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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 213/32 20060101AFI20220817BHJP
   C07D 233/61 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
C07D213/32 CSP
C07D233/61 102
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018136066
(22)【出願日】2018-07-19
(65)【公開番号】P2020011929
(43)【公開日】2020-01-23
【審査請求日】2021-06-02
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年5月8日 高分子学会予稿集67巻 発表番号1Pd064にて公開
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業(さきがけ)「三次元Gyroid極小界面を用いたプロトン伝導性空間の創成」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504132881
【氏名又は名称】国立大学法人東京農工大学
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】一川 尚広
(72)【発明者】
【氏名】小林 翼
【審査官】小路 杏
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-228588(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(A-2)で表される化合物。
【化6】

式(A-2)中、R 1A 及びR 2A は、それぞれ独立して、アルケニル基、又はアルケニル基で置換されていてもよいアルキル基を表し、X 及びX は、それぞれ独立して、カチオン性基を表し、L 2A 及びL 4A は、それぞれ独立して、炭素数が2~10のアルキレン基を表し、Y 及びY は、それぞれ独立して、アニオン性基を表し、Z 1A は、下記連結基群(Z-3)より選択される2価の連結基を表し、x及びyは、それぞれ独立して、0~5の整数を表す。
【化7】

連結基群(Z-3)中、*は、結合位置を表し、r及びsは、それぞれ独立して、1~10の整数を表す。
【請求項2】
前記X及びXが、それぞれ独立して、第4級アンモニウムカチオン、又は第4級ホスホニウムカチオンである請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記Y及びYが、それぞれ独立して、下記式(Y-1)で表される基、-SO 、-HPO 、又は-CO である請求項1又は請求項2に記載の化合物。
【化5】

式(Y-1)中、R1Yは、ハロゲン原子、又は有機基を表し、*は、結合位置を表す。
【請求項4】
前記R 1A 及びR 2A が、それぞれ独立して、下記式(R-2)で表されるアルケニル基である請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の化合物。
【化21】


式(R-2)中、R は、炭素数が6~20のアルキル基を表し、*は、結合位置を表す。
【請求項5】
前記Z 1A が、下記式(Z-4)で表される2価の連結基である請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の化合物。
【化22】


式(Z-4)中、*は、結合位置を表し、rは、1~10の整数を表す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
双性イオン化合物等のイオン性化合物は、電解質等の機能性材料の成分として注目されている。
【0003】
例えば、双性イオン塩とプロトン(H)供与体とからなる、プロトン伝導体が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
カチオン性基としてホスホニウム基、及びアニオン性基としてスルホン酸基(-SO )を有する双性イオン化合物が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また、カチオン性基としてピリジニウム基、及びアニオン性基としてスルホン酸基(-SO )を有する双性イオン化合物が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2005-228588号公報
【文献】国際公開第2016/027785号
【非特許文献】
【0007】
【文献】T. Ichikawaら著、「3D Continuous Water Nanosheet as a Gyroid Minimal Surface Formed by Bicontinuous Cubic Liquid-Crystalline Zwitterions」,Journal of the American Chemical Society,2012,134,11354-11357
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のとおり、イオン性化合物は、その特性を利用することによって様々な機能性材料への応用が期待されている。このため、新たな分子設計に基づく化合物の開発が望まれている。
【0009】
本開示は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、本開示の一実施形態は、同一分子内にカチオン部位とアニオン部位とを有する、新規な化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 下記式(A-1)で表される化合物。
【0011】
【化1】

【0012】
式(A-1)中、R及びRは、それぞれ独立して、重合性官能基と、アルキレン基と、を有する基を表し、L、L、L及びLは、それぞれ独立して、単結合、又は下記連結基群(L-1)より選択される1種の2価の連結基若しくは2種以上を組み合わせてなる2価の連結基を表し、X及びXは、それぞれ独立して、カチオン性基を表し、Y及びYは、それぞれ独立して、アニオン性基を表し、Zは、R、L、X、L、若しくはYと、R、L、X、L、若しくはYと、連結する、単結合、又は下記連結基群(Z-1)より選択される2価の連結基を表す。
【0013】
【化2】
【0014】
連結基群(L-1)中、*は、それぞれ、R、R、X、X、Y、又はYとの結合位置を表し、mは、それぞれ独立して、1~10の整数を表し、nは、それぞれ独立して、0~10の整数を表す。
【0015】
【化3】
【0016】
連結基群(Z-1)中、*は、それぞれ、R、R、L、L、L、L、X、X、Y、又はYとの結合位置を表し、p及びqは、それぞれ独立して、1~10の整数を表す。
<2> 上記Zが、上記Lと上記Lと連結している、又は上記Xと上記Xと連結している<1>に記載の化合物。
<3> 上記Rにおける上記アルキレン基の総炭素数、及び上記Rにおける上記アルキレン基の総炭素数が、それぞれ独立して、6~20である<1>又は<2>に記載の化合物。
<4> 上記R及びRが、それぞれ独立して、アルケニル基である<1>~<3>のいずれか1つに記載の化合物。
<5> 上記X及びXが、それぞれ独立して、第4級アンモニウムカチオン、又は第4級ホスホニウムカチオンである<1>~<4>のいずれか1つに記載の化合物。
<6> 上記X及びXが、それぞれ独立して、下記カチオン性基群(X-1)より選択されるカチオン性基である<1>~<5>のいずれか1つに記載の化合物。
【0017】
【化4】
【0018】
カチオン性基群(X-1)中、R1X、R2X、R3X及びR4Xは、それぞれ独立して、炭素数が1~3のアルキル基を表し、*は、それぞれ、L、L、L、又はLとの結合位置を表す。
<7> 上記Y及びYが、それぞれ独立して、下記式(Y-1)で表される基、-SO 、-HPO 、又は-CO である<1>~<6>のいずれか1つに記載の化合物。
【0019】
【化5】
【0020】
式(Y-1)中、R1Yは、ハロゲン原子、又は有機基を表し、*は、結合位置を表す。
<8> 下記式(A-2)で表される<1>~<7>のいずれか1つに記載の化合物。
【0021】
【化6】
【0022】
式(A-2)中、R1A及びR2Aは、それぞれ独立して、アルケニル基、又はアルケニル基で置換されていてもよいアルキル基を表し、X及びXは、それぞれ独立して、カチオン性基を表し、L2A及びL4Aは、それぞれ独立して、炭素数が2~10のアルキレン基を表し、Y及びYは、それぞれ独立して、アニオン性基を表し、Z1Aは、下記連結基群(Z-3)より選択される2価の連結基を表し、x及びyは、それぞれ独立して、0~5の整数を表す。
【0023】
【化7】
【0024】
連結基群(Z-3)中、*は、結合位置を表し、r及びsは、それぞれ独立して、1~10の整数を表す。
【発明の効果】
【0025】
本開示の一実施形態によれば、同一分子内にカチオン部位とアニオン部位とを有する、新規な化合物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本開示の実施形態について詳細に説明する。なお、本開示は、以下の実施形態に何ら制限されず、本開示の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0027】
本開示において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有しないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本開示において、化学構造式は、水素原子を省略した簡略構造式で記載する場合もある。
【0028】
<化合物>
本開示の化合物は、下記式(A-1)で表される。
【0029】
【化8】

【0030】
式(A-1)中、R及びRは、それぞれ独立して、重合性官能基と、アルキレン基と、を有する基を表し、L、L、L及びLは、それぞれ独立して、単結合、又は下記連結基群(L-1)より選択される1種の2価の連結基若しくは2種以上を組み合わせてなる2価の連結基を表し、X及びXは、それぞれ独立して、カチオン性基を表し、Y及びYは、それぞれ独立して、アニオン性基を表し、Zは、R、L、X、L、若しくはYと、R、L、X、L、若しくはYと連結する、単結合、又は下記連結基群(Z-1)より選択される2価の連結基を表す。
【0031】
【化9】
【0032】
連結基群(L-1)中、*は、それぞれ、R、R、X、X、Y、又はYとの結合位置を表し、mは、それぞれ独立して、1~10の整数を表し、nは、それぞれ独立して、0~10の整数を表す。
【化10】
【0033】
連結基群(Z-1)中、*は、それぞれ、R、R、L、L、L、L、X、X、Y、又はYとの結合位置を表し、p及びqは、それぞれ独立して、1~10の整数を表す。
【0034】
本開示の化合物は、重合性官能基及びアルキレン基を有する基と、カチオン性基と、アニオン性基とを有する2つの分子骨格を、Zで連結させた特異な構造を有するため、両親媒性等の種々の特性を示し得る。また、本開示の化合物は、重合性官能基を有するため、例えば、イオン性の部分構造を有する高分子材料のモノマーとして利用することもできる。このため、本開示の化合物は、電解質、物質分離媒体、触媒、帯電防止剤、洗剤、ドラッグデリバリー担体、生体適合材料、細胞生育の足場材料、接着剤、光学材料等の各種材料に好適に用いることができる。
【0035】
式(A-1)中、R及びRで表される基は、少なくとも、重合性官能基と、アルキレン基と、を有する基であれば制限されない。R及びRで表される基に、重合性官能基とアルキレン基とが含まれることにより、本開示の化合物は両親媒性を示すことができる。このため、本開示の化合物は、自己組織化能を有することができる。
【0036】
式(A-1)中、R及びRにおける重合性官能基としては、重合性を示す官能基であれば制限されず、例えば、エチレン性不飽和基、アセチレン性不飽和基等が挙げられる。ここで、「エチレン性不飽和基」とは、エチレン性の炭素-炭素二重結合を有する官能基をいい、「アセチレン性不飽和基」とは、アセチレン性の炭素-炭素三重結合を有する官能基をいう。これらの中でも、重合性官能基としては、エチレン性不飽和基であることが好ましい。
【0037】
式(A-1)中、Rにおける重合性官能基の数、及びRにおける重合性官能基の数は、それぞれ独立して、1又は2以上であることが好ましく、2以上であることがより好ましい。すなわち、R及びRにおける重合性官能基の総数は、2以上であり、3以上であることが好ましく、4以上であることがより好ましい。R及びRにおける重合性官能基の総数の上限値は、制限されず、製造性の観点から、8以下であることが好ましい。
【0038】
式(A-1)中、R及びRにおけるアルキレン基は、直鎖状のアルキレン基でもよく、分岐状のアルキレン基でもよい。また、式(A-1)中、Rにおけるアルキレン基の数、及びRにおけるアルキレン基の数は、制限されない。式(A-1)中、Rにおけるアルキレン基の総炭素数、及びRにおけるアルキレン基の総炭素数は、両親媒性の観点から、それぞれ独立して、6~20であることが好ましく、6~16であることがより好ましい。
【0039】
式(A-1)中、R及びRで表される基は、本開示の目的の範囲において、重合性官能基及びアルキレン基以外の基を有していてもよい。重合性官能基及びアルキレン基以外の基としては、例えば、フェニレン基、-C(=O)O-、-C(=O)NH-等が挙げられる。
【0040】
式(A-1)中、R及びRは、それぞれ独立して、アルケニル基であることが好ましく、炭素数が6~20のアルケニル基であることがより好ましく、炭素数が6~16のアルケニル基がさらに好ましく、炭素数が10~16のアルケニル基であることが特に好ましい。R及びRにおけるアルケニル基は、直鎖状のアルケニル基でもよく、分岐状のアルケニル基でもよい。
【0041】
上記の中でも、R及びRは、それぞれ独立して、下記式(R-1)で表されるアルケニル基であることが好ましい。X及びXで表されるカチオン性基の近傍に重合性官能基が存在することで、例えば、重合体を形成した際にイオン性の部分構造の分子間距離及び立体配置を安定に固定することができる。また、重合後も、Rの熱運動性を維持することができる。
【0042】
【化11】
【0043】
式(R-1)中、Rは、炭素数が6~16のアルキル基を表し、a及びbは、それぞれ独立して、0~2の整数を表し、*は、結合位置を表す。
【0044】
式(R-1)中、Rにおけるアルキル基は、直鎖状のアルキル基でもよく、分岐状のアルキル基でもよい。式(R-1)中、Rは、炭素数が8~16のアルキル基であることが好ましく、炭素数が8~14のアルキル基であることがより好ましい。炭素数が8~14のアルキル基としては、例えば、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基等が挙げられる。
【0045】
式(R-1)中、a及びbは、それぞれ独立して、0~2の整数を表し、0又は1が好ましく、0がより好ましい。
【0046】
式(A-1)中、R及びRは、同一であってもよく、異なっていてもよく、合成の観点から、同一であることがより好ましい。
【0047】
式(A-1)中、L、L、L及びLは、それぞれ独立して、単結合、又は上記連結基群(L-1)より選択される1種の2価の連結基若しくは2種以上を組み合わせてなる2価の連結基を表し、単結合、又は上記連結基群(L-1)より選択される2価の連結基であることが好ましく、上記連結基群(L-1)より選択される2価の連結基であることがより好ましい。
【0048】
連結基群(L-1)中、mは、それぞれ独立して、1~10の整数を表し、合成の観点から、2~10の整数であることが好ましく、2~5の整数であることがより好ましい。
【0049】
連結基群(L-1)中、nは、それぞれ独立して、0~10の整数を表し、合成の観点から、0~5の整数であることが好ましく、1~5の整数であることがより好ましく、1~4の整数であることがさらに好ましく、1又は2の整数であることが特に好ましい。
【0050】
上記の中でも、L、L、L及びLは、合成の観点から、それぞれ独立して、下記連結基群(L-2)より選択される2価の連結基であることが好ましい。
【0051】
【化12】
【0052】
連結基群(L-2)中、*は、それぞれ、R、R、X、X、Y、又はYとの結合位置を表し、mは、それぞれ独立して、1~10の整数を表し、nは、それぞれ独立して、0~10の整数を表す。連結基群(L-2)中、mは、合成の観点から、それぞれ独立して、2~10の整数であることが好ましく、2~5の整数であることがより好ましい。連結基群(L-2)中、nは、合成の観点から、それぞれ独立して、0~5の整数であることが好ましく、1~5の整数であることがより好ましく、1~4の整数であることがさらに好ましく、1又は2の整数であることが特に好ましい。
【0053】
合成の観点から、式(A-1)中、L及びLは同一であり、かつ、L及びLは同一であることが好ましい。式(A-1)中、L及びLは、下記式(L-3)で表される2価の連結基であり、かつ、L及びLは、下記式(L-4)で表される2価の連結基であることがより好ましい。
【0054】
【化13】
【0055】
式(L-3)中、*は、それぞれ、R、R、X、X、Y、又はYとの結合位置を表し、nは、それぞれ独立して、1~10の整数を表す。式(L-3)中、nは、合成の観点から、それぞれ独立して、1~5の整数であることが好ましく、1~4の整数であることがより好ましく、1又は2の整数であることが特に好ましい。
【0056】
【化14】
【0057】
式(L-4)中、*は、それぞれ、R、R、X、X、Y、又はYとの結合位置を表し、mは、1~10の整数を表す。式(L-4)中、mは、2~10の整数であることが好ましく、2~5の整数であることがより好ましい。
【0058】
式(A-1)中、X及びXで表されるカチオン性基としては、例えば、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン等が挙げられる。これらの中でも、X及びXは、安定性の観点から、それぞれ独立して、第4級アンモニウムカチオン、又は第4級ホスホニウムカチオンであることが好ましく、第4級アンモニウムカチオンであることがより好ましい。より具体的には、X及びXは、それぞれ独立して、下記カチオン性基群(X-1)より選択されるカチオン性基であることが好ましい。
【0059】
【化15】
【0060】
カチオン性基群(X-1)中、R1X、R2X、R3X及びR4Xは、それぞれ独立して、炭素数が1~3のアルキル基を表し、*は、それぞれ、L、L、L、又はLとの結合位置を表す。
【0061】
カチオン性基群(X-1)中、R1X、R2X、R3X及びR4Xにおけるアルキル基は、直鎖状のアルキル基でもよく、分岐状のアルキル基でもよい。R1X、R2X、R3X及びR4Xで表される炭素数が1~3のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。
【0062】
上記の中でも、X及びXは、それぞれ独立して、下記化合物群(X-2)より選択されるカチオン性基であることが好ましい。
【0063】
【化16】
【0064】
カチオン性基群(X-2)中、*は、それぞれ、L、L、L、又はLとの結合位置を表す。
【0065】
式(A-1)中、X及びXは、同一であってもよく、異なっていてもよく、安定性の観点から、同一であることがより好ましい。
【0066】
式(A-1)中、Y及びYで表されるアニオン性基としては、例えば、下記式(Y-1)で表される基、-SO 、-HPO 、-CO 等が挙げられる。これらの中でも、Y及びYは、安定性の観点から、それぞれ独立して、下記式(Y-1)で表される基、-SO 、-HPO 、又は-CO であることが好ましく、-SO 、-HPO 、又は-CO であることがより好ましく、-SO であることが特に好ましい。
【0067】
【化17】
【0068】
式(Y-1)中、R1Yは、ハロゲン原子、又は有機基を表し、*は、結合位置を表す。
【0069】
式(Y-1)中、R1Yで表されるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。R1Yで表されるハロゲン原子としては、フッ素原子であることが好ましい。
【0070】
式(Y-1)中、R1Yで表される有機基としては、例えば、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基、アルコキシ基等が挙げられる。
【0071】
1Yで表される有機基におけるアルキル基は、直鎖状のアルキル基でもよく、分岐状のアルキル基でもよい。アルキル基としては、炭素数が1~3のアルキル基であることが好ましい。炭素数が1~3のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。
【0072】
1Yで表される有機基におけるハロゲン化アルキル基は、直鎖状のハロゲン化アルキル基でもよく、分岐状のハロゲン化アルキル基でもよい。ハロゲン化アルキル基におけるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。ハロゲン化アルキル基としては、炭素数が1~3のハロゲン化アルキル基であることが好ましく、炭素数が1~3のフッ化アルキル基であることがより好ましく、トリフルオロメチル基であることが特に好ましい。
【0073】
1Yで表される有機基におけるアリール基は、単環で構成されるアリール基であってもよく、縮合環で構成されるアリール基であってもよく、置換基を有していてもよい。アリール基としては、炭素数が6~12のアリール基であることが好ましい。炭素数が6~12のアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、ビニルフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0074】
1Yで表される有機基におけるアルコキシ基は、直鎖状のアルコキシ基でもよく、分岐状のアルコキシ基でもよい。アルコキシ基としては、炭素数が1~3のアルコキシ基であることが好ましい。炭素数が1~3のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が挙げられる。
【0075】
上記の中でも、R1Yは、合成の観点から、ハロゲン原子、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、又はアリール基であることが好ましく、ハロゲン原子、又はハロゲン化アルキル基であることがより好ましく、フッ素原子、又は炭素数が1~3のフッ化アルキル基であることがさらに好ましく、フッ素原子、又はトリフルオロメチル基であることが特に好ましい。
【0076】
式(A-1)中、Y及びYは、同一であってもよく、異なっていてもよく、安定性の観点から、同一であることがより好ましい。
【0077】
式(A-1)中、Zは、R、L、X、L、若しくはYと、R、L、X、L、若しくはYと、連結する、単結合、又は上記連結基群(Z-1)より選択される2価の連結基を表す。R、L、X、L及びYを含む分子骨格と、R、L、X、L及びYを含む分子骨格とが、Zによって連結されていることで、安定性を向上させることができる。
【0078】
式(A-1)中、Zは、安定性の観点から、LとLと連結している、又はXとXと連結していることが好ましく、LとLと連結していることがより好ましい。
【0079】
式(A-1)中、Zは、単結合、又は上記連結基群(Z-1)より選択される2価の連結基を表し、上記連結基群(Z-1)より選択される2価の連結基であることがより好ましい。
【0080】
連結基群(Z-1)中、p及びqは、安定性の観点から、それぞれ独立して、1~10の整数を表し、4~10の整数であることがより好ましい。さらに、連結基群(Z-1)中、p及びqは、安定性の観点から、同一の整数であることがより好ましい。
【0081】
上記の中でも、Zは、安定性の観点から、下記連結基群(Z-2)より選択される2価の連結基であることが好ましい。
【0082】
【化18】
【0083】
連結基群(Z-2)中、*は、それぞれ、R、R、L、L、L、L、X、X、Y、又はYとの結合位置を表し、p及びqは、それぞれ独立して、1~10の整数を表す。
【0084】
連結基群(Z-2)中、p及びqは、それぞれ独立して、4~10の整数であることが好ましい。さらに、連結基群(Z-2)中、p及びqは、同一の整数であることがより好ましい。
【0085】
本開示の化合物は、下記式(A-2)で表される化合物であることが好ましい。X及びXで表されるカチオン性基の近傍に重合性官能基が存在することで、例えば、重合体を形成した際にイオン性の部分構造の分子間距離及び立体配置を安定に固定することができる。また、重合後も、R1Aの熱運動性を維持することができる。
【0086】
【化19】
【0087】
式(A-2)中、R1A及びR2Aは、それぞれ独立して、アルケニル基、又はアルケニル基で置換されていてもよいアルキル基を表し、X及びXは、それぞれ独立して、カチオン性基を表し、L2A及びL4Aは、それぞれ独立して、炭素数が2~10のアルキレン基を表し、Y及びYは、それぞれ独立して、アニオン性基を表し、Z1Aは、下記連結基群(Z-3)より選択される2価の連結基を表し、x及びyは、それぞれ独立して、0~5の整数を表す。
【0088】
【化20】
【0089】
連結基群(Z-3)中、*は、結合位置を表し、r及びsは、それぞれ独立して、1~10の整数を表す。
【0090】
式(A-2)中、R1A及びR2Aで表されるアルケニル基は、直鎖状のアルケニル基でもよく、分岐状のアルケニル基でもよい。R1A及びR2Aで表されるアルケニル基としては、両親媒性の観点から、炭素数が6~20のアルケニル基であることが好ましく、炭素数が6~16のアルケニル基がより好ましく、炭素数が8~16のアルケニル基であることが特に好ましい。
【0091】
式(A-2)中、R1A及びR2Aで表されるアルキル基は、アルケニル基で置換されていてもよく、無置換のアルキル基でもよい。R1A及びR2Aで表されるアルキル基は、直鎖状のアルキル基でもよく、分岐状のアルキル基でもよい。R1A及びR2Aで表されるアルキル基としては、両親媒性の観点から、炭素数が6~20のアルキル基であることが好ましく、炭素数が6~16のアルケニル基がより好ましく、炭素数が8~16のアルキル基であることが特に好ましい。
置換基としてのアルケニル基は、直鎖状のアルケニル基でもよく、分岐状のアルケニル基でもよい。置換基としてのアルケニル基としては、炭素数が2~10のアルケニル基であることが好ましく、炭素数が2~6のアルケニル基がより好ましい。
【0092】
上記の中でも、R1A及びR2Aは、両親媒性の観点から、それぞれ独立して、下記式(R-2)で表されるアルケニル基であることが好ましい。
【0093】
【化21】
【0094】
式(R-2)中、Rは、炭素数が6~20のアルキル基を表し、*は、結合位置を表す。
【0095】
式(R-2)中、Rで表されるアルキル基は、直鎖状のアルキル基でもよく、分岐状のアルキル基でもよい。式(R-2)中、Rは、炭素数が6~16のアルキル基であることが好ましく、炭素数が8~14のアルキル基であることがより好ましい。炭素数が8~14のアルキル基としては、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基等が挙げられる。
【0096】
式(A-2)中、R1A及びR2Aは、同一であってもよく、異なっていてもよく、安定性の観点から、同一であることがより好ましい。
【0097】
式(A-2)中、X及びXで表されるカチオン性基は、式(A-1)中のX及びXで表されるカチオン性基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0098】
式(A-2)中、X及びXは、同一であってもよく、異なっていてもよく、合成の観点から、同一であることがより好ましい。
【0099】
式(A-2)中、L2A及びL4Aは、それぞれ独立して、炭素数が2~10のアルキレン基を表し、合成の観点から、炭素数が2~6のアルキレン基であることが好ましい。L2A及びL4Aにおけるアルキレン基は、直鎖状のアルキレン基であってもよく、分岐状のアルキレン基であってもよく、また、無置換のアルキレン基であってもよく、置換基(例えば、メチル基等)を有するアルキレン基であってもよい。炭素数が2~6のアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、ヘキシレン基等が挙げられる。上記の中でも、L2A及びL4Aは、合成の観点から、それぞれ独立して、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、又はイソブチレン基であることが好ましく、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、又はイソブチレン基であることがより好ましく、プロピレン基、又はブチレン基であることが特に好ましい。
【0100】
式(A-2)中、L2A及びL4Aは、同一であってもよく、異なっていてもよく、合成の観点から、同一であることがより好ましい。
【0101】
式(A-2)中、Y及びYで表されるアニオン性基は、式(A-1)中のY及びYで表されるアニオン性基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0102】
式(A-2)中、Y及びYは、同一であってもよく、異なっていてもよく、合成の観点から、同一であることがより好ましい。
【0103】
式(A-2)中、x及びyは、それぞれ独立して、0~5の整数を表し、合成の観点から、1~5の整数であることがより好ましく、1~4の整数であることがさらに好ましく、1又は2の整数であることが特に好ましい。式(A-2)中、x及びyは、合成の観点から、同一であることが好ましい。
【0104】
連結基群(Z-3)中、r及びsは、それぞれ独立して、1~10の整数を表し、合成の観点から、4~10の整数であることがより好ましい。連結基群(Z-3)中、r及びsは、合成の観点から、同一の整数であることが好ましい。
上記の中でも、Z1Aは、合成の観点から、下記式(Z-4)で表される2価の連結基であることがより好ましい。
【0105】
【化22】
【0106】
式(Z-4)中、*は、結合位置を表し、rは、1~10の整数を表す。rは、合成の観点から、4~10の整数であることが好ましい。
【0107】
式(A-2)における、R1A、R2A、X、X、L2A、L4A、Y、Y、及びZ1Aの好ましい組み合わせとしては、安定性、合成等の観点から、R1A及びR2Aは、それぞれ独立して、上記式(R-2)で表されるアルケニル基であり、X及びXは、それぞれ独立して、上記化合物群(X-2)より選択されるカチオン性基であり、L2A及びL4Aは、それぞれ独立して、炭素数が2~6のアルキレン基であり、Y及びYは、それぞれ独立して、-SO 、-HPO 、又は-CO であり、Z1Aは、上記式(Z-4)で表される2価の連結基である。各構成のより好ましい態様は、既述のとおりである。
【0108】
以下、式(A-1)で表される化合物の具体例を示す。ただし、本開示は、以下の例示に制限されない。
【0109】
【化23】
【0110】
【化24】
【0111】
[化合物の合成方法]
本開示の化合物の合成方法は、制限されず、目的とする化合物に応じて通常用いられる方法から適宜選択することができる。式(A-1)で表される化合物の合成方法としては、例えば、(1)R、L、X、L及びYを含む部分構造と、R、L、X、L及びYを含む部分構造と、をZで連結する方法、(2)X又はその前駆体を含む部分構造と、X又はその前駆体を含む部分構造と、をZで連結した後、R及びRを導入し、次いで、Y及びYを導入する方法、(3)Rを含む部分構造と、Rを含む部分構造と、をZで連結した後、X又はその前駆体を含む部分構造及びX又はその前駆体を含む部分構造を導入し、次いで、Y及びYを導入する方法等が挙げられる。
【0112】
本開示の化合物の合成方法を、式(A-2)で表される化合物を例に説明する。式(A-2)で表される化合物の合成は、例えば、以下の反応式によって行われる。
【0113】
【化25】
【0114】
上記反応式中の記号は、上述の式(A-2)中の記号と同義である。上記反応式中、X1’、X2’、L2A’、L4A’、Y1’及びY2’は、それぞれ、X、X、L2A、L4A、Y及びYを構築するための部分構造を表す。
【0115】
上記反応式では、式(1a)で表されるジアミン化合物に、カチオン性基の前駆体を含む部分構造を導入することによって、式(1b)で表される化合物を合成する。次に、式(1b)で表される化合物のイミン骨格を還元し、式(1c)で表される化合物を合成する。式(1c)で表される化合物及び式(1d)で表される化合物を反応させ、式(1c)で表される化合物に重合性官能基を導入することで、式(1e)で表される化合物を合成する。そして、式(1e)で表される化合物にアニオン性基を導入することによって、式(A-2)で表される化合物を得ることができる。
【0116】
本開示の化合物の合成方法を、上述の化合物A1を例に説明する。化合物A1の合成は、例えば、以下の反応式によって行われる。
【0117】
【化26】
【0118】
上記反応式では、事前に合成した化合物3及び化合物5を反応させることで化合物6を合成し、次いで、得られた化合物6及びスルトンの反応により、カチオン性及びアニオン性基を形成することによって化合物A1を合成している。上記反応式中、化合物3は、上述の反応式中の式(1d)で表される化合物に、化合物4は、上述の反応式中の式(1b)で表される化合物に、化合物5は、上述の反応式中の式(1c)で表される化合物に、化合物6は、上述の反応式中の式(1e)で表される化合物に、それぞれ該当する。
化合物3は、水素化ナトリウム存在下で化合物1及びホスホノ酢酸トリエチルを反応させることで得られる化合物2のエステル基を、カルボキシ基に変換することによって得ることができる。化合物5は、1,6-ヘキサンジアミン及び4-ピリジンカルボキシアルデヒドの反応によって得られる化合物4のイミン骨格を、水素化ホウ素ナトリウムで還元することで得ることができる。化合物6は、化合物3及び化合物5の反応によって得ることができる。そして、化合物6及び1,3-プロパンスルトンの反応により、ピリジン骨格をピリジニウム骨格に変換し、そして、-SO を導入することで、化合物A1を得ることができる。
【0119】
本開示の化合物のような極性の高い化合物は、通常、精製が容易ではない。そのため、本開示の化合物の合成方法においては、上記反応式に示されるとおり、カチオン性基及びアニオン性基を形成する反応を、合成手順の後半の段階に、より好ましくは最後の段階に設けることで、目的物を良好な収率で得ることができる。また、重合性官能基を導入する反応後の各反応における温度は、熱重合を防ぐ観点から、120℃以下であることが好ましい。
【0120】
また、化合物A1は、上記反応式において、化合物4に代えて以下の反応式によって合成される化合物を用いて合成することができる。
【0121】
【化27】
【0122】
化合物A1以外の化合物についても、上記反応式及び公知の手法を応用することで合成することができる。例えば、上記反応式において、1,3-プロパンスルトンに代えて1-メチル-1,3-プロパンスルトンを用いることで、上述の化合物A2を合成することができる。同様に、1,3-プロパンスルトンに代えて1,4-ブタンスルトンを用いることで、上述の化合物A4を合成することができる。また、上記反応式において、1,6-ヘキサンジアミンに代えて1,10-デカンジアミンを用いることで、上述の化合物A3を合成することができる。同様に、1,6-ヘキサンジアミンに代えて1,4-フェニレンジアミンを用いることで、上述の化合物A6を合成することができる。そして、上記反応式において、化合物5に代えて以下の反応式によって合成される化合物を用いることで、上述の化合物A9を合成することができる。
【0123】
【化28】
【0124】
また、上記反応式において、化合物6に代えて以下の反応式によって合成される化合物を用いることで、上述の化合物A10を合成することができる。
【0125】
【化29】
【0126】
上述のとおり、本開示の化合物は、目的とする化合物に応じて、上記の記載、後述の実施例の記載、及び公知の手法を応用することで合成することができる。
【実施例
【0127】
以下、実施例により本開示を詳細に説明するが、本開示はこれらに制限されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は質量基準である。
【0128】
<実施例1>
[化合物A1の合成]
以下の反応式にしたがって、化合物A1を合成した。
【0129】
【化30】
【0130】
THF(100mL)に溶解させたホスホノ酢酸トリエチル(4.64g、20.7mmol)の溶液を、水素化ナトリウム(0.802g、20.1mmol)及びTHF(100mL)を含む懸濁液に0℃にて滴下した後、室温で1時間撹拌した。得られた溶液に、化合物1(4.05g、22.2mmol)を滴下し、65℃で30分反応させることによって、化合物2を得た。
【0131】
化合物2をエタノール(100mL)及び水(5mL)に溶解させ、得られた溶液に水酸化ナトリウム(0.90g、22.5mmol)を添加し、60℃で3時間反応させることによって、白色固体の化合物3のナトリウム塩を得た。この化合物を希塩酸中で撹拌することで、白色固体の化合物3を得た(収率77%)。
【0132】
化合物3のH-核磁気共鳴(NMR)スペクトルを以下に示す。
H NMR(400MHz CDCl):δ=7.35(m,1H),6.19(m,2H),5.78(d,1H),2.17(m,2H),1.26-1.34(m,14H),0.88 (t,3H)
【0133】
【化31】
【0134】
1,6-ヘキサンジアミン(2.70g、23.3mmol)及び4-ピリジンカルボキシアルデヒド(5.00g、46.7mmol)をエタノール(50mL)に添加し、4時間還流加熱することによって化合物4を含む溶液を得た。得られた溶液に、水素化ホウ素ナトリウム(2.16g、57.7mmol)のエタノール分散溶液を滴下し、4時間還流加熱することによって、白色固体の化合物5を得た(収率83%)。
【0135】
化合物5のH-核磁気共鳴(NMR)スペクトルを以下に示す。
H NMR(400MHz,CDCl):δ=8.49(dd,J=8.0,2.8Hz,4H),7.50(d,J=8.0Hz,4H),3.82(s,4H),2.64(t,J=6.72Hz,4H),1.81(t,J=8.4Hz,4H)
【0136】
【化32】
【0137】
化合物5(1.00g、3.35mmol)、化合物3(2.1g、10.1mmol)、トリエチルアミン(EtN、2.04g、20.2mmol)、及び1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt、1.36g、10.1mmol)を、ジクロロメタン(100mL)中で、0℃で撹拌した。5分後、得られた溶液に、ジクロロメタン(50mL)に1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC/HCl、1.94g、10.1mmol)を懸濁させた液を滴下し、室温で12時間反応させることによって、液体状の化合物6を得た(収率76%)。
【0138】
化合物6のH-核磁気共鳴(NMR)スペクトルを以下に示す。
H NMR(400MHz,CDCl):δ=8.56(m,4H),7.39-7.35(m,4H),7.13(m,4H),6.25-6.02(m,6H),4.61(d,4H),3.48-3.27(m,4H),2.18-2.12(m,4H),1.56-1.27(m,36H),0.87(t,J=6.8Hz,6H)
【0139】
化合物6(1.80g、2.50mmol)、及び過剰量の1,3-プロパンスルトンを、トルエン、アセトニトリル及び2-プロパノールの混合溶液(体積比=10:10:1)に溶解させ、8時間還流加熱することによって、黄色固体の化合物A1を得た(収率79%)。
【0140】
化合物A1のH-核磁気共鳴(NMR)スペクトル、及び13C-核磁気共鳴(NMR)スペクトルを以下に示す。
H NMR(400MHz,CDOD):δ=8.97-8.90(m,4H),7.92(d,4H),7.27(t,J=9.2Hz,4H),6.52(d,J=14.4Hz,2H),6.40(t,J=10.4Hz,2H),6.24-6.16(m,2H),4.80-4.77(m,4H),3.59-3.49(m,4H),2.83(t,J=7.2Hz,4H),2.43(t,J=6.8Hz,4H),2.22-2.20(m,4H),1.68-1.30(m,34H),0.90(m,6H)
13C NMR(100MHz,Methanol+CDCl):168.32,159.64,144.43,128.80,125.99,117.22,59.34,49.79,49.08,31.75,29.54,29.39,29.28,29.14,29.04,28.66,26.96,26.18,22.45,21.22,13.25
【0141】
<実施例2>
[化合物A11の合成]
以下の反応式にしたがって、化合物A11を合成した。
【0142】
【化33】
【0143】
上記と同様の手順により合成した化合物3(3.20g、15.2mmol)及び1,4-フェニレンジアミン(0.75g、6.91mmol)に、N,N’-ジメチルホルムアミド(DMF、100mL)及び1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC/HCl、2.91g、15.2mmol)を添加した後、室温で12時間撹拌し、白色固体の化合物7を得た(収率50%)。
【0144】
化合物7(0.5g、1.02mmol)及び水素化ナトリウム(0.073g、3.044mmol)を、トルエン及びジメチルスルホキシドの混合溶媒(30mL、体積比=1:1)中で30分間反応させた。次いで、1-4-ジブロモヘキサンを反応溶液に添加し、80℃で1時間反応させることによって、固体の化合物8を得た(収率52%)。
【0145】
化合物8のH-核磁気共鳴(NMR)スペクトルを以下に示す。
H NMR(400MHz,CDCl):δ=7.30(m,2H),7.28(s,4H),6.15-5.95(m,4H),5.66(d,2H),3.85(m,4H),3.44(m,4H),2.10(m,4H),1.90(m,4H),1.74(m,4H),1.38(m,4H)1.24(m,24H),0.87(t,J=6.8Hz,6H)
【0146】
イミダゾール(0.937g、13.8mmol)、及び水素化ナトリウム(0.55g、13.8mmol)を、N,N’-ジメチルホルムアミド(DMF、30mL)中で30分間反応させた。得られた溶液に、化合物8(1.0g、1.38mmolを添加し、12時間室温で反応させることで、黄色固体の化合物9を得た(収率49%)。
【0147】
化合物9のH-核磁気共鳴(NMR)スペクトルを以下に示す。
H NMR(400MHz,CDCl):δ=7.44(s,2H),7.31(s,4H),7.30(m,2H),7.13(s,2H),7.09(s,2H),6.94(s,2H),6.18-5.95(m,4H),5.60(d,J=14.4Hz,2H),3.99(m,4H),3.81(m,4H),2.10(m,4H),1.81(m,4H),1.71(m,4H),1.56(m,4H),1.36(m,4H),1.24(m,24H),0.85(m,J=6.8Hz,6H)
【0148】
化合物9(0.50g、0.678mmol)、及び過剰量の1,3-プロパンスルトンを、トルエン、アセトニトリル及び2-プロパノールの混合溶液(体積比=10:10:1)に溶解させ、8時間還流加熱することによって、黄色固体の化合物A11を得た(収率90%)。
【0149】
化合物A11のH-核磁気共鳴(NMR)スペクトルを以下に示す。
H NMR(400MHz,CDCl):δ=9.46(s,2H),7.65(d,2H),7.51(d,2H),7.23(m,6H),6.12-5.90(m,4H),5.64(d,2H),4.45(m,4H),4.25(m,4H),3.80(m,4H),2.75(m,4H),2.29(m,4H),2.09(m,4H),1.87(m,4H),1.55(m,4H),1.35(m,4H),1.22(m,24H),0.84(m,J=6.8Hz,6H)