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特許7126338樹脂の製造方法、及び相分離構造を含む構造体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-18
(45)【発行日】2022-08-26
(54)【発明の名称】樹脂の製造方法、及び相分離構造を含む構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 6/06 20060101AFI20220819BHJP
   B01D 71/26 20060101ALI20220819BHJP
   C08F 12/08 20060101ALI20220819BHJP
【FI】
C08F6/06
B01D71/26
C08F12/08
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2017119670
(22)【出願日】2017-06-19
(65)【公開番号】P2017226837
(43)【公開日】2017-12-28
【審査請求日】2020-03-11
(31)【優先権主張番号】P 2016122537
(32)【優先日】2016-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(72)【発明者】
【氏名】山野 仁詩
(72)【発明者】
【氏名】松宮 祐
【審査官】久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-260931(JP,A)
【文献】特開2006-037117(JP,A)
【文献】特開2016-107206(JP,A)
【文献】特開2016-108445(JP,A)
【文献】特開2010-285403(JP,A)
【文献】特開2013-072896(JP,A)
【文献】特開2012-078830(JP,A)
【文献】特開2012-078828(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00 - 6/28
B01D 71/00 - 71/82
C08F 12/00 - 12/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合体を含有する樹脂組成物を、ポリオレフィン樹脂製の膜を備えたフィルターにより濾過して、精製樹脂を得る濾過工程を有し、
前記重合体は、
スチレンから誘導される構成単位(u11)の繰り返し構造からなる単独重合体;
前記構成単位(u11)と、スチレンのα位の水素原子が炭素数1~5のアルキル基に置換されたモノマーから誘導される構成単位(u12)との繰り返し構造からなる共重合体;
前記構成単位(u11)と、α位の水素原子が置換基で置換されていてもよいスチレンのベンゼン環に炭素数1~5のアルキル基が結合したモノマーから誘導される構成単位(u13)との繰り返し構造からなる共重合体;及び
前記構成単位(u11)と前記構成単位(u12)と前記構成単位(u13)との繰り返し構造からなる共重合体
からなる群より選択される、樹脂の製造方法。
【請求項2】
重合体を含有する樹脂組成物を、ポリオレフィン樹脂製の膜を備えたフィルターにより濾過して、精製樹脂を得る工程と、
前記精製樹脂を含有する下地剤を、基板上に塗布して下地剤層を形成する工程と、
前記下地剤層上に、疎水性ポリマーブロックと親水性ポリマーブロックとが結合したブロックコポリマーを含む層を形成する工程と、
前記のブロックコポリマーを含む層を相分離させる工程と、
を有し、
前記重合体は、
スチレンから誘導される構成単位(u11)の繰り返し構造からなる単独重合体;
前記構成単位(u11)と、スチレンのα位の水素原子が炭素数1~5のアルキル基に置換されたモノマーから誘導される構成単位(u12)との繰り返し構造からなる共重合体;
前記構成単位(u11)と、α位の水素原子が置換基で置換されていてもよいスチレンのベンゼン環に炭素数1~5のアルキル基が結合したモノマーから誘導される構成単位(u13)との繰り返し構造からなる共重合体;及び
前記構成単位(u11)と前記構成単位(u12)と前記構成単位(u13)との繰り返し構造からなる共重合体
からなる群より選択される、相分離構造を含む構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂の製造方法、及び相分離構造を含む構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リソグラフィー技術においては、例えば、基板の上にレジスト材料からなるレジスト膜を形成し、該レジスト膜に対して選択的露光を行い、現像処理を施すことにより、前記レジスト膜に所定形状のレジストパターンを形成する工程が行われる。レジスト膜の露光部が現像液に溶解する特性に変化するレジスト材料をポジ型、レジスト膜の露光部が現像液に溶解しない特性に変化するレジスト材料をネガ型という。
近年、半導体素子や液晶表示素子の製造においては、リソグラフィー技術の進歩により急速にパターンの微細化が進んでいる。パターンの微細化の手法としては、一般に、露光光源の短波長化(高エネルギー化)が行われている。具体的には、従来は、g線、i線に代表される紫外線が用いられていたが、現在では、KrFエキシマレーザーやArFエキシマレーザーを用いた半導体素子の量産が行われている。また、これらのエキシマレーザーより短波長(高エネルギー)のEUV(極紫外線)や、EB(電子線)、X線などについても検討が行われている。
レジスト材料には、これらの露光光源に対する感度、微細な寸法のパターンを再現できる解像性等のリソグラフィー特性が求められる。
このような要求を満たすレジスト材料として、従来、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する基材成分と、露光により酸を発生する酸発生剤成分と、を含有する化学増幅型レジスト組成物が用いられている。
【0003】
パターンの微細化が進むのに伴い、レジスト材料には、種々のリソグラフィー特性の向上とともに、ディフェクト(表面欠陥)発生を抑えることも求められている。
ここで「ディフェクト」とは、例えば、KLAテンコール社製の表面欠陥観察装置(商品名「KLA」)により、現像後のレジストパターンを真上から観察した際に検知される不具合全般のことである。この不具合とは、例えば、現像後のスカム(レジスト残渣)、泡、ゴミ等のレジストパターン表面への異物や析出物の付着による不具合や、ラインパターン間のブリッジ、コンタクトホールパターンのホールの穴埋まり等のパターン形状に関する不具合、パターンの色むら等をいう。
【0004】
加えて、レジスト材料においては、レジスト溶液(溶液状態のレジスト組成物)を保管中に微粒子状の異物が発生する、異物経時特性(保存安定性の一つ)も問題とされており、その改善が望まれている。
【0005】
従来、レジスト組成物の製造においては、異物を除去するため、一般的に、フィルターを通過させることによる精製が行われている。しかしながら、レジスト組成物を、従来用いられているメンブレンフィルターやデプスフィルターを通過させる方法では、現像後のレジストパターンのディフェクト発生を抑えるには不充分であった。
前記のレジストパターンのディフェクト発生の抑制、及びレジスト材料の異物経時特性に対する要求に対し、ナイロン製のフィルターを通過させる工程と、ポリオレフィン樹脂製又はフッ素樹脂製のフィルターを通過させる工程と、を共に有するレジスト組成物の製造方法が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第4637476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
リソグラフィー技術のさらなる進歩、レジストパターンの微細化がますます進むなか、数十から数百ナノメートルサイズのレジストパターンを形成する場合、現像後のスカムやマイクロブリッジ発生の不具合は顕著な問題となる。このため、これまで以上に、現像後のレジストパターンにおけるディフェクト発生を抑制し得る技術が必要である。
【0008】
また、大規模集積回路(LSI)のさらなる微細化に伴い、より繊細な構造体を加工する技術が求められている。このような要望に対し、互いに非相溶性のブロック同士が結合したブロックコポリマーの自己組織化により形成される相分離構造を利用して、より微細な構造体を形成する技術開発が行われている。
ブロックコポリマーの相分離を利用するためには、ミクロ相分離により形成された自己組織化ナノ構造を、特定の領域のみに形成し、かつ、所望の方向へ配列させることが必須とされる。そして、かかるブロックコポリマーの相分離においては、ブロックコポリマーと共に存在する不純物の影響が問題となる。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、不純物をより低減できる、樹脂の製造方法を提供すること、及び、ブロックコポリマーの相分離性能をより高められる、相分離構造を含む構造体の製造方法を提供すること、を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは検討により、疎水性の構成単位の繰り返し構造からなる重合体、を含有する樹脂組成物を精製する際、特定のフィルターを選択して濾過することによって、その重合体の高純度化を図れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明に係る第1の態様は、疎水性の構成単位(u1)の繰り返し構造からなる重合体を含有する樹脂組成物を、ポリオレフィン樹脂製の膜を備えたフィルターにより濾過して、精製樹脂を得る濾過工程を有することを特徴とする、樹脂の製造方法である。
【0012】
本発明に係る第2の態様は、疎水性の構成単位(u1)の繰り返し構造からなる重合体を含有する樹脂組成物を、ポリオレフィン樹脂製の膜を備えたフィルターにより濾過して、精製樹脂を得る工程と、前記精製樹脂を含有する下地剤を、基板上に塗布して下地剤層を形成する工程と、前記下地剤層上に、疎水性ポリマーブロックと親水性ポリマーブロックとが結合したブロックコポリマーを含む層を形成する工程と、前記のブロックコポリマーを含む層を相分離させる工程と、を有することを特徴とする、相分離構造を含む構造体の製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る樹脂の製造方法によれば、不純物がより低減された樹脂を製造できる。
本発明に係る相分離構造を含む構造体の製造方法によれば、ブロックコポリマーの相分離性能をより高められる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】相分離構造を含む構造体の製造方法の一実施形態例を説明する概略工程図である。
図2】任意工程の一実施形態例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書及び本特許請求の範囲において、「脂肪族」とは、芳香族に対する相対的な概念であって、芳香族性を持たない基、化合物等を意味するものと定義する。
「アルキル基」は、特に断りがない限り、直鎖状、分岐鎖状及び環状の1価の飽和炭化水素基を包含するものとする。アルコキシ基中のアルキル基も同様である。
「アルキレン基」は、特に断りがない限り、直鎖状、分岐鎖状及び環状の2価の飽和炭化水素基を包含するものとする。
「ハロゲン化アルキル基」は、アルキル基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換された基であり、該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
「フッ素化アルキル基」又は「フッ素化アルキレン基」は、アルキル基又はアルキレン基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された基をいう。
「構成単位」とは、高分子化合物(樹脂、重合体、共重合体)を構成するモノマー単位(単量体単位)を意味する。
「露光」は、放射線の照射全般を含む概念とする。
【0016】
(樹脂の製造方法)
本実施形態の樹脂の製造方法は、疎水性の構成単位(u1)の繰り返し構造からなる重合体を含有する樹脂組成物を、ポリオレフィン樹脂製の膜を備えたフィルターにより濾過して、精製樹脂を得る濾過工程を有する。
【0017】
<樹脂組成物>
本実施形態における樹脂組成物は、疎水性の構成単位(u1)の繰り返し構造からなる重合体を含有する。かかる樹脂組成物は、溶液、分散液などであってよい。
【0018】
≪重合体≫
本実施形態における重合体(以下「重合体(P)」又は「(P)成分」ともいう。)は、疎水性の構成単位(u1)の繰り返し構造からなる。
かかる重合体(P)は、特に制限されず、2種以上の構成単位(u1)の繰り返し構造からなる共重合体、1種の構成単位(u1)の繰り返し構造からなる単独重合体のいずれでもよい。
【0019】
「疎水性の構成単位」とは、水に対する親和性が低い(水に溶解しにくい、又は水と混ざりにくい)モノマーから誘導される構成単位をいう。
【0020】
・構成単位(u1)
疎水性の構成単位(u1)には、例えば、置換基を有してもよいスチレン骨格を含む構成単位が好適に用いられる。
置換基を有してもよいスチレン骨格を含む構成単位としては、スチレンから誘導される構成単位、スチレン誘導体から誘導される構成単位が挙げられる。
【0021】
スチレン誘導体としては、例えば、スチレンのα位の水素原子がアルキル基もしくはハロゲン化アルキル基に置換されたもの、又はこれらの誘導体が挙げられる。前記これらの誘導体としては、α位の水素原子が置換基で置換されていてもよいスチレンのベンゼン環に置換基が結合したものが挙げられる。前記のベンゼン環に結合した置換基としては、例えば、炭素数1~5のアルキル基、炭素数1~5のハロゲン化アルキル基、ヒドロキシアルキル基等が挙げられる。尚、α位(α位の炭素原子)とは、特に断りがない限り、ベンゼン環が結合している炭素原子のことをいう。
【0022】
上記α位の置換基としてのアルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましく、具体的には、炭素数1~5のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基)等が挙げられる。
α位の置換基としてのハロゲン化アルキル基は、上記「α位の置換基としてのアルキル基」の水素原子の一部又は全部を、ハロゲン原子で置換した基が挙げられる。該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、特にフッ素原子が好ましい。
α位の置換基としてのヒドロキシアルキル基は、上記「α位の置換基としてのアルキル基」の水素原子の一部又は全部を、水酸基で置換した基が挙げられる。該ヒドロキシアルキル基における水酸基の数は、1~5が好ましく、1がより好ましい。
【0023】
スチレン誘導体として具体的には、α-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、4-t-ブチルスチレン、4-n-オクチルスチレン、2,4,6-トリメチルスチレン、4-メトキシスチレン、4-t-ブトキシスチレン、4-ヒドロキシスチレン、4-ニトロスチレン、3-ニトロスチレン、4-クロロスチレン、4-フルオロスチレン、4-アセトキシビニルスチレン、4-ビニルベンジルクロリド等が挙げられる。
【0024】
構成単位(u1)の中でも、スチレンから誘導される構成単位(構成単位(u11))、スチレンのα位の水素原子が炭素数1~5のアルキル基に置換されたモノマーから誘導される構成単位(構成単位(u12))、α位の水素原子が置換基で置換されていてもよいスチレンのベンゼン環に炭素数1~5のアルキル基が結合したモノマーから誘導される構成単位(構成単位(u13))が好ましく、スチレンから誘導される構成単位(構成単位(u11))がより好ましい。
【0025】
本実施形態における重合体(P)としては、例えば、構成単位(u11)を有する重合体が好ましい。
かかる重合体(P)として具体的には、構成単位(u11)の繰り返し構造からなる単独重合体(ホモポリマー);構成単位(u11)と構成単位(u12)とを有する共重合体、構成単位(u11)と構成単位(u13)とを有する共重合体、構成単位(u11)と構成単位(u12)と構成単位(u13)とを有する共重合体が挙げられる。
重合体(P)には、構成単位(u11)を、(P)成分を構成する全構成単位に対して、好ましくは50モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上有するものが好適に用いられる。中でも、(P)成分としては、構成単位(u11)の繰り返し構造からなる単独重合体(ホモポリマー)が特に好ましい。
【0026】
(P)成分の質量平均分子量(Mw)(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算基準)は、1000~200000が好ましく、より好ましくは1500~200000、さらに好ましくは2000~150000である。
(P)成分の分子量分散度(Mw/Mn)は、1.0~5.0が好ましく、より好ましくは1.0~4.5、さらに好ましくは1.0~3.0である。尚、Mnは数平均分子量を示す。
【0027】
≪溶媒又は分散媒≫
本実施形態における樹脂組成物は、(P)成分と、溶媒又は分散媒と、を混合することにより調製できる。
溶媒又は分散媒には、例えば水、有機溶剤成分が用いられる。
この有機溶剤成分としては、例えば、γ-ブチロラクトン等のラクトン類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチル-n-ペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン、2-ヘプタノンなどのケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどの多価アルコール類;エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、又はジプロピレングリコールモノアセテート等のエステル結合を有する化合物、前記多価アルコール類又は前記エステル結合を有する化合物のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル等のモノアルキルエーテル又はモノフェニルエーテル等のエーテル結合を有する化合物等の多価アルコール類の誘導体[これらの中では、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテルが好ましい];ジオキサンのような環式エーテル類;乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチルなどのエステル類;アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、トルエン、キシレン、シメン、メシチレン等の芳香族系有機溶剤;ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
溶媒又は分散媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上の混合溶剤として用いてもよい。
溶媒又は分散媒としては、重合体(P)との相溶性の点から、有機溶剤成分を用いることが好ましく、PGMEAを用いることが特に好ましい。
【0028】
≪その他成分≫
本実施形態における樹脂組成物は、重合体(P)、溶媒又は分散媒の他、必要に応じてその他成分を含有してもよい。
【0029】
本実施形態における樹脂組成物中の重合体(P)の濃度は、樹脂組成物の総量(100質量%)に対して、0.1~20質量%が好ましく、より好ましくは0.2~15質量%、さらに好ましくは0.2~10質量%である。
【0030】
<ポリオレフィン樹脂製の膜を備えたフィルター>
濾過工程で用いられるフィルターは、ポリオレフィン樹脂製の膜を備えたものである。ここでのポリオレフィン樹脂としては、例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、又はこれらが混在したものが挙げられる。ポリオレフィン樹脂の密度、分子量は、除去対象である樹脂組成物に応じて適宜決定すればよい。
かかるフィルターとしては、ポリエチレン製の膜を備えたフィルター(ポリエチレンフィルター)が好適に用いられる。
かかるフィルターの濾過精度(除去対象とする粒子径)は、例えば200nm以下であり、好ましくは100nm以下、より好ましくは50nm以下である。
【0031】
[濾過工程:樹脂組成物の濾過]
濾過工程では、樹脂組成物を、ポリオレフィン樹脂製の膜を備えたフィルターに通過させる操作を行う。かかる操作によって、樹脂組成物から異物等が除去される。
かかる操作は、差圧なしの状態で行ってもよいし(すなわち、樹脂組成物をフィルターに重力のみで通過させてもよいし)、差圧を設けた状態で行ってもよい。
【0032】
「差圧を設けた状態」とは、フィルターが備えるポリオレフィン樹脂製の膜の一方の側と他方の側との間に圧力差があることをいう。
例えば、ポリオレフィン樹脂製の膜の片方の側(樹脂組成物供給側)に圧力を加える加圧(陽圧)状態、ポリオレフィン樹脂製の膜の片方の側(濾液側)を負圧にする減圧(陰圧)状態が挙げられる。
【0033】
本実施形態では、かかる濾過工程での操作を、前記の加圧(陽圧)状態で行うことが好ましい。この操作を加圧(陽圧)状態で行うには、不活性又は非反応性のガスを利用すればよい。
【0034】
次いで、樹脂組成物をフィルターに通過させる操作の後、その濾液を乾燥させることにより精製樹脂が得られる。
【0035】
以上説明した、本実施形態の樹脂の製造方法においては、疎水性の構成単位(u1)の繰り返し構造からなる重合体、を含有する樹脂組成物を精製する際、特定のフィルター(ポリオレフィン樹脂製の膜を備えたフィルター)を採用して濾過を行う。このため、種々の異物が効率良く除去され、高純度の樹脂が製造される、という効果が得られる。
かかる本実施形態による効果は、疎水性の構成単位(u1)と、これと比べて水との親和性が相対的に高い親水性の構成単位と、を有する共重合体を含有する樹脂組成物を精製する際に、ポリオレフィン樹脂製の膜を備えたフィルターを採用して濾過を行った場合に比べて顕著に現れる。
また、かかる本実施形態による効果は、重合体(P)を含有する樹脂組成物を精製する際に、ポリオレフィン樹脂製とは異なる樹脂製の膜を備えたフィルターを採用して濾過を行った場合に比べて顕著に現れる。
【0036】
(相分離構造を含む構造体の製造方法)
本実施形態の相分離構造を含む構造体の製造方法は、疎水性の構成単位(u1)の繰り返し構造からなる重合体を含有する樹脂組成物を、ポリオレフィン樹脂製の膜を備えたフィルターにより濾過して、精製樹脂を得る工程(以下「工程(i)」という。)と、前記精製樹脂を含有する下地剤を、基板上に塗布して下地剤層を形成する工程(以下「工程(ii)」という。)と、前記下地剤層上に、疎水性ポリマーブロックと親水性ポリマーブロックとが結合したブロックコポリマーを含む層を形成する工程(以下「工程(iii)」という。)と、前記のブロックコポリマーを含む層を相分離させる工程(以下「工程(iv)」という。)と、を有する。
以下、かかる相分離構造を含む構造体の製造方法について、図1を参照しながら具体的に説明する。但し、本発明はこれに限定されるものではない。
【0037】
図1は、相分離構造を含む構造体の製造方法の本実施形態例を示す。
まず、基板1上に、上述した濾過工程で得た精製樹脂を含有する下地剤を塗布して、下地剤層2を形成する(図1(I);工程(ii))。
次に、下地剤層2上に、疎水性ポリマーブロックと親水性ポリマーブロックとが結合したブロックコポリマーを含有する組成物(以下「BCP組成物」ともいう。)を塗布して、該ブロックコポリマーを含む層3を形成する(図1(II);工程(iii))。
次に、加熱してアニール処理を行い、該ブロックコポリマーを含む層3を、相3aと相3bとに相分離させる(図1(III);工程(iv))。
以上により、下地剤層2が形成された基板1上に、相分離構造を含む構造体3’が製造される。
【0038】
<工程(i)>
工程(i)では、疎水性の構成単位(u1)の繰り返し構造からなる重合体を含有する樹脂組成物を、ポリオレフィン樹脂製の膜を備えたフィルターにより濾過して、精製樹脂を得る。
かかる工程(i)についての説明は、上述した(樹脂の製造方法)における濾過工程等についての説明と同様である。
【0039】
<工程(ii)>
工程(ii)では、前記精製樹脂を含有する下地剤を、基板1上に塗布して下地剤層2を形成する。
基板1上に下地剤層2を設けることによって、基板1の表面が疎水化される。これによって、下地剤層2上に形成されるブロックコポリマーを含む層3のうち、疎水化された基板1との親和性の高いブロックからなる相は、基板1との密着性が高まる。これに伴い、ブロックコポリマーを含む層3の相分離によって、基板1表面に対して垂直方向に配向されたシリンダー構造が形成しやすくなる。
【0040】
基板1は、その表面上にBCP組成物を塗布し得るものであれば、その種類は特に制限されない。例えば、金属(シリコン、銅、クロム、鉄、アルミニウム等)、ガラス、酸化チタン、二酸化ケイ素(SiO)、シリカ、マイカなどの無機物からなる基板;SiN等窒化物からなる基板;SiON等の酸化窒化物からなる基板;アクリル、ポリスチレン、セルロース、セルロースアセテート、フェノール樹脂などの有機物からなる基板が挙げられる。これらの中でも、金属の基板に好適であり、例えばシリコン基板(Si基板)、二酸化ケイ素基板(SiO基板)又は銅基板(Cu基板)において、シリンダー構造の構造体が形成される。中でも、Si基板、SiO基板に特に好適である。
基板1の大きさや形状は、特に限定されるものではない。基板1は、必ずしも平滑な表面を有する必要はなく、様々な形状の基板を適宜選択できる。例えば、曲面を有する基板、表面が凹凸形状の平板、薄片状などの形状の基板が挙げられる。
【0041】
基板1の表面には、無機系及び/又は有機系の膜が設けられていてもよい。
無機系の膜としては、無機反射防止膜(無機BARC)が挙げられる。有機系の膜としては、有機反射防止膜(有機BARC)が挙げられる。
無機系の膜は、例えば、シリコン系材料などの無機系の反射防止膜組成物を、基板上に塗工し、焼成等することにより形成できる。
有機系の膜は、例えば、該膜を構成する樹脂成分等を有機溶剤に溶解した有機膜形成用材料を、基板上にスピンナー等で塗布し、好ましくは200~300℃、好ましくは30~300秒間、より好ましくは60~180秒間の加熱条件でベーク処理することにより形成できる。この有機膜形成用材料は、レジスト膜のような、光や電子線に対する感受性を必ずしも必要とするものではなく、感受性を有するものであってもよく、有しないものであってもよい。具体的には、半導体素子や液晶表示素子の製造において一般的に用いられているレジストや樹脂を用いることができる。
また、有機膜形成用材料は、エッチング、特にドライエッチング可能な有機系の膜を形成できる材料であることが好ましい。このような有機膜形成用材料であれば、層3を加工して形成される、ブロックコポリマーからなるパターンを用いて、有機系の膜をエッチングすることにより、該パターンを有機系の膜へ転写し、有機系の膜パターンを形成できる。その中でも、酸素プラズマエッチング等のエッチングが可能な有機系の膜を形成できる材料であることが好ましい。このような有機膜形成用材料としては、従来、有機BARCなどの有機膜を形成するために用いられている材料であってよい。例えば、日産化学工業株式会社製のARCシリーズ、ロームアンドハース社製のARシリーズ、東京応化工業株式会社製のSWKシリーズなどが挙げられる。
【0042】
下地剤を基板1上に塗布して下地剤層2を形成する方法としては、特に限定されず、従来公知の方法により形成できる。
例えば、下地剤を、スピンコート又はスピンナーを用いる等の従来公知の方法により基板1上に塗布して塗膜を形成し、乾燥させることにより、下地剤層2を形成できる。
塗膜の乾燥方法としては、下地剤に含まれる溶媒を揮発させることができればよく、例えばベークする方法等が挙げられる。この際、ベーク温度は、80~300℃が好ましい。ベーク時間は、30~500秒間が好ましく、60~400秒間がより好ましい。
塗膜の乾燥後における下地剤層2の厚さは、10~100nm程度が好ましく、40~90nm程度がより好ましい。
【0043】
基板1に下地剤層2を形成する前に、基板1の表面は、予め洗浄されていてもよい。基板1表面を洗浄することにより、下地剤の塗布性が向上する。
洗浄処理方法としては、従来公知の方法を利用でき、例えば酸素プラズマ処理、オゾン酸化処理、酸アルカリ処理、化学修飾処理等が挙げられる。
【0044】
下地剤層2を形成した後、必要に応じて、溶剤等のリンス液を用いて下地剤層2をリンスしてもよい。該リンスにより、下地剤層2中の未架橋部分等が除去されるため、ブロックコポリマーを構成する少なくとも1つのポリマー(ブロック)との親和性が向上し、基板1表面に対して垂直方向に配向されたシリンダー構造からなる相分離構造が形成されやすくなる。
尚、リンス液は、未架橋部分を溶解し得るものであればよく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチル等の溶剤、又は市販のシンナー液等を用いることができる。
また、該洗浄後は、リンス液を揮発させるため、ポストベークを行ってもよい。このポストベークの温度条件は、80~300℃が好ましい。ベーク時間は、30~500秒間が好ましく、60~240秒間がより好ましい。かかるポストベーク後における下地剤層2の厚さは、1~50nm程度が好ましく、2~40nm程度がより好ましい。
【0045】
<工程(iii)>
工程(iii)では、下地剤層2上に、疎水性ポリマーブロックと親水性ポリマーブロックとが結合したブロックコポリマーを含む層3を形成する。
下地剤層2の上に層3を形成する方法としては、特に制限されるものではなく、例えばスピンコート又はスピンナーを用いる等の従来公知の方法により、下地剤層2上にBCP組成物を塗布して塗膜を形成し、乾燥させる方法が挙げられる。かかるBCP組成物の詳細については後述する。
【0046】
層3の厚さは、相分離が起こるために充分な厚さであればよく、基板1の種類、又は、形成される相分離構造の構造周期サイズもしくはナノ構造体の均一性等を考慮すると、20~100nmが好ましく、30~80nmがより好ましい。
例えば、基板1がSi基板又はSiO基板の場合、層3の厚さは、20~100nmが好ましく、30~80nmがより好ましい。
基板1がCu基板の場合、層3の厚さは、10~100nmが好ましく、30~80nmがより好ましい。
【0047】
<工程(iv)>
工程(iv)では、ブロックコポリマーを含む層3を相分離させる。
工程(iii)後の基板1を加熱してアニール処理を行うことによるブロックコポリマーの選択除去によって、基板1表面の少なくとも一部が露出するような相分離構造が形成する。すなわち、基板1上に、相3aと相3bとに相分離した、相分離構造を含む構造体3’が製造される。
アニール処理の温度条件は、用いるブロックコポリマーのガラス転移温度以上であり、かつ、熱分解温度未満とすることが好ましい。例えばブロックコポリマーがポリスチレン-ポリメチルメタクリレート(PS-PMMA)ブロックコポリマー(質量平均分子量5000~100000)の場合には、180~270℃が好ましい。加熱時間は、30~3600秒間が好ましい。
また、アニール処理は、窒素等の反応性の低いガス中で行われることが好ましい。
【0048】
以上説明した、本実施形態の相分離構造を含む構造体の製造方法においては、上述した(樹脂の製造方法)によって製造された、不純物がより低減された樹脂が下地剤層に用いられている。このため、ブロックコポリマーの相分離性能をより高められる。そして、既存のリソグラフィー技術に比べて、より微細な構造体を良好な形状で形成できる。加えて、基板表面に、位置及び配向性がより自在にデザインされたナノ構造体を備える基板を製造し得る。例えば、形成される構造体は、基板との密着性が高く、基板表面に対して垂直方向に配向されたシリンダー構造からなる相分離構造をとりやすい。
【0049】
[任意工程]
本発明に係る、相分離構造を含む構造体の製造方法は、上述した実施形態に制限されず、工程(i)~(iv)以外の工程(任意工程)をさらに有してもよい。
かかる任意工程としては、ブロックコポリマーを含む層のうち、前記ブロックコポリマーを構成する、疎水性ポリマーブロック及び親水性ポリマーブロックのうちの少なくとも一種類のブロックからなる相を選択的に除去する工程(以下「工程(v)」という。)、ガイドパターン形成工程等が挙げられる。
【0050】
・工程(v)について
工程(v)では、下地剤層の上に形成された、ブロックコポリマーを含む層のうち、前記ブロックコポリマーを構成する、疎水性ポリマーブロック及び親水性ポリマーブロックのうちの少なくとも一種類のブロックからなる相を選択的に除去する。これにより、微細なパターン(高分子ナノ構造体)が形成される。
【0051】
ブロックからなる相を選択的に除去する方法としては、ブロックコポリマーを含む層に対して酸素プラズマ処理を行う方法、水素プラズマ処理を行う方法等が挙げられる。
尚、以下において、ブロックコポリマーを構成するブロックのうち、選択的に除去されないブロックをPブロック、選択的に除去されるブロックをPブロックという。例えば、PS-PMMAブロックコポリマーを含む層を相分離した後、該層に対して酸素プラズマ処理や水素プラズマ処理等を行うことにより、PMMAからなる相が選択的に除去される。この場合、PS部分がPブロックであり、PMMA部分がPブロックとなる。
【0052】
図2は、工程(v)の一実施形態例を示す。
図2に示す実施形態においては、工程(iv)で基板1上に製造された構造体3’に、酸素プラズマ処理を行うことによって、相3aが選択的に除去されて、離間した相3bからなるパターン(高分子ナノ構造体)が形成されている。この場合、相3bがPブロックからなる相であり、相3aがPブロックからなる相である。
【0053】
上記のようにして、ブロックコポリマーからなる層3の相分離によってパターンが形成された基板1は、そのまま使用することもできるが、さらに加熱することにより、基板1上のパターン(高分子ナノ構造体)の形状を変更することもできる。
加熱の温度条件は、用いるブロックコポリマーのガラス転移温度以上であり、かつ、熱分解温度未満が好ましい。また、加熱は、窒素等の反応性の低いガス中で行われることが好ましい。
【0054】
・ガイドパターン形成工程について
本発明に係る、相分離構造を含む構造体の製造方法においては、工程(ii)と工程(iii)との間に、下地剤層上にガイドパターンを設ける工程(ガイドパターン形成工程)を有してもよい。これにより、相分離構造の配列構造制御が可能となる。
例えば、ガイドパターンを設けない場合に、ランダムな指紋状の相分離構造が形成されるブロックコポリマーであっても、下地剤層表面にレジスト膜の溝構造を設けることにより、その溝に沿って配向した相分離構造が得られる。このような原理で、下地剤層2上にガイドパターンを設けてもよい。また、ガイドパターンの表面が、ブロックコポリマーを構成するいずれかのポリマーと親和性を有することにより、基板表面に対して垂直方向に配向されたシリンダー構造からなる相分離構造が形成しやすくなる。
【0055】
ガイドパターンは、例えばレジスト組成物を用いて形成できる。
ガイドパターンを形成するレジスト組成物は、一般的にレジストパターンの形成に用いられるレジスト組成物やその改変物の中から、ブロックコポリマーを構成するいずれかのポリマーと親和性を有するものを適宜選択して用いることができる。該レジスト組成物としては、レジスト膜露光部が溶解除去されるポジ型パターンを形成するポジ型レジスト組成物、レジスト膜未露光部が溶解除去されるネガ型パターンを形成するネガ型レジスト組成物のいずれであってもよいが、ネガ型レジスト組成物であることが好ましい。ネガ型レジスト組成物としては、例えば、酸発生剤成分と、有機溶剤を含有する現像液への溶解性が酸の作用により減少する基材成分とを含有し、該基材成分が、酸の作用により分解して極性が増大する構成単位を有する樹脂成分、を含有するレジスト組成物が好ましい。
ガイドパターンが形成された下地剤層上にBCP組成物が流し込まれた後、相分離を起こすためにアニール処理が行われる。このため、ガイドパターンを形成するレジスト組成物としては、耐溶剤性と耐熱性とに優れたレジスト膜を形成し得るものであることが好ましい。
【0056】
・・ブロックコポリマーを含有する組成物(BCP組成物)について
BCP組成物としては、ブロックコポリマーを有機溶剤成分に溶解してなるものが挙げられる。
【0057】
・・・ブロックコポリマー
ブロックコポリマーとは、同種の構成単位が繰り返し結合した部分構成成分(ブロック)の複数が結合した高分子化合物である。
ブロックコポリマーを構成するブロックの種類は、2種類であってもよく、3種類以上であってもよい。
ブロックコポリマーを構成する複数種類のブロックは、相分離が起こる組み合わせであれば特に限定されるものではない。
【0058】
好ましいブロックコポリマーとしては、例えば、疎水性ポリマーブロック(b11)と親水性ポリマーブロック(b21)とが結合した高分子化合物(BCP-1)が挙げられる。
疎水性ポリマーブロック(b11)(以下単に「ブロック(b11)」ともいう。)とは、水との親和性が相対的に異なる複数のモノマーが用いられ、これら複数のモノマーのうち、水との親和性が相対的に低い方のモノマーが重合したポリマー(疎水性ポリマー)からなるブロックをいう。親水性ポリマーブロック(b21)(以下単に「ブロック(b21)」ともいう。)とは、前記複数のモノマーのうち、水との親和性が相対的に高い方のモノマーが重合したポリマー(親水性ポリマー)からなるブロックをいう。
【0059】
ブロック(b11)とブロック(b21)とは、相分離が起こる組み合わせであれば特に制限されるものではないが、互いに非相溶であるブロック同士の組み合わせであることが好ましい。
また、ブロック(b11)とブロック(b21)とは、ブロックコポリマーを構成する複数種類のブロック中の少なくとも1種類のブロックからなる相が、他の種類のブロックからなる相よりも容易に除去可能な組み合わせであることが好ましい。
尚、高分子化合物(BCP-1)は、ブロック(b11)及びブロック(b21)以外の部分構成成分(ブロック)が結合していてもよい。
【0060】
ブロック(b11)、ブロック(b21)としては、例えば、スチレン又はスチレン誘導体から誘導される構成単位が繰り返し結合したブロック、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位((α置換)アクリル酸エステルから誘導される構成単位)が繰り返し結合したブロック、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸から誘導される構成単位((α置換)アクリル酸から誘導される構成単位)が繰り返し結合したブロック、シロキサン又はその誘導体から誘導される構成単位が繰り返し結合したブロック、アルキレンオキシドから誘導される構成単位が繰り返し結合したブロック、シルセスキオキサン構造含有構成単位が繰り返し結合したブロック等が挙げられる。
【0061】
高分子化合物(BCP-1)としては、例えば、スチレン又はスチレン誘導体から誘導される構成単位が繰り返し結合したブロックと、(α置換)アクリル酸エステルから誘導される構成単位が繰り返し結合したブロックと、が結合した高分子化合物;スチレン又はスチレン誘導体から誘導される構成単位が繰り返し結合したブロックと、(α置換)アクリル酸から誘導される構成単位が繰り返し結合したブロックと、が結合した高分子化合物;スチレン又はスチレン誘導体から誘導される構成単位が繰り返し結合したブロックと、シロキサン又はその誘導体から誘導される構成単位が繰り返し結合したブロックと、が結合した高分子化合物;アルキレンオキシドから誘導される構成単位が繰り返し結合したブロックと、(α置換)アクリル酸エステルから誘導される構成単位が繰り返し結合したブロックと、が結合した高分子化合物;アルキレンオキシドから誘導される構成単位が繰り返し結合したブロックと、(α置換)アクリル酸から誘導される構成単位が繰り返し結合したブロックと、が結合した高分子化合物;かご型シルセスキオキサン構造含有構成単位が繰り返し結合したブロックと、(α置換)アクリル酸エステルから誘導される構成単位が繰り返し結合したブロックと、が結合した高分子化合物;かご型シルセスキオキサン構造含有構成単位が繰り返し結合したブロックと、(α置換)アクリル酸から誘導される構成単位が繰り返し結合したブロックと、が結合した高分子化合物;かご型シルセスキオキサン構造含有構成単位が繰り返し結合したブロックと、シロキサン又はその誘導体から誘導される構成単位が繰り返し結合したブロックと、が結合した高分子化合物等が挙げられる。
【0062】
上記の中でも、高分子化合物(BCP-1)としては、スチレン又はスチレン誘導体から誘導される構成単位が繰り返し結合したブロックと、(α置換)アクリル酸エステルから誘導される構成単位が繰り返し結合したブロックと、が結合した高分子化合物;スチレン又はスチレン誘導体から誘導される構成単位が繰り返し結合したブロックと、(α置換)アクリル酸から誘導される構成単位が繰り返し結合したブロックと、が結合した高分子化合物が好ましく、スチレン又はスチレン誘導体から誘導される構成単位が繰り返し結合したブロックと、(α置換)アクリル酸エステルから誘導される構成単位が繰り返し結合したブロックと、が結合した高分子化合物がより好ましく、スチレン又はスチレン誘導体から誘導される構成単位が繰り返し結合したブロックと、(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位が繰り返し結合したブロックと、が結合した高分子化合物がさらに好ましい。
具体的には、ポリスチレン-ポリメチルメタクリレート(PS-PMMA)ブロックコポリマー、ポリスチレン-ポリエチルメタクリレートブロックコポリマー、ポリスチレン-(ポリ-t-ブチルメタクリレート)ブロックコポリマー、ポリスチレン-ポリメタクリル酸ブロックコポリマー、ポリスチレン-ポリメチルアクリレートブロックコポリマー、ポリスチレン-ポリエチルアクリレートブロックコポリマー、ポリスチレン-(ポリ-t-ブチルアクリレート)ブロックコポリマー、ポリスチレン-ポリアクリル酸ブロックコポリマー等が挙げられる。これらの中でも、PS-PMMAブロックコポリマーが特に好ましい。
【0063】
ブロックコポリマーを構成する各ポリマーの質量平均分子量(Mw)(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算基準)は、相分離を起こすことが可能な大きさであれば特に限定されるものではないが、5000~500000が好ましく、5000~400000がより好ましく、5000~300000がさらに好ましい。
【0064】
ブロックコポリマーのMwは、相分離を起こすことが可能な大きさであれば特に限定されるものではないが、5000~100000が好ましく、20000~60000がより好ましく、30000~50000がさらに好ましい。
ブロックコポリマーのMw/Mnは、1.0~3.0が好ましく、1.0~1.5がより好ましく、1.0~1.2がさらに好ましい。
ブロックコポリマーの周期(ブロックコポリマーの分子1つ分の長さ)は、5~50nmが好ましく、10~40nmがより好ましく、20~30nmがさらに好ましい。
【0065】
・・・有機溶剤成分
BCP組成物は、上記ブロックコポリマーを有機溶剤成分に溶解することにより調製できる。この有機溶剤成分としては、樹脂組成物に用いることができる有機溶剤成分と同様のものが挙げられる。
BCP組成物に含まれる有機溶剤成分は、特に制限されるものではなく、塗布可能な濃度で、塗布膜厚に応じて適宜設定され、一般的にはブロックコポリマーの固形分濃度が0.2~70質量%、好ましくは0.2~50質量%の範囲内となるように用いられる。
【0066】
BCP組成物には、上記のブロックコポリマー及び有機溶剤成分以外に、さらに、所望により、混和性のある添加剤、例えば下地剤層の性能を改良するための付加的樹脂、塗布性を向上させるための界面活性剤、溶解抑制剤、可塑剤、安定剤、着色剤、ハレーション防止剤、染料、増感剤、塩基増殖剤、塩基性化合物等を適宜含有させることができる。
【実施例
【0067】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0068】
<樹脂組成物の調製>
表1に示す各成分を混合して樹脂組成物(重合体濃度1.5質量%)を調製した。
【0069】
【表1】
【0070】
表1中、各略号はそれぞれ以下の意味を有する。[ ]内の数値は配合量(質量部)である。
(P)-1:下記化学式(P)-1で表される共重合体。GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の質量平均分子量(Mw)は40000であり、分子量分散度(Mw/Mn)は1.8であった。カーボン13核磁気共鳴スペクトル(600MHz_13C-NMR)により求められた共重合組成比(構造式中の各構成単位の割合(モル比))は、u1/u21/u22=82/12/6であった。
【0071】
(P)-2:下記化学式(P)-2で表される共重合体。GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の質量平均分子量(Mw)は40000であり、分子量分散度(Mw/Mn)は1.8であった。カーボン13核磁気共鳴スペクトル(600MHz_13C-NMR)により求められた共重合組成比(構造式中の各構成単位の割合(モル比))は、u1/u22=97/3であった。
【0072】
(P)-3:下記化学式(P)-3で表される単独重合体。GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の質量平均分子量(Mw)は37000であり、分子量分散度(Mw/Mn)は1.2であった。構造式中の構成単位の割合(モル比))を、u1=100とした。
【0073】
(S)-1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート。
【0074】
【化1】
【0075】
<フィルター>
フィルターとして、以下に示すフィルター(1)~(3)を用いた。
フィルター(1):ポリエチレン(HDPE)樹脂製の多孔質膜を備えたフィルター。パーツNo.PHD12XG2EH11B、濾過精度2nm。
フィルター(2):ポリアミド樹脂(Nylon6,6)製の多孔質膜を備えたフィルター。パーツNo.PHD12HXN5EH11、濾過精度5nm。
フィルター(3):ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂製の多孔質膜を備えたフィルター。パーツNo.PHF12UCF10EH11-RD、濾過精度10nm。
【0076】
<樹脂の製造方法>
(実施例1、比較例1~8)
上記の樹脂組成物(1)~(3)を、それぞれ、以下に示す[濾過条件]で各フィルター(1)~(3)により濾過し、その濾液を乾燥させて精製樹脂を得た。
[濾過条件]
窒素ガスにて加圧しつつ濾過する。温度23℃、濾過回数1回。
【0077】
(比較例1)
濾過工程:
上記樹脂組成物(1)を、前記[濾過条件]でフィルター(1)により濾過し、この濾液を乾燥させて精製樹脂を得た。
【0078】
(比較例2)
樹脂組成物(1)を樹脂組成物(2)に変更した以外は、比較例1と同様にして精製樹脂を得た。
【0079】
(実施例1)
樹脂組成物(1)を樹脂組成物(3)に変更した以外は、比較例1と同様にして精製樹脂を得た。
【0080】
(比較例3)
濾過工程:
フィルター(1)をフィルター(2)に変更した以外は、比較例1と同様にして精製樹脂を得た。
【0081】
(比較例4)
樹脂組成物(1)を樹脂組成物(2)に変更した以外は、比較例3と同様にして精製樹脂を得た。
【0082】
(比較例5)
樹脂組成物(1)を樹脂組成物(3)に変更した以外は、比較例3と同様にして精製樹脂を得た。
【0083】
(比較例6)
濾過工程:
フィルター(1)をフィルター(3)に変更した以外は、比較例1と同様にして精製樹脂を得た。
【0084】
(比較例7)
樹脂組成物(1)を樹脂組成物(2)に変更した以外は、比較例6と同様にして精製樹脂を得た。
【0085】
(比較例8)
樹脂組成物(1)を樹脂組成物(3)に変更した以外は、比較例6と同様にして精製樹脂を得た。
【0086】
[樹脂についての評価]
各例の製造方法により製造された樹脂について、ディフェクトの評価を以下のようにして行った。
12インチのシリコンウェーハ上に、上述した各例における濾過工程でフィルターを通過した液体を、それぞれ、スピンコート(1500rpm)により塗布し、ホットプレート上で、80℃、60秒間のベーク処理を行い、膜厚85nmの樹脂膜を形成した。
次いで、溶剤(OK73、東京応化工業株式会社製)を用いてリンスし、振り切り乾燥を行った。その後、80℃で60秒間のベーク処理を行い、最終的に膜厚40nmの樹脂膜を形成した。
【0087】
ディフェクト(欠陥数)の評価:
最終的に得られた樹脂膜(膜厚40nm)について、表面欠陥観察装置(KLAテンコール社製、製品名:KLA2371)を用い、ウェーハ内トータルの欠陥数(全欠陥数/個数)を測定した。その結果を表2に示した。
【0088】
【表2】
【0089】
表2に示す結果から、樹脂組成物(3)(単独重合体を含有)に対しては、フィルター(1)を用いた実施例1の場合に、全欠陥数が最も少ないことが確認できる。
樹脂組成物(1)(共重合体を含有)に対しては、フィルター(1)ではなくフィルター(2)を用いた比較例3の場合に、全欠陥数が最も少ないことが確認できる。
樹脂組成物(2)(共重合体を含有)に対しては、フィルター(1)ではなくフィルター(2)を用いた比較例4の場合に、全欠陥数が最も少ないことが確認できる。
【0090】
したがって、本発明を適用した場合、すなわち、疎水性の構成単位の繰り返し構造からなる重合体、を含有する樹脂組成物を濾過する際に、ポリオレフィン樹脂製の膜を備えたフィルターを採用することで、不純物がより低減された樹脂が得られる。
【符号の説明】
【0091】
1…基板、2…下地剤層、3…層、3a…相、3b…相。
図1
図2