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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】走行装置
(51)【国際特許分類】
   A61G 5/06 20060101AFI20220817BHJP
   B62B 3/00 20060101ALI20220817BHJP
   B62B 5/02 20060101ALI20220817BHJP
   B62B 5/04 20060101ALI20220817BHJP
   B62D 61/12 20060101ALI20220817BHJP
   A61G 5/04 20130101ALI20220817BHJP
   B62D 57/032 20060101ALN20220817BHJP
【FI】
A61G5/06
B62B3/00 A
B62B3/00 B
B62B5/02 E
B62B5/04 A
B62D61/12
A61G5/04 701
A61G5/04 710
B62D57/032 P
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019073065
(22)【出願日】2019-04-05
(65)【公開番号】P2020168313
(43)【公開日】2020-10-15
【審査請求日】2021-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】高畑 智之
(72)【発明者】
【氏名】小坂 雄介
(72)【発明者】
【氏名】出尾 隆志
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2000-514680(JP,A)
【文献】国際公開第2016/006248(WO,A1)
【文献】特表2016-511666(JP,A)
【文献】特開2008-128393(JP,A)
【文献】特開2013-052858(JP,A)
【文献】特開2007-61342(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 5/00-14
B62B 3/00
B62B 5/02-04
B62D 61/12
B62D 57/032
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
前記車体の前方に配置された第1の車輪と、
揺動軸を介して車体に取り付けられ、前記第1の車輪と前記第1の車輪の後方に位置する前記揺動軸との間に連結された伸縮可能な第1のリンクと、
前記車体と前記第1のリンクとの間に連結される第1の直動機構であって、前記第1の リンクの途中に連結され、前記第1のリンクを前記揺動軸周りに回転させるとともに第1 のリンクの長さを変えるように伸縮するリンクと、前記リンクを伸縮させる駆動部とを備 えた第1の直動機構と、
前記第1のリンクの前記揺動軸周りの回転を制限する第1のブレーキと、
前記第1のリンクの伸縮を制限する第2のブレーキと、
前記第1の車輪の後ろ側に配置された第2の車輪と、
前記第2の車輪を上下させる駆動機構と、
前記第2の車輪の後ろ側に配置された第3の車輪と、
前記第2の車輪と前記第3の車輪とを連結する第2のリンクと、を備え、
前記駆動機構が、前記第2のリンクと前記車体との間に連結され、前記第2のリンクを 回転させる第2の直動機構である走行装置。
【請求項3】
前記第2及び第3の車輪の少なくとも一方にダイラタンシー流体が封入されている請求 項1,又は2に記載の走行装置。
【請求項4】
前記第1の車輪、前記第2の車輪、前記第3の車輪、前記第1の直動機構、及び第2の直動機構がそれぞれ、前記走行装置の左右に配置されて、独立に駆動される請求項1~3 のいずれか1項に記載の走行装置。
【請求項5】
前記第1の車輪の回転を制限する車輪ブレーキをさらに備えた請求項1~4のいずれか 1項に記載の走行装置。
【請求項7】
前記第1のリンクの伸縮方向が前記第1の直動機構の伸縮方向と異なっている請求項1 ~6のいずれか1項に記載の走行装置。
【請求項8】
前記第1のリンクが、
前記揺動軸に回転可能に取り付けられた基部と、
前記第1の直動機構が取り付けられ、前記基部に対してスライドする可動部と、を備え ている請求項1~7のいずれか1項に記載の走行装置。
【請求項9】
前記第1の直動機構が車体に対して回転可能に取り付けられている請求項1~8のいず れか1項に記載の走行装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、階段を昇降可能な走行装置が開示されている。特許文献1に開示された走行装置は、6つの車輪を有している。左右の前輪が駆動輪となっている。左右の前輪の後ろには、片側に2つの車輪が配置されている。さらに、車体と前輪とを連結する第1の直動機構が伸縮する。車体と中輪とを連結する第2の直動機構が伸縮する。
【0003】
中輪と後輪とは第1のリンクで連結されている、第1のリンクと車体とは第2のリンクで連結されている。さらに、走行装置は、車体と第2のリンクとの間の角度を変えるアクチュエータを備えている。第1の直動機構、第2の直動機構、アクチュエータが動作することで階段の昇降が可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2016/006248号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような走行装置において、性能をより向上したいという要求がある。例えば、より高い段差を昇降できるように、走行性能を高めたいという要求がある。また、小型化、軽量化のため、より装置構成を簡素化したいという要求がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであって、簡素な構成で高い走行性能を有する走行装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施の形態に係る走行装置は、車体と、前記車体の前方に配置された第1の車輪と、前記第1の車輪と前記第1の車輪の後方に位置する揺動軸との間に連結された伸縮可能な第1のリンクと、前記車体と前記第1のリンクとの間に連結され、前記第1のリンクを前記揺動軸周りに回転させるように伸縮する第1の直動機構と、を備えている。このような構成により、簡素な構成で高い走行性能を実現することができる。
【0008】
上記の走行装置は、前記第1のリンクの前記揺動軸周りの回転を制限する第1のブレーキと、前記第1のリンクの伸縮を制限する第2のブレーキと、前記第1の車輪の後ろ側に配置された第2の車輪と、前記第2の車輪を上下させる駆動機構と、をさらに備えていてもよい。この構成によれば、第1のリンクを適切に制御することができるため、確実に段差を昇降することができる。
【0009】
上記の走行装置は、前記第2の車輪の後ろ側に配置された第3の車輪と、前記第2の車輪と前記第3の車輪とを連結する第2のリンクと、をさらに備え、前記駆動機構が、前記第2のリンクと前記車体との間に連結され、前記第2のリンクを回転させる第2の直動機構であってもよい。第2の直動機構が第2及び第3の車輪を上下させることができる。
【0010】
上記の走行装置は、前記第1~第3の車輪の少なくとも2つが駆動輪であってもよい。この構成により、簡易な構成で高い走行性能を実現することができる。
【0011】
上記の走行装置は、前記第2及び第3の車輪の少なくとも一方にダイラタンシー流体が封入されていてもよい。この構成により、簡易な構成で高い走行性能を実現することができる。
【0012】
上記の走行装置は、前記第1の車輪、前記第2の車輪、前記第3の車輪、前記第1の直動機構、及び第2の直動機構がそれぞれ、前記走行装置の左右に配置されて、独立に駆動されていてもよい。これにより、走行性能を向上することができる。
【0013】
上記の走行装置は、前記第1の車輪の回転を制限する車輪ブレーキをさらに備えていてもよい。昇降時の滑りを防ぐことができるため、走行性能を向上することができる。
【0014】
本実施の形態の他の態様にかかる走行装置は、車体と、前記車体の前方に配置された第1の車輪と、前記第1の車輪を上下させる第1の駆動機構と、前記第1の車輪の後ろ側に配置された第2の車輪と、前記第2の車輪の後ろ側に配置された第3の車輪と、を備え、前記第1~第3の車輪の少なくとも2つが駆動輪であるものである。この構成により、簡易な構成で高い走行性能を実現することができる。
【0015】
上記の走行装置は、前記第2及び第3の車輪の一方に設けられたインホイールモータと、前記インホイールモータの駆動力を前記第2及び第3の車輪の他方に伝達する伝達機構と、をさらに備えていてもよい。この構成により、簡易な構成で高い走行性能を実現することができる。
【0016】
本実施の形態の他の態様にかかる走行装置は、段差を昇降可能な走行装置であって、車体と、ダイラタンシー流体が封入された車輪と、を備えたものである。この構成により、簡易な構成で高い走行性能を実現することができる。
【0017】
上記の走行装置は、第1の車輪と、前記第1の車輪の後ろ側に配置された第2の車輪と、前記第2の車輪の後ろ側に配置された第3の車輪と、前記第1の車輪を上下に移動させる駆動機構と、をさらに備え、前記第2及び前記第3の車輪の少なくとも一方が、前記ダイラタンシー流体が封入された車輪であってもよい。この構成により、走行装置が、段差を容易に昇降することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、簡素な構成で高い走行性能を有する走行装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施形態に係る乗り物の構成を示す側面図である。
図2】本実施形態に係る乗り物の構成を示す正面図である。
図3】本実施形態に係る乗り物の構成を示す斜視図である。
図4】本実施形態に係る乗り物の構成を示す側面断面図である。
図5】第1のリンクの動作を説明するための図である。
図6】ダイラタンシー流体を封入した車輪が段差に衝突した状態を示す図である。
図7】チェアモードでの可変機構の構成を模式的に示す側面図である。
図8】ドライブモードでの可変機構の構成を模式的に示す側面図である。
図9】スタンドモードでの可変機構の構成を模式的に示す側面図である。
図10】上りエスカレータでの可変機構の構成を模式的に示す側面図である。
図11】下りエスカレータでの可変機構の構成を模式的に示す側面図である。
図12】段差の昇降動作を説明する側面図である。
図13】段差の昇降動作を説明する側面図である。
図14】段差の昇降動作を説明する側面図である。
図15】2段以上の階段を昇る動作を示す図である。
図16】2段以上の階段を昇る動作を示す図である。
図17】乗り物の制御系を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を適用した具体的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、本発明が以下の実施形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
【0021】
実施の形態1.
(全体構成)
本実施の形態に係る走行装置の一例である乗り物について、図1図3を用いて説明する。図1は、乗り物1の構成を示す側面図であり、図2は、正面図である。図3は、乗り物1の構成を示す斜視図であり、図4は、側面断面図である。
【0022】
図1図4では、XYZ直交座標系を用いて説明する。+X方向が乗り物1の前方になり、-X方向が乗り物1の後方になっている。また、+Y方向が乗り物1の左方向となり、-Y方向が乗り物1の右方向となっている。+Z方向が鉛直上方となり、-Z方向が鉛直下方となっている。
【0023】
乗り物1は、搭乗席3と、フットレスト4と、背もたれ5と、入力部74と、前輪11と、中輪12と、後輪13と、可変機構20と、を備えている。なお、乗り物1の主要部は、左右対称な構成を有しており、フットレスト4、前輪11、中輪12、及び後輪13は、それぞれ左右両側に設けられている。
【0024】
したがって、図2図4では、乗り物1の左側(+Y側)に配置されたフットレスト4、前輪11、中輪12、後輪13をそれぞれフットレスト4L、前輪11L、中輪12L、後輪13Lとして示している。同様に、図2図4では、乗り物1の右側(-Y側)に配置されたフットレスト4、前輪11、中輪12をそれぞれフットレスト4R、前輪11R、中輪12Rとして示している。図2、及び図3において、後輪13Rは、他の構成要素に隠れているが、後輪13Lと左右対称に配置されている。なお、以下の説明において、左右の構成を特に区別しない場合は、L、Rを付さずに説明を行う。また、可変機構20も左右対称な構造を有している。
【0025】
X方向において、前輪11と後輪13との間に、中輪12が配置されている。すなわち、前輪11は中輪12及び後輪13の前側(+X側)に配置され、後輪13は、中輪12及び前輪11よりも後ろ側(-X側)に配置されている。XZ平面において、前輪11Lの車軸と前輪11Rの車軸は同じ位置になっている。XZ平面において、中輪12Lの車軸と中輪12Rの車軸は同じ位置になっており、後輪13Lの車軸と後輪13Rの車軸は同じ位置になっている。
【0026】
中輪12と後輪13は駆動輪であり、モータ等の駆動によって回転する。中輪12Lと中輪12Rは異なるモータに接続されて、独立に回転する。例えば、中輪12Rには、モータ121Rが接続され、中輪12Lにはモータ121Lが接続されている。つまり、モータ121Rが中輪12Rを回転駆動する。モータ121Lが中輪12Lを回転駆動する。モータ121R,121Lはそれぞれ中輪12R、12L内に設けられたインホイールモータである。
【0027】
さらに、モータ121Lの駆動力は伝達機構122Lを介して、後輪13Lに伝達される。伝達機構122Lは、ベルトやチェーンなどを有している。さらに、伝達機構122Lは、ベルトなどを張設するためのプーリなどを備えていてもよい。モータ121Lの駆動力が後輪13Lに伝達する。これにより、中輪12Lと後輪13Lとが、一つのモータ121Lにより、前後方向に離れた車軸で回転する。なお、中輪12Lと後輪13Lは同じ方向に回転する。また、中輪12Rのモータ121Rの駆動力も、同様に伝達機構122Rを介して、後輪13Rに伝達される。また、後輪13L、13Rは全方位車輪となっている。
【0028】
また、図1に示すように、伝達機構122としてのベルトに張力(テンション)を与えるテンショナ123が第2のリンク25には設けられている。テンショナ123は、伝達機構122のベルトの下側に設けることが好ましい。このようにすることで、段差の昇降時にベルトが段差に接触することを防ぐことができる。また、伝達機構122をカバーなどで覆うようにしてもよい。
【0029】
前輪11は、従動輪となっており、乗り物1の移動に応じて回転する。すなわち、中輪12、及び後輪13が駆動して、乗り物1が移動すると、乗り物1の移動に追従して前輪11が回転する。このように、乗り物1は、4輪駆動の6輪車となっている。
【0030】
このようにすることで、走行性能を向上することができる。例えば、段差の手前に溝がある場合であっても、中輪12、又は後輪13が駆動しているため、乗り物1が段差により近づくことができる。つまり、前輪11が接地していない場合であっても、前進するための駆動力を確保することができる。よって、段差の手前に溝がある場合であっても、前輪11が溝を越えることができる。前輪11が段差により近づいた状態で、第1の直動機構22が前輪11を上下させることができる。段差上の適切な位置に前輪11を下ろすことができるため、様々な形状の段差に対応することができる。また、中輪12,又は後輪13が接地していない状態であっても、前進するための駆動力を確保することができる。
【0031】
例えば、乗り物1が前方に直進する場合は、モータ121Lとモータ121Rが同じ回転速度で同じ回転方向に回転する。左右に曲がりながら進む場合は、モータ121Lとモータ121Rが異なる回転速度で同じ回転方向に回転する。その場で旋回したい場合は、モータ121Lとモータ121Rが同じ回転速度で反対方向に駆動する。このように、左の中輪12Lと右の中輪12Rとを異なるモータで駆動することで、乗り物1が所望の方向に所望の速度で移動する。
【0032】
中輪12が前輪11及び後輪13よりも大きい直径を有している。前輪11が後輪13よりも小さい直径を有している。もちろん、前輪11,中輪12、後輪13の直径は、特に限定されるものではない。前輪11、及び中輪12には、回転を制限するためのブレーキがそれぞれ設けられている。例えば、前輪11L、前輪11R、中輪12L、中輪12Rには、それぞれ電磁ブレーキが設けられている。よって、それぞれのブレーキが、前輪11L、前輪11R、中輪12L、中輪12Rを独立してロックすることができる。
【0033】
モータ121にインホイールモータを用いるとともに、モータ121の駆動力を伝達機構122が後輪13に伝達している。したがって、簡易な構成で中輪12、及び後輪13を駆動輪とすることができる。よって、中輪12、及び後輪13の一方が離地している状態であっても、乗り物1が前方への駆動力を得ることができる。
【0034】
なお、図1図4では、モータ121が中輪12に設けられたインホイールモータとしたが、モータ121はこの構成に限られるものではない。モータ121は、後輪13に設けられたインホイールモータであってもよい。この場合、伝達機構が、モータ121の駆動力を後輪13に伝達すればよい。あるいは。モータ121はインホイールモータ以外のモータでもよい。
【0035】
搭乗席3は、搭乗者が搭乗する搭乗部である。搭乗者が搭乗席3に座った状態で乗り物1が移動する。搭乗席3には背もたれ5とフットレスト4が設けられている。フットレスト4は搭乗席3の前側下方に配置されている。搭乗席3に搭乗者が座った状態では、搭乗者の右足はフットレスト4Rに載り、左足はフットレスト4Lに載る。
【0036】
搭乗席3の横には、入力部74が設けられている。入力部74は、キーボードやジョイパッド等であり、乗り物1の移動方向や姿勢に関する入力を受け付ける。例えば、搭乗者が入力部74を操作して、移動方向、移動速度、あるいは姿勢に関する入力を行う。なお、図示を省略するが、入力部74には、コントローラとなる制御用コンピュータやバッテリ等を有する制御ボックスが設けられていてもよい。もちろん、制御用コンピュータやバッテリ等の設置場所は、入力部74内に限られるものではない。例えば、制御用コンピュータやバッテリ等が搭乗席3の下や、背もたれ5の後ろ側に設置されていてもよい。
【0037】
搭乗席3の下部には、可変機構20が設けられている。可変機構20は、搭乗席3を支持する脚機構である。可変機構20には、前輪11、中輪12、後輪13が回転可能に取り付けられている。可変機構20は、伸縮可能なアーム機構を備えており、地面に対する搭乗席3の姿勢を変える。車輪と搭乗席3との間に設けられたアーム機構が伸縮することで、搭乗席3の座面の高さや傾きが変化する。
【0038】
(可変機構20)
可変機構20の詳細な構成について説明する。可変機構20は、フレーム21と、第1の直動機構22、第2の直動機構23、第1のリンク24、第2のリンク25、第3の直動機構26、第3のリンク27等を備えている。可変機構20は実質的に左右対称な構成を有している。上記と同様に、左右対称の構成については、符号にL又はRを付す。例えば、可変機構20は、2つの第1の直動機構22L、22Rを備えている。そして、第1の直動機構22Lと第1の直動機構22Rとは左右対称に配置される。
【0039】
第2の直動機構23、第1のリンク24、第2のリンク25、第3のリンク27についても同様に左右対称に配置されており、図2図4では、左右対称な構成要素にそれぞれL、又はRを付している。
【0040】
フレーム21は、乗り物1の車体を構成する。したがって、フレーム21には、上述の搭乗席3、フットレスト4,及び入力部74等が取り付けられる。例えば、搭乗席3は、フレーム21の上に取り付けられている。フットレスト4は、フレーム21の前方斜め下側に取り付けられている。
【0041】
フレーム21の上に、搭乗席3が取り付けられることで、搭乗部が構成される。フレーム21の姿勢が搭乗席3の姿勢に対応することになる。フレーム21の高さが変わると、搭乗席3の高さが変わり、フレーム21の角度が変わると搭乗席3の角度が変わる。フレーム21が前傾すると、搭乗席3も前傾する。フレーム21は、矩形枠状の骨組みを有している。さらに、フレーム21は、搭乗席3を回転可能に支持している。後述するように、第3の直動機構26の動作によって、搭乗席3の前傾姿勢を調整することができる。
【0042】
フレーム21の前側の左右両端には、第1の直動機構22L、22Rが取り付けられている。第1の直動機構22L、22Rには、第1のリンク24L、24Rがそれぞれ取り付けられている。上記の通り、第1の直動機構22L、22R及び第1のリンク24L、24に関する構成は、左右対称であるため、以下の説明では、符号にL、Rを付けずに説明する。第1の直動機構22、及び第1のリンク24が前脚となるアーム機構を構成する。
【0043】
第1の直動機構22は、フレーム21に対して取り付けられている。例えば、第1の直動機構22は、フレーム21の前端に配置されている。第1の直動機構22は、フレーム21に回転可能に保持されている。例えば、第1の直動機構22は、トラニオンなどを介して、フレーム21に取り付けられている。第1の直動機構22は、フレーム21から斜め前方下方に延びている。第1の直動機構22の先端は、第1のリンク24に取り付けられている。第1の直動機構22は、フレーム21と第1のリンク24とを連結している。第1の直動機構22は、例えば、伸縮可能なアーム機構であり、モータ等のアクチュエータによって動作する。第1の直動機構22の長さは可変となっている。
【0044】
第1のリンク24の前端には、前輪11が取り付けられている。つまり、第1のリンク24は、前輪11を回転可能に保持している。前輪11は、車体となるフレーム21の前方に配置されている。ここで、フレーム21の前方とは、フレーム21よりも前側であってもよく。フレーム21の前端の周辺であってもよい。
【0045】
第1のリンク24は、前輪11から斜め後方上方に延びている。第1のリンク24の後端には、揺動軸40が設けられている。つまり、第1のリンク24は、前輪11と揺動軸40とを連結している。第1のリンク24は、揺動軸40を介してフレーム21に連結されている。第1のリンク24は、揺動軸40を介してフレーム21と連結されているため、揺動軸40周りに回転する。つまり、フレーム21は、揺動軸40を介して、第1のリンク24を回転可能に保持している。図2に示すように、揺動軸40は、Y方向と平行に配置されている。
【0046】
第1のリンク24の途中には、第1の直動機構22が取り付けられている。第1のリンク24の長手方向において、第1のリンク24の中央よりも前輪11側に第1の直動機構22が取り付けられている。第1の直動機構22が伸縮することで、第1のリンク24が揺動軸40周りに回転する(図1図4の矢印A)。具体的には、第1の直動機構22が伸びることで、図1において、第1のリンク24が時計回りに回転する。つまり、第1の直動機構22が伸びることで、第1のリンク24がより前傾する。また、第1の直動機構22が縮むことで、図1においては、第1のリンク24が反時計周りに回転する。
【0047】
このように、第1の直動機構22が動作することで、フレーム21に対する第1のリンク24の角度が変わる。X方向及びZ方向において、フレーム21に対する前輪11の相対的な位置が変化する。第1の直動機構22が伸びることで、前輪11が下降する。第1の直動機構22が縮むことで、前輪11が上昇する。前輪11が離地又は接地するように、第1の直動機構22は前輪11を上下させる。前輪11が段差を乗り越えることができる。また、第1のリンク24は、伸縮可能なアーム機構となっている。第1のリンク24の詳細については後述する。
【0048】
フレーム21の後ろ側の左右両端には、第2の直動機構23L、23Rが取り付けられている。第2の直動機構23L、23Rには、第2のリンク25L、25Rがそれぞれ取り付けられている。第2のリンク25L、25Rは、それぞれ、第3のリンク27L、27Rを介して、フレーム21に取り付けられている。第2の直動機構23L、23R、第2のリンク25L、25、第3のリンク27L、27Rに関する構成は、左右対称であるため、以下の説明では、符号にL、Rを付けずに説明する。第2の直動機構23L、23R、第2のリンク25L、25、第3のリンク27L、27Rが後脚となるアーム機構を構成する。
【0049】
第2の直動機構23は、フレーム21に取り付けられている。第2の直動機構23は、フレーム21に回転可能に保持されている。例えば、第2の直動機構23は、トラニオンなどを介して、フレーム21に取り付けられている。第2の直動機構23は、フレーム21から斜め下方に延びている。第2の直動機構23の先端には、第2のリンク25が取り付けられている。第2の直動機構23は、フレーム21と第2のリンク25とを連結している。第2の直動機構23は、例えば、伸縮可能なアーム機構であり、モータ等のアクチュエータによって動作する。第2の直動機構23の長さは可変となっている。
【0050】
第2のリンク25の前端には、中輪12が取り付けられている。第2のリンク25の後端には、後輪13が取り付けられている。第2のリンク25は、中輪12と後輪13とを連結している。したがって、X方向において、中輪12と後輪13とが間隔を隔てて配置される。第2の直動機構23は、中輪12の近傍において、第2のリンク25と連結されている。
【0051】
第2のリンク25の途中には、第3のリンク27が連結されている。図1に示すように、第3のリンク27は、フレーム21から斜め前方下方に延びている。第3のリンク27の上端には、フレーム21が連結され、下端には第2のリンク25が回転可能に連結されている。第3のリンク27は、回転軸41を介して、第2のリンク25と連結されている。つまり、第3のリンク27は、第2のリンク25を回転可能に保持している。第2のリンク25は回転軸41周りに回転する。回転軸41は、Y方向と平行に配置されている。回転軸41は、中輪12と後輪13との間に配置されている。回転軸41は、第2のリンク25に対する第2の直動機構23の連結位置よりも後輪13側となっている。
【0052】
第2の直動機構23が伸縮することで、第2のリンク25が回転軸41周りに回転する。第2の直動機構23が縮むことで、図1においては、第2のリンク25が反時計回りに回転する。例えば、第2の直動機構23が縮むことで、後輪13に対して、中輪12が相対的に上昇する方向に第2のリンク25が回転する。第2の直動機構23が伸びることで、図1において、第2のリンク25が時計回りに回転する。例えば、第2の直動機構23が伸びることで、後輪13に対して、中輪12が相対的に下降する方向に第2のリンク25が回転する。したがって、フレーム21に対する第2のリンク25の角度が変わる。X方向及びZ方向において、フレーム21に対する中輪12、及び後輪13の相対的な位置が変化する。中輪12と後輪13が離地又は接地するように、第2の直動機構23は中輪12、及び後輪13を上下させることができる。中輪12、及び後輪13が段差を乗り越えることができる。
【0053】
第3の直動機構26は、左右共通となっている。すなわち、第3の直動機構26は、第1の直動機構22、第2の直動機構23等とは異なり、左右それぞれに設けられていない。図2に示すように、1つの第3の直動機構26は、Y方向における乗り物1の中央部に設けられている。
【0054】
第3の直動機構26は、第3のリンク27L、27Rに取り付けられている。第3の直動機構26は、第3のリンク27に回転可能に保持されている。例えば、第3の直動機構26は、トラニオンなどを介して、第3のリンク27に取り付けられている。第3の直動機構26の先端は、搭乗席3に取り付けられている。第3の直動機構26は、搭乗席3と第3のリンク27とを連結している。第3の直動機構26は、例えば、伸縮可能なアーム機構であり、モータなどのアクチュエータによって動作する。第3の直動機構26の長さは可変となっている。第3の直動機構26の伸縮により、フレーム21に対する搭乗席3の角度が変化する。これにより、搭乗席3の前傾姿勢を調整することができる。よって、段差の昇降時において、搭乗席3の角度の変化を抑制することができ、乗り心地を向上することができる。
【0055】
上記のように、可変機構20は、第1の直動機構22R、22L、第2の直動機構23R、23L、及び第3の直動機構26を備えている。したがって、可変機構20は、5軸の直動関節によって構成されている。すなわち、5つのアクチュエータで姿勢を変化させることができる。第1の直動機構22は前脚である第1のリンク24を回転揺動させ、第2の直動機構23は後脚である第2のリンク25を回転揺動させる。
【0056】
第1の直動機構22、第2の直動機構23、第3の直動機構26はそれぞれ、伸縮可能に設けられたリンク機構である。直動機構22、23、26のそれぞれは、モータ、ブレーキ、及びエンコーダを有する駆動部と、駆動部によって伸縮するリンクと、を備えている。なお、直動機構は、公知のリニアアクチュエータを用いることができる。例えば、直動機構はサーボモータの回転方向の力をボールねじにより伸縮方向の力に変換する。ボールねじのリードを小さくすることで、小さな力で直線方向に大きな力を得ることができる。これにより、搭乗者の体重で押されて直動機構が縮んでしまうようなことがなく、姿勢を保つことができる。本実施の形態では、リニアアクチュエータを用いているため、構成を簡素化することができる。
【0057】
さらに、直動機構にガスばねを併用することで、モータの負荷を低減することができる。また、直動機構は、モータ式アクチュエータに限らず、油圧や空気圧の方式のリニアアクチュエータでもよい。
【0058】
第1の直動機構22の直動により、第1のリンク24を回転揺動させることができる。これにより、様々な段差に対応することが可能となる。例えば、第1の直動機構22の直動可能距離(ストローク)よりも高い段差の上に、前輪11を上昇させることが可能となる。つまり、短いストロークの第1の直動機構22を用いることができるため、搭乗者の搭乗するスペースに第1の直動機構22が干渉することを防ぐことができる。つまり、第1の直動機構22の上側の突出量を小さくすることができるため、搭乗スペースを確保することが可能となる。第1の直動機構22が第1のリンク24を揺動回転することで、前輪11が上下する。このように、第1の直動機構22のストロークに比して、前輪11の上下の移動量を大きくすることができる。よって、第1の直動機構22のストロークよりも、高い段差に対応することができる。簡易な構成で走行性能の高い走行装置を実現することができる。
【0059】
(第1のリンク24の動作)
次に、第1のリンク24の動作について、図5を用いて説明する。図5は、第1の直動機構22による第1のリンク24の動作を説明するための模式図である。第1のリンク24は、可動部24a、及び基部24bを備えている。さらに、第1のリンク24は、リニアブレーキ61、及び揺動ブレーキ62を備えている。
【0060】
基部24bは、揺動軸40を介して、フレーム21(図5では省略)に取り付けられる。可動部24aは、基部24bに対して、スライド移動する(図5中の矢印B)。例えば、可動部24aは、リニアガイドなどを介して、基部24bに取り付けられている。可動部24aが基部24bに対してスライドすることで、第1のリンク24の長さが変化する。つまり、揺動軸40と前輪11との間の距離が変化する。
【0061】
可動部24aには、第1の直動機構22が取り付けられている。つまり、第1の直動機構22の先端が可動部24aに固定されている。第1の直動機構22が伸縮することで、第1のリンク24が、揺動軸40周りに回転する(図5中の矢印A)。図5において、第1の直動機構22が伸びると、第1のリンク24が反時計回りに回転する。第1の直動機構22が縮むと、第1のリンク24が時計回りに回転する。
【0062】
さらに、第1の直動機構22の伸縮(図5中の矢印C)により、基部24bに対して可動部24aがスライドする。第1の直動機構22が伸びると、第1のリンク24の長さが長くなる。つまり、揺動軸40から前輪11までの距離が長くなる。第1の直動機構22が縮むと、第1のリンク24の長さが短くなる。つまり、揺動軸40から前輪11までの距離が短くなる。
【0063】
このように、第1のリンク24は、受動的な直動関節を含んでいる。第1のリンク24は伸縮可能なリンクとなっている。第1の直動機構22は、第1のリンク24の揺動軸40周りの角度を変化させるとともに、第1のリンク24の長さを変化させる。
【0064】
さらに、第1のリンク24には、リニアブレーキ61と、揺動ブレーキ62とが設けられている。リニアブレーキ61、及び揺動ブレーキ62は、例えば、電磁ブレーキであり、制御信号に応じて動作する。
【0065】
リニアブレーキ61は、基部24bに対する可動部24aのスライド移動を制限する。つまり、リニアブレーキ61の動作中は、可動部24aがスライド移動しなくなるため、第1のリンク24の長さが一定となる。
【0066】
揺動ブレーキ62は、第1のリンク24の揺動軸40周りの回転を制限するつまり、揺動ブレーキ62の動作中は、第1のリンク24が回転しなくなるため、フレーム21に対する第1のリンク24の角度が一定となる。
【0067】
揺動ブレーキ62及びリニアブレーキ61が動作していない場合、第1の直動機構22が伸縮することで、第1のリンク24の回転角度、及び長さが変化する。リニアブレーキ61が動作しておらず、かつ、揺動ブレーキ62が動作している間に、第1の直動機構22が伸縮することで、第1のリンク24の長さを調整することができる(矢印B)。また、揺動ブレーキ62が動作しておらず、かつ、リニアブレーキ61が動作している間に、第1の直動機構22が伸縮することで、第1のリンク24の角度を調整することができる(矢印A)。
【0068】
したがって、第1のリンク24を所望の角度とした状態で、第1のリンク24を所望の長さにすることができる。あるいは、第1のリンク24を所望の長さにした状態で、第1のリンク24を所望の角度にすることができる。第1のリンク24の角度及び長さを独立に制御することができるため、様々な高さの段差に対応することができる。
【0069】
例えば、前輪11が段差に昇る場合、揺動ブレーキ62を動作させて、第1のリンク24の揺動回転を制限する。そして、揺動回転を制限した状態で、第1の直動機構22が動作して第1のリンク24の長さを決める。なお、第1のリンク24の長さは、段差の高さに応じて決定することができる。後述するセンサが、段差に昇る前に、段差の高さを測定する。センサで測定された段差高さに応じた長さに、第1の直動機構22が第1のリンク24の長さを調整する。
【0070】
第1のリンク24の長さが所定の長さとなった状態で、リニアブレーキ61を動作させる。さらに、揺動ブレーキ62を解除して、第1の直動機構22を動作すると、第1のリンク24が揺動回転する。つまり、第1のリンク24の長さが一定の状態で、第1のリンク24がフレーム21に対して回転する。これにより、前輪11を所望の高さまで上昇させることができる。つまり、前輪11を段差より高い位置まで上昇させることができる。
【0071】
また、前輪11が段差から降りる場合、揺動ブレーキ62を動作させて、第1のリンク24の揺動回転を制限する。そして、揺動回転を制限した状態で、第1の直動機構22が動作して第1のリンク24の長さを決める。なお、第1のリンク24の長さは、段差の高さに応じて決定することができる。後述するセンサが、段差から降りる前に、段差の高さを測定する。センサで測定された段差高さに応じた長さになるように、第1の直動機構22が第1のリンク24の長さを調整する。
【0072】
第1のリンク24の長さが所定の長さとなった状態で、リニアブレーキ61を動作させる。揺動ブレーキ62を解除して、第1の直動機構22を動作すると、第1のリンク24が揺動回転する。つまり、第1のリンク24の長さが一定の状態で、第1のリンク24がフレーム21に対して回転する。これにより、前輪11を所望の高さまで下降させることができる。つまり、前輪11を段差の床面まで下降させることができる。
【0073】
この構成によれば、第1のリンクを適切に制御することができるため、確実に段差を昇降することができる。例えば、前輪11が段差の角部に接触することを避けることができる。つまり、段差の平坦な部分に前輪11が接触するように、第1のリンク24の長さ、及び角度を調整すればよい。乗り物1が、例えば、より高い段差や、前後方向により短い段差を乗り降りすることができる。様々な形状の段差に対応することが可能となる。
【0074】
(ダイラタンシー流体)
前輪11、中輪12、及び後輪13の少なくとも一つにダイラタンシー流体を封入することが好ましい。より具体的には、中輪12又は後輪13にダイラタンシー流体を封入することが好ましい。ダイラタンシー流体は、衝撃を受けたときに、固体のような抵抗力を発生し、衝撃がなくなれば、液体のように振る舞う。よって、段差を昇降する際に、中輪12が段差の角部で衝撃を受けると、その角部に応じた形状を保持する。図6に示すように、中輪12が段差Dの角部に応じた形状で固まる。これにより、中輪12が段差Dの角に引っかかった状態となるため、階段などの段差の昇降をより確実に行うことができる。
【0075】
なお、中輪12のみにダイラタンシー流体が封入されている構成にかぎらず、前輪11にダイラタンシー流体が封入されておらず、中輪12,及び後輪13にダイラタンシー流体が封入されている構成であってもよい。あるいは、前輪11及び中輪12にダイラタンシー流体が封入されておらず、後輪13にダイラタンシー流体が封入されていてもよい。
【0076】
第1の直動機構22が前輪11を上下させることができるため、前輪11を段差の平らな部分に下ろすことができる。一方、中輪12、及び後輪13は、段差の角部に接することがあるため、中輪12、及び後輪13の少なくとも1つにダイラタンシー流体を封入することが好ましい。これにより、角部の形状に応じて車輪を変形させることができるため、段差の昇降を容易にすることができる。少なくとも一つの駆動輪にダイラタンシー流体を封入することが好ましい。したがって、中輪12、及び後輪13の少なくとも一方にダイラタンシー流体を封入することが好ましい。さらに、前輪11をダイラタンシー流体が封入されていない車輪、つまり、空気などのガスが封入された車輪としてもよい。この場合、前輪11を軽量化することができ、第1の直動機構22を小型化、軽量化することが可能となる。
【0077】
(モード切替)
可変機構20は、乗り物1の動作モードを切り替えることができる。乗り物1は、チェアモード、ドライモード、又は、スタンドモードで走行することができる。図7は、チェアモードでの可変機構20を簡略化して示す側面図である。図8は、ドライブモードでの可変機構20を簡略化して示す側面図であり、図9はスタンドモードの可変機構20を簡略化して示す側面図である。モード毎に、乗り物1の車高、つまり床面Fからの座面の高さが異なっている。
【0078】
チェアモードでは、前輪11、中輪12、後輪13が全て床面Fに接地した6輪接地となる。ドライブモードでは、前輪11が離地し、かつ、中輪12、及び後輪13が床面Fに接地した4輪接地状態となる。スタンドモードでは、前輪11、及び後輪13が床面Fに接地し、かつ、左右の中輪12が離地した4輪接地状態となっている。
【0079】
チェアモードで搭乗席が最も低くなり、スタンドモードで搭乗席が最も高くなる。ドライブモードでは、搭乗席の高さがチェアモードよりも高くなり、スタンドモードよりも低くなる。
【0080】
さらに、乗り物1が2段以上の段差を昇降できように、可変機構20が動作することができる。これにより、乗り物1がエスカレータに乗ったり、階段を昇降することができる。図10は上り階段又は上りエスカレータにおける可変機構20を簡略化して側面図である。図11は下り階段又は下りエスカレータでの可変機構20を簡略化して側面図である。図10、及び図11では、1段目の段差をD1、2段目の段差をD2、3段目の段差をD3として示している。
【0081】
図10、又は図11に示すように、2段以上の段差に対応する場合、乗り物1は、左右の前輪11、及び後輪13が接地した状態となる。後輪13は、段差D1に接地し、前輪11は、後輪13よりも2段前の段差D3に接地している。なお、図10では、左右の中輪12が離地した4輪接地状態となっている。図11では、左右の中輪12が段差D2の角に接地した状態となっている。もちろん、中輪12は、段差D2に接地していてもよく、接地していなくてもよい。
【0082】
(段差の昇降動作)
次に、段差を昇降する動作について、図12図14を用い説明する。図12図14は、乗り物1が床面Fに設けられた1段の段差Dを昇降する動作を模式的に示す側面図である。図12図14は、乗り物1が段差を昇降する動作をステップS1~ステップS16の順番に示している。具体的には、ステップS1~ステップS8が床面Fから段差Dを昇る一連の動作を示している。ステップS9~ステップS16は、乗り物1が段差Dから床面Fに降りる一連の動作を示している。なお、図12図14において、乗り物1は左方向を前方として走行している。また、X方向において、段差Dは乗り物1に比べて十分な長さがあるとする。
【0083】
乗り物1は、ドライブモードで走行している(S1)。つまり、乗り物1は、前輪11が離地し、かつ、中輪12と後輪13が床面Fに接地している4輪接地状態で走行している。乗り物1が段差Dの手前まで走行すると、後述するセンサが段差Dの存在、及び段差Dの高さを検知する。乗り物1が段差Dの直前に到着すると、前輪11が上昇する。具体的には、第1の直動機構22が縮むことで、第1のリンク24が揺動軸40周りに回転する。これにより、第1のリンク24が時計回りに回転して、前輪11が段差Dよりも高い位置まで上昇する。そして、中輪12と後輪13が回転することで、乗り物1が前進して、前輪11が段差Dの上まで移動する(S2)。なお、前輪11を上昇させるために、第1の直動機構22が縮んでいる間、中輪12の車輪ブレーキを動作させてもよい。
【0084】
前輪11が段差Dに接地する(S3)。具体的には、第1の直動機構22が伸びることで、前輪11が下降して、段差Dに接地する。まず、揺動ブレーキ62が揺動回転を制限した状態で第1の直動機構22が伸びることで、第1のリンク24を段差に応じた長さにする。そして、第1のリンク24が所望の長さとなったら、リニアブレーキ61を動作させて、第1のリンク24の長さを固定する。そして、揺動ブレーキ62を解除した後に、第1の直動機構22を伸ばして、第1のリンク24を揺動軸40周りに揺動回転させる。これにより、第1のリンク24が反時計回りに回転して、前輪11が段差Dに接地する。なお、S3では、中輪12、及び後輪13が床面Fに接地した状態となる。
【0085】
中輪12が段差Dの高さまで上昇する(S4)。具体的には、第2の直動機構23が縮むことで、第2のリンク25が回転軸41周りに回転する。これにより、第2のリンク25が時計回りに回転して、中輪12が離地する。S4では、前輪11が段差Dに接地し、後輪13が床面Fに接地した状態となっている。なお、中輪12を上昇させている間、前輪11の車輪ブレーキを動作させてもよい。
【0086】
乗り物1が前輪11と中輪12とのホイールベースを広げる(S5)。具体的には、前輪11のブレーキを解除し、第3の直動機構26を伸ばすことでホイールベースが広くなる。S5では、S4に引き続き、前輪11が段差Dに接地し、中輪12が離地し、後輪13が床面Fに接地した状態となっている。
【0087】
後輪13が回転して、乗り物1が前進すると、中輪12が段差Dに接地する(S6)。前輪11、及び中輪12が段差Dに接地し、後輪13が床面Fに接地した状態となる。この状態で、前輪11、及び中輪12の車輪ブレーキを動作させて、前輪11、及び中輪12の回転を制限する。
【0088】
後輪13が段差Dの高さまで上昇する(S7)。具体的には、第2の直動機構23が伸びて、第2のリンク25を回転軸41周りに回転させる。これにより、第2のリンク25が反時計回りに回転して、後輪13が段差Dの上まで上昇する。さらに、第3の直動機構26を伸ばす。ここでは、前輪11、及び中輪12が段差Dに接地し、後輪13が離地した状態となる。
【0089】
中輪12が回転して、乗り物1が前進すると、後輪13が段差Dに接地する(S8)。これにより、段差Dに前輪11、中輪12、及び後輪13が接地するため、乗り物1が6輪接地状態となる。このようにすることで、乗り物1が段差に昇る動作が完了する。
【0090】
乗り物1は、段差Dの上で前輪11と中輪12とのホイールベースを短縮する(S9)。具体的には、第3の直動機構26を縮める。S9では、S8に引き続き、段差Dに前輪11、中輪12、及び後輪13が接地した6輪接地状態となっている。
【0091】
乗り物1が段差Dの端まで移動すると、第1の直動機構22が前輪11を段差Dから下ろす(S10)。前輪11が段差Dのエッジを越えて、床面F上から離地するまで乗り物1が走行する。具体的には、中輪12が段差Dのエッジ上にある状態まで乗り物1が走行する。揺動ブレーキ62を動作させ、かつリニアブレーキ61を解除した状態で、第1の直動機構22が伸びる。これにより、第1のリンク24が段差Dの高さに応じた所定の長さとなる。そして、リニアブレーキ61を動作させた後、揺動ブレーキ62を解除する。さらに、第1の直動機構22が伸びることで、第1のリンク24が揺動回転する。さらに、第2の直動機構23が縮み、第3の直動機構26が縮む。これにより、前輪11が床面Fに接地する。S10では、段差Dに中輪12、後輪13が接地した状態となっている。
【0092】
中輪12及び後輪13が回転して、乗り物1が前進すると、中輪12が段差Dのエッジを越える(S11)。S11では、前輪11が床面Fに接地し、中輪12が離地し、後輪13が段差Dに接地した状態となる。
【0093】
そして、中輪12が床面に接地する(S12)。具体的には、第1の直動機構22が縮み、第2の直動機構23が伸びる。さらに、第3の直動機構26が伸びる。これにより、前輪11、及び中輪12が床面Fに接地し、後輪13が段差Dに接地した状態となる。また、前輪11と後輪13とのホイールベースが広くなる。
【0094】
中輪12が回転して、乗り物1が前進すると、後輪13が段差Dを降りる(S13)。すなわち、後輪13が段差Dのエッジを越える。S13では前輪11、及び中輪12が床面Fに接地し、後輪13が離地した状態となる。
【0095】
後輪13が接地して、6輪接地状態となる(S14)。具体的には、第2の直動機構23を縮めることで、第2のリンク25が回転する。また、第3の直動機構26を縮める。このようにすることで、乗り物1が段差Dを乗り越えることができる。
【0096】
中輪12が前方に移動する(S15)。具体的には、第1の直動機構22を縮めるとともに、第2の直動機構23を縮める。また、第3の直動機構26を縮める。前輪11が上昇して、ドライブモードとなる(S16)。具体的には、第1の直動機構22が縮んで、第1のリンク24が揺動回転する。これにより、前輪11が離地する。S16では、中輪12、及び後輪13が接地したドライブモードとなる。
【0097】
上記のように、乗り物1は、段差Dを乗り降りすることができる。よって、乗り物1は、様々な環境下に対応することができる。さらに、段差を乗り降りする場合であっても、乗り心地を向上することができる。
【0098】
このように、本実施の形態では、第1の直動機構22が直動すると、前脚である第1のリンク24が回転揺動する。よって、前脚が直動機構によって直接伸縮する構成と比べて、短いストロークで高い段差を昇降することが可能となる。よって、第2の直動機構23の突出量を低減することができ、搭乗者と干渉することができる。
【0099】
(階段を昇る動作)
図15,及び図16は、乗り物1が複数段の階段を昇る動作を示す模式図である。図15、及び図16は、段差を昇降する動作をステップS21~ステップS28の順番に示している。階段の1段目の段差を段差D1、2段目の段差を段差D2、3段目の段差を段差D3等として示している。
【0100】
まず、前輪11が1段目の段差D1に昇る(S21)。次に、中輪12が段差D1に昇る(S22)。S21とS22の動作は、図10を用いて説明した動作と同様である。前輪11が2段目の段差D2に接地する(S23)。
【0101】
中輪12が段差D2に接地する(S24)。次に、前輪11が上昇して(S25)、3段目の段差D3に接地する(S26)。S21からS26までの間、後輪13は、床面Fに接地したままとなっている。そして、後輪13が上昇して(S27)、段差D1に接地する(S28)。
【0102】
(制御系)
本実施の形態にかかる乗り物1の制御系について、図17を用いて説明する。図17は、制御系70の構成を示すブロック図である。制御系70は、制御部71と、センサ部73、入力部74、を備えている。また、制御系70は、第1の直動機構22、第2の直動機構23、第3の直動機構26を駆動制御するために、サーボアンプ82、83、86、駆動部92、93、96を備えている。さらに、中輪12を駆動制御するために、制御系70は、コントローラ51、及びモータ121を備えている。
【0103】
なお、各構成要素の左右の構成については上記と同様に符号にL、Rを付けている。左右の構成を特に区別しない場合は、L、Rを付さずに説明を行う。制御系70の一部の構成は、例えば、入力部74の中や搭乗席3内に収納されていてもよい。
【0104】
入力部74は、キーボードやジョイパッド等であり、乗り物1の移動方向や姿勢に関する入力を受け付ける。例えば、搭乗者が入力部74を操作して、移動方向、移動速度、あるいは姿勢に関する入力を行う。
【0105】
センサ部73は1又は複数のセンサから構成されている。例えば、センサ部73は搭乗席3の姿勢を測定する角度センサを備えている。具体的には、センサ部73は6軸のジャイロセンサを有しており、X軸、Y軸、Z軸の加速度と、X軸、Y軸、Z軸周りの角速度を検出する。ジャイロセンサは搭乗席3の座面と平行に設置されている。よって、ジャイロセンサは、座面の傾斜角度を検出する。さらに、センサ部73は非接触で路面の段差の高さを検出する測域センサやカメラ等の各種センサを有している。
【0106】
制御部71は、CPU(Central Processing Unit)、及びメモリを備えるPC(Personal Computer)などの演算処理装置であり、乗り物1全体の制御を行う。制御部71は、中輪12を制御するため、コントローラ51R、51L、及びサーボアンプ82、83、86に制御信号を出力する。
【0107】
コントローラ51R、コントローラ51Lは、それぞれモータ121R、モータ121Lを制御するモータコントローラである。モータ121R、モータ121Lは、同様の構成を有しており、それぞれ中輪12R、中輪12Lを駆動する。これにより、入力部74により入力された移動方向、及び移動速度で乗り物1が移動するように、中輪12R、中輪12Lが回転する。例えば、制御部71は、入力部74によって入力された入力信号に応じて、制御信号を生成する。制御部71は、制御信号をコントローラ51に出力する。コントローラ51が制御信号に応じた指令値をモータ121に出力する。これにより、モータ121に接続された中輪12が所定の回転速度で回転する。モータ121R、121Lは、中輪12R、中輪12Lを独立して回転駆動する。また、上記のように、モータ121の駆動力は、伝達機構122を介して、後輪13に伝達される。
【0108】
駆動部92、93、96はそれぞれ、サーボモータ、エンコーダ、及びブレーキを備えている。駆動部92、93、96は同様の構成を有ており、それぞれ第1の直動機構22、第2の直動機構23、第3の直動機構26を駆動する。サーボアンプ82は、それぞれ駆動部92、93、96のサーボモータを駆動制御するためのアンプである。
【0109】
例えば、制御部71は、サーボアンプ82を介して、駆動部92を駆動制御する。例えば、制御部71は、第1の直動機構22を所定の直動軸位置にするための制御信号をサーボアンプ82に出力する。サーボアンプ82は、制御信号に基づいて、駆動部92を駆動する。駆動部92のエンコーダは、サーボモータの回転角度を検出する。そして、エンコーダは、検出した回転角度をフィードバック信号として、サーボアンプ82に出力する。サーボアンプ82は、フィードバック信号に基づいて、サーボモータが制御信号に応じた回転角度になるようにフィードバック制御する。これにより、第1の直動機構22が所定の直動軸位置まで駆動する。
【0110】
同様に、制御部71は、サーボアンプ83、86を介して、駆動部93、96を駆動制御する。これにより、第1の直動機構22、第2の直動機構23、第3の直動機構26が所定の長さになる。このように、制御部71は、第1の直動機構22、第2の直動機構23、第3の直動機構26を制御している。これにより、可変機構20が乗り物1を所望の姿勢にすることができる。
【0111】
また、制御部71は、リニアブレーキ61R,61Lの動作を制御する。つまり、制御部71からの制御信号によって、リニアブレーキ61R,61Lがそれぞれオン/オフ制御される。リニアブレーキ61R,61Lが動作すると、第1のリンク24R、24Lの伸縮が制限される。リニアブレーキ61R,61Lは、独立に制御されていてもよく、連動して制御されていてもよい。
【0112】
同様に、制御部71は、揺動ブレーキ62R、62Lの動作を制御する。つまり、制御部71からの制御信号によって、揺動ブレーキ62R、62Lがそれぞれオン/オフ制御される。揺動ブレーキ62R、62Lが動作すると、第1のリンク24R、24Lの揺動回転が制限される。揺動ブレーキ62R,62Lは、独立に制御されていてもよく、連動して制御されていてもよい。
【0113】
このようにすることで、前輪11R、11Lが段差の平坦な箇所に接地することができる。つまり、前輪11R、11Lが段差の角部を避けて、接地するため、安定した昇降が可能になる。なお、制御部71は、第1のリンク24の長さ及び角度は、センサ部73で検出した段差の形状に応じて決定すればよい。例えば、段差の形状に応じて第1のリンク24を制御する長さ及び角度が、予め定められていればよい。
【0114】
上記制御部71の制御のうちの一部又は全部は、コンピュータプログラムによって実行されてもよい。この場合、制御部71は、プロセッサ等のハードウェア、及びメモリ等に記憶されたソフトウェアによって構成される。制御部71で実行されるプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0115】
なお、上記の説明では、本実施の形態にかかる走行装置が、搭乗者が搭乗して走行する乗り物1であるとして説明したが、搭乗者が搭乗しない構成となっていてもよい。例えば、本実施形態に係る走行装置は、荷台に荷物を載せて走行する走行装置であってもよい。この場合、フレーム21には、車体には、搭乗席3の代わりに、荷台が設けられることになる。さらには、搭乗者と荷物を同時に運搬する走行装置であってもよい。この場合、車体には、搭乗席3と荷台が設けられる。また、搭乗者や荷物を載せて移動する走行装置に限らず、走行装置自身のみが移動する構成であってもよい。例えば、走行装置は、車体に搭乗席や荷台が設けられている構成に限らず、自律走行する移動ロボット等であってもよい。すなわち、可変機構20が車体を支持する構成となっていればよい。車体に、搭乗席や荷台が設けることで、搭乗者が搭乗する乗り物や、荷物を運搬する走行装置を構成することができる。
【0116】
以上まとめると、本実施の形態の一態様にかかる走行装置は、フレーム21と、前輪11と、第1のリンク24と、第1の直動機構22と、を備えている。フレーム21は、車体となる。前輪11は、フレーム21の前方に配置された第1の車輪となる。伸縮可能な第1のリンク24は、前輪11と前輪11の後方に位置する揺動軸40との間に連結されている。第1の直動機構22は、フレーム21と第1のリンク24との間に連結され、第1のリンク24を揺動軸40周りに回転させるように伸縮する。第1の直動機構22が第1のリンク24を揺動回転することで、前輪11が上下する。これにより、第1の直動機構22のストロークに比して、前輪11の上下の移動量を大きくすることができる。よって、第1の直動機構22のストロークよりも、高い段差に対応することができる。簡易な構成で走行性能の高い走行装置を実現することができる。
【0117】
さらに上記の走行装置は、揺動ブレーキ62と、リニアブレーキ61と、中輪12と、第2の直動機構23と、を備えていてもよい。揺動ブレーキ62は、第1のリンク24の揺動軸40周りの回転を制限する第1のブレーキとなる。リニアブレーキ61は、第1のリンク24の伸縮を制限する第2のブレーキとなる。中輪12は、前輪11の後ろ側に配置された第2の車輪となる。第2の直動機構23は、中輪12を上下させる駆動機構となる。この構成によれば、第1のリンク24の長さ、及び角度を適切に制御することができるため、確実に段差を昇降することができる。したがって、簡素な構成で、高い走行性能を実現することができる。
【0118】
さらに上記の走行装置は、後輪13と、第2のリンク25とを備えていてもよい。後輪13は、中輪12の後ろ側に配置された第3の車輪となる。第2のリンク25は、中輪12と後輪13とを連結する。第2の直動機構23は、前記第2のリンクと前記車体との間に連結され、前記第2のリンクを回転させる。この構成によれば、第2の直動機構23が中輪12及び後輪13を上下させることができるため、簡易な構成で段差を昇降することができる。
【0119】
さらに上記の走行装置において、記第1~第3の車輪の少なくとも2つが駆動輪であることが好ましい。これにより、走行性能を向上することができる。また、第2及び第3の車輪の少なくとも一方にダイラタンシー流体が封入されていることが好ましい。これにより、走行性能を向上することができる。
【0120】
さらに上記の走行装置において、前記第1の車輪、前記第2の車輪、前記第3の車輪、前記第1の直動機構、及び第2の直動機構がそれぞれ、前記走行装置の左右に配置されて、独立に駆動されるようにしてもよい。さらに上記の走行装置は、前輪12の回転を制限する車輪ブレーキをさらに備えていてもよい。これにより、左右一方のみに段差がある場合や異なる高さの段差がある場合で、走行装置が走行することができる。
【0121】
本実施の形態にかかる他の走行装置は、フレーム21と、前輪11と、中輪12と、後輪13と、第1の駆動機構と、を備えていてもよい。前輪11は、フレーム21の前方に配置された第1の車輪となり、中輪12は、第1の車輪の後ろ側に配置された第2の車輪になる。後輪13は、第2の車輪の後ろ側に配置された第3の車輪となる。第1の駆動機構は、前輪11を上下させる。前輪11、中輪12、及び後輪13の少なくとも2つが駆動輪となっている。これにより、段差の手前に溝等がある場合であっても、走行装置が段差に近づいた状態で、前輪11を上下することができる。よって、様々な形状の段差に対応することができる。簡易な構成で高い走行性能を実現することができる。
【0122】
上記の走行装置は、モータ121と伝達機構122を有していてもよい。モータは、中輪12、及び後輪13の一方に設けられたインホイールモータとなる。伝達機構122は、モータの駆動力を中輪12、及び後輪13の他方に伝達する。これにより、簡易な構成で中輪12、及び後輪13を駆動輪とすることができる。よって、中輪12、及び後輪13の一方が離地している状態であっても、前方への駆動力を得ることができる。
【0123】
本実施の形態にかかる他の走行装置は、段差を昇降可能な走行装置であって、車体と、ダイラタンシー流体が封入された車輪と、を備えている。車輪が段差の角に接する場合であっても、段差の角部に応じた形状に車輪が変形する。よって、様々な形状の段差に対応することができる。簡易な構成で高い走行性能を実現することができる。
【0124】
上記の走行装置は、第1の車輪と、前記第1の車輪の後ろ側に配置された第2の車輪と、前記第2の車輪の後ろ側に配置された第3の車輪と、前記第1の車輪を上下に移動させる駆動機構と、をさらに備えている。そして、第2及び前記第3の車輪の少なくとも一方が、前記ダイラタンシー流体が封入された車輪である。第2及び前記第3の車輪の少なくとも一方が段差の角部に接した場合に、角部に応じた形状に車輪が変形する。よって、様々な形状の段差に対応することができる。
【0125】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0126】
1 乗り物
3 搭乗席
4 フットレスト
5 背もたれ
11 前輪
12 中輪
13 後輪
20 可変機構
21 フレーム
22 第1の直動機構
23 第2の直動機構
24 第1のリンク
24a 可動部
24b 基部
25 第2のリンク
26 第3の直動機構
27 第3のリンク
61 リニアブレーキ
62 揺動ブレーキ
D 段差
F 床面
121 モータ
122 伝達機構
図1
図2
図3
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図5
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