレン(東ソー株式会社製「A-500」、東ソー株式会社製「A-2500」、東ソー株式会社製「A-5000」、東ソー株式会社製「F-1」、東ソー株式会社製「F-2」、東ソー株式会社製「F-4」、東ソー株式会社製「F-10」、東ソー株式会社製「F-20」)
【請求項4】
前記フェノール性水酸基含有樹脂が、2,7-ジヒドロキシナフタレン類とホルムアルデヒドとを、2,7-ジヒドロキシナフタレン類に対して、モル基準で1.1倍以上から10倍以下までの範囲のホルムアルデヒド、及び2,7-ジヒドロキシナフタレン類に対して、モル基準で1.1倍以上から10倍以下までの範囲のアルカリ触媒の存在下で反応させて得られるものである、請求項1~3のいずれか1項に記載のフェノール性水酸基含有樹脂。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のフェノール性水酸基含有樹脂、
感光剤、及び
有機溶剤を含有する、アルカリ現像性レジスト用樹脂組成物。
【請求項6】
請求項5に記載のアルカリ現像性レジスト用樹脂組成物を硬化した、塗膜。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか1項に記載のフェノール性水酸基含有樹脂、
硬化剤、及び
有機溶剤を含有する、レジスト硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項7に記載のレジスト硬化性樹脂組成物を硬化した、塗膜。
【請求項9】
2,7-ジヒドロキシナフタレン類とホルムアルデヒドとを、2,7-ジヒドロキシナフタレン類に対して、モル基準で1.1倍以上から10倍以下までの範囲のホルムアルデヒド、及び2,7-ジヒドロキシナフタレン類に対して、モル基準で1.1倍以上から10倍以下までの範囲のアルカリ触媒の存在下で反応させる工程を有する、
請求項1に記載のフェノール性水酸基含有樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェノール性水酸基含有樹脂、アルカリ現像性レジスト用樹脂組成物、及びレジスト硬化性樹脂組成物、並びにフェノール性水酸基含有樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LSIの高集積化と高速度化に伴い、そのパターン加工は益々の微細化が求められ、ArFエキシマレーザー光(193nm)を用いたフォトリソグラフィーにおいては、プロセス材料の光学的特性の利用やプロセス機器の改良によって、光源の波長に由来する本質的な解像限界を凌駕するものとなっている。
【0003】
フォトレジストの分野ではより微細な配線パターンを形成するための方法が種々開発されており、そのうちの一つに多層レジスト法がある。多層レジスト法では、基板上にレジスト下層膜や反射防止膜などと呼ばれる層を1層乃至複数層形成した後、その上に通常のフォトリソグラフィーによるレジストパターンを形成し、次いで、ドライエッチングにより基板へ配線パターンを加工転写する。多層レジスト法の技術において重要な部材の一つが前記レジスト下層膜であり、該下層膜には低粘度、ドライエッチング耐性が高いこと、光反射性が低いことなどが要求される。また、レジスト下層膜は溶媒希釈の状態で製膜されることからレジスト下層膜用の樹脂材料は汎用有機溶剤に可溶である必要がある。
【0004】
また、近年の超微細化された配線パターン形成はダブルパターニングやマルチパターニングとよばれる複数回の露光・エッチングを繰り返す工程が多用されており、該下層膜には前プロセスで作製した微細なパターンを穴埋めしたうえで平滑な次工程作製面を形成する重要な役割も担っている。このため、下地材料に使用されるレジスト下層膜材料は材料塗布・乾燥後に微細空間に浸潤するために低粘度、低極性であることが求められる。
【0005】
また、旧来のレジスト下層膜用のフェノール水酸基含有化合物としてアントラセン骨格含有化合物が知られている(前記特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献1に記載されているアントラセン骨格含有化合物は硬化塗膜における光反射率が低く反射防止膜としての特性は優れるが、汎用有機溶剤への溶解性は、現在の要求レベルを満たすものではなく、分子サイズと広い芳香族電子雲によるπ-π相互作用により微細空間への浸潤性が低い。
【0008】
本発明は、有機溶剤への充分な溶解性を有し、低粘度・低極性を有することにより微細空間への浸潤性に優れ、超微細化された配線パターン形成に用いることができるフェノール性水酸基含有樹脂を提供することを課題とする。
【0009】
また、本発明は、有機溶剤への充分な溶解性を有し、低粘度・低極性を有することにより微細空間への浸潤性に優れ、超微細化された配線パターン形成に用いることができるアルカリ現像性レジスト用樹脂組成物を提供することを課題とする。
【0010】
また、本発明は、有機溶剤への充分な溶解性を有し、低粘度・低極性を有することにより微細空間への浸潤性に優れ、超微細化された配線パターン形成に用いることができるレジスト硬化性樹脂組成物を提供することを課題とする。
【0011】
また、本発明は、有機溶剤への充分な溶解性を有し、低粘度・低極性を有することにより微細空間への浸潤性に優れ、超微細化された配線パターン形成に用いることができるフェノール性水酸基含有樹脂の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、特定の構造を有する化合物を含有するフェノール性水酸基含有樹脂が有機溶剤への充分な溶解性を有し、低粘度・低極性を有することにより微細空間への浸潤性に優れ、超微細化された配線パターン形成に用いることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
本発明は、下記構造式(1)で表される化合物(1)及び下記構造式(1’)で表される化合物(1’)からなる群より選ばれる1種以上のフェノール性水酸基含有化合物(1)を含有することを特徴とするフェノール性水酸基含有樹脂である。
【化1】
[式中R
1は、それぞれ独立して、水素原子、脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、又はハロゲン原子であり、nは、それぞれ独立して、0~2の整数である。]
【化2】
[式中R
1は、それぞれ独立して、水素原子、脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、又はハロゲン原子であり、nは、それぞれ独立して、0~2の整数である。]
【0014】
また、本発明は、前記フェノール性水酸基含有樹脂、
感光剤、及び
有機溶剤を含有する、アルカリ現像性レジスト用樹脂組成物である。
【0015】
また、本発明は、前記フェノール性水酸基含有樹脂、
硬化剤、及び
有機溶剤を含有する、レジスト硬化性樹脂組成物である。
【0016】
また、本発明は、2,7-ジヒドロキシナフタレン類とホルムアルデヒドとを、2,7-ジヒドロキシナフタレン類に対して、モル基準で1.1倍以上から10倍以下までの範囲のホルムアルデヒド、及び2,7-ジヒドロキシナフタレン類に対して、モル基準で1.1倍以上から10倍以下までの範囲のアルカリ触媒の存在下で反応させる工程を有する、フェノール性水酸基含有樹脂の製造方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、有機溶剤への充分な溶解性を有し、低粘度・低極性を有することにより微細空間への浸潤性に優れ、超微細化された配線パターン形成に用いることができるフェノール性水酸基含有樹脂を提供することができる。
【0018】
また、本発明によれば、有機溶剤への充分な溶解性を有し、低粘度・低極性を有することにより微細空間への浸潤性に優れ、超微細化された配線パターン形成に用いることができるアルカリ現像性レジスト用樹脂組成物を提供することができる。
【0019】
また、本発明によれば、有機溶剤への充分な溶解性を有し、低粘度・低極性を有することにより微細空間への浸潤性に優れ、超微細化された配線パターン形成に用いることができるレジスト硬化性樹脂組成物を提供することができる。
【0020】
また、本発明によれば、有機溶剤への充分な溶解性を有し、低粘度・低極性を有することにより微細空間への浸潤性に優れ、超微細化された配線パターン形成に用いることができるフェノール性水酸基含有樹脂の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】合成例1において得られたフェノール性水酸基含有樹脂のGPCチャート
【
図2】合成例1において得られたフェノール性水酸基含有樹脂のFD-MSチャート
【
図3】合成例1において得られたフェノール性水酸基含有樹脂の
13C-NMRチャート
【
図4】合成例2において得られたフェノール性水酸基含有樹脂のGPCチャート
【
図5】合成例3において得られたフェノール性水酸基含有樹脂のGPCチャート
【
図6】比較合成例1において得られたフェノール性水酸基含有樹脂のGPCチャート
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の一実施形態において、フェノール性水酸基含有樹脂は、下記構造式(1)で表される化合物(1)及び下記構造式(1’)で表される化合物(1’)からなる群より選ばれる1種以上のフェノール性水酸基含有化合物(1)を含有する。
【化3】
[式中R
1は、それぞれ独立して、水素原子、脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、又はハロゲン原子であり、nは、それぞれ独立して、0~2の整数である。]
【化4】
[式中R
1は、それぞれ独立して、水素原子、脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、又はハロゲン原子であり、nは、それぞれ独立して、0~2の整数である。]
【0023】
前記フェノール性水酸基含有樹脂は、有機溶剤への充分な溶解性を有し、低粘度・低極性を有することにより微細空間への浸潤性に優れ、超微細化された配線パターン形成に用いることができる。
【0024】
前記構造式(1)及び前記構造式(1’)において、R1は、それぞれ独立して、水素原子、脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、又はハロゲン原子である。また、nはそれぞれ独立して0~2の整数である。前記脂肪族炭化水素基は、直鎖型及び分岐型のいずれでもよく、構造中に不飽和結合を有していてもよい。前記脂肪族炭化水素基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t-ブチル基、イソブチル基等が挙げられる。前記アルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。前記ハロゲン原子の例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。中でも、微細空間への浸潤性により優れるフェノール性水酸基含有樹脂となることから、好ましくは水素原子である。
【0025】
前記フェノール性水酸基含有樹脂中のフェノール性水酸基含有化合物(1)の含有量は、有機溶剤への溶解性や、微細空間への浸潤性の観点から、GPCチャート図の面積比から算出される値で、好ましくは8%以上、より好ましくは10%以上から、好ましくは30%以下、より好ましくは25%以下までの範囲である。
【0026】
前記フェノール性水酸基含有樹脂は、本発明の効果を阻害しない範囲で、前記フェノール性水酸基含有化合物(1)の他、これ以外のその他のフェノール性水酸基含有化合物を含有していてもよい。
【0027】
前記フェノール性水酸基含有樹脂が含有し得るその他のフェノール性水酸基含有化合物の例としては、例えば、下記構造式(2)で表される化合物(2)及び下記構造式(2’)で表される化合物(2’)からなる群より選ばれる1種以上のフェノール性水酸基含有化合物(2)や、下記構造式(3)で表される化合物(3)及び下記構造式(3’)で表される化合物(3’)からなる群より選ばれる1種以上のフェノール性水酸基含有化合物
(3)等が挙げられる。
【化5】
[式中R
1は、それぞれ独立して、水素原子、脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、又はハロゲン原子であり、nは、それぞれ独立して、0~2の整数である。]
【化6】
[式中R
1は、それぞれ独立して、水素原子、脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、又はハロゲン原子であり、nは、それぞれ独立して、0~2の整数である。]
【化7】
[式中R
1は、それぞれ独立して、水素原子、脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、又はハロゲン原子であり、nは、それぞれ独立して、0~2の整数である。]
【化8】
[式中R
1は、それぞれ独立して、水素原子、脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、又はハロゲン原子であり、nは、それぞれ独立して、0~2の整数である。]
【0028】
前記フェノール性水酸基含有化合物(2)及び前記フェノール性水酸基含有化合物(3)は、前記フェノール性水酸基含有化合物(1)と同様に、下記構造式(4)で表される構造部位を有することから、有機溶剤への溶解性や、微細空間への浸潤性に優れる特徴を有する。
【化9】
[式中R
1は、それぞれ独立して、水素原子、脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、又はハロゲン原子であり、nは、それぞれ独立して、0~2の整数である。]
【0029】
前記構造式(2)、前記構造式(2’)、前記構造式(3)、前記構造式(3’)、及び前記構造式(4)において、R1は、それぞれ独立して、水素原子、脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、又はハロゲン原子である。また、nはそれぞれ独立して0~2の整数である。前記脂肪族炭化水素基は、直鎖型及び分岐型のいずれでもよく、構造中に不飽和結合を有していてもよい。前記脂肪族炭化水素基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t-ブチル基、イソブチル基等が挙げられる。前記アルコキシ基は、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。前記ハロゲン原子の例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。中でも、微細空間への浸潤性により優れるフェノール性水酸基含有樹脂となることから、好ましくは水素原子である。
【0030】
前記フェノール性水酸基含有樹脂中の前記フェノール性水酸基含有化合物(2)の含有量は有機溶剤への溶解性や、微細空間への浸潤性の観点から、GPCチャート図の面積比から算出される値で、好ましくは1%以上、より好ましくは3%以上から、好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下までの範囲である。
【0031】
更に、前記フェノール性水酸基含有樹脂中の前記フェノール性水酸基含有化合物(1)及び前記フェノール性水酸基含有化合物(2)の合計の含有量は、有機溶剤への溶解性や、微細空間への浸潤性の観点から、GPCチャート図の面積比から算出される値で、好ましくは9%以上、より好ましくは10%以上から、好ましくは45%以下、より好ましくは35%以下までの範囲である。
【0032】
前記フェノール性水酸基含有樹脂中の前記フェノール性水酸基含有化合物(3)の含有量は、有機溶剤への溶解性や、微細空間への浸潤性の観点から、GPCチャート図の面積比から算出される値で、好ましくは8%以上、より好ましくは10%以上から、好ましくは25%以下、より好ましくは20%以下までの範囲である。
【0033】
前記フェノール性水酸基含有樹脂は、更に、下記構造式(5)で表されるような、前記構造式(4)で表される構造部位を有し、かつ、前記フェノール性水酸基含有化合物(1)よりも高分子量なフェノール性水酸基含有化合物(4)を含有していてもよい。
【化10】
[式中R
1は、それぞれ独立して、水素原子、脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、又はハロゲン原子であり、nは、それぞれ独立して、0~2の整数である。mは1以上の整数である。]
【0034】
前記フェノール性水酸基含有樹脂中の前記フェノール性水酸基含有化合物(4)の含有量は、有機溶剤への溶解性や、微細空間への浸潤性の観点から、GPCチャート図の面積比から算出される値で、好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上から、好ましくは40%以下、より好ましくは35%以下までの範囲である。
【0035】
前記フェノール性水酸基含有樹脂は、どのように製造されたものであってもよく、その製法は特に限定されないが、一例として、2,7-ジヒドロキシナフタレン類とホルムアルデヒドとを、2,7-ジヒドロキシナフタレン類に対して、モル基準で1.1倍以上から10倍以下までの範囲のホルムアルデヒド、及び2,7-ジヒドロキシナフタレン類に対して、モル基準で1.1倍以上から10倍以下までの範囲のアルカリ触媒の存在下で反応させて得られるものが挙げられる。以下、前記フェノール性水酸基含有樹脂の製造方法として、2,7-ジヒドロキシナフタレン類とホルムアルデヒドとを、2,7-ジヒドロキシナフタレン類に対して、モル基準で1.1倍以上から10倍以下までの範囲のホルムアルデヒド、及び2,7-ジヒドロキシナフタレン類に対して、モル基準で1.1倍以上から10倍以下までの範囲のアルカリ触媒の存在下で反応させる反応工程について説明する。
【0036】
前記2,7-ジヒドロキシナフタレン類は、2,7-ジヒドロキシナフタレンの他、2,7-ジヒドロキシナフタレンの芳香環上に一つないし複数の置換基を有する各化合物等が挙げられる。前記置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t-ブチル基、イソブチル基等の炭化水素基;メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子等が挙げられる。2,7-ジヒドロキシナフタレン類の具体例としては、例えば、2,7-ジヒドロキシナフタレン、メチル-2,7-ジヒドロキシナフタレン、エチル-2,7-ジヒドロキシナフタレン、t-ブチル-2,7-ジヒドロキシナフタレン、メトキシ-2,7-ジヒドロキシナフタレン、エトキシ-2,7-ジヒドロキシナフタレン等が挙げられる。中でも、微細空間への浸潤性により優れるフェノール性水酸基含有樹脂となることから、2,7-ジヒドロキシナフタレンが好ましい。
【0037】
前記反応工程で用いられるホルムアルデヒドは、水溶液の状態であるホルマリン溶液でも、固形状態であるパラホルムアルデヒドでもよい。
【0038】
前記反応工程で用いられる前記アルカリ触媒は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、金属ナトリウム、金属リチウム、水素化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の無機アルカリ類などが挙げられる。
【0039】
前記反応工程における方法としては、具体的には、前記2,7-ジヒドロキシナフタレン類とホルムアルデヒドとを実質的に同時に仕込み、適当な触媒の存在下で加熱撹拌して反応を行う方法、また、前記2,7-ジヒドロキシナフタレン類と適当な触媒の混合液に、ホルムアルデヒドを連続的乃至断続的に系内に加えることによって、反応を行う方法などが挙げられる。尚、ここで実質的に同時とは、加熱によって反応が加速されるまでの間に全ての原料を仕込むことを意味する。
【0040】
前記反応工程において、前記フェノール性水酸基含有化合物(1)がより効率的に生成することから、前記2,7-ジヒドロキシナフタレン類とホルムアルデヒドとを、2,7-ジヒドロキシナフタレン類に対して、モル基準で1.1倍以上、好ましくは1.2倍以上から、10倍以下、好ましくは8倍以下までの範囲のホルムアルデヒドの存在下で反応させる。
【0041】
前記反応工程において、前記フェノール性水酸基含有化合物(1)がより効率的に生成することから、前記2,7-ジヒドロキシナフタレン類とホルムアルデヒドとを、2,7-ジヒドロキシナフタレン類に対して、モル基準で1.1倍以上、好ましくは1.2倍以上から、10倍以下、好ましくは8倍以下までの範囲の前記アルカリ触媒の存在下で反応させる。
【0042】
前記反応工程では、必要に応じて有機溶剤を使用することができる。使用できる有機溶剤は、具体的には、メチルセロソルブ、イソプロピルアルコール、エチルセロソルブ、トルエン、キシレン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない。有機溶剤の使用量としては仕込み原料の総質量に対して通常0.1倍量~5倍量の範囲であり、特に0.3倍量~2.5倍量の範囲であることが、効率的に前記化合物
(1)が得られる点から好ましい。また反応温度としては20~150℃の範囲であることが好ましく、特に60~100℃の範囲であることがより好ましい。また反応時間は、特に制限されないが、通常、1~10時間の範囲である。
【0043】
反応終了後、反応混合物のpH値が4~7になるまで中和あるいは水洗処理を行う。中和処理や水洗処理は常法にしたがって行えばよい。例えば前記アルカリ触媒を用いた場合は酢酸、燐酸、燐酸ナトリウム等の酸性物質を中和剤として用いることができる。中和あるいは水洗処理を行った後、減圧加熱下で前記有機溶剤を留去し生成物の濃縮を行い、カルボニル基含有フェノール化合物を得ることが出来る。また、反応終了後の処理操作のなかに、精密濾過工程を導入することが無機塩や異物類を精製除去することができる点から、より好ましい。
【0044】
このような反応工程で前記フェノール性水酸基含有樹脂を製造した場合、前記フェノール性水酸基含有化合物(1)、前記フェノール性水酸基含有化合物(2)、前記フェノール性水酸基含有化合物(3)、及び前記フェノール性水酸基含有化合物(4)の他、下記構造式(6)で表される前記フェノール性水酸基含有化合物(5)が生成することがある。この場合、前記フェノール性水酸基含有樹脂中の前記フェノール性水酸基含有化合物(5)の含有量は、有機溶剤への溶解性や、微細空間への浸潤性の観点から、GPCチャート図の面積比から算出される値で、好ましくは40%以下、より好ましくは35%以下までの範囲である。
【0045】
更に、前記フェノール性水酸基含有樹脂中の前記フェノール性水酸基含有化合物(3)及び前記フェノール性水酸基含有化合物(5)の合計の含有量は、有機溶剤への溶解性や、微細空間への浸潤性の観点から、GPCチャート図の面積比から算出される値で、好ましくは8%以上、より好ましくは10%以上から、好ましくは55%以下、より好ましくは45%以下までの範囲である。
【化11】
[式中R
1は、それぞれ独立して、水素原子、脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、又はハロゲン原子であり、nは、それぞれ独立して、0~2の整数である。]
【0046】
前記構造式(6)において、R1は、それぞれ独立して、水素原子、脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、又はハロゲン原子である。また、nはそれぞれ独立して0~2の整数である。前記脂肪族炭化水素基は、直鎖型及び分岐型のいずれでもよく、構造中に不飽和結合を有していてもよい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t-ブチル基、イソブチル基等が挙げられる。前記アルコキシ基は、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。前記ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。中でも、微細空間への浸潤性により優れるフェノール性水酸基含有樹脂となることから、好ましくは水素原子である。
【0047】
前記フェノール性水酸基含有樹脂の数平均分子量(Mn)は、500~1000の範囲が好ましい。重量平均分子量(Mw)は、550~1500の範囲が好ましい。また、多分散度(Mw/Mn)は1.1~3の範囲が好ましい。本明細書において、前記フェノール性水酸基含有樹脂の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(以下、「GPC」と略記する。)を用いて、実施例に記載の測定条件で測定したものである。
【0048】
前記フェノール性水酸基含有樹脂は、フォトレジスト材料、下層膜、層間絶縁膜、液晶配向膜、ブラックマトリックス、ホール形成用レジスト膜等の材料として用いることができる。
【0049】
本実施形態のアルカリ現像性レジスト用樹脂組成物は、前記フェノール性水酸基含有樹脂、感光剤、及び有機溶剤を含有する。前記アルカリ現像性レジスト用樹脂組成物によれば、低粘度・低極性を有することにより、超微細化された配線パターンを形成することができる。
【0050】
前記感光剤は、例えば、キノンジアジド基を有する化合物である。前記キノンジアジド基を有する化合物の具体例としては、芳香族(ポリ)ヒドロキシ化合物とキノンジアジド基を有するスルホン酸化合物とのエステル化合物又はアミド化物が挙げられる。尚、前記エステル化合物は部分エステル化合物も含む意味であり、前記アミド化物は部分アミド化物を含む意味である。
【0051】
前記キノンジアジド基を有するスルホン酸化合物の具体例としては、ナフトキノン-1,2-ジアジド-5-スルホン酸、ナフトキノン-1,2-ジアジド-4-スルホン酸、オルトアントラキノンジアジドスルホン酸、1,2-ナフトキノン-2-ジアジド-5-スルホン酸等が挙げられる。前記キノンジアジド基を有するスルホン酸化合物の具体例は、ハロゲンがさらに置換したハロゲン化物も使用できる。
【0052】
前記芳香族(ポリ)ヒドロキシ化合物としては、例えば、2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,4’-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,6-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,6-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4-トリヒドロキシ-2’-メチルベンゾフェノン、2,3,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3’,4,4’,6-ペンタヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,3,4,4’-ペンタヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,3,4,5-ペンタヒドロキシベンゾフェノン、2,3’,4,4’,5’,6-ヘキサヒドロキシベンゾフェノン、2,3,3’,4,4’,5’-ヘキサヒドロキシベンゾフェノン等のポリヒドロキシベンゾフェノン化合物;ビス(2,4-ジヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,3,4-トリヒドロキシフェニル)メタン、2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-(4’-ヒドロキシフェニル)プロパン、2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-2-(2’,4’-ジヒドロキシフェニル)プロパン、2-(2,3,4-トリヒドロキシフェニル)-2-(2’,3’,4’-トリヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’-{1-[4-〔2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル〕フェニル]エチリデン}ビスフェノール、4,4’-[1-[4-[1-(4-ヒドロキシフェニル)-1メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール、3,3’-ジメチル-{1-[4-〔2-(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル〕フェニル]エチリデン}ビスフェノール等のビス[(ポリ)ヒドロキシフェニル]アルカン化合物;トリス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシ-3、5-ジメチルフェニル)-4-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシ-2,5-ジメチルフェニル)-4-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシ-2,5-ジメチルフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシ-2,5-ジメチルフェニル)-3,4-ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-3,4-ジヒドロキシフェニルメタン等のトリス(ヒドロキシフェニル)メタン化合物又はそのメチル置換体;ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)-3-ヒドロキシフェニルメタン,ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン,ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)-4-ヒドロキシフェニルメタン,ビス(5-シクロヘキシル-4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン,ビス(5-シクロヘキシル-4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)-3-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5-シクロヘキシル-4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)-4-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(3-シクロヘキシル-2-ヒドロキシフェニル)-3-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5-シクロヘキシル-4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-4-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5-シクロヘキシル-4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-3-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5-シクロヘキシル-4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン、ビス
(3-シクロヘキシル-2-ヒドロキシフェニル)-4-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(3-シクロヘキシル-2-ヒドロキシフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5-シクロヘキシル-2-ヒドロキシ-4-メチルフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5-シクロヘキシル-2-ヒドロキシ-4-メチルフェニル)-4-ヒドロキシフェニルメタン等の、ビス(シクロヘキシルヒドロキシフェニル)(ヒドロキシフェニル)メタン化合物又はそのメチル置換体等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0053】
前記アルカリ現像性レジスト用樹脂組成物における前記感光剤の含有量は、良好な感度が得られ、所望のパターンが得られることから樹脂固形分(アルカリ現像性レジスト樹脂組成物から有機溶剤を除いた成分)の総質量に対し、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上から、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下までの範囲である。
【0054】
前記アルカリ現像性レジスト用樹脂組成物における有機溶剤としては、N-メチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドなどの極性の非プロトン性溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸プロピル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテートなどのエステル類、乳酸エチル、乳酸メチル、ジアセトンアルコール、3-メチル-3-メトキシブタノールなどのアルコール類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類等が挙げられる。これらの溶剤は1種類のみで用いることも2種以上併用することもできる。
【0055】
前記アルカリ現像性レジスト用樹脂組成物における有機溶剤の含有量は、当該アルカリ現像性レジスト用樹脂組成物の流動性が十分に高まり、スピンコート法等の塗布法により均一な塗膜を得られることから、当該アルカリ現像性レジスト用樹脂組成物中の固形分濃度が1質量%以上であることが好ましく、65質量%以下であることが好ましい。
【0056】
前記アルカリ現像性レジスト用樹脂組成物は、前記フェノール性水酸基含有樹脂、前記感光剤、及び前記有機溶剤の他、本発明の効果を阻害しない範囲で前記フェノール性水酸基含有樹脂以外のその他の樹脂や、各種添加剤を含有していても構わない。各種添加剤としては、充填材、顔料、レベリング剤等の界面活性剤、密着性向上剤、溶解促進剤などが挙げられる。
【0057】
前記その他の樹脂としては、前記フェノール性水酸基含有樹脂以外のフェノール樹脂;p-ヒドロキシスチレン、p-(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-ヒドロキシプロピル)スチレン等のヒドロキシ基含有スチレン化合物の単独重合体あるいは共重合体;前記フェノール樹脂又は前記ヒドロキシ基含有スチレン化合物の重合体の水酸基をt-ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基等の酸分解性基で変性した樹脂;(メタ)アクリル酸の単独重合体あるいは共重合体;ノルボルネン化合物、テトラシクロドデセン化合物等の脂環式重合性単量体と無水マレイン酸もしくはマレイミドとの交互重合体等が挙げられる。
【0058】
前記フェノール性水酸基含有樹脂以外のフェノール樹脂の具体例としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂、種々のフェノール性化合物を用いた共縮ノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂
(ザイロック樹脂)、ナフトールアラルキル樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価フェノール化合物)、ビフェニル変性ナフトール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価ナフトール化合物)、アミノトリアジン変性フェノール樹脂(メラミン、ベンゾグアナミン等でフェノール核が連結された多価フェノール化合物)やアルコキシ基含有芳香環変性ノボラック樹脂(ホルムアルデヒドでフェノール核及びアルコキシ基含有芳香環が連結された多価フェノール化合物)等のフェノール樹脂が挙げられる。
【0059】
前記フェノール性水酸基含有樹脂以外のフェノール樹脂の具体例のうち、現像性、耐熱性及び流動性のバランスに優れる感光性組成物となることから、クレゾールノボラック樹脂、及びクレゾールと他のフェノール性化合物との共縮ノボラック樹脂が好ましい。クレゾールノボラック樹脂又はクレゾールと他のフェノール性化合物との共縮ノボラック樹脂は、具体的には、o-クレゾール、m-クレゾール及びp-クレゾールから選択される1以上のクレゾールとアルデヒド化合物を必須の反応原料とし、適宜その他のフェノール性化合物を併用して得られるノボラック樹脂である。
【0060】
前記その他の樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0061】
前記アルカリ現像性レジスト用樹脂組成物中の前記その他の樹脂の含有量は、特に限定されず、所望の用途により任意に設定するとよい。例えば、前記アルカリ現像性レジスト用樹脂組成物中の樹脂成分の合計における前記フェノール性水酸基含有樹脂の割合が60質量%以上となるように設定するとよく、80質量%以上とすると好ましい。
【0062】
前記アルカリ現像性レジスト用樹脂組成物は、前記フェノール性水酸基含有樹脂、前記感光剤、及び前記有機溶剤と、さらに必要に応じて加えた各種添加剤とを通常の方法で、撹拌混合して均一な液とすることで調製できる。
【0063】
また、前記アルカリ現像性レジスト用樹脂組成物に充填材、顔料等の固形のものを配合する際には、ディゾルバー、ホモジナイザー、3本ロールミル等の分散装置を用いて分散、混合させることが好ましい。また、粗粒や不純物を除去するため、メッシュフィルター、メンブレンフィルター等を用いて該組成物をろ過することもできる。
【0064】
前記アルカリ現像性レジスト用樹脂組成物を硬化してなる塗膜は、マスクを介して露光を行うことで、露光部においては前記塗膜に構造変化が生じてアルカリ現像液に対しての溶解性が促進される。一方、非露光部においてはアルカリ現像液に対する低い溶解性を保持しているため、この溶解性の差により、アルカリ現像によりパターニングが可能となりレジスト膜として用いることができる。
【0065】
前記塗膜を露光する光源としては、例えば、赤外光、可視光、紫外光、遠紫外光、X線、電子線等が挙げられる。これらの光源の中でも紫外光が好ましく、高圧水銀灯のg線(波長436nm)、i線(波長365nm)が好適である。
【0066】
また、露光後の現像に用いるアルカリ現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ性物質;エチルアミン、n-プロピルアミン等の1級アミン;ジエチルアミン、ジ-n-ブチルアミン等の2級アミン;トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の3級アミン類;ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の4級アンモニウム塩;ピロール、ピヘリジン等の環状アミンなどのアルカリ性水溶液を使用することができる。これらのアルカリ現像液には、必要に応じてアルコール、界面活性剤等を適宜添加して用いることもできる。アルカリ現像液のアルカリ濃度は、通常2~5質量%の範囲が好ましく、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液が一般的に用いられる。
【0067】
本実施形態のレジスト硬化性樹脂組成物は、前記フェノール性水酸基含有樹脂、硬化剤、及び有機溶剤を含有する。本実施形態のレジスト硬化性樹脂組成物によれば、低粘度・低極性を有することにより、超微細化された配線パターンを形成することができる。
【0068】
前記硬化剤は、前記フェノール性水酸基含有樹脂と硬化反応を生じうる化合物であれば特に限定されず、例えば、メラミン化合物、グアナミン化合物、グリコールウリル化合物、ウレア化合物、レゾール樹脂、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、アジド化合物、アルケニルエーテル基等の2重結合を含む化合物、酸無水物、オキサゾリン化合物等が挙げられる。
【0069】
前記メラミン化合物としては、例えば、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサメチロールメラミンの1~6個のメチロール基がメトキシメチル化した化合物、ヘキサメトキシエチルメラミン、ヘキサアシロキシメチルメラミン、ヘキサメチロールメラミンのメチロール基の1~6個がアシロキシメチル化した化合物等が挙げられる。
【0070】
前記グアナミン化合物としては、例えば、テトラメチロールグアナミン、テトラメトキシメチルグアナミン、テトラメトキシメチルベンゾグアナミン、テトラメチロールグアナミンの1~4個のメチロール基がメトキシメチル化した化合物、テトラメトキシエチルグアナミン、テトラアシロキシグアナミン、テトラメチロールグアナミンの1~4個のメチロール基がアシロキシメチル化した化合物等が挙げられる。
【0071】
前記グリコールウリル化合物としては、例えば、1,3,4,6-テトラキス(メトキシメチル)グリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(ブトキシメチル)グリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(ヒドロキシメチル)グリコールウリル等が挙げられる。
【0072】
前記ウレア化合物としては、例えば、1,3-ビス(ヒドロキシメチル)尿素、1,1,3,3-テトラキス(ブトキシメチル)尿素及び1,1,3,3-テトラキス(メトキシメチル)尿素等が挙げられる。
【0073】
前記レゾール樹脂としては、例えば、フェノール、クレゾールやキシレノール等のアルキルフェノール、フェニルフェノール、レゾルシノール、ビフェニル、ビスフェノールAやビスフェノールF等のビスフェノール、ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のフェノール性水酸基含有化合物と、アルデヒド化合物とをアルカリ性触媒条件下で反応させて得られる重合体が挙げられる。
【0074】
前記エポキシ化合物としては、例えば、ジグリシジルオキシナフタレン、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール-フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール-クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、1,1-ビス(2,7-ジグリシジルオキシ-1-ナフチル)アルカン、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン-フェノール付加反応型エポキシ樹脂、リン原子含有エポキシ樹脂、フェノール性水酸基含有化合物とアルコキシ基含有芳香族化合物との共縮合物のポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0075】
前記イソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート等が挙げられる。
【0076】
前記アジド化合物としては、例えば、1,1’-ビフェニル-4,4’-ビスアジド、4,4’-メチリデンビスアジド、4,4’-オキシビスアジド等が挙げられる。
【0077】
前記アルケニルエーテル基等の2重結合を含む化合物としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、1,2-プロパンジオールジビニルエーテル、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル、テトラメチレングリコールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、1,4-シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、1,4-シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ソルビトールテトラビニルエーテル、ソルビトールペンタビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等が挙げられる。
【0078】
前記酸無水物としては、例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’-(イソプロピリデン)ジフタル酸無水物、4,4’-
(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物等の芳香族酸無水物;無水テトラヒドロフタル酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルヘキサヒドロフタル酸、無水エンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水ドデセニルコハク酸、無水トリアルキルテトラヒドロフタル酸等の脂環式カルボン酸無水物等が挙げられる。
【0079】
前記硬化剤のうち、高い硬化性が得られ、耐熱性に優れる硬化物が得られることから、グリコールウリル化合物、ウレア化合物、レゾール樹脂が好ましく、グリコールウリル化合物がより好ましい。
【0080】
前記硬化剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。前記レジスト硬化性樹脂組成物における前記硬化剤の含有量は、前記レジスト硬化性樹脂組成物の樹脂成分の合計100質量部に対し、0.5~50質量部であると好ましい。
【0081】
前記有機溶媒としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルプロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等のジアルキレングリコールジアルキルエーテル;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のアルキレングリコールアルキルエーテルアセテート;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン等のケトン化合物;ジオキサン等の環式エーテル;2-ヒドロキシプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、オキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸メチル、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、蟻酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のエステル化合物が挙げられる。
【0082】
前記有機溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。前記レジスト硬化性樹脂組成物中の前記有機溶媒の含有量は特に限定されず、例えばレジスト硬化性樹脂組成物中の前記フェノール性水酸基含有樹脂及び前記硬化剤を全て溶解できる量に設定するとよい。
【0083】
前記レジスト硬化性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意にその他成分を含んでもよい。前記その他成分としては、前記フェノール性水酸基含有樹脂以外のその他のフェノール樹脂、硬化促進剤、界面活性剤、染料、充填材、架橋剤、溶解促進剤等が挙げられる。
【0084】
前記その他のフェノール樹脂としては、例えば、ノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン等の脂環式ジエン化合物とフェノール化合物との付加重合樹脂、フェノール性水酸基含有化合物とアルコキシ基含有芳香族化合物との変性ノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂(ザイロック樹脂)、ナフトールアラルキル樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂、ビフェニル変性ナフトール樹脂、アミノトリアジン変性フェノール樹脂、ビニル重合体等が挙げられる。
【0085】
前記ノボラック樹脂の具体例としては、フェノール、クレゾール、キシレノール等のアルキルフェノール、フェニルフェノール、レゾルシノール、ビフェニル、ビスフェノールAやビスフェノールF等のビスフェノール、ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のフェノール性水酸基含有化合物と、アルデヒド化合物とを酸触媒条件下で反応させて得られる重合体等が挙げられる。
【0086】
前記ビニル重合体の具体例としては、ポリヒドロキシスチレン、ポリスチレン、ポリビニルナフタレン、ポリビニルアントラセン、ポリビニルカルバゾール、ポリインデン、ポリアセナフチレン、ポリノルボルネン、ポリシクロデセン、ポリテトラシクロドデセン、ポリノルトリシクレン、ポリ(メタ)アクリレート等のビニル化合物の単独重合体、又はこれらの共重合体等が挙げられる。
【0087】
前記その他の樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0088】
前記レジスト硬化性樹脂組成物中の前記その他の樹脂の含有量は、特に限定されず、所望の用途により任意に設定するとよい。例えば、前記レジスト硬化性樹脂組成物が含む前記フェノール性水酸基含有樹脂100質量部に対し、前記その他の樹脂が0.5~100質量部であると好ましい。
【0089】
前記硬化促進剤の具体例としては、酢酸、シュウ酸、硫酸、塩酸、フェノールスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、酢酸亜鉛、酢酸マンガン、光酸発生剤等が挙げられる。
【0090】
前記硬化促進剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0091】
前記レジスト硬化性樹脂組成物中の前記硬化促進剤の含有量は特に限定されず、前記レジスト硬化性樹脂組成物の樹脂固形分100質量部に対し、0.1~10質量部であると好ましい。
【0092】
前記レジスト硬化性樹脂組成物は、上記各成分を配合し、攪拌機等を用いて混合することにより製造することができる。また、前記レジスト硬化性樹脂組成物が充填材や顔料を含有する場合には、ディゾルバー、ホモジナイザー、3本ロールミル等の分散装置を用いて分散或いは混合して製造することができる。
【0093】
前記レジスト硬化性樹脂組成物はレジスト材料として用いることができ、前記レジスト硬化性樹脂組成物を硬化してなる塗膜はレジストとして使用できる。
【0094】
前記レジスト硬化性樹脂組成物をレジスト材料として用いる場合、前記レジスト硬化性樹脂組成物を塗材としてそのまま用いてもよいし、前記レジスト硬化性樹脂組成物を支持フィルム上に塗布し、脱溶剤してレジストフィルムとしてもよい。
【0095】
前記支持フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂フィルム等が挙げられる。前記支持フィルムは、単層フィルムでも複数フィルムからなる積層フィルムでもよい。また、前記支持フィルムの表面は、コロナ処理されたものや剥離剤が塗布されたものでもよい。
【0096】
前記レジスト硬化性樹脂組成物の塗布方法は、スピンコート、ロールコート、フローコート、ディップコート、スプレーコート、ドクターブレードコート等の何れの方法でもよい。
【0097】
前記レジスト硬化性樹脂組成物をレジスト下層膜用途に用いる場合、レジスト下層膜を作成する方法の一例としては、以下が挙げられる。
【0098】
前記レジスト硬化性樹脂組成物をシリコン基板、炭化シリコン基板、窒化ガリウム基板等フォトリソグラフィーを行う対象物上に塗布し、100~200℃の温度条件下で乾燥させた後、更に250~400℃の温度条件下で加熱硬化させる等の方法によりレジスト下層膜を形成する。次いで、この下層膜上で通常のフォトリソグラフィー操作を行ってレジストパターンを形成し、ハロゲン系プラズマガス等でドライエッチング処理することにより、多層レジスト法によるレジストパターンを形成する。
【0099】
前記レジスト硬化性樹脂組成物は、レジスト平坦膜、及びレジスト反射防止膜等の用途に用いることもできる。
【実施例】
【0100】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0101】
<GPCの測定>測定装置:東ソー株式会社製「HLC-8220 GPC」カラム:昭和電工株式会社製「Shodex KF802」(8.0mmФ×300mm)+昭和電工株式会社製「Shodex KF802」(8.0mmФ×300mm)+昭和電工株式会社製「Shodex KF803」(8.0mmФ×300mm)+昭和電工株式会社製「Shodex KF804」(8.0mmФ×300mm)カラム温度:40℃検出器:RI(示差屈折計)データ処理:東ソー株式会社製「GPC-8020モデルIIバージョン4.30」展開溶媒:テトラヒドロフラン流速:1.0mL/分試料:樹脂固形分換算で0.5質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの注入量:0.1mL標準試料:下記単分散ポリスチレン
(標準試料:単分散ポリスチレン)東ソー株式会社製「A-500」東ソー株式会社製「A-2500」東ソー株式会社製「A-5000」東ソー株式会社製「F-1」東ソー株式会社製「F-2」東ソー株式会社製「F-4」東ソー株式会社製「F-10」東ソー株式会社製「F-20」
【0102】
<FD-MSの測定>
FD-MSは日本電子株式会社製の二重収束型質量分析装置AX505H(FD505H)を用いて測定した。
【0103】
<13C-NMRスペクトルの測定>
13C-NMRスペクトルの測定は、日本電子株式会社製「AL-400」を用い、試料のAcetone-d6溶液を分析して構造解析を行った。以下に、13C-NMRスペクトルの測定条件を示す。
[13C-NMRスペクトル測定条件]
測定モード:SGNNE(NOE消去の1H完全デカップリング法)
パルス角度:45℃パルス
試料濃度:30質量%
積算回数:10000回
【0104】
<実施例>〔合成例1:フェノール性水酸基含有樹脂(A1)の合成〕
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、2,7-ジヒドロキシナフタレンを320質量部(2.0モル)、37質量%ホルムアルデヒド水溶液244質量部(3.0モル)、イソプロピルアルコール512部、48質量%水酸化カリウム水溶液351質量部(3.0モル)を仕込み、室温下、窒素を吹き込みながら撹拌した。その後、75℃に昇温し2時間攪拌した。反応終了後、第1リン酸ソーダ360質量部を添加して中和した後、イソプロピルアルコールを減圧下除去し、メチルイソブチルケトン(以下、「MIBK」と略記する。)768質量部を加えた。得られた有機層を水480質量部で3回水洗を繰り返した後に、MIBKを加熱減圧下に除去してフェノール性水酸基含有樹脂(A1)を339質量部得た。得られたフェノール性水酸基含有樹脂(A1)は固形で、GPCにて測定された数平均分子量(Mn)は584、重量平均分子量(Mw)は727、多分散度(Mw/Mn)は1.25であった。フェノール性水酸基含有樹脂(A1)のGPCチャートを
図1に、FD-MSチャートを
図2に、
13C-NMRチャートを
図3に、それぞれ示す。FD-MSスペクトルにおける332、344、374、498、516、528、700のピーク、及び
13C-NMRにより、下記化合物の生成を確認した。
【0105】
【0106】
また、GPCチャート図の面積比から算出された前記フェノール性水酸基含有樹脂(A1)に含有されている各成分の含有量は、前記フェノール性水酸基含有化合物(1)相当成分が12%、前記フェノール性水酸基含有化合物(2)相当成分が5%、前記フェノール性水酸基含有化合物(3)相当成分が12%、前記前記フェノール性水酸基含有化合物
(4)相当成分が28%、前記フェノール性水酸基含有化合物(5)相当成分が29%であった。
【0107】
〔合成例2:フェノール性水酸基含有樹脂(A2)の合成〕
合成例1における37質量%ホルムアルデヒド水溶液を203質量部(2.5モル)、48質量%水酸化カリウム水溶液を292質量部(2.50モル)に、第1リン酸ソーダを300質量部に変更した以外は合成例1と同様の方法でフェノール性水酸基含有樹脂(A2)を得た。得られたフェノール性水酸基含有樹脂(A2)は固形で、GPCにて測定された数平均分子量(Mn)は550、重量平均分子量(Mw)は687、多分散度(Mw/Mn)は1.25であった。フェノール性水酸基含有樹脂(A2)のGPCチャートを
図4に示す。
【0108】
GPCチャート図の面積比から算出された前記フェノール性水酸基含有樹脂(A2)に含有されている各成分の含有量は、前記フェノール性水酸基含有化合物(1)相当成分が10%、前記フェノール性水酸基含有化合物(2)相当成分が5%、前記フェノール性水酸基含有化合物(3)相当成分が10%、前記フェノール性水酸基含有化合物(4)相当成分が27%、前記フェノール性水酸基含有化合物(5)相当成分が34%であった。
【0109】
〔合成例3:フェノール性水酸基含有樹脂(A3)の合成〕
合成例1における37質量%ホルムアルデヒド水溶液を325質量部(4.0モル)、48質量%水酸化カリウム水溶液を585質量部(5.0モル)に、第1リン酸ソーダを600質量部に変更した以外は合成例1と同様の方法でフェノール性水酸基含有樹脂(A3)を得た。得られたフェノール性水酸基含有樹脂(A3)は固形で、GPCにて測定された数平均分子量(Mn)は613、重量平均分子量(Mw)は773、多分散度(Mw/Mnは1.26であった。フェノール性水酸基含有樹脂(A3)のGPCチャートを
図5に示す。
【0110】
GPCチャート図の面積比から算出された前記フェノール性水酸基含有樹脂(A3)に含有されている各成分の含有量は、前記フェノール性水酸基含有化合物(1)相当成分が11%、前記フェノール性水酸基含有化合物(2)相当成分が5%、前記フェノール性水酸基含有化合物(3)相当成分が11%、前記フェノール性水酸基含有化合物(4)相当成分が31%、前記フェノール性水酸基含有化合物(5)相当成分が29%であった。
【0111】
〔比較合成例1:フェノール性水酸基含有樹脂(B1)の合成〕
合成例1における37質量%ホルムアルデヒド水溶液を162部(2.0モル)、48質量%水酸化カリウム水溶液を117質量部(1.0モル)に、第1リン酸ソーダを120質量部に変更した以外は合成例1と同様の方法でフェノール樹脂(B1)を得た。得られたフェノール樹脂(B1)は固形で、GPCは数平均分子量(Mn)=528、重量平均分子量(Mw)=552、多分散度(Mw/Mn)=1.04であり、GPCの面積比から求める単結合をもつ二量体が72%、カルド構造含有のオリゴマーが25%であった。フェノール性水酸基含有樹脂(B1)のGPCチャートを
図6に示す。
【0112】
GPCチャート図の面積比から算出された前記フェノール性水酸基含有樹脂(B1)に含有されている各成分の含有量は、前記化合物(1)相当成分は観測されず、前記化合物
(2)相当成分が18%、前記化合物(3)相当成分が2%、前記高分子量成分が5%、前記化合物(4)相当成分が72%であった。
【0113】
<評価>〔保存安定性(溶剤溶解性)の評価〕
各合成例及び合成比較例で得られたフェノール性水酸基含有樹脂を10mlバイアル瓶に入れ、80℃の水浴で加温しながらプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)およびプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)に溶解させ、不揮発分20質量%になるように調整した樹脂溶液を室温まで放冷した。得られた樹脂溶液を室温で7日間放置した後、目視で不溶物の有無を評価した。評価基準は以下の通りである。A:不溶物が観測されない。B:PGMEA、PGMEいずれか一方に不溶物が観測された。C:溶解時に完全溶解しない溶媒がある。あるいは両溶媒とも不溶物が観測された。
【0114】
〔光学特性〕
各合成例及び合成比較例で得られたフェノール性水酸基含有樹脂をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に溶解させ、不揮発分5質量%の樹脂溶液とした。得られた樹脂溶液をシリコンウェハー上に塗布し、スピンコーターを使用して1500rpmで30秒スピンコートした。これを100℃のホットプレートで60秒間加熱して乾燥し、膜厚0.1μmの塗膜を得た。これらの膜について分光エリプソメーター(J.A.Woollam製:VUV-VASE GEN-1)を用い、波長193、248nmでのn値(屈折率)とk値(減衰係数)を測定した。
【0115】
〔耐エッチング性、及び穴埋め性の評価用レジスト下層膜組成物の調製〕
各合成例及び合成比較例で得られたフェノール性水酸基含有樹脂1.6質量部、硬化剤
(東京化成工業株式会社製「1,3,4,6-テトラキス(メトキシメチル)グリコールウリル」)0.4質量部、p-トルエンスルホン酸0.1質量部をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)100質量部に加え、混合、溶解し、0.2μmのメンブレンフィルターでろ過し、各実施例及び比較例に係るレジスト下層膜組成物を得た。
【0116】
〔耐エッチング性〕
得られたレジスト下層膜用組成物を直径5インチのシリコンウェハー上にスピンコーターを用いて塗布した後、酸素濃度20容量%のホットプレート内にて、180℃で60秒間加熱した。更に、350℃で120秒間加熱して、膜厚0.3μmの塗膜(レジスト下層膜)付きシリコンウェハーを得た。形成したレジスト下層膜を、エッチング装置(神鋼精機社製の「EXAM」)を使用して、CF4/Ar/O2(CF4:40mL/分、Ar:20mL/分、O2:5mL/分 圧力:20Pa RFパワー:200W 処理時間:40秒 温度:15℃)の条件でエッチング処理した。このときのエッチング処理前後の膜厚を測定して、エッチングレートを算出し、エッチング耐性を評価した。評価基準は以下の通りである。A:エッチングレートが150nm/分以下の場合B:エッチングレートが150nm/分を超える場合
【0117】
〔穴埋め性(微細空間への浸透性)〕
φ110nm、深さ300nmのホールパターンが形成された直径5インチのシリコンウェハーを用いた以外は前記同様に各実施例及び比較例に係る塗膜(レジスト下層膜)付きシリコンウェハーを得た。シリコンウェハーをホールパターン線上で割り、走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製:SU-3500)で断面の観察を行い穴埋め性を評価した。評価基準は以下の通りである。A:ホール底まで樹脂硬化物で満たされている場合B:ホール底まで樹脂硬化物が満たされていない、または一部に空隙がある場合。
【0118】
〔アルカリ溶解性〕
各合成例及び合成比較例で得られた前記フェノール性水酸基含有樹脂32質量部をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート60質量部に溶解させ、溶液とした。当該溶液を5インチシリコンウェハー上に約1μmの厚さになるようにスピンコーターで塗布し、110℃のホットプレート上で60秒乾燥させ、更に、140℃、60秒間の条件で加熱処理を行った。得られた塗膜付きウェハーをアルカリ現像液(2.38%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液)に60秒間浸漬した後、110℃のホットプレート上で60秒乾燥させた。各サンプルの現像液浸漬前後の膜厚を測定し、その差分を60で除した値をアルカリ溶解性[ADR(Å/s)]とした。
【0119】
各評価結果を表1に示す。
【0120】
【0121】
表1の結果から明らかなように、本発明の実施例に係るフェノール性水酸基含有樹脂(A1)~(A3)は溶剤溶解性、及び穴埋め性に優れ、フェノール性水酸基含有樹脂(A1)~(A3)を硬化してなる塗膜は光学特性、及び耐エッチング性に優れることから、低粘度・低極性を有し、超微細化された配線パターン形成に用いることができることが判る。一方、本発明の比較例に係るフェノール性水酸基含有樹脂(B1)は、そもそも、レジスト用途における汎用樹脂への溶解性に劣り、本発明の課題を解決できていないことが判る。
【要約】
有機溶剤への充分な溶解性を有し、低粘度・低極性を有することにより微細空間への浸潤性に優れ、超微細化された配線パターン形成に用いることができるフェノール性水酸基含有樹脂を提供する。具体的には、下記構造式(1)で表される化合物(1)及び下記構造式(1’)で表される化合物(1’)からなる群より選ばれる1種以上のフェノール性水酸基含有化合物(1)を含有することを特徴とするフェノール性水酸基含有樹脂。