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特許7125476感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、感活性光線性又は感放射線性膜、パターン形成方法、及び電子デバイスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、感活性光線性又は感放射線性膜、パターン形成方法、及び電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/039 20060101AFI20220817BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20220817BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20220817BHJP
   C08G 63/91 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
G03F7/039 601
G03F7/004 501
G03F7/20 501
C08G63/91
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020510675
(86)(22)【出願日】2019-03-15
(86)【国際出願番号】 JP2019011007
(87)【国際公開番号】W WO2019188455
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2020-07-06
(31)【優先権主張番号】P 2018070301
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】特許業務法人航栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野崎 敦靖
(72)【発明者】
【氏名】丸茂 和博
【審査官】高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-090674(JP,A)
【文献】特開2014-063148(JP,A)
【文献】特開2007-256928(JP,A)
【文献】特開2004-331981(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004-7/18
G03F 7/20
C08G 63/91
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)酸の作用により分解し極性が増大する基を有する樹脂、(B)側鎖にアルカリ分解性基を有するポリエステル、及び(C)光酸発生剤を含む、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物であって、
前記(B)ポリエステルが、側鎖に下記一般式(EZ-2)で表される基を有する、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化1】

一般式(EZ-2)中、M21及びM22は各々独立に、単結合又は2価の連結基を表し、EZは有機基を表す。*は結合位置を表す。
【請求項2】
(A)酸の作用により分解し極性が増大する基を有する樹脂、(B)側鎖にアルカリ分解性基を有するポリエステル、及び(C)光酸発生剤を含む、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物であって、
前記(B)ポリエステルが、下記一般式(1)で表され
前記(B)ポリエステルが、側鎖に下記一般式(EZ-2)で表される基を有する、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化2】

一般式(1)中、E及びEはそれぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでもよい鎖状脂肪族基、ヘテロ原子を含んでもよい脂環基、芳香族基、又はこれらを組み合わせてなる基を表す。ただし、Eは下記一般式(1d)~(1f)のいずれかで表される基を表す。
【化3】

一般式(1d)中、W及びWは、それぞれ独立に、単結合又はアルキレン基若しくはシクロアルキレン基を表し、Zは、シクロアルキレン基、ヘテロ原子を含んでもよいスピロ環基、又はアリーレン基を表し、Y及びYは、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表し、Qはハロゲン原子を有する有機基を表し、k2は1以上の整数を表す。k2が2以上の整数を表す場合、複数のY、複数のY、及び複数のQはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
一般式(1e)中、W、W10及びW11は、それぞれ独立に、単結合又はアルキレン基若しくはシクロアルキレン基を表し、Z及びZは、それぞれ独立に、シクロアルキレン基、ヘテロ原子を含んでもよいスピロ環基、又はアリーレン基を表し、Y、Y、Y及びYは、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表し、Q及びQは、それぞれ独立に、ハロゲン原子を有する有機基を表し、k3及びk4は、それぞれ独立に、1以上の整数を表す。k3が2以上の整数を表す場合、複数のY、複数のY、及び複数のQはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。k4が2以上の整数を表す場合、複数のY、複数のY、及び複数のQはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
一般式(1f)中、Y及びYは、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表し、Qは水素原子又は置換基を表し、Qはハロゲン原子を有する有機基を表し、k5は1以上の整数を表し、k6は1又は2を表す。k5が2以上の整数を表す場合、複数のY、複数のY、複数のQ、及び複数のQはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【化4】

一般式(EZ-2)中、M 21 及びM 22 は各々独立に、単結合又は2価の連結基を表し、EZ は有機基を表す。*は結合位置を表す。
【請求項3】
前記(B)ポリエステルの含有量が、前記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の全固形分に対して、0.1質量%以上15質量%以下である、請求項1又は2に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(B)ポリエステルが、下記一般式(1)で表される、請求項1に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化5】

一般式(1)中、E及びEはそれぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでもよい鎖状脂肪族基、ヘテロ原子を含んでもよい脂環基、芳香族基、又はこれらを組み合わせてなる基を表す。
【請求項5】
前記一般式(1)中のE及びEの少なくとも1つが、下記一般式(1d)~(1f)のいずれかで表される基を表す、請求項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化6】

一般式(1d)中、W及びWは、それぞれ独立に、単結合又はアルキレン基若しくはシクロアルキレン基を表し、Zは、シクロアルキレン基、ヘテロ原子を含んでもよいスピロ環基、又はアリーレン基を表し、Y及びYは、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表し、Qはハロゲン原子を有する有機基を表し、k2は1以上の整数を表す。k2が2以上の整数を表す場合、複数のY、複数のY、及び複数のQはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
一般式(1e)中、W、W10及びW11は、それぞれ独立に、単結合又はアルキレン基若しくはシクロアルキレン基を表し、Z及びZは、それぞれ独立に、シクロアルキレン基、ヘテロ原子を含んでもよいスピロ環基、又はアリーレン基を表し、Y、Y、Y及びYは、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表し、Q及びQは、それぞれ独立に、ハロゲン原子を有する有機基を表し、k3及びk4は、それぞれ独立に、1以上の整数を表す。k3が2以上の整数を表す場合、複数のY、複数のY、及び複数のQはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。k4が2以上の整数を表す場合、複数のY、複数のY、及び複数のQはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
一般式(1f)中、Y及びYは、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表し、Qは水素原子又は置換基を表し、Qはハロゲン原子を有する有機基を表し、k5は1以上の整数を表し、k6は1又は2を表す。k5が2以上の整数を表す場合、複数のY、複数のY、複数のQ、及び複数のQはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【請求項6】
前記(B)ポリエステルが、フッ素原子を含有する、請求項1~のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物により形成された感活性光線性又は感放射線性膜。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物によって感活性光線性又は感放射線性膜を形成する工程、
前記感活性光線性又は感放射線性膜に活性光線又は放射線を照射する工程、及び、
前記活性光線又は放射線が照射された感活性光線性又は感放射線性膜を、現像液を用いて現像する工程、を有するパターン形成方法。
【請求項9】
前記現像液が、アルカリ現像液又は有機溶剤を含む現像液である、請求項に記載のパターン形成方法。
【請求項10】
請求項又は請求項に記載のパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、感活性光線性又は感放射線性膜、パターン形成方法、電子デバイスの製造方法、及びポリエステルに関する。
【背景技術】
【0002】
KrFエキシマレーザー(248nm)用レジスト以降、光吸収による感度低下を補うべく、化学増幅を利用したパターン形成方法が用いられている。例えば、ポジ型の化学増幅法では、まず、露光部に含まれる光酸発生剤が、光照射により分解して酸を発生する。そして、露光後のベーク(PEB:Post Exposure Bake)過程等において、発生した酸の触媒作用により、感光性組成物に含まれるアルカリ不溶性の基をアルカリ可溶性の基に変化させる。その後、例えばアルカリ溶液を用いて、現像を行う。これにより、露光部を除去して、所望のパターンを得る。
上記方法において、アルカリ現像液としては、種々のものが提案されている。例えば、このアルカリ現像液として、2.38質量%TMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液)の水系アルカリ現像液が汎用的に用いられている。
【0003】
半導体素子の微細化のために、露光光源の短波長化及び投影レンズの高開口数(高NA)化が進み、現在では、193nmの波長を有するArFエキシマレーザーを光源とする露光機が開発されている。解像力を更に高める技術として、投影レンズと試料との間に高屈折率の液体(以下、「液浸液」ともいう)を満たす方法(即ち、液浸法)が提唱されている。
例えば、特許文献1には、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が増大する樹脂、光酸発生剤、及び、アクリル酸エステルから誘導される繰り返し単位であって、フッ素原子を含む繰り返し単位を有する樹脂を含有するポジ型レジスト組成物が記載されている。
特許文献2には、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が増大する樹脂、光酸発生剤、及び、アルカリ現像液の作用により加水分解する連結基を主鎖中に含み、かつフッ素原子を有する重合体を含有するポジ型レジスト組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】日本国特開2012-242800号公報
【文献】日本国特開2017-90674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、各種電子機器の生産性の向上要求に伴い、レジストパターンの形成においても、意図するレジストパターンをより短時間で形成することが求められつつある。
そこで、本発明者らは、レジストパターンの形成時間を短縮化する手法の一つとして、液浸露光装置を用いた露光工程において、スキャン速度を向上させることを検討したところ、露光のスキャン速度を超高速とした場合に、露光装置に対する液浸液の高い追従性を有しながら、各種欠陥を抑制することは非常に困難であることを見出した。
【0006】
本発明は、露光のスキャン速度を超高速(例えば、700mm/秒以上)としても、露光時には露光装置に対する液浸液(典型的には超純水)の高い追従性を有しながら(すなわち、感活性光線性又は感放射線性膜の水に対する動的後退接触角が大きく)、かつ現像後のパターンの表面の親水性が高く(すなわち、パターンの表面の水に対する静的接触角(SCA)が小さく)、スカム(液浸欠陥)、及び、現像欠陥を共に低減可能な感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、並びに、これを用いた、感活性光線性又は感放射線性膜、パターン形成方法、電子デバイスの製造方法、及び上記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物に好適に用いることができるポリエステルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従来より、特許文献1のように、レジスト組成物中に添加ポリマーとして、アクリル酸エステルから誘導される繰り返し単位であって、フッ素原子を含む繰り返し単位を有する樹脂(「アクリル系含フッ素樹脂」ともいう)を含むレジスト組成物が知られている。アクリル系含フッ素樹脂は、レジスト膜の表面に偏在するため、アクリル系含フッ素樹脂を添加しない場合と比べて、レジスト膜の水に対する動的後退接触角(「DRCA」ともいう)を高くすることができることが知られている。
本発明では、レジスト組成物中にポリエステルを含有させることで、アクリル系含フッ素樹脂を用いた場合よりも更にDRCAを高くできることを見出した。これは、特に樹脂(A)として前述の(メタ)アクリル酸エステルに由来する繰り返し単位を有する樹脂(「アクリル系樹脂」ともいう)を用いた場合、ポリエステルがアクリル系樹脂との分離性が高い(相分離しやすい)ため、アクリル系含フッ素樹脂よりも、膜の表面に偏在しやすく、少ない添加量であっても高いDRCAが得られるためと推測される。また、上記の通り、ポリエステルを用いた場合、アクリル系含フッ素樹脂と比較して、少ない添加量で高いDRCAを得ることができるため、スカム(液浸欠陥)、及び、現像欠陥を共に低減することが可能になると考えられる。
【0008】
また、前述の特許文献2のアルカリ現像液の作用により加水分解する連結基を主鎖中に含み、かつフッ素原子を有する重合体(ポリエステル)を含むポジ型レジスト組成物から形成されたレジスト膜は、前述のアクリル系含フッ素樹脂を含むレジスト膜よりもDRCAを向上させることができる場合があるが、アルカリ現像液で現像した際に、欠陥(ディフェクト)が発生しやすいという問題があることが本発明者らの検討により分かった。
これは、ポリエステルをレジスト組成物に添加することで、レジスト膜の疎水性(撥水性)を高めることによってDRCAが向上し、液浸露光の際の水追従性が向上する一方で、疎水性のポリエステルはアルカリ現像液との親和性が低いため、アルカリ現像の際に除去されにくく、欠陥(ディフェクト)が発生しやすくなるためと考えられる。特にポジ型レジスト組成物の場合、未露光部でディフェクトが発生しやすい。ディフェクトを抑制するための1つの手段として、ポリエステルのアルカリ現像液に対する親和性を高くする方法が考えられる。即ち、上記問題を解決するためには、液浸露光時には、表面が疎水性(撥水性)でありながら、現像時には表面を親水性にする技術が重要となる。
また、膜表面を疎水化するために使用される樹脂(「添加ポリマー」もという)は、添加量に比例して、レジスト膜中に残存する量も多くなる。この残存した添加ポリマーは、撥水性が高いため、レジストパターン表面に残存することで、残存量が多いほど、スカム及び現像欠陥を悪化させると考えられる。従って、添加ポリマーの添加量を抑えることでスカム及び現像欠陥を改善できると考えられる。また、添加ポリマーが現像時にアルカリ現像液に対して親和性が高ければ、現像の際に除去されやすくなるため、スカム及び現像欠陥を改善できると考えられる。
本発明のポリエステル(B)は、側鎖にアルカリ分解性基を有するため、主鎖にアルカリ分解性基を有する特許文献2のポリエステルよりも、アルカリ分解性が高いと考えられる。これは、ポリマーは糸毬状に絡み合った状態となるため、主鎖にアルカリ分解性基を有する特許文献2のポリエステルは、アルカリ分解性基がアルカリ現像液と接触しにくく、本発明の側鎖にアルカリ分解性基を有するポリエステルより反応性が劣るためと考えられる。ポリエステルのアルカリ分解性が高いと、アルカリ現像液によってポリエステルが分解されやすいため、アルカリ現像時にアルカリ現像液で除去されやすくなる。なお、ポリエステルがアルカリ現像液によって除去されたことは、現像後のパターン(レジストパターン)の表面の静的接触角(SCA)が低下していることで確認できる。
したがって、本発明の側鎖にアルカリ分解性基を有するポリエステルは、露光時においては高い後退接触角(DRCA)のレジスト膜を形成でき、かつ現像時においてはアルカリ現像液によって分解して親水性が高くなるため、アルカリ現像液により除去されやすくなり、スカム及び現像欠陥を低減できる、極めて有用な素材である。
なお、「ディフェクト」とは、例えばKLAテンコール社の表面欠陥観察装置(商品名「KLA」)により、現像後のレジスト膜を真上から観察した際に検知される不具合全般のことである。この不具合とは、例えば現像後のスカム、泡、ゴミ、ブリッジ(レジストパターン間の橋掛け構造)、色むら、析出物、残渣物等である。液浸露光時には疎水性であって、現像時には親水性となる特性を有する材料であれば、これらの問題を解決することができるのではないかと推測される。
【0009】
すなわち、本発明者は、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
<1>
(A)酸の作用により分解し極性が増大する基を有する樹脂、(B)側鎖にアルカリ分解性基を有するポリエステル、及び(C)光酸発生剤を含む、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物であって、
上記(B)ポリエステルが、側鎖に下記一般式(EZ-2)で表される基を有する、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化101】

一般式(EZ-2)中、M21及びM22は各々独立に、単結合又は2価の連結基を表し、EZは有機基を表す。*は結合位置を表す。

(A)酸の作用により分解し極性が増大する基を有する樹脂、(B)側鎖にアルカリ分解性基を有するポリエステル、及び(C)光酸発生剤を含む、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物であって、
上記(B)ポリエステルが、下記一般式(1)で表され
上記(B)ポリエステルが、側鎖に下記一般式(EZ-2)で表される基を有する、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化102】

一般式(1)中、E及びEはそれぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでもよい鎖状脂肪族基、ヘテロ原子を含んでもよい脂環基、芳香族基、又はこれらを組み合わせてなる基を表す。ただし、Eは下記一般式(1d)~(1f)のいずれかで表される基を表す。
【化103】

一般式(1d)中、W及びWは、それぞれ独立に、単結合又はアルキレン基若しくはシクロアルキレン基を表し、Zは、シクロアルキレン基、ヘテロ原子を含んでもよいスピロ環基、又はアリーレン基を表し、Y及びYは、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表し、Qはハロゲン原子を有する有機基を表し、k2は1以上の整数を表す。k2が2以上の整数を表す場合、複数のY、複数のY、及び複数のQはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
一般式(1e)中、W、W10及びW11は、それぞれ独立に、単結合又はアルキレン基若しくはシクロアルキレン基を表し、Z及びZは、それぞれ独立に、シクロアルキレン基、ヘテロ原子を含んでもよいスピロ環基、又はアリーレン基を表し、Y、Y、Y及びYは、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表し、Q及びQは、それぞれ独立に、ハロゲン原子を有する有機基を表し、k3及びk4は、それぞれ独立に、1以上の整数を表す。k3が2以上の整数を表す場合、複数のY、複数のY、及び複数のQはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。k4が2以上の整数を表す場合、複数のY、複数のY、及び複数のQはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
一般式(1f)中、Y及びYは、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表し、Qは水素原子又は置換基を表し、Qはハロゲン原子を有する有機基を表し、k5は1以上の整数を表し、k6は1又は2を表す。k5が2以上の整数を表す場合、複数のY、複数のY、複数のQ、及び複数のQはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【化104】

一般式(EZ-2)中、M 21 及びM 22 は各々独立に、単結合又は2価の連結基を表し、EZ は有機基を表す。*は結合位置を表す。

上記(B)ポリエステルの含有量が、上記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の全固形分に対して、0.1質量%以上15質量%以下である、<1>又は<2>に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。

上記(B)ポリエステルが、下記一般式(1)で表される、<1>に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化105】

一般式(1)中、E及びEはそれぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでもよい鎖状脂肪族基、ヘテロ原子を含んでもよい脂環基、芳香族基、又はこれらを組み合わせてなる基を表す。

上記一般式(1)中のE及びEの少なくとも1つが、下記一般式(1d)~(1f)のいずれかで表される基を表す、<>に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化106】

一般式(1d)中、W及びWは、それぞれ独立に、単結合又はアルキレン基若しくはシクロアルキレン基を表し、Zは、シクロアルキレン基、ヘテロ原子を含んでもよいスピロ環基、又はアリーレン基を表し、Y及びYは、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表し、Qはハロゲン原子を有する有機基を表し、k2は1以上の整数を表す。k2が2以上の整数を表す場合、複数のY、複数のY、及び複数のQはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
一般式(1e)中、W、W10及びW11は、それぞれ独立に、単結合又はアルキレン基若しくはシクロアルキレン基を表し、Z及びZは、それぞれ独立に、シクロアルキレン基、ヘテロ原子を含んでもよいスピロ環基、又はアリーレン基を表し、Y、Y、Y及びYは、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表し、Q及びQは、それぞれ独立に、ハロゲン原子を有する有機基を表し、k3及びk4は、それぞれ独立に、1以上の整数を表す。k3が2以上の整数を表す場合、複数のY、複数のY、及び複数のQはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。k4が2以上の整数を表す場合、複数のY、複数のY、及び複数のQはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
一般式(1f)中、Y及びYは、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表し、Qは水素原子又は置換基を表し、Qはハロゲン原子を有する有機基を表し、k5は1以上の整数を表し、k6は1又は2を表す。k5が2以上の整数を表す場合、複数のY、複数のY、複数のQ、及び複数のQはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。

上記(B)ポリエステルが、フッ素原子を含有する、<1>~<>のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。

<1>~<>のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物により形成された感活性光線性又は感放射線性膜。

<1>~<>のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物によって感活性光線性又は感放射線性膜を形成する工程、
上記感活性光線性又は感放射線性膜に活性光線又は放射線を照射する工程、及び、
上記活性光線又は放射線が照射された感活性光線性又は感放射線性膜を、現像液を用いて現像する工程、を有するパターン形成方法。

上記現像液が、アルカリ現像液又は有機溶剤を含む現像液である、<>に記載のパターン形成方法。
10
>又は<>に記載のパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法。
本発明は、上記<1>~<10>に関するものであるが、本明細書には参考のためその他の事項についても記載した。
【0010】
〔1〕
(A)酸の作用により分解し極性が増大する基を有する樹脂、(B)側鎖にアルカリ分解性基を有するポリエステル、及び(C)光酸発生剤を含む、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
〔2〕
上記(B)ポリエステルの含有量が、上記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の全固形分に対して、0.1質量%以上15質量%以下である、〔1〕に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
〔3〕
上記(B)ポリエステルが、側鎖に下記一般式(EZ-1)で表される基を有する、〔1〕又は〔2〕に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【0011】
【化1】
【0012】
一般式(EZ-1)中、M20は単結合又は2価の連結基を表し、EZは有機基を表す。*は結合位置を表す。
〔4〕
上記(B)ポリエステルが、側鎖に下記一般式(EZ-2)で表される基を有する、〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【0013】
【化2】
【0014】
一般式(EZ-2)中、M21及びM22は各々独立に、単結合又は2価の連結基を表し、EZは有機基を表す。*は結合位置を表す。
〔5〕
上記(B)ポリエステルが、下記一般式(1)で表される、〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【0015】
【化3】
【0016】
一般式(1)中、E及びEはそれぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでもよい鎖状脂肪族基、ヘテロ原子を含んでもよい脂環基、芳香族基、又はこれらを組み合わせてなる基を表す。
〔6〕
上記一般式(1)中のE及びEの少なくとも1つが、下記一般式(1d)~(1f)のいずれかで表される基を表す、〔5〕に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【0017】
【化4】
【0018】
一般式(1d)中、W及びWは、それぞれ独立に、単結合又はアルキレン基若しくはシクロアルキレン基を表し、Zは、シクロアルキレン基、ヘテロ原子を含んでもよいスピロ環基、又はアリーレン基を表し、Y及びYは、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表し、Qはハロゲン原子を有する有機基を表し、k2は1以上の整数を表す。k2が2以上の整数を表す場合、複数のY、複数のY、及び複数のQはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
一般式(1e)中、W、W10及びW11は、それぞれ独立に、単結合又はアルキレン基若しくはシクロアルキレン基を表し、Z及びZは、それぞれ独立に、シクロアルキレン基、ヘテロ原子を含んでもよいスピロ環基、又はアリーレン基を表し、Y、Y、Y及びYは、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表し、Q及びQは、それぞれ独立に、ハロゲン原子を有する有機基を表し、k3及びk4は、それぞれ独立に、1以上の整数を表す。k3が2以上の整数を表す場合、複数のY、複数のY、及び複数のQはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。k4が2以上の整数を表す場合、複数のY、複数のY、及び複数のQはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
一般式(1f)中、Y及びYは、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表し、Qは水素原子又は置換基を表し、Qはハロゲン原子を有する有機基を表し、k5は1以上の整数を表し、k6は1又は2を表す。k5が2以上の整数を表す場合、複数のY、複数のY、複数のQ、及び複数のQはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
〔7〕
上記(B)ポリエステルが、フッ素原子を含有する、〔1〕~〔6〕のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
〔8〕
〔1〕~〔7〕のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物により形成された感活性光線性又は感放射線性膜。
〔9〕
〔1〕~〔7〕のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物によって感活性光線性又は感放射線性膜を形成する工程、
上記感活性光線性又は感放射線性膜に活性光線又は放射線を照射する工程、及び、
上記活性光線又は放射線が照射された感活性光線性又は感放射線性膜を、現像液を用いて現像する工程、を有するパターン形成方法。
〔10〕
上記現像液が、アルカリ現像液又は有機溶剤を含む現像液である、〔9〕に記載のパターン形成方法。
〔11〕
〔9〕又は〔10〕に記載のパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法。
〔12〕
下記一般式(1)で表され、かつ下記一般式(1)中のE及びEの少なくとも1つが、下記一般式(1d)~(1f)のいずれかで表される基を表す、ポリエステル。
【0019】
【化5】
【0020】
一般式(1)中、E及びEはそれぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでもよい鎖状脂肪族基、ヘテロ原子を含んでもよい脂環基、芳香族基、又はこれらを組み合わせてなる基を表す。
【0021】
【化6】
【0022】
一般式(1d)中、W及びWは、それぞれ独立に、単結合又はアルキレン基若しくはシクロアルキレン基を表し、Zは、シクロアルキレン基、ヘテロ原子を含んでもよいスピロ環基、又はアリーレン基を表し、Y及びYは、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表し、Qはハロゲン原子を有する有機基を表し、k2は1以上の整数を表す。k2が2以上の整数を表す場合、複数のY、複数のY、及び複数のQはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
一般式(1e)中、W、W10及びW11は、それぞれ独立に、単結合又はアルキレン基若しくはシクロアルキレン基を表し、Z及びZは、それぞれ独立に、シクロアルキレン基、ヘテロ原子を含んでもよいスピロ環基、又はアリーレン基を表し、Y、Y、Y及びYは、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表し、Q及びQは、それぞれ独立に、ハロゲン原子を有する有機基を表し、k3及びk4は、それぞれ独立に、1以上の整数を表す。k3が2以上の整数を表す場合、複数のY、複数のY、及び複数のQはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。k4が2以上の整数を表す場合、複数のY、複数のY、及び複数のQはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
一般式(1f)中、Y及びYは、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表し、Qは水素原子又は置換基を表し、Qはハロゲン原子を有する有機基を表し、k5は1以上の整数を表し、k6は1又は2を表す。k5が2以上の整数を表す場合、複数のY、複数のY、複数のQ、及び複数のQはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、露光のスキャン速度を超高速(例えば、700mm/秒以上)としても、露光時には露光装置に対する液浸液(典型的には超純水)の高い追従性を有しながら(すなわち、感活性光線性又は感放射線性膜の水に対する動的後退接触角が大きく)、かつ現像後のパターンの表面の親水性が高く(すなわち、パターンの表面の水に対する静的接触角が小さく)、スカム(液浸欠陥)、及び、現像欠陥を共に低減可能な感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、並びに、これを用いた、感活性光線性又は感放射線性膜、パターン形成方法、電子デバイスの製造方法、及び上記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物に好適に用いることができるポリエステルを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されない。
本明細書中における基(原子団)の表記について、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含する。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含する。また、本明細書中における「有機基」とは、少なくとも1個の炭素原子を含む基をいう。
本明細書中における「活性光線」又は「放射線」とは、例えば、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV:Extreme Ultraviolet)、X線、及び電子線(EB:Electron Beam)等を意味する。本明細書中における「光」とは、活性光線又は放射線を意味する。
本明細書中における「露光」とは、特に断らない限り、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線、X線、及びEUV等による露光のみならず、電子線、及びイオンビーム等の粒子線による描画も含む。
本明細書において、「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0025】
本明細書において、(メタ)アクリレートはアクリレート及びメタクリレートを表し、(メタ)アクリルはアクリル及びメタクリルを表す。
本明細書において、樹脂の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、及び分散度(分子量分布ともいう)(Mw/Mn)は、GPC(Gel Permeation Chromatography)装置(東ソー製HLC-8120GPC)によるGPC測定(溶媒:テトラヒドロフラン、流量(サンプル注入量):10μL、カラム:東ソー社製TSK gel Multipore HXL-M、カラム温度:40℃、流速:1.0mL/分、検出器:示差屈折率検出器(Refractive Index Detector))によるポリスチレン換算値として定義される。
【0026】
〔感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物〕
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物(以下、「本発明の組成物」ともいう)について説明する。
本発明の組成物は、(A)酸の作用により分解し極性が増大する基を有する樹脂、(B)側鎖にアルカリ分解性基を有するポリエステル、及び(C)光酸発生剤を含む。
【0027】
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、レジスト組成物であることが好ましく、ポジ型のレジスト組成物であっても、ネガ型のレジスト組成物であってもよい。また、アルカリ現像用のレジスト組成物であっても、有機溶剤現像用のレジスト組成物であってもよい。
本発明のレジスト組成物は、典型的には、化学増幅型のレジスト組成物である。
以下、本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物に含まれる成分について詳述する。
【0028】
<樹脂(A)>
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、酸の作用により分解し極性が増大する基(以下、「酸分解性基」ともいう)を有する樹脂(「酸分解性樹脂」又は「樹脂(A)」ともいう)を含有する。
この場合、本発明のパターン形成方法において、典型的には、現像液としてアルカリ現像液を採用した場合には、ポジ型パターンが好適に形成され、現像液として有機系現像液を採用した場合には、ネガ型パターンが好適に形成される。
【0029】
樹脂(A)は、酸分解性基を有する繰り返し単位を有することが好ましい。
樹脂(A)は、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーを重合してなるポリマーであることが好ましい。
【0030】
樹脂(A)としては、公知の樹脂を適宜使用することができる。例えば、米国特許出願公開2016/0274458A1号明細書の段落[0055]~[0191]、米国特許出願公開2015/0004544A1号明細書の段落[0035]~[0085]、米国特許出願公開2016/0147150A1号明細書の段落[0045]~[0090]に開示された公知の樹脂を樹脂(A)として好適に使用できる。
【0031】
酸分解性基は、極性基が酸の作用により分解し脱離する基(脱離基)で保護された構造を有することが好ましい。
極性基としては、カルボキシル基、フェノール性水酸基、フッ素化アルコール基、スルホン酸基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)メチレン基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基、ビス(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルスルホニル)メチレン基、ビス(アルキルスルホニル)イミド基、トリス(アルキルカルボニル)メチレン基、及びトリス(アルキルスルホニル)メチレン基等の酸性基(2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液中で解離する基)、ならびにアルコール性水酸基等が挙げられる。
【0032】
なお、アルコール性水酸基とは、炭化水素基に結合した水酸基であって、芳香環上に直接結合した水酸基(フェノール性水酸基)以外の水酸基をいい、水酸基としてα位がフッ素原子などの電子求引性基で置換された脂肪族アルコール(例えば、ヘキサフルオロイソプロパノール基など)は除く。アルコール性水酸基としては、pKa(酸解離定数)が12以上20以下の水酸基であることが好ましい。
【0033】
好ましい極性基としては、カルボキシル基、フェノール性水酸基、フッ素化アルコール基(好ましくはヘキサフルオロイソプロパノール基)、及びスルホン酸基が挙げられる。
【0034】
酸分解性基として好ましい基は、これらの基の水素原子を酸の作用により脱離する基(脱離基)で置換した基である。
酸の作用により脱離する基(脱離基)としては、例えば、-C(R36)(R37)(R38)、-C(R36)(R37)(OR39)、及び-C(R01)(R02)(OR39)等を挙げることができる。
式中、R36~R39は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基を表す。R36とR37とは、互いに結合して環を形成してもよい。
01及びR02は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基を表す。
【0035】
36~R39、R01及びR02のアルキル基は、炭素数1~8のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、へキシル基、及びオクチル基等を挙げることができる。
36~R39、R01及びR02のシクロアルキル基は、単環型でも、多環型でもよい。単環型としては、炭素数3~8のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、及びシクロオクチル基等を挙げることができる。多環型としては、炭素数6~20のシクロアルキル基が好ましく、例えば、アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、カンファニル基、ジシクロペンチル基、α-ピネル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデシル基、及びアンドロスタニル基等を挙げることができる。なお、シクロアルキル基中の少なくとも1つの炭素原子が酸素原子等のヘテロ原子によって置換されていてもよい。
36~R39、R01及びR02のアリール基は、炭素数6~10のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基、及びアントリル基等を挙げることができる。
36~R39、R01及びR02のアラルキル基は、炭素数7~12のアラルキル基が好ましく、例えば、ベンジル基、フェネチル基、及びナフチルメチル基等を挙げることができる。
36~R39、R01及びR02のアルケニル基は、炭素数2~8のアルケニル基が好ましく、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、及びシクロへキセニル基等を挙げることができる。
36とR37とが互いに結合して形成される環としては、シクロアルキル基(単環又は多環)であることが好ましい。シクロアルキル基としては、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基などの単環のシクロアルキル基、又はノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及びアダマンチル基などの多環のシクロアルキル基が好ましい。
【0036】
酸分解性基として、クミルエステル基、エノールエステル基、アセタールエステル基、又は第3級のアルキルエステル基等が好ましく、アセタール基、又は第3級アルキルエステル基がより好ましい。
【0037】
樹脂(A)は、酸分解性基を有する繰り返し単位として、下記一般式(AI)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。
【0038】
【化7】
【0039】
一般式(AI)に於いて、
Xaは、水素原子、ハロゲン原子、又は1価の有機基を表す。
Tは、単結合又は2価の連結基を表す。
Rx~Rxは、それぞれ独立に、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
Rx~Rxのいずれか2つが結合して環構造を形成してもよく、形成しなくてもよい。
【0040】
Tの2価の連結基としては、アルキレン基、アリーレン基、-COO-Rt-、及び-O-Rt-等が挙げられる。式中、Rtは、アルキレン基、シクロアルキレン基又はアリーレン基を表す。
Tは、単結合又は-COO-Rt-が好ましい。Rtは、炭素数1~5の鎖状アルキレン基が好ましく、-CH-、-(CH-、又は-(CH-がより好ましい。Tは、単結合であることがより好ましい。
【0041】
Xaは、水素原子又はアルキル基であることが好ましい。
Xaのアルキル基は、置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、水酸基、及びハロゲン原子(好ましくは、フッ素原子)が挙げられる。
Xaのアルキル基は、炭素数1~4が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ヒドロキシメチル基及びトリフルオロメチル基等が挙げられる。Xaのアルキル基は、メチル基であることが好ましい。
【0042】
Rx、Rx及びRxのアルキル基としては、直鎖状であっても、分岐状であってもよく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、及びt-ブチル基などが好ましく挙げられる。アルキル基の炭素数としては、1~10が好ましく、1~5がより好ましく、1~3が更に好ましい。Rx、Rx及びRxのアルキル基は、炭素間結合の一部が二重結合であってもよい。
Rx、Rx及びRxのシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基などの単環のシクロアルキル基、又はノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及びアダマンチル基などの多環のシクロアルキル基が好ましい。
【0043】
Rx、Rx及びRxの2つが結合して形成する環構造としては、シクロペンチル環、シクロヘキシル環、シクロヘプチル環、及びシクロオクタン環などの単環のシクロアルカン環、又はノルボルナン環、テトラシクロデカン環、テトラシクロドデカン環、及びアダマンタン環などの多環のシクロアルキル環が好ましい。シクロペンチル環、シクロヘキシル環、又はアダマンタン環がより好ましい。Rx、Rx及びRxの2つが結合して形成する環構造としては、下記に示す構造も好ましい。
【0044】
【化8】
【0045】
以下に一般式(AI)で表される繰り返し単位に相当するモノマーの具体例を挙げるが、本発明は、これらの具体例に限定されない。下記の具体例は、一般式(AI)におけるXaがメチル基である場合に相当するが、Xaは、水素原子、ハロゲン原子、又は1価の有機基に任意に置換することができる。
【0046】
【化9】
【0047】
樹脂(A)は、酸分解性基を有する繰り返し単位として、米国特許出願公開2016/0070167A1号明細書の段落[0336]~[0369]に記載の繰り返し単位を有することも好ましい。
【0048】
また、樹脂(A)は、酸分解性基を有する繰り返し単位として、米国特許出願公開2016/0070167A1号明細書の段落[0363]~[0364]に記載された酸の作用により分解してアルコール性水酸基を生じる基を含む繰り返し単位を有していてもよい。
【0049】
樹脂(A)は、酸分解性基を有する繰り返し単位を、1種単独で含んでもよく、2種以上を併用して含んでもよい。
【0050】
樹脂(A)に含まれる酸分解性基を有する繰り返し単位の含有量(酸分解性基を有する繰り返し単位が複数存在する場合はその合計)は、樹脂(A)の全繰り返し単位に対して、10~90モル%が好ましく、20~80モル%がより好ましく、30~70モル%が更に好ましい。
【0051】
樹脂(A)は、ラクトン構造、スルトン構造、及びカーボネート構造からなる群から選択される少なくとも1種を有する繰り返し単位を有することが好ましい。
【0052】
ラクトン構造又はスルトン構造としては、ラクトン構造又はスルトン構造を有していればいずれでも用いることができるが、好ましくは5~7員環ラクトン構造又は5~7員環スルトン構造であり、5~7員環ラクトン構造にビシクロ構造、スピロ構造を形成する形で他の環構造が縮環しているもの、又は5~7員環スルトン構造にビシクロ構造、スピロ構造を形成する形で他の環構造が縮環しているもの、がより好ましい。下記一般式(LC1-1)~(LC1-21)のいずれかで表されるラクトン構造、又は下記一般式(SL1-1)~(SL1-3)のいずれかで表されるスルトン構造を有する繰り返し単位を有することがさらに好ましい。また、ラクトン構造又はスルトン構造が主鎖に直接結合していてもよい。好ましい構造としては(LC1-1)、(LC1-4)、(LC1-5)、(LC1-8)、(LC1-16)、(LC1-21)、(SL1-1)である。
【0053】
【化10】
【0054】
ラクトン構造部分又はスルトン構造部分は、置換基(Rb)を有していても有していなくてもよい。好ましい置換基(Rb)としては、炭素数1~8のアルキル基、炭素数4~7のシクロアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、炭素数2~8のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、及び酸分解性基などが挙げられる。より好ましくは炭素数1~4のアルキル基、シアノ基、及び酸分解性基である。nは、0~4の整数を表す。nが2以上の時、複数存在する置換基(Rb)は、同一でも異なっていてもよい。また、複数存在する置換基(Rb)同士が結合して環を形成してもよい。
【0055】
ラクトン構造又はスルトン構造を有する繰り返し単位は、下記一般式(III)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【0056】
【化11】
【0057】
上記一般式(III)中、
Aは、エステル結合(-COO-で表される基)又はアミド結合(-CONH-で表される基)を表す。
nは、-R-Z-で表される構造の繰り返し数であり、0~5の整数を表し、0又は1であることが好ましく、0であることがより好ましい。nが0である場合、-R-Z-は存在せず、単結合となる。
は、アルキレン基、シクロアルキレン基、又はその組み合わせを表す。Rは、複数個ある場合には各々独立にアルキレン基、シクロアルキレン基、又はその組み合わせを表す。
Zは、単結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合又はウレア結合を表す。Zは、複数個ある場合には各々独立に、単結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合又はウレア結合を表す。
は、ラクトン構造又はスルトン構造を有する1価の有機基を表す。
は、水素原子、ハロゲン原子又は1価の有機基(好ましくはメチル基)を表す。
【0058】
のアルキレン基又はシクロアルキレン基は置換基を有してもよい。
Zは好ましくは、エーテル結合、又はエステル結合であり、より好ましくはエステル結合である。
【0059】
以下に一般式(III)で表される繰り返し単位に相当するモノマーの具体例、及び一般式(A-1)で表される繰り返し単位に相当するモノマーの具体例を挙げるが、本発明は、これらの具体例に限定されない。下記の具体例は、一般式(III))におけるR及び一般式(A-1)におけるR がメチル基である場合に相当するが、R及びR は、水素原子、ハロゲン原子、又は1価の有機基に任意に置換することができる。
【0060】
【化12】
【0061】
上記モノマーの他に、下記に示すモノマーも樹脂(A)の原料として好適に用いられる。
【0062】
【化13】
【0063】
樹脂(A)は、カーボネート構造を有する繰り返し単位を有していてもよい。カーボネート構造は、環状炭酸エステル構造であることが好ましい。環状炭酸エステル構造を有する繰り返し単位は、下記一般式(A-1)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【0064】
【化14】
【0065】
一般式(A-1)中、R は、水素原子、ハロゲン原子又は1価の有機基(好ましくはメチル基)を表す。
nは0以上の整数を表す。
は、置換基を表す。R は、nが2以上の場合は各々独立して、置換基を表す。
Aは、単結合、又は2価の連結基を表す。
Zは、式中の-O-C(=O)-O-で表される基と共に単環構造又は多環構造を形成する原子団を表す。
【0066】
樹脂(A)は、ラクトン構造、スルトン構造、及びカーボネート構造からなる群から選択される少なくとも1種を有する繰り返し単位として、米国特許出願公開2016/0070167A1号明細書の段落[0370]~[0414]に記載の繰り返し単位を有することも好ましい。
【0067】
樹脂(A)は、ラクトン構造、スルトン構造、及びカーボネート構造からなる群から選択される少なくとも1種を有する繰り返し単位を、1種単独で含んでもよく、2種以上を併用して含んでもよい。
【0068】
樹脂(A)に含まれるラクトン構造、スルトン構造、及びカーボネート構造からなる群から選択される少なくとも1種を有する繰り返し単位の含有量(ラクトン構造、スルトン構造、及びカーボネート構造からなる群から選択される少なくとも1種を有する繰り返し単位が複数存在する場合はその合計)は、樹脂(A)の全繰り返し単位に対して、5~70モル%であることが好ましく、10~65モル%であることがより好ましく、20~60モル%であることが更に好ましい
【0069】
樹脂(A)は、極性基を有する繰り返し単位を有することが好ましい。
極性基としては、水酸基、シアノ基、カルボキシル基、及びフッ素化アルコール基等が挙げられる。
極性基を有する繰り返し単位は、極性基で置換された脂環炭化水素構造を有する繰り返し単位であることが好ましい。また、極性基を有する繰り返し単位は、酸分解性基を有さないことが好ましい。極性基で置換された脂環炭化水素構造における、脂環炭化水素構造としては、アダマンチル基、又はノルボルナン基が好ましい。
【0070】
以下に極性基を有する繰り返し単位に相当するモノマーの具体例を挙げるが、本発明は、これらの具体例に限定されない。
【0071】
【化15】
【0072】
この他にも、極性基を有する繰り返し単位の具体例としては、米国特許出願公開2016/0070167A1号明細書の段落[0415]~[0433]に開示された繰り返し単位を挙げることができる。樹脂(A)は、極性基を有する繰り返し単位を、1種単独で含んでもよく、2種以上を併用して含んでもよい。
極性基を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対して、5~40モル%が好ましく、5~30モル%がより好ましく、10~25モル%が更に好ましい。
【0073】
樹脂(A)は、更に、酸分解性基及び極性基のいずれも有さない繰り返し単位を有することができる。酸分解性基及び極性基のいずれも有さない繰り返し単位は、脂環炭化水素構造を有することが好ましい。酸分解性基及び極性基のいずれも有さない繰り返し単位としては、例えば、米国特許出願公開2016/0026083A1号明細書の段落[0236]~[0237]に記載された繰り返し単位が挙げられる。酸分解性基及び極性基のいずれも有さない繰り返し単位に相当するモノマーの好ましい例を以下に示す。
【0074】
【化16】
【0075】
この他にも、酸分解性基及び極性基のいずれも有さない繰り返し単位の具体例としては、米国特許出願公開2016/0070167A1号明細書の段落[0433]に開示された繰り返し単位を挙げることができる。樹脂(A)は、酸分解性基及び極性基のいずれも有さない繰り返し単位を、1種単独で含んでもよく、2種以上を併用して含んでもよい。
酸分解性基及び極性基のいずれも有さない繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対して、5~40モル%が好ましく、5~30モル%がより好ましく、5~25モル%が更に好ましい。
【0076】
樹脂(A)は、上記の繰り返し構造単位以外に、ドライエッチング耐性、標準現像液適性、基板密着性、レジストプロファイル、更にレジストの一般的な必要な特性である解像力、耐熱性、感度等を調節する目的で様々な繰り返し構造単位を有することができる。このような繰り返し構造単位としては、単量体に相当する繰り返し構造単位を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0077】
単量体としては、例えばアクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、アリル化合物、ビニルエーテル類、及びビニルエステル類等から選ばれる付加重合性不飽和結合を1個有する化合物等を挙げることができる。
その他にも、上記種々の繰り返し構造単位に相当する単量体と共重合可能である付加重合性の不飽和化合物であれば、共重合されていてもよい。
樹脂(A)において、各繰り返し構造単位の含有モル比は、種々の性能を調節するために適宜設定される。
【0078】
本発明の組成物が、ArF露光用であるとき、ArF光の透過性の観点から樹脂(A)は実質的には芳香族基を有さないことが好ましい。より具体的には、樹脂(A)の全繰り返し単位中、芳香族基を有する繰り返し単位が全体の5モル%以下であることが好ましく、3モル%以下であることがより好ましく、理想的には0モル%、すなわち芳香族基を有する繰り返し単位を有さないことが更に好ましい。また、樹脂(A)は単環又は多環の脂環炭化水素構造を有することが好ましい。
【0079】
樹脂(A)は、繰り返し単位のすべてが(メタ)アクリレート系繰り返し単位で構成されることが好ましい。この場合、繰り返し単位のすべてがメタクリレート系繰り返し単位であるもの、繰り返し単位のすべてがアクリレート系繰り返し単位であるもの、繰り返し単位のすべてがメタクリレート系繰り返し単位とアクリレート系繰り返し単位とによるもののいずれのものでも用いることができるが、アクリレート系繰り返し単位が樹脂(A)の全繰り返し単位に対して50モル%以下であることが好ましい。
【0080】
本発明の組成物が、KrF露光用、EB露光用又はEUV露光用であるとき、樹脂(A)は芳香族炭化水素基を有する繰り返し単位を含むことが好ましい。樹脂(A)がフェノール性水酸基を含む繰り返し単位を含むことがより好ましい。フェノール性水酸基を含む繰り返し単位としては、ヒドロキシスチレン繰り返し単位やヒドロキシスチレン(メタ)アクリレート繰り返し単位を挙げることができる。
本発明の組成物が、KrF露光用、EB露光用又はEUV露光用であるとき、樹脂(A)は、フェノール性水酸基の水素原子が酸の作用により分解し脱離する基(脱離基)で保護された構造を有することが好ましい。
樹脂(A)に含まれる芳香族炭化水素基を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対して、30~100モル%が好ましく、40~100モル%がより好ましく、50~100モル%が更に好ましい。
【0081】
樹脂(A)の重量平均分子量は、1,000~200,000が好ましく、2,000~20,000がより好ましく、3,000~15,000が更に好ましく、3,000~11,000が特に好ましい。分散度(Mw/Mn)は、通常1.0~3.0であり、1.0~2.6が好ましく、1.0~2.0がより好ましく、1.1~2.0が更に好ましい。
【0082】
樹脂(A)は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の組成物の全固形分中の樹脂(A)の含有量は、一般的に20質量%以上である。40質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましい。上限は特に制限されないが、99.5質量%以下が好ましく、99質量%以下がより好ましく、97質量%以下が更に好ましい。
【0083】
<(B)側鎖にアルカリ分解性基を有するポリエステル>
本発明の組成物は、(B)側鎖にアルカリ分解性基を有するポリエステル(「ポリエステル(B)」又は「(B)成分」ともいう)を含有する。
前述したとおり、本発明のポリエステル(B)は、側鎖にアルカリ分解性基を有しているため、本発明の組成物は、露光のスキャン速度を超高速(例えば、700mm/秒以上)としても、露光時には露光装置に対する液浸液(典型的には超純水)の高い追従性を有しながら(すなわち、感活性光線性又は感放射線性膜の水に対する動的後退接触角が大きく)、かつ現像時にはアルカリ現像液のアルカリなどによりポリエステル(B)が分解して親水性(アルカリ現像液との親和性)が高まる(アルカリ現像液により除去されやすくなる)ため、スカム及び現像欠陥が低減される。
【0084】
本発明における(B)成分としてのポリエステルは、主鎖にエステル結合を有するポリマーである。すなわち、本発明における(B)成分としてのポリエステルは、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーを重合してなるポリマー(例えばアクリル系樹脂)の側鎖にエステル結合を有するポリマーではない。
また、本発明における(B)成分としてのポリエステルは、前述の樹脂(A)とは異なる成分である。
本発明における(B)成分としてのポリエステルは、界面活性剤ではないことが好ましい。ポリエステル(B)はカルボン酸塩又はスルホン酸塩の構造を有していてもよいし、カルボン酸塩又はスルホン酸塩の構造を有していなくてもよい。また、ポリエステル(B)はエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基などのノニオン性親水性基を有さないことが好ましい。
【0085】
アルカリ分解性基とは、アルカリの作用により分解し極性が増大する基であり、より具体的には、アルカリ現像液の作用により分解し、アルカリ現像液中での溶解度が増大する基である。アルカリ分解性基としては、例えば、-COOH基、-OH基などのアルカリ可溶性基の水素原子をアルカリの作用により脱離する基で置換した基が好ましい。より具体的には、ラクトン基、カルボン酸エステル基(-COO-)、酸無水物基(-C(O)OC(O)-)、酸イミド基(-NHCONH-)、カルボン酸チオエステル基(-COS-)、炭酸エステル基(-OC(O)O-)、硫酸エステル基(-OSOO-)、スルホン酸エステル基(-SOO-)などが挙げられる。
【0086】
ポリエステル(B)は、側鎖に下記一般式(EZ-1)で表される基を有することが好ましい。
下記一般式(EZ-1)で表される基はアルカリ分解性基を含む基であることが好ましい。
【0087】
【化17】
【0088】
一般式(EZ-1)中、M20は単結合又は2価の連結基を表し、EZは有機基を表す。*は結合位置を表す。
【0089】
一般式(EZ-1)中、M20が2価の連結基を表す場合は、-O-、-CO-、-COO-、アルキレン基(好ましくは炭素数1~15、より好ましくは炭素数1~10)、シクロアルキレン基(好ましくは炭素数3~15、より好ましくは炭素数5~10)、アリーレン基(好ましくは炭素数6~15、より好ましくは炭素数6~10)、又はこれらを組み合わせてなる2価の連結基が好ましい。
一般式(EZ-1)中、EZは有機基を表す。
EZが表す有機基としては、電子求引性基であることが好ましい。
EZはハロゲン原子を有する有機基を表すことが好ましい。
ハロゲン原子を有する有機基としては、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化シクロアルキル基、ハロゲン化アリール基、若しくはこれらを組み合わせてなる1価の基、又は、アルキル基若しくはシクロアルキル基にこれらの基が置換した1価の基などが挙げられる。
EZが表す有機基がハロゲン原子を有する有機基などの電子求引性基を表す場合には、更に、基中にオキシ基、カルボニル基、スルホニル基、スルフィニル基、又はこれらを組み合わせてなる2価の基を含んでいてもよい。
EZは、ハロゲン化アルキル基であることが好ましく、炭素数1~16のハロゲン化アルキル基であることがより好ましく、炭素数1~8のハロゲン化アルキル基であることが更に好ましい。また、上記ハロゲン化アルキル基はフッ化アルキル基であることが好ましい。、
【0090】
ポリエステル(B)は、側鎖に下記一般式(EZ-2)で表される基を有することが特に好ましい。下記一般式(EZ-2)で表される基は、ポリエステルの主鎖に結合する結合位置とアルカリ分解性基となり得る基との間にスペーサーとなる連結基を設けることによって長鎖化されており、ポリエステル分子が糸毬状に絡み合っていた場合にもアルカリ分解性基がアルカリ現像液と接触しやすいため、アルカリ分解性に優れる。これにより、露光、現像後のSCAが低くなり、リンス液の洗浄性が高くなり、現像欠陥が更に低減できる。
【0091】
【化18】
【0092】
一般式(EZ-2)中、M21及びM22は各々独立に、単結合又は2価の連結基を表し、EZは有機基を表す。*は結合位置を表す。
【0093】
一般式(EZ-2)中、M21及びM22が2価の連結基を表す場合の好ましい範囲等の詳細な説明は、一般式(EZ-1)中のM20と同様である。
一般式(EZ-2)中のEZの好ましい範囲等の詳細な説明は、一般式(EZ-1)中のEZと同様である。
【0094】
ポリエステル(B)は側鎖にアルカリ分解性基を有するが、更に、主鎖にアルカリ分解性基を有していてもよい。
【0095】
ポリエステル(B)は、下記一般式(1)で表されることが好ましい。
【0096】
【化19】
【0097】
一般式(1)中、E及びEはそれぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでもよい鎖状脂肪族基、ヘテロ原子を含んでもよい脂環基、芳香族基、又はこれらを組み合わせてなる基を表す。
【0098】
一般式(1)中、E及びEとしての鎖状脂肪族基は、2価の基であり、アルキレン基であることが好ましく、炭素数1~20のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数6~12のアルキレン基であることが更に好ましい。上記鎖状脂肪族基は鎖中にヘテロ原子(例えば、酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子)を含んでいてもよいが、含まないものであることが好ましい。上記鎖状脂肪族基は置換基を有していてもよく、置換基としてはハロゲン原子、シクロアルキル基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、シクロアルキルオキシカルボニル基、シクロアルキルカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールカルボニルオキシ基、フルオロアルキルオキシカルボニル基などが好ましく、ハロゲン原子がより好ましく、フッ素原子が特に好ましい。
【0099】
一般式(1)中、E及びEとしての脂環基は、2価の基であり、シクロアルキレン基又はスピロ環基であることが好ましく、炭素数4~20のシクロアルキレン基又はスピロ環基であることがより好ましく、炭素数4~12のシクロアルキレン基又はスピロ環基であることが更に好ましい。ここで、2価の基としてのスピロ環基とはスピロ環化合物から任意の2つの水素原子を除してなる2価の基である。上記脂環基は環員としてヘテロ原子(例えば、酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子)を含んでいてもよい。特に、酸素原子を含むスピロ環基が好ましい。上記脂環基は置換基を有していてもよく、置換基としてはハロゲン原子、アルキル基、アルキルオキシカルボニル基、フルオロアルキルオキシカルボニル基などが好ましく、フルオロアルキルオキシカルボニル基がより好ましい。
【0100】
一般式(1)中、E及びEとしての芳香族基は、2価の基であり、アリーレン基又はヘテロアリーレン基(2価の芳香族ヘテロ環基)であることが好ましく、アリーレン基であることがより好ましく、炭素数6~20のアリーレン基であることが更に好ましく、炭素数6~12のアリーレン基であることが特に好ましい。上記芳香族基は置換基を有していてもよく、置換基としてはハロゲン原子、アルキル基、アルキルオキシカルボニル基、フルオロアルキルオキシカルボニル基などが好ましい。
【0101】
一般式(1)中のE及びEは、ヘテロ原子を含んでもよい鎖状脂肪族基、ヘテロ原子を含んでもよい脂環基、及び芳香族基から選ばれる2種以上を組み合わせてなる2価の基であってもよい。組み合わせてなる基としては、例えば、アルキレン基とシクロアルキレン基を組み合わせてなる基、アルキレン基とアリーレン基を組み合わせてなる基、アルキレン基とスピロ環基を組み合わせてなる基、これらの基に含まれる鎖中若しくは環員にヘテロ原子を含む基、又はこれらの基に置換基を有する基などが挙げられる。
【0102】
一般式(1)中のE及びEがそれぞれ独立に下記一般式(1a)~(1f)のいずれかで表される基であることが好ましい。特に、一般式(1)中のE及びEの少なくとも1つが、下記一般式(1d)~(1f)のいずれかで表される基を表すことが好ましい。
【0103】
【化20】
【0104】
【化21】
【0105】
一般式(1a)中、Q~Qは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又はアルキル基を表し、Wは、単結合又はアルキレン基又はシクロアルキレン基を表す。
一般式(1b)中、W及びWは、それぞれ独立に、単結合又はアルキレン基又はシクロアルキレン基を表し、Zはシクロアルキレン基、ヘテロ原子を含んでもよいスピロ環基、又はアリーレン基を表す。
一般式(1c)中、W、W及びWは、それぞれ独立に、単結合又はアルキレン基若しくはシクロアルキレン基を表し、Z及びZは、それぞれ独立に、シクロアルキレン基、ヘテロ原子を含んでもよいスピロ環基、又はアリーレン基を表す。
【0106】
一般式(1d)中、W及びWは、それぞれ独立に、単結合又はアルキレン基若しくはシクロアルキレン基を表し、Zは、シクロアルキレン基、ヘテロ原子を含んでもよいスピロ環基、又はアリーレン基を表し、Y及びYは、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表し、Qはハロゲン原子を有する有機基を表し、k2は1以上の整数を表す。k2が2以上の整数を表す場合、複数のY、複数のY、及び複数のQはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
一般式(1e)中、W、W10及びW11は、それぞれ独立に、単結合又はアルキレン基若しくはシクロアルキレン基を表し、Z及びZは、それぞれ独立に、シクロアルキレン基、ヘテロ原子を含んでもよいスピロ環基、又はアリーレン基を表し、Y、Y、Y及びYは、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表し、Q及びQは、それぞれ独立に、ハロゲン原子を有する有機基を表し、k3及びk4は、それぞれ独立に、1以上の整数を表す。k3が2以上の整数を表す場合、複数のY、複数のY、及び複数のQはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。k4が2以上の整数を表す場合、複数のY、複数のY、及び複数のQはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
一般式(1f)中、Y及びYは、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表し、Qは水素原子又は置換基を表し、Qはハロゲン原子を有する有機基を表し、k5は1以上の整数を表し、k6は1又は2を表す。k5が2以上の整数を表す場合、複数のY、複数のY、複数のQ、及び複数のQはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0107】
一般式(1a)中、Q~Qは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又はアルキル基を表し、ハロゲン原子又はアルキル基を表すことが好ましい。
~Qとしてのハロゲン原子は、フッ素原子であることが好ましい。
~Qとしてのアルキル基は、炭素数1~6のアルキル基であることが好ましく、炭素数1~3のアルキル基であることがより好ましい。また、Q~Qとしてのアルキル基は置換基を有していてもよく、置換基を有する場合の置換基としてはハロゲン原子、アルキル基、アルキルオキシカルボニル基、フルオロアルキルオキシカルボニル基などが好ましく、ハロゲン原子がより好ましく、フッ素原子が更に好ましい。
【0108】
一般式(1a)中、Wは、単結合又はアルキレン基若しくはシクロアルキレン基を表す。
としてのアルキレン基は炭素数1~20のアルキレン基が好ましく、炭素数3~10のアルキレン基がより好ましい。
としてのアルキレン基は、置換基を有していてもよく、置換基を有する場合の置換基としてハロゲン原子が好ましく、フッ素原子が更に好ましい。
としてのシクロアルキレン基は炭素数4~20のシクロアルキレン基であることが好ましく、炭素数4~8のシクロアルキレン基であることが更に好ましい。
としてのシクロアルキレン基は、置換基を有していてもよく、置換基を有する場合の置換基としてハロゲン原子が好ましく、フッ素原子が更に好ましい。
【0109】
一般式(1b)中のW及びWについては、それぞれ一般式(1a)中のWと同様である。
【0110】
一般式(1b)中、Zはシクロアルキレン基、ヘテロ原子を含んでもよいスピロ環基、又はアリーレン基を表す。
としてのシクロアルキレン基は、炭素数4~20のシクロアルキレン基であることが好ましく、炭素数4~8のシクロアルキレン基であることが更に好ましい。
としてのスピロ環基は、炭素数5~30のスピロ環基であることが好ましく、炭素数6~20のスピロ環基であることが更に好ましい。
としてのスピロ環基は、環員としてヘテロ原子を含んでいてもよく、酸素原子を含むことが好ましい。
としてのアリーレン基は、炭素数6~20のアリーレン基であることが好ましく、炭素数6~10のアリーレン基であることが更に好ましい。
が表すシクロアルキレン基、ヘテロ原子を含んでもよいスピロ環基、又はアリーレン基は、置換基を有していてもよく、置換基としてはハロゲン原子、アルキル基、アルキルオキシカルボニル基、フルオロアルキルオキシカルボニル基などが好ましく、フルオロアルキルオキシカルボニル基がより好ましい。
【0111】
一般式(1c)中のW、W及びWについては、それぞれ一般式(1a)中のWと同様である。
及びZについては、それぞれ前述の一般式(1b)中のZと同様である。
【0112】
一般式(1d)中のW及びWについては、それぞれ一般式(1a)中のWと同様である。
については、前述の一般式(1b)中のZと同様である。
はハロゲン原子を有する有機基を表し、好ましい範囲等については前述の一般式(EZ-1)中のEZにおいて記載したものと同様である。
及びYは、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表す。
及びYが2価の連結基を表す場合は、-O-、-CO-、-COO-、アルキレン基(好ましくは炭素数1~20、より好ましくは炭素数2~6)、シクロアルキレン基(好ましくは炭素数4~20、より好ましくは炭素数4~12)、アリーレン基(好ましくは炭素数6~20、より好ましくは炭素数6~10)、又はこれらを組み合わせてなる2価の連結基が好ましい。
及びYがアルキレン基、シクロアルキレン基、又はアリーレン基を表す場合は、更に置換基を有していてもよい。置換基としてはハロゲン原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
k2は、1以上の整数を表し、1~5の整数を表すことが好ましく、1~3の整数を表すことがより好ましい。
【0113】
一般式(1e)中のW、W10及びW11については、それぞれ一般式(1a)中のWと同様である。
及びZについては、前述の一般式(1b)中のZと同様である。
及びQについては、それぞれ一般式(1d)中のQと同様である。
~Yについては、それぞれ一般式(1d)中のY及びYと同様である。
k3及びk4は、1以上の整数を表し、1~10の整数を表すことが好ましく、1~3の整数を表すことがより好ましい。
【0114】
一般式(1f)中のQについては、それぞれ一般式(1d)中のQと同様である。
及びYについては、それぞれ一般式(1d)中のY及びYと同様である。
k5は、1以上の整数を表し、1~20の整数を表すことが好ましく、1~10の整数を表すことがより好ましい。
は水素原子又は置換基を表し、置換基としては、特に限定されないが、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基などが好ましい。
【0115】
ポリエステル(B)における一般式(1)で表される構造(繰り返し構造単位)の繰り返し数は、3以上であることが好ましく、5~200であることがより好ましく、5~100であることが更に好ましく、10~70であることが特に好ましく、10~50であることが最も好ましい。すなわち、ポリエステル(B)は下記一般式(1p)で表される構造を有することが好ましい。
【0116】
【化22】
【0117】
一般式(1p)中、E1p及びE2pはそれぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでもよい鎖状脂肪族基、ヘテロ原子を含んでもよい脂環基、芳香族基、又はこれらを組み合わせてなる基を表す。k1は3以上の数を表す。
【0118】
k1はポリマー全体の平均の値である。k1は3以上を表すことが好ましく、5~200を表すことがより好ましく、5~100を表すことが更に好ましく、10~70を表すことが特に好ましく、10~50を表すことが最も好ましい。
一般式(1p)中、E1p及びE2pは、それぞれ一般式(1)中のE及びEと同様である。
【0119】
また、本発明のポリエステル(B)は、現像後のSCAを更に小さくできるという理由から、主鎖又は側鎖に酸分解性基を有していてもよい。
【0120】
酸分解性基とは、酸の作用により分解し極性が増大する基である。酸分解性基としては、前述の樹脂(A)で説明したものが挙げられる。
【0121】
ポリエステル(B)は、主鎖に酸分解性基を有していても良いし、側鎖に酸分解性基を有していても良いし、主鎖及び側鎖に酸分解性基を有していても良い。
【0122】
ポリエステル(B)としては、主鎖に酸分解性基を有するポリエステルが好ましく、下記式(P1)で表される構造を主鎖中に有するポリエステルが好ましい。
【0123】
【化23】
【0124】
式(P1)中、*1~*4は結合位置を表す。
式(P1)中の*1と*3、*1と*4、*2と*3、*2と*4、又は*3と*4がポリエステルの主鎖との結合位置であることが好ましい。
【0125】
ポリエステル(B)は、下記一般式(RZ-1)~(RZ-4)のいずれかで表される基を少なくとも1種有することが好ましい。
【0126】
【化24】
【0127】
一般式(RZ-1)中、Mは単結合又は2価の連結基を表し、TL及びTLは各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又はハロゲン原子を表し、TLとTLは互いに結合して環を形成しても良い。Lは単結合又はアルキレン基を表す。LとTL及びTLのいずれか一方とは互いに結合して環を形成しても良い。*は結合位置を表す。
一般式(RZ-2)中、M及びMは各々独立に、単結合又は2価の連結基を表し、TL及びTLは各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基を表し、TLとTLは互いに結合して環を形成しても良い。*は結合位置を表す。
一般式(RZ-3)中、M及びMは各々独立に、単結合又は2価の連結基を表し、TL及びTLは各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又はハロゲン原子を表す。ZL1は環構造を表す。ZL1はスピロ環構造を表しても良い。*は結合位置を表す。
一般式(RZ-4)中、M及びMは各々独立に、単結合又は2価の連結基を表し、TL及びTLは各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又はハロゲン原子を表す。ZL2は環構造を表す。ZL2はスピロ環構造を表しても良い。*は結合位置を表す。
【0128】
一般式(RZ-1)中、Mは単結合又は2価の連結基を表す。Mが2価の連結基を表す場合、酸素原子、アルキレン基、シクロアルキレン基、CRZ1Z2、NRZ3、又はこれらを組み合わせてなる2価の連結基を表すことが好ましく、RZ1、RZ2、及びRZ3は各々独立に、水素原子、アルキル基、又はハロゲン原子を表し、RZ1とRZ2は互いに結合して環を形成しても良い。
としてのアルキレン基は、炭素数1~20のアルキレン基が好ましく、炭素数1~10のアルキレン基がより好ましい。
としてのアルキレン基は置換基を有していてもよく、置換基としては、シクロアルキル基、アルキルオキシカルボニル基、フルオロアルキルオキシカルボニル基、ハロゲン原子が好ましく挙げられる。
としてのシクロアルキレン基は、炭素数3~20のシクロアルキレン基であることが好ましく、炭素数4~15のシクロアルキレン基であることが更に好ましい。
としてのシクロアルキレン基は置換基を有していてもよく、置換基としては、アルキル基、アルキルオキシカルボニル基、フルオロアルキルオキシカルボニル基、ハロゲン原子が好ましく挙げられる。
Z1、RZ2、RZ3がアルキル基を表す場合、炭素数1~10のアルキル基が好ましく、炭素数1~6のアルキル基がより好ましい。
Z1、RZ2、RZ3としてのアルキル基は置換基を有していてもよく、置換基としては、シクロアルキル基、アルキルオキシカルボニル基、フルオロアルキルオキシカルボニル基、ハロゲン原子が好ましく挙げられる。
Z1、RZ2、RZ3がハロゲン原子を表す場合、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
【0129】
一般式(RZ-1)中、TL及びTLは各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又はハロゲン原子を表し、TLとTLは互いに結合して環を形成しても良い。
TL及びTLとしてのアルキル基は、炭素数1~20のアルキル基が好ましく、炭素数1~10のアルキル基がより好ましい。
TL及びTLとしてのアルキル基は置換基を有していてもよく、置換基としては、シクロアルキル基、ハロゲン原子が好ましく挙げられる。
TL及びTLとしてのシクロアルキル基は、炭素数3~20のシクロアルキル基であることが好ましく、炭素数5~15のシクロアルキル基であることが更に好ましい。
TL及びTLとしてのシクロアルキル基は置換基を有していてもよく、置換基としては、アルキル基、ハロゲン原子が好ましく挙げられる。
TL及びTLとしてのアリール基は、炭素数6~20のアリール基であることが好ましく、炭素数6~15のアリール基であることが更に好ましい。
TL及びTLとしてのアリール基は置換基を有していてもよく、置換基としては、アルキル基、ハロゲン原子が好ましく挙げられる。
TL及びTLとしてのハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
TLとTLは互いに結合して環を形成しても良く、形成される環としては、シクロアルカン環(好ましくは炭素数3~10)が好ましい。
【0130】
一般式(RZ-1)中、Lは単結合又はアルキレン基を表す。LとTL及びTLのいずれか一方とは互いに結合して環を形成しても良い。
としてのアルキレン基は、炭素数1~20のアルキレン基が好ましく、炭素数1~10のアルキレン基がより好ましい。
としてのアルキレン基は置換基を有していてもよく、置換基としては、シクロアルキル基、アルキルオキシカルボニル基、フルオロアルキルオキシカルボニル基、ハロゲン原子が好ましく挙げられる。
とTL及びTLのいずれか一方とは互いに結合して環を形成しても良く、形成される環としては、シクロアルカン環(好ましくは炭素数3~10)が好ましい。
【0131】
一般式(RZ-2)中、M及びMは単結合又は2価の連結基を表す。M及びMが2価の連結基を表す場合の好ましい範囲等の詳細な説明は、一般式(RZ-1)中のMと同様である。
一般式(RZ-2)中、TL及びTLは各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基を表し、TLとTLは互いに結合して環を形成しても良い。TL及びTLの好ましい範囲等の詳細な説明は、一般式(RZ-1)中のTL及びTLと同様である。
【0132】
一般式(RZ-3)中、M及びMは単結合又は2価の連結基を表す。M及びMが2価の連結基を表す場合の好ましい範囲等の詳細な説明は、一般式(RZ-1)中のMと同様である。
一般式(RZ-3)中、TL及びTLは各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又はハロゲン原子を表す。TL及びTLの好ましい範囲等の詳細な説明は、一般式(RZ-1)中のTL及びTLと同様である。
一般式(RZ-3)中、ZL1は環構造を表す。ZL1はスピロ環構造を表すことが好ましい。
【0133】
一般式(RZ-3)で表される基は、下記一般式(RZ-3-1)で表される基であることが好ましい。
【0134】
【化25】
【0135】
一般式(RZ-3-1)中、M41及びM51は各々独立に、単結合又は2価の連結基を表し、TL51及びTL61は各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又はハロゲン原子を表す。D12は炭素原子又は4価の炭化水素基を表す。*は結合位置を表す。
【0136】
一般式(RZ-3-1)中、M41、M51、TL51及びTL61の好ましい範囲等の詳細な説明は、各々一般式(RZ-3)中のM、M、TL及びTLと同様である。
一般式(RZ-3-1)中、D12は炭素原子又は4価の炭化水素基を表し、炭素原子又は炭素数2~10の炭化水素基を表すことが好ましい。
【0137】
一般式(RZ-4)中、M及びMは単結合又は2価の連結基を表す。M及びMが2価の連結基を表す場合の好ましい範囲等の詳細な説明は、一般式(RZ-1)中のMと同様である。
一般式(RZ-4)中、TL及びTLは各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又はハロゲン原子を表す。TL及びTLの好ましい範囲等の詳細な説明は、一般式(RZ-1)中のTL及びTLと同様である。
【0138】
一般式(RZ-4)で表される基は、下記一般式(RZ-4-1)で表される基であることが好ましい。
【0139】
【化26】
【0140】
一般式(RZ-4-1)中、M61及びM71は各々独立に、単結合又は2価の連結基を表し、TL71及びTL81は各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又はハロゲン原子を表す。D13は炭素原子又は4価の炭化水素基を表す。*は結合位置を表す。
【0141】
一般式(RZ-4-1)中、M61、M71、TL71及びTL81の好ましい範囲等の詳細な説明は、各々一般式(RZ-3)中のM、M、TL及びTLと同様である。
一般式(RZ-4-1)中、D13は炭素原子又は4価の炭化水素基を表し、炭素原子又は炭素数2~10の炭化水素基を表すことが好ましい。
【0142】
ポリエステル(B)は、下記一般式(QZ-1)~(QZ-4)のいずれかで表される基を少なくとも1種有することも好ましい。
【0143】
【化27】
【0144】
一般式(QZ-1)中、M11は単結合又は2価の連結基を表し、TL11及びTL12は各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又はハロゲン原子を表し、TL11とTL12は互いに結合して環を形成しても良い。X11は水素原子、ハロゲン原子、又は1価の有機基を表す。X11はTL11及びTL12の少なくとも一方と結合して環を形成しても良い。*は結合位置を表す。
一般式(QZ-2)中、M12及びM13は各々独立に、単結合又は2価の連結基を表し、TL13及びTL14は各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基を表し、TL13とTL14は互いに結合して環を形成しても良い。X12は水素原子、ハロゲン原子、又は1価の有機基を表す。X12はTL13及びTL14の少なくとも一方と結合して環を形成しても良い。*は結合位置を表す。
一般式(QZ-3)中、M14及びM15は各々独立に、単結合又は2価の連結基を表し、TL15及びTL16は各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又はハロゲン原子を表す。ZL3は環構造を表す。ZL3はスピロ環構造を表しても良い。X13は水素原子、ハロゲン原子、又は1価の有機基を表す。*は結合位置を表す。
一般式(QZ-4)中、M16及びM17は各々独立に、単結合又は2価の連結基を表し、TL17及びTL18は各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又はハロゲン原子を表す。ZL4は環構造を表す。ZL4はスピロ環構造を表しても良い。X14は水素原子、ハロゲン原子、又は1価の有機基を表す。*は結合位置を表す。
【0145】
一般式(QZ-1)中、M11は単結合又は2価の連結基を表す。M11が2価の連結基を表す場合の好ましい範囲等の詳細な説明は、一般式(RZ-1)中のMと同様である。
一般式(QZ-1)中、TL11及びTL12は各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基を表し、TL11及びTL12は互いに結合して環を形成しても良い。TL11及びTL12の好ましい範囲等の詳細な説明は、一般式(RZ-1)中のTL及びTLと同様である。
一般式(QZ-1)中、X11は水素原子、ハロゲン原子、又は1価の有機基を表す。1価の有機基としてはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基が好ましい。X11はTL11及びTL12の少なくとも一方と結合して環を形成しても良い。X11の好ましい範囲等の詳細な説明は、一般式(RZ-1)中のTL及びTLと同様である。X11がTL11及びTL12の少なくとも一方と結合して環を形成する場合、形成される環としては、シクロアルカン環(好ましくは炭素数3~10)が好ましい。
【0146】
一般式(QZ-2)中、M12及びM13は単結合又は2価の連結基を表す。M12及びM13が2価の連結基を表す場合の好ましい範囲等の詳細な説明は、一般式(RZ-1)中のMと同様である。
一般式(QZ-2)中、TL13及びTL14は各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基を表し、TL13とTL14は互いに結合して環を形成しても良い。TL13及びTL14の好ましい範囲等の詳細な説明は、一般式(RZ-1)中のTL及びTLと同様である。
一般式(QZ-2)中、X12は水素原子、ハロゲン原子、又は1価の有機基を表す。1価の有機基としてはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基が好ましい。X12の好ましい範囲等の詳細な説明は、一般式(RZ-1)中のTL及びTLと同様である。
【0147】
一般式(QZ-3)中、M14及びM15は単結合又は2価の連結基を表す。M14及びM15が2価の連結基を表す場合の好ましい範囲等の詳細な説明は、一般式(RZ-1)中のMと同様である。
一般式(QZ-3)中、TL15及びTL16は各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又はハロゲン原子を表す。TL15及びTL16の好ましい範囲等の詳細な説明は、一般式(RZ-1)中のTL及びTLと同様である。
一般式(QZ-3)中、X13は水素原子、ハロゲン原子、又は1価の有機基を表す。1価の有機基としてはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基が好ましい。X13の好ましい範囲等の詳細な説明は、一般式(RZ-1)中のTL及びTLと同様である。
一般式(QZ-3)中、ZL3は環構造を表す。ZL3はスピロ環構造を表すことが好ましい。
【0148】
一般式(QZ-3)で表される基は、下記一般式(QZ-3-1)で表される基であることが好ましい。
【0149】
【化28】
【0150】
一般式(QZ-3-1)中、M42及びM52は各々独立に、単結合又は2価の連結基を表し、TL52及びTL62は各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又はハロゲン原子を表す。D22は炭素原子又は4価の炭化水素基を表す。X23は水素原子、ハロゲン原子、又は1価の有機基を表す。*は結合位置を表す。
【0151】
一般式(QZ-3-1)中、M42、M52、TL52及びTL62の好ましい範囲等の詳細な説明は、各々一般式(RZ-3)中のM、M、TL及びTLと同様である。
一般式(QZ-3-1)中、X23の好ましい範囲等の詳細な説明は、一般式(QZ-3)中のX13と同様である。
一般式(QZ-3-1)中、D22は炭素原子又は4価の炭化水素基を表し、炭素原子又は炭素数2~10の炭化水素基を表すことが好ましい。
【0152】
一般式(QZ-4)中、M16及びM17は単結合又は2価の連結基を表す。M16及びM17が2価の連結基を表す場合の好ましい範囲等の詳細な説明は、一般式(RZ-1)中のMと同様である。
一般式(QZ-4)中、TL17及びTL18は各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又はハロゲン原子を表す。TL17及びTL18の好ましい範囲等の詳細な説明は、一般式(RZ-1)中のTL及びTLと同様である。
一般式(QZ-4)中、X14は水素原子、ハロゲン原子、又は1価の有機基を表す。1価の有機基としてはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基が好ましい。X14の好ましい範囲等の詳細な説明は、一般式(RZ-1)中のTL及びTLと同様である。
【0153】
一般式(QZ-4)で表される基は、下記一般式(QZ-4-1)で表される基であることが好ましい。
【0154】
【化29】
【0155】
一般式(QZ-4-1)中、M62及びM72は各々独立に、単結合又は2価の連結基を表し、TL72及びTL82は各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又はハロゲン原子を表す。D23は炭素原子又は4価の炭化水素基を表す。X24は水素原子、ハロゲン原子、又は1価の有機基を表す。*は結合位置を表す。
【0156】
一般式(QZ-4-1)中、M62、M72、TL72及びTL82の好ましい範囲等の詳細な説明は、各々一般式(RZ-3)中のM、M、TL及びTLと同様である。
一般式(QZ-4-1)中、X24の好ましい範囲等の詳細な説明は、一般式(QZ-4)中のX14と同様である。
一般式(QZ-4-1)中、D23は炭素原子又は4価の炭化水素基を表し、炭素原子又は炭素数2~10の炭化水素基を表すことが好ましい。
【0157】
本発明の組成物から形成される膜の水に対するDRCAをより高くすることができるという観点から、ポリエステル(B)は、フッ素原子を含有することが好ましい。
【0158】
ポリエステル(B)の好ましい具体例を以下に挙げるが、これらに限定されない。
PE-2は主鎖に酸分解性基を有し、かつ側鎖にアルカリ分解性基を有するポリエステルである。
【0159】
【化30】
【0160】
【化31】
【0161】
ポリエステル(B)の重量平均分子量(Mw)は、4000~30000が好ましく、6000~20000がより好ましく、8000~16000が更に好ましい。分散度(Mw/Mn)は、通常1.0~3.0であり、1.5~2.6が好ましい。
【0162】
ポリエステル(B)は、公知の方法で合成するなどして入手することができる。例えば、ジカルボン酸ハライドとジオールの重縮合反応、二無水物とジオールの重付加反応、ジカルボン酸とジオールの重縮合反応、環状ラクトンの開環重合等により、合成する事ができる。
【0163】
ポリエステル(B)は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の組成物中のポリエステル(B)の含有量は、本発明の組成物の全固形分に対して、0.1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以上8質量%以下であることが更に好ましく、1質量%以上6質量%以下であることが特に好ましく、2質量%以上4質量%以下であることが最も好ましい。
【0164】
<光酸発生剤(C)>
本発明の組成物は、光酸発生剤(「光酸発生剤(C)」又は「酸発生剤」ともいう)を含有する。
光酸発生剤は、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物である。
光酸発生剤としては、活性光線又は放射線の照射により有機酸を発生する化合物が好ましい。例えば、スルホニウム塩化合物、ヨードニウム塩化合物、ジアゾニウム塩化合物、ホスホニウム塩化合物、イミドスルホネート化合物、オキシムスルホネート化合物、ジアゾジスルホン化合物、ジスルホン化合物、及びo-ニトロベンジルスルホネート化合物を挙げることができる。
【0165】
光酸発生剤としては、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する公知の化合物を、単独又はそれらの混合物として適宜選択して使用することができる。例えば、米国特許出願公開2016/0070167A1号明細書の段落[0125]~[0319]、米国特許出願公開2015/0004544A1号明細書の段落[0086]~[0094]、米国特許出願公開2016/0237190A1号明細書の段落[0323]~[0402]に開示された公知の化合物を光酸発生剤(C)として好適に使用できる。
【0166】
光酸発生剤(C)の好適な態様としては、例えば、下記一般式(ZI)、(ZII)又は(ZIII)で表される化合物が挙げられる。
【0167】
【化32】
【0168】
上記一般式(ZI)において、
201、R202及びR203は、各々独立に、有機基を表す。
201、R202及びR203としての有機基の炭素数は、一般的に1~30であり、好ましくは1~20である。
また、R201~R203のうち2つが結合して環構造を形成してもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、又はカルボニル基を含んでいてもよい。R201~R203の内の2つが結合して形成する基としては、アルキレン基(例えば、ブチレン基、ペンチレン基)及び-CH-CH-O-CH-CH-を挙げることができる。
-は、アニオンを表す。
【0169】
一般式(ZI)におけるカチオンの好適な態様としては、後述する化合物(ZI-1)、(ZI-2)、(ZI-3)及び(ZI-4)における対応する基を挙げることができる。
なお、光酸発生剤(C)は、一般式(ZI)で表される構造を複数有する化合物であってもよい。例えば、一般式(ZI)で表される化合物のR201~R203の少なくとも1つと、一般式(ZI)で表されるもうひとつの化合物のR201~R203の少なくとも一つとが、単結合又は連結基を介して結合した構造を有する化合物であってもよい。
【0170】
まず、化合物(ZI-1)について説明する。
化合物(ZI-1)は、上記一般式(ZI)のR201~R203の少なくとも1つがアリール基である、アリールスルホニウム化合物、すなわち、アリールスルホニウムをカチオンとする化合物である。
アリールスルホニウム化合物は、R201~R203の全てがアリール基でもよいし、R201~R203の一部がアリール基であり、残りがアルキル基又はシクロアルキル基であってもよい。
アリールスルホニウム化合物としては、例えば、トリアリールスルホニウム化合物、ジアリールアルキルスルホニウム化合物、アリールジアルキルスルホニウム化合物、ジアリールシクロアルキルスルホニウム化合物、及びアリールジシクロアルキルスルホニウム化合物を挙げることができる。
【0171】
アリールスルホニウム化合物のアリール基としてはフェニル基、又はナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。アリール基は、酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子等を有する複素環構造を有するアリール基であってもよい。複素環構造としては、ピロール残基、フラン残基、チオフェン残基、インドール残基、ベンゾフラン残基、及びベンゾチオフェン残基等が挙げられる。アリールスルホニウム化合物が2つ以上のアリール基を有する場合に、2つ以上あるアリール基は同一であっても異なっていてもよい。
アリールスルホニウム化合物が必要に応じて有しているアルキル基又はシクロアルキル基は、炭素数1~15の直鎖アルキル基、炭素数3~15の分岐アルキル基、又は炭素数3~15のシクロアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、及びシクロヘキシル基等を挙げることができる。
【0172】
201~R203のアリール基、アルキル基、及びシクロアルキル基は、各々独立にアルキル基(例えば炭素数1~15)、シクロアルキル基(例えば炭素数3~15)、アリール基(例えば炭素数6~14)、アルコキシ基(例えば炭素数1~15)、ハロゲン原子、水酸基、又はフェニルチオ基を置換基として有してもよい。
【0173】
次に、化合物(ZI-2)について説明する。
化合物(ZI-2)は、式(ZI)におけるR201~R203が、各々独立に、芳香環を有さない有機基を表す化合物である。ここで芳香環とは、ヘテロ原子を含有する芳香族環も包含する。
201~R203としての芳香環を有さない有機基は、一般的に炭素数1~30であり、好ましくは炭素数1~20である。
201~R203は、各々独立に、好ましくはアルキル基、シクロアルキル基、アリル基、又はビニル基であり、より好ましくは直鎖又は分岐の2-オキソアルキル基、2-オキソシクロアルキル基、又はアルコキシカルボニルメチル基、さらに好ましくは直鎖又は分岐2-オキソアルキル基である。
【0174】
201~R203のアルキル基及びシクロアルキル基としては、好ましくは、炭素数1~10の直鎖アルキル基又は炭素数3~10の分岐アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、及びペンチル基)、ならびに炭素数3~10のシクロアルキル基(例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びノルボルニル基)を挙げることができる。
201~R203は、ハロゲン原子、アルコキシ基(例えば炭素数1~5)、水酸基、シアノ基、又はニトロ基によって更に置換されていてもよい。
【0175】
次に、化合物(ZI-3)について説明する。
化合物(ZI-3)は、下記一般式(ZI-3)で表され、フェナシルスルフォニウム塩構造を有する化合物である。
【0176】
【化33】
【0177】
一般式(ZI-3)中、
1c~R5cは、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、シクロアルキルカルボニルオキシ基、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アルキルチオ基又はアリールチオ基を表す。
6c及びR7cは、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアリール基を表す。
及びRは、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、2-オキソアルキル基、2-オキソシクロアルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基、アリル基又はビニル基を表す。
【0178】
1c~R5c中のいずれか2つ以上、R5cとR6c、R6cとR7c、R5cとR、及びRとRは、各々結合して環構造を形成してもよく、この環構造は、各々独立に酸素原子、硫黄原子、ケトン基、エステル結合、又はアミド結合を含んでいてもよい。
上記環構造としては、芳香族若しくは非芳香族の炭化水素環、芳香族若しくは非芳香族の複素環、及びこれらの環が2つ以上組み合わされてなる多環縮合環を挙げることができる。環構造としては、3~10員環を挙げることができ、4~8員環が好ましく、5又は6員環がより好ましい。
【0179】
1c~R5c中のいずれか2つ以上、R6cとR7c、及びRとRが結合して形成する基としては、ブチレン基、及びペンチレン基等を挙げることができる。
5cとR6c、及びR5cとRが結合して形成する基としては、単結合又はアルキレン基であることが好ましい。アルキレン基としては、メチレン基、及びエチレン基等を挙げることができる。
Zcは、アニオンを表す。
【0180】
次に、化合物(ZI-4)について説明する。
化合物(ZI-4)は、下記一般式(ZI-4)で表される。
【0181】
【化34】
【0182】
一般式(ZI-4)中、
lは0~2の整数を表す。
rは0~8の整数を表す。
13は水素原子、フッ素原子、水酸基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、又はシクロアルキル基を有する基を表す。これらの基は置換基を有してもよい。
14は、水酸基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アルキルスルホニル基、シクロアルキルスルホニル基、又はシクロアルキル基を有する基を表す。これらの基は置換基を有してもよい。R14は、複数存在する場合は各々独立して、水酸基などの上記基を表す。
15は各々独立して、アルキル基、シクロアルキル基又はナフチル基を表す。これらの基は置換基を有してもよい。2つのR15が互いに結合して環を形成してもよい。2つのR15が互いに結合して環を形成するとき、環骨格内に、酸素原子、又は窒素原子などのヘテロ原子を含んでもよい。一態様において、2つのR15がアルキレン基であり、互いに結合して環構造を形成することが好ましい。
は、アニオンを表す。
【0183】
一般式(ZI-4)において、R13、R14及びR15のアルキル基は、直鎖状若しくは分岐状であり、炭素原子数1~10のものが好ましく、メチル基、エチル基、n-ブチル基、又はt-ブチル基等がより好ましい。
【0184】
次に、一般式(ZII)、及び(ZIII)について説明する。
一般式(ZII)、及び(ZIII)中、R204~R207は、各々独立に、アリール基、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
204~R207のアリール基としてはフェニル基、又はナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。R204~R207のアリール基は、酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子等を有する複素環構造を有するアリール基であってもよい。複素環構造を有するアリール基の骨格としては、例えば、ピロール、フラン、チオフェン、インドール、ベンゾフラン、及びベンゾチオフェン等を挙げることができる。
204~R207のアルキル基及びシクロアルキル基としては、好ましくは、炭素数1~10の直鎖アルキル基又は炭素数3~10の分岐アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、及びペンチル基)、炭素数3~10のシクロアルキル基(例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びノルボルニル基)を挙げることができる。
【0185】
204~R207のアリール基、アルキル基、及びシクロアルキル基は、各々独立に置換基を有していてもよい。R204~R207のアリール基、アルキル基、及びシクロアルキル基が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基(例えば炭素数1~15)、シクロアルキル基(例えば炭素数3~15)、アリール基(例えば炭素数6~15)、アルコキシ基(例えば炭素数1~15)、ハロゲン原子、水酸基、及びフェニルチオ基等を挙げることができる。
は、アニオンを表す。
【0186】
一般式(ZI)におけるZ-、一般式(ZII)におけるZ-、一般式(ZI-3)におけるZc、及び一般式(ZI-4)におけるZ-としては、下記一般式(3)で表されるアニオンが好ましい。
【0187】
【化35】
【0188】
一般式(3)中、
oは、1~3の整数を表す。pは、0~10の整数を表す。qは、0~10の整数を表す。
Xfは、各々独立に、フッ素原子、又は、少なくとも一つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。
及びRは、各々独立に、水素原子、フッ素原子、アルキル基、又は、少なくとも一つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表し、複数存在する場合のR、Rは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
Lは、2価の連結基を表し、複数存在する場合のLは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
Wは、環状構造を含む有機基を表す。
oは、1~3の整数を表す。pは、0~10の整数を表す。qは、0~10の整数を表す。
【0189】
Xfは、フッ素原子、又は少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。このアルキル基の炭素数は、1~10が好ましく、1~4がより好ましい。また、少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基は、パーフルオロアルキル基が好ましい。
Xfは、好ましくは、フッ素原子又は炭素数1~4のパーフルオロアルキル基である。Xfは、フッ素原子又はCFであることがより好ましい。特に、双方のXfがフッ素原子であることが好ましい。
【0190】
及びRは、各々独立に、水素原子、フッ素原子、アルキル基、又は少なくとも一つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。複数存在する場合のR及びRは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
及びRとしてのアルキル基は、置換基を有していてもよく、炭素数1~4が好ましい。R及びRは、好ましくは水素原子である。
少なくとも一つのフッ素原子で置換されたアルキル基の具体例および好適な態様は一般式(3)中のXfの具体例および好適な態様と同じである。
【0191】
Lは、2価の連結基を表し、複数存在する場合のLは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
2価の連結基としては、例えば、-COO-(-C(=O)-O-)、-OCO-、-CONH-、-NHCO-、-CO-、-O-、-S-、-SO-、-SO-、アルキレン基(好ましくは炭素数1~6)、シクロアルキレン基(好ましくは炭素数3~15)、アルケニレン基(好ましくは炭素数2~6)及びこれらの複数を組み合わせた2価の連結基などが挙げられる。これらの中でも、-COO-、-OCO-、-CONH-、-NHCO-、-CO-、-O-、-SO-、-COO-アルキレン基-、-OCO-アルキレン基-、-CONH-アルキレン基-又は-NHCO-アルキレン基-が好ましく、-COO-、-OCO-、-CONH-、-SO-、-COO-アルキレン基-又は-OCO-アルキレン基-がより好ましい。
【0192】
Wは、環状構造を含む有機基を表す。これらの中でも、環状の有機基であることが好ましい。
環状の有機基としては、例えば、脂環基、アリール基、及び複素環基が挙げられる。
脂環基は、単環式であってもよく、多環式であってもよい。単環式の脂環基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びシクロオクチル基などの単環のシクロアルキル基が挙げられる。多環式の脂環基としては、例えば、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及びアダマンチル基などの多環のシクロアルキル基が挙げられる。中でも、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及びアダマンチル基などの炭素数7以上のかさ高い構造を有する脂環基が好ましい。
【0193】
アリール基は、単環式であってもよく、多環式であってもよい。このアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基及びアントリル基が挙げられる。
複素環基は、単環式であってもよく、多環式であってもよい。多環式の方がより酸の拡散を抑制可能である。また、複素環基は、芳香族性を有していてもよいし、芳香族性を有していなくてもよい。芳香族性を有している複素環としては、例えば、フラン環、チオフェン環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、及びピリジン環が挙げられる。芳香族性を有していない複素環としては、例えば、テトラヒドロピラン環、ラクトン環、スルトン環及びデカヒドロイソキノリン環が挙げられる。ラクトン環及びスルトン環の例としては、前述の樹脂において例示したラクトン構造及びスルトン構造が挙げられる。複素環基における複素環としては、フラン環、チオフェン環、ピリジン環、又はデカヒドロイソキノリン環が特に好ましい。
【0194】
上記環状の有機基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、アルキル基(直鎖、分岐のいずれであってもよく、炭素数1~12が好ましい)、シクロアルキル基(単環、多環、スピロ環のいずれであってもよく、炭素数3~20が好ましい)、アリール基(炭素数6~14が好ましい)、水酸基、アルコキシ基、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレイド基、チオエーテル基、スルホンアミド基、及びスルホン酸エステル基が挙げられる。なお、環状の有機基を構成する炭素(環形成に寄与する炭素)はカルボニル炭素であってもよい。
【0195】
一般式(3)で表されるアニオンとしては、SO -CF-CH-OCO-(L)q’-W、SO -CF-CHF-CH-OCO-(L)q’-W、SO -CF-COO-(L)q’-W、SO -CF-CF-CH-CH-(L)q-W、SO -CF-CH(CF)-OCO-(L)q’-Wが好ましいものとして挙げられる。ここで、L、q及びWは、一般式(3)と同様である。q’は、0~10の整数を表す。
【0196】
一態様において、一般式(ZI)におけるZ、一般式(ZII)におけるZ、一般式(ZI-3)におけるZc、及び一般式(ZI-4)におけるZ-としては、下記の一般式(4)で表されるアニオンも好ましい。
【0197】
【化36】
【0198】
一般式(4)中、
B1及びXB2は、各々独立に、水素原子、又はフッ素原子を有さない1価の有機基を表す。XB1及びXB2は、水素原子であることが好ましい。
B3及びXB4は、各々独立に、水素原子、又は1価の有機基を表す。XB3及びXB4の少なくとも一方がフッ素原子又はフッ素原子を有する1価の有機基であることが好ましく、XB3及びXB4の両方がフッ素原子又はフッ素原子を有する1価の有機基であることがより好ましい。XB3及びXB4の両方が、フッ素で置換されたアルキル基であることが更に好ましい。L、q及びWは、一般式(3)と同様である。
【0199】
一般式(ZI)におけるZ-、一般式(ZII)におけるZ-、一般式(ZI-3)におけるZc、及び一般式(ZI-4)におけるZ-としては、下記一般式(5)で表されるアニオンが好ましい。
【0200】
【化37】
【0201】
一般式(5)において、Xaは、各々独立に、フッ素原子、又は、少なくとも一つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。Xbは、各々独立に、水素原子又はフッ素原子を有さない有機基を表す。o、p、q、R、R、L、及びWの定義及び好ましい態様は、一般式(3)と同様である。
【0202】
一般式(ZI)におけるZ-、一般式(ZII)におけるZ-、一般式(ZI-3)におけるZc、及び一般式(ZI-4)におけるZ-は、ベンゼンスルホン酸アニオンであってもよく、分岐アルキル基又はシクロアルキル基によって置換されたベンゼンスルホン酸アニオンであることが好ましい。
【0203】
一般式(ZI)におけるZ-、一般式(ZII)におけるZ-、一般式(ZI-3)におけるZc、及び一般式(ZI-4)におけるZ-としては、下記の一般式(SA1)で表される芳香族スルホン酸アニオンも好ましい。
【0204】
【化38】
【0205】
式(SA1)中、
Arは、アリール基を表し、スルホン酸アニオン及び-(D-B)基以外の置換基を更に有していてもよい。更に有しても良い置換基としては、フッ素原子、水酸基などが挙げられる。
【0206】
nは、0以上の整数を表す。nは、好ましくは1~4であり、より好ましくは2~3であり、最も好ましくは3である。
【0207】
Dは、単結合又は2価の連結基を表す。この2価の連結基としては、エーテル基、チオエーテル基、カルボニル基、スルホキシド基、スルホン基、スルホン酸エステル基、エステル基、及び、これらの2種以上の組み合わせからなる基等を挙げることができる。
【0208】
Bは、炭化水素基を表す。
【0209】
好ましくは、Dは単結合であり、Bは脂肪族炭化水素構造である。Bは、イソプロピル基又はシクロヘキシル基がより好ましい。
【0210】
一般式(ZI)におけるスルホニウムカチオン、及び一般式(ZII)におけるヨードニウムカチオンの好ましい例を以下に示す。
【0211】
【化39】
【0212】
一般式(ZI)、一般式(ZII)におけるアニオンZ-、一般式(ZI-3)におけるZc、及び一般式(ZI-4)におけるZ-の好ましい例を以下に示す。
【0213】
【化40】
【0214】
上記のカチオン及びアニオンを任意に組みわせて光酸発生剤として使用することができる。
【0215】
酸発生剤は、低分子化合物の形態であってもよく、重合体の一部に組み込まれた形態であってもよい。また、低分子化合物の形態と重合体の一部に組み込まれた形態を併用してもよい。
光酸発生剤は、低分子化合物の形態であることが好ましい。
酸発生剤が、低分子化合物の形態である場合、分子量は3,000以下が好ましく、2,000以下がより好ましく、1,000以下が更に好ましい。
酸発生剤が、重合体の一部に組み込まれた形態である場合、前述した樹脂(A)の一部に組み込まれてもよく、樹脂(A)とは異なる樹脂に組み込まれてもよい。
酸発生剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
酸発生剤の本発明の組成物中の含有量(複数種存在する場合はその合計)は、本発明の組成物の全固形分を基準として、0.1~35質量%が好ましく、0.5~25質量%がより好ましく、3~20質量%が更に好ましく、3~15質量%が特に好ましい。
酸発生剤として、上記一般式(ZI-3)又は(ZI-4)で表される化合物を含む場合、組成物中に含まれる酸発生剤の含有量(複数種存在する場合はその合計)は、組成物の全固形分を基準として、5~35質量%が好ましく、7~30質量%がより好ましい。
【0216】
<酸拡散制御剤(D)>
本発明の組成物は、酸拡散制御剤(D)を含有することが好ましい。酸拡散制御剤(D)は、露光時に酸発生剤等から発生する酸をトラップし、余分な発生酸による、未露光部における酸分解性樹脂の反応を抑制するクエンチャーとして作用するものである。例えば、塩基性化合物(DA)、活性光線又は放射線の照射により塩基性が低下又は消失する塩基性化合物(DB)、酸発生剤に対して相対的に弱酸となるオニウム塩(DC)、窒素原子を有し、酸の作用により脱離する基を有する低分子化合物(DD)、又はカチオン部に窒素原子を有するオニウム塩化合物(DE)等を酸拡散制御剤として使用することができる。本発明の組成物においては、公知の酸拡散制御剤を適宜使用することができる。例えば、米国特許出願公開2016/0070167A1号明細書の段落[0627]~[0664]、米国特許出願公開2015/0004544A1号明細書の段落[0095]~[0187]、米国特許出願公開2016/0237190A1号明細書の段落[0403]~[0423]、米国特許出願公開2016/0274458A1号明細書の段落[0259]~[0328]に開示された公知の化合物を酸拡散制御剤(D)として好適に使用できる。
【0217】
塩基性化合物(DA)としては、好ましくは、下記式(A)~(E)で示される構造を有する化合物を挙げることができる。
【0218】
【化41】
【0219】
一般式(A)及び(E)中、
200、R201及びR202は、同一でも異なってもよく、各々独立に、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1~20)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3~20)又はアリール基(炭素数6~20)を表す。R201とR202は、互いに結合して環を形成してもよい。
203、R204、R205及びR206は、同一でも異なってもよく、各々独立に、炭素数1~20個のアルキル基を表す。
【0220】
一般式(A)及び(E)中のアルキル基は、置換基を有していても無置換であってもよい。上記アルキル基について、置換基を有するアルキル基としては、炭素数1~20のアミノアルキル基、炭素数1~20のヒドロキシアルキル基、又は炭素数1~20のシアノアルキル基が好ましい。
一般式(A)及び(E)中のアルキル基は、無置換であることがより好ましい。
【0221】
塩基性化合物(DA)としては、グアニジン、アミノピロリジン、ピラゾール、ピラゾリン、ピペラジン、アミノモルホリン、アミノアルキルモルフォリン、又はピペリジン等が好ましく、イミダゾール構造、ジアザビシクロ構造、オニウムヒドロキシド構造、オニウムカルボキシレート構造、トリアルキルアミン構造、アニリン構造若しくはピリジン構造を有する化合物、水酸基及び/若しくはエーテル結合を有するアルキルアミン誘導体、又は水酸基及び/若しくはエーテル結合を有するアニリン誘導体等がより好ましい。
【0222】
活性光線又は放射線の照射により塩基性が低下又は消失する塩基性化合物(DB)(以下、「化合物(DB)」ともいう。)は、プロトンアクセプター性官能基を有し、かつ、活性光線又は放射線の照射により分解して、プロトンアクセプター性が低下、消失、又はプロトンアクセプター性から酸性に変化する化合物である。
【0223】
プロトンアクセプター性官能基とは、プロトンと静電的に相互作用し得る基又は電子を有する官能基であって、例えば、環状ポリエーテル等のマクロサイクリック構造を有する官能基や、π共役に寄与しない非共有電子対をもった窒素原子を有する官能基を意味する。π共役に寄与しない非共有電子対を有する窒素原子とは、例えば、下記式に示す部分構造を有する窒素原子である。
【0224】
【化42】
【0225】
プロトンアクセプター性官能基の好ましい部分構造として、例えば、クラウンエーテル、アザクラウンエーテル、1~3級アミン、ピリジン、イミダゾール、及びピラジン構造などを挙げることができる。
【0226】
化合物(DB)は、活性光線又は放射線の照射により分解してプロトンアクセプター性が低下若しくは消失し、又はプロトンアクセプター性から酸性に変化した化合物を発生する。ここでプロトンアクセプター性の低下若しくは消失、又はプロトンアクセプター性から酸性への変化とは、プロトンアクセプター性官能基にプロトンが付加することに起因するプロトンアクセプター性の変化であり、具体的には、プロトンアクセプター性官能基を有する化合物(DB)とプロトンとからプロトン付加体が生成するとき、その化学平衡における平衡定数が減少することを意味する。
プロトンアクセプター性は、pH測定を行うことによって確認することができる。
【0227】
活性光線又は放射線の照射により化合物(DB)が分解して発生する化合物の酸解離定数pKaは、pKa<-1を満たすことが好ましく、-13<pKa<-1がより好ましく、-13<pKa<-3が更に好ましい。
【0228】
酸解離定数pKaとは、水溶液中での酸解離定数pKaのことを表し、例えば、化学便覧(II)(改訂4版、1993年、日本化学会編、丸善株式会社)に定義される。酸解離定数pKaの値が低いほど酸強度が大きいことを示す。水溶液中での酸解離定数pKaは、具体的には、無限希釈水溶液を用い、25℃での酸解離定数を測定することにより実測できる。あるいは、下記ソフトウェアパッケージ1を用いて、ハメットの置換基定数及び公知文献値のデータベースに基づいた値を、計算により求めることもできる。本明細書中に記載したpKaの値は、全て、このソフトウェアパッケージを用いて計算により求めた値を示す。
【0229】
ソフトウェアパッケージ1: Advanced Chemistry Development (ACD/Labs) Software V8.14 for Solaris (1994-2007 ACD/Labs)。
【0230】
本発明の組成物では、酸発生剤に対して相対的に弱酸となるオニウム塩(DC)を酸拡散制御剤として使用することができる。
酸発生剤と、酸発生剤から生じた酸に対して相対的に弱酸である酸を発生するオニウム塩とを混合して用いた場合、活性光線性又は放射線の照射により酸発生剤から生じた酸が未反応の弱酸アニオンを有するオニウム塩と衝突すると、塩交換により弱酸を放出して強酸アニオンを有するオニウム塩を生じる。この過程で強酸がより触媒能の低い弱酸に交換されるため、見かけ上、酸が失活して酸拡散の制御を行うことができる。
【0231】
酸発生剤に対して相対的に弱酸となるオニウム塩としては、下記一般式(d1-1)~(d1-3)で表される化合物であることが好ましい。
【0232】
【化43】
【0233】
式中、R51は置換基を有していてもよい炭化水素基であり、Z2cは置換基を有していてもよい炭素数1~30の炭化水素基(ただし、Sに隣接する炭素にはフッ素原子は置換されていないものとする)であり、R52は有機基であり、Yは直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキレン基又はアリーレン基であり、Rfはフッ素原子を含む炭化水素基であり、Mは各々独立に、アンモニウムカチオン、スルホニウムカチオン又はヨードニウムカチオンである。
【0234】
として表されるスルホニウムカチオン又はヨードニウムカチオンの好ましい例としては、一般式(ZI)で例示したスルホニウムカチオン及び一般式(ZII)で例示したヨードニウムカチオンを挙げることができる。
【0235】
酸発生剤に対して相対的に弱酸となるオニウム塩(DC)は、カチオン部位とアニオン部位を同一分子内に有し、かつ、カチオン部位とアニオン部位が共有結合により連結している化合物(以下、「化合物(DCA)」ともいう。)であってもよい。
化合物(DCA)としては、下記一般式(C-1)~(C-3)のいずれかで表される化合物であることが好ましい。
【0236】
【化44】
【0237】
一般式(C-1)~(C-3)中、
、R、及びRは、各々独立に炭素数1以上の置換基を表す。
は、カチオン部位とアニオン部位とを連結する2価の連結基又は単結合を表す。
-Xは、-COO、-SO 、-SO 、及び-N-Rから選択されるアニオン部位を表す。Rは、隣接するN原子との連結部位に、カルボニル基(-C(=O)-)、スルホニル基(-S(=O)-)、及びスルフィニル基(-S(=O)-)のうち少なくとも1つを有する1価の置換基を表す。
、R、R、R、及びLは、互いに結合して環構造を形成してもよい。また、一般式(C-3)において、R~Rのうち2つを合わせて1つの2価の置換基を表し、N原子と2重結合により結合していてもよい。
【0238】
~Rにおける炭素数1以上の置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルオキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、シクロアルキルアミノカルボニル基、及びアリールアミノカルボニル基などが挙げられる。好ましくは、アルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基である。
【0239】
2価の連結基としてのLは、直鎖若しくは分岐鎖状アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、ウレア結合、及びこれらの2種以上を組み合わせてなる基等が挙げられる。Lは、好ましくは、アルキレン基、アリーレン基、エーテル結合、エステル結合、又はこれらの2種以上を組み合わせてなる基である。
【0240】
窒素原子を有し、酸の作用により脱離する基を有する低分子化合物(DD)(以下、「化合物(DD)」ともいう。)は、酸の作用により脱離する基を窒素原子上に有するアミン誘導体であることが好ましい。
酸の作用により脱離する基としては、アセタール基、カルボネート基、カルバメート基、3級エステル基、3級水酸基、又はヘミアミナールエーテル基が好ましく、カルバメート基、又はヘミアミナールエーテル基がより好ましい。
化合物(DD)の分子量は、100~1000が好ましく、100~700がより好ましく、100~500が更に好ましい。
化合物(DD)は、窒素原子上に保護基を有するカルバメート基を有してもよい。カルバメート基を構成する保護基としては、下記一般式(d-1)で表すことができる。
【0241】
【化45】
【0242】
一般式(d-1)において、
Rbは、各々独立に、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1~10)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3~30)、アリール基(好ましくは炭素数3~30)、アラルキル基(好ましくは炭素数1~10)、又はアルコキシアルキル基(好ましくは炭素数1~10)を表す。Rbは相互に連結して環を形成していてもよい。
Rbが示すアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基は、各々独立にヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、ピロリジノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、オキソ基等の官能基、アルコキシ基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい。Rbが示すアルコキシアルキル基についても同様である。
【0243】
Rbとしては、直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基が好ましく、直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又はシクロアルキル基がより好ましい。
2つのRbが相互に連結して形成する環としては、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、複素環式炭化水素及びその誘導体等が挙げられる。
一般式(d-1)で表される基の具体的な構造としては、米国特許公報US2012/0135348A1号明細書の段落[0466]に開示された構造を挙げることができるが、これに限定されない。
【0244】
化合物(DD)は、下記一般式(6)で表される構造を有するものであることが好ましい。
【0245】
【化46】
【0246】
一般式(6)において、
lは0~2の整数を表し、mは1~3の整数を表し、l+m=3を満たす。
Raは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。lが2のとき、2つのRaは同じでも異なっていてもよく、2つのRaは相互に連結して式中の窒素原子と共に複素環を形成していてもよい。この複素環には式中の窒素原子以外のヘテロ原子を含んでいてもよい。
Rbは、上記一般式(d-1)におけるRbと同義であり、好ましい例も同様である。
一般式(6)において、Raとしてのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基は、各々独立にRbとしてのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基が置換されていてもよい基として前述した基と同様な基で置換されていてもよい。
【0247】
上記Raのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基(これらの基は、上記基で置換されていてもよい)の具体例としては、Rbについて前述した具体例と同様な基が挙げられる。
本発明における特に好ましい化合物(DD)の具体的な構造としては、米国特許出願公開2012/0135348A1号明細書の段落[0475]に開示された化合物を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0248】
カチオン部に窒素原子を有するオニウム塩化合物(DE)(以下、「化合物(DE)」ともいう。)は、カチオン部に窒素原子を含む塩基性部位を有する化合物であることが好ましい。塩基性部位は、アミノ基であることが好ましく、脂肪族アミノ基であることがより好ましい。塩基性部位中の窒素原子に隣接する原子の全てが、水素原子又は炭素原子であることが更に好ましい。また、塩基性向上の観点から、窒素原子に対して、電子求引性の官能基(カルボニル基、スルホニル基、シアノ基、及びハロゲン原子など)が直結していないことが好ましい。化合物(DE)の好ましい具体的な構造としては、米国特許出願公開2015/0309408A1号明細書の段落[0203]に開示された化合物を挙げることができるが、これに限定されない。
【0249】
酸拡散制御剤(D)の好ましい例を以下に示す。
【0250】
【化47】
【0251】
【化48】
【0252】
本発明の組成物において、酸拡散制御剤(D)は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
酸拡散制御剤(D)の組成物中の含有量(複数種存在する場合はその合計)は、組成物の全固形分を基準として、0.1~20質量%が好ましく、1~15質量%がより好ましい。
【0253】
<溶剤(F)>
本発明の組成物は、通常、溶剤を含有する。
本発明の組成物においては、公知のレジスト溶剤を適宜使用することができる。例えば、米国特許出願公開2016/0070167A1号明細書の段落[0665]~[0670]、米国特許出願公開2015/0004544A1号明細書の段落[0210]~[0235]、米国特許出願公開2016/0237190A1号明細書の段落[0424]~[0426]、米国特許出願公開2016/0274458A1号明細書の段落[0357]~[0366]に開示された公知の溶剤を好適に使用できる。
組成物を調製する際に使用できる溶剤としては、例えば、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸アルキルエステル、アルコキシプロピオン酸アルキル、環状ラクトン(好ましくは炭素数4~10)、環を有してもよいモノケトン化合物(好ましくは炭素数4~10)、アルキレンカーボネート、アルコキシ酢酸アルキル、及びピルビン酸アルキル等の有機溶剤が挙げられる。
【0254】
有機溶剤として、構造中に水酸基を含有する溶剤と、水酸基を含有しない溶剤とを混合した混合溶剤を使用してもよい。
水酸基を含有する溶剤、及び水酸基を含有しない溶剤としては、前述の例示化合物を適宜選択できるが、水酸基を含有する溶剤としては、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、又は乳酸アルキル等が好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(PGEE)、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、又は乳酸エチルがより好ましい。また、水酸基を含有しない溶剤としては、アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、アルキルアルコキシプロピオネート、環を含有してもよいモノケトン化合物、環状ラクトン、又は酢酸アルキル等が好ましく、これらの中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、エチルエトキシプロピオネート、2-ヘプタノン、γ-ブチロラクトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン又は酢酸ブチルがより好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン、エチルエトキシプロピオネート、シクロヘキサノン、シクロペンタノン又は2-ヘプタノンが更に好ましい。水酸基を含有しない溶剤としては、プロピレンカーボネートも好ましい。
水酸基を含有する溶剤と水酸基を含有しない溶剤との混合比(質量比)は、1/99~99/1であり、10/90~90/10が好ましく、20/80~60/40がより好ましい。水酸基を含有しない溶剤を50質量%以上含有する混合溶剤が、塗布均一性の点で好ましい。
溶剤は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含むことが好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート単独溶剤でもよいし、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含有する2種類以上の混合溶剤ででもよい。
【0255】
<架橋剤(G)>
本発明の組成物は、酸の作用により樹脂を架橋する化合物(以下、架橋剤(G)ともいう)を含有してもよい。架橋剤(G)としては、公知の化合物を適宜に使用することができる。例えば、米国特許出願公開2016/0147154A1号明細書の段落[0379]~[0431]、米国特許出願公開2016/0282720A1号明細書の段落[0064]~[0141]に開示された公知の化合物を架橋剤(G)として好適に使用できる。
架橋剤(G)は、樹脂を架橋しうる架橋性基を有している化合物であり、架橋性基としては、ヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基、アシルオキシメチル基、アルコキシメチルエーテル基、オキシラン環、及びオキセタン環などを挙げることができる。
架橋性基は、ヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基、オキシラン環又はオキセタン環であることが好ましい。
架橋剤(G)は、架橋性基を2個以上有する化合物(樹脂も含む)であることが好ましい。
架橋剤(G)は、ヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基を有する、フェノール誘導体、ウレア系化合物(ウレア構造を有する化合物)又はメラミン系化合物(メラミン構造を有する化合物)であることがより好ましい。
架橋剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
架橋剤(G)の含有量は、本発明の組成物の全固形分に対して、1~50質量%が好ましく、3~40質量%が好ましく、5~30質量%が更に好ましい。
【0256】
<界面活性剤(H)>
本発明の組成物は、界面活性剤を含有してもよいし、含有しなくてもよい。界面活性剤を含有する場合、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤(具体的には、フッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、又はフッ素原子とケイ素原子との両方を有する界面活性剤)が好ましい。
【0257】
本発明の組成物が界面活性剤を含有することにより、250nm以下、特に220nm以下の露光光源を使用した場合に、良好な感度及び解像度で、密着性及び現像欠陥の少ないレジストパターンを得ることができる。
フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤として、米国特許出願公開第2008/0248425号明細書の段落[0276]に記載の界面活性剤が挙げることができる。
また、米国特許出願公開第2008/0248425号明細書の段落[0280]に記載の、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤以外の他の界面活性剤を使用することもできる。
【0258】
これらの界面活性剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の組成物が界面活性剤を含有する場合、界面活性剤の含有量は、組成物の全固形分に対して、0.0001~2質量%が好ましく、0.0005~1質量%がより好ましい。
【0259】
<樹脂(J)>
本発明の組成物が架橋剤(G)を含有する場合、本発明の組成物はフェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂(J)(以下、「樹脂(J)」ともいう)を含有することが好ましい。樹脂(J)は、フェノール性水酸基を有する繰り返し単位を含有することが好ましい。
この場合、典型的には、ネガ型パターンが好適に形成される。
架橋剤(G)は、樹脂(J)に担持された形態であってもよい。
樹脂(J)は、前述した酸分解性基を含有していてもよい。
【0260】
樹脂(J)が含有するフェノール性水酸基を有する繰り返し単位としては特に限定されないが、下記一般式(II)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【0261】
【化49】
【0262】
一般式(II)中、
は、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基(好ましくはメチル基)、又はハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)を表す。
B’は、単結合又は2価の連結基を表す。
Ar’は、芳香環基を表す。
mは1以上の整数を表す。
樹脂(J)は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の組成物の全固形分中の樹脂(J)の含有量は、一般的に30質量%以上である。40質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましい。上限は特に制限されないが、99質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、85質量%以下が更に好ましい。
樹脂(J)としては、米国特許出願公開2016/0282720A1号明細書の段落[0142]~[0347]に開示された樹脂を好適に用いることができる。
【0263】
(その他の添加剤)
本発明の組成物は、更に、酸増殖剤、染料、可塑剤、光増感剤、光吸収剤、アルカリ可溶性樹脂、溶解阻止剤、又は溶解促進剤等を含有してもよい。
【0264】
<調製方法>
本発明の組成物からなる感活性光線性膜又は感放射線性膜の膜厚は、解像力向上の観点から、200nm以下が好ましく、100nm以下がより好ましい。組成物中の固形分濃度を適切な範囲に設定して適度な粘度をもたせ、塗布性又は製膜性を向上させることにより、このような膜厚とすることができる。
本発明の組成物の固形分濃度は、通常1.0~10質量%であり、2.0~5.7質量%が好ましく、2.0~5.3質量%がより好ましい。固形分濃度とは、組成物の総質量に対する、溶剤を除く他のレジスト成分の質量の質量百分率である。
【0265】
本発明の組成物は、上記の成分を所定の有機溶剤、好ましくは上記混合溶剤に溶解し、これをフィルター濾過した後、所定の支持体(基板)上に塗布して用いる。フィルター濾過に用いるフィルターのポアサイズは0.1μm以下が好ましく、0.05μm以下がより好ましく、0.03μm以下が更に好ましい。このフィルターは、ポリテトラフロロエチレン製、ポリエチレン製、又はナイロン製のものが好ましい。フィルター濾過においては、例えば日本国特許出願公開第2002-62667号明細書(特開2002-62667)に開示されるように、循環的な濾過を行ってもよく、複数種類のフィルターを直列又は並列に接続して濾過を行ってもよい。また、組成物を複数回濾過してもよい。更に、フィルター濾過の前後で、組成物に対して脱気処理等を行ってもよい。
【0266】
<用途>
本発明の組成物は、活性光線又は放射線の照射により反応して性質が変化する感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物に関する。更に詳しくは、本発明の組成物は、IC(Integrated Circuit)等の半導体製造工程、液晶若しくはサーマルヘッド等の回路基板の製造、インプリント用モールド構造体の作製、その他のフォトファブリケーション工程、又は平版印刷版、若しくは酸硬化性組成物の製造に使用される感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物に関する。本発明において形成されるレジストパターンは、エッチング工程、イオンインプランテーション工程、バンプ電極形成工程、再配線形成工程、及びMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)等において使用することができる。
【0267】
〔感活性光線性又は感放射線性膜、パターン形成方法〕
本発明は上記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いたパターン形成方法にも関する。以下、本発明のパターン形成方法について説明する。また、パターン形成方法の説明と併せて、本発明の感活性光線性又は感放射線性膜(典型的には、レジスト膜)についても説明する。本発明の感活性光線性又は感放射線性膜は、露光される前においては、水に対する動的後退接触角が80°以上であることが好ましい。
【0268】
本発明のパターン形成方法は、
(i)上述した感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物によって感活性光線性又は感放射線性膜を支持体上に形成する工程(成膜工程)、
(ii)上記感活性光線性又は感放射線性膜に活性光線又は放射線を照射する工程(露光工程)、及び、
(iii)上記活性光線又は放射線が照射された感活性光線性又は感放射線性膜を、現像液を用いて現像する工程(現像工程)、を有する。
【0269】
本発明のパターン形成方法は、上記(i)~(iii)の工程を含んでいれば特に限定されず、更に下記の工程を有していてもよい。
本発明のパターン形成方法は、(ii)露光工程における露光方法が、液浸露光であってもよい。
本発明のパターン形成方法は、(ii)露光工程の前に、(iv)前加熱(PB:PreBake)工程を含むことが好ましい。
本発明のパターン形成方法は、(ii)露光工程の後、かつ、(iii)現像工程の前に、(v)露光後加熱(PEB:Post Exposure Bake)工程を含むことが好ましい。
本発明のパターン形成方法は、(ii)露光工程を、複数回含んでいてもよい。
本発明のパターン形成方法は、(iv)前加熱工程を、複数回含んでいてもよい。
本発明のパターン形成方法は、(v)露光後加熱工程を、複数回含んでいてもよい。
【0270】
本発明のパターン形成方法において、上述した(i)成膜工程、(ii)露光工程、及び(iii)現像工程は、一般的に知られている方法により行うことができる。
また、必要に応じて、感活性光線性又は感放射線性膜と支持体との間にレジスト下層膜(例えば、SOG(Spin On Glass)、SOC(Spin On Carbon)、反射防止膜)を形成してもよい。レジスト下層膜としては、公知の有機系又は無機系の材料を適宜用いることができる。
感活性光線性又は感放射線性膜の上層に、保護膜(トップコート)を形成してもよい。保護膜としては、公知の材料を適宜用いることができる。例えば、米国特許出願公開第2007/0178407号明細書、米国特許出願公開第2008/0085466号明細書、米国特許出願公開第2007/0275326号明細書、米国特許出願公開第2016/0299432号明細書、米国特許出願公開第2013/0244438号明細書、国際特許出願公開第2016/157988A号明細書に開示された保護膜形成用組成物を好適に使用することができる。保護膜形成用組成物としては、上述した酸拡散制御剤を含むものが好ましい。
疎水性樹脂を含有する感活性光線性又は感放射線性膜の上層に保護膜を形成してもよい。
疎水性樹脂としては、公知の樹脂を、単独又はそれらの混合物として適宜に選択して使用することができる。例えば、米国特許出願公開2015/0168830A1号明細書の段落[0451]~[0704]、米国特許出願公開2016/0274458A1号明細書の段落[0340]~[0356]に開示された公知の樹脂を疎水性樹脂として好適に使用できる。また、米国特許出願公開2016/0237190A1号明細書の段落[0177]~[0258]に開示された繰り返し単位も、疎水性樹脂を構成する繰り返し単位として好ましい。
【0271】
支持体は、特に限定されるものではなく、IC等の半導体の製造工程、又は液晶若しくはサーマルヘッド等の回路基板の製造工程のほか、その他のフォトファブリケーションのリソグラフィー工程等で一般的に用いられる基板を用いることができる。支持体の具体例としては、シリコン、SiO、及びSiN等の無機基板等が挙げられる。
【0272】
加熱温度は、(iv)前加熱工程及び(v)露光後加熱工程のいずれにおいても、70~130℃が好ましく、80~120℃がより好ましい。
加熱時間は、(iv)前加熱工程及び(v)露光後加熱工程のいずれにおいても、30~300秒が好ましく、30~180秒がより好ましく、30~90秒が更に好ましい。
加熱は、露光装置及び現像装置に備わっている手段で行うことができ、ホットプレート等を用いて行ってもよい。
【0273】
露光工程に用いられる光源波長に制限はないが、赤外光、可視光、紫外光、遠紫外光、極紫外光(EUV)、X線、及び電子線等を挙げることができる。これらの中でも遠紫外光が好ましく、その波長は250nm以下が好ましく、220nm以下がより好ましく、1~200nmが更に好ましい。具体的には、KrFエキシマレーザー(248nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)、Fエキシマレーザー(157nm)、X線、EUV(13nm)、又は電子線等であり、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、EUV又は電子線が好ましい。
【0274】
(iii)現像工程においては、アルカリ現像液であっても、有機溶剤を含有する現像液(以下、有機系現像液ともいう)であってもよい。
【0275】
アルカリ現像液としては、通常、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドに代表される4級アンモニウム塩が用いられるが、これ以外にも無機アルカリ、1~3級アミン、アルコールアミン、及び環状アミン等のアルカリ水溶液も使用可能である。
さらに、上記アルカリ現像液は、アルコール類、及び/又は界面活性剤を適当量含有してもよい。アルカリ現像液のアルカリ濃度は、通常0.1~20質量%である。アルカリ現像液のpHは、通常10~15である。
アルカリ現像液を用いて現像を行う時間は、通常10~300秒である。
アルカリ現像液のアルカリ濃度、pH、及び現像時間は、形成するパターンに応じて、適宜調整することができる。
【0276】
有機系現像液は、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤、及び炭化水素系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤を含有する現像液であるのが好ましい。
【0277】
ケトン系溶剤としては、例えば、1-オクタノン、2-オクタノン、1-ノナノン、2-ノナノン、アセトン、2-ヘプタノン(メチルアミルケトン)、4-ヘプタノン、1-ヘキサノン、2-ヘキサノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセトニルアセトン、イオノン、ジアセトニルアルコール、アセチルカービノール、アセトフェノン、メチルナフチルケトン、イソホロン、及びプロピレンカーボネート等を挙げることができる。
【0278】
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、酢酸アミル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチルー3-エトキシプロピオネート、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル、ブタン酸ブチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、酢酸イソアミル、イソ酪酸イソブチル、及びプロピオン酸ブチル等を挙げることができる。
【0279】
アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤、及び炭化水素系溶剤としては、米国特許出願公開2016/0070167A1号明細書の段落[0715]~[0718]に開示された溶剤を使用できる。
【0280】
上記の溶剤は、複数混合してもよいし、上記以外の溶剤又は水と混合してもよい。現像液全体としての含水率は、50質量%未満が好ましく、20質量%未満がより好ましく、10質量%未満であることが更に好ましく、実質的に水分を含有しないことが特に好ましい。
有機系現像液に対する有機溶剤の含有量は、現像液の全量に対して、50質量%以上100質量%以下が好ましく、80質量%以上100質量%以下がより好ましく、90質量%以上100質量%以下が更に好ましく、95質量%以上100質量%以下が特に好ましい。
【0281】
有機系現像液は、必要に応じて公知の界面活性剤を適当量含有できる。
【0282】
界面活性剤の含有量は現像液の全量に対して、通常0.001~5質量%であり、0.005~2質量%が好ましく、0.01~0.5質量%がより好ましい。
【0283】
有機系現像液は、上述した酸拡散制御剤を含んでいてもよい。
【0284】
現像方法としては、例えば、現像液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止する方法(パドル法)、基板表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、又は一定速度で回転している基板上に一定速度で現像液吐出ノズルをスキャンしながら現像液を吐出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)等を適用することができる。
【0285】
アルカリ水溶液を用いて現像を行う工程(アルカリ現像工程)、及び有機溶剤を含む現像液を用いて現像する工程(有機溶剤現像工程)を組み合わせてもよい。これにより、中間的な露光強度の領域のみを溶解させずにパターン形成が行えるので、より微細なパターンを形成することができる。
【0286】
(iii)現像工程の後に、リンス液を用いて洗浄する工程(リンス工程)を含むことが好ましい。
【0287】
アルカリ現像液を用いた現像工程の後のリンス工程に用いるリンス液は、例えば純水を使用できる。純水は、界面活性剤を適当量含有してもよい。この場合、現像工程又はリンス工程の後に、パターン上に付着している現像液又はリンス液を超臨界流体により除去する処理を追加してもよい。更に、リンス処理又は超臨界流体による処理の後、パターン中に残存する水分を除去するために加熱処理を行ってもよい。
【0288】
有機溶剤を含む現像液を用いた現像工程の後のリンス工程に用いるリンス液は、レジストパターンを溶解しないものであれば特に制限はなく、一般的な有機溶剤を含む溶液を使用できる。リンス液としては、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、及びエーテル系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤を含有するリンス液を用いることが好ましい。
炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、及びエーテル系溶剤の具体例としては、有機溶剤を含む現像液において説明したものと同様のものが挙げられる。
この場合のリンス工程に用いるリンス液としては、1価アルコールを含有するリンス液がより好ましい。
【0289】
リンス工程で用いられる1価アルコールとしては、直鎖状、分岐状、又は環状の1価アルコールが挙げられる。具体的には、1-ブタノール、2-ブタノール、3-メチル-1-ブタノール、tert―ブチルアルコール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、1-ヘキサノール、4-メチル-2-ペンタノール、1-ヘプタノール、1-オクタノール、2-ヘキサノール、シクロペンタノール、2-ヘプタノール、2-オクタノール、3-ヘキサノール、3-ヘプタノール、3-オクタノール、4-オクタノール、及びメチルイソブチルカルビノールが挙げられる。炭素数5以上の1価アルコールとしては、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、4-メチル-2-ペンタノール、1-ペンタノール、3-メチル-1-ブタノール、及びメチルイソブチルカルビノール等が挙げられる。
【0290】
各成分は、複数混合してもよいし、上記以外の有機溶剤と混合して使用してもよい。
リンス液中の含水率は、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下が更に好ましい。含水率を10質量%以下とすることで、良好な現像特性が得られる。
【0291】
リンス液は、界面活性剤を適当量含有してもよい。
リンス工程においては、有機系現像液を用いる現像を行った基板を有機溶剤を含むリンス液を用いて洗浄処理する。洗浄処理の方法は特に限定されないが、例えば、一定速度で回転している基板上にリンス液を吐出しつづける方法(回転塗布法)、リンス液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、又は基板表面にリンス液を噴霧する方法(スプレー法)等を適用することができる。中でも、回転塗布法で洗浄処理を行い、洗浄後に基板を2,000~4,000rpmの回転数で回転させ、リンス液を基板上から除去することが好ましい。また、リンス工程の後に加熱工程(Post Bake)を含むことも好ましい。この加熱工程によりパターン間及びパターン内部に残留した現像液及びリンス液が除去される。リンス工程の後の加熱工程において、加熱温度は通常40~160℃であり、70~95℃が好ましく、加熱時間は通常10秒~3分であり、30秒~90秒が好ましい。
【0292】
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、及び、本発明のパターン形成方法において使用される各種材料(例えば、レジスト溶剤、現像液、リンス液、反射防止膜形成用組成物、又はトップコート形成用組成物等)は、金属成分、異性体、及び残存モノマー等の不純物を含まないことが好ましい。上記の各種材料に含まれるこれらの不純物の含有量としては、1ppm(parts per million)以下が好ましく、100ppt(parts per trillion)以下がより好ましく、10ppt以下が更に好ましく、実質的に含まないこと(測定装置の検出限界以下であること)が特に好ましい。
【0293】
上記各種材料から金属等の不純物を除去する方法としては、例えば、フィルターを用いた濾過を挙げることができる。フィルター孔径としては、ポアサイズ10nm以下が好ましく、5nm以下がより好ましく、3nm以下が更に好ましい。フィルターの材質としては、ポリテトラフロロエチレン製、ポリエチレン製、又はナイロン製のフィルターが好ましい。フィルターは、有機溶剤であらかじめ洗浄したものを用いてもよい。フィルター濾過工程では、複数種類のフィルターを直列又は並列に接続して用いてもよい。複数種類のフィルターを使用する場合は、孔径及び/又は材質が異なるフィルターを組み合わせて使用してもよい。また、各種材料を複数回濾過してもよく、複数回濾過する工程が循環濾過工程であってもよい。フィルターとしては、日本国特許出願公開第2016-201426号明細書(特開2016-201426)に開示されるような溶出物が低減されたものが好ましい。
フィルター濾過のほか、吸着材による不純物の除去を行ってもよく、フィルター濾過と吸着材を組み合わせて使用してもよい。吸着材としては、公知の吸着材を用いることができ、例えば、シリカゲル若しくはゼオライト等の無機系吸着材、又は活性炭等の有機系吸着材を使用することができる。金属吸着剤としては、例えば、日本国特許出願公開第2016-206500号明細書(特開2016-206500)に開示されるものを挙げることができる。
また、上記各種材料に含まれる金属等の不純物を低減する方法としては、各種材料を構成する原料として金属含有量が少ない原料を選択する、各種材料を構成する原料に対してフィルター濾過を行う、又は装置内をテフロン(登録商標)でライニングする等してコンタミネーションを可能な限り抑制した条件下で蒸留を行う等の方法が挙げられる。レジスト成分の各種材料(樹脂、光酸発生剤等)を合成する製造設備の全工程にグラスライニングの処理を施すことも、pptオーダーまでメタルを低減するために好ましい各種材料を構成する原料に対して行うフィルター濾過における好ましい条件は、上記した条件と同様である。
【0294】
上記の各種材料は、不純物の混入を防止するために、米国特許出願公開第2015/0227049号明細書、日本国特許出願公開第2015-123351号明細書(特開2015-123351)、日本国特許出願公開第2017-13804号明細書(特開2017-13804)等に記載された容器に保存されることが好ましい。
【0295】
本発明のパターン形成方法により形成されるパターンに、パターンの表面荒れを改善する方法を適用してもよい。パターンの表面荒れを改善する方法としては、例えば、米国特許出願公開第2015/0104957号明細書に開示された、水素を含有するガスのプラズマによってレジストパターンを処理する方法が挙げられる。その他にも、日本国特許出願公開第2004-235468号明細書(特開2004-235468)、米国特許出願公開第2010/0020297号明細書、Proc. of SPIE Vol.8328 83280N-1“EUV Resist Curing Technique for LWR Reduction and Etch Selectivity Enhancement”に記載されるような公知の方法を適用してもよい。
また、上記の方法によって形成されたレジストパターンは、例えば日本国特許出願公開第1991-270227号明細書(特開平3-270227)及び米国特許出願公開第2013/0209941号明細書に開示されたスペーサープロセスの芯材(Core)として使用できる。
【0296】
〔電子デバイスの製造方法〕
また、本発明は、上記したパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法にも関する。本発明の電子デバイスの製造方法により製造された電子デバイスは、電気電子機器(例えば、家電、OA(Office Automation)関連機器、メディア関連機器、光学用機器、及び通信機器等)に、好適に搭載される。
【0297】
〔ポリエステル〕
本発明は、下記一般式(1)で表され、かつ下記一般式(1)中のE及びEの少なくとも1つが、下記一般式(1d)~(1f)のいずれかで表される基を表す、ポリエステルにも関する。
一般式(1)、一般式(1d)~(1f)については前述のとおりである。
【0298】
【化50】
【0299】
一般式(1)中、E及びEはそれぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでもよい鎖状脂肪族基、ヘテロ原子を含んでもよい脂環基、芳香族基、又はこれらを組み合わせてなる基を表す。
【0300】
【化51】
【0301】
一般式(1d)中、W及びWは、それぞれ独立に、単結合又はアルキレン基若しくはシクロアルキレン基を表し、Zは、シクロアルキレン基、ヘテロ原子を含んでもよいスピロ環基、又はアリーレン基を表し、Y及びYは、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表し、Qはハロゲン原子を有する有機基を表し、k2は1以上の整数を表す。k2が2以上の整数を表す場合、複数のY、複数のY、及び複数のQはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
一般式(1e)中、W、W10及びW11は、それぞれ独立に、単結合又はアルキレン基若しくはシクロアルキレン基を表し、Z及びZは、それぞれ独立に、シクロアルキレン基、ヘテロ原子を含んでもよいスピロ環基、又はアリーレン基を表し、Y、Y、Y及びYは、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表し、Q及びQは、それぞれ独立に、ハロゲン原子を有する有機基を表し、k3及びk4は、それぞれ独立に、1以上の整数を表す。k3が2以上の整数を表す場合、複数のY、複数のY、及び複数のQはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。k4が2以上の整数を表す場合、複数のY、複数のY、及び複数のQはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
一般式(1f)中、Y及びYは、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表し、Qは水素原子又は置換基を表し、Qはハロゲン原子を有する有機基を表し、k5は1以上の整数を表し、k6は1又は2を表す。k5が2以上の整数を表す場合、複数のY、複数のY、複数のQ、及び複数のQはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【実施例
【0302】
以下に、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されない。
【0303】
<化合物-Aの合成>
コンデンサー及び撹拌機を取り付けた3つ口フラスコに、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール(東京化成(株)製)36.97g、ピリジン(東京化成(株)製)16.61g、塩化メチレン178gを秤り取り、-10℃に冷却した。次いで、ブロモアセチルブロミド(東京化成(株)製)40.3gを1時間かけて滴下した。滴下後、室温(20℃)で3時間撹拌し、分液ロートに移し、水100mLで3回洗浄した。この有機層を濃縮した後、蒸留精製し、化合物-Aを38.0g得た。目的物であることは、NMR(nuclear magnetic resonance)で確認した。
【0304】
【化52】
【0305】
<(PE-1)の合成>
コンデンサー及び撹拌機を取り付けた3つ口フラスコに、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物4.48g(東京化成(株)製)、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン4.81g(東京化成(株)製)、N,N-ジメチルアミノピリジン0.24g(和光純薬(株)製)、ピリジン3.32g(和光純薬(株)製)、超脱水されたテトラヒドロフラン17.3gを秤りとり、室温で撹拌した。次いで、内温を60℃に昇温し、10時間反応した。これを、0.5mol/L塩酸水300ml、メタノール50mLにあけ、ろ過、乾燥し、(PE-1A)9.5gを得た。(PE-1A)の重量平均分子量は、11200であった。
(PE-1A)を9.5g、N,N-ジメチルアミノピリジン0.24g(和光純薬(株)製)、超脱水されたテトラヒドロフラン22.2gを秤りとり、45℃で撹拌し、溶解させた。次いで、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩8.4g(東京化成(株)製)、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール10.8g(東京化成(株)製)を添加し、60℃で8時間反応した。反応後、室温まで冷却し、アセトン20mLで希釈し、メタンスルホン酸4.4gを加え、析出物をろ過し、取り除いた後、水300mLにあけ、ろ過した。40℃で8時間真空乾燥し、ポリエステル(PE-1)10.2gを得た。ポリエステル(PE-1)の重量平均分子量は、12800であり、分散度(Mw/Mn)は2.21であった。
【0306】
【化53】
【0307】
<(PE-2)の合成>
窒素置換したフラスコに、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール2.92g(東京化成(株)製)、超脱水されたテトラヒドロフラン30.0gを秤り取り、溶解し、-78℃に冷却した。これに、ブチルリチウム(約15質量%ヘキサン溶液,約1.6mol/L)18.0gを1時間かけて滴下した。滴下後、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物4.48g(東京化成(株)製)を添加し、30分撹拌したあと、0℃で1時間撹拌し、室温で、8時間撹拌した。これに、テトラヒドロフラン20gを加え、溶解した。これを水300mLにあけ、ろ過した。ろ物を回収し、30mLのテトラヒドロフランに溶解し、水500mLにあけ、ろ過、水洗し、40℃で1日乾燥し、ポリエステル(PE-2A)9,2gを得た。ポリエステル(PE-2A)の重量平均分子量は、10500であり、分散度(Mw/Mn)は1.97であった。
(PE-2A)を9.2g、N,N-ジメチルアミノピリジン0.24g(和光純薬(株)製)、超脱水されたテトラヒドロフラン22.2gを秤りとり、45℃で撹拌し、溶解させた。次いで、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩8.4g(東京化成(株)製)、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール10.8g(東京化成(株)製)を添加し、45℃で10時間反応した。反応後、室温まで冷却し、酢酸エチル300mLを加え、0.01mol/L塩酸水100mL、次いで、水300mlで洗浄後、飽和した塩化トリウム水溶液200mlで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥したあと、ろ紙でろ過しながら、ナス型フラスコに移し、エバポレータを用いて濃縮した。この濃縮物をテトラヒドロフラン30mLに溶解し、水500mLにあけ、ろ過し、40℃で8時間真空乾燥し、ポリエステル(PE-2)8.9gを得た。ポリエステル(PE-2)の重量平均分子量は、12700であり、分散度(Mw/Mn)は2.11であった。
【0308】
【化54】
【0309】
<(PE-3)の合成>
コンデンサー及び撹拌機を取り付けた3つ口フラスコに、meso-ブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物3.96g(東京化成(株)製)、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン4.81g(東京化成(株)製)、N,N-ジメチルアミノピリジン0.24g(和光純薬(株)製)、ピリジン3.32g(和光純薬(株)製)、超脱水されたN-メチルピロリドン16.3を秤り取り、室温で撹拌した。次いで、内温を65℃に昇温し、18時間反応した。これを、0.5mol/L塩酸水300ml、メタノール50mLにあけ、ろ過、乾燥し、(PE-3A)8.2gを得た。(PE-3A)の重量平均分子量は、11800であった。
(PE-3A)を8.2g、N,N-ジメチルアミノピリジン0.24g(和光純薬(株)製)、超脱水されたテトラヒドロフラン22.2gを秤りとり、45℃で撹拌し、溶解させた。次いで、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩8.4g(東京化成(株)製)、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール10.8g(東京化成(株)製)を添加し、60℃で8時間反応した。反応後、室温まで冷却し、アセトン20mLで希釈し、メタンスルホン酸4.4gを加え、析出物をろ過し、取り除いた後、水300mLにあけ、ろ過した。40℃で8時間真空乾燥し、ポリエステル(PE-3)8.5gを得た。ポリエステル(PE-3)の重量平均分子量は、13200であり、分散度(Mw/Mn)は2.25であった。
【0310】
【化55】
【0311】
<(PE-4)の合成>
コンデンサー及び撹拌機を取り付けた3つ口フラスコに、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物4.48g(東京化成(株)製)、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン4.81g(東京化成(株)製)、N,N-ジメチルアミノピリジン0.24g(和光純薬(株)製)、ピリジン3.32g(和光純薬(株)製)、超脱水されたテトラヒドロフラン17.3gを秤りとり、室温で撹拌した。次いで、内温を60℃に昇温し、10時間反応した。これを、0.5mol/L塩酸水300ml、メタノール50mLにあけ、ろ過、乾燥し、(PE-4A)9.4gを得た。(PE-4A)の重量平均分子量は、11800であった。
(PE-4A)を9.4g、N,N-ジメチルアミノピリジン0.24g(和光純薬(株)製)、炭酸カリウム2.76g超脱水されたN-メチルピロリドン30.0gを秤りとり、45℃で撹拌した。次いで、化合物-Aを12.7g添加し、45℃で8時間反応した。反応後、室温まで冷却し、酢酸エチル300mLを加え、水200mLで洗浄後、0.2mol/L塩酸水100mL、次いで、水300mlで洗浄後、飽和した塩化トリウム水溶液200mlで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥したあと、ろ紙でろ過しながら、ナス型フラスコに移し、エバポレータを用いて濃縮した。この濃縮物をテトラヒドロフラン50mLに溶解し、水500mLにあけ、ろ過し、40℃で8時間真空乾燥し、ポリエステル(PE-4)8.3gを得た。ポリエステル(PE-4)の重量平均分子量は、13800であり、分散度(Mw/Mn)は2.26であった。
【0312】
【化56】
【0313】
<(PE-5)の合成>
コンデンサー及び撹拌機を取り付けた3つ口フラスコに、meso-ブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物3.96g(東京化成(株)製)、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン4.81g(東京化成(株)製)、N,N-ジメチルアミノピリジン0.24g(和光純薬(株)製)、ピリジン3.32g(和光純薬(株)製)、超脱水されたテトラヒドロフラン17.3gを秤りとり、室温で撹拌した。次いで、内温を60℃に昇温し、10時間反応した。これを、0.5N塩酸水300ml、メタノール50mLにあけ、ろ過、乾燥し、(PE-5A)9.4gを得た。(PE-5A)の重量平均分子量は、12500であった。
(PE-5A)を9.4g、N,N-ジメチルアミノピリジン0.24g(和光純薬(株)製)、炭酸カリウム2.76g超脱水されたN-メチルピロリドン30.0gを秤りとり、45℃で撹拌した。次いで、化合物-Aを12.7g添加し、45℃で8時間反応した。反応後、室温まで冷却し、酢酸エチル300mLを加え、水200mLで洗浄後、0.2N塩酸水100mL、次いで、水300mlで洗浄後、飽和した塩化トリウム水溶液200mlで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥したあと、ろ紙でろ過しながら、ナス型フラスコに移し、エバポレータを用いて濃縮した。この濃縮物をテトラヒドロフラン50mLに溶解し、水500mLにあけ、ろ過し、40℃で8時間真空乾燥し、ポリエステル(PE-5)11.3gを得た。ポリエステル(PE-5)の重量平均分子量は、14800であり、分散度(Mw/Mn)は2.46であった。
【0314】
【化57】
【0315】
<(R-1A)の合成>
コンデンサー及び撹拌機を取り付けた3つ口フラスコに、モノマーとして、モノマー(a)及びモノマー(b)を用い、そのモル比(モノマー(a):モノマー(b))が75:25となるように混合し、全モノマー量の1.2質量倍のメチルイソブチルケトンを加えて溶液とした。この溶液に、開始剤としてアゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)を全モノマー量に対して3mol%添加し、70℃で約5時間加熱した。得られた反応混合物を、大量のメタノール/水混合溶媒に注いで樹脂を沈殿させ、この樹脂をろ過し、重量平均分子量12000の(R-1A)を得た。
【0316】
【化58】
【0317】
【化59】
【0318】
<(R-2A)の合成>
コンデンサー及び撹拌機を取り付けた3つ口フラスコに、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロ-1,6-ヘキサンジオール5.2g(東京化成(株)製)、N,N-ジメチルアミノピリジン0.32g(和光純薬(株)製)、ピリジン3.32g(和光純薬(株)製)、超脱水されたテトラヒドロフラン16.0gを秤りとり、室温で撹拌した。次いで、ジメチルマロニルジクロリド(東京化成(株)製)3.38g、を添加し、室温で2時間反応した後、45℃で、8時間撹拌した。これを、分液ロートに移し、酢酸エチル300mLを加え、水100mlで洗浄後、0.5mol/L塩酸水100mlで洗浄し、水100mlで洗浄後、飽和した塩化ナトリウム水溶液200mlで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥したあと、ろ紙でろ過しながら、ナス型フラスコに移し、エバポレータを用いて濃縮し、(R-2A)を6.9g得た。(R-2A)の重量平均分子量は、13300であり、分散度(Mw/Mn)は2.31であった。
【0319】
【化60】
【0320】
[レジスト組成物の塗液調製及び塗設]
下記表1に示す各成分を表1に示す溶剤に溶解させ、固形分濃度4質量%の溶液を調製し、これを0.05μmのポアサイズを有するポリエチレンフィルターで濾過して各実施例及び比較例のレジスト組成物を調製した。
なお、表1には、各成分の使用量を記載した。樹脂(A)は1g使用し、添加ポリマー、光酸発生剤、塩基性化合物、界面活性剤、及び溶剤は表1に記載した量(mg)を使用した。
シリコンウエハ上に有機反射防止膜ARC29SR(Brewer社製)を塗布し、205℃で60秒間ベークを行い膜厚98nmの反射防止膜を形成し、その上に、下記表1に示す各実施例及び比較例のレジスト組成物を塗布し、100℃で60秒間に亘ってベークを行い、膜厚90nmのレジスト膜を形成した。
【0321】
(2)ArF露光及び現像
ArFエキシマレーザー液浸スキャナー(ASML社製;XT1700i、NA1.20、C-Quad、アウターシグマ0.730、インナーシグマ0.630、XY偏向)を用い、線幅75nmの1:1ラインアンドスペースパターンの6%ハーフトーンマスクを通して露光した。液浸液としては超純水を使用した。その後120℃で、60秒間加熱した後、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液(2.38質量%)で30秒間現像し、純水でリンスした後、スピン乾燥してレジストパターンを得た。
【0322】
(3)評価
走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S-9220)を用いて、得られたレジストパターンを下記の方法でスカム及び現像欠陥について評価した。また、露光前のDRCAと現像後のSCAを測定した。結果を下表1に示す。
【0323】
〔スカム(液浸欠陥)〕
線幅75nmのレジストパターンにおける現像残渣(スカム)を走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S-9220)を用いて観察し、残渣が全く発生しなかったものをA、残渣が酷く発生したものをC、その中間をBとした。その際、露光のスキャン速度が700mm/sの場合で評価を行った。
【0324】
〔現像欠陥〕
シリコンウエハ(12インチ口径)上に、上記のようにして形成したパターン(露光のスキャン速度は、700mm/sとした)について、ケー・エル・エー・テンコール社製の欠陥検査装置KLA2360(商品名)を用い、欠陥検査装置のピクセルサイズを0.16μmに、また閾値を20に設定して、ランダムモードで測定し、比較イメージとピクセル単位の重ね合わせによって生じる差異から抽出される現像欠陥を検出して、単位面積あたりの現像欠陥数(個/cm)を算出した。なお、1インチは、0.0254mである。値が0.5未満のものをA、0.5以上0.7未満のものをB、0.7以上1.0未満のものをC、1.0以上のものをDとした。値が小さいほど良好な性能であることを示す。
【0325】
〔露光前の動的後退接触角(DRCA)〕
シリコンウエハ(8インチ口径)上に調製したレジスト組成物を塗布し、120℃で60秒間ベークを行い、膜厚120nmのレジスト膜を形成した。続いて上記ウエハーを接触角計(ニコン(株)社製)のウエハーステージへ設置した。シリンジより純水の液滴を吐出し保持した状態で、レジスト膜へ液滴を接触させた。次いで、シリンジを固定したままウエハーステージを250mm/secの速さで移動させた。ステージ移動中の液滴の後退角を測定し、接触角が安定した値を動的後退角とした。上記接触角の測定は、23±3℃にて実施した。
【0326】
〔現像後の静的接触角(SCA)〕
シリコンウエハ(8インチ口径)上に調製したレジスト組成物を塗布し、120℃で60秒間ベークを行い、膜厚120nmのレジスト膜を形成した。続いて、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液(2.38質量%)で30秒間現像し、純水でリンスした後、スピン乾燥した。その後、接触角計(協和界面科学社製)を用いて、水滴の静止接触角を測定した。液滴サイズ35μLで測定し、接触角が安定した値を現像後の静的接触角とした。測定環境は、23℃、相対湿度45%である。この接触角の数値が小さいほど、親水性が高いことを示す。
【0327】
<合成例:樹脂(A-1)の合成>
窒素気流下、シクロヘキサノン8.6gを3つ口フラスコに入れ、これを80℃に加熱した。これに2-アダマンチルイソプロピルメタクリレート9.8g、ジヒドロキシアダマンチルメタクリレート4.4g、ノルボルナンラクトンメタクリレート8.9g、重合開始剤V-601(和光純薬工業(株)製)をモノマーに対し8mol%をシクロヘキサノン79gに溶解させた溶液を6時間かけて滴下した。滴下終了後、更に80℃で2時間反応させた。反応液を放冷後ヘキサン800m/酢酸エチル200mlの混合液に20分かけて滴下し、析出した粉体をろ取、乾燥すると、樹脂(A-1)が19g得られた。得られた樹脂の重量平均分子量は、標準ポリスチレン換算で8800、分散度(Mw/Mn)は1.9であった。
同様にして、以下に示す他の樹脂(A)を合成した。
実施例で用いた樹脂(A)の構造、重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を以下に示す。また、各樹脂における繰り返し単位の比率はモル比率である。
【0328】
【化61】
【0329】
使用した光酸発生剤は下記の通りである。
【0330】
【化62】
【0331】
使用した塩基性化合物は下記の通りである。
【0332】
【化63】
【0333】
使用した界面活性剤は下記の通りである。
W-1:メガファックF176(大日本インキ化学工業(株)製、フッ素系)
W-2:トロイゾルS-366(トロイケミカル(株)製)
【0334】
使用した溶剤は下記の通りである。
SL-2: プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA:1-メトキシ-2-アセトキシプロパン)
SL-5: γ-ブチロラクトン
【0335】
【表1】
【0336】
表1より、添加ポリマーとして本発明のポリエステル(B)を使用した実施例1~11では、添加ポリマーとしてアクリル系含フッ素樹脂を使用した比較例1に対して、露光前に高いDRCAを示し、かつスカム及び現像欠陥の低減ができた。アクリル系含フッ素樹脂の含有量を増やした比較例2では、露光前のDRCAは高くなったものの、スカム及び現像欠陥が悪化した。また、実施例1~11は、添加ポリマーとしてアルカリ分解性基を主鎖のみに有するポリエステルを用いた比較例3よりも現像後の接触角が小さく、スカムの低減に優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0337】
本発明によれば、露光のスキャン速度を超高速(例えば、700mm/秒以上)としても、露光時には露光装置に対する液浸液(典型的には超純水)の高い追従性を有しながら(すなわち、感活性光線性又は感放射線性膜の水に対する動的後退接触角が大きく)、かつ現像後のパターンの表面の親水性が高く(すなわち、パターンの表面の水に対する静的接触角が小さく)、スカム(液浸欠陥)、及び、現像欠陥を共に低減可能な感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、並びに、これを用いた、感活性光線性又は感放射線性膜、パターン形成方法、電子デバイスの製造方法、及び上記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物に好適に用いることができるポリエステルを提供できる。
【0338】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
本出願は、2018年3月30日出願の日本特許出願(特願2018-070301)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。