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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-17
(45)【発行日】2022-08-25
(54)【発明の名称】吸収性物品包装体
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/15 20060101AFI20220818BHJP
【FI】
A61F13/15 220
A61F13/15 143
A61F13/15 144
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018126298
(22)【出願日】2018-07-02
(65)【公開番号】P2020005666
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-04-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】植田 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】谷尾 俊幸
(72)【発明者】
【氏名】松木 俊理
(72)【発明者】
【氏名】横市 綾
【審査官】森本 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-525245(JP,A)
【文献】特開2010-264078(JP,A)
【文献】特開2016-209202(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収性物品と、前記吸収性物品を包装する包装材とを備え、
前記包装材は、少なくとも第1層、第2層、及び前記第1層と前記第2層の間に位置する中間層を有しており、
前記包装材が前記包装材の折り線方向に沿って折り畳まれて、前記吸収性物品が包装された状態となっており、
前記包装材の前記折り線方向の端部が溶着された吸収性物品包装体であって、
前記包装材の厚みが、4μm以上であり、20μm未満であり、
前記吸収性物品は、揮発性物質を有しており、
前記中間層は、前記揮発性物質の揮発を防ぐための保護層であり、
前記第1層又は前記第2層の少なくとも一方の層は、前記中間層に接着することができる接着性の接着物質を有し、
前記一方の層のうち、前記中間層と反対側の面は、前記中間層側の面より前記接着物質が少ないことを特徴とする吸収性物品包装体。
【請求項2】
請求項1に記載の吸収性物品包装体であって、
前記一方の層のうち前記端部に対応する部分は、前記接着物質を備えていることを特徴とする吸収性物品包装体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の吸収性物品包装体であって、
前記一方の層の厚みは、前記中間層の厚みより大きいことを特徴とする吸収性物品包装体。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の吸収性物品包装体であって、
前記包装された状態において、厚さ方向を有し、
前記包装材が複数回折り畳まれており、
前記厚さ方向において、前記包装材が2枚重ねられた二重部と、3枚重ねられた三重部とが設けられており、
使用時において、最初に展開される部分が位置する側を上側とし、
前記二重部における前記端部の前記包装材同士が溶着された部分を第1溶着部とし、
前記三重部における前記端部の前記包装材同士が溶着された部分を、前記上側から順に第2溶着部及び第3溶着部とすると、
前記第3溶着部における前記包装材同士の溶着を分離させる力は、前記第2溶着部における前記包装材同士の溶着を分離させる力より強く、
前記第3溶着部における前記包装材同士の溶着を分離させる力と前記第1溶着部における前記包装材同士の溶着を分離させる力との差は、0.1Nより小さいことを特徴とする
吸収性物品包装体。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の吸収性物品包装体であって、
前記包装された状態において、厚さ方向を有し、
前記包装材が複数回折り畳まれており、
前記厚さ方向において、前記包装材が2枚重ねられた二重部と、3枚重ねられた三重部とが設けられており、
使用時において、最初に展開される部分が位置する側を上側とし、
前記二重部における前記端部の前記包装材同士が溶着された部分を第1溶着部とし、
前記三重部における前記端部の前記包装材同士が溶着された部分を、前記上側から順に第2溶着部及び第3溶着部とすると、
前記第1溶着部、前記第2溶着部、及び前記第3溶着部における前記包装材同士の溶着を分離させる力がそれぞれ1.2N未満であることを特徴とする吸収性物品包装体。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の吸収性物品包装体であって、
前記包装された状態において、厚さ方向を有し、
前記包装材が複数回折り畳まれており、
前記厚さ方向において、前記包装材が2枚重ねられた二重部と、3枚重ねられた三重部とが設けられており、
使用時において、最初に展開される部分が位置する側を上側とし、
前記二重部における前記端部の前記包装材同士が溶着された部分を第1溶着部とし、
前記三重部における前記端部の前記包装材同士が溶着された部分を、前記上側から順に第2溶着部及び第3溶着部とすると、
前記第3溶着部における前記包装材同士の溶着を分離させる力と前記第1溶着部における前記包装材同士の溶着を分離させる力との差が、前記第1溶着部における前記包装材同士の溶着を分離させる力の1/2より小さいことを特徴とする吸収性物品包装体。
【請求項7】
請求項6に記載の吸収性物品包装体であって、
前記第3溶着部における前記包装材同士の溶着を分離させる力と前記第1溶着部における前記包装材同士の溶着を分離させる力との差が、前記第1溶着部における前記包装材同士の溶着を分離させる力の1/3より小さいことを特徴とする吸収性物品包装体。
【請求項8】
請求項7に記載の吸収性物品包装体であって、
前記第3溶着部における前記包装材同士の溶着を分離させる力と前記第1溶着部における前記包装材同士の溶着を分離させる力との差が、前記第1溶着部における前記包装材同士の溶着を分離させる力の1/10より小さいことを特徴とする吸収性物品包装体。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の吸収性物品包装体であって、
前記包装された状態において、厚さ方向を有し、
前記包装材は、テープ部材を有し、
前記テープ部材は、開封時に剥離可能な剥離部と、前記包装材に固定された固定部を備え、
前記包装材が複数回折り畳まれており、
前記厚さ方向において、前記包装材が2枚重ねられた二重部と、3枚重ねられた三重部とが設けられており、
使用時において、最初に展開される部分が位置する側を上側とし、
前記二重部における前記端部の前記包装材同士が溶着された部分を第1溶着部とし、
前記三重部における前記端部の前記包装材同士が溶着された部分を、前記上側から順に第2溶着部及び第3溶着部とすると、
前記第1溶着部における前記包装材同士の溶着を分離させる力、前記第2溶着部におけ
る前記包装材同士の溶着を分離させる力、及び前記第3溶着部における前記包装材同士の溶着を分離させる力は、前記剥離部を前記包装材から剥離させる力よりそれぞれ小さいことを特徴とする吸収性物品包装体。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の吸収性物品包装体であって、
前記包装された状態において、厚さ方向を有し、
前記吸収性物品は、非肌側に粘着領域を備え、
前記包装材は、前記粘着領域を保護する保護シートを備え、
前記包装材が複数回折り畳まれており、
前記厚さ方向において、前記包装材が2枚重ねられた二重部と、3枚重ねられた三重部とが設けられており、
使用時において、最初に展開される部分が位置する側を上側とし、
前記二重部における前記端部の前記包装材同士が溶着された部分を第1溶着部とし、
前記三重部における前記端部の前記包装材同士が溶着された部分を、前記上側から順に第2溶着部及び第3溶着部とすると、
前記第1溶着部における前記包装材同士の溶着を分離させる力、前記第2溶着部における前記包装材同士の溶着を分離させる力、及び前記第3溶着部における前記包装材同士の溶着を分離させる力が、前記吸収性物品を前記保護シートから分離させる力よりそれぞれ大きいことを特徴とする吸収性物品包装体。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の吸収性物品包装体であって、
前記端部は、前記包装材同士が溶着された溶着領域を有し、
前記溶着領域のうちの前記折り線方向の外端部における前記包装材同士の溶着を分離させる力は、前記溶着領域のうちの前記折り線方向の内端部における前記包装材同士の溶着を分離させる力よりも大きいことを特徴とする吸収性物品包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
吸収性物品の一例として、生理用ナプキン、パンティーライナー、及び吸収パッドがある。特許文献1のように、例えば、吸収性物品が皮膚に冷やすような感触を与える物質等の揮発性物質を有することが知られている。特許文献1には、揮発性物質の量が減少しないような包装材料を用いて吸収性物品を包装して、封止することが開示されており、包装材は、約0.020~約1.0mmの厚さであり、揮発性物質の揮発を防ぐためのバリア層を有する多層材料である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2007-525245号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、吸収性物品の包装においては、折り畳み方法や包装方法に応じて、部分的に重ねられる包装材の枚数が異なる場合がある。例えば、包装材を溶着により封止する場合には、溶着箇所に一律に熱や圧力を加えるため、重ねられる包装材の枚数によって過度に溶着したり、溶着が不十分だったりする恐れを生じていた。
【0005】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、包装材の溶着を適切に行うことができる吸収性物品包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための主たる発明は、
吸収性物品と、前記吸収性物品を包装する包装材とを備え、
前記包装材は、少なくとも第1層、第2層、及び前記第1層と前記第2層の間に位置する中間層を有しており、
前記包装材が前記包装材の折り線方向に沿って折り畳まれて、前記吸収性物品が包装された状態となっており、
前記包装材の前記折り線方向の端部が溶着された吸収性物品包装体であって、
前記包装材の厚みが、4μm以上であり、20μm未満であり、
前記吸収性物品は、揮発性物質を有しており、
前記中間層は、前記揮発性物質の揮発を防ぐための保護層であり、
前記第1層又は前記第2層の少なくとも一方の層は、前記中間層に接着することができる接着性の接着物質を有し、
前記一方の層のうち、前記中間層と反対側の面は、前記中間層側の面より前記接着物質が少ないことを特徴とする吸収性物品包装体である。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、包装材の厚みを4μm以上、20μm未満とすることで、20μm以上の厚みを有する包装材を用いた場合よりも溶着箇所に均等に熱や圧力を加えやすくして、包装材の溶着による破損を軽減させたり、より確実に接合させたりさせやすくする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、展開状態の包装体50を肌側から見た平面図である。
図2図2は、展開状態の包装体50を非肌側から見た平面図である。
図3図3Aは、包装状態の包装体50をテープ部材21側から見た平面図である。図3Bは、包装状態の包装体50をテープ部材21側の反対側の面から見た平面図である。
図4図4は、ナプキン1を肌側から見た平面図である。
図5図5は、ナプキン1を非肌側から見た平面図である。
図6図6は、図4中のA-A矢視で示すナプキン1の概略断面図である。
図7図7は、冷感材料の塗布領域を説明する図である。
図8図8は、図1における包装材20の断面について説明する図である。
図9図9は、従来の包装材200を用いた場合の溶着について説明する図である。
図10図10は、包装材20を用いた場合の溶着について説明する図である。
図11図11は、包装体50の第1溶着部Wx、第2溶着部Wy2、及び第3溶着部Wy3における分離力について説明する図である。
図12図12は、包装体500の第1溶着部Wxと第3溶着部Wy3における分離力について説明する図である。
図13図13は、図3AにおけるZ部を拡大した図である。
図14図14は、他の実施形態の包装材20の断面について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
吸収性物品と、前記吸収性物品を包装する包装材とを備え、前記包装材は、少なくとも第1層、第2層、及び前記第1層と前記第2層の間に位置する中間層を有しており、前記包装材が前記包装材の折り線方向に沿って折り畳まれて、前記吸収性物品が包装された状態となっており、前記包装材の前記折り線方向の端部が溶着された吸収性物品包装体であって、前記包装材の厚みが、4μm以上であり、20μm未満であることを特徴とする吸収性物品包装体である。
【0010】
このような吸収性物品包装体によれば、包装材の厚みを4μm以上、20μm未満とすることで、20μm以上の厚みを有する包装材を用いた場合よりも溶着箇所に均等に熱や圧力を加えやすくして、包装材の溶着による破損を軽減させたり、より確実に接合させたりさせやすくする。
【0011】
かかる吸収性物品包装体であって、前記吸収性物品は、揮発性物質を有していることが望ましい。
【0012】
このような吸収性物品包装体によれば、包装材によって揮発性物質が揮発する恐れを軽減させることができるため、着用者に対して着用時に揮発性物質の効果を実感させやすくなる。
【0013】
かかる吸収性物品包装体であって、前記中間層は、前記揮発性物質の揮発を防ぐための保護層であり、前記第1層又は前記第2層の少なくとも一方の層は、前記中間層に接着することができる接着性の接着物質を有していることが望ましい。
【0014】
このような吸収性物品包装体によれば、接着剤を用いずに一方の層と中間層とを接着させることができるため、包装材をより薄く形成することができる。
【0015】
かかる吸収性物品包装体であって、前記一方の層のうち、前記中間層と反対側の面は、前記中間層側の面より前記接着物質が少ないことが望ましい。
【0016】
このような吸収性物品包装体によれば、中間層と反対側の面は、包装材の溶着において溶着されることが多い面であるため、中間層側の面よりも接着物質を少なくすることで、溶着物質をより多くすることができ、溶着をより強固にさせやすくなる。
【0017】
かかる吸収性物品包装体であって、前記一方の層のうち前記端部に対応する部分は、前記接着物質を備えていることが望ましい。
【0018】
このような吸収性物品包装体によれば、溶着物質による溶着と接着物質による接着によって、吸収性物品包装体がより強固に包装された状態とすることができる。
【0019】
かかる吸収性物品包装体であって、前記中間層は、前記揮発性物質の揮発を防ぐための保護層であり、前記第1層又は前記第2層の少なくとも一方の層と、前記中間層は接着剤によって接着されていることが望ましい。
【0020】
このような吸収性物品包装体によれば、溶着箇所に均等に熱や圧力を加えやすくすることができ、包装材の溶着による破損を軽減させたり、より確実に接合させたりさせやすくする。
【0021】
かかる吸収性物品包装体であって、前記中間層は、前記揮発性物質の揮発を防ぐための保護層であり、前記一方の層の厚みは、前記中間層の厚みより大きいことが望ましい。
【0022】
このような吸収性物品包装体によれば、一方の層の厚みが中間層の厚みよりも小さい場合よりも一方の層がより多くの溶着物質を備えやすくなるため、包装材の溶着をより強固にしやすくなる。
【0023】
かかる吸収性物品包装体であって、前記包装された状態において、厚さ方向を有し、前記包装材が複数回折り畳まれており、前記厚さ方向において、前記包装材が2枚重ねられた二重部と、3枚重ねられた三重部とが設けられており、使用時において、最初に展開される部分が位置する側を上側とし、前記二重部における前記端部の前記包装材同士が溶着された部分を第1溶着部とし、前記三重部における前記端部の前記包装材同士が溶着された部分を、前記上側から順に第2溶着部及び第3溶着部とすると、前記第3溶着部における前記包装材同士の溶着を分離させる力は、前記第2溶着部における前記包装材同士の溶着を分離させる力より強く、前記第3溶着部における前記包装材同士の溶着を分離させる力と前記第1溶着部における前記包装材同士の溶着を分離させる力との差は、0.1Nより小さいことが望ましい。
【0024】
このような吸収性物品包装体によれば、着用者は、一定の力で吸収性物品包装体を開封することができるため、開封動作を容易に行うことができる。
【0025】
かかる吸収性物品包装体であって、前記包装された状態において、厚さ方向を有し、前記包装材が複数回折り畳まれており、前記厚さ方向において、前記包装材が2枚重ねられた二重部と、3枚重ねられた三重部とが設けられており、使用時において、最初に展開される部分が位置する側を上側とし、前記二重部における前記端部の前記包装材同士が溶着された部分を第1溶着部とし、前記三重部における前記端部の前記包装材同士が溶着された部分を、前記上側から順に第2溶着部及び第3溶着部とすると、前記第1溶着部、前記第2溶着部、及び前記第3溶着部における前記包装材同士の溶着を分離させる力がそれぞれ1.2N未満であることが望ましい。
【0026】
このような吸収性物品包装体によれば、着用者はより小さい力で吸収性物品包装体を開封することができる。
【0027】
かかる吸収性物品包装体であって、前記包装された状態において、厚さ方向を有し、前記包装材が複数回折り畳まれており、前記厚さ方向において、前記包装材が2枚重ねられた二重部と、3枚重ねられた三重部とが設けられており、使用時において、最初に展開される部分が位置する側を上側とし、前記二重部における前記端部の前記包装材同士が溶着された部分を第1溶着部とし、前記三重部における前記端部の前記包装材同士が溶着された部分を、前記上側から順に第2溶着部及び第3溶着部とすると、前記第3溶着部における前記包装材同士の溶着を分離させる力と前記第1溶着部における前記包装材同士の溶着を分離させる力との差が、前記第1溶着部における前記包装材同士の溶着を分離させる力の1/2より小さいことが望ましい。
【0028】
このような吸収性物品包装体によれば、第3溶着部における包装材同士の溶着を分離させる力と第1溶着部における包装材同士の溶着を分離させる力との差が、第1溶着部における包装材同士の溶着を分離させる力の1/2より大きい場合よりも、着用者は、一定の力で吸収性物品包装体を開封することができるため、開封動作を容易に行うことができる。
【0029】
かかる吸収性物品包装体であって、前記第3溶着部における前記包装材同士の溶着を分離させる力と前記第1溶着部における前記包装材同士の溶着を分離させる力との差が、前記第1溶着部における前記包装材同士の溶着を分離させる力の1/3より小さいことが望ましい。
【0030】
このような吸収性物品包装体によれば、第3溶着部における包装材同士の溶着を分離させる力と第1溶着部における包装材同士の溶着を分離させる力との差が、第1溶着部における包装材同士の溶着を分離させる力の1/3より大きい場合よりも、着用者は、一定の力で吸収性物品包装体を開封することができるため、開封動作を容易に行うことができる。
【0031】
かかる吸収性物品包装体であって、前記第3溶着部における前記包装材同士の溶着を分離させる力と前記第1溶着部における前記包装材同士の溶着を分離させる力との差が、前記第1溶着部における前記包装材同士の溶着を分離させる力の1/10より小さいことが望ましい。
【0032】
このような吸収性物品包装体によれば、第3溶着部における包装材同士の溶着を分離させる力と第1溶着部における包装材同士の溶着を分離させる力との差が、第1溶着部における包装材同士の溶着を分離させる力の1/10より大きい場合よりも、着用者は、一定の力で吸収性物品包装体を開封することができるため、開封動作を容易に行うことができる。
【0033】
かかる吸収性物品包装体であって、前記包装された状態において、厚さ方向を有し、前記包装材は、テープ部材を有し、前記テープ部材は、開封時に剥離可能な剥離部と、前記包装材に固定された固定部を備え、前記包装材が複数回折り畳まれており、前記厚さ方向において、前記包装材が2枚重ねられた二重部と、3枚重ねられた三重部とが設けられており、使用時において、最初に展開される部分が位置する側を上側とし、前記二重部における前記端部の前記包装材同士が溶着された部分を第1溶着部とし、前記三重部における前記端部の前記包装材同士が溶着された部分を、前記上側から順に第2溶着部及び第3溶着部とすると、前記第1溶着部における前記包装材同士の溶着を分離させる力、前記第2溶着部における前記包装材同士の溶着を分離させる力、及び前記第3溶着部における前記包装材同士の溶着を分離させる力は、前記剥離部を前記包装材から剥離させる力よりそれぞれ小さいことが望ましい。
【0034】
このような吸収性物品包装体によれば、第1溶着部における包装材同士の溶着を分離させる力、第2溶着部における包装材同士の溶着を分離させる力、及び第3溶着部における包装材同士の溶着を分離させる力が、剥離部を前記包装材から剥離させる力よりもそれぞれ大きい場合よりも吸収性物品包装体をより容易に開封しやすくなる。
【0035】
かかる吸収性物品包装体であって、前記包装された状態において、厚さ方向を有し、前記吸収性物品は、非肌側に粘着領域を備え、前記包装材は、前記粘着領域を保護する保護シートを備え、前記包装材が複数回折り畳まれており、前記厚さ方向において、前記包装材が2枚重ねられた二重部と、3枚重ねられた三重部とが設けられており、使用時において、最初に展開される部分が位置する側を上側とし、前記二重部における前記端部の前記包装材同士が溶着された部分を第1溶着部とし、前記三重部における前記端部の前記包装材同士が溶着された部分を、前記上側から順に第2溶着部及び第3溶着部とすると、前記第1溶着部における前記包装材同士の溶着を分離させる力、前記第2溶着部における前記包装材同士の溶着を分離させる力、及び前記第3溶着部における前記包装材同士の溶着を分離させる力が、前記吸収性物品を前記保護シートから分離させる力よりそれぞれ大きいことが望ましい。
【0036】
このような吸収性物品包装体によれば、第1溶着部における包装材同士の溶着を分離させる力、第2溶着部における包装材同士の溶着を分離させる力、及び第3溶着部における包装材同士の溶着を分離させる力が吸収性物品を前記包装材から分離させる力よりそれぞれ小さい場合より、溶着の強度を向上させることができる。
【0037】
かかる吸収性物品包装体であって、前記吸収性物品は、揮発性物質を有し、前記端部は、前記包装材同士が溶着された溶着領域を有し、前記溶着領域のうちの前記折り線方向の外端部における前記包装材同士の溶着を分離させる力は、前記溶着領域のうちの前記折り線方向の内端部における前記包装材同士の溶着を分離させる力よりも大きいことが望ましい。
【0038】
このような吸収性物品包装体によれば、溶着領域のうち、折り線方向の内側はより弱い力で開封することができる一方、折り線方向の外側はより強く溶着されているため、揮発性物質が揮発してしまう恐れを軽減させることができる。
【0039】
===第1実施形態===
以下、本発明に係る吸収性物品として生理用ナプキンを例に挙げて実施形態を説明するが、生理用ナプキンに限らず、パンティーライナー、又は軽失禁用パッド等のように、使用者の着衣に固定して使用する吸収性物品であればよい。
【0040】
<<包装体50の基本構成>>
図1は、展開状態の包装体(「ナプキン1の包装体」又は「吸収性物品包装体」ともいう。)50を肌側から見た平面図である。図2は、展開状態の包装体50を非肌側から見た平面図である。図3Aは、包装状態の包装体50をテープ部材側から見た平面図であり、図3Bは、包装状態の包装体50をテープ部材側の反対側の面から見た平面図である。展開状態の包装体50及び包装状態の包装体50は、それぞれ互いに直交する長手方向、幅方向、及び厚さ方向を有する。包装体50は、生理用ナプキン1(以下、「ナプキン1」ともいう。)と、ナプキン1を包装する包装材を備えている。図3A及び図3Bにおいて、折り線F1、F2に沿った方向を折り線方向という。また、図3Aに示すように、包装材20のうち、展開状態におけるナプキン1の前側に位置する側の端には、テープ部材21が設けられている。着用者は、開封時にまずテープ部材21を掴み、テープ部材21引っ張るようにして、包装材20を展開する。
【0041】
「展開状態」の包装体50とは、図1及び図2に示すように、包装状態の包装体50を開封して、折り畳まれた部分の全てを展開した状態をいう。「包装状態」の包装体50とは、図3A及び図3Bに示すように、展開状態の包装体50の所定箇所を、具体的には、一対のウイング部をそれぞれ幅方向の内側に折り畳み、第1折り線F1及び第2折り線F2で肌側シートを内側にして折り畳み、包装材20の折り線方向における端部20eを溶着することによって封をした状態をいう。包装体50は、第1折り線F1と第2折り線F2の2つの折り線を有しており、包装状態から展開状態にするために最初に展開する折り線は第1折り線F1であり、包装状態から展開状態にするために最後に展開する折り線は第2折り線F2である。
【0042】
<<生理用ナプキン1の基本構成>>
図4は、生理用ナプキン1を肌側から見た平面図である。図5は、ナプキン1を非肌側から見た平面図である。図6は、図3中のA-A矢視で示すナプキン1の概略断面図である。図7は、冷感材料の塗布領域を説明する図である。
【0043】
ナプキン1は、互いに直交する長手方向、幅方向、及び厚さ方向を有する。ナプキン1の長手方向において、使用者の下腹部に当接する側を「前側」といい、使用者の臀部に当接する側を「後側」という。また、ナプキン1の厚さ方向において、使用者の肌に当接する側を「肌側」といい、その反対側を「非肌側」という。ナプキン1の長手方向は、展開状態50の長手方向でもある。図中のX-X線は幅方向における中心線である。
【0044】
ナプキン1は、長手方向の中央部から幅方向の両外側に延出した一対のウイング部1Wを有している。以下、ナプキン1の長手方向において、ウイング部1Wが設けられた部分を中央部1B、中央部1Bより前側の部分を前側部1A、中央部1Bより後側の部分を後側部1Cという。
【0045】
また、ナプキン1の幅方向の中央部には、肌側シート2、中間シート3、吸収体10、非肌側シート4、サイドシート6を有している。厚さ方向の肌側から順に、肌側シート2、中間シート3、吸収体10及び非肌側シート4が積層されており、サイドシート6は、肌側シート2の肌側面の幅方向の端部から吸収体10の非肌側面の幅方向の端部に亘って配置されている。肌側シート2、中間シート3、吸収体10、非肌側シート4、サイドシート6はそれぞれホットメルト接着剤等の接着剤を用いて接合固定されている。接着剤は、各部材の肌面側及び非肌面側のそれぞれに亘って任意の塗布パターンで塗布されており、Ωパターンやスパイラルパターン、ストライプパターン等の塗布パターンから選択することができる。なお、図6等において、便宜上、接着剤を省略して示している。
【0046】
肌側シート2及び中間シート3は、液透過性のシート部材であり、エアスルー不織布等を例示できる。肌側シート2は、白色のシート部材、中間シート3は、淡い緑色のシート部材である。ウイングシート5及びサイドシート6は、それぞれ疎水性のシート部材であり、エアスルー不織布、スパンボンド不織布等を例示できる。非肌側シート4は、液不透過性のシート部材であり、ポリエチレン(PE)の樹脂フィルム等を例示できる。非肌側シート4は、平面サイズが吸収体10よりも大きく、吸収体10の平面全体を覆っている。ウイングシート5、サイドシート6、非肌側シート4は、それぞれ白色のシート部材である。
【0047】
ウイング部1Wは、肌側シート2等の幅方向の両側部から外側に延出しているサイドシート6及び非肌側シート4によって形成されている。なお、ナプキン1がウイング部1Wを有さない形態であってもよい。
【0048】
吸収体10は、排泄物を吸収して内部に保持する部材である。吸収体10は、吸収性コア(不図示)と、吸収性コアを覆うカバーシート(不図示)とを有している。吸収性コアは、液体吸収性繊維であるパルプ繊維やセルロース系吸収性繊維等に、液体吸収性粒状物である高吸収性ポリマー(所謂SAP)等が加えられ、所定の形状に成形されたものである。カバーシートは、液透過性のシートであり、ティッシュ等を例示できる。
【0049】
ナプキン1においては、中間シート3に緑色のシート部材を用いたが、肌側シート2、中間シート3、ウイングシート5、サイドシート6、非肌側シート4のいずれかのシートに有色のシート部材を用いることが好ましい。このとき、青色、水色、緑色など寒色系のシートを用いることで、着用者に対して涼しい印象を与えやすくなる。
【0050】
図4に示すように、肌側面から視認すると、ナプキン1が雪の結晶を表す雪表示S1、雪表示S2及び、複数の線状圧搾部Eを有していることがわかる。雪表示S1及び雪表示S2は、それぞれ雪の結晶を表した図形であり、ナプキン1が冷感材料を備えていることを想起させるための想起表示である。一般的に、雪は冷たいものであるという観念があるため、着用者は、雪の結晶の表示を視認することで、ナプキン1が冷感材料を有しているということを想起しやすくなる。
【0051】
複数の線状圧搾部Eは、着用状態において着用者の膣口が当接すると考えられる領域を囲むような形状であり、吸収体10の形状に沿うような形状に設けられている。線状圧搾部Eは、肌側シート2と中間シート3と吸収体10を厚さ方向から圧搾加工を施して、所望の形状に形成された圧搾部である。圧搾によって、肌側シート2の繊維密度と中間シート3の繊維密度、及び吸収体10の繊維密度が、圧搾をしていない部分よりそれぞれ大きくなっている。線状圧搾部Eを設けることで、排泄物が所定の範囲より外側に拡散することを抑止して、ナプキン1から排泄物漏れてしまう恐れを軽減している。
【0052】
ナプキン1の非肌側面(つまり、非肌側シート4の非肌側面)には、接着剤が塗布される等した中央粘着部8が設けられている。図5に示すように、中央粘着部8は、長手方向に長辺を有する長方形状の複数の中央粘着部8が幅方向に間隔を空けて配置されているが、中央粘着部8の形状、数、及び配置はこれに限られない。中央粘着部8がナプキン1の使用時に下着等の着衣の肌側面に貼り付けられることで、ナプキン1は下着等に固定される。
【0053】
同様に、各ウイング部1Wの厚さ方向の非肌側面(非肌側シート4の非肌側面)には、ウイング粘着部9が設けられている。図5に示すように、ウイング粘着部9は、長手方向に長辺を有する長方形状の複数のウイング粘着部9が幅方向に間隔を空けて配置されているが、ウイング粘着部9の形状、数、及び配置はこれに限られない。ナプキン1の使用時にウイング部1Wは非肌側に折り曲げられ、ウイング粘着部9は、下着等の非肌側面に張り付けられる。これにより、ウイング部1Wは下着等に固定される。
【0054】
ナプキン1は、冷感材料、温感材料、又は香料等の揮発性物質を備えることが好ましい。ナプキン1は、肌側シート2と中間シート3との間に、着用者に対して冷感や清涼感を与える化合物を含む冷感材料を備える。冷感材料は、揮発性の物質であり、メントールと乳酸メンチルを含有する液体を例示することができる。冷感材料は、肌側シート2の表面又は裏面、中間シート3の表面や裏面、吸収体10等に、冷感材料の効果に応じて、所望の場所に、所定の塗布パターンで塗布することができる。例えば、ナプキン1には、製造時において、肌側シート2の非肌側面に液体状の冷感材料を塗布されている。図7は、冷感材料の塗布領域Qを示している。図7に示すように、ナプキン1の冷感材料は、幅方向の中央領域に、長手方向の前側端から後側端まで連続して塗布されている。
【0055】
また、着用時において、着用者の膣口に当接すると考えられる領域の、肌側シート2の肌側面には、油膜層Rが設けられている。油膜層Rとして、トリアシルグリセロール等の油膜が用いられ、冷感材料が直接的に着用者の陰部に接触することを抑制し、着用者に適度な冷感効果を与えやすくしている。
【0056】
<<包装材20について>>
包装材20は、ナプキン1を個別に包装するシート状の包装部材であり、ナプキン1の使用時には取り外される部材である。展開状態において、ナプキン1と接する面を内側面、内側面とは反対の面を外側面という。包装材20は、緑色を基調としたデザインを有しており、図1図2等に示すように、包装材20には、想起表示M1、想起表示M2、想起表示M3等が設けられている。想起表示M1、想起表示M2、及び想起表示M3は、それぞれナプキン1が冷感材料を備えていることを想起させるための想起表示である。一般的に、海やアイスクリームは概念的に涼しい印象があり、「cool」の文字は「涼しい」ことを文字で表している。着用者は、ナプキン1を使用する前であっても、包装材20の想起表示M1、M2、M3を視認することで、ナプキン1が冷感材料を有しているということを想起しやすくなる。
【0057】
包装材20の材料としては、例えば、プラスチックフィルム、ナイロンフィルム等の各種フィルムや、不織布、不織布をラミネート加工したフィルム等を用いることができる。具体的には、図8に示すように、包装材20は、包装材20の内側面に位置する第1層20a、外側面に位置する第2層20b、第1層と第2層の間に位置する中間層を有する。図8は、図1における包装材20の断面について説明する図である。
【0058】
第1層20a及び第2層20bは、接着性樹脂(接着物質)であるマレイン酸を10%以上含有する変性ポリエチレンシート(変性PE)であり、中間層20cは、エチレン‐ビニルアルコール共重合体シート(EVOH)である。第1層20a及び第2層20bについて、少なくとも中間層20cと接する側の面に、接着性樹脂を含有することが好ましい。第1層20a及び第2層20bには、包装状態とするための包装材20同士の溶着を可能とする溶着物質を用いる。例えば、第1層20a及び第2層20bには、ポリエチレン(PE)に替えてポリプロピレン(PP)等の溶着が可能な樹脂を用いてもよい。中間層20cは、揮発性物質の揮発を防ぐことができる素材を用いることが好ましい。ナプキン1は、冷感材料を備えているため、冷感材料の揮発を防ぐことができる素材を用いることが好ましい。
【0059】
第1層20aと中間層20cの接合、及び中間層20cと第2層20bとの接合は、中間層20cを第1層20aと第2層20bで挟んだ状態で、約76度に加熱しながら加圧することで、接着性樹脂が溶融されて接着する。つまり、第1層20a及び第2層20bに変性PEを用いることで、接着剤等を塗布することなく各層を接着することができるため、接着剤を用いる場合よりも包装材20の厚みを薄くすることができる。
【0060】
具体的には、第1層20aは6μm、中間層20cは4μm、第2層20bは6μmであり、包装材20の厚みは、16μmである。包装材20は、4μm以上、20μm未満とする。第1層20a又は第2層20bは、中間層20cよりも厚みが大きいことが好ましい。第1層20a、第2層20bはPE等の溶着物質を備えるため、中間層20cの厚みよりも薄くした場合よりも包装材の溶着をより強固にすることができる。なお、ナプキン1が揮発性物質を有する場合には、中間層20cが少なくとも2μm以上の厚みを有することが好ましい。
【0061】
また、第1層20a又は第2層20bのうち、端部20eに対応する部分で接着性樹脂を備えていることが好ましい。溶着工程において、熱と圧力を加えることで、接着性樹脂の接着性を発揮させやすくなり、端部20eは、PE等の溶着物質の溶着だけでなく、接着物質による接着も施されるため、より強固な接合をすることができる。
【0062】
図3A及び図3Bに示す包装状態とするための包装材20の端部20eの接合は、包装体50の折り畳み方法によって、部分的に重ねられる包装材20の枚数が異なる場合がある。図9は、従来の包装材200を用いた場合の溶着について説明する図である。図10は、包装材20を用いた場合の溶着について説明する図である。図9及び図10は、それぞれ折り線を2つ有する包装体500、包装体50であり、便宜上厚みを実際よりも厚くして模式的に示し、それぞれナプキンやテープ部材を省略して示している。また、図9及び図10における左右は折り線方向と直交する折り線直交方向であり、図9及び図10において、使用時に最初に展開される部分が位置する側を上側とする。
【0063】
図9に示す包装材200は、厚みtが約32μmである。包装体500は、厚さ方向において、折り線直交方向の一方側と他方側にそれぞれ包装材200が2枚重ねられた二重部x、xを有し、二重部xと二重部xの間に、包装材200が3枚重ねられた三重部yを有している。また、二重部x、xにおける折り線方向の端部の包装材200同士が溶着された部分はそれぞれ第1溶着部Wx、Wxであり、三重部yにおける端部の包装材200同士が溶着された部分が、上側から順に第2溶着部Wy2、第3溶着部Wy3である。包装体500の折り線方向の端部において、二重部xの厚みは約2tであり、三重部yの厚みが約3tであることから、二重部xと三重部yとの厚みの差は、包装材200の厚みであるtとなる。このとき、一般的に溶着工程では、ローラー等を用いて溶着箇所に一律に熱や圧力を加えるため、20μm以上の厚みtを有する包装材を用いた場合には、重ねられる包装材200の枚数が多い三重部yの下側に位置する第3溶着部Wy3には溶着時により強い圧力が加えられて、包装材が200が破れてしまう恐れがある。一方、第3溶着部Wy3における包装材200の破損を防ぐために、溶着工程において熱や圧力を小さくすると、重ねられた包装材200の枚数が少ない二重部xには、溶着のための圧力が不十分となってしまい、溶着による接合が十分に行われないという恐れを生じていた。
【0064】
この点、包装材20の厚みTが4μm以上であり、20μm未満であるため(4μm≦T<20μm)、溶着による包装材20の破損を軽減させつつ、より確実に溶着による接合を行うことができる。搬送等で包装材20自体が損傷してしまう恐れを軽減させるために、包装材20の厚みTは4μm以上とし、二重部Xと三重部Tとの溶着の差をより均一にさせるために、包装材の厚みTは20μm未満とする。例えば、包装材の厚みTを16μmとして、包装体50の端部20eを100個溶着すると、破損なく、且つ溶着不足もない包装体50を75個製造することができる。
【0065】
図10に示す包装材20は、厚みTが約16μmである。包装体50は、厚さ方向において、折り線直交方向の一方側と他方側にそれぞれ包装材20が2枚重ねられた二重部X、Xを有し、二重部Xと二重部Xの間に、包装材20が3枚重ねられた三重部Yを有している。また、二重部X、Xにおける端部20eの包装材20同士が溶着された部分はそれぞれ第1溶着部WX、WXであり、三重部Yにおける端部20eの包装材200同士が溶着された部分を、上から順に第2溶着部WY2、第3溶着部WY3である。包装体50の端部20eにおいて、二重部Xの厚みは約2Tであり、三重部Yの厚みが約3Tであることから、二重部Xと三重部Yとの厚みの差は、包装材20の厚みであるTとなる。つまり、従来の包装材200の厚みtより薄い包装材20の厚みTであることで(t>T)、図10にも示すように、包装体50の二重部Xと三重部Yとの厚みの差を、従来の包装体500の二重部xと三重部yとの厚みの差より小さくすることができる。これによって、厚さ20μm以上の包装材を用いた場合よりも、包装体50に対してより均一に熱や圧力を加えやすくなるため、部分的に強く溶着されて包装材20が破損してしまったり、部分的に溶着が不十分となってしまう恐れを軽減させることができる。
【0066】
また、包装材20をより均一な状態の溶着接合とすることで、包装体50のようにナプキン1が冷感材料等の揮発性物質を備える場合であっても、包装体50から揮発性物質が揮発してしまう恐れを軽減させることができ、着用者は着用時において揮発性物質の効果を感じさせやすくなる。
【0067】
また、包装体50の第1溶着部Wx、第2溶着部Wy2、及び第3溶着部Wy3における包装材20同士の溶着を分離させる力(以下「分離力」ともいう。)の差もより小さくすることができる。図11は、包装体50の第1溶着部Wx、第2溶着部Wy2、及び第3溶着部Wy3における分離力について説明する図である。図11において、便宜上、各溶着部Wx、Wy2、Wy3の溶着を分離させた状態を示している。包装体50の分離力は、第1溶着部Wx、第2溶着部Wy2、第3溶着部Wy3の順で大きく、包装材20の厚みTが4μm以上であり、20μm未満とすることで、最も分離力が小さい第1溶着部Wxと、最も分離力が大きい第3溶着部Wy3との差を0.1Nより小さくすることができる。
【0068】
図12は、包装体500の第1溶着部Wxと第3溶着部Wy3における分離力について説明する図である。図12において、棒グラフは第1溶着部Wxと第3溶着部Wy3における分離力の大きさを示しており、折れ線グラフは、第1溶着部Wxと第3溶着部Wy3との分離力の差(第3溶着部Wy3-第1溶着部Wx)を示している。包装体500としては、溶着温度120度として溶着を行うが、参考として、108度、112度、114度の結果を示している。以下、120度で溶着を行った結果を用いて説明する。
【0069】
図12に示すように、包装体500における第1溶着部Wxと第3溶着部Wy3との分離力の差は、0.99Nである。この分離力の差は、溶着工程において、包装材200の厚みの差によって加えられた熱と圧力の差に起因するものである。包装体500の開封においては、一般的に、まず、第2溶着部Wy2を分離させ、続いて、一方側の第1溶着部Wx、そして第3溶着部Wy3を分離させて、最後に他方側の第1溶着部Wxを分離させる。このとき、各溶着部Wx、Wy2、Wy3の分離力の差が大きいと、着用者は各部分の開封時に加える力を変える必要があるため、着用者にとって開封しづらいと感じる恐れがある。
【0070】
この点、包装体50において、第1溶着部Wxと第3溶着部Wy3との差を0.1Nより小さくすることで、着用者は、開封時に一定の力で開封しやすくなるため、開封動作がより容易になる。
【0071】
各溶着部Wx、Wy2、Wy3の分離力の大きさの測定は、以下の方法で行う。溶着部Wxについて説明する。まず、第1溶着部Wxの領域において、包装体50の折り線方向に沿って端から内側に40mm、折り線方向と直交する方向に18mmを切り取って、端部20eの第1溶着部Wxを含むサンプル片を形成する。続いて、サンプル片の上側シート(包装材20)を一方側のチャックに固定し、下側シート(包装材20)を一方側のチャックに固定する。そして、万能材料試験機(インストロン社)を用いて、チャック間隔を10mmとし、万能材料試験機の剥離モードで、剥離角度180度、剥離速度100mm/minで両チャック間の距離を上側シートと下側シートとが分離するまで広げて、上側シートから下側シートを分離させるための力を測定する。第2溶着部Wy2、第3溶着部Wy3、及び第1溶着部WX、第2溶着部WY2、第3溶着部WY3についても同様である。
【0072】
また、第1溶着部Wx、第2溶着部Wy2、及び第3溶着部Wy3を分離させる力は、それぞれ1.2Nより小さいことがより好ましい。分離力が1.2Nより大きい場合には、着用者が力を加えて各第1溶着部Wx、第2溶着部Wy2、及び第3溶着部Wy3を分離させて包装体50を開封させる傾向があるが、分離力を1.2Nより小さくすると、着用者は軽い力での包装体50の開封が可能となる。
【0073】
第1溶着部Wxの分離力と第3溶着部Wy3の分離力の差は、第1溶着部Wxの分離力の1/2より小さいことが好ましい((第3溶着部Wy3-第1溶着部Wx)>1/2)。より好ましくは、第1溶着部Wxの分離力と第3溶着部Wy3分離力の差が、第1溶着部Wxの分離力の1/3より小さいことが好ましく((第3溶着部Wy3-第1溶着部Wx)>1/3)、さらに、第1溶着部Wxの分離力と第3溶着部Wy3分離力の差が、第1溶着部Wxの分離力の1/10より小さいことが好ましい((第3溶着部Wy3-第1溶着部Wx)>1/10)。このようにすることで、着用者が開封時に加える力を一定にさせやすくなり、着用者の開封動作をより容易にすることができる。
【0074】
図3A等に示すように、テープ部材21は、開封時に剥離可能な剥離部21rと、包装材20に固定された固定部21sを備えている。第1溶着部Wxの分離力、第2溶着部Wy2の分離力、第3溶着部Wy3の分離力が、剥離部21rを包装材20から剥離させる力よりそれぞれ小さいことがより好ましい。このようにすることで、第1溶着部Wxの分離力、第2溶着部Wy2の分離力、第3溶着部Wy3の分離力が、テープ部材21rを包装材20から剥離させる力よりそれぞれ大きい場合より、包装体50を小さい力で開封することが可能となる。
【0075】
さらに、包装体50がナプキン1の非肌側面の中央粘着部8を保護する保護シート(不図示)を備え、包装状態及び展開状態において、保護シートは、中央粘着部8に貼付されている。このとき、第1溶着部Wxの分離力、第2溶着部Wy2の分離力、第3溶着部Wy3の分離力が、保護シートをナプキン1から分離させる力より大きいことがより好ましい。このようにすることで、状態及び展開状態において、保護シートは、中央粘着部8に貼付されている。このとき、第1溶着部Wxの分離力、第2溶着部Wy2の分離力、第3溶着部Wy3の分離力が、保護シートをナプキン1から分離させる力より小さい場合より強固に溶着された状態の包装体50とすることができるため、不用意に包装体50が開封してしまう恐れを軽減することができる。
【0076】
図13は、図3AにおけるZ部を拡大した図である。図13において、折り線方向の右側は外側であり、左側は内側である。端部20eは、矩形形状の複数の溶着部分gを有しており、複数の溶着部分gの集合を溶着領域Gという。溶着領域Gのうちの折り線方向の外端部Geにおける包装材20同士の溶着を分離させる力は、溶着領域Gのうちの折り線方向の内側端Giにおける包装材20同士の溶着を分離させる力よりも大きいことが好ましい。このようにすることで、内端部Giはより弱い力で開封することができるため、包装状態から展開状態へ開封し始める際により小さな力で開封することができる。一方、外側部Geはより強く溶着されているため、ナプキン1のように冷感材料等の揮発性物質を備える場合に、包装体50から揮発性物質が揮発してしまう恐れを軽減させることができる。包装材20同士の溶着を分離させる力が異なる外端部Ge及び内端部Giは、溶着工程において、異なる高さの凸部を有するローラーを用いて溶着を行うことで形成することができる。
【0077】
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのはいうまでもない。例えば、以下に示すような変形が可能である。
【0078】
上述の実施形態においては、第1層20aと第2層20bがそれぞれ中間層20cに接着することができる接着性樹脂を含有するものとしたが、必ずしもこれに限られない。第1層20a又は第2層20bのいずれか一方が接着性樹脂を有するものであってもよいし、第1層20a及び第2層20bの両方が接着性樹脂を有さないものであってもよい。例えば、包装材20は、第1層20a、第2層20b、中間層20cに加え、他の層を有する包装材であってもよい。例えば、図14は、他の実施形態の包装材20の断面について説明する図である。図14に示す包装材20は、展開状態の包装材20の状態において、内側面から順に、第1層20a、接着剤層H、中間層20b、接着剤層H、第2層20cが重ね合わせられている。第1層20aと中間層20cは接着剤層Hによって接着されており、中間層20cと第2層20bは接着剤層Hによって接着されている。このような構成の包装材20であっても、包装材20の厚みTを4μm以上、20μm未満とすることで(4μm≦T<20μm)、溶着による包装材20の破損を軽減させつつ、より確実に溶着による接合を行うことができる。
【0079】
また、上述の実施形態においては、第1層20a、第2層20b、及び中間層20cを備える包装材20を用いたが、これに限られない。例えば、第1層20aと中間層20cとの間に他のシート素材から成る第3層(不図示)を備えるものであってもよい。包装材20の各層20a、20b、20c等は、ナプキン1の形状や、ナプキン1が備える揮発性物質等によって適宜変更することができる。
【0080】
さらに、第1層20a又は第2層20bについて、中間層20cの側の面より、中間層20cと反対側の面の方が接着性樹脂が少なくし、PE等の溶着物質をより多くしてもよい。中間層20cと反対側の面は、包装材20の溶着がより多い面であり、接着性樹脂による接着効果よりも溶着物質による溶着を必要とする領域である。そのため、溶着物質をより多くすることで溶着をより強固にさせやすくなる。
【0081】
上述の実施形態において、包装材20に想起表示M1、M2、M3等を設けたが、これらの模様や、包装材20の着色等をアクリル系の顔料等のインクを用いて印刷しても良い。インクによって、包装材20同士の溶着による分離力を低下させることができる。そのため、包装材20のうち印刷する位置等やインクの量を調整することで、包装材20同士の溶着の強さを調整することができる。
【符号の説明】
【0082】
1 ナプキン(吸収性物品)、
1A 前側部、1B 中央部、1C 後側部、1W ウイング部、
2 肌側シート、3 中間シート、
4 非肌側シート、6 サイドシート、
8 中央粘着部、9 ウイング粘着部、
10 吸収体、
20 包装材、
20a 第1層、20b 第2層、20c 中間層、
20e 端部、
50 包装体(吸収性物品包装体)、
E 線状圧搾部、
F1 第1折り線、F2 第2折り線、
G 商品名表示、
M1 想起表示、M2 想起表示、M3 想起表示、
R 油膜層、
S1 雪表示(想起表示)、S2 雪表示(想起表示)、
X 二重部、Y 三重部、
WX 第1溶着部、WY2 第2溶着部、WY3 第3溶着部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14