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特許7125502放射線検出器、放射線画像撮影装置、及び製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】放射線検出器、放射線画像撮影装置、及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/20 20060101AFI20220817BHJP
   A61B 6/00 20060101ALN20220817BHJP
【FI】
G01T1/20 L
G01T1/20 E
G01T1/20 G
A61B6/00 300S
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020549201
(86)(22)【出願日】2019-09-24
(86)【国際出願番号】 JP2019037218
(87)【国際公開番号】W WO2020066988
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-03-26
(31)【優先権主張番号】P 2018182729
(32)【優先日】2018-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 宗貴
(72)【発明者】
【氏名】中津川 晴康
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-133315(JP,A)
【文献】国際公開第2018/124134(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/20
A61B 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性の基材の画素領域に、放射線から変換された光に応じて発生した電荷を蓄積する複数の画素を有するセンサ部層を含む基板と、
前記基材の前記画素領域が設けられた面側に設けられ、前記放射線を光に変換する変換層と、
前記変換層より前記基板側に設けられ、前記センサ部層を前記基材に固定する固定部材と、
を備え
前記固定部材は、前記センサ部層の端部において前記センサ部層を前記基材に固定し、
前記固定部材は、前記センサ部層の前記変換層側の面の少なくとも一部から、前記センサ部層の端面を介して、前記基材の前記センサ部層側の面の少なくとも一部までの領域を覆うことにより前記センサ部層を前記基材に固定する、
放射線検出器。
【請求項2】
前記固定部材は、樹脂を含んで構成されている、
請求項1に記載の放射線検出器。
【請求項3】
前記固定部材は、前記センサ部層の前記変換層側の面の全面から、前記センサ部層の端面を介して、前記基材の前記センサ部層側の面の少なくとも一部までの領域を覆うことにより前記センサ部層を前記基材に固定する、
請求項に記載の放射線検出器。
【請求項4】
前記基材及び前記固定部材は、同一の材料を含む、
請求項に記載の放射線検出器。
【請求項5】
前記基材の熱膨張率CTEflexと前記固定部材の熱膨張率CTEsurとの比が、0.5≦CTEsur/CTEflex≦4である、
請求項または請求項に記載の放射線検出器。
【請求項6】
前記基材は、ポリイミドを含む、
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の放射線検出器。
【請求項7】
前記基材は、塗布によって形成されている、
請求項に記載の放射線検出器。
【請求項8】
前記固定部材は、ポリイミドまたはパリレン(登録商標)を含む、
請求項または請求項に記載の放射線検出器。
【請求項9】
前記変換層を覆う封止層をさらに備え、
前記固定部材は、前記封止層とは材質が異なる、
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の放射線検出器。
【請求項10】
前記変換層は、CsIの柱状結晶が直接蒸着により形成されたものであり、
前記柱状結晶の先端部側に前記基材よりも剛性が高い補強基板をさらに備えた、
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の放射線検出器。
【請求項11】
前記補強基板は、降伏点を有する材料を含む、
請求項10に記載の放射線検出器。
【請求項12】
前記補強基板は、前記変換層が設けられた領域よりも広い領域に設けられている、
請求項10または請求項11に記載の放射線検出器。
【請求項13】
前記基板の、前記画素領域が設けられた面と対向する面に、前記基材よりも剛性が高い補強部材をさらに備えた、
請求項10から請求項12のいずれか1項に記載の放射線検出器。
【請求項14】
請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の放射線検出器と、
前記複数の画素に蓄積された電荷を読み出すための制御信号を出力する制御部と、
前記放射線検出器に可撓性の配線により電気的に接続され、前記制御信号に応じて前記複数の画素から電荷を読み出す回路部と、
を備えた放射線画像撮影装置。
【請求項15】
支持体に、剥離層を介して可撓性の基材を設け、前記基材の画素領域に、放射線から変換された光に応じて発生した電荷を蓄積する複数の画素を有するセンサ部層が設けられた基板を形成し、
前記センサ部層を前記基材に固定する固定部材を形成し、
前記基材の前記画素領域が設けられた面側に、前記放射線を光に変換する変換層を形成し、
前記変換層の、前記基板側の面と対向する側の面と反対側の面に、前記基材よりも剛性が高い補強基板を貼り合わせ、
前記変換層及び前記補強基板が設けられた前記基板を、前記支持体から剥離
前記固定部材は、前記センサ部層の端部において前記センサ部層を前記基材に固定し、
前記固定部材は、前記センサ部層の前記変換層側の面の少なくとも一部から、前記センサ部層の端面を介して、前記基材の前記センサ部層側の面の少なくとも一部までの領域を覆うことにより前記センサ部層を前記基材に固定する、
放射線検出器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、放射線検出器、放射線画像撮影装置、及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療診断を目的とした放射線撮影を行う放射線画像撮影装置が存在する。このような放射線画像撮影装置には、被写体を透過した放射線を検出し放射線画像を生成するための放射線検出器が用いられている。
【0003】
この種の放射線検出器としては、放射線を光に変換するシンチレータ等の変換層と、変換層で変換された光に応じて発生した電荷を蓄積する複数の画素を有するセンサ部層が基材の画素領域に設けられた基板と、を備えたものがある(例えば、特開2000-131444号公報、特開2007-192807号公報、特開2004-172375号公報参照。)。
【0004】
このような放射線検出器の基板の基材として、可撓性の基材を用いたものが知られている。可撓性の基材を用いることにより、例えば、放射線画像撮影装置(放射線検出器)を軽量化でき、また、被写体の撮影が容易となる場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光を電気信号に変換する光電変換素子を有する可撓性基板上にシンチレータ等の変換層を形成して作成する放射線検出器を使用する場合、次のような問題がある。すなわち、ポリイミド(PI:PolyImide)等の可撓性基板は、ガラス基板に比べて熱伝導率が低く、比熱が高いため、放射線検出器の製造工程においては、可撓性基板に熱が加わった場合に熱が逃げ難い、という問題がある。また、実際に放射線画像撮影装置を使用する場合に、可撓性基板に熱が滞留し易く、温度が高くなりやすい傾向がある、という問題がある。
【0006】
可撓性基板の温度が上昇すると熱膨張が発生し、可撓性基板の反りが発生する結果、放射線から変換された光に応じて発生した電荷を蓄積する複数の画素を有するセンサ部層が基材から剥離してしまう場合がある。
【0007】
本開示は、放射線検出器におけるセンサ部層の基材からの剥離の発生を抑制することができる放射線検出器、放射線画像撮影装置、及び製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の第1の態様の放射線検出器は、可撓性の基材の画素領域に、放射線から変換された光に応じて発生した電荷を蓄積する複数の画素を有するセンサ部層を含む基板と、基材の画素領域が設けられた面側に設けられ、放射線を光に変換する変換層と、変換層より基板側に設けられ、センサ部層を基材に固定する固定部材と、を備える。
【0009】
本開示の第2の態様の放射線検出器は、第1の態様の放射線検出器であって、固定部材は、樹脂を含んで構成されている。
【0010】
本開示の第3の態様の放射線検出器は、第1の態様の放射線検出器または第2の態様の放射線検出器であって、固定部材は、センサ部層の端部においてセンサ部層を基材に固定する。
【0011】
本開示の第4の態様の放射線検出器は、第3の態様の放射線検出器であって、固定部材は、センサ部層の変換層側の面の少なくとも一部から、センサ部層の端面を介して、基材のセンサ部層側の面の少なくとも一部までの領域を覆うことによりセンサ部層を基材に固定する。
【0012】
本開示の第5の態様の放射線検出器は、第4の態様の放射線検出器であって、固定部材は、センサ部層の変換層側の面の全面から、センサ部層の端面を介して、基材のセンサ部層側の面の少なくとも一部までの領域を覆うことによりセンサ部層を基材に固定する。
【0013】
本開示の第6の態様の放射線検出器は、第5の態様の放射線検出器であって、基材及び固定部材は、同一の材料を含む。
【0014】
本開示の第7の態様の放射線検出器は、第5の態様の放射線検出器または第6の態様の放射線検出器であって、基材の熱膨張率CTEflexと固定部材の熱膨張率CTEsurとの比が、0.5≦CTEsur/CTEflex≦4である。
【0015】
本開示の第8の態様の放射線検出器は、第1の態様から第7の態様のいずれかの放射線検出器であって、基材は、ポリイミドを含む。
【0016】
本開示の第9の態様の放射線検出器は、第8の態様の放射線検出器であって、基材は、塗布によって形成されている。
【0017】
本開示の第10の態様の放射線検出器は、第8の態様の放射線検出器または第9の態様の放射線検出器であって、固定部材は、ポリイミドまたはパリレン(登録商標)を含む。
【0018】
本開示の第11の態様の放射線検出器は、第1の態様から第10の態様のいずれかの放射線検出器であって、変換層を覆う封止層をさらに備え、固定部材は、封止層とは材質が異なる。
【0019】
本開示の第12の態様の放射線検出器は、第1の態様から第11の態様のいずれかの放射線検出器、変換層は、CsIの柱状結晶が直接蒸着により形成されたものであり、柱状結晶の先端部側に基材よりも剛性が高い補強基板をさらに備えている。
【0020】
本開示の第13の態様の放射線検出器は、第12の態様の放射線検出器であって、補強基板は、降伏点を有する材料を含む。
【0021】
本開示の第14の態様の放射線検出器は、第12の態様の放射線検出器または第13の態様の放射線検出器であって、補強基板は、変換層が設けられた領域よりも広い領域に設けられている。
【0022】
本開示の第15の態様の放射線検出器は、第12の態様から第14の態様のいずれかの放射線検出器であって、基板の、画素領域が設けられた面と対向する面に、基材よりも剛性が高い補強部材をさらに備えている。
【0023】
また、本開示の第16の態様の放射線画像撮影装置は、第1の態様から第15の態様のいずれかの放射線検出器と、複数の画素に蓄積された電荷を読み出すための制御信号を出力する制御部と、放射線検出器に可撓性の配線により電気的に接続され、制御信号に応じて複数の画素から電荷を読み出す回路部と、を備える。
【0024】
また、本開示の第17の態様の製造方法は、放射線検出器の製造方法であって、支持体に、剥離層を介して可撓性の基材を設け、基材の画素領域に、放射線から変換された光に応じて発生した電荷を蓄積する複数の画素を有するセンサ部層が設けられた基板を形成し、センサ部層を基材に固定する固定部材を形成し、基材の画素領域が設けられた面側に、放射線を光に変換する変換層を形成し、変換層の、基板側の面と対向する側の面と反対側の面に、基材よりも剛性が高い補強基板を貼り合わせ、変換層及び補強基板が設けられた基板を、支持体から剥離する。
【発明の効果】
【0025】
本開示によれば、放射線検出器におけるセンサ部層の基材からの剥離の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】第1実施形態の放射線検出器におけるTFT(Thin Film Transistor)基板の構成の一例を示す構成図である。
図2】実施形態の基材の一例を説明するための断面図である。
図3】第1実施形態の放射線検出器の一例を、変換層が設けられた側からみた平面図である。
図4図3に示した放射線検出器のA-A線断面図である。
図5図3に示した放射線検出器の要部構成を示す断面図である。
図6】第1実施形態の放射線検出器の一例を、TFT基板の第1の面の側からみた平面図である。
図7】第1実施形態の放射線検出器の製造方法の一例を説明する説明図である。
図8】第1実施形態の放射線検出器の製造方法の一例を説明する説明図である。
図9】第2実施形態の放射線検出器の一例の断面図である。
図10】第3実施形態の放射線検出器の一例の断面図である。
図11】第3実施形態の放射線検出器の他の一例の平面図である。
図12】第3実施形態の放射線検出器の他の一例の平面図である。
図13】実施形態の放射線検出器の他の一例の断面図である。
図14】実施形態の放射線検出器の他の例の一画素部分についての断面図である。
図15】実施形態の放射線検出器を適用した放射線画像撮影装置の一例の断面を表す断面図である。
図16】実施形態の放射線検出器を適用した放射線画像撮影装置の他の例の断面を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、本実施形態は限定を意図していない。
【0028】
[第1実施形態]
本実施形態の放射線検出器は、被写体を透過した放射線を検出して被写体の放射線画像を表す画像情報を出力する機能を有する。本実施形態の放射線検出器は、TFT(Thin Film Transistor)基板と、放射線を光に変換する変換層と、を備えている(図4、放射線検出器10のTFT基板12及び変換層14参照)。
【0029】
図1を参照して本実施形態の放射線検出器におけるTFT基板12の構成の一例について説明する。本実施形態のTFT基板12は、基材11の画素領域35に、複数の画素30を含むセンサ部層50が形成された基板である。本実施形態のTFT基板12は、基板の一例である。
【0030】
基材11は、樹脂製、かつ、可撓性を有する。なお、本実施形態では、一例として、以下に示すように基材11を形成する。
【0031】
まず、厚さ0.7mmの無アルカリガラス基板(コーニング社製 イーグル2000)の表面上にポリイミド前駆体溶液を熱硬化後のフィルムの厚さが20μmになるようにバーコータによって塗布し、130℃で10分間乾燥してポリイミド前駆体被膜を形成する。
【0032】
次いで、窒素ガス気流下で、100℃から360℃まで2時間かけて昇温した後、360℃で2時間熱処理し、ポリイミド前駆体を熱硬化させてイミド化する。これによって、ガラス基板とポリイミドフィルム層を有する積層体を得ることができる。得られた積層体のポリイミドフィルムは、容易に手でガラス基板から剥離することができる。なお、この基材11の形成方法は、例えば、特開2014-218056号公報にも記載されているため、これ以上の説明は省略する。
【0033】
基材11の形成方法は、この形態に限らず、基材11として、ポリイミド等のプラスチックを含む樹脂を、所定の支持体上に、スピンコート法、インクジェット法、フレキソ印刷法等の塗布方法で塗布することによって形成してもよい。塗布型ポリイミド樹脂を塗布することによって得られた基材を、以下では、「塗布型ポリイミド基材」という。また、基材11として、上記樹脂を塗布して得られたものに代えて、例えば、ポリイミド等のプラスチックを含む樹脂シート等を用いてもよい。
【0034】
基材11の厚みは、材質の硬度、及びTFT基板12の大きさ等に応じて、所望の可撓性が得られる厚みであればよい。例えば、基材11は、厚みが5μm~125μmのものであればよく、厚みが20μm~50μmのものであればより好ましい。
【0035】
なお、基材11は、詳細を後述する画素30の製造に耐え得る特性を有しており、本実施形態では、アモルファスシリコンTFT(a-Si TFT)の製造に耐え得る特性を有している。このような、基材11が有する特性としては、300℃~400℃における熱膨張率が、シリコン(Si)ウェハと同程度(例えば、±5ppm/K)であることが好ましく、詳細には、20ppm/K以下であることが好ましい。また、基材11の熱収縮率としては、厚みが25μmの状態において400℃におけるMD(Machine Direction)方向の熱収縮率が0.5%以下であることが好ましい。また、基材11の弾性率は、300℃~400℃間の温度領域において、一般的なポリイミドが有する転移点を有さず、500℃における弾性率が1GPa以上であることが好ましい。
【0036】
また、本実施形態の基材11として、樹脂シートを用いる場合、図2に示したように、変換層14が設けられる側と反対側の面に、平均粒子径が0.05μm以上、2.5μm以下の無機の微粒子11Pを含む微粒子層11Lを有することが好ましい。このような特性を有する樹脂シートの例としては、XENOMAX(登録商標)が挙げられる。
【0037】
なお、本実施形態において述べる厚み、熱膨張率、弾性率、及び平均粒子径等の測定方法は、特開2010-76438号公報に記載されている評価方法を適用している。例えば、熱膨張率の測定方法は、下記条件にてMD方向及びTD(Transverse Direction)方向の伸縮率を測定し、90℃~100℃、100℃~110℃、…と、10℃の間隔での伸縮率及び温度を測定し、この測定を400℃まで行い、100℃から350℃までの全測定値の平均値として導出した熱膨張率(ppm/℃)を、(ppm/K)に換算した。熱膨張率の測定条件は、MACサイエンス社製 TMA4000S装置を用い、サンプル長さを10mm、サンプル幅を2mm、初荷重を34.5g/mm、昇温開始温度を25℃、昇温終了温度を400℃、昇温速度を5℃/min、及び雰囲気をアルゴンとした。
【0038】
画素30の各々は、変換層14が変換した光に応じて電荷を発生して蓄積するセンサ部34及びセンサ部34にて蓄積された電荷を読み出すスイッチング素子32を含む。本実施形態では、一例として、薄膜トランジスタ(TFT)をスイッチング素子32として用いている。そのため、以下では、スイッチング素子32を「TFT32」という。
【0039】
複数の画素30は、TFT基板12の画素領域35に、一方向(図1の横方向に対応する走査配線方向、以下「行方向」ともいう)及び行方向に対する交差方向(図1の縦方向に対応する信号配線方向、以下「列方向」ともいう)に二次元状に配置されている。図1では、画素30の配列を簡略化して示しているが、例えば、画素30は行方向及び列方向に1024個×1024個配置される。
【0040】
また、放射線検出器10には、TFT32のスイッチング状態(オン及びオフ)を制御するための複数の走査配線38と、画素30の列毎に備えられた、センサ部34に蓄積された電荷が読み出される複数の信号配線36と、が互いに交差して設けられている。複数の走査配線38の各々は、それぞれTFT基板12に設けられた接続領域43(図4及び図6参照)を介して、放射線検出器10の外部の駆動部103(図6参照)に接続されることにより、複数の走査配線38の各々には、駆動部103から出力される、TFT32のスイッチング状態を制御する制御信号が流れる。また、複数の信号配線36の各々が、それぞれTFT基板12に設けられた接続領域43(図4及び図6参照)を介して、放射線検出器10の外部の信号処理部104(図6参照)に接続されることにより、各画素30から読み出された電荷が、信号処理部104に出力される。
【0041】
また、各画素30のセンサ部34には、各画素30にバイアス電圧を印加するために、共通配線39が信号配線36の配線方向に設けられている。共通配線39が、TFT基板12に設けられたパッドを介して、放射線検出器10の外部のバイアス電源に接続されることにより、バイアス電源から各画素30にバイアス電圧が印加される。
【0042】
本実施形態の放射線検出器10では、TFT基板12上には、変換層14が形成されている。図3は、本実施形態の放射線検出器10を変換層14が形成された側からみた平面図である。また、図4は、図3における放射線検出器10のA-A線断面図である。さらに、図5は、図3に示した放射線検出器の要部構成を示す断面図である。なお、以下では、放射線検出器10の構造において「上」という場合、TFT基板12側を基準とした位置関係において上であることを表している。例えば、変換層14は、TFT基板12の上に設けられている。
【0043】
図3及び図4に示すように、本実施形態の変換層14は、TFT基板12の第1の面12Aにおける画素領域35を含む一部の領域上に設けられている。このように、本実施形態の変換層14は、TFT基板12の第1の面12Aの外周部の領域上には設けられていない。本実施形態の第1の面12Aが、本開示の、画素領域が設けられた面の一例である。
【0044】
本実施形態では、変換層14の一例としてCsI(ヨウ化セシウム)を含むシンチレータを用いている。このようなシンチレータとしては、例えば、X線照射時の発光スペクトルが400nm~700nmであるCsI:Tl(タリウムが添加されたヨウ化セシウム)やCsI:Na(ナトリウムが添加されたヨウ化セシウム)を含むことが好ましい。なお、CsI:Tlの可視光域における発光ピーク波長は565nmである。
【0045】
本実施形態の放射線検出器10では、変換層14は、TFT基板12上に、真空蒸着法、スパッタリング法、及びCVD(Chemical Vapor Deposition)法等の気相堆積法によって短冊状の柱状結晶として形成される。変換層14の形成方法としては、例えば、変換層14としてCsI:Tlを用いた場合、真空度0.01Pa~10Paの環境下、CsI:Tlを抵抗加熱式のるつぼ等の加熱手段により加熱して気化させ、TFT基板12の温度を室温(20℃)~300℃としてCsI:TlをTFT基板12上に堆積させる真空蒸着法が挙げられる。変換層14の厚さとしては、100μm~800μmが好ましい。
【0046】
本実施形態に係る放射線検出器10では、軽量化を図るため、基材11に、ガラスではなく、ポリイミド等のプラスチックを含む樹脂を用いている。このため、放射線検出器10の温度が上昇した場合に、ガラスを用いた場合に比較して、TFT基板12の熱膨張が大きくなり、TFT基板12に大きな反りが発生し、この結果、センサ部層50が基材11から剥離する可能性がある。特に、この問題は、基材11が塗布型ポリイミド基材である場合に顕著であり、この場合、熱膨張率が、ガラスを用いた基材に比較して10倍程度となり、この結果、センサ部層50が基材11から剥離する可能性が高くなる。
【0047】
そこで、本実施形態では、一例として図4及び図5に示すように、TFT基板12と変換層14との間には、センサ部層50を基材11に固定する固定層13が設けられている。固定層13は、変換層14の熱膨張率と、基材11の熱膨張率との差を緩衝させる機能をさらに有する。変換層14の熱膨張率と、基材11の熱膨張率との差が大きいほど、固定層13を設ける意義が大きい。例えば、基材11に、XENOMAX(登録商標)を用いる場合、他の材質に比べて、変換層14の熱膨張率との差が大きくなるため、図4及び図5に示した放射線検出器10のように、固定層13を設ける意義が大きい。
【0048】
本実施形態では、固定層13は、基材11と同一の材料を含む。詳細には、基材11として塗布型ポリイミド基材を用いた場合、固定層13として、塗布型ポリイミド樹脂を塗布することによって得られたものを用いる。このように、本実施形態では、固定層13として、基材11と同一の材料を含むものを用いているため、固定層13と基材11の各々の熱膨張率の差を小さくすることができ、この結果、TFT基板12の反りの発生を抑制することができる。但し、この形態に限らず、固定層13として、パリレン(登録商標)膜を用いてもよい。本実施形態の固定層13は、固定部材の一例である。
【0049】
本実施形態では、固定層13が、センサ部層50を、その端部において基材11に固定する。より詳細には、図4及び図5に示すように、本実施形態では、固定層13が、センサ部層50の変換層14側の面の全面から、センサ部層50の端面を介して、基材11のセンサ部層50側の面の一部までの領域を覆うことにより、センサ部層50を基材11に固定する。
【0050】
なお、図4及び図5に示した例では、固定層13の基材11側の端部が、基材11のセンサ部層50側の面の一部までを覆うものとしているが、この形態に限らず、固定層13が、基材11の上面のセンサ部層50の領域を除く全てを覆うものとしてもよい。
【0051】
固定層13としてポリイミドを用いる場合、センサ部層50上に、スピンコート法、インクジェット法、フレキソ印刷法等の塗布方法でポリイミドを付与することにより固定層13を形成する。この場合、ポリイミドは着色しているため、変換層14で発生した光を透過させてフォトダイオードで吸収させるために、あまり厚くしないことが好ましく、固定層13の厚みは、0.05~0.2μm程度が好ましく、0.1μm程度が、より好ましい。
【0052】
これに対し、固定層13としてパリレン(登録商標)膜を用いる場合、センサ部層50上に、真空成膜法でパリレン(登録商標)を付与することにより固定層13を形成する。詳細には、センサ部層50まで形成されたTFT基板12を真空チャンバーに入れ、所定の真空度にてパリレン(登録商標)原料を加熱して蒸発させ、TFT基板12上にパリレン(登録商標)膜を成膜する。この場合、固定層13の厚みは、0.5~10μm程度が好ましい。なお、パリレン(登録商標)膜を成膜したくない領域については、適宜マスクして対応すればよい。
【0053】
本実施形態では、基材11の熱膨張率CTEflex(CTE:Coefficient of Thermal Expansion)と固定層13の熱膨張率CTEsurとの比(以下、「CTE比」という。)が、次の式(1)で示される範囲の値とされている。
【0054】
【数1】

【0055】
固定層13として塗布型ポリイミド樹脂を用いる場合、ポリイミドの熱膨張率CTEは、おおよそ18~38PPM/度の範囲となるため、CTE比はおおよそ0.5以上、2以下の範囲となる。
【0056】
これに対し、固定層13としてパリレン(登録商標)を用いる場合、パリレン(登録商標)の熱膨張率CTEは、おおよそ35~69PPM/度の範囲となるため、CTE比はおおよそ0.5以上、4以下の範囲となる。
【0057】
図4に示すように、変換層14は、保護層22により覆われている。保護層22は、変換層14を湿気等の水分から保護する機能を有する。保護層22の材料としては、例えば、有機膜が挙げられ、詳細には、ポリエチレンテレフタレート(PET:Polyethylene terephthalate)、ポリフェニレンサルファイド(PPS:PolyPhenylene Sulfide)、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPP:Oriented PolyPropylene)、ポリエチレンナフタレート(PEN:PolyEthylene Naphthalate)等による単層膜または積層膜が挙げられる。また、保護層22としては、PET等の絶縁性のシート(フィルム)に、アルミ箔を接着させる等してアルミを積層したアルペット(登録商標)のシートを用いてもよい。本実施形態では、固定層13を、保護層22とは異なる材質としている。
【0058】
TFT基板12、固定層13、変換層14、及び保護層22が積層された積層体19の変換層14側の面である第1の面19Aには、粘着層48により、補強基板40が設けられている。
【0059】
補強基板40は、基材11よりも剛性が高く、変換層14と対向する面に対して垂直方向に加えられる力に対する、寸法変化(変形)が、TFT基板12の第1の面12Aに対して垂直方向に加えられる力に対する、寸法変化よりも小さい。また、本実施形態の補強基板40の厚みは、基材11の厚みよりも厚い。なお、ここでいう剛性とは、補強基板40及び基材11の厚さも含めた補強基板40及び基材11の曲げ難さを意味し、剛性が高いほど曲げ難いことを表している。
【0060】
また、本実施形態の補強基板40は、降伏点を有する材料を含む基板である。なお、本実施形態において「降伏点」とは、材料を引っ張った場合に、応力が一旦、急激に下がる現象をいい、応力とひずみとの関係を表す曲線上で、降伏を示している点のことをいう。降伏点を有する樹脂としては、一般的に、硬くて粘りが強い樹脂、及び柔らかくて粘りが強く、かつ中程度の強度の樹脂が挙げられる。硬くて粘りが強い樹脂としては、例えば、ポリカーボネート(PC:Polycarbonate)、及びポリアミドが挙げられる。また、柔らかくて粘りが強く、かつ中程度の強度の樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン、及びポリプロピレンが挙げられる。
【0061】
また、本実施形態の補強基板40は、曲げ弾性率が1000MPa以上、2500MPa以下であることが好ましい。曲げ弾性率の測定方法は、例えばJIS準拠に基づく。曲げ弾性率がより低くなると、剛性のために補強基板40の厚みを厚くしなくてはならない。そのため、厚みを抑制する観点から、補強基板40は、曲げ弾性率が2000MPa以上、2500MPa以下であることがより好ましい。
【0062】
また、本実施形態の補強基板40の熱膨張率は、変換層14の材料の熱膨張率に近い方が好ましく、より好ましくは、変換層14の熱膨張率に対する補強基板40の熱膨張率の比が、0.5以上、2以下であることが好ましい。例えば、変換層14がCsI:Tlを材料とする場合、熱膨張率は、50ppm/Kである。この場合、熱膨張率が60ppm/K~80ppm/Kであるポリ塩化ビニル(PVC:Polyvinyl Chloride)、熱膨張率が70ppm/K~80ppm/Kであるアクリル、熱膨張率が65~70ppm/KであるPET、熱膨張率が65ppm/KであるPC、及び熱膨張率が45ppm/K~70ppm/Kであるテフロン(登録商標)等が、補強基板40の材料として挙げられる。さらに、上述した曲げ弾性率を考慮すると、補強基板40の材料としては、PET及びPCの少なくとも一方を含む材料であることがより好ましい。
【0063】
なお、追加補強基板で補強基板40を覆うことで、補強基板40をさらに補強してもよく、追加補強基板は、例えば、カーボン板等の剛性板であってよい。追加補強基板で変換層14の全面を覆う場合でも、追加補強基板の材質がX線吸収量の少ないカーボン等であれば、表面読取方式(ISS:Irradiation Side Sampling方式)及び裏面読取方式(PSS:Penetration Side Sampling方式)の何れの方式においてもX線ロスを抑制することができる。ここで、X線ロスとは、照射されたX線が追加補強基板に吸収されることで、変換層14に到達するX線が低減することである。追加補強基板は、補強基板40の曲げ弾性率よりも大きい曲げ弾性率を有する。
【0064】
追加補強部材の曲げ弾性率は、例えば、8000MPa以上であることが好ましい。また追加補強部材の曲げ弾性率の上限としては、60000MPa以下であることが好ましい。なお、カーボンの曲げ弾性率は、8000MPa~50000MPa程度であり、曲げ弾性率の観点からもカーボンは追加補強部材として適している。
【0065】
図3及び図4に示すように、本実施形態の補強基板40は、TFT基板12の第1の面12Aにおける、変換層14が設けられた領域よりも広い領域に設けられている。そのため、図3及び図4に示すように、補強基板40の端部は、変換層14の外周部よりも外側(TFT基板12の外周部側)に突出している。
【0066】
図4に示すように、TFT基板12の外周部には接続領域43が設けられている。接続領域43には、詳細を後述するフレキシブルケーブル112が接続されている。フレキシブルケーブル112は、駆動部103及び信号処理部104(いずれも図6参照)のいずれか一方に接続されている。本実施形態の駆動部103及び信号処理部104が、本開示の回路部の一例である。図6には、本実施形態の放射線検出器10に駆動部103及び信号処理部104が接続された状態の一例として、TFT基板12の第1の面12Aの側から見た場合の平面図を示す。
【0067】
図6に示した一例のように、TFT基板12の接続領域43には、フレキシブルケーブル112が電気的に接続される。なお、本実施形態では、フレキシブルケーブル112を含め、「ケーブル」と称する部品に関する接続は、特に言及しない限り、電気的な接続を意味する。フレキシブルケーブル112は、導体である信号線を含み、この信号線が接続領域43に接続されることにより、電気的に接続される。本実施形態のフレキシブルケーブル112は可撓性の配線の一例である。
【0068】
TFT基板12の接続領域43(43A)には、複数(図6では、4つ)のフレキシブルケーブル112の一端が、熱圧着されている。フレキシブルケーブル112は、駆動部103と走査配線38(図1参照)とを接続する機能を有する。フレキシブルケーブル112に含まれる複数の信号線は、接続領域43を介して、TFT基板12の走査配線38(図1参照)に接続される。
【0069】
一方、フレキシブルケーブル112の他端は、駆動基板202の外周の領域に設けられた接続領域243(243A)に熱圧着されている。フレキシブルケーブル112に含まれる複数の信号線は、接続領域243を介して、駆動基板202に搭載された回路及び素子等である駆動部品250と接続される。
【0070】
図6では、一例として、9個の駆動部品250(250A~250I)が駆動基板202に搭載された状態を示している。図6に示すように、本実施形態の駆動部品250は、TFT基板12の接続領域43(43A)に対応する辺に沿った方向である撓み方向Yと交差する方向である交差方向Xに沿って配置されている。
【0071】
本実施形態の駆動基板202は、可撓性のPCB(Printed Circuit Board)基板、即ち、フレキシブル基板である。駆動基板202に搭載される駆動部品250は主にデジタル信号の処理に用いられる部品(以下、「デジタル系部品」という)である。駆動部品250の例としては、デジタルバッファ、バイパスコンデンサ、プルアップ/プルダウン抵抗、ダンピング抵抗、及びEMC(Electro Magnetic Compatibility)対策チップ部品等が挙げられる。なお、駆動基板202は、必ずしもフレキシブル基板でなくてもよく、後述する、非可撓性のリジッド基板であってもよい。
【0072】
デジタル系部品は、後述するアナログ系部品よりも、比較的面積(大きさ)が小さい傾向がある。また、デジタル系部品は、アナログ系部品よりも電気的な干渉、例えば、ノイズの影響を大きく受け難い傾向がある。そのため、本実施形態では、TFT基板12が撓んだ場合に、TFT基板12の撓みに伴って撓む側の基板を、駆動部品250を搭載した駆動基板202としている。
【0073】
また、駆動基板202と接続されるフレキシブルケーブル112には、駆動回路部212が搭載されている。駆動回路部212は、フレキシブルケーブル112に含まれる複数の信号線に接続されている。
【0074】
本実施形態では、駆動基板202に搭載された駆動部品250と、駆動回路部212とにより、駆動部103が実現される。駆動回路部212は、駆動部103を実現する各種回路及び素子のうち、駆動基板202に搭載されている駆動部品250と異なる回路を含むIC(Integrated Circuit)である。
【0075】
このように、本実施形態の放射線検出器10では、フレキシブルケーブル112により、TFT基板12と駆動基板202とが電気的に接続されることにより、駆動部103と走査配線38の各々とが接続される。
【0076】
一方、TFT基板12の接続領域43(43B)には、複数(図6では、4つ)のフレキシブルケーブル112の一端が、熱圧着されている。フレキシブルケーブル112に含まれる複数の信号線は、接続領域43を介して、信号配線36(図1参照)に接続される。フレキシブルケーブル112は、信号処理部104と信号配線36(図1参照)とを接続する機能を有する。
【0077】
一方、フレキシブルケーブル112の他端は、信号処理基板304の接続領域243(243B)に設けられたコネクタ330に電気的に接続されている。フレキシブルケーブル112に含まれる複数の信号線は、コネクタ330を介して、信号処理基板304に搭載された回路及び素子等である信号処理部品350と接続される。例えばコネクタ330としては、ZIF(Zero Insertion Force)構造のコネクタや、Non-ZIF構造のコネクタが挙げられる。図6では、一例として、9個の信号処理部品350(350A~350I)が信号処理基板304に搭載された状態を示している。図6に示すように、本実施形態の信号処理部品350は、TFT基板12の接続領域43(43B)に沿った方向である交差方向Xに沿って配置されている。
【0078】
なお、本実施形態の信号処理基板304は、非可撓性のPCB基板、即ち、リジッド基板である。そのため、信号処理基板304の厚みは、駆動基板202の厚みよりも厚い。また、信号処理基板304は、駆動基板202よりも剛性が高い。
【0079】
信号処理基板304に搭載される信号処理部品350は主にアナログ信号の処理に用いられる部品(以下、「アナログ系部品」という)である。信号処理部品350の例としては、オペアンプ、アナログデジタルコンバータ(ADC)、デジタルアナログコンバータ(DAC)、電源IC等が挙げられる。また、本実施形態の信号処理部品350は、比較的部品サイズが大きい電源周辺のコイル、及び平滑用大容量コンデンサも含む。
【0080】
上述したように、アナログ系部品は、デジタル系部品よりも、比較的面積(大きさ)が大きい傾向がある。また、アナログ系部品は、デジタル系部品よりも電気的な干渉、例えば、ノイズの影響を受け易い傾向がある。そのため、本実施形態では、TFT基板12が撓んだ場合でも、撓まない(撓みの影響を受けない)側の基板を、信号処理部品350を搭載した信号処理基板304としている。
【0081】
また、信号処理基板304に接続されるフレキシブルケーブル112には、信号処理回路部314が搭載されている。信号処理回路部314は、フレキシブルケーブル112に含まれる複数の信号線に接続されている。
【0082】
本実施形態では、信号処理基板304に搭載された信号処理部品350と、信号処理回路部314とにより、信号処理部104が実現される。信号処理回路部314は、信号処理部104を実現する各種回路及び素子のうち、信号処理基板304に搭載されている信号処理部品350と異なる回路を含むICである。
【0083】
このように、本実施形態の放射線検出器10では、フレキシブルケーブル112により、TFT基板12と信号処理基板304とが電気的に接続されることにより、信号処理部104と信号配線36の各々とが接続される。
【0084】
また、図4に示した一例のように、本実施形態の放射線検出器10は、補強基板40と、TFT基板12の第1の面12Aとの間に、フレキシブルケーブル112、防湿剤44、及び粘着層45を挟んで、変換層14の側面を封止するスペーサ46が設けられている。
【0085】
スペーサ46を設ける方法は特に限定されず、例えば、補強基板40の端部の粘着層48に、スペーサ46を貼り付けておき、スペーサ46が設けられた状態の補強基板40を、積層体19、フレキシブルケーブル112、防湿剤44、及び粘着層45が設けられた状態のTFT基板12に貼り付けることで、スペーサ46をTFT基板12と補強基板40との間に設けてもよい。なお、スペーサ46の幅(積層体19の積層方向と交差する方向の幅)は、図4に示した例に限定されない。例えば、図4に示した例よりも変換層14に近い位置までスペーサ46の幅が拡がっていてもよい。また、スペーサ46はTFT基板12の第1の面12A上に樹脂やセラミックなどをコーキングして形成してもよい。
【0086】
また、本実施形態のTFT基板12の第2の面12Bには、湿気等の水分から保護する機能を有する保護膜42が設けられている。保護膜42の材料としては、例えば、保護層22と同様の材料が挙げられる。
【0087】
本実施形態の放射線検出器10の製造方法の一例としては、以下の方法が挙げられる。図4図7及び図8を参照して、本実施形態の放射線検出器10の製造方法の一例を説明する。なお、図8では、駆動基板202に接続されるフレキシブルケーブル112が6つの場合について示している。
【0088】
予め、放射線検出器10の大きさに合わせた所望の大きさとした補強基板40に、粘着層48を塗布し、粘着層48にスペーサ46を設けた状態のものを準備しておく。
【0089】
一方、図7に示すように、基材11に比べて厚さの厚いガラス基板等の支持体400に、剥離層を介して、基材11が形成される。基材11におけるTFT基板12の第2の面12Bに対応する面が剥離層に接する。
【0090】
さらに、図4に示すように、基材11の画素領域35に、複数の画素30を含むセンサ部層50が形成される。なお、本実施形態では、一例として、基材11の画素領域35に、SiN等を用いたアンダーコート層を介して、センサ部層50が形成される。
【0091】
さらに、センサ部層50の上に、変換層14が形成される。本実施形態では、まず、TFT基板12の第1の面12Aにおけるセンサ部層50の変換層14側の面の全面から、センサ部層50の端面を介して、基材11のセンサ部層50側の面の一部までの領域に、固定層13を形成する。その後、TFT基板12上、より詳細には固定層13上に直接、真空蒸着法、スパッタリング法、及びCVD(Chemical Vapor Deposition)法等の気相堆積法によって柱状結晶としてCsIの変換層14が形成される。この場合、変換層14における画素30と接する側が、柱状結晶の成長方向基点側となる。
【0092】
なお、このように、固定層13上に直接、気相堆積法によってCsIの変換層14を設けた場合、変換層14の固定層13と接する側と反対側の面には、例えば、変換層14で変換した光を反射する機能を有する反射層が設けられていてもよい。反射層は、変換層14に直接設けられてもよいし、密着層等を介して設けられてもよい。反射層の材料としては、有機系の材料を用いたものが好ましく、例えば、白PET、TiO、Al、発泡白PET、ポリエステル系高反射シート、及び鏡面反射アルミ等の少なくとも1つを材料として用いたものが好ましい。特に、反射率の観点から、白PETを材料として用いたものが好ましい。なお、ポリエステル系高反射シートとは、薄いポリエステルのシートを複数重ねた多層構造を有するシート(フィルム)である。
【0093】
また、変換層14としてCsIのシンチレータを用いる場合、本実施形態と異なる方法で、TFT基板12(固定層13)に変換層14を形成することもできる。例えば、アルミの板等に気相堆積法によってCsIを蒸着させたものを用意し、CsIのアルミの板と接していない側と、TFT基板12(固定層13)とを粘着性のシート等により貼り合わせることにより、TFT基板12(固定層13)に変換層14を形成してもよい。この場合、アルミの板も含めた状態の変換層14全体を保護膜により覆った状態のものを、TFT基板12(固定層13)と貼り合わせることが好ましい。なお、この場合、変換層14における固定層13と接する側が、柱状結晶の成長方向の先端側となる。
【0094】
また、本実施形態の放射線検出器10と異なり、変換層14としてCsIに替わり、GOS(GdS:Tb)等を用いてもよい。この場合、例えば、GOSを樹脂等のバインダに分散させたシートを、白PET等により形成された支持体に粘着層等により貼り合わせたものを用意し、GOSの支持体が貼り合わせられていない側と、TFT基板12(固定層13)とを粘着性のシート等により貼り合わせることにより、TFT基板12に変換層14を形成することができる。なお、変換層14にCsIを用いる場合の方が、GOSを用いる場合に比べて、放射線から可視光への変換効率が高くなる。
【0095】
さらに、TFT基板12の接続領域43(43A及び43B)にフレキシブルケーブル112を熱圧着し、フレキシブルケーブル112に含まれる複数の信号線とTFT基板12の接続領域43(43A及び43B)とを電気的に接続させる。
【0096】
さらに、駆動基板202の接続領域243(243A)にフレキシブルケーブル112を熱圧着し、フレキシブルケーブル112に含まれる複数の信号線と駆動基板202に搭載された駆動部品250とを電気的に接続させる。
【0097】
そして、予め準備しておいた、スペーサ46が設けられた補強基板40を、変換層14が形成され、フレキシブルケーブル112が接続されたTFT基板12に貼り合わせることで、変換層14を封止する。なお、上記の貼り合わせを行う場合は、大気圧下または、減圧下(真空下)で行うが、貼り合わせた間に空気等が入り込むのを抑制するために、減圧下で行うことが好ましい。
【0098】
この後、図8に示すように放射線検出器10を支持体400から剥離する。メカニカル剥離により剥離を行う場合、図8に示した一例では、TFT基板12における、フレキシブルケーブル112が接続された辺と対向する辺を剥離の起点とし、起点となる辺からフレキシブルケーブル112が接続された辺に向けて徐々にTFT基板12を支持体400から、図8に示した矢印D方向に引き剥がすことにより、メカニカル剥離を行い、フレキシブルケーブル112が接続された状態の放射線検出器10が得られる。
【0099】
なお、剥離の起点とする辺は、TFT基板12を平面視した場合における、最長の辺と交差する辺が好ましい。即ち、剥離により撓みが生じる撓み方向Yに沿った辺は、最長の辺であることが好ましい。本実施形態では、駆動基板202がフレキシブルケーブル112により接続される辺の方が、信号処理基板304がフレキシブルケーブル112により接続される辺よりも長い。そのため、剥離の起点を、接続領域43(43B)が設けられた辺と対向する辺としている。
【0100】
本実施形態では、さらに、支持体400からTFT基板12を剥離した後、放射線検出器10のフレキシブルケーブル112と、信号処理基板304のコネクタ330とを電気的に接続する。このようにして本実施形態では、図3図5に一例を示した放射線検出器10が製造される。
【0101】
なお、放射線検出器10の製造方法は本実施形態に限定されず、放射線検出器10のフレキシブルケーブル112と、信号処理基板304のコネクタ330とを電気的に接続させた後、上記メカニカル剥離を行ってもよい。
【0102】
メカニカル剥離を行うにあたり、本実施形態の放射線画像撮影装置1(後述する図15参照)では、図8に示したように、駆動基板202がフレキシブルな基板であるため、TFT基板12の撓みに応じて駆動基板202も撓む。
【0103】
ここで、支持体400からTFT基板12を剥離する場合、基材11が可撓性を有するため、TFT基板12が撓み易い。TFT基板12が大きく撓んだ場合、変換層14も大きく撓み、この結果、変換層14がTFT基板12から剥離されてしまう懸念がある。特に、変換層14の端部がTFT基板12から剥離し易くなる。
【0104】
また、支持体400からTFT基板12を剥離する場合に限らず、放射線画像撮影装置1の製造工程の途中等の放射線検出器10が単体で扱われる場合にも、TFT基板12が撓むことにより、変換層14がTFT基板12から剥離されてしまう懸念がある。これに対して、本実施形態の放射線検出器10では、降伏点を有する材料を含み、基材11よりも剛性が高い補強基板40が、TFT基板12の第1の面12Aと対向する側の面である、第1の面19Aに設けられている。そのため、本実施形態の放射線検出器10によれば、TFT基板12が大きく撓むことを抑制することができ、変換層14がTFT基板12から剥離するのを抑制することができる。
【0105】
また、上述したように、ポリイミド等の可撓性基板は、ガラス基板に比べて熱伝導率が低く、比熱が高いため、放射線検出器10の製造工程においては、可撓性基板に熱が加わった場合に熱が逃げ難い。また、放射線検出器10が内蔵された放射線画像撮影装置1を使用する場合に、可撓性基板に熱が滞留し易く、温度が高くなりやすい傾向がある。可撓性基板の温度が上昇すると熱膨張が発生し、可撓性基板の反りが発生し、この結果、センサ部層50が基材11から剥離する場合があった。
【0106】
これに対して、本実施形態の放射線検出器10では、固定層13によってセンサ部層50を基材11に固定している。このため、本実施形態の放射線検出器10では、センサ部層50の基材11からの剥離の発生を抑制することができる。
【0107】
また、本実施形態の放射線検出器10では、固定層13が樹脂を含むものとされているので、固定層13を金属等によって構成する場合に比較して、放射線検出器10を軽量化することができる。
【0108】
特に、本実施形態の放射線検出器10では、固定層13がセンサ部層50の端部においてセンサ部層50を基材11に固定しているので、センサ部層50の底面部を基材11に直接固定する場合に比較して、効率よく固定することができる。
【0109】
さらに、本実施形態の放射線検出器10では、固定層13が、センサ部層50の変換層14側の面の全面から、センサ部層50の端面を介して、基材11のセンサ部層50側の面までの領域を覆うことによりセンサ部層50を基材11に固定している。このため、固定層13が、センサ部層50の変換層14側の面の一部の領域のみを覆う場合に比較して、より強固にセンサ部層50を基材11に固定することができる。
【0110】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。図9には、本実施形態の放射線検出器10の一例の断面図を示す。
【0111】
図9に示すように、本実施形態の放射線検出器10では、TFT基板12側の第2の面12Bに、補強部材41が設けられている。本実施形態の放射線検出器10では、図9に示すように、TFT基板12と補強部材41との間には、上記実施形態と同様に、保護膜42が設けられている。
【0112】
補強部材41は、補強基板40と同様に、基材11よりも剛性が高く、第1の面12Aに対して垂直方向に加えられる力に対する、寸法変化(変形)が、基材11における第1の面12Bに対して垂直方向に加えられる力に対する、寸法変化よりも小さい。また、本実施形態の補強部材41の厚みは、基材11の厚みよりも厚く、補強基板40の厚みよりも薄い。本実施形態の補強部材41の材料としては、熱可塑性の樹脂であることが好ましく、補強基板40と同様の材料を用いることができる。なお、ここでいう剛性も、補強部材41及び基材11の厚さも含めた補強部材41及び基材11の曲げ難さを意味し、剛性が高いほど曲げ難いことを表している。補強部材41の曲げ弾性率も、補強基板40と同様に、1000MPa以上2500MPa以下であることが好ましい。
【0113】
なお、追加補強部材で補強部材41をさらに補強してもよく、追加補強部材は、例えば、カーボン板等の剛性板であってよい。追加補強部材で変換層14の全面を覆う場合でも、追加補強部材の材質がX線吸収量の少ないカーボン等であれば、表面読取方式及び裏面読取方式の何れの方式においてもX線ロスを抑制することができる。ここで、X線ロスとは、照射されたX線が追加補強部材に吸収されることで、変換層14に到達するX線が低減することである。追加補強部材は、補強部材41の曲げ弾性率よりも大きい曲げ弾性率を有する。追加補強部材の曲げ弾性率は、例えば、8000MPa以上であることが好ましい。また追加補強部材の曲げ弾性率の上限としては、60000MPa以下であることが好ましい。なお、カーボンの曲げ弾性率は、8000MPa~50000MPa程度であり、曲げ弾性率の観点からもカーボンは追加補強部材として適している。
【0114】
本実施形態の放射線検出器10は、例えば、第1実施形態において上述した放射線検出器10の製造方法と同様の製造方法により、積層体19が設けられたTFT基板12に、スペーサ46が設けられた補強基板40を貼り合わせた後、支持体400からTFT基板12を剥離する。その後、TFT基板12の第2の面12Bに、保護膜42及び補強部材41を塗布等により設けることにより、本実施形態の放射線検出器10を製造することができる。
【0115】
本実施形態の放射線検出器10では、TFT基板12の、センサ部層50が形成された第1の面12Aと対向する第2の面12Bに、基材11よりも剛性が高い補強部材41が設けられている。そのため、第1実施形態の放射線検出器10よりもさらに、TFT基板12が大きく撓むことを抑制することができ、変換層14及びセンサ部層50がTFT基板12から剥離するのを抑制することができる。
【0116】
また、例えば、変換層14の熱膨張率と、補強基板40の熱膨張率との差が比較的大きい場合、TFT基板12が反り返り易くなる。これに対して本実施形態の放射線検出器10では、TFT基板12を補強基板40と補強部材41とで挟むため、熱膨張率の差等により、TFT基板12が反り返るのを抑制することができる。
【0117】
[第3実施形態]
上記各実施形態では、本開示の固定部材としての固定層13が、センサ部層50の変換層14側の面の全面を覆っている形態について例示したが、本開示の固定部材は、この形態には限らない。例えば、固定部材として、センサ部層50の変換層14側の面の一部から、センサ部層50の端面を介して、基材11のセンサ部層50側の面の一部までの領域を覆うことにより、センサ部層50を基材11に固定する形態としてもよい。
【0118】
図10には、本実施形態の放射線検出器10の一例の断面図を示す。なお、図10における図4と同一の構成要素には、図4と同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0119】
図10に示すように、本実施形態に係る放射線検出器10は、第1実施形態の放射線検出器10における固定層13に代えて、センサ部層50の変換層14側の面に関しては、センサ部層50の外周部の近傍のみを覆う固定部材13Bとされている点のみが異なっている。
【0120】
本実施形態に係る放射線検出器10では、図10に示すように、固定部材13Bが、変換層14の外周部よりも外側の位置を、センサ部層50の変換層14側の面における端部の位置としている。このため、本実施形態に係る変換層14は、センサ部層50の上面に直接、形成される。但し、この形態に限らず、固定部材13Bが、変換層14の外周部よりも内側の位置を、センサ部層50の変換層14側の面における端部の位置とする形態としてもよい。なお、この形態における固定部材13の形成方法は、上記各実施形態に係る固定層13と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0121】
図11及び図12には、本第3実施形態に係る固定部材13Bの変形例が示されている。なお、図11及び図12は、放射線検出器10を補強基板40側から見た場合の平面図である。また、図11及び図12では、錯綜を回避するために、放射線検出器10の要部(基材11、固定部材13C(13D)、センサ部層50、変換層14)のみを示している。
【0122】
図11に示す例は、固定部材13Cが、平面視矩形状のセンサ部層50の4角点の各々のみを個別に固定する形態である。また、図12に示す例では、固定部材13Dが、平面視矩形状のセンサ部層50の各対角間に亘るように、平面視X状に設けられている。なお、固定部材13C及び固定部材13Dの基材11側の端部の位置は、上記各実施形態に係る固定層13と同様である。この形態における固定部材13の形成方法もまた、上記各実施形態に係る固定層13と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0123】
第3実施形態、図11図12に示した形態では、固定部材が、センサ部層50の変換層14側の面の一部から、センサ部層50の端面を介して、基材11のセンサ部層50側の面までの領域を覆うことによりセンサ部層50を基材11に固定している。このため、固定層13が、センサ部層50の変換層14側の面の全面を覆う場合に比較して、放射線検出器10によって得られる放射線画像の画質を向上させることができる。
【0124】
なお、補強基板40の大きさは、上記各実施形態に限定されない。例えば、図13に示した一例のように、補強基板40及び粘着層48の端部(外周)と、保護層22の端部(外周)とが同様の位置であってもよい。なお、変換層14がTFT基板12の第1の面12Aを覆う領域よりも広い領域を補強基板40により覆うことが好ましく、変換層14の上面全体を覆う領域よりも広い領域を補強基板40により覆うことがより好ましい。
【0125】
また、図14に示した一例のように、基材11と画素30、特に画素30のTFT32のゲート電極80との間には、無機材料による層90が設けられていることが好ましい。図14に示した一例の場合の無機材料としては、SiNxや、SiOx等が挙げられる。TFT32のドレイン電極81と、ソース電極82とは同じ層に形成されており、ドレイン電極81及びソース電極82が形成された層と、基材11との間にゲート電極80が形成されている。また、基材11とゲート電極80との間に、無機材料による層90が設けられている。
【0126】
また、上記各実施形態では、図1に示したように画素30がマトリクス状に2次元配列されている態様について説明したが、これに限らず、例えば、1次元配列であってもよいし、ハニカム配列であってもよい。また、画素の形状も限定されず、矩形であってもよいし、六角形等の多角形であってもよい。さらに、センサ部層50の形状も限定されない。
【0127】
また、変換層14の形状等も上記各実施形態に限定されない。上記各実施形態では、変換層14の形状がセンサ部層50の形状と同様に矩形状である態様について説明したが、変換層14の形状は、センサ部層50と同様の形状でなくてもよい。また、センサ部層50の形状が、矩形状ではなく、例えば、その他の多角形であってもよいし、円形であってもよい。
【0128】
また、上述した放射線検出器10の製造方法では、TFT基板12を、支持体400からメカニカル剥離により、剥離する工程について説明したが、剥離方法は、説明した形態に限定されない。例えば、支持体400のTFT基板12が形成されている反対側の面からレーザを照射して、TFT基板12の剥離を行う、いわゆる、レーザ剥離を行う形態としてもよい。この場合であっても、放射線検出器10によれば、TFT基板12を支持体400から剥離した後、放射線検出器10が単体で扱われる場合に、変換層14及びセンサ部層50がTFT基板12から剥離するのを抑制することができる。
【0129】
なお、上記各実施形態の放射線検出器10は、TFT基板12側から放射線が照射される表面読取方式の放射線画像撮影装置に適用してもよいし、変換層14側から放射線が照射される裏面読取方式の放射線画像撮影装置に適用してもよい。
【0130】
図15には、表面読取方式の放射線画像撮影装置1に第1実施形態の放射線検出器10を適用した状態の一例の断面図を示す。
【0131】
図15に示すように、筐体120内には、放射線検出器10、電源部108、及び制御基板110が放射線の入射方向と交差する方向に並んで設けられている。放射線検出器10は、被写体を透過した放射線が照射される筐体120の撮影面120A側に、センサ部層50の変換層14が設けられていない側が対向するように設けられている。
【0132】
制御基板110は、センサ部層50の画素30から読み出された電荷に応じた画像データを記憶する画像メモリ380や画素30からの電荷の読み出し等を制御する制御部382等が形成された基板であり、複数の信号配線を含むフレキシブルケーブル112によりセンサ部層50の画素30と電気的に接続されている。なお、図15に示した放射線画像撮影装置1では、制御部382の制御により画素30のTFT32のスイッチング状態を制御する駆動部103、及び画素30から読み出された電荷に応じた画像データを生成して出力する信号処理部104がフレキシブルケーブル112上に設けられた、いわゆる、COF(Chip On Film)としているが、駆動部103及び信号処理部104の少なくとも一方が制御基板110に形成されていてもよい。
【0133】
また、制御基板110は、電源線114により、制御基板110に形成された画像メモリ380や制御部382等に電力を供給する電源部108と接続されている。なお、制御部382は、ハードウェアのプロセッサを含む。プロセッサは、制御プログラムをROM(Read Only Memory)などのメモリからロードして実行することで機能するCPU(Central Processing Unit)などであってもよいし、予め機能が設定されているASIC(Application Specific Integrated Circuit)などであってもよい。
【0134】
図15に示した放射線画像撮影装置1の筐体120内には、放射線検出器10を透過した放射線が出射される側にシート116がさらに設けられている。シート116としては、例えば、銅製のシートが挙げられる。銅製のシートは入射された放射線による2次放射線を発生し難くすることによって、後方、すなわち変換層14側への散乱を防止する機能を有する。なお、シート116は、少なくとも変換層14の放射線が出射する側の面全体を覆うことが好ましく、また、変換層14全体を覆うことが、より好ましい。
【0135】
また、図15に示した放射線画像撮影装置1の筐体120内には、放射線が入射される側(撮影面120A側)に保護層117がさらに設けられている。保護層117としては、絶縁性のシート(フィルム)に、アルミ箔を接着させる等してアルミを積層したアルペット(登録商標)のシート、パリレン(登録商標)膜、及びポリエチレンテレフタレート等の絶縁性のシート等の防湿膜が適用できる。保護層117は、センサ部層50に対する防湿機能及び帯電防止機能を有している。そのため、保護層117は、少なくともセンサ部層50の放射線が入射される側の面全体を覆うことが好ましく、放射線が入射される側のTFT基板12の面全体を覆うことが、より好ましい。
【0136】
なお、図15では、電源部108及び制御基板110の両方を放射線検出器10の一方の側、詳細には、矩形状のセンサ部層50の一方の辺の側に設けた形態を示したが、電源部108及び制御基板110を設ける位置は図15に示した形態に限定されない。例えば、電源部108及び制御基板110を、センサ部層50の対向する2辺の各々に分散させて設けてもよいし、隣接する2辺の各々に分散させて設けてもよい。
【0137】
また、図16には、表面読取方式の放射線画像撮影装置1に第1実施形態の放射線検出器10を適用した状態の他の例の断面図を示す。
【0138】
図16に示すように、筐体120内には、電源部108及び制御基板110が放射線の入射方向と交差する方向に並んで設けられており、放射線検出器10と電源部108及び制御基板110とは放射線の入射方向に並んで設けられている。
【0139】
また、図16に示した放射線画像撮影装置1では、制御基板110及び電源部108とシート116との間に、放射線検出器10及び制御基板110を支持する基台118が設けられている。基台118には、例えば、カーボン等が用いられる。
【0140】
その他、上記各実施形態で説明した放射線検出器10等の構成や製造方法等は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において状況に応じて変更可能である。
【0141】
本願は2018年9月27日出願の日本出願第2018-182729号の優先権を主張すると共に、その全文を参照により本明細書に援用する。
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