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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-17
(45)【発行日】2022-08-25
(54)【発明の名称】外用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/10 20060101AFI20220818BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20220818BHJP
【FI】
A61K47/10
A61K9/08
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018102779
(22)【出願日】2018-05-29
(65)【公開番号】P2019206493
(43)【公開日】2019-12-05
【審査請求日】2021-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】小原 文太
(72)【発明者】
【氏名】井上 喬允
【審査官】高橋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0159632(US,A1)
【文献】特開2017-114818(JP,A)
【文献】特開2012-017316(JP,A)
【文献】国際公開第2011/010732(WO,A1)
【文献】特開2011-111418(JP,A)
【文献】国際公開第2016/067283(WO,A1)
【文献】特開2001-089359(JP,A)
【文献】特開平02-264714(JP,A)
【文献】特開2019-206492(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00
A61K 47/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)日本薬局方に収載されているグリセリンと、(B)日本薬局方に収載されている濃グリセリンと、前記(A)成分及び前記(B)成分以外の他の多価アルコールと、増粘剤とを含有し、且つ吐出容器に収容される、外用組成物。
【請求項2】
前記吐出容器は、容器内部から吐出口に連通する流路にメッシュが設けられていない、請求項1に記載の外用組成物。
【請求項3】
前記(A)成分100重量部に対して、前記(B)成分が1~100重量部である、請求項1又は2に記載の外用組成物。
【請求項4】
25℃での粘度が600~1450cPである、請求項1~3のいずれか一項に記載の外用組成物。
【請求項5】
咽喉頭粘膜に適用される、請求項1~4のいずれか一項に記載の外用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出容器からの吐出性に優れる外用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、液状外用組成物の性状の調整を、増粘剤等により行うことが知られている。具体的には、適用部位での効果を高めることを目的として滞留性を向上させる場合に、増粘剤等により粘度を増加させることが有効であると考えられる。例えば、特許文献1には、ピリチオン類、カルボキシメチルセルロースナトリウム、並びに、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム及びポリアクリル酸ナトリウムの群から選ばれる1種以上の粘結剤を含有する口腔用組成物が、ピリチオン類の口腔内の残留性を高めることができることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-322922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
外用組成物は、吐出容器に収容され、吐出によって目的部位に適用するように構成されることがある。しかしながら、適用部位によっては、求める滞留性を満たす程度まで増粘させた外用組成物は、吐出容器に収容したとしても、粘性が高すぎて吐出性が悪くなる問題がある。吐出容器からの吐出性が悪いと、吐出口で外用組成物が詰まったり、吐出口から外用組成物が吐出されたとしても液滴が十分に飛ばなかったりすることで、目的部位に効果的に適用することが出来なくなる。
【0005】
そこで本発明は、吐出容器からの吐出性に優れた外用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は鋭意検討の結果、吐出容器に収容する外用組成物において、グリセリンと濃グリセリンとを組み合わせることによって、吐出容器からの吐出性が向上することを見出した。本発明は、この知見に基づいてさらに検討を重ねることにより完成したものである。
【0007】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. (A)日本薬局方に収載されているグリセリンと、(B)日本薬局方に収載されている濃グリセリンとを含有し、且つ吐出容器に収容される、外用組成物。
項2. 前記吐出容器は、容器内部から吐出口に連通する流路にメッシュが設けられていない、項1に記載の外用組成物。
項3. 前記(A)成分100重量部に対して、前記(B)成分が1~100重量部である、項1又は2に記載の外用組成物。
項4. 25℃での粘度が600~1450cPである、項1~3のいずれかに記載の外用組成物。
項5. 咽喉頭粘膜に適用される、項1~4のいずれかに記載の外用組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、吐出容器からの吐出性に優れた外用組成物が提供されるため、適用部位での効果を有効に高めることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の外用組成物は、(A)日本薬局方に収載されているグリセリン(以下「(A)成分」とも記載する)と、(B)日本薬局方に収載されている濃グリセリン(以下「(B)成分」とも記載する)とを含有し、且つ吐出容器に収容されることを特徴とする。以下、本発明の外用組成物について詳述する。
【0010】
(A)グリセリン
本発明の外用組成物は、(A)成分として、日本薬局方に収載されているグリセリンを含有する。本発明の外用組成物において、(A)成分は、後述の(B)成分と組み合わせられることで、吐出性を向上させることができる。
【0011】
(A)成分は、日本薬局方に記載の方法で定量するとき、グリセリン(C383)84.0~87.0%を含む。
【0012】
本発明の外用組成物において、(A)成分の含有量については、特に限定されないが、外用組成物の吐出性を良好に得る観点から、例えば、5~70重量%、好ましくは10~60重量%、より好ましくは15~50重量%が挙げられる。
【0013】
(B)濃グリセリン
本発明の外用組成物は、(B)成分として、日本薬局方に収載されている濃グリセリンを含有する。本発明の外用組成物において、(B)成分は、(A)成分と組み合わせられることで、吐出性を向上させることができる。
【0014】
(B)成分は、日本薬局方に記載の方法で定量するとき、換算した脱水物に対し、グリセリン(C383)98.0~101.0%を含む。
【0015】
本発明の外用組成物において、(B)成分の含有量については、特に限定されないが、外用組成物の吐出性を良好に得る観点から、例えば、0.1~50重量%、好ましくは0.3~40重量%、より好ましくは0.5~20重量%が挙げられる。
【0016】
また、本発明の外用組成物において、(B)成分の含有量は、外用組成物中(A)成分及び(B)成分に由来するグリセリン(C383)純分の総量が、例えば、5~70重量%、好ましくは10~60重量%、より好ましくは25~45重量%となるように含ませることができる。
【0017】
さらに、本発明の外用組成物において、(A)成分と(B)成分との比率については、前述する各含有量に応じて定まるが、外用組成物の吐出性をより向上させる観点から、(A)成分100重量部に対して(B)成分の含有量が例えば1~100重量部、好ましくは1.2~90重量部、より好ましくは1.5~40重量部、さらに好ましくは1.5~15重量部、一層好ましくは2~5重量部が挙げられる。
【0018】
他の多価アルコール
本発明の外用組成物は、必要に応じて上記(A)成分及び(B)成分以外の他の多価アルコールを含有することができる。他の多価アルコールとしては、薬学的又は香粧学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、1,3-ブチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、イソプレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール等が挙げられる。
【0019】
前記ポリエチレングリコールの平均分子量については、特に制限されないが、例えば、ポリエチレングリコールとして、ポリエチレングリコール200、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール600、ポリエチレングリコール800等を使用することができる。
【0020】
これらの他の多価アルコールの中でも、外用組成物の吐出性をより向上させる観点から、好ましくは、プロピレングリコール、ソルビトールが挙げられる。
【0021】
これらの他の多価アルコールは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0022】
本発明の外用組成物に他の多価アルコールを含ませる場合、その含有量としては特に限定されないが、外用組成物の吐出性をより向上させる観点から、例えば5~50重量%、好ましくは20~40重量%が挙げられる。
【0023】
増粘剤
本発明の外用組成物には、必要に応じて増粘剤を含ませることができる。増粘剤としては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、キサンタンガム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ベントナイト、アルギン酸、マクロゴール、コンドロイチン硫酸ナトリウム、カルボキシエチルセルロース等が挙げられ、好ましくは、ヒドロキシエチルセルロースが挙げられる。これらの増粘剤は、1種を単独で使用してもよし、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0024】
本発明の外用組成物に増粘剤を含ませる場合、その含有量としては、外用組成物を、本発明の効果を損なわない範囲内で使用することができ、例えば、0.65重量%以下、好ましくは0.60重量%以下が挙げられる。
【0025】

本発明の外用組成物は、更に、水を含有することができる。水としては特に制限されず、精製水、蒸留水、イオン交換水、超純水、滅菌水などが挙げられ、好ましくは精製水が挙げられる。本発明の外用組成物に水を含有させる場合、その含有量については、設定すべき粘度等に応じて適宜設定すればよいが、例えば5~50重量%、好ましくは15~45重量%、より好ましくは20~40重量%が挙げられる。
【0026】
その他の成分
本発明の外用組成物には、本発明の効果を損なわない範囲であれば、他の成分を適宜選択し配合することができる。例えば、薬効成分、界面活性剤(ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤等)、希釈剤、可溶化剤、pH調整剤、粘度調整剤、安定化剤、防腐剤、矯味剤(甘味料を含む)、矯臭剤(香料を含む)、着色料等が挙げられる。
【0027】
薬効成分としては、ヨウ素系殺菌成分(例えば、ヨウ素、ポビドンヨード、ノノキシノールヨード及びフェノキシヨード等)、気管支拡張薬、鎮咳薬、去痰薬、消炎薬、解熱鎮痛薬、抗ヒスタミン薬、殺菌剤、胃粘膜保護薬、カフェイン類、ビタミン薬、漢方薬、生薬成分を挙げることができる。
【0028】
粘度
本発明の外用組成物の粘度は、本発明の効果を損なわないことを限度として特に限定されないが、例えば、25℃での粘度が600~1450cP、好ましくは800~1450cP、より好ましくは1000~1450cPとなるように設定することができる。
【0029】
本明細書において、25℃での粘度とは、25℃の温度条件下でブルックフィールド型(B型)回転粘度計を用いて測定される値であり、スピンドル番号T-C93、回転数20rpmの測定条件で、回転開始から60秒後に測定される。
【0030】
製剤形態
本発明の外用組成物の製剤形態については、スプレーで吐出可能であることを限度として特に制限されず、具体的には、液剤及びジェル剤が挙げられる。このような製剤形態への調製は、第十七改正日本薬局方製剤総則等に記載の公知の方法に従って、製剤形態に応じた添加剤を用いて製剤化することにより行うことができる。
【0031】
吐出容器
本発明の外用組成物は、吐出容器に収容される。吐出容器とは吐出機構を備える容器であり、容器部と吐出部を含み、好ましくは、吐出部から外用組成物を直接適用部位に吐出するように構成される。適用部位としては、口腔内粘膜、特に咽喉頭粘膜が挙げられる。特に、容器内部から吐出口に連通する流路にメッシュが設けられていない容器は、吐出口から吐出された外用組成物が霧状等の態様で広がることなく、局所的な適用部位を狙って吐出できる点で好ましい。
【0032】
吐出容器としては、具体的には、例えばトリガータイプの吐出容器、及びプッシュポンプタイプの吐出容器が挙げられる。より具体的には、特開2002-362605号公報、開2004-834号公報、特開2004-359242号公報、特開2004-359241号公報、特開2004-359238号公報、特開2004-352343号公報、特開2004-352333号公報、特開2007-277125号公報、及び特開2014-141288号公報などに記載されている吐出容器が挙げられる。これらの突出容器の中でも、特開2014-141288号公報に記載される吐出容器のように、突出部が延長ノズル形状を有する吐出容器は、適用部位が咽喉頭粘膜等の通常では塗布困難な場所でも外用組成物を容易に到達させ、使用実感が得られやすい点で好ましい。例えば販売名「のどぬーるスプレーB」(小林製薬株式会社製)において使用されている容器を用いてもよい。当該延長ノズルの長さは、好ましくは1~8cm、より好ましくは2~7cm、さらに好ましくは4~7cmであり、また延長ノズルの吐出口は直径0.2~1.5mmである。本発明の外用組成物は、吐出性が良好であるため、延長ノズルのように流路が長く且つ吐出口の径が小さい場合であっても、詰まりを抑制し容易に外用組成物の吐出が可能となる。
【0033】
使用態様
発明の外用組成物は、吐出容器を動作させて適用すべき部位に外用投与することにより使用される。好ましくは、吐出容器の吐出部から外用組成物を直接適用部位に向かって吐出する。適用部位としては、外皮であれば特に限定されないが、好ましくは口腔内粘膜、特に咽喉頭粘膜が挙げられる。吐出容器を一回動作させた場合の外用組成物の射出量としては特に限定されないが、通常0.01~3mL、好ましくは0.0.3~1mL、より好ましくは0.05~0.3mLが挙げられる。本発明の外用組成物の投与量としては、適用部位、及び処置すべき症状の程度等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、1回当たり0.03~1mL、1日1~3回が挙げられる。
【0034】
本発明の外用組成物は、好ましくは、上記適用部位(好ましくは口腔内粘膜、特に咽喉頭粘膜)の殺菌、消毒、治療等の目的で使用することができる。
【実施例
【0035】
以下に実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0036】
試験例1
表1に示す組成の外用組成物を調製した。具体的には、実施例においては、グリセリン、他の多価アルコール(プロピレングリコール及び70重量%ソルビトール)及び精製水を混合し、均一になるまで攪拌した。さらに、濃グリセリンを加えて混合し、均一になるまで攪拌した。最後に、ヒドロキシエチルセルロースを少しずつ添加して均一になるまで攪拌した。比較例においては、グリセリン又は濃グリセリンを用いなかったことを除いて上記の実施例の調製方法と同様に外用組成物を調製した。なお、表1において各成分の量を示す数値の単位は、重量%である。得られた外用組成物を、以下の粘度測定、及び吐出性試験に供した。
【0037】
(25℃での粘度)
以下の測定条件で、外用組成物の粘度を測定した。
測定装置:ブルックフィールドDV-II+(B型粘度計)
気温:25℃
スピンドル:T-C93
回転数:20rpm(回転開始から60秒後に測定)
【0038】
(吐出性)
外用組成物を「のどぬーるスプレーB」(小林製薬株式会社製)容器に充てんし、吐出口をのどの方向に向け、上部ポンプを押して3回噴射した。10名の被験者のうち、「のどにしっかりと外用組成物が当たった」か否(外用組成物が舌の上に落ちた、のどまで到達しなかった等)かについて官能評価してもらい、「のどにしっかりと外用組成物が当たった」と評価した人数を吐出性評価のスコアとした。
【0039】
得られた結果を下記表1に示す。表1から明らかなように、比較例1~3及び実施例1~4で、グリセリン純分が同じであるにも関わらず、グリセリンと濃グリセリンとのうちいずれか一方のみを含む場合(比較例1~3)は、吐出性が悪い一方で、グリセリンと濃グリセリンとを両方含む場合(実施例1~4)で、吐出性が向上した。このように、グリセリン純分が同じでグリセリンと濃グリセリンとの両方を含む場合のみで吐出性が向上する傾向は、複数回の試験によるいずれの結果においても同じであり、再現性のある傾向であることを確認した。また、グリセリン純分を保ったままで、濃グリセリン含有量を25重量%、30重量%に変更した場合においては、粘度が上昇したにも関わらず吐出性評価のスコアは6であり、やはり良好な吐出性を示した。
【0040】
【表1】