(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】スラッジ乾燥装置
(51)【国際特許分類】
C02F 11/12 20190101AFI20220817BHJP
F26B 17/04 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
C02F11/12
F26B17/04 Z
(21)【出願番号】P 2018213702
(22)【出願日】2018-11-14
【審査請求日】2021-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉山 聡
【審査官】目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-049506(JP,A)
【文献】特開2015-107885(JP,A)
【文献】特開2002-333271(JP,A)
【文献】米国特許第05227073(US,A)
【文献】特開2001-300594(JP,A)
【文献】特開2016-209814(JP,A)
【文献】特開2020-049576(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F11/00-11/20
F26B1/00-25/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工水を供給しつつ砥石で被加工物を削り、排出される被加工物の粉を含んだ廃液から水分を多く含んだスラッジを回収し、該スラッジを乾燥させるスラッジ乾燥装置であって、
廃液を貯める廃液槽と、該廃液槽から該スラッジを取り出す取り出し手段と、該取り出し手段によって取り出された該スラッジを載せて回収ボックスへと搬送する搬送ベルトと、該搬送ベルトで搬送される該スラッジを乾燥させる乾燥手段とを備え、
該乾燥手段は、
少なくとも搬送ベルトの上面を包囲して該搬送ベルトの延在方向に延在する乾燥ボックスと、
該乾燥ボックスの一方の端側に配設される吸気口と、
該乾燥ボックスの他方の端側に配設される排気口と、
該乾燥ボックスの外に配設され該排気口から該乾燥ボックス内の空気を吸って外気を該吸気口から該乾燥ボックス内に吸気させるブロアファンと、
該ブロアファンによる該乾燥ボックスからの排気の流量を2つに分割する分割部と、
該乾燥ボックスの該吸気口と該排気口との間に配設され該分割部で分割された一方の流量の排気を該乾燥ボックスの中に戻し入れる戻し入口と、
を備え、
該分割部で分割された一方の流量の排気を該戻し入口から該乾燥ボックス内に戻し入れるとともに、該分割部で分割された他方の流量の排気と同じ量の外気を該吸気口から該乾燥ボックス内に吸気させ、該搬送ベルトで搬送されているスラッジを乾燥させる、スラッジ乾燥装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラッジを乾燥させる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加工水を供給しつつ被加工物を砥石で加工することで発生した加工屑を含んだ加工廃液から、加工屑を沈殿させたり、加工廃液に陽極板と陰極板とを着水させ電荷を付加して加工屑を陽極板に吸着させたりして、水分を多く含んだ加工屑(スラッジ)を回収し、スラッジを取り除いた加工廃液を再利用している(例えば、特許文献1参照)。
また、特許文献2に開示されているように、回収したスラッジを利用するためにスラッジを乾燥させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-119050号公報
【文献】特開2016-049506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし特許文献2に開示されているスラッジ回収装置では、スラッジの乾燥にヒータを用いているため、メンテナンスが必要になったらスラッジを乾燥させている装置部位が冷却されるまで、作業者が待機する必要がある。また、ヒータを発熱させるための電力を必要とする。
【0005】
よって、スラッジを回収して乾燥させる場合には、ヒータを用いないでスラッジを乾燥させるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明は、加工水を供給しつつ砥石で被加工物を削り、排出される被加工物の粉を含んだ廃液から水分を多く含んだスラッジを回収し、該スラッジを乾燥させるスラッジ乾燥装置であって、廃液を貯める廃液槽と、該廃液槽から該スラッジを取り出す取り出し手段と、該取り出し手段によって取り出された該スラッジを載せて回収ボックスへと搬送する搬送ベルトと、該搬送ベルトで搬送される該スラッジを乾燥させる乾燥手段とを備え、該乾燥手段は、少なくとも搬送ベルトの上面を包囲して該搬送ベルトの延在方向に延在する乾燥ボックスと、該乾燥ボックスの一方の端側に配設される吸気口と、該乾燥ボックスの他方の端側に配設される排気口と、該乾燥ボックスの外に配設され該排気口から該乾燥ボックス内の空気を吸って外気を該吸気口から該乾燥ボックス内に吸気させるブロアファンと、該ブロアファンによる該乾燥ボックスからの排気の流量を2つに分割する分割部と、該乾燥ボックスの該吸気口と該排気口との間に配設され該分割部で分割された一方の流量の排気を該乾燥ボックスの中に戻し入れる戻し入口と、を備え、該分割部で分割された一方の流量の排気を該戻し入口から該乾燥ボックス内に戻し入れるとともに、該分割部で分割された他方の流量の排気と同じ量の外気を該吸気口から該乾燥ボックス内に吸気させ、該搬送ベルトで搬送されているスラッジを乾燥させる、スラッジ乾燥装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るスラッジ乾燥装置は、廃液を貯める廃液槽と、廃液槽からスラッジを取り出す取り出し手段と、取り出し手段によって取り出されたスラッジを載せて回収ボックスへと搬送する搬送ベルトと、搬送ベルトで搬送されるスラッジを乾燥させる乾燥手段とを備え、乾燥手段は、少なくとも搬送ベルトの上面を包囲して搬送ベルトの延在方向に延在する乾燥ボックスと、乾燥ボックスの一方の端側に配設される吸気口と、乾燥ボックスの他方の端側に配設される排気口と、乾燥ボックスの外に配設され排気口から乾燥ボックス内の空気を吸って外気を吸気口から乾燥ボックス内に吸気させるブロアファンと、ブロアファンによる乾燥ボックスからの排気の流量を2つに分割する分割部と、乾燥ボックスの吸気口と排気口との間に配設され分割部で分割された一方の流量の排気を乾燥ボックスの中に戻し入れる戻し入口と、を備えているため、分割部で分割された一方の流量の排気(ブロアファンで温まった排気)を戻し入口から乾燥ボックス内に戻し入れるとともに、分割部で分割された他方の流量の排気と同じ量の外気を吸気口から乾燥ボックス内に吸気させ、搬送ベルトで搬送されているスラッジを効率よく乾燥させることができる。また、スラッジを乾燥させるとき、水素の濃度を抑え水素爆発を防止することが可能である。さらに、ヒータを用いないので、スラッジ乾燥装置の消費電力を抑え、スラッジをヒータの熱で溶かすことなく乾燥でき、且つ、搬送ベルトの交換や乾燥ボックス内の清掃を行うときに作業者の待ち時間を発生させない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】研削装置及びスラッジ乾燥装置の構造の一例を示す断面図である。
【
図2】廃液槽内の陽極板と陰極板との配置を拡大して示す断面図である。
【
図3】スラッジが付着し取り出し手段で取り出された陽極板から、乾燥ボックス内に取り出されたスラッジを落下させる状態を説明する断面図である。
【
図4】乾燥ボックス内に乾燥前のスラッジが収容された状態を説明する断面図である。
【
図5】分割部で分割された一方の流量の排気を戻し入口から乾燥ボックス内に戻し入れるとともに、分割部で分割された他方の流量の排気と同じ量の外気を吸気口から乾燥ボックス内に吸気させ、搬送ベルトで搬送されているスラッジを乾燥させている状態を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1に示す本発明に係るスラッジ乾燥装置1は、研削装置4において加工水が供給されつつ被加工物Wが砥石404bで削られて排出される被加工物Wの粉を含んだ廃液Lからスラッジを回収して乾燥させる装置である。スラッジ乾燥装置1は研削装置4内に組み込まれていてもよいし、研削装置4とは別体となっていてもよい。
なお、スラッジ乾燥装置1は、回転する切削ブレードで被加工物Wを切削加工する切削装置が生み出す廃液から水分を多く含んだスラッジを回収するものであってもよい。
【0010】
図1に示す研削装置4は、固体の被加工物Wを保持する保持テーブル41と、被加工物Wを回転する砥石404bで研削する研削手段40とを少なくとも備えている。
本実施形態において被加工物Wは例えばシリコンウェーハであるが、円柱状のシリコンインゴットであってもよい。
【0011】
研削装置4の基台49上に配設された保持テーブル41は、例えば、ポーラス部材等からなり図示しない吸引源に連通する保持面41aを備えている。保持テーブル41は、Z軸方向の軸心周りに回転可能であると共に、テーブル支持台42によって支持されている。基台49の上面に形成された開口49a内に配設されているテーブル支持台42は、モータ及びボールネジ機構等からなる図示しないX軸移動手段によってX軸方向(紙面手前奥方向)に往復移動可能となっている。
【0012】
保持テーブル41の移動経路両脇には、箱状のウォーターケース48が配設されている。ウォーターケース48は、
図1のテーブル支持台42の左右2箇所の位置に図示しているが、
図1中紙面手前奥方向にも形成されており、平面視では矩形の箱状に形成され、一体となる桶部484を有している。即ち、ウォーターケース48は、保持テーブル41をX軸方向に往復移動可能とするために、箱状の部材の底板480の中央部に矩形状の開口部481を設けており、底板480、内側壁482及び外側壁483により構成されて加工水を受け止める桶部484と、底板480に形成された排液口485とから構成される。排液口485には、ウォーターケース48の外部に延びる給液管485aの一端が接続されている。ウォーターケース48は、砥石404bで被加工物Wが削られて排出される粉(例えば、シリコン粉)を含み保持テーブル41から流下する加工水(廃液L)を受け止めて、
図1に示すタンク12へと送る。
【0013】
図1に示す研削手段40は、軸方向が保持テーブル41の保持面41aと直交するZ軸方向である回転軸400と、回転軸400を回転駆動させるモータ402と、回転軸400の下端に取り付けられたマウント403と、マウント403に着脱可能に接続された研削ホイール404とを備える。研削ホイール404は、円環状のホイール基台404aと、略直方体形状の外形を備えホイール基台404aの下面に複数環状に配設された砥石404bとを備えている。砥石404bは、適宜のボンド剤でダイヤモンド砥粒等が固着されて成形されている。
そして、研削手段40は、Z軸方向に上下動可能となっている。
【0014】
例えば、回転軸400の内部には、加工水供給源に連通し加工水の通り道となる図示しない流路が、回転軸400の軸方向(Z軸方向)に貫通して設けられており、該流路は、ホイール基台404aの底面において砥石404bに向かって加工水を噴出可能に開口している。なお、被加工物Wを研削する位置まで降下した状態の研削手段40の研削ホイール404に隣接する位置に加工水ノズルが配設されており、該加工水ノズルから砥石404bと被加工物Wとの接触部位に加工水が供給されるものとしてもよい。
【0015】
本発明に係るスラッジ乾燥装置1は、廃液Lを貯める廃液槽2と、廃液槽2内の廃液Lから水分を多く含んだスラッジPを取り出す取り出し手段3と、取り出し手段3によって取り出されたスラッジPを載せて回収ボックス59へと搬送する搬送ベルト51と、搬送ベルト51で搬送されるスラッジPを乾燥させる乾燥手段6とを備えている。
【0016】
ウォーターケース48の排液口485より低い位置には、例えば、廃液Lを収容するタンク12が配設されており、該タンク12は、給液管485aの他端が接続された供給口120を備えている。タンク12は、タンク12内からスラッジPを含む廃液Lを汲み上げて廃液槽2へと送出する送出ポンプ121を備えており、送出ポンプ121は送出管121aを介して廃液槽2の流入口20に向けてスラッジPを含んだ廃液Lを送出する。
【0017】
略直方体の箱状の廃液槽2は、例えば、合成樹脂等の絶縁部材によって形成されており、平面視矩形の底板21と、底板21の外周から一体的に+Z方向に立ち上がる4枚の側壁とからなり、底板21と各側壁とで囲まれた空間にスラッジPを含む廃液Lを貯めることができる。
図1でX軸方向において対向する2枚の側壁(紙面奥側のみ図示)を側壁22aとして、Y軸方向において対向する2枚の側壁を側壁22bとする。
また、廃液槽2の上部には、廃液Lが溢れることを防止する図示しないオーバーフロー管が設けられている。オーバーフロー管は、タンク12に連通しており、廃液槽2から溢れようとする廃液Lを再びタンク12に導く。
【0018】
廃液槽2内の廃液Lから水分を多く含んだスラッジPを取り出す取り出し手段3は、例えば、廃液槽2に配設されマイナスに帯電させる陰極板30と、陰極板30に対面させ廃液槽2から抜き差し可能としプラスに帯電させ水分を多く含んだスラッジPを吸着させる陽極板31と、陽極板31を保持する保持部320を上下方向に移動させ陽極板31を廃液槽2から抜き取り又は廃液槽2に差し込みする抜き差し手段32と、抜き差し手段32で廃液槽2から抜き取った陽極板31を挟んで付着しているスラッジPを剥ぎ取る剥ぎ取り手段36と、を備えている。
【0019】
陽極板31は、電気化学的に貴となる材料で構成され、平面形状が矩形状の平板状に形成されている。例えば、陽極板31は、銅、銀、白金、又は金などの材料で構成することができる。本実施形態では、陽極板31としてSUSを適用している。
【0020】
例えば、廃液槽2のX軸方向において対向する二枚の側壁22aの内側面には、図示しない複数の支持溝が形成されており、陽極板31は、X軸方向に所定間隔を空けて該各支持溝に挿嵌された状態で、廃液槽2内に配設されている。即ち、複数の陽極板31は、その表面が廃液槽2の長手方向(Y軸方向)と直交する状態、言い換えると、廃液槽2の幅方向(X軸方向)と平行な状態で、互いに所定間隔を空けて配置されている。陽極板31の上端面には、例えば、幅方向(X軸方向)の中央部から互いにX軸方向に間隔を空けて上方に突出した二つの被係合部310(片方のみ図示)が設けられている。被係合部310は、矩形状の板状に形成され、中央にX軸方向に貫通した被係合孔310aが設けられている。被係合孔310aには、抜き差し手段32の保持部320の係合ピン320aが進入して係合する。
【0021】
陰極板30は、互いに隣り合う陽極板31の間に設けられている。即ち、陰極板30は、陽極板31にY軸方向において対向して、陽極板31と離間して交互に複数配設されており、陽極板31と平行な状態になっている。
【0022】
陰極板30は、例えば、
図1に示すように、側面視矩形状の筐体33aにより支持されており、筐体33aには排出部33bが形成されている。排出部33bは、例えば、スラッジPが除去され筐体33a内に流入した浄水を図示しない浄水貯水タンクへと送給する配管である。そして、陰極板30は筐体33aの両側開口面を塞ぐように互いに間隔をあけて平行をなすように配設されている。
【0023】
陰極板30は、陽極板31と同様に、電気化学的に貴となる材料で構成され、平面形状が矩形の平板状に形成されている。例えば、陰極板30は、銅、銀、白金、又は金などの材料で構成することができる。本実施形態では、陰極板30としてSUSを適用している。陰極板30は、網目を備える板状に形成されており、網目でスラッジPを引っ掛ける機能を有することなく、マイナスに帯電されることでスラッジPに対して斥力を発生させる。即ち、陰極板30は、マイナスに帯電されることで、廃液Lの液体としての浄水のみの通過を許容し、マイナスに帯電したスラッジPとの間に斥力を生じて、スラッジPの通過を規制する。これによって、筐体33aと陰極板30とは、陰極板30を通過した浄水が存在する領域を内側に形成し、陰極板30がスラッジPとの間に斥力を生じることで、浄水が存在する領域を廃液槽2内のスラッジPを含む廃液Lから区画する。
【0024】
各陰極板30を支持する筐体33a及び各陽極板31の下端と廃液槽2の底板21との間には所定幅の隙間が設けられており、廃液槽2に流入した廃液Lは、該隙間を通り各陰極板30と各陽極板31との間を上昇していく。
【0025】
本実施形態において、陽極板31と陰極板30との間には直流電圧が印加される(
図2参照)。すなわち、陽極板31に直流電源DCのプラス(+)側が電気的に接続されて廃液L中でプラスに帯電される。陽極板31は、廃液L中でプラスに帯電されて、廃液L中でマイナスに帯電したスラッジPを吸着するために用いられる。一方、陰極板30に直流電源DCのマイナス(-)側が電気的に接続されて廃液L中でマイナスに帯電される。
【0026】
図1に示す陽極板31を廃液槽2から抜き取り又は廃液槽2に差し込みする抜き差し手段32は、Y軸方向移動手段34によって、廃液槽2の上方を水平にY軸方向に往復移動可能となっている。Y軸方向移動手段34は、Y軸方向に延在するベース341と、ベース341に沿ってY軸方向に移動可能でZ軸方向に延在する鉛直板342と、鉛直板342を移動させる図示しないボールネジ機構等とを備えている。
【0027】
抜き差し手段32は、鉛直板342の側面を可動部材323によってZ軸方向に往復移動可能となっている。
抜き差し手段32の陽極板31を保持する保持部320は、例えば、可動部材323の側面に配設された一対のチャックシリンダである。一対の保持部320は、廃液槽2の幅方向(X軸方向)に所定間隔を空けて対向している。一対の保持部320は、可動部材323に取り付けられたシリンダ本体320bと、シリンダ本体320bから廃液槽2の幅方向(X軸方向)に突没自在に設けられた係合ピン320aとを備えている。一対の保持部320では、例えば、シリンダ本体320bから突出する係合ピン320aがX軸方向において互いに近づく動作を行う。各係合ピン320aは、可動部材323が降下して保持部320が陽極板31の上方に位置付けられた状態でシリンダ本体320bから突出すると、陽極板31の各被係合部310の被係合孔310aにそれぞれ挿嵌される。これによって、抜き差し手段32の保持部320が陽極板31を保持した状態になる。
【0028】
抜き差し手段32で廃液槽2から抜き取った陽極板31を挟んで付着しているスラッジPを剥ぎ取る剥ぎ取り手段36は、
図1においては簡略化して示しており、
図3において詳しく示している。剥ぎ取り手段36は、乾燥手段6の乾燥ボックス60の一方の端側(-Y方向側)に設けられた吸気口604の上方近傍に配設されている。剥ぎ取り手段36は、一対の開閉シリンダ360(電動シリンダまたはエアシリンダ)と、一対の開閉シリンダ360を支持する一対の支持板部361と、一対の開閉シリンダ360によってY軸方向に移動する一対の剥ぎ取りプレート362とを備えている。
【0029】
一対の開閉シリンダ360は、内部に図示しないピストンを備える筒状のシリンダチューブ360aと、シリンダチューブ360aに挿入され外側端がピストンに取り付けられたピストンロッド360bとを備える。ピストンロッド360bの内側端に剥ぎ取りプレート362は固定されており、剥ぎ取りプレート362は、陽極板31の幅(X軸方向長さ)よりも長くX軸方向に延在している。
【0030】
このような構成である剥ぎ取り手段36は、陽極板31の表面を剥ぎ取りプレート362で挟み込むことができる。陽極板31の表面を挟み込んだ状態で、抜き差し手段32の陽極板31を保持した保持部320が例えば上方に引き上げられることで、剥ぎ取りプレート362は陽極板31に吸着された水分を多く含んだスラッジPを剥ぎ取ることができる。
【0031】
例えば、廃液槽2に隣接する位置に、
図1、3に示すスラッジPから水分を除去する乾燥手段6が配設されており、取り出し手段3によって取り出された水分を含むスラッジPを載せて回収ボックス59へと搬送する搬送ベルト51が、乾燥手段6を構成する乾燥ボックス60内にY軸方向に延在するように配設されている。
【0032】
搬送ベルト51で搬送されるスラッジPを乾燥させる乾燥手段6は、少なくとも搬送ベルト51の上面を包囲して搬送ベルト51の延在方向(Y軸方向)に延在する乾燥ボックス60と、乾燥ボックス60の一方の端側に配設される吸気口604と、乾燥ボックス60の他方の端側に配設される排気口605と、乾燥ボックス60の外に配設され排気口605から乾燥ボックス60内の空気を吸って外気を吸気口604から乾燥ボックス60内に吸気させるブロアファン606と、ブロアファン606による排気を2つに分割する分割部607と、乾燥ボックス60の吸気口604と排気口605との間に配設され分割部607で分割された一方の排気を乾燥ボックス60の中に戻し入れる戻し入口608と、を備えている。
【0033】
乾燥ボックス60は、例えば、平面視略直方体状の外形を備えており、矩形の底板601と、底板601の外周から一体的に+Z方向に立ち上がる4枚の側壁と、側壁の上端に連結され搬送方向に直交する方向(Z軸方向)で搬送ベルト51の上面に対面する天板603とで構成されている。
図1、3でX軸方向において対向する2枚の側壁(紙面奥側のみ図示)を側壁602aとして、Y軸方向において対向する2枚の側壁を側壁602bとする。乾燥ボックス60の内部は、スラッジPの搬送方向に気体を流す通気路600となっている。
【0034】
天板603の一方の端側(-Y方向側)には、吸気口604が厚み方向に貫通形成されており、陽極板31から剥ぎ取られ落下した水分を含むスラッジPが乾燥ボックス60内に吸気口604を通り進入する。吸気口604の上方には、ヒンジによって開閉可能であり吸気路604cが貫通形成された蓋部604dが配設されている。例えば、吸気口604の下方には、剥ぎ取られ落下した水分を含むスラッジPを搬送ベルト51上にガイドするように傾けられたガイド板604bが配設されている。
【0035】
無端の搬送ベルト51はモータ540によって回動可能となっている。モータ540は、例えば、側壁602aに固定されており、モータ540のシャフトには、駆動ローラ541が取り付けられており、駆動ローラ541に搬送ベルト51が巻回されている。側壁602a上でモータ540から所定距離だけがY軸方向に離した位置には従動ローラ542が取り付けられており、搬送ベルト51は、この従動ローラ542にも巻回されている。モータ540が駆動ローラ541を回転駆動することで、駆動ローラ541及び従動ローラ542の回転に伴って搬送ベルト51が回動する。
【0036】
スラッジ乾燥装置1は、例えば、搬送ベルト51の上に載置された水分を含むスラッジPを搬送ベルト51の上で所定の厚みに引き延ばすスキージ55を備えている。スキージ55のX軸方向の両端は、例えば、各側壁602aに固定されている。
【0037】
また、天板603の他方の端側(+Y方向側)には、乾燥ボックス60外に気体を排気する排気口605が貫通形成されている。
排気口605には、排気管605bを介してブロアファン606の吸い込み口が連通している。ブロアファン606の吐出口606aには、配管606bの一端が接続されており、配管606bの他端にはブロアファン606による排気の流量を2つに分割する分割部607が接続されている。分割部607は、例えば、排気管607aと導入管607bとの2流路への流量調整が可能である三方バルブである。分割部607は、分割管と、排気管607aと導入管607bとのどちらか一方の流量調整が可能である調整バルブとで構成してもよい。また、排気管607aと導入管607bとの配管径で排気の流量が分割されるようにしてもよい。
【0038】
分割部607には、吸引手段を備える工場設備の排気装置に連通する排気管607aと、分割部607で分割された一方の流量の排気を乾燥ボックス60内に戻し入れるための導入管607bの一端とが接続されている。
【0039】
天板603の吸気口604と排気口605との間には、戻し入口608が形成されており、導入管607bの他端が接続されている。
【0040】
底板601の他方の端側(+Y方向側)には、排出口609が厚み方向に貫通形成されており、搬送ベルト51は乾燥後のスラッジP1(
図1参照)を該排出口609に向かって落下させる。排出口609の下方には、バネヒンジによって開閉可能な蓋部609dが配設されている。
【0041】
乾燥ボックス60の他方の端(+Y方向側の端)の下方には、回収ボックス59が配設されている。回収ボックス59は、例えば、外形が略直方体状に形成されており、乾燥ボックス60の排出口609の直下において開口している。回収ボックス59の上部には、例えば、図示しないセンサ(例えば、透過型光センサ)が配設されている。乾燥したスラッジP1(
図1参照)が回収ボックス59内に落とされていき、回収ボックス59内にスラッジP1が所定高さまで貯まると、該センサによって回収ボックス59を交換すべき旨の発報がなされる。
【0042】
例えば、天板603の下面には、複数の凸部603aが形成されていてもよい。凸部603aは、
図1、3に示す例においては半球体状の外形を備えているが、これに限定されず、円柱状や角柱状の外形を備えていてもよい。凸部603aは、例えば、天板603の下面にX軸方向及びY軸方向に所定の等間隔を空けて複数配設されているが、天板603の下面にランダムに複数配設されていてもよい。また、凸部603aが円柱状や角柱状の外形の場合には、X軸方向に延在させY軸方向に所定の等間隔を空けて複数配設させてもよい。
乾燥ボックス60内の通気路600を搬送方向に流れる気体は、乾燥ボックス60の天板603の下面の凸部603aに衝突することで乱気流となる。即ち、不規則な気体の渦が搬送ベルト51上で発生すると共に、搬送方向に気体が流れていく。その結果、搬送ベルト51の上面の水分を多く含むスラッジPに乱気流が噴き付けられることで、スラッジPの水分がより蒸発しやすくなる。なお、凸部603aは天板603の下面に形成されていなくてもよい。
【0043】
以下に、加工水を供給しつつ
図1に示す被加工物Wを砥石404bで削り、排出される被加工物Wの粉を含んだ廃液Lから水分を多く含んだスラッジPを回収する場合の、スラッジ乾燥装置1の動作について説明する。
【0044】
まず、被加工物Wが保持テーブル41の保持面41aで吸引保持された後、テーブル支持台42が駆動して保持テーブル41上の被加工物Wが砥石404bと対向する研削位置で位置決めされた状態になる。
モータ402が回転軸400をZ軸方向の軸心周りに回転駆動し、これに伴い研削ホイール404が回転する。研削手段40が降下していき、回転する砥石404bが保持テーブル41で保持された被加工物Wの上面に当接することで研削が行われる。また、保持テーブル41が所定の回転速度で回転し保持面41a上の被加工物Wも回転するので、砥石404bが被加工物Wの上面全面の研削加工を行う。研削中は、砥石404bと被加工物Wの上面との接触部位に加工水が供給され、接触部位が冷却・洗浄される。
【0045】
この研削加工によって被加工物Wが研削されて微細な粉(シリコン粉)が形成されると共に、シリコン粉が加工水に混入して廃液Lが生成される。生成された廃液Lは、開口49aを介してウォーターケース48に流れ込んだ後、給液管485a、タンク12、及び送出管121aを経て廃液槽2に流入して貯められる。被加工物Wの粉は、加工水を吸収して水分を多く含んだスラッジPになる。
【0046】
このように廃液Lが廃液槽2に貯液された状態において、
図2に示すように、廃液Lに陽極板31及び陰極板30を着液させ、陽極板31に直流電源DCのプラス(+)を通電する一方、陰極板30に直流電源DCのマイナス(-)を通電する。この結果、陽極板31と陰極板30との間には電界が形成される。そして、廃液Lに混入されてマイナス(-)に帯電されているスラッジPは、電気泳動によって、マイナス(-)に帯電された陰極板30から反発し、プラス(+)に帯電された陽極板31に吸着される。
【0047】
一定量のスラッジPを陽極板31が吸着した後、
図1に示すY軸方向移動手段34が抜き差し手段32の保持部320を1枚の陽極板31の上方に位置づける。次いで、保持部320が降下して陽極板31を保持し、陽極板31を廃液槽2内の廃液Lから引き上げる。そして、Y軸方向移動手段34が、陽極板31を保持した保持部320を乾燥ボックス60の吸気口604上方まで移動させる。
【0048】
その後、
図3に示すように、剥ぎ取り手段36の一対の開閉シリンダ360で一対の剥ぎ取りプレート362を水平移動させて、剥ぎ取りプレート362で陽極板31を挟み込む。この状態から可動部材323(
図1参照)が保持部320を上昇させて陽極板31を引き上げる。これにより、陽極板31から水分を多く含むスラッジPが剥ぎ取られ、
図4に示すように塊となって乾燥ボックス60の吸気口604からボックス内部のガイド板604bに落下して、さらに、搬送ベルト51上へと移動する。
【0049】
次いで、
図5に示すように、例えば吸気口604が蓋部604dにより閉じられた状態になる。また、モータ540、駆動ローラ541、及び従動ローラ542により搬送ベルト51を回動させて水分を含んだスラッジPを-Y方向側から+Y方向側に搬送する。
図5に示すように、搬送ベルト51の上方にはスキージ55が配設されているため、搬送ベルト51上の水分を含んだスラッジPは、スキージ55の下方を通過することで、搬送ベルト51上で所定の厚み(例えば、1mm~2mm)に引き延ばされる。
【0050】
上記搬送ベルト51による水分を多く含んだスラッジPの搬送が行われると共に、乾燥ボックス60外に配設されたブロアファン606が駆動し、排気口605から乾燥ボックス60内の空気が吸引される。これによって、蓋部604dの吸気路604c及び吸気口604から乾燥ボックス60内に外気(空気)が吸気され、通気路600を搬送方向(-Y方向から+Y方向)に空気が流れる。その結果、搬送ベルト51上のスラッジPの水分が蒸発し、スラッジPが乾燥する。
【0051】
ブロアファン606の風量は、例えば10m3/分に設定される。そして、乾燥ボックス60内から吸気されブロアファン606の吐出口606aから配管606bに吐出された排気Gは、分割部607で工場設備の排気装置側へと流される他方の流量(例えば、風量5m3/分)の排気G2と、乾燥ボックス60内に戻される一方の流量(例えば、風量5m3/分)の排気G1との2つに分割される。なお、排気Gは、ブロアファン606の図示しないモータが発生する熱を吸収するため、ブロアファン606内で5度~6度その温度が上昇する。したがって、一方の排気G1の温度も、乾燥ボックス60に吸気口604から吸気される外気よりも5度~6度温度が高い。そして、一方の排気G1は導入管607b及び戻し入口608を介して乾燥ボックス60内に戻される。なお、一方の排気G1の流量と他方の排気G2の流量との比は上記のように1:1に限定されるものではない。
【0052】
分割部607で分割された一方の流量の排気G1を戻し入口608から乾燥ボックス60内に戻し入れるとともに、ブロアファン606による乾燥ボックス60内からの吸気を続ける。そして、乾燥ボックス60内の気圧は一定に保たれるため、分割部607で分割された他方の流量の排気G2と同じ量(例えば、風量5m3/分)の外気が吸気口604から乾燥ボックス60内に吸気される。そして、一方の流量の排気G1と吸気口604から吸気された外気とが混合され、通気路600を搬送方向(-Y方向から+Y方向)に流れ、それによって搬送ベルト51上のスラッジPの水分が蒸発し、スラッジPが乾燥する。
【0053】
このように、本発明に係るスラッジ乾燥装置1においては、分割部607で分割された一方の流量の排気G1(ブロアファン606で温まった排気)を戻し入口608から乾燥ボックス60内に戻し入れるとともに、分割部607で分割された他方の流量の排気G2と同じ量の外気を吸気口604から乾燥ボックス60内に吸気させ、搬送ベルト51で搬送されているスラッジPを効率よく乾燥させることができる。また、スラッジPを乾燥させるときに、乾燥ボックス60内には空気とスラッジPとの接触により水素が発生するが、ヒータ乾燥の場合と異なり、発生した水素が乾燥ボックス60内に溜まらないようになる、即ち、乾燥ボックス60内の水素の濃度を抑えることができるため、水素爆発を防止することが可能である。さらに、ヒータを用いないので、スラッジ乾燥装置1における消費電力を抑え、スラッジPをヒータの熱で溶かすことなく乾燥でき搬送ベルト51にスラッジPをへばりつかせず、且つ、搬送ベルト51の交換や乾燥ボックス60内の清掃を行うときに作業者の待ち時間を発生させない。
なお、工場設備の排気装置側へ流す排気量も減らすことができるため、工場設備の排気装置の負担も低減される。
【0054】
上記のように水分を含んだスラッジPから水分が除去されることで、搬送ベルト51上には乾燥したスラッジP1のみが残存する。搬送ベルト51上の乾燥したスラッジP1は、従動ローラ542を超えて搬送されると、回収ボックス59に向かって落下する。乾燥したスラッジP1の重みにより、蓋部609dが開き、回収ボックス59に水分が除去されたスラッジP1が回収される。
【0055】
本発明に係るスラッジ乾燥装置1は本実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。また、添付図面に図示されているスラッジ乾燥装置1や研削装置4の各構成の形状等についても、これに限定されず、本発明の効果を発揮できる範囲内で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0056】
4:研削装置 49:基台 49a:開口
40:研削手段 400:回転軸 404:研削ホイール 404b:砥石
41:保持テーブル 41a:保持面 42:テーブル支持台
48:ウォーターケース 484:桶部 486:排液口 485a:給液管
12:タンク 121:送出ポンプ
1:スラッジ乾燥装置
2:廃液槽
3:取り出し手段 30:陰極板 33a:筐体 33b:排出部
31:陽極板 310:被係合部 310a:被係合孔
32:抜き差し手段 320:保持部 323:可動部材
34:Y軸方向移動手段 342:鉛直板
36:剥ぎ取り手段 360:一対の開閉シリンダ 362:一対の剥ぎ取りプレート
51:搬送ベルト 52:モータ 55:スキージ 59:回収ボックス
6:乾燥手段
60:乾燥ボックス 600:通気路 603:天板 604:吸気口 605:排気口
606:ブロアファン
607:分割部 608:戻し入口